説明

電子部品の製造方法

樹脂封止部分におけるボイドの発生及び経時的な特性劣化が生じ難く、低コスト化され得る電子部品の製造方法を提供する。
実装集合基板11上に実装された各SAW素子2と樹脂フィルム12とを、ガスバリア性を備えた袋13の中に入れ、密封する減圧パック工程を設ける。減圧パックされた実装集合基板11上に実装された各SAW素子2間に樹脂フィルム12を袋13の内外の圧力差に基づき浸入させることにより、SAW素子2を樹脂フィルム12由来の封止樹脂部4によって封止する封止工程を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップサイズパッケージ(CSP)の内、SAW素子等の電子機能素子を基板に対してボンディングした上に樹脂フィルムをヒートプレスにより埋め込むラミネート方式CSPの電子部品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性表面波フィルタ(SAW)のパッケージの小型化及び低背化を図るために、各種構造のチップサイズパッケージ(CSP)の開発が行われている。上記SAWのCSPでは、フィルタの振動部分の周囲に空間を形成した状態で、樹脂封止する必要がある。
【0003】
このような樹脂封止パッケージの製造方法としては、ヒートプレス法が知られている。上記ヒートプレス法による封止技術が、特許文献1及び特許文献2に開示されている。これら特許文献1及び特許文献2においては、実装基板と、上記実装基板に取り付けられるSAW素子との間に振動空間を形成するように、上記実装基板に対しSAW素子をフリップチップボンディングにより実装し、ヒートプレス法による樹脂封止が施されている。
【特許文献1】特開2003−17979号公報
【特許文献2】特開2003−32061号公報
【発明の開示】
【0004】
しかしながら、ヒートプレス法による封止では、空気中で封止を行うと気泡噛み込みによるボイドが発生し、封止状態が不安定化しがちであった。例えば、はんだのリフロー時の熱安定性の悪化や、経時的な吸湿によって、内部のSAW素子の経時的な特性劣化を生じ易くなることがあった。また、真空中で封止を行うと、ボイドの発生を防止できるものの、全体を真空に設定するための大掛かりな設備が必要であった。
【0005】
本発明の目的は、簡素な設備にて製造することができ、ボイドの発生及び経時的な特性劣化が生じ難い電子部品の製造方法を提供することである。
【0006】
本発明の電子部品の製造方法は、以上の課題を解決するために、基板と、該基板に設けられた電子機能部とを有する複数の電子機能素子を実装集合基板上にそれぞれ実装する実装工程と、前記実装集合基板に実装された各電子機能素子上に樹脂フィルムを配置する配置工程と、前記実装集合基板上に実装された各電子機能素子と前記樹脂フィルムとを、ガスバリア性を備えた袋の中に入れ、内部を減圧して密封する減圧パック工程と、前記減圧パックされた実装集合基板上に実装された各電子機能素子間に前記樹脂フィルムを浸入させることにより、前記各電子機能素子を樹脂フィルム由来の封止樹脂部によって封止する封止工程と、前記樹脂封止された各電子機能素子を備えた前記実装集合基板を電子機能素子毎に分割する分割工程とを有することを特徴とする。
【0007】
上記方法によれば、減圧下の袋内にて、各電子機能素子を樹脂フィルム由来の封止樹脂部によって封止するので、空気の混入に起因する封止樹脂内のボイドの発生を低減できて、経時的な強度劣化や吸湿による特性劣化といった耐久性劣化を抑制できる。
【0008】
また、上記方法では、袋の中だけを減圧すればよいので、簡素な減圧装置により減圧し得る。従って、全体を減圧するための従来の大がかりな装置を省くことができ、低コスト化が可能となる。
【0009】
上記製造方法では、前記封止工程は、前記樹脂フィルムを各電子機能素子間に浸入させて、上記樹脂フィルムから形成された封止樹脂部前駆体によりそれぞれ覆われた各電子機能素子と実装集合基板とを加熱し、上記封止樹脂部前駆体を硬化させて前記封止樹脂部を得る硬化工程を有し、前記硬化工程は、圧力が制御された密封空間で加熱する工程を備えていてもよい。
【0010】
上記方法によれば、硬化工程を、圧力が制御された密封空間で加熱することで行うことにより、封止樹脂の浸入量を制御できて、上記浸入量を調節できる。
【0011】
