説明

電子部品素子搭載用基板及びその製造方法

【課題】材料コストが安く、しかもパッケージとした際に、薄型化が可能で、異物の発生を抑制可能な電子部品素子搭載用基板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基材14の一方の面が開放し他方の面が閉塞されて底部となる非貫通孔6と、この非貫通孔6の底部に設けられた電子部品素子搭載部12と、を有する配線基板2と、配線基板2の基材14の一方の面上に接着層4を介して配置され、電子部品素子搭載部12上に空隙部15を形成するスペーサ層3と、スペーサ層3上に接着層4を介して空隙部15を塞ぐように配置される蓋基板5と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品素子搭載用基板及びその製造方法に関し、特には、電子部品素子として、マイクロエレクトロメカニカルシステム(Micro Electro Mechanical Systems、以下「MEMS」という。)に用いるMEMS素子を搭載する電子部品素子搭載用基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品素子には、MEMS素子、IC(Integrated Circuit)素子、SAW(Surface Acoustic Wave)素子、PA(パワーアンプ)素子、LED(Light Emitting Diode)素子など、種々のものがあり、これらを搭載するための種々の電子部品素子搭載用基板が用いられている。また、近年、電子部品素子として、MEMSを利用したデバイスが開発されており、MEMS素子を搭載するための電子部品素子搭載用基板が種々提案されている。
【0003】
このような電子部品素子搭載用基板として、配線基板にザグリ加工やルーター加工、金型パンチング等でスペーサとなる開口を形成して、この開口内にMEMS素子を搭載し、これを覆うように、蓋体を接合した電子デバイス用のものが開示されている(特許文献1)。また、配線基板の上に電子部品を搭載し、スペーサが構成された封止キャップを用いて、電子部品を封止する実装構造体に用いるものが開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−209585号公報
【特許文献2】特開2007−042741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のように、ガラスエポキシ基板を用いた配線基板にザグリ加工でスペーサとなる開口を形成する場合は、材料コストが高いうえ、薄型化が図り難く、さらに基板端面から異物(加工くず)が発生する問題がある。また、特許文献2のように、配線基板に搭載した電子部品素子を封止する蓋体や封止キャップにスペーサを形成する方法は、蓋体や封止キャップを形成するために、スペーサを形成するめの加工を要し、また、蓋体や封止キャップを、個々に、配線基板に接合する必要があるため、コスト高になる問題がある。
【0006】
本願発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、材料や加工コストが安く、しかもパッケージとした際に、薄型化が可能で、異物の発生を抑制可能な電子部品素子搭載用基板及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下を特徴とする。
1. 基材の一方の面が開放し他方の面が閉塞されて底部となる非貫通孔と、この非貫通孔の底部に設けられた電子部品素子搭載部と、を有する配線基板と、前記配線基板の基材の一方の面上に接着層を介して配置され、前記電子部品素子搭載部上に空隙部を形成するスペーサ層と、前記スペーサ層上に接着層を介して前記空隙部を塞ぐように配置される蓋基板と、を有する電子部品素子搭載用基板。
2. 項1において、配線基板が、基材の一方の面に設けられた内部接続端子と、前記基材の他方の面に設けられた外部接続端子と、前記内部接続端子及び外部接続端子を電気的に接続する層間接続と、を有する電子部品素子搭載用基板。
3. 項1において、配線基板が、非貫通孔の底部に設けられた電子部品素子搭載部及び内部接続端子と、前記内部接続端子の裏面となる前記基材の他方の面に設けられた外部接続端子とを有する電子部品素子搭載用基板。
