説明

電子機器

【課題】 他の機器と通信する機能と画像を表示する機能とを兼ね備えた電子機器を使用するときの利用者の負担を軽減する。
【解決手段】 RFIDのリーダライタとして使用される電子機器D1は、表示面が互いに反対を向く第1表示パネル21および第2表示パネル22と、他の電子機器との通信に利用されるアンテナ41,42,43とを有する。アンテナ41,42は第1の筐体11に設けられ、第3アンテナ43は第2の筐体12に設けられている。開閉センサ60を設けることにより、第1の筐体11と第2の筐体12の間の相対的な傾斜角度に応じて、他の通信機器と通信するアンテナを選択するようにしたので、その角度で通信品位のより高いアンテナを使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他の機器と通信する機能を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
他の機器と無線により通信する機能を備えた種々の電子機器が従来から広く普及している。例えば、利用者や物品を識別するためのRFID(Radio Frequency Identification)を利用した技術のもとでは、種々のデータが記憶されたICタグやICカードなどの機器と、この機器に対して非接触にてデータの書込みや読出しを行なうリーダライタとが使用される。これらの機器は、他の機器との間で電磁波を授受するためのアンテナと、この電磁波を変復調する通信回路とを具備する。
【0003】
この種の機器には表示装置が搭載される場合がある(例えば特許文献1参照)。より具体的には、ICタグやICカードなどから読み出した情報を表示する表示装置がリーダライタに搭載されるほか、リーダライタによって読み書きされる機器にも、人間に対して情報を提供するために表示装置が搭載され得る。
【特許文献1】特開2004−13789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、これらの機器のアンテナを無指向性とした場合には、通信の相手先となる機器を特定することが困難となる。例えば、上述したRFIDは、商店などに陳列された多数の商品に付加されたICタグをリーダライタによって読み取って各商品の管理に役立てるという用途が期待されているところ、リーダライタに無指向性のアンテナを搭載した場合には、このリーダライタに対して多数のICタグから電磁波が到達するため、特定の商品に付加されたICタグのみから選択的に情報を読み出すことが困難となる。指向性を有するアンテナを利用すればこれらの問題は解消される。しかしながら、指向性のアンテナによって確実に通信するための方策が従来の技術においては何ら考慮されていないため、この場合には利用者の負担が増大するという問題を招きかねない。すなわち、例えばリーダライタの利用者は、これを所望のICタグとの間で電磁波が良好に授受されると予想される姿勢に維持して(例えばリーダライタをICタグに向けて差し出して)通信を実行し、その後に画像を視認できる位置まで移動させることによってICタグから読み出した情報を確認しなければならない。なお、ここでは特にリーダライタに注目して従来の技術の問題に言及したが、これらの問題はICタグやICカードといった機器についても同様に生じる問題である。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、他の機器と通信する機能と画像を表示する機能とを兼ね備えた電子機器を使用するときの利用者の負担を軽減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るひとつの電子機器は、第1の筐体と、前記第1の筐体に回転可能に連結され、前記第1の筐体に重なる閉状態と前記第1の筐体から離間した開状態との間を前記第1の筐体に対して回転可能な第2の筐体と、前記第1の筐体に配置され画像を表示する第1表示パネルと、前記第1の筐体に配置され前記第1表示パネルとは反対側に画像を表示する第2表示パネルと、前記第1の筐体に配置され前記第1表示パネルの背面側に指向性を示す一方のアンテナと、前記第2の筐体に配置され、前記第2の筐体が前記第1の筐体に対して前記閉状態にある時に前記第2表示パネルの背面側に指向性を示す他方のアンテナと、前記一方または他方のアンテナを介して他の電子機器と通信する通信部と、前記通信部による前記一方のアンテナを介した通信に応じた画像を前記第1表示パネルに表示させる一方、前記通信部による前記他方のアンテナを介した通信に応じた画像を前記第2表示パネルに表示させる制御部と、前記第1の筐体と前記第2の筐体の間の相対的な傾斜角度が閾値に達したか否かを判断する判断部とを備える。この構成のもと、前記傾斜角度が閾値に達したと前記判断部が判断すると、前記通信部は前記一方のアンテナを介して他の通信機器と通信し、他の場合には前記通信部は前記他方のアンテナを介して他の通信機器と通信する。本発明は、例えばRFIDのリーダライタやこのリーダライタによって読み出される情報を記憶した記録媒体(ICタグやICカードなど)に適用される。また本発明は、RFIDの機能を持たない携帯電話機に適用してもよい。
【0007】
この構成のもとでは、他の通信機器との通信を媒介する一方または他方のアンテナが対応する第1表示パネルまたは第2表示パネルの背面側に指向性を示す。したがって、表示パネルによって表示された画像を確認するために利用者が表示パネルの表示面を自身の方向に向けていたとしても、その利用者からみて奥側に存在する他の通信機器と良好な表示品位を維持したまま通信することができる。この効果は、一方または他方のアンテナが対応する第1表示パネルまたは第2表示パネルの法線に沿って当該表示パネルから背面側に離間する方向に指向性を示す構成を採用した場合にいっそう顕著となる。なお、制御部は、例えば通信部によって他の通信機器から受信した情報を表示パネルに表示させ、あるいは通信部による他の通信機器との通信状態(例えば更新の成功または失敗を示すメッセージなど)を表示パネルに表示させる。
また、第1の筐体と第2の筐体が回転可能に連結された上記構成では、第1の筐体と第2の筐体が開状態にある時には、第1表示パネルが露出し、第1表示パネルに制御部で関連付けられる前記一方のアンテナも第2の筐体で阻害されずに通信しやすい状態にある。第1の筐体と第2の筐体が閉状態にある時には、第1表示パネルまたは前記一方のアンテナに第2の筐体が重なってしまい、第1表示パネルが視認不可能になるか、前記一方のアンテナが通信困難になる。しかし、第1の筐体と第2の筐体が閉状態にある時には、第2表示パネルが露出し、第2表示パネルに制御部で関連付けられる前記他方のアンテナも通信しやすい状態にある。本発明では、第1の筐体と第2の筐体の間の相対的な傾斜角度に応じて、他の通信機器と通信するアンテナを選択するようにしたので、その角度で通信品位のより高いアンテナおよび視認しやすい表示パネルを使用することができる。
【0008】
本発明に係る他の一つの電子機器は、第1の筐体と、第2の筐体と、前記第2の筐体に回転可能に連結されさらに前記第1の筐体を回転可能に支持する回転支持部と、前記第1の筐体に配置され画像を表示する第1表示パネルと、前記第1の筐体に配置され前記第1表示パネルとは反対側に画像を表示する第2表示パネルと、前記第1の筐体に配置され前記第1表示パネルの背面側に指向性を示す一方のアンテナと、前記第1の筐体に配置され前記第2表示パネルの背面側に指向性を示す他方のアンテナと、前記一方または他方のアンテナを介して他の電子機器と通信する通信部と、前記通信部による前記一方のアンテナを介した通信に応じた画像を前記第1表示パネルに表示させる一方、前記通信部による前記他方のアンテナを介した通信に応じた画像を前記第2表示パネルに表示させる制御部と、前記回転支持部と前記第1の筐体の相対的な回転角度が所定範囲にあるか否かを判断する判断部とを備える。この構成のもと、前記回転角度が所定範囲内にあると前記判断部が判断すると、前記通信部は前記一方のアンテナを介して他の通信機器と通信し、他の場合には前記通信部は前記他方のアンテナを介して他の通信機器と通信する。
【0009】
この構成でも、他の通信機器との通信を媒介する一方または他方のアンテナが対応する第1表示パネルまたは第2表示パネルの背面側に指向性を示す。したがって、表示パネルによって表示された画像を確認するために利用者が表示パネルの表示面を自身の方向に向けていたとしても、その利用者からみて奥側に存在する他の通信機器と良好な表示品位を維持したまま通信することができる。