上記製造方法においては、前記電子機能素子は、前記電子機能部としての振動部分を圧電基板上に有する弾性表面波素子であってもよい。上記製造方法では、前記実装工程は、前記振動部分が、実装集合基板との間に空間部を備えて、上記実装集合基板と対向するように配置されていることが好ましい。
【0012】
上記方法は、振動部分の面した部分に必要な空間部を、封止樹脂の浸入量を調節することで確保できて、弾性表面波装置の製造に好適なものにできる。
【0013】
上記製造方法においては、前記樹脂フィルムは、フィラーを含有し、上記フィラーの粒径分布において、最大粒径が電子機能素子と実装集合基板との隙間より大きく、かつ電子機能素子と実装集合基板の隙間より粒径が大きいフィラーの占有率がフィラー全体に対し5重量%以上であることが好ましい。
【0014】
上記方法によれば、フィラーを上記のように設定することで、封止樹脂の浸入量を調節できて、例えば、振動部分の面した部分に必要な空間部を確保できて、弾性表面波装置の製造に好適なものにできる。
【0015】
上記製造方法では、前記封止工程は、さらに、樹脂フィルムを加熱して軟化させると共にローラー又はプレスにより上記樹脂フィルムを加圧する熱圧着工程を有していてもよい。上記方法によれば、ローラーにより加圧することによって、樹脂フィルムによる封止を迅速化できる。
【0016】
上記製造方法においては、前記配置工程は、前記樹脂フィルムの一方の面に離型シートを貼る工程と、電子機能素子が実装された実装集合基板上に上記樹脂フィルムを離型シート側が外側になるように配置する工程とを有していてもよい。
【0017】
上記方法によれば、離型シートを配置したので、樹脂フィルムの軟化時や、上記樹脂フィルムからの封止樹脂の硬化時の加熱により、封止樹脂と袋とが接着することを回避できて、製造を容易化できる。
【0018】
上記製造方法では、前記離型シートの樹脂フィルム側の表面粗さが0.01μm〜10μmであることが望ましい。上記方法によれば、離型シートの樹脂フィルム側の表面粗さが0.01μm〜10μmとすることで、封止樹脂の天面の表面粗さも0.01μm〜10μmとすることができて、その天面に対する印字の認識率を向上できる。
【0019】
上記製造方法では、前記実装工程は、複数の前記電子機能素子を、バンプを介してフリップチップボンディング実装するフリップチップボンディング工程であってもよい。
【0020】
上記製造方法においては、前記袋は、最内層に熱可塑性樹脂層、最外層に上記熱可塑性樹脂層より耐熱性及びガスバリア性を備えた耐熱性樹脂層を有する多層構造であってもよい。上記方法によれば、袋に上記多層構造を採用することによって、ヒートシール性を上記袋に対してより確実に付与できる。
【0021】
本発明の電子部品の製造方法は、以上のように、実装集合基板上に実装された各電子機能素子と樹脂フィルムとを、ガスバリア性を備えた袋の中に入れ、密封する減圧パック工程と、前記減圧パックされた実装集合基板上に実装された各電子機能素子間に前記樹脂フィルムを袋の内外の圧力差を利用して浸入させることにより、前記各電子機能素子を樹脂フィルムからの封止樹脂部によって封止する封止工程とを有する方法である。
【0022】
それゆえ、上記方法は、減圧下での浸入によりボイドの発生を低減できて、経時的な強度劣化や吸湿による特性劣化といった耐久性劣化を抑制できると共に、袋の中だけを減圧下とすればよいので、簡素な減圧装置により上記減圧下を実現できて、全体を減圧下とする従来の大がかりな装置を省くことができ、低コスト化が可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、(a)〜(e)は、本発明の一実施形態としての電子部品の製造方法を示す各工程図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態で用いられる電子部品としてのSAW装置の断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態における真空パック工程を示す概略構成図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態における硬化工程を示す概略構成図である。
