説明

電波吸収体用積層体および電波吸収体

【課題】 反射層上の誘電体層に貼り合わせて電波吸収体とした際に電波吸収性能が充分に高くなる電波吸収体用積層体を提供する。
【解決手段】 本発明の電波吸収体用積層体は、導電性物質およびバインダを主成分として含有する低抵抗層と接着層とを有し、低抵抗層と接着層とが直接接触しないように離間されている。本発明の電波吸収体用積層体は、シート基材と、シート基材の片面に積層され、導電性物質およびバインダを主成分として含有する低抵抗層と、シート基材のもう一方の片面に積層されている接着層とを有することが好ましい。あるいは、本発明の電波吸収体用積層体10aは、シート基材11の片面に、導電性物質およびバインダを主成分として含有する低抵抗層12と、バリア層13と、接着層14とが順次積層されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波吸収体を構成する電波吸収体用積層体に関する。さらには、その電波吸収体用積層体を用いた電波吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、室内における無線LANが普及しつつある。無線LANにおいては、壁、天井、床(以下、壁等という。)における電波の反射波によって無線LANで通信する機器が誤作動を起こす可能性がある。そこで、壁等に電磁波吸収体を設けて電波の反射を防止する対策が講じられる。電波吸収体は、電波の吸収方法により、磁性体粉末混合型、導電体粉末混合型、λ/4型の3つに分類される。
これらのうち、λ/4型電波吸収体は、反射層と誘電体層と低抵抗層とを有し、低抵抗層の表面で反射した表面反射波と反射層で反射した内部反射波とが逆位相で同振幅になるようにインピーダンス整合されたものである。この電波吸収体によれば、表面反射波と内部反射波とが干渉しあうことにより、反射波を減衰させることができる。
【0003】
従来、λ/4型電波吸収体の低抵抗層としては、酸化インジウム−酸化すず膜(以下、ITO膜という。)が使用されていた。しかし、ITO膜は高価であるし、可撓性が低いために誘電体層に貼り付ける際の施工性が低いという問題があった。
そこで、低抵抗層として導電性物質とバインダとを含む導電性塗料から形成された塗膜を使用した電波吸収体が提案されている(非特許文献1参照。)。導電性塗料とは、導電性物質およびバインダを主成分として含む塗料のことであり、その導電性塗料から形成された塗膜は安価で、可撓性が高いため、ITO膜の欠点を克服できる。
【非特許文献1】大塚健二郎、外3名、「電子情報通信学会論文誌 B−II」、電子情報通信学会発行、J78−B−II巻、1995年、p.1〜8
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に記載された電波吸収体は、反射層と誘電体層とからなる建築材を壁等として設置し、建設現場にて、粘着性能に優れたアクリル系粘着剤等を誘電体層または低抵抗層に塗布し、誘電体層と低抵抗層とを貼り合わせることで得られる。しかし、このようにして得られた電波吸収体は電波吸収性能が不充分であった。これは、低抵抗層と接着層とが直接接触した場合、低抵抗層の成分および接着層の成分が互いに移行して低抵抗層の表面抵抗値が高くなるためであると推測される。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、反射層上の誘電体層に貼り合わせて電波吸収体とした際に電波吸収性能が充分に高くなる電波吸収体用積層体を提供することを目的とする。さらには、電波吸収性能に優れた電波吸収体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電波吸収体用積層体は、導電性物質およびバインダを主成分として含有する低抵抗層と接着層とを有し、低抵抗層と接着層とが直接接触しないように離間されていることを特徴とする。
本発明の電波吸収体用積層体は、シート基材と、シート基材の片面に積層され、導電性物質およびバインダを主成分として含有する低抵抗層と、シート基材のもう一方の片面に積層されている接着層とを有するものであることが好ましい。
あるいは、本発明の電波吸収体用積層体は、シート基材の片面に、導電性物質およびバインダを主成分として含有する低抵抗層と、バリア層と、接着層とが順次積層されているものであることが好ましい。
本発明の電波吸収体用積層体においては、バリア層が防湿層であることが好ましい。
本発明の電波吸収体用積層体は、接着層がアクリル系粘着剤からなることが好ましい。