また、回転支持部に第1の筐体と第2の筐体がそれぞれ回転可能に連結された上記構成では、利用者が第1表示パネルを自分に向けている場合には、第1表示パネルに制御部で関連付けられており第1表示パネルの背面側に指向性を示す前記一方のアンテナが他の通信機器と通信しやすい状態にあると予想される。他方、利用者が第2表示パネルを自分に向けている場合には、第2表示パネルに制御部で関連付けられおり第2表示パネルの背面側に指向性を示す前記他方のアンテナが他の通信機器と通信しやすい状態にあると予想される。本発明では、回転支持部と第1の筐体の相対的な回転角度に応じて、他の通信機器と通信するアンテナを選択するようにしたので、その角度で通信品位のより高いアンテナおよび視認しやすい表示パネルを使用することができる。
なお、以上では第1表示パネルと一方のアンテナとの組および第2表示パネルと他方のアンテナとの組のみが列挙されているが、これ以外の表示パネルやアンテナがさらに設けられた構成を排除する趣旨ではない。
【0010】
本発明の好ましい形態においては、前記通信部は、前記一方のアンテナを介して通信しているときには前記他方のアンテナとの電気的な導通を遮断し、前記他方のアンテナを介して通信しているときには前記一方のアンテナとの電気的な導通を遮断する。この態様によれば、各アンテナによって送受信される電磁波が相互に干渉する事態は抑制される。
【0011】
さらに好ましくは、前記制御部は、前記通信部が前記一方のアンテナを介して通信しているときには前記第2表示パネルの駆動を停止させ、前記通信部が前記他方のアンテナを介して通信しているときには前記第1表示パネルの駆動を停止させる。例えば、制御部は、前記一方のアンテナを介した通信中には第2表示パネルへの給電を停止させる一方、前記他方のアンテナを介した通信中には第1表示パネルへの給電を停止させる。この態様によれば、アンテナが送受信する電波に対して表示パネルの動作に応じたノイズが発生する事態が抑制される。
【0012】
第1の筐体が第2の筐体に回転可能に連結された本発明の電子機器の好ましい形態は、前記一方のアンテナが指向する方向に存在する被写体を撮像する一方の撮像部と、前記他方のアンテナが指向する方向に存在する被写体を撮像する他方の撮像部とを具備し、前記制御部は、前記制御部は、前記一方のアンテナを介して通信するときには前記一方の撮像部によって撮像された画像を前記第1表示パネルに表示させる一方、前記他方のアンテナを介して通信するときには前記他方の撮像部によって撮像された画像を前記第2表示パネルに表示させる。この形態によれば、通信部が通信している電子機器を撮像した画像が表示パネルによって表示されるから、利用者は、通信の相手先となる電子機器の様子を確認しながらこの電子機器との通信を実行することができる。換言すると、通信の相手先となる所望の電子機器を撮像した画像が何れかの表示パネルに表示されるように電子機器の姿勢を調整すれば、その所望の電子機器と良好な通信品位にて通信することができる(すなわち、高品位の通信が確保される姿勢となるように電子機器の姿勢が自動的に調整される)。
【0013】
さらに、回転支持部に第1の筐体と第2の筐体がそれぞれ回転可能に連結された本発明の電子機器の好ましい形態は、前記第2の筐体に配置された撮像部を具備し、前記通信部が前記一方のアンテナを介して通信可能なときには、前記制御部は前記撮像部によって撮像された画像を前記第1表示パネルに表示させ、前記通信部が前記他方のアンテナを介して通信可能なときには、前記制御部は前記撮像部によって撮像された画像を前記第2表示パネルに表示させる。この形態によれば、ひとつの撮像部によって上記各効果が奏されるから製造コストが低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、以下に示す各図においては、各部の寸法や比率を実際のものとは適宜に異ならせてある。
【0015】
<1.第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態に係る電子機器について説明する。この電子機器は、RFIDのリーダライタとしての機能を備えた携帯電話機である。
【0016】
<1a.電子機器の構成>
図1は本実施形態に係る電子機器の構成を示す斜視図であり、図2は電子機器を図1とは反対側からみたときの斜視図である。これらの図に示すように、電子機器D1は、第1の筐体11と第2の筐体12とを有する。第1の筐体11と第2の筐体12とは各々の縁端部にてヒンジ13を介して互いに連結されている。利用者は、図1および図2に示すように第1の筐体11が第2の筐体12に対して略180度に開かれた状態(以下「開状態」という)から、ヒンジ13を軸として第1の筐体11を第2の筐体12側に(あるいは第2の筐体12を第1の筐体11側に)回転させることにより、図3および図4に示すように第1の筐体11と第2の筐体12とが互いに対向する状態(以下「閉状態」という)に電子機器D1を折り畳むことができる。
【0017】
第2の筐体12のうち閉状態において第1の筐体11と対向する面には、利用者によって操作される複数の操作子541が配置されている。さらに、第1の筐体11の側面にも同様の操作子542が配置されている。したがって、電子機器D1が閉状態とされて操作子541が第1の筐体11に隠れた場合であっても、利用者は操作子542を操作することによって電子機器D1に指示を入力することができる。
【0018】
第1の筐体11には第1表示パネル21および第2表示パネル22が収容されている。第1表示パネル21および第2表示パネル22は画像を表示するための機器である。なお、以下では、第1表示パネル21と第2表示パネル22とを特に区別する必要がない場合には単に「表示パネル2」と表記する。
【0019】
第1の筐体11のうち閉状態において第2の筐体12と対向する面には開口部11aが形成されている。第1表示パネル21は表示面が開口部11aの内側に位置するように配置される。一方、第1の筐体11のうち閉状態において第2の筐体12の反対側に位置する面には、図2および図3に示すように開口部11bが形成されている。第2表示パネル22は表示面が開口部11bの内側に位置するように配置される。すなわち、第1表示パネル21と第2表示パネル22とは各々の表示面が反対方向を向くように配置される。利用者は、開口部11aを介して第1表示パネル21による表示画像を視認し、開口部11bを介して第2表示パネル22による表示画像を視認することができる。
【0020】
さらに、第1の筐体11には第1撮像部31と第2撮像部32とが収容され、第2の筐体12には第3撮像部33が収容されている。第1撮像部31、第2撮像部32および第3撮像部33は被写体を撮像するための機器(いわゆるデジタルカメラ)であり、例えば受光量に応じた電気信号を出力するCCD(Charge Coupled Device)を含む。このうち第1撮像部31は第2表示パネル22の上方に配置されて第1の筐体11の開口部11cから露出する。同様に、第2撮像部32は第1表示パネル21の上方に配置されて開口部11dから露出する。さらに、第3撮像部33は第2の筐体12の閉状態でも外側にある面に配置されて開口部11eから露出する。なお、以下では、第1撮像部31、第2撮像部32および第3撮像部33とを特に区別する必要がない場合には単に「撮像部3」と表記する。
【0021】
図5は各表示パネル2の周辺の構成を示す斜視図である。なお、同図においては第1表示パネル21および第2表示パネル22の近傍の要素のみが図示されており、例えば図1に示される撮像部3等の図示は適宜に省略されている。図5に示すように、第1表示パネル21および第2表示パネル22の各々は、相互に対向するように貼り合わされた背面側基板201と表示側基板202との間隙に液晶が封止された液晶パネルである。第1表示パネル21と第2表示パネル22とにはFPC(フレキシブルプリント基板)15が架け渡されている。このFPC15は、第1表示パネル21および第2表示パネル22の各々と他の回路とを電気的に接続するための配線基板であり、一端が第1表示パネル21の周縁部に固定されるとともに途中の部分が適宜に折り曲げられて他端が第2表示パネル22の周縁部に固定されている。
【0022】
次に、図6は電子機器D1の機能的な構成を示すブロック図である。同図に示すように、第1表示パネル21および第2表示パネル22は駆動回路16A、16Bにそれぞれ接続されている。駆動回路16Aおよび16Bは、図5に示したFPC15の表面にCOF(Chip On Film)技術によって実装されたICチップであり、各表示パネル2に種々の画像を表示させるための回路(例えば走査線駆動回路やデータ線駆動回路)を含んでいる。なお、各駆動回路16Aおよび16BがCOG(Chip On Glass)技術によって各表示パネル2の背面側基板201に実装された構成としてもよい。
【0023】
図6に示すように、各駆動回路16Aおよび16Bと上述した各撮像部3とは制御部51に接続されている。この制御部51は、電子機器D1の各部を制御するための手段であり、図5に示すようにFPC15の表面にICチップとして実装されている。制御部51は、プログラムを格納する記憶回路やこのプログラムを実行することにより電子機器D1の各部を制御する制御回路とを有する(何れも図示略)。図1に示した操作子541や操作子542を含む操作部54は制御部51に接続されている。
