説明

電子部品収納用セラミックパッケージ及びその製造方法

【課題】導電性接着材で接合するパッド、半田で接合するパッドの何れでも接合強度を高くできる電子部品収納用セラミックパッケージ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】導電性金属と接着樹脂の混合体からなる導電性接着材20を介して電子部品19を接合するための接続端子パッド14と、半田24を介して外部に接合するための外部接続端子パッド15を有し、これらの表面に電解めっき法で形成されるNiめっき被膜17及びAuめっき被膜18を有する電子部品収納用セラミックパッケージ10において、Auめっき被膜18をTOF−SIMSで測定するAuめっき被膜18の表面に付着するAuめっき浴液を構成する成分の残さの内のAuを1とした時のCNの定量値が2以下、AuCの定量値が0.5以下、アミン類の定量値が0.2以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックパッケージの接続端子パッドに半導体素子や、水晶振動子等の電子部品が導電性接着材で接合されて電子部品と接続端子パッド間を電気的な導通状態とし、電子部品が蓋体で気密に封止された後、接続端子パッドと電気的に導通状態である外部接続端子パッドでマザーボード基板に半田を介して接合されて電子装置等に用いるための電子部品収納用セラミックパッケージ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体素子や、水晶振動子等の電子部品を収納して蓋体を接合して電子部品を気密に封止するためには、気密信頼性の高いセラミックからなる電子部品収納用セラミックパッケージが多く用いられている。そして、電子部品が収納されたこのようなセラミックパッケージは、各種電子装置のマザーボード基板に組み込まれて使用されている。
【0003】
図5(A)〜(C)を参照しながら、従来の電子部品収納用セラミックパッケージを説明する。ここに、図5(A)、(B)はそれぞれ従来の電子部品収納用セラミックパッケージの上面側の平面図、下面側の平面図、図5(C)は従来の電子部品収納用セラミックパッケージに電子部品を実装した後、マザーボード基板に接合した時の模式的断面図である。図5(A)〜(C)に示すように、従来の電子部品収納用セラミックパッケージ50は、1又は複数枚からなるセラミック基体51の上面に、1又は複数枚からなるセラミック製、及び/又は金属製の枠体52が接合されて形成されるキャビティ部53が形成されている。このキャビティ部53の底面であるセラミック基体51の上面に設けられるメタライズ膜上にNiめっき被膜及びAuめっき被膜が施されて形成される接続端子パッド54には、半導体素子や、水晶振動子等からなる電子部品55が導電性金属と接着樹脂の混合体からなる、例えば、Ag−Si系の導電性接着材56を介して直接接合されるようになっている。そして、キャビティ部53に電子部品55が収納され、枠体52の上面に蓋体57を接合して電子部品55を気密に封止した電子部品収納用セラミックパッケージ50は、接続端子パッド54と同様にしてメタライズ膜上にNiめっき被膜及びAuめっき被膜が施されて形成される外部接続端子パッド58を各種電子装置のFR−4製等のプリント配線基板等からなるマザーボード基板59に半田60を介して接合するようになっている。なお、電子部品収納用セラミックパッケージ50は、セラミック基体51に形成される導体配線によって接続端子パッド54と、外部接続端子パッド58間で電気的導通状態が形成されている。
【0004】
図6を参照しながら、上記の従来の電子部品収納用セラミックパッケージ50の製造方法におけるAuめっき被膜形成後の洗浄工程を簡単に説明する。上記の従来の電子部品収納用セラミックパッケージ50は、パッケージの表面に露出するメタライズ膜を含めた金属表面上に電解Niめっき法で施されたNiめっき被膜の表面に、Auめっき浴中で通電する電解Auめっき法でAuめっき被膜を形成している。次いで、電子部品収納用セラミックパッケージ50には、第1の回収漕でシャワー水洗浄を行った後、第2の回収漕でディップ水洗浄を行っている。そして、それぞれの回収漕で回収された金めっき浴液からは、Auを回収している。更に、電子部品収納用セラミックパッケージ50は、複数の水槽中に順次流れ込んで濾過しながら循環している水中に、水の流れと逆方向に順次浸漬する複数のディップ水洗浄を行って、Auめっき被膜表面に付着するAuめっき浴を構成する成分の残さを除去するようにしている。
