説明

電子部品の封止構造

【課題】電子部品を配線基板に接合する場合に形成する封止構造について、熱応力を緩和するという事項と、耐湿性および/または耐水性という事項とを同時に具備することができる封止構造を提供する。
【解決手段】電子部品の封止構造は、回路基板上の接続用電極に電子部品の接続用電極を対向させて両電極の間に導電性材料による導通接続部を形成すると共に、前記基板表面と前記電子部品の少なくとも下側表面との間に前記導通接続部を封止する樹脂封止部を形成してなる電子部品の封止構造であって、前記樹脂封止部は内側樹脂層および外側樹脂層の少なくとも2層からなり、内側樹脂層と外側樹脂層との間ではガラス転移温度が異なることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を実装した回路基板の電極接合部を封止する材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、軽量化、高性能化及び高速化を目的として、電子機器の回路基板にも高密度実装化が要求されている。そのため、回路基板に実装する電子部品及びチップ部品、CSP(チップサイズパッケージ)IC等を含む半導体装置についても小型化、薄型化、高速化、多端子化が図られている。その結果、電子部品及び/又は半導体装置自体の機械的強度は低下しており、これらに加えられる機械的応力及び温度変化に対して、より脆弱なものが増加している。また、高密度実装化が図られたことに伴って、電子部品及び/又は半導体装置(本明細書において、電子部品及び/又は半導体装置を総称して「電子部品」とも称する)1点あたりのコスト、並びに電子部品等を実装した回路基板1枚当たりのコストは増大している。
【0003】
電子部品を回路基板上に実装する方法として、回路基板上の所定の位置に電子部品を、それぞれ対応する電極が接触するように配置し、接続すべき電極どうしの間にハンダ材料又は導電性接着剤を供給し、これをリフロー炉等に入れることによって電子部品と回路基板との電極どうしを接合し、更に、その接合操作と並行して又は前後して、接合部の周囲を含めて電子部品と回路基板との間を樹脂により封止するという方法が一般に行われている。この樹脂封止は、その後にヒートサイクルや高温多湿の環境に曝された場合であっても、電子部品を回路基板に接着して固定するため、並びに電子部品と回路基板との接合部を高い信頼性で保護するために重要である。
【0004】
ヒートサイクルに曝された場合の電子部品を実装した回路基板の信頼性を確保することを目的として、低弾性率の電子部品接着部材を用いて電子部品と配線基板との間の熱応力を緩和する発明が、特許文献1(特に段落番号0032)に開示されている。この特許文献は、半導体チップの熱膨張係数と回路基板の熱膨張係数とに差があることに起因して、ヒートサイクルに曝された場合に熱応力が生じることに着目しており、そのような熱応力を緩和するためには、その発明に係る低弾性率の電子部品接着部材を用いることが有効であることを開示している。
【特許文献1】特開2000−154361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている発明では、電子部品と配線基板との間に生じる熱応力を緩和するために、低弾性率の電子部品接着部材が用いられている。本出願の発明者らは、外部から熱及び機械的応力が加えられた場合に、接合部の剥がれやクラックを防止するだけでなく、脆弱化している電子部品の剥がれやクラックをも防止することを目的として種々の検討を行った。その結果、特許文献1に開示されている発明のような低弾性率の電子部品接着部材は吸水率が高く、さらに吸水することにより電気絶縁性が著しく低下することを見出した。
【0006】
この出願は、上記従来の課題を考慮して、電子部品を配線基板に接合する場合に形成する封止構造について、熱応力を緩和するという事項と、耐湿性および/または耐水性という事項とを同時に具備することができる封止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この出願は、回路基板上の接続用電極に電子部品の接続用電極を対向させて両電極の間に導電性材料による導通接続部を形成すると共に、前記基板表面と前記電子部品の少なくとも下側表面との間に前記導通接続部を封止する樹脂封止部を形成してなる電子部品の封止構造であって、前記樹脂封止部は内側樹脂層および外側樹脂層の少なくとも2層からなり、前記内側樹脂層は前記基板の上側表面と前記部品の下側表面との間で導通接続部を包囲しており、前記外側樹脂層は前記基板の上側表面と前記部品の下側表面との間で前記内側樹脂層を包囲しており、内側樹脂層と外側樹脂層との間ではガラス転移温度(Tg)が異なっていることを特徴とする電子部品の封止構造の発明を提供する。
