説明

電子機器

【課題】熱弾性効果に起因するQ値の低下の防止と同時にCI値を下げることを図る。
【解決手段】本発明の電子機器に用いる振動片100は、基部10と、基部10より延伸して形成され、屈曲振動する振動部としての一対の振動腕20、21とを備えている。振動腕20、21には、主面100a側に溝20a、20b、21a、21bが形成され、他方の主面100b側に溝20c、21cが形成されている。振動腕20の外側面20dと溝20aとによって外壁20fが形成される。同様に、外側面20eと溝20bによって外壁20gが形成される。また溝20a、20b、20cによって、内壁20h、20iが形成される。振動腕21も振動腕20と同様に外壁21f、21gと内壁21h、21iが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動腕を有する振動片を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、屈曲振動片を小型化するとQ値が小さくなり、屈曲振動を阻害することが知られている。これは、熱の移動により温度平衡させるまでの緩和時間に反比例する緩和振動と、屈曲振動片の振動周波数とが、近づいて起こる熱弾性効果によるものである。つまり、屈曲振動片が屈曲振動することにより弾性変形が生じ、収縮される面の温度は上昇し、伸張される面の温度は下降するため、屈曲振動片の内部に温度差が発生する。この温度差は、熱伝導(熱移動)により温度平衡状態に近づくために、機械的に取り出せるエネルギーが減少してQ値が劣化する。
【0003】
このため、屈曲振動片の矩形状断面に溝または貫通孔を形成し、振動子の収縮される面から伸張される面に発生する熱の移動を阻止して、熱弾性効果に起因するQ値変動の抑制を図っている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
また非特許文献1では、音叉型水晶振動子の一構造例について熱弾性方程式によるQ値の計算が行われている。その計算結果から、25℃におけるCI値の約95%が熱弾性効果によるものであると報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平2−32229号公報(4頁〜5頁、図1〜図3)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】第36回EMシンポジウム、5頁〜8頁、「熱弾性方程式による音叉型水晶振動子のQ値の解析」、伊藤秀明、玉木悠也
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来技術を用いても、屈曲振動部に貫通孔を設けると、非貫通部分各々に収縮される面と伸張される面が発生して結果としてQ値を劣化させてしまう。また、屈曲振動部の溝を特許文献1のように設けても、熱弾性効果に起因する振動片のQ値低下の防止効果は不十分であった。このため、熱弾性効果に起因するQ値の低下の防止を図るには、さらに改良する余地があり、課題とされている。また、熱弾性効果によるQ値劣化に伴ってCI値が高くなるので、同時にCI値を下げるための改良も必要であった。このような振動特性劣化が懸念される振動片を用いた電子機器は、その電子機器の機能を発揮できなくなる虞があるという課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも上述の課題の一つを解決するように、下記の形態または適用例として実現され得る。
【0009】
〔適用例1〕本適用例による電子機器は、振動片と、前記振動片を駆動させる回路部と、を有し、前記振動片は、基部と、前記基部より延伸して形成され、屈曲振動する屈曲振動部を備える振動腕とを備え、前記屈曲振動部は、前記振動腕の前記屈曲振動する方向に沿って形成された1対の主面と、前記振動腕の前記主面と交差する外側面と、を備え、前記屈曲振動部は、3以上の溝部が形成され、前記溝部は、前記主面の両面もしくはいずれか一方の面に前記主面と交差する方向に形成され、前記外側面と該外側面に最も近い前記溝部とによって形成される外壁と、隣り合う前記溝部により形成される内壁の一部もしくは全部とを電気的に屈曲振動させることを特徴とする。
【0010】
上述の適用例によれば、振動腕における屈曲振動部を溝により構成される複数の壁(隔壁)を備えて屈曲振動させることにより、屈曲変形により生じる内部の熱の移動経路を長くすることにより、屈曲振動を阻害する緩和振動を抑制し、熱弾性効果によるQ値の低下を抑えることができる。また、実質的な励振電極の面積を増加させることができるため、機械系と電気系の変換効率を高め、CI値の上昇も抑制することができる。従って、この振動片を用いた電子機器は、電子機器としての機能を維持することが可能となる。