【0024】
図6に示すように、制御部51には通信部52が接続されている。この通信部52には、第1アンテナ41と第2アンテナ42と第3アンテナ43とが接続されている。以下では、第1アンテナ41と第2アンテナ42と第3アンテナ43とを特に区別する必要がない場合には単に「アンテナ4」と表記する。各アンテナ4は、ICタグやICカードといった他の電子機器(以下ではリーダライタと区別するために「記録媒体」と表記する)から送信された電磁波の受信と記録媒体に対する電磁波の送信とを行なう。通信部52は、各アンテナ4を介して記録媒体と通信するための回路であり、図5に示したFPC15の表面にICチップとして実装されている。より具体的には、通信部52は、各アンテナ4によって受信された電磁波を復調してデジタルデータを生成する一方、制御部51から入力されるデジタルデータを変調した電磁波を各アンテナ4から送信する。
【0025】
第1アンテナ41および第2アンテナ42の各々は各表示パネル2に設置されている。すなわち、図5に示すように、第1アンテナ41は第2表示パネル22の背面側基板201の表面に形成され、第2アンテナ42は第1表示パネル21の背面側基板201の表面に形成されている。第1アンテナ41および第2アンテナ42の各々は背面側基板201の各縁辺に沿って環状をなす方形ループアンテナである。一方、第3アンテナ43は、第2の筐体12に収容された方形ループアンテナである。より具体的には、第3アンテナ43は、図2および図4に示すように、第2の筐体12のうち操作子541が配置された面とは反対側の面に設置されている。詳細は後述するが、各アンテナ4は特定の方向に指向性を示す。
【0026】
制御部51は、各アンテナ4を介した通信部52による通信に応じた画像が各表示パネル2に表示されるように各駆動回路16Aおよび16Bを制御することができる。この「通信に応じた画像」とは、例えば記録媒体との通信状態(例えば交信の成功または失敗)を示す情報や、記録媒体から受信した情報または記録媒体に対して送信される情報である。通信部52が通信に利用するアンテナ4とこの通信に応じた画像が表示される表示パネル2とは予め対応付けられている。すなわち、制御部51は、第1アンテナ41を介した通信に応じた画像を第1表示パネル21に表示させる一方、第2アンテナ42または第3アンテナ43を介した通信に応じた画像を第2表示パネル22に表示させる。
【0027】
さらに、制御部51は、各撮像部3によって撮像された画像がこの撮像部3に対応した表示パネル2に表示されるように各駆動回路16Aおよび16Bを制御することができる。すなわち、制御部51は、第1撮像部31によって撮像された画像を第1表示パネル21に表示させる一方、第2撮像部32によって撮像された画像を第2表示パネル22に表示させる。また、第1の筐体11と第2の筐体12が閉状態にある場合には、第3撮像部33によって撮像された画像を第3撮像部33の反対側の第2表示パネル22に表示させる。以上のように、各表示パネル2と各アンテナ4と各撮像部3とは相互に対応するもの同士が組み合わされて使用される。以下では、表示パネル2とアンテナ4と撮像部3との同時に使用されうる組み合わせを便宜的に「ユニット」と表記する。すなわち、本実施形態においては、第1表示パネル21と第1アンテナ41と第1撮像部31とがひとつのユニットを構成し、第2表示パネル22と第2アンテナ42と第2撮像部32とが他の一つのユニットを構成し、さらに第2表示パネル22と第3アンテナ43と第3撮像部33とが他のひとつのユニットを構成する。
【0028】
また、制御部51には開閉センサ60が接続されている。開閉センサ60は、第1の筐体11と第2の筐体12の間の相対的な傾斜角度が閾値X°(例えば45°)に達したか否かを判断する判断部である。すなわち、傾斜角度が閾値X°になると、第1の筐体11が第2の筐体12に対して開状態であることを示す信号を開閉センサ60は制御部51に供給する。傾斜角度が閾値X°未満になると、開閉センサ60はこの信号の供給を停止する。開閉センサ60は継続的な傾斜角度の変化を計測するセンサでもよいが、傾斜角度が閾値X°以上になると作動するスイッチ式のセンサでもよい。例えば、開閉センサ60は、電磁スイッチ式のセンサでもよいし、レバースイッチ式の機械的センサでもよいし、ボタンスイッチ式の機械的センサでもよい。
【0029】
第1の筐体11と第2の筐体12が回転可能に連結された上記構成では、第1の筐体11と第2の筐体12が開状態にある時には、第1表示パネル21が露出し、第1表示パネル21に制御部51で関連付けられる第1アンテナ41も第2の筐体12で阻害されずに通信しやすい状態にある。また、開状態では、第2表示パネル22が露出し、第2表示パネル22に制御部51で関連付けられる第2アンテナ42も第2の筐体12で阻害されずに通信しやすい状態にある。
【0030】
他方、第1の筐体11と第2の筐体12が閉状態にある時には、第1表示パネル21に第2の筐体12が重なってしまい、第1表示パネルが視認不可能になる。また閉状態では、第2アンテナ42に第2の筐体12が重なってしまい、第2アンテナ42が通信困難になる。しかし、第1の筐体11と第2の筐体12が閉状態にある時には、第2表示パネル22が露出し、第2表示パネル22に制御部51で関連付けられる第3アンテナ43も通信しやすい状態にある。この実施の形態では、第1の筐体11と第2の筐体12の間の相対的な傾斜角度に応じて、他の通信機器と通信するアンテナを選択することにより、その角度で通信品位のより高いアンテナおよび視認しやすい表示パネルを使用する。すなわち、傾斜角度が閾値X°に達したと開閉センサ60が検知すると、通信部52が第1アンテナ41または第2アンテナ42を介して他の通信機器と通信するように制御部51が制御する。他の場合には通信部52が第3アンテナ43を介して他の通信機器と通信するように制御部51が制御する。
【0031】
なお、図1ないし図6においては電子機器D1のうちRFIDのリーダライタとしての機能を担う要素のみが図示されているが、実際の電子機器D1は、利用者が音声を入力するためのマイクロホンや利用者に対して音声を出力するスピーカ、さらには移動通信網の基地局と無線チャネルを介して通信するためのアンテナ(例えばロッドアンテナ)および通信回路など、携帯電話機としての本来の機能を果たす要素も備えている。
【0032】
図7は、電子機器D1の制御部51の動作を示すフローチャートである。図7に示すように制御部51は、第1の筐体11と第2の筐体12の相対的な傾斜角度の情報を開閉センサ60から取得する(ステップS1)。傾斜角度がX°以上となった場合には開閉センサ60は制御部51に開状態を示す信号を供給する。この場合にはステップS2の判断が肯定的になり、主表示パネル(第1表示パネル21)の周辺の第2アンテナ42または副表示パネル(第2表示パネル22)の周辺の第1アンテナ41を通信に使用するように制御部51が選択する(ステップS3)。
【0033】
ステップS3で第1アンテナ41と第2アンテナ42のいずれを選択するかは、具体的には次の(1)〜(3)のいずれか、(1)と(3)の組み合わせ、または(2)と(3)の組み合わせのようにすればよい。
(1)より大きい面積を持つ第1表示パネル21と関連付けられた第1アンテナ41を選択する。
(2)第1アンテナ41および第2アンテナ42のうち受信した電磁波の電界強度が最大であるアンテナを選択する(選択ダイバーシティ)
(3)利用者に選択させる。
【0034】
またステップS3では、選択されたアンテナ以外のアンテナとの電気的な導通を遮断する。このようにひとつのアンテナ4のみが通信に利用されるから、電子機器D1が複数のアンテナ4を備えているにも拘わらず、各アンテナ4から送信される電磁波が互いに干渉するといった事態は回避される。
【0035】
次にステップS4では、使用するアンテナ41または42に対応する表示パネル21または22を駆動し(すでに駆動されていれば駆動を継続し)、他の表示パネル22または21の駆動を停止する(すでに停止されていれば停止を継続する)。従って、ステップS3で第1アンテナ41が選択された場合には、第1アンテナ41の反対側にある第1表示パネル21を利用者が視認した状態で、第1アンテナ41が他の通信機器と通信することができる。第2アンテナ42が選択された場合には、第2アンテナ42の反対側にある第2表示パネル22を利用者が視認した状態で、第2アンテナ42が他の通信機器と通信することができる。画像の表示に利用される表示パネル2以外の表示パネル2への給電を制御部51が停止することにより、アンテナ4によって送受信される電磁波に対して、画像を表示していない表示パネル2の動作に起因したノイズが混入する事態が回避される。