【0008】
前記電子部品の封止構造の発明は、前記内側樹脂層を形成する樹脂は、前記外側樹脂層を形成する樹脂と対比して、より低いガラス転移温度を有することを特徴とすることができる。
【0009】
前記電子部品の封止構造の発明において、内側樹脂層を形成する樹脂は、45℃以下、好ましくは10℃以下、より好ましくは0℃以下のガラス転移温度を有することを特徴とすることができる。
【0010】
前記電子部品の封止構造の発明において、外側樹脂層を形成する樹脂は、80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上のガラス転移温度を有することを特徴とすることができる。
【0011】
前記電子部品の封止構造の発明において、外側樹脂層は0.5mm以上2mm以下の厚みを有することを特徴とすることができる。
【0012】
前記電子部品の封止構造の発明において、前記導電性材料は、ハンダ材料、導電性接着剤および導電性ペーストの群から選ばれることを特徴とすることができる。
【0013】
前記電子部品の封止構造の発明において、電子部品は半導体素子または半導体チップであることを特徴とすることができる。
【0014】
前記電子部品の封止構造の発明において、樹脂封止部を形成する樹脂は熱硬化性樹脂であることを特徴とすることができる。
【0015】
前記電子部品の封止構造の発明において、熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂組成物、ウレタン樹脂組成物、フェノール樹脂組成物及びアクリル樹脂組成物の群から選ばれる1種又はそれ以上の樹脂であることを特徴とすることができる。
【0016】
この出願は、少なくとも1つの回路基板が、上述した電子部品の封止構造を有することを特徴とする実装構造体の発明を提供する。
【0017】
また、この出願は、
回路基板上の接続用電極と電子部品の接続用電極との間を導電性材料によって接続し、導通接続部を形成する工程;
前記導通接続部を包囲するように内側樹脂層を形成する樹脂を適用する工程;
前記内側樹脂層を形成する樹脂を硬化させる工程;ならびに
前記内側樹脂層を包囲するように外側樹脂層を形成する樹脂を適用しおよび硬化させる工程
を含んでなる電子部品の封止構造を製造する方法の発明を提供する。
【0018】
また、この出願は、
回路基板上の接続用電極と電子部品の接続用電極との間を導電性材料によって接続し、導通接続部を形成する工程;
前記導通接続部を包囲するように内側樹脂層を形成する樹脂を適用する工程;
前記内側樹脂層を包囲するように外側樹脂層を形成する樹脂を適用する工程;ならびに
前記内側樹脂層を形成する樹脂および外側樹脂層を形成する樹脂を硬化させる工程
を含んでなる電子部品の封止構造を製造する方法の発明を提供する。
【発明の効果】
【0019】
この出願の電子部品の封止構造の発明によれば、内側樹脂層と外側樹脂層との間でガラス転移温度(Tg)が異なるように設定することによって、一方の樹脂層には接合部および電子部品を比較的低い応力で封止するという特性を発揮させ、他方の樹脂層にはその層の内側部分を外側部分から隔離させる、特に水分を透過させ難くするという特性を発揮させることができる。従って、この封止構造によって回路基板に実装した電子部品および導通接続部を、比較的高い耐湿性を保ちながら、比較的長期間にわたって低応力で該基板上に封止することができる。
【0020】
この出願の発明の実装構造体は、熱や機械的応力によって受ける損傷を低減して、更に比較的高い耐湿性を保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(電子部品の封止構造)
この出願の発明に関して、電子部品という用語は、上述したように、種々の電子部品、半導体素子、チップ部品、CSP、IC等を含む半導体素子または半導体装置等、即ち、回路基板に電気的に接続することによって、その回路基板にその機能を発揮させることができる部品等を含む総称として用いる。
【0022】
この出願の発明に係る電子部品の封止構造は、所定の接続用電極を有する回路基板に、対応する電子部品を実装する際に形成される封止構造である。
【0023】
回路基板の接続用電極と電子部品の接続用電極との間は導通接続されている。導通接続は、一般的な導電性材料によって行われている。そのような導電性材料には、ハンダ材料、導電性接着剤および導電性ペーストの群から選ばれる材料を用いることができる。
【0024】