【0011】
〔適用例2〕上述の適用例において、前記内壁を形成する隣り合う前記溝部の一方の前記溝部の開口部が前記主面の一方の前記主面に形成され、他方の前記溝部の開口部が他方の前記主面に形成され、一方の前記主面は1以上の前記溝部を備え、他方の前記主面は2以上の前記溝部を備えることを特徴とする。
【0012】
上述の適用例によれば、熱の移動経路をより長くできるため、熱平衡時間がさらに長くなり、緩和振動の抑制を強くすることができる。
【0013】
〔適用例3〕上述の適用例において、前記内壁を形成する隣り合う前記溝部の少なくとも一部が、前記主面と交差する方向に重なっていることを特徴とする。
【0014】
上述の適用例によれば、熱の移動経路をさらに長くできるため、緩和振動の抑制をより強くすることができるとともに、溝部の内壁および外壁に形成する励振電極の面積が増加することにより、振動に対する機械系と電気系との変換効率を向上させることによってCI値を小さくすることができる。
【0015】
〔適用例4〕上述の適用例において、前記基部より2本の前記振動腕が平行に延出された音叉型振動片であることを特徴とする。
【0016】
上述の適用例によれば、Q値が高くCI値の低い、優れた特性の薄型の振動片を実現することができる。
【0017】
〔適用例5〕上述の適用例において、前記基部および前記振動腕が圧電材料により形成されていることを特徴とする。
【0018】
〔適用例6〕上述の適用例において、前記圧電材料が水晶であることを特徴とする。
【0019】
上述の適用例によれば、振動特性に優れた薄型の振動片を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】電子機器に用いる振動片の一実施形態を示す斜視図。
【図2】実施形態に係る振動片の、(a)は平面図、(b)は(a)におけるA−A’部の断面図。
【図3】実施形態に係る振動片に形成された電極を示す、(a)は平面図、(b)は(a)の裏平面図。
【図4】図3(a)における、(a)はP−P’部の断面図、(b)はQ−Q’部の断面図、(c)はR−R’部の断面図。
【図5】本発明における振動片の等価回路図。
【図6】振動片の溝部のその他の形態を示す断面図。
【図7】振動片の溝部のその他の形態を示す断面図。
【図8】上記実施形態の振動片を用いた振動子の、(a)は平面図、(b)は(a)におけるB−B’部の断面図。
【図9】上記実施形態の振動片を用いた発振器の断面図。
【図10】本発明に係る電子機器の一例としての携帯電話機の概略を示す斜視図。
【図11】本発明に係る電子機器の一例としての携帯電話機の回路ブロック図。
【図12】本発明に係る電子機器の一例としてのパーソナルコンピューターの概略を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、振動片を用いた電子機器の一実施形態を説明する。
【0022】
(振動片)
図1は、電子機器に備わる振動片の一実施形態を示す概略斜視図である。
振動片100の基部10と振動部としての振動腕20、21の材料としては圧電材料が好ましく、また、圧電材料のうちの水晶が好適であるが、例えばタンタル酸リチウム(TiTaO3)、四ホウ酸リチウム(Li247)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)などの圧電体、または、シリコンなどの半導体であっても適用できる。本実施形態では、水晶を用いた実施形態を説明する。
【0023】
振動片100は水晶基板から形成され、主面100aと他方の主面100bを持つ板状基板を、基部10と、基部10から延伸される振動腕20および21とを備えた、いわゆる音叉型振動片の形態である。基部10には、さらに延伸した支持アーム10a、10bが振動腕20、21とは離間して設けられている。
【0024】
振動片100の平面図を図2(a)に、図2(a)のA−A’断面図を図2(b)に示す。振動腕20、21には、図2(b)に示すように、主面100a側に溝20a、20b、21a、21bが形成され、他方の主面100b側に溝20c、21cが形成されている。本実施形態では主面100a側には溝20a、20bおよび21a、21bの2本の溝が、他方の主面100b側には溝20c、21cの溝が1本、各振動腕20、21に形成されている。
【0025】
振動腕20の外側面20dと溝20aとによって外壁20fが形成される。ここで、外側面とは、溝により形成される側面としての内壁および外壁とは異なる側面であることを明確にするための呼称である(以下、同じ)。
