説明

電子装置及び電子部品

【課題】電子部品の電極間隔が狭い場合でもはんだバンプの高さを高くできるようにする。
【解決手段】UBM105の長さLuを開口104の1辺の長さLhよりも小さくする。これにより、UBM105の長さLuは比較例1のUBM105′の長さLu′よりも小さくなる。したがって、はんだバンプ300の底面部分の面積は、比較例1のはんだバンプ300′の底面部分の面積よりも小さくなる。その結果、はんだバンプ300の表面張力の作用によって、はんだバンプ300の体積を増やさずともその高さをはんだバンプ300′よりもΔhだけ高くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップ等の電子部品をフリップチップ接合により基板に実装した電子装置及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
最近のエレクトロニクス実装技術は飛躍的に向上し、電子装置の小型化と高性能化を実現するキー技術となっている。特に、ベアチップをプリント配線基板等に直接実装するベアチップ実装は、BGA(Ball Grid Array)等の半導体パッケージに用いられていたインターポーザをなくすことができ、実装面積の大幅な縮小化、あるいは信号伝送距離の短縮が可能となることから、高密度実装を実現する手段として広く用いられている。
【0003】
ベアチップ実装におけるICチップ上の電極と基板の電極との接合方式としては、ワイヤボンディング接合やフリップチップ接合等がある。フリップチップ接合は、ICチップの電極部分にはんだバンプを形成し、基板側の電極と直接接続する方式である。
【0004】
従来、フリップチップ接合によりICチップを基板に実装した電子装置として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。この従来技術では、ICチップの電極パッド上ではんだバンプを溶融させて表面張力により球状化を図ることで、電極パッドの径とほぼ等しい高さのはんだバンプを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−152007号公報(第4頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術には、以下の課題が存在する。
【0007】
ICチップの小型化に伴い電極間隔が狭くなると、電極上に形成されるはんだバンプ間の距離も狭くなる。このため、隣り合う電極が短絡しないように、はんだの体積を小さくする必要がある。一方で、一般に基板の表面には製造上の要因等により微小なうねりが存在するため、ICチップと基板との間には一定の距離を確保する必要がある。このため、ICチップの電極に形成するはんだバンプの高さを一定以上に高くする必要がある。はんだバンプの高さを高くするには、はんだの体積を大きくする必要がある。
【0008】
したがって、上記従来技術の構成では、小型のICチップを用いる場合にははんだバンプ間の距離が狭くなるため、はんだの体積を大きくすることができず、はんだバンプの高さを高くすることが困難であった。
【0009】
本発明の目的は、電子部品の電極間隔が狭い場合でもはんだバンプの高さを高くすることができる電子装置及び電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、チップ本体、前記チップ本体に形成された複数の電極、及び、前記電極において開口し前記チップ本体の表面を覆うように形成された保護膜を有する電子部品と、前記複数の電極に対向して配置された複数の基板電極を有する基板と、前記複数の電極と前記複数の基板電極とを電気的に接続する複数のはんだバンプと、を備え、前記はんだバンプと前記電極との接合面積が、前記保護膜の開口面積よりも小さい電子装置が適用される。
【0011】
また、本発明の別の観点によれば、チップ本体と、前記チップ本体に形成された複数の電極と、前記電極において開口し前記チップ本体の表面を覆うように形成された保護膜と、前記複数の電極上に各々形成され、前記電極とはんだバンプとを接合するための複数のUBMと、を備え、前記UBMは、前記保護膜の開口面積よりも小さい面積となるように形成されている電子部品が適用される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電子部品の電極間隔が狭い場合でもはんだバンプの高さを高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係る電子装置の概略構成について説明するための概略構成図である。
【図2】電極とはんだバンプの接合部分の詳細構造を表す縦断面図である。
【図3】図2に示す構成によりはんだバンプの高さを高くできることを説明するための説明図である。
【図4】図2に示す構成によりはんだバンプの耐久性を向上できることを説明するための説明図である。
【図5】はんだバンプの形成工程を表すフローチャートである。
【図6】UBMの形成工程を表す縦断面図である。
【図7】作製した各形状のUBMにおけるバンプ高さの計算値を表す図である。