4. 項1から3の何れかにおいて、スペーサ層が補強材を有しない基材によって形成され、前記スペーサ層の開口が、レーザ加工により形成される電子部品素子搭載用基板。
5. 基材の一方の面が開放し他方の面が閉塞されて底部となる非貫通孔を有する配線基板を作製する工程と、前記配線基板の非貫通孔の底部に電子部品素子を搭載する工程と、前記配線基板の基材の一方の面上に接着層を介して配置され、前記電子部品素子上に空隙部を形成するようにスペーサ層を形成する工程と、前記スペーサ層上に接着層を介して前記空隙部を塞ぐように蓋基板を形成する工程と、を有する電子部品素子搭載用基板の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、材料や加工コストが安く、しかもパッケージとした際に、薄型化が可能で、異物の発生を抑制可能な電子部品素子搭載用基板及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態(実施例1)に係る電子部品素子搭載用基板の断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態(実施例2)に係る電子部品素子搭載用基板の断面図である。
【図3】本発明の 第1の実施形態(実施例1)及び第2の実施形態(実施例2)に係る電子部品素子パッケージ基板に用いるスペーサ層の製造工程を表すフロー図である。
【図4】本発明の第1の実施形態(実施例1)に係る電子部品素子パッケージ基板の製造工程を表すフロー図である。
【図5】本発明の第2の実施形態(実施例2)に係る電子部品素子パッケージ基板の製造工程を表すフロー図である。
【図6】従来の電子部品素子搭載用基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の電子部品素子搭載用基板は、電子部品素子を搭載するための基板である。本発明において、電子部品素子とは、MEMS素子、IC素子、SAW素子、PA素子、LED素子、MEMS素子等をいう。電子部品素子を、搭載する用途であれば、特に限定はないが、例えば、MEMS素子を搭載して、MEMSを利用したデバイスを形成するための部材として、主にマイクロフォン、圧力センサー、加速度センサー、角速度センサーなどのモジュールに用いられるのが望ましい。
【0011】
本発明の電子部品素子搭載用基板の第1の実施形態は、図1に示すように、基材14の一方の面が開放し他方の面が閉塞されて底部となる非貫通孔6と、この非貫通孔6の底部に設けられた電子部品素子搭載部12と、を有する配線基板2と、前記配線基板2の基材14の一方の面上に接着層4を介して配置され、前記電子部品素子搭載部12上に空隙部15を形成するスペーサ層3と、前記スペーサ層3上に接着層4を介して前記空隙部15を塞ぐように配置される蓋基板5と、を有し、前記配線基板2が、基材14の一方の面に設けられた内部接続端子7と、前記基材14の他方の面に設けられた外部接続端子8と、前記内部接続端子7及び外部接続端子8を電気的に接続する層間接続9と、を有する電子部品素子搭載用基板1である。
【0012】
本発明の電子部品素子搭載用基板の第1の実施形態によれば、非貫通孔の底部に電子部品素子搭載部を設けることにより、電子部品素子を基材の厚み内に収納することができるので、電子部品素子が配線基板上に出っ張らないため、電子部品素子搭載部上に空隙部を形成するのに設けるスペーサ層の厚みを薄くすることができ、蓋基板も含めた電子部品素子搭載用基板全体としての厚みを薄くすることができる。また、配線基板の基材に設けた非貫通孔内に電子部品素子を収納するので、電子部品素子を収納するための部材を別に用意したり、工程を追加する必要がないので、材料や加工コストを低減できる。さらに、スペーサ層は、接着層を介して配線基板上に配置されるので、材料選択の自由度が大きく、補強材を有しない基材を使用すれが、開口を形成する際に、加工がし易く、かつ基板端面から異物(加工くず)が発生するのを抑制できる。また、さらに、基材の電子部品搭部を含む非貫通孔内の全体をめっき等で被覆すると、非貫通孔内壁(基材端面)から異物や加工くず等が脱落するのを抑制できる。非貫通孔内を被覆するめっきは、基材に層間接続を形成する際のめっきと同時に行うことで工数を追加する必要がなく低コスト化を図ることができる。
【0013】
