電池の姿勢制御装置、組電池の姿勢制御装置
【課題】電池の寿命低下の抑制と電池の出力低下の抑制とを両立することを目的とする。
【解決手段】ケースの内部に電解液及び電極体を収容した電池と、前記ケースを回転させる駆動部と、前記駆動部の駆動を制御する制御部と、を有し、前記電解液の液面とこの液面に対向する前記ケースの内面との間には隙間が形成されており、前記制御部は、前記駆動部を制御することにより、第1の姿勢と、前記第1の姿勢よりも前記電解液及び前記電極体の接触面積が小さい第2の姿勢との間で前記ケースを回転させることを特徴とする電池の姿勢制御装置。
【解決手段】ケースの内部に電解液及び電極体を収容した電池と、前記ケースを回転させる駆動部と、前記駆動部の駆動を制御する制御部と、を有し、前記電解液の液面とこの液面に対向する前記ケースの内面との間には隙間が形成されており、前記制御部は、前記駆動部を制御することにより、第1の姿勢と、前記第1の姿勢よりも前記電解液及び前記電極体の接触面積が小さい第2の姿勢との間で前記ケースを回転させることを特徴とする電池の姿勢制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の寿命改善及び電池の出力低下の抑制に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
電動機により車両の駆動力を得る、電気車両、ハイブリッド車両、燃料電池車両は、バッテリを搭載している。バッテリとして、特許文献1は、二次電池を6個直列に接続したバッテリモジュールを予め定められた間隔をあけて積層した組電池を開示する。二次電池は、ケース内に電解液及び電極体を収容することにより構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−306726号公報
【特許文献2】特開2009−170258号公報
【特許文献3】特開2008−166060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電解液及び電極体が接触することにより電解液の酸化分解が促進され、バッテリの寿命が短くなる。その一方で、電極体の内部に電解液が十分に浸透しない場合には、起電反応が起こりにくくなり、必要な出力を確保することができない。そこで、本願発明は、電池の寿命低下の抑制と電池の出力低下の抑制とを両立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る電池の姿勢制御装置は、(1)ケースの内部に電解液及び電極体を収容した電池と、前記ケースを回転させる駆動部と、前記駆動部の駆動を制御する制御部と、を有し、前記電解液の液面とこの液面に対向する前記ケースの内面との間には隙間が形成されており、前記制御部は、前記駆動部を制御することにより、第1の姿勢と、前記第1の姿勢よりも前記電解液及び前記電極体の接触面積が小さい第2の姿勢との間で前記ケースを回転させることを特徴とする。
【0006】
(2)上記(1)の構成において、前記制御部は、前記電池が動作する動作時間のうち少なくともいずれかのタイミングにおいて前記ケースを前記第1の姿勢に制御し、前記電池が動作しない非動作時間のうち少なくともいずれかのタイミングにおいて前記ケースを前記第2の姿勢に制御することができる。電池が動作する動作時間のうち少なくともいずれかのタイミングでケースを第1の姿勢に制御することにより、電池出力の出力低下を抑制できる。電池が動作しない非動作時間のうち少なくともいずれかのタイミングでケースを第2の姿勢に制御することにより、酸化分解を抑制できる。
【0007】
(3)上記(2)の構成において、前記制御部は、車両のイグニッションスイッチがオンであるときに前記ケースを前記第1の姿勢に制御し、前記イグニッションスイッチがオフであるときに前記ケースを前記第2の姿勢に制御することができる。姿勢制御が煩雑になるのを防止しながら、電池の寿命低下の抑制と電池の出力低下の抑制とを両立することができる。
【0008】
(4)上記(1)乃至(3)の構成において、前記ケースは、第1の内面と、前記第1の内面よりも面積が小さい第2の内面とを備える扁平形成に形成されており、前記第1の姿勢時において、前記第1の内面が水平方向を含む面内に位置し、前記第2の姿勢時において、前記第2の内面が水平方向を含む面内に位置する。第1の姿勢時において、電解液の液面とこの液面に対向する第1の内面との隙間が相対的に小さくなるため、電極体及び電解液の接触面積が増加して、電池の出力低下を抑制することができる。第2の姿勢時において、電解液の液面とこの液面に対向する第2の内面との隙間が相対的に小さくなるため、電極体及び電解液の接触面積が減少して、電池の寿命低下を抑制できる。
【0009】
(5)上記(1)乃至(3)の構成において、前記ケースは、円筒形状であり、前記第1の姿勢時において、前記ケースの径方向が重力方向を向いており、前記第2の姿勢時において、前記ケースの径方向が水平方向を向いている。上記(4)の構成と同様の効果を得ることができる。
【0010】
(6)上記(1)乃至(5)の構成において、前記電池の正極電位が金属リチウムを基準としたときに4.1V以上である。このような高電位の電池において電解液及び電極体が接触することによる酸化分解が特に促進されやすいため、第2の姿勢時における酸化分解を効果的に抑制できる。
【0011】
上記課題を解決するために、本願発明に係る組電池の姿勢制御装置は、(7)ケースの内部に電解液及び電極体を収容した電池を複数接続した組電池と、前記組電池を回転させる駆動部と、前記駆動部の駆動を制御する制御部と、を有し、前記電解液の液面とこの液面に対向する前記ケースの内面との間には隙間が形成されており、前記制御部は、前記駆動部を制御することにより、第1の姿勢と、前記第1の姿勢よりも前記電解液及び前記電極体の接触面積が小さい第2の姿勢との間で前記組電池を回転させることを特徴とする。
【0012】
(8)上記(7)の構成において、前記制御部は、前記組電池が動作する動作時間のうち少なくともいずれかのタイミングにおいて前記組電池を前記第1の姿勢に制御し、前記組電池が動作しない非動作時間のうち少なくともいずれかのタイミングにおいて前記組電池を前記第2の姿勢に制御することができる。組電池が動作する動作時間のうち少なくともいずれかのタイミングでケースを第1の姿勢に制御することにより、組電池の出力低下を抑制できる。組電池が動作しない非動作時間のうち少なくともいずれかのタイミングでケースを第2の姿勢に制御することにより、酸化分解を抑制できる。
【0013】
(9)上記(8)の構成において、前記制御部は、車両のイグニッションスイッチがオンであるときに前記組電池を前記第1の姿勢に制御し、前記イグニッションスイッチがオフであるときに前記組電池を前記第2の姿勢に制御することができる。姿勢制御が煩雑になるのを防止しながら、組電池の寿命低下の抑制と組電池の出力低下の抑制とを両立することができる。
【0014】
(10)上記(7)乃至(9)の構成において、前記ケースは、互いに対向する一対の第1のケース壁面と、前記第1のケース壁面に直交する方向に配置され、互いに対向する一対の第2のケース壁面と、前記第1及び第2のケース壁面に直交する方向に配置され、互いに対向する一対の第3のケース壁面とを有し、前記第2のケース壁面は前記第1のケース壁面よりも面積が大であり、前記第3のケース壁面は前記第2のケース壁面よりも面積が大であり、前記組電池は、前記第3のケース壁面が互いに対向するように前記電池を第1の方向にn個積層した電池群を、前記第1の方向に直交する第2の方向に複数積層することにより、構成されており、前記駆動部は、前記第2の方向視における前記組電池の中心部分に対応した位置に設けられる、前記第2の方向に延びる回転軸部を備え、前記第2の方向視において、前記組電池の縦横の比率が最も1に近づくように、前記nを設定することができる。組電池が回転するときの回転領域の体積を小さくすることができ、スペース効率を高めることができる。
【0015】
(11)上記(10)の構成において、前記第1のケース壁面の短辺及び長辺の長さをそれぞれT及びHとしたときに、(T×n)/Hが最も1に近づくように、前記nを設定することができる。
【0016】
(12)上記(10)又は(11)の構成において、前記nは奇数であり、前記一対の第2のケース壁面のうち一方の前記第2のケース壁面側には、一対の出力端子が位置しており、前記第1の方向に隣接する前記電池は互いに第1の導電部材を介して直列に接続され、前記第2の方向に隣接する前記電池群は互いに第2の導電部材を介して直列に接続されている。導電部材の接続作業を容易化することができる。
【0017】
(13)上記(12)の構成において、前記第1及び前記第2の導電部材のサイズを同じに設定することができる。導電部材のサイズが共有化されることにより、コストを削減できる。
【0018】
(14)上記(7)乃至(13)の構成において、前記電池の正極電位が金属リチウムを基準としたときに4.1V以上である。このような高電位の電池において電解液及び電極体が接触することによる酸化分解が特に促進されやすいため、第2の姿勢時における酸化分解を効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電池の寿命低下の抑制と電池の出力低下の抑制とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の姿勢に制御された電池の斜視図である。
【図2】第2の姿勢に制御された電池の斜視図である。