【0005】
しかしながら、上記の従来の電子部品収納用セラミックパッケージの製造方法では、Auめっき被膜形成時のAuめっき浴への浸漬によって、複数の回収漕や、循環水漕での水洗浄を行ったり、酸洗浄、アルカリ洗浄、湯洗浄等を行ったりしてもAuめっき被膜表面に様々なAuめっき浴を構成する成分の残さの付着量を減少させることに限界がある。特に、Auめっき被膜表面に付着する残さの内のシアン(以下、CNと記す)類は、Auへの吸着力が強く、除去が難しくなっている。このような電子部品収納用セラミックパッケージは、残さの内のCN、シアン化金(以下、AuCと記す)、アミン類が多く付着した接続端子パッドに電子部品がAg−Si系の導電性接着材で接合される時、Si系接着樹脂の硬化を疎外して接続不良を発生させることがあるという問題を抱えている。
【0006】
そこで、従来の電子部品収納用セラミックパッケージには、Auめっき被膜の表面にNiめっき被膜のNiを加熱処理して拡散させ、このNiによってSi系接着樹脂の熱硬化反応を促進させることで、電子部品のAg−Si系導電性接着材での接合不良を防止することが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特許第3694378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述したような従来の電子部品収納用セラミックパッケージは、次のような問題がある。
Auめっき被膜の表面にNiめっき被膜のNiを拡散させた電子部品収納用セラミックパッケージは、接続端子パッドに電子部品をAg−Si系等の導電性接着材で接合する時にはSi系接着樹脂の硬化を促進でき効果があるが、外部接続端子パッドを各種電子装置のFR−4製等のプリント配線基板等からなるマザーボード基板に半田を介して接合する時には半田付け性を疎外することとなり、両者の接合不良を共に防止することができなくなっている。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、導電性接着材を介して接合するパッド、半田を介して接合するパッドの何れでも接合強度を高くできる電子部品収納用セラミックパッケージ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的に沿う本発明に係る電子部品収納用セラミックパッケージは、導電性金属と接着樹脂の混合体からなる導電性接着材を介して電子部品を接合するための接続端子パッドと、半田を介して外部に接合するための外部接続端子パッドを有し、接続端子パッドと外部接続端子パッドの表面に電解めっき法で形成されるNiめっき被膜及びAuめっき被膜を有する電子部品収納用セラミックパッケージにおいて、Auめっき被膜を飛行時間型二次イオン質量分析計で測定するAuめっき被膜の表面に付着するAuめっき浴液を構成する成分の残さの内のAuを1とした時のCNの定量値が2以下、AuCの定量値が0.5以下、アミン類の定量値が0.2以下である。
【0011】
前記目的に沿う本発明に係る電子部品収納用セラミックパッケージの製造方法は、セラミック基材にメタライズ膜が形成され、メタライズ膜にNiめっき被膜と、Niめっき被膜にAuめっき被膜が形成されてなり、導電性金属と接着樹脂の混合体の導電性接着材を介して電子部品を接合するための接続端子パッドと、半田を介して外部に接合するための外部接続端子パッドを設ける電子部品収納用セラミックパッケージの製造方法において、メタライズ膜にNiめっき浴中で通電してNiめっき被膜を形成した後、Niめっき被膜の表面にAuめっき浴中で通電してAuめっき被膜を形成する工程と、Auめっき被膜に付着するAuめっき浴液を第1の回収槽でシャワー水洗浄、及び第2の回収槽でディップ水洗浄した後、Auめっき被膜の表面を複数の水槽中に順次浸漬するディップ水洗浄を行う工程と、Auめっき被膜の表面をアルカリ溶液、又は中性溶液中で電気分解洗浄した後、Auめっき被膜の表面を複数の水槽中に順次浸漬するディップ水洗浄を行う工程を有する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の電子部品収納用セラミックパッケージは、Auめっき被膜を飛行時間型二次イオン質量分析計で測定するAuめっき被膜の表面に付着するAuめっき浴液を構成する成分の残さの内のAuを1とした時のCNの定量値が2以下、AuCの定量値が0.5以下、アミン類の定量値が0.2以下であるので、接続端子パッドに電子部品をAg−Si系等の導電性接着材で接合する時にはSi系接着樹脂の硬化の疎外を防止できると共に、外部接続端子パッドを各種電子装置のFR−4製等のプリント配線基板等からなるマザーボード基板に半田を介して接合する時には半田付け性の疎外を防止でき、両者の接合強度を高くすることができる電子部品収納用セラミックパッケージを提供できる。
