説明

電子部品及びその製造方法

【課題】バンプによりセラミック多層基板に電子部品チップが搭載されている電子部品であって、複数のバンプによる電気的接続の信頼性が高められている電子部品を得る。
【解決手段】セラミック多層基板2の上面2a上に、複数のバンプ14〜16を有する電子部品チップ3が搭載されており、セラミック多層基板2において、バンプ14〜16が接続される第1の電極ランド11、第2の電極ランド12及び第1の電極ランド13が順に配置されており、第2の電極ランド12の高さが第1の電極ランド11,13の電極ランドの高さよりも高くなるようにセラミック多層基板2の上面2aが凸状とされている、電子部品1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック多層基板上に電子部品チップが搭載されている電子部品及びその製造方法に関し、より詳細には、金属バンプを用いたフリップチップボンディングにより電子部品チップがセラミック多層基板に搭載されている電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品の実装構造の小型化及び薄型化を果たすために、様々な電子部品チップがセラミック多層基板にフリップチップボンディングにより搭載されている(例えば、下記の特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のような電子部品では、セラミック多層基板の上面に設けられた電極ランドに、電子部品チップの下面に設けられた金属バンプとが接合されている。この場合、金属バンプによる接合を確実に行うには、セラミック多層基板の上面が平坦であることが求められている。
【0004】
しかしながら、セラミック多層基板は、セラミックス一体焼成技術を用いて得られているため、上面の平坦性は必ずしも充分でないことがあった。そこで、下記の特許文献2では、セラミック多層基板上に、金属バンプが下面に設けられた電子部品チップが搭載されている電子部品において、セラミック多層基板の上面と平行である、ある方向に沿って配置された複数のバンプのうち、少なくとも中央側に配置されているバンプの下方において、セラミック多層基板内に、内部導電膜が設けられている。それによって、セラミック多層基板の上面の平坦性が高められている。
【0005】
図14は、特許文献2において、従来例及び実施例におけるバンプ接合部分のセラミック多層基板の上面の高さ位置を示す図である。ここで、横軸のZ1〜Z5は、セラミック多層基板において、バンプZ1〜Z5が接合される位置を示している。バンプZ1及びバンプZ5がある方向において両端において位置するバンプであり、バンプZ2〜Z4が中央側に位置するバンプである。また、縦軸のバンプライン上の高低差とは、バンプZ1,Z5が接合される部分のセラミック多層基板の高さを基準(0μm)とし、それに対するセラミック多層基板の高さ位置を示す。
【0006】
図14から明らかなように、△で示す従来例では、◆及び■で示す実施例の場合に比べて、中央に位置するバンプZ3が接合される部分のセラミック多層基板の高さ位置が、バンプZ1,Z5が接合される部分のセラミック多層基板の高さ位置に比べて低くなっていることがわかる。特に、◆で示す実施例では、中央のバンプZ3,Z4が接合される部分のセラミック多層基板の高さ位置が、両側のバンプZ1,Z5が接合されるセラミック多層基板の高さ位置とほぼ同等であり、平坦性が極めて高められていることがわかる。これは、上記◆で示す実施例や■で示す実施例では、バンプ接合部分において、セラミック多層基板内において、バンプの下方に内部導電膜が配置されていることにより、中央側に位置するバンプZ2〜Z4が接合される部分のセラミック多層基板の高さ位置が高められていることによる。
【特許文献1】特開2002−100877号公報
【特許文献2】特開2005−116622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載のように、従来、セラミック多層基板の上面を平坦にすれば、セラミック多層基板の上面に設けられたバンプの高さ位置が揃えられて、従って、電子部品チップの下面に設けられた金属バンプによる接合の電気的接続の信頼性が高められると考えられていた。
【0008】
しかしながら、セラミック多層基板の上面の平坦性を高めただけでは、金属バンプによる接続の信頼性は十分ではなく、接続不良が生じることのあることが本願発明者により見出された。
