説明

電子部品の製造方法、振込治具及びローラー治具

【課題】本発明は、端子電極が電子部品用素体の素体側面に広がる形状のばらつきを抑制できる電子部品の製造方法、振込治具及びローラー治具を提供する。
【解決手段】電子部品の製造方法は、端子電極が形成される端子電極形成面と端子電極形成面と接続している素体側面とを有する電子部品用素体を準備する準備工程と、準備した電子部品用素体の素体側面に撥水材料を擦りつける撥水材料付着工程と、端子電極形成面及び素体側面の一部に端子電極を形成する端子電極形成工程と、を有する。また、電子部品の製造方法では、素体側面に摺接する摺接部を含む振込治具又はローラー治具を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造方法、振込治具及びローラー治具に関する。
【背景技術】
【0002】
端部に端子電極を形成すべき電子部品として、例えばコンデンサや抵抗器等のチップ状電子部品が知られている。例えば、電子部品がセラミックコンデンサである場合、電子部品用素体である誘電体素体の端部には端子電極が形成される。端子電極を形成する場合、先ず、シリコーンゴムのキャリアプレートに穿設された円形の保持孔の中に誘電体素体を挿入し、誘電体素体の稜部がキャリアプレートのシリコーンゴムの弾性力で保持される。次に、キャリアプレートで保持された誘電体素体には、端部に導電性ペーストが塗布されることにより、下地電極が形成される。そして、下地電極が形成された誘電体素体が焼結される。その後、例えば、電気めっき法により、下地電極の表面に上部電極が形成される。
【0003】
誘電体素体の端部に導電性ペーストが塗布されると、誘電体素体上での表面張力又は導電性ペーストと誘電体素体とのぬれ性のばらつきにより、導電性ペーストは、誘電体素体の素体側面へ広がる量が異なることがある。その結果、導電性ペーストの形状がばらつくことがある。例えば、導電性ペーストと誘電体素体とのぬれ性が高いと、誘電体素体の端部間が導電性ペーストで接続されて短絡してしまうおそれがある。
【0004】
また、シリコーンゴムで保持される誘電体素体の稜部には、シリコーンゴムから撥水材料が付着する。そこで、誘電体素体の稜部と素体側面との間に、導電性ペーストのぬれ性の差が発生する。そして、誘電体素体の端部に導電性ペーストを塗布すると、導電性ペーストの広がりが稜部で少なく素体側面で多くなる。その結果、下地電極は誘電体素体の表面に沿って弧を描くように緩やかに、かつ誘電体素体の素体側面中央に広がる形状、いわゆるムーンシェイプとなる。下地電極が誘電体素体の素体側面中央に広がる形状のばらつきは、実装不良を招くおそれがあるので好ましくない。
【0005】
誘電体素体の素体側面へ広がる導電性ペーストの形状のばらつきは、予め熱処理や紫外線照射を施すことで改善する提案がなされている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−277373号公報
【特許文献2】特開2003−017374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び特許文献2に記載された電子部品の製造方法は、端子電極が電子部品用素体の素体側面に広がる形状のばらつきを抑制しているが、近年においては、さらなるばらつきの抑制が求められている。本発明は、端子電極が電子部品用素体の素体側面に広がる形状のばらつきを抑制できる電子部品の製造方法、振込治具及びローラー治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題について鋭意研究を重ねた結果、素体側面に摺接する摺接部を含む治具で、素体側面に撥水材料を付着するよう摺接部を擦りつけることが有効であることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る電子部品の製造方法は、 端子電極が形成される端子電極形成面と前記端子電極形成面と接続している素体側面とを有する電子部品用素体を準備する準備工程と、準備した前記電子部品用素体の前記素体側面に撥水材料を擦りつける撥水材料付着工程と、前記端子電極形成面及び前記素体側面の一部に端子電極を形成する端子電極形成工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る電子部品の製造方法では、素体側面に撥水材料を擦りつけることにより、素体側面における端子電極材料のぬれ性が低くなる。このため、電子部品の端子電極が意図しない広がりを起こすおそれも小さくなる。また、素体側面に撥水材料を擦りつけるので、確実に撥水材料を付着させることができる。そして、端子電極の形状及び大きさのばらつきがより効果的に抑制されるので、端子電極間が短絡するおそれも小さくすることができる。また、端子電極の形状と大きさのばらつきに起因する、例えば、基板に電子部品の端子電極を実装する際のチップ立ち等の実装不良も低減できる。
【0011】
本発明の望ましい態様として、前記撥水材料付着工程では、前記電子部品用素体の素体側面に摺接する摺接部と前記電子部品用素体とが接触することで撥水材料が付着することが好ましい。このようにすると、電子部品用素体の素体側面に均等に撥水材料を付着する作用も得られる。その結果、本態様に係る電子部品の製造方法は、端子電極の形状ばらつきをより効果的に抑制することができる。
【0012】
本発明の望ましい態様としては、前記撥水材料付着工程では、前記摺接部を有する振込治具と、前記端子電極工程において前記電子部品用素体を保持するキャリアプレートとが重ね合わされて、前記振込治具から前記キャリアプレートへ前記電子部品用素体が移動すると、前記摺接部と前記電子部品用素体の素体側面とが接触することで撥水材料が付着することが好ましい。このようにすれば、振込治具を前記電子部品用素体が通過することにより、他の工程を増やすことなく、撥水材料を付着することができる。その結果、本態様に係る電子部品の製造方法は、端子電極の形状ばらつきをより効果的に抑制することができる。
【0013】
本発明の望ましい態様としては、前記電子部品用素体が複数の素体側面を有し、前記撥水材料付着工程では、前記摺接部を有する振込治具と、前記端子電極工程において前記電子部品用素体を保持するキャリアプレートとが重ね合わされて、前記振込治具から前記キャリアプレートへ前記電子部品用素体が移動すると、前記摺接部と前記電子部品用素体の素体側面とが接触することで前記素体側面に撥水材料が付着し、前記キャリアプレートと前記複数の隣り合う素体側面の交わる稜部とが接触し、前記稜部に撥水材料が付着することが好ましい。この態様は、キャリアプレートにより、電子部品用素体の稜部に撥水材料が付着しても、電子部品用素体の素体側面と同程度に撥水材料が付着しているので、端子電極の形状ばらつきをより効果的に抑制することができる。
【0014】