【図5】図5は、本発明の他の実施形態における電子部品の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態で用いられる電子部品としてのSAW装置の封止樹脂の天面の表面粗度と、その天面へのレーザー印字での認識率との関係結果を示すグラフである。
【図7】図7は、本発明で用いられる電子部品の他の例を示す断面図である。
【図8】図8は、本発明における浸入工程の他の例を示す概略構成図である。
【図9】図9は、本発明における浸入工程のさらに他の例を示す概略構成図である。
【図10】図10は、SAW素子と実装集合基板との隙間よりも粒径が大きいフィラーの全フィラーに占める占有率を変化させた場合の封止樹脂の振動部分と実装基板との間の空間への浸入量の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1…実装基板
2…SAW素子(電子部品)
3…突起状電極
4…封止樹脂部
4a…封止樹脂前躯体
9…仮想分断線
11…実装集合基板
12…樹脂フィルム
13…袋
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施の各形態について図1ないし図9に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0026】
まず、本発明の電子部品の製造方法により製造される、SAW素子CSPの構造について説明する。図2に示すように、SAW素子CSPでは、実装基板1上にSAW素子(電子機能素子)2がフリップチップボンディングにより実装されている。この場合、SAW素子の振動を妨げないために、空間部5が確保されるように、SAW素子が実装されている。
【0027】
上記実装基板1は、例えば、アルミナ、ガラスエポキシなど、セラミックや樹脂等の電気絶縁性を備えたものから構成されている。実装基板1には、SAW素子2に面した面上に、SAW素子2との接続のための、電極であるランド1aと、実装基板1を厚さ方向に貫通するビアホール1bと、上記ビアホール1bを介して上記ランド1aと電気的に接続されている外部端子1cとが設けられている。
【0028】
上記SAW素子2は、圧電基板2a上に少なくとも1つのくし型電極部を電子機能部すなわち振動部分2bとして備えている。SAW素子2における上記振動部分2bは、弾性表面波が伝搬する領域である。上記実装基板1とSAW素子2とは、SAW素子2又はランド1aに形成されている突起状電極3によりランド1a上にて接合されることによって、互いに接続されている。突起状電極3による接合としては、Au−Au接合、はんだ接合、めっきバンプ接合などが挙げられる。
【0029】
また、くし型電極部を備えた振動部分2bは、SAW素子2の上記実装基板1と対向する面に形成されている。振動部分2bは、突起状電極3の高さによって形成されている空間部5に面している。従って、空間部5の存在により、上記振動部分2bにおける弾性表面波の励振伝搬は妨げられない。
【0030】
このとき、SAW素子2と実装基板1との間隔は19μm程度に設定されている。上記間隔については、必要に応じて設定されていればよく、特に限定的に解釈されるべきものではないが、5μm以上が好ましい。5μm未満では、実装基板1の反りや凹凸などにより、SAW素子2の表面と実装基板1とが接触するおそれがある。
【0031】
また、上記突起状電極3は、上記のように、SAW素子2と実装基板1とを電気的に接続していたが、該突起状電極3に加えて、SAW素子2を実装基板1に対して単に機械的に固着するための突起状電極を設けてもよい。さらに、実装基板1とSAW素子2との間隔を保つために形成されている突起状電極が設けられていてもよい。
【0032】
上記SAW素子CSPでは、上記SAW素子2は、封止樹脂部4に覆われて、封止されている。上記封止樹脂部4の素材としては、封止性及び接着性を有する限り特に限定されないが、例えば、エポキシ系、ポリイミド系、ポリオレフィン系、シリコーン系、フェノール系などの熱硬化性もしくは熱可塑性樹脂を用いることができる。本実施の形態ではエポキシ系が用いられている。上記エポキシ系樹脂の硬化温度は150℃であるが、エポキシ系樹脂であれば、硬化温度は大体80℃〜200℃の間である。
【0033】