【0009】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、セラミック多層基板上に、下面に金属バンプを有する電子部品チップが搭載された電子部品及びその製造方法であって、金属バンプによる電気的接続の信頼性をより一層高めることを可能とする電子部品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電子部品は、セラミック多層基板と、前記セラミック多層基板の上面に形成された少なくとも2個の第1の電極ランドと、前記セラミック多層基板の上面に形成された第2の電極ランドとを備え、セラミック多層基板の上面において、該上面と平行なある方向において、少なくとも2個の第1の電極ランド間に前記第2の電極ランドが配置されており、前記セラミック多層基板の上面に実装される電子部品チップであって、下面に前記第1,第2の電極ランドにそれぞれ接合される第1,第2のバンプを有する電子部品チップをさらに備える電子部品において、前記セラミック多層基板の上面に設けられた前記第2の電極ランドが、前記第1の電極ランドよりも高くなるようにセラミック多層基板上面が凸状とされていることを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記セラミック多層基板は、前記第2の電極ランドの下方に位置する部分に内部導電膜を有する。それによって、第2の電極ランドの高さ位置が第1の電極ランドよりも容易に高くされ、セラミック多層基板の上面が確実に凸状にされる。
【0012】
好ましくは、前記セラミック多層基板内に、複数の内部導電膜が形成されており、前記第2の電極ランドの下方に位置する内部導電膜の数が、前記第1の電極ランドの下方に位置する内部導電膜の数よりも多くされている。この場合においても、第2の電極ランドの高さ位置を、第1の電極ランドよりも高くなるようにセラミック多層基板上面を確実に凸状にすることができる。
【0013】
本発明の電子部品では、好ましくは、セラミック多層基板は、セラミックス一体焼成技術により得られたセラミック焼結体からなる。この場合、内部導電膜の位置や数を調整することにより、セラミック多層基板の上面に上方に凸状とすることができる。
【0014】
上記電子部品チップは特に限定されないが、例えば弾性表面波装置を構成するものが挙げられる。また、上記電子部品チップは、送信側帯域フィルタ及び受信側帯域フィルタを備えた分波器を構成しているものであってもよい。その場合、フリップチップボンディング工法により得られた小型の分波器を1つの電子部品として用意することができる。
【0015】
好ましくは、第1及び/または第2のバンプの下方において、セラミック多層基板内に配置された遅延線が上記内部導電膜として備えられる。この場合には、遅延線が内蔵された電子部品の電気的接続の信頼性を高めることができる。
【0016】
本発明に係る電子部品の製造方法は、本発明に従って構成された電子部品の製造方法であって、複数のセラミック層を有する未焼成のセラミック積層体を用意する工程と、前記セラミック積層体を焼成し、上面が凸状とされたセラミック焼結体を得る工程と、前記セラミック積層体の焼成の前または焼成後に、上面に前記第1,第2の電極ランドを形成する工程と、前記第1,第2の電極ランドが上面に形成されたセラミック焼結体からなるセラミック多層基板上に、前記第1,第2のバンプを下面に備える前記電子部品チップを前記第1,第2の電極ランドに前記第1,第2のバンプを接合することにより実装する工程とを備える。
【0017】
本発明に係る電子部品の製造方法では、好ましくは、前記セラミック積層体を得るにあたり、複数の未焼成のセラミック層と、厚み方向にセラミック層同士が隣り合う界面の少なくとも1つの界面に配置された内部導電膜とを有するセラミック積層体が形成される。従って、内部導電膜の配置により、セラミック積層体を焼成して得られるセラミック多層基板を確実に上面において凸状とすることができる。
【0018】
より好ましくは、前記セラミック積層体を得るにあたり、複数の未焼成のセラミック層と、厚み方向にセラミック層同士が隣り合う界面の内の少なくとも1つの界面に配置された内部導電膜とを有するセラミック積層体が形成される。
【0019】
