説明

電気車制御装置

【課題】より安全に電気車の運行を制御することができる電気車制御装置を提供する。
【解決手段】電気車制御装置は、乗務員に対して情報を報知する報知手段130と、災害情報と対応方法を対応付けて予め記憶するデータベース151と、災害情報を受信する受信手段と、前記受信手段により受信する災害情報と対応付けられている対応方法を前記データベースから読み出し、前記読み出した対応方法に基づいて避難の為の情報を前記報知手段により出力するように制御を行う制御手段150と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気車の災害対応機能に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両の運行安全性を確保するために、運行障害の発生を検知し、列車の動作を制御する技術が実用化されている。例えば、特許文献1には、運行障害発生を知らせる通報、又は、運行障害発生を検知するセンサの作動した情報を受けて、指令所内の指令員が運行障害状況の発生を知ったとき、該指令員が、前記電化区間の架線の電力供給停止指令を行い、この指令による電力供給停止に連動して前記車両を制動する車両制動方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−315573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献に記載されている車両制御方法は、運行障害の発生時に、列車無線や防護無線等により列車に運行障害を伝達する。また、上記の特許文献に記載されている車両制御方法は、運行障害の発生時に、自動列車停止装置(ATS:Automatic Train Stop)、または自動列車制御装置(ATC:Automatic Train Control)等の装置により、閉塞区間内を走行中の列車の動作を制御する。
【0005】
しかし、鉄道車両の車内では、災害時に乗客だけでなく、乗務員にも十分な情報がなく、不安からパニックになり人災を招くことも考えられる。乗務員がセンターへ連絡をとり、センターの指示応答を待つような方法では、車内の情報をセンターに十分に伝えられず、時間がかかってしまい、人災を防ぐことが困難だと考える。
【0006】
都会の通勤車両では、約10両の車両で構成されており、200m以上の長い空間があり、ラッシュ時には1000人以上の乗客が寿司詰め状態で乗っている。例えば、鉄道車両内での火災が発生した場合、先頭車にいる乗務員も情報を把握することができず、多くの乗客がパニックになると乗務員だけでは対処することは大変困難だと想定できる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、より安全に電気車の運行を制御することができる電気車制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態としての電気車制御装置は、電気車が具備する電気車制御装置であって、乗務員に対して情報を報知する第1の報知手段と、災害情報と対応方法を対応付けて予め記憶するデータベースと、災害情報を受信する受信手段と、前記受信手段により受信する災害情報と対応付けられている対応方法を前記データベースから読み出し、前記読み出した対応方法に基づいて避難の為の情報を前記第1の報知手段により出力するように制御を行う制御手段と、を具備する。
【発明の効果】
【0009】
この発明の一形態によれば、より安全に電気車の運行を制御することができる電気車制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る電気車制御装置の構成の例について説明するためのブロック図である。
【図2】図2は、図1に示す車両情報装置及び車両情報装置の周辺の構成の例について説明するためのブロック図である。
【図3】図3は、図1及び図2に示す電気車制御装置における処理の例について説明するための説明図である。
【図4】図4は、図1及び図2に示す電気車制御装置における処理の他の例について説明するための説明図である。
【図5】図5は、図1及び図2に示す電気車制御装置における処理のさらに他の例について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る電気車制御装置について詳細に説明する。火災報知機120から入力される火災検知情報に基づいて火災が発生した車両、及び車両内における位置を特定する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る電気車制御装置の構成の例について説明するための説明図である。
図1に示す電気車100は、車両100A、車両100B、及び車両100Cを備える。各車両は、換気口110、火災報知機120、車両情報装置150、表示器170、スピーカ180、及びカメラ190を備える。さらに、先頭車両として機能する車両100A及び車両100Cは、運転台端末130、及び無線伝送装置140をさらに備える。
【0013】
なお、換気口110、火災報知機120、表示器170、スピーカ180、及びカメラ190は、各車両内にそれぞれ複数設置されていてもよい。
【0014】
換気口110は、車両内部の空気を車両外部の空気と入れ替える為の通風孔である。換気口110は、車両情報装置150による制御に基づいて開閉する。換気口110は、例えば、車両の両側面に設けられる通常の窓の上部などに設けられる。
【0015】
火災報知機120は、一般的な構成の火災報知機であり、車両内に複数設置される。火災報知機120は、煙、または温度などを検知することにより、車両内において発生する火災を検知する。さらに、火災報知機120は、火災の発生を検知する場合、車両情報装置150に火災を検知した事を示す火災検知情報を入力する。
【0016】
運転台端末130は、運転士、または車掌などの乗務員による操作を受け付ける入力装置である。運転台端末130は、乗務員による操作を受け付けるマスコンを備える。運転台端末130は、マスコンに入力される操作に基づいて操作信号を生成し、生成した操作信号を車両情報装置150に入力する。また、運転台端末130は、表示器及びスピーカなどの報知部を備える。表示器及びスピーカは、車両情報装置150の制御に基づいて種々の情報を乗務員に報知する。
【0017】
無線伝送装置140は、地上に設けられる地上センターマシン200に接続される無線伝送装置210と相互に無線通信を行う。車両情報装置150は、無線伝送装置140及び210を介して地上センターマシン200と情報を送受信することができる。
【0018】
地上センターマシン200は、例えば、地震発生予報情報などが発令される場合、無線伝送装置210及び140を介して電気車100の車両情報装置150に地震発生予報情報を通知する。地上センターマシン200は、地震発生予報情報として、地震の発生位置、及び予測震度などの情報を電気車100の車両情報装置150に通知する。
【0019】