本発明の望ましい態様として、前記撥水材料付着工程では、前記摺接部を含むローラーが前記電子部品用素体を通過して前記摺接部と前記電子部品用素体とが接触することで撥水材料が付着することが好ましい。摺接部は、ローラーの回転により電子部品用素体の素体側面に沿って柔軟に撥水材料を付着することができる。この態様は、摺接部を含むローラーが電子部品用素体の素体側面に撥水材料を擦りつけるので、確実に撥水材料を付着させることができる。その結果、本態様に係る電子部品の製造方法は、端子電極の形状ばらつきをより効果的に抑制することができる。
【0015】
本発明の望ましい態様としては、前記電子部品用素体が複数の素体側面を有し、前記撥水材料付着工程では、前記端子電極工程において前記電子部品用素体を保持するキャリアプレートと前記複数の隣り合う素体側面の交わる稜部とが接触し、前記稜部に撥水材料が付着することが好ましい。この態様は、キャリアプレートにより、電子部品用素体の稜部に撥水材料が付着しても、電子部品用素体の素体側面と同程度に撥水材料が付着しているので、端子電極の形状ばらつきをより効果的に抑制することができる。
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る振込治具は、端子電極を形成される端子電極形成面と前記端子電極形成面と接続している素体側面とを有する電子部品用素体を振り込む振込孔と、前記素体側面に接触する摺接部を有する撥水材料付着孔と、を含み、前記振込孔と前記撥水材料付着孔とが重ね合わされ、電子部品用素体が前記振込孔を通過すると前記撥水材料付着孔に到達し、前記電子部品用素体と前記摺接部とが接触すると、前記素体側面に撥水材料が付着することを特徴とする。
【0017】
前記電子部品用素体は、この振込治具を通過する過程で撥水材料が付着する。このため、この振込治具は、撥水材料を電子部品用素体に付着させる工程を増やすことなく、撥水材料を付着させることができる。その結果、本態様に係る振込治具は、端子電極の形状ばらつきをより効果的に抑制することができる。
【0018】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るローラー治具は、端子電極を形成される端子電極形成面と前記端子電極形成面と接続している素体側面とを有する電子部品用素体の周囲を回転しながら通過可能なローラーと、前記ローラーには、前記素体側面に摺接する摺接部を含み、前記電子部品用素体と前記摺接部とが接触すると、前記素体側面に撥水材料が付着することを特徴とする。
【0019】
このローラー治具は、摺接部を含むローラーが電子部品用素体の素体側面に撥水材料を擦りつけるので、確実に撥水材料を付着させることができる。摺接部は、ローラーの回転により電子部品用素体の素体側面に沿って柔軟に撥水材料を付着させることができる。その結果、本発明に係るローラー治具は、端子電極の形状ばらつきをより効果的に抑制することができる。摺接部はゴム状弾性体で形成されると、ローラー治具は、電子部品用素体の素体側面により均等に撥水材料を付着する作用も得られる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、端子電極が電子部品用素体の素体側面に広がる形状のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、端子電極を有する電子部品の一例として説明するコンデンサ素子の斜視図である。
【図2】図2は、図1のコンデンサ素子の断面図である。
【図3】図3は、本実施形態1に係る電子部品の製造方法で使用する振込治具及びキャリアプレートを模式的に示した模式図である。
【図4】図4は、本実施形態1に係る振込治具の撥水材料付着プレートを模式的に示した模式図である。
【図5】図5は、本実施形態1に係る振込治具の撥水材料付着プレートに形成された撥水材料付着孔を模式的に示した模式図である。
【図6】図6は、撥水材料付着孔の変形例を模式的に示した模式図である。
【図7】図7は、撥水材料付着孔の変形例を模式的に示した模式図である。
【図8】図8は、本実施形態1に係る電子部品の製造方法における電子部品の振込状態を模式的に示した断面図である。
【図9】図9は、本実施形態1に係る振込治具の撥水材料付着プレートの変形例を示す断面図である。
【図10】図10は、本実施形態1に係る振込治具の撥水材料付着プレートの他の変形例を示す断面図である。
【図11】図11は、本実施形態1に係る電子部品の製造方法の撥水材料付着工程を模式的に示した断面図である。
【図12】図12は、キャリアプレートに電子部品が保持されている状態を模式的に示した断面図である。
【図13】図13は、図12に示すキャリアプレートに電子部品が保持されている状態の平面図である。
【図14】図14は、電子部品の端部に導電性ペーストを塗布する工程を説明する説明図である。
【図15】図15は、本実施形態2に係る電子部品の製造方法で使用するローラー治具を模式的に示した模式図である。
【図16】図16は、本実施形態2に係る電子部品の製造方法で使用するローラー治具と整列治具との関係を説明する説明図である。
【図17】図17は、比較例の振込治具及びキャリアプレートを模式的に示した模式図である。
【図18】図18は、端子電極が電子部品用素体の素体側面に広がる形状の評価方法を説明する説明図である。
【図19】図19は、評価例における端子電極の形状の一例を説明する説明図である。
【図20】図20は、比較例における端子電極の形状の一例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0023】
図1は、端子電極を有する電子部品の一例として説明するコンデンサ素子の斜視図である。図2は、図1のコンデンサ素子の断面図である。図2は、コンデンサ素子10を、端子電極20、30の端面21、31及び内部電極17、18と直交する平面で切った断面を示している。コンデンサ素子10は、積層型のセラミックコンデンサであり、その形状は、略四角柱形状である。コンデンサ素子10は、電子部品用素体である誘電体素体11と、電子部品用素体の端部に形成される端子電極20、30とを有している。それぞれの端子電極20、30は、略四角柱形状の誘電体素体11の対向する端面をそれぞれ別個に覆っている。
【0024】
端子電極20、30は、誘電体素体11の端面である端子電極形成面13、14と、端子電極形成面13、14と接続している素体側面12のうち端子電極形成面13、14側の部分との両方を覆う。このように、端子電極20、30は、誘電体素体11の両方の端部(端子電極形成面13、14及び端子電極形成面13、14と接続する素体側面12の端子電極形成面13、14側の一部分)を覆う。このため、図2に示すように、端子電極20、30は、端面21、31と、側面22、32とを有する。
【0025】
誘電体素体11の長手方向、すなわち、一対の端子電極20、30が形成される端子電極形成面13、14と直交する方向をY軸とし、Y軸に直交する軸をそれぞれX軸、Z軸とする。端子電極20、30が形成される誘電体素体11の端子電極形成面13、14は、略正方形形状である。誘電体素体11は、端子電極形成面13、14を底面とし、これらにつながる4個の素体側面12を有する略四角柱形状、すなわち略直方体の電子部品用素体である。稜部15は、4個の素体側面12のうち隣り合う側面の交わる稜線である。