【図3】図3は、図1の電池をX1−X2で切断した断面図である。
【図4】図2の電池をX3−X4で切断した断面図である。
【図5】電極体の概略図である。
【図6】姿勢制御装置の機能ブロック図である。
【図7】組電池の斜視図である。
【図8】組電池のX矢視図である。
【図9】個数nを5個とした場合の導電板の配置を示した組電池の平面図である。
【図10】個数nを4個とした場合の導電板の配置を示した組電池の平面図である。
【図11】組電池の姿勢を制御する制御方法のフローチャートである。
【図12】酸化分解の程度を評価する評価試験の試験結果である。
【図13A】実施例2の組電池の概略斜視図である。
【図13B】実施例2の組電池のX矢視図である。
【図14A】比較例3の組電池の概略斜視図である。
【図14B】組電池のX矢視図である。
【図15A】第1の姿勢に制御された円筒型電池の断面図である。
【図15B】第2の姿勢に制御された円筒型電池の断面図である。
【図16】変形例5の組電池のX矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1乃至図5を参照しながら、本実施形態に係る姿勢制御装置によって姿勢が制御される電池の構成を説明する。図1及び図2は電池の斜視図であり、図1は電池の姿勢が第1の姿勢に制御された状態を図示しており、図2は電池の姿勢が第2の姿勢に制御された状態を図示している。これらの図において、X−Y面は水平方向を含む面であり、車両のフロアパネルと同一面内に位置する。図3は、図1の電池をX1−X2で切断した断面図である。図4は、図2の電池をX3−X4で切断した断面図である。図5は、電極体の概略図である。X軸、Y軸及びZ軸は互いに直交する異なる三軸である。
【0022】
これらの図を参照して、電池2は、角型ケース40、一対の出力端子50及び電極体10を含む。角型ケース40は、扁平形状に形成されている。ここで、図1を参照して、角型ケース40のX軸方向の長さをDX、Y軸方向の長さをDY、Z軸方向の長さをDZとしたとき、DY>DX>DZなる大小関係を満足する。したがって、図1において、X−Y面に沿って延びる角型ケース40の内面(第1の内面)は、Y−Z面に沿って延びる角型ケース40の内面よりも面積が大きい。
【0023】
角型ケース40の内部には電解液が収容されている。図1乃至図4に図示した一点鎖線は、電解液の液面を示している。電解液の液量は、角型ケース40の内部を満たさない程度に調整されており、電解液の液面とこの液面に対向する角型ケース40の内面との間には隙間が形成されている。
【0024】
一対の出力端子50はY軸方向に並んでおり、一方がプラス電極であり、他方がマイナス電極である。一対の出力端子50は、図示しないタブを介して、電極体10に電気的に接続されている。
【0025】
電極体10は、角型ケース40の内部において巻かれた状態で収容されている。図5を参照して、電極体10は、正極体12と、負極体13と、正極体12及び負極体13の間に配置されたセパレータ14とで構成されている。ここで、正極体12は、集電体と、集電体の表面に形成された正極層とで構成されている。正極層は、集電体の片面又は両面に形成することができる。正極層とは、正極に応じた活物質や導電剤等を含む層である。また、負極体13は、集電体と、集電体の表面に形成された負極層とで構成されている。負極層は、集電体の片面又は両面に形成することができる。負極層とは、負極に応じた活物質や導電剤等を含む層である。
【0026】
ここで、電池2がニッケル−水素電池である場合には、正極層の活物質として、ニッケル酸化物を用い、負極層の活物質として、MmNi(5−x−y−z)AlxMnyCoz(Mm:ミッシュメタル)等の水素吸蔵合金を用いることができる。また、電池2がリチウムイオン電池である場合には、正極層の活物質として、リチウム−遷移金属複合酸化物を用い、負極層の活物質として、カーボンを用いることができる。また、導電剤として、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブを用いることができる。
【0027】
ここで、電池2の起電反応は、電極体10が電解液に浸漬されることにより生じるため、高い電池出力を得るためには、電解液及び電極体10の接触面積を増加させる必要がある。他方、電極体10が電解液に接触することにより、酸化分解が起こり、抵抗が増加するため、電池寿命が短くなる。特に、正極電位が金属リチウムを基準としたときに4.2v以上である場合には、酸化分解が促進される。したがって、電池2の動作状態において電極体10及び電解液の接触面積を増加させ、電池2の非動作状態において電極体10及び電解液の接触面積を減少させることにより、電池出力の維持と電池寿命の向上とを両立することができる。
【0028】
図3及び図4を参照して、本実施形態の角型ケース40は、第1の内面41と、第1の内面41よりも面積が小さい第2の内面42とを備え、第1の内面41が水平方向を含む面内に位置する場合には、電極体10及び電解液の接触面積が大となり(図3参照)、第1の内面42が水平方向を含む面内に位置する場合には電極体10及び電解液の接触面積が小となる(図4参照)。したがって、電池2の動作状態において、電池2を図1及び図3に図示する第1の姿勢に制御し、電池2の非動作状態において、電池2を図2及び図4に図示する第2の姿勢に制御することにより、電池出力の維持と電池寿命の向上とを両立することができる。
【0029】
次に、図6乃至図8を参照しながら、組電池3の姿勢を制御する姿勢制御装置の一実施形態について説明する。ただし、本姿勢制御装置は、1個の電池2の姿勢を制御する際にも適用することができる。図6は、姿勢制御装置の機能ブロック図であり、図7は組電池の斜視図であり、図8は組電池のX矢視図である。
【0030】
これらの図を参照して、姿勢制御装置1は、組電池3、この組電池3を回転させる駆動部4、この駆動部4の駆動を制御する制御部5及びIG検出部6を備える。駆動部4は、モータ43、モータ43の駆動力を伝達する伝達機構42、伝達機構42から駆動力が伝達されることにより回転する回転軸41を備える。モータ43は、ステッピングモータ、振動波モータであってもよい。伝達機構42は、歯車機構、ベルト機構であってもよい。回転軸41は、組電池3の長手方向(X軸方向)の両端部に取り付けられている。なお、組電池3は図示しない拘束バンドで拘束されており、拘束バンドの拘束作用により各電池2の位置ずれが禁止される。したがって、組電池3を構成する各電池2は、一体的に回転する。
【0031】
制御部5は、モータの種類に応じて適宜変更され、その具体的な構成は公知であるため、ここでは一例としてステッピングモータの制御部についてのみ説明する。制御部5は、モータ43のコイルを駆動するモータドライブ回路、モータの回転速度を制御する速度制御回路、モータの回転方向及び動作停止を制御するスタート/ストップ回路などを備える。モータドライブ回路によるコイルの駆動順序は、コントローラで制御してもよい。
【0032】
IG検出部6は、図示しないIG(イグニッション)スイッチの位置を検出し、この検出結果を制御部5に出力する。制御部5は、IGスイッチがオンの場合に、駆動部4を制御することにより、図1に図示する第1の姿勢に組電池2を制御する。制御部5は、IGスイッチがオフである場合に、駆動部4を制御することにより、図2に図示する第2の姿勢に組電池3を制御する。上述の姿勢制御装置の構成によれば、組電池2の姿勢制御を容易に行うことができる。
【0033】
次に、図7及び図8を参照しながら、組電池3の構成について詳細に説明する。組電池3は、複数の電池2(本実施形態では5個)をZ軸方向(第1の方向に)に並べた電池群3AをX軸方向(第2の方向)に複数個積層することにより構成されている。電池2は、一つの電池セル、或いは複数の電池セルを接続した電池モジュールであってもよい。
【0034】
ここで、角型ケース40の壁面をそれぞれ第1のケース壁面2A、第2のケース壁面2B及び第3のケース壁面2Cとしたときに、第2のケース壁面2Bは第1のケース壁面2Aよりも面積が大であり、第3のケース壁面2Cは第2のケース壁面2Bよりも面積が大である。なお、第1のケース壁面2Aは、図1の角型ケース40のX−Z面に沿って延びる壁面に対応し、第2のケース壁面2Bは、図1の角型ケース40のY−Z面に沿って延びる壁面に対応し、第3のケース壁面2Cは、図1の角型ケース40のX−Y面に沿って延びる壁面に対応している。
【0035】
電池群3Aを構成する各電池2は、互いに第3のケース壁面2Cが対向するように並べられており、回転軸41は、X軸方向(第2の方向)視における組電池3の中心部分に対応した位置に設けられ、第1のケース壁面2Aに直交するX軸方向(第2の方向)に延びている。なお、回転軸41は、組電池2をX軸方向から挟み込む一対のエンドプレートに設けてもよい。
【0036】
組電池3は、総プラス端子22A及び総マイナス端子22Bを備える。これらの総プラス端子22A及び総マイナス端子22Bから、車両の走行に必要なエネルギを取り出すことができる。各電池群3Aを構成する各電池2は導電板(第1の導電板)21を介して直接に接続されている。X軸方向に隣接する電池群3Aは導電板(第2の導電板)22を介して直列に接続されている。これらの導電板21、22は各電池2の出力端子50に接続されている。ただし、図7及び図8では、説明を簡略化するために出力端子50を省略している。
【0037】