【0013】
請求項2記載の電子部品収納用セラミックパッケージの製造方法は、メタライズ膜にNiめっき浴中で通電してNiめっき被膜を形成した後、Niめっき被膜の表面にAuめっき浴中で通電してAuめっき被膜を形成する工程と、Auめっき被膜に付着するAuめっき浴液を第1の回収槽でシャワー水洗浄、及び第2の回収槽でディップ水洗浄した後、Auめっき被膜の表面を複数の水槽中に順次浸漬するディップ水洗浄を行う工程と、Auめっき被膜の表面をアルカリ溶液、又は中性溶液中で電気分解洗浄した後、Auめっき被膜の表面を複数の水槽中に順次浸漬するディップ水洗浄を行う工程を有するので、Auめっき被膜形成後の加熱処理がなくAuめっき被膜への積極的なNiの拡散を防止できると共に、Auめっき被膜表面に付着する様々なAuめっき浴を構成する成分の残さの内のCN、AuC、アミン類の付着を少なくできて、導電性接着材や、半田での接合強度を高くできる電子部品収納用セラミックパッケージの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。
ここに、図1(A)〜(C)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る電子部品収納用セラミックパッケージの上面側の平面図、下面側の平面図、A−A’線縦断面図、図2は同電子部品収納用セラミックパッケージに電子部品を実装した後、マザーボード基板に接合した時の模式的断面図、図3は同電子部品収納用セラミックパッケージの製造方法におけるAuめっき被膜形成後の洗浄工程図、図4は同電子部品収納用セラミックパッケージの製造方法における電解洗浄の説明図である。
【0015】
図1(A)〜(C)、図2を参照しながら、本発明の一実施の形態に係る電子部品収納用セラミックパッケージ10を説明する。図1(A)〜(C)に示すように、本発明の一実施の形態に係る電子部品収納用セラミックパッケージ10は、酸化アルミニウム(Al)や、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミック基材が用いられた略四角形状の1又は複数枚からなるセラミック基体11を有している。このセラミック基体11の上面には、1又は複数枚からなるセラミック基体11と同様のセラミック製、及び/又はKV(Fe−Ni−Co系合金、商品名「Kovar(コバール)」)や、42アロイ(Fe−Ni系合金)等の金属製の枠体12が接合されている。そして、この電子部品収納用セラミックパッケージ10は、セラミック基体11の上面と、枠体12の内周側壁面とで半導体素子や、水晶振動子等の電子部品19(図2参照)を収納するためのキャビティ部13が形成されている。この電子部品収納用セラミックパッケージ10は、このキャビティ部13の底面であるセラミック基体11の上面に、電子部品19が導電性金属と接着樹脂の混合体からなる、例えば、Ag−Si系の導電性接着材20(図2参照)を介して直接接合することができるための接続端子パッド14を有している。また、この電子部品収納用セラミックパッケージ10は、半田24(図2参照)を介して外部に接合するための接続端子パッド14と電気的に導通状態である外部接続端子パッド15を有している。この電子部品収納用セラミックパッケージ10の接続端子パッド14と、外部接続端子パッド15は、セラミック基材上にタングステン(W)や、モリブデン(Mo)等の高融点金属からなるメタライズ膜16で形成され、焼成後にその上に形成されるNiめっき被膜17、更にこのNiめっき被膜17の上面にAuめっき被膜18を有している。
【0016】