【0026】
端子電極形成面13、14の辺の長さは、X軸方向がLa、Z軸方向がLbである。本実施形態において、端子電極形成面13、14は略正方形形状なので、La=Lbである。誘電体素体11のY軸方向の長さ、すなわち、誘電体素体11の長手方向の長さはLcである。Lcは、一対の端子電極形成面13、14間の最短距離である。
【0027】
端子電極20、30は、導電性の材料であり、後述するように、誘電体素体11の内部電極と電気的に接続されている。端子電極20、30は、例えば、銅(Cu)、パラジウム(Pd)又は銀/パラジウム合金(Ag/Pd)に、ニッケル(Ni)及びスズ(Sn)をこの順で積層した構造である。なお、端子電極20、30は、複数の金属電極層で構成されていてもよい。本実施形態1の端子電極20、30は、銅(Cu)を主成分とした下地電極に、Niめっき層、Snめっき層を形成する。
【0028】
誘電体素体11は、上述したように略直方体形状であるので、平面視(Z軸又はX軸方向から見た状態)は矩形の形状(素体側面12の形状が矩形)である。誘電体素体11は、平面視において、長手方向(Y軸方向)及び短手方向(X軸又はZ軸方向)がある。次に、誘電体素体11の内部構造について、簡単に説明する。
【0029】
図2に示すように、誘電体素体11は、内部電極17、18と誘電材料の誘電体11aとを含む。内部電極17、18は、例えば、パラジウム、銀/パラジウム合金、ニッケル、銅(Cu)等である。誘電体11aは、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)等である。本実施形態において、誘電体素体11は、誘電体11aと内部電極17、18とが交互に積層される。誘電体素体11は、セラミックグリーンシート(未焼成セラミックシート)を複数枚積層した積層体を加熱圧着して一体化して、切断し、脱脂し、焼成することにより得られた直方体状の焼結体である。そして、誘電体素体11は、内部電極17に端子電極20が電気的に接続され、かつ内部電極18に端子電極30が電気的に接続されてコンデンサ素子10となる。コンデンサ素子10が有する誘電体素体11は、内部電極と絶縁体とを有していれば、本実施形態の構造に限定されるものではない。
【0030】
誘電体素体11の端面(端子電極形成面)13、14には、それぞれ内部電極17、18が露出している。上述したように、一対の端子電極20、30は、それぞれ端子電極形成面13、14を別々に覆うとともに、複数の内部電極17、18が電気的に接続される。端子電極20、30は、端面21、31と側面22、32とを有する。端子電極20、30の側面22、32は、端面21、31とつながり、かつ素体側面12の端子電極形成面13、14に延出する。
【0031】
次に、本実施形態1に係る電子部品の製造方法について説明する。先ず、端子電極形成面に端子電極を形成すべき電子部品用素体である誘電体素体11を準備する。誘電体素体11は、生産コストを下げるために、複数準備されることが一般的である。複数準備した誘電体素体11を整列させるために、振込治具が用いられる。
【0032】
図3は、本実施形態1に係る電子部品の製造方法で使用する振込治具及びキャリアプレートを模式的に示した模式図である。また、図4は、本実施形態1に係る振込治具の撥水材料付着プレートを模式的に示した模式図である。図3に示すように、振込治具1は、振込プレート2と、撥水材料付着プレート4とを有している。振込プレート2は、例えばステンレス等の金属である。振込プレート2は、誘電体素体11を整列させるための複数の振込孔3を有している。実施形態1に係る振込治具1では、振込孔3は、誘電体素体11の端部の形状と相似形であり、例えば図3に示すように、矩形である。
【0033】
図4に示すように、撥水材料付着プレート4は、シリコーンゴム等のゴム状弾性体で形成されており、後述する複数の撥水材料付着孔5を有している。撥水材料付着孔5は、振込孔3の形状と相似形であり、例えば図5に示すように、矩形である。そして、図3に示すように、振込孔3と撥水材料付着孔5とが重なり合うように、振込プレート2と、撥水材料付着プレート4とが重ね合わされている。その結果、撥水材料付着孔5に到達する誘電体素体11の向きが振込孔3で規定できる。なお、振込プレート2に、複数枚の撥水材料付着プレート4が重ね合わされていてもよい。
【0034】
図3に示すように、キャリアプレート40は、キャリアプレート枠体41と、弾性保持部42と、弾性保持部42に穿孔された保持孔43とを有する。キャリアプレート枠体41は、例えばステンレス等の金属で形成された弾性保持部42を囲う枠体である。弾性保持部42は、例えばシリコーンゴム又はフッ素ゴムで形成されている。弾性保持部42に穿孔された保持孔43の形状は、円形である。保持孔43の寸法は、誘電体素体11の長手方向と直交する断面の外接円よりも小さい。このため、保持孔43の内壁が誘電体素体11の稜部15を弾性保持することができる。
【0035】
図5は、本実施形態1に係る振込治具の撥水材料付着孔を模式的に示した模式図である。図6及び図7は、撥水材料付着孔の変形例を模式的に示した模式図である。図5に示すように、撥水材料付着孔5は、角部にスリット6を有する。スリット6により、撥水材料付着孔5の内壁が分断される。摺接部7は、撥水材料付着孔5の一部であり、隣接するスリット6で区画される部分である。撥水材料付着孔5は、スリット6で分断された摺接部7に囲まれた空間である。したがって、スリット6は、撥水材付着孔5の隅近傍に設けられている。
【0036】
摺接部7は、撥水材料付着プレート4の一部であり、撥水材料付着プレート4と同一の材料、例えば、シリコーンゴム又はフッ素ゴム等のゴム状弾性体で形成されている。摺接部7はスリット6の存在により、外力が加えられると変形しやすくなっている。摺接部7は、誘電体素体11の素体側面12に沿うように4つ設けられている。したがって、誘電体素体11が一度通過することにより、誘電体素体11の4つの素体側面12が摺接部7と機械的に接触し、擦りつけられることで4つの素体側面12に撥水材料を付着可能である。その結果、撥水材料付着孔5を誘電体素体11が通過すると誘電体素体11に撥水材料が付着する。
【0037】
なお、他の変形例として、通過させる誘電体素体の少なくとも1つの素体側面に撥水材料を付着すればよい場合もある。例えば、撥水材料付着孔5が1つの摺接部7のみ有していてもよい。この撥水剤付着孔5を用いる場合、誘電体素体11の向きを変えて、複数回撥水材料付着孔5を通過させ、誘電体素体11の4つの素体側面12へ撥水材料を付着させてもよい。
【0038】
スリット6は、スリット幅を小さくすると、隣接する摺接部7間の間隔が狭くなる。そこで、スリット6の幅を小さくすることにより、撥水材料付着孔5を通過する誘電体素体11の稜部15にも撥水材料を付着できるようにすることもできる。
【0039】