ここで、図8に図示するように、電池2の幅方向の寸法(Z軸方向の寸法)をT(以下、電池幅Tと称する場合もある)、電池2の高さ方向の寸法(Y軸方向の寸法)をH(以下、電池高さHと称する場合もある)、一つの電池群3Aに含まれる電池2の個数をT(以下、個数nと称する場合もある)としたとき、(T×n)/Hが最も1に近づくように個数nを設定するのが好ましい。例えば、電池高さHが電池幅Tの5倍である場合には、個数nを5個に設定するのが好ましい。なお、隣接する電池2の間に形成される隙間は狭小であるため無視する。
【0038】
上述の構成によれば、組電池3を回転させるために必要な空間を小さくすることができる。したがって、組電池3を車両に搭載する際の搭載位置の自由度が高まり、限られた車両空間を有効に活用することができる。さらには、車両を小型化することもできる。
【0039】
さらに、個数nは偶数ではなく奇数であることがより好ましい。個数nを奇数とすることによる効果を、図9及び図10を参照しながら説明する。図9は、個数nを5個とした場合の導電板21A、21Bの配置を図示する組電池3の平面図である。図10は、個数nを4個とした場合の導電板21A、21Bの配置を図示する組電池3の平面図である。ただし、説明を簡略化するため、説明に必要な組電池3の一部のみを図示する。これらの図において、出力端子50は極性に応じて「+」、「−」で図示されており、以下の説明ではそれぞれプラス端子、マイナス端子と称するものとする。
【0040】
図9を参照して、隣接する電池群3Aを接続する際に、一方の電池群3Aの端部に位置する電池2のプラス端子と他方の電池群3Aの端部に位置する電池2のマイナス端子とがX軸方向において隣り合うため、これらの端子を導電板21Bによって簡単に接続することができる。これに対して、図10に図示する構成では、一方の電池群3Aの端部に位置する電池2のプラス端子と他方の電池群3Aの端部に位置する電池2のマイナス端子との間に当該一方の電池2のプラス端子が位置するため、このプラス端子を避けるように端子の接続を行う必要がある。そのため接続作業が煩雑化する。
【0041】
また、図9に図示する構成によれば、端子のX軸方向の位置を適切な位置に設定することにより、導電板21A及び導電板21Bのサイズを共通化できるため、コストを削減することができる。これに対して、図10に図示する構成では、導電板21A及び導電板21Bのサイズを共通化できないため、図9に図示する構成よりもコストが増大する。したがって、個数nを奇数に設定することにより、接続作業の容易化と、コスト削減とを図ることができる。
【0042】
次に、組電池3の姿勢を制御する制御方法について図11のフローチャートを参照しながら説明する。初期状態において、組電池は、図2に図示する第2の姿勢に制御されているものとする。ステップS101において、制御部5は、IG検出部6の検出結果を受信し、IGスイッチがオンされているか否かを判別する。IGスイッチがオンされている場合には、ステップS102において、駆動部4を制御することにより、組電池3を第2の姿勢から図1に図示する第1の姿勢に回転させる。これにより、各電池2の電極体10が電解液に十分に浸漬するため、必要な電池出力を得ることができる。
【0043】
IGスイッチがオフされている場合には、ステップS103において、組電池3を第2の姿勢に維持する。これにより、各電池2の電極体10が電解液に接触する接触面積を減らすことができるため、酸化分解を抑制することができる。その結果、組電池3の寿命を向上させることができる。特に、電池2の正極電位が金属リチウムを基準としたときに4.2V以上である場合には、酸化分解の抑制効果が高くなる。
【0044】
次に、実施例を示して本発明について詳細に説明する。
(実施例1)
本実施例では、電池2の姿勢を制御することによる効果を検証した。使用した電池2の組成及び製造方法は以下の通りである。
【0045】
まず、正極体12について説明する。正極活物質としてのLiNi0.5Mn1.5O4と、導電剤としてのアセチレンブラックと、結着剤としてのPVDF(ポリフッ化ビニリデン)とを混合した混合物を、N−メチル―2ピロリドン溶剤(NMP)に分散させてスラリー状にし、これを厚さ15μmのアルミ箔からなる集電体の両面に均一に塗布し、正極合剤層を形成し、80℃にて乾燥させた後、ロールプレスにより圧縮成形を行った。
【0046】
負極体13について説明する。負極活物質としての黒鉛粉末と、結着剤としてのPVDF(ポリフッ化ビニリデン)とを混合した混合物を、N−メチル―2ピロリドン溶剤(NMP)に分散させてスラリー状にし、これを厚さ10μmの銅箔からなる集電体の両面に均一に塗布し、80℃にて乾燥させた後、ロールプレスにより圧縮成形を行った。
【0047】
セパレータ14として、厚さ16μmの微多孔性ポリエチレンフィルムを用いた。このセパレータ14を正極体12と負極体13との間に介在させ、捲き回すことにより捲回体を得た。この捲回体を80℃の乾燥温度にて12時間真空状態で乾燥した後、アルミ製の角型ケース40に収容した。電解液として、1mol/LのLIPF6をエチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートの混合溶媒に溶解した溶解液を使用した。なお、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの体積比は3:7に設定した。電解液を角型ケース40に注入して封止することにより電池2を作成した。
【0048】
初期測定として、角型ケース40の傾きを0度(つまり、図1に図示する姿勢)に設定し、SOC(State of charge)を90%にした電池2の25℃でのIV抵抗(10秒)を測定した。満充電時におけるエネルギ容量は5Ahであった。
【0049】
角型ケース40の傾きを90度(つまり、図2に図示する姿勢)にして、SOC(State of charge)を90%にした電池2を60℃で5日間保存した。その後、角型ケース40の傾きを0度にして、SOC(State of charge)を90%にして電池2の25℃でのIV抵抗(10秒)を測定した。試験期間は30日とし、5日おきにIV抵抗(10秒)を測定した。
【0050】
比較例1では、実施例1と同様の電池を使用し、角型ケース40の傾きを常時0度に設定した。比較例2では、実施例1と同様の電池を使用し、角型ケース40の傾きを常時90度に設定した。図12に実施例1、比較例1、2の評価結果を示す。図12の横軸は日数であり、縦軸はIV抵抗の増加率である。
【0051】
角型ケース40の傾きを常時0度に設定した比較例1と比較して、本実施例は、IV抵抗増加率が低く、酸化分解を抑制する効果が高くなることがわかった。角型ケース40の傾きを常時90度に設定した比較例2と比較して、本実施例は、起電反応に必要な電解液の確保ができ、未使用時には酸化分解を抑制する効果が高くなることがわかった。なお、比較例2は、電解液との接触面積は小さく、酸化分解が抑制されるが、逆に起電反応に使用できる面積も小さい。そのため、実施例よりも出力反応の際の電極体の負荷が大きくなり、電池自体の劣化が進行したものと考えられる。
【0052】
(実施例2)
組電池3を回転させたときの回転領域の大きさについて評価した。図13Aは実施例2の組電池3の概略斜視図である。図13Bは組電池3のX矢視図であり、点線で示す円は組電池3が回転するのに必要な回転領域の輪郭を示している。
【0053】
本実施例で用いられる電池2のサイズは、Z軸方向の長さTが1.5cmであり、Y軸方向の長さHが8.0cmであり、X軸方向の長さSが14cmであった。したがって、Z軸方向に並べられる電池2の個数nが1個である場合、(T×n)/Hは0.19であり、個数nが3個である場合、(T×n)/Hは0.56であり、個数nが5個である場合、(T×n)/Hは0.94であり、個数nが7個である場合、(T×n)/Hは1.31である。したがって、(T×n)/Hが最も1に近くなるように、本実施例では個数nを5個に設定した。
【0054】
電池2の総数は15個とした。したがって、セルの総体積は2520cm3である。組電池3の回転半径Rが5.48cm、奥行き(X軸方向の長さ)が42cmであるから、回転領域の体積は3960cm3であった。したがって、セルの総体積に対して3960÷2520=1.57倍の空間を回転領域として確保する必要がある。
【0055】
図14Aは比較例3の組電池3の概略斜視図である。図14Bは組電池3のX矢視図であり、点線で示す円は組電池3が回転するのに必要な回転領域の輪郭を示している。比較例3の組電池3は、実施例1と同じサイズの電池2をX軸方向に15個積層することにより構成した。回転軸41は、電池2の積層方向に直交する方向の端面(Z軸方向の端面)に接続した。組電池3の回転半径Rが11.94cm、奥行き(つまり長さS)が14cmであるから、回転領域の体積は6267cm3であった。したがって、セルの総体積に対して6267÷2520=2.49倍の空間を回転領域として確保する必要がある。
【0056】
実施例2及び比較例3を比較して、(T×n)/Hが1に近づくように電池2の個数nを設定することにより、回転に必要な回転領域の体積が小さくなることが証明された。
【0057】
(変形例1)
【0058】
上述の実施形態では、第1の姿勢から第2の姿勢に電池2を回転する際の回転角度を90度に設定したが、本発明はこれに限られるものではなく、第1の姿勢から第2の姿勢に電池2を回転させることにより、電解液及び電極体10の接触面積が減少すれば、回転角度は何度であってもよい。例えば、図1の図示する姿勢から角型ケース40をX−Y面に対して数度傾けた姿勢を第1の姿勢とし、図2の図示する姿勢から角型ケース40をX−Y面に対して数度傾けた姿勢を第2の姿勢としてもよい。