また、地上センターマシン200は、例えば、台風情報、気象警報、または、路線内に設置される風速計において検知する風速情報などを無線伝送装置210及び140を介して電気車100の車両情報装置150に通知する。
【0020】
車両情報装置150は、電気車100内の各部の制御行うものである。車両100A、車両100B、及び車両100Cが備える車両情報装置150は、それぞれ隣合う車両が備える車両情報装置150と接続されている。電気車100内の各車両情報装置150は、先頭車両に搭載される車両情報装置150をホストとして動作する。即ち、中間車両に搭載される車両情報装置150は、ホストの車両情報装置150から入力される制御信号に基づいて処理を行う。
【0021】
表示器170は、電気車100の各車両の客室内に設けられる表示装置である。表示器170は、例えば、液晶表示パネルにより構成される液晶表示装置を備える。表示器170は、車両情報装置150から受信する表示画面を表示する。これにより、表示器170は、客室内の乗客に対して種々の情報を報知する。
【0022】
スピーカ180は、電気車100の各車両の客室内に設けられる音声再生装置である。スピーカ180は、車両情報装置150から受信する音声信号を再生する。これにより、スピーカ180は、客室内の乗客に対して種々の情報を報知する。
【0023】
カメラ190は、電気車100の各車両の客室内に設けられる映像記録装置である。カメラ190は、客室内の映像を撮像して映像信号を生成し、生成した映像信号を車両情報装置150に入力する。
【0024】
また、先頭車両に搭載される車両情報装置150は、災害用データベース(DB)151を備える。車両情報装置150は、火災検知情報、地震発生予報情報、台風情報、気象警報、及び風速情報などの災害情報と、災害用DB151とに基づいて、電気車100内の各部の制御を行う。
【0025】
災害用DB151は、乗務員に報知する情報、乗客に報知する情報、及び電気車100内の各部に対する制御内容と、災害情報とを対応付けて記憶するデータベースである。災害用DB151は、災害を想定して予めシミュレーションされた情報を記憶する。
【0026】
乗務員に報知する情報は、運転台端末130の表示器及びスピーカにより出力する情報であり、車両の停車指示、及び乗客の誘導指示などの情報である。また、乗客に報知する情報は、車両内の表示器170、及びスピーカ180により出力する情報であり、避難を誘導するための情報である。電気車100内の各部に対する制御内容は、例えば、車両の停車位置などを選択する為の情報である。
【0027】
車両情報装置150は、火災報知機120から火災検知情報が入力される場合、火災検知情報を先頭車両の車両情報装置150に通知する。先頭車両の車両情報装置150は、受信する火災検知情報に基づいて火災が発生した車両、及び車両内における位置を特定する。
【0028】
車両情報装置150は、特定した火災発生位置と、災害用DB151に格納されている情報とに基づいて乗務員に報知する情報、乗客に報知する情報を選択し、選択した情報を電気車100内の表示器及びスピーカにより出力する。これにより、乗務員は、火災が発生した号車及び位置を認識することができる。また、乗客は、各車両の表示器170及びスピーカ180から出力される情報により、的確な避難方法を認識することができる。
【0029】
災害用DB151は、地震発生位置及び予測震度に関する判定基準を記憶する。また、災害用DB151は、台風情報、気象警報、及び風速情報に関する判定基準を記憶する。車両情報装置150は、受信する災害情報と、災害用DB151に記憶されている判定基準とに基づいて、当該電気車100が危険であるか否かを判定する。
【0030】
車両情報装置150は、危険だと判断する場合、災害用DB151に格納されている情報に基づいて乗務員に報知する情報、乗客に報知する情報を選択し、選択した情報を電気車100内の表示器及びスピーカにより出力する。これにより、乗務員は、地震が発生すること、または気象による危険を認識することができる。また、乗客は、各車両の表示器170及びスピーカ180から出力される情報により、的確な避難方法を認識することができる。
【0031】
また、地上センターマシン200は、災害対応DB220と接続されている。災害対応DB220は、災害の種類などと、電気車100と同じ路線内に存在する他の電気車の乗務員に対して通知する情報と、及び電気車100の路線内の駅の駅員に対して通知する情報とを対応付けて記憶する。
【0032】
地上センターマシン200は、電気車100から受信する情報と災害対応DB220とに基づいて、電気車100と同路線内の電気車、及び駅に通知する情報を選択する。さらに、地上センターマシン200は、電気車100に対して停車駅及び乗客に対する避難方法を指示する構成であってもよい。
【0033】
またさらに、地上センターマシン200は、ネットワーク300と接続されている。地上センターマシン200は、電気車100から受信する情報と災害対応DB220とに基づいて消防署などへ通報を行う。
【0034】
図2は、図1に示す車両情報装置150及び車両情報装置150の周辺の構成の例について説明するためのブロック図である。なお、図2は、先頭車両が備える車両情報装置150の例を示す図である。
【0035】
図2に示すように、車両情報装置150は、災害用DB151、制御部152、メモリ153、路線情報メモリ154、電源155、入出力インターフェース156、入出力インターフェース157、伝送インターフェース158、伝送インターフェース159、及び幹線伝送インターフェース160を備える。
【0036】
制御部152は、種々の判断を行い、車両情報装置150内の各部の制御を行う。制御部152は、例えば、CPU、ROM、RAM、及び不揮発性メモリなどを備える。制御部152は、ROMまたは不揮発性メモリに記憶されているプログラムを実行することにより、種々の判定及び演算処理などを行う。
【0037】
メモリ153は、種々の情報を記憶することができる記憶装置である。
路線情報メモリ154は、当該電気車100が走行する路線の沿線における地形などの路線情報を記憶する。路線情報メモリ154は、例えば、路線内に存在する駅の位置を示す情報、路線内に存在する鉄橋、及びトンネルなど位置を示す情報、並びに、路線沿線に存在する危険箇所(例えば化学工場など)の位置を示す情報などを路線情報として記憶する。
電源155は、車両電源から電力を受け取り、車両情報装置150の各部に電力を供給する。
【0038】
入出力インターフェース156は、車両内に設置されている換気口110、火災報知機120、無線伝送装置140、表示器170、スピーカ180、及びカメラ190と車両情報装置150とを接続するインターフェースである。
【0039】
入出力インターフェース157は、GPS(Global Positioning System)装置191、及びTG(Tacho Generator)192と車両情報装置150とを接続するインターフェースである。
【0040】