前記導通接続部は樹脂によって封止されており、従って導通接続部は樹脂封止部によって覆われている。樹脂は硬化性の樹脂である。そのような樹脂は、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂であってよい。
【0025】
基板の電極を有する表面と、電子部品の少なくとも基板に対向する下側表面との間において、前記導通接続部が樹脂によって封止されることによって、前記導通接続部は周囲の雰囲気から隔離されている。
【0026】
前記樹脂封止部は、内側樹脂層および外側樹脂層の少なくとも2層からなっており、内側樹脂層と外側樹脂層との間ではガラス転移温度(Tg)が異なるように設定する。そのようなガラス転移温度は、内側樹脂層を形成する樹脂のガラス転移温度が、外側樹脂層を形成する樹脂のガラス転移温度よりも低くなるように選択されている。
【0027】
内側樹脂層を形成する樹脂は、45℃以下、好ましくは10℃以下、より好ましくは0℃以下のガラス転移温度を有することを特徴とすることができる。これに対応して、外側樹脂層を形成する樹脂は、80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上のガラス転移温度を有することを特徴とすることができる。
【0028】
また、この発明に用いる樹脂は、硬化させた後、1つの態様において、ガラス転移温度よりも低温側の温度において500MPa以上の貯蔵弾性率を有し、かつ、ガラス転移温度よりも高温側の温度において200MPa以下の貯蔵弾性率を有することを特徴とすることができる。
【0029】
この発明の内側樹脂層を形成する樹脂は、硬化後、好ましい態様において、ガラス転移温度(Tg)よりも低温側の温度において有する貯蔵弾性率が800MPa以上であり、好ましくは1GPa以上であることを特徴とすることができる。
【0030】
この発明の内側樹脂層を形成する樹脂は、硬化後、好ましい態様において、ガラス転移温度(Tg)よりも高温側の温度において有する貯蔵弾性率が50MPa以下であり、より好ましくは10MPa以下であることを特徴とすることができる。
【0031】
この発明の外側樹脂層を形成する樹脂は、硬化後、好ましい態様において80℃以上のガラス転移温度(Tg)を有し、より好ましい態様において100℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0032】
また、この発明の外側樹脂層を形成する樹脂は、硬化後、1つの態様において、ガラス転移温度(Tg)よりも低温側の温度において1GPa以上の貯蔵弾性率を有することを特徴とすることができる。
【0033】
この発明の電子部品の封止構造を形成するには、導通接続部を覆うように内側樹脂層を適用し、その内側樹脂層を硬化させた後に、外側樹脂層を適用しおよび硬化させることが好ましい。内側樹脂層を形成する樹脂と外側樹脂層を形成する樹脂とが硬化前に混ざり合うことが生じると、それぞれの樹脂層が所望の特性を示さなくなる可能性があることから、この方法によって内側樹脂層の硬化と外側樹脂層の硬化との間で時間差を設けて、内側樹脂層を形成する樹脂と外側樹脂層を形成する樹脂とが硬化前に混ざり合うことを防止することができる。
【0034】
別法として、導通接続部を覆うように内側樹脂層を適用し、更にその内側樹脂層を包囲するように外側樹脂層を適用した後に、内側樹脂層および外側樹脂層を同時に硬化させることもできる。この方法によれば、製造リードタイムを短縮することができる。
【0035】
このように内側樹脂層を形成する樹脂のガラス転移温度を、外側樹脂層の樹脂のガラス転移温度よりも低く設定することによって、内側樹脂層は硬化後において、比較的低い応力にて電子部品を封止することができる。そのような電子部品には、電子部品、チップ部品、CSPIC等を含む半導体素子または半導体装置であって、いわゆるlow−k材料を含んでなる部品が含まれる。
【0036】
外側樹脂層は、硬化後において、内側樹脂層よりも高いガラス転移温度を有することによって、内側樹脂層を周囲の雰囲気から隔離することができる。特に、外側樹脂層は水分または湿分を透過させ難くなっていることによって、内側樹脂層を水分または湿分から保護すること、例えば耐湿性を確保することができる。
【0037】
この発明の封止構造は、内側樹脂層と外側樹脂層との間に、場合によって、更に1又はそれ以上の中間の樹脂層を有することもできる。その場合には、ガラス転移温度に関して、中間の樹脂層は、内側樹脂層のガラス転移温度よりも高く、外側樹脂層のガラス転移温度よりも低いものを選択することが好ましい。そのように選択することによって、低応力の封止と耐湿性の確保をより適切に設定することができる。
