説明

電子内視鏡および電子内視鏡システム

【課題】 電子内視鏡の先端部にセンサ等の検出手段を備えた場合でも、該電子内視鏡の細径化およびノイズの低減を実現可能な電子内視鏡および電子内視鏡システムを提供することを目的とする。
【解決手段】 患者の体内に挿入される挿入部と、プロセッサに接続される接続部とを有する電子内視鏡であって、挿入部の先端に、患者の体内を撮影して画像信号を生成する撮影手段と、挿入部の先端の状態を検出し、検出結果に対応する出力信号を生成する検出手段と、画像信号および出力信号をA/D変換し、画像信号に対応するビット列および出力信号に対応するビット列からなるデジタル信号を出力するA/D変換手段と、A/D変換手段から出力されるデジタル信号をシリアル信号へ変換し、接続部へ出力するシリアライザと、を備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子内視鏡および該電子内視鏡を用いた電子内視鏡システムに関し、特に先端部にセンサなどの検出手段を備える電子内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、先端部に備えられたCCDなどの撮像素子によって観察対象の撮影を行う電子内視鏡と、観察対象を照明するための光を電子内視鏡に供給するとともに、電子内視鏡により撮影された画像を処理してモニタに出力するプロセッサとからなる電子内視鏡システムが知られている。このような電子内視鏡システムは、体腔内の観察や治療処置を行うための医療分野、または工業部品の観察または検査を行うための工業分野において広く実用に供されている。
【0003】
これらの電子内視鏡システムでは、観察を行う箇所が高温である場合や、CCDの駆動状況によって、先端部におけるCCDの温度が上昇してしまうことがある。そして、このようにCCDの温度が上昇することにより、暗電流の増加に伴うノイズが発生し、観察画像の劣化やブラックアウトが生じてしまうという問題があった。さらに、高温になった電子内視鏡の先端部が、観察対象である患者の体腔壁などに接触してしまうなど、安全性の面においても問題となる場合があった。
【0004】
そこで、例えば特許文献1において、電子内視鏡の挿入部の先端に温度センサを配置し、当該温度センサにて検出した温度が所定の温度以上である場合には、自動的に露光時間の調整を行う内視鏡システムが提案されている。このような内視鏡システムによれば、CCDが高温となった場合でも、露光時間の調整によりノイズを低減させ、観察性の良い画像を提供することができる。また、特許文献2にも、特許文献1と同様に、電子内視鏡の挿入部の先端に温度センサを配置した内視鏡システムが開示されている。特許文献2の内視鏡システムでは、温度センサにて検出した温度が所定の温度以上である場合には、警告音と警告表示を発生させることによって、術者に観察の中止を促すことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−323884号公報
【特許文献2】特開2007−151594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特に医療分野にて患者の体内に挿入される電子内視鏡においては、観察中における患者の苦痛を少しでも和らげる観点から、電子内視鏡の挿入部をできるだけ細径とすることが望ましい。しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載される電子内視鏡では、温度センサからの出力信号を伝送するための信号線が、挿入部先端からプロセッサまで延在する構成となっており、その分、電子内視鏡の挿入部の径を太くせざるを得なかった。また、温度センサからの出力信号を伝送する信号線と、CCDからの画像信号を伝送する信号線との干渉によりノイズが発生し、画像劣化が生じてしまうという問題もあった。
【0007】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、電子内視鏡の先端部にセンサ等の検出手段を備えた場合でも、該電子内視鏡の細径化およびノイズの低減を実現可能な電子内視鏡および電子内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明により、患者の体内に挿入される挿入部と、プロセッサに接続される接続部とを有する電子内視鏡であって、挿入部の先端に、患者の体内を撮影して画像信号を生成する撮影手段と、挿入部の先端の状態を検出し、検出結果に対応する出力信号を生成する検出手段と、画像信号および出力信号をA/D変換し、画像信号に対応するビット列および出力信号に対応するビット列からなるデジタル信号を出力するA/D変換手段と、A/D変換手段から出力されるデジタル信号をシリアル信号へ変換し、接続部へ出力するシリアライザと、を備えることを特徴とする電子内視鏡が提供される。
【0009】
