説明

電流供給回路およびブレーキ制御装置

【課題】異常の発生したレギュレータを検出する。
【解決手段】電流供給回路110は、バッテリ300とシミュレータカット弁SCSSの間に並列に配置された第1レギュレータ214および第2レギュレータ224と、並列に配置された第1電流モニタ215および第2電流モニタ225と、第1レギュレータ214の出力電流を制御する第1制御部216と、第2レギュレータ224の出力電流を制御する第2制御部226とを備える。第1制御部216および第2制御部226は、第1レギュレータ214および第2レギュレータ224の異常が推定された場合、第1レギュレータに所定の第1電流パターンを出力させ、第2レギュレータ224に第1電流パターンと異なる所定の第2電流パターンを出力させる。そして、第1電流モニタ215および第2電流モニタ225において検出された電流パターンに基づいて、異常が発生したレギュレータを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給対象物に対して複数のレギュレータを用いて電流を供給可能な電流供給回路、および該電流供給回路を用いたブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液圧回路を介した複数のホイールシリンダへのブレーキ液の供給をアクチュエータにより電子制御して、各ホイールシリンダに供給する液圧を調整する所謂ブレーキバイワイヤ方式のブレーキ制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のブレーキ制御装置は、ブレーキ液を貯留したマスタリザーバと各ホイールシリンダとをつなぐ4つに分岐された主管路と、分岐された主管路のそれぞれに設けられ、マスタリザーバに貯留されたブレーキ液を吸入・吐出して各ホイールシリンダを加圧するポンプと、を備えている。そして、このブレーキ制御装置は、右前輪用ホイールシリンダおよび左後輪用ホイールシリンダに主管路を介してブレーキ液を供給する第1配管系統と、左前輪用ホイールシリンダおよび右後輪用ホイールシリンダに主管路を介してブレーキ液を供給する第2配管系統とを備えている。さらに、このブレーキ制御装置は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダルが進入可能に設けられたマスタシリンダと左右前輪のホイールシリンダとをつなぐ補助管路を備えている。また、補助管路には、ブレーキペダルの操作によってマスタシリンダから送出されたブレーキ液を収容して、ブレーキペダルの操作に応じた反力を発生させるストロークシミュレータを備えている。また、マスタシリンダとストロークシミュレータとを連通する流路の中途に設けられたシミュレータカット弁を備えている。
【0004】
このような構成において、ブレーキペダルが踏み込まれると、ペダル踏力に応じたホイールシリンダ圧が算出され、算出されたホイールシリンダ圧となるように、第1配管系統および第2配管系統によってマスタリザーバから各ホイールシリンダにブレーキ液が供給される。また、ホイールシリンダ圧の上昇に応じたブレーキペダルの操作時の抵抗、つまりブレーキフィーリングを運転者に与えるためにストロークシミュレータが用いられる。具体的には、ブレーキペダルが踏み込まれることで所定量のブレーキ液がマスタシリンダからストロークシミュレータに移動し、ストロークシミュレータによってブレーキペダルの踏み込みに応じた反力が生成される。これにより、ホイールシリンダ圧の上昇に応じた抵抗感をブレーキペダルに提供して運転者に良好なブレーキフィーリングを与えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−137258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のシミュレータカット弁は、通常、規定の制御電流の供給を受けて開弁状態とされ、非通電状態にある場合に閉弁状態とされる常閉型電磁制御弁であり、ブレーキバイワイヤ方式の制動力制御を実施している間は、シミュレータカット弁の通電状態を維持する必要がある。よってフェールセーフの観点から、シミュレータカット弁への電流の供給は、複数(例えば2つ)の系統により行われることが好ましい。
【0007】
例えば2つの系統によりシミュレータカット弁に通電する場合、シミュレータカット弁に対して並列に第1レギュレータおよび第2レギュレータを設けて通電する手法が考えられる。この場合、シミュレータカット弁の下流に第1電流モニタおよび第2電流モニタを並列に設け、第1電流モニタの検出値に基づいて第1レギュレータが、第2電流モニタの検出値に基づいて第2レギュレータが制御される。