GPS装置191は、GPS衛星から受信する信号に基づいて自身の位置を特定する。GPS装置191は、特定した位置を示す位置情報を入出力インターフェース157を介して車両情報装置150に入力する。
【0041】
TG192は、磁束に基づいて電力を生成する発電機であり、回転速度に比例した直流電圧を発生させる。TG192は、例えば、電気車100の回転する車輪の近傍に設置される。TG192は、電気車100の速度を検出する。TG192は、検出した速度を入出力インターフェース157を介して車両情報装置150に入力する。車両情報装置150の制御部152は、TG192から入力される速度情報に基づいて、電気車100の路線上における位置を特定する。
【0042】
伝送インターフェース158は、運転台端末130、及びマスコン193と、車両情報装置150とを接続するインターフェースである。
【0043】
マスコン193は、乗務員による操作を受け付ける。マスコン193は、入力される操作に基づいて操作信号を生成し、伝送インターフェース158を介して生成した操作信号を車両情報装置150に入力する。
【0044】
伝送インターフェース159は、保安装置194、ブレーキ制御装置195、及びVVVF制御装置196と車両情報装置150とを接続するインターフェースである。
【0045】
保安装置194は、制御部152の制御に基づいて電気車100の制動を自動的に行う自動列車保安装置である。
【0046】
ブレーキ制御装置195は、マスコン193により入力される信号に基づいて、電気車100の制動を行う。
【0047】
VVVF制御装置196は、電気車100に搭載されているVVVFインバータの制御を行う。
【0048】
図3乃至図5は、図1及び図2に示す電気車制御装置における処理の例について説明するための説明図である。
【0049】
まず、災害情報として火災検知情報を受信した場合の処理について説明する。図3は、火災報知機120により火災を検知した場合の処理について説明する為の説明図である。
【0050】
ブロック301で、電気車100の車上において火災が発生したとする。この場合、各車両に搭載されている火災報知機120は、ブロック302で、火災を検知する。火災報知機120は、火災の発生を検知する場合、車両情報装置150に火災を検知した事を示す火災検知情報を入力する。
【0051】
ブロック303で、車両情報装置150は、火災報知機120から入力される火災検知情報に基づいて、火災が発生した位置を特定する。即ち、車両情報装置150は、何号車のどこの位置で火災が発生したかを認識する。
【0052】
ブロック311で、車両情報装置150は、特定した火災発生位置と災害用DB151に格納されている情報とに基づいて、乗務員に報知する情報を決定し、情報を運転台端末130の表示器及びスピーカから出力するように制御を行う。
【0053】
例えば、車両情報装置150は、運転台のモニタ画面を使用し、火災検知箇所の画面表示を行う。また、例えば、車両情報装置150は、運転台のスピーカを使用し、音声により車両の停車指示、乗客の誘導を指示する情報などを再生する。
【0054】
災害時にはパニックで通常の思考が行えないことも想定できるため、災害用DB151は、予めシミュレーションにより作成された車両の停車位置、及び乗客誘導方法などの情報を記憶する。
【0055】
この場合、車両情報装置150は、TG192、及びGPS191から送信される情報に基づいて特定した電気車100の位置情報と、路線情報メモリ154に記憶されている情報と、に基づいて電気車100の停車位置を決定する。
【0056】
例えば、車両情報装置150は、路線情報メモリ154に記憶されている路線情報と、位置情報と、現時点での電車の速度と、に基づいて、最寄駅までの走行時間を算出する。これにより、車両情報装置150は、近くに停車できる駅が存在するか否かの判断を行う。
【0057】
例えば、1分以内に停車できる駅があれば、車両情報装置150は、駅に停車した方が安全であると判断し、駅に停車するように乗務員に対して指示を行う。また、1分以内に停車できる駅が存在しない場合、車両情報装置150は、路線情報に基づいて、鉄橋、トンネル、及び周辺に化学工場がある場所、などの危険箇所を避けた場所を停車位置として選択する。
【0058】
なお、判定基準となる時間は、運用状況によって適宜設定されるものであり、1分に限定されるものではない。また、危険箇所として挙げた鉄橋、トンネル、及び周辺に化学工場がある場所、などは一例であり、運用状況によって適宜設定されるものである。
【0059】
災害用DB151は、停車位置として、予め駅以外の緊急停車位置の候補地を複数記憶する。車両情報装置150は、例えば、災害用DB151に記憶されている緊急停車位置の候補地の中から最寄のものを選択する。車両情報装置150は、停車位置を決定する場合、決定した停車位置に電気車100を移動させることを指示する旨の情報を運転台端末130の表示器及びスピーカにより乗務員に報知する。
【0060】
なお、ブロック312に示すように、保安装置194を動作させることにより、ブレーキ指令を行い、選択した停車位置に電気車100を自動的に誘導する構成であってもよい。この場合、車両情報装置150は、ブロック313に示すように、TG192により逐次電気車の速度を検知し、電気車100を停車位置まで誘導し、停車させる。
【0061】
電気車100には多くの乗客が乗り込んでおり、災害時に情報が無い為にパニックになる場合、人災が起こる可能性がある。この為に、災害用DB151は、乗客に対して報知する情報を予め記憶する。
【0062】
車両情報装置150は、ブロック314に示すように、火災検知箇所に基づいて、災害用DB151から避難誘導のための情報を選択し、選択した情報を客室内に設置されている表示器及びスピーカにより出力する。
【0063】
乗客に報知する情報は、一律ではなく、火元となる箇所から遠ざかる方向に避難を誘導する情報である必要がある。この為、ホストとなる車両情報装置150は、車両毎に個別に情報を選択し、連結されている各車両の車両情報装置150に情報を伝送する。
【0064】
即ち、車両情報装置150は、各車両の乗客の誘導方向を示す情報を各号車の車両情報装置150へ伝送し、それぞれの号車の表示器170及びスピーカ180により出力する。これにより、車両情報装置150は、号車毎に的確な避難誘導のための情報を乗客に報知することができる。
【0065】
なお、車両情報装置150は、乗客に対して、火災が発生した事を示す情報、電気車100を停車させる旨の情報、避難方向を示す情報、避難方法を示す情報などを表示器170及びスピーカ180により出力する。
【0066】
上記したように、車両情報装置150は、火災報知機120により検知される火災の発生場所を認識し、火災箇所に応じた情報を乗務員に報知する。また、予め災害用DB151に記憶される情報から適切な誘導方法を示す情報を選択し、車内案内表示、及び音声の自動放送により乗客に避難方法を報知する。これにより、乗客を的確に誘導することができ、パニックをおさえ、被害を最小限に防ぐことができる。
【0067】