また、本発明の電子部品素子搭載用基板の第2の実施形態は、図2に示すように、基材14の一方の面が開放し他方の面が閉塞されて底部となる非貫通孔6と、この非貫通孔6の底部に設けられた電子部品素子搭載部12と、を有する配線基板2と、前記配線基板2の基材14の一方の面上に接着層4を介して配置され、前記電子部品素子搭載部12上に空隙部15を形成するスペーサ層3と、前記スペーサ層3上に接着層4を介して前記空隙部15を塞ぐように配置される蓋基板5と、を有し、前記配線基板2が、非貫通孔6の底部に設けられた電子部品素子搭載部12及び内部接続端子7と、前記内部接続端子7の裏面となる前記基材14の他方の面に設けられた外部接続端子8とを有する電子部品素子搭載用基板2である。
【0014】
本発明の電子部品素子搭載用基板の第2の実施形態によれば、配線基板の電子部品素子搭載部と内部接続端子が、何れも非貫通孔の底部に設けられ、内部接続端子の裏面が外部接続端子となるため、第1の実施形態の効果に加えて、配線基板が片面板(導体パターンを片面のみに有する配線基板)でよく、層間接続を要しないので、材料や加工コストをさらに低減できる。また、第1の実施形態と同様に、基材の電子部品搭部を含む非貫通孔内の全体をめっき等で被覆すると、非貫通孔内壁(基材端面)から異物や加工くず等が脱落するのを抑制できる。
【0015】
本発明において、配線基板とは、電子部品素子を搭載し、また電子部品素子を他の配線基板等と電気的に接続して機能させるための電気回路を構成するものである。本発明の配線基板は、基材の一方の面が開放し他方の面が閉塞されて底部となる非貫通孔と、この非貫通孔の底部に設けられた電子部品素子搭載部と、を有している。さらに、図1に示すように、配線基板2は、一方の面に設けられた内部接続端子7と他方の面に設けられた外部接続端子8とこれらの接続端子7、8同士を電気的に接続する層間接続9とを有してもよく、また、図2に示すように、配線基板2は、非貫通孔6の底部に設けられた電子部品素子搭載部12及び内部接続端子7と、内部接続端子7の裏面となる前記基材14の他方の面に設けられた外部接続端子8とを有してもよい(図2)。必要に応じて、内部接続端子や外部接続端子以外の導体パターンが形成され、また内層を有していてもよい。ガラスエポキシやガラスポリイミド等の有機基材、セラミックやガラス等の無機基材、等の配線基板に用いられる公知の材料を用い、公知の製法で形成することができる。
【0016】
非貫通孔とは、基材の厚み方向に設けられ、基材の一方の面が開放し他方の面が閉塞されて底部となる孔をいう。例えば、基材の一方の面から、他方の面の外層となる導体パターンに到るまでレーザ加工を行うことで形成できる。基材の両面に導体パターンを有する両面板やさらに内層に導体パターンを有する多層板を用いて非貫通孔を形成する場合は、例えば、いわゆるコンフォーマル工法を用い、基材のレーザ入射側の面(一方の面)の外層となる導体パターンに窓孔を形成し、これをレーザ光のマスクとして、反対面(他方の面)の外層となる導体パターンに到るまでレーザ加工を行うことで形成できる。
【0017】
非貫通孔を形成する他の方法としては、基材に接着層を仮接着した接着層付き基材を準備し、この接着層付き基材にドリル加工やレーザ加工で貫通孔を形成し、次に導体パターンを形成するための金属箔(例えば、銅箔)を、貫通孔を塞ぐように、接着層を介して基材に貼り合わせる方法が例示できる。
【0018】
電子部品素子搭載部とは、電子部品素子を搭載する部位をいい、非貫通孔の底部に設けられる。非貫通孔の底部は、外層となる導体パターンで形成されるので、非貫通孔の底部に電子部品素子搭載部を形成することにより、電子部品素子からの熱が、外層となる裏面の導体パターンから放熱されるので、放熱効率がよい。電子部品素子を電子部品素子搭載部に搭載するには、ダイボンド材を用いることができる。
【0019】
本発明において、内部接続端子とは、配線基板に搭載した電子部品素子を電気的に接続するための導体パターンをいう。内部接続端子は、配線基板において一般に用いられる、銅箔や銅めっき等の公知の材料を用い、エッチング等の公知の製法によって形成することができる。また、内部接続端子上には、内部接続端子を保護し、電子部品素子との電気的接続の際の接続信頼性を確保するための防錆処理や貴金属めっきを行ってもよい。内部接続端子と電子部品素子との電気的接続は、いわゆるフリップチップ接続やワイヤボンド接続等の公知の方法を用いることができる。
【0020】
