説明

電子部品の実装方法および分離方法

【課題】プリント基板に形成した開口部に対して電子部品をより迅速かつより確実に着脱させることができる電子部品の実装方法および分離方法を得る。
【解決手段】プリント基板に設けられた開口部に電子部品を嵌挿して実装する電子部品の実装方法であって、記憶された嵌挿前位置に電子部品を搬送するステップS12と、実装対象としてのプリント基板の画像から開口部に対応する嵌挿前位置を取得するステップS14と、記憶された嵌挿前位置に搬送された電子部品を、画像から取得された嵌挿前位置に搬送するステップS16と、画像から取得された嵌挿前位置に搬送された電子部品を開口部に嵌挿するステップS17と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板に設けられた開口部に電子部品を実装する方法、および当該開口部に実装された電子部品を分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より種々のプリント基板が提案されており、特許文献1には、その一例としてのプリント基板が開示されている。
【0003】
上記公報では、プリント基板に電子部品である通電素子を嵌め込んで実装するための開口部が形成されており、その電子部品の電極端子であるリードを、前記開口部の内周に形成したスルーホールの内面に固着するようになっている。したがって、前記電子部品はスルーホールに半田付けして固着したリードを介して基板本体に固定されている。
【特許文献1】特開平2−232986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記プリント基板では、開口部を形成してその中に電子部品を実装するため、その電子部品を含めたプリント基板全体の厚さを減少することができる。
【0005】
しかしながら、電子部品のリードを開口部内周のスルーホールに半田付けして固着させるため、当該リードを専用形状とする必要があり、電子部品やプリント基板が高価となってしまう上、電子部品を開口部に挿入した後、さらに半田付けを行う必要があり、実装作業に手間がかかってしまうという問題があった。
【0006】
また、プリント基板に実装された電子部品を再利用する場合には、リードを固着した半田を再溶融させて取り外すことになるが、その再溶融時に付加される熱により電子部品に熱ストレスが与えられ、場合によっては電子部品の機能損傷や破損が発生して再利用が不可能となってしまう。
【0007】
さらに、電子部品が機能損傷や破損を生じないように取り外す条件を設定した加熱装置を用いたとしても、半田を再溶融した後さらに電子部品を押し出す必要があるため、電子部品を取り外す装置自体が複雑化かつ大型化してしまい、電子部品を再利用するためのコストが嵩んでしまう上、取り外すのに非常に手間がかかるという問題があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、プリント基板に形成した開口部に対して電子部品をより迅速かつより確実に着脱させることができる電子部品の実装方法および分離方法を得て、安価な電子部品を採用しつつ実装された電子部品を再利用することにより安価な電子部品実装基板を提供し、ひいては不要な資源を抑制し環境負荷の低減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、プリント基板に設けられた開口部に電子部品を嵌挿して実装する電子部品の実装方法であって、電子部品を記憶された嵌挿前位置に搬送するステップと、実装対象としてのプリント基板の画像から開口部に対応する嵌挿前位置を取得するステップと、記憶された嵌挿前位置に搬送された電子部品を、画像から取得された嵌挿前位置に搬送するステップと、画像から取得された嵌挿前位置に搬送された電子部品を、開口部に嵌挿するステップと、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2の発明は、上記請求項1の発明にかかる電子部品の実装方法において、プリント基板に当該プリント基板内の位置座標の基準位置を示す基準位置指標が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項3の発明は、プリント基板に設けられた開口部に嵌挿された電子部品を取り外す電子部品の分離方法であって、押圧治具を記憶された押圧前位置に搬送するステップと、分離対象としてのプリント基板の画像から押圧前位置を取得するステップと、記憶された押圧前位置に搬送された押圧治具を、画像から取得された押圧前位置に搬送するステップと、画像から取得された押圧前位置に搬送された押圧治具を、開口部に嵌挿された電子部品に押し当てて当該電子部品を取り外すステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明にかかる電子部品の実装方法によれば、電子部品を、まずは、記憶された嵌挿前位置に搬送し、次いで、開口部の画像から取得されたより精度の高い嵌挿前位置に搬送するため、より迅速かつより確実に電子部品を開口部に実装することができる。
