説明

電子回路モジュール、プロジェクタ

【課題】発熱部品を備える電子回路モジュールにおける、放熱効率を向上させる技術を提供する。
【解決手段】 発熱部品を備え、風によって発熱部品を放熱させる電子回路モジュールであって、発熱部品に当接して配置され、発熱部品を放熱させる、平板状の放熱板と、放熱板の、発熱部品と当接する面と反対側の面と対向する、対向面と、放熱板と対向面との間に配置され、その間を通る風の流速を、その周辺部において速くする突起部と、を備える、電子回路モジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱部品を備える電子回路モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電源ユニットやバラストユニット等の電子回路モジュールにおいて、パワーFET(Field effect transistor)等の発熱量が多い発熱部品は、板状のヒートシンク(放熱板)に取り付けられる場合がある。従来より、冷却ファンによって、強制的に、電子回路モジュール外の空気を電子回路モジュール内に流入させて、その風によりヒートシンクの熱を奪って、ヒートシンクを介して、発熱部品を放熱させている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−128402号公報
【特許文献2】特開2006−210516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、このような電源ユニットやバラストユニットを備える装置(例えば、プロジェクタ)の小型化、軽量化の要請により、電源ユニットやバラストユニットの小型化、軽量化が望まれている。そのため、冷却ファンを小さくすることが検討されているが、冷却ファンを小さくすると、従来の冷却性能が得られないおそれがある。
【0005】
なお、このような問題は、電源ユニットやバラストユニット等の、電力供給装置に限らず、冷却ファンを用いて強制的に空冷させる、発熱部品を備える電子回路モジュールに共通する問題であった。
【0006】
そこで、本発明は、上記の従来技術の課題に鑑みて、発熱部品を備える電子回路モジュールにおける、放熱効率を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1] 発熱部品を備え、風によって前記発熱部品を放熱させる電子回路モジュールであって、
前記発熱部品に当接して配置され、前記発熱部品を放熱させる、平板状の放熱板と、
前記放熱板の、前記発熱部品と当接する面と反対側の面と対向する、対向面と、
前記放熱板と前記対向面との間に配置され、その間を通る風の流速を、その周辺部において速くする突起部と、
を備える、電子回路モジュール。
【0009】
放熱板と前記対向面との間に生成される風の流速を速くすると、放熱板と周囲空気間の熱抵抗が低下して放熱板から空気への熱伝達がスムーズになる。ここで、熱抵抗とは、熱が移動している2点間の1W当たりの温度差をいい、熱の伝わり易さを表している。単位は、(℃/W)または、(K/W)である。
【0010】
そのため、突起部を設けると、その周辺部において、放熱板と対向面との間を流れる空気の流速が部分的に上昇し、その部分の、放熱板と周囲空気間の熱抵抗が低下するため、電子回路モジュールの放熱効率を向上させることができる。したがって、発熱部品は、放熱板を介して放熱しやすくなり、電子回路モジュールにおける放熱効率を向上させることができる。
【0011】
[適用例2] 適用例1に記載の電子回路モジュールにおいて、
前記突起部は、前記発熱部品の近傍に配置される、電子回路モジュール。
【0012】
突起部が、発熱部品の近傍に配置されていると、放熱板と周囲空気間の熱抵抗は、発熱部品の近傍の領域において低下する。そのため、発熱部品を効率よく放熱させることができ、電子回路モジュールにおける放熱効率を向上させることができる。
【0013】
[適用例3] 適用例1または2に記載の電子回路モジュールにおいて、
前記突起部は、前記対向面上に配置されることを特徴とする電子回路モジュール。
【0014】
このようにすると、例えば、対向面を形成する際に、対向面と一体的に突起部を形成することにより、容易に突起部を形成することができる。
【0015】
[適用例4] 適用例1ないし3のいずれか1つに記載の電子回路モジュールにおいて、
前記突起部は、略円錐台形状を成す、電子回路モジュール。
【0016】
突起部の形状を略円錐台形状にすると、例えば、平板状(リブ状)、円柱状、四角柱状に形成する場合と比べると、圧力損失が小さくなるため、突起部を平板状等にする場合に比べて、放熱板と対向面との間を流れる風の流量(単位時間当たりの体積)の低下を抑制することができる。
【0017】
