電極接合構造体及び電極接合方法
【課題】絶縁性接着剤樹脂に含まれる低分子成分に起因するマイグレーション不良の発生を抑えて、隣接配線電極間の狭ピッチ化に対応することができる電極接合構造体及び電極接合方法を提供する。
【解決手段】複数の第1の電極を有する第1の回路形成体と、それぞれの第1の電極に対向して配置された複数の第2の電極を有する第2の回路形成体と、第1の回路形成体と第2の回路形成体との対向領域に配置されて両者を接合する第1の絶縁性接着剤樹脂と、対向領域の縁部に隣接する外側領域において互いに隣接する第2の電極間に配置されて、第1の絶縁性接着剤樹脂が互いに隣接する第2の電極のそれぞれに接触することを妨げる第2の絶縁性接着剤樹脂とを備える。
【解決手段】複数の第1の電極を有する第1の回路形成体と、それぞれの第1の電極に対向して配置された複数の第2の電極を有する第2の回路形成体と、第1の回路形成体と第2の回路形成体との対向領域に配置されて両者を接合する第1の絶縁性接着剤樹脂と、対向領域の縁部に隣接する外側領域において互いに隣接する第2の電極間に配置されて、第1の絶縁性接着剤樹脂が互いに隣接する第2の電極のそれぞれに接触することを妨げる第2の絶縁性接着剤樹脂とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路形成体の電極に他の回路形成体の電極を絶縁性接着剤樹脂を用いて接合する電極接合構造体及び電極接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス基板やフレキシブル基板等の回路形成体の電極に、他のガラス基板やフレキシブル基板、あるいは電子部品等の回路形成体の電極を電気的に接合する技術として、導電性粒子が分散された絶縁性接着剤樹脂、例えば異方性導電性シートを用いる技術が知られている。この技術は、接合対象となる電極間に異方性導電性シートを配置し、回路形成体を介して異方性導電性シートを圧着ツールで加圧加熱することで、上記絶縁性接着剤樹脂を溶融(軟化)させて、導電性粒子を介して電極間を導通させる技術である。
【0003】
この異方性導電性シートを用いる電極接合技術は、様々な形態の電極接合に適応可能であり、例えば、ガラス基板とフレキシブル基板との電極接合(FOG)、ガラス基板とICチップ部品との電極接合(COG)、フレキシブル基板とICチップ部品との電極接合(COF)、プリント配線基板とICチップ部品との電極接合、フレキシブル基板とフレキシブル基板との電極接合、フレキシブル基板とプリント配線基板との電極接合等、幅広く適用されている。
【0004】
近年、例えばガラス基板とフレキシブル基板との電極接合に代表されるフラットパネルの接合技術においては、電極間に高電圧が印加されるときの信頼性の確保とともに、電子機器の高密度化に伴って隣接配線電極間の更なる狭ピッチ化(微細化)が求められている。具体的には、その隣接配線電極間のピッチは、従来求められていた300μm〜200μmから、200μm〜100μm以下まで狭ピッチ化することが求められている。また、例えばガラス基板とICチップ部品との電極接合やフレキシブル基板とICチップ部品との電極接合等の、ICチップ部品をフェイスダウン方式で接合する技術においても、同様に、多機能化に伴いバンプ電極間の更なる狭ピッチ化(微細化)が求められている。具体的には、それらの隣接配線電極間のピッチは、従来求められていた120μm〜80μmから、80μm〜40μm以下まで狭ピッチ化することが求められている。
【0005】
上記のレベルまで隣接配線電極間の狭ピッチ化が進むと、異方性導電性シートを用いる電極接合技術においては、マイグレーション不良やショート不良等による絶縁信頼性に対する不具合を生じる可能性が高くなる。特に、電極の材料として銀を使用した場合には、銀がイオン化傾向の大きい物質であるため、マイグレーション不良が発生しやすい。
【0006】
マイグレーション不良が発生する主な要因としては、一般に以下の4つが知られている。
(1)電極接合部の隙間から電極への吸水
(2)強電界強度によるイオン伝導
(3)空気中に飛散する異物の混入
(4)電極接合材料(例えば絶縁性接着剤樹脂)中に含まれる異物、不純物、及び洗浄残渣
【0007】
上記(1)の電極接合部の隙間は、例えば、対向配置された電極同士を熱硬化性の絶縁性接着剤樹脂を用いて電極接合する場合において、当該樹脂を加圧加熱して硬化させた際に生じる当該樹脂の体積変化や、当該樹脂と基板との密着不足などによって形成される。上記隙間は、特に2つの基板間の対向領域の縁部に隣接する外側領域において発生しやすい。
【0008】
上記(1)に起因するマイグレーション不良を抑制する技術としては、例えば、特許文献1(特開平3−184077号公報)に開示された技術が知られている。特許文献1では、2つの基板間に熱硬化性の絶縁性接着剤樹脂を配置したのち当該樹脂を加圧加熱して硬化させ、その際に2つの基板間の対向領域の縁部に隣接する外側領域に生じた隙間に、防湿性の樹脂を充填する。この防湿性の樹脂により電極への吸水経路を断ち、マイグレーション不良を抑制している。
【特許文献1】特開平3−184077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記マイグレーション不良の発生要因のうち、特に(4)については、隣接配線電極間が狭ピッチ化される前までは、それ程問題となることはなかった。このため、上記特許文献1のように上記(1)に起因するマイグレーション不良を抑制することで十分な効果があった。しかしながら、隣接配線電極間の狭ピッチ化が進めば進むほど、上記(4)に起因するマイグレーション不良が発生する恐れが高くなる。このため、上記特許文献1の技術では、上記(4)に起因するマイグレーション不良の発生を抑えることができず、隣接配線電極間の狭ピッチ化に対応することは困難である。このことにつき、図12A〜図12Dを用いて、以下に詳しく説明する。
【0010】
図12A及び図12Bは、従来例の電極接合方法を模式的に示す断面図である。図12Cは、図12Bのx−x断面図であり、図12Dは、図12Bのy−y断面図である。ここでは、フラットパネルの端子部の接合構造であるガラス基板とフレキシブル基板の接合構造を例にとって説明する。
【0011】
まず、図12Aに示すように、複数の第1の電極104Aを有するガラス基板104と、それぞれの第1の電極104Aと対向するように形成された複数の第2の電極105Aを有するフレキシブル基板105との対向領域100Xに、異方性導電性シート101を配置する。
【0012】
この後、圧着ツール106によりフレキシブル基板105を介して異方性導電性シート101を加圧加熱する。これにより、異方性導電性シート101の絶縁性接着剤樹脂102が溶融して、図12Bに示すように、対向領域100Xの縁部に隣接する外側領域100Yまで流動して硬化する。このとき、絶縁性接着剤樹脂102中に分散された導電性粒子103が、図12Cに示すように第1の電極104Aと第2の電極105Aとの間に配置されて両者を電気的に接合する。
【0013】
このような従来例の電極接合方法に用いる絶縁性接着剤樹脂102は、一般的に以下のような材料組成を有する。すなわち、絶縁性接着剤樹脂102は、基板間を接着させるための高分子成分を含む固形エポキシ樹脂と、加圧加熱された際に上記固定エポキシ樹脂の溶融及び流動を促進させるための低分子成分を含む液状エポキシ樹脂と、固形及び液状エポキシ樹脂を熱硬化させる為の硬化剤と、樹脂をシート化する為のシート化溶剤と、その他エラストマーやカップリング剤、イオン交換体などで構成されている。
【0014】
上記材料組成のうちの液状エポキシ樹脂中の低分子成分は、絶縁性接着剤樹脂102が加圧加熱された際、絶縁性接着剤樹脂102の流動に伴って他の成分から分離する性質を有する。分離した低分子成分は、特に、外側領域100Yにおいて互いに隣接する第1の電極104A間で凝集し、図12B及び図12Dに示す低分子成分残渣107となる。隣接配線電極間のピッチ100P(図12C参照)が小さくなるほど、低分子成分残渣107が互いに隣接する第1の電極104A,104A間をつなぎやすくなる。この低分子成分残渣107は、樹脂の濡れ性を阻害するだけでなく、ガス化して膨張し、樹脂の架橋時に他の成分に取り込まれずに、電極中の金属イオンの移動媒体となる恐れがある。このため、低分子成分残渣107により、絶縁性接着剤樹脂102とガラス基板104との密着性が低下し、マイグレーション不良が発生しやすくなる。
【0015】
この低分子成分残渣107に起因するマイグレーション不良においては、上記特許文献1の技術(すなわち、上記加圧加熱により絶縁性接着剤樹脂102が硬化したのちにその硬化により生じた隙間に防湿性の樹脂を充填する方法)により解決することは困難である。
【0016】
また、低分子成分残渣107に起因するマイグレーション不良の発生を抑える他の方法としては、単純には、液状エポキシ樹脂中の低分子成分の成分量を低減(カット)することが考えられる。しかしながら、低分子成分の成分量を低減した場合には、その分、加圧加熱した際の絶縁性接着剤樹脂102の流動性が悪くなる。このため、ガラス基板104と絶縁性接着剤樹脂102、又はフレキシブル基板105と絶縁性接着剤樹脂102との密着性が低下するといった別の問題を生じる恐れがある。
【0017】
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、回路形成体の電極に他の回路形成体の電極を絶縁性接着剤樹脂を用いて接合する電極接合において、絶縁性接着剤樹脂に含まれる低分子成分に起因するマイグレーション不良の発生を抑えて、隣接配線電極間の狭ピッチ化に対応することができる電極接合構造体及び電極接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、複数の第1の電極を有する第1の回路形成体と、
上記それぞれの第1の電極に対向して配置された複数の第2の電極を有する第2の回路形成体と、
上記第1の回路形成体と上記第2の回路形成体との対向領域に配置されて両者を接合する第1の絶縁性接着剤樹脂と、
上記対向領域の縁部に隣接する外側領域において互いに隣接する上記第1の電極間に配置されて、上記第1の絶縁性接着剤樹脂が上記互いに隣接する第1の電極のそれぞれに接触することを妨げる第2の絶縁性接着剤樹脂と、
を備える、電極接合構造体を提供する。
【0019】
本発明の第2態様によれば、上記第2の絶縁性接着剤樹脂は、上記外側領域において上記それぞれの第1の電極を封止するように配置されている、第1態様に記載の電極接合構造体を提供する。
【0020】
本発明の第3態様によれば、上記第2の絶縁性接着剤樹脂は、上記第1の絶縁性接着剤樹脂よりも低分子成分が少ない、第1又は2態様に記載の電極接合構造体を提供する。
【0021】
本発明の第4態様によれば、上記第2の絶縁性接着剤樹脂は、上記互いに隣接する第1の電極間に位置する部分が第1の電極上に位置する部分よりも上記対向領域の内側に位置するように、エッジが波形形状に形成されている、第2態様に記載の電極接合構造体を提供する。
【0022】
本発明の第5態様によれば、上記第2の絶縁性接着剤樹脂は、上記互いに隣接する第1の電極間において上記外側領域から上記対向領域の縁部にわたって延在するように配置されている、第1〜4態様のいずれか1つに記載の電極接合構造体を提供する。
【0023】
本発明の第6態様によれば、上記第2の絶縁性接着剤樹脂の高さは、上記第1の電極の高さと上記導電性粒子の高さと上記第2の電極の高さとを合計した高さよりも低い、第1〜5態様のいずれか1つに記載の電極接合構造体を提供する。
【0024】
本発明の第7態様によれば、さらに、上記第1の絶縁性接着剤樹脂中に分散され、上記それぞれの第1の電極とそれらに対向する上記それぞれの第2の電極とを電気的に接続する導電性粒子を備える、第1〜6態様のいずれか1つに記載の電極接合構造体を提供する。
【0025】
本発明の第8態様によれば、上記それぞれの第1の電極は、銀で形成されている、第1〜7態様のいずれか1つに記載の電極接合構造体を提供する。
【0026】
本発明の第9態様によれば、さらに、上記第1及び第2の絶縁性接着剤樹脂が外部に露出しないように覆い隠す絶縁性封止樹脂を備える、第1〜8様態のいずれか1つに記載の電極接合構造体を提供する。
【0027】
本発明の第10態様によれば、複数の第1の電極を有する第1の回路形成体と、上記それぞれの第1の電極に対向するように形成された複数の第2の電極を有する第2の回路成形体との対向領域の縁部に外側で隣接する外側領域において、互いに隣接する上記第1の電極間に硬化又は半硬化状態の第2の絶縁性接着剤樹脂を配置し、
上記対向領域の上記縁部より内側に第1の絶縁性接着剤樹脂を配置し、
上記第1又は第2の回路形成体を介して上記第1の絶縁性接着剤樹脂を加圧加熱して流動させ、上記第2の絶縁性接着剤樹脂と接触した状態で上記第1の絶縁性接着剤樹脂を硬化させて、当該硬化させた第1の絶縁性接着剤樹脂により上記第1の回路形成体と上記第2の回路形成体とを接合する、電極接合方法を提供する。
【0028】
本発明の第11態様によれば、上記第2の絶縁性接着剤樹脂は、熱硬化性の樹脂又は光硬化性の樹脂であり、
上記第2の絶縁性接着剤樹脂を上記互いに隣接する第1の電極間に配置したのち、加熱又は光を照射することにより、上記互いに隣接する第1の電極間に硬化又は半硬化状態の上記第2の絶縁性接着剤樹脂を配置する、第10態様に記載の電極接合方法を提供する。
【0029】
本発明の第12態様によれば、上記第1の絶縁性接着剤樹脂内には、多数の導電性粒子が分散されており、
上記第1の絶縁性接着剤樹脂の上記加圧加熱により、上記それぞれの第1の電極とそれらに対向する上記それぞれの第2の電極とを上記導電性粒子を介して電気的に接合する、第10又は11態様に記載の電極接合方法を提供する。
【0030】
本発明の第13態様によれば、上記第1の絶縁性接着剤樹脂は、上記加圧加熱前においてはシート状である、第12態様に記載の電極接合方法を提供する。
【0031】
本発明の第14態様によれば、上記第1及び第2の絶縁性接着剤樹脂を加圧加熱して硬化させたのち、上記第1及び第2の絶縁性接着剤樹脂が外部に露出しないように絶縁性封止樹脂により覆い隠す、第10〜13態様のいずれか1つに記載の電極接合方法を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明の電極接合構造体によれば、第1の絶縁性接着剤樹脂が互いに隣接する第1の電極のそれぞれに接触することを妨げる第2の絶縁性接着剤樹脂を備えている。これにより、第1の絶縁性接着剤樹脂中の低分子成分の残渣が第1の回路成形体に付着して互いに隣接する第1の電極間をつなぐことを防止することができる。したがって、絶縁性接着剤樹脂に含まれる低分子成分に起因するマイグレーション不良の発生を抑えて、隣接配線電極間の狭ピッチ化に対応することができる。
【0033】
また、本発明の電極接合構造体によれば、上記外側領域において互いに隣接する第1の電極間に配置する樹脂を、絶縁性を有する樹脂としているので、吸水しやすい電極端部の絶縁を強化する効果も得ることができる。
【0034】
