説明

電子線装置の位置決め方法及び装置

【課題】本発明は電子線装置の位置決め方法及び装置に関し、周期的な揺らぎを減少させることができる電子線位置決め方法及びその機能を具備する電子線装置を提供することを目的としている。
【解決手段】電子線を発生させる電子源1と、当該電子線を加速、減速、収束及び偏向させる光学系と、当該電子線を走査し、またはブランキング制御するための制御系と、前記電子線が照射される材料7を保持するためのステージ6と、該ステージ6の位置を計測するためのステージ測長系16aと、前記材料7から放出される電子線を検出する電子検出部18と、該電子検出部18から得られた検出信号を処理するための信号処理系19とからなる電子線装置において、前記ステージ測長系16aからの補正信号に振幅と位相を調整可能な周期信号を加算するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は走査型電子顕微鏡や電子線描画装置などの電子線装置において電子線照射位置精度を向上するための電子線装置の位置決め方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステージ上にマスク基板を載置すると共に、該ステージの端部に反射鏡を取り付けて該反射鏡を用いて位置をレーザ測長系で測長しながらステージを移動させて前記マスク基板を電子線露光するようにした方法において、前記マスク基板の端部にマークの形成された複数の部材を離間して取り付け、各々の部材のマークを電子ビーム(以下電子線ともいう)で検出することにより前記マスク基板の位置ずれと回転量と基板自身の熱伸縮を検出し、該検出に基づいて電子ビームの偏向量及び若しくはステージの移動量を補正して露光するようにした技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図5は従来装置の構成例を示す図である。電子源1から放出された電子ビームEBは集束レンズ21と中間レンズ2とブランキング電極3を通過し、対物レンズ5を介してステージ6上に載置された材料7上に細かく絞った電子ビームEBとして照射される。材料7上での走査は偏向電極8により行われる。材料7上を電子ビームEBで走査すると、材料表面から各種の電子が放出される。
【0004】
この放出電子は、電子検出部18で検出され、信号処理系19に送られる。該信号処理系19内の演算部19aが取り込んだ検出信号に所定の演算を行ない、計算機20に送る。計算機20は送られてきた信号を表示部20aに表示する。記憶部17には、計算機20で処理した材料7の画像とその位置情報が記憶されている。この記憶部17に記憶されている画像とその位置情報はCPU13に送られる。
【0005】
CPU13は送られてきた画像とその位置情報から電子源制御系10、電子源鏡筒制御系11、電子光学系制御系12、ブランキング制御系14、ビーム走査制御系15及びステージ駆動制御系16にそれぞれ対応する制御信号を与える。電子源制御系10は電子源1の電子発生量を制御し、電子源鏡筒制御系11は集束レンズ21を制御し、電子光学系制御系12は中間レンズ2の励磁電流を制御する。
【0006】
ブランキング制御系14はブランキング電極3に与える電圧を制御し、電子ビームEBのオン/オフを制御する。ビーム走査制御系15は偏向電極8を制御し、材料7上のビームのスキャンを制御する。ステージ駆動制御系16はステージ6の移動量を制御する。この場合において、ステージ測長系16aは、レーザ測長系を用いてステージ6の移動量を正確に測定する。ステージ測長系16aの測長結果はCPU13に与えられ、該CPU13により各種の前述した制御系10〜12,14〜16を駆動制御する。
【0007】
このように構成された装置において、電子源1から出射された電子ビームEBは集束レンズ21で集束された後、中間レンズ2を通過した後、絞り22で最適な電子ビームEBのみを通過され、対物レンズ5で材料7上に細かく絞られたビームを照射する。この時、材料7から放出された2次電子等の信号は、電子検出部18で検出され、信号処理系19に送られる。検出された2次電子等の信号は、信号処理系19内の演算部19aで所定の演算処理を行われた後、計算機20に与えられる。該計算機20は、検出した画像を表示部20aに表示させる。
【0008】
