説明

電池および電池の製造方法ならびに電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システム

【課題】 ラミネートフィルム等の外装部材で外装された非水電解質電池において、外装部材の封止性と、リードおよび外装部材との間の短絡防止を両立する。
【解決手段】 正極リードの両端部の熱融着部の厚みを、正極リードの幅方向の中心線上の熱融着部の厚みよりも大きく形成し、かつ上極リードの両端部の熱融着部の厚みを、負極リードの幅方向の中心線上の熱融着部の厚みよりも大きく形成する。正極リードの端部における金属層および正極リード間の樹脂層の厚みTc1と、正極リードの幅方向の中心線上における金属層および正極リード間の樹脂層の厚みTc2とが、1.2≦Tc1/Tc2≦10であり、負極リードの端部における金属層および負極リード間の樹脂層の厚みTa1と、負極リードの幅方向の中心線上における金属層および負極リード間の樹脂層の厚みTa2とが、1.2≦Ta1/Ta2≦10であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、ラミネートフィルム等を外装部材として用いた電池および電池の製造方法に関する。また、この電池を用いた電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ一体型VTR、携帯電話、携帯用コンピュータ等のポータブル電子機器が多く登場し、その小型軽量化が図られている。そして、これらの電子機器のポータブル電源として、いわゆるリチウムイオン電池等の非水電解質電池が特に広く用いられており、薄型や折り曲げ可能な電池の研究開発が活発に進められている。
【0003】
このような、電池の薄型軽量というメリットを生かすべく、樹脂フィルムや樹脂フィルムと金属箔とを貼り合わせたいわゆるラミネートフィルムを外装部材として用いて発電要素を封入する電池が種々検討されている。このような電池では、いかにして金属缶同等以上の密封信頼性を確保できるかが重要な課題の一つとなっている。
【0004】
例えば下記の特許文献1に記載されている電池のように、外装部材が樹脂単体で形成された樹脂フィルムにより構成されている場合、水分が樹脂を透過して浸入したり、発電要素とともに内部に収容した非水電解液が樹脂を透過して揮発するという不都合を免れない。したがって、樹脂単体で形成された樹脂フィルムは、非水電解質電池の外装部材としての使用には適さない。
【0005】
このような不都合を解消するには、外装部材として、その積層構成に金属箔を含むラミネートフィルム等の採用が効果的であるが、この場合、短絡が大きな問題となる。例えば、ラミネートフィルムの熱融着界面より短冊状の電極端子が導出されることになるが、このとき、リード導出部分におけるラミネートフィルム端面に露出する金属箔あるいは適切な温度範囲、圧力範囲を越えて熱融着を行った際に樹脂が流動して露出した金属箔の表面と、電極端子とが接触して短絡を起こす。
【0006】
そこで、例えば特許文献2において、シート状電池封入体から外部へ電極端子を取り出す際に、予めマレイン酸変性ポリオレフィン樹脂等の密着フィルムで一部を被覆したリードを用い、封入体のシール部分の樹脂にも密着フィルムを使用する。これにより、封止性の向上を図る試みが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭56−71278号公報
【特許文献2】特開平9−288998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1および特許文献2の構成においても、ラミネートフィルムの熱融着時に表面が平坦なヒータヘッドを用いた場合、熱融着時の圧力や熱融着温度が大きすぎる場合にはリードとラミネートフィルムの金属箔との短絡のおそれが依然として残る。熱融着時に、短絡の回避を目的として圧力や熱融着温度を低めに設定することも考えられるが、樹脂の溶融および流動不足による封止性の低下が生じるおそれがある。ラミネートフィルムの封止性が低下すると、非水電解質電池の気密性が大きく損なわれ、電池特性の低下につながる。
【0009】
また、リードは金属板を切断して短冊状とするが、切断方向にバリが形成されることがある。ラミネートフィルムが熱融着により十分に封止されても、リードの端部に形成されたバリが、リードと対向する樹脂層を突き破ってラミネートフィルムの金属箔と短絡するおそれがある。特に、近年需要の大きい大電流放電が可能な非水電解質電池では、リードの厚みを厚く設計する必要があるが、厚いリードの端部には大きいバリが形成されやすく、短絡がより生じ易くなる。このような大電流放電が可能な非水電解質電池では、従来の熱融着方法により作製しても、短絡を防止することが困難であった。
【0010】
そこで、本技術では上記問題点に鑑み、高い封止性を有するとともに、大電流放電が可能で、かつ短絡を防止することができる電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本技術の電池は、金属層と、金属層の外面に形成された外側樹脂層と、金属層の内面に形成された内側樹脂層とが積層された外装部材と、
外装部材に収容された正極と負極とを含む電極体と、
外装部材に収容された電解質と、
正極と電気的に接続され、外装部材の熱融着された合わせ目から外部に導出される正極リードと、
負極と電気的に接続され、外装部材の熱融着された合わせ目から外部に導出される負極リードと
を備え、
正極リードおよび負極リードが外部に導出されて外装部材同士が熱融着される熱融着部において、正極リードの両端部の熱融着部の厚みが、正極リードの幅方向の中心線上の熱融着部の厚みよりも大きく形成され、かつ負極リードの両端部の熱融着部の厚みが、負極リードの幅方向の中心線上の熱融着部の厚みよりも大きく形成されることを特徴とする。
【0012】
また、本技術の電池の製造方法は、正極と負極とを含む電極体と電解質とを、金属層と、金属層の外面に形成された外側樹脂層と、金属層の内面に形成された内側樹脂層とが積層されてなり、熱融着により電極体と電解質とを内部に収容する外装部材で外装し、
正極と電気的に接続された正極リードと、負極と電気的に接続された負極リードとを、外装部材の合わせ目から外部に導出し、
電極体の外周部のうち、正極リードまたは負極リードを導出する導出辺の外装部材を、正極リードと対向する部分に、正極リードの端部をまたぐ領域に対向する部分にそれぞれ設けられた一対の第1の切り欠き部と、一対の第1の切り欠き部の間に、正極リードの中心線を含み、かつ第1の切り欠き部よりも浅く形成された第2の切り欠き部とからなる正極側切り欠き部を備え、負極リードと対向する部分に、負極リードの端部をまたぐ領域に対向する部分にそれぞれ設けられた一対の第3の切り欠き部と、一対の第3の切り欠き部の間に、負極リードの中心線を含み、かつ第3の切り欠き部よりも浅く形成された第4の切り欠き部とからなる負極側切り欠き部を備えたヒータブロックによって熱融着し、
電極体の外周部のうち、正極リードおよび負極リードを導出しない辺の外装部材を熱融着することを含むことを特徴とする。
【0013】
また、本技術の電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムは、上述の方法により製造された上述の非水電解質電池を備えることを特徴とする。
【0014】
本技術では、高い封止性を有するとともに、リード端部に形成されたバリによるリードとラミネートフィルムの金属箔との短絡を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本技術によれば、高い封止性と、短絡による電池性能の劣化抑制とを実現する非水電解質電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施の形態における非水電解質電池の一構成例を示す斜視図である。
【図2】ラミネートフィルムの一構成例を示す断面図である。
【図3】本技術の非水電解質電池の正極リード導出部分の一構成例を示す断面図である。
【図4】第1の実施の形態における非水電解質電池の一構成例を示す断面図である。
【図5】本技術の非水電解質電池の正極リード導出部分における、樹脂層の厚みを測定する位置を示す断面図である。
【図6】第1の実施の形態における巻回電極体の一構成例を示す断面図である。
【図7】本技術の非水電解質電池のリード導出部分の熱融着を行うヒータブロックの一構成例を示す断面図である。
【図8】本技術の非水電解質電池のリード導出部分の熱融着工程を示す断面図である。
【図9】第2の実施の形態の非水電解質電池に用いる積層電極体の一構成例を示す斜視図および断面図である。
【図10】第2の実施の形態の非水電解質電池における正極および負極の一構成例を示す斜視図である。
【図11】第2の実施の形態の非水電解質電池に用いる積層電極体の一構成例を示す斜視図および断面図である。
【図12】本技術の実施の形態による電池パックの回路構成例を示すブロック図である。
【図13】本技術の非水電解質電池を用いた住宅用の蓄電システムに適用した例を示す概略図である。
【図14】本技術が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す概略図である。
【図15】実施例における開裂圧試験の方法を示す写真である。
【図16】実施例における開裂圧の試験装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本技術の実施の形態について図面を参照して説明する。説明は、以下の順序で行う。以下の各実施の形態では、本技術の電池として、リチウムイオン二次電池等の非水電解質電池を用いる場合について説明する。
1.第1の実施の形態(非水電解質電池の構成を示す例)
2.第2の実施の形態(他の構成の電極体を用いた非水電解質電池の例)
3.第3の実施の形態(非水電解質電池を用いた電池パックの例)
4.第4の実施の形態(非水電解質電池を用いた蓄電システム等の例)
【0018】
1.第1の実施の形態
(1−1)非水電解質電池の構成
図1Aは、第1の実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池等の非水電解質電池1の一構成例を示す分解斜視図である。また、図1Bは、非水電解質電池1の外観を示す斜視図である。この非水電解質電池1は、外装部材としてラミネートフィルム2を用いたものであり、正極リード11および負極リード12(以下、区別しない場合にはリードと適宜称する)が取り付けられた巻回電極体10をラミネートフィルム2の内部に収容したものである。図1Aに示されるように、ラミネートフィルム2には、予め深絞り加工により形成された凹部3が設けられている。巻回電極体10は、凹部3に収納される。ラミネートフィルム2は、巻回電極体10を覆い、巻回電極体10の外周部で、ラミネートフィルム2同士が対向した状態で互いに接着されている。
【0019】
正極リード11および負極リード12は、それぞれ、ラミネートフィルム2の内部に収容された巻回電極体10と接続され、非水電解質電池1の外部に導出されている。正極リード11および負極リード12は、非水電解質電池1の同一辺から導出されていてもよく、また、それぞれ異なる辺から導出されていてもよい。
【0020】
正極リード11は、図示しない正極集電体の一端部にスポット溶接または超音波溶接等の方法により接続されている。正極リード11は金属箔、網目状のものが望ましいが、電気化学的および化学的に安定であり、導通がとれるものであれば金属でなくとも問題はない。正極リード11の材料としては、例えばアルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)またはステンレス(SUS)等が用いられる。
【0021】
負極リード12は、図示しない負極集電体の一端部にスポット溶接または超音波溶接等の方法により接続されている。負極リード12は金属箔、網目状のものが望ましいが、電気化学的および化学的に安定であり、導通がとれるものであれば金属でなくとも問題はない。負極リード12の材料としては、例えば銅(Cu)、ニッケル(Ni)等が用いられる。
【0022】
ラミネートフィルム2と、正極リード11および負極リード12との間には、ラミネートフィルム2と正極リード11および負極リード12との密着性を向上させるための密着フィルム13が設けられていることが好ましい。
【0023】
密着フィルム13は、正極リード11および負極リード12との接着性の高い樹脂材料からなり、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂を用いることができる。
【0024】
密着フィルム13の厚みは、70μm以上130μm以下とすることが好ましい。70μm未満では正極リード11および負極リード12と、ラミネートフィルム2との接着性に劣り、130μmを超えると熱融着時における溶融樹脂の流動量が多く、製造工程上好ましくない。
【0025】
正極リード11の厚みおよび負極リード12の厚みは、それぞれ70μm以上400μm以下であることが好ましい。また、非水電解質電池1を、電動工具用充電電池ならびにハイブリッドカー用充電電池および電気自動車用充電電池等として用いる場合には、大電流を取り出す必要がある。このため、正極リード11および負極リード12の厚みを100μm以上400μm以下とすることが好ましい。なお、正極リード11および負極リード12の厚みは、正極リード11および負極リード12の幅方向の中心線上における厚みとする。
【0026】
また、非水電解質電池1を、電動工具用充電電池ならびにハイブリッドカー用充電電池および電気自動車用充電電池等として用いるに際し、大容量電池であることが好ましい。このため、非水電解質電池1の厚みは5mm以上20mm以下であることが好ましく、放電容量は3Ah以上50Ah以下であることが好ましい。
【0027】
非水電解質電池1は、正極リード11または負極リード12の端部に形成されるバリに起因する短絡を防止するものである。特に、非水電解質電池1を大容量化する場合には、正極リード11および負極リード12を厚くする必要があり、これに伴ってリード端部のバリが高くなってより短絡しやすくなるため、本技術の構成を適用することによって短絡防止効果がより高くなる。
【0028】
[外装部材]
巻回電極体10を外装する外装部材であるラミネートフィルム2は、図2に示すように、金属箔からなる金属層2aの両面に樹脂層を設けた構成とされている。ラミネートフィルム2の一般的な構成は、外側樹脂層2b/金属層2a/内側樹脂層2cの積層構造で表すことができ、内側樹脂層2cが巻回電極体10に対向するように形成されている。外側樹脂層2bおよび内側樹脂層2cは、それぞれ複数層で構成されてもよい。外側樹脂層2bおよび内側樹脂層2cと、金属層2aとの間には、図示しない接着層を設けてもよい。接着層は、例えば厚さ2μm以上7μm以下の厚みとされる。
【0029】
金属層2aを構成する金属材料としては、耐透湿性のバリア膜としての機能を備えていれば良く、箔状のアルミニウム(Al)、ステンレス(SUS)、ニッケル(Ni)およびメッキを施した鉄(Fe)等を使用することができる。なかでも、薄く軽量で加工性に優れるアルミニウムを用いることが好ましい。特に、加工性の点から、軟質のアルミニウム、例えば焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS A8021P−O)、(JIS A8079P−O)または(JIS A1N30−O)等を用いることができる。
【0030】
また、非水電解質電池1は、2枚のラミネートフィルム2を対向させ、一方のラミネートフィルム2にのみ凹部3を設けて巻回電極体10を外装したものとしてもよい。この場合、凹部3を設けるラミネートフィルム2の金属層2aを上述の軟質のアルミニウムとし、凹部3を設けない他方のラミネートフィルム2の金属層2aを、上述の軟質のアルミニウムよりも硬質のアルミニウムとしてもよい。このとき、少なくとも、硬質のラミネートフィルム2の幅を大きく形成し、硬質のラミネートフィルム2の両端部を凹部3の底面
で当接させることにより、硬質のラミネートフィルム2を最外装とする非水電解質電池1を形成することができる。硬質のアルミニウムとしては、例えば焼きなまし処理なしのアルミニウム(JIS A3003P−H18)または(JIS A3004P−H18)等を用いることができる。
【0031】
金属層2aの厚みは、30μm以上100μm以下とすることが好ましい。30μm未満の場合、材料強度に劣ってしまう。また、100μmを超えた場合、加工が著しく困難になるとともに、ラミネートフィルム2の厚さが増してしまい、非水電解質電池の体積効率の低下につながってしまう。
【0032】
内側樹脂層2cは、熱で溶けて互いに融着する部分である。内側樹脂層2cは、例えばヒータを備える金属ブロックであるヒータヘッド等により暖められて溶融する。ヒータヘッドの温度は、巻回電極体10を損傷しない程度の温度とされる。したがって、内側樹脂層2cは、上述の熱融着温度よりも低い融点を有する樹脂材料を用いる必要があり、このような樹脂材料としては、例えばポリエチレン(PE)、無軸延伸ポリプロピレン(CPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)または直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が使用可能であり、これらから複数種類選択して用いることも可能である。
【0033】
内側樹脂層2cの厚みは、20μm以上90μm以下とすることが好ましい。20μm未満では接着性が低下するとともに、圧力緩衝作用が不十分となってしまい、短絡が発生しやすくなる。また、90μmを超えると、内側樹脂層2cが溶融、固化して形成された樹脂層を通じて水分が浸入しやすくなっていまい、電池内部でのガス発生およびそれに伴う電池膨れ、ならびに電池特性の低下が生じるおそれがある。なお、内側樹脂層2cの厚みは、巻回電極体10に外装前の状態における厚みである。巻回電極体10に対してラミネートフィルム2を外装し、封止した後は、内側樹脂層2cが溶融されて流動するため、内側樹脂層2cが溶融・固化した樹脂層の厚みは内側樹脂層2c形成時の厚みとは異なり、また上記範囲から外れる場合もある。
【0034】
また、内側樹脂層2cを例えば2層構造としてもよい。この場合、金属層2aと接する内側面に、上述の樹脂材料を用いた樹脂層を形成し、正極リード11および負極リード12と対向する表面側に、上述の樹脂材料よりも金属との接着性に優れる樹脂材料を用いた樹脂層を形成することが好ましい。金属との接着性に優れる樹脂材料としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂を用いることができる。
【0035】
外側樹脂層2bとしては、外観の美しさや強靱さ、柔軟性等が必要とされる。外側樹脂層2bは、内側樹脂層2cを溶融するヒータヘッド等よりも高い融点を有し、ラミネートフィルム2の熱融着時に溶融されない樹脂材料を用いる。このような樹脂材料としては、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル等が用いられる。具体的には、ナイロン(Ny)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)が用いられ、これらから複数種類選択して用いることも可能である。