本発明の電極接合方法によれば、上記外側領域において互いに隣接する第1の電極間に硬化又は半硬化状態の第2の絶縁性接着剤樹脂を配置したのち、第1及び第2の回路形成体間に第1の絶縁性接着剤樹脂を配置し加圧加熱して、第1の回路形成体と第2の回路形成体とを接合するようにしている。すなわち、第1の絶縁性接着剤樹脂を加圧加熱する前に、第1の絶縁性接着剤樹脂中の低分子成分の残渣がマイグレーション不良を発生させる恐れのある位置に、あらかじめ第2の絶縁性接着剤樹脂を配置している。これにより、第1の絶縁性接着剤樹脂中の低分子成分残渣が第1の回路成形体に付着して互いに隣接する第1の電極間をつなぐことを防止することができる。したがって、絶縁性接着剤樹脂に含まれる低分子成分に起因するマイグレーション不良の発生を抑えて、隣接配線電極間の狭ピッチ化に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の記述を続ける前に、添付図面において同じ部品については同じ参照符号を付している。
以下、本発明の最良の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0036】
《第1実施形態》
図1A〜図1Dを用いて、本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体の構成を説明する。本発明の第1実施形態では、フラットパネルの端子部の接合構造であるガラス基板とフレキシブル基板の接合構造を例にとって説明する。図1Aは、本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体の構成を示す平面図である。図1Bは、図1Aのa−a断面図であり、図1Cは、図1Aのb−b断面図であり、図1Dは、図1Aのc−c断面図である。
【0037】
本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体は、複数の第1の電極4Aを有する第1の回路形成体の一例であるガラス基板4と、それぞれの第1の電極4Aに対向して配置された複数の第2の電極5Aを有する第2の回路形成体の一例であるフレキシブル基板5と、ガラス基板4とフレキシブル基板5との対向領域51に配置されて両者を接合する第1の絶縁性接着剤樹脂2とを備えている。
【0038】
さらに、本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体は、第1の絶縁性接着剤樹脂2中に分散され、それぞれ第1の電極4Aとそれらに対向するそれぞれの第2の電極5Aとを接続する導電性粒子3と、対向領域51の縁部51Aに隣接する外側領域52において、互いに隣接する第1の電極4A,4A間を覆う(封止する)ように配置された第2の絶縁性接着剤樹脂6とを備えている。
【0039】
ここで、「対向領域51の縁部51A」は、ガラス基板4又はフレキシブル基板5の厚み方向(図1Bの縦方向)でガラス基板4とフレキシブル基板5とに挟まれている領域と挟まれていない領域との境界部分よりも内側(上記挟まれている領域側)で、且つ全体の電極間の導通にほとんど影響がない部分に位置している。例えば、対向領域51において電極間の導通が必要な領域の長さ(図1Bの横方向)が3mmである場合には、縁部51Aの長さは、0.1mm〜1.0mm程度である。
【0040】
また、「外側領域52」とは、縁部51Aに外側で隣接している領域であって、ガラス基板4又はフレキシブル基板5の厚み方向(図1Bの縦方向)でガラス基板4とフレキシブル基板5とに挟まれていない領域をいう。言い換えれば、ガラス基板4とフレキシブル基板5との間に絶縁性接着剤樹脂2を挟んだ状態で加圧加熱したときに、絶縁性接着剤樹脂2がガラス基板4とフレキシブル基板5との間からはみ出した領域をいう。
【0041】
ガラス基板4の複数の第1の電極4Aは、例えば厚さ3μm〜5μm程度の厚膜電極(例えば厚膜銀電極)で構成されている。
フレキシブル基板5の複数の第2の電極5Aは、例えば厚さ10〜50μm程度の厚膜電極(例えば厚膜銅電極)と、当該厚膜電極上に例えば厚さ1〜5μmで施した錫メッキとで構成されている。
【0042】
第1の絶縁性接着剤樹脂2は、対向領域51内において、ガラス基板4の複数の第1の電極4Aとフレキシブル基板5の複数の第2の電極5Aとを封止するように配置されている。また、第1の絶縁性接着剤樹脂2は、外側領域52において第2の絶縁性接着剤樹脂6上に覆い被さるように配置されている。この第2の絶縁性接着剤樹脂6により、第1の絶縁性接着剤樹脂2と第2の電極5Aとの接触が妨げられている。第1の絶縁性接着剤樹脂2中の低分子成分残渣7は、図1Dに示すように、互いに隣接する第2の電極5A間で且つ第2の絶縁性接着剤樹脂6上に位置している。なお、ここで「低分子成分」とは、第1の絶縁性接着剤樹脂中に含まれる基板間を接着させるための高分子成分の平均分子量に対して、その平均分子量が十分小さい(例えば1/30〜1/70程度の)成分をいい、マイグレーション不良を発生させる恐れがある成分を含む成分をいう。上記マイグレーション不良を発生させる恐れがある成分としては、例えば、分子量100以下の成分や、ビスフェノールA型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0043】
また、第1の絶縁性接着剤樹脂2は、耐熱性、耐吸湿性、接着性、絶縁性等の面で機能的に優れた樹脂、例えばアクリル樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性の樹脂で構成されている。なお、第1の絶縁性接着剤樹脂2は、さらに、イオンマイグレーションの防止効果が大きく、イオン不純物及び低分子成分残渣が少ない樹脂で構成されることが好ましい。
【0044】
導電性粒子3は、例えば、金属球又は樹脂性のボールをコアとして、その表面上にニッケルメッキが形成され、当該ニッケルメッキの表面上にさらに金メッキが形成されてなる粒子である。導電性粒子3の平均粒径は、3〜15μmの範囲内で形成されることが好ましい。導電性粒子3の平均粒径が3μm未満である場合には電極間の導通を確保することが困難であり、導電性粒子3の平均粒径が15μmを越える場合には電極間のショート不良が発生しやすくなるといった不都合を生じる恐れがある。
【0045】
第2の絶縁性接着剤樹脂6は、外側領域52において互いに隣接する第1の電極4A,4A間に、第1の電極4Aの高さ(厚さ)と導電性粒子3の高さ(粒径)と第2の電極5Aの高さ(厚さ)とを合計した高さよりも低く形成されている。
【0046】
これに対して、第2の絶縁性接着剤樹脂6がそれらの合計高さよりも高く形成されている場合には、第1の絶縁性接着剤樹脂2を加圧加熱(加圧するとともに加熱)した際に、第2の絶縁性接着剤6が障壁となって導電性粒子3の外側領域52への移動を妨げる恐れがある。この場合、導電性粒子3が縁部51Aで凝集して、ショート不良が発生する恐れがある。
【0047】
第2の絶縁性接着剤樹脂6の高さは、具体的には以下のように設定する。例えば、第1の電極4Aの厚さが5μmであり、第2の電極5Aの厚さが20μmであり、導電性粒子3の平均粒径が8μmであるとき、導電性粒子3を介して電気的に接合されるガラス基板4とフレキシブル基板5との間の距離(高さ)は、33μm(=5μm+8μm+20μm)である。したがって、絶縁性接着剤樹脂2の高さは33μmよりも低く設定する。
【0048】
また、第2の絶縁性接着剤樹脂6は、熱硬化性の樹脂で構成されている。この熱硬化性樹脂としては、第1の絶縁性接着剤樹脂2と同様に、耐熱性、耐吸湿性、接着性、絶縁性等の面で機能的に優れた樹脂が用いられることが好ましく、イオンマイグレーションの防止効果が大きく、イオン不純物及び低分子成分が少ない樹脂が用いられることがさらに好ましい。具体的には、第2の絶縁性接着剤樹脂6は、例えば、ガラス基板のITO(酸化インジウムスズ)電極の絶縁膜として用いられる熱硬化性の無機ガラスペーストや、扱い易さの面で優れたエポキシ系樹脂などで構成されることが好ましい。なお、第2の絶縁性接着剤樹脂6は、第1の絶縁性接着剤樹脂6に比べて加圧加熱して流動させる必要がないので、低分子成分を含んでいてもよい。すなわち、第2の絶縁性接着剤樹脂6から低分子成分が分離して低分子成分残渣となる恐れは、第1の絶縁性接着剤樹脂2よりも少ない。また、第2の絶縁性接着剤樹脂6は、加圧加熱して流動させる必要がないので、低分子成分をほとんど含まない樹脂で構成することができる。すなわち、第2の絶縁性接着剤樹脂6は、第1の絶縁性接着剤樹脂2よりも低分子成分を少なくすることができる。これにより、第2の絶縁性接着剤樹脂6から低分子成分が分離して低分子成分残渣となる恐れをさらに抑えることができる。
【0049】
なお、第2の絶縁性接着剤樹脂6は、第1の絶縁性接着剤樹脂2が加圧加熱されたときに主に流動する側に配置されていればよく、第1の絶縁性接着剤樹脂2の全周に配置する必要はない。例えば、絶縁性接着剤樹脂2が図1Aの左右に向かってのみ流動する場合には、その左右両側に配置されていればよい。また、低分子成分残渣7が発生する部分であっても、マイグレーション不良を発生する可能性が低い又は無い部分には、第2の絶縁性接着剤樹脂6を配置する必要はない。なお、本発明の第1実施形態においては、主にフレキシブル基板5の端部側(図1Bの右側)に向かって絶縁性接着剤樹脂2が流動するものと想定している。このため、第2の絶縁性接着剤樹脂6は、フレキシブル基板5の端部側の外側領域52にのみ配置している。また、本発明の第1実施形態においては、ガラス基板4の端部側(図1Bの左側)には、ほとんど絶縁性接着剤樹脂2が流動しないものと想定している。このため、ガラス基板4の端部側の縁部51Aにおいて互いに隣接する第1の電極4A,4A間に、第2の絶縁性接着剤樹脂6よりもサイズが小さい第3の絶縁性接着剤樹脂60を配置している。第3の絶縁性接着剤樹脂60は、第2の絶縁性接着剤樹脂6と同様の材料により構成されている。
【0050】
以上のように構成される本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体によれば、第1の絶縁性接着剤樹脂2が互いに隣接する第1の電極4A,4Aのそれぞれに接触することを妨げる第2の絶縁性接着剤樹脂6を備えている。これにより、第1の絶縁性接着剤樹脂2中の低分子成分残渣7がガラス基板4に付着して互いに隣接する第1の電極4A,4A間をつなぐことを防止することができる。また、第2の絶縁性接着剤樹脂6は流動させる必要がないので、第2の絶縁性接着剤樹脂6中の低分子成分を低減することが可能である。したがって、第1及び第2の絶縁性接着剤樹脂2,6に含まれる低分子成分に起因するマイグレーション不良の発生を抑えて、隣接配線電極間(ここでは、互いに隣り合う第1の電極4A,4A、又は第2の電極5A,5A)の狭ピッチ化に対応することができる。
【0051】
また、本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体によれば、外側領域52において互いに隣接する第1の電極4A,4A間に配置する樹脂を、絶縁性を有する樹脂(第2の絶縁性接着剤樹脂6)としているので、吸水しやすい電極端部の絶縁を強化する効果も得られる。
【0052】
また、本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体によれば、第2の絶縁性接着剤樹脂6の高さを、第1の電極4Aの高さと導電性粒子3の粒径と第2の電極5Aの高さとを合計した高さよりも低く設定している。これにより、導電性粒子3の凝集を抑制して、ショート不良の発生を抑えることができる。
【0053】
また、本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体によれば、第2の絶縁性接着剤樹脂6は、加圧加熱して流動させる必要がないので、第1の絶縁性接着剤樹脂2よりも低分子成分を少なくすることができる。これにより、第2の絶縁性接着剤樹脂6の低分子成分残渣を抑えて、マイグレーション不良の発生を抑えることができる。
【0054】
また、本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体によれば、上記のようにマイグレーション不良の発生が抑えられるので、ガラス基板4の第1の電極4Aを銀で形成することができ、フラットディスプレイパネルなどへの適用が可能となる。
【0055】
なお、上記では第1の回路形成体として、ガラス基板を一例に挙げたがプリント配線基板やフレキシブル基板等であってもよい。また、上記では第2の回路形成体として、フレキシブル基板を一例に挙げたがICチップ等の電子部品であってもよい。
また、上記では、各部材の材質や寸法について例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々な態様で変形が可能である。
なお、第1の絶縁性接着剤樹脂2と第2の絶縁性接着剤樹脂6との境界付近は、図1A〜図1Dでは図示の都合上それらが隣接するように示したが、当該境界付近においては、それらは混在していても良い。
【0056】
次に、図1B〜図1D、図2A〜図2C及び図3を用いて、本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体の電極接合方法について説明する。図2A〜図2Cは、本発明の第1実施形態にかかる電極接合方法の手順を示す断面図である。図3は、本発明の第1実施形態にかかる電極接合方法のフローチャートである。
【0057】
本発明の第1実施形態にかかる電極接合方法を説明する前に、前提条件について説明する。
ここでは、ガラス基板4とフレキシブル基板5との電極接合を行うのに、図2Cに示す圧着ツール8を使用する。この圧着ツール8は、下端部に加熱用ヒータ8Aを備えるとともに上部にエアシリンダ8Bを備え、エアシリンダ8Bに接続されたモータ8Cが駆動することにより上下動可能に構成されている。
また、ここでは、図示していないが、ガラス基板4を下にした状態で圧着ステージである支持台に載置されて電極接合が行われるものとする。
また、ここでは、第3の絶縁性接着剤樹脂60についての説明は、第2の絶縁性接着剤樹脂6と同様であるので省略する。
【0058】
また、ここでは、ガラス基板4上に予め硬化状態の第2の絶縁性接着剤樹脂6が配置されているものとする。なお、第2の絶縁性接着剤樹脂6のガラス基板4上への配置は、例えば以下のように行えばよい。
【0059】
すなわち、外側領域52において互いに隣接する第1の電極4A,4A間に、ディスペンサによる塗布やマスク印刷、コータ塗工等の方法により、ペースト状の熱硬化性の絶縁性接着剤樹脂(例えばエポキシ系樹脂)を供給する。この後、当該絶縁性接着剤樹脂を加熱して硬化状態にする。これにより、硬化状態の第2の絶縁性接着剤樹脂6をガラス基板4上に配置できる。
【0060】
なお、上記絶縁性接着剤樹脂はペースト状であるものに限定されず、シート(フィルム)状であってもよい。この場合、絶縁性接着剤樹脂をコータ塗工等の公知の方法でシート状にしてリールに巻き取り、必要に応じてリール供給すればよい。
【0061】
以下、本発明の第1実施形態にかかる電極接合方法を説明する。
まず、ステップS1では、図2Aに示すように、それぞれの第1の電極4Aとそれぞれの第2の電極5Aとが対向するように、ガラス基板4とフレキシブル基板5とを対向配置するとともに、硬化状態の第2の絶縁性接着剤樹脂6を外側領域52に位置させる。
【0062】
ステップS2では、図2Bから図2Cに示すように、ガラス基板4とフレキシブル基板5との対向領域51の縁部51Aより内側に第1の絶縁性接着剤樹脂2を配置する。
