説明

電子カメラ

【課題】電子カメラのLCDモニタ上で指定した領域に対応するRGB色信号を用いてホワイトバランス調整係数を算出する。
【解決手段】CCD74で撮像されたR信号、G信号およびB信号がA/D変換回路28でデジタルデータに変換され、画像処理CPU29で画像処理されてLCDモニタ40に表示される。CPU21は、エリアセレクトボタン41の操作量に基づいて演算したマーカ44(図4)の移動量、およびマーカ44(図4)の位置情報を画像処理CPU29に送出する。画像処理CPU29は、CCD74による色信号のうち、マーカ44(図4)に囲まれる位置に対応する色信号を用いてR、GおよびB信号の平均値を算出し、これらの比を1:1:1とするようにホワイトバランス調整用RゲインおよびBゲインを算出する。算出されたRゲインおよびBゲインはCPU21内のメモリに記憶され、ホワイトバランス調整時に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被写体を撮像して電子的な画像データとして記録する電子カメラに関する。
【0002】
【従来の技術】被写体像をCCDなどで撮像して画像データを出力する撮像装置と、撮像装置から出力される画像データに対する増幅利得を調整してホワイトバランス調整やγ補正などの画像処理を施す画像処理回路とを備える電子カメラが知られている。画像処理回路では、撮像装置から出力される画像データに基づいて、あらかじめ定めたアルゴリズムによりホワイトバランス調整用のRゲインやBゲイン、あるいはγ補正用の階調カーブなどのパラメータを算出して画像処理が行われる。上述した電子カメラでは、撮像された主要被写体および背景などの画像全体の色彩情報を平均して無彩色とするようにRゲインやBゲインなどのホワイトバランス調整係数を算出し、算出された調整係数を用いて画像処理時にホワイトバランス調整を行うオートホワイトバランス調整が行われる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような電子カメラのオートホワイトバランス調整では、ポートレート撮影を行う場合のように、被写界に存在する色の彩度が高いと画像全体の色彩情報を平均しても無彩色にならないことがあり、ホワイトバランス調整係数に調整不良が生じやすく、色落ちおよび色かぶり画像が発生するおそれがあった。
【0004】本発明の目的は、撮像された画像の中で所定の領域を用いてホワイトバランス調整係数を算出し、この調整係数によりホワイトバランス調整を行うようにした電子カメラを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】一実施の形態を示す図2、図4に対応づけて本発明を説明する。
(1)請求項1の発明による電子カメラは、被写体像を撮像して画像データを出力する撮像装置74と、画像データによる画像を表示する表示手段40と、撮像装置74から出力される画像データの中から所定の領域に対応するデータを抽出して電子ズームを行うズーム手段21、29、42、43と、ズーム手段21、29、42、43により抽出されたデータによる画像を表示するように表示手段40を制御する表示制御手段21、29と、表示手段40により表示されている表示画像の中で特定の領域を指定する入力手段21、41と、特定の領域の表示画像の色が所定の色となるようにゲインを算出するゲイン算出手段29と、撮像装置74から出力される画像データに対してゲイン算出手段29により算出されたゲインをかけてゲイン調整を行うゲイン調整手段29とを備えることにより、上述した目的を達成する。
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子カメラにおいて、撮像装置は、撮影用の画像データを出力する第1の撮像装置74と、ゲイン算出用の画像データを出力する第2の撮像装置86とを備え、ゲイン算出手段29は、少なくとも入力手段21、41により指定されている特定の領域の表示画像の色が所定の色となるようにゲインを算出するとき、第1の撮像装置74による画像データを用いてゲインを算出することを特徴とする。
(3)請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の電子カメラにおいて、ズーム手段21、29、42、43は、入力手段21、41によって指定されている領域を中心にして電子ズームを行うことを特徴とする。
(4)請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の電子カメラにおいて、ゲインを記憶する記憶手段21をさらに備え、ゲイン調整手段29は、撮像装置74から出力される画像データに対して記憶手段21に記憶されているゲインをかけてゲイン調整を行うことを特徴とする。