【0059】
(変形例2)
上述の実施形態では、イグニッションスイッチのオン及びオフに基づき、電池2の姿勢を制御したが、本発明はこれに限られるものではなく、前記電池が動作する動作時間の少なくともいずれかのタイミングで電池2を第1の姿勢(図1参照)に制御し、電池2が動作しない非動作時間の少なくともいずれかのタイミングで電池2を第2の姿勢(図2参照)に制御してもよい。例えば、動力源として組電池3と内燃機関とを兼用するハイブリッド車両において、内燃機関のみの動力により車両が走行している場合には、電池2を第2の姿勢、つまり、電解液及び電極体の接触面積が相対的に小さくなる第2の姿勢に制御してもよい。また、電池2に要求される出力レベルが低い場合には、電池2を第2の姿勢に制御してもよい。本変形例の構成であっても、電池出力の確保と電池寿命の向上とを両立することができる。
【0060】
(変形例3)
上述の実施形態では、角型形状の電池2を回転させる場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、姿勢を変えることにより電解液及び電極体の接触面積が変わる他の形状の電池にも適用することができる。当該他の形状の電池は、いわゆる円筒型形状の電池であってもよい。図15Aは、第1の姿勢に制御された円筒型電池の断面図であり、図15Bは第2の姿勢に制御された円筒型電池の断面図である。
【0061】
これらの図を参照して、円筒型電池80は、円筒型ケース81と、円筒型ケース81の長手方向両端部に接続された出力端子83と、点線で図示する電極体82と、円筒型ケース81の内部に空気層を設けるように注入された電解液とを備える。一点鎖線は、電解液の液面レベルを示している。図15Aを参照して、円筒型ケース81は、X軸方向の寸法がZ軸方向(径方向)の寸法よりも大きく設定されている。したがって、円筒型電池80を図15Aに図示する第1の姿勢から図15Bに図示する第2の姿勢に回転させることにより、電解液及び電極体82の接触面積が減少し、酸化分解を抑制することができる。また、円筒型電池80を図15Bに図示する第2の姿勢から図15Aに図示する第1の姿勢に回転させることにより、電極体82の大部分が電解液の中に浸漬するため、起電反応に必要な電解液を確保することができる。
【0062】
(変形例4)
上述の実施形態では、捲回状の電極体10について説明したが、本発明はこれに限られるものでなく、他の形状の電極体にも適用することができる。当該他の形状の電極体は、矩形状の正極シート及び負極シートの間にセパレータを介在させた発電シートを一方向に重ねた電極体であってもよい。
【0063】
(変形例5)
上述の実施形態では、(T×n)/Hが最も1に近づくように個数nを設定したが、本発明はこれに限られるものではなく、組電池が含む他の要素のサイズに応じて適宜変更することができる。図16は、当該他の構成に係る組電池100のX矢視図であり、図13Bに対応する図である。上記実施形態と同一の機能を有する構成要素には、同一符合を付している。Z軸方向に隣接する電池2の間にはスペーサ120が位置する。スペーサ120は、Z軸方向の両側端面に複数のリブ121を備える。リブ121は、X軸方向に延びており、Y軸方向に隙間を空けて並設されている。Y軸方向に隣接するリブ121に挟まれた空間によって、冷却風を導通させる冷却通路が形成される。この冷却通路内に冷媒を流すことにより、各電池2が冷却される。
【0064】
ここで、スペーサ120のZ軸方向の寸法をWとしたとき、{nT+(n−1)W}/Hが最も1に近づくように個数nを設定するのが好ましい。これにより、組電池100が回転するのに必要な回転領域の体積を小さくすることができる。つまり、組電池100が電池2以外の付加的な要素を含む場合には、当該付加的要素のサイズを考慮しながら、回転領域が最小となるように個数nを設定するのが好ましい。
【符号の説明】
【0065】
1 姿勢制御装置 2 電池 3 組電池 3A 電池群 4 駆動部
5 制御部 6 IG検出部 41 回転軸 42 伝達機構 43 モータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の寿命改善及び電池の出力低下の抑制に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
電動機により車両の駆動力を得る、電気車両、ハイブリッド車両、燃料電池車両は、バッテリを搭載している。バッテリとして、特許文献1は、二次電池を6個直列に接続したバッテリモジュールを予め定められた間隔をあけて積層した組電池を開示する。二次電池は、ケース内に電解液及び電極体を収容することにより構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−306726号公報
【特許文献2】特開2009−170258号公報
【特許文献3】特開2008−166060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電解液及び電極体が接触することにより電解液の酸化分解が促進され、バッテリの寿命が短くなる。その一方で、電極体の内部に電解液が十分に浸透しない場合には、起電反応が起こりにくくなり、必要な出力を確保することができない。そこで、本願発明は、電池の寿命低下の抑制と電池の出力低下の抑制とを両立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る電池の姿勢制御装置は、(1)ケースの内部に電解液及び電極体を収容した電池と、前記ケースを回転させる駆動部と、前記駆動部の駆動を制御する制御部と、を有し、前記電解液の液面とこの液面に対向する前記ケースの内面との間には隙間が形成されており、前記制御部は、前記駆動部を制御することにより、第1の姿勢と、前記第1の姿勢よりも前記電解液及び前記電極体の接触面積が小さい第2の姿勢との間で前記ケースを回転させることを特徴とする。
【0006】
(2)上記(1)の構成において、前記制御部は、前記電池が動作する動作時間のうち少なくともいずれかのタイミングにおいて前記ケースを前記第1の姿勢に制御し、前記電池が動作しない非動作時間のうち少なくともいずれかのタイミングにおいて前記ケースを前記第2の姿勢に制御することができる。電池が動作する動作時間のうち少なくともいずれかのタイミングでケースを第1の姿勢に制御することにより、電池出力の出力低下を抑制できる。電池が動作しない非動作時間のうち少なくともいずれかのタイミングでケースを第2の姿勢に制御することにより、酸化分解を抑制できる。
【0007】
(3)上記(2)の構成において、前記制御部は、車両のイグニッションスイッチがオンであるときに前記ケースを前記第1の姿勢に制御し、前記イグニッションスイッチがオフであるときに前記ケースを前記第2の姿勢に制御することができる。姿勢制御が煩雑になるのを防止しながら、電池の寿命低下の抑制と電池の出力低下の抑制とを両立することができる。
【0008】
(4)上記(1)乃至(3)の構成において、前記ケースは、第1の内面と、前記第1の内面よりも面積が小さい第2の内面とを備える扁平形成に形成されており、前記第1の姿勢時において、前記第1の内面が水平方向を含む面内に位置し、前記第2の姿勢時において、前記第2の内面が水平方向を含む面内に位置する。第1の姿勢時において、電解液の液面とこの液面に対向する第1の内面との隙間が相対的に小さくなるため、電極体及び電解液の接触面積が増加して、電池の出力低下を抑制することができる。第2の姿勢時において、電解液の液面とこの液面に対向する第2の内面との隙間が相対的に小さくなるため、電極体及び電解液の接触面積が減少して、電池の寿命低下を抑制できる。
【0009】
(5)上記(1)乃至(3)の構成において、前記ケースは、円筒形状であり、前記第1の姿勢時において、前記ケースの径方向が重力方向を向いており、前記第2の姿勢時において、前記ケースの径方向が水平方向を向いている。上記(4)の構成と同様の効果を得ることができる。
【0010】
(6)上記(1)乃至(5)の構成において、前記電池の正極電位が金属リチウムを基準としたときに4.1V以上である。このような高電位の電池において電解液及び電極体が接触することによる酸化分解が特に促進されやすいため、第2の姿勢時における酸化分解を効果的に抑制できる。
【0011】
上記課題を解決するために、本願発明に係る組電池の姿勢制御装置は、(7)ケースの内部に電解液及び電極体を収容した電池を複数接続した組電池と、前記組電池を回転させる駆動部と、前記駆動部の駆動を制御する制御部と、を有し、前記電解液の液面とこの液面に対向する前記ケースの内面との間には隙間が形成されており、前記制御部は、前記駆動部を制御することにより、第1の姿勢と、前記第1の姿勢よりも前記電解液及び前記電極体の接触面積が小さい第2の姿勢との間で前記組電池を回転させることを特徴とする。
【0012】
(8)上記(7)の構成において、前記制御部は、前記組電池が動作する動作時間のうち少なくともいずれかのタイミングにおいて前記組電池を前記第1の姿勢に制御し、前記組電池が動作しない非動作時間のうち少なくともいずれかのタイミングにおいて前記組電池を前記第2の姿勢に制御することができる。組電池が動作する動作時間のうち少なくともいずれかのタイミングでケースを第1の姿勢に制御することにより、組電池の出力低下を抑制できる。組電池が動作しない非動作時間のうち少なくともいずれかのタイミングでケースを第2の姿勢に制御することにより、酸化分解を抑制できる。