【0036】
なお、内側樹脂層2c同士を熱融着により溶融させてラミネートフィルム2を接着するため、外側樹脂層2bは、内側樹脂層2cよりも高い融点を有する。熱融着時に内側樹脂層2cのみを溶融させるためである。このため、外側樹脂層2bは、内側樹脂層2cとして選択された樹脂材料に応じて使用可能な材料を選択する必要がある。
【0037】
外側樹脂層2bの厚みは、25μm以上50μm以下とすることが好ましい。25μm未満では保護層としての機能に劣り、50μmを超えると非水電解質電池の体積効率の低下につながってしまう。
【0038】
なお、このようにして構成されるラミネートフィルム2は、その内側樹脂層2cの伸び率が350%以上であることが好ましい。以下に説明する、バリに起因する短絡を抑制することができる熱融着部の凹凸形状を好適に形成することができるためである。
【0039】
巻回電極体10は、上述のラミネートフィルム2にて外装される。正極14と接続された正極リード11および負極15と接続された負極リード12がラミネートフィルム2の封止部から電池外部に導出される。
【0040】
本技術では、巻回電極体10の周辺部をヒータヘッドによって加熱することにより、巻回電極体10を両面から覆うラミネートフィルム2同士を熱融着させて封止する。第1の実施の形態の非水電解質電池1では、正極リード11もしくは負極リード12を挟んでラミネートフィルム2同士が熱融着されたリード導出辺の熱融着部を所定の厚さに調整することにより、正極リード11もしくは負極リード12の端部に形成されやすいバリに起因する短絡を抑制することができる。以下、正極リード11もしくは負極リード12を挟んでラミネートフィルム2同士が熱融着されたリード導出辺の熱融着部における厚みについて詳細に説明する。
【0041】
[リード導出辺の熱融着部の構成]
図3Aは、図1Bに示した本技術の非水電解質電池1の正極リード11導出部分におけるI−I線に沿った断面図である。図3Bは、図1Bに示した本技術の非水電解質電池1の正極リード11導出部分におけるI−I線に沿った断面図の他の例である。
【0042】
本技術の非水電解質電池1では、図3Aおよび図3Bに示すように、正極リード11の両端部における熱融着部の厚みが、正極リード11の幅方向に対する中心線上における熱融着部の厚みよりも大きく形成される。図3Aの正極リード11には、バリ11aが形成されている。また、負極リード12の両端部における熱融着部の厚みについても同様に、負極リード12の幅方向に対する中心線上における熱融着部の厚みよりも大きく形成される。なお、熱融着部とは、ラミネートフィルム2の内側樹脂層2c同士が溶融して接着した部分とする。また、熱融着部の厚みとは、対向するラミネートフィルム2それぞれの金属層2aおよび外側樹脂層2bと、ラミネートフィルム2の対向する内側樹脂層2c同士が溶融して一体となった樹脂層2dと、リードを挟む部分においてはリードの厚みとの合計の厚みとする。また、正極リード11に形成されたバリ11aと、負極リード12に形成されたバリとを区別しない場合には、バリと適宜称する。
【0043】
具体的には、正極リード11の両端部におけるラミネートフィルム2の金属層2aおよび正極リード11間の樹脂層2dの厚みが、正極リード11の中心線上におけるラミネートフィルム2の金属層2aおよび正極リード11間の樹脂層2dの厚みよりも大きく形成される。ラミネートフィルム2と正極リード11との間に密着フィルム13を設ける場合には、樹脂層2dは、溶融後の内側樹脂層2cと密着フィルム13とが溶融して互いに一体となった溶融樹脂層からなる。樹脂層2dの厚みは、ラミネートフィルム2の内側樹脂層2cが溶融かつ流動するため、熱融着前のラミネートフィルム2の内側樹脂層2cとは異なり、またそれぞれの部分において厚みが均一でなく、異なるように形成されている。これにより、正極リード11の端部における熱融着部と正極リード11の中心線上における熱融着部とに段差が設けられ、正極リード11の端部における熱融着部が外側樹脂層2bの方向に凸となるように形成された凸状部4が形成される。
【0044】
なお、正極リード11を挟む熱融着部においては、樹脂層2dが正極リード11の両面にそれぞれ融着した状態となっている。また、正極リード11を挟まない熱融着部においては、ラミネートフィルム2の対向する内側樹脂層2c同士が互いに溶融し、一体となって樹脂層2dが形成されている。このような構成は、負極リード12を挟む熱融着部においても同様である。
【0045】
同様に、負極リード12の両端部におけるラミネートフィルム2の金属層2aおよび負極リード12間の樹脂層2dの厚みが、負極リード12の中心線上におけるラミネートフィルム2の金属層2aおよび負極リード12間の樹脂層2dの厚みよりも大きく形成される。これにより、負極リード12の端部における熱融着部と負極リード12の中心線上における熱融着部とに段差が設けられ、負極リード12の端部における熱融着部が外側樹脂層2bの方向に凸となるように形成された凸状部4が形成される。
【0046】
これにより、バリが形成されやすい正極リード11および負極リード12のそれぞれの端部における樹脂層2dの厚みを、バリを樹脂層2dに埋め込むのに充分な程度に厚くすることができるため、バリに起因する短絡を生じにくくすることができる。
【0047】
正極リード11の端部を含む熱融着部の凸状部4および負極リード12の端部を含む熱融着部の凸状部4は、少なくとも正極リード11および負極リード12の一方の表面側に設けられることが好ましい。すなわち、図3Aに示すように、凸状部4を一方向に凸となるように形成してもよく、図3Bに示すように、凸状部4を両面方向に凸となるように形成してもよい。
【0048】
正極リード11および負極リード12の端部のバリは、正極リード11および負極リード12を金属板から切り出す際に、金属板のカット方向に生じることが多い。このため、正極リード11および負極リード12のそれぞれの端部を含む熱融着部の凸状部4は、図3Aに示すように、正極リード11および負極リード12のバリ形成方向の面に少なくとも設けられることが好ましい。この場合、正極リード11および負極リード12のバリ形成方向の面に凸状部4が形成されるように調整する必要がある。
【0049】
なお、本技術の非水電解質電池1は、図4(図1BのII−II線に沿った断面図)に示すように、リード導出部が非水電解質電池1の一方の主面に連続し、リード導出部の厚み方向に、巻回電極体10と同程度の厚みの空間部が設けられる構成とされることが多い。正極リード11および負極リード12のバリ形成方向の面を上述の空間部側とし、熱融着部の凸状部4を上述の空間部の方向に凸となるように形成することにより、非水電解質電池1の外観に凹凸が生じずに、滑らかな状態で非水電解質電池1を形成できるため好ましい。
【0050】
一方、熱融着部の凸状部4を正極リード11および負極リード12の両面方向に設ける場合には、リード導出部が巻回電極体10の一方の主面に連続するように設けられる構成では、非水電解質電池1の外観に凹凸が生じてしまう。しかしながら、正極リード11および負極リード12のバリの形成面を確認する必要がないため、凸状部形成工程が容易となるため好ましい。
【0051】
正極リード11と対向する部分に設けられる凸状部4は、正極リード11の端部における樹脂層2dの厚みをTc1、正極リード11の幅方向の中心線上における樹脂層2dの厚みをTc2とした場合、1.1≦Tc1/Tc2≦11、好ましくは1.2≦Tc1/Tc2≦10となるように形成されることが好ましい。
【0052】
正極リード11の端部における樹脂層2dの厚みTc1は、図5Aに示すように、正極リード11の両端部と直交する線上において、正極リード11表面とラミネートフィルム2の金属層2aとの距離を樹脂層2dの厚みとして4ヶ所で測定し、その平均を取ったものである。すなわち、図5Aに示した4ヶ所の樹脂層2dの厚みをそれぞれTc1-1、Tc1-2、Tc1-3およびTc1-4とした際に、正極リード11の端部における樹脂層2dの厚みTc1は、下記の式によって表される。
Tc1=(Tc1-1+Tc1-2+Tc1-3+Tc1-4)/4
【0053】
また、図5Bに示すように、凸状部4を形成する工程において、正極リード11の中央部が正極リード11の両端部よりも強い力で押圧され、正極リード11の両端部がやや折曲する場合も考えられる。この場合においても同様に、樹脂層2dの厚みTc1は4ヶ所の樹脂層2dの厚みの平均として算出することができる。このとき、図5Bに示すように、正極リード11の一方の面(例えば押圧方向の下面側)の主面を基準とし、これと交差する鉛直線上においてそれぞれの位置の樹脂層2dの厚みTc1-1、Tc1-2、Tc1-3およびTc1-4から正極リード11の端部における樹脂層2dの厚みTc1を得る。なお、樹脂層2dの厚みの算出方法は、負極リード12の両端部および中心線上においても同様である。
【0054】
正極リード11の幅方向の中心線上における樹脂層2dの厚みTc2は、図5Aおよび図5Bに示すように、正極リード11の幅方向の中心線と直交する線上において、正極リード11表面とラミネートフィルム2の金属層2aとの距離を樹脂層2dの厚みとして2ヶ所で測定し、その平均を取ったものである。すなわち、図5Aおよび図5Bに示した2ヶ所の樹脂層2dの厚みをそれぞれTc2-1およびTc2-2とした際に、正極リード11の幅方向の中心線上における樹脂層2dの厚みTc2は、下記の式によって表される。
Tc2=(Tc2-1+Tc2-2)/2
【0055】
上述の範囲外にTc1/Tc2の値が小さい場合、バリが内側樹脂層2cが溶融後固化して形成された樹脂層2dに十分に埋まらず、短絡が生じやすくなるおそれがある。また、上述の範囲外にTc1/Tc2の値が大きい場合、正極リード11の端部を含む熱融着部以外の熱融着部において樹脂層2dが薄くなり、非水電解質電池1の封止性が低下してしまうおそれがある。
【0056】
負極リード12と対向する部分に設けられる凸状部4は、負極リード12の端部における金属層2aおよび負極リード12間の樹脂層2dの厚みをTa1、負極リード12の幅方向の中心線上における金属層2aおよび負極リード12間の樹脂層2dの厚みをTa2とした場合、1.1≦Ta1/Ta2≦11、好ましくは1.2≦Ta1/Ta2≦10となるように形成されることが好ましい。
【0057】
負極リード12の端部における樹脂層2dの厚みTa1は、上述のTc1と同様に、負極リード12の端部において測定した4ヶ所の樹脂層2dの厚みの平均を取ったものである。すなわち、負極リード12の端部における樹脂層2dの厚みをそれぞれTa1-1、Ta1-2、Ta1-3およびTa1-4とした際に、負極リード12の端部における樹脂層2dの厚みTa1は、下記の式によって表される。Ta1-1、Ta1-2、Ta1-3、Ta1-4は、図5の正極リード11の端部における樹脂層2dの厚みTc1-1、Tc1-2、Tc1-3、Tc1-4とそれぞれ同じ位置における厚みである。
Ta1=(Ta1-1+Ta1-2+Ta1-3+Ta1-4)/4
【0058】
負極リード12の幅方向の中心線上における樹脂層2dの厚みTa2は、上述のTc2と同様に、負極リード12の幅方向の中心線と直交する線上における樹脂層2dの厚みの平均を取ったものである。すなわち、負極リード12の中心線上における樹脂層2dの厚みをそれぞれTa2-1およびTa2-2とした際に、負極リード12の幅方向の中心線上における樹脂層2dの厚みTa2は、下記の式によって表される。Ta2-1、Ta2-2は、図5の正極リード11の中心線上における樹脂層2dの厚みTc2-1、Tc2-2とそれぞれ同じ位置における厚みである。
Ta2=(Ta2-1+Ta2-2)/2
【0059】
上述の範囲外にTa1/Ta2の値が小さい場合、バリが内側樹脂層2cが溶融後固化して形成された凸状部4の樹脂層2dに十分に埋まらず、短絡が生じやすくなるおそれがある。また、上述の範囲外にTa1/Ta2の値が大きい場合、負極リード12の端部を含む熱融着部以外の熱融着部において樹脂層2dが薄くなり、非水電解質電池1の封止性が低下してしまうおそれがある。
【0060】
正極リード11の幅方向の中心線上における樹脂層2dの厚みTc2および負極リード12の幅方向の中心線上における樹脂層2dの厚みTa2は、それぞれ5μm以上50μm以下であることが好ましい。上述の範囲外にTc2およびTa2の値が小さい場合、非水電解質電池1の封止性が低下してしまうおそれがある。また、上述の範囲外にTc2およびTa2の値が大きい場合、樹脂層2dを通じて非水電解質電池1内部に水分が浸入しやすくなるおそれがある。そして、正極リード11の両端部における樹脂層2dが、バリが十分に埋まる程度に厚くならず、短絡が生じやすくなるおそれがある。
【0061】
正極リード11の端部および負極リード12の端部をそれぞれ含む位置に設けられる熱融着部の凸状部4の幅は、0.6mm以上とすることが好ましい。上述の範囲外に凸状部4の幅が小さくなると、バリを十分に埋めることができないためである。また、凸状部4の幅の上限値は、非水電解質電池1のサイズ(特に、正極リード11および負極リード12の幅)に応じて適切に調整されることが好ましい。具体的には、凸状部4が、リード端部からリード幅の1/3以下の範囲でリードと重なることが好ましい。上述の範囲外に凸状部4の幅が大きくなると、内側樹脂層2cが溶融して流動し、凸状部4に流れる樹脂量が多くなり、凸状部4以外の部分における樹脂層の厚みが薄くなって封止性が低下するためである。
【0062】
凸状部4は、リードに重なる領域と、リードの外側に形成されたリードと重ならない領域に分けられる。凸状部4のうち、リードと重ならない領域の幅は、リードの端部からリードの外側方向に0.5mm以上3.0mm以下とされることが好ましい。また、凸状部4のうち、リードと重なる領域の幅は、リードの端部からリードの内側方向に0.1mm以上かつリードの幅の1/3以下とされることが好ましい。例えば、本技術の非水電解質電池1を放電容量3Ah以上50Ah以下のサイズに形成した場合には、リード幅を10mm以上90mm以下程度とすることが好ましい。このため、凸状部4のうち、リードと重なる領域の幅は、0.5mm以上30mm以下とされることが好ましい。すなわち、放電容量3Ah以上50Ah以下の非水電解質電池1においては、凸状部4が0.6mm以上33mm以下であることが好ましい。
【0063】
[巻回電極体]
以下、ラミネートフィルム2で外装される巻回電極体10の構成について詳細に説明する。
【0064】
図6は、図1Aに示した巻回電極体10のIII−III線に沿った断面構造の一例である。巻回電極体10は、正極14と負極15とをセパレータ16およびゲル電解質層17を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は必要に応じて保護テープ18により保護されている。
【0065】
[正極]
正極14は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体14Aの両面に正極活物質層14Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、正極集電体14Aの片面のみに正極活物質層14Bを設けるようにしてもよい。正極集電体14Aは、例えば、アルミニウム箔等の金属箔により構成されている。
【0066】
正極活物質層14Bは、例えば正極活物質と、導電剤と、結着剤とを含有して構成されている。正極活物質としては、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて、結着剤や導電剤等の他の材料を含んでいてもよい。
【0067】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム酸化物、リチウムリン酸化物、リチウム硫化物またはリチウムを含む層間化合物等のリチウム含有化合物が適当であり、これらの2種以上を混合して用いてもよい。エネルギー密度を高くするには、リチウムと遷移金属元素と酸素(O)とを含むリチウム含有化合物が好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、(化I)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、(化II)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩等が挙げられる。リチウム含有化合物としては、遷移金属元素として、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)および鉄(Fe)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものであればより好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、(化III)、(化IV)もしくは(化V)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、(化VI)に示したスピネル型の構造を有するリチウム複合酸化物、または(化VII)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩等が挙げられ、具体的には、LiNi0.50Co0.20Mn0.302、LiaCoO2(a≒1)、LibNiO2(b≒1)、Lic1Nic2Co1-c22(c1≒1,0<c2<1)、LidMn24(d≒1)またはLieFePO4(e≒1)等がある。
【0068】
(化I)
LipNi(1-q-r)MnqM1r(1-y)z
(式中、M1は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)を除く2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示す。Xは、酸素(O)以外の16族元素および17族元素のうち少なくとも1種を示す。p、q、y、zは、0≦p≦1.5、0≦q≦1.0、0≦r≦1.0、−0.10≦y≦0.20、0≦z≦0.2の範囲内の値である。)
【0069】
(化II)
LiaM2bPO4
(式中、M2は、2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示す。a、bは、0≦a≦2.0、0.5≦b≦2.0の範囲内の値である。)
【0070】
(化III)
LifMn(1-g-h)NigM3h(1-j)k
(式中、M3は、コバルト(Co)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。f、g、h、jおよびkは、0.8≦f≦1.2、0<g<0.5、0≦h≦0.5、g+h<1、−0.1≦j≦0.2、0≦k≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、fの値は完全放電状態における値を表している。)
【0071】
(化IV)
LimNi(1-n)M4n(1-p)q