【0036】
また傾斜角度がX°未満の場合すなわちステップS2の判断が否定的な場合には、閉状態でも露出する面に近い第3アンテナ43を通信に使用するように制御部51が選択する(ステップS5)。またステップS5では、選択されたアンテナ43以外のアンテナ41,42との電気的な導通を遮断する。次にステップS6では、使用するアンテナ43に対応する第2表示パネル22を駆動し(すでに駆動されていれば駆動を継続し)、他の表示パネル21の駆動を停止する(すでに停止されていれば停止を継続する)。従って、ステップS5で第3アンテナ43が選択された場合には、第3アンテナ43の反対側にある第2表示パネル22を利用者が視認した状態で、第3アンテナ43が他の通信機器と通信することができる。
【0037】
図8ないし図10は、各表示パネル2と各撮像部3と各アンテナ4との関係を示す図である。図8は電子機器D1を上方向からみた図であり、図9は電子機器D1を横方向からみた図である。図8および図9においては、第1アンテナ41の指向特性が破線にて示されている。この破線によって囲まれた範囲(以下「通信可能範囲」という)Acは、第1アンテナ41から輻射された電磁波が所定の電界強度(例えば記録媒体との間で適正なデータ通信が担保される程度の電界強度)を維持し得る範囲である。換言すると、通信可能範囲Acとは、第1アンテナ41が所定の電界強度の電磁波を受信することができる範囲である。図8および図9に示すように、第1アンテナ41の通信可能範囲Acは、これと同じユニットに属する第1表示パネル21からみて、この第1表示パネル21の表示画像を視認する利用者Uとは反対側(以下「背面側」という)に向かって分布する。すなわち、第1アンテナ41は、第1表示パネル21の背面側に指向性を示す。さらに詳述すると、第1アンテナ41は、第1表示パネル21の背面側基板201の法線に沿って背面側に離間する方向(図8および図9における右方)に指向する。
【0038】
なお、ここでは第1アンテナ41を例示したが、第2アンテナ42についても同様に通信可能範囲Acが画定される。ただし、第2アンテナ42については、図8および図9に示した通信可能範囲Acの分布する方向が逆転する。すなわち、第2アンテナ42は、第2表示パネル22の背面側基板201の法線に沿って第2表示パネル22の背面側に離間する方向(図8および図9における左方)に指向する。
一方、図10は、電子機器D1が閉状態にあるときの第3アンテナ43と第2表示パネル22との関係を示す図である。同図に示すように、電子機器D1が閉状態にあるとき、第3アンテナ43の通信可能範囲Acは第2表示パネル22の背面側に向かって分布する。より具体的には、第3アンテナ43は、第2表示パネル22の法線に沿って背面側に離間する方向に指向する。
【0039】
図8および図9においては、第1撮像部31によって撮像される範囲が鎖線にて示されている。この鎖線によって囲まれた範囲(以下「撮像可能範囲As」という)は、第1撮像部31によって撮像され得る範囲である。図8および図9に示すように、第1撮像部31の撮像可能範囲Asは第1表示パネル21の背面側に向けて分布し、かつ、第1アンテナ41の通信可能範囲Acに重複する。すなわち、第1撮像部31は、第1アンテナ41が指向する方向に存在する被写体を撮像できるようにその位置や姿勢が選定されている。第2撮像部32と第2アンテナ42の関係も、これと同様である。
【0040】
一方、図10に示すように、第3撮像部33は、第3アンテナ43が指向する方向にある被写体を撮像できるようにその姿勢や姿勢が選定されている。すなわち、第3撮像部33の撮像可能範囲Asは閉状態にある時の第2表示パネル22の背面側に分布し、かつ、第3アンテナ43の通信可能範囲Acと重なり合う。
【0041】
<1b.電子機器D1の使用形態>
次に、電子機器D1が実際に使用されるときの形態に着目しながら、本実施形態に係る電子機器D1の動作を説明する。本実施形態における電子機器D1の動作モードは第1モードないし第3モードに区分される。利用者は、操作部54を適宜に操作することによって何れかの動作モードを選択することができる。以下では、各動作モードが選択された場合に分けて電子機器D1の動作を説明する。
【0042】
<第1モード>
第1モードは、電子機器D1による通信の状態を利用者が確認しながら他の電子機器と通信するためのモードである。このモードを選択すると、利用者Uは、図11に示すように、物品71に付加された記録媒体73(ここではICタグ)に対して上記のステップS3またはS5で選択されたアンテナ4が向くように電子機器D1の姿勢を維持したうえで操作部54を操作する。図11は、第1アンテナ41の使用が選択され第1表示パネル21が駆動されている場合を想定している。この場合には、第1表示パネル21が利用者自身側に向けられるとともに第1アンテナ41が物品71に向けられた姿勢にて電子機器D1が利用者Uに所持される。一方、電子機器D1が閉状態とされたことにより、第3アンテナ43の使用が選択され第2表示パネル22が駆動されている場合には、図12に示すように、第2表示パネル22が利用者自信に向けられ第3アンテナ43が物品に向けられた姿勢にて電子機器D1が利用者Uに所持される。
【0043】
続いて、通信部52は、先に選択したアンテナ4を介して記録媒体73と通信することにより、この記録媒体73に記録された情報(例えば物流の管理のために各物品71に割り当てられた識別情報)を受信する。さらに、制御部51は、通信部52が選択したアンテナ4に対応した表示パネル2に、通信に応じた画像を表示させる。例えば、図11のように第1アンテナ41が選択されている場合には、この第1アンテナ41と同じユニットに属する第1表示パネル21に画像が表示される。また、図12のように第3アンテナ43が選択されている場合には第2表示パネル22に画像が表示される。
【0044】
表示パネル2に表示される画像の具体例は図11の部分(a)ないし部分(c)に示される通りである。すなわち、電子機器D1による記録媒体73との通信の状態に応じて、記録媒体73との交信が適正に実行されている旨のメッセージ(図11の部分(a))や、記録媒体73との交信に失敗した旨のメッセージ(図11の部分(b))が表示される。一方、電子機器D1が記録媒体73との通信を完了した場合には、図11の部分(c)に示すように、この通信によって記録媒体73から取得した情報(ここでは記録媒体73の識別情報を示す「ID01」の文字)が表示される。利用者Uは、これらの画像を視認することによって、記録媒体73との通信の状況を随時に確認することができる。
【0045】
このように、本実施形態においては、各アンテナ4が表示パネル2の背面側に指向する構成となっているから、利用者Uが各表示パネル2を視認できるように電子機器D1が所持されている場合であっても、その背面に指向するアンテナ4によって高品位な通信が実行される。したがって、第1に電子機器D1を記録媒体73と通信するための姿勢に維持し、第2にこの通信の結果を視認できるように電子機器D1を持ち替えるといった煩雑な作業は不要であるから、利用者Uの負担を軽減することができる。
【0046】
さらに第1の筐体11と第2の筐体12の間の相対的な傾斜角度に応じて、他の通信機器と通信するアンテナを選択するようにしたので、その角度で通信品位のより高いアンテナおよび視認しやすい表示パネルを使用することができる。しかも、本実施形態においては表示パネル2とアンテナ4とを含む複数のユニットが設けられているから、電子機器D1の姿勢に拘わらず(例えば開状態にあるか閉状態にあるかを問わず)高品位での通信が実現される。
【0047】
<第2モード>
第2モードは、撮像部3によって撮像された画像を確認しながら他の電子機器D1と通信するためのモードである。この第2モードは、図13に示すように、互いに近接して配置された複数の物品71のなかから所望の物品71を選択し、この選択した物品71に付加されたICタグから識別情報を読み出すときに選択される。
【0048】
このモードを選択すると、利用者Uは、図13に示すように、物品71に付加された記録媒体(ICタグ)73に対して上記のステップS3またはS5で選択されたアンテナ4が向くように電子機器D1の姿勢を維持したうえで操作部54を操作する。上記の通り、同時に使用されうる表示パネル2とアンテナ4と撮像部3の組み合わせが関連付けられていることを利用して、第2モードでは制御部51は、選択されたアンテナと同じユニットに属する撮像部を起動し、同じユニットに属する表示パネルにこの撮像部が撮像した画像を表示させる。例えば、第1アンテナ41が選択された場合には、図13に示すように、第1撮像部31によって撮像された画像が第1表示パネル21に表示される。利用者Uは、こうして表示された画像を確認しながら、使用するアンテナの反対側にある撮像部3の撮像可能範囲As内に所望の物品71が位置するように電子機器D1の位置および姿勢を調整する。図13においては、横方向に配列された3つの物品71のうち中央の物品71が第1撮像部31の撮像可能範囲As内に位置するように電子機器D1の姿勢が調整された様子が例示されている。そして、通信部52は、選択されたアンテナ4を介して記録媒体73と通信することによって識別情報など各種の情報を取得する。