なお、本発明は、上記した電子回路モジュールの態様に限ることなく、その電子回路モジュールで構成される電力供給装置、その電力供給装置を備えるプロジェクタなどの態様で実現することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて、以下の順序で説明する。
A.実施例:
A−1.実施例の構成:
A−1−1.電源ユニットの構成:
A−2.ケース内の風の流れ:
A−3.ケース内の風の流速:
A−4.実施例の効果
B.変形例:
【0019】
A.実施例:
A−1.実施例の構成
図1は、本発明のプロジェクタ1000の構成を示すブロック図である。図示するように、プロジェクタ1000は、電源ユニット100と、バラストユニット200と、冷却部300と、制御部400と、光源ランプ500と、液晶パネル600と、投写レンズ700と、を備える。本実施例における電源ユニット100が、請求項における電子回路モジュールおよび電力供給装置に相当する。
【0020】
電源ユニット100は、AC100V等の商用電源を入力して、プロジェクタ1000の各種動作に必要な直流の電源電圧を生成する。バラストユニット200は、光源ランプ500を駆動させるための光源駆動電力を生成する。
【0021】
冷却部300は、冷却ファン310と、冷却ファン制御部320と、を備える。冷却ファン310は、後述するように、電源ユニット100に当接して配置され、電源ユニット100内に風を送り込み、電源ユニット100を、強制的に冷却する。冷却ファン310は、電源ユニット100によって生成されたファン駆動電力によって動作する。本実施例において、冷却ファン310として、軸流ファンを用いているが、その他、シロッコファン等を用いてもよい。冷却ファン制御部320は、図示せざる温度センサによって検出された、電源ユニット100内の温度に基づいて、冷却ファン310の回転数を制御している。本実施例における冷却ファン310が、請求項における冷却ファンに相当する。
【0022】
制御部400は、CPU410と、画像処理部420と、メモリ430と、を主に備える。CPU410は、メモリ430に格納されたコンピュータプログラムに従って種々の処理や制御を行う。画像処理部420は、例えば、外部接続用コネクタ(図示しない)に接続されたPC、DVDプレイヤー、外部メモリ等、外部から与えられた画像データに対して、画像処理を施して、処理済み画像データを、液晶パネル600に供給する。制御部400は、電源ユニット100によって生成された動作電力によって動作する。本実施例における制御部400が、請求項における制御部に相当する。
【0023】
光源ランプ500は、液晶パネル600に光を照射するものであって、バラストユニット200で生成された光源駆動電力により点灯動作を行なう。液晶パネル600は、透過型の液晶パネルであって、画像処理部420から与えられる画像データを用いて、光源ランプ500から射出された光を変調し、画像を表す光を射出する。投写レンズ700は、液晶パネル600から射出された光をスクリーン(図示しない)上に投写し、この結果、スクリーン上に画像が表示される。本実施例における光源ランプ500が、請求項における光源に相当する。
【0024】
A−1−1.電源ユニットの構成:
図2は、電源ユニット100の構成を概略的に示す平面図、図3は、電源ユニットの構成を概略的に示す立面図、図4は、発熱部品および突起部の配置を示す説明図である。図2は、電源ユニット100を、後述する上面193側から見て、各部品の配置を示している。図3は、電源ユニット100を冷却ファン310から見て示している。電源ユニット100は、図2、3に示すように、プリント回路板110と、放熱板120と、ケース190と、突起部192a〜192hと、を備える。そして、図2に示すように、電源ユニット100の吸気口側に、冷却ファン310が配置されている。
【0025】
プリント回路板110は、図2〜4に示すように、プリント配線板111の第1の面111fに、トランス112、コンデンサ114、コイル115、およびコイル113が配置され、プリント配線板111の第2の面111sに、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)116、117、118、およびブリッジダイオード119が配置されている。MOSFET116、117、118、およびブリッジダイオード119は、第1の面111fに配置されている部品に対して、発熱量が多い。
【0026】
そこで、本実施例では、MOSFET116、117、118、およびブリッジダイオード119を、第2の面111sに集めて配置し、かつ、MOSFET116、117、118、およびブリッジダイオード119に当接させて放熱板120を、配置している。本実施例におけるMOSFET116、117、118、およびブリッジダイオード119が、請求項における発熱部品に相当する。MOSFET116、117、118、およびブリッジダイオード119(以下、まとめて発熱部品116〜119ともいう。)は、放熱板120にねじ留めされた後、プリント配線板111に実装される。