(式中、M4は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。m、n、pおよびqは、0.8≦m≦1.2、0.005≦n≦0.5、−0.1≦p≦0.2、0≦q≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、mの値は完全放電状態における値を表している。)
【0072】
(化V)
LirCo(1-s)M5s(1-t)u
(式中、M5は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。r、s、tおよびuは、0.8≦r≦1.2、0≦s<0.5、−0.1≦t≦0.2、0≦u≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、rの値は完全放電状態における値を表している。)
【0073】
(化VI)
LivMn(1-w)M6wxy
(式中、M6は、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。v、w、xおよびyは、0.9≦v≦1.1、0≦w≦0.6、3.7≦x≦4.1、0≦y≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、vの値は完全放電状態における値を表している。)
【0074】
(化VII)
LizM7PO4
(式中、M7は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)およびジルコニウム(Zr)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。zは、0.9≦z≦1.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、zの値は完全放電状態における値を表している。)
【0075】
更にまた、より高い電極充填性とサイクル特性が得られるという観点から、上記リチウム含有化合物のいずれかより成る芯粒子の表面を、他のリチウム含有化合物のいずれかより成る微粒子で被覆した複合粒子としてもよい。
【0076】
この他、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、酸化物、二硫化物、カルコゲン化物または導電性高分子等が挙げられる。酸化物は、例えば、酸化バナジウム(V25)、二酸化チタン(TiO2)または二酸化マンガン(MnO2)等である。二硫化物は、例えば、二硫化鉄(FeS2)、二硫化チタン(TiS2)または二硫化モリブデン(MoS2)等である。カルコゲン化物は、特に層状化合物やスピネル型化合物が好ましく、例えば、セレン化ニオブ(NbSe2)等である。導電性高分子は、例えば、硫黄、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレンあるいはポリピロール等である。もちろん、正極材料は、上記以外のものであってもよい。また、上記した一連の正極材料は、任意の組み合わせで2種以上混合されてもよい。
【0077】
また、導電剤としては、例えばカーボンブラックあるいはグラファイト等の炭素材料等が用いられる。結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリロニトリル(PAN)、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)等の樹脂材料、ならびにこれら樹脂材料を主体とする共重合体等から選択される少なくとも1種が用いられる。
【0078】
[負極]
負極15は、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体15Aの両面に負極活物質層15Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、負極集電体15Aの片面のみに負極活物質層15Bを設けるようにしてもよい。負極集電体15Aは、例えば、銅箔等の金属箔により構成されている。
【0079】
負極活物質層15Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されており、必要に応じて正極活物質層14Bと同様の導電剤および結着剤等の他の材料を含んで構成されていてもよい。
【0080】
なお、この非水電解質電池1では、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の電気化学当量が、正極14の電気化学当量よりも大きくなっており、理論上、充電の途中において負極15にリチウム金属が析出しないようになっている。
【0081】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維あるいは活性炭等の炭素材料が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークス等がある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂等の高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいい、一部には難黒鉛化性炭素または易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。これら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができ好ましい。また、難黒鉛化性炭素は、優れたサイクル特性が得られるので好ましい。更にまた、充放電電位が低いもの、具体的には充放電電位がリチウム金属に近いものが、電池の高エネルギー密度化を容易に実現することができるので好ましい。
【0082】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、リチウムを吸蔵および放出することが可能であり、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料も挙げられる。このような材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができるからである。特に、炭素材料と共に用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるのでより好ましい。この負極材料は金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またこれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、本技術において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0083】
この負極材料を構成する金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、リチウムと合金を形成することが可能な金属元素または半金属元素が挙げられる。具体的には、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)が挙げられる。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0084】
負極材料としては、例えば、チタン酸リチウム(Li4Ti512)や、短周期型周期表における4B族の金属元素あるいは半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、より好ましいのはケイ素(Si)およびスズ(Sn)の少なくとも一方を構成元素として含むものであり、特に好ましくは少なくともケイ素を含むものである。ケイ素(Si)およびスズ(Sn)は、リチウムを吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種を有する負極材料としては、例えば、ケイ素の単体、合金または化合物や、スズの単体、合金または化合物や、それらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。
【0085】
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。スズの合金としては、例えば、スズ(Sn)以外の第2の構成元素として、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【0086】
スズ(Sn)の化合物あるいはケイ素(Si)の化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素(C)を含むものが挙げられ、スズ(Sn)またはケイ素(Si)に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
【0087】
中でも、この負極材料としては、コバルト(Co)と、スズ(Sn)と、炭素(C)とを構成元素として含み、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下であり、かつスズ(Sn)とコバルト(Co)との合計に対するコバルト(Co)の割合が30質量%以上70質量%以下であるSnCoC含有材料が好ましい。このような組成範囲において高いエネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるからである。
【0088】
このSnCoC含有材料は、必要に応じて更に他の構成元素を含んでいてもよい。他の構成元素としては、例えば、ケイ素(Si)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、インジウム(In)、ニオブ(Nb)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、リン(P)、ガリウム(Ga)またはビスマス(Bi)が好ましく、2種以上を含んでいてもよい。容量またはサイクル特性を更に向上させることができるからである。
【0089】
なお、このSnCoC含有材料は、スズ(Sn)と、コバルト(Co)と、炭素(C)とを含む相を有しており、この相は結晶性の低いまたは非晶質な構造を有していることが好ましい。また、このSnCoC含有材料では、構成元素である炭素(C)の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合していることが好ましい。サイクル特性の低下はスズ(Sn)等が凝集あるいは結晶化することによるものであると考えられるが、炭素(C)が他の元素と結合することにより、そのような凝集あるいは結晶化を抑制することができるからである。
【0090】
元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えばX線光電子分光法(XPS)が挙げられる。XPSでは、炭素の1s軌道(C1s)のピークは、グラファイトであれば、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば炭素が金属元素または半金属元素と結合している場合には、C1sのピークは、284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、SnCoC含有材料について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる場合には、SnCoC含有材料に含まれる炭素の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合している。
【0091】
なお、XPS測定では、スペクトルのエネルギー軸の補正に、例えばC1sのピークを用いる。通常、表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、これをエネルギー基準とする。XPS測定では、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとSnCoC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形として得られるので、例えば市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、SnCoC含有材料中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
【0092】
[セパレータ]
セパレータ16は、正極14と負極15とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ16は、例えば、ポリオレフィン系樹脂よりなる合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜により構成されており、これらの2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。
【0093】
セパレータ16は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のいずれかからなることが好ましい。また、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の2種以上を混合した樹脂材料からなる多孔質膜としてもよい。また、セラミック製の多孔質膜により構成されており、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のうち2種以上を混合して多孔質膜としてもよい。
【0094】
さらに、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の多孔質膜の表面に、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、アルミナ(Al23)、シリカ(SiO2)、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)およびマグネシア(MgO)等のセラミックスを混合した層を設けてもよい。また、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。ポリオレフィン製の多孔質膜はショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。
【0095】
[ゲル電解質層]
ゲル電解質層17は、電解質塩と、電解質塩を溶解する非水溶媒とを含む非水電解液が、高分子化合物に保持されたものである。ゲル電解質は高いイオン伝導率を得ることができると共に、電池の漏液を防止することができるので好ましい。
【0096】
電解質塩は、例えば、リチウム塩等の軽金属塩の1種あるいは2種以上を含有している。このリチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6)、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C654)、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3SO3)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4)、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2SiF6)、塩化リチウム(LiCl)あるいは臭化リチウム(LiBr)等が挙げられる。中でも、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6)からなる群のうちの少なくとも1種が好ましく、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)がより好ましい。非水電解質の抵抗が低下するからである。特に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)と一緒に四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)を用いるのが好ましい。高い効果が得られるからである。
【0097】
非水溶媒としては、例えば、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ブチレン(BC)、炭酸ビニレン(VC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルメチル(EMC)または炭酸メチルプロピル(MPC)等の炭酸エステル系溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンまたはε−カプロラクトン等のラクトン系溶媒、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサンまたは1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチルまたはトリメチル酢酸エチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル等のニトリル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド系溶媒、ニトロメタンまたはニトロエタン等のニトロ系溶媒、スルホラン、リン酸トリメチル等のリン酸エステル溶媒、またはジメチルスルホキシド等を用いることができる。非水電解質を備えた、電池等の電気化学デバイスにおいて、優れた容量、サイクル特性および保存特性が得られるからである。これらは単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0098】
中でも、炭酸エステル系溶媒のうちの少なくとも1種を含むものを用いることが好ましい。十分な効果が得られるからである。この場合には、特に、高粘度(高誘電率)溶媒(例えば、比誘電率ε≧30)である炭酸エチレンまたは炭酸プロピレン等の環状炭酸エステルと、低粘度溶媒(例えば、粘度≦1mPa・s)である炭酸ジメチル、炭酸ジエチルまたは炭酸エチルメチル等の鎖状炭酸エステルとを混合して含むものを用いることが好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するため、より高い効果が得られるからである。また、非水溶媒として、環状炭酸エステルまたは鎖状炭酸エステルの水素の一部または全部がフッ素化された化合物を含むことがより好ましい。このフッ素化された化合物としては、フルオロエチレンカーボネート(4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン)およびジフルオロエチレンカーボネート(4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン)の少なくとも一方を用いることが好ましい。
【0099】
