説明

電気回路モジュール集合体

【課題】アンダーフィル剤の漏れ出しによる電気回路モジュールの電気的な接続不良を防止することができ、電気回路モジュールの製造工程の歩留まりを向上することができる電気回路モジュール集合体を提供する。
【解決手段】少なくとも1面にアンダーフィル剤7が塗布され、複数の電気回路モジュール1が形成された電気回路モジュール集合体2において、隣り合う電気回路モジュール1の間に凹部8を有し、凹部8のアンダーフィル剤が塗布された側の切込み面と前記アンダーフィル剤が塗布された面との角度が90度以下であることを特徴とする電気回路モジュール集合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造工程において、生産性を向上させるために、1つの配線基板から複数個の電気回路モジュールが製造できるように設計された電気回路モジュール集合体、より詳細には、プリント配線基板を代表とする配線基板の少なくとも片面にベアチップやBGA(Ball Grid Array)型パッケージやCSP(Chip Size Package)型のICが実装された電気回路モジュール集合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のプリント配線基板を代表とする電気回路基板の少なくとも片面にベアチップやBGA(Ball Grid Array)型パッケージやCSP(Chip Size Package)型のICが実装された電気回路モジュールには、配線基板とICの接続信頼性を向上させるため、そのベアチップやBGAやCSPと配線基板との隙間にアンダーフィル剤と呼ばれる封止樹脂が塗布されている。(例えば特許文献1参照)
また、近年の電子機器の小型化に伴い、この電気回路モジュールも小型化が進んでいる。電気回路モジュールの小型化に伴い、その生産性を向上させるため、1つの配線基板において複数の電気回路モジュールをできるように設計し(以下、このように設計された物を電気回路モジュール集合体と呼ぶ)、1つの配線基板から一度に電子部品実装を行えるように設計されている。 (例えば、特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−276879号公報
【特許文献2】特開2004−006585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来例における課題は、ベアチップやBGA型パッケージICやCSP型ICの間隔が非常に狭く、前述のアンダーフィル剤が漏れ出し、その漏れ出したアンダーフィル剤が隣の電気回路モジュールの端子(例えばキャパシターを実装する端子)まで到達してしまうことがあり、その際は、その電気回路モジュールの電気的な接続不良を発生してしまい、電気回路モジュールの製造工程の歩留まりを悪化させるという課題があった。そこで、本発明は、前記のように従来の課題を解決するもので、電気回路モジュールの製造工程の歩留まりを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そしてこの目的を達成するために本発明は、少なくとも1面にアンダーフィル剤が塗布され、複数の電気回路モジュールが形成された電気回路モジュール集合体において、隣り合う前記電気回路モジュールの間に凹部を有し、前記凹部のアンダーフィル剤が塗布された側の切込み面と前記アンダーフィル剤が塗布された面との角度が90度以下を特徴とする電気回路モジュール集合体とした。
【0006】
これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0007】
以上のように本発明は、隣り合う前記電気回路モジュールの間に凹部を設け、その凹部のアンダーフィル剤が塗布された側の切込み面と前記アンダーフィル剤が塗布された面との角度が90度以下となるような凹部とする事により、電気回路モジュールの製造工程の歩留まりを向上させることができる。
【0008】
すなわち、本発明においては、この凹部にアンダーフィル剤が到達したとしても、アンダーフィル剤の表面張力が働き、このアンダーフィル剤が凹部を越えることを防止することができ、すなわち、アンダーフィル剤の漏れ出しによる電気回路モジュールの電気的な接続不良を防止することができたので、その結果として、電気回路モジュールの製造工程の歩留まりを向上することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1における電気回路モジュールを示す図