【0013】
請求項2の発明にかかる電子部品の実装方法によれば、基準位置指標により、電子部品の搬送機構の座標系とプリント基板の座標系とをより容易にかつより確実に整合させ、当該プリント基板に対する電子部品の実装をより迅速かつより確実に行うことができる。
【0014】
請求項3の発明にかかる電子部品の分離方法によれば、押圧治具を、まずは、記憶された押圧前位置に搬送し、次いで、開口部に実装された電子部品の画像から取得されたより精度の高い押圧前位置に搬送するため、より迅速かつより確実に電子部品を開口部から分離させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1実施形態)以下、本発明を具現化した第1実施形態について図面を参照して説明する。図1は、電子部品が実装されたプリント基板の斜視図、図2は、プリント基板に対して電子部品を実装または分離する着脱装置のブロック図、図3は、プリント基板に電子部品を実装する様子を示す斜視図、図4は、プリント基板に電子部品を実装する様子を示す側方断面図、図5は、プリント基板から電子部品を分離する様子を示す側方断面図、図6は、プリント基板に電子部品を実装する方法を示すフローチャート、図7は、電子部品をプリント基板の開口部位置の嵌挿方向手前側まで移動させる様子を示す平面図、図8は、プリント基板から電子部品を分離する方法を示すフローチャートである。
【0016】
まずは、本実施形態にかかる電子部品実装基板の構造について説明する。
【0017】
図1、図3、および図4に示すように、本実施形態にかかる電子部品実装基板を構成するプリント基板2には開口部3が形成されており、電子部品1は、その開口部3に嵌挿されて実装される。
【0018】
電子部品1は、発光ダイオード(LED)やコンデンサ、抵抗、トランジスタ、IC等の素子である。ただし、本実施形態では、電子部品1として発光ダイオードを用いた場合を例示する。
【0019】
この電子部品1は、全体的に所定厚みをもった略方形状に形成されており、電子部品1の電極端子としての複数(本実施形態では3対)のリード4が電子部品本体の相互に対向する両側壁面1a,1aから突出し、下面1cに沿って形成されている。
【0020】
電子部品1の両側壁面1a,1aに対向する開口部3の内周には、リード4に対応する位置に、プリント基板2の導体パターン6に接続されて開口部3内方に突出する突起状端子5を設けてある。
【0021】
そして、電子部品1のリード4を突起状端子5に圧接させつつ、当該電子部品1を開口部3に着脱可能に圧入するようになっている。電子部品1の着脱には治具15が用いられる。
【0022】
突起状端子5は、プリント基板2の厚さ方向に延びる二条の鋭角山形状の突起部と、それら二条の突起部間およびその突起部の外方側部にそれぞれ形成される円弧状凹部と、によって形成される。具体的に、この突起状端子5の突起(突条)は、プリント基板2に断面円形のスルーホールを相互に重なり合うようにずらして複数形成することで、相互に隣接するスルーホールの側面(内周面)同士が交わる部分に形成される尖端として得ることができる。このようにして突起(突条)を形成した後、適宜銅メッキ処理等を行うことで、突起状端子5を得ることができる。
【0023】
かかる構成の電子部品実装基板によれば、電子部品1を開口部3に実装(圧入)する際に、その電子部品1のリード4が開口部3の内周に形成した突起状端子5に圧接されるので、リード4を導体パターン6に接続した突起状端子5により確実に接続することができる。このとき、電子部品1は、リード4を突起状端子5に圧接する際の保持力、すなわち、電子部品1を開口部3に圧入する際の保持力によって、開口部3に固定することができる。
【0024】
つまり、電子部品1は、開口部3の内周に形成した突起状端子5にリード4を圧接させた状態で嵌合保持されることになり、半田や導電性接着剤によって固定されるものではないため、開口部3に圧入するだけで極めて容易に実装することができるとともに、治具15等を用いてプリント基板2の裏面側から電子部品1を押し出すことで開口部3から極めて容易に取り外すことができる。
【0025】