本発明に係る製造方法では、前記複数の内部導電膜の内、少なくとも1つの内部導電膜が、前記第1,第2の電極ランドの高さを調整するためのダミーパターン膜であってもよい。ダミーパターン膜の形成により、セラミック多層基板の上面を凸状とすることが容易となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る電子部品では、電子部品チップの下面に設けられた第1,第2のバンプに接合されるセラミック多層基板上面の第1,第2の電極ランドにおいて、第2の電極ランドが第1の電極ランドよりも高くなるようにセラミック多層基板上面が凸状とされているので、セラミック多層基板の上面が平坦な場合に比べて、バンプによる電子部品チップの電極ランドに対する電気的接続の信頼性を効果的に高めることができる。これは、バンプ接続による応力が、中央側のバンプにおいて、両端に位置するバンプよりも大きく加わりがちであるため、セラミック多層基板の上面を凸状とすることにより、中央側のバンプに加わる応力を低減することができ、それによって、第1のバンプ及び第2のバンプに加わる応力の差を小さくすることができることによる。
【0021】
従って、本発明によれば、金属バンプを用いたフリップチップボンディング工法により得られる電子部品における電気的接続の信頼性を効果的に高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0023】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電子部品を示す正面断面図である。
【0024】
電子部品1は、セラミック多層基板2と、セラミック多層基板2上に搭載された電子部品チップ3と、枠材4とを有する。なお、特に図示はしないが、枠材4で囲まれた開口を閉成するように、枠材4上に適宜の材料からなる蓋材が取り付けられる。
【0025】
セラミック多層基板2は、複数のセラミック層5〜7を積層した構造を有する。セラミック層5,6間及びセラミック層6,7間には、それぞれ、内部導電膜8,9が形成されている。
【0026】
セラミック多層基板2は、適宜の絶縁性セラミック材料または誘電体セラミック材料を含むセラミックグリーンシートと、Ag、Cu及びWなどの適宜の金属からなる内部導電膜8,9とを積層し、セラミックス一体焼成技術により焼成されたセラミック焼結体により構成されている。
【0027】
なお、枠材4は、アルミナなどの絶縁性セラミックスあるいは適宜の誘電体セラミックスからなる。好ましくは、枠材4は、セラミック多層基板2と同じセラミック材料により形成される。枠材4は、セラミック多層基板2と同時に焼成されてもよく、あるいはセラミック多層基板2を得た後に、枠材4をセラミック多層基板2上に接着剤などを用いて接着してもよい。
【0028】
セラミック多層基板2の上面2a上には、ある方向に沿って、第1の電極ランド11、第2の電極ランド12及び第1の電極ランド13がこの順序で設けられている。すなわち、ある方向において、少なくとも2つの第1の電極ランド11,13間において、1以上の第2の電極ランド12が配置されている。
【0029】
第2の電極ランド12の高さが、第1の電極ランド11,13の高さよりも高くなるように、セラミック多層基板2の上面2aが、凸状とされている。従って、第2の電極ランド12の高さが、第1の電極ランド11,13よりも高くされている。
【0030】
他方、セラミック多層基板2上に電子部品チップ3が搭載されている。電子部品チップ3は、下面に電極3a〜3cを有し、電極3a〜3c上に、パンプ14〜16が設けられている。これらのパンプ14〜16が、電極ランド11〜13に接合されるようにして、すなわち、フリップチップボンディングにより、電子部品チップ3がセラミック多層基板2上に実装されている。
【0031】
上記パンプ14〜16は、適宜の金属からなる。このような金属としては、Au、Ag、Cu、Pbなどの金属もしくは合金が挙げられる。
【0032】
上記パンプ14〜16は、電極ランド11〜13に接合されるように、前述したある方向に沿って順に配置されている。
【0033】
本実施形態では、上記内部導電膜8,9が中央側に位置している第2の電極ランド12の下方に位置しており、第1の電極ランド11,13の下方には、内部導電膜が形成されていない。従って、セラミックス一体焼成技術によりセラミック多層基板2を得た場合、上記内部導電膜8,9の存在により、セラミック多層基板2の上面2aの中央が上方に凸とされる。よって、第2の電極ランド12の高さが、第1の電極ランド11,13の高さよりも高くされている。
【0034】