【図2】本発明の実施の形態1における電気回路モジュール集合体の構成を示す図であり、(a)は、平面図、(b)は、図2(a)中の破線A−Aの断面図
【図3】本発明の実施の形態1におけるセラミック基板、及びセラミック基板集合体の製造方法の手順を示すフローチャート
【図4】本発明の実施の形態1の基板準備工程後の出電気回路モジュール集合体の構成を示す平面図
【図5】本発明の実施の形態1の凹部形成工程後の電気回路モジュール集合体の構成を示すもので、(a)は平面図、(b)は破線A−Aの断面図
【図6】本発明の実施の形態1の半導体チップ実装工程、その後アンダーフィル塗布工程、その後受動部品実装工程を行なった後の電気回路モジュール集合体の平面図
【図7】本発明の実施の形態1における最終的な形状である電気回路モジュールを示すもので、(a)は電気回路モジュールを平面図、(b)は図7(a)の破線H―Hの端側の断面図
【図8】アンダーフィル剤と凹部との関係を説明する図であり、(a)は本発明の実施の形態1の場合の説明図、(b)は従来例のアンダーフィル剤と凹部との関係を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明のセラミック基板の分割方法の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
(実施の形態1)
まず、はじめに、本発明の実施1における最終的な製品の構成である電気回路モジュール、および、電気回路モジュール集合体に関して説明する。
図1は、本発明の実施の形態1における電気回路モジュールを示す図である。また、図2は、本発明の実施の形態1における電気回路モジュール集合体の構成を示す図であり、図2(a)は、平面図、図2(b)は、図2(a)中の破線A−Aの断面図を示すものである。なお、図2(a)、図2(b)中に記載の点線Aで囲まれた部分は図2(a)、図2(b)でも共通する部分を示す。
【0011】
図1に示すように、電気回路モジュール1は、寸法:5.6[mm]x4.3[mm]
という、非常に小さな形状のものであり、多くの機能を有しかつ小型である電子機器(例えば携帯電話等)や医療機器に内蔵されるものである。また、図2に示すような複数の電気回路モジュール1が集合した形状である電気回路モジュール集合体2の状態で、例えば半導体チップ3(図1、び図2に図示)や受動チップ9(図1には図示なし、後述の図6に図示)の実装が行なわれ、最終的な形状として分割され、電気回路モジュール1に製造されるものである。
【0012】
また、図2に示すように、電気回路モジュール集合体2は、基板部4上には、受動チップ9を実装するための端子である受動部パッド5が設けられ、また、半導体チップ3を実装するための半導体チップパッド6(図2(b)には図示せず。後述の図4に図示しています)上に半導体チップ3が実装され、その半導体チップ3と導体チップパッド6の間にはアンダーフィル剤7が塗布されている。
【0013】
また、基板部4上のアンダーフィル剤7が塗布される面C(図2(b)に図示)側には、隣り合う電気回路モジュール1の間に凹部8が形成されている。この凹部8のアンダーフィル剤7が塗布された側の切り込み面D(図2(b)に図示)と基板部4上のアンダーフィル剤7が塗布される面Cのなす角度(後述の図8におけるEに相当する)は、90度以下になるように形成されている。なお、図2(b)には、この角度が90度の例を示している。この凹部8のアンダーフィル剤7が塗布された側の切り込み面D(図2(b)に図示)と基板部4上のアンダーフィル剤7が塗布される面Cのなす角度に関する詳細は後述する。
【0014】
それでは、次に、本発明の実施の形態1におけるセラミック基板集合体2の製造方法に関して説明する。図3は、本発明の実施の形態1におけるセラミック基板、及びセラミック基板集合体2の製造方法の手順のフローチャートを示すものである。
【0015】
(ステップ1:セラミック基板準備工程)
まず、はじめに、セラミック基板準備工程として、基板部4を形成し、その後、その基板部4上に受動パッド5、半導体パッド6形成する。
図4は、本発明の実施の形態1の基板準備工程後の出電気回路モジュール集合体の構成を示す平面図を示すものである。
まず、はじめに、基板部4を形成する。本発明の実施の形態1においては、基板部4は、
アルミナ粉末を55[wt%]、ガラス粉末を45[wt%]の割合で配合し、それを900[℃]にて焼成することによって形成される。その結果、本発明の実施の形態1においては、基板部4はセラミック製の基板となる。その後、この基板部4には、銀ペーストを印刷、焼成する事に形成された回路パターン(図示せず)が形成される。
【0016】