また、電気車100の車両の客室の窓は、はめごろしのものが多く、火災の場合に煙による被害が出る可能性がある。
【0068】
そこで、上記したように、本実施形態に係る電気車は、車両情報装置150の制御に基づいて開閉する換気口110を備える。
【0069】
ブロック315に示すように、車両情報装置150は、火災報知機120から火災検知情報を受信する場合、車両の客室内に設けられた換気口110を開くように制御を行う。例えば、車両情報装置150は、列車内に設置されている火災報知機120が一点でも火災を検知する場合、全車両の換気口110を開くように制御する。
【0070】
これにより、火災発生時に、車両内部の空気を車両外部の空気と入れ替える為ことができる。この結果、有毒ガスが客室内に充満することを防ぎ、被害を抑えることができる。また、走行途中に無理に窓、またはドアなどから乗客が出ようとすることを防ぐことが出来る。
【0071】
また、ブロック316に示すように、車両情報装置150は、汎用無線(電話)により消防署に対して、電気車100内で火災が発生した旨を自動的に通報する。この場合、車両情報装置150は、火災が発生した鉄道の路線、編成番号、車両の位置、及び火災が発生した号車などを示す情報を併せて通知する。
【0072】
また、ブロック317に示すように、車両情報装置150は、無線伝送装置140により地上の地上センターマシン200に対して、電気車100内で火災が発生した旨を自動的に通知する。この場合、車両情報装置150は、火災が発生した鉄道の路線、編成番号、車両の位置、及び火災が発生した号車などを示す情報を併せて通知する。さらに、車両情報装置150は、電気車100を停車させる予定の停車位置を示す情報を合わせて通知する。
【0073】
なお、電気車100からの通報(火災情報)を受信する場合、地上センターマシン200が消防署へ自動的に通報を行う構成であってもよい。
【0074】
また、電気車100の車両情報装置150により緊急停車位置、または緊急停車駅を検索するのではなく、ブロック318に示すように、地上センターマシン200により電気車100の緊急停車位置、または緊急停車駅を検索する構成であってもよい。この場合、地上センターマシン200は、災害対応DB220、及び路線を走行している他の車両の情報などに基づいて、電気車100の停車位置を決定する。
【0075】
地上センターマシン200は、ブロック321に示すように、決定した電気車100の停車位置、及び誘導方法などを電気車100に対して無線により送信する。電気車100の車両情報装置150は、無線伝送装置140により地上センターマシン200から停車位置を指示する情報、及び誘導方法を指示する情報を受信する場合、受信した停車位置を指示する情報、及び誘導方法を指示する情報を運転台端末130の表示器、及びスピーカにより出力する。これにより、車両情報装置150は、電気車100の停車位置、及び誘導方法を乗務員に報知することが出来る。
【0076】
また、地上センターマシン200は、電気車100から受信する情報に基づいて、電気車100が停車する予定の駅への連絡、同路線内の各駅への連絡、同路線内の他の車両への連絡などを行う。
【0077】
地上センターマシン200は、ブロック322に示すように、電気車100と同路線内の他の車両への連絡を行う。この場合、地上センターマシン200は、他の車両の運転台の表示器、及びスピーカにより、列車を停止させることを促す情報と、状況を説明する旨の情報とを出力する。これにより、乗務員に電気車100が緊急停止する旨と、対処方法とを報知する。
【0078】
また、地上センターマシン200は、ブロック323に示すように、電気車100と同路線内の各駅に対して連絡を行う。この場合、地上センターマシン200は、各駅に状況を説明する旨の情報を送信する。これにより、各駅の駅員に電気車100が緊急停止する旨を報知する。
【0079】
またさらに、地上センターマシン200は、ブロック324に示すように、電気車100が緊急停車する予定の駅、または、緊急停車位置から最寄の駅に対して連絡を行う。この場合、地上センターマシン200は、電気車100が当該駅に緊急停車する旨と、乗客の誘導方法を示す情報とを当該駅に送信する。これにより、電気車100が緊急停車する予定の駅の駅員に電気車100が緊急停止する旨と、乗客の誘導方法とを報知する。
【0080】
また、車両の火災が発生した場合、原因を追及する必要がある。電気系統による火災なのか、放火などによる火災なのか、または、その他の要因による火災なのかで対処が変わる場合がある。
【0081】
この為、火災報知機120から火災検知情報を受信する場合、車両情報装置150は、客室内に設置されたカメラ190により撮影している映像を運転台端末130の表示器に表示する。これにより、車両情報装置150は、火災発生位置近くの映像を乗務員に報知することができる。この結果、乗務員に、乗客を的確に誘導させることができる。
【0082】
また、車両情報装置150は、メモリ153に電気車100内のカメラ190により撮影する客室内の映像データを記録する。またさらに、車両情報装置150は、火災報知機120から火災検知情報を受信する場合、火災検知情報を受信した時点前後の予め設定される所定時間の映像データを地上センターマシン200に無線伝送装置140経由で送信する。これにより、車両情報装置150は、乗客の避難の誘導、及び消火活動を的確に行う為の情報を提供することができる。さらに、火災の原因の特定にも役立てることが出来る。
【0083】
また、車両情報装置150は、火災報知機120から火災検知情報を受信する場合、火災検知情報を受信した時点から火災発生箇所付近に設置されたカメラ190により撮像された映像を無線伝送装置140経由で逐次地上に送信する構成であってもよい。これにより、車両情報装置150は、車上の避難した乗客の様子などを地上に伝えることが出来る。この結果、救出活動を早めることにも役立つと考えられる。
【0084】
また、車両情報装置150は、マスコン193に入力される操作を運転データとしてメモリ153に逐次記憶する。車両情報装置150は、火災報知機120から火災検知情報を受信する場合、火災検知情報を受信した時点前後の予め設定される所定時間の運転データを地上センターマシン200に無線伝送装置140経由で送信する。これにより、車両情報装置150は、車内の詳細情報を解析する為の情報を提供することができる。さらに、火災の原因の特定にも役立てることが出来る。
【0085】
次に、災害情報として地震発生予報情報を受信した場合の処理について説明する。図4は、無線伝送装置140により地震発生予報を受信した場合の処理について説明する為の説明図である。
【0086】
ブロック401で、無線伝送装置140により地震発生予報を受信したとする。この場合、ホストである車両情報装置150は、ブロック402で、当該電気車100の現在位置と、地震発生予報情報が示す自身の発生源、及び地震の規模、などとに基づいて、当該電気車100の危険度を判定する。
【0087】