(5)請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の電子カメラにおいて、特定の領域の範囲を示す画像を表示するためのデータを生成する領域表示データ生成手段29をさらに備え、表示制御手段21、29は、入力手段21、41による領域指定に連動させて、ズーム手段21、29、42、43によって抽出されるデータによる画像に対し、領域表示データ生成手段29によって生成されるデータによる画像44を重ねて表示するように表示手段40を制御することを特徴とする。
(6)請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の電子カメラにおいて、入力手段21、41により指定されている領域に対応して画像データから色温度を検出する色温度検出手段21と、色温度検出手段21により検出された色温度を表示する色温度表示手段45とをさらに備えることを特徴とする。
【0006】なお、本発明の構成を説明する上記課題を解決するための手段の項では、本発明を分かり易くするために実施の形態の図を用いたが、これにより本発明が実施の形態に限定されるものではない。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施の形態による一眼レフ電子スチルカメラを説明する図である。図1において、電子スチルカメラは、カメラ本体70と、カメラ本体70に着脱されるファインダ装置80と、レンズ91および絞り92を内蔵してカメラ本体70に着脱される交換レンズ90とを備える。交換レンズ90を通過してカメラ本体70に入射する被写体光の大部分は、レリーズ前に点線で示す位置にあるクイックリターンミラー71で反射され、ファインダ装置80に導かれてファインダマット81に結像する。また、被写体光の一部は、クイックリターンミラー71を通過してサブミラー72で反射され、焦点検出装置36にも結像する。ファインダーマット81に結像した被写体光はさらに、ファインダマット81を通過してペンタプリズム82によって接眼レンズ83に導かれる。ペンタプリズム82を通過した光の一部は、プリズム84と結像レンズ85とを通過してホワイトバランス検出センサ86にも導かれ、ホワイトバランス検出センサ86に被写体像を結像する。レリーズ後はクイックリターンミラー71が実線で示す位置に回動し、被写体光はシャッタ73を介して撮影用の撮像素子74上に結像する。なお、ホワイトバランス検出センサ86は、撮影レンズ91に対して撮像装置74と共役な位置に配設されている。
【0008】図2は、図1の電子スチルカメラの概要を表すブロック図である。図2において、CPU21には、不図示のレリーズボタンに連動する半押しスイッチおよび全押しスイッチから、それぞれ半押し信号および全押し信号が入力される。CPU21に半押し信号が入力されると、焦点検出/調整装置36は、CPU21から送出される指令により撮影レンズ91の焦点調節状態を検出し、撮影レンズ91を合焦位置に駆動する。測光装置37は、CPU21から送出される指令により被写体輝度を検出する。レンズ情報入力部38は、交換レンズ90に設定されている絞り値などのレンズ情報を入力してCPU21へ送る。CPU21は、タイミングジェネレータ24およびドライバ25を駆動して撮像素子であるCCD74を駆動制御する。アナログ処理回路27とA/D変換回路28の動作タイミングは、タイミングジェネレータ24により制御される。
【0009】上述した不図示の半押しスイッチのオン操作に続いて全押しスイッチがオン操作されると、クイックリターンミラー71が上方に回動し、交換レンズ90からの被写体光がCCD74の受光面上に結像される。CCD74は被写体像の明るさに応じた信号電荷を蓄積する。CCD74に蓄積された信号電荷はドライバ25によって掃き出され、AGC回路やCDS回路などを含むアナログ信号処理回路27に入力される。入力されたアナログ画像信号は、アナログ信号処理回路27でゲインコントロール、雑音除去等のアナログ処理が施された後、A/D変換回路28によってデジタル信号に変換される。デジタル変換された画像信号は、たとえば、ASICとして構成される画像処理CPU29に導かれ、後述するホワイトバランス調整、輪郭補償、ガンマ補正等の画像前処理が行われる。
【0010】画像前処理が行なわれた画像データに対してはさらに、JPEG圧縮のためのフォーマット処理(画像後処理)が行なわれ、フォーマット処理後の画像データが一時的にバッファメモリ30に格納される。