そして、本実施形態ては、第2の電極ランド12の高さが第1の電極ランド11,13の高さよりも高くされているため、パンプ14〜16と電極ランド11〜13との電気的接続の信頼性が高められる。
【0035】
この点については、後ほど詳述することにする。
【0036】
なお、電子部品チップ3を構成する電子部品1は特に限定されないが、本実施形態では、送信側周波数帯域が824〜849MHz(帯域幅は25MHz)、受信側周波数帯域が869〜894MHz(帯域幅は25MHz)であるAMPS用分波器が構成されている。ここでは、送信側帯域と受信側帯域の間隔が20MHzと狭い。従って、送信側帯域及び受信側帯域のいずれにおいても、相手側の帯域において十分な減衰量を有し、かつフィルタ特性の急峻性が求められる。このような特性を満たすものとして、本実施形態では、図2に示す回路構成が採用されている。すなわち、電子部品チップ3は、送信側帯域フィルタ21及び受信側帯域フィルタ22を有する。各帯域フィルタは、複数の直列腕共振子と複数の並列腕共振子とを有するラダー型フィルタで構成されている。なお、直列腕共振子及び並列腕共振子は、いずれも弾性表面波共振子により構成されている。
【0037】
また、電子部品チップ3は、アンテナ端子24を有し、アンテナ端子24に、送信側帯域フィルタ21が接続されている。また、アンテナ端子24には、位相整合用回路25を介して受信側帯域フィルタ22が接続されている。
【0038】
図2では、送信側帯域フィルタ21及び受信側帯域フィルタ22は、いずれも、ラダー型の回路構成を有する弾性表面波フィルタ装置により構成されている。もっとも、送信側帯域フィルタ21及び受信側帯域フィルタ22の構成については特に限定されない。
【0039】
なお、上記電子部品1の製造に際しては、上記セラミック多層基板2を構成する複数の複数のセラミック層5〜7を形成するためのセラミックグリーンシートを内部導電膜8,9を介して積層し、セラミック積層体を用意する。このセラミック積層体を焼成することにより、上面が中央において凸状とされたセラミック焼結体を得ることができる。このセラミック焼結体の上面に、電極ランド11〜13を形成することにより、セラミック多層基板2を得ることができる。なお、セラミック焼結体を得るに先立ち、上面に第1,第2の電極ランド11〜13を形成し、しかる後、焼成を行い、セラミック多層基板2を得てもよい。
【0040】
第1,第2の電極ランド11〜13の形成は、導電ペーストの塗布・焼付け、あるいは蒸着、めっきもしくはスパッタリングなどの薄膜形成方法により適宜行い得る。
【0041】
最後に、上記セラミック多層基板2上に、バンプ14〜16を下面に備える電子部品チップ3を第1,第2の電極ランド11〜13にバンプ14〜16が接合されるように実装すればよい。
【0042】
次に、図1に示した実施形態の電子部品1において、バンプ14〜16と電極ランド11〜13との電気的接続の信頼性が高められることを、図3〜図5を参照して説明する。
【0043】
図3は、参考のために用意した電子部品101を示す正面端面図である。この電子部品101では、上面が平坦なセラミック多層基板102上に電子部品チップ103が搭載されている。セラミック多層基板102の上面が平坦となるように、第2の電極ランド12の下方に内部導電膜が存在しない。その他の点は、上記実施形態の電子部品1と同様であるため、相当の部分には相当の参照番号を付することとする。
【0044】
上記参考例の電子部品101では、セラミック多層基板102の上面が平坦である。従来、このような上面102aが平坦であれば、バンプ14〜16と電極ランド11〜13との電気的接続の信頼性が高められると考えられていた。
【0045】
しかしながら、現実には、上面102aが平坦なセラミック多層基板102を用いたとしても、電気的接続の信頼性が損なわれることがあった。
【0046】
そこで、本願発明者は、セラミック多層基板の上面を平坦ではなく、反っている場合に、ボンディング後に熱衝撃を加えてバンプに加わる応力シミュレーションをした。中央の第2のバンプ15に加わる応力がセラミック多層基板の上面の反りにより影響されること、またこの応力が、両側の第1のバンプ14,16に比べて第2のバンプ15に大きく加わることを見出した。
【0047】