車両情報装置150は、予め災害用DB151に記憶する判定基準と、判定した危険度とに基づいて、当該電気車100が危険であるか否かを判定する。例えば、車両情報装置150は、ブロック403で、判定した危険度が予め設定されている判定基準以上である場合、当該電気車100が危険であると判定する。
【0088】
当該電気車100が危険であると判定する場合、ブロック411で、車両情報装置150は、災害用DB151に格納されている情報から乗務員に報知する情報を選択し、選択した情報を運転台端末130の表示器及びスピーカから出力するように制御を行う。
【0089】
例えば、車両情報装置150は、運転台のモニタ画面を使用し、地震の発生時刻、地震の規模、及び地震の発生場所などの画面表示を行う。また、例えば、車両情報装置150は、運転台のスピーカを使用し、音声により車両の停車指示、乗客の誘導を指示する情報などを再生する。
【0090】
車両情報装置150は、災害用DB151に記憶されている情報に基づいて、車両の停車位置を決定する。この場合、車両情報装置150は、TG192、及びGPS191から送信される情報に基づいて特定した電気車100の位置情報と、路線情報メモリ154に記憶されている情報と、に基づいて電気車100の停車位置を決定する。
【0091】
例えば、車両情報装置150は、路線情報メモリ154に記憶されている路線情報と、位置情報と、現時点での電車の速度と、に基づいて、最寄駅までの走行時間を算出する。これにより、車両情報装置150は、近くに停車できる駅が存在するか否かの判断を行う。
【0092】
例えば、20秒以内に停車できる駅があれば、車両情報装置150は、駅に停車した方が安全であると判断し、駅に停車するように乗務員に対して指示を行う。また、20秒以内に停車できる駅が存在しない場合、車両情報装置150は、路線情報に基づいて、鉄橋、トンネル、及び周辺に化学工場がある場所、などの危険箇所を避けた場所を停車位置として選択する。
【0093】
なお、判定基準となる時間は、運用状況によって適宜設定されるものであり、20秒に限定されるものではない。また、危険箇所として挙げた鉄橋、トンネル、及び周辺に化学工場がある場所、などは一例であり、運用状況によって適宜設定されるものである。
【0094】
災害用DB151は、停車位置として、予め駅以外の緊急停車位置の候補地を複数記憶する。車両情報装置150は、例えば、災害用DB151に記憶されている緊急停車位置の候補地の中から最寄のものを選択する。車両情報装置150は、停車位置を決定する場合、決定した停車位置に電気車100を移動させることを指示する旨の情報を運転台端末130の表示器及びスピーカにより乗務員に報知する。
【0095】
なお、ブロック412に示すように、保安装置194を動作させることにより、ブレーキ指令を行い、選択した停車位置に電気車100を自動的に誘導する構成であってもよい。この場合、車両情報装置150は、ブロック413に示すように、TG192により逐次電気車の速度を検知し、電気車100を停車位置まで誘導し、停車させる。
【0096】
車両情報装置150は、ブロック414に示すように、地震発生予報情報が示す地震の発生場所、規模などに基づいて、災害用DB151から地震が発生することを乗客に報知するための情報を選択し、選択した情報を客室内に設置されている表示器170及びスピーカ180により出力する。
【0097】
乗客に報知する情報は、地震が予測される時刻、規模、及び震源地などの情報の他に、電気車100を停車させる旨の情報、てすり及びつり革などに捕まる事を促す情報、並びに、状況説明と注意などの情報が考えられる。
【0098】
上記したように、車両情報装置150は、地震発生予報情報を受信する場合、当該電気車100が危険であるか否かを判断し、危険である場合、予測される地震の規模及び発生場所などに基づいて、乗務員、及び乗客に対して避難の為の情報を報知する。これにより、乗客を的確に誘導することができ、パニックをおさえ、被害を最小限に防ぐことができる。
【0099】
また、ブロック416に示すように、車両情報装置150は、汎用無線(電話)により消防署に対して、地震発生予報情報に基づいて電気車100を緊急停止させる旨を示す危険情報を自動的に通報する。この場合、車両情報装置150は、当該電気車100の鉄道の路線、編成番号、及び車両の走行位置などを示す情報を併せて通知する。
【0100】
また、ブロック417に示すように、車両情報装置150は、無線伝送装置140により地上の地上センターマシン200に対して、地震発生予報情報に基づいて電気車100を緊急停止させる旨を示す危険情報を自動的に通知する。この場合、車両情報装置150は、当該電気車100の路線、編成番号、及び車両の走行位置などを示す情報を併せて通知する。さらに、車両情報装置150は、電気車100を停車させる予定の停車位置を示す情報を合わせて通知する。
【0101】
なお、電気車100からの通報(危険情報)を受信する場合、地上センターマシン200が消防署へ自動的に通報を行う構成であってもよい。
【0102】
また、電気車100の車両情報装置150により緊急停車位置、または緊急停車駅を検索するのではなく、ブロック418に示すように、地上センターマシン200により電気車100の緊急停車位置、または緊急停車駅を検索する構成であってもよい。この場合、地上センターマシン200は、災害対応DB220、及び路線を走行している他の車両の情報などに基づいて、電気車100の停車位置を決定する。
【0103】
地上センターマシン200は、ブロック421に示すように、決定した電気車100の停車位置、及び誘導方法などを電気車100に対して無線により送信する。電気車100の車両情報装置150は、無線伝送装置140により地上センターマシン200から停車位置を指示する情報、及び誘導方法を指示する情報を受信する場合、受信した停車位置を指示する情報、及び誘導方法を指示する情報を運転台端末130の表示器、及びスピーカにより出力する。これにより、車両情報装置150は、電気車100の停車位置、及び誘導方法を乗務員に報知することが出来る。
【0104】
また、地上センターマシン200は、電気車100から受信する情報に基づいて、電気車100が停車する予定の駅への連絡、同路線内の各駅への連絡、同路線内の他の車両への連絡などを行う。
【0105】
地上センターマシン200は、ブロック422に示すように、電気車100と同路線内の他の車両への連絡を行う。この場合、地上センターマシン200は、他の車両の運転台の表示器、及びスピーカにより、列車を停止させることを促す情報と、状況を説明する旨の情報とを出力する。これにより、乗務員に電気車100が緊急停止する旨と、対処方法とを報知する。
【0106】
また、地上センターマシン200は、ブロック423に示すように、電気車100と同路線内の各駅に対して連絡を行う。この場合、地上センターマシン200は、各駅に状況を説明する旨の情報を送信する。これにより、各駅の駅員に電気車100が緊急停止する旨を報知する。
【0107】