【0027】
放熱板120は、熱伝導率の高いアルミニウム製の平板である。上記したように、発熱部品116〜119は、放熱板120にねじ留めされているため、発熱部品116〜119の熱の一部は、放熱板120を介して放熱される。詳しくは、発熱部品116〜119の熱は、放熱板120と接触している面から、放熱板120に伝導によって伝わり、さらに、放熱板120の表面から空気に、放射(輻射)と対流(伝達)によって伝わる。
【0028】
本実施例において、図2に示すように、電源ユニット100の吸気口側には、冷却ファン310が配置されており、電源ユニット100内に、空気を送り込んで風を流す。放熱板120に伝わった熱は、放熱板120とケース190との間を流れる風によって、放熱される。なお、本実施例において、放熱板120の材料として、アルミニウムを用いているが、その他、例えば、銅等の熱伝導率の高い材料を用いてもよい。
【0029】
ケース190は、図3に示すように、放熱板120と対向する底面191と、プリント配線板111と対向する上面193と、プリント配線板111および放熱板120に対して垂直に配置される側面194、195と、を備え、開口形状が略長方形の筒状を成す。図2に示すように、筒状を成すケース190の一方の開口が吸気口、他方の開口が排気口として、機能している。本実施例における底面191が、請求項における対向面に相当する。
【0030】
そして、図示するように、底面191には、複数の略円錐台状を成す突起部192a〜192hが形成されている(突起部192f〜192hは、突起部192a〜192cに隠れて見えない)。図4に、破線で示すように、突起部192a〜192hは、発熱部品116〜119の近傍に設けられている。
【0031】
詳しくは、発熱部品116の近傍に、突起部192a、192b、192cが、x軸に平行に1列に、底面191のx軸方向の長さを4等分するように、均等に配置されている。そして、発熱部品118の近傍に、突起部192d、192eが、x軸に平行に1列に配置されている。突起部192dは、そのx軸方向の位置が、突起部192aと突起部192bとの間になるように配置され、突起部192eは、そのx軸方向の位置が、突起部192bと突起部192cとの間になるように配置されている。また、発熱部品119の近傍に、突起部192f、192g、192hが、x軸に平行に1列に、底面191のx軸方向の長さを4等分するように、均等に配置されている。すなわち、突起部192f、192g、192hのx軸方向の位置は、突起部192a、192b、192cと、それぞれ一致する。このように、突起部192a〜192fは、互い違いに配置されているといえる。
【0032】
本実施例において、突起部192a〜192hは、ケース190を成形する際に、底面191に一体的に形成されている。なお、本実施例において、ケース190の材料としては、ポリスチレン変性ポリフェニレンエーテル(PPE+PS)を用いているが、その他の耐熱性の高い樹脂を用いてもよい。
【0033】
A−2.ケース内の風の流れ:
図2に示すように、筒状を成すケース190の吸気口側には、冷却ファン310が配置されている。冷却ファン310によって、ケース190内に空気が送り込まれると、ケース190内に、図2に矢印で示すように、一定の方向に、すなわち、吸気口から排気口に向かって、風が流れる。プリント配線板111と上面193との間、プリント配線板111と放熱板120との間、放熱板120と底面191との間には、それぞれに、全体として、図2に矢印で示すように、吸気口から排気口に向かう流れの風が生じる。なお、本実施例において、冷却ファン310を吸気口側に配置して、風を送り込む構成を採用しているが、冷却ファン310を排気口側に配置して、風を吸い出す構成にしてもよい。さらに、冷却ファン310を吸気口側と排気口側の両方に配置する構成にしてもよい。
【0034】
本実施例の電源ユニット100における、放熱板120と底面191との間を流れる風の流れについて、従来の電源ユニット100Pと比較して説明する。従来の電源ユニット100Pは、ケース190Pの形状が異なる以外は、本実施例の電源ユニット100と同一であるため、電源ユニット100Pのケース190Pの構成について、以下に説明し、その他の構成の説明は、省略する。
【0035】
図5は、電源ユニットの構成を示す斜視図である。図5(a)は、本実施例の電源ユニット100、図5(b)は、従来の電源ユニット100Pを示す。図5では、プリント配線板111と、プリント配線板111の第1の面111fに配置されている部品を表示していない。図示するように、電源ユニット100Pにおけるケース190Pは、本実施例の電源ユニット100と同様に、放熱板120と対向する底面191Pを備え、断面略長方形状の筒状を成すケース190Pを備える。