【0008】
このような電流供給回路において、例えば第1レギュレータに異常が発生した場合、第1レギュレータの制御に用いている第1電流モニタにも第2レギュレータからシミュレータカット弁に通電された電流が流れる。従って、第1電流モニタおよび第2電流モニタの両方から電流値が検出されることになり、どちらのレギュレータに異常が発生したか判定することができない。
【0009】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、供給対象物に対して複数のレギュレータを用いて電流を供給可能な電流供給回路において、異常の発生したレギュレータを検出することのできる電流供給回路、および該電流供給回路を用いたブレーキ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の電流供給回路は、電源から供給対象物に電流を供給する電流供給回路であって、前記電源と前記供給対象物の間に並列に配置された第1レギュレータおよび第2レギュレータと、前記供給対象物を流れた電流を検出する、前記供給対象物と接地の間に並列に配置された第1電流モニタおよび第2電流モニタと、前記第1電流モニタにより検出された電流値に基づいて、前記第1レギュレータの出力電流を制御する第1制御手段と、前記第2電流モニタにより検出された電流値に基づいて、前記第2レギュレータの出力電流を制御する第2制御手段と、前記第1レギュレータおよび前記第2レギュレータの異常を推定する異常推定手段と、前記異常推定手段により異常が推定された場合、前記第1レギュレータが所定の第1電流パターンを出力するよう前記第1制御手段に指示し、前記第2レギュレータが前記第1電流パターンと異なる所定の第2電流パターンを出力するよう前記第2制御手段に指示する電流パターン指示手段と、前記第1電流モニタおよび前記第2電流モニタにおいて検出された電流パターンに基づいて、異常が発生したレギュレータを判定する判定手段とを備える。
【0011】
この態様によると、第1レギュレータと第2レギュレータのどちらに異常が発生したか判定することができる。すなわち、第1電流パターンのみが検出された場合第2レギュレータが異常であると判定でき、第2電流パターンのみが検出されれば第1レギュレータが異常であると判定できる。
【0012】
当該電流供給回路は、所定の弁駆動電流以上の電流供給により開弁または閉弁する電磁制御弁に電流を供給するものであり、前記第1電流パターンおよび前記第2電流パターンは、最も低い電流値が前記弁駆動電流以上に設定された電流パターンであってもよい。この場合、電磁制御弁の駆動を継続しつつ、異常の発生したレギュレータを検出できる。
【0013】
本発明の別の態様は、ブレーキ制御装置である。この装置は、液圧回路を介したブレーキ液の供給によりホイールシリンダに液圧を発生させ、当該液圧により車輪に制動力を付与するブレーキ制御装置であって、収容されているブレーキ液をブレーキ操作部材の操作に応じて加圧するマスタシリンダと、前記マスタシリンダからのブレーキ液の供給によりブレーキ操作部材の操作に対する反力を発生させるストロークシミュレータと、前記マスタシリンダと前記ストロークシミュレータとを連通する流路の中途に設けられたシミュレータカット弁と、前記シミュレータカット弁に電源から電流を供給する電流供給回路と、を備える。前記電流供給回路は、前記電源と前記シミュレータカット弁の間に並列に配置された第1レギュレータおよび第2レギュレータと、前記シミュレータカット弁を流れた電流を検出する、前記シミュレータカット弁と接地の間に並列に配置された第1電流モニタおよび第2電流モニタと、前記第1電流モニタにより検出された電流値に基づいて、前記第1レギュレータの出力電流を制御する第1制御手段と、前記第2電流モニタにより検出された電流値に基づいて、前記第2レギュレータの出力電流を制御する第2制御手段と、前記第1レギュレータおよび前記第2レギュレータの異常を推定する異常推定手段と、前記異常推定手段により異常が推定された場合、前記第1レギュレータが所定の第1電流パターンを出力するよう前記第1制御手段に指示し、前記第2レギュレータが前記第1電流パターンと異なる所定の第2電流パターンを出力するよう前記第2制御手段に指示する電流パターン指示手段と、前記第1電流モニタおよび前記第2電流モニタにおいて検出された電流パターンに基づいて、異常が発生したレギュレータを判定する判定手段とを備える。
【0014】