【0038】
従って、脆弱な電子部品及び/又は半導体装置の実装に際して、その接合部と同時に電子部品及び/又は半導体装置そのものに対して、低応力で封止することができようになる。さらに、外部の封止材料が内部の封止材料を外気から守るため、内部の封止材料は水分を吸収することなく電気絶縁性を良好に保つことができる。
【0039】
1つの態様において、外側樹脂層は0.5mm以上2mm以下の厚みを有することを特徴とすることができる。外側樹脂層の厚みが0.5mm未満の場合には十分な耐湿性を確保することができず、2mmを越えると応力が大きくなるためである。この構成によれば、内側樹脂層が吸湿することを防止することができ、更に、電子部品及び/又は半導体装置の応力を低減することができる。
【0040】
内側樹脂層を形成する樹脂も外側樹脂層を形成する樹脂も、一般的な熱硬化性樹脂であってよい。そのような熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂及びアクリル樹脂の群から選択することができる。この中で、吸湿性、熱膨張性及び硬化収縮性などの特性の点から、エポキシ樹脂が好ましい。
【0041】
そのようなエポキシ樹脂には、一般的に用いられる種々のエポキシ樹脂組成物を使用することができる。好ましいエポキシ樹脂組成物としては、二官能以上の多官能性エポキシ樹脂、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂)、ノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、シクロペンタジエン型エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらのエポキシ樹脂は2種以上を混合物して使用してもよい。エポキシ樹脂は粘度及び物性を考慮して選択できるが、多官能性エポキシ樹脂中に10〜100%の割合、特に50〜100%の割合で、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含むことが最も好ましい。上記のエポキシ樹脂には、更に、ゴム変性エポキシ樹脂(ポリイソプレン変性エポキシ樹脂、ポリクロロプレン変性エポキシ樹脂、ポリブタジエン変性エポキシ樹脂等)及びウレタン変性エポキシ樹脂及びダイマー酸変性エポキシ樹脂等の群から選ばれる変性エポキシ樹脂の1種又はそれ以上のものを適宜添加することができる。
【0042】
上記多官能性エポキシ樹脂には、(d)反応性希釈剤成分(又は架橋密度調節剤)として、単官能エポキシ樹脂を0〜30重量%、好ましくは0〜20重量%(いずれも全エポキシ樹脂中の重量%)程度の割合で添加することができる。そのような単官能エポキシ樹脂としては、分子内に1個のエポキシ基を有する化合物であって、炭素数6〜28のアルキル基を有するものが好ましく、例えば、C〜C28アルキルグリシジルエーテル、C〜C28脂肪酸グリシジルエステル、C〜C28アルキルフェノールグリシジルエーテル等を挙げることができる。C〜C28アルキルグリシジルエーテルが好ましく、単官能エポキシ樹脂も2種以上を混合して使用してもよい。
【0043】
また、モノエポキサイド、ジエオイキサイド、トリエポキサイド、ポリオール、ポリチオール、ポリカルボキシ及びウレタンからなる群から選ばれる1種又はそれ以上の化合物を反応性希釈剤成分として用いることもできる。
【0044】
上記熱硬化性樹脂には、対応する硬化剤成分が用いられる。熱硬化性樹脂成分として上述したエポキシ樹脂を使用する場合には、アミン化合物、イミダゾール化合物、変性アミン化合物、変性イミダゾール化合物、ポリフェノール化合物及び含硫黄化合物の群から選ばれる化合物を硬化剤成分として使用することが好ましい。
【0045】
アミン化合物としては、例えばジシアンジアミドやジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチルアミノプロピルアミン等の脂肪族ポリアミン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ポリアミン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン等の脂環族ポリアミンおよびポリアミド等を挙げることができる。
【0046】
イミダゾール化合物としては、例えば2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等を挙げることができる。
【0047】