高分子化合物としては、例えば、非水溶媒に相溶可能な性質を有する高分子材料を用いる。具体的には、シリコンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリフォスファゼン変性ポリマー、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドおよびこれらの複合ポリマーや架橋ポリマー、変性ポリマー等が用いられる。また、フッ素系ポリマーとして、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン(VdF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とを繰り返し単位に含む共重合体、フッ化ビニリデン(VdF)とトリフルオロエチレン(TFE)とを繰り返し単位に含む共重合体等のポリマーが挙げられる。このようなポリマーは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0100】
なお、図6では、ゲル電解質層17を形成する構成が記載されているが、セパレータ16に非水電解液を含浸させた非水電解質電池1としてもよい。
【0101】
(1−2)非水電解質電池の第1の製造方法
上述のような非水電解質電池1は、以下のような第1の製造方法によって製造することができる。第1の製造方法では、ゲル電解質層を形成する場合の製造方法について説明する。
【0102】
[正極の製造方法]
正極活物質と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドン等の溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーを作製する。次に、この正極合剤スラリーを正極集電体14Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機等により圧縮成型することにより正極活物質層14Bを形成し、正極14を作製する。
【0103】
[負極の製造方法]
負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドン等の溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーを作製する。次に、この負極合剤スラリーを負極集電体15Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機等により圧縮成型することにより負極活物質層15Bを形成し、負極15を作製する。
【0104】
[ゲル電解質前駆体溶液の調製]
非水溶媒に対して電解質塩を溶解させた非水電解液に、高分子化合物と、混合溶媒とを混合し、ゾル状の前駆体溶液を調整する。
【0105】
[非水電解質電池の組み立て]
上述の様にして作製した正極14および負極15のそれぞれの両面に、上述の前駆体溶液を塗布し、混合溶媒を揮発させてゲル電解質層17を形成する。次に、ゲル電解質層17が形成された正極14と負極15とをセパレータ16を介して積層して積層体としたのち、この積層体をその長手方向に扁平に巻回して、巻回終端部に保護テープ18を接着して巻回電極体10を形成する。続いて、例えば、ラミネートフィルム2の間に巻回電極体10を挟み込み、減圧下において巻回電極体10外縁部のラミネートフィルム2同士を熱融着等により密着させて封入する。このとき、リード導出辺以外の辺では、例えば、表面が平坦な形状の一対のヒータブロックを用いてラミネートフィルム2同士を熱融着する。また、リード導出辺は、表面に切り欠き部を有するヒータブロックを用いてラミネートフィルム2同士を熱融着する。
【0106】
図7は、リード導出辺においてラミネートフィルム2同士を熱融着するための、所定の切り欠きを有するヒータブロック20aと、表面が平坦な形状のヒータブロック20bからなる一対のヒータブロック20の断面図である。図7に示すように、ヒータブロック20aは、一方の面に、正極側切り欠き部21と負極側切り欠き部22とを備える。正極側切り欠き部21および負極側切り欠き部22は、それぞれ正極リード11および負極リード12に対向する位置に設けられる。
【0107】
ヒータブロック20aに設けられた正極側切り欠き部21は、正極リード11の両端部を含む領域に対向する部分にそれぞれ設けられた2つの切り欠き部21aと、2つの切り欠き部21aの間に、正極リード11の中心線を含むように設けられた、切り欠き部21aよりも浅く形成された切り欠き部21bとを備える。一対の切り欠き部21aは、非水電解質電池1のリード導出辺の熱融着時に、正極リード11の両端部をまたぐ領域に対向する部分にそれぞれ設けられる。
【0108】
また、ヒータブロック20aに設けられた負極側切り欠き部22は、負極リード12の両端部を含む領域に対向する部分にそれぞれ設けられた2つの切り欠き部22aと、2つの切り欠き部22aの間に、負極リード12の中心線を含むように設けられた、切り欠き部22aよりも浅く形成された切り欠き部22bとを備える。一対の切り欠き部22aは、非水電解質電池1のリード導出辺の熱融着時に、負極リード12の両端部をまたぐ領域に対向する部分にそれぞれ設けられる。
【0109】
ヒータブロック20aの正極側切り欠き部21は、切り欠き部21aの深さをDc1、切り欠き部21a間に設けられた、切り欠き部21aより浅く形成された切り欠き部21bの深さをDc2とした場合、1.006≦Dc1/Dc2≦1.635であることが好ましく、1.010≦Dc1/Dc2≦1.550であることがより好ましい。これにより、正極リード11の端部における金属層2aおよび正極リード11間の樹脂層の厚みTc1と、正極リード11の幅方向の中心線上における金属層2aおよび正極リード11間の樹脂層の厚みTc2とが1.1≦Tc1/Tc2≦12、好ましくは1.2≦Tc1/Tc2≦10となるように凸状部4を形成することができる。
【0110】
同様に、ヒータブロック20aの負極側切り欠き部22は、切り欠き部22aの深さをDa1、切り欠き部22a間に設けられた、切り欠き部22aより浅く形成された切り欠き部22bの深さをDa2とした場合、1.006≦Da1/Da2≦1.635であることが好ましく、1.010≦Da1/Da2≦1.550であることがより好ましい。これにより、負極リード12の端部における金属層2aおよび負極リード12間の樹脂層の厚みTa1と、負極リード12の幅方向の中心線上における金属層2aおよび負極リード12間の樹脂層の厚みTa2とが1.1≦Ta1/Ta2≦12、好ましくは1.2≦Ta1/Ta2≦10となるように凸状部4を形成することができる。
【0111】
正極側切り欠き部21の切り欠き部21aの幅、および負極側切り欠き部22の切り欠き部22aの幅は、それぞれ0.6mm以上33mm以下であることが好ましい。これにより、正極リード11の端部および負極リード12の端部をそれぞれ含む位置に設けられる熱融着部の凸状部4の幅を0.6mm以上33mm以下とすることができる。切り欠き部21aおよび切り欠き部22aを上記範囲内とすることにより、バリによる短絡を十分に抑制することができる。
【0112】
なお、熱融着時においては、正極側切り欠き部21の切り欠き部21aが正極リード11の両端部をそれぞれまたぐ位置、すなわち、切り欠き部21aに正極リード11と対向する部分と、正極リード11と対向しない部分が存在するように調整する必要がある。
【0113】
切り欠き部21aのうち正極リード11と対向する部分の幅は、0.1mm以上とすることが好ましく、切り欠き部21aのうち正極リード11と対向する部分の幅は、正極リード11の幅の1/3以下とすることが好ましい。また、切り欠き部21aのうち正極リード11と対向しない部分の幅は、0.5mm以上3.0mm以下とすることが好ましい。正極リード11と対向する部分および正極リード11と対向しない部分の幅が上述の範囲外に小さい場合には、バリ11aが、切り欠き部21aで形成される凸状部4の樹脂層2dに十分に埋まり難くなる。また、正極リード11と対向する部分および正極リード11と対向しない部分の幅が上述の範囲外に大きい場合には、凸状部4に樹脂が流れすぎて、凸状部4以外の部分の樹脂量が不足し、封止性が低下するおそれがある。
【0114】
同様に、負極側切り欠き部22の切り欠き部22aも負極リード12と対向する部分と、負極リード12と対向しない部分が存在するように調整する必要がある。切り欠き部22aのうち負極リード12と対向する部分の幅は、0.1mm以上、負極リード12の幅の1/3以下とすることが好ましい。また、切り欠き部22aのうち負極リード12と対向しない部分の幅は、0.5mm以上3.0mm以下とすることが好ましい。負極リード12と対向する部分および負極リード12と対向しない部分の幅が上述の範囲外に小さい場合には、バリが、切り欠き部22aで形成される凸状部4の樹脂層2dに十分に埋まり難くなる。また、負極リード12と対向する部分および負極リード12と対向しない部分の幅が上述の範囲外に大きい場合には、凸状部4に樹脂が流れすぎて、凸状部4以外の部分の樹脂量が不足し、封止性が低下するおそれがある。
【0115】
図8A〜図8Cに、このようなヒータブロック20を用いて、リード導出辺を熱融着する工程を示す。なお、図8A〜図8Cでは、正極リード11近傍の様子のみ示す。図8a〜図8cは、ヒータブロック20aにのみ正極側切り欠き部21と負極側切り欠き部22とを設け、ヒータブロック20bは表面が平坦な形状のものを用いた場合の断面図である。
【0116】
図8Aに示すように、正極側切り欠き部21および図示しない負極側切り欠き部22を設けたヒータブロック20aを、正極リード11の一方の面側に配置するとともに、表面が平坦なヒータブロック20bを正極リード11の他方の面側に配置する。続いて、図8Bに示すように、正極リード11が導出されたラミネートフィルム2の両面を、ヒータブロック20aおよびヒータブロック20bによって加熱および加圧し、ラミネートフィルム2同士を熱融着する。このとき、ヒータブロック20aは、正極側切り欠き部21が正極リード11の導出部分に対向し、切り欠き部21aが正極リード11の両端部をそれぞれまたぐ位置とされるように調整される。また、ヒータブロック20aは、負極側切り欠き部22が負極リード12の導出部分に対向するとともに、切り欠き部22aが負極リード12の両端部をそれぞれまたぐ位置とされるように調整される。また、正極リード11および負極リード12の端部にバリが形成されている場合には、バリが正極側切り欠き部21および負極側切り欠き部22が形成されたヒータブロック20aと対向するようにすることが好ましい。
【0117】
最後に、図8Cに示すように、ヒータブロック20aおよび20bを互いに離すことにより、リード導出辺が所望の凹凸形状を有するように熱融着された非水電解質電池1が得られる。熱融着後のリード導出辺は、正極リード11および負極リード12を挟まない部分においては内側樹脂層2c同士が溶融・固化して一体に熱融着される。また、正極リード11および負極リード12を挟む部分においては、内側樹脂層2cが溶融・固化して正極リード11および負極リード12と密着した状態でそれぞれ熱融着される。ラミネートフィルム2と正極リード11および負極リード12との間に密着フィルム13を挿入する場合、内側樹脂層2cと密着フィルム13とが溶融して互いに一体となり、正極リード11および負極リード12とそれぞれ熱融着される。
【0118】
上述の方法によりリード導出辺を封止することにより、ラミネートフィルム2の内側樹脂層2cが溶融し、ヒータブロック20aと対向する部分においては正極側切り欠き部21および負極側切り欠き部22の形状に合わせて、内側樹脂層2cが溶融して固化した樹脂層2dが形成される。すなわち、正極リード11の両端部における樹脂層2dの厚みが、正極リード11の中心線上における樹脂層2dの厚みよりも大きく形成される。ラミネートフィルム2と正極リード11との間に密着フィルム13を設ける場合には、樹脂層2dは、溶融後の内側樹脂層2cと密着フィルム13溶融して互いに一体となった溶融樹脂層からなる。
【0119】
これにより、リード導出辺の熱融着部において、正極リード11の両端部における熱融着部の厚みが、正極リード11の幅方向に対する中心線上における熱融着部の厚みよりも大きく形成され、かつ負極リード12の両端部における熱融着部の厚みが、負極リード12の幅方向に対する中心線上における熱融着部の厚みよりも大きく形成される。
【0120】
なお、このような方法で非水電解質電池1に本技術の凸状部4を形成する場合、ラミネートフィルム2としてその内側樹脂層2cの伸び率が350%以上の材料を用いることが好ましい。内側樹脂層2cが溶融して流動する際に、ラミネートフィルム2がヒータブロック20aの切り欠きの形状に追随し易く、凸状部4を形成するのに好適であるためである。
【0121】
以上の工程により、図1Aおよび図1B、図3Aならびに図6に示した非水電解質電池1が完成する。なお、上述のリード導出辺の熱融着方法では、一対のヒータブロック20aおよびヒータブロック20bのうちの一方に、正極側切り欠き部21および負極側切り欠き部22を形成した例を示したが、一対のヒータブロック20aおよびヒータブロック20bの双方に正極側切り欠き部21および負極側切り欠き部22を形成してもよい。
【0122】
また、正極リード11および負極リード12が互いに異なる辺から導出される場合には、正極リード11に対向するヒータブロックに正極側切り欠き部21のみを設け、負極リード12に対向するヒータブロックに負極側切り欠き部22のみを設けるようにする。
【0123】
なお、ゲル電解質層17は、以下のような方法によって形成してもよい。
【0124】
まず、上述したようにして作製した正極14と負極15とをセパレータ16を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ18を接着して、巻回電極体10を形成する。次に、この巻回電極体10をラミネートフィルム2に挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、ラミネートフィルム2の内部に収納する。続いて、非水電解液とともに、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤等の他の材料とを含む電解質用組成物を用意し、ラミネートフィルム2の内部に注入する。
【0125】
電解質用組成物を注入したのち、ラミネートフィルム2の開口部を真空雰囲気下で熱融着して密封する。最後に、巻回電極体10が封入された部分を加圧しながら加熱して、ラミネートフィルム2内のモノマーを重合させて高分子化合物とすることにより、非水電解液を含むゲル電解質層17を形成する。以上の工程により、図1Aおよび図1B、図3Aならびに図6に示した非水電解質電池1が完成する。
【0126】
また、表面に高分子化合物を付着させたセパレータ16を用いて巻回電極体10を作製し、非水電解液とともにラミネートフィルム2に封入した後、巻回電極体10が封入された部分を加圧しながら加熱して、非水電解液を含むゲル電解質層17を形成してもよい。以上の工程により、図1Aおよび図1B、図3Aならびに図6に示した非水電解質電池1が完成する。
【0127】
いずれの製造方法を用いる場合であっても、ラミネートフィルム2のリード導出辺において、正極リードの両端部における熱融着部の厚みが、正極リード中心線上における熱融着部の厚みよりも大きく形成されるようにする。また、同様に、負極リードの両端部における熱融着部の厚みが、負極リード中心線上における熱融着部の厚みよりも大きく形成されるようにする。
【0128】
(1−3)非水電解質電池の第2の製造方法
また、非水電解質電池は、以下のような第2の製造方法によって製造してもよい。第2の製造方法では、非水電解液を非水電解質電池内部に注液する場合の製造方法について説明する。
【0129】
[正極の製造方法]
正極14は、第1の製造方法と同様にして作製することができる。
【0130】
[負極の製造方法]
負極15は、第1の製造方法と同様にして作製することができる。
【0131】
[非水電解液の調製]
非水電解液は、非水溶媒に対して電解質塩を溶解させて調製する。
【0132】
[非水電解質電池の組み立て]
上述の様にして作製した正極14と負極15とを、セパレータ16を介して積層して積層体としたのち、この積層体をその長手方向に扁平に巻回して、巻回終端部に保護テープ18を接着して巻回電極体10を形成する。続いて、例えば、ラミネートフィルム2の間に巻回電極体10を挟み込み、正極リード11および負極リード12を外部に導出した状態でラミネートフィルム2同士を熱融着等により接着させる。このとき、巻回電極体10外縁部のうちの一辺を除いてラミネートフィルム2同士を融着させることにより、ラミネートフィルム2を袋状とする。熱融着されない一辺は、非水電解質電池1の製造工程上、リード導出辺以外の辺であることが好ましい。非水電解液を注液後、最後の一辺を熱融着する際の工程が容易となるためである。
【0133】
このとき、対向するラミネートフィルム2の間から、正極リード11および負極リード12が導出されるリード導出辺においては、第1の製造方法と同様の方法を用いて熱融着する。これにより、正極リードの両端部における熱融着部の厚みが、正極リード中心線上における熱融着部の厚みよりも大きく形成される。また、同様に、負極リードの両端部における熱融着部の厚みが、負極リード中心線上における熱融着部の厚みよりも大きく形成される。以上の工程により、図1Aおよび図1B、図3Aならびに図6に示した非水電解質電池1が完成する。
【0134】
続いて、非水電解液を、ラミネートフィルム2の開口部から袋状のラミネートフィルム2の内部に注入する。最後に、ラミネートフィルム2の開口部を真空雰囲気下で熱融着して密封する。これにより、セパレータ16に非水電解液が含浸される。以上の工程により、図1Aおよび図1Bならびに図3Aに示した非水電解質電池1が完成する。
【0135】
2.第2の実施の形態
(2−1)非水電解質電池の構成
図9Aは、本技術の第2の実施の形態である非水電解質電池40の外観を示す斜視図であり、図9Bは、非水電解質電池40の構成を示す斜視分解図である。また、図9Cは、図9Aに示す非水電解質電池40の下面の構成を示す斜視図であり、図9Dは、図9Aの非水電解質電池40のIV−IV断面を示す断面図である。
【0136】
本技術の非水電解質電池40は、積層電極体30がラミネートフィルム2にて外装されたものであり、ラミネートフィルム2同士が封止された部分からは、積層電極体30と接続された正極リード11および負極リード12が電池外部に導出されている。なお、ラミネートフィルム2は、第1の実施の形態で用いたものを用いることができる。
【0137】
非水電解質電池40は、第1の実施の形態と同様に、厚みが5mm以上20mm以下であることが好ましく、放電容量が3Ah以上50Ah以下であることが好ましい。
【0138】
なお、ラミネートフィルム2、密着フィルム13、セパレータ16ならびに正極リード11および負極リード12は、第1の実施の形態と同様のものを用いることができるため、説明を省略する。
【0139】
[積層電極体]
非水電解質電池40に収容される積層電極体30は、図10Aに示す矩形状の正極34と、図10Bに示す矩形状の負極35とが、セパレータ16を介して積層された構成である。具体的には、例えば図11Aおよび図11Bに示すように、正極34および負極35がつづら折りに折り曲げられたセパレータ16を介して交互に積層された構成である。正極34および負極35の表面には、図示しないゲル電解質層が設けられていても良い。