【0013】
(9)上記(8)の構成において、前記制御部は、車両のイグニッションスイッチがオンであるときに前記組電池を前記第1の姿勢に制御し、前記イグニッションスイッチがオフであるときに前記組電池を前記第2の姿勢に制御することができる。姿勢制御が煩雑になるのを防止しながら、組電池の寿命低下の抑制と組電池の出力低下の抑制とを両立することができる。
【0014】
(10)上記(7)乃至(9)の構成において、前記ケースは、互いに対向する一対の第1のケース壁面と、前記第1のケース壁面に直交する方向に配置され、互いに対向する一対の第2のケース壁面と、前記第1及び第2のケース壁面に直交する方向に配置され、互いに対向する一対の第3のケース壁面とを有し、前記第2のケース壁面は前記第1のケース壁面よりも面積が大であり、前記第3のケース壁面は前記第2のケース壁面よりも面積が大であり、前記組電池は、前記第3のケース壁面が互いに対向するように前記電池を第1の方向にn個積層した電池群を、前記第1の方向に直交する第2の方向に複数積層することにより、構成されており、前記駆動部は、前記第2の方向視における前記組電池の中心部分に対応した位置に設けられる、前記第2の方向に延びる回転軸部を備え、前記第2の方向視において、前記組電池の縦横の比率が最も1に近づくように、前記nを設定することができる。組電池が回転するときの回転領域の体積を小さくすることができ、スペース効率を高めることができる。
【0015】
(11)上記(10)の構成において、前記第1のケース壁面の短辺及び長辺の長さをそれぞれT及びHとしたときに、(T×n)/Hが最も1に近づくように、前記nを設定することができる。
【0016】
(12)上記(10)又は(11)の構成において、前記nは奇数であり、前記一対の第2のケース壁面のうち一方の前記第2のケース壁面側には、一対の出力端子が位置しており、前記第1の方向に隣接する前記電池は互いに第1の導電部材を介して直列に接続され、前記第2の方向に隣接する前記電池群は互いに第2の導電部材を介して直列に接続されている。導電部材の接続作業を容易化することができる。
【0017】
(13)上記(12)の構成において、前記第1及び前記第2の導電部材のサイズを同じに設定することができる。導電部材のサイズが共有化されることにより、コストを削減できる。
【0018】
(14)上記(7)乃至(13)の構成において、前記電池の正極電位が金属リチウムを基準としたときに4.1V以上である。このような高電位の電池において電解液及び電極体が接触することによる酸化分解が特に促進されやすいため、第2の姿勢時における酸化分解を効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電池の寿命低下の抑制と電池の出力低下の抑制とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の姿勢に制御された電池の斜視図である。
【図2】第2の姿勢に制御された電池の斜視図である。
【図3】図3は、図1の電池をX1−X2で切断した断面図である。
【図4】図2の電池をX3−X4で切断した断面図である。
【図5】電極体の概略図である。
【図6】姿勢制御装置の機能ブロック図である。
【図7】組電池の斜視図である。
【図8】組電池のX矢視図である。
【図9】個数nを5個とした場合の導電板の配置を示した組電池の平面図である。
【図10】個数nを4個とした場合の導電板の配置を示した組電池の平面図である。
【図11】組電池の姿勢を制御する制御方法のフローチャートである。
【図12】酸化分解の程度を評価する評価試験の試験結果である。
【図13A】実施例2の組電池の概略斜視図である。
【図13B】実施例2の組電池のX矢視図である。
【図14A】比較例3の組電池の概略斜視図である。
【図14B】組電池のX矢視図である。
【図15A】第1の姿勢に制御された円筒型電池の断面図である。
【図15B】第2の姿勢に制御された円筒型電池の断面図である。
【図16】変形例5の組電池のX矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1乃至図5を参照しながら、本実施形態に係る姿勢制御装置によって姿勢が制御される電池の構成を説明する。図1及び図2は電池の斜視図であり、図1は電池の姿勢が第1の姿勢に制御された状態を図示しており、図2は電池の姿勢が第2の姿勢に制御された状態を図示している。これらの図において、X−Y面は水平方向を含む面であり、車両のフロアパネルと同一面内に位置する。図3は、図1の電池をX1−X2で切断した断面図である。図4は、図2の電池をX3−X4で切断した断面図である。図5は、電極体の概略図である。X軸、Y軸及びZ軸は互いに直交する異なる三軸である。
【0022】
これらの図を参照して、電池2は、角型ケース40、一対の出力端子50及び電極体10を含む。角型ケース40は、扁平形状に形成されている。ここで、図1を参照して、角型ケース40のX軸方向の長さをDX、Y軸方向の長さをDY、Z軸方向の長さをDZとしたとき、DY>DX>DZなる大小関係を満足する。したがって、図1において、X−Y面に沿って延びる角型ケース40の内面(第1の内面)は、Y−Z面に沿って延びる角型ケース40の内面よりも面積が大きい。
【0023】
角型ケース40の内部には電解液が収容されている。図1乃至図4に図示した一点鎖線は、電解液の液面を示している。電解液の液量は、角型ケース40の内部を満たさない程度に調整されており、電解液の液面とこの液面に対向する角型ケース40の内面との間には隙間が形成されている。
【0024】
一対の出力端子50はY軸方向に並んでおり、一方がプラス電極であり、他方がマイナス電極である。一対の出力端子50は、図示しないタブを介して、電極体10に電気的に接続されている。
【0025】
電極体10は、角型ケース40の内部において巻かれた状態で収容されている。図5を参照して、電極体10は、正極体12と、負極体13と、正極体12及び負極体13の間に配置されたセパレータ14とで構成されている。ここで、正極体12は、集電体と、集電体の表面に形成された正極層とで構成されている。正極層は、集電体の片面又は両面に形成することができる。正極層とは、正極に応じた活物質や導電剤等を含む層である。また、負極体13は、集電体と、集電体の表面に形成された負極層とで構成されている。負極層は、集電体の片面又は両面に形成することができる。負極層とは、負極に応じた活物質や導電剤等を含む層である。
【0026】
ここで、電池2がニッケル−水素電池である場合には、正極層の活物質として、ニッケル酸化物を用い、負極層の活物質として、MmNi(5−x−y−z)AlxMnyCoz(Mm:ミッシュメタル)等の水素吸蔵合金を用いることができる。また、電池2がリチウムイオン電池である場合には、正極層の活物質として、リチウム−遷移金属複合酸化物を用い、負極層の活物質として、カーボンを用いることができる。また、導電剤として、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブを用いることができる。
【0027】
ここで、電池2の起電反応は、電極体10が電解液に浸漬されることにより生じるため、高い電池出力を得るためには、電解液及び電極体10の接触面積を増加させる必要がある。他方、電極体10が電解液に接触することにより、酸化分解が起こり、抵抗が増加するため、電池寿命が短くなる。特に、正極電位が金属リチウムを基準としたときに4.2v以上である場合には、酸化分解が促進される。したがって、電池2の動作状態において電極体10及び電解液の接触面積を増加させ、電池2の非動作状態において電極体10及び電解液の接触面積を減少させることにより、電池出力の維持と電池寿命の向上とを両立することができる。
【0028】
図3及び図4を参照して、本実施形態の角型ケース40は、第1の内面41と、第1の内面41よりも面積が小さい第2の内面42とを備え、第1の内面41が水平方向を含む面内に位置する場合には、電極体10及び電解液の接触面積が大となり(図3参照)、第1の内面42が水平方向を含む面内に位置する場合には電極体10及び電解液の接触面積が小となる(図4参照)。したがって、電池2の動作状態において、電池2を図1及び図3に図示する第1の姿勢に制御し、電池2の非動作状態において、電池2を図2及び図4に図示する第2の姿勢に制御することにより、電池出力の維持と電池寿命の向上とを両立することができる。
【0029】
次に、図6乃至図8を参照しながら、組電池3の姿勢を制御する姿勢制御装置の一実施形態について説明する。ただし、本姿勢制御装置は、1個の電池2の姿勢を制御する際にも適用することができる。図6は、姿勢制御装置の機能ブロック図であり、図7は組電池の斜視図であり、図8は組電池のX矢視図である。
【0030】
これらの図を参照して、姿勢制御装置1は、組電池3、この組電池3を回転させる駆動部4、この駆動部4の駆動を制御する制御部5及びIG検出部6を備える。駆動部4は、モータ43、モータ43の駆動力を伝達する伝達機構42、伝達機構42から駆動力が伝達されることにより回転する回転軸41を備える。モータ43は、ステッピングモータ、振動波モータであってもよい。伝達機構42は、歯車機構、ベルト機構であってもよい。回転軸41は、組電池3の長手方向(X軸方向)の両端部に取り付けられている。なお、組電池3は図示しない拘束バンドで拘束されており、拘束バンドの拘束作用により各電池2の位置ずれが禁止される。したがって、組電池3を構成する各電池2は、一体的に回転する。