【0036】
図6は、電源ユニットのケースの構成を示す斜視図である。図6(a)は、本実施例の電源ユニット100のケース190、図6(b)は、従来の電源ユニット100Pのケース190Pを示す。図示するように、従来の電源ユニット100Pのケース190Pが、本実施例のケース190と異なる点は、ケース190Pの、放熱板120と対向する底面191Pが、平滑面であり、突起部192a〜192hが設けられていない点である。
【0037】
図7は、放熱板120と底面191との間の風の流れを示す説明図である。図7(a)は、本実施例の電源ユニット100、図7(b)は、従来の電源ユニット100Pにおける風の流れを示す。図7(a)は、図4におけるA−A切断面を示しており、図7(b)は、図7(a)に対応する切断面を示している。
【0038】
図7(b)に示すように、従来の電源ユニット100Pにおいて、上記したように、底面191Pは平滑面であるため、放熱板120とケース190Pとの間には、一定の方向に(吸気口から排気口に向かって)、底面191Pと平行に風が流れる。一方、図7(a)に示すように、本実施例の電源ユニット100において、底面191には、突起部192a〜192hが形成されているため、風は、突起部192a等を乗り越えるように流れる。したがって、突起部192a等の風上側では、放熱板120に対して風が直接当たるような流れになる。
【0039】
本実施例において、突起部192a〜192hは、上記したように、発熱部品116〜119の近傍に設けられるため、放熱板120において、発熱部品116〜119が配置されている領域の近傍では、図示するように、放熱板120に、直接風が当たる。そのため、直接当たった風によって、放熱板120の熱が奪われる。したがって、発熱部品116〜119の熱を、効率よく放熱させることができる。
【0040】
また、本実施例において、突起部192a〜192hは、上記したように、互い違いに、分散されて配置されているため、底面191と放熱板120との間を流れる風の、吸気口から排気口に向かう、大きな流れは変わらない。すなわち、突起部192a〜192hは、底面191と放熱板120との間を流れる風の、吸気口から排気口に向かう流れを妨げないように配置されている。また、突起部192a〜192hが、上記のように配置されていると、吸気口と排気口との間の圧力損失の増加が抑制され、冷却ファン310により、放熱板120とケース190との間に送り込まれる風の流量は、突起部192a〜192hが配置されていない場合と比較して、ほとんど変わらない。すなわち、突起部192a〜192hは、冷却ファン310により、放熱板120とケース190との間に送り込まれる風の流量が、減少しにくいように配置されている。
【0041】
A−3.ケース内の風の流速:
本実施例の電源ユニット100における、放熱板120と底面191との間を流れる風の流速について、上記した従来の電源ユニット100Pと比較して説明する。図8は、放熱板120とケースの底面との間の風の流速分布を示す図である。図8には、コンピュータシミュレーションによる流速シミュレーション結果を、図5に対応する斜視図で示している。図8(a) は、本実施例の電源ユニット100における放熱板120と底面191との間の風、図8(b)は、従来の電源ユニット100Pにおける放熱板120と底面191Pとの間の風の流速分布を示す。
【0042】
電源ユニット100Pのケース190Pにおいて、上記したように、底面191Pは平滑面であるため、放熱板120と底面191Pとの間の風が通過する断面積は、一定である。そのため、図8(b)に示すように、その風の流速は、一定である。一方、電源ユニット100において、ケース190の底面191には突起部192a〜192hが設けられている。そのため、突起部192a〜192hが設けられている領域では、風が通過する断面積が小さくなる。風が通過する断面積が小さくなると、風の流速は大きくなる。そのため、図8(a)に示すように、突起部192a〜192hの上面と放熱板120との間や、隣接する突起部192a〜192hの間では、風の流速が速くなる。
【0043】
本実施例の電源ユニット100において、突起部192a〜192hが、発熱部品116〜119の近傍に設けられている。そのため、放熱板120と底面191との間の風の流速は、発熱部品116〜119の近傍で、他よりも高速になる領域ができる。放熱板120に接する風の流速が速くなると、放熱板120と周囲空気間の熱抵抗が低下する。すなわち、放熱板120と周囲空気間の熱抵抗は、発熱部品116〜119が配置されている領域の近傍において低下するため、発熱部品116〜119は、放熱板120を介して放熱しやすくなる。
【0044】
A−4.実施例の効果:
本実施例のプロジェクタ1000の効果を、従来のプロジェクタと比較して説明する。従来のプロジェクタは、本実施例のプロジェクタ1000に代えて、上記した電源ユニット100Pを用いており、その他の構成は、本発明のプロジェクタ1000と、同様である。
【0045】
図9は、放熱板120および発熱部品116〜119の温度分布を示す図である。図9では、電源ユニットを駆動して、冷却ファン310による強制冷却を行い、所定の時間が経過して、温度分布が安定した状態を、コンピュータシミュレーションにてシミュレートした結果を示している。図9(a)は 、本実施例のプロジェクタ1000が備える電源ユニット100における放熱板120および発熱部品116〜119、図9(b)は、従来のプロジェクタが備える電源ユニット100Pにおける放熱板120および発熱部品116〜119の温度分布を示す。なお、図9は、図5に対応する斜視図で示している。
【0046】
図9(a)と(b)とを比較すると、本実施例の電源ユニット100における、放熱板120と、発熱部品116〜119は、従来の電源ユニット100Pに比べて、全体的に、3〜5℃程度、温度が低下されている。
【0047】
例えば、発熱部品116について見ると、図9(b)に示すように、従来の電源ユニット100Pにおいて、最も高温な部分は、温度範囲が72.86〜74.63℃であったのに対して、図9(a)に示すように、本実施例の電源ユニット100では、69.29〜71.07℃に低下されている。すなわち、本実施例の電源ユニット100では、従来の電源ユニット100Pに対して、発熱部品116の温度を、最大で約5℃程度低下させることができる。
【0048】
発熱部品117について見ると、図9(b)に示すように、従来の電源ユニット100Pにおいて、最も高温な部分は、温度範囲が78.21〜80.00℃であったのに対して、図9(a)に示すように、本実施例の電源ユニット100では76.43〜78.21℃に低下されている。すなわち、本実施例の電源ユニット100では、従来の電源ユニット100Pに対して、発熱部品117の温度を、最大で約3℃程度低下させることができる。
【0049】
発熱部品118について見ると、図9(b)に示すように、従来の電源ユニット100Pにおいて、最も高温な部分は、温度範囲が78.21〜80.00℃であったのに対して、図9(a)に示すように、本実施例の電源ユニット100では76.43〜78.21℃に低下されている。すなわち、本実施例の電源ユニット100では、従来の電源ユニット100Pに対して、発熱部品118の温度を、最大で約3℃程度低下させることができる。
【0050】
ブリッジダイオード119について見ると、図9(b)に示した従来の電源ユニット100Pに対して、図9(a)に示すように、本実施例の電源ユニット100では温度範囲が69.29〜71.07℃である最も高温な部分の領域が、大幅に縮小している。すなわち、本実施例の電源ユニット100では、従来の電源ユニット100Pに対して、ブリッジダイオード119の温度を、効率よく低下させることができる。
【0051】
放熱板120について見ると、図9(b)に示すように、従来の電源ユニット100Pにおいて、最も高温な部分(発熱部品118の近傍)は、温度範囲が63.93〜65.71℃であったのに対して、図9(a)に示すように、本実施例の電源ユニット100では62.14〜63.93℃に低下されている。すなわち、本実施例の電源ユニット100では、従来の電源ユニット100Pに対して、ブリッジダイオード119の温度を、最大で約3℃程度低下させることができる。
【0052】
以上説明したように、本実施例のプロジェクタ1000では、電源ユニット100のケース190の底面191が突起部192a〜192hを備えることによって、放熱板120と底面191との間の風の流れが、発熱部品116〜119の近傍において変化して、放熱板120に直接当たる共に、放熱板120と底面191との間の風の流速が、発熱部品116〜119の近傍で速くなる。したがって、発熱部品116〜119は、放熱板120を介して放熱し易くなる。すなわち、本実施例のプロジェクタ1000では、電源ユニット100における放熱効率が向上される。
【0053】
そのため、例えば、本実施例の電源ユニット100における発熱量が、従来の電源ユニット100における発熱量と同じであれば、電源ユニット100における放熱効率が向上されているため、風の流量を少なくすることができる。そこで、例えば、冷却ファン310を、従来の冷却ファンよりも小型化することができる。したがって、従来のプロジェクタよりも、プロジェクタ1000を小型化することができる。また、冷却ファンによる風の流量を減らすことにより、冷却ファンに供給される駆動電力を低減することができ、プロジェクタ1000の省エネルギー化に資することができる。
【0054】
また、本実施例における電源ユニット100によれば、ケース190の底面191に突起部192a〜192hを設けるという、簡単な構成で、容易に放熱効率を向上させることができる。