なお、図2Bでは、第1の絶縁性接着剤樹脂2がガラス基板4側に配置(貼付)されている例を示したが、第1の絶縁性接着剤樹脂2はフレキシブル基板5側に配置(貼付)されてもよい。
【0063】
ステップS3では、図2Cに示すように、圧着ツール8によりガラス基板4又はフレキシブル基板5を介して第1の絶縁性接着剤樹脂2を加圧加熱する。より具体的には、モータ8Cを駆動させて圧着ツール8を降下させ、フレキシブル基板5に加熱用ヒータ8Aの加圧加熱面を接触させる。この接触状態で、さらにモータ8Cを駆動させて圧着ツール8を降下させるとともに、加熱用ヒータ8Aを発熱させる。これにより、フレキシブル基板5を介して第1の絶縁性接着剤樹脂2を加圧加熱する。
【0064】
上記加圧加熱により、第1の絶縁性接着剤樹脂2が溶融(軟化)して対向領域51の縁部51Aを通じて外側領域52に流動し、図1B及び図1Cに示すように、第1及び第2の電極4A,5Aを封止するように第1の絶縁性接着剤樹脂2が対向領域51に隙間無く充填される。これにより、第1の絶縁性接着剤樹脂2がガラス基板4とフレキシブル基板5とを強固に接合する。また、このとき、外側領域52に流動した第1の絶縁性接着剤樹脂2の一部は、図1B及び図1Dに示すように第2の絶縁性接着剤樹脂6に覆い被さるように接触する。また、第1の絶縁性接着剤樹脂2の流動に伴って、第1の絶縁性接着剤樹脂2中に分散された導電性粒子3が、第1の電極4Aと第2の電極5Aとの間に配置され、両者を電気的に接合する。なお、このとき、第1の絶縁性接着剤樹脂2中の低分子成分残渣7は、第2の絶縁性接着剤樹脂6上の主に隣接配線電極間に位置する。
【0065】
以上、本発明の第1実施形態にかかる電極接合方法によれば、外側領域52において互いに隣接する第1の電極4A,4A間に硬化状態の第2の絶縁性接着剤樹脂6を配置したのち、ガラス基板4とフレキシブル基板5との間に第1の絶縁性接着剤樹脂2を配置し加圧加熱して、両者を接合するようにしている。すなわち、第1の絶縁性接着剤樹脂2を加圧加熱する前に、第1の絶縁性接着剤樹脂2中の低分子成分の残渣7がマイグレーション不良を発生させる恐れのある位置に、あらかじめ第2の絶縁性接着剤樹脂6を配置している。これにより、第1の絶縁性接着剤樹脂2中の低分子成分残渣7がガラス基板4に付着して互いに隣接する第1の電極4A,4A間をつなぐことを防止することができる。したがって、第1の絶縁性接着剤樹脂2に含まれる低分子成分に起因するマイグレーション不良の発生を抑えて、隣接配線電極間の狭ピッチ化(例えば0.1mm以下)に対応することができる。
【0066】
また、加圧加熱された第1の絶縁性接着剤樹脂2が外側領域52に向けて流動する際、第1の絶縁性接着剤樹脂2は、第2の絶縁性接着剤樹脂6と衝突し、その流動速度が低減される。これにより、対向領域51への第1の絶縁性接着剤樹脂2の充填性を高めて、絶縁性接着剤樹脂2とガラス基板4及びフレキシブル基板5との密着性を向上させることができる。したがって、第1の絶縁性接着剤樹脂2とガラス基板4及びフレキシブル基板5との密着不足によるマイグレーション不良の発生も抑えることができる。
【0067】
また、本発明の第1実施形態にかかる電極接合方法によれば、上記のようにマイグレーション不良の発生が抑えられるので、ガラス基板4の第1の電極4Aを銀で形成することができ、フラットディスプレイパネルなどへの適用が可能となる。
【0068】
なお、上記ステップS2で用いる第1の絶縁性接着剤樹脂2の形態は、ペースト状であってもシート(フィルム)状でもよい。例えば、異方性導電性ペーストや異方性導電性フィルム、異方性導電性シートであってもよい。それらの中でも異方性導電性シートが用いられることが、加工性や取り扱い性が優れているので好ましい。なお、上記では、導電性粒子3が分散された第1の絶縁性接着剤樹脂2を用いて電極接合を行ったが本発明はこれに限定されない。例えば、第1の絶縁性接着剤樹脂2としてNCF(ノンコンダクティブフィルム)やNCP(ノンコンダクティブペースト)などを用いて電極接合を行ってもよい。
【0069】
また、加圧加熱前の第1の絶縁性接着剤樹脂2の厚さは、15μm〜60μmの範囲で設定されることが好ましい。第1の絶縁性接着剤樹脂2の厚さが、15μm未満である場合には、第1及び第2の電極4A,5A間の電極接合強度が不足し剥がれ易くなり、60μmを越える場合には、第1及び第2の電極4A,5A間の電気的接続が取り難くなる。また、第1の絶縁性接着剤樹脂2の厚さは、第1の電極4A又は第2の電極5Aの厚さに応じて設定されることが好ましく、例えば第1の電極4A又は第2の電極5Aの厚さが5〜20μmであれば、35μm〜50μm程度の範囲で設定されることが好ましい。
【0070】
また、第1の絶縁性接着剤樹脂2の形状は、特に限定されるものではなく、その幅及び長さはそれぞれ、第1の電極4A又は第2の電極5Aの形状に応じるとともに導電性粒子3により第1及び第2の電極4A,5A間の電気的接続が確保できるように設定されればよい。
【0071】
また、上記では、ガラス基板4上に配置する第2の絶縁性接着剤樹脂6を硬化状態としたが、半硬化状態としてもよい。この場合、上記ステップS3において、第1の絶縁性接着剤樹脂2への圧着ツール8による加圧加熱力を利用して、第2の絶縁性接着剤樹脂6を硬化状態にすればよい。
【0072】
次に、第2の絶縁性接着剤樹脂6の形状例について説明する。
まず、図13及び図14を用いて、従来例の電極接合構造体について説明する。図13及び図14は、従来例の電極接合構造体の一部平面図である。
【0073】
電極接合時において絶縁性接着剤樹脂102を加圧加熱した際、通常、絶縁性接着剤樹脂102は、主に隣接配線電極間を流動経路として外側領域100Yまで流動する。外側領域100Yまで流動した絶縁性接着剤樹脂102は、第1の電極104A上を充填するために、図13の太い矢印で示すように、第1の電極104Aを高さ方向に這い上がって第1の電極104A上に移動しようとする。このため、絶縁性接着剤樹脂102は、外側領域100Yにおいて互いに隣接する第1の電極104A,104A間に位置する部分が、第1の電極104A上に位置する部分よりも外側(図13の上方)に位置する。すなわち、外側領域100Yにおける絶縁性接着剤樹脂102のエッジが波形形状となる。
【0074】
しかしながら、絶縁性接着剤樹脂102を構成する樹脂の種類(粘度)、第1の電極104Aの幅寸法、及び隣接配線電極間の幅寸法などにより、絶縁性接着剤樹脂102の流動速度は変化するため、絶縁性接着剤樹脂102が第1の電極104A上に移動できないことがある。このため、図14に示すように、フレキシブル基板105の端部領域(図14では一点鎖線で囲んだ領域)において、第1の電極104Aの一部が外部に露出する恐れがある。このような場合、この露出部分が吸水経路となる可能性があり、マイグレーション不良が発生する恐れがある。
【0075】
この課題を解決するため、第2の絶縁性接着剤樹脂6は、図4A又は図4Bに示すような形状に形成されることが好ましい。図4A及び図4Bは、ガラス基板4上に第2の絶縁性接着剤樹脂6と加圧加熱前の第1の絶縁性接着剤樹脂2とを配置した状態を示す一部平面図である。図4A及び図4Bにおいて、一点鎖線の矢印は、第1の絶縁性接着剤樹脂2の流動経路を示している。
【0076】
図4Aでは、第2の絶縁性接着剤樹脂6の互いに隣接する第1の電極4A,4A間に位置する部分が、第1の電極4A上に位置する部分よりも内側(図4Aの下方)に位置して、第2の絶縁性接着剤樹脂6の内側のエッジが波形形状に形成されている。これにより、加圧加熱された第1の絶縁性接着剤樹脂2は、第2の絶縁性接着剤樹脂6の波形形状に案内されて、露出部分を生じることなく、より確実に第1の電極4A上に配置される。したがって、マイグレーション不良の発生を抑えることができる。
【0077】
一方、図4Bでは、第2の絶縁性接着剤樹脂6の外側(図4Bの上方)のエッジを直線状に形成している。このような形状でも、図4Aに示す形状と同様に、マイグレーション不良の発生を抑えることができる。
【0078】
なお、上記では、第2の絶縁性接着剤樹脂6を外側領域52にのみ配置したが、図5A及び図5Bに示すように、縁部51Aにも配置されてもよい。すなわち、第2の絶縁性接着剤樹脂6は、外側領域52から対向領域51の縁部51Aにわたって延在するように配置されてもよい。これにより、第1の絶縁性接着剤樹脂2中の低分子成分残渣7が縁部51Aに付着することも防止して、マイグレーション不良の発生をさらに抑えることができる。なお、この場合、縁部51Aに位置する第2の絶縁性接着剤樹脂6の高さが高すぎると、第2の絶縁性接着剤樹脂6が第2の電極5Aに接触し、第1の絶縁性接着剤2の厚み方向の高さにバラツキが生じる恐れがある。このバラツキにより、位置ズレが生じて、接続不良に繋がる恐れがある。このため、縁部51Aに位置する第2の絶縁性接着剤樹脂6の高さは、第1の電極4Aの高さと導電性粒子3の高さとを合計した高さよりも低く設定することが好ましい。
また、上記では、第2の絶縁性接着剤樹脂6の内側のエッジを波形形状としたが、図5Bに示すように直線状であっても、マイグレーション不良の発生を抑制する効果を十分に得ることができる。
【0079】
また、上記では、第2の絶縁性接着剤樹脂6が、熱で硬化又は半硬化する熱硬化性の樹脂であるものとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2の絶縁性接着剤樹脂6は、光で硬化又は半硬化する光硬化性の樹脂であってもよい。また、第2の絶縁性接着剤樹脂6は、光と熱の併用で硬化又は半硬化する樹脂であってもよい。第2の絶縁性接着剤樹脂6が光硬化性の樹脂である場合には、例えば、ペースト状の光硬化性のシリコーン樹脂やウレタン、ポリブタジエンなどのUV(光)硬化アクリレート変性樹脂が用いられることが好ましい。
【0080】
《第2実施形態》
図6及び図7を用いて、本発明の第2実施形態にかかる電極接合構造体及び電極接合方法について説明する。図6は、本発明の第2実施形態にかかる電極接合構造体の断面図である。図7は、本発明の第2実施形態にかかる電極接合構造体の電極接合方法のフローチャートである。本発明の第2実施形態にかかる電極接合構造体は、さらに絶縁性封止樹脂10を備える点で、本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体と相違する。本発明の第2実施形態にかかる電極接合方法は、上記ステップS3の後、第1及び第2の絶縁性接着剤樹脂2,6を絶縁性封止樹脂10により外部に露出しないように覆い隠すステップS4の工程をさらに備える点で、本発明の第1実施形態にかかる電極接合方法と相違する。それ以外の点については同様であるので重複する説明は省略し、主に相違点を説明する。
【0081】
絶縁性封止樹脂10は、図6に示すように、第1及び第2の絶縁性接着剤樹脂2,6が外部に露出しないように覆い隠す(封止する)よう設けられている。すなわち、絶縁性封止樹脂10は、ガラス基板4とフレキシブル基板5との電極接合部を封止するように設けられている。
【0082】
このように絶縁性封止樹脂10を設けることにより、ガラス基板4とフレキシブル基板5との電極接合部に外部から水や腐食性ガス等が侵入することを防ぐことができる。また、第1及び第2の電極4A,5Aや導電性粒子3の酸化が防止され、電気的な導通が阻害されることがないので、高信頼性の接合品質を実現することができる。また、絶縁性封止樹脂10が硬化することにより、第1及び第2の電極4A,5Aの接合強度が補強され、機械的曲げ強度等に対する信頼性も向上する。
【0083】
なお、絶縁性封止樹脂10は、シリコーン樹脂や、ウレタン、ポリブタジエンなどのUV硬化性樹脂などで構成されること好ましい。また、絶縁性封止樹脂10は、熱で硬化するものであっても、光で硬化するものであってもよく、また、光と熱の併用で硬化するものでもよい。
また、絶縁性封止樹脂10の材質としては、作業環境、揮発成分の再付着の問題から、無溶剤型の樹脂が用いられることが好ましい。
【0084】
また、絶縁性封止樹脂10には、高温高湿の環境下において電圧を印加した際に発生するイオンマイグレーションを防止する特性を有することも求められている。このため、絶縁性封止樹脂10の材質としては、透水性が小さく、イオン不純物も少ない材質が用いられることが好ましい。
さらに、絶縁性封止樹脂10の材質としては、第1及び第2の電極4A,5Aの接合強度の補強効果を有するとともにフレキシブル基板5の変形に追従できるように、ある程度の可撓性を有する弾性体であることが好ましい
【0085】
また、絶縁性封止樹脂10の厚さは、0.1mm〜5.0mmの範囲で設定されることが好ましい。絶縁性封止樹脂10の厚さが0.1mm未満である場合には、ガラス基板4とフレキシブル基板5との電極接合部に外部から水や腐食性ガス等が侵入することを防止することが困難となり、絶縁性封止樹脂10の厚さが5mmを越える場合には、絶縁性封止樹脂10が硬化するのに時間を要し、タクトが長くなる。
【0086】
また、絶縁性封止樹脂10の形成方法としては、ディスペンサを用いて塗布することにより形成する方法が採られることが好ましい。この場合の塗布粘度は、塗布性の観点から2mPa・s〜20Pa・s程度の範囲であることが好ましい。しかしながら、これに限定されることなく、絶縁性封止樹脂10の粘度に応じて、スクリーン印刷、インクジェット、コータなどにより形成する方法が採られてもよい。
【0087】
また、絶縁性封止樹脂10を形成するときには、ガラス基板4及びフレキシブル基板5と絶縁性封止樹脂10との密着性を向上させるために、あらかじめUV洗浄を行っておくことが好ましい。このようにして作製した電極接合構造体は、長期接合信頼性に優れ、例えば0.1mmピッチ以下の電極間の狭ピッチ化にも対応することができる。
【0088】
《実施例》
次に、本発明の第2実施形態の電極接合方法の具体例の1つである実施例を、図1A〜図1D、図2A〜図2C、図4A、図4B、図6、及び図7を参照しながら説明する。まず、各構成要素の具体的構成について説明する。
【0089】
本実施例において、第1の回路形成体は、厚さ1.8mmのガラス上に、スクリーン印刷法と焼成により厚さ3μmの銀で形成した複数の銀電極4Aを、L/S=50μm/50μmの幅で配置したガラス基板4で構成している。なお、Lは電極の幅を示し、Sは隣り合う電極間の隙間の幅を示す。
【0090】
また、本実施例において、第2の回路形成体は、厚さ75μmのポリイミドフィルム上に、厚さ25μmの銅で形成した複数の銅電極5AをL/S=50μm/50μmの幅で配置したフレキシブル基板5で構成している。すなわち、上記構成の電極間のピッチは50μm+50μm=100μm=0.1mmである。
【0091】
また、本実施例において、第1の絶縁性接着剤樹脂は、厚さ35μmのシート状で且つ熱硬化性のエポキシ樹脂2で構成している。
また、本実施例において、導電性粒子3は、樹脂性のボールをコアとしてNi−Auで金属メッキして平均粒径8μm程度に形成し、エポキシ樹脂2中に均一に分散している。
また、本実施例において、第2の絶縁性接着剤樹脂は、ペースト状で且つ光硬化性のポリブタジエンUV硬化アクリレート変性樹脂(以下、UV硬化性樹脂という)6で構成している。
【0092】
また、本実施例において、絶縁性封止樹脂10は、水銀ランプで2000mJ/cm2の積算光量で硬化するポリブタジエンアクリレートでなる樹脂で構成している。