このような一連の動作で、ステージ6はドリフト等により少しずつ位置がずれていく。ステージ駆動制御系16内のステージ測長系16aは、ステージ6の移動量を求める。この移動量は、CPU13に与えられ、該CPU13はステージ6の移動量を補正する信号を偏向電極8に印加し、ドリフトの影響を除去したビーム走査を行なうことができる。
【0009】
図6は従来装置の要部の構成例を示す図である。図5と同一のものは、同一の符号を付して示す。レーザ光源26から出射されたレーザはステージ6に取り付けられたミラー28に入射して反射される。この反射したレーザ光はインターフェロメータ(干渉計)27で入射されステージ6の位置変動に応じた干渉光が発生され、レシーバ29に入射される。レシーバ29にはインターフェロメータ27からステージ6の位置変更に基づく干渉信号が入力される。この時のレシーバ29からの干渉信号は、続く信号処理器30で演算処理され、元の位置からの位置補正信号に変換される
このステージ6の位置補正信号は、偏向アンプ31に印加され、移動量が補正された偏向信号が与えられ、偏向器8を駆動する。電子ビームEBは指定位置Aから停止位置A’に移動させられ、位置の補正が行われた走査を行なう。ここで、ステッピングモータ25はステージ6を移動させるのに用いられる。
【0010】
前述したような装置を稼働させる場合、従来の装置においては、SEM像を観察すると高倍率の時にはSEM像が揺れるという現象が出ることがある。この揺れは真空ポンプの機械的振動、電子ビーム装置鏡筒の共振、真空ポンプや冷却ファンのモータから発生する電波等の浮遊電磁界及び電子銃やレンズの電源回路に商用電源周波数のノイズが乗ること等の外乱に起因している。電子ビーム装置では、その分解能が高くなるにつれ、このような外乱によるSEM像の揺れがより一層問題となってくる。
【0011】
従来、浮遊磁界に対しては、電子ビーム鏡筒の周囲あるいは装置全体を磁気シールド板で覆ったり、磁気シールド板を備えた装置専用の部屋を用意する等のパッシブな対策や、鏡筒近傍の磁界を検出して装置全体を覆ったヘルムホルツコイルに検出信号をフィードバックしてキャンセル用磁界を発生させるアクチブな制御方法がとられている。また、機械振動に対しては、固有振動数が数ヘルツの除振台で、床から電子ビーム装置への振動伝達を抑制するパッシブな対策や、試料の揺れをレーザ干渉計で検出し、電子ビームにフィードバックするアクチブな制御方法がとられている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特公昭63−55777号公報(第2頁右欄第14行〜第34行)
【特許文献2】特許第3767872号公報(段落0002〜0003、図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来技術では商用周波数の電気的ノイズに起因するような周期的な揺らぎがレーザ測長系からの補正信号や偏向器の偏向信号に重畳された場合の影響を取り除くことができないという問題があった。
【0014】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、周期的な揺らぎを減少させることができる電子線位置決め方法及びその機能を具備する電子線装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の問題を解決するために、本発明は以下のような構成をとっている。
【0016】
(1)請求項1記載の発明は、電子線を発生させる電子源と、当該電子線を加速、減速、収束及び偏向させる光学系と、当該電子線を走査し、またはブランキング制御するための制御系と、前記電子線が照射される材料を保持するためのステージと、該ステージの位置を計測するためのステージ測長系と、前記材料から放出される電子線を検出する電子線検出部と、該電子検出部から得られた検出信号を処理するための信号処理系とからなる電子線装置において、前記ステージ測長系からの補正信号に振幅と位相を調整可能な周期信号を加算し、当該振幅と位相を段階的に変化させて前記ステージ上の基準マークを複数回走査して得られた検出信号から求められる位置変動量が最も小さくなるように当該周期信号を決定することを特徴とする。
【0017】