【0031】
制御部5は、モータの種類に応じて適宜変更され、その具体的な構成は公知であるため、ここでは一例としてステッピングモータの制御部についてのみ説明する。制御部5は、モータ43のコイルを駆動するモータドライブ回路、モータの回転速度を制御する速度制御回路、モータの回転方向及び動作停止を制御するスタート/ストップ回路などを備える。モータドライブ回路によるコイルの駆動順序は、コントローラで制御してもよい。
【0032】
IG検出部6は、図示しないIG(イグニッション)スイッチの位置を検出し、この検出結果を制御部5に出力する。制御部5は、IGスイッチがオンの場合に、駆動部4を制御することにより、図1に図示する第1の姿勢に組電池2を制御する。制御部5は、IGスイッチがオフである場合に、駆動部4を制御することにより、図2に図示する第2の姿勢に組電池3を制御する。上述の姿勢制御装置の構成によれば、組電池2の姿勢制御を容易に行うことができる。
【0033】
次に、図7及び図8を参照しながら、組電池3の構成について詳細に説明する。組電池3は、複数の電池2(本実施形態では5個)をZ軸方向(第1の方向に)に並べた電池群3AをX軸方向(第2の方向)に複数個積層することにより構成されている。電池2は、一つの電池セル、或いは複数の電池セルを接続した電池モジュールであってもよい。
【0034】
ここで、角型ケース40の壁面をそれぞれ第1のケース壁面2A、第2のケース壁面2B及び第3のケース壁面2Cとしたときに、第2のケース壁面2Bは第1のケース壁面2Aよりも面積が大であり、第3のケース壁面2Cは第2のケース壁面2Bよりも面積が大である。なお、第1のケース壁面2Aは、図1の角型ケース40のX−Z面に沿って延びる壁面に対応し、第2のケース壁面2Bは、図1の角型ケース40のY−Z面に沿って延びる壁面に対応し、第3のケース壁面2Cは、図1の角型ケース40のX−Y面に沿って延びる壁面に対応している。
【0035】
電池群3Aを構成する各電池2は、互いに第3のケース壁面2Cが対向するように並べられており、回転軸41は、X軸方向(第2の方向)視における組電池3の中心部分に対応した位置に設けられ、第1のケース壁面2Aに直交するX軸方向(第2の方向)に延びている。なお、回転軸41は、組電池2をX軸方向から挟み込む一対のエンドプレートに設けてもよい。
【0036】
組電池3は、総プラス端子22A及び総マイナス端子22Bを備える。これらの総プラス端子22A及び総マイナス端子22Bから、車両の走行に必要なエネルギを取り出すことができる。各電池群3Aを構成する各電池2は導電板(第1の導電板)21を介して直接に接続されている。X軸方向に隣接する電池群3Aは導電板(第2の導電板)22を介して直列に接続されている。これらの導電板21、22は各電池2の出力端子50に接続されている。ただし、図7及び図8では、説明を簡略化するために出力端子50を省略している。
【0037】
ここで、図8に図示するように、電池2の幅方向の寸法(Z軸方向の寸法)をT(以下、電池幅Tと称する場合もある)、電池2の高さ方向の寸法(Y軸方向の寸法)をH(以下、電池高さHと称する場合もある)、一つの電池群3Aに含まれる電池2の個数をT(以下、個数nと称する場合もある)としたとき、(T×n)/Hが最も1に近づくように個数nを設定するのが好ましい。例えば、電池高さHが電池幅Tの5倍である場合には、個数nを5個に設定するのが好ましい。なお、隣接する電池2の間に形成される隙間は狭小であるため無視する。
【0038】
上述の構成によれば、組電池3を回転させるために必要な空間を小さくすることができる。したがって、組電池3を車両に搭載する際の搭載位置の自由度が高まり、限られた車両空間を有効に活用することができる。さらには、車両を小型化することもできる。
【0039】
さらに、個数nは偶数ではなく奇数であることがより好ましい。個数nを奇数とすることによる効果を、図9及び図10を参照しながら説明する。図9は、個数nを5個とした場合の導電板21A、21Bの配置を図示する組電池3の平面図である。図10は、個数nを4個とした場合の導電板21A、21Bの配置を図示する組電池3の平面図である。ただし、説明を簡略化するため、説明に必要な組電池3の一部のみを図示する。これらの図において、出力端子50は極性に応じて「+」、「−」で図示されており、以下の説明ではそれぞれプラス端子、マイナス端子と称するものとする。
【0040】
図9を参照して、隣接する電池群3Aを接続する際に、一方の電池群3Aの端部に位置する電池2のプラス端子と他方の電池群3Aの端部に位置する電池2のマイナス端子とがX軸方向において隣り合うため、これらの端子を導電板21Bによって簡単に接続することができる。これに対して、図10に図示する構成では、一方の電池群3Aの端部に位置する電池2のプラス端子と他方の電池群3Aの端部に位置する電池2のマイナス端子との間に当該一方の電池2のプラス端子が位置するため、このプラス端子を避けるように端子の接続を行う必要がある。そのため接続作業が煩雑化する。
【0041】
また、図9に図示する構成によれば、端子のX軸方向の位置を適切な位置に設定することにより、導電板21A及び導電板21Bのサイズを共通化できるため、コストを削減することができる。これに対して、図10に図示する構成では、導電板21A及び導電板21Bのサイズを共通化できないため、図9に図示する構成よりもコストが増大する。したがって、個数nを奇数に設定することにより、接続作業の容易化と、コスト削減とを図ることができる。
【0042】
次に、組電池3の姿勢を制御する制御方法について図11のフローチャートを参照しながら説明する。初期状態において、組電池は、図2に図示する第2の姿勢に制御されているものとする。ステップS101において、制御部5は、IG検出部6の検出結果を受信し、IGスイッチがオンされているか否かを判別する。IGスイッチがオンされている場合には、ステップS102において、駆動部4を制御することにより、組電池3を第2の姿勢から図1に図示する第1の姿勢に回転させる。これにより、各電池2の電極体10が電解液に十分に浸漬するため、必要な電池出力を得ることができる。
【0043】
IGスイッチがオフされている場合には、ステップS103において、組電池3を第2の姿勢に維持する。これにより、各電池2の電極体10が電解液に接触する接触面積を減らすことができるため、酸化分解を抑制することができる。その結果、組電池3の寿命を向上させることができる。特に、電池2の正極電位が金属リチウムを基準としたときに4.2V以上である場合には、酸化分解の抑制効果が高くなる。
【0044】
次に、実施例を示して本発明について詳細に説明する。
(実施例1)
本実施例では、電池2の姿勢を制御することによる効果を検証した。使用した電池2の組成及び製造方法は以下の通りである。
【0045】
まず、正極体12について説明する。正極活物質としてのLiNi0.5Mn1.5O4と、導電剤としてのアセチレンブラックと、結着剤としてのPVDF(ポリフッ化ビニリデン)とを混合した混合物を、N−メチル―2ピロリドン溶剤(NMP)に分散させてスラリー状にし、これを厚さ15μmのアルミ箔からなる集電体の両面に均一に塗布し、正極合剤層を形成し、80℃にて乾燥させた後、ロールプレスにより圧縮成形を行った。
【0046】
負極体13について説明する。負極活物質としての黒鉛粉末と、結着剤としてのPVDF(ポリフッ化ビニリデン)とを混合した混合物を、N−メチル―2ピロリドン溶剤(NMP)に分散させてスラリー状にし、これを厚さ10μmの銅箔からなる集電体の両面に均一に塗布し、80℃にて乾燥させた後、ロールプレスにより圧縮成形を行った。
【0047】
セパレータ14として、厚さ16μmの微多孔性ポリエチレンフィルムを用いた。このセパレータ14を正極体12と負極体13との間に介在させ、捲き回すことにより捲回体を得た。この捲回体を80℃の乾燥温度にて12時間真空状態で乾燥した後、アルミ製の角型ケース40に収容した。電解液として、1mol/LのLIPF6をエチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートの混合溶媒に溶解した溶解液を使用した。なお、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの体積比は3:7に設定した。電解液を角型ケース40に注入して封止することにより電池2を作成した。
【0048】
初期測定として、角型ケース40の傾きを0度(つまり、図1に図示する姿勢)に設定し、SOC(State of charge)を90%にした電池2の25℃でのIV抵抗(10秒)を測定した。満充電時におけるエネルギ容量は5Ahであった。
【0049】
角型ケース40の傾きを90度(つまり、図2に図示する姿勢)にして、SOC(State of charge)を90%にした電池2を60℃で5日間保存した。その後、角型ケース40の傾きを0度にして、SOC(State of charge)を90%にして電池2の25℃でのIV抵抗(10秒)を測定した。試験期間は30日とし、5日おきにIV抵抗(10秒)を測定した。
【0050】
比較例1では、実施例1と同様の電池を使用し、角型ケース40の傾きを常時0度に設定した。比較例2では、実施例1と同様の電池を使用し、角型ケース40の傾きを常時90度に設定した。図12に実施例1、比較例1、2の評価結果を示す。図12の横軸は日数であり、縦軸はIV抵抗の増加率である。
【0051】