なお、絶縁性封止樹脂10の材質は、特に不純物塩素イオン濃度が数ppmと低く、吸水率が低く、高温高湿の環境下で電圧を印加した際に発生するイオンマイグレーションに対する耐性が優れているか否かを選定基準とした。
また、あらかじめ供給するUV硬化性樹脂6との親和性(接着性の相性)を考慮して同じ材料とした。
なお、絶縁性封止樹脂10の材質としてエポキシアクリレート系の樹脂を採用した電極接合構造体においては、樹脂の不純物塩素イオン濃度が原料からの混入により比較的高いことから、THB信頼性試験により絶縁不良が発生することを確認している。
【0093】
以下、本実施例の電極接合方法を説明する。
まず、図2A、図4A又は図4Bに示すように、ガラス基板4の複数の銀電極4Aのそれぞれの一部を覆うように硬化状態のUV硬化性樹脂6を配置する。
このとき、UV硬化性樹脂6の配置は、エア式ディスペンサを用いて塗布したのち硬化させることにより行うことができる。ここでは、ノズル条件として、外形寸法φ0.15mmのノズルを用いる。また、塗布条件として、それぞれ、塗布スピードを4.0mm/s、吐出圧力を65kPa、ノズルギャップを50μmとし、温調器によりシリンジの温度を室温程度に調整する。このような条件により、UV硬化性樹脂6を、幅0.3mm、厚み20μmで塗布する。この後、UV硬化性樹脂6に、水銀ランプを備えたUV硬化装置にて2000mJ/cm2の積算光量の光を照射し、UV硬化性樹脂6を硬化状態にする。なお、このとき、UV硬化性樹脂6の厚みは、エポキシ樹脂2の厚み(35μm)よりも小さくすることに留意する。
【0094】
次いで、図2Aに示すように、それぞれの銀電極4Aとそれぞれの銅電極5Aとが対向するように、ガラス基板4とフレキシブル基板5とを対向配置するとともに、硬化状態のUV硬化性樹脂6を外側領域52に位置させる(図7のステップS1)。
次いで、図2Bから図2Cに示すように、ガラス基板4とフレキシブル基板5との対向領域51の縁部51Aより内側にエポキシ樹脂2を配置する(図7のステップS2)。
【0095】
次いで、図2Cに示すように、圧着ツール8によりガラス基板4又はフレキシブル基板5を介してエポキシ樹脂2を加圧加熱する(図7のステップS3)。
より具体的には、モータ8Cを駆動させて圧着ツール8を降下させ、フレキシブル基板5に加熱用ヒータ8Aの加圧加熱面を接触させる。この接触状態で、さらにモータ8Cを駆動させて圧着ツール8を降下させるとともに、加熱用ヒータ8Aを発熱させる。これにより、フレキシブル基板5を介してエポキシ樹脂2を加圧加熱する。このとき、加熱用ヒータ8Aによる加熱温度はエポキシ樹脂2に対して180℃となるように設定し、エアシリンダ8Bによる加圧力は3MPaに設定し、それらの加圧加熱時間は10秒に設定する。
【0096】
上記加圧加熱により、エポキシ樹脂2が溶融(軟化)して対向領域51の縁部51Aを通じて外側領域52に流動し、図1B及び図1Cに示すように、銀電極4A及び銅電極5Aを封止するようにエポキシ樹脂2が対向領域51に隙間無く充填される。これにより、エポキシ樹脂2がガラス基板4とフレキシブル基板5とを強固に接合する。また、このとき、外側領域52に流動したエポキシ樹脂2の一部は、図1B及び図1Dに示すようにUV硬化性樹脂6に覆い被さるように接触する。また、エポキシ樹脂2の流動に伴って、エポキシ樹脂2中に分散された導電性粒子3が、銀電極4Aと銅電極5Aとの間に配置され、両者を電気的に接合する。なお、このとき、エポキシ樹脂2中の低分子成分残渣7は、UV硬化性樹脂6上の主に隣接配線電極間に位置する。
【0097】
次いで、エポキシ樹脂2及びUV硬化性樹脂6の外側領域52で外部に露出する部分に、UV洗浄を行ったのち、ディスペンサ(武蔵エンジニアリング製)を用いて絶縁性封止樹脂10を塗布する。このとき、絶縁性封止樹脂10の塗布量は、光硬化後の厚さが1.0mm程度となるような量とする。この後、塗布した絶縁性封止樹脂10にUV光を照射して、絶縁性封止樹脂10を硬化させる。これにより、エポキシ樹脂2及びUV硬化性樹脂6が外部に露出しないように封止される(図7のステップS4)。
なお、絶縁性封止樹脂10の光硬化後の厚みを数十μm程度まで薄くしたときには、表面の硬化阻害が発生してUV光の照射後も表面にベタ付きが残り、この状態でTHB試験を行ったときには絶縁性封止樹脂10が水を吸って絶縁不良が発生することを確認している。
【0098】
上記電極接合方法により接合された電極接合構造体は、ガラス基板4及びフレキシブル基板5とエポキシ樹脂2との密着性が優れている。また、上記電極接合構造体は、エポキシ樹脂2から分離する低分子成分残渣7がガラス基板4の隣接配線電極間の界面に直接的に付着することが抑制される。これにより、イオン伝導度が抑制され、密着性の低下によるマイグレーション不良の発生が抑えられている。また、外側領域52において、導電性粒子3の凝集が抑制され、ショート不良の発生も抑制されている。したがって、0.1mmピッチ以下の電極間の狭ピッチ化にも対応することができる。
【0099】
次に、図8A〜図8C、図9A〜図9C、図10、及び図11を用いて、第2の回路形成体がICチップ部品等の矩形の電子部品15であるときの電極接合構造体について説明する。なお、図9A〜図9Cにおいては、図示の都合上、第2の絶縁性接着剤樹脂6と第1の絶縁性接着剤樹脂2との境界付近は、それらが隣接するように示しているが、それらが混在していても良い。
【0100】
図8Aは、従来において、第2の回路形成体が電子部品15であるときの電極接合構造体の構造を示す模式平面図である。図8Aでは、電極接合部分の構造を理解し易くするために、電子部品15を取り除いた状態を示している。図8Bは、図8Aのd−d断面図であり、図8Cは、図8Aのe−e断面図である。なお、図8A中の大きな楕円は導電性粒子3の凝集が発生している領域を示している。
【0101】
図9Aは、本発明の第1実施形態において、第2の回路形成体が電子部品15であるときの電極接合構造体の構造を示す模式平面図である。図9Aでは、電極接合部分の構造を理解し易くするために、電子部品15を取り除いた状態を示している。図9Bは、図9Aのf−f断面図であり、図9Cは、図9Aのg−g断面図である。なお、図9A中の白丸は導電性粒子3を示している。
【0102】
第2の回路形成体が電子部品15である場合には、矩形の電子部品15に配置される複数の第2の電極5Aに対向するように、図8A〜図8C及び図9A〜図9Cに示すようにガラス基板4の複数の電極4Aが配置される。第1の絶縁性接着剤樹脂2が圧着ツール8によって加圧加熱されたとき、第1の絶縁性接着剤樹脂2は、図8A及び図9Aの主に上下左右方向に広がる。このため、電極接合時に、第2の絶縁性接着剤樹脂6及び第1の絶縁性接着剤樹脂2の配置が図1Aに示した構成と異なる。
【0103】
図10は、一例として、単体の第1の絶縁性接着剤樹脂2がガラス基板4の複数の第1の電極4Aの全てを覆う(封止する)ように配置され、第1の絶縁性接着剤樹脂2の全周沿って第2の絶縁性接着剤樹脂6が配置された構成を示している。
また、第2の絶縁性接着剤樹脂6は、上述したように、第1の絶縁性接着剤樹脂2が加圧加熱されたときに溶融(軟化)して、流動する側に配置されていればよい。第2の回路形成体が矩形の電子部品15であるとき、電子部品15の角部は、他の部分に比べて、ガラス基板4上の複数の第1の電極4Aが密集していない箇所である。また、電子部品15の角部は、導電性粒子3が凝集したとしてもショート不良を起こす可能性が低い箇所である。
【0104】
図11は、その一例として、単体の第1の絶縁性接着剤樹脂2がガラス基板4の複数の第1の電極4Aの全てを覆う(封止する)ように配置され、電子部品15の角部以外の部分に第2の絶縁性接着剤樹脂6が配置された構成を示している。
以上、第2の回路形成体が電子部品15である場合について説明したが、上記以外の点については、他の構成と同様であるので詳しい説明は省略する。
【0105】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、有機ELを代表とする異方性導電性シートを使用したフレキシブル基板同士の電極接合構造及び接合方法等、種々の態様で実施できる。
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明にかかる電極接合構造体及び電極接合方法は、マイグレーション不良の発生を抑えるとともにショート不良の発生を抑える効果を有するので、回路形成体の電極に他の回路形成体の電極を導電性粒子が分散された絶縁性接着剤樹脂を用いて接合する技術、特にガラス基板とフレキシブル基板との電極接合に代表されるフラットパネルの接合技術において、隣接する電極間の狭ピッチ化が求められるときに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1A】本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体の構成を示す平面図である。
【図1B】図1Aのa−a断面図である。
【図1C】図1Aのb−b断面図である。
【図1D】図1Aのc−c断面図である。
【図2A】本発明の第1実施形態にかかる電極接合方法の手順を示す断面図である。
【図2B】図2Aに続く手順を示す断面図である。
【図2C】図2Bに続く手順を示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかる電極接合方法のフローチャートである。
【図4A】本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体の第2の絶縁性接着剤樹脂の配置例を示す第1の回路形成体の平面図である。
【図4B】図4Aとは別の第2の絶縁性接着剤樹脂の配置例を示す第1の回路形成体の平面図である。
【図5A】図2Aとは別の第2の絶縁性接着剤樹脂の配置例を示す断面図である。
【図5B】図5Aに示す第1の回路形成体の平面図である。
【図6】本発明の第2実施形態にかかる電極接合構造体の断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態にかかる電極接合方法のフローチャートである。
【図8A】従来の電極接合構造体において、第2の回路形成体が電子部品であるときの、電子部品を取り除いた状態を示す平面図である。
【図8B】図8Aのd−d断面図である。
【図8C】図8Aのe−e断面図である。
【図9A】本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体において、第2の回路形成体が電子部品であるときの、電子部品を取り除いた状態を示す平面図である。
【図9B】図9Aのf−f断面図である。
【図9C】図9Aのg−g断面図である。
【図10】第2の回路形成体が電子部品であるときの、第1及び第2の絶縁性接着剤樹脂の配置例を示す平面図である。
【図11】図10とは別の第2の絶縁性接着剤樹脂の配置例を示す平面図である。
【図12A】従来例の電極接合方法の手順を示す断面図である。
【図12B】図12Aに続く手順を示す断面図である。
【図12C】図12Bのx−x断面図である。
【図12D】図12Bのy−y断面図である。
【図13】従来例の電極接合構造体の絶縁性接着剤樹脂の形状を示す平面図である。
【図14】図13とは別の絶縁性接着剤樹脂の形状を示す平面図である。
【符号の説明】
【0108】
2 第1の絶縁性接着剤樹脂
3 導電性粒子
4 ガラス基板
4A 第1の電極
5 フレキシブル基板
5A 第2の電極
6 第2の絶縁性接着剤樹脂
7 低分子成分残渣
8 圧着ツール
10 絶縁性封止樹脂
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路形成体の電極に他の回路形成体の電極を絶縁性接着剤樹脂を用いて接合する電極接合構造体及び電極接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス基板やフレキシブル基板等の回路形成体の電極に、他のガラス基板やフレキシブル基板、あるいは電子部品等の回路形成体の電極を電気的に接合する技術として、導電性粒子が分散された絶縁性接着剤樹脂、例えば異方性導電性シートを用いる技術が知られている。この技術は、接合対象となる電極間に異方性導電性シートを配置し、回路形成体を介して異方性導電性シートを圧着ツールで加圧加熱することで、上記絶縁性接着剤樹脂を溶融(軟化)させて、導電性粒子を介して電極間を導通させる技術である。
【0003】
この異方性導電性シートを用いる電極接合技術は、様々な形態の電極接合に適応可能であり、例えば、ガラス基板とフレキシブル基板との電極接合(FOG)、ガラス基板とICチップ部品との電極接合(COG)、フレキシブル基板とICチップ部品との電極接合(COF)、プリント配線基板とICチップ部品との電極接合、フレキシブル基板とフレキシブル基板との電極接合、フレキシブル基板とプリント配線基板との電極接合等、幅広く適用されている。
【0004】
近年、例えばガラス基板とフレキシブル基板との電極接合に代表されるフラットパネルの接合技術においては、電極間に高電圧が印加されるときの信頼性の確保とともに、電子機器の高密度化に伴って隣接配線電極間の更なる狭ピッチ化(微細化)が求められている。具体的には、その隣接配線電極間のピッチは、従来求められていた300μm〜200μmから、200μm〜100μm以下まで狭ピッチ化することが求められている。また、例えばガラス基板とICチップ部品との電極接合やフレキシブル基板とICチップ部品との電極接合等の、ICチップ部品をフェイスダウン方式で接合する技術においても、同様に、多機能化に伴いバンプ電極間の更なる狭ピッチ化(微細化)が求められている。具体的には、それらの隣接配線電極間のピッチは、従来求められていた120μm〜80μmから、80μm〜40μm以下まで狭ピッチ化することが求められている。
【0005】
上記のレベルまで隣接配線電極間の狭ピッチ化が進むと、異方性導電性シートを用いる電極接合技術においては、マイグレーション不良やショート不良等による絶縁信頼性に対する不具合を生じる可能性が高くなる。特に、電極の材料として銀を使用した場合には、銀がイオン化傾向の大きい物質であるため、マイグレーション不良が発生しやすい。
【0006】
マイグレーション不良が発生する主な要因としては、一般に以下の4つが知られている。
(1)電極接合部の隙間から電極への吸水
(2)強電界強度によるイオン伝導
(3)空気中に飛散する異物の混入
(4)電極接合材料(例えば絶縁性接着剤樹脂)中に含まれる異物、不純物、及び洗浄残渣
【0007】
上記(1)の電極接合部の隙間は、例えば、対向配置された電極同士を熱硬化性の絶縁性接着剤樹脂を用いて電極接合する場合において、当該樹脂を加圧加熱して硬化させた際に生じる当該樹脂の体積変化や、当該樹脂と基板との密着不足などによって形成される。上記隙間は、特に2つの基板間の対向領域の縁部に隣接する外側領域において発生しやすい。
【0008】
上記(1)に起因するマイグレーション不良を抑制する技術としては、例えば、特許文献1(特開平3−184077号公報)に開示された技術が知られている。特許文献1では、2つの基板間に熱硬化性の絶縁性接着剤樹脂を配置したのち当該樹脂を加圧加熱して硬化させ、その際に2つの基板間の対向領域の縁部に隣接する外側領域に生じた隙間に、防湿性の樹脂を充填する。この防湿性の樹脂により電極への吸水経路を断ち、マイグレーション不良を抑制している。