【図8】作製した各形状のUBMについて測定したバンプ高さと計算値とを比較した図である。
【図9】スクリーン印刷法により形成されたはんだバンプと、はんだボール搭載法により形成された実施例のはんだバンプとの高さ寸法をそれぞれ測定して比較した結果を表す図である。
【図10】比較対象とされた各はんだバンプの高さ寸法を表す図である。
【図11】本発明が有効となる範囲における電極ピッチと保護膜の開口長さとの関係を表す図である。
【図12】はんだバンプ形成方法におけるバンプ高さと電極ピッチとの関係を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
まず、図1を参照しつつ、本実施形態に係る電子装置の構成の概略について説明する。図1は、本実施形態に係る電子装置の概略構成について説明するための概略構成図である。
【0016】
図1(a)に示すように、本実施形態に係る電子部品の一例であるICチップ100には、チップ本体101に複数の電極102が設けられている。このICチップ100は、プラスチックやセラミックスなどのパッケージに収納されずに基板200に対し直接的に実装される、いわゆるベアチップである。
【0017】
ICチップ100の各電極102上には、はんだバンプ300が形成される。一般にはんだバンプの形成方法としては、はんだボール搭載法やスクリーン印刷法、めっき法等が挙げられるが、はんだボールは寸法精度に優れ、はんだの体積を均一にし易い利点があるため、本実施形態でははんだボール搭載法を用いている。したがって、各電極102上に球状のはんだボールが搭載され、リフロー処理により溶融されてはんだバンプ300が形成される。図1(b)に示すように、はんだバンプ300は表面張力によって電極102との接合部分を底面とした球状に形成される。はんだボールを電極102上に搭載する方法としては、はんだボールをジグに真空吸着させ、これを電極102上に位置決めして搭載する真空吸着法や、メタルマスクを用いてメタルマスクの開口部にはんだボールを転がし込む転がし込み法等が用いられる。
【0018】
図1(c)に示すように、基板200の基板本体201には、ICチップ100の複数の電極102に対向して複数の基板電極202が配置されている。はんだバンプ300は、一端側がICチップ100の電極102に接合されるとともに、他端側が基板200の基板電極202に接合され、ICチップ100の複数の電極102と基板200の複数の基板電極202とを電気的に接続する。このようにして、ICチップ100の電極102上にはんだバンプ300が形成され、基板200の基板電極202とフリップチップ接合されることにより、電子装置1が構成される。
【0019】
なお、ここでは基板200に対し1つのICチップ100のみ接合して電子装置1を構成した例を示したが、基板200に対し他のICチップ、半導体素子等の電子部品を接合してもよい。
【0020】
次に、図2を参照しつつ、電極とはんだバンプの接合部分の詳細構造について説明する。図2は、電極とはんだバンプの接合部分の詳細構造を表す縦断面図である。
【0021】
図2中の拡大図に示すように、ICチップ100は、チップ本体101、チップ本体101に形成された複数の電極102、及び、チップ本体101の表面を覆うように形成された保護膜103を有している。保護膜103は、電極102において四角形状に開口しており、電極102を露出させる。以下、この開口を開口104と記載する。保護膜103は、樹脂材料あるいはソルダーレジスト材料によって形成される。
【0022】
はんだバンプ300は、電極102上に形成されたUBM(Under Bump Metal)105を介して電極102に接合されている。UBM105は、電解ニッケルめっきにより円形状あるいは四角形状に形成されている(図7に記載)。一般に、電極102はアルミ等の金属によって形成されるが、その表面には強固な酸化膜が存在するため、はんだの電極102への接合は酸化膜によって阻害される。このため、溶融したはんだはUBM105にのみ濡れ、電極102には濡れないので、はんだバンプ300と電極102との接合部分の大きさや形状は、UBM105の長さおよび形状によって決められる。
【0023】
本実施形態では、UBM105が保護膜103の開口104の開口面積よりも小さい面積となるように電極102上に形成されている。具体的には、UBM105の長さLu(UBM105が円形状である場合にはその直径であり、四角形状である場合にはその1辺の長さ。以下同様)が、開口104の1辺の長さLhよりも小さくなっている。これにより、はんだバンプ300と電極102との接合面積は、保護膜103の開口104の開口面積よりも小さくなっている。また、UBM105はその周囲が全周に亘って保護膜103の開口端面104aと離間するように形成されており、これによりはんだバンプ300は、保護膜103と接触しないように電極102に接合されている。その結果、はんだバンプ300とUBM105との接合部の周囲には、電極102が露出している。
【0024】