【0140】
[正極]
図10Aに示すように、正極34は、正極活物質を含有する正極活物質層34Bが、正極集電体34Aの両面上に形成されてなる。正極集電体34Aとしては、例えばアルミニウム(Al)箔、ニッケル(Ni)箔あるいはステンレス(SUS)箔などの金属箔が用いられる。
【0141】
正極集電体34Aは矩形状の主面部から延出する延出部を備えており、矩形状の主面部上に正極活物質層34Bが形成される。正極集電体34Aが露出した状態の延出部は、正極リード11を接続するための接続タブである正極タブ34Cとしての機能を備える。正極タブ34Cの幅は任意に設定可能である。特に、正極リード11と負極リード12とを同一辺から導出する場合には、正極タブ34Cの幅は正極34の幅の50%未満とする必要がある。
【0142】
正極活物質層34Bを構成する正極活物質、導電剤および結着剤は、第1の実施の形態と同様の材料を用いることができる。
【0143】
[負極]
図10Aに示すように、負極35は、負極活物質を含有する負極活物質層35Bが、負極集電体35Aの両面上に形成されてなる。負極集電体35Aとしては、例えば銅(Cu)箔、ニッケル(Ni)箔あるいはステンレス(SUS)箔などの金属箔が用いられる。
【0144】
負極集電体35Aは矩形状の主面部から延出する延出部を備えており、矩形状の主面部上に負極活物質層35Bが形成される。負極集電体35Aが露出した状態の延出部は、負極リード12を接続するための接続タブである負極タブ35Cとしての機能を備える。負極タブ35Cの幅は任意に設定可能である。特に、正極リード11および負極リード12を同一辺から導出する場合には、負極タブ35Cの幅は負極35の幅の50%未満とする必要がある。このような負極35は、矩形状の負極集電体35Aの一辺に、負極集電体露出部を設けるようにして負極活物質層35Bを形成し、不要な部分を切断することで得られる。
【0145】
負極活物質層35Bを構成する負極活物質、導電剤および結着剤は、第1の実施の形態と同様の材料を用いることができる。
【0146】
図9Dに示すように、積層電極体30は、複数枚の正極34からそれぞれ延出された正極タブ34Cが重ねられ、複数枚の負極35からそれぞれ延出された負極タブ35Cが重ねられて正極34と負極35とが順に積層されている。複数枚重ねられた正極タブ34Cは、曲げ部分において適切なたるみを持った状態で断面が略U字状となるように折り曲げられて構成されている。複数枚重ねられた正極タブ34Cの先端部には、超音波溶接または抵抗溶接等の方法により正極リード11が接続されている。
【0147】
また、正極34と同様に、負極タブ35Cは、複数枚重ねられた上で、曲げ部分において適切なたるみを持った状態で断面が略U字状となるように折り曲げられて構成されている。複数枚重ねられた負極タブ35Cの先端部には、超音波溶接または抵抗溶接等の方法により負極リード12が接続されている。
【0148】
また、正極リード11および負極リード12とラミネートフィルム2との界面部分には、ラミネートフィルム2と正極リード11および負極リード12との接着性を向上させるための密着フィルム13が設けられていてもよい。
【0149】
[ゲル電解質層]
ゲル電解質層は、第1の実施の形態と同様の構成とすることができる。また、第1の実施の形態と同様に、セパレータ16に非水電解液を含浸されていてもよい。
【0150】
[非水電解質電池の構成]
非水電解質電池40は、上述の様な積層電極体30が非水電解液またはゲル電解質層とともにラミネートフィルム2で外装されたものであり、積層電極体30と電気的に接続された正極リード11および負極リード12がラミネートフィルム2の封止部から電池外部に導出される。
【0151】
(2−2)非水電解質電池の製造方法
上述のような非水電解質電池は、以下のような工程で作製することができる。
【0152】
[正極の作製]
第1の実施の形態と同様の方法により、正極集電体34Aの一辺に正極集電体露出部を設けるようにして正極活物質層34Bを形成したあと、矩形状に切断し、正極集電体露出部の不要な部分を切断することにより、正極タブ34Cが一体に形成された正極34を得る。
【0153】
[負極の作製]
第1の実施の形態と同様の方法により、負極集電体35Aの一辺に負極集電体露出部を設けるようにして負極活物質層35Bを形成したあと、矩形状に切断し、負極集電体露出部の不要な部分を切断することにより、負極タブ35Cが一体に形成された負極35を得る。
【0154】
[電池組み立て工程]
図11Aおよび図11Bに示すように、正極34と負極35とをつづら折りにしたセパレータ16間に交互に挿入し、例えば、セパレータ16、負極35、セパレータ16、正極34、セパレータ16、負極35・・・セパレータ16、負極35、セパレータ16となるように重ね合わせて所定数の正極34および負極35を積層する。続いて、正極34、負極35およびセパレータ16が密着するように押圧した状態で、保護テープ18を用いて固定して積層電極体30を作製する。保護テープ18は、図9Bに示すように、例えば積層電極体30の両サイド部に設ける。
【0155】
次に、複数枚の正極タブ34Cおよび複数枚の負極タブ35Cを断面U字状となるように折り曲げ、正極タブ34Cおよび負極タブ35Cの先端を切り揃える。最後に、正極リード11を、重ねられた複数の正極タブ34Cと接続するとともに、負極リード12を、重ねられた複数の負極タブ35Cと接続する。
【0156】
このあと、作製した積層電極体30をラミネートフィルム2で外装し、積層電極体30の周辺部を熱融着して封止する。リード導出部の熱融着は、第1の実施の形態で説明したように、正極リード11および負極リード12の両端の厚みが他の部分よりも厚くなるように形成する。すなわち、一対のヒータブロック20を用いてリード導出辺の熱融着を行うことにより、正極リード11の端部における熱融着部および負極リード12の端部における熱融着部が、それぞれ外側樹脂層2bの方向に凸となるように形成された凸状部4が形成されるようにする。
【0157】
なお、ゲル電解質を用いる場合には、第1の実施の形態に記載したように、正極34および負極35の両面にゲル電解質層を形成した後、セパレータ16を介して積層する方法や、ラミネートフィルム2の封止後に電池内部で非水電解液を高分子化合物に保持させてゲル電解質層を形成する方法等、種々の方法を用いることができる。
【0158】
また、非水電解液を用いる場合は、例えば積層電極体30をラミネートフィルム2で外装し、一辺を残してラミネートフィルム2を熱融着させた後、非水電解液を内部に注液し、残りの一辺を減圧下で封止する方法を用いることができる。
【0159】
3.第3の実施の形態
第3の実施の形態では、第1の実施の形態にかかる非水電解質電池1または第2の実施の形態にかかる非水電解質電池40が備えられた電池パックについて説明する。
【0160】
図12は、本技術の非水電解質電池を電池パックに適用した場合の回路構成例を示すブロック図である。電池パックは、組電池301、外装、充電制御スイッチ302aと、放電制御スイッチ303aとを備えるスイッチ部304、電流検出抵抗307、温度検出素子308、制御部310を備えている。
【0161】
また、電池パックは、正極端子321および負極端子322を備え、充電時には正極端子321および負極端子322がそれぞれ充電器の正極端子、負極端子に接続され、充電が行われる。また、電子機器使用時には、正極端子321および負極端子322がそれぞれ電子機器の正極端子、負極端子に接続され、放電が行われる。
【0162】
組電池301は、複数の非水電解質電池301aを直列および/または並列に接続してなる。この非水電解質電池301aは本技術の非水電解質電池である。なお、図12では、6つの非水電解質電池301aが、2並列3直列(2P3S)に接続された場合が例として示されているが、その他、n並列m直列(n,mは整数)のように、どのような接続方法でもよい。
【0163】
スイッチ部304は、充電制御スイッチ302aおよびダイオード302b、ならびに放電制御スイッチ303aおよびダイオード303bを備え、制御部310によって制御される。ダイオード302bは、正極端子321から組電池301の方向に流れる充電電流に対して逆方向で、負極端子322から組電池301の方向に流れる放電電流に対して順方向の極性を有する。ダイオード303bは、充電電流に対して順方向で、放電電流に対して逆方向の極性を有する。なお、例では+側にスイッチ部を設けているが、−側に設けてもよい。
【0164】
充電制御スイッチ302aは、電池電圧が過充電検出電圧となった場合にOFFされて、組電池301の電流経路に充電電流が流れないように充放電制御部によって制御される。充電制御スイッチのOFF後は、ダイオード302bを介することによって放電のみが可能となる。また、充電時に大電流が流れた場合にOFFされて、組電池301の電流経路に流れる充電電流を遮断するように、制御部310によって制御される。
【0165】
放電制御スイッチ303aは、電池電圧が過放電検出電圧となった場合にOFFされて、組電池301の電流経路に放電電流が流れないように制御部310によって制御される。放電制御スイッチ303aのOFF後は、ダイオード303bを介することによって充電のみが可能となる。また、放電時に大電流が流れた場合にOFFされて、組電池301の電流経路に流れる放電電流を遮断するように、制御部310によって制御される。
【0166】
温度検出素子308は例えばサーミスタであり、組電池301の近傍に設けられ、組電池301の温度を測定して測定温度を制御部310に供給する。電圧検出部311は、組電池301およびそれを構成する各非水電解質電池301aの電圧を測定し、この測定電圧をA/D変換して、制御部310に供給する。電流測定部313は、電流検出抵抗307を用いて電流を測定し、この測定電流を制御部310に供給する。
【0167】
スイッチ制御部314は、電圧検出部311および電流測定部313から入力された電圧および電流を基に、スイッチ部304の充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aを制御する。スイッチ制御部314は、非水電解質電池301aのいずれかの電圧が過充電検出電圧もしくは過放電検出電圧以下になったとき、また、大電流が急激に流れたときに、スイッチ部304に制御信号を送ることにより、過充電および過放電、過電流充放電を防止する。
【0168】
ここで、例えば、非水電解質電池がリチウムイオン二次電池の場合、過充電検出電圧が例えば4.20V±0.05Vと定められ、過放電検出電圧が例えば2.4V±0.1Vと定められる。
【0169】
充放電スイッチは、例えばMOSFET等の半導体スイッチを使用できる。この場合MOSFETの寄生ダイオードがダイオード302bおよび303bとして機能する。充放電スイッチとして、Pチャンネル型FETを使用した場合は、スイッチ制御部314は、充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aのそれぞれのゲートに対して、制御信号DOおよびCOをそれぞれ供給する。充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aはPチャンネル型である場合、ソース電位より所定値以上低いゲート電位によってONする。すなわち、通常の充電および放電動作では、制御信号COおよびDOをローレベルとし、充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aをON状態とする。
【0170】
そして、例えば過充電もしくは過放電の際には、制御信号COおよびDOをハイレベルとし、充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aをOFF状態とする。
【0171】
メモリ317は、RAMやROMからなり例えば不揮発性メモリであるEPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)等からなる。メモリ317では、制御部310で演算された数値や 、製造工程の段階で測定された各非水電解質電池301aの初期状態における電池の内部抵抗値等が予め記憶され、また適宜、書き換えも可能である。 (また、非水電解質電池301aの満充電容量を記憶させておくことで、制御部310とともに例えば残容量を算出することができる。
【0172】
温度検出部318では、温度検出素子308を用いて温度を測定し、異常発熱時に充放電制御を行ったり、残容量の算出における補正を行う。
【0173】
4.第4の実施の形態
第4の実施の形態では、第1の実施の形態にかかる非水電解質電池1もしくは第2の実施の形態にかかる非水電解質電池40、または第3の実施の形態にかかる電池パックを搭載した電子機器、電動車両および蓄電装置等の機器について説明する。第1〜第3の実施の形態で説明した非水電解質電池および電池パックは、電子機器や電動車両、蓄電装置等の機器に電力を供給するために使用することができる。
【0174】
電子機器として、例えばノート型パソコン、PDA(携帯情報端末)、携帯電話、コードレスフォン子機、ビデオムービー、デジタルスチルカメラ、電子書籍、電子辞書、音楽プレイヤー、ラジオ、ヘッドホン、ゲーム機、ナビゲーションシステム、メモリーカード、ペースメーカー、補聴器、電動工具、電気シェーバー、冷蔵庫、エアコン、テレビ、ステレオ、温水器、電子レンジ、食器洗い器、洗濯機、乾燥器、照明機器、玩具、医療機器、ロボット、ロードコンディショナー、信号機等が挙げられる。
【0175】
また、電動車両としては鉄道車両、ゴルフカート、電動カート、電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)等が挙げられ、これらの駆動用電源または補助用電源として用いられる。
【0176】
蓄電装置としては、住宅をはじめとする建築物用または発電設備用の電力貯蔵用電源等が挙げられる。
【0177】
以下では、上述した適用例のうち、本技術の非水電解質電池を適用した蓄電装置を用いた蓄電システムの具体例を説明する。
【0178】
この蓄電システムは、例えば下記の様な構成が挙げられる。第1の蓄電システムは、再生可能エネルギーから発電を行う発電装置によって蓄電装置が充電される蓄電システムである。第2の蓄電システムは、蓄電装置を有し、蓄電装置に接続される電子機器に電力を供給する蓄電システムである。第3の蓄電システムは、蓄電装置から、電力の供給を受ける電子機器である。これらの蓄電システムは、外部の電力供給網と協働して電力の効率的な供給を図るシステムとして実施される。
【0179】
さらに、第4の蓄電システムは、蓄電装置から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、蓄電装置に関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう制御装置とを有する電動車両である。第5の蓄電システムは、他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報送受信部とを備え、送受信部が受信した情報に基づき、上述した蓄電装置の充放電制御を行う電力システムである。第6の蓄電システムは、上述した蓄電装置から、電力の供給を受け、または発電装置または電力網から蓄電装置に電力を供給する電力システムである。以下、蓄電システムについて説明する。
【0180】
(4−1)応用例としての住宅における蓄電システム
本技術の非水電解質電池を用いた蓄電装置を住宅用の蓄電システムに適用した例について、図13を参照して説明する。例えば住宅101用の蓄電システム100においては、火力発電102a、原子力発電102b、水力発電102c等の集中型電力系統102から電力網109、情報網112、スマートメータ107、パワーハブ108等を介し、電力が蓄電装置103に供給される。これと共に、家庭内発電装置104等の独立電源から電力が蓄電装置103に供給される。蓄電装置103に供給された電力が蓄電される。蓄電装置103を使用して、住宅101で使用する電力が給電される。住宅101に限らずビルに関しても同様の蓄電システムを使用できる。
【0181】
住宅101には、家庭内発電装置104、電力消費装置105、蓄電装置103、各装置を制御する制御装置110、スマートメータ107、各種情報を取得するセンサ111が設けられている。各装置は、電力網109および情報網112によって接続されている。家庭内発電装置104として、太陽電池、燃料電池等が利用され、発電した電力が電力消費装置105および/または蓄電装置103に供給される。電力消費装置105は、冷蔵庫105a、空調装置105b、テレビジョン受信機105c、風呂105d等である。さらに、電力消費装置105には、電動車両106が含まれる。電動車両106は、電気自動車106a、ハイブリッドカー106b、電気バイク106cである。
【0182】
蓄電装置103に対して、本技術の非水電解質電池が適用される。本技術の非水電解質電池は、例えば上述したリチウムイオン二次電池によって構成されていてもよい。スマートメータ107は、商用電力の使用量を測定し、測定された使用量を、電力会社に送信する機能を備えている。電力網109は、直流給電、交流給電、非接触給電の何れか一つまたは複数を組み合わせてもよい。
【0183】
各種のセンサ111は、例えば人感センサ、照度センサ、物体検知センサ、消費電力センサ、振動センサ、接触センサ、温度センサ、赤外線センサ等である。各種のセンサ111により取得された情報は、制御装置110に送信される。センサ111からの情報によって、気象の状態、人の状態等が把握されて電力消費装置105を自動的に制御してエネルギー消費を最小とすることができる。さらに、制御装置110は、住宅101に関する情報をインターネットを介して外部の電力会社等に送信することができる。
【0184】
パワーハブ108によって、電力線の分岐、直流交流変換等の処理がなされる。制御装置110と接続される情報網112の通信方式としては、UART(Universal Asynchronous Receiver-Transceiver:非同期シリアル通信用送受信回路)等の通信インターフェースを使う方法、Bluetooth、ZigBee、Wi−Fi等の無線通信規格によるセンサーネットワークを利用する方法がある。Bluetooth方式は、マルチメディア通信に適用され、一対多接続の通信を行うことができる。ZigBeeは、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.15.4の物理層を使用するものである。IEEE802.15.4は、PAN(Personal Area Network)またはW(Wireless)PANと呼ばれる短距離無線ネットワーク規格の名称である。
【0185】
制御装置110は、外部のサーバ113と接続されている。このサーバ113は、住宅101、電力会社、サービスプロバイダーの何れかによって管理されていてもよい。サーバ113が送受信する情報は、たとえば、消費電力情報、生活パターン情報、電力料金、天気情報、天災情報、電力取引に関する情報である。これらの情報は、家庭内の電力消費装置(たとえばテレビジョン受信機)から送受信してもよいが、家庭外の装置(たとえば、携帯電話機等)から送受信してもよい。これらの情報は、表示機能を持つ機器、たとえば、テレビジョン受信機、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)等に、表示されてもよい。