【特許文献1】特開平3−184077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記マイグレーション不良の発生要因のうち、特に(4)については、隣接配線電極間が狭ピッチ化される前までは、それ程問題となることはなかった。このため、上記特許文献1のように上記(1)に起因するマイグレーション不良を抑制することで十分な効果があった。しかしながら、隣接配線電極間の狭ピッチ化が進めば進むほど、上記(4)に起因するマイグレーション不良が発生する恐れが高くなる。このため、上記特許文献1の技術では、上記(4)に起因するマイグレーション不良の発生を抑えることができず、隣接配線電極間の狭ピッチ化に対応することは困難である。このことにつき、図12A〜図12Dを用いて、以下に詳しく説明する。
【0010】
図12A及び図12Bは、従来例の電極接合方法を模式的に示す断面図である。図12Cは、図12Bのx−x断面図であり、図12Dは、図12Bのy−y断面図である。ここでは、フラットパネルの端子部の接合構造であるガラス基板とフレキシブル基板の接合構造を例にとって説明する。
【0011】
まず、図12Aに示すように、複数の第1の電極104Aを有するガラス基板104と、それぞれの第1の電極104Aと対向するように形成された複数の第2の電極105Aを有するフレキシブル基板105との対向領域100Xに、異方性導電性シート101を配置する。
【0012】
この後、圧着ツール106によりフレキシブル基板105を介して異方性導電性シート101を加圧加熱する。これにより、異方性導電性シート101の絶縁性接着剤樹脂102が溶融して、図12Bに示すように、対向領域100Xの縁部に隣接する外側領域100Yまで流動して硬化する。このとき、絶縁性接着剤樹脂102中に分散された導電性粒子103が、図12Cに示すように第1の電極104Aと第2の電極105Aとの間に配置されて両者を電気的に接合する。
【0013】
このような従来例の電極接合方法に用いる絶縁性接着剤樹脂102は、一般的に以下のような材料組成を有する。すなわち、絶縁性接着剤樹脂102は、基板間を接着させるための高分子成分を含む固形エポキシ樹脂と、加圧加熱された際に上記固定エポキシ樹脂の溶融及び流動を促進させるための低分子成分を含む液状エポキシ樹脂と、固形及び液状エポキシ樹脂を熱硬化させる為の硬化剤と、樹脂をシート化する為のシート化溶剤と、その他エラストマーやカップリング剤、イオン交換体などで構成されている。
【0014】
上記材料組成のうちの液状エポキシ樹脂中の低分子成分は、絶縁性接着剤樹脂102が加圧加熱された際、絶縁性接着剤樹脂102の流動に伴って他の成分から分離する性質を有する。分離した低分子成分は、特に、外側領域100Yにおいて互いに隣接する第1の電極104A間で凝集し、図12B及び図12Dに示す低分子成分残渣107となる。隣接配線電極間のピッチ100P(図12C参照)が小さくなるほど、低分子成分残渣107が互いに隣接する第1の電極104A,104A間をつなぎやすくなる。この低分子成分残渣107は、樹脂の濡れ性を阻害するだけでなく、ガス化して膨張し、樹脂の架橋時に他の成分に取り込まれずに、電極中の金属イオンの移動媒体となる恐れがある。このため、低分子成分残渣107により、絶縁性接着剤樹脂102とガラス基板104との密着性が低下し、マイグレーション不良が発生しやすくなる。
【0015】
この低分子成分残渣107に起因するマイグレーション不良においては、上記特許文献1の技術(すなわち、上記加圧加熱により絶縁性接着剤樹脂102が硬化したのちにその硬化により生じた隙間に防湿性の樹脂を充填する方法)により解決することは困難である。
【0016】
また、低分子成分残渣107に起因するマイグレーション不良の発生を抑える他の方法としては、単純には、液状エポキシ樹脂中の低分子成分の成分量を低減(カット)することが考えられる。しかしながら、低分子成分の成分量を低減した場合には、その分、加圧加熱した際の絶縁性接着剤樹脂102の流動性が悪くなる。このため、ガラス基板104と絶縁性接着剤樹脂102、又はフレキシブル基板105と絶縁性接着剤樹脂102との密着性が低下するといった別の問題を生じる恐れがある。
【0017】
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、回路形成体の電極に他の回路形成体の電極を絶縁性接着剤樹脂を用いて接合する電極接合において、絶縁性接着剤樹脂に含まれる低分子成分に起因するマイグレーション不良の発生を抑えて、隣接配線電極間の狭ピッチ化に対応することができる電極接合構造体及び電極接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、複数の第1の電極を有する第1の回路形成体と、
上記それぞれの第1の電極に対向して配置された複数の第2の電極を有する第2の回路形成体と、
上記第1の回路形成体と上記第2の回路形成体との対向領域に配置されて両者を接合する第1の絶縁性接着剤樹脂と、
上記対向領域の縁部に隣接する外側領域において互いに隣接する上記第1の電極間に配置されて、上記第1の絶縁性接着剤樹脂が上記互いに隣接する第1の電極のそれぞれに接触することを妨げる第2の絶縁性接着剤樹脂と、
を備える、電極接合構造体を提供する。
【0019】
本発明の第2態様によれば、上記第2の絶縁性接着剤樹脂は、上記外側領域において上記それぞれの第1の電極を封止するように配置されている、第1態様に記載の電極接合構造体を提供する。
【0020】
本発明の第3態様によれば、上記第2の絶縁性接着剤樹脂は、上記第1の絶縁性接着剤樹脂よりも低分子成分が少ない、第1又は2態様に記載の電極接合構造体を提供する。
【0021】
本発明の第4態様によれば、上記第2の絶縁性接着剤樹脂は、上記互いに隣接する第1の電極間に位置する部分が第1の電極上に位置する部分よりも上記対向領域の内側に位置するように、エッジが波形形状に形成されている、第2態様に記載の電極接合構造体を提供する。
【0022】
本発明の第5態様によれば、上記第2の絶縁性接着剤樹脂は、上記互いに隣接する第1の電極間において上記外側領域から上記対向領域の縁部にわたって延在するように配置されている、第1〜4態様のいずれか1つに記載の電極接合構造体を提供する。
【0023】
本発明の第6態様によれば、上記第2の絶縁性接着剤樹脂の高さは、上記第1の電極の高さと上記導電性粒子の高さと上記第2の電極の高さとを合計した高さよりも低い、第1〜5態様のいずれか1つに記載の電極接合構造体を提供する。
【0024】
本発明の第7態様によれば、さらに、上記第1の絶縁性接着剤樹脂中に分散され、上記それぞれの第1の電極とそれらに対向する上記それぞれの第2の電極とを電気的に接続する導電性粒子を備える、第1〜6態様のいずれか1つに記載の電極接合構造体を提供する。
【0025】
本発明の第8態様によれば、上記それぞれの第1の電極は、銀で形成されている、第1〜7態様のいずれか1つに記載の電極接合構造体を提供する。
【0026】
本発明の第9態様によれば、さらに、上記第1及び第2の絶縁性接着剤樹脂が外部に露出しないように覆い隠す絶縁性封止樹脂を備える、第1〜8様態のいずれか1つに記載の電極接合構造体を提供する。
【0027】
本発明の第10態様によれば、複数の第1の電極を有する第1の回路形成体と、上記それぞれの第1の電極に対向するように形成された複数の第2の電極を有する第2の回路成形体との対向領域の縁部に外側で隣接する外側領域において、互いに隣接する上記第1の電極間に硬化又は半硬化状態の第2の絶縁性接着剤樹脂を配置し、
上記対向領域の上記縁部より内側に第1の絶縁性接着剤樹脂を配置し、
上記第1又は第2の回路形成体を介して上記第1の絶縁性接着剤樹脂を加圧加熱して流動させ、上記第2の絶縁性接着剤樹脂と接触した状態で上記第1の絶縁性接着剤樹脂を硬化させて、当該硬化させた第1の絶縁性接着剤樹脂により上記第1の回路形成体と上記第2の回路形成体とを接合する、電極接合方法を提供する。
【0028】
本発明の第11態様によれば、上記第2の絶縁性接着剤樹脂は、熱硬化性の樹脂又は光硬化性の樹脂であり、
上記第2の絶縁性接着剤樹脂を上記互いに隣接する第1の電極間に配置したのち、加熱又は光を照射することにより、上記互いに隣接する第1の電極間に硬化又は半硬化状態の上記第2の絶縁性接着剤樹脂を配置する、第10態様に記載の電極接合方法を提供する。
【0029】
本発明の第12態様によれば、上記第1の絶縁性接着剤樹脂内には、多数の導電性粒子が分散されており、
上記第1の絶縁性接着剤樹脂の上記加圧加熱により、上記それぞれの第1の電極とそれらに対向する上記それぞれの第2の電極とを上記導電性粒子を介して電気的に接合する、第10又は11態様に記載の電極接合方法を提供する。
【0030】
本発明の第13態様によれば、上記第1の絶縁性接着剤樹脂は、上記加圧加熱前においてはシート状である、第12態様に記載の電極接合方法を提供する。
【0031】
本発明の第14態様によれば、上記第1及び第2の絶縁性接着剤樹脂を加圧加熱して硬化させたのち、上記第1及び第2の絶縁性接着剤樹脂が外部に露出しないように絶縁性封止樹脂により覆い隠す、第10〜13態様のいずれか1つに記載の電極接合方法を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明の電極接合構造体によれば、第1の絶縁性接着剤樹脂が互いに隣接する第1の電極のそれぞれに接触することを妨げる第2の絶縁性接着剤樹脂を備えている。これにより、第1の絶縁性接着剤樹脂中の低分子成分の残渣が第1の回路成形体に付着して互いに隣接する第1の電極間をつなぐことを防止することができる。したがって、絶縁性接着剤樹脂に含まれる低分子成分に起因するマイグレーション不良の発生を抑えて、隣接配線電極間の狭ピッチ化に対応することができる。
【0033】
また、本発明の電極接合構造体によれば、上記外側領域において互いに隣接する第1の電極間に配置する樹脂を、絶縁性を有する樹脂としているので、吸水しやすい電極端部の絶縁を強化する効果も得ることができる。
【0034】
本発明の電極接合方法によれば、上記外側領域において互いに隣接する第1の電極間に硬化又は半硬化状態の第2の絶縁性接着剤樹脂を配置したのち、第1及び第2の回路形成体間に第1の絶縁性接着剤樹脂を配置し加圧加熱して、第1の回路形成体と第2の回路形成体とを接合するようにしている。すなわち、第1の絶縁性接着剤樹脂を加圧加熱する前に、第1の絶縁性接着剤樹脂中の低分子成分の残渣がマイグレーション不良を発生させる恐れのある位置に、あらかじめ第2の絶縁性接着剤樹脂を配置している。これにより、第1の絶縁性接着剤樹脂中の低分子成分残渣が第1の回路成形体に付着して互いに隣接する第1の電極間をつなぐことを防止することができる。したがって、絶縁性接着剤樹脂に含まれる低分子成分に起因するマイグレーション不良の発生を抑えて、隣接配線電極間の狭ピッチ化に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の記述を続ける前に、添付図面において同じ部品については同じ参照符号を付している。
以下、本発明の最良の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0036】
《第1実施形態》
図1A〜図1Dを用いて、本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体の構成を説明する。本発明の第1実施形態では、フラットパネルの端子部の接合構造であるガラス基板とフレキシブル基板の接合構造を例にとって説明する。図1Aは、本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体の構成を示す平面図である。図1Bは、図1Aのa−a断面図であり、図1Cは、図1Aのb−b断面図であり、図1Dは、図1Aのc−c断面図である。
【0037】
本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体は、複数の第1の電極4Aを有する第1の回路形成体の一例であるガラス基板4と、それぞれの第1の電極4Aに対向して配置された複数の第2の電極5Aを有する第2の回路形成体の一例であるフレキシブル基板5と、ガラス基板4とフレキシブル基板5との対向領域51に配置されて両者を接合する第1の絶縁性接着剤樹脂2とを備えている。
【0038】
さらに、本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体は、第1の絶縁性接着剤樹脂2中に分散され、それぞれ第1の電極4Aとそれらに対向するそれぞれの第2の電極5Aとを接続する導電性粒子3と、対向領域51の縁部51Aに隣接する外側領域52において、互いに隣接する第1の電極4A,4A間を覆う(封止する)ように配置された第2の絶縁性接着剤樹脂6とを備えている。
【0039】
ここで、「対向領域51の縁部51A」は、ガラス基板4又はフレキシブル基板5の厚み方向(図1Bの縦方向)でガラス基板4とフレキシブル基板5とに挟まれている領域と挟まれていない領域との境界部分よりも内側(上記挟まれている領域側)で、且つ全体の電極間の導通にほとんど影響がない部分に位置している。例えば、対向領域51において電極間の導通が必要な領域の長さ(図1Bの横方向)が3mmである場合には、縁部51Aの長さは、0.1mm〜1.0mm程度である。
【0040】
また、「外側領域52」とは、縁部51Aに外側で隣接している領域であって、ガラス基板4又はフレキシブル基板5の厚み方向(図1Bの縦方向)でガラス基板4とフレキシブル基板5とに挟まれていない領域をいう。言い換えれば、ガラス基板4とフレキシブル基板5との間に絶縁性接着剤樹脂2を挟んだ状態で加圧加熱したときに、絶縁性接着剤樹脂2がガラス基板4とフレキシブル基板5との間からはみ出した領域をいう。
【0041】
ガラス基板4の複数の第1の電極4Aは、例えば厚さ3μm〜5μm程度の厚膜電極(例えば厚膜銀電極)で構成されている。
フレキシブル基板5の複数の第2の電極5Aは、例えば厚さ10〜50μm程度の厚膜電極(例えば厚膜銅電極)と、当該厚膜電極上に例えば厚さ1〜5μmで施した錫メッキとで構成されている。
【0042】
第1の絶縁性接着剤樹脂2は、対向領域51内において、ガラス基板4の複数の第1の電極4Aとフレキシブル基板5の複数の第2の電極5Aとを封止するように配置されている。また、第1の絶縁性接着剤樹脂2は、外側領域52において第2の絶縁性接着剤樹脂6上に覆い被さるように配置されている。この第2の絶縁性接着剤樹脂6により、第1の絶縁性接着剤樹脂2と第2の電極5Aとの接触が妨げられている。第1の絶縁性接着剤樹脂2中の低分子成分残渣7は、図1Dに示すように、互いに隣接する第2の電極5A間で且つ第2の絶縁性接着剤樹脂6上に位置している。なお、ここで「低分子成分」とは、第1の絶縁性接着剤樹脂中に含まれる基板間を接着させるための高分子成分の平均分子量に対して、その平均分子量が十分小さい(例えば1/30〜1/70程度の)成分をいい、マイグレーション不良を発生させる恐れがある成分を含む成分をいう。上記マイグレーション不良を発生させる恐れがある成分としては、例えば、分子量100以下の成分や、ビスフェノールA型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0043】