すなわち、電子部品1の実装時および分離時ともに熱による影響を無くすことができるため、耐熱性の低いより安価な電子部品1を用いることができる上、電子部品1の長寿命化(特に取り外した後の電子部品の信頼性確保)を図ることができ、容易に再利用可能であるというメリットがあり、ひいては、電子部品1の再利用が促進される分、不要な資源が抑制できるとともに回路基板の製造コストを低減できる上、電子部品1の実装および分離の際には不要なエネルギーを抑制できるため、省資源化に資することとなる。
【0026】
次に、プリント基板2に対して電子部品1を実装・分離するための着脱装置10の構成および実装方法について説明する。
【0027】
本実施形態にかかる着脱装置10は、図2に示すように、制御部11、撮像機構12、搬送機構13、把持機構14、および記憶部20によって概ね構成されている。
【0028】
制御部11は、指示入力等に基づいて着脱装置10の各部を制御するとともに、撮像機構12より受け取った画像情報に対する画像処理や画像情報に基づく演算処理等を行う。
【0029】
撮像機構12は、例えばCCDカメラや、それを制御する制御部等を含んでおり、制御部11からの指示信号等に基づいてプリント基板2の表面の所定領域を撮像し、取得した画像情報を制御部11に送る。
【0030】
搬送機構13は、制御部11からの指示信号等に従って動作し、電子部品1を着脱するための治具15、または当該治具15によって把持した電子部品1を、所定の位置に搬送する。
【0031】
把持機構14は、制御部11からの指示信号等に基づいて電子部品1を把持するものであり、具体的には、図3および図4に示すように、例えば、治具15の下面15bを電子部品1の上面1bに当接させ、エア通路15aを介して図示しない空気ポンプ等によってエアを吸引し、下面15bに電子部品1を吸着して把持する機構として構成することができる。また、この治具15は、図5に示すように、プリント基板2の裏側から電子部品1に近接させ、当該電子部品1の下面1cを押圧して電子部品1を取り外す分離用の治具15として用いることも可能である。
【0032】
記憶部20には、後述する基本位置座標PhmやPpmの他、各部の制御に必要な情報等が記憶される。
【0033】
ここで、この着脱装置10による電子部品1の実装手順について、図6および図7を参照しながら説明する。
【0034】
まず、制御部11は、記憶部20より、記憶された基本位置座標Phm(嵌挿前位置)を取得する(ステップS11)。基本位置座標Phmは、メモリ等の記憶部20に、例えば、プリント基板2の種別や個別のID等に関連付けられて予め入力されて記憶されている。なお、この基本位置座標Phmや後述の補正後位置座標Phsならびに最終位置座標Phfを含め、搬送機構13による搬送目標点となる位置座標は2次元座標とし、電子部品1の実装作業を行う前後における搬送機構13による治具15あるいは電子部品1の移動は、プリント基板2の表面から所定距離離間して当該表面に沿った2次元平面内での移動とするのが好適である。
【0035】
次に、制御部11は、把持機構14および搬送機構13を制御して、把持した電子部品1(中心位置Pc)を基本位置座標Phmへ搬送する(ステップS12)。
【0036】
なお、このとき、プリント基板2に対する開口部3の位置の誤差や着脱装置10(の台座部;図示せず)に対するプリント基板2の取付位置の誤差は、プリント基板2の表面上に設けた指標Poを用いて補償することができる。具体的には、この指標Poを撮像機構12によって撮像し、制御部11によって画像処理することで、プリント基板2の座標系における開口部3の位置や着脱装置10の座標系におけるプリント基板2の位置を取得したり、指標Poを目印として着脱装置10の所定位置に位置合わせしてプリント基板2を取り付けたりすることができる。すなわち、本実施形態では、この指標Poが、基本位置座標Phmや、後述の補正後位置座標Phs、最終位置座標Phfの基準位置指標(原点)に相当する。なお、指標Poは、例えば十字状等他の形状としてもよいし、その設置位置も適宜に変更可能である。
【0037】
次に、制御部11は、ステップS11で取得された基本位置座標Phmを元に撮像機構12を制御して、少なくとも電子部品1を実装する開口部3を含む画像を撮像し、当該撮像機構12から画像情報を得る(ステップS13)。
【0038】
次に、制御部11は、撮像機構12より取得した画像情報に対して、二値化、フィルタリング、エッジ検出、グループ化等の各種画像処理を行い、開口部3の中心に対応する補正後位置座標Phs(嵌挿前位置)を取得する(ステップS14)。具体的には、開口部3の中心位置を、開口部3の画像の重心位置、あるいは開口部3の画像の隅部の対角線の交点位置等として取得し、当該中心位置の2次元座標を補正後位置座標Phsとする。
【0039】