(2)請求項2記載の発明は、電子線を発生させる電子源と、当該電子線を加速、減速、収束及び偏向させる光学系と、当該電子線を走査し、またはブランキング制御するための制御系と、前記電子線が照射される材料を保持するためのステージと、該ステージの位置を計測するためのステージ測長系と、前記材料から放出される電子を検出する電子検出部と、該電子検出部から得られた検出信号を処理するための信号処理系とからなる電子線装置において、前記ステージ測長系からの補正信号に振幅と位相を調整可能な周期信号を加算する加算手段と、当該振幅と位相を段階的に変化させて前記ステージ上の基準マークを複数回走査して得られた検出信号から求められる位置変動量が最も小さくなるように当該周期信号を決定する周期信号決定手段とを有することを特徴とする。
【0018】
(3)請求項3記載の発明は、前記ステージ測長系は、ステージのX及びY方向の移動をレーザ干渉計によって計測することを特徴とする。
【0019】
(4)請求項4記載の発明は前記周期信号は、予め用意された複数の基準信号から選択可能であり、その内の一つは装置設置環境における商用周波数と同じ周波数で逆位相になるように生成された周期信号であることを特徴とする。
【0020】
(5)請求項5記載の発明は、前記基準マークは、ステージ上に直接配置されたもの、若しくはステージに載置された材料上に配置されたもので、Au又はTaで形成された凸型十字マーク、若しくはSiをエッチングして形成された凹型十字マークであることを特徴とする。
【0021】
(6)請求項6記載の発明は、前記振幅と位相の変化量、基準マークの走査回数及び本手順の試行回数は何れも外部より設定及び変更可能であることを特徴とする。
【0022】
(7)請求項7記載の発明は、前記位置変動量が最も小さくなる周期信号を決定する手段として、位置変動量と周期信号の振幅及び位相を記憶する記憶部を有し、所定の試行回数終了後に当該記憶部に記憶された位置変動量の最も小さい順に対応する振幅及び位相を採用することを特徴とする
【発明の効果】
【0023】
本発明は以下のような効果を奏する。
【0024】
(1)請求項1記載の発明によれば、ステージ測長系からの補正信号に振幅と位相を調整可能な周期信号を加算し、当該振幅と位相を段階的に変化させて前記ステージ上の基準マークを複数回走査して得られた検出信号から求められる位置変動量が最も小さくなるように当該周期信号を決定することで、周期的な揺らぎの影響を低減することができる。
【0025】
(2)請求項2記載の発明によれば、ステージ測長系からの補正信号に振幅と位相を調整可能な周期信号を加算する加算手段と、当該振幅と位相を段階的に変化させて前記ステージ上の基準マークを複数回走査して得られた検出信号から求められる位置変動量が最も小さくなるように当該周期信号を決定する周期信号決定手段とを有することにより、周期的な揺らぎの影響を低減することができる。
【0026】
(3)請求項3記載の発明によれば、ステージの移動をレーザ干渉計によって計測することができる。
【0027】
(4)請求項4記載の発明によれば、前記周期信号を商用周波数と同じ周波数で逆位相にすることで、商用周波数に基づく揺らぎを除去することができる。
【0028】
(5)請求項5記載の発明によれば、所定の基準マークを用いて検出信号を得ることができる。
【0029】
(6)請求項6記載の発明によれば、基準マークの走査回数及び本手順の試行回数を設定及び変更可能にすることができ、最適な位置変動量を選択することができる。
【0030】
(7)請求項7記載の発明によれば、位置変動量と周期信号の振幅及び位相を記憶する記憶部を有し、所定の試行回数終了後に当該記憶部に記憶された位置変動量の最も小さい順に対応する振幅及び位相を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の構成例を示す図である。
【図2】本発明の要部の構成例を示す図である。
【図3】マークの構成例を示す図である。
【図4】本発明の動作の一例を示すフローチャートである。
【図5】従来装置の構成例を示す図である。
【図6】従来装置の要部の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(実施例1)
以下、本発明の実施例について、詳細に説明する。図1は本発明の構成例を示す図である。図5と同一のものは、同一の符号を付して示す。図において電子源1〜計算機20までは図5と同じであるので、その説明は省略する。図において、20aは計算機20と接続され、材料7の画像等を表示する表示部である。該表示部20aとしては、CRTや液晶表示器等が用いられる。20bは計算機20と接続され、電子検出部18で検出したマーク位置変動量と走査回数及び試行回数を記憶する記憶部である。該記憶部20bに記憶されたデータは、必要に応じて読み出される。計算機20からはCPU13に画像データや、補正データが出力される。40は計算機20に各種データやコマンドを入力する操作部である。該操作部40としては、例えばキーボードやマウス等が用いられる。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