また、第1の絶縁性接着剤樹脂2は、耐熱性、耐吸湿性、接着性、絶縁性等の面で機能的に優れた樹脂、例えばアクリル樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性の樹脂で構成されている。なお、第1の絶縁性接着剤樹脂2は、さらに、イオンマイグレーションの防止効果が大きく、イオン不純物及び低分子成分残渣が少ない樹脂で構成されることが好ましい。
【0044】
導電性粒子3は、例えば、金属球又は樹脂性のボールをコアとして、その表面上にニッケルメッキが形成され、当該ニッケルメッキの表面上にさらに金メッキが形成されてなる粒子である。導電性粒子3の平均粒径は、3〜15μmの範囲内で形成されることが好ましい。導電性粒子3の平均粒径が3μm未満である場合には電極間の導通を確保することが困難であり、導電性粒子3の平均粒径が15μmを越える場合には電極間のショート不良が発生しやすくなるといった不都合を生じる恐れがある。
【0045】
第2の絶縁性接着剤樹脂6は、外側領域52において互いに隣接する第1の電極4A,4A間に、第1の電極4Aの高さ(厚さ)と導電性粒子3の高さ(粒径)と第2の電極5Aの高さ(厚さ)とを合計した高さよりも低く形成されている。
【0046】
これに対して、第2の絶縁性接着剤樹脂6がそれらの合計高さよりも高く形成されている場合には、第1の絶縁性接着剤樹脂2を加圧加熱(加圧するとともに加熱)した際に、第2の絶縁性接着剤6が障壁となって導電性粒子3の外側領域52への移動を妨げる恐れがある。この場合、導電性粒子3が縁部51Aで凝集して、ショート不良が発生する恐れがある。
【0047】
第2の絶縁性接着剤樹脂6の高さは、具体的には以下のように設定する。例えば、第1の電極4Aの厚さが5μmであり、第2の電極5Aの厚さが20μmであり、導電性粒子3の平均粒径が8μmであるとき、導電性粒子3を介して電気的に接合されるガラス基板4とフレキシブル基板5との間の距離(高さ)は、33μm(=5μm+8μm+20μm)である。したがって、絶縁性接着剤樹脂2の高さは33μmよりも低く設定する。
【0048】
また、第2の絶縁性接着剤樹脂6は、熱硬化性の樹脂で構成されている。この熱硬化性樹脂としては、第1の絶縁性接着剤樹脂2と同様に、耐熱性、耐吸湿性、接着性、絶縁性等の面で機能的に優れた樹脂が用いられることが好ましく、イオンマイグレーションの防止効果が大きく、イオン不純物及び低分子成分が少ない樹脂が用いられることがさらに好ましい。具体的には、第2の絶縁性接着剤樹脂6は、例えば、ガラス基板のITO(酸化インジウムスズ)電極の絶縁膜として用いられる熱硬化性の無機ガラスペーストや、扱い易さの面で優れたエポキシ系樹脂などで構成されることが好ましい。なお、第2の絶縁性接着剤樹脂6は、第1の絶縁性接着剤樹脂6に比べて加圧加熱して流動させる必要がないので、低分子成分を含んでいてもよい。すなわち、第2の絶縁性接着剤樹脂6から低分子成分が分離して低分子成分残渣となる恐れは、第1の絶縁性接着剤樹脂2よりも少ない。また、第2の絶縁性接着剤樹脂6は、加圧加熱して流動させる必要がないので、低分子成分をほとんど含まない樹脂で構成することができる。すなわち、第2の絶縁性接着剤樹脂6は、第1の絶縁性接着剤樹脂2よりも低分子成分を少なくすることができる。これにより、第2の絶縁性接着剤樹脂6から低分子成分が分離して低分子成分残渣となる恐れをさらに抑えることができる。
【0049】
なお、第2の絶縁性接着剤樹脂6は、第1の絶縁性接着剤樹脂2が加圧加熱されたときに主に流動する側に配置されていればよく、第1の絶縁性接着剤樹脂2の全周に配置する必要はない。例えば、絶縁性接着剤樹脂2が図1Aの左右に向かってのみ流動する場合には、その左右両側に配置されていればよい。また、低分子成分残渣7が発生する部分であっても、マイグレーション不良を発生する可能性が低い又は無い部分には、第2の絶縁性接着剤樹脂6を配置する必要はない。なお、本発明の第1実施形態においては、主にフレキシブル基板5の端部側(図1Bの右側)に向かって絶縁性接着剤樹脂2が流動するものと想定している。このため、第2の絶縁性接着剤樹脂6は、フレキシブル基板5の端部側の外側領域52にのみ配置している。また、本発明の第1実施形態においては、ガラス基板4の端部側(図1Bの左側)には、ほとんど絶縁性接着剤樹脂2が流動しないものと想定している。このため、ガラス基板4の端部側の縁部51Aにおいて互いに隣接する第1の電極4A,4A間に、第2の絶縁性接着剤樹脂6よりもサイズが小さい第3の絶縁性接着剤樹脂60を配置している。第3の絶縁性接着剤樹脂60は、第2の絶縁性接着剤樹脂6と同様の材料により構成されている。
【0050】
以上のように構成される本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体によれば、第1の絶縁性接着剤樹脂2が互いに隣接する第1の電極4A,4Aのそれぞれに接触することを妨げる第2の絶縁性接着剤樹脂6を備えている。これにより、第1の絶縁性接着剤樹脂2中の低分子成分残渣7がガラス基板4に付着して互いに隣接する第1の電極4A,4A間をつなぐことを防止することができる。また、第2の絶縁性接着剤樹脂6は流動させる必要がないので、第2の絶縁性接着剤樹脂6中の低分子成分を低減することが可能である。したがって、第1及び第2の絶縁性接着剤樹脂2,6に含まれる低分子成分に起因するマイグレーション不良の発生を抑えて、隣接配線電極間(ここでは、互いに隣り合う第1の電極4A,4A、又は第2の電極5A,5A)の狭ピッチ化に対応することができる。
【0051】
また、本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体によれば、外側領域52において互いに隣接する第1の電極4A,4A間に配置する樹脂を、絶縁性を有する樹脂(第2の絶縁性接着剤樹脂6)としているので、吸水しやすい電極端部の絶縁を強化する効果も得られる。
【0052】
また、本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体によれば、第2の絶縁性接着剤樹脂6の高さを、第1の電極4Aの高さと導電性粒子3の粒径と第2の電極5Aの高さとを合計した高さよりも低く設定している。これにより、導電性粒子3の凝集を抑制して、ショート不良の発生を抑えることができる。
【0053】
また、本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体によれば、第2の絶縁性接着剤樹脂6は、加圧加熱して流動させる必要がないので、第1の絶縁性接着剤樹脂2よりも低分子成分を少なくすることができる。これにより、第2の絶縁性接着剤樹脂6の低分子成分残渣を抑えて、マイグレーション不良の発生を抑えることができる。
【0054】
また、本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体によれば、上記のようにマイグレーション不良の発生が抑えられるので、ガラス基板4の第1の電極4Aを銀で形成することができ、フラットディスプレイパネルなどへの適用が可能となる。
【0055】
なお、上記では第1の回路形成体として、ガラス基板を一例に挙げたがプリント配線基板やフレキシブル基板等であってもよい。また、上記では第2の回路形成体として、フレキシブル基板を一例に挙げたがICチップ等の電子部品であってもよい。
また、上記では、各部材の材質や寸法について例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々な態様で変形が可能である。
なお、第1の絶縁性接着剤樹脂2と第2の絶縁性接着剤樹脂6との境界付近は、図1A〜図1Dでは図示の都合上それらが隣接するように示したが、当該境界付近においては、それらは混在していても良い。
【0056】
次に、図1B〜図1D、図2A〜図2C及び図3を用いて、本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体の電極接合方法について説明する。図2A〜図2Cは、本発明の第1実施形態にかかる電極接合方法の手順を示す断面図である。図3は、本発明の第1実施形態にかかる電極接合方法のフローチャートである。
【0057】
本発明の第1実施形態にかかる電極接合方法を説明する前に、前提条件について説明する。
ここでは、ガラス基板4とフレキシブル基板5との電極接合を行うのに、図2Cに示す圧着ツール8を使用する。この圧着ツール8は、下端部に加熱用ヒータ8Aを備えるとともに上部にエアシリンダ8Bを備え、エアシリンダ8Bに接続されたモータ8Cが駆動することにより上下動可能に構成されている。
また、ここでは、図示していないが、ガラス基板4を下にした状態で圧着ステージである支持台に載置されて電極接合が行われるものとする。
また、ここでは、第3の絶縁性接着剤樹脂60についての説明は、第2の絶縁性接着剤樹脂6と同様であるので省略する。
【0058】
また、ここでは、ガラス基板4上に予め硬化状態の第2の絶縁性接着剤樹脂6が配置されているものとする。なお、第2の絶縁性接着剤樹脂6のガラス基板4上への配置は、例えば以下のように行えばよい。
【0059】
すなわち、外側領域52において互いに隣接する第1の電極4A,4A間に、ディスペンサによる塗布やマスク印刷、コータ塗工等の方法により、ペースト状の熱硬化性の絶縁性接着剤樹脂(例えばエポキシ系樹脂)を供給する。この後、当該絶縁性接着剤樹脂を加熱して硬化状態にする。これにより、硬化状態の第2の絶縁性接着剤樹脂6をガラス基板4上に配置できる。
【0060】
なお、上記絶縁性接着剤樹脂はペースト状であるものに限定されず、シート(フィルム)状であってもよい。この場合、絶縁性接着剤樹脂をコータ塗工等の公知の方法でシート状にしてリールに巻き取り、必要に応じてリール供給すればよい。
【0061】
以下、本発明の第1実施形態にかかる電極接合方法を説明する。
まず、ステップS1では、図2Aに示すように、それぞれの第1の電極4Aとそれぞれの第2の電極5Aとが対向するように、ガラス基板4とフレキシブル基板5とを対向配置するとともに、硬化状態の第2の絶縁性接着剤樹脂6を外側領域52に位置させる。
【0062】
ステップS2では、図2Bから図2Cに示すように、ガラス基板4とフレキシブル基板5との対向領域51の縁部51Aより内側に第1の絶縁性接着剤樹脂2を配置する。
なお、図2Bでは、第1の絶縁性接着剤樹脂2がガラス基板4側に配置(貼付)されている例を示したが、第1の絶縁性接着剤樹脂2はフレキシブル基板5側に配置(貼付)されてもよい。
【0063】
ステップS3では、図2Cに示すように、圧着ツール8によりガラス基板4又はフレキシブル基板5を介して第1の絶縁性接着剤樹脂2を加圧加熱する。より具体的には、モータ8Cを駆動させて圧着ツール8を降下させ、フレキシブル基板5に加熱用ヒータ8Aの加圧加熱面を接触させる。この接触状態で、さらにモータ8Cを駆動させて圧着ツール8を降下させるとともに、加熱用ヒータ8Aを発熱させる。これにより、フレキシブル基板5を介して第1の絶縁性接着剤樹脂2を加圧加熱する。
【0064】
上記加圧加熱により、第1の絶縁性接着剤樹脂2が溶融(軟化)して対向領域51の縁部51Aを通じて外側領域52に流動し、図1B及び図1Cに示すように、第1及び第2の電極4A,5Aを封止するように第1の絶縁性接着剤樹脂2が対向領域51に隙間無く充填される。これにより、第1の絶縁性接着剤樹脂2がガラス基板4とフレキシブル基板5とを強固に接合する。また、このとき、外側領域52に流動した第1の絶縁性接着剤樹脂2の一部は、図1B及び図1Dに示すように第2の絶縁性接着剤樹脂6に覆い被さるように接触する。また、第1の絶縁性接着剤樹脂2の流動に伴って、第1の絶縁性接着剤樹脂2中に分散された導電性粒子3が、第1の電極4Aと第2の電極5Aとの間に配置され、両者を電気的に接合する。なお、このとき、第1の絶縁性接着剤樹脂2中の低分子成分残渣7は、第2の絶縁性接着剤樹脂6上の主に隣接配線電極間に位置する。
【0065】
以上、本発明の第1実施形態にかかる電極接合方法によれば、外側領域52において互いに隣接する第1の電極4A,4A間に硬化状態の第2の絶縁性接着剤樹脂6を配置したのち、ガラス基板4とフレキシブル基板5との間に第1の絶縁性接着剤樹脂2を配置し加圧加熱して、両者を接合するようにしている。すなわち、第1の絶縁性接着剤樹脂2を加圧加熱する前に、第1の絶縁性接着剤樹脂2中の低分子成分の残渣7がマイグレーション不良を発生させる恐れのある位置に、あらかじめ第2の絶縁性接着剤樹脂6を配置している。これにより、第1の絶縁性接着剤樹脂2中の低分子成分残渣7がガラス基板4に付着して互いに隣接する第1の電極4A,4A間をつなぐことを防止することができる。したがって、第1の絶縁性接着剤樹脂2に含まれる低分子成分に起因するマイグレーション不良の発生を抑えて、隣接配線電極間の狭ピッチ化(例えば0.1mm以下)に対応することができる。
【0066】
また、加圧加熱された第1の絶縁性接着剤樹脂2が外側領域52に向けて流動する際、第1の絶縁性接着剤樹脂2は、第2の絶縁性接着剤樹脂6と衝突し、その流動速度が低減される。これにより、対向領域51への第1の絶縁性接着剤樹脂2の充填性を高めて、絶縁性接着剤樹脂2とガラス基板4及びフレキシブル基板5との密着性を向上させることができる。したがって、第1の絶縁性接着剤樹脂2とガラス基板4及びフレキシブル基板5との密着不足によるマイグレーション不良の発生も抑えることができる。
【0067】
また、本発明の第1実施形態にかかる電極接合方法によれば、上記のようにマイグレーション不良の発生が抑えられるので、ガラス基板4の第1の電極4Aを銀で形成することができ、フラットディスプレイパネルなどへの適用が可能となる。
【0068】
なお、上記ステップS2で用いる第1の絶縁性接着剤樹脂2の形態は、ペースト状であってもシート(フィルム)状でもよい。例えば、異方性導電性ペーストや異方性導電性フィルム、異方性導電性シートであってもよい。それらの中でも異方性導電性シートが用いられることが、加工性や取り扱い性が優れているので好ましい。なお、上記では、導電性粒子3が分散された第1の絶縁性接着剤樹脂2を用いて電極接合を行ったが本発明はこれに限定されない。例えば、第1の絶縁性接着剤樹脂2としてNCF(ノンコンダクティブフィルム)やNCP(ノンコンダクティブペースト)などを用いて電極接合を行ってもよい。
【0069】
また、加圧加熱前の第1の絶縁性接着剤樹脂2の厚さは、15μm〜60μmの範囲で設定されることが好ましい。第1の絶縁性接着剤樹脂2の厚さが、15μm未満である場合には、第1及び第2の電極4A,5A間の電極接合強度が不足し剥がれ易くなり、60μmを越える場合には、第1及び第2の電極4A,5A間の電気的接続が取り難くなる。また、第1の絶縁性接着剤樹脂2の厚さは、第1の電極4A又は第2の電極5Aの厚さに応じて設定されることが好ましく、例えば第1の電極4A又は第2の電極5Aの厚さが5〜20μmであれば、35μm〜50μm程度の範囲で設定されることが好ましい。
【0070】
また、第1の絶縁性接着剤樹脂2の形状は、特に限定されるものではなく、その幅及び長さはそれぞれ、第1の電極4A又は第2の電極5Aの形状に応じるとともに導電性粒子3により第1及び第2の電極4A,5A間の電気的接続が確保できるように設定されればよい。