さらに、上記封止樹脂部4を構成する材料は、フィラーを含有していてもよい。上記フィラーとしては、特に限定されないが、樹脂組成物に慣用されている適宜の無機充填剤を用いることができる。このような無機充填剤としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化カルシウム等の金属酸化物の粉末が挙げられる。フィラーの形状は、球形でもよく、不定形でもよい。
【0034】
フィラーは、その最大粒径がSAW素子2と実装集合基板11との隙間より大きく、互いに隣り合う各SAW素子2の間隔の小さい方の1/2以下、より好ましくは1/4以下であることが好ましく、かつ、SAW素子2と実装集合基板11との隙間より粒径が大きいフィラーの占有率が全フィラーに対し5重量%以上であることが好ましい。
【0035】
フィラーの粒径が上記好ましい特定の範囲にあるときには、上記振動部分2bと実装基板1との間の空間部5、特に振動部分2bに面した領域には、上記封止樹脂部4の浸入が上記フィラーによって阻止つまり制御されて隙間が確保される。従って、圧電基板2a上の振動部分2bにおいて弾性表面波を確実に伝搬させることができる。これを、図10及び表1を参照してより具体的な実験結果に基づき説明する。図10及び表1は、本実施形態の弾性表面波装置の製造に際し、上記隙間よりも粒径が大きいフィラーの占有率を変化させた場合の、振動部分2bと実装基板1との間の空間部を、特に振動部分2bに面した領域への封止樹脂部4の浸入量の変化を示す。なお、図10では、浸入量は浸入量の相対量(%)で表している。この浸入量の相対量(%)とは、隙間よりも粒径が大きいフィラーの占有率が0重量%である場合の上記空間部5への封止樹脂部4の浸入量を100%とし、該100%に対する空間部5への樹脂浸入量の割合をいうものとする。
【0036】
【表1】

【0037】
図10及び表1から明らかなように、隙間より粒径が大きいフィラーの占有率が全フィラーに対し5重量%以上とされている場合には、空間部5への封止樹脂部4の浸入量を抑制し得ることがわかる。
粒径は、各サイズのふるい目の各ふるいをフィラーを通過させたときのふるい目のサイズにより規定されている。ふるい以外に分級機(エアーによる飛散や、沈降速度の違い)によって粒径を規定してもよい。
【0038】
次に、本実施の形態にかかる弾性表面波装置(電子部品)の製造方法を、図1(a)ないし(e)、並びに図2ないし図4に基づき説明する。まず、上記製造方法は、実装工程と、配置工程と、真空(減圧)パック工程と、封止工程と、分割工程とを少なくとも有し、この順にて実施する方法である。
【0039】
まず、上記製造方法においては、圧電基板2a上に振動部分2bや電極パッド(図示せず)や上記両者を電気的に接続する配線パターンを、導電性金属、例えばアルミニウムを用いたリソグラフィー法により形成してSAW素子2を得る工程が、前工程として設けられている。
【0040】
上記前工程の次に、実装工程が行われる。実装工程は、図1(a)に示すように、外部端子1c(図2参照)を有する実装集合基板11上に、複数のSAW素子2をフリップチップボンディングする工程である。この工程では、例えば、10cm×10cmの実装集合基板11上に、SAW素子2のチップサイズにもよるが、数百から数千個の各SAW素子2が、碁盤の目状に実装されている。実装されて互いに隣り合う各SAW素子2の間隔は、本実施の形態では、狭いところで300μm、広いところで800μmくらいに設定されている。この間隔は、必要に応じて変更可能である。
【0041】
次に、配置工程において、実装集合基板11に実装された各SAW素子2上に樹脂フィルム12を配置する。樹脂フィルム12の厚みは、本実施の形態においては、250μmに設定されている。
【0042】
次に、真空パック工程において、実装集合基板11と実装された各SAW素子2と樹脂フィルム12とを、真空パック用の袋13に入れ、袋13の中を減圧下、例えば500Pa以下、にて脱気し、ヒートシールにて密封する。上記袋13の形状としては、一端部に開口部を形成した略長方形袋状のものが挙げられ、その袋13の厚みは80μm程度である。
【0043】
上記袋13としては、柔軟性と、ガスバリア性とヒートシール性とを少なくとも備え、実装集合基板11等を収納できるものであればよい。例えばガスバリア性や耐熱性、ヒートシール時や硬化時の温度に耐える、例えば180℃〜250℃程度の耐熱性、に優れたポリエステル系フィルムを外層とし、ヒートシール性を備えたポリエチレン系フィルムを内層(シーラント層)とした多層構造のものが挙げられる。