そこで、もっとも大きな応力が加わりがちな中央の第2のバンプ15について、同様にしてボンディング後のバンプ15に加わる応力シミュレーションすることによりセラミック多層基板102の反りの状態の影響を求めた。結果を図4に示す。図4は、セラミック多層基板102のように、上面が平坦な場合、セラミック多層基板の上面が凹状である場合、または上記実施形態のように上方に凸状である場合のバンプ15に加わる応力を示す図である。中央の0μmは、参考例のように、セラミック多層基板の上面が平坦である場合の結果を示す。これに対して、−2
μmは、バンプ15の高さが、上記参考例の場合よりも2μm低い場合、言い換えれば、セラミック多層基板上面が凹状となるように反った場合の結果を示す。
【0048】
図5は、上記バンプ14〜16が接続される位置における第1,第2の電極ランド11〜13の高さ位置を模式的に示す図である。
【0049】
図4から明らかなように、セラミック多層基板の上面が凹状となっている場合、すなわち第2の電極ランド12の高さが第1の電極ランド11,13よりも低い場合、第2のバンプ15に大きな応力が加わっていることがわかる。
【0050】
これに対して、+3μmの場合、すなわちセラミック多層基板の上面が上記実施形態のように上方に凸状とされている場合には、第2のバンプ15に加わる応力が小さくなることがわかる。すなわち、セラミック多層基板2のように、上面2aが上方に凸とされている場合、上面が平坦なセラミック多層基板102を用いた場合よりも、中央に位置する第2のバンプ15に加わる応力が小さくなっていることがわかる。
【0051】
従って、上記実施形態のように、セラミック多層基板2において、上面が凸状とされており、それによって、第2の電極ランド12の高さが第1の電極ランド11,13よりも高くされている場合、バンプ15に熱衝撃などにより加わる応力を小さくすることができる。それによって、最も大きな応力が加わるバンプ15への応力を小さくすることができ、電気的接続の信頼性を高めることができる。これをシミュレーションに基づき説明する。
【0052】
上記実施形態の電子部品及びセラミック多層基板の上面が平坦な従来の電子部品及び逆に、セラミック多層基板の上面が凹状とされているセラミック多層基板を用いた各電子部品について熱衝撃を加えて、中央に位置する第2のバンプに加わる応力シミュレーションした。すなわち、熱衝撃として、25℃から85℃への温度変化及び25℃から−40℃への温度変化を各電子部品に加えた。そして、上記中央のバンプに加わる応力、すなわち電子部品チップをセラミック多層基板から引き離す方向の力を応力シミュレーションにより求めた。結果を下記の表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
表1から明らかなように、セラミック多層基板2の上面が上方に凸である場合に、第2のバンプ15に加わる応力は最も小さく、セラミック多層基板2の上面が平坦な場合であるよりも加わる応力が小さいことがわかる。
【0055】
なお、上記セラミック多層基板2内形成される内部導電膜としては、異なる部分を電気的に接続する配線パターンにより限らず、上記遅延線であってもよく、あるいは、インダクタンスや容量を構成するための内部導電膜であってもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、内部導電膜8,9が第2の電極ランド12の下方に設けられていたが、図6に示すように、第2の電極ランド12の下方に1つの内部導電膜8のみが設けられてもよい。この場合には、内部導電膜の数が少なくなるため、第2の電極ランド12の高さが、上記実施形態の場合に比べて低くなる。もっとも、第2の電極ランド12の下方にのみ内部導電膜が存在しない比較例に比べれば、第2の電極ランド12の高さを高くすることができる。
【0057】
図7は、上記実施形態、図6に示した変形例及びセラミック多層基板の上面が平坦な従来例のそれぞれにおける第2の電極ランド12と第1の電極ランド11,13との高低差を示す図である。
【0058】
なお、上記実施形態では、第2の電極ランド12の下方に内部導電膜9,10が設けられており、両側の第1の電極ランド11,13の下方に内部導電膜が設けられておらず、それによってセラミック多層基板2の上面が上方に凸とされていた。しかしながら、図8に示すように、第2の電極ランド12の下方に内部導電膜8,9が形成されているだけでなく、第1の電極ランド11,13の下方に内部導電膜10が形成されてもよい。すなわち、中央側に位置する第2の電極ランド12の下方に位置する内部導電膜の数を、両側に位置する第1の電極ランド11,13の下方の内部導電膜の数よりも多くすればよく、その場合においても、セラミック多層基板2の上面を上方に凸とすることができる。