同様に、外側面20eと溝20bによって外壁20gが形成される。また溝20a、20b、20cによって、内壁20h、20iが形成される。具体的には、内壁20hは、溝20aの少なくとも一部と溝20cの少なくとも一部とが、主面100a、100bに交差もしくは直交する方向について重なるように配置されることで、形成されている。そのように形成するためには、溝20aの深さと溝20cの深さとの和を、主面100aと主面100bとの間の距離より大きくすればよい。内壁20iは、溝20bの少なくとも一部と溝20cの少なくとも一部とが、主面100a、100bに交差もしくは直交する方向について重なるように配置されることで、形成されている。そのように形成するためには、溝20bの深さと溝20cの深さとの和を、主面100aと主面100bとの間の距離より大きくすればよい。なお、溝20a、20b、および20cの深さは、主面100aと主面100bとの間の距離より小さくなっている。振動腕21も振動腕20と同様に外壁21f、21gと内壁21h、21iが形成される。
【0026】
振動腕20の外壁20f、20gと内壁20h、20i、および振動腕21の外壁21f、21gと内壁21h、21iには、図2(b)には図示しないが、後述する振動腕20、21を屈曲振動させるための励振電極が形成されている。形成されている励振電極に電流を流し、外壁20f、20g、21f、21g、内壁20h、20i、21h、21iを交互に伸縮させることで、振動腕20、21を屈曲振動させる励振部を構成している。
【0027】
図3は振動片100の形成される電極配線を模式的に示したもので、(a)の平面図に対して裏面から見た平面図を(b)に示す。なお以降の説明の中で、便宜的に図3(a)で示す面を表面、(b)で示す面を裏面と呼ぶ。図3(a)および(b)に示すように、振動片100の表裏面には励振用に電極30と電極40が形成され、電極30と電極40には交番電流が図示しない発振回路から流され、振動腕20と21が屈曲振動をする。
【0028】
電極30および40は、表面では振動片100を実装するときに、図示しない外部接続端子と電気的に接続し、固定される支持アーム10aおよび10bを含む基部10に引き回され、基部電極30i、40iを形成する。さらに、基部10に形成された基部電極30iは基部10の側面部を経由し裏面の基部電極30iを形成する。基部電極30i、40iから、励振部となる振動腕20、21の溝へ延伸されている。
【0029】
次に、図3(a)における溝を含むQ−Q’断面を示す図4を参照しながら電極膜について説明する。先ず、振動腕20について説明する。振動腕20の表面には溝20a、20bが、裏面には溝20cが形成されている。この溝20a、20b、20cと振動腕20の外側面20d、20eとによって、外壁20f、20g、内壁20h、20iが形成されている。この外壁20f、20g、内壁20h、20iの壁面に沿って電極30、40が配線されている。
【0030】
外壁20fでは、外側面20d部分には励振電極30aが、溝20a部分には励振電極40aが形成される。内壁20hでは、溝20a部分に励振電極30bが、溝20c部分に励振電極40bが形成される。内壁20iでは、溝20c部分に励振電極40cが、溝20b部分に励振電極30cが形成される。外壁20gでは、溝20b部分に励振電極40dが、外側面20e部分に励振電極30dが形成される。
【0031】
ここで、電極30、40に電流を流すと、励振電極30aと40a、励振電極30bと40bが形成された外壁20fと内壁20hには同方向の電界が発生する。また、励振電極30dと40d、励振電極30cと40cが形成された外壁20gと内壁20iには同方向で、外壁20fと内壁20hとは逆方向の電界が発生する。従って、例えば、外壁20fと内壁20hとを伸ばす方向の電界を外壁20fと内壁20hの中に発生させた場合には、外壁20gと内壁20iには逆の縮める方向の電界を発生させ、外壁20fと内壁20hとを縮める方向に電界を外壁20fと内壁20hの中に発生させた場合には、外壁20gと内壁20iには逆の伸ばす方向の電界を発生させる。これを交互に繰り返すことで振動腕20は図3(a)の振動腕20の先端部に描いた矢印方向に示す屈曲振動を繰り返す。
【0032】
同様に振動腕21について説明する。振動腕21では、外壁21fと内壁21hに同方向に電界が発生するように、外壁21gと内壁21iとには同方向で、外壁21fと内壁21hとは逆方向の電界を発生させるように電極30と40が引き回されている。従って、例えば、外壁21fと内壁21hとを伸ばす方向に電界を外壁21fと内壁21hの中に発生させた場合には、外壁21gと内壁21iには逆の縮める方向の電界を発生させる。外壁21fと内壁21hとを縮める方向に、電界を外壁21fと内壁21hの中に発生させた場合には、外壁21gと内壁21iには逆の伸ばす方向の電界を発生させる。これを交互に繰り返すことで振動腕21は図3(a)の振動腕21の先端部に描いた矢印方向に示す屈曲振動を繰り返す。
【0033】