次に、図3を参照しつつ、図2に示す構成によりはんだバンプ300の高さを高くできることを比較例1を用いて説明する。図3は、図2に示す構成によりはんだバンプの高さを高くできることを説明するための説明図であり、図3(a)は比較例1、図3(b)は本発明の構成を示している。なお、図3(a)及び図(b)に示すはんだバンプの体積はいずれも同一である。
【0025】
図3(a)に示す比較例1では、UBM105′の長さLu′が開口104の1辺の長さLhと等しくなっている。この場合、UBM105′が円形状である場合には開口104に内側より接する内接円状となり、四角形状である場合にはUBM105′の面積と保護膜103の開口面積とは略同一となる。これに対し、図3(b)に示す本発明では、上述したようにUBM105の長さLuが開口104の1辺の長さLhよりも小さくなっている。すなわち、UBM105の長さLuは比較例1のUBM105′の長さLu′よりも小さくなっている。したがって、はんだバンプ300の底面部分の面積は、UBM105,105′が円形状又は四角形状のいずれであっても、比較例1のはんだバンプ300′の底面部分の面積よりも小さくなる。これにより、はんだバンプ300の表面張力の作用によって、はんだバンプ300の体積を増やさずともその高さをはんだバンプ300′よりもΔhだけ高くすることができる。
【0026】
次に、図4を参照しつつ、図2に示す構成によりはんだバンプ300の耐久性を向上できることを比較例2を用いて説明する。図4は、図2に示す構成によりはんだバンプの耐久性を向上できることを説明するための説明図である。
【0027】
図4に示す比較例2では、保護膜103′の開口104′が小さく形成されており、その1辺の長さLh′がUBM105の長さLuと等しくなっている。すなわち、この比較例2は、保護膜103′の開口104′の開口面積を小さく絞ることで、本実施形態と同様にはんだバンプ300の底面部分の面積を小さくし、同様の高さを得た構成である。
【0028】
このような比較例2と本実施形態の構成について、本願発明者等がはんだバンプにひずみを与えたときのはんだ内の塑性ひずみをシミュレーションしたところ、図4に示すように、本実施形態の構成は比較例2と比較してはんだ内の最大塑性ひずみが約20%減少することが判明した。これは、比較例2では、保護膜103′とはんだバンプ300とが接触するため、保護膜103′の開口端面104a′がはんだバンプ300に食い込んだ構造となっており、はんだバンプ300にひずみを与えた場合に保護膜103′の食い込み部分に応力集中が生じるためと考えられる。一方、本実施形態においては、はんだバンプ300と保護膜103とが接触しない構成となっている。これにより、上述のような応力集中が生じることがないので、比較例2の構成に比べてはんだ内の最大塑性ひずみを減少させることができる。その結果、はんだバンプ300の耐久性を高め、電子装置1の信頼性を向上することができる。
【0029】
次に、図5及び図6を参照しつつ、はんだバンプ300の形成工程を説明する。図5は、はんだバンプの形成工程を表すフローチャートであり、図6は、UBMの形成工程を表す縦断面図である。
【0030】
図5に示すように、まずステップS10では、チップ本体101が成膜機に設置される。図6(a)に示すように、チップ本体101には電極102及び保護膜103が形成されている。
【0031】
次のステップS20では、Ti/Cuによる成膜加工が行われる。これにより、図6(b)に示すように、電極102及び保護膜103の表面にTi/Cuが蒸着され金属薄膜106が形成される。
【0032】
次のステップS30では、前述の成膜機から取り出して、上記ステップS20で形成された金属薄膜106上にフォトレジストが塗布され、露光装置によりマスクパターニングが行われる。これにより、図6(b)に示すように、電極102の一部及び保護膜103上にフォトレジスト膜107が形成される。フォトレジスト膜107は、UBM105が保護膜103の開口面積よりも小さく形成されるように、電極102の周囲を覆うように形成されている。
【0033】
次のステップS40では、電解ニッケルめっきによりUBM105が形成される。これにより、図6(c)に示すように、フォトレジスト膜107によるマスク部分以外の部分にUBM105が形成される。
【0034】
なお、電解ニッケルめっきは、アルカリ、酸性溶液等での表面洗浄が不要であり、処理温度が40℃−50℃程度と低いので、フォトレジスト膜107の膨潤に起因するはく離が生じにくい。そのため、例えば、アルカリ、酸性溶液等での表面洗浄を行い、処理温度の高い無電解ニッケル−リンめっき等のようにポストベーク処理を行う必要がない。ポストベーク処理を行うと、フォトレジストの成分によって電極102の表面が汚染されることがあり、接合の阻害要因となるので、電解ニッケルめっきでは、このような接合の阻害要因を可能な限り排除することができる。このように、電解ニッケルめっきによって、容易に所定の形状のUBM105を形成することができる。そして、はんだバンプ300と良好な接合性を得ることができる。
【0035】