本発明の電波吸収体は、上述した電波吸収体用積層体と、該電波吸収体用積層体の接着層側に順次積層された誘電体層と反射層とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の電波吸収体用積層体は、反射層上の誘電体層に貼り合わせて電波吸収体とした際の電波吸収性能が充分に高い。
本発明の電波吸収体は、電波吸収性能に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
<第1の実施形態>
(電波吸収体用積層体)
本発明の第1の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態の電波吸収体用積層体を示す。この電波吸収体10aは、シート基材11の片面に、低抵抗層12とバリア層13と接着層14とが順次積層されているものである。
【0008】
[シート基材]
シート基材11としては、木材パルプを主成分とする上質紙・中質紙や、微塗工紙、コート紙、アート紙などの塗工紙を使用できる。また、シート基材11として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等のプラスチックフィルム、またはこれらのプラスチックを紙の片面または両面にラミネートしたラミネート紙、合成紙を使用できる。
シート基材11の低抵抗層12側と反対側の面には模様となる印刷が施されていてもよい。
【0009】
これらのシート基材11の中でも塗工紙が好ましい。ここで、塗工紙とは、上質紙や中質紙などの紙基材と、紙基材の少なくとも片面に形成され、顔料を主成分とし、バインダ、助剤などが含まれる塗工層とを有するものである。塗工紙を構成する紙基材は可撓性に優れる上に安価であるから、シート基材11が塗工紙である場合には、電波吸収体用積層体10aの可撓性も高くでき、安価にできる。また、低抵抗層12を形成する際に、導電性塗料を塗工層に塗工することで、紙基材内への導電性塗料の浸透を防ぐことができる。したがって、均一な低抵抗層12を形成でき、電波吸収性能を高くすることができる。
【0010】
[低抵抗層]
低抵抗層12は、導電性物質およびバインダを主成分として含有する層である。低抵抗層12は、導電性物質とバインダとを主成分とし、導電性物質が全固形分中の50質量%以上を占めることが好ましい。
導電性物質としては、例えば、カーボンブラック、金属粉末、炭素繊維、金属繊維、金属酸化物粉末などが挙げられる。
さらに、カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のオイルファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラックなどが挙げられる。
金属粉末としては、銅、銀、ニッケルなどの粉末が挙げられる。
炭素繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維などが挙げられる。
金属繊維としては、アルミニウム、ニッケル、ステンレスなどの繊維が挙げられる。
金属酸化物粉末としては、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウムなどが挙げられる。
これらの中でも、カーボンブラックが好ましく、さらにカーボンブラックの中でも、ケッチェンブラックが好ましい。ケッチェンブラックは中空で比重が小さいため、同一添加質量の場合、他のカーボンブラックに比べて嵩高になり、その結果、カーボン粒子同士の接触点が多くなるため、導電性をより高くすることができる。
【0011】
バインダとしては特に制限されず、例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、メラミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0012】
低抵抗層12の表面抵抗値は300〜450Ω/□が好ましく、実用上、充分に満足できる電波吸収量が得られることからは、340〜420Ω/□であることがより好ましい。この中でも、電波吸収性能を高くするためには、理論的に表面抵抗値が377Ω/□であることが最も好ましい。その抵抗値にするための導電性物質としては、カーボンブラック、金属粉末、炭素繊維、金属繊維、金属酸化物粉末などのいずれの材料であってもよい。しかし、例えば、金属粉末や金属酸化物粉末のような金属系材料の場合、固有抵抗値自体が非常に低いため、表面抵抗値を377Ω/□にするには低抵抗層を極薄膜にせざるを得ず、安定した加工が難しくなったり、金属材料の経時酸化による抵抗値変化といった問題を有する。これに対し、カーボンブラックを使用すれば、低抵抗層12を極薄膜にしなくても、表面抵抗値を377Ω/□にすることができる。また、低抵抗層12のバインダはポリエステルであることが好ましいが、その理由については定かではない。表面抵抗値はバインダ中の導電性物質の分散性も大きく影響することがわかっており、ポリエステルを用いれば所望の表面抵抗値377Ω/□にするのに適した分散性が得られるものと推定される。