【0055】
また、従来、冷却ファンからの風の流量を上げずに、冷却性能を上げるためには、電源ユニットの放熱効率を上げるために、放熱部材の表面積を拡大したり、材料をアルミニウムから銅(アルミニウムよりも熱伝導率が高い)に変更することが考慮されていた。しかしながら、そのようにすると、電源ユニットのサイズが大きくなったり、重くなるという問題があった。本実施例の電源ユニット100では、上記したように、ケース190の底面191の形状を変更しているだけなので、電源ユニットのサイズや重量の増加を伴わず、放熱効率を向上させることができる。
【0056】
また、本実施例における電源ユニット100において、突起部192a〜192fは、略円錐台形状を成すため、吸気口と排気口との間の圧力損失の増加を抑制することができる。さらに、突起部192a〜192fは、互い違いに分散して配置されているため、吸気口から排気口に向かう流れをほとんど妨げない。そのため、放熱板120とケース190Pとの間に送り込まれる風の流量は、突起部192a〜192hが配置されていない場合と比較して、ほとんど減少しないため、充分な放熱効率を得ることができる。
【0057】
B.変形例:
なお、本発明は上記した実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様にて実施することが可能である。
【0058】
(1)上記した実施例において、プロジェクタ1000は、透過型の液晶パネル600を用いて、光源ランプ500からの光を変調しているが、透過型の液晶パネル600に限定されず、例えば、デジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD:Digital Micro−Mirror Device)や、反射型の液晶パネル(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)等を用いて、光源ランプからの光を変調する構成にしてもよい。
【0059】
(2)上記した実施例において、電力供給装置として、電源ユニット100を例に挙げて説明したが、例えば、バラストユニット等の電力供給装置であってもよい。また、発熱部品を備える種々の電子回路モジュールに、本発明を適用すると、発熱部品を効率よく冷却することができる。
【0060】
(3)上記した実施例において、電源ユニット100のケース190の底面191に複数の突起部192a〜192hを備えるものを示したが、放熱板120の発熱部品116〜119が配置されている面と反対側の面に備えるようにしてもよい。また、底面191と、放熱板120との両方に備えるようにしてもよい。このようにしても、突起部を備えない場合と比べると、部分的に流速が速くなり、放熱効率が向上される。
【0061】
(4)上記した実施例において、突起部192a〜192hとして、円錐台形状のものを示したが、突起部192a〜192hの形状は、円錐台形状に限定されず、例えば、薄い平板状(リブ構造のリブ状)、円柱状等、放熱板120と底面191との間の風の流速を、速くするような形状であればよい。突起部の形状、数、および配置については、熱伝達率と圧力損失とのバランスを考慮して、所望の放熱性能が得られる最適な形状、数、および配置にて突起部を形成することが好ましい。
【0062】
(5) 上記した実施例において、突起部192a〜192hは、ケース190の底面191に形成されているが、底面191に限定されず、放熱板120の発熱部品116と当接する面と反対側の面に対向する面に突起部192a〜192hを設ければよい。例えば、放熱板120が、プリント配線板111に対して略垂直に配置され、側面194が、放熱板120の発熱部品116と当接する面と反対側の面と対向する場合には、側面194に、突起部192a〜192hを形成すればよい。
【0063】
(6)上記した実施例において、突起部192a〜192hは、発熱部品116〜119の近傍に配置されているが、底面191上に配置されていれば、発熱部品116〜119の近傍でなくてもよい。また、上記した実施例において、複数の突起部192a〜192hを備える構成を示したが、少なくとも1つの突起部を備えればよい。例えば、発熱部品116と、吸気口との間に1つの突起部192が配置されてもよい。突起部192が底面191上に配置されていれば、放熱板120と底面191との間の風の流速が突起部192付近で速くなるため、放熱板120と周囲空気間の熱抵抗を低下させることができ、電源ユニット100の放熱効率を向上させることができる。
【0064】