そして、図2に示すように、電子部品収納用セラミックパッケージ10には、キャビティ部13の底面に設ける接続端子パッド14に電子部品19が導電性接着材20を介して接合された後、枠体12の上面に酸化アルミニウムや、窒化アルミニウム等のセラミック製や、KVや、42アロイ等の金属製からなる蓋体21が接合されて電子部品19が気密に封止されるようになっている。そして、電子部品19が気密に封止された電子部品収納用セラミックパッケージ10は、外部接続端子パッド15を各種電子装置のFR−4製等のプリント配線基板等からなるマザーボード基板22の配線回路パターン23に半田24を介して接合するようになっている。なお、電子部品収納用セラミックパッケージ10は、図示しないが、セラミック基体11に形成される導体配線によって接続端子パッド14と、外部接続端子パッド15間で電気的導通状態が形成されている。
【0017】
上記の電子部品収納用セラミックパッケージ10は、Auめっき被膜18の表面に加熱処理によって積極的に拡散するNiめっき被膜17からの拡散Niを有していない。この拡散Niは、通常、Niめっき被膜17及びAuめっき被膜18を形成した後に、約150℃以上の加熱処理を行うことで形成されることが知られているが、この電子部品収納用セラミックパッケージ10には、この加熱処理が行われていない。また、電子部品収納用セラミックパッケージ10は、Auめっき被膜18の表面に、Auめっき被膜18形成時のAuめっき浴への浸漬によって、表面に様々なAuめっき浴を構成する成分の残さの付着がある。その残さの内のCNは、飛行時間型二次イオン質量分析計(TOF−SIMS:Time of flight secondary ion mass spectrometry)で測定してAuを1とした時の定量値が2以下となっている。また、残さの内のAuCは、Auを1とした時の定量値が0.5以下となっている。更に、残さの内のアミン類は、Auを1とした時の定量値が0.2以下となっている。それぞれの残さのAuを1とした時の定量値がそれぞれ上記の値を超える場合には、残さが付着した接続端子パッド14に電子部品19をAg−Si系の導電性接着材20で接合する時に、Si系接着樹脂の接続端子パッド14との間の硬化速度が残さのない電子部品19との間の硬化速度より遅くなり、導電性金属であるAgが早く硬化する電子部品19側に引き寄せられることから、電気的な接続不良の発生が多くなると考えられる。
【0018】
次いで、本発明の一実施の形態に係る電子部品収納用セラミックパッケージ10の製造方法を説明する。電子部品収納用セラミックパッケージ10に用いられるセラミック基材には、セラミックが、例えば、酸化アルミニウムからなる場合であれば、先ず、酸化アルミニウム粉末にマグネシア、シリカ、カルシア等の焼結助剤を適当量加えた粉末に、ジオクチルフタレート等の可塑剤と、アクリル樹脂等のバインダー、及びトルエン、キシレン、アルコール類等の溶剤を加え、十分に混練して脱泡し、粘度2000〜40000cpsのスラリーを作製している。次に、ドクターブレード法等によって、例えば、厚み0.25mmのロール状のシートに形成し、適当なサイズの矩形状に切断したセラミックグリーンシートを作製している。
【0019】
次に、複数枚のセラミックグリーンシートには、上下層を導体ビアで電気的に導通させるためのスルーホールや、キャスタレーション用等の貫通孔を穿孔して設けている。次に、高融点金属である、例えば、タングステンからなる導体金属ペーストを用いてスクリーン印刷で回路パターン印刷や、導体ビア用のスルーホール印刷等を行い、それぞれに電気的な導通状態を有するメタライズ膜16用の印刷パターン形成を行っている。次に、導体金属が印刷された複数枚のセラミックグリーンシートは、重ね合わせて温度と圧力をかけて接合して積層体を形成し、還元雰囲気中の約1600℃程度の高温で導体金属と同時焼成してセラミック基体11、又はセラミック基体11とセラミック製の枠体12の接合体からなるセラミック焼成体を作製している。そして、更に、セラミック基体11からなるセラミック焼成体の場合には、セラミック基体11の上面外周部に設けるメタライズ膜16にNiめっき被膜17を形成した後、Ag−Cuろうを介してKVや、42アロイからなる金属製の枠体12をろう付け接合している。また、セラミック基体11とセラミック製の枠体12の接合体からなるセラミック焼成体の場合には、必要に応じて、セラミック製の枠体12の上面外周部に設けるメタライズ膜にNiめっき被膜を形成した後、Ag−Cuろうを介してKVや、42アロイからなる金属製の枠体12をろう付け接合している。
【0020】