またさらに、地上センターマシン200は、ブロック424に示すように、電気車100が緊急停車する予定の駅、または、緊急停車位置から最寄の駅に対して連絡を行う。この場合、地上センターマシン200は、電気車100が当該駅に緊急停車する旨と、乗客の誘導方法を示す情報とを当該駅に送信する。これにより、電気車100が緊急停車する予定の駅の駅員に電気車100が緊急停止する旨と、乗客の誘導方法とを報知する。
【0108】
また、乗客の誘導を的確に行う為に、乗務員が客室の状況を正確に把握する必要がある。この為に、地震発生予報情報を受信する場合、車両情報装置150は、客室内に設置されたカメラ190により撮影している映像を運転台端末130の表示器に表示する。これにより、車両情報装置150は、客室内の映像を乗務員に報知することができる。この結果、乗務員に、乗客を的確に誘導させることができる。
【0109】
次に、災害情報として台風情報、気象警報、または、風速情報などを受信した場合の処理について説明する。図5は、無線伝送装置140により台風情報、気象警報、または、風速情報などを受信した場合の処理について説明する為の説明図である。
【0110】
台風などの気象異常が発生する場合、刻一刻と状況が変わる。このような場合、運休と判断せずに走行し始めた車両が走行途中に危険な強風情報を無線経由で受信する場合がある。この場合に、本実施形態に係る車両情報装置150は、一時的に電気車100を待機するように制御を行う。これにより、災害を免れることが考えられる。即ち、車両情報装置150は、台風や気象警報のリアルタイムな情報に基づいて、電気車100の運行を制御する。
【0111】
ブロック501で、無線伝送装置140により台風情報、気象警報、または、風速情報などの気象情報を受信したとする。この場合、ホストである車両情報装置150は、ブロック502で、当該電気車100の現在位置と、受信した台風情報、気象警報、または、風速情報などとに基づいて、当該電気車100の危険度を判定する。
【0112】
例えば、車両情報装置150は、台風情報、気象警報、または、風速情報などが示す気象異常が発生した場所、風速、または雨量などに基づいて、当該電気車100の危険度を判定する。
【0113】
車両情報装置150は、予め災害用DB151に記憶する判定基準と、判定した危険度とに基づいて、当該電気車100が危険であるか否かを判定する。例えば、車両情報装置150は、ブロック503で、判定した危険度が予め設定されている判定基準以上である場合、当該電気車100が危険であると判定する。
【0114】
当該電気車100が危険であると判定する場合、ブロック511で、車両情報装置150は、災害用DB151に格納されている情報から乗務員に報知する情報を選択し、選択した情報を運転台端末130の表示器及びスピーカから出力するように制御を行う。
【0115】
例えば、車両情報装置150は、運転台のモニタ画面を使用し、気象異常の発生場所、及び規模などの画面表示を行う。また、例えば、車両情報装置150は、運転台のスピーカを使用し、音声により車両の停車指示、乗客の誘導を指示する情報などを再生する。
【0116】
なお、車両情報装置150は、危険度を判定するのではなく、予め災害用DB151に記憶される所定の条件が満たされる場合に、電気車100を停車させるように制御する構成であってもよい。例えば、車両情報装置150は、路線内の強風危険地域に設置されている風速計から情報を無線伝送装置140経由で受信し、一定以上の風速を現時点から10分以内に1度でも観測した場合、危険地域に行く前に電気車100を停車させる。
【0117】
車両情報装置150は、災害用DB151に記憶されている情報に基づいて、車両の停車位置を決定する。この場合、車両情報装置150は、TG192、及びGPS191から送信される情報に基づいて特定した電気車100の位置情報と、路線情報メモリ154に記憶されている情報と、に基づいて電気車100の停車位置を決定する。
【0118】
例えば、車両情報装置150は、路線情報メモリ154に記憶されている路線情報と、位置情報と、現時点での電車の速度と、に基づいて、最寄駅までの走行時間を算出する。これにより、車両情報装置150は、所定時間以内に停車できる駅が存在するか否かの判断を行う。
【0119】
所定時間以内に停車できる駅が存在する場合、車両情報装置150は、駅に停車した方が安全であると判断し、駅に停車するように乗務員に対して指示を行う。また、所定時間以内に停車できる駅が存在しない場合、車両情報装置150は、路線情報に基づいて、鉄橋、崖、及び強風地域などの気象に関連する危険箇所を避けた場所を停車位置として選択する。
【0120】
なお、判定基準となる時間は、運用状況によって適宜設定されるものであり、如何なる時間であってもよい。また、危険箇所として挙げた鉄橋、崖、及び強風地域などは一例であり、運用状況によって適宜設定されるものである。
【0121】
災害用DB151は、停車位置として、予め駅以外の緊急停車位置の候補地を複数記憶する。車両情報装置150は、例えば、災害用DB151に記憶されている緊急停車位置の候補地の中から最寄のものを選択する。車両情報装置150は、停車位置を決定する場合、決定した停車位置に電気車100を移動させることを指示する旨の情報を運転台端末130の表示器及びスピーカにより乗務員に報知する。
【0122】
なお、ブロック512に示すように、保安装置194を動作させることにより、ブレーキ指令を行い、選択した停車位置に電気車100を自動的に誘導する構成であってもよい。この場合、車両情報装置150は、ブロック513に示すように、TG192により逐次電気車の速度を検知し、電気車100を停車位置まで誘導し、停車させる。
【0123】
車両情報装置150は、ブロック514に示すように、気象異常の発生場所、及び規模などに基づいて、災害用DB151から乗客に報知するための情報を選択し、選択した情報を客室内に設置されている表示器170及びスピーカ180により出力する。
【0124】
乗客に報知する情報は、気象異常の発生場所、規模、電気車100を停車させる旨の情報、てすり及びつり革などに捕まる事を促す情報、並びに、状況説明と注意などの情報が考えられる。
【0125】
上記したように、車両情報装置150は、台風情報、気象警報、または、風速情報を受信する場合、当該電気車100が危険であるか否かを判断し、危険である場合、予測される気象異常の発生場所、及び規模などに基づいて、乗務員、及び乗客に対して避難の為の情報を報知する。これにより、乗客を的確に誘導することができ、パニックをおさえ、被害を最小限に防ぐことができる。
【0126】
なお、電気車100の車両情報装置150により緊急停車位置、または緊急停車駅を検索するのではなく、ブロック516に示すように、地上センターマシン200により電気車100の緊急停車位置、または緊急停車駅を検索する構成であってもよい。この場合、地上センターマシン200は、台風情報、気象警報、または、風速情報と、災害対応DB220に記憶されている条件とに基づいて、電気車100を停車させるか否か判断する。なお、判断基準は、災害用DB151に記憶されているものと同様である。
【0127】