【0033】
本発明は、走査型電子顕微鏡や、電子線描画装置等の電子線装置において、電子線を発生させる電子源1と、該電子源1から出射された電子ビームEBを加速、減速、収束させる光学系21,2,5と、電子ビームEBを走査し、又はブランキング制御するための制御系3,8と、電子ビームEBが照射される材料7を保持するためのステージ6と、当該ステージ6の位置を計測するためのステージ測長系16aと、材料7から放出される電子を検出する電子検出部18と、該電子検出部18から得られた検出信号を処理するための信号処理系19より構成される。
【0034】
このような構成の電子線装置において、ステージ測長系16aからの補正信号に振幅及び位相を調整可能な周期信号を加算し、当該振幅及び位相を段階的に変化させてステージ6上の基準マークを複数回走査して得られた検出信号から求められる位置変動量が最も小さくなるように周期信号を決定するものである。
【0035】
ステージ測長系16aは、ステージ6の端部に取り付けられたミラー28の位置を計測して得られたステージ6の位置から、前回計測時との差をステージ変位量として求め、それを材料7上の電子ビーム照射位置にフィードバックするための補正信号を送信する。この補正信号には、振幅及び位相を調整可能な周期信号が周期信号発生器33から出力されており、この周期信号に前記補正信号を加算し、偏向電極8に印加させる。
【0036】
前記の状態において、ステージ6上に設けられた基準マークを複数回走査して当該基準マーク位置を検出すると共に、位置変動量を算出する。次に、この振幅と位相を一定量変化させて同様にして位置変動量を算出する。これを繰り返し、位置変動量が最も小さくなるように周期信号を決定する。記憶部20bには、複数の振幅と位相の値が記憶されており、この振幅と位相の値を読み出してきて所定の振幅と位相を持つ周期信号を偏向器8に印加する。
【0037】
図2は本発明の要部の構成例を示す図である。図1及び図6と同一のものは、同一の符号を付して示す。測長用のレーザ光を発生するレーザ光源26から出射されたレーザ光は、インターフェロメータ27を介してステージ6上に取り付けられたミラー28に照射される。ミラー28から反射されてくる光と、入射光との間に位相の差があると、インターフェロメータ27で干渉光が発生する。
【0038】
この干渉光はレシーバ29に入力され、所定の処理を行なった後、信号処理器30に入る。該信号処理器30からは、ステージ6の位置変動に応じた補正信号が出力される。周期信号発生器33からは一定の振幅と位相を持つ周期信号が出力される。20bは周期信号の振幅と位相に関するデータが記憶されているメモリである。周期信号発生器33は、記憶部20bにアクセスして、記憶されている振幅と位相の信号を発生する。
【0039】
一方、ステージ6にはステッピングモータ25が取り付けられており、このステッピングモータ25が回転することによりXY2次元方向に移動することができるようになっている。ステージ6か又は材料7には図3に示すような基準マークが取り付けられている。(a)は凸型十字マークであり、(b)は凹型十字マークである。
【0040】
電子ビームEBが材料7に照射されると、該材料7からは前記十字マークが付された部分から2次電子や反射電子等の反射された電子が発生する。この発生した電子は、続く電子検出部18で検出された後信号処理系19に入る。該信号処理系19は、受信した信号に所定の信号処理を加えてマーク位置変動量を算出し、前記周期信号発生器33に与える。
【0041】
この結果、周期信号発生器33からの出力に信号処理器30からの位置補正信号が加算器32で加算され、偏向アンプ31を駆動する。この結果、偏向器8は電子ビームEBに所定の位置データの補正を加える。そして、電子ビームEBは指定位置Aから停止位置A’まで、位置補正が行われたビーム照射が行われる。この実施例によれば、ステージ測長系からの補正信号に振幅と位相を調整可能な周期信号を加算し、当該振幅と位相を段階的に変化させて前記ステージ6又は材料7上の基準マークを複数回走査して得られた検出信号から求められる位置変動量が最も小さくなるように当該周期信号を決定することで、周期的な揺らぎの影響を低減することができる。