外部接続端子とは、電子部品素子搭載用基板を、他の配線基板等に電気的に接続するための導体パターンをいう。外部接続端子は、配線基板において一般に用いられる、銅箔や銅めっき等の公知の材料を用い、エッチング等の公知の製法によって形成することができる。また、外部接続端子上には、内部接続端子を保護し、電子部品素子との電気的接続の際の接続信頼性を確保するための防錆処理や貴金属めっきを行ってもよい。
【0021】
内部接続端子と外部接続端子の配置としては、図1に示す第1の実施形態のように、内部接続端子7を基材14の一方の面に設け、外部接続端子8を基材14の他方の面に設ける方法がある。この場合は、内部接続端子7と外部接続端子8を電気的に接続する層間接続9を設けることにより、電子部品素子10と外部接続端子8とを電気的に接続することができる。また、図2に示す第2の実施形態のように、内部接続端子7を電子部品搭載部12と同様に、非貫通孔6の底部に設け、内部接続端子7の裏面となる基材14の他方の面に外部接続端子8を設けてもよい。この場合は、非貫通孔6の底部の内部接続端子7の裏面が外部接続端子8となっているため、第1の実施形態のように、層間接続9を設けなくても、電子部品素子10と外部接続端子8とを電気的に接続することができる。
【0022】
図2に示す第2の実施形態のように、内部接続端子7を電子部品搭載部12と同様に、非貫通孔6の底部に設け、内部接続端子7の裏面となる基材14の他方の面に外部接続端子8を設ける方法としては、上述したような、非貫通孔6を形成する際に用いる方法と同様に、一方の面から他方の面の外部接続端子8までレーザ加工する方法や、貫通孔を設けた接着層付き基材(図示しない。)に導体パターン用の金属箔(例えば、銅箔)を貼り合わせる方法が例示できる。
【0023】
層間接続とは、配線基板の異なる層の導体パターンを電気的に接続するものである。例えば、配線基板の一方の面に設けられた内部接続端子と他方の面に設けられた外部接続端子とを、電気的に接続するものである。配線基板に貫通孔や非貫通孔を設け、スルーホールめっきやフィルドビアめっきを行う等の、配線基板において公知の方法で形成することができる。
【0024】
スペーサ層とは、配線基板上に空隙部を形成するものである。例えば、シート状の基材に開口を形成することで作製することができる。基材としては、配線基板に用いられる基材であれば、特に限定はなく用いることができるが、補強材を有しない基材であれば、開口を形成した際にも、基材端面から補強材が脱落するのを抑制できるので好ましい。ここで補強材とは、基材の機械的強度を向上させるために用いられるものをいい、ガラス繊維等が挙げられる。このような補強材を有しない基材として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、液晶ポリマー等が挙げられる。特に、ポリエチレンテレフタレートを用いた場合は、材料コストが安く、レーザ加工性がよいので開口をレーザで形成した場合に、開口の基材端面からの異物(レーザ加工くず)の発生を抑制できるので好ましい。ポリイミド、液晶ポリマーを用いた場合は、レーザ加工性がよいことに加えて、リフロー耐熱性を有するので好ましい。また、スペーサ層は、接着層を介して配線基板上に配置される。
【0025】
スペーサ層に設けられる開口は、配線基板上に配置された際に、空隙部を形成するものである。開口がレーザ加工により形成されると、開口の基材端面からの異物(加工くず)の発生が、ルータ加工や打ち抜き加工に比べて抑制される点で好ましい。開口の大きさや形状は、限定されるものではなく、スペーサ内に搭載する電子部品素子のサイズや形状、電子部品素子の搭載方法、その他の設計条件に応じて形成することができる。例えば、開口の形状が円形の場合、開口の大きさは、直径0.05〜5.0mm程度とすることができる。開口の形状が四角形の場合、開口の大きさは、縦・横ともに、0.05〜5.0mm程度とすることができる。
【0026】
スペーサ層の厚みは、非貫通孔の底部に搭載する電子部品素子の厚み、ワイヤボンディングに用いるワイヤの高さ、その他の設計条件に応じて設定することができる。電子部品素子の全体が、非貫通孔内に収納される場合は、電子部品素子の厚みは考慮しなくてもよく、ワイヤボンディングのワイヤの高さだけを考慮すればよいので、スペーサ層の厚みは、電子部品素子を配線基板上に搭載する場合に比べて大幅に薄くすることが可能であり、例えば、0.20〜0.8mm程度とすることができる。
【0027】