電気車100を停車させる場合、地上センターマシン200は、災害対応DB220に記憶されている情報と、電気車100と同じ路線を走行している他の車両の情報などに基づいて、電気車100の停車位置を決定する。地上センターマシン200は、決定した電気車100の停車位置、及び誘導方法などを電気車100に対して無線により送信する。
【0128】
電気車100の車両情報装置150は、ブロック521に示すように、無線伝送装置140により地上センターマシン200から停車位置を指示する情報、及び誘導方法を指示する情報を受信する場合、受信した停車位置を指示する情報、及び誘導方法を指示する情報を運転台端末130の表示器、及びスピーカにより出力する。これにより、車両情報装置150は、電気車100の停車位置、及び誘導方法を乗務員に報知することが出来る。
【0129】
また、ブロック517に示すように、車両情報装置150は、無線伝送装置140により地上の地上センターマシン200に対して、台風情報、気象警報、または、風速情報に基づいて電気車100を緊急停止させる旨を示す危険情報を自動的に通知する。この場合、車両情報装置150は、当該電気車100の路線、編成番号、及び車両の走行位置などを示す情報を併せて通知する。さらに、車両情報装置150は、電気車100を停車させる予定の停車位置を示す情報を合わせて通知する。
【0130】
地上センターマシン200は、電気車100から危険情報を受信する場合、電気車100が停車する予定の駅への連絡、同路線内の各駅への連絡、同路線内の他の車両への連絡などを行う。
【0131】
地上センターマシン200は、ブロック522に示すように、電気車100と同路線内の他の車両への連絡を行う。この場合、地上センターマシン200は、他の車両の運転台の表示器、及びスピーカにより、列車を停止させることを促す情報と、状況を説明する旨の情報とを出力する。これにより、乗務員に電気車100が緊急停止する旨と、対処方法とを報知する。
【0132】
また、地上センターマシン200は、ブロック523に示すように、電気車100と同路線内の各駅に対して連絡を行う。この場合、地上センターマシン200は、各駅に状況を説明する旨の情報を送信する。これにより、各駅の駅員に電気車100が緊急停止する旨を報知する。
【0133】
またさらに、地上センターマシン200は、ブロック524に示すように、電気車100が緊急停車する予定の駅、または、緊急停車位置から最寄の駅に対して連絡を行う。この場合、地上センターマシン200は、電気車100が当該駅に緊急停車する旨と、乗客の誘導方法を示す情報とを当該駅に送信する。これにより、電気車100が緊急停車する予定の駅の駅員に電気車100が緊急停止する旨と、乗客の誘導方法とを報知する。
【0134】
上記した構成によると、車両情報装置150は、鉄道車両内での密閉空間で車両火災、地震、台風、及び気象警報による危険な状態に電気車100が遭遇した場合、乗客及び乗務員に的確に危険を回避する為の情報を提供することが出来る。これにより、乗務員及び乗客がパニックに陥ることを和らげることができる。また、この構成により、乗務員及び乗客は、落ち着いた適切な処置をとることが出きる為、最小限の被害に留めることが出来る。また、電気車100の状況を地上へ伝達することにより、乗客及び乗務員は、早急な救助を受けることができる。また、異常発生時に車両内の信号記録及び映像記録を行うことにより、原因究明を容易に行うことができる。この結果、より安全に電気車の運行を制御することができる電気車制御装置を提供することができる。
【0135】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具現化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0136】
100…電気車、110…換気口、120…火災報知機、130…運転台端末、140…無線伝送装置、150…車両情報装置、151…災害用データベース、152…制御部、153…メモリ、154…路線情報メモリ、155…電源、156…入出力インターフェース、157…入出力インターフェース、158…伝送インターフェース、159…伝送インターフェース、160…幹線伝送インターフェース、170…表示器、180…スピーカ、190…カメラ、191…GPS装置、192…TG、193…マスコン、194…保安装置、195…ブレーキ制御装置、196…VVVF制御装置、200…地上センターマシン、210…無線伝送装置、220…災害対応DB、300…ネットワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気車が具備する電気車制御装置であって、
乗務員に対して情報を報知する第1の報知手段と、
災害情報と対応方法を対応付けて予め記憶するデータベースと、
災害情報を受信する受信手段と、
前記受信手段により受信する災害情報と対応付けられている対応方法を前記データベースから読み出し、前記読み出した対応方法に基づいて避難の為の情報を前記第1の報知手段により出力するように制御を行う制御手段と、
を具備することを特徴とする電気車制御装置。
【請求項2】
電気車の車両内で発生する火災を検知し、火災検知情報を前記受信手段に送信する火災検知手段をさらに具備し、
前記データベースは、前記火災検知情報と、乗務員に対して報知する乗客の誘導方法を指示する情報と、火災発生箇所を示す情報と、を対応付けて記憶し、
前記制御手段は、前記受信手段により前記火災検知手段から受信する火災検知情報に基づいて、乗客の誘導方法を指示する情報と、火災発生箇所を示す情報とを前記データベースから読み出し、前記第1の報知手段により出力するように制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気車制御装置。
【請求項3】
制御信号に基づいて開閉し、車両内部の空気を車両外部の空気と入れ替える換気手段をさらに具備し、
前記制御手段は、前記受信手段により前記火災検知手段から火災検知情報を受信する場合、前記換気手段を開くように制御を行う、
ことを特徴とする請求項2に記載の電気車制御装置。
【請求項4】
電気車が運行する路線の路線情報を記憶する路線情報記憶手段と、
電気車の現在位置を特定する為の位置特定手段と、
をさらに具備し、
前記制御手段は、前記受信手段により前記火災検知手段から火災検知情報を受信する場合、前記位置特定手段により特定する当該電気車の位置と、前記路線情報記憶手段により記憶される路線情報と、に基づいて、当該電気車を停車させる停車場所を特定し、特定した停車場所を前記第1の報知手段により出力するように制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の電気車制御装置。
【請求項5】
乗客に対して情報を報知する第2の報知手段をさらに具備し、
前記データベースは、前記火災検知情報と、乗客に対して報知する避難方法を指示する情報と、火災発生箇所を示す情報と、を対応付けて記憶し、