【0011】バッファメモリ30に格納された画像データは、表示画像作成回路31により表示用の画像データに処理され、LCDモニタ40に撮影結果として表示される。また、バッファメモリ30に記憶された画像データは、圧縮回路33によりJPEG方式で所定の比率にデータ圧縮を受け、フラッシュメモリカードなどの記録媒体(CFカード)34に記録される。
【0012】また、CPU21には、後述するエリアセレクトボタン41、ズーム(W)ボタン42、ズーム(T)ボタン43、ホワイトバランスボタン46、および領域決定ボタン47のそれぞれから操作信号が入力される。LCD表示部45は、CPU21から出力される指令により後述する色温度などの撮影情報を表示する。
【0013】ホワイトバランス調整は、画像処理CPU29で行われる。A/D変換回路28から出力されるR色,G色およびB色の画像信号のうち、R色とB色の画像信号に対してホワイトバランス調整用のRゲインとBゲイン、すなわち、ホワイトバランス調整係数がそれぞれかけ合わされる。これらホワイトバランス調整係数は、後述するホワイトバランス検出回路35、または画像処理CPU29で決定されてCPU21内のメモリに記憶されており、CPU21から読み出されて画像処理CPU29へ送られる。
【0014】ホワイトバランス検出回路35は、被写体の色を検出するホワイトバランス検出センサ86と、ホワイトバランス検出センサ86から出力されるアナログ色信号をデジタル色信号に変換するA/D変換回路35Bと、変換されたデジタル色信号に基づいてホワイトバランス調整係数を生成するCPU35Cとを含む。通常のホワイトバランス調整係数を決定するとき、CPU35Cは、ホワイトバランス検出センサ86で検出された色信号に基づいてホワイトバランス調整用のRゲインとBゲインとを決定してCPU21へ送る。本実施の形態では、画像処理CPU29によって後述する厳密なホワイトバランス調整係数の決定も行われる。画像処理CPU29は、CPU35Cおよび画像処理CPU29のいずれかによって決定されたホワイトバランス調整係数を用いて、CCD74による画面全体の画像データに対してホワイトバランス調整を行う。
【0015】通常のホワイトバランス調整係数を決定するとき、以下のようにホワイトバランス調整係数が決定される。ホワイトバランス検出センサ86は、たとえば、図3に示すように横48列×縦10行に分割された480個の画素を有する1枚の2次元撮像素子である。撮像素子86の表面には、480画素に対応してR色、G色およびB色のいずれかのフィルタが配設されたカラーフィルタ861が設けられている。被写体光がカラーフィルタ861を通してホワイトバランス検出センサ86で撮像されることにより、被写体光はR色信号、G色信号およびB色信号に分解されて撮像される。ホワイトバランス検出センサ86から出力される色信号は、R、G、B各色の色信号をそれぞれ出力する3つの近接画素を1画素分として、たとえば、横16列×縦10行の160画素分の色信号として出力される。すなわち、ホワイトバランス検出センサ86はその撮像面を160の領域に分割して色信号を出力する。
【0016】CPU35Cは、160の領域のR、GおよびB各色の色信号をそれぞれ平均し、平均後のR信号、G信号およびB信号の比を1:1:1にするように、ホワイトバランス調整用のRゲインとBゲインとを決定する。このようにすることにより、画面全体を平均した色を無彩色に近づけるようにホワイトバランス調整係数が決定される。
【0017】本発明が特徴とするホワイトバランス調整係数をより厳密に決定するとき、以下のようにホワイトバランス調整係数が決定される。図4は、図1の電子スチルカメラの背面図である。図4において、LCDモニタ40に撮影画像が表示されている。この画像は、上述したように、CCD74による撮像画像である。撮影者がホワイトバランスボタン46を操作すると、ホワイトバランスボタン46から操作信号がCPU21に入力される。CPU21は画像処理CPU29に指令を出して、表示画像に重ねてマーカ44をLCDモニタ40に表示させる。重ね表示は、画像処理CPU29が撮像された画像データにマーカ用データを合成することにより行われる。マーカ44が最初に表示される位置は、前回ホワイトバランスボタン46が操作されたときにマーカ44が置かれていた位置である。なお、マーカ44は、領域を示すように囲み表示を行う。