このように構成することにより、電子内視鏡の挿入部先端にて画像信号および出力信号をデジタル信号へと変換した上で接続部へ伝送することができ、直接アナログ信号を伝送させる場合に比べ、伝送による画像信号の劣化を低減することが可能となる。また、画像信号と出力信号とのビット列を含むよう変換されたデジタル信号を、さらにシリアル信号に変換してから、接続部へと出力する構成とすることで、挿入部の可撓管を通る信号線の数を減らすことができ、細径化を実現することが可能となる。さらに、複数の信号線間のノイズ干渉を防ぐことができ、ノイズの少ない観察画像を提供することができる。
【0010】
また、上記A/D変換手段から出力されるデジタル信号の上位ビットが画像信号に対応し、下位ビットが出力信号に対応する、または、下位ビットが画像信号に対応し、上位ビットが出力信号に対応するものであっても良い。このように構成することにより、後段の処理において、容易に各信号を分離することが可能となる。
【0011】
また、上記電子内視鏡は、挿入部の先端に、画像信号および出力信号に対して、画像信号および出力信号がそれぞれ異なる範囲の出力値をとるようにバイアスをかけるためのバイアス回路と、バイアスがかけられた画像信号および出力信号を加算する加算回路と、を更に備える構成としても良い。そして、この場合、上記デジタル信号は、A/D変換手段によって加算回路にて加算された信号がA/D変換されることによって得られるものであっても良い。このように構成することにより、挿入部の先端にて取得された各アナログ信号を、画像信号に対応するビット列および出力信号に対応するビット列からなるデジタル信号へと変換することが可能となる。
【0012】
また、上記A/D変換手段は、画像信号をA/D変換するための第1のA/D変換部、および出力信号をA/D変換するための第2のA/D変換部からなる構成としても良い。そして、この場合、上記デジタル信号は、第1のA/D変換部によってA/D変換された信号、および第2の変換部によってA/D変換された信号とからなるものであっても良い。このように構成することにより、挿入部の先端にて取得された各アナログ信号を、画像信号に対応するビット列および出力信号に対応するビット列からなるデジタル信号へと変換することが可能となる。
【0013】
また、上記接続部は、シリアル信号をデシリアライズして、画像信号および出力信号に分離するデシリアライザと、画像信号に所定の画像処理を施して映像信号を生成する画像信号処理手段とを備える構成としても良い。このように構成することにより、接続部にてシリアル信号から画像信号および出力信号を分離することが可能となる。
【0014】
また、上記接続部は、出力信号に基づいて、プロセッサに通知信号を送信する通知信号送信手段を更に備える構成としても良い。このように構成することにより、検出手段による検出結果に基づく種々の情報をプロセッサ20に通知することが可能となる。これにより、観察部位周辺の様々な状況に対応して、より詳細な診断および処理を行うことが可能となる。
【0015】
また、上記検出手段は、挿入部の先端の温度を検出するための温度センサであり、通知信号送信手段は、出力信号に基づいて、挿入部先端の温度が所定の温度以上である場合に、プロセッサにその旨を通知する通知信号を送信する構成としても良い。このように構成することにより、挿入部先端の温度が所定の温度以上となった場合は、プロセッサにて術者に注意を喚起するためのメッセージをモニタに表示させたり、自動的に先端を冷却するためのさまざまな処理を行うことが可能となる。
【0016】
また、本発明により、上記いずれかに記載の電子内視鏡と、電子内視鏡に照明光を供給するための光源と、映像信号に所定の処理を施してモニタ表示可能なビデオ信号に変換する映像信号処理手段と、ビデオ信号に対応する画像を表示するモニタと、通知信号を受信した場合に、通知信号に対応したメッセージをモニタに表示させる表示制御手段と、を備えることを特徴とする電子内視鏡システムが提供される。
【発明の効果】
【0017】
したがって、本発明によれば、電子内視鏡の先端にセンサ等の検出手段を備えた場合でも、該電子内視鏡の細径化およびノイズの低減を実現可能な電子内視鏡および電子内視鏡システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態における電子内視鏡システムの概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態におけるシリアライザの入力について説明するための図である。
【図3】本発明の第2の実施形態における電子内視鏡システムの概略構成図である。
【図4】本発明の第2の実施形態におけるシリアライザの入力について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1の実施形態における電子内視鏡システム1の概略構成を示す図である。本実施形態の電子内視鏡システム1は、電子内視鏡10、プロセッサ20およびモニタ30から構成される。本実施形態の電子内視鏡システム1は、患者の体内における観察および処置を行うための医療用の電子内視鏡システムである。