前記制御手段は、前記受信手段により前記火災検知手段から受信する火災検知情報に基づいて、避難方法を指示する情報と、火災発生箇所を示す情報とを前記データベースから読み出し、前記第2の報知手段により出力するように制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の電気車制御装置。
【請求項6】
地上のセンターマシンと通信を行う通信手段をさらに具備し、
前記制御手段は、前記受信手段により前記火災検知手段から火災検知情報を受信する場合、前記通信手段により地上のセンターマシンに対して車両の路線、走行位置、車両番号、火災検知した号車番号、及び停車予定場所を通知するように制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の電気車制御装置。
【請求項7】
電気車の運転データを記憶する運転データ記憶手段をさらに具備し、
前記制御手段は、前記受信手段により前記火災検知手段から火災検知情報を受信する場合、前記通信手段により地上のセンターマシンに対して前記運転データ記憶手段に記憶されている運転データを送信するように制御する、
ことを特徴とする請求項6に記載の電気車制御装置。
【請求項8】
電気車の客室内の映像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像する映像データを記憶する映像データ記憶手段と、
をさらに具備し、
前記制御手段は、前記受信手段により前記火災検知手段から火災検知情報を受信する場合、前記通信手段により地上のセンターマシンに対して前記映像データ記憶手段に記憶されている運転データを送信し、前記撮像手段により撮像する映像を前記第1の報知手段により乗務員に報知するように制御する、
ことを特徴とする請求項6に記載の電気車制御装置。
【請求項9】
電気車が運行する路線の路線情報を記憶する路線情報記憶手段と、
電気車の現在位置を特定する為の位置特定手段と、
前記受信手段により受信する地震発生予報情報が示す地震の発生位置及び予測震度と、前記路線情報記憶手段に記憶されている路線情報と、前記位置特定手段により特定する当該電気車の位置とに基づいて、当該電気車が危険であるか否かを判定する判定手段と、
をさらに具備し、
前記データベースは、前記地震の状況毎に、乗務員に対して報知する乗客の誘導方法を指示する情報を記憶し、
前記制御手段は、前記判定手段により危険であると判定する場合、前記受信手段により外部から受信する地震発生予報情報に基づいて、乗客の誘導方法を指示する情報を前記データベースから読み出し、前記第1の報知手段により出力するように制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気車制御装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記判定手段により危険であると判定する場合、前記路線情報記憶手段に記憶されている路線情報と、前記位置特定手段により特定する当該電気車の位置とに基づいて、当該電気車を停車させる停車場所を特定し、特定した停車場所を前記第1の報知手段により出力するように制御する、
ことを特徴とする請求項9に記載の電気車制御装置。
【請求項11】
乗客に対して情報を報知する第2の報知手段をさらに具備し、
前記データベースは、前記地震の状況毎に、乗客に対して報知する避難方法を指示する情報を記憶し、
前記制御手段は、前記判定手段により危険であると判定する場合、前記受信手段により外部から受信する地震発生予報情報に基づいて、乗客に対して報知する避難方法を指示する情報を前記データベースから読み出し、前記第2の報知手段により出力するように制御する、
ことを特徴とする請求項9に記載の電気車制御装置。
【請求項12】
地上のセンターマシンと通信を行う通信手段をさらに具備し、
前記制御手段は、前記判定手段により危険であると判定する場合、前記通信手段により地上のセンターマシンに対して車両の路線、走行位置、車両番号、及び停車予定場所を通知するように制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の電気車制御装置。
【請求項13】
電気車の客室内の映像を撮像する撮像手段をさらに具備し、
前記制御手段は、前記判定手段により危険であると判定する場合、前記撮像手段により撮像する映像を前記通信手段により地上のセンターマシンに逐次送信するように制御する、
ことを特徴とする請求項12に記載の電気車制御装置。
【請求項14】
電気車が運行する路線の路線情報を記憶する路線情報記憶手段と、
電気車の現在位置を特定する為の位置特定手段と、
前記受信手段により受信する気象情報が示す気象異常の発生位置及び規模と、前記路線情報記憶手段に記憶されている路線情報と、前記位置特定手段により特定する当該電気車の位置とに基づいて、当該電気車が危険であるか否かを判定する判定手段と、
をさらに具備し、
前記データベースは、前記気象異常の状況毎に、乗務員に対して報知する乗客の誘導方法を指示する情報を記憶し、
前記制御手段は、前記判定手段により危険であると判定する場合、前記受信手段により外部から受信する気象情報に基づいて、乗客の誘導方法を指示する情報を前記データベースから読み出し、前記第1の報知手段により出力するように制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気車制御装置。
【請求項15】
前記制御手段は、前記判定手段により危険であると判定する場合、前記路線情報記憶手段に記憶されている路線情報と、前記位置特定手段により特定する当該電気車の位置とに基づいて、当該電気車を停車させる停車場所を特定し、特定した停車場所を前記第1の報知手段により出力するように制御する、
ことを特徴とする請求項14に記載の電気車制御装置。
【請求項16】
乗客に対して情報を報知する第2の報知手段をさらに具備し、
前記データベースは、前記気象異常の状況毎に、乗客に対して報知する避難方法を指示する情報を記憶し、
前記制御手段は、前記判定手段により危険であると判定する場合、前記受信手段により外部から受信する気象情報に基づいて、乗客に対して報知する避難方法を指示する情報を前記データベースから読み出し、前記第2の報知手段により出力するように制御する、
ことを特徴とする請求項14に記載の電気車制御装置。
【請求項17】
地上のセンターマシンと通信を行う通信手段をさらに具備し、
前記制御手段は、前記判定手段により危険であると判定する場合、前記通信手段により地上のセンターマシンに対して車両の路線、走行位置、車両番号、及び停車予定場所を通知するように制御する、
ことを特徴とする請求項14に記載の電気車制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−255821(P2011−255821A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133139(P2010−133139)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】