この態様によると、シミュレータカット弁に電流を供給する第1レギュレータと第2レギュレータのどちらに異常が発生したか判定することができる。すなわち、第1電流パターンのみが検出された場合第2レギュレータが異常であると判定でき、第2電流パターンのみが検出されれば第1レギュレータが異常であると判定できる。
【0015】
前記シミュレータカット弁は、所定の弁駆動電流以上の電流供給により開弁または閉弁する電磁制御弁であり、前記第1電流パターンおよび前記第2電流パターンは、最も低い電流値が前記弁駆動電流以上に設定された電流パターンであってもよい。この場合、シミュレータカット弁の駆動を継続しつつ、異常の発生したレギュレータを検出できる。従って、運転者に違和感を感じさせること無く、異常の生じたレギュレータを検出できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、供給対象物に対して複数のレギュレータを用いて電流を供給可能な電流供給回路において、異常の発生したレギュレータを検出することのできる電流供給回路、および該電流供給回路を用いたブレーキ制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るブレーキ制御装置における液圧回路の概略構成図である。
【図2】シミュレータカット弁にバッテリから電流を供給する電流供給回路の構成を説明するための図である。
【図3】本実施形態に係る異常レギュレータ検出処理を説明するためのフローチャートである。
【図4】図4(a)(b)は、第1電流パターンおよび第2電流パターンの一例を説明するための図である。
【図5】本発明の別の実施形態に係るブレーキ制御装置における液圧回路の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係るブレーキ制御装置における液圧回路の概略構成図である。本実施形態に係るブレーキ制御装置100は、右前輪用および左後輪用のホイールシリンダにブレーキ液を供給する第1配管系統と、左前輪用および右後輪用のホイールシリンダにブレーキ液を供給する第2配管系統とを備える、いわゆるX配管構造を有する。
【0020】
図1に示すように、ブレーキ制御装置100は、ブレーキペダル1(ブレーキ操作部材)、踏力センサ2、マスタシリンダ3、シミュレータカット弁SCSS、ストロークシミュレータ4、液圧アクチュエータ5を備える。また、ブレーキ制御装置100は、それぞれ車両の右前輪、左後輪、左前輪、右後輪(全て図示せず)に設けられたブレーキディスクFR,RL,FL,RRと、ブレーキキャリパに内蔵されたホイールシリンダ6FR,6RL,6FL,6RR(以下、適宜総称して「ホイールシリンダ6」という)とを含むディスクブレーキユニットを備える。各ホイールシリンダ6は、それぞれ異なるブレーキ液流路を介して液圧アクチュエータ5に接続されている。また、ブレーキ制御装置100は、ブレーキ制御装置100の各部の動作を制御する制御部としてのブレーキECU200を備えている。
【0021】
各ディスクブレーキユニットでは、ホイールシリンダ6に液圧アクチュエータ5からブレーキ液が供給され、ブレーキ液の液圧により各車輪と共に回転するブレーキディスクFR,RL,FL,RRにブレーキパッド(図示せず)が押し付けられる。これにより、各車輪に制動力が付与される。なお、本実施形態ではディスクブレーキユニットが用いられているが、例えばドラムブレーキなどの他の制動力付与機構が用いられてもよい。
【0022】
ドライバによってブレーキペダル1が踏み込まれると、ブレーキペダル1の踏力(運転者がブレーキペダル1を踏む力)が踏力センサ2に入力される。踏力センサ2は、入力された踏力値を表す信号をブレーキECU200に送信する。なお、ここではブレーキペダル1の操作量を検出するための操作量センサとして踏力センサ2を用いたが、ブレーキペダル1のストロークを検知するストロークセンサ等であってもよい。
【0023】
マスタシリンダ3は、運転者によるブレーキペダル1の操作によって、収容されているブレーキ液を加圧し、このブレーキ液をホイールシリンダ6に向けて送出する。マスタシリンダ3は、プライマリ室3aと、セカンダリ室3bと、プライマリピストン3cと、セカンダリピストン3dと、スプリング3eとを備える。
【0024】