空隙部とは、配線基板の一方の面の上方に形成されて、電子部品素子やワイヤボンディングのワイヤを収納するものである。上述したように、開口を設けたスペーサ層を配線基板上に配置することで形成することができる。空隙部は、電子部品素子搭載部上(即ち、電子部品素子を収納した非貫通孔上)に設けられることで、電子部品素子やワイヤボンディングのワイヤを収納することができる。ワイヤボンディングのワイヤを収納するためには、電子部品素子搭載部及び内部接続端子の上に空隙部を形成する。
【0028】
接着層とは、配線基板とスペーサ層、及び、スペーサ層と蓋基板とを、それぞれ貼り合せるものである。接着層を形成する材料としては、一般の配線基板において、多層化接着等に使用されているもの等を使用することができるが、スペーサ層と貼り合せた状態で、レーザ加工することを考慮すると、補強材を有しないものが好ましい。例えば、高分子量エポキシ樹脂を主成分とする接着シート等を使用することができ、このような接着シートとしては、AS−3000、AS−2600(何れも日立化成工業株式会社製、商品名)等が例示できる。
【0029】
接着層は、スペーサ層の両面に仮接着し、スペーサ層と両面の接着層に同時に、空隙部となる開口を形成するのが好ましい。これにより、不要な箇所の接着層を除去することができ、また、その後、電子部品素子を搭載した配線基板とスペーサ層と蓋基板とをこの順番に配置し、本接着する方法により、電子部品素子搭載用基板を形成できる。ここで、仮接着とは、接着層が半硬化状態で接着し、まだ接着機能を有している状態をいう。例えば、AS−3000、AS−2600(何れも日立化成工業株式会社製、商品名)のような高分子量エポキシ樹脂を主成分とする接着シートを用いた場合、熱プレス装置を用い、例えば、160℃、5.0MPa、90分の条件で、仮接着することができる。本硬化とは、接着層が完全に硬化した状態で接着した状態をいう。上記接着シートを用いた場合、熱プレス装置を用いて、例えば、220℃、5.0MPa、120分の条件で、本接着することができる。接着層の厚みは、特に限定はないが、一般に、10〜150μm程度のものが用いられる。
【0030】
蓋基板とは、スペーサ層に設けた開口を塞ぐように、スペーサ層上に配置される基板をいう。蓋基板を形成する材料としては、配線基板に用いられるガラスエポキシやガラスポリイミド、ポリエチンレンテレフタレート等の有機基材、セラミックやガラス等の無機基材、等の配線基板に用いられる公知の材料を用い、公知の製法で形成することができる。MEMSを利用したデバイスが、マイクロフォン等の場合は、蓋基板に、貫通孔を設けるが、この場合は、貫通孔の基板端面から異物が発生するのを抑制するため、基材としては、スペーサ層と同様に、補強材を有しない基材を用いるのが好ましい。このような基材として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、液晶ポリマー等が挙げられる。貫通孔のサイズや形状は、MEMSを利用したデバイスの設計により選択される。MEMSを利用したデバイスが、マイクロフォンの場合は、一般に直径0.05〜5.0mmの円形である。貫通孔はレーザ加工で形成されるのが、貫通孔の基材端面からの異物発生を抑制する点で好ましい。また、蓋基板は、接着層を介してスペーサ層上に配置される。接着層としては、配線基板とスペーサ層との接着に用いたものと同様のものを使用できる。蓋基板の厚みは、種々の設計条件に応じて設定することができる。例えば、MEMSを利用したデバイスが、マイクロフォンの場合は、0.025〜0.20mm程度とする。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、本実施例に限定されない。
【0032】
<実施例1>
(蓋基板の準備)
蓋基板として、補強材を有しない基材である、厚さ0.10mmで、長さ500mm、幅400mmのPET(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名:テイジンテトロンフィルム、「テイジン」及び「テトロン」は登録商標)を準備した。この蓋基板に、炭酸ガスレーザを用いて、直径0.5mmの貫通孔を形成した。
【0033】
(スペーサ層の作製)