【0059】
なお、複数のバンプ及び電極ランドが並べられている方向において、上記第1の電極ランド11,13とは、該方向においてセラミック多層基板2の端部に近い側に位置する電極ランドを言い、中央側に位置する第2の電極ランド12とは、端部よりも該方向においてセラミック多層基板2の上面において中央に近い側に位置する電極ランドを言うものとする。
【0060】
図1では、多数の金属バンプのうち3個のバンプ14〜16が配置されている部分のみを断面図で略図的に示したが、電子部品チップ3が搭載されるセラミック多層基板2は、実際には、より複雑な構造を有している。これを図9〜図12を参照して説明する。
【0061】
図9は、セラミック多層基板2の上面2aの模式的平面図であり、図10は、セラミック層5,6内の界面における高さ位置の模式的平面断面図であり、図11は、セラミック層6,7内の界面における高さ位置の模式的平面断面図である。また、図12は、セラミック多層基板2の下面を上方から見た模式的平面図である。
【0062】
図9に示すように、セラミック多層基板2の上面2aにおいては、電極ランド31〜38が形成されている。各電極ランド31〜38に、1個または複数個のバンプが接合される。すなわち、図5のX1〜X24で示される位置に、電子部品チップ側のバンプが接合される。言い換えれば、24個のバンプがセラミック多層基板2の上面2aに接合されることになる。
【0063】
なお、X1〜X12で示される位置に接合されるバンプは、受信側帯域フィルタ22に対応し、X13〜X24で示される位置に接合されるバンプは、送信側帯域フィルタ23に対応している。
【0064】
なお、図9〜図13におけるA1〜A8及びB1〜B4及びA8〜A11、C1〜C6は、それぞれ、セラミック多層基板に設けられたビアホールを示す。
【0065】
セラミック多層基板2において、位置X1〜X24に接合されるバンプは以下のように接続されている。
【0066】
送信側入力端子:X24のバンプ
送信側出力端子:X13のバンプ,X18のバンプ
送信側アース端子:X14のバンプ〜X17のバンプ及びX19のバンプ〜X23のバンプ
受信側入力端子:X4のバンプ
受信側出力端子:X2のバンプ
受信側アース端子:X1のバンプ,X3のバンプ,X5のバンプ〜X12のバンプ
また、信号の経路は以下の通りとなる。
【0067】
ビアホールA1→ビアホールA2→ビアホールA3→ビアホールA4→ビアホールA5→ビアホールA6→ビアホールA7(遅延線)
ビアホールA8→ビアホールA9→ビアホールA10→ビアホールA11→アンテナ端子
ビアホールB1→ビアホールB2→ビアホールB3→ビアホールB4→受信側端子
ビアホールC1→ビアホールC2→ビアホールC3→ビアホールC4→ビアホールC5→ビアホールC6→送信側端子
本実施形態では、セラミック多層基板2は、実際には上記のように構成されている。この場合、前述したように、セラミック多層基板2の上面においては、多数の位置X1〜X24にバンプが接合される。そして、本発明では、セラミック多層基板の上面に平行なある方向に沿って配置された複数のバンプにおいて、電子部品チップの信号側に対応するバンプの下方に少なくとも1層に内部導電膜が設けられればよい。これをより具体的に説明する。
【0068】
なお、本実施形態では、図11及び図12に示されているように、内部導電膜の1つとして、長さが長くなるように蛇行された導電膜26,27からなる遅延線が形成されている。このような遅延線をセラミック多層基板2内に形成した構造において、該遅延線を、前述した第1の電極ランドの下方に位置させることにより、第2の電極ランド12の高さを高くしてもよい。
【0069】
また、遅延線ではなく、図11に示されているダミーパターン28を設けて、上方の電極ランドの位置を高くしてもよい。ダミーパターン28とは、遅延線や接続配線などの電気的機能を有しない内部導電膜をいうものとする。
【0070】
なお、図10〜図13は、セラミック多層基板2内の内部導電膜やバンプが接合される部分の一例を示すものであり、本発明においては、セラミック多層基板2内の内部導電膜の形状については特に限定されず、また、セラミック多層基板2の上面に接合されるバンプの位置も、図示の構造に限定されるものではない。
【0071】