【0042】
図4は本発明の動作の一例を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに従って本発明の動作の一例を説明する。システムとしては、図1及び図2に示すものを用いる。動作の主体は計算機20である。先ずオペレータは、操作部40から周期信号の振幅及び位相の初期値を設定する(S1)。設定された振幅及び位相は計算機20に入力される。また、後述する走査回数も入力する。これらデータは記憶部20bに記憶される。次に、ステージ測長系(レーザ光源26,インターフェロメータ27、ミラー28、ステージ6、レシーバ29)から信号処理器30に入った位置変動量信号(補正信号)は該信号処理器30で所定の処理を受けた後に、加算器32で周期信号発生器33からの周期信号に加算される(S2)。加算された信号で偏向アンプ31を介して偏向器8を駆動する。
【0043】
このようにして、電子ビームEBでステージ6又は材料7上の基準マークを走査する(S3)。該マーク上から放出される電子は、電子検出部18で検出された後、信号処理系19に入りマーク位置が算出される(S4)。算出された位置データは、走査の都度記憶部20bに記憶される。次に、指定された走査回数以上走査されたかどうかがチェックされる(S5)。指定された走査回数に満たない場合には、ステップS3に戻り、基準マークの走査を行なう。
【0044】
走査回数が指定された回数以上になったら、それぞれの場合におけるマーク位置変動量を算出する(S6)。そして、振幅と位相の値とマーク位置変動量を記憶部20bに記憶する(S7)。記憶部20bへの記憶(保存)が終了したら、これまでの動作が指定された試行回数以上であるかどうかチェックする(S8)。若し、指定された試行回数未満の場合には、周期信号の振幅と位相の値を記憶部20bから読み出して振幅と位相の値を変更し(S9)、ステップS2に戻り、ステージ測長系からの補正信号に周期信号を加算する処理を行なう(S2)。指定された試行回数以上になったら、記憶部20bに記憶されたデータから振幅と位相の値を決定する(S10)。
【0045】
このように、本発明によれば、ステージ測長系からの補正信号に振幅と位相を調整可能な周期信号を加算し、当該振幅と位相を段階的に変化させて前記ステージ上の基準マークを複数回走査して得られた検出信号から求められる位置変動量が最も小さくなるように当該周期信号を決定することで、周期的な揺らぎの影響を低減することができる。
【0046】
(実施例2)
本発明の実施例2は、実施例1のステージ測長系は、ステージのX及びY方向の移動をレーザ干渉計によって計測するようにしたものである。ステージのX方向及びY方向の移動をレーザ干渉計を用いることで、ステージの移動量を極めて正確に測定することができる。
【0047】
(実施例3)
実施例3は、前述した周期信号は、予め用意された複数の基準信号から選択可能であり、そのうちの一つは装置設置環境における商用周波数と同じ周波数で逆位相になるように生成された周期信号としたものである。このように構成すると、装置から発生している商用周波に基づく揺らぎを逆位相でかつ振幅が等しい補正信号を印加することにより、商用周波に基づく揺らぎを除去することができる。
【0048】
(実施例4)
前記実施例で用いられた基板マークは、ステージ6上に直接配置されたもの、若しくはステージ6に載置された材料7上に配置されたもので、Au又はTaで形成された凸型十字マーク、若しくはSiをエッチングして形成された凹型の十字マークを用いることができる。このような基準マークを用いることで、検出信号から位置変動量を極めて小さくなるようにすることができる。
【0049】
(実施例5)
前記位置変動量が最も小さくなる周期信号を決定する手段として、位置変動量と周期信号の振幅及び位相を記憶するための記憶部を有するようにしたものである。このように構成すれば、所定の試行回数終了後に当該記憶部に記憶された位置変動量のうち、最も小さい値に対応する振幅及び位相を採用することができ、最も正確な位置決めを行なうことができる。