図6に示す撥水材料付着孔5aは、撥水材料付着プレート4aが有する撥水材料付着孔の変形例である。撥水材料付着孔5aは、スリット6とスリット61とを有しており、スリット6及びスリット61で分断された摺接部71に囲まれた空間である。図7に示す撥水材料付着孔5bは、撥水材料付着プレート4bが有する撥水材料付着孔の変形例である。撥水材料付着孔5bは、スリット62を有しており、スリット62で分断された摺接部72に囲まれた空間である。
【0040】
撥水材料付着プレート4aと撥水材料付着プレート4bとは、重ね合わせて使用され、図6に示す撥水材料付着孔5aと図7に示す撥水材料付着孔5bとが重なり合う。スリット6及びスリット61とスリット62とは、平面的に重なり合わないように配置されている。このような構造により、摺接部71と摺接部72とは千鳥配列となる。その結果、摺接部71と摺接部72とは外力が加えられると変形しやすくなるとともに、スリットによって撥水材料が付着しにくい領域を低減させることができる。
【0041】
図8は、本実施形態1に係る電子部品の製造方法における電子部品の振込状態を模式的に示した断面図である。本実施形態1では、図3に示す振込治具1とキャリアプレート40とを重ね合わせて、図8に示すように振込孔3と、撥水材料付着孔5と、保持孔43とが断面でつながった状態とされる。振込治具1の振込孔3側へ複数準備した誘電体素体11が振り込まれ、誘電体素体11の一方の端部が振込孔3へ挿入される。
【0042】
誘電体素体11の端子電極形成面は矩形であり、振込孔3の平面形状は矩形であるので、誘電体素体11の素体側面12の向きを規定できる。そして、誘電体素体11の素体側面12の向きに沿うように、摺接部7の摺接端部7aが配置されている。
【0043】
図8に示すように、保持孔43の内径r1は、誘電体素体11(の端子電極形成面)の辺の長さLaよりも大きく、誘電体素体11の稜部15が保持孔43の内壁に弾性保持される程度の大きさとされている。振込孔3の孔幅L1は、保持孔43の内径r1及び誘電体素体11の辺の長さLaよりも大きい。振込孔3の孔幅L1は、誘電体素体11の端部から容易に振込孔3に挿入される程度であればよく、誘電体素体11の長手方向が振込孔3に略直立できる範囲が好ましい。撥水材料付着孔5の孔幅xは、誘電体素体11の辺の長さLaよりも小さくされており、誘電体素体11が撥水材料付着孔5を通過可能であって、摺接部7が変形し、誘電体素体11の素体側面12に摺接部7の摺接端部7aが擦りつけられる範囲が好ましい。
【0044】
図9は、本実施形態1に係る振込治具の撥水材料付着プレートの変形例を示す断面図である。この変形例では、撥水材料付着プレート4の摺接部7の摺接端部7aが、振込プレート2側の角部をテーパー状とされ、摺接部7がテーパー部7bを有している。テーパー部7bがあるので摺接端部7aが薄くなり、誘電体素体11が摺接部7に当たると摺接部7が変形しやすくなる。また、誘電体素体11が摺接部7に当たると、テーパー部7bが誘電体素体11の移動をガイドする。また、摺接部7が変形し、摺接部7の摺接端部7aが素体側面12に当たり、撥水材料を擦りつけることもできる。
【0045】
図10は、本実施形態1に係る振込治具の撥水材料付着プレートの他の変形例を示す断面図である。この変形例では、撥水材料付着プレート4の摺接部7の摺接端部が、曲面とされ、摺接R部7cとなっている。摺接端部が、曲面とされているので、摺接部7が摩耗し難く、撥水材料付着プレート4の使用可能時間を延ばすことができる。また、誘電体素体11の素体側面12に摺接部7の摺接R部7cが擦りつけられるので、撥水材料付着が均一になる。
【0046】
図11は、本実施形態1に係る電子部品の製造方法の撥水材料付着工程を模式的に示した断面図である。図11に示すように、振込孔3に挿入された誘電体素体11は、振込プレート2側から弾性保持部42へ誘電体素体11が挿入ピン等で押し込まれる。振込プレート2側と弾性保持部42との間にある撥水材料付着プレート4を通過する際に、誘電体素体11の少なくとも1つの素体側面12が摺接部7に擦りつけられて、誘電体素体11の素体側面12に撥水材料が付着する。
【0047】
例えば、撥水材料付着プレート4がシリコーンゴムで形成されていると摺接部7もシリコーンゴムで形成され、素体側面12に付着する撥水材料として、シロキサンが付着する。シリコーンゴムには低分子シロキサンという物質が含まれているためである。低分子とは、例えば、シリコンの数(D値)が10以下程度である。シリコンの数(D値)が3〜10であると、シロキサンが素体側面12に付着しやすいので、より好ましい。あるいは、撥水材料付着プレート4がフッ素ゴムで形成されていると摺接部7もフッ素ゴムで形成され、素体側面12に付着する撥水材料として、フッ素が付着する。なお、本実施形態1に係る振込治具1は、撥水材料付着プレート4の材料で摺接部7を形成しているが、少なくとも摺接部7はゴム状弾性体で、誘電体素体へ擦りつけることにより、撥水材料が付着できる材料であればよい。
【0048】
図5に示すように、撥水材料付着孔5は、スリット6で分断された摺接部7に囲まれた空間であるので、挿入ピン等で押し込まれた誘電体素体11の素体側面12には、図11に示すように摺接部7の摺接端部7aが擦りつけられる。その結果、4つの素体側面12の全面に均一な撥水材料が付着した状態で、誘電体素体11が弾性保持部42に穿孔された保持孔43内へ移動する。
【0049】
図12は、キャリアプレートに電子部品が保持されている状態を模式的に示した断面図である。図13は、図12に示すキャリアプレートに電子部品が保持されている状態の平面図である。図12に示すように、誘電体素体11は、保持孔43内から誘電体素体11の端部が突出するまで挿入ピン等で押し込まれる。図13に示すように、保持孔43内で誘電体素体11の稜部15が保持孔43の内壁面に押圧された状態とされ、誘電体素体11が弾性保持部42に弾性保持される。その結果、弾性保持部42がシリコーンゴムで形成されていると、誘電体素体11の稜部15に撥水材料であるシロキサンが付着する。あるいは、弾性保持部42がフッ素ゴムで形成されていると、誘電体素体11の稜部15に撥水材料であるフッ素が付着する。
【0050】
次に、図3に示す振込治具1をキャリアプレート40上から取り外し、誘電体素体11を保持したキャリアプレート40が端子電極を形成する工程へ運ばれる。図14は、電子部品の端部に導電性ペーストを塗布する工程を説明する説明図である。
【0051】
図14に示すように、キャリアプレート40の弾性保持部42に保持された誘電体素体11が、先ず第1のレベリング工程(ステップS1)へ運ばれる。第1のレベリング工程(ステップS1)では、レベリング器45上に導電性ペースト層46が層状に保持されている。
【0052】
導電性ペースト層46は、例えば銅(Cu)粉及びバインダー、ガラス、分散剤、溶剤のうちから少なくとも1つを含んでいる。銅粉の形状又は粒径は、誘電体素体11の形状、材料等に応じて任意に定めることができる。
【0053】