【0013】
この低抵抗層12は、シート基材11上に、導電性物質とバインダとを含有する導電性塗料を塗工し、乾燥することで形成される。その際に使用される塗工機としては、例えば、リバースロールコーター、ナイフコーター、バーコーター、スロットダイコーター、エアーナイフコーター、リバースグラビアコーター、バリオグラビアコーター、カーテンコーターなどが挙げられる。また、乾燥機としては、例えば、熱風乾燥機、赤外線乾燥機、真空乾燥機などが挙げられる。
【0014】
[バリア層]
バリア層13の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリエステル、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの各種プラスチック膜が挙げられる。また、これらのプラスチック膜を紙に片面または両面にラミネートしたラミネート紙、合成紙などが挙げられる。さらには、上質紙や中質紙などの紙基材であってもよい。中でも、直接シート基材11に溶融押出ラミネート加工できる樹脂の膜が好ましく、さらには透湿度の低い樹脂の膜がより好ましい。溶融押出ラミネート加工が可能で透湿度の低い樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。なお、各種プラスチック膜は電波吸収性能を阻害しない範囲で適宜方法により積層させることができる。
バリア層13の厚さは10〜15μmであることが好ましい。
このバリア層13を低抵抗層12と接着層14との間に設けることにより、低抵抗層12の成分と接着層14の成分とが互いに移行することを防ぐため、低抵抗層12の表面抵抗値の上昇を抑えることができる。そして、低抵抗層12の表面抵抗値の上昇を抑えた結果、この電波吸収体用積層体10aを用いた電波吸収体の電波吸収性能を高くできると推測される。
【0015】
バリア層13は防湿層であることが好ましい。防湿層としては、上記のプラスチック膜、ラミネート紙、合成紙が挙げられる。バリア層13が防湿層であれば、反射層上の誘電体層に電波吸収体用積層体10aの接着層14を貼り合わせて電波吸収体とした際に、誘電体層への水分の侵入を防ぐことができる。水の誘電率は大きいため、誘電体層への水分の侵入を防ぐことにより、誘電率の変動を抑えることができ、安定した電波吸収性能を確保できる。
【0016】
[接着層]
接着層14は、接着性を有する層であり、各種接着剤または粘着剤の塗膜からなる。
接着剤としては、例えば、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白、澱粉や酸化澱粉等の澱粉類、ポリビニルアルコール、カチオン性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリル系重合体、酢酸ビニル系重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体のラテックスまたは溶液、水性ポリウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂等が挙げられる。
粘着剤としては、例えば、各種公知のゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤などから適宜選択されるが、粘着性能の観点から、ポリアクリル酸エステルを主成分とするアクリル系粘着剤が好ましい。また、粘着剤は、水系、エマルジョン系、溶剤系、無溶剤系、ホットメルト系のいずれであってもよいが、粘着性能の点から、エマルジョン系、溶剤系が好ましい。
粘着剤は、接着強度に応じて強粘着タイプ、汎用タイプ、弱粘着タイプに分類され、用途に応じた接着レベルのものを適宜選択できる。
【0017】
また、接着層14は導電性物質を含有することが好ましい。接着層14が導電性物質を含有すれば、低抵抗層12と接着層14とが導電性を有することになり、表面抵抗値を377Ω/□に近づけることができる。したがって、電波吸収体用積層体10aを反射層上の誘電体層に貼り合わせて電波吸収体とした際の電波吸収性能をより高くできる。