変性アミン化合物としては、エポキシ化合物にアミン化合物を付加させたエポキシ化合物付加ポリアミン等を挙げることができ、変性イミダゾール化合物としては、エポキシ化合物にイミダゾール化合物を付加させたイミダゾール付加物等を挙げることができる。
【0048】
これらの硬化剤の中でも、1液性のエポキシ樹脂に用いられる潜在性硬化剤が好ましい。尚、潜在性硬化剤とは、その潜在性硬化剤をエポキシ樹脂と混合した状態であっても、常温付近の温度を適用している間は実質的に硬化が進まず、所定温度以上の温度へ加熱した場合に初めて硬化の進行が認められる種類の硬化剤である。エポキシ樹脂用の潜在性硬化剤としては、変性アミン化合物系の硬化剤が特に知られている。
【0049】
硬化剤の配合量は、通常エポキシ樹脂100重量部に対して、通常3〜60重量部であり、好ましくは5〜40重量部である。
【0050】
尚、この発明の封止材料の形態は、使用前において構成成分がすべて混合された1液型のものであっても、使用する前は熱硬化性樹脂成分と硬化剤成分とを別々に保存して、使用の際にそれらを混合する2液型のものであってもよい。このような封止材料の形態は、当業者に既知の技術水準に基づいて、熱硬化性樹脂成分と硬化剤成分との組成に応じて決めることができる。
【0051】
この発明の封止材料は、絶縁性フィラー成分として、アルミナ、シリカ、アルミナ、ボロンナイトライド、窒化アルミニウム、窒化珪素、マグネシア、マグネシウムシリケート、タルク、炭酸カルシウム、及び水酸化カルシウム等からなる群から選ばれる1種又はそれ以上の化合物を用いることができる。絶縁性フィラー成分は、主として熱膨張率、流動性、接着性の制御を果たす目的で配合される。また、本発明の封止材料は、所望により更に添加剤を含むことができる。そのような添加剤には、硬化促進剤(ポリアミン等)、染料、顔料等が挙げられる。
【0052】
(実施の形態1)
本発明の好ましい実施の形態を模式的に示す図1を参照しながら、以下、説明する。
【0053】
<樹脂の作製>
(樹脂1)
(a)熱硬化性樹脂成分としてビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部、これに対応する(b)硬化剤成分としてジシアンジアミド8重量部、(c)絶縁性フィラー成分として50%平均粒径5μmのアルミナフィラー0、10重量部、(d)反応性希釈剤(架橋調整剤)成分としてアルキルグリシジルエーテル10重量部、更に前記熱硬化性樹脂成分及び硬化剤成分の組合せに好適な硬化促進剤1重量部を混合して、封止材料を調製した。混合直後の粘度は28000mPa・sであった。
【0054】
得られた封止材料を、上述したような封止操作の条件に付して硬化させて、硬化後の封止材料のガラス転移点(Tg)及び貯蔵弾性率Eを測定した。ガラス転移点(Tg)は2.8℃であった。
【0055】
また、温度T1(50℃)から温度T2(200℃)へ昇温しながら貯蔵弾性率Eを測定し、温度を横軸にとり、対数目盛りで示す貯蔵弾性率Eを縦軸にとってプロットしたところ、図2に示すようにS字形状に変曲するグラフが得られた。即ち、温度T1(50℃)以下の温度領域及び温度T2(200℃)以上の温度領域では、温度の変化に対して貯蔵弾性率Eは実質的に変化を示さなかったが、温度T1(50℃)から温度T2(200℃)までの間のガラス転移点(Tg)を含む温度領域において、図示するように比較的大きな変化を示した。
【0056】
(樹脂2−11)
樹脂2〜11は、(a)熱硬化性樹脂成分としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた。これに対応する(b)硬化剤成分としては、樹脂6及び8でチオールを、樹脂2、3、9−11でアミンを、樹脂4及び7で酸無水物を、樹脂5でフェノールを用いた。(c)絶縁性フィラー成分及び(d)反応性希釈剤(架橋調整剤)成分は、樹脂1と同じものを使用した。
【0057】
(樹脂12および13)
樹脂12および13は、表1に示すように、(a)熱硬化性樹脂成分としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を、対応する(b)硬化剤成分として酸無水物を用い、(c)絶縁性フィラー成分及び(d)反応性希釈剤(架橋調整剤)成分は、樹脂1と同じものを使用した。硬化物のガラス転移点(Tg)は、樹脂12では164℃、樹脂13では90℃であった。
【0058】
<封止及び実装操作>