【0044】
よって、ヒートシールのための、後述の熱融着用ヒーター15の温度は、上記内層の溶融温度を超えていればよく、本実施の形態では、150℃〜200℃程度に設定されている。なお、上記ヒートシール性に代えて、クリップ等でとめることでシールすなわち密封性を保持できるものでもよい。
【0045】
また、上記多層構造においては、中間層にアルミ層をガスバリア性向上のために設けてもよい。上記外層用の材料の他の例としては、耐熱性に優れたポリイミドやポリアミドが挙げられる。上記内層用材料の他の例としては、ヒートシール性を備えたポリプロピレン系が挙げられる。
【0046】
上記密封に際しては、図3に示すように、実装集合基板11、各SAW素子2、及び樹脂フィルム12を入れた袋13を、密閉容器10内の載置台14上に置く。真空ポンプにより上記密閉容器10内を真空状態(500Pa以下)とするように、袋13内を脱気し、上記袋13の開口部の近傍を両側から熱融着用ヒーター(ヒートシーラー)15により融着して上記開口部を閉じる。上記真空状態(減圧下)とは、後述の硬化工程での、加圧又は減圧下での圧力より小さい圧力であればよいが、500Pa以下が好ましい。
【0047】
この閉じられた袋13を、密閉容器10から大気圧中に取り出すと、上記袋13は、図1(b)に示すように、実装集合基板11、各SAW素子2、及び樹脂フィルム12の外側に圧力差により密着した状態となる。
【0048】
なお、上記密封法以外の方法として、真空ポンプに接続された金属パイプを袋13の開口部内に気密的に差し込み、袋13内を脱気する方法が挙げられる。この場合には、上記開口部の互いに対面する部分も互いに密着し、その状態で上記金属パイプを引き抜きながら、上記開口部の近傍を熱融着用ヒーター(ヒートシーラー)15により融着させて上記開口部を閉じればよい。
【0049】
続いて、前記封止工程を行うが、封止工程は、浸入工程と硬化工程とを備えている。上記浸入工程では、図1(c)に示すように、袋13ごと樹脂フィルム12を加熱、例えば樹脂フィルム12の硬化温度未満、本実施の形態では150℃未満である、100℃〜140℃、に加熱することにより軟化させる。
【0050】
これによって、袋13により真空パックされた実装集合基板11上に実装された各SAW素子2間に、軟化した樹脂フィルム12が袋13の内外の圧力差による押圧によって浸入する。その結果、各SAW素子2が、樹脂フィルム12からの封止樹脂前躯体4aによって覆われ、封止される。
【0051】
このとき、樹脂フィルム12の天面は、袋13の張力によって実装集合基板11に対してほぼ平行に保たれ、浸入が完了した時には略平面となる。
【0052】
次に、硬化工程において、各SAW素子2と実装集合基板11とが、樹脂フィルム12からの封止樹脂前躯体4aの硬化温度、本実施の形態では150℃、に、さらに加熱され、封止樹脂前躯体4aが硬化される。その結果、図1(d)に示すように、各SAW素子2をそれぞれ覆う封止樹脂部4が形成される。
【0053】
上記硬化工程においては、図4に示すように、袋13により真空パックされた実装集合基板11、各SAW素子2及び封止樹脂前躯体4aを、密閉容器16の内部空間16a内に載置する。ここでは、その内部空間16aに圧力制御部18により圧力制御された圧力媒体17によって上記袋13に対して圧力を印加することが均一な圧力印加が可能なため好ましい。圧力媒体としては、空気、水、油などが挙げられる。上記圧力制御は、真空下の上記袋13に対して適切な圧力を印加できれば、どのような方法で行われてもよい。圧力調整は、大気圧に対して、圧力が高い加圧であっても、圧力が低い減圧であってもよい。
【0054】
上記硬化工程によれば、SAW素子2の下に確実に空間部5を形成する場合、もしくは高粘度の樹脂を使用して、SAW素子2と実装集合基板11との間にも封止樹脂部4を浸入させたい場合、硬化時の周囲の圧力を調整することにより、袋13を介して封止樹脂前躯体4aにかかる圧力を制御すればよい。このような圧力制御が行われ得るので、封止樹脂部4の性状や形状に対する許容範囲が広くなる。空間部5の形状や寸法も管理しやすい。
【0055】
このような硬化工程にて硬化した封止樹脂部4では、互いに隣り合う各SAW素子2の間の境界線部分において、数μm程度の凹部を生じる。もっとも、上記凹部は後述の分割工程での分断に際して、特に支障となるものではない。上記凹部の発生を回避する場合には、用いる樹脂フィルム12の厚さを大きくすればよい。