【0021】
電子内視鏡10は、患者の体内に挿入される挿入部100およびプロセッサ20に電気的および光学的に接続される接続部130からなる。また、挿入部100は、長尺の可撓管120および可撓管120の先端に設けられた先端部110からなる。電子内視鏡10の接続部130から先端部110まで、プロセッサ20から供給される光を伝搬するためのライトガイド111が延在している。また、先端部110には、ライトガイド111にて伝搬された光を観察部位に射出するための配光レンズ112、観察部位で反射された光を撮像素子の受光面に結像させるための対物レンズ114、受光面に結像された被写体像に基づいてアナログ画像信号を生成する固体撮像素子であるCCD113が配置される。
【0022】
また、本実施形態の電子内視鏡10は、CCD113の近傍に先端部110の温度を検出するための温度センサ115を備えている。さらに、電子内視鏡10の先端部110には、CCD113にて生成されるアナログ画像信号および温度センサ115から出力されるアナログ出力信号に対してそれぞれバイアスをかけるためのバイアス回路116aおよび116b、バイアス回路116aおよび116bから出力される各アナログ信号を加算して、A/D変換部118へ出力する加算回路117、加算されたアナログ信号をデジタル信号へと変換するA/D変換部118、ならびにA/D変換部118にて変換されたデジタル信号をシリアル信号へと変換するシリアライザ119が備えられている。
【0023】
また、電子内視鏡10の接続部130には、シリアライザ119から可撓管120を通って伝送されるシリアル信号を、元の信号(パラレルのデジタル信号)へと変換するためのデシリアライザ131、デシリアライザ131にて変換されたデジタル画像信号に所定の画像処理を施して映像信号を生成する前段処理部132、前段処理部132にて生成された映像信号をアナログ信号へ変換してプロセッサ20の後段処理部204へと出力するD/A変換部133、デシリアライザ131にて変換されたデジタル出力信号に基づいて、プロセッサ20のシステムコントローラ201と通信を行うCPU134、電子内視鏡10の機種情報等を記憶するEEPROM135、および先端部110におけるA/D変換部118に所定のパルス信号を供給するタイミングジェネレータ136が備えられている。
【0024】
プロセッサ20は、プロセッサ20全体を統括制御するシステムコントローラ201、電子内視鏡10に供給する観察光を発生する光源202、光源202から照射された光を収束して電子内視鏡10のライトガイド111に結合させる集光レンズ203、および電子内視鏡10から受信した映像信号に対して所定の処理を施してビデオ信号を生成し、モニタ30へ出力する後段処理部204を備えている。また、モニタ30は、後段処理部204によって生成されたビデオ信号に対応する被写体像を表示する表示装置である。
【0025】
次に、電子内視鏡システム1における体内観察の流れとともに、電子内視鏡システム1の各部の動作について説明する。まず、術者によってプロセッサ20の電源が投入され、システムコントローラ201の制御の下、光源202が点灯されると、電子内視鏡10の挿入部100が患者の体内に導入される。光源202は、キセノンランプやハロゲンランプなどの高輝度ランプで構成される。そして、光源202から照射された光は、集光レンズ203を介して電子内視鏡10に設けられたライトガイド111の入射端に入射する。ライトガイド111の入射端に入射した光は、接続部130および可撓管120を通って先端部110に配置される配光レンズ112から、体内の観察部位に射出される。そして、射出された光が観察部位によって反射され、対物レンズ114を介してCCD113の受光面に結像される。
【0026】
本実施形態では、カラー撮像方式として単板同時式が適用されており、CCD113の受光面上にはイエロー(Ye)、シアン(Cy)、マゼンタ(Mg)、グリーン(G)の各色要素が市松模様状に並べられた補色カラーフィルタ(図示せず)が受光面の各画素に対応して配置されている。そして、CCD113では、補色カラーフィルタを透過した光の強度に応じた画像信号が光電変換により発生し、所定時間間隔ごとに1フレーム分の画像信号が、色差線順次方式によって順次読み出される。本実施形態では、インターライン・トランスファ方式のCCDが使用されており、NTSC方式の垂直同期周波数に対応して、例えば1/30秒間隔ごとに1フレーム分のアナログ画像信号が順次読み出され、バイアス回路116aへと出力される。
【0027】
また、CCD113によるアナログ画像信号の生成と並行して、温度センサ115では、先端部110の温度が検出される。温度センサ115は、ICタイプの温度センサであり、検出された温度に対応した電圧値をアナログ出力信号として、バイアス回路116bに出力する。