【0018】マーカ44が表示されている状態で、撮影者がエリアセレクトボタン41を操作すると、エリアセレクトボタン41から操作信号がCPU21に入力される。エリアセレクトボタン41は、上下左右の向きに対応する操作信号を出力する十字スイッチである。CPU21は、入力された操作信号に対応する向きにマーカ44の表示位置を移動させる。マーカ44の移動は、エリアセレクトボタン41の操作量に基づいてCPU21がマーカ44の移動量を演算し、画像処理CPU29がCPU21によって演算された移動量に応じてマーカ44の表示位置を移動させることによって行われる。撮影者は、エリアセレクトボタン41を操作し、たとえば、LCDモニタ40上に表示されている白部分に対応する画像にマーカ44を重ねる。
【0019】ここで、図5に示すように、マーカ44が示す領域より被写体の白部分の画像が小さいとき、撮影者はズーム(T)ボタン43を操作する。ズーム(T)ボタン43からCPU21に操作信号が入力されると、CPU21は、マーカ44がおかれている位置を拡大の中心にして、ズーム(T)ボタン43の操作量に応じてズームアップするように画像処理CPU29に指令を送る。この場合のズームは電子ズームである。
【0020】一般に、LCDモニタ40の表示解像度、すなわち、表示可能な画素数はCCD74で撮像される画素数に比べて少ない。そこで、画像処理CPU29は、バッファメモリ30に格納されている画像データがLCDモニタ40の表示解像度に応じた所定の比率で間引いて読み出されるように読み出し制御をしている。画像処理CPU29はCPU21からズームアップ指令を受けると、バッファメモリ30に格納されている画像データのうち、マーカ44の位置に対応する画像データが間引き比率を小さくしてバッファメモリ30から読み出されるようにする。この結果、図6に示すように、マーカ44が示す領域より被写体の白部分の画像が大きくなるように電子ズームアップされる。すなわち、CCD74による画像データのうち、マーカ44の位置を中心とする所定の領域の画像データが抽出されてLCDモニタ40に表示される。
【0021】一方、撮影者がズーム(W)ボタン42を操作すると、ズーム(W)ボタン42からCPU21に操作信号が入力される。CPU21は、マーカ44がおかれている位置を縮小の中心にして、ズーム(W)ボタン42の操作量に応じてズームダウンするように画像処理CPU29に指令を送る。画像処理CPU29はCPU21からズームダウン指令を受けると、バッファメモリ30に格納されている画像データが間引き比率を大きくしてバッファメモリ30から読み出されるようにする。この結果、LCDモニタ40に表示される画像が電子ズームダウンされる。
【0022】撮影者が領域決定ボタン47を操作すると、領域決定ボタン47から操作信号がCPU21に入力される。CPU21は、マーカ44の位置情報を画像処理CPU29に送り、マーカ44で囲まれる領域に対応してホワイトバランス調整係数を決定するように指示する。画像処理CPU29は、バッファメモリ30に格納されている画像データのうち、マーカ44で囲まれる領域に対応する領域の色信号を用いて、R、GおよびB各色の色信号をそれぞれ平均し、平均後のR信号、G信号およびB信号の比を1:1:1にするように、ホワイトバランス調整用のRゲインとBゲインとを決定する。この結果、マーカ44の領域内を平均した色を無彩色に近づけるようにホワイトバランス調整係数が決定される。なお、LCDモニタ40に撮影画像が表示されているとき、表示画像の撮像時の画像データがバッファメモリ30内に保持されている。画像処理CPU29は、バッファメモリ30に保持されている色信号からマーカ44による領域に対応する色信号を読み出して厳密なホワイトバランス調整係数を決定する。
【0023】このとき、CPU21は、上記画像処理CPU29による平均後のR信号、G信号およびB信号を用いて色温度を推定する。CPU21内のメモリには、R信号とG信号との比R/G、およびB信号とG信号との比B/Gと、色温度との関係があらかじめルックアップテーブル(LUT)として記憶されている。CPU21は、平均後のR信号、G信号およびB信号を用いてR/GおよびB/Gを算出し、LUTにより色温度を推定する。推定した色温度、たとえば、5000Kは、LCD表示部45に表示させる(図6)。
【0024】決定されたホワイトバランス調整係数はCPU21内のメモリに記憶され、次コマ以降の撮影時のホワイトバランス調整係数として使用される。なお、画面全体を平均した色を無彩色に近づけるような通常のホワイトバランス調整係数を用いる場合は、ホワイトバランスボタン46と領域決定ボタン47とを所定時間押し続ける。