さらに振動腕20の外壁20f、内壁20hと、振動腕21の外壁21f、内壁21hとは同方向の電界を発生させる電極配線がされている。また、振動腕20の外壁20g、内壁20iと、振動腕21の外壁21g、内壁21iとは同方向で、なお且つ、振動腕20の外壁20f、内壁20hと、振動腕21の外壁21f、内壁21hとは逆方向の電界を発生させる電極配線がされている。これにより、振動腕20と振動腕21とは、先端部が接近と離間を繰り返す音叉型振動片としての屈曲振動をする。
【0034】
上述の通り、振動腕20および21に備える屈曲振動部の各々の壁を電気的に屈曲振動させて伸縮させることで、振動腕20と21は屈曲振動している。このとき各壁の壁面は、壁が収縮すると壁面の温度は上昇し、壁が伸張すると壁面の温度は下降する。振動腕20の場合、例えば外壁20fと内壁20hが伸張し、外壁20gと内壁20iが収縮すると、外壁20fと内壁20hの温度は上昇し、外壁20gと内壁20iの温度は下降する。従って、外壁20f、内壁20hと、外壁20g、内壁20iとの間には温度差が生じる。この温度差は熱伝導(熱移動)により温度平衡状態に近づくために機械的に取り出せるエネルギーが減少してQ値が劣化する。そして屈曲振動の周波数と、ほぼ温度平衡状態に到達するまでの緩和時間τoに反比例する緩和周波数foが近いほどQ値の劣化は大きい。ここで、緩和振動数foと緩和時間τoとは、fo=1/(2πτo)で示される。
【0035】
振動腕20および21の屈曲振動部を複数の壁によって形成し、振動部の熱伝達経路を長くすることにより、緩和時間τが長くなる。従って、緩和振動数foを屈曲振動周波数から遠ざけることとなり、熱弾性効果によるQ値の低下を抑制することができる。
【0036】
また、本発明による振動片は、励振電極の面積を実質的に増加させることができるため、振動に対する機械系と電気系との変換効率を向上させることができる。すなわち、図5の等価回路に示すように、図5における左側からの電気系への入力インピーダンスZとしての機械系の抵抗値、すなわちCI値は、Rm/Φ2(Φは機械系と電気系との変換効率)で表され、変換効率Φを向上させることができることから、CI値を小さくすることができる。
【0037】
なお、上述では屈曲振動モードの振動片として説明したが、屈曲振動モードを主体として他の振動モード、例えば捻り振動モードを含む振動片であっても上述と同様の効果、Q値の低下防止と高いCI値を有する振動片を得ることができる。
【0038】
なお、本実施形態では、溝の配置について、振動片100の振動腕20の主面100a側には溝20a、20b、振動腕21には溝21a、21bの2本が形成され、各振動腕の他方の主面100b側には溝20c、21cの各1本が形成された形態を説明したが、振動腕20もしくは21のどちらかの振動腕の表面に溝1本、裏面側に溝2本が形成された形態でも良い。
【0039】
また、各振動腕20、21の中央溝である溝20cおよび21cに形成される励振電極40b、40cおよび励振電極30f、30gは溝底部で離間しているが、この励振電極40b、40cおよび励振電極30f、30gは同相の電流が流れる励振電極であるので、溝底部で繋がっていても良い。また、溝底部で繋げることで電極作成を容易にすることができる。
【0040】
なお、振動腕20および21に形成される溝の配置は、図6に示す振動腕20および21の溝部分の断面形状のように、溝20a、20b、20cの開口が一方の主面側だけ、図6では主面100a側だけに開口していても良い。また、図示しないが、例えば他の一方の振動腕21の溝開口が、一方の振動腕20の溝開口と同じ方向であっても、他方の主面100b側に開口していても良い。
【0041】
図7は、屈曲振動部に形成される溝、壁の形成形態のその他の形態を示す断面図である。図7(a)および(b)は、その他の形態の振動片であり、図3(a)におけるQ−Q’断面位置での断面形状を示す。図7(a)に示す振動片は、振動腕20、21の主面100a側に溝50a、50bの2本の溝と、他方の主面100b側に溝50c、50dの2本の溝が形成され、壁が5つ構成される。このとき電極30と40は外壁50e、50iと内壁50f、50hに形成される。中央部の内壁50gは、振動腕20、21の中央部に形成されているため、振動腕20、21の屈曲振動には寄与しない壁であるため電極30あるいは40は形成されない。
【0042】
図7(b)に示す振動片は、振動腕20、21の主面100a側に溝60a、60b、60cの3本の溝と、他方の主面100b側に溝60d、60eの2本の溝が形成され、壁が6つ構成される。このとき電極30と40は外壁60f、60kと内壁60g、60h、60iに形成される。
【0043】
上述の図7で説明した形態から、本願発明の溝は、振動腕の一方の面には2本以上の溝を形成し、他の一方の面には1本以上の溝を形成することで、Q値の低下の抑制と、高いCI値の振動片を実現できる。