【0028】
バイアス回路116aおよびバイアス回路116bでは、入力されるアナログ信号が所定の出力範囲になるように、バイアスがかけられる。ここでは、後述するシリアライザ119への入力に備え、CCD113から出力されるアナログ画像信号と、温度センサ115から出力されるアナログ出力信号とが、それぞれ異なる出力範囲の値をとるように、各バイアス回路116aおよび116bにて所定のバイアスがかけられる。
【0029】
バイアス回路116aおよび116bでの処理について、具体的な例を挙げて説明する。例えばA/D変換部118の入力レンジが0V〜+10Vの場合、バイアス回路116aでは、CCD113によって生成されたアナログ画像信号に対して、出力値が0V〜+3Vの範囲の値をとるように、所定のバイアス電圧が加えられる。この場合のバイアス電圧は、CCD113の定格出力電圧によって適宜設定される。また、バイアス回路116bでは、温度センサ115から出力されるアナログ出力信号に対して、出力値が+3V〜+7vの範囲の値をとるように、所定のバイアス電圧が加えられる。この場合のバイアス電圧も、温度センサ115の定格出力電圧によって適宜設定される。このように、A/D変換部118の入力レンジや、CCD113および温度センサ115の定格に基づいて、各パラメータが任意に設定される。
【0030】
そして、バイアス回路116aおよび116bによってバイアスがかけられた各アナログ信号は、加算回路117にて加算され、A/D変換部118に出力される。A/D変換部118では、入力されるアナログ信号に対してA/D変換を行い、デジタル信号へと変換する。詳しくは、A/D変換部118は、タイミングジェネレータ136から供給されるクロックパルスに応じた所定のサンプリング周波数および所定のビット数(例えば12ビット)でアナログ信号のサンプリングおよび量子化を行う。そして、A/D変換部118にて変換された12ビットのデジタル信号は、シリアライザ119へ出力される。
【0031】
図2は、シリアライザ119に入力されるデジタル信号について説明するための図である。上述のように、A/D変換部118には、アナログ画像信号およびアナログ出力信号が加算された信号が入力される。そして、アナログ画像信号およびアナログ出力信号は、それぞれが異なる所定の範囲の電圧値をとるようにバイアスがかけられている。そのため、A/D変換部118から出力される12ビットのデジタル信号において、下位5ビット(すなわち0V〜+3Vに対応するビット)はCCD113によって生成された画像信号を示し、上位7ビット(+3V〜+7Vに対応するビット)は温度センサ115からの出力信号を示す。これにより、図2に示されるように、A/D変換部118の出力ピン0〜4からはアナログ画像信号に対応するデジタルビットデータが出力され、出力ピン5〜11からは、アナログ出力信号に対応するデジタルビットデータが出力され、シリアライザ119の入力ピン0〜11にそれぞれ入力される。尚、バイアス回路等におけるパラメータを変更することで、シリアライザ119に入力される12ビットのデジタル信号において、上位5ビットをCCD113によって生成された画像信号とし、下位7ビットを温度センサ115からの出力信号とするなど、任意にビット列の配分を変更することが可能である。
【0032】
そして、シリアライザ119では、入力される12ビットのデジタル信号が時間的に連続する1ビットのシリアル信号に変換される。そして、変換されたシリアル信号は、可撓管120を通る信号線内を伝送され、接続部130のデシリアライザ131に入力される。
【0033】
シリアル信号が入力されるデシリアライザ131では、シリアライザ119における処理とは逆の処理が施される。すなわち、時間的に連続する1ビットのシリアル信号がそれぞれ12ビットで構成されるデジタル信号へと変換される。また、この12ビットのデジタル信号において、下位5ビットはCCD113によって生成された画像信号に対応し、上位7ビットは温度センサ115から出力された出力信号に対応する。そのため、デシリアライザ131では、さらに、12ビットのデジタル信号を、5ビットの画像信号と7ビットの出力信号とに分離する処理が行われる。具体的には、デシリアライザ131によってデシリアライズされた12ビットのパラレルのデジタル信号の内、下位5ビットが0〜31の値をとる画像信号として前段処理部132へ出力され、上位7ビットが0〜127の値をとる7ビットの出力信号としてCPU134へ出力される。
【0034】
続いて、前段処理部132では、入力される画像信号に対して所定の処理を施して色差信号および輝度信号を含む映像信号が生成される。所定の処理には、例えば、マトリックス処理、色毎のゲイン調整や解像度調整、ホワイトバランスやブラックバランスの調整、ガンマ補正、エンハンス処理等がある。前段処理部132にて生成された映像信号は、D/A変換部133に出力される。D/A変換部133では、入力される映像信号がアナログ信号へと変換され、プロセッサ20の後段処理部204へ出力される。