図1及び図4では、3個のバンプ14〜16が設けられている単純化されたサンプルにおいて検討した結果を示したが、図13は、図9〜図12に示した積層構造を有する具体的なセラミック多層基板を用いた場合の実験結果を示す。ここでは、下記の表2に示すように、セラミック層6上及びセラミック層7上に形成されている内部導電膜と上方において接合されるバンプとの重なり度合を、〇、△及び×の記号で下記の表2に表す。
【0072】
【表2】

【0073】
表2において、「層6上」及び「層7上」は、セラミック層6上の内部導電膜及びセラミック層7上の内部導電膜と、上方バンプとの重なり具合を示すものとする。ここで、表2のX1〜X5は、それぞれ、図9において、破線で示す方向Eに沿って順に配置されるバンプ接合位置である。
【0074】
表2における〇は、電極ランドの下方の全領域に内部導電膜が重なり合っている部分がある場合を示し、△は、電極ランドの下方に内部導電膜の一部が重なり合っている部分がある場合を示し、×は、該当する電極ランドの下方に内部導電膜が存在しない場合を示す。
【0075】
そして、図13は、上記サンプル41〜45のセラミック多層基板2を用いた場合の上面の位置X1〜X5でバンプが接続される各電極ランドの高さをレーザー変位計で測定した結果を示す。なお、この測定結果は、同じサンプル10個において測定した結果の平均値を示す。
【0076】
図9から明らかなように、サンプル41〜43及びサンプル45では、セラミック多層基板の上面の中央の位置X2、X3、X4の各電極ランドのうち、少なくとも1つの電極ランドが、両端の位置X1、X5の電極ランドよりも下方に位置していることがわかる。すなわち、セラミック多層基板の上面が凹状であることがわかる。従って、サンプル41〜43及びサンプル45では、中央側にの位置X2〜X4のバンプに加わる応力が大きくなる。
【0077】
これに対して、サンプル44では、中央側の位置X2〜X4の電極ランドの全ての高さが、両端の位置X1,X5の第1の電極ランドの高さよりも高くなっている。従って、中央側に位置する第2の電極ランドに加わる応力が低くなり、それによって、各バンプによる電気的接続の信頼性が効果的に高められる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子部品を示す略図的正面断面図である。
【図2】本実施形態の電子部品の回路構成を示す回路図である。
【図3】参照例として用意した両面が平坦なセラミック多層基板を用いた電子部品の略図的正面断面図である。
【図4】セラミック多層基板の上面が凹状、平坦及び凸状である場合の各中央の第2のバンプに加わる応力の大きさを示す図である。
【図5】図1に示した実施形態において、第1,第2の電極ランドの高さ位置を示す図である。
【図6】第1の実施形態の変形例に係る電子部品を示す正面断面図である。
【図7】第1の実施形態、変形例並びに上面が平坦なセラミック多層基板を用いた従来の電子部品のそれぞれにおける第2の電極ランドと、第1の電極ランドとの高低差を示す図である。
【図8】第1の実施形態のさらに他の変形例に係る電子部品を説明するための略図的正面断面図である。
【図9】第1の実施形態で用いられているセラミック多層基板のより具体的な構造を説明するための平面図である。
【図10】第1の実施形態で用いられているセラミック多層基板の中間高さ位置の模式的平面図である。
【図11】図1に示した実施形態で用いられているセラミック多層基板の中間高さ位置の模式的平面断面図であり、図10に示されている部分よりも下方に部分を示す図である。
【図12】図1に示した実施形態で用いられているセラミック多層基板の下面の電極構造を模式的に示す平面図である。
【図13】第1の実施形態に係る電子部品と、比較のために用意した比較例の電子部品としてのサンプル41〜45における各電極ランドX1〜X5に加わる応力を示す図である。
【図14】先行技術に記載の実施形態及び従来例の電子部品におけるバンプ位置とバンプ接合位置の高さ関係を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1…電子部品
2…セラミック多層基板
2a…上面
3…電子部品チップ
3a〜3c…電極
4…枠材
5〜7…セラミック層
8〜10…内部導電膜
11,13…第1の電極ランド
12…第2の電極ランド
14,16…第1のバンプ
15…第2のバンプ
21…送信側帯域フィルタ
22…受信側帯域フィルタ
23…送信側帯域フィルタ