【0050】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、商用周波数の電気的ノイズに起因するような周期的な揺らぎを打ち消すように周期信号を加算することにより、この揺らぎがレーザ測長系からの補正信号や偏向器の偏向信号に重畳された場合の影響を低減することができる。また、例えば接地線に重畳された商用周波数帯の周期的なノイズと逆位相の周期信号を用いることで、当該ノイズの影響を効果的に取り除くことができる。
【0051】
本発明は、このような商用周波数に基づく揺らぎに関するものだけではなく、その他の原因に基づく揺らぎも効果的に取り除くことができる。
【符号の説明】
【0052】
1 電子源
2 中間レンズ
3 ブランキング電極
5 対物レンズ
6 ステージ
7 材料
8 偏向電極
10 電子源制御系
11 電子源鏡筒制御系
12 電子光学系制御系
13 CPU
14 ブランキング制御系
15 ビーム走査制御系
16 ステージ駆動制御系
16a ステージ測長系
18 電子検出部
19 信号処理系
19a 演算部
20 計算機
20a 表示部
20b 記憶部
21 集束レンズ
40 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線を発生させる電子源と、当該電子線を加速、減速、収束及び偏向させる光学系と、当該電子線を走査し、またはブランキング制御するための制御系と、前記電子線が照射される材料を保持するためのステージと、該ステージの位置を計測するためのステージ測長系と、前記材料から放出される電子を検出する電子検出部と、該電子検出部から得られた検出信号を処理するための信号処理系とからなる電子線装置において、
前記ステージ測長系からの補正信号に振幅と位相を調整可能な周期信号を加算し、当該振幅と位相を段階的に変化させて前記ステージ上の基準マークを複数回走査して得られた検出信号から求められる位置変動量が最も小さくなるように当該周期信号を決定することを特徴とする電子線装置の位置決め方法。
【請求項2】
電子線を発生させる電子源と、当該電子線を加速、減速、収束及び偏向させる光学系と、当該電子線を走査し、またはブランキング制御するための制御系と、前記電子線が照射される材料を保持するためのステージと、該ステージの位置を計測するためのステージ測長系と、前記材料から放出される電子を検出する電子検出部と、該電子検出部から得られた検出信号を処理するための信号処理系とからなる電子線装置において、
前記ステージ測長系からの補正信号に振幅と位相を調整可能な周期信号を加算する加算手段と、
当該振幅と位相を段階的に変化させて前記ステージ上の基準マークを複数回走査して得られた検出信号から求められる位置変動量が最も小さくなるように当該周期信号を決定する周期信号決定手段と、
を有することを特徴とする電子線装置。
【請求項3】
前記ステージ測長系は、ステージのX及びY方向の移動をレーザ干渉計によって計測することを特徴とする請求項2記載の電子線装置の位置決め装置。
【請求項4】
前記周期信号は、予め用意された複数の基準信号から選択可能であり、その内の一つは装置設置環境における商用周波数と同じ周波数で逆位相になるように生成された周期信号であることを特徴とする請求項2又は3記載の電子線装置。
【請求項5】
前記基準マークは、ステージ上に直接配置されたもの、若しくはステージに載置された材料上に配置されたもので、Au又はTaで形成された凸型十字マーク、若しくはSiをエッチングして形成された凹型十字マークであることを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の電子線装置。
【請求項6】
前記振幅と位相の変化量、基準マークの走査回数及び本手順の試行回数は何れも外部より設定及び変更可能であることを特徴とする請求項2乃至5の何れか1項に記載の電子線装置。
【請求項7】
前記位置変動量が最も小さくなる周期信号を決定する手段として、位置変動量と周期信号の振幅及び位相を記憶する記憶部を有し、所定の試行回数終了後に当該記憶部に記憶された位置変動量の最も小さい順に対応する振幅及び位相を採用することを特徴とする請求項2乃至6の何れか1項に記載の電子線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−15227(P2012−15227A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148528(P2010−148528)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】