【0186】
各部を制御する制御装置110は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等で構成され、この例では、蓄電装置103に格納されている。制御装置110は、蓄電装置103、家庭内発電装置104、電力消費装置105、各種のセンサ111、サーバ113と情報網112により接続され、例えば、商用電力の使用量と、発電量とを調整する機能を有している。なお、その他にも、電力市場で電力取引を行う機能等を備えていてもよい。
【0187】
以上のように、電力が火力102a、原子力102b、水力102c等の集中型電力系統102のみならず、家庭内発電装置104(太陽光発電、風力発電)の発電電力を蓄電装置103に蓄えることができる。したがって、家庭内発電装置104の発電電力が変動しても、外部に送出する電力量を一定にしたり、または、必要なだけ放電するといった制御を行うことができる。例えば、太陽光発電で得られた電力を蓄電装置103に蓄えると共に、夜間は料金が安い深夜電力を蓄電装置103に蓄え、昼間の料金が高い時間帯に蓄電装置103によって蓄電した電力を放電して利用するといった使い方もできる。
【0188】
なお、この例では、制御装置110が蓄電装置103内に格納される例を説明したが、スマートメータ107内に格納されてもよいし、単独で構成されていてもよい。さらに、蓄電システム100は、集合住宅における複数の家庭を対象として用いられてもよいし、複数の戸建て住宅を対象として用いられてもよい。
【0189】
(4−2)応用例としての車両における蓄電システム
本技術を車両用の蓄電システムに適用した例について、図14を参照して説明する。図14に、本技術が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンで動かす発電機で発電された電力、あるいはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
【0190】
このハイブリッド車両200には、エンジン201、発電機202、電力駆動力変換装置203、駆動輪204a、駆動輪204b、車輪205a、車輪205b、バッテリー208、車両制御装置209、各種センサ210、充電口211が搭載されている。バッテリー208に対して、上述した本技術の非水電解質電池が適用される。
【0191】
ハイブリッド車両200は、電力駆動力変換装置203を動力源として走行する。電力駆動力変換装置203の一例は、モータである。バッテリー208の電力によって電力駆動力変換装置203が作動し、この電力駆動力変換装置203の回転力が駆動輪204a、204bに伝達される。なお、必要な個所に直流−交流(DC−AC)あるいは逆変換(AC−DC変換)を用いることによって、電力駆動力変換装置203が交流モータでも直流モータでも適用可能である。各種センサ210は、車両制御装置209を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御したりする。各種センサ210には、速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサ等が含まれる。
【0192】
エンジン201の回転力は発電機202に伝えられ、その回転力によって発電機202により生成された電力をバッテリー208に蓄積することが可能である。
【0193】
図示しない制動機構によりハイブリッド車両200が減速すると、その減速時の抵抗力が電力駆動力変換装置203に回転力として加わり、この回転力によって電力駆動力変換装置203により生成された回生電力がバッテリー208に蓄積される。
【0194】
バッテリー208は、ハイブリッド車両200の外部の電源に接続されることで、その外部電源から充電口211を入力口として電力供給を受け、受けた電力を蓄積することも可能である。
【0195】
図示しないが、非水電解質電池に関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行う情報処理装置を備えていてもよい。このような情報処理装置としては、例えば、電池の残量に関する情報に基づき、電池残量表示を行う情報処理装置等がある。
【0196】
なお、以上は、エンジンで動かす発電機で発電された電力、或いはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、モータで走行するシリーズハイブリッド車を例として説明した。しかしながら、エンジンとモータの出力がいずれも駆動源とし、エンジンのみで走行、モータのみで走行、エンジンとモータ走行という3つの方式を適宜切り替えて使用するパラレルハイブリッド車に対しても本技術は有効に適用可能である。さらに、エンジンを用いず駆動モータのみによる駆動で走行する所謂、電動車両に対しても本技術は有効に適用可能である。
【実施例】
【0197】
<実施例1−1>〜<実施例1−7>、<比較例1−1>〜<比較例1−2>
実施例1−1〜実施例1−7、比較例1−1〜比較例1−2では、正極リードの端部における樹脂層の厚みTc1を変化させて、この厚みTc1と正極リードの幅方向の中心線上における樹脂層の厚みTc2との比を変化させて非水電解質電池を作製し、電池不良を確認した。
【0198】
<実施例1−1>
[正極の作製]
正極活物質としてリン酸鉄リチウム(LiFePO4)95質量%と、導電剤としてグラファイト2質量%と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)3質量%とを均一に混合した正極合剤を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させて正極合剤スラリーを得た。次に、得られた正極合剤スラリーを、厚み15μmのアルミニウム(Al)箔の両面に均一に塗布し、乾燥させた後、ロールプレス機で圧縮成型して片面当たり40μmの正極活物質層を形成した。なお、正極活物質層形成時には、帯状に連続する正極集電体上に、正極集電体の長手方向の一辺が露出するようにして正極合剤スラリーを塗布した。続いて、正極活物質層が形成された帯状に連続する正極集電体を、短手方向に平行に、幅105mmとなるように切断し、正極シートを形成した。そして、正極集電体露出部が幅90mmの正極タブとなるように切断し、正極とした。なお、正極タブは、正極の中心部に位置するようにして形成した。
【0199】
[負極の作製]
負極活物質として黒鉛95質量%、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量%とを均一に混合した負極合剤を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させて負極合剤スラリーを得た。次に、得られた負極合剤スラリーを、負極集電体となる厚み8μmの銅箔の両面に均一に塗布し、乾燥させた後、ロールプレス機で圧縮成型して片面当たり40μmの負極活物質層を形成した。なお、負極活物質層形成時には、帯状に連続する負極集電体上に、負極集電体の長手方向の一辺が露出するようにして負極合剤スラリーを塗布した。続いて、負極活物質層が形成された帯状に連続する正極集電体を、短手方向に平行に、幅105mmとなるように切断し、負極シートを形成した。そして、負極集電体露出部が幅90mmの負極タブとなるように切断し、負極とした。なお、負極タブは、負極の中心部に位置するようにして形成した。
【0200】
[積層電極体の作製]
上述の様にして作製した正極および負極を、つづら形状に折り曲げられたセパレータを介して交互に積層し、正極および負極がセパレータを介して積層した。このとき、図11Aに示すように、正極タブと負極タブとが、対向する異なる辺に位置するように積層するとともに、正極タブ同士、負極タブ同士がそれぞれ同一辺から重なるように延出されるようにした。セパレータは、両面にポリフッ化ビニリデン(PVdF)粉末を塗布した厚さ16μmのポリエチレン微多孔膜を用いた。
【0201】
続いて、正極、負極およびセパレータがずれないように保護テープで固定した後、積層した正極から延出された正極タブを重ねて抵抗溶接により接続した。そして、正極タブ先端部の余った部分を切断した後、正極タブに対して正極リードを接続した。正極リードは、厚さ200μm、幅90mmのアルミニウム片とした。同様にして、積層した全ての負極の負極タブを重ねて接続し、負極タブ先端部の余った部分を切断した後、負極タブに対して負極リードを接続した。負極リードは、厚さ200μm、幅90mmのニッケル片とした。これにより、正極リードおよび負極リードが対向する二辺からそれぞれ導出された積層電極体を作製した。外装部材と対向する正極リードおよび負極リードの一部分の両面には、厚さ100μm、幅47mmの変性ポリプロピレンからなるシーラントをそれぞれ貼り付けた。
【0202】
[非水電解質電池の作製]
非水電解質電池の外装部材として、外側樹脂層であるナイロン層と金属層であるアルミニウム層と内側樹脂層である無軸延伸ポリプロピレン層(CPP層)とが積層されたラミネートフィルムを用い、上述の積層電極体を挟むようにして覆った。続いて、正極リードおよび負極リードのいずれも導出されていない辺のうちの一辺と、正極リードが導出された導出辺および負極リードが導出された導出辺のそれぞれをヒータブロックで挟み、ラミネートフィルム同士を熱融着させた。このとき、正極リードおよび負極リードのいずれも導出されていない一辺は、表面が平坦な形状の一対のヒータブロックを用いてラミネートフィルム同士を熱融着した。
【0203】
正極リード導出辺は、図7で示すような、正極リードの端部をそれぞれまたぐ位置に設けられた深さDc1の2つの切り欠き部と、正極リード上の端部を除く部分に設けられた深さDc2(Dc2<Dc1)の切り欠き部を形成したヒータブロックと、表面が平坦な形状であるヒータブロックとを用いて熱融着した。このとき、ヒータブロックにおいて、正極リードの端部をまたぐ位置に設けられた切り欠き部の深さDc1を261.5μm、正極リード上の端部を除く位置に設けられた切り欠き部の深さDc2を260μm(Dc1/Dc2=1.006)とした。正極リードの端部をそれぞれまたぐ位置に設けられた深さDc1の切り欠き部は、正極リードの端部をそれぞれまたぐ位置に幅4mm(正極リード端部から内側に3mmと、正極リード端部から外側に1mmの領域)で形成した。深さDc2の切り欠き部は、正極リードの中心線上を通り、リード端部を除く位置に形成した。
【0204】
これにより、正極リードの両端部における熱融着後の樹脂層の厚みTc1を16μm、正極リードの中心線上における熱融着後の樹脂層の厚みTc2を15μm(Tc1/Tc2=1.1)とした。また、正極リードの両端部に形成される凸状部の幅を4mmとした。なお、上述の樹脂層厚みTc1は、図5Aに示すように4ヶ所の厚みを測定し、{Tc1=(Tc1-1+Tc1-2+Tc1-3+Tc1-4)/4}から算出した。また、上述の樹脂層厚みTc2は、図5Aに示すように2ヶ所の厚みを測定し、{Tc2=(Tc2-1+Tc2-2)/2}から算出した。
【0205】
また、負極リード導出辺は、正極リード導出辺側ヒータブロックと同様に、負極リードの端部をそれぞれまたぐ位置に設けられた深さDa1の2つの切り欠き部と、負極リード上の端部を除く部分に設けられた深さDa2(Da2<Da1)の切り欠き部を形成したヒータブロックと、表面が平坦な形状であるヒータブロックとを用いて熱融着した。このとき、ヒータブロックにおいて、負極リードの端部をまたぐ位置に設けられた切り欠き部の深さDa1を275μm、負極リード上の端部を除く位置に設けられた切り欠き部の深さDa2を260μm(Da1/Da2=1.058)とした。深さDa1の切り欠き部は、負極リードの端部をそれぞれまたぐ位置に幅4mm(負極リード端部から内側に3mm、負極リード端部から外側に1mmの領域)で形成した。深さDa2の切り欠き部は、負極リードの中心線上を通り、リード端部を除く位置に形成した。
【0206】
これにより、負極リードの両端部における熱融着後の樹脂層の厚みTa1を30μm、負極リードの中心線上における熱融着後の樹脂層の厚みTa2を15μm(Ta1/Ta2=2)とした。また、正極リードの両端部に形成される凸状部の幅を4mmとした。なお、上述の樹脂層厚みTa1は、Tc1と同様に4ヶ所の厚みを測定し、{Ta1=(Ta1-1+Ta1-2+Ta1-3+Ta1-4)/4}から算出した。また、上述の樹脂層厚みTa2は、Tc2と同様に2ヶ所の厚みを測定し、{Ta2=(Ta2-1+Ta2-2)/2}から算出した。
【0207】
続いて、熱融着を行っていない一辺の開口部から、非水電解液を注液した。非水電解液は、エチレンカーボネート(EC)およびプロピレンカーボネート(PC)を6:4の質量比で混合し、1.0mol/kgの六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解して作製した。この後、減圧下でラミネートフィルムの残る一辺を表面が平坦な一対のヒータブロックにて熱融着して封止した後、積層電極体部分を加圧しながら加熱して、セパレータ表面に付着されたポリフッ化ビニリデンに非水電解液を膨潤させ、ゲル電解質層を形成した。これにより、図9Aに示すような形状の実施例1−1の非水電解質電池を作製した。
【0208】
<実施例1−2>
正極リードの端部をまたぐ位置に設けられた切り欠き部の深さDc1を263μm(Dc1/Dc2=1.012)とし、正極リードの両端部における熱融着後の樹脂層の厚みTc1を18μm(Tc1/Tc2=1.2)となるようにした以外は、実施例1−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0209】
<実施例1−3>
正極リードの端部をまたぐ位置に設けられた切り欠き部の深さDc1を275μm(Dc1/Dc2=1.058)とし、正極リードの両端部における熱融着後の樹脂層の厚みTc1を30μm(Tc1/Tc2=2)となるようにした以外は、実施例1−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0210】
<実施例1−4>
正極リードの端部をまたぐ位置に設けられた切り欠き部の深さDc1を320μm(Dc1/Dc2=1.231)とし、正極リードの両端部における熱融着後の樹脂層の厚みTc1を75μm(Tc1/Tc2=5)となるようにした以外は、実施例1−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0211】
<実施例1−5>
正極リードの端部をまたぐ位置に設けられた切り欠き部の深さDc1を395μm(Dc1/Dc2=1.519)とし、正極リードの両端部における熱融着後の樹脂層の厚みTc1を150μm(Tc1/Tc2=10)となるようにした以外は、実施例1−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0212】
<実施例1−6>
正極リードの端部をまたぐ位置に設けられた切り欠き部の深さDc1を410μm(Dc1/Dc2=1.577)とし、正極リードの両端部における熱融着後の樹脂層の厚みTc1を165μm(Tc1/Tc2=11)となるようにした以外は、実施例1−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0213】
<実施例1−7>
正極リードの端部をまたぐ位置に設けられた切り欠き部の深さDc1を425μm(Dc1/Dc2=1.635)とし、正極リードの両端部における熱融着後の樹脂層の厚みTc1を180μm(Tc1/Tc2=12)となるようにした以外は、実施例1−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0214】
<比較例1−1>
正極リードの端部をまたぐ位置に設けられた切り欠き部の深さDc1を260μm(Dc1/Dc2=1.000)とし、正極リードの両端部における熱融着後の樹脂層の厚みTc1を15μm(Tc1/Tc2=1)となるようにし、負極リードの端部をまたぐ位置に設けられた切り欠き部の深さDa1を260μm(Da1/Da2=1.000)とし、負極リードの両端部における熱融着後の樹脂層の厚みTa1を15μm(Tc1/Tc2=1)となるようにした以外は、実施例1−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0215】
<比較例1−2>
正極リードの端部をまたぐ位置に設けられた切り欠き部の深さDc1を260μm(Dc1/Dc2=1.000)とし、正極リードの両端部における熱融着後の樹脂層の厚みTc1を15μm(Tc1/Tc2=1)となるようにした以外は、実施例1−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0216】
[電池評価]
(a)短絡試験
各実施例および比較例の非水電解質電池において、正極リードとラミネートフィルムのアルミニウム層との間に端子を当てて、正極リードとラミネートフィルムのアルミニウム層との間に短絡があるかを確認するとともに、同様の方法により負極リードとラミネートフィルムのアルミニウム層との間に短絡があるかを確認した。各実施例および比較例においてそれぞれ100個の非水電解質電池について上述の試験を行った。ラミネートフィルムのアルミニウム層と正極リードおよび負極リードのいずれかとの間に短絡が生じた場合は短絡あり、ラミネートフィルムのアルミニウム層と正極リードおよび負極リードの双方に短絡が生じない場合を短絡なしとして、短絡が生じた非水電解質電池の個数を確認した。
(b)リーク試験
各実施例および比較例の非水電解質電池を真空環境下に裁置し、熱融着部全面に亘って十分に熱融着ができているか否かを確認した。具体的には、非水電解質電池を真空環境下に裁置することにより、ラミネートフィルムの熱融着が不十分な部分(特に、正極リードおよび負極リード近傍の熱融着部)から非水電解液が漏れ出したり、熱融着が不十分な部分から水分等が浸入して非水電解質電池が膨張する等の、非水電解質電池の変化があるか否かを目視にて確認した。
【0217】
以下の表1に、評価結果を示す。
【0218】
【表1】

【0219】
表1から分かるように、正極リードの端部および負極リードの端部のそれぞれに凸状部を形成した各実施例は、凸状部を全く形成しなかった比較例1−1および正極リード近傍にのみ凸状部を形成しなかった比較例1−2と比較して、短絡試験の不良電池数が減少した。特に、正極リードの端部における樹脂層の厚みTc1と、正極リードの幅方向の中心線上における樹脂層の厚みTc2との比Tc1/Tc2を1.2以上に設定した実施例1−2〜実施例1−7では、短絡試験において不良が全く生じなかった。さらに、Tc1/Tc2を1.2以上10以下に設定した実施例1−2〜実施例1−5では、短絡試験に加えてリーク試験においても不良が全く生じなかった。
【0220】