このセラミック焼成体の外部に露出するメタライズ膜16を含む金属部分には、Niめっき浴中で通電して電解めっき法によるNiめっき被膜17を形成している。更に、Niめっき被膜17の上面には、Auめっき浴中で通電して電解めっき法によるAuめっき被膜18を形成している。この金属部分は、例えば、Ag等からなる導電性金属と、例えば、Si系接着樹脂の混合体からなるAg−Si系の導電性接着材20を介して電子部品19を接合するための接続端子パッド14や、半田24を介して外部に接合するための外部接続端子パッド15等として設けている。
【0021】
図3に示すように、Auめっき被膜18を形成した後のAuめっき被膜18表面の洗浄は、先ず、セラミック基材や、Auめっき被膜18に付着するAuめっき浴液を第1の回収槽内で水を噴霧するシャワー水洗浄を行っている。更に、第1の回収槽でのシャワー水洗浄後は、セラミック基材や、Auめっき被膜18に付着するAuめっき浴液を第2の回収槽に浸漬してディップ水洗浄を行っている。上記のAuめっき浴液の回収後、Auめっき被膜18の表面は、Auめっき被膜18に付着するAuめっき浴液の残さを減少させるために、複数の水槽中に順次流れ込んで濾過しながら循環している水中に、水の流れと逆方向に順次浸漬する複数のディップ水洗浄を行っている。
【0022】
次に、図4に示すように、電子部品収納用セラミックパッケージ10は、ラック25に取り付けられてAuめっき被膜18の表面を電気的に通電可能状態にした後、導電性があり、セラミック基材を損傷させない、例えば、NaOH、NaCO、オルソケイ酸ナトリウム、メタオルソケイ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、界面活性剤の少なくとも4種を含むアルカリ溶液、又は例えば、KSOからなる中性溶液からなる電解液26中に浸漬している。そして、電子部品収納用セラミックパッケージ10は、ラック25に取り付けられて一方の電極とし、対極27である他方の電極をカーボン、PtめっきTi、SUS等の不溶性電極として相対向させ、両極間を通電することでAuめっき被膜18の表面を電気分解洗浄を行っている。
【0023】
電気分解洗浄を行った後、電子部品収納用セラミックパッケージ10は、複数の水槽中に順次流れ込んで濾過しながら循環している水中に、水の流れと逆方向に順次浸漬する複数のディップ水洗浄を行っている。そして、洗浄後の電子部品収納用セラミックパッケージ10は、最後に付着している水分を乾燥させることで作製を完了としている。
【実施例】
【0024】
実施例1は、アノード電気分解洗浄法を取り入れた洗浄、乾燥後のAuめっき被膜表面の残さをTOF−SIMSを用いて定量した。
Auめっき被膜形成後の洗浄工程は、前記の洗浄方法であり、Auめっき被膜18に付着するAuめっき浴液を第2の回収槽に浸漬してディップ水洗浄を行った後の水槽中に浸漬するディップ水洗浄を連続して2回行うようにした。また、電気分解洗浄を行った後は、Auめっき被膜18の表面を水槽中に浸漬するディップ水洗浄を連続して3回行うようにした。
電気分解洗浄の条件は、被洗浄体を取り付ける一方の電極をプラスとするアノード電気分解洗浄法で、電解液に前記のアルカリ溶液を用い、液温度を50℃として電流密度2A/dmの電気を40sec流した。
【0025】
実施例2は、カソード電気分解洗浄法を取り入れた洗浄、乾燥後のAuめっき被膜表面の残さをTOF−SIMSを用いて定量した。
Auめっき被膜形成後の洗浄工程は、実施例1と同様に行うようにした。
電気分解洗浄の条件は、被洗浄体を取り付ける一方の電極をマイナスとするカソード電気分解洗浄法で、電解液に前記の中性溶液を用い、液温度を30℃として電流密度2A/dmの電気を40sec流した。
【0026】
比較例として、従来の電気分解洗浄法を取り入れない水洗浄のみの洗浄、乾燥後のAuめっき被膜表面の残さをTOF−SIMSを用いて定量した。実施例1、実施例2、及び比較例の定量結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