次に、制御部11は、画像情報より取得した補正後位置座標Phsを、最終位置座標Phfとし(ステップS15)、さらに、把持機構14および搬送機構13を制御して、把持した電子部品1(の中心位置Pc)を、当該最終位置座標Phf(=画像から取得された補正後位置座標Phs)へ搬送する(ステップS16)。なお、これらステップS15およびS16は、嵌挿前位置の微調整工程と言うことができる。
【0040】
このときの最終位置座標Phfは、実装対象となる開口部3に対して、ほぼ電子部品1の嵌挿方向手前側の位置(開口部3の真上位置)に相当する。したがって、制御部11は、搬送機構13を制御して把持した電子部品1を開口部3に近接させ、さらに当該近接方向(すなわち嵌挿方向)に移動させることで、この電子部品1を開口部3に嵌挿(圧入)することができる(ステップS17)。
【0041】
そして、制御部11は、最終位置座標Phfを、メモリ等の記憶部20に格納する(ステップS18)。この最終位置座標Phfは、その後の実装・分離処理に利用される。
【0042】
また、本実施形態にかかる着脱装置10よれば、電子部品1を実装したのとほぼ同様の手順により、電子部品1が実装されたプリント基板2から電子部品1を取り外すことができる。この分離手順について、図8を参照しながら説明する。なお、以下の分離手順を実行するにあたり、電子部品実装基板は、裏面(電子部品1の下面1c)が上、すなわち上記実装手順時とは逆となる姿勢で、着脱装置10の台座等に装着しておくことが好適である。
【0043】
まず、制御部11は、記憶部20より、記憶された基本位置座標Ppm(押圧前位置)を取得する(ステップS21)。基本位置座標Ppmは、メモリ等の記憶部20に、例えば、プリント基板2の種別や個別のID等に関連付けられて予め入力されて記憶されている。なお、この基本位置座標Ppmや後述の補正後位置座標Ppsならびに最終位置座標Ppfについても2次元座標とし、電子部品1の分離作業を行う前後における搬送機構13による治具15の移動は、プリント基板2の表面から所定距離離間して当該表面に沿った2次元平面内での移動とするのが好適である。
【0044】
次に、制御部11は、把持機構14および搬送機構13を制御して、治具15(の中心)を基本位置座標Ppmへ搬送する(ステップS22)。
【0045】
次に、制御部11は、ステップS21で取得された基本位置座標Ppmを元に撮像機構12を制御して、少なくとも開口部3に実装された電子部品1を含む画像を撮像し、当該撮像機構12から画像情報を得る(ステップS23)。
【0046】
次に、制御部11は、撮像機構12より取得した画像情報に対して、二値化、フィルタリング、エッジ検出、グループ化等の各種画像処理を行い、開口部3に装着された電子部品1の中心に対応する補正後位置座標Pps(押圧前位置)を取得する(ステップS24)。具体的には、電子部品1の下面1cの中心位置を、電子部品1若しくは開口部3の画像の重心位置、または電子部品1若しくは開口部3の画像の隅部の対角線の交点位置等として取得し、当該中心位置の2次元座標を補正後位置座標Ppsとする。
【0047】
次に、制御部11は、画像情報より取得した補正後位置座標Ppsを、最終位置座標Ppfとし(ステップS25)、さらに、把持機構14および搬送機構13を制御して、治具15(の中心)を、当該最終位置座標Ppf(=画像から取得された補正後位置座標Pps)へ搬送する(ステップS26)。なお、これらステップS25およびS26は、押圧前位置の微調整工程と言うことができる。
【0048】
このときの最終位置座標Ppfは、開口部3または当該開口部3に実装された電子部品1に対して、ほぼ電子部品1の嵌挿方向先方側(奥側)の位置(開口部3の真下位置)に相当する。したがって、制御部11は、搬送機構13を制御して把持した治具15を開口部3に向けて近接させ、図5に示すように、治具15によって電子部品1の下面1cを当該近接方向(すなわち嵌挿方向の逆方向)に押圧することで、この電子部品1を開口部3から取り外すことができる(ステップS27)。
【0049】
そして、制御部11は、最終位置座標Ppfを、メモリ等の記憶部20に格納する(ステップS28)。この最終位置座標Ppfは、その後の実装処理に利用される。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、電子部品1を、まずは、記憶された基本位置座標Phm(嵌挿前位置)に搬送し、さらに、開口部3の画像から取得されたより精度の高い補正後位置座標Phs(嵌挿前位置)に搬送することができるため、より迅速かつより確実に電子部品1を開口部3に実装することができ、ひいては、電子部品実装基板の歩留まりを向上し、その製造コストを低減することができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、分離用の治具15を、まずは、記憶された基本位置座標Ppm(押圧前位置)に搬送し、さらに、電子部品1が実装された画像から取得されたより精度の高い補正後位置座標Pps(押圧前位置)に搬送することができるため、より迅速かつより確実に電子部品1を開口部3から分離させることができ、ひいては、電子部品を分離する処理のタクトタイムを短縮し、分離処理に要するコストを低減することができる。