第1のレベリング工程(ステップS1)では、弾性保持部42から突出した誘電体素体11の端部をレベリング器45上の導電性ペースト層46中に浸漬する。誘電体素体11の端部がレベリング器45上の導電性ペースト層46に一定時間浸漬されると、誘電体素体11を引き上げても、誘電体素体11の端部に、導電性ペーストが浸漬し、ペースト下地91が付着した状態となる。
【0054】
次に、弾性保持部42に保持された誘電体素体11が、第1のディップ工程(ステップS2)へ運ばれる。第1のディップ工程(ステップS2)では、ディップ器47上に導電性ペースト層48が層状に保持されている。
【0055】
導電性ペースト層48は、導電性ペースト層46と同じく例えば銅(Cu)粉及びバインダー、ガラス、分散剤、溶剤のうちから少なくとも1つを含んでいる。銅粉の形状又は粒径は、誘電体素体11の形状、材料等に応じて任意に定めることができる。
【0056】
第1のディップ工程(ステップS2)では、弾性保持部42から突出した誘電体素体11の端部がペースト下地91ごと、ディップ器47上の導電性ペースト層48中に浸漬する。誘電体素体11の端部がディップ器47上の導電性ペースト層48に一定時間浸漬されると、誘電体素体11を引き上げても、誘電体素体11の端部に、導電性ペーストが浸漬し、ペースト下地92が付着した状態となる。
【0057】
次に、弾性保持部42に保持された誘電体素体11が、第1のブロット工程(ステップS3)へ運ばれる。第1のブロット工程(ステップS3)では、ステンレス等の金属板であるブロット板49を有する。第1のブロット工程(ステップS3)では、誘電体素体11の端部に付着しているペースト下地92をブロット板49に押しつけ、誘電体素体11を引き上げるとブロット板49に余分な導電性ペースト93が付着し、誘電体素体11の端部に付着しているペースト下地92の導電性ペースト塗布量が調整される。その結果、ペースト下地92は、第1のブロット工程(ステップS3)により、導電性ペーストの塗布量が一定となった端子電極下地200とされる。
【0058】
次に、弾性保持部42に保持された誘電体素体11が、反転した上で、第1の乾燥工程(ステップS4)へ運ばれる。第1の乾燥工程(ステップS4)では、乾燥炉中で誘電体素体11を加熱処理する。加熱温度は300℃から600℃程度が好ましい。また加熱時間は0.2時間から1.5時間程度が好ましい。加熱処理により、端子電極下地200中のバインダー等が除去され、端子電極下地200が乾燥する。
【0059】
第1の乾燥工程(ステップS4)後、素地反転工程(ステップS5)を行う。素地反転工程(ステップS5)では、乾燥した端子電極下地200側から誘電体素体11を弾性保持部42の保持孔43内に押し込み、端子電極下地200が形成されていない誘電体素体11の端部を弾性保持部42から突出させる。
【0060】
次に、弾性保持部42に保持された誘電体素体11が、第2のレベリング工程(ステップS6)へ運ばれる。第2のレベリング工程(ステップS6)では、第1のレベリング工程(ステップS1)で使用したレベリング器45と導電性ペースト層46とが共用される。第2のレベリング工程(ステップS6)では、弾性保持部42から突出した誘電体素体11の端部をレベリング器45上の導電性ペースト層46中に浸漬する。誘電体素体11の端部がレベリング器45上の導電性ペースト層46に一定時間浸漬されると、誘電体素体11を引き上げても、誘電体素体11の端部に、導電性ペーストが浸漬し、ペースト下地94が付着した状態となる。
【0061】
次に、弾性保持部42に保持された誘電体素体11が、第2のディップ工程(ステップS7)へ運ばれる。第2のディップ工程(ステップS7)では、第1のディップ工程(ステップS2)で使用したディップ器47と導電性ペースト層48とが共用されている。第2のディップ工程(ステップS7)では、弾性保持部42から突出した誘電体素体11の端部がペースト下地94ごと、ディップ器47上の導電性ペースト層48中に浸漬する。誘電体素体11の端部がディップ器47上の導電性ペースト層48に一定時間浸漬されると、誘電体素体11を引き上げても、誘電体素体11の端部に、導電性ペーストが浸漬し、ペースト下地95が付着した状態となる。
【0062】
次に、弾性保持部42に保持された誘電体素体11が、第2のブロット工程(ステップS8)へ運ばれる。第2のブロット工程(ステップS8)では、ブロット板49を第1のブロット工程(ステップS3)と共用する。第2のブロット工程(ステップS8)では、誘電体素体11の端部に付着しているペースト下地95をブロット板49に押しつけ、誘電体素体11を引き上げるとブロット板49に余分な導電性ペースト96が付着し、誘電体素体11の端部に付着しているペースト下地95の導電性ペースト塗布量が調整される。その結果、ペースト下地95は、第2のブロット工程(ステップS8)により、導電性ペーストの塗布量が一定となった端子電極下地300とされる。
【0063】
次に、弾性保持部42に保持された誘電体素体11が、第2の乾燥工程(ステップS9)へ運ばれる。第1の乾燥工程(ステップS4)と同様に第2の乾燥工程(ステップS9)では、乾燥炉中で誘電体素体11を加熱処理する。加熱温度は300℃から600℃程度が好ましい。また加熱時間は0.2時間から1.5時間程度が好ましい。加熱処理により、端子電極下地300中のバインダー等が除去され、端子電極下地300が乾燥する。
【0064】
次に、第2の乾燥工程(ステップS9)では、端子電極下地200、300を有する誘電体素体11を弾性保持部42から取り外し、熱を加えて導電性ペーストの焼き付け処理を行う。焼き付け処理の加熱温度は、450℃から850℃程度が好ましい。また加熱時間は0.2時間から1.5時間程度が好ましい。
【0065】
次に、端子電極下地200、300に、ニッケル(Ni)めっきが行われる。例えば、ニッケル(Ni)めっきは、ワット浴等のニッケル(Ni)めっき浴を用いて行う。端子電極下地200、300のニッケル(Ni)めっきの上に、スズ(Sn)めっきが行われる。例えば、スズ(Sn)めっきは、中性スズ(Sn)めっき浴を用いたバレルめっき法等により行われる。そして、図1に示すような、端子電極下地200が端子電極20、端子電極下地300が端子電極30として誘電体素体11の端子電極形成面13、14に形成される。
【0066】
なお、上述した電子部品の端部に導電性ペーストを塗布する工程は、少なくとも第1のディップ工程(ステップS2)と、素地反転工程(ステップS5)と、第2のディップ工程(ステップS7)とを有していればよく、他の工程は省略、変更が適宜可能である。
【0067】
以上、実施形態1及びその変形例に係る電子部品の製造方法は、端子電極が形成される端子電極形成面と端子電極形成面と接続している素体側面とを有する誘電体素体を準備する準備工程と、準備した誘電体素体の素体側面に撥水材料を擦りつける撥水材料付着工程と、端子電極形成面及び素体側面の一部に端子電極を形成する端子電極形成工程と、を有する。そして、素体側面に撥水材料を擦りつけることにより、素体側面における端子電極材料のぬれ性が低くなる。このため、電子部品の端子電極が意図しない広がりを起こす可能性も小さくなる。その結果、端子電極間が短絡する可能性も小さくすることができる。また、素体側面に撥水材料を擦りつけるので、確実に撥水材料を付着することができる。また、端子電極の形状と大きさのばらつきに起因する、例えば、基板に電子部品の端子電極を実装する際のチップ立ち等の実装不良が低減できる。