また、電解ニッケルめっきによって形成されたUBM105の表面に、さらに金属又は合金の薄膜を形成してもよい。例えば、金、パラジウム・金、はんだ、ロジウム、白金、または銀の各種めっきによって薄膜が形成されても同様に良好な接合性を得ることができる。
【0036】
次のステップS50では、上記ステップS30で形成したフォトレジスト膜107の除去、及び、上記ステップS20で形成したTi/Cuによる金属薄膜106のエッチングが行われる。これにより、図6(d)に示すように、フォトレジスト膜107及びUBM105部分以外の金属薄膜106が除去される。このようにして、電極102上にUBM105が保護膜103の開口104の開口面積よりも小さく形成され、ICチップ100が形成される。
【0037】
次のステップS60では、フラックスの塗布が行われる。フラックスは、はんだのUBM105に対するぬれ性を向上する役割を果たすものである。次のステップS70では、前述した真空吸着法や転がし込み法等により、はんだボールが電極102上に搭載される。そして、ステップS80では、リフローの加熱処理によりはんだボールが溶融され、はんだバンプ300が形成される。以上により、はんだバンプ300と電極102との接合面積が、保護膜103の開口104の開口面積よりも小さくなるように、はんだバンプ300が形成される。
【0038】
次に、実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0039】
本願発明者等は、以上説明した方法により実際にはんだバンプ300を作製してバンプ高さの測定を行った。測定にあたっては、1枚のチップ本体101上に図7に示す8種類の形状のUBM105を各々複数作製した。図7は、各形状のUBMにおけるバンプ高さの計算値を表す図であり、図8は、作製した各形状のUBMについて測定したバンプ高さと計算値とを比較した図である。
【0040】
図7に示すように、円形について直径の異なる5種類のUBM(Φ40μm,Φ45μm,Φ50μm,Φ55μm,Φ60μm)を作製し、四角形(この例では正方形)について1辺の長さが異なる3種類のUBM(□40μm,□50μm,□60μm)を作製した。また、それぞれの形状のUBMについて、Φ50μmのはんだボールを用いた場合におけるバンプ高さを、公知のGoldmanの式を変形した下記の数式1を用いて計算した。計算結果を図7に示す。
【0041】
【数1】


bump:バンプ高さ
Lu:UBM径または辺長
【0042】
さらに、作製した各形状のUBMについて、複数のはんだバンプ300のバンプ高さを測定した。それらの測定値の平均値(平均バンプ高さ)と図7に示す計算結果との比較結果を図8に示す。このとき作製したUBMの厚さは約2μmであり、保護膜の厚さは約3μmとした。図8に示すように、バンプ高さの測定値と計算値とは、ほぼ同じ結果となっている。したがって、図7に示すバンプ高さの計算値は、実際に作製したはんだバンプの高さとほぼ一致することが判明した。以上の結果から、UBM105が円形あるいは四角形のいずれであっても、長さLuが小さいほど、言い換えればはんだバンプ300と電極102との接合面積が小さいほど、バンプ高さが高くなることが確認された。また、UBM105の形状が円形の場合と四角形の場合では、円形の場合の方がバンプ高さを高くできることが確認された。さらに、はんだバンプ300の高さは、UBM105の長さLuを変更することによって調節することが可能であり、またUBM105の形状によっても調節することが可能であることが確認された。
【0043】
なお、上述したように、電解ニッケルめっきによりUBM105を形成することによって、このような所定の高さのはんだバンプ300を実現でき、電極102と強固に接合させることが可能となる。
【0044】
なお、上記結果からバンプ高さを高くするにはUBM105の形状を円形にする方が有利であることがわかるが、以下の理由からも、UBM形状は四角形状よりも円形状であることが好ましい。すなわち、前述したようにはんだバンプ300と電極102との接合部の形状はUBM105の形状とほぼ同一となるが、接合部が四角形等の多角形である場合、はんだバンプ300にひずみを与えた場合にはんだ内部に局所的な応力集中が生じるおそれがあるのに対し、接合部が円形状である場合にははんだ内部に生じる応力を一様とすることができるからである。その結果、はんだバンプの耐久性を高め、電子装置1の信頼性を向上することができる。
【0045】
また本願発明者等は、本実施例で作製されたはんだバンプと比較する比較例として、スクリーン印刷法により3種類のはんだバンプを作製し、これらのはんだバンプと、はんだボール搭載法により形成された本実施例のはんだバンプとの高さ寸法をそれぞれ測定して比較した。図9及び図10にその比較結果を示す。図9は、この比較結果を表す図であり、図10は、比較対象とされた各はんだバンプの高さ寸法を表す図である。なお、スクリーン印刷法で形成されたはんだバンプは、本実施例と異なり、保護膜の開口面積と略同一面積であるUBMを介して電極に接合されたものである。一方、はんだボール搭載法により形成されたはんだバンプは、前述したように保護膜の開口面積よりも小さく形成されたUBMを介して電極に接合されたものである(図7のΦ40,Φ50,Φ60μm参照)。