【0052】
さらに、本実施形態によって、熱を付加することなくプリント基板2に設けられた開口部3に電子部品1をより確実に実装および分離可能となるため、耐熱性の低い安価な電子部品が採用できると共に、再利用時の電子部品の信頼性が確保できるため、その取り外された電子部品を再利用することにより安価な電子部品実装基板を提供できる。また、電子部品1をプリント基板2に対し実装または分離する際のエネルギーを抑制できるため、環境負荷の低減が可能となる。
【0053】
また、本実施形態によれば、プリント基板2の表面上に設けた指標Poにより、電子部品1の搬送機構13の座標系とプリント基板2の座標系とをより容易にかつより確実に整合させ、当該プリント基板2に対する電子部品1の実装をより迅速かつより確実に行うことができる。したがって、プリント基板2に対する電子部品1の実装の際に、プリント基板2の位置座標と部品の寸法ばらつきや設備・治具との位置ばらつきが吸収できるので、製造歩留まりが向上し電子部品実装基板の品質が確保でき、かつ安価な電子部品実装基板を提供できる。
【0054】
また、本実施形態にかかる着脱装置10は、電子部品1の実装および分離の双方に利用することができるため、実装と分離とでそれぞれ別個に装置を準備する必要が無く、装置の占めるスペースをより小さくすることができる上、設備投資を抑制することができる。なお、実装と分離との切り換えは、使用するプログラムを切り換えるだけで容易に行うことができる。
【0055】
本発明は、次のような別の実施形態に具現化することができる。以下の別の実施形態でも上記実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0056】
(1)上記各実施形態では、まず基本位置座標Phm(Ppm)に電子部品1(治具15)を搬送し、撮像機構12から画像情報を得た後、補正後位置座標Phs(Pps)へ搬送しているが、電子部品1(治具15)の基本位置座標Phm(Ppm)への搬送を省略し、基本位置座標Phm(Ppm)を元に撮像機構12を制御し補正後位置座標Phs(Pps)を取得した後に電子部品1(治具15)を直接補正後位置座標Phs(Pps)に搬送してもよい。
【0057】
(2)上記各実施形態では、指標Poをプリント基板2に設けたが、この指標Poを着脱装置10に設定してもよい。ただし、その場合、プリント基板2を着脱装置10の所定位置に位置決めすることができることと、撮像機構12によって画像が取得される範囲内に指標Poを設定することが前提となる。
【0058】
(3)上記各実施形態では、指標Poを電子部品1の実装の際に基準位置指標(原点)としていたが、プリント基板2から電子部品1を分離する際に使用してもよい。但し、その場合、プリント基板2の裏面(電子部品1の下面1c)側に指標Poを設定することが前提となる。
【0059】
(4)また、電子部品を把持するまたは押圧する治具を着脱装置に対して比較的容易に着脱できるように構成しておき、電子部品の実装および分離について、それぞれ専用の治具を用いるようにしてもよい。
【0060】
(5)また、実装する部品は、開口部に嵌挿して実装することができるものであればよく、突起状端子を有することは必須ではないし、また、開口部の形状を、長方形状や円形状等、他の形状としてもよい。
【0061】
また、上記実施形態から把握し得る請求項以外の技術思想について、以下にその効果と共に記載する。
【0062】
(イ)請求項1,2に記載の電子部品の実装方法、または請求項3に記載の電子部品の分離方法では、上記開口部内周の電子部品の電極端子に対応する位置に、上記プリント基板の回路パターンに接続されて上記開口部内方に突出する突起状端子を設け、上記電子部品の電極端子と上記突起状端子とを圧接させつつ上記電子部品を上記開口部に圧入して着脱可能に実装するように構成するのが好適である。
【0063】
こうすれば、電子部品をプリント基板に設けた開口部に実装する際に、その電子部品の電極端子が突起状端子に圧接されるので、上記電極端子を回路パターンに接続した上記突起状端子に確実に接続でき、かつ、上記電子部品を、電極端子を突起状端子に圧接する際の圧接力で開口部に固定することができる。したがって、半田や導電性接着剤等を用いることなく、プリント基板に対して電子部品を容易に着脱することができる。