マスタシリンダ3は、プライマリピストン3cおよびセカンダリピストン3dによってプライマリ室3aとセカンダリ室3bとに区画されている。プライマリピストン3cには、ブレーキペダル1から延びるプッシュロッドが接続されている。そして、プライマリピストン3cは、スプリング3eの弾性力を受けてブレーキペダル1が踏み込まれていないときにブレーキペダル1を初期位置側に戻すようにプッシュロッドを押圧している。セカンダリピストン3dもまた、スプリング3eの弾性力を受けてプライマリピストン3cを介してプッシュロッドを押圧している。運転者によってブレーキペダル1が踏み込まれると、プッシュロッドがマスタシリンダ3に進入し、プライマリピストン3cおよびセカンダリピストン3dが押圧される。これにより、収容されているブレーキ液が加圧されて、プライマリ室3aおよびセカンダリ室3bにマスタシリンダ圧が発生する。
【0025】
マスタシリンダ3のプライマリ室3aとセカンダリ室3bには、それぞれ液圧アクチュエータ5に向けて延びる管路B、管路Aが連結されている。
【0026】
また、マスタシリンダ3は、ブレーキ液を貯留するリザーバタンク3fに接続されている。リザーバタンク3fは、ブレーキペダル1が初期位置にあるときにプライマリ室3aおよびセカンダリ室3bのそれぞれと図示しない通路を介して接続され、マスタシリンダ3内にブレーキ液を供給したり、マスタシリンダ3内の余剰ブレーキ液を貯留する。リザーバタンク3fには、液圧アクチュエータ5に向けて延びる管路C、管路Dが連結されている。
【0027】
ストロークシミュレータ4は、管路Aに連結された管路Eに接続されており、マスタシリンダ3のセカンダリ室3b内のブレーキ液を収容する役割を果たす。マスタシリンダ3とストロークシミュレータ4とを連通する流路の一部である管路Eには、シミュレータカット弁SCSSが設けられている。したがって、ストロークシミュレータ4はシミュレータカット弁SCSSを介して管路Aに接続されている。シミュレータカット弁SCSSは、オン/オフ制御されるソレノイドおよびスプリングを有し、所定の弁駆動電流以上の電流供給によりソレノイドが発生させる電磁力により開弁状態とされ、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉弁状態とされる常閉型電磁制御弁である。シミュレータカット弁SCSSが閉弁状態であるときは、管路Aとストロークシミュレータ4との間のブレーキ液の流通が遮断される。ソレノイドに通電されてシミュレータカット弁SCSSが開弁されると、ストロークシミュレータ4とマスタシリンダ3との間でブレーキ液を双方向に流通させることができる。
【0028】
ストロークシミュレータ4は、複数のピストンやスプリングを含むものであり、シミュレータカット弁SCSSの開弁時に運転者によるブレーキペダル1の踏力に応じた反力を創出する。具体的には、ブレーキペダル1が所定の踏力で踏み込まれると、セカンダリ室3b内のブレーキ液が管路A、管路Eを介してストロークシミュレータ4に送出される。ブレーキ液がストロークシミュレータ4に流入するとストロークシミュレータ4に液圧が発生し、これによりストロークシミュレータ4において反力が創出される。ブレーキペダル1は、踏力と反力とが等しくなるまでマスタシリンダ3に進入する。すなわち、ストロークシミュレータ4によってブレーキペダル1の踏力に応じたブレーキペダル1のペダルストロークが創出される。ストロークシミュレータ4としては、運転者によるブレーキ操作のフィーリングを向上させるために、多段のバネ特性を有するものが採用されることが好ましい。
【0029】
液圧アクチュエータ5は、マスタシリンダ3のセカンダリ室3bとホイールシリンダ6FRとを接続する管路Fを備える。管路Fは、その一端が管路Aに連結され、他端が後述する個別管路H1のポンプ7よりも下流側に連結されており、中途にはマスタカット弁SMC1が設けられている。また、液圧アクチュエータ5は、マスタシリンダ3のプライマリ室3aとホイールシリンダ6FLとを接続する管路Gを備える。管路Gは、その一端が管路Bに連結され、他端が後述する個別管路I3のポンプ9よりも下流側に連結されており、中途にはマスタカット弁SMC2が設けられている。
【0030】
マスタカット弁SMC1,SMC2は、オン/オフ制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により閉弁状態とされ、ソレノイドが非通電状態にある場合に開弁状態とされる常開型電磁制御弁である。マスタカット弁SMC1,SMC2が開弁状態であると、マスタシリンダ3と管路F,Gとの間でブレーキ液を双方向に流通させることができる。ソレノイドに規定の制御電流が通電されてマスタカット弁SMC1,SMC2が閉弁されると、管路A,Bにおけるブレーキ液の流通は遮断される。すなわち、マスタカット弁SMC1,SMC2が閉弁されると、マスタシリンダ3によるホイールシリンダ6FR,6FLへのブレーキ液の供給が遮断される。