【0025】図7は、上述したホワイトバランス調整係数を厳密に決定する処理の流れを表すフローチャートである。図7のフローチャートは、電子スチルカメラのLCDモニタ40に撮影画像が表示されている状態で、撮影者がホワイトバランス調整ボタン46を操作することにより起動する。ステップS11において、CPU21は、画像処理CPU29にマーカ44の重ね表示を指示してステップS12へ進む。ステップS12において、CPU21は、エリアセレクトボタン41が操作されたか否かを判定し、操作された場合にステップS12を肯定判定してステップS13へ進み、操作されていない場合にステップS12を否定判定してステップS15へ進む。
【0026】ステップS13において、CPU21は、マーカ44の移動量を算出してステップS14へ進む。ステップS14において、CPU21は、マーカ44の移動量を画像処理CPU29へ送出してステップS15へ進む。ステップS15において、CPU21は、ズーム(W)ボタン42もしくはズーム(T)ボタン43が操作されたか否かを判定する。ズーム(W)ボタン42もしくはズーム(T)ボタン43が操作された場合はステップS15を肯定判定してステップS16へ進み、操作されていない場合はステップS15を否定判定してステップS17へ進む。
【0027】ステップS16において、CPU21は、電子ズーム指令を画像処理CPU29に送出してステップS17へ進む。ステップS17において、CPU21は、領域決定ボタン47が操作されたか否かを判定し、操作された場合はステップS17を肯定判定してステップS18へ進み、操作されていない場合はステップS17を否定判定してステップS11へ戻る。
【0028】ステップS18において、CPU21は、マーカ44の位置情報を画像処理CPU29に送出し、厳密なホワイトバランス調整係数の決定を指示してステップS19へ進む。ステップS19において、CPU21は、画像処理CPU29にマーカ44の重ね表示の終了を指示して図7の処理を終了する。
【0029】本実施の形態の特徴についてまとめる。
(1)LCDモニタ40に被写体像が表示されている状態で、撮影者がエリアセレクトボタン41を操作して白い画像が表示される位置にマーカ44を重ね表示させると、ホワイトバランス検出センサ86による色信号を用いて通常のホワイトバランス調整係数を決定する処理と異なり、CCD74による色信号のうちマーカ44で囲まれる白い画像に対応する色信号を用いて、この領域内の色を無彩色に近づけるように厳密にホワイトバランス調整係数を決定する。一般に、ホワイトバランス検出センサ86に入射される被写体光は、ファインダーマット81およびレンズ85などを通過することによってこれら光学部材が有する分光特性の影響を受けるので、CCD74に入射される被写体光に比べて色成分が異なる。本実施の形態のようにCCD74による色信号を用いてホワイトバランス調整係数を決定すると、実際の撮影と同じ被写体光で厳密にホワイトバランス調整係数を決定できるから、色落ち、色かぶりがない高品位のカラー画像を得ることが可能になる。
(2)LCDモニタ40に表示される白い画像がマーカ44によって囲まれる領域より小さいとき、電子ズームによりズームアップ表示させて白い画像の領域をマーカ44による領域より大きく表示させるようにしたので、たとえば、冠雪した山の画像の中で白い頂の領域を指定してホワイトバランス調整係数を決定させることができる。この結果、白い頂の領域が狭い場合でも、白い頂の周囲の他の色に影響されることなく、厳密にホワイトバランス調整係数を決定できるから、色落ち、色かぶりがない高品位のカラー画像を得ることが可能になる。
(3)マーカ44で囲まれる画像に対応する色信号を用いて、色温度を推定してLCD表示部45に表示するようにしたので、カメラでホワイトバランス調整係数の決定に用いられている領域の色温度を撮影者に報知することができる。
【0030】以上の説明では、撮影者がマーカ44をLCDモニタ40に表示されている白い画像の上に移動させ、マーカ44で指定される領域に対応するCCD74による色信号からR、GおよびB信号の平均値を算出し、この領域内の色を無彩色に近づけるようにホワイトバランス調整係数を厳密に決定した。白色の画像の代わりに、他の色の画像を用いるようにしてもよい。たとえば、LCDモニタ40に表示されている肌色画像の上にマーカ44を移動させる場合には、CPU35Cがマーカ44で指定される領域に対応する色信号からR、GおよびB信号の平均値を算出し、この領域内の色を肌色に近づけるようにホワイトバランス調整係数を厳密に決定する。
【0031】上述した説明において、CCD74で撮像された画像データのうち、マーカ44で囲まれる矩形領域に対応する色信号からR、GおよびB信号の平均値を算出するようにしたが、マーカ44による領域の形状は矩形でなくても円形、楕円形にしてもよい。