角型ケース40の傾きを常時0度に設定した比較例1と比較して、本実施例は、IV抵抗増加率が低く、酸化分解を抑制する効果が高くなることがわかった。角型ケース40の傾きを常時90度に設定した比較例2と比較して、本実施例は、起電反応に必要な電解液の確保ができ、未使用時には酸化分解を抑制する効果が高くなることがわかった。なお、比較例2は、電解液との接触面積は小さく、酸化分解が抑制されるが、逆に起電反応に使用できる面積も小さい。そのため、実施例よりも出力反応の際の電極体の負荷が大きくなり、電池自体の劣化が進行したものと考えられる。
【0052】
(実施例2)
組電池3を回転させたときの回転領域の大きさについて評価した。図13Aは実施例2の組電池3の概略斜視図である。図13Bは組電池3のX矢視図であり、点線で示す円は組電池3が回転するのに必要な回転領域の輪郭を示している。
【0053】
本実施例で用いられる電池2のサイズは、Z軸方向の長さTが1.5cmであり、Y軸方向の長さHが8.0cmであり、X軸方向の長さSが14cmであった。したがって、Z軸方向に並べられる電池2の個数nが1個である場合、(T×n)/Hは0.19であり、個数nが3個である場合、(T×n)/Hは0.56であり、個数nが5個である場合、(T×n)/Hは0.94であり、個数nが7個である場合、(T×n)/Hは1.31である。したがって、(T×n)/Hが最も1に近くなるように、本実施例では個数nを5個に設定した。
【0054】
電池2の総数は15個とした。したがって、セルの総体積は2520cm3である。組電池3の回転半径Rが5.48cm、奥行き(X軸方向の長さ)が42cmであるから、回転領域の体積は3960cm3であった。したがって、セルの総体積に対して3960÷2520=1.57倍の空間を回転領域として確保する必要がある。
【0055】
図14Aは比較例3の組電池3の概略斜視図である。図14Bは組電池3のX矢視図であり、点線で示す円は組電池3が回転するのに必要な回転領域の輪郭を示している。比較例3の組電池3は、実施例1と同じサイズの電池2をX軸方向に15個積層することにより構成した。回転軸41は、電池2の積層方向に直交する方向の端面(Z軸方向の端面)に接続した。組電池3の回転半径Rが11.94cm、奥行き(つまり長さS)が14cmであるから、回転領域の体積は6267cm3であった。したがって、セルの総体積に対して6267÷2520=2.49倍の空間を回転領域として確保する必要がある。
【0056】
実施例2及び比較例3を比較して、(T×n)/Hが1に近づくように電池2の個数nを設定することにより、回転に必要な回転領域の体積が小さくなることが証明された。
【0057】
(変形例1)
【0058】
上述の実施形態では、第1の姿勢から第2の姿勢に電池2を回転する際の回転角度を90度に設定したが、本発明はこれに限られるものではなく、第1の姿勢から第2の姿勢に電池2を回転させることにより、電解液及び電極体10の接触面積が減少すれば、回転角度は何度であってもよい。例えば、図1の図示する姿勢から角型ケース40をX−Y面に対して数度傾けた姿勢を第1の姿勢とし、図2の図示する姿勢から角型ケース40をX−Y面に対して数度傾けた姿勢を第2の姿勢としてもよい。
【0059】
(変形例2)
上述の実施形態では、イグニッションスイッチのオン及びオフに基づき、電池2の姿勢を制御したが、本発明はこれに限られるものではなく、前記電池が動作する動作時間の少なくともいずれかのタイミングで電池2を第1の姿勢(図1参照)に制御し、電池2が動作しない非動作時間の少なくともいずれかのタイミングで電池2を第2の姿勢(図2参照)に制御してもよい。例えば、動力源として組電池3と内燃機関とを兼用するハイブリッド車両において、内燃機関のみの動力により車両が走行している場合には、電池2を第2の姿勢、つまり、電解液及び電極体の接触面積が相対的に小さくなる第2の姿勢に制御してもよい。また、電池2に要求される出力レベルが低い場合には、電池2を第2の姿勢に制御してもよい。本変形例の構成であっても、電池出力の確保と電池寿命の向上とを両立することができる。
【0060】
(変形例3)
上述の実施形態では、角型形状の電池2を回転させる場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、姿勢を変えることにより電解液及び電極体の接触面積が変わる他の形状の電池にも適用することができる。当該他の形状の電池は、いわゆる円筒型形状の電池であってもよい。図15Aは、第1の姿勢に制御された円筒型電池の断面図であり、図15Bは第2の姿勢に制御された円筒型電池の断面図である。
【0061】
これらの図を参照して、円筒型電池80は、円筒型ケース81と、円筒型ケース81の長手方向両端部に接続された出力端子83と、点線で図示する電極体82と、円筒型ケース81の内部に空気層を設けるように注入された電解液とを備える。一点鎖線は、電解液の液面レベルを示している。図15Aを参照して、円筒型ケース81は、X軸方向の寸法がZ軸方向(径方向)の寸法よりも大きく設定されている。したがって、円筒型電池80を図15Aに図示する第1の姿勢から図15Bに図示する第2の姿勢に回転させることにより、電解液及び電極体82の接触面積が減少し、酸化分解を抑制することができる。また、円筒型電池80を図15Bに図示する第2の姿勢から図15Aに図示する第1の姿勢に回転させることにより、電極体82の大部分が電解液の中に浸漬するため、起電反応に必要な電解液を確保することができる。
【0062】
(変形例4)
上述の実施形態では、捲回状の電極体10について説明したが、本発明はこれに限られるものでなく、他の形状の電極体にも適用することができる。当該他の形状の電極体は、矩形状の正極シート及び負極シートの間にセパレータを介在させた発電シートを一方向に重ねた電極体であってもよい。
【0063】
(変形例5)
上述の実施形態では、(T×n)/Hが最も1に近づくように個数nを設定したが、本発明はこれに限られるものではなく、組電池が含む他の要素のサイズに応じて適宜変更することができる。図16は、当該他の構成に係る組電池100のX矢視図であり、図13Bに対応する図である。上記実施形態と同一の機能を有する構成要素には、同一符合を付している。Z軸方向に隣接する電池2の間にはスペーサ120が位置する。スペーサ120は、Z軸方向の両側端面に複数のリブ121を備える。リブ121は、X軸方向に延びており、Y軸方向に隙間を空けて並設されている。Y軸方向に隣接するリブ121に挟まれた空間によって、冷却風を導通させる冷却通路が形成される。この冷却通路内に冷媒を流すことにより、各電池2が冷却される。
【0064】
ここで、スペーサ120のZ軸方向の寸法をWとしたとき、{nT+(n−1)W}/Hが最も1に近づくように個数nを設定するのが好ましい。これにより、組電池100が回転するのに必要な回転領域の体積を小さくすることができる。つまり、組電池100が電池2以外の付加的な要素を含む場合には、当該付加的要素のサイズを考慮しながら、回転領域が最小となるように個数nを設定するのが好ましい。
【符号の説明】
【0065】
1 姿勢制御装置 2 電池 3 組電池 3A 電池群 4 駆動部
5 制御部 6 IG検出部 41 回転軸 42 伝達機構 43 モータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースの内部に電解液及び電極体を収容した電池と、
前記ケースを回転させる駆動部と、
前記駆動部の駆動を制御する制御部と、を有し、
前記電解液の液面とこの液面に対向する前記ケースの内面との間には隙間が形成されており、
前記制御部は、前記駆動部を制御することにより、第1の姿勢と、前記第1の姿勢よりも前記電解液及び前記電極体の接触面積が小さい第2の姿勢との間で前記ケースを回転させることを特徴とする電池の姿勢制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記電池が動作する動作時間のうち少なくともいずれかのタイミングにおいて前記ケースを前記第1の姿勢に制御し、前記電池が動作しない非動作時間のうち少なくともいずれかのタイミングにおいて前記ケースを前記第2の姿勢に制御することを特徴とする請求項1に記載の電池の姿勢制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、車両のイグニッションスイッチがオンであるときに前記ケースを前記第1の姿勢に制御し、前記イグニッションスイッチがオフであるときに前記ケースを前記第2の姿勢に制御することを特徴とする請求項2に記載の電池の姿勢制御装置。
【請求項4】
前記ケースは、第1の内面と、前記第1の内面よりも面積が小さい第2の内面とを備える扁平形成に形成されており、
前記第1の姿勢時において、前記第1の内面が水平方向を含む面内に位置し、前記第2の姿勢時において、前記第2の内面が水平方向を含む面内に位置することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の電池の姿勢制御装置。
【請求項5】
前記ケースは、円筒形状であり、
前記第1の姿勢時において、前記ケースの径方向が重力方向を向いており、前記第2の姿勢時において、前記ケースの径方向が水平方向を向いていることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の電池の姿勢制御装置。
【請求項6】