【0056】
その後、前述の分割工程では、封止樹脂部4によって樹脂封止された各SAW素子2を袋13から取り出し、図1(e)に示すように、実装集合基板11をSAW素子2毎に仮想分断線9に沿って、例えばダイシング法、カット・ブレイクなど適当な方法により分割する。
【0057】
以上のように、本発明の製造方法では、各SAW素子2を実装した実装集合基板11と樹脂フィルム12とを互いに重ね、これらに対し、袋13により真空パックを行うことで、各SAW素子2を封止し、次に、軟化している樹脂フィルム12を硬化させる。これにより、袋13の内部の空気は排出されているため、ボイドの発生しないラミネート方式CSP型のSAW装置が得られる。
【0058】
上記製造方法においては、用いる装置は、簡素な真空パック機と小型の加熱炉だけである。よって、ボイドの発生を回避しながら、1枚の実装集合基板11を用いて、数百から数千のSAW装置を一括して安価に製造できる。
【0059】
なお、樹脂フィルム12として、フィラー粒径が小さく、樹脂が低弾性なものを使用すると、SAW素子2と実装集合基板11との間の隙間にも樹脂を浸入させることができる。
【0060】
また、SAWフィルタを含むSAW装置のように、実装集合基板11とSAW素子2との間に振動空間を必要とする場合には、実装集合基板11とSAW素子2との間の隙間よりも最大フィラー粒径が大きく、かつ軟化時に高弾性の樹脂フィルム12を使用することが好ましい。それによって、実装集合基板11とSAW素子2との間に空間部5を確実に形成することができる。また、使用する樹脂フィルム12の厚みを適切に設定することにより、得られたSAW装置の製品厚みは制御可能である。
【0061】
以下に、本実施の形態に係る製造方法の効果を説明する。
【0062】
上記製造方法では、簡単な真空装置並びにシンプルな工法で生産性が良く安価に封止できると共に、大気圧を用いて、袋13の全面を均一に押圧できる。従って、ローラー工法やプレス工法に比べ、上記製造方法によれば、実装集合基板11やSAW素子2の厚みばらつきの影響を受けにくい。
【0063】
さらに、上記製造方法においては、真空引きのための穴を多数形成する必要が無いため、小型化が可能であり、また、大気圧によりゆっくりと樹脂フィルム12からの封止樹脂前躯体4aを各SAW素子2の間に押し込むため、必要以上に温度や圧力が製品となる各SAW素子2にかからない。このため、各SAW素子2の間の焦電破壊や突起状電極3の部分の導通不良、各SAW素子2の間の欠けなどを防ぐことができる。
【0064】
その上、上記製造方法では、各SAW素子2の全体を封止樹脂部4で覆うことができ、封止幅が十分取れる。従って、薄いフィルムを用いる場合に比べて、上記製造方法では、封止性を向上できると共に、実装基板1の表面積と、封止樹脂部4の天面の表面積とを互いにほぼ等しくできる。よって、得られたSAW装置の実装性を確保しやすい。
【0065】
次に、本発明の製造方法に係る他の実施形態を説明する。前記配置工程において、樹脂フィルム12の一方の全面、すなわち外側の表面全体、に離型シート19を貼りつけてもよい。離型シート19は、その材質としては、袋13の外層と同程度以上の耐熱性を備え、袋13の内層や封止樹脂部4との親和性が小さい、すなわち接着性が小さい、ものであればよい。例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)等が挙げられる。
【0066】
この場合は、図5に示すように、樹脂フィルム12を軟化させ硬化して封止樹脂部4を形成した後、離型シート19が剥離される。従って、硬化処理時の封止樹脂部4の表面へのゴミなどの汚れの付着や凹凸の発生を防ぐことができると共に、硬化温度の加熱されても袋13の内層と封止樹脂部4とが互いに接着することを防止できる。よって、製造工程を簡略化できる。
【0067】
また、離型シート19の樹脂フィルム12側の表面粗さが樹脂フィルム12からの封止樹脂部4の表面に転写され、良好な表面状態の封止樹脂部4のパッケージ天面が得られるので、前処理を行うことなく、良好なレーザー印字が上記パッケージ天面に対し可能になる。
【0068】