【0049】
上述したように各アンテナ4と各撮像部3との位置関係は撮像可能範囲Asと通信可能範囲Acとが相互に重なり合うように選定されている。したがって、図13に示されるように所望の物品71が第1表示パネル21に表示されるように電子機器D1の姿勢を調整すれば、第1アンテナ41はこの物品71の記録媒体73と高品位な通信を実行し得る方向に自動的に調整される。すなわち、利用者Uは、表示パネル2を視認しながら所望の物品71が撮像されるように電子機器D1の位置を調整すれば足り、記録媒体73と高品位の通信が実現される位置ないし姿勢に電子機器D1が調整されているかどうかについては考慮する必要がない。したがって、利用者Uの負担が軽減される。
【0050】
<第3モード>
第3モードは、記録媒体73に加えて、光学的に読み取り可能な図像が物品に付加されている場合に好適な動作モードである。このような図像としては、所望の情報に応じて太さが選定された複数の線を配列してなるバーコードのほか、所望の情報に応じて黒色または白色の領域(ドット)を平面的に配列してなるQR(Quick Response)コード(「QRコード」は登録商標である)がある。本実施形態においては、図14に示すように、記録媒体73とQRコード74とが物品71に付加された場合を想定する。一方、この場合の記録媒体73には、図15に示すように、各種の物品に割り当てられた識別情報と各物品に関する情報(例えば生産地や価格など)とを各々が含む複数のレコードが記憶されている。この記録媒体73は、互いに種類が相違する複数の物品について共用されるものであり、記録媒体73が利用される可能性がある総ての物品に対応した複数のレコードを記憶している。したがって、記録媒体73から情報を読み出しただけでは、実際に記録媒体73が付加されている物品71に関するひとつのレコードを特定することができない。そこで、第3モードにおいては、各物品71に付加されたQRコード74に基づいて、複数のレコードの何れかが選択されるようになっている。したがって、記録媒体73に格納された情報が複数の物品71について共通であるのに対し、QRコード74が示す情報は各物品71に固有である。
【0051】
第3モードを選択すると、利用者Uは、第2モードと同様の手順により、物品71に対して上記のステップS3またはS5で選択されたアンテナ4が向くように電子機器D1の姿勢を維持したうえで操作部54を操作する。具体的には、そのアンテナと同じユニットに属する撮像部3の撮像可能範囲As内にQRコード74が位置するように電子機器D1の姿勢を調整する。この調整に際して撮像部3が撮像した画像は、この撮像部3と同じユニットに属する表示パネル2に随時に表示される。図14においては、物品71に付加されたQRコード74が第1撮像部31によって撮像されて第1表示パネル21に表示された場合が想定されている。こうして位置を調整すると、利用者Uは操作部54を操作する。この操作を検知すると、制御部51は、その時点において撮像されている画像(QRコード74)を内部のメモリ(図示略)に取り込む。続いて、図15に示すように、制御部51は、この取り込んだQRコード74をデコードする。ここではQRコード74が「ID002」という識別情報にデコードされた場合を想定する。
【0052】
そして、通信部52は、選択されたアンテナ4を介して記録媒体73と通信することにより、この記録媒体73に格納された総てのレコードを取得する。記録媒体73とQRコード74とが近接して配置されていることを前提とすれば、第2モードと同様に、QRコード74が撮像されるように電子機器D1の位置および姿勢を調整することによって、アンテナ4の位置も記録媒体73と良好に通信し得る位置に調整される。
【0053】
続いて、制御部51は、通信部52によって取得された複数のレコードのうちQRコード74からデコードされた識別情報を含むレコードを選択する。例えば、図15に示すように、記録媒体73から読み出された複数のレコードのなかから識別情報「ID002」を含むレコードが検索される。こうして検索されたレコードに含まれる識別情報および製品情報は、先の通信に利用されたアンテナ4と同じユニットに属する表示パネル2(図14の例では第1表示パネル21)に表示される。
【0054】
このように、第3モードにおいても第2モードと同様に、QRコード74が撮像されるように電子機器D1の姿勢を調整すればアンテナ4の位置が自動的に調整されるから、利用者Uの負担が軽減される。加えて、第3モードにおいては、記録媒体73に記録された複数のレコードの何れかがQRコード74に基づいて選択されるから、記録媒体73の長所とQRコード74の長所とを利用して効率的な物品の管理が実現される。この点について詳述すると以下の通りである。
【0055】
記録媒体73は記録することができる情報量がQRコード74よりも大きいという利点がある反面、その製造や情報の記録のためにQRコード74よりも多大なコストを要するという欠点がある。一方、QRコード74は用紙に画像を印刷したものであるため、製造に要するコストが記録媒体73と比較して低廉であるという利点がある反面、これによって表現できる情報量は記録媒体73よりも少ないという欠点がある。したがって、多様な物品の各々について別個の記録媒体73を製造したり別個の情報を記憶させたりした場合には膨大なコストを要する一方、各物品について別個のQRコード74を作成した場合には各物品の管理のために充分な情報量を記憶させることができないという問題が生じ得る。本実施形態においては、種々の物品に関する情報が格納された記録媒体73をこれらの物品について共用する一方、このうちの何れかが各物品に固有のQRコード74に基づいて選択される構成となっている。したがって、データ容量が大きいという記録媒体73の利点と製造コストが低廉であるというQRコード74の利点とを活用して低コストで効率的な物品の管理が実現される。
【0056】
なお、ここでは複数のレコードの何れかをQRコード74に応じて選択する構成を例示したが、記録媒体73に記録された情報とQRコード74とに基づいた処理の方法はこれに限られない。例えば、図16に示すように、各物品ごとに設定された関数F(x1,x2,……)を表現するQRコード74を作成しておき、これらの関数に含まれる変数x1、x2、……として複数の物品について共通に適用される数値(例えば生産地に応じた数値や価格など)a、b、c……を記録媒体73に記録した構成としてもよい。この構成のもとでは、QRコード74のデコードによって特定される関数に対して記録媒体73から取得された各数値を代入することによって物品ごとの数値が算定され、この数値が各物品の管理のために利用される。あるいは、これとは逆に、各物品ごとに設定された変数を表現するQRコード74と、複数の物品について共通に適用される関数を記憶した記録媒体73とを用いてもよい。
【0057】
<2.第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る電子機器について説明する。この電子機器は、RFIDのICタグまたはICカードとしての機能を備えた携帯電話機である。なお、本実施形態に係る電子機器はリーダライタによって情報が読み出されるという点で上記第1実施形態の電子機器D1(リーダライタ)と相違するが、他の電子機器と通信するという基本的な構成は第1実施形態と共通する。そこで、以下では、本実施形態に係る電子機器のうち上記第1実施形態と同様の部分については共通の符号を付してその説明を適宜に省略する。
【0058】
<2a.電子機器の構成>
図17は、本実施形態に係る電子機器の構成を示す斜視図(図1に対応する図面)である。同図に示すように、この電子機器D2は、第2の筐体12の側面に接続スロット18が形成されている点で上記第1実施形態の電子機器D1とは相違している。この接続スロット18は、可搬型の記録媒体80が挿入および取出される挿入孔であり、その内部には記録媒体80の端子と電気的に接続される端子(図示略)が配置されている。記録媒体80は半導体メモリなどの記憶回路を備えている。この記憶回路には、電子機器D2の利用者に割り当てられた識別情報やその他の各種の情報(典型的には利用者に固有の情報)が記憶される。各表示パネル2や各アンテナ4の構成は上記第1実施形態と同様である。なお、本実施形態における通信部52は、電磁誘導または電磁結合の原理によってアンテナ4から発生した電力によって動作してもよいし、電子機器D2の電源から電力の供給を受けて動作してもよい。