図1は、半導体装置1とその半導体装置1を取り付けるべきガラスエポキシ回路基板6を模式的に示している。半導体装置1にはハンダボール(電極)2が設けられており、各電極に対応して回路基板7上にはランド(電極)6が設けられている。半導体装置1側のハンダボール(電極)2と回路基板7側のランド(電極)6とは、ハンダによって接合されて導通接続部3が形成されている。回路基板7と半導体装置1との間において、各導通接続部3の周囲は樹脂層によって包囲されている。
【0059】
樹脂層は、内側樹脂層4および外側樹脂層5の2層によって形成されている。内側樹脂層4は、各導通接続部3を直接的に包囲して、すべての導通接続部3を封止している。外側樹脂層5は、その内側樹脂層4の外側を包囲および封止している。従って、内側樹脂層4は、外側樹脂層5によって実質的に周囲の雰囲気から隔離されている。
【0060】
具体的な実装の操作は、次のように行った。配線が施された厚さ1.6mmのガラスエポキシ基板上の電極にクリームハンダ(千住金属工業株式会社、M705−221BM5−K)を塗布し、チップサイズが13mm×13mmのパッケージ、電極径(直径)0.5mm、電極ピッチ0.8mm、キャリア基材がアルミナであるCSPをリフローによりハンダ付けを行った。
【0061】
各樹脂層を形成するための樹脂には、表1に示す各熱硬化性樹脂を使用した。
その後、ディスペンサを用いてCSPと回路基板との接合部の周囲に第1の(内側樹脂層用の)熱硬化性樹脂を塗布し、引き続き80℃で30分間加熱し、更に150℃まで昇温して60分間加熱して熱硬化性樹脂を十分に硬化させた。さらに第2の(外側樹脂層用の)熱硬化性樹脂を塗布する場合は第1の熱硬化性樹脂が外気に触れない様に塗布し、引き続き150℃まで昇温して60分間加熱して熱硬化性樹脂を十分に硬化させた。この過程において、加熱された熱硬化性樹脂は、硬化に至るよりも前に十分な流動性を有するようになってCSPと回路基板との間の空隙にも浸透する。更に加熱すると、絶縁性フィラーが若干沈降した状態で熱硬化性樹脂は硬化するに至り、従ってCSPと回路基板との間をも封止して、所望のCSP実装構造体を得た。
【0062】
各実装構造体の封止構造について、以下の特性を評価した。
(1)初期封止特性:初期封止特性の評価は、以下のように行った。熱硬化性樹脂が硬化して接合部の封止が完了したCSP実装構造体について、目視観察により及び/又は顕微鏡観察により封止部を観察して、CSPの表面にクラック発生等の異常が認められるか否かを検査した。試験サンプル100個について検査した結果、異常が認められた試験サンプルが0個のものを○(合格)、異常が認められた試験サンプルが1〜3個のものを△(実用的に合格)、異常が認められた試験サンプルが4個以上のものを×(不合格)と評価した。
【0063】
(2)耐久的封止特性:耐久的封止特性の評価(いわゆるヒートサイクル試験)は、以下のように行った。初期封止特性が○と評価されたCSP実装構造体を、ヒートサイクル試験機(エタック社製、JISC60068に準拠)にて、−40℃×30分〜+85℃×30分を1サイクルとする温度サイクル試験に付した。所定のサイクル数に達したときに試験サンプルの導通試験を行い、CSPと基板との電気的接続を確認した。1000サイクル以上で導通があったものを○(合格)とし、1000サイクルに達する前に断線等のために非導通となったものを×(不合格)と評価した。後述する実施例の半導体素子実装構造体はいずれも、1000サイクルを越えても合格と評価された。
【0064】
(3)電気的封止特性:硬化後の封止材料の絶縁抵抗値の測定は、精製水、2−プロパノールで洗浄しおよび乾燥させた櫛形パターンに配線した基板上に、熱硬化性樹脂を厚さ0.5mmに塗布して硬化させた後、60℃90%の恒温恒湿槽(ETAC社製TH402)に投入し、リアルタイムで行った。基板寸法:50mm×50mm×1.0mm、導体幅:0.2mm、導体間隔:0.2mm、導体:CuにAuメッキ。500時間経過した時点での絶縁抵抗値が1.0×10Ω以上あったものを○(合格)とし、1.0×10Ω以下であったものを×(不合格)と評価した。
【0065】
(4)硬化後の封止材料のガラス転移点(Tg)及び貯蔵弾性率E'は、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製、DVA-200)を用いて、試験サンプル寸法:縦方向寸法 25mm、横方向寸法 3mm、高さ寸法 0.5mm、昇温速度:10℃/分、引張りモード、10Hz、自動静荷重の条件で測定した。損失弾性率E”のピークトップ温度をガラス転移点(Tg)として測定した。
【0066】
【表1】

(表1続き−1)

(表1続き−2)

【0067】
(実施例1)