【0018】
接着層14を接着剤で形成する場合には、施工現場にて接着剤をバリア層13に塗工することで接着層14を形成し、その後、速やかに誘電体層に貼り合わせる。また、接着剤を粘着剤で形成する場合には、施工現場にて接着層14を形成してもよいが、施工現場以外の場所で粘着剤をバリア層13に塗工して形成してもよい。このように、施工現場以外の場所で粘着剤を塗工して接着層14を形成した場合には、接着層14に剥離シートを貼り合わせておき、シール状にすることが好ましい。このように、電波吸収体用積層体10aをシール状にしておけば、施工性が向上する。
【0019】
ここで、剥離シートとは基材上に剥離剤が塗工されたものである。剥離シートにおける基材としては、例えば、グラシン紙、上質紙、コーテッド紙、クレーコート紙、クラフト紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等のプラスチックフィルム、またはこれらのプラスチックを紙に片面または両面にラミネートしたラミネート紙、金属箔、または金属箔と紙、プラスチックフィルムとの貼り合わせ品等が挙げられる。
また、剥離剤としては、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アミノアルキド樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられ、中でも、剥離性に優れることから、シリコーン樹脂が好ましい。これら剥離剤は、エマルジョンや溶剤型または無溶剤型として使用される。
【0020】
以上説明した第1の実施形態の電波吸収体用積層体10aでは、低抵抗層12と接着層14とがバリア層13によって離間されているため、低抵抗層12の成分および接着層14の成分とが互いに移行することが防止されている。したがって、低抵抗層12の表面抵抗値の上昇を防止でき、反射層上の誘電体層に電波吸収体用積層体10aの接着層14を貼り合わせて電波吸収体とした際の電波吸収性能を高くできる。
また、この電波吸収体用積層体10aは低抵抗層12がシート基材11で被覆されているため、低抵抗層12の損傷が防がれている。低抵抗層12の損傷が防がれていれば、使用時における電波吸収性能の低下を防ぐことができる。
【0021】
(電波吸収体)
図2に、本実施形態における電波吸収体を示す。この電波吸収体1は、上述した電波吸収体用積層体10aと、電波吸収体用積層体10aの接着層14側に順次積層された誘電体層20と反射層30とを有するものである。
【0022】
誘電体層20としては、熱可塑性樹脂の層、熱硬化性樹脂の層、無機化合物の層、ベニア板等の木製の板などが使用される。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。
熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂は発泡していても構わない。
無機化合物としては、例えば、石膏、ケイ酸カルシウム、セメント、コンクリートなどが挙げられる。
これらの中でも、建築材として好適であることから、石膏、ケイ酸カルシウム、ベニア板、発泡ポリスチレン(発泡スチロール)が好ましく、さらには、不燃性を確保できる点で、石膏、ケイ酸カルシウムが好ましい。
誘電体層20の厚さは、吸収しようとする電波の周波数に応じて適宜選択される。
【0023】
反射層30としては、金属の板または箔、導電性物質を含有する層などが挙げられる。金属としては、銅、アルミニウム、鉄などが挙げられるが、安価である点でアルミニウムが好ましい。
【0024】
以上説明した電波吸収体1は、低抵抗層12と接着層14とがバリア層13によって離間された電波吸収体用積層体10aを、反射層30を有する誘電体層20に貼り合わせたものであるから、電波吸収性能に優れる。
【0025】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について説明する。
図3に、本実施形態の電波吸収体用積層体を示す。この電波吸収体用積層体10bは、シート基材11と、シート基材11の片面に積層されている低抵抗層12と、シート基材11のもう一方の片面に積層されている接着層14とを有するものである。
図4に、本実施形態における電波吸収体を示す。この電波吸収体2は、上述した電波吸収体用積層体10bと、電波吸収体用積層体10bの接着層14側に順次積層された誘電体層20と反射層30とを有するものである。