【0059】
<2b.電子機器D2の使用形態>
本実施形態に係る電子機器D2は上記第1実施形態と同様に動作する。図18は、電子機器D2がリーダライタと通信している様子を示す斜視図である。同図に示されるリーダライタ831は、駅や遊技場といった各種の施設の入口に設置されたゲート83に固定されており、上記第1実施形態に示したように電子機器D2から識別情報を読み出す機能と、この識別情報に基づいて利用者Uによる施設への入場の可否を判定する機能とを備えている。
【0060】
第1モードが選択されている場合には以下の動作が実行される。図18に示すように、ゲート83を通過しようとする利用者Uは、図7のステップS3またはS5で選択されたアンテナ4がリーダライタ831に向くように電子機器D2の姿勢を維持したうえで操作部54を操作する。すると、電子機器D2の通信部52は、このアンテナ4を介してリーダライタ831と通信する。より具体的には、記録媒体80に記録されている識別情報が制御部51によって読み出されたうえで通信部52からリーダライタ831に送信される。図18のように通信部52は第1アンテナ41を介してリーダライタ831と通信する場合には、第1表示パネル21が利用者U側に向けられる。一方、リーダライタ831は、電子機器D2から受信した識別情報に基づいて利用者Uによる入場の可否を判定し、この判定の結果を示す情報を電子機器D2に対して送信する。そして、電子機器D2の制御部51は、先に選択したアンテナ4と同じユニットに属する表示パネル2に、この判定の結果を表示させる。図18の場合には、第1アンテナ41に対応した第1表示パネル21に入場の可否を示す画像が表示されることになる。
【0061】
また、第2モードが選択されている場合、利用者Uは、例えば第1撮像部31が撮像した画像を第1表示パネル21にて確認しながら、リーダライタ831が第1撮像部31の撮像可能範囲As内に位置するように電子機器D2の位置および姿勢を調整する。通信部52は、第1撮像部31に対応する第1アンテナ41を介して第1モードと同様の手順にてリーダライタ831と通信する。そして、制御部51は、リーダライタ831から受信した情報(入場の可否に関する判定の結果)を第1表示パネル21に表示させる。
【0062】
一方、第3モードが選択されている場合、電子機器D2の制御部51は、雑誌や新聞などの刊行物に印刷されたQRコード74を何れかの撮像部3から取り込んだうえでデコードし、このデコードされた情報と記録媒体80から読み出した情報とに応じた処理を実行する。例えば、制御部51は、デコードされた情報と記録媒体80から読み出した情報とに基づいてポイントを算定する。このポイントは、利用者Uが各種のサービスを享受するための対価となる数値である。この算定されたポイントは、利用者Uによる操作部54への操作に応じて通信部54から他の機器に送信される。例えば、通信部54は、各種の施設に設置されたリーダライタに対してアンテナ4からポイントを送信する。これにより、利用者Uは、電子機器D2に蓄積されたポイントに応じたサービスを享受することができる。
【0063】
<3.第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る電子機器について説明する。この電子機器は、RFIDのリーダライタとしての機能を備えた携帯電話機である。
【0064】
<3a.電子機器の構成>
図19、図21〜図23は、それぞれ異なる状態での本実施形態に係る電子機器の構成を示す斜視図であり、図20は電子機器の一部の拡大図である。これらの図に示すように、電子機器D3は、第1の筐体111と第2の筐体112とを有する。第1の筐体111と第2の筐体112とは各々の縁端部にてヒンジ部113を介して互いに連結されている。
【0065】
ヒンジ部113は、第2の筐体112に固定された二つの第1の軸受113aと、第1の軸受113aに回転可能に連結された第2の軸受(回転支持部)113bを有する。図20に示すように、第2の軸受113bは、第1の軸受113aの軸線を中心として、第2の筐体112と平行な閉状態から第2の筐体112に対して垂直な開状態まで、90°回転可能である。
【0066】
さらに第2の軸受113bは、第1の筐体111を回転可能に支持する。第2の軸受113bおよびこれに連結された第1の筐体111が開状態にある時、第1の筐体111は第2の軸受113bの軸線を中心として、180°回転可能である。図19は第1の筐体111の回転角度が0°の状態を示し、図21は第1の筐体111の回転角度が180°の状態を示す。
【0067】
この構成の下、利用者は第1の筐体111を図19に示す状態と図21に示す状態の間の様々な姿勢にすることができる。また、第2の軸受113bとともに第1の筐体111を第2の筐体112に対して閉じる時には、図22および図23に示すように第1の筐体111のいずれの面も第2の筐体112に対面させることが可能である。
【0068】
第2の筐体112のうち閉状態において第1の筐体111と対向する面には、利用者によって操作される複数の操作子541が配置されている。さらに、第1の筐体111の側面にも同様の操作子542および後述する撮像部のための撮像操作子543が配置されている。したがって、電子機器D3が閉状態とされて操作子541が第1の筐体111に隠れた場合であっても、利用者は操作子542を操作することによって電子機器D3に指示を入力することができる。また、撮像操作子543は開状態でも閉状態でも操作することができる。
【0069】
第1の筐体111には第1表示パネル121および第2表示パネル122が収容されている。第1表示パネル121および第2表示パネル122は画像を表示するための機器である。第1表示パネル121および第2表示パネル122は、第1の筐体111の互いに反対な面に現れるように配置されている。
【0070】
さらに、第1の筐体111の撮像操作子543と反対側の側面には撮像部130が収容されている。撮像部130は被写体を撮像するための機器(デジタルカメラ)である。図24に示すように、撮像部130は第1の筐体111の側方に露出し、撮像操作子543を利用者が押すことにより撮像部130が撮像している画像をメモりに格納することができる。
【0071】
図25は電子機器D3の機能的な構成を示すブロック図である。同図に示すように、第1表示パネル121および第2表示パネル122は駆動回路116A、116Bにそれぞれ接続されている。駆動回路116Aおよび116Bは、各表示パネルに種々の画像を表示させるための回路(例えば走査線駆動回路やデータ線駆動回路)を含んでいる。
【0072】
図25に示すように、各駆動回路116Aおよび116Bと撮像部130は制御部151に接続されている。この制御部151は、電子機器D3の各部を制御するための手段である。制御部151は、プログラムを格納する記憶回路やこのプログラムを実行することにより電子機器D3の各部を制御する制御回路とを有する(何れも図示略)。上述した操作子541、操作子542および撮像操作子543を含む操作部154は制御部151に接続されている。
【0073】
図25に示すように、制御部151には通信部152が接続されている。この通信部152には、第1アンテナ141と第2アンテナ142とが接続されている。各アンテナは、ICタグやICカードといった他の電子機器(記録媒体)から送信された電磁波の受信と記録媒体に対する電磁波の送信とを行なう。通信部152は、各アンテナを介して記録媒体と通信するための回路である。
【0074】
第1アンテナ141および第2アンテナ142の各々は各表示パネルに設置されている。すなわち、図21および図22に示すように、第1アンテナ141は第2表示パネル122の基板の表面に形成され、図19および図23に示すように、第2アンテナ142は第1表示パネル121の基板の表面に形成されている。第1アンテナ141および第2アンテナ142の各々は方形ループアンテナである。第1アンテナ141は第2表示パネル122の法線方向かつ第2表示パネル122が視認できる向き(第1表示パネル121の背面側)に指向性を示し、第2アンテナ142は第1表示パネル121の法線方向かつ第1表示パネル121が視認できる向き(第2表示パネル122の背面側)に指向性を示す。
【0075】
制御部151は、各アンテナを介した通信部152による通信に応じた画像が各表示パネルに表示されるように各駆動回路116Aおよび116Bを制御することができる。通信部152が通信に利用するアンテナとこの通信に応じた画像が表示される表示パネルとは予め対応付けられている。すなわち、制御部151は、第1アンテナ141を介した通信に応じた画像を第1表示パネル121に表示させる一方、第2アンテナ142を介した通信に応じた画像を第2表示パネル122に表示させる。
【0076】