【0032】また、マーカ44で囲まれる領域の形状として、撮影者が任意の形状を指定できるようにしてもよい。
【0033】さらにまた、マーカ44を表示しないでLCDモニタ40に表示されている画像全域に対応するCCD74による色信号からR、GおよびB信号の平均値を算出するようにしてもよい。
【0034】以上の説明では、撮像用のCCD74とホワイトバランス検出センサ86とをそれぞれ有する一眼レフ電子スチルカメラを例にあげて説明したが、両者が兼用される電子スチルカメラに本発明を適用することもできる。電子スチルカメラが撮像用のCCD74とホワイトバランス検出センサ86とを兼用する場合、撮像用のCCD74で撮像される撮像信号を用いて色信号を検出する。この場合には、通常のホワイトバランス調整係数を決定するとき、CCD74で撮像される画面の全域に対応する撮像信号を用いてR、GおよびB各色の色信号をそれぞれ平均し、平均後のR信号、G信号およびB信号の比を1:1:1にするように、ホワイトバランス調整用のRゲインとBゲインとを決定する。また、厳密なホワイトバランス調整係数を決定するとき、CCD74による撮像信号のうち、マーカ44で囲まれる領域に対応する撮像信号を用いてR、GおよびB各色の信号をそれぞれ平均し、平均後のR信号、G信号およびB信号の比を1:1:1にするように、ホワイトバランス調整用のRゲインとBゲインとを決定する。
【0035】撮影者がホワイトバランスボタン46を操作するときにLCDモニタ40に表示されている撮影画像は、レリーズ操作前に逐次撮像されるスルー画像であってもよい。
【0036】特許請求の範囲における各構成要素と、発明の実施の形態における各構成要素との対応について説明すると、色信号が画像データに、CCD74が撮像装置および第1の撮像装置に、LCDモニタ40が表示手段に、CPU21、画像処理CPU29、ズーム(W)ボタン42およびズーム(T)ボタン43がズーム手段に、CPU21および画像処理CPU29が表示制御手段に、マーカ44で囲まれる領域が特定の領域に、CPU21およびエリアセレクトボタン41が入力手段に、画像処理CPU29がゲイン算出手段、ゲイン調整手段および領域表示データ生成手段に、ホワイトバランス検出センサ86が第2の撮像装置に、CPU21が記憶手段および色温度検出手段に、マーカ44が領域表示データ生成手段によって生成されるデータによる画像に、LCD表示部45が色温度表示手段に、それぞれ対応する。
【0037】
【発明の効果】以上詳細に説明したように本発明によれば、次のような効果を奏する。
(1)請求項1〜6に記載の発明では、撮像装置で撮像された画像データの中から電子ズームによって所定の領域を抽出して表示させ、ズーム表示された画像の中で特定の領域を指定し、この領域の画像を所定の色とするようにゲイン調整を行うようにした。したがって、たとえば、表示画像の中で白い領域を指定し、この領域を白くするようにホワイトバランス調整を行うとき、表示画像に占める白の領域が小さい場合に、電子ズームによって白の領域を大きく表示させてから白い領域を指定することができる。この結果、白の領域に隣接して彩度が高い色が存在する場合でも、隣接する色の影響を受けることなく、白の領域の画像データのみを用いて調整ゲインが算出されるから、ホワイトバランス調整係数に調整不良が生じることがなく、高品位のカラー画像を得ることができる。
(2)とくに、請求項2に記載の発明では、少なくとも指定されている特定の領域の表示画像の色が所定の色となるようにゲインを算出するとき、ゲイン算出用の第2の撮像装置による画像データではなく、撮影用の第1の撮像装置による画像データを用いてゲインを算出するようにした。この結果、実際の撮影と同じ被写体光で厳密にホワイトバランス調整係数を決定できるから、色落ち、色かぶりがない高品位のカラー画像を得ることが可能になる。
(3)とくに、請求項3に記載の発明では、指定した特定の領域を中心に電子ズームを行うようにしたので、表示されている特定の領域が電子ズームによって表示画像から外れることがないので、カメラの操作性が向上する。
(4)とくに、請求項4に記載の発明では、算出したゲインを記憶手段に記憶し、このデータを用いてゲイン調整を行うようにしたから、撮像装置で撮像するごとにゲインを算出する必要がない。この結果、撮像するごとにゲインを算出する場合に比べて処理時間を短縮することができる。