なお、本実施形態において、第1の実施形態と同じ構成のものは同一の符号を付して説明を省略する。
【0026】
本実施形態においても、接着層14を接着剤で形成する場合には、施工現場にて接着剤をシート基材11に塗工することで接着層14を形成し、その後、速やかに誘電体層に貼り合わせる。また、接着剤を粘着剤で形成する場合には、施工現場にて接着層14を形成してもよいが、施工現場以外の場所で粘着剤をシート基材11に塗工して形成してもよい。その場合、接着層14に剥離シートを貼り合わせてもよい。
【0027】
第2の実施形態の電波吸収体用積層体10bでは、低抵抗層12と接着層14とがシート基材11によって離間されているため、低抵抗層12の成分および接着層14の成分とが互いに移行することが防止されている。したがって、低抵抗層12の表面抵抗値の上昇を防止でき、反射層30上の誘電体層20に電波吸収体用積層体10bの接着層14を貼り合わせて電波吸収体2とした際の電波吸収性能を高くできる。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
塗工紙(王子製紙社製、OKトップコート、坪量;84.9g/m)の塗工層に、カーボンブラックとポリウレタンとを含有する導電性塗料(東洋インキ製造社製KB1840A)を、乾燥塗工量が30g/mになるように塗工、乾燥して低抵抗層を形成した。次いで、その低抵抗層上に溶融押出ラミネート法により厚みが12μmになるようにポリエチレン膜を積層し、バリア層とした。次いで、そのポリエチレン膜上に、アクリル系溶剤型粘着剤(東洋インキ製造社製BPS4891/BHS8515=100/4)を、乾燥塗工量が30g/mになるように塗工し、乾燥して接着層を形成した。さらに、接着層を剥離シートで被覆して、電波吸収体用積層体を得た。
次いで、この電波吸収体用積層体から剥離シートを剥離し、これにより露出した接着層を厚さ9.5mmの石膏ボード(誘電体層)の片面に貼り付け、石膏ボードの他方の面に厚さ12μmのアルミニウム箔を貼り付けて電波吸収体を得た。
なお、石膏ボードの厚さが9.5mmの電波吸収体は、無線LAN等に利用される5.2GHzの電波を吸収することを目的としたものである。
【0029】
(実施例2)
誘電体層である石膏ボードの厚さを19mmにしたこと以外は実施例1と同様にして電波吸収体を得た。
なお、石膏ボードの厚さが19mmの電波吸収体は、無線LAN等に利用される2.45GHzの電波を吸収することを目的としたものである。
【0030】
(比較例1)
実施例1において、低抵抗層の上に、バリア層を積層せずにアクリル系粘着剤を塗工し、接着層を形成したこと以外は実施例1と同様にして電波吸収体を得た。
(比較例2)
誘電体層である石膏ボードの厚さを19.0mmにしたこと以外は比較例1と同様にして電波吸収体を得た。
【0031】
(実施例3)
塗工紙(王子製紙社製、OKトップコート、坪量;84.9g/m)の塗工層に、カーボンブラックとポリウレタンとを含有する導電性塗料(東洋インキ製造社製KB1840A)を、乾燥塗工量が30g/mになるように塗工、乾燥して低抵抗層を形成した。次いで、上記塗工紙における塗工層側と反対側の面にアクリル系溶剤型粘着剤(東洋インキ製造社製BPS4891/BHS8515=100/4)を、乾燥塗工量が30g/mになるように塗工し、乾燥して接着層を形成した。さらに、接着層を剥離シートで被覆して、電波吸収体用積層体を得た。
次いで、この電波吸収体用積層体から剥離シートを剥離し、これにより露出した接着層を厚さ9.5mmの石膏ボード(誘電体層)の片面に貼り付け、石膏ボードの他方の面に厚さ12μmのアルミニウム箔を貼り付けて電波吸収体を得た。
【0032】
(実施例4)
誘電体層である石膏ボードの厚さを19mmにしたこと以外は実施例3と同様にして電波吸収体を得た。
【0033】
実施例1,2および比較例1,2の電波吸収体について、反射電力法により周波数に対する電波吸収量を測定した。その結果を図5および6に示す。また、実施例3,4の電波吸収体についても同様に測定した。
反射電力法による電波吸収量の測定は、電波暗室中に設置された測定装置(図7参照)を用いて行った。測定装置50は、電波を発する発振器51と、発振器51に取り付けられた送信アンテナ52と、電波を観測するスペクトラムアナライザ53と、スペクトラムアナライザ53に取り付けられた受信アンテナ54と、発振器51およびスペクトラムアナライザ53に接続されたコントローラ55と、電波吸収体またはブランク試験用金属板を取り付ける支持台56を有して構成されるものである。送信アンテナ52と受信アンテナ54との中心間隔を25cm、送信アンテナ52および受信アンテナ54と支持台56との間隔を2.5mとした。