Tc1/Tc2を1.2未満とした実施例1では、短絡試験において正極リードとラミネートフィルムのアルミニウム層とが短絡する不良が一部生じた。これは、正極リードの端部における樹脂層の厚みTc1がバリを十分に埋めるほど厚くならず、正極リードとラミネートフィルムのアルミニウム層とが接触しやすくなったためである。
【0221】
また、Tc1/Tc2が10よりも大きくした実施例1−6および実施例1−7では、リーク試験においてラミネートフィルムの封止不良が一部確認された。これは、正極リードの端部における樹脂層の厚みTc1は十分に大きいものの、その分他の部分の樹脂層厚みが薄く、封止性が低下したためである。
【0222】
上記結果から、正極リードの端部における樹脂層の厚みTc1と、正極リードの幅方向の中心線上における樹脂層の厚みTc2との比Tc1/Tc2は、1.2以上10以下とすることが特に好ましい。
【0223】
<実施例2−1>〜<実施例2−7>、<比較例2−1>〜<比較例2−2>
実施例2−1〜実施例2−7、比較例2−1〜比較例2−2では、負極リードの端部における樹脂層の厚みTa1を変化させて、この厚みTa1と負極リードの幅方向の中心線上における樹脂層の厚みTa2との比を変化させて非水電解質電池を作製し、電池不良を確認した。
【0224】
<実施例2−1>
負極リード導出辺を熱融着する際に、負極リードの端部をまたぐ位置に設けられた切り欠き部の深さDa1を261.5μm、負極リード上の端部を除く位置に設けられた切り欠き部の深さDa2を260μm(Da1/Da2=1.006)としたヒータブロックを用いた。これにより、負極リードの両端部の熱融着後の樹脂層の厚みTa1を16.5μm、負極リードの中心線上における熱融着後の樹脂層の厚みTa2を15μm(Ta1/Ta2=1.1)とした。
【0225】
また、正極リード導出辺を熱融着する際に、正極リードの端部をまたぐ位置に設けられた切り欠き部の深さDc1を275μm、正極リード上の端部を除く位置に設けられた切り欠き部の深さDc2を260μm(Dc1/Dc2=1.058)としたヒータブロックを用いた。これにより、正極リードの両端部の熱融着後の樹脂層の厚みTc1を30μm、正極リードの中心線上における熱融着後の樹脂層の厚みTc2を15μm(Tc1/Tc2=2)とした。
【0226】
これ以外は実施例1−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0227】
<実施例2−2>
負極リードの端部をまたぐ位置に設けられた切り欠き部の深さDa1を263μm(Da1/Da2=1.012)とし、負極リードの両端部における熱融着後の樹脂層の厚みTa1を18μm(Ta1/Ta2=1.2)となるようにした以外は、実施例2−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0228】
<実施例2−3>
負極リードの端部をまたぐ位置に設けられた切り欠き部の深さDa1を275μm(Da1/Da2=1.058)とし、負極リードの両端部における熱融着後の樹脂層の厚みTa1を30μm(Ta1/Ta2=2)となるようにした以外は、実施例2−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0229】
<実施例2−4>
負極リードの端部をまたぐ位置に設けられた切り欠き部の深さDa1を320μm(Da1/Da2=1.231)とし、負極リードの両端部における熱融着後の樹脂層の厚みTa1を75μm(Ta1/Ta2=5)となるようにした以外は、実施例2−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0230】
<実施例2−5>
負極リードの端部をまたぐ位置に設けられた切り欠き部の深さDa1を395μm(Da1/Da2=1.519)とし、負極リードの両端部における熱融着後の樹脂層の厚みTa1を150μm(Ta1/Ta2=10)となるようにした以外は、実施例2−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0231】
<実施例2−6>
負極リードの端部をまたぐ位置に設けられた切り欠き部の深さDa1を410μm(Da1/Da2=1.577)とし、負極リードの両端部における熱融着後の樹脂層の厚みTa1を165μm(Ta1/Ta2=11)となるようにした以外は、実施例2−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0232】
<実施例2−7>
負極リードの端部をまたぐ位置に設けられた切り欠き部の深さDa1を425μm(Da1/Da2=1.635)とし、負極リードの両端部における熱融着後の樹脂層の厚みTa1を180μm(Ta1/Ta2=12)となるようにした以外は、実施例2−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0233】
<比較例2−1>
正極リードの端部をまたぐ位置に設けられた切り欠き部の深さDc1を260μm(Dc1/Dc2=1.000)とし、正極リードの両端部における熱融着後の樹脂層の厚みTc1を15μm(Ta1/Ta2=1)となるようにし、負極リードの端部をまたぐ位置に設けられた切り欠き部の深さDa1を260μm(Da1/Da2=1.000)とし、負極リードの両端部における熱融着後の樹脂層の厚みTa1を15μm(Ta1/Ta2=1)となるようにした以外は、実施例2−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0234】
<比較例2−2>
負極リードの端部をまたぐ位置に設けられた切り欠き部の深さDa1を260μm(Da1/Da2=1.000)とし、負極リードの両端部における熱融着後の樹脂層の厚みTa1を15μm(Ta1/Ta2=1)となるようにした以外は、実施例2−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0235】
[電池評価]
(a)短絡試験
(b)リーク試験
作製した各実施例および各比較例の非水電解質電池について、実施例1−1と同様にして短絡試験およびリーク試験を行った。
【0236】
以下の表2に、評価結果を示す。
【0237】
【表2】

【0238】
表2から分かるように、正極リードの端部および負極リードの端部のそれぞれに凸状部を形成した各実施例は、凸状部を全く形成しなかった比較例2−1および負極リード近傍にのみ凸状部を形成しなかった比較例2−2と比較して、短絡試験の不良電池数が減少した。特に、負極リードの端部における樹脂層の厚みTa1と、負極リードの幅方向の中心線上における樹脂層の厚みTa2との比Ta1/Ta2を1.2以上に設定した実施例2−2〜実施例2−7では、短絡試験において不良が全く生じなかった。さらに、Ta1/Ta2を1.2以上10以下に設定した実施例2−2〜実施例2−5では、短絡試験に加えてリーク試験においても不良が全く生じなかった。
【0239】
Ta1/Ta2を1.2未満とした実施例2−1では、短絡試験において負極リードとラミネートフィルムのアルミニウム層とが短絡する不良が一部生じた。また、Ta1/Ta2を10よりも大きくした実施例2−6および実施例2−7では、リーク試験においてラミネートフィルムの封止不良が一部確認された。
【0240】
上記結果から、負極リードの端部における樹脂層の厚みTa1と、負極リードの幅方向の中心線上における樹脂層の厚みTa2との比Ta1/Ta2は、1.2以上10以下とすることが特に好ましい。
【0241】
<実施例3−1>〜<実施例3−14>、<比較例3−1>
実施例3−1〜実施例3−14、比較例3−1では、正極リードの端部および負極リードの端部を含んで形成される凸状部の幅を変化させて非水電解質電池を作製し、電池不良を確認した。
【0242】
<実施例3−1>
正極リードおよび負極リードの両端部にそれぞれ形成される凸状部の幅を0.4mm(リード端部から内側に0.05mm、リード端部から外側に0.35mmの領域)とした以外は、実施例1−2と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0243】
<実施例3−2>
正極リードおよび負極リードの両端部にそれぞれ形成される凸状部の幅を0.5mm(リード端部から内側に0.1mm、リード端部から外側に0.4mmの領域)とした以外は、実施例3−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0244】
<実施例3−3>
正極リードおよび負極リードの両端部にそれぞれ形成される凸状部の幅を0.6mm(リード端部から内側に0.1mm、リード端部から外側に0.5mmの領域)とした以外は、実施例3−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0245】
<実施例3−4>
正極リードおよび負極リードの両端部にそれぞれ形成される凸状部の幅を0.7mm(リード端部から内側に0.1mm、リード端部から外側に0.6mmの領域)とした以外は、実施例3−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0246】
<実施例3−5>
正極リードおよび負極リードの両端部にそれぞれ形成される凸状部の幅を0.8mm(リード端部から内側に0.2mm、リード端部から外側に0.6mmの領域)とした以外は、実施例3−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0247】
<実施例3−6>
正極リードおよび負極リードの両端部にそれぞれ形成される凸状部の幅を3mm(リード端部から内側に2.0mm、リード端部から外側に1.0mmの領域)とした以外は、実施例3−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0248】
<実施例3−7>
正極リードおよび負極リードの両端部にそれぞれ形成される凸状部の幅を4mm(リード端部から内側に2.0mm、リード端部から外側に2.0mmの領域)とした以外は、実施例3−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0249】
<実施例3−8>
正極リードおよび負極リードの両端部にそれぞれ形成される凸状部の幅を10mm(リード端部から内側に8.0mm、リード端部から外側に2.0mmの領域)とした以外は、実施例3−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0250】
<実施例3−9>
正極リードおよび負極リードの両端部にそれぞれ形成される凸状部の幅を20mm(リード端部から内側に18mm、リード端部から外側に2.0mmの領域)とした以外は、実施例3−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0251】
<実施例3−10>
正極リードおよび負極リードの両端部にそれぞれ形成される凸状部の幅を31mm(リード端部から内側に28mm、リード端部から外側に3.0mmの領域)とした以外は、実施例3−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0252】
<実施例3−11>
正極リードおよび負極リードの両端部にそれぞれ形成される凸状部の幅を32mm(リード端部から内側に29mm、リード端部から外側に3.0mmの領域)とした以外は、実施例3−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0253】
<実施例3−12>
正極リードおよび負極リードの両端部にそれぞれ形成される凸状部の幅を33mm(リード端部から内側に30mm、リード端部から外側に3.0mmの領域)とした以外は、実施例3−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0254】
<実施例3−13>
正極リードおよび負極リードの両端部にそれぞれ形成される凸状部の幅を34mm(リード端部から内側に30mm、リード端部から外側に4.0mmの領域)とした以外は、実施例3−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0255】
<実施例3−14>
正極リードおよび負極リードの両端部にそれぞれ形成される凸状部の幅を35mm(リード端部から内側に31mm、リード端部から外側に4.0mmの領域)とした以外は、実施例3−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0256】
<比較例3−1>
正極リードの端部をまたぐ位置に設けられた切り欠き部の深さDc1を260μm(Dc1/Dc2=1.000)とし、正極リードの両端部における熱融着後の樹脂層の厚みTc1を15μm(Tc1/Tc2=1)となるようにし、負極リードの端部をまたぐ位置に設けられた切り欠き部の深さDa1を260μm(Da1/Da2=1.000)とし、負極リードの両端部における熱融着後の樹脂層の厚みTa1を15μm(Tc1/Tc2=1)となるようにして凸状部を形成しないようにした以外は、実施例3−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0257】
[電池評価]
(a)短絡試験
(b)リーク試験
作製した各実施例および各比較例の非水電解質電池について、実施例1−1と同様にして短絡試験およびリーク試験を行った。
【0258】
以下の表3に、評価結果を示す。
【0259】
【表3】

【0260】
表3から分かるように、正極リードの端部および負極リードの端部のそれぞれに凸状部を形成した各実施例は、凸状部を全く形成しなかった比較例1−1と比較して、短絡試験の不良電池数が減少した。なかでも、リードの両端部に形成される凸状部を、リード端部から内側に0.1mm以上とし、かつリード端部から外側に0.5mm以上で形成して、凸状部の幅を0.6mm以上とした実施例3−3〜実施例3−14では、短絡試験において不良が全く生じなかった。さらに、凸状部を、リード端部から内側に0.1mm以上30mm以下かつリード端部から外側に0.5mm以上3.0mm以下の範囲で形成して、凸状部の幅を0.6mm以上33mm以下とした実施例3−3〜実施例3−12では、短絡試験に加えてリーク試験においても不良が全く生じなかった。
【0261】
なお、上記結果はリード幅が90mmの場合における好ましい凸状部幅である。リード幅が90mmの場合においては、リードと重なる凸状部の幅が30mm以下であることが好ましい。すなわち、リードと重なる凸状部の幅は、リード幅の1/3以内とすることが好ましい。好ましい凸状部幅はリード幅に応じて変化する
【0262】
<サンプル4−1>〜<サンプル実施例4−5>
サンプル4−1〜サンプル4−5では、正極リードおよび負極リードの厚みを変化させて非水電解質電池を作製し、電池不良を確認した。
【0263】
<サンプル4−1>
正極リードおよび負極リードの厚さをそれぞれ70μmとし、正極リードの両端部の熱融着後の樹脂層の厚みTc1を60μm、正極リードの中心線上における熱融着後の樹脂層の厚みTc2を30μm(Ta1/Ta2=2)とした以外は実施例1−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0264】
<サンプル4−2>
正極リードおよび負極リードの厚さをそれぞれ100μmとした以外はサンプル4−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0265】
<サンプル4−3>
正極リードおよび負極リードの厚さをそれぞれ250μmとした以外はサンプル4−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0266】
<サンプル4−4>
正極リードおよび負極リードの厚さをそれぞれ400μmとした以外はサンプル4−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0267】
<サンプル4−5>
正極リードおよび負極リードの厚さをそれぞれ450μmとした以外はサンプル4−1と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0268】
[電池評価]
(a)短絡試験
(b)リーク試験
作製した各実施例および各比較例の非水電解質電池について、実施例1−1と同様にして短絡試験およびリーク試験を行った。
【0269】
(c)開裂圧試験
作製した各実施例および各比較例の非水電解質電池について、内部に空気を入れてラミネートフィルム開裂時の限界圧力(開裂圧)を測定した。ラミネートフィルム同士、もしくはラミネートフィルムと正極リードもしくは負極リードとの封止性が低い場合には、限界圧力が低くなるため、限界圧力が0.6MPa以下の電池を不良とした。
【0270】
開裂圧は、以下の方法により測定した。各実施例および各比較例の非水電解質電池を形成する際に、非水電解質電池のラミネートフィルムの中に治具ブロックを入れて、ラミネートフィルムを封止し、非水電解質電池の外部に治具ブロックが突出するようにした。図15は、治具ブロックを挿入した非水電解質電池を示す写真である。続いて、非水電解質電池に挿入した治具ブロックに、開裂圧を測定するための圧力計と、手動レギュレータとを接続した。図16に、非水電解質電池40、治具ブロック41、圧力計42および手動レギュレータ43の接続状態の一構成例を示す。図16は、非水電解質電池40の側面方向からみた接続状態を示す図である。次に、圧縮空気を手動で印加(印加速度0.5Mpa/min)して、治具ブロックから非水電解質電池内部に空気を流入させ、ラミネートフィルムの封止部分が開裂した際の圧力計の数値を読み取ることにより、開裂圧を測定した。各実施例および比較例においてそれぞれ100個の非水電解質電池について上述の試験を行い、限界圧力が0.6MPa以下の非水電解質電池の個数を確認した。
【0271】
(d)大電流放電試験
作製した各実施例および各比較例の非水電解質電池について、3.6Vまで定電流定電圧充電を行った後、10C(100A)で6分間大電流放電を行い、正極リードおよび負極リードの発熱による異常の確認を行った。各実施例および比較例においてそれぞれ5個の非水電解質電池について上述の試験を行い、正極リードまたは負極リードの破断が生じた非水電解質電池の個数を確認した。
【0272】
以下の表4に、評価結果を示す。
【0273】
【表4】

【0274】
表4から分かるように、正極リードの両端部の熱融着後の樹脂層の厚みTc1を60μm、正極リードの中心線上における熱融着後の樹脂層の厚みTc2を30μm(Ta1/Ta2=2)とした場合において、正極リードおよび負極リードの厚みが100μm以上400μm以下である各サンプルは、短絡試験、リーク試験、開裂圧試験および大電流放電試験の全てにおいて不良が生じなかった。
【0275】
正極リードおよび負極リードの厚みが70μmであるサンプル4−1は、大電流放電時にリードの破断が生じた。また、正極リードおよび負極リードの厚みが450μmであるサンプル4−2は、短絡試験、リーク試験および開裂圧試験において不良が生じた。特に、短絡試験においては、短絡が生じた個数が顕著に多かった。