【0071】
また、上記では、ガラス基板4上に配置する第2の絶縁性接着剤樹脂6を硬化状態としたが、半硬化状態としてもよい。この場合、上記ステップS3において、第1の絶縁性接着剤樹脂2への圧着ツール8による加圧加熱力を利用して、第2の絶縁性接着剤樹脂6を硬化状態にすればよい。
【0072】
次に、第2の絶縁性接着剤樹脂6の形状例について説明する。
まず、図13及び図14を用いて、従来例の電極接合構造体について説明する。図13及び図14は、従来例の電極接合構造体の一部平面図である。
【0073】
電極接合時において絶縁性接着剤樹脂102を加圧加熱した際、通常、絶縁性接着剤樹脂102は、主に隣接配線電極間を流動経路として外側領域100Yまで流動する。外側領域100Yまで流動した絶縁性接着剤樹脂102は、第1の電極104A上を充填するために、図13の太い矢印で示すように、第1の電極104Aを高さ方向に這い上がって第1の電極104A上に移動しようとする。このため、絶縁性接着剤樹脂102は、外側領域100Yにおいて互いに隣接する第1の電極104A,104A間に位置する部分が、第1の電極104A上に位置する部分よりも外側(図13の上方)に位置する。すなわち、外側領域100Yにおける絶縁性接着剤樹脂102のエッジが波形形状となる。
【0074】
しかしながら、絶縁性接着剤樹脂102を構成する樹脂の種類(粘度)、第1の電極104Aの幅寸法、及び隣接配線電極間の幅寸法などにより、絶縁性接着剤樹脂102の流動速度は変化するため、絶縁性接着剤樹脂102が第1の電極104A上に移動できないことがある。このため、図14に示すように、フレキシブル基板105の端部領域(図14では一点鎖線で囲んだ領域)において、第1の電極104Aの一部が外部に露出する恐れがある。このような場合、この露出部分が吸水経路となる可能性があり、マイグレーション不良が発生する恐れがある。
【0075】
この課題を解決するため、第2の絶縁性接着剤樹脂6は、図4A又は図4Bに示すような形状に形成されることが好ましい。図4A及び図4Bは、ガラス基板4上に第2の絶縁性接着剤樹脂6と加圧加熱前の第1の絶縁性接着剤樹脂2とを配置した状態を示す一部平面図である。図4A及び図4Bにおいて、一点鎖線の矢印は、第1の絶縁性接着剤樹脂2の流動経路を示している。
【0076】
図4Aでは、第2の絶縁性接着剤樹脂6の互いに隣接する第1の電極4A,4A間に位置する部分が、第1の電極4A上に位置する部分よりも内側(図4Aの下方)に位置して、第2の絶縁性接着剤樹脂6の内側のエッジが波形形状に形成されている。これにより、加圧加熱された第1の絶縁性接着剤樹脂2は、第2の絶縁性接着剤樹脂6の波形形状に案内されて、露出部分を生じることなく、より確実に第1の電極4A上に配置される。したがって、マイグレーション不良の発生を抑えることができる。
【0077】
一方、図4Bでは、第2の絶縁性接着剤樹脂6の外側(図4Bの上方)のエッジを直線状に形成している。このような形状でも、図4Aに示す形状と同様に、マイグレーション不良の発生を抑えることができる。
【0078】
なお、上記では、第2の絶縁性接着剤樹脂6を外側領域52にのみ配置したが、図5A及び図5Bに示すように、縁部51Aにも配置されてもよい。すなわち、第2の絶縁性接着剤樹脂6は、外側領域52から対向領域51の縁部51Aにわたって延在するように配置されてもよい。これにより、第1の絶縁性接着剤樹脂2中の低分子成分残渣7が縁部51Aに付着することも防止して、マイグレーション不良の発生をさらに抑えることができる。なお、この場合、縁部51Aに位置する第2の絶縁性接着剤樹脂6の高さが高すぎると、第2の絶縁性接着剤樹脂6が第2の電極5Aに接触し、第1の絶縁性接着剤2の厚み方向の高さにバラツキが生じる恐れがある。このバラツキにより、位置ズレが生じて、接続不良に繋がる恐れがある。このため、縁部51Aに位置する第2の絶縁性接着剤樹脂6の高さは、第1の電極4Aの高さと導電性粒子3の高さとを合計した高さよりも低く設定することが好ましい。
また、上記では、第2の絶縁性接着剤樹脂6の内側のエッジを波形形状としたが、図5Bに示すように直線状であっても、マイグレーション不良の発生を抑制する効果を十分に得ることができる。
【0079】
また、上記では、第2の絶縁性接着剤樹脂6が、熱で硬化又は半硬化する熱硬化性の樹脂であるものとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2の絶縁性接着剤樹脂6は、光で硬化又は半硬化する光硬化性の樹脂であってもよい。また、第2の絶縁性接着剤樹脂6は、光と熱の併用で硬化又は半硬化する樹脂であってもよい。第2の絶縁性接着剤樹脂6が光硬化性の樹脂である場合には、例えば、ペースト状の光硬化性のシリコーン樹脂やウレタン、ポリブタジエンなどのUV(光)硬化アクリレート変性樹脂が用いられることが好ましい。
【0080】
《第2実施形態》
図6及び図7を用いて、本発明の第2実施形態にかかる電極接合構造体及び電極接合方法について説明する。図6は、本発明の第2実施形態にかかる電極接合構造体の断面図である。図7は、本発明の第2実施形態にかかる電極接合構造体の電極接合方法のフローチャートである。本発明の第2実施形態にかかる電極接合構造体は、さらに絶縁性封止樹脂10を備える点で、本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体と相違する。本発明の第2実施形態にかかる電極接合方法は、上記ステップS3の後、第1及び第2の絶縁性接着剤樹脂2,6を絶縁性封止樹脂10により外部に露出しないように覆い隠すステップS4の工程をさらに備える点で、本発明の第1実施形態にかかる電極接合方法と相違する。それ以外の点については同様であるので重複する説明は省略し、主に相違点を説明する。
【0081】
絶縁性封止樹脂10は、図6に示すように、第1及び第2の絶縁性接着剤樹脂2,6が外部に露出しないように覆い隠す(封止する)よう設けられている。すなわち、絶縁性封止樹脂10は、ガラス基板4とフレキシブル基板5との電極接合部を封止するように設けられている。
【0082】
このように絶縁性封止樹脂10を設けることにより、ガラス基板4とフレキシブル基板5との電極接合部に外部から水や腐食性ガス等が侵入することを防ぐことができる。また、第1及び第2の電極4A,5Aや導電性粒子3の酸化が防止され、電気的な導通が阻害されることがないので、高信頼性の接合品質を実現することができる。また、絶縁性封止樹脂10が硬化することにより、第1及び第2の電極4A,5Aの接合強度が補強され、機械的曲げ強度等に対する信頼性も向上する。
【0083】
なお、絶縁性封止樹脂10は、シリコーン樹脂や、ウレタン、ポリブタジエンなどのUV硬化性樹脂などで構成されること好ましい。また、絶縁性封止樹脂10は、熱で硬化するものであっても、光で硬化するものであってもよく、また、光と熱の併用で硬化するものでもよい。
また、絶縁性封止樹脂10の材質としては、作業環境、揮発成分の再付着の問題から、無溶剤型の樹脂が用いられることが好ましい。
【0084】
また、絶縁性封止樹脂10には、高温高湿の環境下において電圧を印加した際に発生するイオンマイグレーションを防止する特性を有することも求められている。このため、絶縁性封止樹脂10の材質としては、透水性が小さく、イオン不純物も少ない材質が用いられることが好ましい。
さらに、絶縁性封止樹脂10の材質としては、第1及び第2の電極4A,5Aの接合強度の補強効果を有するとともにフレキシブル基板5の変形に追従できるように、ある程度の可撓性を有する弾性体であることが好ましい
【0085】
また、絶縁性封止樹脂10の厚さは、0.1mm〜5.0mmの範囲で設定されることが好ましい。絶縁性封止樹脂10の厚さが0.1mm未満である場合には、ガラス基板4とフレキシブル基板5との電極接合部に外部から水や腐食性ガス等が侵入することを防止することが困難となり、絶縁性封止樹脂10の厚さが5mmを越える場合には、絶縁性封止樹脂10が硬化するのに時間を要し、タクトが長くなる。
【0086】
また、絶縁性封止樹脂10の形成方法としては、ディスペンサを用いて塗布することにより形成する方法が採られることが好ましい。この場合の塗布粘度は、塗布性の観点から2mPa・s〜20Pa・s程度の範囲であることが好ましい。しかしながら、これに限定されることなく、絶縁性封止樹脂10の粘度に応じて、スクリーン印刷、インクジェット、コータなどにより形成する方法が採られてもよい。
【0087】
また、絶縁性封止樹脂10を形成するときには、ガラス基板4及びフレキシブル基板5と絶縁性封止樹脂10との密着性を向上させるために、あらかじめUV洗浄を行っておくことが好ましい。このようにして作製した電極接合構造体は、長期接合信頼性に優れ、例えば0.1mmピッチ以下の電極間の狭ピッチ化にも対応することができる。
【0088】
《実施例》
次に、本発明の第2実施形態の電極接合方法の具体例の1つである実施例を、図1A〜図1D、図2A〜図2C、図4A、図4B、図6、及び図7を参照しながら説明する。まず、各構成要素の具体的構成について説明する。
【0089】
本実施例において、第1の回路形成体は、厚さ1.8mmのガラス上に、スクリーン印刷法と焼成により厚さ3μmの銀で形成した複数の銀電極4Aを、L/S=50μm/50μmの幅で配置したガラス基板4で構成している。なお、Lは電極の幅を示し、Sは隣り合う電極間の隙間の幅を示す。
【0090】
また、本実施例において、第2の回路形成体は、厚さ75μmのポリイミドフィルム上に、厚さ25μmの銅で形成した複数の銅電極5AをL/S=50μm/50μmの幅で配置したフレキシブル基板5で構成している。すなわち、上記構成の電極間のピッチは50μm+50μm=100μm=0.1mmである。
【0091】
また、本実施例において、第1の絶縁性接着剤樹脂は、厚さ35μmのシート状で且つ熱硬化性のエポキシ樹脂2で構成している。
また、本実施例において、導電性粒子3は、樹脂性のボールをコアとしてNi−Auで金属メッキして平均粒径8μm程度に形成し、エポキシ樹脂2中に均一に分散している。
また、本実施例において、第2の絶縁性接着剤樹脂は、ペースト状で且つ光硬化性のポリブタジエンUV硬化アクリレート変性樹脂(以下、UV硬化性樹脂という)6で構成している。
【0092】
また、本実施例において、絶縁性封止樹脂10は、水銀ランプで2000mJ/cm2の積算光量で硬化するポリブタジエンアクリレートでなる樹脂で構成している。
なお、絶縁性封止樹脂10の材質は、特に不純物塩素イオン濃度が数ppmと低く、吸水率が低く、高温高湿の環境下で電圧を印加した際に発生するイオンマイグレーションに対する耐性が優れているか否かを選定基準とした。
また、あらかじめ供給するUV硬化性樹脂6との親和性(接着性の相性)を考慮して同じ材料とした。
なお、絶縁性封止樹脂10の材質としてエポキシアクリレート系の樹脂を採用した電極接合構造体においては、樹脂の不純物塩素イオン濃度が原料からの混入により比較的高いことから、THB信頼性試験により絶縁不良が発生することを確認している。
【0093】
以下、本実施例の電極接合方法を説明する。
まず、図2A、図4A又は図4Bに示すように、ガラス基板4の複数の銀電極4Aのそれぞれの一部を覆うように硬化状態のUV硬化性樹脂6を配置する。
このとき、UV硬化性樹脂6の配置は、エア式ディスペンサを用いて塗布したのち硬化させることにより行うことができる。ここでは、ノズル条件として、外形寸法φ0.15mmのノズルを用いる。また、塗布条件として、それぞれ、塗布スピードを4.0mm/s、吐出圧力を65kPa、ノズルギャップを50μmとし、温調器によりシリンジの温度を室温程度に調整する。このような条件により、UV硬化性樹脂6を、幅0.3mm、厚み20μmで塗布する。この後、UV硬化性樹脂6に、水銀ランプを備えたUV硬化装置にて2000mJ/cm2の積算光量の光を照射し、UV硬化性樹脂6を硬化状態にする。なお、このとき、UV硬化性樹脂6の厚みは、エポキシ樹脂2の厚み(35μm)よりも小さくすることに留意する。
【0094】
次いで、図2Aに示すように、それぞれの銀電極4Aとそれぞれの銅電極5Aとが対向するように、ガラス基板4とフレキシブル基板5とを対向配置するとともに、硬化状態のUV硬化性樹脂6を外側領域52に位置させる(図7のステップS1)。
次いで、図2Bから図2Cに示すように、ガラス基板4とフレキシブル基板5との対向領域51の縁部51Aより内側にエポキシ樹脂2を配置する(図7のステップS2)。
【0095】
次いで、図2Cに示すように、圧着ツール8によりガラス基板4又はフレキシブル基板5を介してエポキシ樹脂2を加圧加熱する(図7のステップS3)。
より具体的には、モータ8Cを駆動させて圧着ツール8を降下させ、フレキシブル基板5に加熱用ヒータ8Aの加圧加熱面を接触させる。この接触状態で、さらにモータ8Cを駆動させて圧着ツール8を降下させるとともに、加熱用ヒータ8Aを発熱させる。これにより、フレキシブル基板5を介してエポキシ樹脂2を加圧加熱する。このとき、加熱用ヒータ8Aによる加熱温度はエポキシ樹脂2に対して180℃となるように設定し、エアシリンダ8Bによる加圧力は3MPaに設定し、それらの加圧加熱時間は10秒に設定する。
【0096】
上記加圧加熱により、エポキシ樹脂2が溶融(軟化)して対向領域51の縁部51Aを通じて外側領域52に流動し、図1B及び図1Cに示すように、銀電極4A及び銅電極5Aを封止するようにエポキシ樹脂2が対向領域51に隙間無く充填される。これにより、エポキシ樹脂2がガラス基板4とフレキシブル基板5とを強固に接合する。また、このとき、外側領域52に流動したエポキシ樹脂2の一部は、図1B及び図1Dに示すようにUV硬化性樹脂6に覆い被さるように接触する。また、エポキシ樹脂2の流動に伴って、エポキシ樹脂2中に分散された導電性粒子3が、銀電極4Aと銅電極5Aとの間に配置され、両者を電気的に接合する。なお、このとき、エポキシ樹脂2中の低分子成分残渣7は、UV硬化性樹脂6上の主に隣接配線電極間に位置する。
【0097】
次いで、エポキシ樹脂2及びUV硬化性樹脂6の外側領域52で外部に露出する部分に、UV洗浄を行ったのち、ディスペンサ(武蔵エンジニアリング製)を用いて絶縁性封止樹脂10を塗布する。このとき、絶縁性封止樹脂10の塗布量は、光硬化後の厚さが1.0mm程度となるような量とする。この後、塗布した絶縁性封止樹脂10にUV光を照射して、絶縁性封止樹脂10を硬化させる。これにより、エポキシ樹脂2及びUV硬化性樹脂6が外部に露出しないように封止される(図7のステップS4)。
なお、絶縁性封止樹脂10の光硬化後の厚みを数十μm程度まで薄くしたときには、表面の硬化阻害が発生してUV光の照射後も表面にベタ付きが残り、この状態でTHB試験を行ったときには絶縁性封止樹脂10が水を吸って絶縁不良が発生することを確認している。
【0098】
上記電極接合方法により接合された電極接合構造体は、ガラス基板4及びフレキシブル基板5とエポキシ樹脂2との密着性が優れている。また、上記電極接合構造体は、エポキシ樹脂2から分離する低分子成分残渣7がガラス基板4の隣接配線電極間の界面に直接的に付着することが抑制される。これにより、イオン伝導度が抑制され、密着性の低下によるマイグレーション不良の発生が抑えられている。また、外側領域52において、導電性粒子3の凝集が抑制され、ショート不良の発生も抑制されている。したがって、0.1mmピッチ以下の電極間の狭ピッチ化にも対応することができる。