次に、基板部4上に、受動部パッド5や半導体チップパッド部6を形成する。これら受動部パッド5や半導体チップパッド部6は、基板部4上の所望の回路パターンに応じて形成される。
【0017】
次に、これら受動部パッド5や半導体チップパッド部6は、基板部4上の所望の場所に(回路パターンに応じて)、初期層としてニッケル薄膜を無電解めっき法により形成させ、その後、金薄膜を無電解めっき法によって形成した。(この無電解めっき工程に関しては、特許文献である特開2000−297380により詳細に開示されているので、詳しくは、その公開特許公報を参照してください。)
【0018】
(ステップ2:凹部形成工程)
次に、凹部形成工程として、基板部4上の、それぞれの凹部8を形成する。
図5は、本発明の実施の形態1の凹部形成工程後の電気回路モジュール集合体の構成を示すもので、(a)は平面図、(b)は破線A−Aの断面図を示すものである。
【0019】
図5に示すように、となりあう電気回路モジュール1に相当する領域に凹部8を形成する。本発明の実施の形態1においては、ダイシング装置を用いて、基板部4を削って形成した。また、図5(b)中の面C、面Dは、図2中の面C、面Dと同じ面を示す。
【0020】
本発明における実施の形態1においては、この凹部8のアンダーフィル剤7が塗布された側の切り込み面Dと基板部4上のアンダーフィル剤7が塗布される面Cとがなす角度Eは90度を用いた。
【0021】
また、図5(b)中のFは凹部7の幅、Gは凹部7の深さを示すものである。本発明における実施の形態1においては、凹部8の幅Fは0.1[mm]、凹部8の深さGは0.15〜0.2[mm]、凹部8のアンダーフィル剤7が塗布された側の切り込み面D(図2(b)に図示)と基板部4上のアンダーフィル剤7が塗布される面Cのなす角度(後述の図8におけるEに相当する)は、90度を用いた。
【0022】
ここで、凹部8の幅Fは0.1[mm]を用いた。その理由は、0.05[mm]などの幅にしようとした場合、ダイシング装置における薄いブレードを使用するため、カットする際、たわんで真直ぐに凹部を形成することができないからである。
である。また、この凹部7の幅Fは、大きくとることは、結果的に、電気回路モジュール集合体2の全体の大きさが大きくなってしまい、その結果として、1枚の電気回路モジュール集合体2から取ることのできる電気回路モジュール1の数が減少してしまう。
【0023】
また、凹部8の深さGは0.15[mm]以上0.2[mm]以下を用いた。その理由は、本実施の形態1における基板部4がセラミック製で、かつ厚さ0.78[mm]であるため、これより深くすると、製造工程におけるハンドリング等により、この凹部8にて電気回路モジュール集合体2が破損してしまうためである。
【0024】
(ステップ3:半導体チップ実装工程)
次に、基板部4上の半導体チップパット部6(図4に図示)上に、ベアチップやBGA(Ball Grid Array)型パッケージやCSP(Chip Size Package)型の半導体チップ3を実装する。本発明の実施の形態1における本工程における実装は、一般的な実装装置を用いて行なった。また、本発明の実施の形態1においては、
半導体チップ3として半導体メモリを用いた。
【0025】
(ステップ4:アンダーフィル塗布工程)
次に、半導体チップ実装工程にて実装された半導体チップ3と、半導体チップパッド部6間にアンダーフィル剤7を塗布する。
【0026】
(ステップ5:受動部品実装工程)
次に、基板部4上の受動部パッド5(図4に図示)上に、受動チップ4を実装する。本発明の実施の形態1における本工程における実装は、一般的な実装装置を用いて行なった。
【0027】
また、本発明の実施の形態1における受動チップ4としてチップコンデンサを用いた。図6は本発明の実施の形態1の半導体チップ実装工程、その後アンダーフィル塗布工程、その後受動部品実装工程を行なった後の電気回路モジュール集合体の平面図を示すものである。
【0028】
(ステップ6:切断工程)
次に、電気回路モジュール集合体2を、個々の電気回路モジュール1に切断する。
この切断には、ダイシング装置を用いて、凹部8にそって切断する。図7は本発明の実施の形態1における最終的な形状である電気回路モジュールを示すもので、図7(a)は電気回路モジュールを平面図、図7(b)は図7(a)の破線H―Hの端側の断面図を示すものである。図7(b)に示すとおり、電気回路モジュール1のアンダーフィル剤7は、切断面Rには、基板部4のみならず、基板部4上のアンダーフィル剤7が到達している。このような構成になる理由は、この切断工程において、電気回路モジュール集合体2を各々の電気回路モジュール1を切断する際、凹部8を全て除去するように切断するためである。