【0276】
上記結果から、正極リードおよび負極リードの厚みは、100μm以上400μm以下とすることが好ましい。
【0277】
なお、上述の正極リードおよび負極リードの厚みは、大電流放電(10C放電時)に適したリード厚みであり、より小さい電流での放電を行う電子機器に用いる非水電解質電池では、正極リードおよび負極リードの厚みをより薄くすることができる。
【0278】
また、上述の正極リードおよび負極リードの厚みは、正極リードの両端部の熱融着後の樹脂層の厚みTc1を60μm、正極リードの中心線上における熱融着後の樹脂層の厚みTc2を30μm(Ta1/Ta2=2)とした場合の好ましい範囲である。Ta1/Ta2をより大きくすることにより、より厚い正極リードおよび負極リードの短絡を防止することができる。
【0279】
以上、本技術の一実施形態について具体的に説明したが、本技術は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本技術の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0280】
例えば、ラミネートフィルムの積層構成や電極体の構成等は、各実施の形態に限定されるものではなく、異なる構成、材料により構成してもよい。
【0281】
なお、本技術は、次のような構成とすることもできる。
[1]
正極と負極とがセパレータを介して対向してなる電極体と、
非水電解質と
金属層と、該金属層の外面に形成された外側樹脂層と、該金属層の内面に形成された内側樹脂層とが積層されてなり、熱融着により上記電極体と上記非水電解質とを内部に収容する外装部材と、
上記正極と電気的に接続され、上記外装部材の熱融着された合わせ目から外部に導出される正極リードと、
上記負極と電気的に接続され、上記外装部材の熱融着された合わせ目から外部に導出される負極リードと
を備え、
上記正極リードおよび上記負極リードが外部に導出されて上記外装部材同士が熱融着される熱融着部において、上記正極リードの両端部の該熱融着部の厚みが、上記正極リードの幅方向の中心線上の該熱融着部の厚みよりも大きく形成され、かつ上記負極リードの両端部の該熱融着部の厚みが、上記負極リードの幅方向の中心線上の該熱融着部の厚みよりも大きく形成される
非水電解質電池。
[2]
上記正極リードの両端部における上記金属層および該正極リード間の樹脂層の厚みが、上記正極リード中心線上における上記金属層および該正極リード間の樹脂層の厚みよりも大きく形成されることにより、上記正極リード中心線上における上記熱融着部と段差を設けて、上記外装樹脂層の方向に凸となる上記正極リードの端部を含む上記熱融着部の凸状部が形成され、かつ、
上記負極リードの両端部における上記金属層および該正極リード間の樹脂層の厚みが、上記負極リード中心線上における上記金属層および該正極リード間の樹脂層の厚みよりも大きく形成されることにより、上記負極リード中心線上における上記熱融着部と段差を設けて、上記外装樹脂層の方向に凸となる上記負極リードの端部を含む上記熱融着部の凸状部が形成される
[1]に記載の非水電解質電池。
[3]
上記正極リードの端部を含む上記熱融着部の凸状部および上記負極リードの端部を含む上記熱融着部の凸状部が、少なくとも該正極リードおよび該負極リードの一方の表面側にそれぞれ設けられる
[1]または[2]に記載の非水電解質電池。
[4]
上記正極リードおよび上記負極リードの少なくとも一方の端部にバリが形成されている場合には、少なくとも該バリの形成方向に上記凸状部が形成される
[1]〜[3]のいずれかに記載の非水電解質電池。
[5]
上記正極リードの端部における上記金属層および該正極リード間の上記樹脂層の厚みをTc1、上記正極リードの幅方向の中心線上における上記金属層および該正極リード間の上記樹脂層の厚みをTc2とした場合、1.2≦Tc1/Tc2≦10であり、かつ、
上記負極リードの端部における上記金属層および該正極リード間の上記樹脂層の厚みをTa1、上記負極リードの幅方向の中心線上における上記金属層および該正極リード間の上記樹脂層の厚みをTa2とした場合、1.2≦Ta1/Ta2≦10である
[1]〜[4]のいずれかに記載の非水電解質電池。
[6]
上記正極リードの幅方向の中心線上における上記樹脂層の厚みTc2と、上記負極リードの幅方向の中心線上における上記樹脂層の厚みTa2とが、それぞれ5μm以上50μm以下である
[5]に記載の非水電解質電池。
[7]
上記正極リードの端部を含む上記熱融着部の凸状部が、0.6mm以上の幅を有し、かつ該正極リードの幅の1/3以下の範囲でリードと重なり、
上記負極リードの端部を含む上記熱融着部の凸状部が、0.6mm以上の幅を有し、かつ該負極リードの幅の1/3以下の範囲でリードと重なる
[2]〜[4]のいずれかに記載の非水電解質電池。
[8]
上記正極リードの端部を含む上記熱融着部の凸状部のうち、該正極リードと重ならない領域の幅が、該正極リードの端部から該正極リードの外側方向に0.5mm以上3.0mm以下であり、かつ該正極リードと重なる領域の幅が、該正極リードの端部から該正極リードの内側方向に0.1mm以上かつ該正極リード幅の1/3以下であり、
上記負極リードの端部を含む上記熱融着部の凸状部のうち、該負極リードと重ならない領域の幅が、該負極リードの端部から該負極リードの外側方向に0.5mm以上3.0mm以下であり、かつ該負極リードと重なる領域の幅が、該負極リードの端部から該負極リードの内側方向に0.1mm以上かつ該負極リード幅の1/3以下であり、
[7]に記載の非水電解質電池。
[9]
上記外装部材と上記正極リードおよび上記負極リードとの間に、それぞれ密着部材が設けられ、
上記正極リード近傍における上記樹脂層と、上記負極リード近傍における上記樹脂層とが、上記外装部材の上記内側樹脂層と上記密着部材とが溶融して互いに一体となった溶融樹脂層からなる
[1]〜[6]のいずれかに記載の非水電解質電池。
[10]
上記正極リードの厚みおよび上記負極リードの厚みが、それぞれ100μm以上400μm以下である
[1]〜[9]のいずれかに記載の非水電解質電池。
[11]
正極および負極がセパレータを介して対向してなる電極体と非水電解質とを、金属層と、該金属層の外面に形成された外側樹脂層と、該金属層の内面に形成された内側樹脂層とが積層されてなり、熱融着により上記電極体と上記非水電解質とを内部に収容する外装部材で外装し、
上記正極と電気的に接続された正極リードと、上記負極と電気的に接続された負極リードとを、上記外装部材の合わせ目から外部に導出し、
上記電極体の外周部のうち、上記正極リードまたは上記負極リードを導出する導出辺の上記外装部材を、該正極リードと対向する部分に、該正極リードの端部をまたぐ領域に対向する部分にそれぞれ設けられた一対の第1の切り欠き部と、一対の該第1の切り欠き部の間に、該正極リードの中心線を含み、かつ該第1の切り欠き部よりも浅く形成された第2の切り欠き部とからなる正極側切り欠き部を備え、該負極リードと対向する部分に、該負極リードの端部をまたぐ領域に対向する部分にそれぞれ設けられた一対の第3の切り欠き部と、一対の該第3の切り欠き部の間に、該負極リードの中心線を含み、かつ該第3の切り欠き部よりも浅く形成された第4の切り欠き部とからなる負極側切り欠き部を備えたヒータブロックによって熱融着し、
上記電極体の外周部のうち、上記正極リードおよび上記負極リードを導出しない辺の上記外装部材を熱融着すること
を含む非水電解質電池の製造方法。
[12]
上記正極リードおよび上記負極リードを導出する導出辺の上記外装部材が、一対のヒータブロックによって挟まれて熱融着され、
上記ヒータブロックの少なくとも一方に、上記正極側切り欠き部もしくは上記負極側切り欠き部が形成される
[11]に記載の非水電解質電池の製造方法。
[13]
上記正極側切り欠き部において、第1の切り欠き部の深さをDc1、上記第2の切り欠き部の深さをDc2とした場合、1.010≦Dc1/Dc2≦1.550であり、かつ、
上記負極側切り欠き部において、第3の切り欠き部の深さをDc3、上記第4の切り欠き部の深さをDc4とした場合、1.010≦Dc3/Dc4≦1.550である
[12]に記載の非水電解質電池の製造方法。
[14]
上記正極側切り欠き部の上記第2の切り欠き部の幅、および上記負極側切り欠き部の上記第4の切り欠き部の幅が、それぞれ0.6mm以上33mm以下である
[11]〜[14]のいずれかに記載の非水電解質電池の製造方法。
[15]
[1]に記載の非水電解質電池と、
上記非水電解質電池について制御する制御部と、
上記非水電解質電池を内包する外装を有する
電池パック。
[16]
[1]に記載の非水電解質電池を有し、
上記非水電解質電池から電力の供給を受ける
電子機器。
[17]
[1]に記載の非水電解質電池と、
上記非水電解質電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、
上記非水電解質電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置と
を有する電動車両。
[18]
[1]に記載の非水電解質電池を有し、
上記非水電解質電池に接続される電子機器に電力を供給する蓄電装置。
[19]
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報制御装置を備え
上記電力情報制御装置が受信した情報に基づき、上記非水電解質電池の充放電制御を行う
[18]に記載の蓄電装置。
[20]
[1]に記載の非水電解質電池から電力の供給を受け、または、発電装置もしくは電力網から上記非水電解質電池に電力が供給される
電力システム。
【符号の説明】
【0282】
1,40・・・非水電解質電池
2・・・外装部材
2a・・・金属層
2b・・・外側樹脂層
2c・・・内側樹脂層
3・・・凹部
4・・・凸状部
10・・・巻回電極体
11・・・正極リード
12・・・負極リード
13・・・密着フィルム
14,34・・・正極
14A,34A・・・正極集電体
14B,34B・・・正極活物質層
15,35・・・負極
15A,35A・・・負極集電体
15B,35B・・・負極活物質層
16・・・セパレータ
17・・・ゲル電解質層
18・・・保護テープ
20,20a,20b・・・ヒータブロック
21・・・正極側切り欠き部
21a,21b・・・切り欠き部
22・・・負極側切り欠き部
22a,22b・・・切り欠き部
30・・・積層電極体
34C・・・正極タブ
35C・・・負極タブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層と、該金属層の外面に形成された外側樹脂層と、該金属層の内面に形成された内側樹脂層とが積層された外装部材と、
上記外装部材に収容された正極と負極とを含む電極体と、
上記外装部材に収容された電解質と、
上記正極と電気的に接続され、上記外装部材の熱融着された合わせ目から外部に導出される正極リードと、
上記負極と電気的に接続され、上記外装部材の熱融着された合わせ目から外部に導出される負極リードと
を備え、
上記正極リードおよび上記負極リードが外部に導出されて上記外装部材同士が熱融着される熱融着部において、上記正極リードの両端部の該熱融着部の厚みが、上記正極リードの幅方向の中心線上の該熱融着部の厚みよりも大きく形成され、かつ上記負極リードの両端部の該熱融着部の厚みが、上記負極リードの幅方向の中心線上の該熱融着部の厚みよりも大きく形成される
電池。
【請求項2】
上記正極リードの両端部における上記金属層および該正極リード間の樹脂層の厚みが、上記正極リード中心線上における上記金属層および該正極リード間の樹脂層の厚みよりも大きく形成されることにより、上記正極リード中心線上における上記熱融着部と段差を設けて、上記外装樹脂層の方向に凸となる上記正極リードの端部を含む上記熱融着部の凸状部が形成され、かつ、
上記負極リードの両端部における上記金属層および該正極リード間の樹脂層の厚みが、上記負極リード中心線上における上記金属層および該正極リード間の樹脂層の厚みよりも大きく形成されることにより、上記負極リード中心線上における上記熱融着部と段差を設けて、上記外装樹脂層の方向に凸となる上記負極リードの端部を含む上記熱融着部の凸状部が形成される
請求項1に記載の電池。
【請求項3】
上記正極リードの端部を含む上記熱融着部の凸状部および上記負極リードの端部を含む上記熱融着部の凸状部が、少なくとも該正極リードおよび該負極リードの一方の表面側にそれぞれ設けられる
請求項2に記載の電池。
【請求項4】
上記正極リードおよび上記負極リードの少なくとも一方の端部にバリが形成されている場合には、少なくとも該バリの形成方向に上記凸状部が形成される
請求項3に記載の電池。
【請求項5】
上記正極リードの端部における上記金属層および該正極リード間の上記樹脂層の厚みをTc1、上記正極リードの幅方向の中心線上における上記金属層および該正極リード間の上記樹脂層の厚みをTc2とした場合、1.2≦Tc1/Tc2≦10であり、かつ、
上記負極リードの端部における上記金属層および該正極リード間の上記樹脂層の厚みをTa1、上記負極リードの幅方向の中心線上における上記金属層および該正極リード間の上記樹脂層の厚みをTa2とした場合、1.2≦Ta1/Ta2≦10である
請求項2に記載の電池。
【請求項6】
上記正極リードの幅方向の中心線上における上記樹脂層の厚みTc2と、上記負極リードの幅方向の中心線上における上記樹脂層の厚みTa2とが、それぞれ5μm以上50μm以下である
請求項5に記載の電池。
【請求項7】
上記正極リードの端部を含む上記熱融着部の凸状部が、0.6mm以上の幅を有し、かつ該正極リードの幅の1/3以下の範囲で該正極リードと重なり、
上記負極リードの端部を含む上記熱融着部の凸状部が、0.6mm以上の幅を有し、かつ該負極リードの幅の1/3以下の範囲で該負極リードと重なる
請求項2に記載の電池。
【請求項8】
上記正極リードの端部を含む上記熱融着部の凸状部のうち、該正極リードと重ならない領域の幅が、該正極リードの端部から該正極リードの外側方向に0.5mm以上3.0mm以下であり、かつ該正極リードと重なる領域の幅が、該正極リードの端部から該正極リードの内側方向に0.1mm以上かつ該正極リード幅の1/3以下であり、
上記負極リードの端部を含む上記熱融着部の凸状部のうち、該負極リードと重ならない領域の幅が、該負極リードの端部から該負極リードの外側方向に0.5mm以上3.0mm以下であり、かつ該負極リードと重なる領域の幅が、該負極リードの端部から該負極リードの内側方向に0.1mm以上かつ該負極リード幅の1/3以下であり、
請求項7に記載の電池。
【請求項9】
上記外装部材と上記正極リードおよび上記負極リードとの間に、それぞれ密着部材が設けられ、
上記正極リード近傍における上記樹脂層と、上記負極リード近傍における上記樹脂層とが、上記外装部材の上記内側樹脂層と上記密着部材とが溶融して互いに一体となった溶融樹脂層からなる
請求項1に記載の電池。
【請求項10】
上記正極リードの厚みおよび上記負極リードの厚みが、それぞれ100μm以上400μm以下である
請求項1に記載の電池。
【請求項11】
正極と負極とを含む電極体と電解質とを、金属層と、該金属層の外面に形成された外側樹脂層と、該金属層の内面に形成された内側樹脂層とが積層されてなり、熱融着により上記電極体と上記電解質とを内部に収容する外装部材で外装し、
上記正極と電気的に接続された正極リードと、上記負極と電気的に接続された負極リードとを、上記外装部材の合わせ目から外部に導出し、
上記電極体の外周部のうち、上記正極リードまたは上記負極リードを導出する導出辺の上記外装部材を、該正極リードと対向する部分に、該正極リードの端部をまたぐ領域に対向する部分にそれぞれ設けられた一対の第1の切り欠き部と、一対の該第1の切り欠き部の間に、該正極リードの中心線を含み、かつ該第1の切り欠き部よりも浅く形成された第2の切り欠き部とからなる正極側切り欠き部を備え、該負極リードと対向する部分に、該負極リードの端部をまたぐ領域に対向する部分にそれぞれ設けられた一対の第3の切り欠き部と、一対の該第3の切り欠き部の間に、該負極リードの中心線を含み、かつ該第3の切り欠き部よりも浅く形成された第4の切り欠き部とからなる負極側切り欠き部を備えたヒータブロックによって熱融着し、
上記電極体の外周部のうち、上記正極リードおよび上記負極リードを導出しない辺の上記外装部材の合わせ目を熱融着すること
を含む電池の製造方法。
【請求項12】
上記正極リードおよび上記負極リードを導出する導出辺の上記外装部材の合わせ目が、一対のヒータブロックによって挟まれて熱融着され、
上記ヒータブロックの少なくとも一方に、上記正極側切り欠き部もしくは上記負極側切り欠き部が形成される
請求項11に記載の電池の製造方法。
【請求項13】
上記正極側切り欠き部において、第1の切り欠き部の深さをDc1、上記第2の切り欠き部の深さをDc2とした場合、1.010≦Dc1/Dc2≦1.550であり、かつ、
上記負極側切り欠き部において、第3の切り欠き部の深さをDa1、上記第4の切り欠き部の深さをDa2とした場合、1.010≦Da1/Da2≦1.550である
請求項12に記載の電池の製造方法。
【請求項14】
上記正極側切り欠き部の上記第1の切り欠き部が、0.6mm以上の幅を有し、かつ上記正極リードの幅の1/3以下の範囲で該正極リードと重なり、
上記負極側切り欠き部の上記第3の切り欠き部が、0.6mm以上の幅を有し、かつ上記負極リードの幅の1/3以下の範囲で該負極リードと重なり、
請求項11に記載の電池の製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載の電池と、
上記電池について制御する制御部と、
上記電池を内包する外装を有する
電池パック。
【請求項16】
請求項1に記載の電池を有し、
上記電池から電力の供給を受ける
電子機器。
【請求項17】
請求項1に記載の電池と、
上記電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、
上記電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置と
を有する電動車両。
【請求項18】
請求項1に記載の電池を有し、
上記電池に接続される電子機器に電力を供給する蓄電装置。
【請求項19】
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報制御装置を備え
上記電力情報制御装置が受信した情報に基づき、上記電池の充放電制御を行う
請求項18に記載の蓄電装置。
【請求項20】
請求項1に記載の電池から電力の供給を受け、または、発電装置もしくは電力網から上記電池に電力が供給される
電力システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−89426(P2013−89426A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228280(P2011−228280)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Wi−Fi
2.Bluetooth
3.ZIGBEE
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】