【0099】
次に、図8A〜図8C、図9A〜図9C、図10、及び図11を用いて、第2の回路形成体がICチップ部品等の矩形の電子部品15であるときの電極接合構造体について説明する。なお、図9A〜図9Cにおいては、図示の都合上、第2の絶縁性接着剤樹脂6と第1の絶縁性接着剤樹脂2との境界付近は、それらが隣接するように示しているが、それらが混在していても良い。
【0100】
図8Aは、従来において、第2の回路形成体が電子部品15であるときの電極接合構造体の構造を示す模式平面図である。図8Aでは、電極接合部分の構造を理解し易くするために、電子部品15を取り除いた状態を示している。図8Bは、図8Aのd−d断面図であり、図8Cは、図8Aのe−e断面図である。なお、図8A中の大きな楕円は導電性粒子3の凝集が発生している領域を示している。
【0101】
図9Aは、本発明の第1実施形態において、第2の回路形成体が電子部品15であるときの電極接合構造体の構造を示す模式平面図である。図9Aでは、電極接合部分の構造を理解し易くするために、電子部品15を取り除いた状態を示している。図9Bは、図9Aのf−f断面図であり、図9Cは、図9Aのg−g断面図である。なお、図9A中の白丸は導電性粒子3を示している。
【0102】
第2の回路形成体が電子部品15である場合には、矩形の電子部品15に配置される複数の第2の電極5Aに対向するように、図8A〜図8C及び図9A〜図9Cに示すようにガラス基板4の複数の電極4Aが配置される。第1の絶縁性接着剤樹脂2が圧着ツール8によって加圧加熱されたとき、第1の絶縁性接着剤樹脂2は、図8A及び図9Aの主に上下左右方向に広がる。このため、電極接合時に、第2の絶縁性接着剤樹脂6及び第1の絶縁性接着剤樹脂2の配置が図1Aに示した構成と異なる。
【0103】
図10は、一例として、単体の第1の絶縁性接着剤樹脂2がガラス基板4の複数の第1の電極4Aの全てを覆う(封止する)ように配置され、第1の絶縁性接着剤樹脂2の全周沿って第2の絶縁性接着剤樹脂6が配置された構成を示している。
また、第2の絶縁性接着剤樹脂6は、上述したように、第1の絶縁性接着剤樹脂2が加圧加熱されたときに溶融(軟化)して、流動する側に配置されていればよい。第2の回路形成体が矩形の電子部品15であるとき、電子部品15の角部は、他の部分に比べて、ガラス基板4上の複数の第1の電極4Aが密集していない箇所である。また、電子部品15の角部は、導電性粒子3が凝集したとしてもショート不良を起こす可能性が低い箇所である。
【0104】
図11は、その一例として、単体の第1の絶縁性接着剤樹脂2がガラス基板4の複数の第1の電極4Aの全てを覆う(封止する)ように配置され、電子部品15の角部以外の部分に第2の絶縁性接着剤樹脂6が配置された構成を示している。
以上、第2の回路形成体が電子部品15である場合について説明したが、上記以外の点については、他の構成と同様であるので詳しい説明は省略する。
【0105】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、有機ELを代表とする異方性導電性シートを使用したフレキシブル基板同士の電極接合構造及び接合方法等、種々の態様で実施できる。
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明にかかる電極接合構造体及び電極接合方法は、マイグレーション不良の発生を抑えるとともにショート不良の発生を抑える効果を有するので、回路形成体の電極に他の回路形成体の電極を導電性粒子が分散された絶縁性接着剤樹脂を用いて接合する技術、特にガラス基板とフレキシブル基板との電極接合に代表されるフラットパネルの接合技術において、隣接する電極間の狭ピッチ化が求められるときに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1A】本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体の構成を示す平面図である。
【図1B】図1Aのa−a断面図である。
【図1C】図1Aのb−b断面図である。
【図1D】図1Aのc−c断面図である。
【図2A】本発明の第1実施形態にかかる電極接合方法の手順を示す断面図である。
【図2B】図2Aに続く手順を示す断面図である。
【図2C】図2Bに続く手順を示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかる電極接合方法のフローチャートである。
【図4A】本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体の第2の絶縁性接着剤樹脂の配置例を示す第1の回路形成体の平面図である。
【図4B】図4Aとは別の第2の絶縁性接着剤樹脂の配置例を示す第1の回路形成体の平面図である。
【図5A】図2Aとは別の第2の絶縁性接着剤樹脂の配置例を示す断面図である。
【図5B】図5Aに示す第1の回路形成体の平面図である。
【図6】本発明の第2実施形態にかかる電極接合構造体の断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態にかかる電極接合方法のフローチャートである。
【図8A】従来の電極接合構造体において、第2の回路形成体が電子部品であるときの、電子部品を取り除いた状態を示す平面図である。
【図8B】図8Aのd−d断面図である。
【図8C】図8Aのe−e断面図である。
【図9A】本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体において、第2の回路形成体が電子部品であるときの、電子部品を取り除いた状態を示す平面図である。
【図9B】図9Aのf−f断面図である。
【図9C】図9Aのg−g断面図である。
【図10】第2の回路形成体が電子部品であるときの、第1及び第2の絶縁性接着剤樹脂の配置例を示す平面図である。
【図11】図10とは別の第2の絶縁性接着剤樹脂の配置例を示す平面図である。
【図12A】従来例の電極接合方法の手順を示す断面図である。
【図12B】図12Aに続く手順を示す断面図である。
【図12C】図12Bのx−x断面図である。
【図12D】図12Bのy−y断面図である。
【図13】従来例の電極接合構造体の絶縁性接着剤樹脂の形状を示す平面図である。
【図14】図13とは別の絶縁性接着剤樹脂の形状を示す平面図である。
【符号の説明】
【0108】
2 第1の絶縁性接着剤樹脂
3 導電性粒子
4 ガラス基板
4A 第1の電極
5 フレキシブル基板
5A 第2の電極
6 第2の絶縁性接着剤樹脂
7 低分子成分残渣
8 圧着ツール
10 絶縁性封止樹脂
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1の電極を有する第1の回路形成体と、
上記それぞれの第1の電極に対向して配置された複数の第2の電極を有する第2の回路形成体と、
上記第1の回路形成体と上記第2の回路形成体との対向領域に配置されて両者を接合する第1の絶縁性接着剤樹脂と、
上記対向領域の縁部に隣接する外側領域において互いに隣接する上記第1の電極間に配置されて、上記第1の絶縁性接着剤樹脂が上記互いに隣接する第1の電極のそれぞれに接触することを妨げる第2の絶縁性接着剤樹脂と、
を備える、電極接合構造体。
【請求項2】
上記第2の絶縁性接着剤樹脂は、上記外側領域において上記それぞれの第1の電極を封止するように配置されている、請求項1に記載の電極接合構造体。
【請求項3】
上記第2の絶縁性接着剤樹脂は、上記第1の絶縁性接着剤樹脂よりも低分子成分が少ない、請求項1又は2に記載の電極接合構造体。
【請求項4】
上記第2の絶縁性接着剤樹脂は、上記互いに隣接する第1の電極間に位置する部分が第1の電極上に位置する部分よりも上記対向領域の内側に位置するように、エッジが波形形状に形成されている、請求項2に記載の電極接合構造体。
【請求項5】
上記第2の絶縁性接着剤樹脂は、上記互いに隣接する第1の電極間において上記外側領域から上記対向領域の縁部にわたって延在するように配置されている、請求項1〜4のいずれか1つに記載の電極接合構造体。
【請求項6】
上記第2の絶縁性接着剤樹脂の高さは、上記第1の電極の高さと上記導電性粒子の高さと上記第1の電極の高さとを合計した高さよりも低い、請求項1〜5のいずれか1つに記載の電極接合構造体。
【請求項7】
さらに、上記第1の絶縁性接着剤樹脂中に分散され、上記それぞれの第1の電極とそれらに対向する上記それぞれの第1の電極とを電気的に接続する導電性粒子を備える、請求項1〜6のいずれか1つに記載の電極接合構造体。
【請求項8】
上記それぞれの第1の電極は、銀で形成されている、請求項1〜7のいずれか1つに記載の電極接合構造体。
【請求項9】
さらに、上記第1及び第2の絶縁性接着剤樹脂が外部に露出しないように覆い隠す絶縁性封止樹脂を備える、請求項1〜8のいずれか1つに記載の電極接合構造体。
【請求項10】
複数の第1の電極を有する第1の回路形成体と、上記それぞれの第1の電極に対向するように形成された複数の第2の電極を有する第2の回路成形体との対向領域の縁部に隣接する外側領域において、互いに隣接する上記第1の電極間に硬化又は半硬化状態の第2の絶縁性接着剤樹脂を配置し、
上記対向領域の上記縁部より内側に第1の絶縁性接着剤樹脂を配置し、
上記第1又は第2の回路形成体を介して上記第1の絶縁性接着剤樹脂を加圧加熱して流動させ、上記第2の絶縁性接着剤樹脂と接触した状態で上記第1の絶縁性接着剤樹脂を硬化させて、当該硬化させた第1の絶縁性接着剤樹脂により上記第1の回路形成体と上記第2の回路形成体とを接合する、電極接合方法。
【請求項11】
上記第2の絶縁性接着剤樹脂は、熱硬化性の樹脂又は光硬化性の樹脂であり、
上記第2の絶縁性接着剤樹脂を上記互いに隣接する第1の電極間に配置したのち、加熱又は光を照射することにより、上記互いに隣接する第1の電極間に硬化又は半硬化状態の上記第2の絶縁性接着剤樹脂を配置する、請求項10に記載の電極接合方法。
【請求項12】
上記第1の絶縁性接着剤樹脂内には、多数の導電性粒子が分散されており、
上記第1の絶縁性接着剤樹脂の上記加圧加熱により、上記それぞれの第1の電極とそれらに対向する上記それぞれの第1の電極とを上記導電性粒子を介して電気的に接合する、請求項10又は11に記載の電極接合方法。
【請求項13】
上記第1の絶縁性接着剤樹脂は、上記加圧加熱前においてはシート状である、請求項12に記載の電極接合方法。
【請求項14】
上記第1の絶縁性接着剤樹脂を加圧加熱して硬化させたのち、上記第1及び第2の絶縁性接着剤樹脂が外部に露出しないように絶縁性封止樹脂により覆い隠す、請求項10〜13のいずれか1つに記載の電極接合方法。
【請求項1】
複数の第1の電極を有する第1の回路形成体と、
上記それぞれの第1の電極に対向して配置された複数の第2の電極を有する第2の回路形成体と、
上記第1の回路形成体と上記第2の回路形成体との対向領域に配置されて両者を接合する第1の絶縁性接着剤樹脂と、
上記対向領域の縁部に隣接する外側領域において互いに隣接する上記第1の電極間に配置されて、上記第1の絶縁性接着剤樹脂が上記互いに隣接する第1の電極のそれぞれに接触することを妨げる第2の絶縁性接着剤樹脂と、
を備える、電極接合構造体。
【請求項2】
上記第2の絶縁性接着剤樹脂は、上記外側領域において上記それぞれの第1の電極を封止するように配置されている、請求項1に記載の電極接合構造体。
【請求項3】
上記第2の絶縁性接着剤樹脂は、上記第1の絶縁性接着剤樹脂よりも低分子成分が少ない、請求項1又は2に記載の電極接合構造体。
【請求項4】
上記第2の絶縁性接着剤樹脂は、上記互いに隣接する第1の電極間に位置する部分が第1の電極上に位置する部分よりも上記対向領域の内側に位置するように、エッジが波形形状に形成されている、請求項2に記載の電極接合構造体。
【請求項5】
上記第2の絶縁性接着剤樹脂は、上記互いに隣接する第1の電極間において上記外側領域から上記対向領域の縁部にわたって延在するように配置されている、請求項1〜4のいずれか1つに記載の電極接合構造体。
【請求項6】
上記第2の絶縁性接着剤樹脂の高さは、上記第1の電極の高さと上記導電性粒子の高さと上記第1の電極の高さとを合計した高さよりも低い、請求項1〜5のいずれか1つに記載の電極接合構造体。
【請求項7】
さらに、上記第1の絶縁性接着剤樹脂中に分散され、上記それぞれの第1の電極とそれらに対向する上記それぞれの第1の電極とを電気的に接続する導電性粒子を備える、請求項1〜6のいずれか1つに記載の電極接合構造体。
【請求項8】
上記それぞれの第1の電極は、銀で形成されている、請求項1〜7のいずれか1つに記載の電極接合構造体。
【請求項9】
さらに、上記第1及び第2の絶縁性接着剤樹脂が外部に露出しないように覆い隠す絶縁性封止樹脂を備える、請求項1〜8のいずれか1つに記載の電極接合構造体。
【請求項10】
複数の第1の電極を有する第1の回路形成体と、上記それぞれの第1の電極に対向するように形成された複数の第2の電極を有する第2の回路成形体との対向領域の縁部に隣接する外側領域において、互いに隣接する上記第1の電極間に硬化又は半硬化状態の第2の絶縁性接着剤樹脂を配置し、
上記対向領域の上記縁部より内側に第1の絶縁性接着剤樹脂を配置し、
上記第1又は第2の回路形成体を介して上記第1の絶縁性接着剤樹脂を加圧加熱して流動させ、上記第2の絶縁性接着剤樹脂と接触した状態で上記第1の絶縁性接着剤樹脂を硬化させて、当該硬化させた第1の絶縁性接着剤樹脂により上記第1の回路形成体と上記第2の回路形成体とを接合する、電極接合方法。
【請求項11】
上記第2の絶縁性接着剤樹脂は、熱硬化性の樹脂又は光硬化性の樹脂であり、
上記第2の絶縁性接着剤樹脂を上記互いに隣接する第1の電極間に配置したのち、加熱又は光を照射することにより、上記互いに隣接する第1の電極間に硬化又は半硬化状態の上記第2の絶縁性接着剤樹脂を配置する、請求項10に記載の電極接合方法。
【請求項12】
上記第1の絶縁性接着剤樹脂内には、多数の導電性粒子が分散されており、
上記第1の絶縁性接着剤樹脂の上記加圧加熱により、上記それぞれの第1の電極とそれらに対向する上記それぞれの第1の電極とを上記導電性粒子を介して電気的に接合する、請求項10又は11に記載の電極接合方法。
【請求項13】
上記第1の絶縁性接着剤樹脂は、上記加圧加熱前においてはシート状である、請求項12に記載の電極接合方法。
【請求項14】
上記第1の絶縁性接着剤樹脂を加圧加熱して硬化させたのち、上記第1及び第2の絶縁性接着剤樹脂が外部に露出しないように絶縁性封止樹脂により覆い隠す、請求項10〜13のいずれか1つに記載の電極接合方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13】
【図14】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−311411(P2008−311411A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157442(P2007−157442)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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