【0029】
(本発明の作用、効果)
アンダーフィル剤と凹部との関係を説明する図であり、図8(a)は本発明の実施の形態1の場合の説明図、図8(b)は従来例のアンダーフィル剤と凹部との関係を示す説明図を示すものである。
【0030】
図8(a)に示すように、凹部8のアンダーフィル剤7が塗布された側の切り込み面Dと基板部4上のアンダーフィル剤7が塗布される面Cのなす角度は、90度以下(図8(a)では90度を図示してある)の場合は、アンダーフィル剤7が凹部8に到達した場合でも、アンダーフィル剤7には表面張力が作用するため、凹部8に流入せず、隣の電気回路モジュール1の受動部パッド5まで到達しない。
【0031】
一方、図8(b)、図8(b)に示すように、凹部8のアンダーフィル剤7が塗布された側の切り込み面Dと基板部4上のアンダーフィル剤7が塗布される面Cのなす角度は、90度より大きい場合、表面張力がうまく作用せず、アンダーフィル剤9が凹部8に流入してしまい、更に、その凹部8を乗り越えて、隣の電気回路モジュール1の受動部パッド5に到達してしまう。
【0032】
すなわち、凹部8のアンダーフィル剤7が塗布された側の切り込み面Dと基板部4上のアンダーフィル剤7が塗布される面Cのなす角度は90度以下に設定しなければならない。
【0033】
このように、アンダーフィル剤7が塗布され、複数の電気回路モジュール1が形成された電気回路モジュール集合体2において、隣り合う前記電気回路モジュールの間に凹部8を有し、凹部8のアンダーフィル剤が塗布された側の切込み面と前記アンダーフィル剤が塗布された面との角度が90度以下と設定することによって、アンダーフィル剤の漏れ出しによる電気回路モジュールの電気的な接続不良を防止することができ、その結果として、電気回路モジュールの製造工程の歩留まりを向上することができる。
なお、本発明の実施の形態1においては、半導体チップ3が片面に実装され、アンダーフィル剤7が塗布され、凹部8がそのアンダーフィル剤7が塗布された面に形成された電気回路モジュール集合体2の例を記載したが、両面に半導体チップ3が実装され、両面にアンダーフィル剤7が塗布され場合の電気回路モジュール集合体2の場合には、凹部8は両面に形成するようにすればよい。
【0034】
また、本発明の実施の形態1においては、電気回路モジュール集合体2の基板部4はセラミック製の基板を用いたが、一般に使用されるFR−4(Flame Retardant Type 4、ガラスエポキシ基板)を用いてもよい。その際は、凹部8は、基板部4を形成する際に凹部8を形成すればよい。
【0035】
また、本発明の実施の形態1においては、電気回路モジュール集合体2の切断工程において、凹部8を全て除去するように切断したが、電気回路モジュール1にて要求される仕様(特にその大きさ)によって、凹部8の一部を電気回路モジュール1に残すように切断してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明にかかる電気回路モジュール集合体は、アンダーフィル剤の漏れ出しによる電気回路モジュールの電気的な接続不良を防止することができ、その結果として、電気回路モジュールの製造工程の歩留まりを向上することができるので、特に、携帯電話等の小型で高機能を有する電子機器や医療機器の内部で用いられる電気回路モジュールを製造する方法として有用である。
【符号の説明】
【0037】
1 電気回路モジュール
2 電気回路モジュール集合体
3 半導体チップ
4 基板部
5 受動部パッド
6 半導体チップパッド
7 アンダーフィル剤
8 凹部
9 受動チップ

























【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1面にアンダーフィル剤が塗布され、複数の電気回路モジュールが形成された電気回路モジュール集合体において、
隣り合う前記電気回路モジュールの間に凹部を有し、
前記凹部のアンダーフィル剤が塗布された側の切込み面と前記アンダーフィル剤が塗布された面との角度が90度以下であることを特徴とする電気回路モジュール集合体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−165688(P2011−165688A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22960(P2010−22960)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】