内側樹脂層として樹脂4を使用し、外側樹脂層として樹脂12を使用して、封止構造を作製した。外側樹脂層厚みを1mmとした。上述の各特性試験を行ったところ、初期封止特性、耐久的封止特性、および電気的封止特性のいずれについても、良好な結果が得られた。いずれの実施例でも、硬化物は、−80℃以上であって、50℃以下の温度範囲にガラス転移温度(Tg)を有していた。
【0068】
(実施例2〜7)
それぞれ表2に示す樹脂を用いて封止構造を作製した。実施例1と同様に各特性試験を行った。
【0069】
尚、補足試験として、表1の各樹脂について、内側樹脂層にも外側樹脂層にも同じ樹脂を使用して、封止構造を作製し、上述の各特性試験を行った。その結果を表1に示している。
【0070】
(比較例1および2)
それぞれ表2に示す樹脂を用いて封止構造を作製した。実施例1と同様に各特性試験を行った。外側樹脂層は、塗布量を調整して、その厚みが0.1mmおよび2.5mmとなるように調節した。
【0071】
【表2】

(表2続き)

【0072】
比較例1、2では、初期封止特性に関して、100点の試験体中5点以上のCSPにクラックが見出された。従って、実用に耐える初期封止特性は得られなかった。硬化時における封止材料の収縮応力が大きいことに起因すると考えられる。
【0073】
各実施例及び比較例によって得られたそれぞれの封止構造を製造するための硬化プロセス及びその後の冷却プロセスを、リフローシミュレータ(コアーズ社製)を用いて観察した。そのプロセスにおいて実施例1〜7および比較例1の封止材料について異常は認められなかったが、比較例2の封止材料については、150℃まで昇温(硬化プロセス)した後、室温(約25℃)へ冷却する冷却プロセスにおいて、そのガラス転移温度(Tg)よりも低い温度である30℃付近の温度にて、CSPの表面にクラックが発生したことが観察された。
【0074】
このことは、実施例1〜7の封止構造の内側樹脂層はいずれも、−80℃〜50℃の範囲にガラス転移温度(Tg)を有しているため、その内側樹脂層が温度変化を受ける温度範囲の実質的に大部分について、その内側樹脂層はいわゆるゴム状態を保つことができること、その一方で、樹脂12および13は50℃以上の範囲にガラス転移温度(Tg)を有しているため、その樹脂が温度変化を受ける温度範囲の低温側の領域では、その樹脂はガラス状態で存在することになることに起因すると考えられる。即ち、加熱により硬化した樹脂は、冷却プロセスにおいて、樹脂自体もCSPと回路基板とに強固に密着した状態を保ち、これら全体が一緒に収縮するが、樹脂12および13はガラス転移温度(Tg)を下回る温度範囲ではガラス状態となって、CSP、回路基板及びガラス状態の樹脂がそれぞれ固有の線膨張係数で収縮しようとするためひずみが生じ、最も強度が弱いCSP(電子部品及び/又は半導体装置)がそのひずみに耐え切れずに破損すると考えられる。比較例2は内側樹脂層の封止材料のガラス転移温度は低いが、ガラス転移温度の高い外側樹脂層の厚みが大きいため、CSP(電子部品及び/又は半導体装置)が破損したと考えられる。
【0075】
また、電気的封止特性に関しては、初期値はいずれも1.0×10Ω以上あるが、時間の経過とともに樹脂1〜11は1.0×10Ω以下になってしまう。このことは、時間とともに封止材料が吸湿することが寄与していると考えられる。また、樹脂1〜11は分子の結合状態が、Tgが高い材料に比べて疎であるため吸水しやすいと考えられる。実施例1〜7および比較例2では、Tgが高い外側樹脂層が内側樹脂層を覆っているため、吸水しない。そのため絶縁抵抗値は1.0×10Ω以上を保っているのだと考えられる。比較例1では外側樹脂層の厚みが薄いため、内部の封止材料まで水分が浸透し、絶縁抵抗値が1.0×10Ω以下になってしまうと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】回路基板上に半導体チップを実装した状態を示す模式図である。
【図2】温度を横軸にとり、貯蔵弾性率Eを縦軸にとって、温度変化(ΔT)に対する貯蔵弾性率の変化(ΔE)をプロットしたグラフである。
【符号の説明】
【0077】
1 半導体装置
2 部品側電極
3 導通接続部
4 内側樹脂層
5 外側樹脂層
6 基板側電極またはランド
7 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板上の接続用電極に電子部品の接続用電極を対向させて両電極の間に導電性材料による導通接続部を形成すると共に、前記基板表面と前記電子部品の少なくとも下側表面との間に前記導通接続部を封止する樹脂封止部を形成してなる電子部品の封止構造であって、前記樹脂封止部は内側樹脂層および外側樹脂層の少なくとも2層からなり、前記内側樹脂層は前記基板の上側表面と前記部品の下側表面との間で導通接続部を包囲しており、前記外側樹脂層は前記基板の上側表面と前記部品の下側表面との間で前記内側樹脂層を包囲しており、内側樹脂層と外側樹脂層との間ではガラス転移温度(Tg)が異なっていることを特徴とする電子部品の封止構造。