【0035】
プロセッサ20の後段処理部204では、受信した映像信号における輝度信号成分に、ノイズリダクション処理等が施され、ノイズが低減された輝度信号、色差信号および復号同期信号を多重したNTSC方式のコンポジットビデオ信号などのビデオ信号が生成される。そして、当該ビデオ信号は、プロセッサ20からモニタ30へ出力され、モニタ30にて、ビデオ信号に対応する被写体像が表示される。これにより術者や診断者は、モニタ30に映し出される被写体像から、患者の体腔内の状態を観察したり、被写体像を参照しながら処置を行ったりすることができる。
【0036】
一方、CPU134では、得られた温度センサ115の出力信号に基づいて、先端部110の温度を算出する。そして、CPU134は、算出した温度が、所定の温度以上であるか否かの判定を行う。判定に用いられる所定の温度は、CCD113の温度特性や、安全性の面を考慮して適宜設定され(例えば60度)、予めEEPROM135に記憶されている。そして、先端部110の温度が所定の温度以上である場合は、CPU134は、プロセッサ20のシステムコントローラ201に対して、先端部110の温度が所定温度以上であることを通知するための通知信号を送信する。
【0037】
そして、システムコントローラ201では、CPU134から当該通知信号を受信すると、モニタ30に、術者に電子内視鏡10の先端部110が高温であることを通知するためのメッセージを表示させる。これにより、先端部110の温度が所定の温度以上となった場合は、術者に注意を喚起し、観察の中止等を促すことが可能となる。また、その他にも、先端部110の温度が所定の温度以上である場合には、例えば、電子内視鏡10が備えるウォータージェット(不図示)を動作させて、先端部110から水を排出することで先端部110の温度を下げる構成としても良い。さらに、CCD113の駆動周波数を下げる、または光源202から照射される観察光の光量を下げる、などの処理を行うことも可能である。これにより、先端部110の温度が高くなった場合には、自動的に先端部110の温度を下げることができる。
【0038】
上述のように、本実施形態においては、CCD113によって生成された画像信号および温度センサ115からの出力信号を、先端部110にてデジタル信号へと変換した上で接続部130へ伝送する構成となっている。このように、デジタル信号を可撓管120内に伝送させることにより、直接アナログ信号を伝送させる場合に比べ、伝送による画像信号の劣化を低減することが可能となる。
【0039】
また、本実施形態では、デジタル信号への変換前に、アナログ出力信号およびアナログ画像信号に対して、それぞれが異なる出力範囲の電圧値となるようにバイアスをかけて、加算する構成となっている。そして、この加算信号をデジタル変換することにより、アナログ出力信号およびアナログ画像信号にそれぞれ対応するビット列を含むデジタル信号を得ることが可能となる。さらに、このように変換されたデジタル信号をシリアル信号に変換してから、可撓管120内を伝送させる構成とすることで、可撓管120を通る信号線の数を減らすことができ、細径化を実現することが可能となる。また、複数の信号線間のノイズ干渉を防ぐことができ、ノイズの少ない観察画像を提供することも可能となる。
【0040】
続いて、本発明の第2の実施形態における電子内視鏡システム1aについて説明する。図3は、本実施形態の電子内視鏡システム1aの概略構成を示す図である。本実施形態の電子内視鏡システム1aは、電子内視鏡10の先端部110aに、第1の実施形態におけるバイアス回路116aおよび116b、ならびに加算回路117に換えて、2つのA/D変換部118aおよび118bを備えている。尚、A/D変換部118aおよび118b以外の構成については、第1の実施形態における電子内視鏡システム1と同じであるため、電子内視鏡システム1と同じ構成要素については、図1と同様の参照番号を付し、詳細な説明を省略する。
【0041】
本実施形態における体内観察は、第1の実施形態と略同様の流れで行なわれる。ただし、本実施形態においては、CCD113によって生成されたアナログ画像信号は、A/D変換部118aに出力される。そして、A/D変換部118aにて、タイミングジェネレータ136から供給されるクロックパルスに応じた所定のサンプリング周波数および所定のビット数(例えば8ビット)でアナログ信号のサンプリングおよび量子化が行なわれ、8ビットのデジタル信号が出力される。
【0042】
また、アナログ画像信号の生成と並行して、温度センサ115から先端部110aの温度に対応するアナログ出力信号が生成され、A/D変換部118bに出力される。そして、A/D変換部118bにて、タイミングジェネレータ136から供給されるクロックパルスに応じた所定のサンプリング周波数および所定のビット数(例えば8ビット)でアナログ信号のサンプリングおよび量子化が行なわれ、8ビットのデジタル信号が出力される。A/D変換部118aおよび118bにて変換された各デジタル信号は、シリアライザ119へ出力される。