図3(A)に示すように、補強材を有しない基材13として、厚さ0.30mmで、長さ500mm、幅400mmのPET(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名:テイジンテトロンフィルム、「テイジン」及び「テトロン」は登録商標)を準備した。
【0034】
図3(B)に示すように、接着層4として、厚さ30μmで、長さ500mm、幅400mmのAS2600(日立化成工業株式会社製、商品名)を準備し、補強材を有しない基材であるPETの両面に仮接着した。仮接着は、熱プレス装置を用い、160℃、5.0MPa、90分の条件で行った。
【0035】
図3(C)に示すように、両面に接着層4を仮接着したPETに、炭酸ガスレーザを用いて、空隙部15となる開口11を形成した。開口11の大きき・形状は、直径2.0mmとした。
【0036】
(配線基板の作製)
配線基板用の材料として、厚さ18μmの銅箔を張り合わせた、絶縁樹脂層の公称厚さ0.1mm、長さ500mm、幅400mmのガラスエポキシ製の両面銅張積層板である、MCL−E−679FG(日立化成工業株式会社製、商品名、「MCL」は登録商標。)を準備した。この両面銅張積層板の一方の面の銅箔にエッチングで窓孔を形成し、レーザ加工で、層間接続となる直径0.1mmの非貫通孔、及び底部が電子部品素子搭載部となる直径0.5mmの非貫通孔を形成し、過マンガン酸カリウム処理によるスミア除去を施した。次いで、ドライフィルムNIT225(ニチゴー・モートン株式会社製、商品名)をラミネータで仮圧着し、フィルム状のフォトマスクマスクを貼り合わせて露光量140mJ/cmの紫外線で両面に、導体パターンを焼付け、0.9質量%炭酸ナトリウム水溶液で現像して、底部が電子部品素子搭載部となる非貫通孔の開放側(一方の面)を覆うように、めっきレジストを形成した。次いで約1μmの無電解銅めっきを施し、さらにこの無電解銅めっきを給電層として、電解めっきでフィルドアめっきを形成した。めっきレジストを除去した後、ドライフィルムNIT225(ニチゴー・モートン株式会社製、商品名)をラミネータで仮圧着し、フィルム状のフォトマスクマスクを貼り合わせて露光量140mJ/cmの紫外線で両面に、導体パターンを焼付け、0.9質量%炭酸ナトリウム水溶液で現像してエッチングレジストを形成した。このとき、電子部品素子搭載部となる非貫通孔の開放側(一方の面)を覆うように、エッチングレジストが形成されている。次いで、エッチングレジストのない部分を塩化銅エッチング液でエッチング除去して、内部接続端子、外部接続端子等となる導体パターンを形成した。このとき、エッチングレジストで覆われた非貫通孔の底部には電子部品素子搭載部となる導体パターンが形成されている。その後、図4(A)に示すように、電子部品搭載部12に電子部品素子10をダイボンド材(図示しない。)を用いて搭載し、ワイヤボンド用のワイヤ17で、電子部品素子10と内部接続端子7とを電気的に接続した。
【0037】
(電子部品素子搭載用基板の作製)
図4(B)に示すように、電子部品素子10を搭載した配線基板2上に、先に準備した開口11を形成したスペーサ層3と、蓋基板5とをこの順番に配置し、熱プレス装置を用いて、220℃、5.0MPs、120分の条件で、本接着を行い、図4(C)に示す電子部品素子搭載用基板1を得た。
【0038】
<実施例2>
(蓋基板の準備)
実施例1と同様にして蓋基板を準備した。
【0039】
(スペーサ層の作製)
図3(A)に示すように、補強材を有しない基材13として、厚さ0.30mmで、長さ500mm、幅400mmのPET(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名:テイジンテトロンフィルム、「テイジン」及び「テトロン」は登録商標)を準備した。
【0040】
図3(B)に示すように、接着層4として、厚さ20μmで、長さ500mm、幅400mmのAS2600(日立化成工業株式会社製、商品名)を準備し、補強材を有しない基材13であるPETの両面に仮接着した。仮接着は、熱プレス装置を用い、160℃、5.0MPa、90分の条件で行った。
【0041】
図3(C)に示すように、両面に接着層4を仮接着したPETに、炭酸ガスレーザを用いて、空隙部15となる開口11を形成した。開口11の大きき・形状は、直径2.0mmとした。
【0042】
(配線基板の作製)