さらに、制御部151は、撮像部130によって撮像された画像が表示パネル121,122のいずれかに表示されるように各駆動回路116Aおよび116Bを制御することができる。
【0077】
また、制御部151には回転センサ160が接続されている。回転センサ160は、第2の軸受(回転支持部)113bと第1の筐体111の相対的な回転角度が所定範囲Y°〜Z°(例えば0°〜90°)にあるか否かを判断する判断部である。すなわち、回転角度が所定範囲Y°〜Z°であると、このことを示す信号を回転センサ160は制御部151に供給する。傾斜角度が所定範囲外になると、回転センサ160はこの信号の供給を停止する。回転センサ160は継続的な傾斜角度の変化を計測するセンサでもよいが、傾斜角度が閾値X°以上になると作動するスイッチ式のセンサでもよい。例えば、回転センサ160は、電磁スイッチ式のセンサでもよいし、レバースイッチ式の機械的センサでもよいし、ボタンスイッチ式の機械的センサでもよい。
【0078】
第1の筐体111と第2の筐体112が二軸のヒンジ部113を介して連結された上記構成では、利用者が第1表示パネル121を自分に向けている場合(図19および図24に示す状態の場合)には、第1表示パネル121に制御部151で関連付けられており第1表示パネル121の背面側に指向性を示す第1アンテナ141が他の通信機器と通信しやすい状態にあると予想される。他方、利用者が第2表示パネル122を自分に向けている場合(図22に示す状態の場合)には、第2表示パネル122に制御部151で関連付けられおり第2表示パネル122の背面側に指向性を示す第2アンテナ142が他の通信機器と通信しやすい状態にあると予想される。この実施の形態では、第2の軸受113bと第1の筐体111の相対的な回転角度に応じて、他の通信機器と通信するアンテナを選択することにより、その角度で通信品位のより高いアンテナおよび視認しやすい表示パネルを使用する。すなわち、回転角度が所定範囲Y°〜Z°にあると回転センサ160が検知すると、通信部152が第1アンテナ141を介して他の通信機器と通信するように制御部151が制御する。他の場合には通信部152が第2アンテナ142を介して他の通信機器と通信するように制御部151が制御する。
【0079】
図26は、電子機器D3の制御部151の動作を示すフローチャートである。図26に示すように制御部151は、第2の軸受(回転支持部)113bと第1の筐体111の相対的な傾斜角度の情報を回転センサ160から取得する(ステップS11)。回転角度が所定範囲Y°〜Z°(0°〜90°)にある場合には回転センサ160は制御部151にその旨を示す信号を供給する。この場合にはステップS12の判断が肯定的になり、副表示パネル(第2表示パネル122)の周辺の第1アンテナ141を通信に使用するように制御部151が選択する(ステップS13)。
【0080】
またステップS13では、選択されたアンテナ以外のアンテナとの電気的な導通を遮断する。このようにひとつのアンテナ141のみが通信に利用されるから、電子機器D3が複数のアンテナを備えているにも拘わらず、各アンテナから送信される電磁波が互いに干渉するといった事態は回避される。
【0081】
次にステップS14では、使用するアンテナ141に対応する表示パネル121を駆動し(すでに駆動されていれば駆動を継続し)、他の表示パネル122の駆動を停止する(すでに停止されていれば停止を継続する)。従って、ステップS13で第1アンテナ141が選択された場合には、第1アンテナ141の反対側にある第1表示パネル121を利用者が視認した状態で、第1アンテナ141が他の通信機器と通信することができる。画像の表示に利用される表示パネル121以外の表示パネル122への給電を制御部151が停止することにより、アンテナ141によって送受信される電磁波に対して、画像を表示していない表示パネル122の動作に起因したノイズが混入する事態が回避される。
【0082】
さらに制御部151は撮像部130によって撮像された画像を第1表示パネル121に表示させてもよい。回転角度が所定範囲Y°〜Z°にある場合とは、利用者が第1表示パネル121を自分に向けている図19および図24に示す状態の場合であり、この場合には、撮像部130によって撮像された画像を第1表示パネル121によって視認しやすいからである。またこの場合には、撮像部130の撮像可能範囲は選択された第1アンテナ141の通信可能範囲と少なくとも部分的に一致し、利用者が撮像部130によって撮像された物品71を第1表示パネル121で視認しながら、その物品71に取り付けられた記録媒体73と第1アンテナ141を介して通信することができる。
【0083】
また回転角度が所定範囲外の場合(90°を越え180°以下の場合)すなわちステップS12の判断が否定的な場合には、主表示パネル(第1表示パネル121)の周辺の第2アンテナ142を通信に使用するように制御部151が選択する(ステップS15)。またステップS15では、選択されたアンテナ142以外のアンテナ141との電気的な導通を遮断する。次にステップS16では、使用するアンテナ142に対応する第2表示パネル122を駆動し(すでに駆動されていれば駆動を継続し)、他の表示パネル121の駆動を停止する(すでに停止されていれば停止を継続する)。従って、第2アンテナ142が選択された場合には、第2アンテナ142の反対側にある第2表示パネル122を利用者が視認した状態で、第2アンテナ142が他の通信機器と通信することができる。
【0084】
さらに制御部151は撮像部130によって撮像された画像を第2表示パネル122に表示させてもよい。回転角度が所定範囲Y°〜Z°にない場合とは、利用者が第2表示パネル122を自分に向けている図21に示す状態の場合であり、この場合には、撮像部130によって撮像された画像を第2表示パネル122によって視認しやすいからである。また、この場合には、撮像部130の撮像可能範囲は選択された第2アンテナ142の通信可能範囲と少なくとも部分的に一致し、利用者が撮像部130によって撮像された物品71を第2表示パネル122で視認しながら、その物品71に取り付けられた記録媒体73と第2アンテナ142を介して通信することができる。
【0085】
<3b.電子機器D3の使用形態>
電子機器D3の使用形態は、上記の第1実施形態に係る電子機器D1の使用形態と同様である。利用者Uは、図19または図21に示すように、物品71に付加された記録媒体73(ここではICタグ)に対して上記のステップS13またはS15で選択されたアンテナが向くように電子機器D3の姿勢を維持したうえで操作部154を操作する。そして利用者は、操作部154を適宜に操作することによって第1モードないし第3モードの何れかの動作モードを選択することができる。
【0086】
<4.第4実施形態>
上記の第3実施形態に係るリーダライタとしての電子機器に、第2実施形態と同様の修正を施すことにより、第4実施形態の電子機器を得ることが可能である。これは、RFIDのICタグまたはICカードとしての機能を備えた携帯電話機である。この電子機器の使用形態は、上記の第2実施形態に係る電子機器D2の使用形態と同様である。
【0087】
<5.変形例>
上記各実施形態に対しては種々の変形が施される。具体的な変形の態様は以下の通りである。上記各実施形態や以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
【0088】
(1)上記各実施形態においては、各表示パネルにアンテナが配置された構成を例示したが、アンテナが配置される位置やその形状は任意に変更される。例えば、各アンテナを表示パネルとは別個の位置に配置してもよいし、方形ループアンテナ以外の形状の指向性アンテナを採用してもよい。すなわち、表示パネルの背面側に指向性を示すアンテナまたはこのような指向性を示す位置や姿勢に配置されたアンテナであればよい。また、上記第1および第2実施形態においては、制御部51と通信部52とが別個のICチップに搭載された構成を例示したが、制御部51と通信部52とが単一のICチップに搭載された構成も採用され得る。
【0089】
(2)上記各実施形態においては、動作モードとして第1モードないし第3モードを例示したが、電子機器Dの動作はこれに限られない。また、これらの各動作モードを適宜に組み合わせてもよい。例えば、通信部54,154による通信の開始前には、各実施形態に第2モードとして示したように撮像部が撮像した画像を表示パネルに表示させる一方、通信部54,154による通信が開始されると、各実施形態に第1モードとして示したように通信に応じた画像を表示パネルに表示させるといった態様も採用される。
【0090】
(3)上記各実施形態においては、表示パネルとして液晶表示パネルを例示したが、各表示パネルの構成の如何は不問である。例えば、有機EL表示パネルや電気泳動表示パネルなど各種の表示機器が本発明における表示パネルとして採用される。