【0046】
図9及び図10に示すように、本実施例においてはんだボール搭載法により形成されたはんだバンプ300のバンプ高さは、スクリーン印刷により形成されたはんだバンプよりも、2倍程度高くなることが確認された。これは、UBM105の面積を保護膜103の開口面積よりも小さくしたことによる効果である。また、平均バンプ高さのばらつき(変動)は、スクリーン印刷法により形成されたはんだバンプでは0.1程度であり、はんだボール搭載法で形成された本実施例のはんだバンプ300では、Φ40,Φ50で0.08となっており、本実施例のはんだバンプ300ではスクリーン印刷法で形成されたはんだバンプよりもバンプ高さを高くできると共に、平均バンプ高さのばらつきを抑制できることが確認された。
【0047】
また、本願発明者等は、図7に示す8種類の形状のUBM105を、電極102の間隔(電極ピッチ)が異なる複数種類のチップ本体101に対して作製し、狭ピッチにおいて必要とするバンプ高さ(図12に示すハッチング領域)を確保できるか否かを確認した。
【0048】
その結果、図11に示すように、電極ピッチDが保護膜103の開口104の最長寸法の辺の長さLhの2倍以下となる狭ピッチのICチップ100を用いる場合でも、必要なバンプ高さを確保できることが確認された。特に、電極ピッチが50〜100μmの範囲において、はんだバンプの高さを25〜50μm程度に確保できることが確認され、当該範囲において本発明が有効であることが確認された。なお、一般に保護膜103の開口104の一辺の長さLhは電極102の一辺の長さとほぼ一致するので、上記は電極ピッチDが電極の長さの2倍以下となる狭ピッチのICチップ100とも言い換えることができる。また、開口104の形状は四角形状に限らず円形や台形等も考えられるが、この場合には上記最長寸法の辺の長さは、円形の場合には直径となり、台形の場合には下底に対応する辺の長さとなる。
【0049】
図12は、従来のはんだバンプ形成方法におけるバンプ高さと電極ピッチとの関係を表す図である。この図12に上記の本発明が特に有効となる範囲を表すと、斜線で示す範囲となる。本実施形態によれば、このように従来のバンプ形成方法では実現できなかった範囲において、電極ピッチが狭いICチップ100でもはんだバンプ300の高さを高くすることが可能である。
【0050】
以上説明した本実施形態に係る電子装置1は、はんだバンプ300と電極102との接合面積が、保護膜103の開口面積よりも小さくなるように構成されている。これにより、はんだバンプ300と電極102との接合面積が保護膜103の開口面積と等しい場合に比べ、球状のはんだバンプ300の底面部分の面積を小さくすることができるので、表面張力の作用によって、はんだバンプ300の体積を増やさずともその高さを高くすることができる。したがって、電子部品1の電極ピッチが狭い場合でもはんだバンプ300の高さを高くすることができる。
【0051】
また、本実施形態では特に、はんだバンプ300と保護膜103とが接触しない構成となっている。これにより、次のような効果を奏する。すなわち、電子装置1においては、ICチップ100による発熱により、基板200がICチップ100よりも膨張し、ICチップ100と基板200の接合部に寸法差が生じるため、ICチップ100と基板200とを接合するはんだバンプ300には、電子装置1が使用される度に繰り返しひずみが生じることになる。ここで、はんだバンプ300の高さを高くする構成として、例えば図4の比較例2に示すように、保護膜103′の開口面積を小さく絞ることで、はんだバンプ300の底面部分の面積を小さくする構成が考えられる。この場合、保護膜103′とはんだバンプ300とが接触するため、保護膜103′の開口端面104a′がはんだバンプ300に食い込んだ構造となる。このような構造では、はんだバンプ300にひずみを与えた場合に保護膜103′の食い込み部分に応力集中が生じ、はんだ内の最大塑性ひずみが増大する。その結果、はんだバンプ300の耐久性が低下し、電子装置1の信頼性の低下を招く。これに対し、本実施形態においては、はんだバンプ300と保護膜103とが接触しないため、上述のような応力集中が生じることがない。したがって、上述の構成に比べてはんだ内の最大塑性ひずみを減少させることができる。その結果、はんだバンプ300の耐久性を高め、電子装置1の信頼性を向上することができる。
【0052】
また、本実施形態では特に、はんだバンプ300が、電極102上に保護膜103の開口面積よりも小さく形成されたUBM105を介して電極102に接合されている。これにより、はんだバンプ300と電極102との接合面積を、保護膜103の開口面積よりも確実に小さくすることができる。また、UBM105の大きさが保護膜103の開口面積よりも小さいので、UBM105の周囲には電極102が露出することになる。UBM105の大きさを小さくすることにより、さらにはんだバンプ300の高さを高くすることができる。さらに、UBM105の大きさまたは形状を変更することにより、はんだバンプ300の高さを調節することが可能となる。