【0043】
図4は、シリアライザ119に入力されるデジタル信号について説明するための図である。本実施形態では、A/D変換部118aにて変換されたデジタル信号およびA/D変換部118bにて変換されたデジタル信号の両方が、シリアライザ119の1つの入力ポートを分割して入力される。詳しくは、図4に示されるように、シリアライザ119の入力ピン0〜7に、A/D変換部118aから出力される8ビットのデジタル信号が入力され、シリアライザ119の入力ピン8〜15に、A/D変換部118bから出力される8ビットのデジタル信号が入力される。これにより、CCD113によって生成された画像信号、および温度センサ115から出力される出力信号に対応するデジタル信号が、16ビットで表わされる1つのデジタル信号としてシリアライザ119に入力される。尚、上記例においては、シリアライザ119に入力される16ビットのデジタル信号において、下位8ビットをCCD113によって生成された画像信号とし、上位8ビットを温度センサ115からの出力信号としたが、シリアライザ119への入力を入れ替えることにより、上位8ビットをCCD113によって生成された画像信号とし、下位8ビットを温度センサ115からの出力信号とすることもできる。
【0044】
続いて、シリアライザ119では、16ビットのデジタル信号が時間的に連続する1ビットのシリアル信号に変換される。そして、変換されたシリアル信号は、可撓管120を通る信号線内を伝送され、接続部130のデシリアライザ131に入力される。その後、デシリアライザ131にて、時間的に連続する1ビットのシリアル信号がそれぞれ16ビットで構成されるデジタル信号へと変換される。また、この16ビットのデジタル信号において、下位8ビットはCCD113によって生成された画像信号であり、上位8ビットは温度センサ115からの出力信号である。そのため、デシリアライザ131では、さらに、16ビットのデジタル信号を画像信号と出力信号とに分離する処理が行われる。
【0045】
そして、デシリアライザ131にて分離された画像信号は、前段処理部132へ出力され、映像信号へと変換されて、D/A変換部133を介してプロセッサ20へ出力される。一方、デシリアライザ131にて分離された温度センサ115からの出力信号は、CPU134へ出力され、CPU134にて算出された温度に基づいて、第1の実施形態と同様の通知処理等が行なわれる。
【0046】
このように、本実施形態においても、CCD113によって生成された画像信号および温度センサ115からの出力信号を、先端部110aにてデジタル信号へと変換した上で接続部130へ伝送することにより、直接アナログ信号を伝送させる場合に比べ、伝送による画像信号の劣化を低減することが可能となる。また、本実施形態では、出力信号および画像信号をA/D変換部118aおよび118bにて別々にA/D変換し、各デジタル信号をシリアライザ119の入力ポートを分割して1つのデジタル信号として入力させる構成となっている。これにより、アナログ出力信号およびアナログ画像信号にそれぞれ対応するビット列を含むデジタル信号をシリアル信号に変換することができ、可撓管120を通る信号線の数を減らすことができる。また、本実施形態においては、出力信号および画像信号にそれぞれバイアスや加算等の処理を行なう必要がないため、信号の劣化をさらに防ぐことができる。
【0047】
以上が本発明の実施形態であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態においては、
電子内視鏡10の先端部110に温度センサ115を備えて先端部110の温度を検出する構成としたが、そのほかにもPHセンサ、圧力センサ、加速度センサなど、種々のセンサを備えることも可能である。この場合、CPU134は、これらのセンサの出力信号を受信し、出力信号に対応した測定値やメッセージをモニタ30に表示させるように、システムコントローラ201へ通知信号を送信することができる。このように種々のセンサを観察部位に接近した先端部110に備えることにより、観察部位周辺の様々な状況を検出することができ、より詳細な診断を行うことが可能となる。
【0048】
さらに、電子内視鏡10の先端部110にこれらのセンサを複数備えることも可能である。このように複数のセンサを備えた場合は、A/D変換部118における出力ポートを更に分割する、または複数のA/D変換部を備えるような構成とすれば良い。このように構成することで、画像信号に影響を与えることなく、センサの出力信号を送信することが可能となるだけでなく、可撓管120を通る信号線を増やす必要もなく、細径化を維持したままで、複数のセンサからの出力信号を送信することが可能となる。
【0049】