【0068】
撥水材料付着工程では、誘電体素体の素体側面に摺接する摺接部と誘電体素体とが接触することで撥水材料が付着する。撥水材料付着工程では、誘電体素体の少なくとも1つの素体側面に摺接する摺接部と誘電体素体とが機械的に接触し、擦れあう。このため、誘電体素体の素体側面に均等に撥水材料を付着する作用も得られる。その結果、本態様に係る電子部品の製造方法は、端子電極の形状ばらつきをより効果的に抑制することができる。
【0069】
撥水材料付着工程では、摺接部を有する振込治具と、端子電極工程において誘電体素体を保持するキャリアプレートとが重ね合わされて、振込治具からキャリアプレートへ誘電体素体が移動すると、摺接部と誘電体素体の素体側面とが接触することで撥水材料が付着することが好ましい。このため、振込治具を誘電体素体が通過することにより、他の工程を増やすことなく、撥水材料を付着することができる。また、摺接部は、キャリアプレートと比較して柔軟である。このため、摺接部を有する振込治具は、誘電体素体の素体側面に均等に撥水材料を付着する作用も得られる。その結果、本態様に係る電子部品の製造方法は、端子電極の形状ばらつきをより効果的に抑制することができる。
【0070】
端子電極工程において誘電体素体を保持するキャリアプレートと複数の隣り合う素体側面の交わる稜部とが接触し、稜部に撥水材料が付着することが好ましい。キャリアプレートにより、誘電体素体の稜部に撥水材料が付着しても、誘電体素体の素体側面と同程度に撥水材料が付着しているので、端子電極の形状ばらつきをより効果的に抑制することができる。
【0071】
例えば、仮にキャリアプレートの保持孔が矩形である場合、本実施形態1及びその変形例で示した撥水材料付着孔のようなスリットがなく、保持孔の内壁面に柔軟性がないと考えられる。その結果、保持孔の内壁面に柔軟性がないため、単に矩形の保持孔を有するキャリアプレートでは、保持孔の内壁面に誘電体素体の素体側面に均等に撥水材料を付着する作用を持たせることは難しいと考えられる。また、単に矩形の保持孔を有するキャリアプレートでは、素体をキャリアプレートの保持孔に挿入する際に、素体若しくは弾性体の損傷による異物の付着を考慮する必要がある。また、単に矩形の保持孔を有するキャリアプレートでは、上述した素地反転工程において、端子電極下地の損傷を考慮する必要がある。
【0072】
例えば、予め熱処理又は紫外線照射を施すことで誘電体素体の素体側面にシロキサンを付着させて改善する従来技術が知られている。しかし従来技術では、その後キャリアプレートにより、誘電体素体の稜部にシロキサンが付着すると、誘電体素体の素体側面と稜部とで付着させる方法が異なるので、誘電体素体の素体側面と稜部との間で撥水効果の度合いに違いが起きるおそれがある。本実施形態1に係る電子部品の製造方法では、誘電体素体の素体側面と稜部とで付着させる方法が同じため、誘電体素体の素体側面と稜部との間で撥水効果の度合いを同じにできる。
【0073】
また、振込治具からキャリアプレートへ誘電体素体が移動するだけで、誘電体素体が振込孔を通過し、誘電体素体の素体側面と稜部とに撥水材料が付着するので、従来技術のような熱処理又は紫外線照射を施す必要がない。
【0074】
(実施形態2)
本実施形態2に係る電子部品の製造方法について、説明する。図15は、本実施形態2に係る電子部品の製造方法で使用するローラー治具を模式的に示した模式図である。図16は、本実施形態2に係る電子部品の製造方法で使用するローラー治具と整列治具との関係を説明する説明図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0075】
端子電極形成面に端子電極を形成すべき電子部品用素体である誘電体素体11を準備する。図15に示すように誘電体素体11を整列する。そして、本実施形態2に係る電子部品の製造方法では、ローラー治具81を用いる。誘電体素体11の整列には、例えば、図16に示す整列治具83が用いられる。
【0076】
ローラー治具81は、略円筒形をしており、モータ等により矢印P方向へ回転可能とされている。ローラー治具81は、摺接部82を有している。摺接部82は、誘電体素体11の2つの素体側面に沿った凹部である。ローラー治具81において、少なくとも摺接部82がゴム状弾性体であって、誘電体素体11に撥水材料を付着可能な材料とされており、例えば、シリコーンゴムで形成されている。例えば、摺接部82がシリコーンゴムで形成されていると、誘電体素体11に付着する撥水材料として、シロキサンが付着する。あるいは、摺接部82がフッ素ゴムで形成されていると、誘電体素体11に付着する撥水材料として、フッ素が付着する。
【0077】
整列治具83は、例えば、ステンレス等の金属で形成される。整列治具83には、整列凹部84が設けられる。整列凹部84の内壁面は、誘電体素体11の2つの素体側面に沿っている。図16に示す整列される1つの誘電体素体11の素体側面を、例えば、素体側面12a、12b、12c、12dとする。整列治具83では、誘電体素体11が整列凹部84に振り込まれ、整列凹部84の内壁に素体側面12c、12dが接することで、誘電体素体11が整列させられる。また、誘電体素体11の素体側面12a、12bは、整列治具83から突出し、素体側面12a、12bの全面が露出している。図16中、整列治具85は、整列治具83と断面視対称形状とされており、整列治具83と同一材料で形成された誘電体素体11を反転させるための治具である。
【0078】
次に、本実施形態2に係る電子部品の製造方法での撥水材料付着工程について、図15及び図16を用いて説明する。図16に示すように、第1の撥水材料付着工程(ステップS21)では、整列治具83から突出した誘電体素体11は、ローラー治具81が回転して素体側面12a、12bを通過することで、素体側面12a、12bの表面に撥水材料が擦りつけられる。ローラー治具81が回転して用意した複数の誘電体素体11を全て通過すると、第1の撥水材料付着工程(ステップS21)が終了する。
【0079】
本実施形態2に係る電子部品の製造方法では、第1の撥水材料付着工程(ステップS21)の後、側面反転工程(ステップS22)を行う。側面反転工程(ステップS22)では、整列治具83から突出した誘電体素体11を整列治具85で覆う。そして、整列治具83と整列治具85とで誘電体素体11を挟んだ状態で、整列治具83と整列治具85とを上下反転させて、図16の側面反転工程(ステップS22)に示すように、整列治具85上に誘電体素体11が整列した状態とする。そして、整列治具85では、誘電体素体11が整列凹部86に振り込まれ、整列凹部86の内壁に素体側面12a、12bが接することで、誘電体素体11が整列させられる。整列治具83を取り外すと、誘電体素体11の素体側面12c、12dは、整列治具83の整列凹部84から外れる。そして、誘電体素体11の素体側面12c、12dは、整列治具85から突出し、素体側面12c、12dの全面が露出している。