24…アンテナ入力端子
25…位相整合用回路
31〜38…電極ランド
X1〜X5…バンプ接合位置またはランド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック多層基板と、前記セラミック多層基板の上面に形成された少なくとも2個の第1の電極ランドと、前記セラミック多層基板の上面に形成された第2の電極ランドとを備え、
セラミック多層基板の上面において、該上面と平行なある方向において、少なくとも2個の第1の電極ランド間に前記第2の電極ランドが配置されており、
前記セラミック多層基板の上面に実装される電子部品チップであって、下面に前記第1,第2の電極ランドにそれぞれ接合される第1,第2のバンプを有する電子部品チップをさらに備える電子部品において、
前記セラミック多層基板の上面に設けられた前記第2の電極ランドが、前記第1の電極ランドよりも高くなるようにセラミック多層基板上面が凸状とされていることを特徴とする、電子部品。
【請求項2】
前記セラミック多層基板が、前記第2の電極ランドの下方に位置する部分に内部導電膜を有する、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記セラミック多層基板内に、複数の内部導電膜が形成されており、前記第2の電極ランドの下方に位置する内部導電膜の数が、前記第1の電極ランドの下方に位置する内部導電膜の数よりも多くされている、請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記セラミック多層基板が、セラミックス一体焼成技術により得られたセラミック焼結体からなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項5】
前記電子部品チップが、弾性表面波装置である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項6】
前記電子部品チップが、送信側帯域フィルタ及び受信側帯域フィルタを備えた分波器を構成している電子部品チップである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項7】
前記第1及び/または第2の電極ランドの下方において、前記セラミック多層基板内に配置された遅延線を前記内部導電膜として備える、請求項6に記載の電子部品。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子部品の製造方法であって、
複数のセラミック層を有する未焼成のセラミック積層体を用意する工程と、
前記セラミック積層体を焼成し、上面が凸状とされたセラミック焼結体を得る工程と、
前記セラミック積層体の焼成の前または焼成後に、上面に前記第1,第2の電極ランドを形成する工程と、
前記第1,第2の電極ランドが上面に形成されたセラミック焼結体からなるセラミック多層基板上に、前記第1,第2のバンプを下面に備える前記電子部品チップを前記第1,第2の電極ランドに前記第1,第2のバンプを接合することにより実装する工程とを備える、電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記セラミック積層体を得るにあたり、複数の未焼成のセラミック層と、厚み方向にセラミック層同士が隣り合う界面の内の少なくとも1つの界面に配置された内部導電膜とを有するセラミック積層体を形成する、請求項8に記載の電子部品の製造方法。
【請求項10】
前記第1の電極ランドの下方に位置する内部導電膜の数が、前記第2の電極ランドの下方に位置する内部導電膜の数よりも大きくなるように複数の前記内部導電膜を形成する、請求項9に記載の電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記複数の内部導電膜の内、少なくとも1つの内部導電膜が、前記第1,第2の電極ランドの高さを調整するためのダミーパターン膜である、請求項10に記載の電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−54829(P2009−54829A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220794(P2007−220794)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】