【請求項2】
前記内側樹脂層を形成する樹脂は、前記外側樹脂層を形成する樹脂と対比して、より低いガラス転移温度を有することを特徴とする請求項1に記載の電子部品の封止構造。
【請求項3】
前記内側樹脂層を形成する樹脂のガラス転移温度が45℃以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品の封止構造。
【請求項4】
前記内側樹脂層を形成する樹脂のガラス転移温度が10℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子部品の封止構造。
【請求項5】
前記内側樹脂層を形成する樹脂のガラス転移温度が0℃以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子部品の封止構造。
【請求項6】
前記外側樹脂層を形成する樹脂のガラス転移温度が80℃以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子部品の封止構造。
【請求項7】
前記外側樹脂層を形成する樹脂のガラス転移温度が100℃以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電子部品の封止構造。
【請求項8】
前記外側樹脂層を形成する樹脂のガラス転移温度が150℃以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電子部品の封止構造。
【請求項9】
前記外側樹脂層の厚みが0.5mm以上2mm以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の電子部品の封止構造。
【請求項10】
前記導電性材料は、ハンダ材料、導電性接着剤および導電性ペーストの群から選ばれることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の電子部品の封止構造。
【請求項11】
電子部品が半導体素子または半導体チップであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の電子部品の封止構造。
【請求項12】
樹脂封止部を形成する樹脂は熱硬化性樹脂または光熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の電子部品の封止構造。
【請求項13】
熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂組成物、ウレタン樹脂組成物、フェノール樹脂組成物及びアクリル樹脂組成物の群から選ばれる1種又はそれ以上の樹脂であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の電子部品の封止構造。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の電子部品の封止構造を有して形成されていることを特徴とする実装構造体。
【請求項15】
回路基板上の接続用電極と電子部品の接続用電極との間を導電性材料によって接続し、導通接続部を形成する工程;
前記導通接続部を包囲するように内側樹脂層を形成する樹脂を適用する工程;
前記内側樹脂層を形成する樹脂を硬化させる工程;ならびに
前記内側樹脂層を包囲するように外側樹脂層を形成する樹脂を適用しおよび硬化させる工程
を含んでなる電子部品の封止構造を製造する方法。
【請求項16】
回路基板上の接続用電極と電子部品の接続用電極との間を導電性材料によって接続し、導通接続部を形成する工程;
前記導通接続部を包囲するように内側樹脂層を形成する樹脂を適用する工程;
前記内側樹脂層を包囲するように外側樹脂層を形成する樹脂を適用する工程;ならびに
前記内側樹脂層を形成する樹脂および外側樹脂層を形成する樹脂を硬化させる工程
を含んでなる電子部品の封止構造を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−305898(P2008−305898A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150317(P2007−150317)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】