そして、この測定装置50を用い、まず、支持台56に、ブランク試験用金属板を取り付け、送信アンテナ52から電波をブランク試験用金属板に向けて送信し、該金属板で反射した電波を受信アンテナで受信した。その際、コントローラ55により電波の周波数を一定間隔で変化させた。次いで、支持台56に電波吸収体を取り付け、送信アンテナ52から電波を電波吸収体に向けて送信し、該電波吸収体で反射した電波を受信アンテナで受信した。その際、コントローラ55により電波の周波数を一定間隔で変化させた。そして、電波吸収体での反射電力測定結果から金属板での反射電力測定結果を差し引いて電波吸収量を求めた。
【0034】
図5および図6に示すように、バリア層を有さない比較例1の電波吸収体と比較して、低抵抗層と接着層とがバリア層によって離間されている実施例1の電波吸収体は、電波吸収性能に優れていた。さらに、その傾向は、石膏ボードの厚みを変えて吸収させる周波数を変更しても同じであった。また、実施例3,4の電波吸収体も、実施例1,2と同程度に電波吸収性能が優れていた。
さらに、実施例1,2では、電波吸収体用積層体を粘着加工し、これを誘電体層に貼り合わせて電波吸収体を得たので、施工性に優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施形態における電波吸収体用積層体を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における電波吸収体を示す断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態における電波吸収体用積層体を示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態における電波吸収体を示す断面図である。
【図5】実施例1および比較例1の電波吸収体における周波数に対する電波吸収量を示すグラフである。
【図6】実施例2および比較例2の電波吸収体における周波数に対する電波吸収量を示すグラフである。
【図7】電波吸収量を測定する装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0036】
1,2 電波吸収体
10a,10b 電波吸収体用積層体
11 シート基材
12 低抵抗層
13 バリア層
14 接着層
20 誘電体層
30 反射層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性物質およびバインダを主成分として含有する低抵抗層と接着層とを有し、低抵抗層と接着層とが離間されていることを特徴とする電波吸収体用積層体。
【請求項2】
シート基材と、シート基材の片面に積層され、導電性物質およびバインダを主成分として含有する低抵抗層と、シート基材のもう一方の片面に積層されている接着層とを有する請求項1に記載の電波吸収体用積層体。
【請求項3】
シート基材の片面に、導電性物質およびバインダを主成分として含有する低抵抗層と、バリア層と、接着層とが順次積層されている請求項1に記載の電波吸収体用積層体。
【請求項4】
バリア層が防湿層である請求項3に記載の電波吸収体用積層体。
【請求項5】
接着層がアクリル系粘着剤からなる請求項1〜4のいずれかに記載の電波吸収体用積層体。
【請求項6】
請求項1〜5に記載された電波吸収体用積層体と、該電波吸収体用積層体の接着層側に順次積層された誘電体層と反射層とを有することを特徴とする電波吸収体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−120836(P2006−120836A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−306754(P2004−306754)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(595178748)王子タック株式会社 (76)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(000160359)吉野石膏株式会社 (48)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】