配線基板用の材料として、厚さ18μmの銅箔を張り合わせた、絶縁樹脂層の公称厚さ0.1mm、長さ500mm、幅400mmのガラスエポキシ製の両面銅張積層板である、MCL−E−679FG(日立化成工業株式会社製、商品名)を準備した。この両面銅張積層板の片面のみに、ドライフィルムNIT225(ニチゴー・モートン株式会社製、商品名)をラミネータで仮圧着し、フィルム状のフォトマスクマスクを貼り合わせて露光量140mJ/cmの紫外線で両面に、導体パターンを焼付け、0.9質量%炭酸ナトリウム水溶液で現像してエッチングレジストを形成した。つまり、このとき、両面銅張積層板の片面(他方の面)のみに、エッチングレジストが形成されている。次いで、エッチングレジストのない部分を塩化銅エッチング液でエッチング除去して、外部接続端子(裏面が内部接続端子となる。)、裏面が電子部品素子搭載部等となる導体パターンを形成した。このとき、両面銅張積層板の片面(一方の面)の銅箔は全面エッチングされ、他方の面のみに上記の導体パターンが形成されている。この片面板の一方の面から、レーザ加工で、底部が内部接続端子となる直径0.1mmの非貫通孔、及び底部が電子部品素子搭載部となる直径0.5mmの非貫通孔を形成し、過マンガン酸カリウム処理によるスミア除去を施した。このとき、直径0.1mmの非貫通孔の底部には内部接続端子が、直径0.5mmの非貫通孔の底部には電子部品素子搭載部が形成されている。その後、図5(A)に示すように、電子部品搭載部12に電子部品素子10をダイボンド材(図示しない。)を用いて搭載し、ワイヤボンド用のワイヤ17で、電子部品素子10と内部接続端子7とを電気的に接続した。
【0043】
(電子部品素子搭載用基板の作製)
図5(B)に示すように、電子部品素子10を搭載した配線基板2上に、先に準備した開口11を形成したスペーサ層3と、蓋基板5とをこの順番に配置し、熱プレス装置を用いて、220℃、5.0MPs、120分の条件で、本接着を行い、図5(C)に示す電子部品素子搭載用基板1を得た。
【0044】
<比較例>
以下、比較例を説明する。
【0045】
(蓋基板の準備)
蓋基板として、厚さ18μmの銅箔を張り合わせた、絶縁樹脂層の公称厚さ0.10mm、長さ500mm、幅400mmのガラスエポキシ製の両面銅張積層板である、MCL−E−679FG(日立化成工業株式会社製、商品名)を準備した。この両面銅張積層板の銅箔をエッチング除去した後、直径0.5mmの貫通孔を形成した。貫通孔の形成は、レーザ加工では加工性が悪いため、ドリルを用いて行った。
【0046】
(スペーサ層の作製)
スペーサ層用の基材として、厚さ18μmの銅箔を張り合わせた、絶縁樹脂層の公称厚さ0.50mm、長さ500mm、幅400mmのガラスエポキシ製の両面銅張積層板である、MCL−E−679FG(日立化成工業株式会社製、商品名)を準備した。この両面銅張積層板の銅箔をエッチング除去した後、実施例と同様の接着層を準備し、実施例1、2と同様にして接着層を仮接着した。その後、実施例1、2と同様にして、空隙部となる開口を形成した。開口の形成は、レーザ加工では加工性が悪いため、ドリルを用いて行った。
【0047】
(配線基板の作製)
配線基板用の材料として、厚さ18μmの銅箔を張り合わせた、絶縁樹脂層の公称厚さ0.1mm、長さ500mm、幅400mmのガラスエポキシ製の両面銅張積層板である、MCL−E−679FG(日立化成工業株式会社製、商品名)を準備した。この両面銅張積層板の一方の面の銅箔にエッチングで窓孔を形成し、レーザ加工で直径0.1mmの層間接続となる非貫通孔を形成し、過マンガン酸カリウム処理によるスミア除去を施した。このとき、実施例1、2とは異なり、底部が電子部品素子搭載部となる非貫通孔や底部が内部接続端子となる非貫通孔は形成せず、層間接続となる非貫通孔のみを形成した。次いで約1μmの無電解銅めっきを施し、さらにこの無電解銅めっきを給電層として、電解めっきでフィルドアめっきを形成した。ドライフィルムNIT225(ニチゴー・モートン株式会社製、商品名)をラミネータで仮圧着し、フィルム状のフォトマスクマスクを貼り合わせて露光量140mJ/cmの紫外線で両面に、導体パターンを焼付け、0.9質量%炭酸ナトリウム水溶液で現像してエッチングレジストを形成した。次いで、エッチングレジストのない部分を塩化銅エッチング液でエッチング除去して、内部接続端子、外部接続端子及び電子部品搭載部等となる導体パターンを形成した。このとき、実施例1、2とは異なり、内部接続端子及び電子部品素子搭載部は基材の一方の面上に形成されている。その後、電子部品搭載部に電子部品をダイボンド材を用いて搭載し、ワイヤボンドで、電子部品と内部接続端子とを電気的に接続した。