前記電池の正極電位が金属リチウムを基準としたときに4.1V以上であることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一つに記載の電池の姿勢制御装置。
【請求項7】
ケースの内部に電解液及び電極体を収容した電池を複数接続した組電池と、
前記組電池を回転させる駆動部と、
前記駆動部の駆動を制御する制御部と、を有し、
前記電解液の液面とこの液面に対向する前記ケースの内面との間には隙間が形成されており、
前記制御部は、前記駆動部を制御することにより、第1の姿勢と、前記第1の姿勢よりも前記電解液及び前記電極体の接触面積が小さい第2の姿勢との間で前記組電池を回転させることを特徴とする組電池の姿勢制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記組電池が動作する動作時間のうち少なくともいずれかのタイミングにおいて前記組電池を前記第1の姿勢に制御し、前記組電池が動作しない非動作時間のうち少なくともいずれかのタイミングにおいて前記組電池を前記第2の姿勢に制御することを特徴とする請求項7に記載の組電池の姿勢制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、車両のイグニッションスイッチがオンであるときに前記組電池を前記第1の姿勢に制御し、前記イグニッションスイッチがオフであるときに前記組電池を前記第2の姿勢に制御することを特徴とする請求項8に記載の組電池の姿勢制御装置。
【請求項10】
前記ケースは、互いに対向する一対の第1のケース壁面と、前記第1のケース壁面に直交する方向に配置され、互いに対向する一対の第2のケース壁面と、前記第1及び第2のケース壁面に直交する方向に配置され、互いに対向する一対の第3のケース壁面とを有し、前記第2のケース壁面は前記第1のケース壁面よりも面積が大であり、前記第3のケース壁面は前記第2のケース壁面よりも面積が大であり、
前記組電池は、前記第3のケース壁面が互いに対向するように前記電池を第1の方向にn個積層した電池群を、前記第1の方向に直交する第2の方向に複数積層することにより、構成されており、
前記駆動部は、前記第2の方向視における前記組電池の中心部分に対応した位置に設けられる、前記第2の方向に延びる回転軸部を備え、
前記第2の方向視において、前記組電池の縦横の比率が最も1に近づくように、前記nを設定したことを特徴とする請求項7乃至9のうちいずれか一つに記載の組電池の姿勢制御装置。
【請求項11】
前記第1のケース壁面の短辺及び長辺の長さをそれぞれT及びHとしたときに、(T×n)/Hが最も1に近づくように、前記nを設定したことを特徴とする請求項10に記載の組電池の姿勢制御装置。
【請求項12】
前記nは奇数であり、
前記一対の第2のケース壁面のうち一方の前記第2のケースの壁面側には、一対の出力端子が位置しており、
前記第1の方向に隣接する前記電池は互いに第1の導電部材を介して直列に接続され、
前記第2の方向に隣接する前記電池群は互いに第2の導電部材を介して直列に接続されていることを特徴とする請求項10又は11に記載の組電池の姿勢制御装置。
【請求項13】
前記第1及び前記第2の導電部材は互いにサイズが同じであることを特徴とする請求項12に記載の組電池の姿勢制御装置。
【請求項14】
前記電池の正極電位が金属リチウムを基準としたときに4.1V以上であることを特徴とする請求項7乃至13のうちいずれか一つに記載の組電池の姿勢制御装置。
【請求項1】
ケースの内部に電解液及び電極体を収容した電池と、
前記ケースを回転させる駆動部と、
前記駆動部の駆動を制御する制御部と、を有し、
前記電解液の液面とこの液面に対向する前記ケースの内面との間には隙間が形成されており、
前記制御部は、前記駆動部を制御することにより、第1の姿勢と、前記第1の姿勢よりも前記電解液及び前記電極体の接触面積が小さい第2の姿勢との間で前記ケースを回転させることを特徴とする電池の姿勢制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記電池が動作する動作時間のうち少なくともいずれかのタイミングにおいて前記ケースを前記第1の姿勢に制御し、前記電池が動作しない非動作時間のうち少なくともいずれかのタイミングにおいて前記ケースを前記第2の姿勢に制御することを特徴とする請求項1に記載の電池の姿勢制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、車両のイグニッションスイッチがオンであるときに前記ケースを前記第1の姿勢に制御し、前記イグニッションスイッチがオフであるときに前記ケースを前記第2の姿勢に制御することを特徴とする請求項2に記載の電池の姿勢制御装置。
【請求項4】
前記ケースは、第1の内面と、前記第1の内面よりも面積が小さい第2の内面とを備える扁平形成に形成されており、
前記第1の姿勢時において、前記第1の内面が水平方向を含む面内に位置し、前記第2の姿勢時において、前記第2の内面が水平方向を含む面内に位置することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の電池の姿勢制御装置。
【請求項5】
前記ケースは、円筒形状であり、
前記第1の姿勢時において、前記ケースの径方向が重力方向を向いており、前記第2の姿勢時において、前記ケースの径方向が水平方向を向いていることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の電池の姿勢制御装置。
【請求項6】
前記電池の正極電位が金属リチウムを基準としたときに4.1V以上であることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一つに記載の電池の姿勢制御装置。
【請求項7】
ケースの内部に電解液及び電極体を収容した電池を複数接続した組電池と、
前記組電池を回転させる駆動部と、
前記駆動部の駆動を制御する制御部と、を有し、
前記電解液の液面とこの液面に対向する前記ケースの内面との間には隙間が形成されており、
前記制御部は、前記駆動部を制御することにより、第1の姿勢と、前記第1の姿勢よりも前記電解液及び前記電極体の接触面積が小さい第2の姿勢との間で前記組電池を回転させることを特徴とする組電池の姿勢制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記組電池が動作する動作時間のうち少なくともいずれかのタイミングにおいて前記組電池を前記第1の姿勢に制御し、前記組電池が動作しない非動作時間のうち少なくともいずれかのタイミングにおいて前記組電池を前記第2の姿勢に制御することを特徴とする請求項7に記載の組電池の姿勢制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、車両のイグニッションスイッチがオンであるときに前記組電池を前記第1の姿勢に制御し、前記イグニッションスイッチがオフであるときに前記組電池を前記第2の姿勢に制御することを特徴とする請求項8に記載の組電池の姿勢制御装置。
【請求項10】
前記ケースは、互いに対向する一対の第1のケース壁面と、前記第1のケース壁面に直交する方向に配置され、互いに対向する一対の第2のケース壁面と、前記第1及び第2のケース壁面に直交する方向に配置され、互いに対向する一対の第3のケース壁面とを有し、前記第2のケース壁面は前記第1のケース壁面よりも面積が大であり、前記第3のケース壁面は前記第2のケース壁面よりも面積が大であり、
前記組電池は、前記第3のケース壁面が互いに対向するように前記電池を第1の方向にn個積層した電池群を、前記第1の方向に直交する第2の方向に複数積層することにより、構成されており、
前記駆動部は、前記第2の方向視における前記組電池の中心部分に対応した位置に設けられる、前記第2の方向に延びる回転軸部を備え、
前記第2の方向視において、前記組電池の縦横の比率が最も1に近づくように、前記nを設定したことを特徴とする請求項7乃至9のうちいずれか一つに記載の組電池の姿勢制御装置。
【請求項11】
前記第1のケース壁面の短辺及び長辺の長さをそれぞれT及びHとしたときに、(T×n)/Hが最も1に近づくように、前記nを設定したことを特徴とする請求項10に記載の組電池の姿勢制御装置。
【請求項12】
前記nは奇数であり、
前記一対の第2のケース壁面のうち一方の前記第2のケースの壁面側には、一対の出力端子が位置しており、
前記第1の方向に隣接する前記電池は互いに第1の導電部材を介して直列に接続され、
前記第2の方向に隣接する前記電池群は互いに第2の導電部材を介して直列に接続されていることを特徴とする請求項10又は11に記載の組電池の姿勢制御装置。
【請求項13】
前記第1及び前記第2の導電部材は互いにサイズが同じであることを特徴とする請求項12に記載の組電池の姿勢制御装置。
【請求項14】
前記電池の正極電位が金属リチウムを基準としたときに4.1V以上であることを特徴とする請求項7乃至13のうちいずれか一つに記載の組電池の姿勢制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【公開番号】特開2012−212534(P2012−212534A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76746(P2011−76746)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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