(5)とくに、請求項5に記載の発明では、電子ズーム表示されている画像に特定の領域の範囲を示す画像を重ねて表示するようにしたので、たとえば、表示画像の中から白い領域を指定する場合に、白以外の色が特定の領域に含まれるか否かを確認しやすい。この結果、カメラに白の領域の画像データのみを用いた調整ゲインの算出を行わせることができる。
(6)とくに、請求項6に記載の発明では、指定されている特定の領域に対応する画像データから検出した色温度を表示するようにしたので、たとえば、指定されている白い領域の画像データから検出される色温度を撮影者に報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態による一眼レフ電子スチルカメラを説明する図である。
【図2】電子スチルカメラの概要を表すブロック図である。
【図3】ホワイトバランス検出センサのカラーフィルタを説明する図である。
【図4】電子スチルカメラの背面図である。
【図5】電子スチルカメラの背面図である。
【図6】電子スチルカメラの背面図である。
【図7】ホワイトバランス調整係数を厳密に決定する処理の流れを表すフローチャートである。
【符号の説明】
21…CPU、 29…画像処理CPU、30…バッファメモリ、 35…ホワイトバランス検出回路、35C…CPU、 40…LCDモニタ、41…エリアセレクトボタン、 42…ズーム(W)ボタン、43…ズーム(T)ボタン、 44…マーカ、45…LCD表示部、 46…ホワイトバランスボタン、47…領域決定ボタン、 70…カメラ本体、74…CCD、 86…ホワイトバランス検出センサ、90…交換レンズ、 861…カラーフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】被写体像を撮像して画像データを出力する撮像装置と、前記画像データによる画像を表示する表示手段と、前記撮像装置から出力される画像データの中から所定の領域に対応するデータを抽出して電子ズームを行うズーム手段と、前記ズーム手段により抽出されたデータによる画像を表示するように前記表示手段を制御する表示制御手段と、前記表示手段により表示されている表示画像の中で特定の領域を指定する入力手段と、前記特定の領域の表示画像の色が所定の色となるようにゲインを算出するゲイン算出手段と、前記撮像装置から出力される画像データに対して前記ゲイン算出手段により算出された前記ゲインをかけてゲイン調整を行うゲイン調整手段とを備えることを特徴とする電子カメラ。
【請求項2】請求項1に記載の電子カメラにおいて、前記撮像装置は、撮影用の画像データを出力する第1の撮像装置と、前記ゲイン算出用の画像データを出力する第2の撮像装置とを備え、前記ゲイン算出手段は、少なくとも前記入力手段により指定されている前記特定の領域の表示画像の色が所定の色となるようにゲインを算出するとき、前記第1の撮像装置による画像データを用いてゲインを算出することを特徴とする電子カメラ。
【請求項3】請求項1または2に記載の電子カメラにおいて、前記ズーム手段は、前記入力手段によって指定されている領域を中心にして電子ズームを行うことを特徴とする電子カメラ。
【請求項4】請求項1〜3のいずれかに記載の電子カメラにおいて、前記ゲインを記憶する記憶手段をさらに備え、前記ゲイン調整手段は、前記撮像装置から出力される画像データに対して前記記憶手段に記憶されているゲインをかけてゲイン調整を行うことを特徴とする電子カメラ。
【請求項5】請求項1〜4のいずれかに記載の電子カメラにおいて、前記特定の領域の範囲を示す画像を表示するためのデータを生成する領域表示データ生成手段をさらに備え、前記表示制御手段は、前記入力手段による領域指定に連動させて、前記ズーム手段によって抽出されるデータによる画像に対し、前記領域表示データ生成手段によって生成されるデータによる画像を重ねて表示するように前記表示手段を制御することを特徴とする電子カメラ。
【請求項6】請求項1〜5のいずれかに記載の電子カメラにおいて、前記入力手段により指定されている領域に対応して画像データから色温度を検出する色温度検出手段と、前記色温度検出手段により検出された色温度を表示する色温度表示手段とをさらに備えることを特徴とする電子カメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2002−238055(P2002−238055A)
【公開日】平成14年8月23日(2002.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−31026(P2001−31026)
【出願日】平成13年2月7日(2001.2.7)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】