なお、封止樹脂部4のパッケージ天面の表面粗度(μm)と、レーザー印字での認識率(%)との関係を、上記表面粗度を種々変えて調べたところ、図6に示す結果が得られた。なお、表面粗度は非接触3次元表面粗さ計を用いて測定した値である。この結果から、離型シート19の樹脂フィルム12側の表面粗さは0.01μm〜10μmの範囲が好ましいことが分かる。
【0069】
ところで、SAW素子2や半導体素子22といった電子部品を実装基板1又はパッケージ上にフェイスダウンボンディングし、周囲を封止樹脂部にて封止する場合がある。上記場合において、硬化後、封止樹脂部4上に製品のロットNoや記号を印字する際には、封止樹脂部4の表面の凹凸や汚れのために印字が鮮明にできないことがあった。従来、対策として、封止樹脂部の上にさらに発色性を備えた印字用の樹脂を塗布してからレーザー印字を行うという方法が用いられていた。その結果、工程が増えコストUPを招来するという問題があった。
【0070】
このような問題を解決するには、実装集合基板11上にフェイスダウンボンディングされた各SAW素子2を樹脂フィルム12で覆い、さらに樹脂フィルム12上に離型シート19を置いて、上記樹脂フィルム12を軟化、硬化させればよい。それによって、硬化時に起こる樹脂フィルム12からの封止樹脂部4の表面(天面)の凹凸・汚れを防ぐことができる

【0071】
これにより、特別な処理を施すことなく、封止樹脂部4の上に直接レーザー印字を行うことができ、捺印性を確保しながら、コストダウンが可能となる。
【0072】
なお、上記実施形態では、電子部品として、SAW素子の例を挙げたが、上記に限定されるものではなく、SAW素子2に代えて、例えば図7に示すように、半導体素子22を用いてもよい。半導体素子22を用いた場合、図2に示す空間部5を確保する必要が無いので、その空間部5に封止樹脂部4をアンダーフィル材として充填してもよい。
【0073】
また、前記浸入工程では、袋内の減圧に対する大気圧による加圧を用いた例を挙げたが、図8に示すように、加熱・加圧ローラー26,26を用いてもよい。すなわち、実装集合基板11上に突起状電極3を介して実装された各SAW素子2上に樹脂フィルム12を載置し、袋13内に収納されたものを平板24上に載せ、その平板24と共に袋13を2つの加熱・加圧ローラー26・26間に搬送して、浸入工程を行うものである。
【0074】
また、図9に示すように、プレス機28のプレス枠28cに袋13を嵌め込むことによる加圧であってもよい。上記加圧を用いた浸入工程は、実装集合基板11、各SAW素子2及び樹脂フィルム12を収めた上記袋13を、プレス機28の下側台28b上に載置し、上側プレス28aの下面に取り付けられたプレス枠28cといった治具により、樹脂フィルム12を上側プレス28aの下降により上方から加熱しながらプレスすることにより、樹脂フィルム12を埋め込み、樹脂フィルム12により封止樹脂部4を形成する方法である。
【0075】
さらに、真空パック工程時に樹脂フィルム12と実装集合基板11との間の隙間から空気を効率よく脱気するために、実装集合基板11の周囲に、接着性フィルムである袋13との隙間を形成し空気穴(空気路)を設けるために、スペーサーを置いてもよい。
【0076】
また、実装集合基板11側の一部や熱軟化した、接着性の樹脂フィルム12の一部に空気穴を設けてもよい。密着性は真空パック工程後の大気圧により確保するため、空気穴は樹脂フィルム12と実装集合基板11との間に形成される空間のどこかに開いていればよい。
【0077】
その上、前記真空パック工程において、袋13の内部を乾燥窒素などの不活性ガスで置換した後、さらに脱気してもよい。また、前記袋13の密封の方法は熱融着が好ましいが、接着・器具による圧着など周囲の空気を遮断できる方法なら特に問わない。
【0078】
また、SAW素子2の下に空間部5を形成する場合、封止樹脂部4の浸入量をより最小化するため、真空引き時の真空度を調節して、適度な残気を残して封止してもよい。このときの真空度については形成する空間部5の容積や製品の形状により異なるが、100Pa〜500Paが好ましい。
【0079】
このように残気を残すことにより、すなわち袋13内の脱気時の空気量を制御することにより、前記実施の各形態と同様の効果を発揮できると共に、封止時に空間部5内に反発力が生まれ、空間部5が形成されやすくなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板に設けられた電子機能部とを有する複数の電子機能素子を実装集合基板上にそれぞれ実装する実装工程と、