本発明の実施例1、及び実施例2のAuを1とした時のCN、及びAuCの定量値は、従来の比較例の定量値より大幅に減少しており、効果が大きいことが確認できた。なお、Auめっき被膜表面側をプラスとするアノード電気分解洗浄法では、電気を流すとAuめっき被膜面でCNや、AuCが分解されて除去されるものと考えられる。また、Auめっき被膜表面側をマイナスとするカソード電気分解洗浄法では、電気を流すとAuめっき被膜面でHが発生し、このHがCNや、AuCを除去するものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の電子部品収納用セラミックパッケージは、各種半導体素子からなる電子部品を実装させて各種電子装置に用いることができる。また、本発明の電子部品収納用セラミックパッケージは、水晶振動子等からなる電子部品を実装させて携帯電話等に用いることができる。更に、本発明の電子部品収納用セラミックパッケージは、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子を実装させてパソコン等のバックライトや、一般照明用等に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(A)〜(C)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る電子部品収納用セラミックパッケージの上面側の平面図、下面側の平面図、A−A’線縦断面図である。
【図2】同電子部品収納用セラミックパッケージに電子部品を実装した後、マザーボード基板に接合した時の模式的断面図である。
【図3】同電子部品収納用セラミックパッケージの製造方法におけるAuめっき被膜形成後の洗浄工程図である。
【図4】同電子部品収納用セラミックパッケージの製造方法における電解洗浄の説明図である。
【図5】(A)〜(C)はそれぞれ従来の電子部品収納用セラミックパッケージの上面側の平面図、下面側の平面図、従来の電子部品収納用セラミックパッケージに電子部品を実装した後、マザーボード基板に接合した時の模式的断面図である。
【図6】従来の電子部品収納用セラミックパッケージの製造方法におけるAuめっき被膜形成後の洗浄工程図である。
【符号の説明】
【0031】
10:電子部品収納用セラミックパッケージ、11:セラミック基体、12:枠体、13:キャビティ部、14:接続端子パッド、15:外部接続端子パッド、16:メタライズ膜、17:Niめっき被膜、18:Auめっき被膜、19:電子部品、20:導電性接着剤、21:蓋体、22:マザーボード基板、23:配線回路パターン、24:半田、25:ラック、26:電解液、27:対極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性金属と接着樹脂の混合体からなる導電性接着材を介して電子部品を接合するための接続端子パッドと、半田を介して外部に接合するための外部接続端子パッドを有し、前記接続端子パッドと前記外部接続端子パッドの表面に電解めっき法で形成されるNiめっき被膜及びAuめっき被膜を有する電子部品収納用セラミックパッケージにおいて、
前記Auめっき被膜を飛行時間型二次イオン質量分析計で測定する前記Auめっき被膜の表面に付着するAuめっき浴液を構成する成分の残さの内のAuを1とした時のCNの定量値が2以下、AuCの定量値が0.5以下、アミン類の定量値が0.2以下であることを特徴とする電子部品収納用セラミックパッケージ。
【請求項2】
セラミック基材にメタライズ膜が形成され、該メタライズ膜にNiめっき被膜と、該Niめっき被膜にAuめっき被膜が形成されてなり、導電性金属と接着樹脂の混合体の導電性接着材を介して電子部品を接合するための接続端子パッドと、半田を介して外部に接合するための外部接続端子パッドを設ける電子部品収納用セラミックパッケージの製造方法において、
前記メタライズ膜にNiめっき浴中で通電して前記Niめっき被膜を形成した後、該Niめっき被膜の表面にAuめっき浴中で通電して前記Auめっき被膜を形成する工程と、
前記Auめっき被膜に付着する前記Auめっき浴液を第1の回収槽でシャワー水洗浄、及び第2の回収槽でディップ水洗浄した後、前記Auめっき被膜の表面を複数の水槽中に順次浸漬するディップ水洗浄を行う工程と、
前記Auめっき被膜の表面をアルカリ溶液、又は中性溶液中で電気分解洗浄した後、前記Auめっき被膜の表面を複数の水槽中に順次浸漬するディップ水洗浄を行う工程を有することを特徴とする電子部品収納用セラミックパッケージの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−281118(P2007−281118A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103837(P2006−103837)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(391039896)株式会社住友金属エレクトロデバイス (276)
【Fターム(参考)】