また、上記実施形態では、電子内視鏡10の接続部130にデシリアライザ131やタイミングジェネレータ136などの各処理部を備える構成としたが、これらの処理部をプロセッサ20に備える構成としても良い。この場合、シリアライザ119から出力されるシリアル信号をそのままプロセッサ20へと伝送することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 電子内視鏡システム
10 電子内視鏡
100 挿入部
110 先端部
115 温度センサ
116a、116b バイアス回路
117 加算回路
118 A/D変換部
119 シリアライザ
120 可撓管
130 接続部
131 デシリアライザ
132 前段処理部
134 CPU
136 タイミングジェネレータ
20 プロセッサ
201 システムコントローラ
202 光源
204 後段処理部
30 モニタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体内に挿入される挿入部と、プロセッサに接続される接続部とを有する電子内視鏡であって、
前記挿入部の先端に、
前記患者の体内を撮影して画像信号を生成する撮影手段と、
前記挿入部の先端の状態を検出し、検出結果に対応する出力信号を生成する検出手段と、
前記画像信号および前記出力信号をA/D変換し、前記画像信号に対応するビット列および前記出力信号に対応するビット列からなるデジタル信号を出力するA/D変換手段と、
前記A/D変換手段から出力される前記デジタル信号をシリアル信号へ変換し、前記接続部へ出力するシリアライザと、を備えることを特徴とする電子内視鏡。
【請求項2】
前記A/D変換手段から出力されるデジタル信号の上位ビットが前記画像信号に対応し、下位ビットが前記出力信号に対応することを特徴とする、請求項1に記載の電子内視鏡。
【請求項3】
前記A/D変換手段から出力されるデジタル信号の下位ビットが前記画像信号に対応し、上位ビットが前記出力信号に対応することを特徴とする、請求項1に記載の電子内視鏡。
【請求項4】
前記電子内視鏡は、前記挿入部の先端に、
前記画像信号および前記出力信号に対して、前記画像信号および前記出力信号がそれぞれ異なる範囲の出力値をとるようにバイアスをかけるためのバイアス回路と、
前記バイアスがかけられた画像信号および出力信号を加算する加算回路と、を更に備え、
前記デジタル信号は、A/D変換手段によって前記加算回路にて加算された信号がA/D変換されることによって得られることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電子内視鏡。
【請求項5】
前記A/D変換手段は、前記画像信号をA/D変換するための第1のA/D変換部、および前記出力信号をA/D変換するための第2のA/D変換部からなり、
前記デジタル信号は、前記第1のA/D変換部によってA/D変換された信号、および前記第2の変換部によってA/D変換された信号とからなることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電子内視鏡。
【請求項6】
前記接続部は、
前記シリアル信号をデシリアライズして、前記画像信号および前記出力信号に分離するデシリアライザと、
前記画像信号に所定の画像処理を施して映像信号を生成する画像信号処理手段と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電子内視鏡。
【請求項7】
前記接続部は、前記出力信号に基づいて、前記プロセッサに通知信号を送信する通知信号送信手段を更に備えることを特徴とする請求項6に記載の電子内視鏡。
【請求項8】
前記検出手段は、前記挿入部の先端の温度を検出するための温度センサであり、
前記通知信号送信手段は、前記出力信号に基づいて、前記挿入部先端の温度が所定の温度以上である場合に、前記プロセッサにその旨を通知する通知信号を送信することを特徴とする請求項7に記載の電子内視鏡。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の電子内視鏡と、
前記電子内視鏡に照明光を供給するための光源と、
前記映像信号に所定の処理を施してモニタ表示可能なビデオ信号に変換する映像信号処理手段と、
前記ビデオ信号に対応する画像を表示するモニタと、
前記通知信号を受信した場合に、前記通知信号に対応したメッセージを前記モニタに表示させる表示制御手段と、を備えることを特徴とする電子内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−36585(P2011−36585A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189007(P2009−189007)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】