【0080】
本実施形態2に係る電子部品の製造方法では、側面反転工程(ステップS22)の後、第2の撥水材料付着工程(ステップS23)を行う。第2の撥水材料付着工程(ステップS23)では、整列治具85から突出した誘電体素体11は、ローラー治具81が回転して素体側面12c、12dを通過することで、素体側面12c、12dの表面に撥水材料が擦りつけられる。ローラー治具81が回転して用意した複数の誘電体素体11を全て通過すると、第2の撥水材料付着工程(ステップS23)が終了する。
【0081】
本実施形態2に係る電子部品の製造方法では、第1の撥水材料付着工程(ステップS21)及び第2の撥水材料付着工程(ステップS23)により、誘電体素体11の全素体側面の表面に撥水材料が擦りつけられる。なお、撥水材料付着工程を4回に分けて、誘電体素体11の素体側面12の1面ずつをローラー治具で撥水材料を擦りつけてもよい。
【0082】
次に、実施形態2に係る電子部品の製造方法では、例えば、図3の振込プレート2と、キャリアプレート40のみを用いて、撥水材料が付着した誘電体素体11を振り込み、誘電体素体11がキャリアプレート40の弾性保持部42に保持される。弾性保持部42に保持された誘電体素体11は、端子電極を形成する工程へ運ばれる。そして、上述と同様に、誘電体素体11の端部に端子電極20、30が形成される。
【0083】
以上、本実施形態2に係る電子部品の製造方法は、端子電極が形成される端子電極形成面と端子電極形成面と接続している素体側面とを有する誘電体素体を準備する準備工程と、準備した誘電体素体の素体側面に撥水材料を擦りつける撥水材料付着工程と、端子電極形成面及び素体側面の一部に端子電極を形成する端子電極形成工程と、を有する。その上で、撥水材料付着工程では、摺接部を含むローラーが誘電体素体を通過して摺接部と誘電体素体とが接触することで撥水材料が付着することが好ましい。摺接部は、ローラーの回転により誘電体素体の素体側面に沿って柔軟に撥水材料を付着することができる。そして、摺接部を含むローラーが誘電体素体の素体側面に撥水材料を擦りつけるので、確実に撥水材料を付着することができる。また、摺接部を含むローラーが誘電体素体の素体側面に撥水材料を擦りつけるので、従来技術のような熱処理又は紫外線照射を施す必要がない。その結果、本態様に係る電子部品の製造方法は、端子電極の形状ばらつきをより効果的に抑制することができる。
【0084】
また、本実施形態2に係るローラー治具は、端子電極を形成される端子電極形成面と端子電極形成面と接続している素体側面とを有する誘電体素体の周囲を回転しながら通過可能なローラーと、ローラーには、素体側面に摺接する摺接部を含み、誘電体素体と摺接部とが接触すると、素体側面に撥水材料が付着する構造としている。このような構造により、摺接部は、ローラーの回転で電子部品用素体の素体側面に沿って柔軟に撥水材料を付着することができる。摺接部を含むローラーが電子部品用素体の素体側面に撥水材料を擦りつけるので、確実に撥水材料を付着することができる。その結果、本発明に係るローラー治具は、端子電極の形状ばらつきをより効果的に抑制することができる。摺接部はゴム状弾性体で形成されると、ローラー治具は、電子部品用素体の素体側面により均等に撥水材料を付着する作用も得られる。
【0085】
(評価)
誘電体素体は、内部電極が銀/パラジウム合金で形成され、誘電体がチタン酸バリウム(BaTiO)で形成されたサンプルを準備した。準備した誘電体素体のサンプルを用いて、上述した本実施形態1に係る電子部品の製造方法でコンデンサ素子を10個作製し評価例とした。導電性ペーストは、銅(Cu)粉及びバインダー、ガラスフリットと有機溶剤とを混合し調製した。銅(Cu)粉(平均粒径0.3μm〜7μm)を65質量%、バインダー(アクリル樹脂バインダー)を15質量%、ガラスフリット(平均粒径3μm〜4μm)を5質量%、有機溶剤を15質量%の割合で混合し調製した。また、前記粉末の粒径は、マイクロトラック粒度分析計を用いて測定した。評価例は、撥水材料付着プレート4がシリコーンゴムで形成されている振込治具1を用いて作製された。また、評価例は、弾性保持部42がシリコーンゴムで形成されているキャリアプレート40を用いて作製された。
【0086】
図17は、比較例の振込治具及びキャリアプレートを模式的に示した模式図である。比較例として、誘電体素体は、評価例で使用したサンプルと同じサンプルを用いた。また、導電性ペーストも評価例と同じ導電性ペーストを用いた。比較例の作製条件として図17に示す振込治具50及びキャリアプレート40を用いること以外は、評価例のコンデンサ素子と同一の条件で、コンデンサ素子を10個作製し比較例とした。
【0087】
図17に示す振込治具50は、振込プレート51を有している。振込プレート51は、例えばステンレス等の金属で形成されている。振込プレート51には、誘電体素体11を整列させるための複数の振込孔52があけられている。振込孔52は、誘電体素体11が端部より入る程度の円形の孔とされている。キャリアプレート40は、図3に示すキャリアプレート40と同一部材である。また、比較例は、弾性保持部42がシリコーンゴムで形成されているキャリアプレート40を用いて作製された。同じ部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。そして、振込孔52の内径は、保持孔43の内径よりも大きくなっている。
【0088】
図18は、端子電極が電子部品用素体の素体側面に広がる形状の評価方法を説明する説明図である。図18に示すコンデンサ素子10は、説明のため、端子電極20、30の側面22、32を強調して模式的に表している。図18に示すように、1つの誘電体素体11を選択し、1つの素体側面12において、端子電極20、30の側面22、32の形状を示す長さd1及びd2を計測した。計測する長さd2は、側面22、32のサイドエッジライン22a、32aが稜部15と平行にある端子電極形成面13、14からの長さである。計測する長さd1は、素体側面12上に広がるエッジライン22b、32bがサイドエッジライン22a、32aの端から誘電体素体11の長手方向に広がる最大長さである。
【0089】
評価例は、10個の評価例各々1つの素体側面12にある側面22、32を対象に、長さd1、d2が計測された。同様に、比較例は、10個の比較例各々1つの素体側面12にある側面22、32を対象に、長さd1、d2が計測された。測定結果を、表1に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
また、評価例と比較例の拡大写真をとり比較を行った。図19は、評価例における端子電極の形状の一例を説明する説明図である。図20は、比較例における端子電極の形状の一例を説明する説明図である。図19及び図20は、評価例及び比較例のそれぞれの拡大写真を模写した説明図である。