【0053】
また、本実施形態では特に、はんだバンプ300は、円形状のUBM105を介して電極102に接合されている。UBM105を円形状に形成することで、はんだバンプ300と電極102との接合部の形状を円形にすることができる。これにより、接合部が四角形等の多角形である場合に比べ、はんだバンプ300にひずみを与えた場合にはんだ内部に生じる応力を一様とすることができるので、はんだバンプ300の耐久性を高め、電子装置1の信頼性を向上することができる。
【0054】
また、本実施形態では特に、はんだバンプ300と電極102との接合面積が、保護膜103の開口面積よりも小さくなるように構成され、且つ、はんだバンプ300が接合されるUBM105は、電解ニッケルめっきにより形成されている。これにより、容易に所定の形状のUBM105を形成することができ、且つ、UBM105とはんだバンプ300の良好な接合性を得ることができる。
【0055】
また、本実施形態では特に、ICチップ100は、電極102の電極ピッチDが保護膜103の開口104の一辺の長さLhの2倍以下となるように構成されている。このように電極ピッチDが狭ピッチのICチップ100を用いる場合でも、はんだバンプ300の高さを高くすることができる。
【0056】
また、本実施形態では特に、ICチップ100は、電極ピッチDが50〜100μmとなるように構成されている。このような狭ピッチのICチップ100を用いる場合でも、はんだバンプ300の高さを25〜50μm程度に高く確保することができる。
【0057】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0058】
1 電子装置
100 ICチップ(電子部品)
101 チップ本体
102 電極
103 保護膜
105 UBM
200 基板
202 基板電極
300 はんだバンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ本体、前記チップ本体に形成された複数の電極、及び、前記電極において開口し前記チップ本体の表面を覆うように形成された保護膜を有する電子部品と、
前記複数の電極に対向して配置された複数の基板電極を有する基板と、
前記複数の電極と前記複数の基板電極とを電気的に接続する複数のはんだバンプと、を備え、
前記はんだバンプと前記電極との接合面積が、前記保護膜の開口面積よりも小さい
ことを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記はんだバンプは、
前記電極上に前記保護膜の開口面積よりも小さく形成されたUBMを介して前記電極に接合されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記はんだバンプは、
電解ニッケルめっきにより形成された前記UBMを介して前記電極に接合されている
ことを特徴とする請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記UBMは、
前記保護膜と接触しないように前記電極上に形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の電子装置。
【請求項5】
前記はんだバンプは、
円形状の前記UBMを介して前記電極に接合されている
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の電子装置。
【請求項6】
前記UBMの表面に、
金属又は合金の薄膜が形成されている
ことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の電子装置。
【請求項7】
前記電子部品は、
前記複数の電極の電極ピッチが前記開口の最長寸法の辺の長さの2倍以下となるように構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電子装置。
【請求項8】
前記電子部品は、
前記電極ピッチが50〜100μmとなるように構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電子装置。
【請求項9】
チップ本体と、
前記チップ本体に形成された複数の電極と、
前記電極において開口し前記チップ本体の表面を覆うように形成された保護膜と、
前記複数の電極上に各々形成され、前記電極とはんだバンプとを接合するための複数のUBMと、を備え、
前記UBMは、
前記保護膜の開口面積よりも小さい面積となるように形成されている
ことを特徴とする電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−104807(P2012−104807A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207353(P2011−207353)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【出願人】(000164461)九州日立マクセル株式会社 (338)
【Fターム(参考)】