【0064】
(ロ)請求項1,2に記載の電子部品の実装方法および/または請求項3に記載の電子部品の分離方法で用いられる電子部品の着脱装置は、着脱装置の各部を制御する制御部と、プリント基板の表面の所定領域を撮像する撮像機構と、電子部品を着脱するための治具、または当該治具によって把持した電子部品を、所定の位置に搬送する搬送機構と、電子部品を把持する把持機構と、上記嵌挿前位置および上記押圧前位置を記憶する記憶部と、を備えるのが好適である。
【0065】
こうすれば、プリント基板に対する電子部品の実装および分離を、一つの装置で実行することができる。
【0066】
(ハ)請求項1,2に記載の電子部品の実装方法および/または請求項3に記載の電子部品の分離方法で用いられる電子部品の着脱装置において、画像から取得された嵌挿前位置(押圧前位置)を、電子部品の実装(分離)が完了した際に記憶し、次のプリント基板への実装(分離)の際に、記憶された搬送前位置(押圧前位置)としてフィードバック制御するように構成するのが好適である。
【0067】
こうすれば、プリント基板の位置座標と部品の寸法ばらつきや設備・治具との位置ばらつきがより迅速に吸収でき、かつより精度の高い嵌挿前位置(押圧前位置)に搬送することができるため、電子部品を実装(分離)する処理のタクトタイムを短縮し、実装(分離)処理に要するコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施形態にかかる電子部品が実装されたプリント基板の斜視図。
【図2】本発明の実施形態にかかるプリント基板に対して電子部品を実装または分離する着脱装置のブロック図。
【図3】本発明の実施形態にかかるプリント基板に電子部品を実装する様子を示す斜視図。
【図4】本発明の実施形態にかかるプリント基板に電子部品を実装する様子を示す側方断面図。
【図5】本発明の実施形態にかかるプリント基板から電子部品を分離する様子を示す側方断面図。
【図6】本発明の実施形態にかかるプリント基板に電子部品を実装する方法を示すフローチャート。
【図7】本発明の実施形態にかかる電子部品をプリント基板の開口部位置の嵌挿方向手前側まで移動させる様子を示す平面図。
【図8】本発明の実施形態にかかるプリント基板から電子部品を分離する方法を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0069】
1 電子部品
2 プリント基板
3 開口部
Phm 基本位置座標(嵌挿前位置)
Phs 補正後位置座標(画像から取得された嵌挿前位置)
Phf 最終位置座標(画像から取得された嵌挿前位置)
Po 指標(基準位置指標)
Ppm 基本位置座標(押圧前位置)
Pps 補正後位置座標(画像から取得された押圧前位置)
Ppf 最終位置座標(画像から取得された押圧前位置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板に設けられた開口部に電子部品を嵌挿して実装する電子部品の実装方法であって、
電子部品を記憶された嵌挿前位置に搬送するステップと、
実装対象としてのプリント基板の画像から開口部に対応する嵌挿前位置を取得するステップと、
記憶された嵌挿前位置に搬送された電子部品を、画像から取得された嵌挿前位置に搬送するステップと、
画像から取得された嵌挿前位置に搬送された電子部品を、開口部に嵌挿するステップと、
を備えることを特徴とする電子部品の実装方法。
【請求項2】
プリント基板に当該プリント基板上の位置座標の基準位置を示す基準位置指標が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品の実装方法。
【請求項3】
プリント基板に設けられた開口部に嵌挿された電子部品を取り外す電子部品の分離方法であって、
押圧治具を記憶された押圧前位置に搬送するステップと、
分離対象としてのプリント基板の画像から押圧前位置を取得するステップと、
記憶された押圧前位置に搬送された押圧治具を、画像から取得された押圧前位置に搬送するステップと、
画像から取得された押圧前位置に搬送された押圧治具を、開口部に嵌挿された電子部品に押し当てて当該電子部品を取り外すステップと、
を備えることを特徴とする電子部品の分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−165730(P2007−165730A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362360(P2005−362360)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】