【0091】
(4)第3実施形態および第4実施形態については、第2の筐体112のうち操作子541と反対側の面に、第1実施形態および第2実施形態と同様の第3アンテナを設けてもよい。そして、第1実施形態および第2実施形態と同様の開閉センサを用いて、第1の軸受113aに対する第2の軸受113bの傾斜角度に応じて、第3アンテナの使用を選択するようにしてもよい。つまり閉状態では第3アンテナを通信に使用し、開状態では第1の筐体111の回転角度に応じて第1アンテナ41または第2アンテナ42を使用するようにしてよい。また第2の筐体112のうち操作子541と反対側の面にさらに撮像部を設け、閉状態でこの撮像部に撮像された画像を第1表示パネル121と第2表示パネル122のうち外から視認できる方に表示させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子機器が開状態とされたときの斜視図である。
【図2】同電子機器を図1とは反対側からみたときの斜視図である。
【図3】同電子機器が閉状態とされたときの斜視図である。
【図4】同電子機器を図3とは反対側からみたときの斜視図である。
【図5】同電子機器における各表示パネルと各アンテナとの位置関係を示す斜視図である。
【図6】同電子機器の機能的な構成を示すブロック図である。
【図7】同電子機器の制御部の動作を示すフローチャートである。
【図8】同電子機器を利用者の上方からみたときの撮像可能範囲および通信可能範囲と表示パネルとの位置関係を示す図である。
【図9】同電子機器を利用者の側方からみたときの撮像可能範囲および通信可能範囲と表示パネルとの位置関係を示す図である。
【図10】同電子機器が閉状態にあるときの撮像可能範囲および通信可能範囲と表示パネルとの位置関係を示す図である。
【図11】同電子機器が第1モードにて使用されるときの様子を示す斜視図である。
【図12】同電子機器が第1モードにて使用されるときの他の様子を示す斜視図である。
【図13】同電子機器が第2モードにて使用されるときの様子を示す斜視図である。
【図14】同電子機器が第3モードにて使用されるときの様子を示す斜視図である。
【図15】第3モードにおける制御部の処理の内容を示す図である。
【図16】第3モードにおける制御部の他の処理の内容を示す図である。
【図17】本発明の第2実施形態に係る電子機器が開状態とされたときの斜視図である。
【図18】同電子機器が使用されるときの様子を示す斜視図である。
【図19】本発明の第3実施形態に係る電子機器が開状態とされたときの斜視図である。
【図20】同電子機器の一部の拡大斜視図である。
【図21】同電子機器の開状態であるが図19と異なる姿勢を示す斜視図である。
【図22】同電子機器の閉状態を示す斜視図である。
【図23】同電子機器の閉状態であるが図22と異なる姿勢を示す斜視図である。
【図24】図19に示す状態の同電子機器の別方向からみた斜視図である。
【図25】同電子機器の機能的な構成を示すブロック図である。
【図26】同電子機器の制御部の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0093】
D1,D2,D3……電子機器、11,111……第1の筐体、12,112……第2の筐体、13……ヒンジ、15……FPC、16A,16B,116A,116B……駆動回路、18……接続スロット、2……表示パネル、21,121……第1表示パネル、211,221……表示面、22,122……第2表示パネル、201……背面側基板、202……表示側基板、3……撮像部、31……第1撮像部、32……第2撮像部、33……第3撮像部、130……撮像部、4……アンテナ、41,141……第1アンテナ、42,142……第2アンテナ、43……第3アンテナ、51,151……制御部、52,152……通信部、54,154……操作部、60……開閉センサ、71……物品、73……記録媒体、74……QRコード、80……記録媒体、113……ヒンジ部113、113a……第1の軸受、113b……第2の軸受(回転支持部)、160……回転センサ、Ac……通信可能範囲、As……撮像可能範囲。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の筐体と、
前記第1の筐体に回転可能に連結され、前記第1の筐体に重なる閉状態と前記第1の筐体から離間した開状態との間を前記第1の筐体に対して回転可能な第2の筐体と、
前記第1の筐体に配置され画像を表示する第1表示パネルと、
前記第1の筐体に配置され前記第1表示パネルとは反対側に画像を表示する第2表示パネルと、
前記第1の筐体に配置され前記第1表示パネルの背面側に指向性を示す一方のアンテナと、
前記第2の筐体に配置され、前記第2の筐体が前記第1の筐体に対して前記閉状態にある時に前記第2表示パネルの背面側に指向性を示す他方のアンテナと、
前記一方または他方のアンテナを介して他の電子機器と通信する通信部と、
前記通信部による前記一方のアンテナを介した通信に応じた画像を前記第1表示パネルに表示させる一方、前記通信部による前記他方のアンテナを介した通信に応じた画像を前記第2表示パネルに表示させる制御部と、
前記第1の筐体と前記第2の筐体の間の相対的な傾斜角度が閾値に達したか否かを判断する判断部とを備え、
前記傾斜角度が閾値に達したと前記判断部が判断すると、前記通信部は前記一方のアンテナを介して他の通信機器と通信し、前記判断が否の場合には前記通信部は前記他方のアンテナを介して他の通信機器と通信する、
電子機器。
【請求項2】
第1の筐体と、
第2の筐体と、
前記第2の筐体に回転可能に連結されさらに前記第1の筐体を回転可能に支持する回転支持部と、
前記第1の筐体に配置され画像を表示する第1表示パネルと、
前記第1の筐体に配置され前記第1表示パネルとは反対側に画像を表示する第2表示パネルと、
前記第1の筐体に配置され前記第1表示パネルの背面側に指向性を示す一方のアンテナと、
前記第1の筐体に配置され前記第2表示パネルの背面側に指向性を示す他方のアンテナと、
前記一方または他方のアンテナを介して他の電子機器と通信する通信部と、
前記通信部による前記一方のアンテナを介した通信に応じた画像を前記第1表示パネルに表示させる一方、前記通信部による前記他方のアンテナを介した通信に応じた画像を前記第2表示パネルに表示させる制御部と、
前記回転支持部と前記第1の筐体の相対的な回転角度が所定範囲にあるか否かを判断する判断部とを備え、
前記回転角度が所定範囲内にあると前記判断部が判断すると、前記通信部は前記一方のアンテナを介して他の通信機器と通信し、前記判断が否の場合には前記通信部は前記他方のアンテナを介して他の通信機器と通信する、
電子機器。
【請求項3】
前記通信部は、前記一方のアンテナを介して通信しているときには前記他方のアンテナとの電気的な導通を遮断し、前記他方のアンテナを介して通信しているときには前記一方のアンテナとの電気的な導通を遮断する請求項1または請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記制御部は、前記通信部が前記一方のアンテナを介して通信しているときには前記第2表示パネルの駆動を停止させ、前記通信部が前記他方のアンテナを介して通信しているときには前記第1表示パネルの駆動を停止させる請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電子機器。
【請求項5】
前記一方のアンテナが指向する方向に存在する被写体を撮像する一方の撮像部と、
前記他方のアンテナが指向する方向に存在する被写体を撮像する他方の撮像部とを具備し、
前記制御部は、前記一方のアンテナを介して通信するときには前記一方の撮像部によって撮像された画像を前記第1表示パネルに表示させる一方、前記他方のアンテナを介して通信するときには前記他方の撮像部によって撮像された画像を前記第2表示パネルに表示させる請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
前記第2の筐体に配置された撮像部を具備し、
前記通信部が前記一方のアンテナを介して通信可能なときには、前記制御部は前記撮像部によって撮像された画像を前記第1表示パネルに表示させ、
前記通信部が前記他方のアンテナを介して通信可能なときには、前記制御部は前記撮像部によって撮像された画像を前記第2表示パネルに表示させる請求項2に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2006−42118(P2006−42118A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221408(P2004−221408)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】