【0048】
(電子部品素子搭載用基板の作製)
実施例1、2と同様にして、電子部品素子を搭載した配線基板上に、先に準備した開口を形成したキャビティ層と、蓋基板とをこの順番に配置し、熱プレス装置を用いて、220℃、5.0MPs、120分の条件で、本接着を行い、図6に示す電子部品素子搭載用基板1を得た。
【0049】
実施例1、2の電子部品素子搭載用基板は、非貫通孔の底部に電子部品素子搭載部を設けることにより、電子部品素子を基材の厚み内に収納することができるので、電子部品素子搭載用基板全体としての厚みを薄くすることができた。スペーサ層と蓋基板が比較的材料コストの安いPETを用いて構成しており、また、スペーサ層の開口や蓋基板の貫通孔をレーザ加工で加工できるので加工コストも比較的安価にすることができた。さらに、スペーサ層の開口及び蓋基板の貫通孔の何れの基材端面からも異物の発生は認められなかった。特に、実施例2では、配線基板の電子部品素子搭載部と内部接続端子が、何れも非貫通孔の底部に設けられ、内部接続端子の裏面が外部接続端子となるため、配線基板が片面板(導体パターンを片面のみに有する配線基板)でよく、層間接続を要しないので、材料や加工コストをさらに低減できた。一方、比較例では、電子部品素子搭載部が基材の一方の面上に設けられるので、電子部品素子が基材の上方に出っ張るため、その分、スペーサ層を厚くする必要があり、電子部品素子搭載用基板としての厚みを比較的厚くする必要があった。また、スペーサ層と蓋基板が材料コストの比較的高いガラスエポキシ基材を用いて構成しており、また、スペーサ層の開口や蓋基板の貫通孔をドリルで加工する必要があるので、加工コストも比較的高くなった。さらに、スペーサ層の開口及び蓋基板の貫通孔の何れの基材端面からも異物の発生が認められた。
【符号の説明】
【0050】
1.電子部品素子搭載用基板
2.配線基板
3.スペーサ層
4.接着層
5.蓋基板
6.非貫通孔
7.内部接続端子
8.外部接続端子
9.層間接続
10.電子部品素子
11.開口
12.電子部品素子搭載部
13.補強材を有しない基材
14.基材
15.空隙部
16.貫通孔
17.ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面が開放し他方の面が閉塞されて底部となる非貫通孔と、この非貫通孔の底部に設けられた電子部品素子搭載部と、を有する配線基板と、
前記配線基板の基材の一方の面上に接着層を介して配置され、前記電子部品素子搭載部上に空隙部を形成するスペーサ層と、
前記スペーサ層上に接着層を介して前記空隙部を塞ぐように配置される蓋基板と、
を有する電子部品素子搭載用基板。
【請求項2】
請求項1において、
配線基板が、基材の一方の面に設けられた内部接続端子と、前記基材の他方の面に設けられた外部接続端子と、前記内部接続端子及び外部接続端子を電気的に接続する層間接続と、を有する電子部品素子搭載用基板。
【請求項3】
請求項1において、
配線基板が、非貫通孔の底部に設けられた電子部品素子搭載部及び内部接続端子と、前記内部接続端子の裏面となる前記基材の他方の面に設けられた外部接続端子とを有する電子部品素子搭載用基板。
【請求項4】
請求項1から3の何れかにおいて、スペーサ層が補強材を有しない基材によって形成され、前記スペーサ層の開口が、レーザ加工により形成される電子部品素子搭載用基板。
【請求項5】
基材の一方の面が開放し他方の面が閉塞されて底部となる非貫通孔を有する配線基板を作製する工程と、
前記配線基板の非貫通孔の底部に電子部品素子を搭載する工程と、
前記配線基板の基材の一方の面上に接着層を介して配置され、前記電子部品素子上に空隙部を形成するようにスペーサ層を形成する工程と、
前記スペーサ層上に接着層を介して前記空隙部を塞ぐように蓋基板を形成する工程と、
を有する電子部品素子搭載用基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−74152(P2013−74152A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212563(P2011−212563)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】