前記実装集合基板に実装された各電子機能素子上に樹脂フィルムを配置する配置工程と、
前記実装集合基板上に実装された各電子機能素子と前記樹脂フィルムとを、ガスバリア性を備えた袋の中に入れ、内部を減圧して密封する減圧パック工程と、
前記減圧パックされた実装集合基板上に実装された各電子機能素子間に前記樹脂フィルムを浸入させることにより、前記各電子機能素子を樹脂フィルム由来の封止樹脂部によって封止する封止工程と、
前記樹脂封止された各電子機能素子を備えた前記実装集合基板を電子機能素子毎に分割する分割工程とを有する、ことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記封止工程は、前記樹脂フィルムを各電子機能素子間に浸入させて、上記樹脂フィルムにより形成された封止樹脂部前駆体によりそれぞれ覆われた各電子機能素子と実装集合基板とを加熱し、上記封止樹脂部前駆体を硬化させて前記封止樹脂部を得る硬化工程を有し、
上記硬化工程は、圧力が制御された密封空間で加熱する工程を備えている、請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記電子機能素子は、前記電子機能部としての振動部分を圧電基板上に有する弾性表面波素子である、請求項1又は2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記実装工程において、前記振動部分と実装集合基板との間に空間部を有するように、前記振動部分が、上記実装集合基板と対向するように配置されている、請求項3に記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂フィルムがフィラーを含有しており、
上記フィラーの粒径分布において、最大粒径が電子機能素子と実装集合基板との隙間より大きく、かつ電子機能素子と実装集合基板の隙間より粒径が大きいフィラーの占有率がフィラー全体に対し5重量%以上である、請求項4に記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記封止工程は、さらに、樹脂フィルムを加熱して軟化させると共にローラー又はプレスにより上記樹脂フィルムを加圧する熱圧着工程を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記配置工程は、前記樹脂フィルムの一方の面に離型シートを貼る工程と、電子機能素子が実装された実装集合基板上に上記樹脂フィルムを離型シート側が外側になるように配置する工程とを有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記離型シートの樹脂フィルム側の表面粗さが0.01μm〜10μmである、請求項7に記載の電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記実装工程は、複数の前記電子機能素子を、バンプを介してフリップチップボンディング実装するフリップチップボンディング工程である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項10】
前記袋は、最内層に熱可塑性樹脂層、最外層に、最内層の上記熱可塑性樹脂層よりも耐熱性及びガスバリア性に優れた耐熱性樹脂層を有する多層構造である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の電子部品の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【国際公開番号】WO2005/071731
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【発行日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517197(P2005−517197)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018211
【国際出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】