(7)上記した実施例において、電源ユニット100は、ケース190を備えるものを例示したが、少なくとも、放熱板120の発熱部品と当接する面と反対側の面と対向する対向面を備えればよい。図10は、上記した実施例の電源ユニット100の変形例の電源ユニット100Aを示す立面図である。例えば、電源ユニット100Aは、プリント回路板110と放熱板120とを、台座191A(請求項における対向面に相当)に固定する構成である。すなわち、電源ユニット100Aは、上記した実施例におけるケース190に代えて、台座191Aを備える。電源ユニット100Aでは、192a〜192hは、台座191A上に設けられている。このような場合には、電源ユニット100Aの両側(上記した実施例におけるケース190の側面194、195に相当する位置)に、他の部品A、Bを配置することによって、上記した実施例と同様に、台座191Aと放熱板120との間を流れる風が生成されるため、上記した実施例と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明のプロジェクタ1000の構成を示すブロック図である。
【図2】電源ユニット100の構成を概略的に示す平面図である。
【図3】電源ユニットの構成を概略的に示す立面図である。
【図4】発熱部品および突起部の配置を示す説明図である。
【図5】電源ユニットの構成を示す斜視図である。
【図6】電源ユニットのケースの構成を示す斜視図である。
【図7】放熱板120と底面191との間の風の流れを示す説明図である。
【図8】放熱板120とケースの底面との間の風の流速分布を示す図である。
【図9】放熱板120および発熱部品116〜119の温度分布を示す図である。
【図10】上記した実施例の電源ユニット100の変形例の電源ユニット100Aを示す立面図である。
【符号の説明】
【0066】
100、100A、100P…電源ユニット
110…プリント回路板
111…プリント配線板
111f…第1の面
111s…第2の面
112…トランス
113…コイル
114…コンデンサ
115…コイル
116、117、118…MOSFET
119…ブリッジダイオード
120…放熱板
190、190P…ケース
191、191P…底面
191A…台座
192a、192b、192c、192d、192e、192f…突起部
193…上面
194…側面
200…バラストユニット
300…冷却部
310…冷却ファン
320…冷却ファン制御部
400…制御部
410…CPU
420…画像処理部
430…メモリ
500…光源ランプ
600…液晶パネル
700…投写レンズ
1000…プロジェクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部品を備え、風によって前記発熱部品を放熱させる電子回路モジュールであって、
前記発熱部品に当接して配置され、前記発熱部品を放熱させる、平板状の放熱板と、
前記放熱板の、前記発熱部品と当接する面と反対側の面と対向する、対向面と、
前記放熱板と前記対向面との間に配置され、その間を通る風の流速を、その周辺部において速くする突起部と、
を備える、電子回路モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の電子回路モジュールにおいて、
前記突起部は、前記発熱部品の近傍に配置される、電子回路モジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子回路モジュールにおいて、
前記突起部は、前記対向面上に配置される、電子回路モジュール。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電子回路モジュールにおいて、
前記突起部は、略円錐台形状を成す、電子回路モジュール。
【請求項5】
所定の電力を供給する電力供給装置であって、
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の電子回路モジュールで構成される、電力供給装置。
【請求項6】
プロジェクタであって、
所定の電力を供給する電力供給装置と、
前記電力供給装置の近傍に配置される冷却ファンと、
前記電力供給装置から電力が供給される光源と、
前記電力供給装置から電力が供給され、画像データに基づいて、前記光源からの光を変調させるための制御部と、
備え、
前記電力供給装置は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の電子回路モジュールで構成され、
前記冷却ファンは、前記放熱板と前記対向面との間に、前記風を導入する、プロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−238785(P2009−238785A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−79170(P2008−79170)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】