【0044】
(振動子)
本発明の電子機器には、上述の振動片100を用いた振動子を有する構成としてもよい。図8(a)は、振動片を用いた振動子の蓋体を除いて内部を露出させた状態での平面図、図8(b)は図8(a)におけるB−B’線の断面を示す断面図である。
図8において、振動片100は、第1基板201、第2基板202、第3基板203を積層し形成したパッケージ200の内部に、第2基板202上に備えた電極部500に、振動片100の支持アーム10a、10bの電極30、40を対向させて導電性接着剤600により電気的に接続し、パッケージ200に固定される。電極部500は図示しないパッケージ200内の経路を経て、パッケージ200外部に形成された実装端子501と繋がっている。
【0045】
振動片100が固定されたパッケージ200の開口の端部に蓋体300が封止剤400によって、減圧チャンバー内でパッケージ200に固定され、振動子1000の内部が減圧状態に保たれる。こうして得られた振動子1000は、実装端子501を介して図示しない発振回路からの交番電流により振動片100を屈曲振動させることができる。
【0046】
上記構成の振動子1000によれば、上述の振動片100を用いたことにより、Q値の低下防止と高いCI値を有する振動子を得ることができる。
【0047】
(発振器)
また、本発明の電子機器には、上述の振動片100を用いた発振器を有する構成としてもよい。図9は、振動片を用いた発振器2000を示す断面図である。発振器2000は、上述の振動子1000に対して、振動片100を駆動させる駆動回路を含むICチップを備えた点でのみ異なるため、振動子1000と同様の構成の説明は省略し、同じ構成には同一の符号を付与する。
【0048】
図9に示すように、発振器2000は、パッケージ200の内部の第2基板202上に設けられた電極部500に振動片100が固定されている。さらに、第1基板201にはICチップ700が接着剤などにより固定され、ICチップ700の上面に形成されたIC接続パッド701と第1基板201上に形成された内部接続端子502とが金属ワイヤー800で電気的に接続されている。
【0049】
上記構成の発振器によれば、上述の振動片100を用いたことにより、Q値の低下防止と高いCI値を有する発振器を得ることができる。
【0050】
(電子機器)
上記で説明した各実施形態の振動片100は、小型化しても、振動腕20および21の屈曲振動する振動部を複数の壁によって形成することにより、振動部の熱伝達経路を長くしてQ値の低下を抑制したり、励振電極の面積を増加させて振動に対する機械系と電気系との変換効率を向上させることによりCI値を小さくできたりすることができる。この振動片、または、この振動片を用いた振動子や発振器は、各種の電子機器に適用することができ、得られる電子機器は、信頼性の高いものとなる。なお、本電子機器には、上述した振動子および発振器を用いてもよい。
【0051】
図10、および図11は、本発明の電子機器の一例としての携帯電話機を示す。図10は、携帯電話機の外観の概略を示す斜視図であり、図11は、携帯電話機の回路部を説明する回路ブロック図である。
この携帯電話機3000には、上述の振動片100を使用することができる。振動片100の構成、作用については、同一符号を用いるなどして、その説明を省略する。
図10に示すように携帯電話機3000は、表示部であるLCD(Liquid Crystal Display)3010、数字等の入力部であるキー3020、マイクロフォン3030、スピーカー3110、図示しない回路部などが設けられている。
図11に示すように、携帯電話機3000で送信する場合は、使用者が、自己の声をマイクロフォン3030に入力すると、信号はパルス幅変調・符号化ブロック3040と変調器/復調器ブロック3050を経てトランスミッター3060、アンテナスイッチ307を経てアンテナ3080から送信されることになる。
【0052】
一方、他人の電話機から送信された信号は、アンテナ3080で受信され、アンテナスイッチ3070、受信フィルター3090を経て、レシーバー3100から変調器/復調器ブロック3050に入力される。そして、変調又は復調された信号がパルス幅変調・符号化ブロック3040を経てスピーカー3110に声として出力されるようになっている。
このうち、アンテナスイッチ3070や変調器/復調器ブロック3050等を制御するためのコントローラー3120が設けられている。
このコントローラー3120は、上述の他に表示部であるLCD3010や数字等の入力部であるキー3020、更にはRAM3130やROM3140等も制御するため、高精度であることが求められる。また、携帯電話機3000の小型化の要請もある。