【0092】
(評価結果)
評価例の素体側面12の付着物をアセトン抽出によるガスクロマトグラフ法により、分析すると低分子シロキサンが検出された。比較例の素体側面12の付着物をアセトン抽出によるガスクロマトグラフ法により、分析すると低分子シロキサンが検出されなかった。
【0093】
また、表1に示す評価結果から、評価例は、比較例よりd1のばらつき(標準偏差:σ)を低減できることがわかる。また、評価例と比較例とをd1の平均値(AVE)で比較すると、比較例の方が評価例よりもd1の値は高い。評価例と比較例とをd1の最大値(MAX)で比較すると、比較例の方が評価例よりもd1の値は高い。これは、評価例の素体側面12に撥水材料を有している結果、素体側面12の表面のぬれ性が低くなったことが原因であると考えられる。したがって、評価例の方が比較例よりも端子電極20、30間で短絡するおそれが少ないといえる。なお、評価例と比較例とをd1の最低値(MIN)で比較すると、比較例と評価例とは同程度であった。
【0094】
また、表1に示す評価結果から、評価例は、比較例よりd2のばらつき(標準偏差:σ)を低減できることがわかる。また、評価例と比較例とをd2の平均値(AVE)、最大値(MAX)及び最低値(MIN)で比較すると、比較例の方が評価例よりもd2の値は低い。これは、比較例は稜部15のみに撥水材料を有している結果、表面のぬれ性の差が稜部15と素体側面12との間に生じていることが原因であると考えられる。そして、図19及び図20に示すように、端子電極20の側面22に現れる比較例のエッジライン22dの方が評価例のエッジライン22cよりも、素体側面12の中央部分で突出したムーンシェイプとなっていることが多かった。
【0095】
d1は、製造上の狙い値が0であることが好ましい。しかし、狙い値を0にすることは難しいので、できるだけ0に近づけていくことが好ましい。評価例と比較例とにおけるd1/d2を算出すると、平均値(AVE)、最大値(MAX)及び最低値(MIN)のいずれも比較例よりも評価例の方がd1/d2を0に近づけることができ、設計者の意図に沿った製品を量産できる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上のように、本発明に係る端子電極を有する電子部品において、端子電極の形状ばらつきを抑制することに有用である。
【符号の説明】
【0097】
1、50 振込治具
2 振込プレート
3 振込孔
4、4a、4b 撥水材料付着プレート
5 撥水材料付着孔
6、61、62 スリット
7、71、72 摺接部
7a 摺接端部
7b 摺接テーパー部
7c 摺接R部
10 コンデンサ素子
11 誘電体素体
11a 誘電体
12 素体側面
13、14 端子電極形成面
15 稜部
17、18 内部電極
20、30 端子電極
21、31 端面
22、32 側面
22a、22b エッジライン
40 キャリアプレート
41 キャリアプレート枠体
42 弾性保持部
43 保持孔
45 レベリング器
46、48 導電性ペースト
47 ディップ器
49 ブロット板
51 振込プレート
52 振込孔
81 ローラー治具
82 摺接部
83、85 整列治具
84、86 整列凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子電極が形成される端子電極形成面と前記端子電極形成面と接続している素体側面とを有する電子部品用素体を準備する準備工程と、
準備した前記電子部品用素体の前記素体側面に撥水材料を擦りつける撥水材料付着工程と、
前記端子電極形成面及び前記素体側面の一部に端子電極を形成する端子電極形成工程と、を有することを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記撥水材料付着工程では、前記電子部品用素体の素体側面に摺接する摺接部と前記電子部品用素体とが接触することで撥水材料が付着する請求項1記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記撥水材料付着工程では、前記摺接部を有する振込治具と、前記端子電極工程において前記電子部品用素体を保持するキャリアプレートとが重ね合わされて、
前記振込治具から前記キャリアプレートへ前記電子部品用素体が移動すると、前記摺接部と前記電子部品用素体の素体側面とが接触することで撥水材料が付着する請求項2記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記電子部品用素体が複数の素体側面を有し、
前記撥水材料付着工程では、前記摺接部を有する振込治具と、前記端子電極工程において前記電子部品用素体を保持するキャリアプレートとが重ね合わされて、
前記振込治具から前記キャリアプレートへ前記電子部品用素体が移動すると、前記摺接部と前記電子部品用素体の素体側面とが接触することで前記素体側面に撥水材料が付着し、
前記キャリアプレートと前記複数の隣り合う素体側面の交わる稜部とが接触し、前記稜部に撥水材料が付着する請求項2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記撥水材料付着工程では、前記摺接部を含むローラーが前記電子部品用素体を通過して前記摺接部と前記電子部品用素体とが接触することで撥水材料が付着する請求項2記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記電子部品用素体が複数の素体側面を有し、
前記撥水材料付着工程では、前記端子電極工程において前記電子部品用素体を保持するキャリアプレートと前記複数の隣り合う素体側面の交わる稜部とが接触し、前記稜部に撥水材料が付着する請求項5に記載の電子部品の製造方法。
【請求項7】
端子電極を形成される端子電極形成面と前記端子電極形成面と接続している素体側面とを有する電子部品用素体を振り込む振込孔と、前記素体側面に接触する摺接部を有する撥水材料付着孔と、を含み、
前記振込孔と前記撥水材料付着孔とが重ね合わされ、電子部品用素体が前記振込孔を通過すると前記撥水材料付着孔に到達し、
前記電子部品用素体と前記摺接部とが接触すると、前記素体側面に撥水材料が付着することを特徴とする振込治具。
【請求項8】
端子電極を形成される端子電極形成面と前記端子電極形成面と接続している素体側面とを有する電子部品用素体の周囲を回転しながら通過可能なローラーと、
前記ローラーには、前記素体側面に摺接する摺接部を含み、
前記電子部品用素体と前記摺接部とが接触すると、前記素体側面に撥水材料が付着することを特徴とするローラー治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−69827(P2012−69827A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214532(P2010−214532)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】