このような要請に合致するものとして上述の振動片100が用いられている。
なお、携帯電話機3000は、他の構成ブロックとして、温度補償水晶発振器3150、レシーバー用シンセサイザー3160、トランスミッター用シンセサイザー3170などを有しているが説明を省略する。
【0053】
この携帯電話機3000に用いられている上記振動片100は、振動腕20および21の屈曲振動部を複数の壁によって形成していることにより、熱弾性効果によるQ値の低下を抑制することができるとともに、CI値を小さくすることができるので、振動特性を維持しつつ、より小型化が可能である。従って、この振動片を用いた電子機器は、電子機器としての機能を継続して維持することが可能となる。
【0054】
本発明の振動片100を備える電子機器としては、図12に示すパーソナルコンピューター(モバイル型パーソナルコンピューター)4000も挙げられる。パーソナルコンピューター4000は、表示部4010、入力キー部4020などを備えており、その電気的制御の基準クロックとして上述の振動片100が用いられている。
また、本発明の振動片100を備える電子機器としては、前述に加え、例えばディジタルスチールカメラ、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンター)、ラップトップ型パーソナルコンピューター、テレビ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレーター等が挙げられる。
【0055】
以上、本発明の電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、本発明は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
例えば、前述した実施形態では、振動片が振動部としての2の振動腕を有する場合を例に説明したが、振動腕の数は、3つ以上であってもよい。
【0056】
また、上記実施形態で説明した振動片は、電圧制御水晶発振器(VCXO)、温度補償水晶発振器(TCXO)、恒温槽付水晶発振器(OCXO)等の圧電発振器の他、ジャイロセンサー等に適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
10…基部、20,21…振動部としての振動腕、100…振動片、3000,4000…電子機器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動片と、
前記振動片を駆動させる回路部と、
を有し、
前記振動片は、
基部と、前記基部より延伸して形成され、屈曲振動する屈曲振動部を備える振動腕とを備え、
前記屈曲振動部は、前記振動腕の前記屈曲振動する方向に沿って形成された1対の主面と、前記振動腕の前記主面と交差する外側面と、を備え、
前記屈曲振動部は、3以上の溝部が形成され、
前記溝部は、前記主面の両面もしくはいずれか一方の面に前記主面と交差する方向に形成され、
前記外側面と該外側面に最も近い前記溝部とによって形成される外壁と、隣り合う前記溝部により形成される内壁の一部もしくは全部とを電気的に屈曲振動させる、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記内壁を形成する隣り合う前記溝部の一方の前記溝部の開口部が前記主面の一方の前記主面に形成され、他方の前記溝部の開口部が他方の前記主面に形成され、
一方の前記主面は1以上の前記溝部を備え、他方の前記主面は2以上の前記溝部を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記内壁を形成する隣り合う前記溝部の少なくとも一部が、前記主面と交差する方向に重なっている、
ことを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記基部より2本の前記振動腕が平行に延出された音叉型振動片である、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記基部および前記振動腕が圧電材料により形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記圧電材料が水晶である、ことを特徴とする請求項5に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−129680(P2012−129680A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277757(P2010−277757)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】