【0031】
また、液圧アクチュエータ5は、リザーバタンク3fから延びる管路Cに接続された管路Hと、同じくリザーバタンク3fから延びる管路Dに接続された管路Iとを備える。管路Hは個別管路H1,H2という2本の管路に分岐して、個別管路H1がホイールシリンダ6FRに、個別管路H2がホイールシリンダ6RLにそれぞれ接続されている。また、管路Iは個別管路I3,I4という2本の管路に分岐して、個別管路I3がホイールシリンダ6FLに、個別管路I4がホイールシリンダ6RRにそれぞれ接続されている。
【0032】
各個別管路H1,H2,I3,I4には、それぞれ1つずつポンプ7,8,9,10が設けられている。各ポンプ7〜10は、例えば静寂性に優れたトロコイドポンプにより構成される。ポンプ7〜10のうち、ポンプ7、8は、第1モータ11によって駆動され、ポンプ9、10は、第2モータ12によって駆動される。
【0033】
また、液圧アクチュエータ5は、ポンプ7〜10のそれぞれに対して並列的に配置された管路J1,J2,J3,J4を備える。ポンプ7に対して並列的に配置された管路J1は、ポンプ7の上流側と下流側を、ポンプ7を迂回して連結している。本実施形態では、管路J1は、その一端がポンプ7の上流側に位置する管路Hに接続され、他端がポンプ7の下流側に位置する管路Fに接続されている。また管路J1の中途には、連通弁SRC1と液圧調整弁SLFRとが直列的に設けられている。連通弁SRC1はポンプ7の吸入ポート側(管路J1におけるブレーキ液流動方向の下流側)に、液圧調整弁SLFRはポンプ7の吐出ポート側(管路J1におけるブレーキ液流動方向の上流側)にそれぞれ配置されている。ポンプ8に対して並列的に配置された管路J2は、ポンプ8の上流側と下流側を、ポンプ8を迂回して連結している。本実施形態では、管路J2は、その一端が個別管路H2のポンプ8よりも上流側に接続され、他端が個別管路H2のポンプ8よりも下流側に接続されている。また管路J2の中途には、液圧調整弁SLRLが設けられている。
【0034】
ポンプ9に対して並列的に配置された管路J3は、ポンプ9の上流側と下流側を、ポンプ9を迂回して連結している。本実施形態では、管路J3は、その一端が個別管路I3のポンプ9よりも上流側に接続され、他端がポンプ9の下流側に位置する管路Gに接続されている。また管路J3の中途には、連通弁SRC2と液圧調整弁SLFLとが直列的に設けられている。連通弁SRC2はポンプ9の吸入ポート側(管路J3におけるブレーキ液流動方向の下流側)に、液圧調整弁SLFLはポンプ9の吐出ポート側(管路J3におけるブレーキ液流動方向の上流側)にそれぞれ配置されている。ポンプ10に対して並列的に配置された管路J4は、ポンプ10の上流側と下流側を、ポンプ10を迂回して連結している。本実施形態では、管路J4は、その一端がポンプ10の上流側に位置する管路Iに接続され、他端が個別管路I4のポンプ10よりも下流側に接続されている。また管路J4の中途には、液圧調整弁SLRRが設けられている。
【0035】
連通弁SRC1,SRC2は、オン/オフ制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、何れも規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により開弁状態とされ、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉弁状態とされる常閉型電磁制御弁である。開弁状態とされた連通弁SRC1,SRC2は、ブレーキ液をホイールシリンダ6FR,6FL側からリザーバタンク3f側に流通させることができる。ソレノイドに通電されて連通弁SRC1,SRC2が閉弁されると、管路J1,J3におけるブレーキ液の流通は遮断される。
【0036】
液圧調整弁SLFR,SLRL,SLFL,SLRRは、リニアソレノイドおよびスプリングを有しており、リニアソレノイドが非通電状態にある場合に開弁状態とされ、リニアソレノイドに供給される電流に比例して弁の開度が調整される常開型電磁制御弁である。液圧調整弁SLFR,SLRL,SLFL,SLRRが開弁状態であると、ブレーキ液をホイールシリンダ6側からリザーバタンク3f側に流通させることができる。リニアソレノイドに電流が通電されると、通電された電流に比例して弁が閉じてブレーキ液の流通量が減少していく。したがって、液圧調整弁SLFR,SLRL,SLFL,SLRRの開度を変化させることで各ホイールシリンダ6からリザーバタンク3fへのブレーキ液の流通量を変化させることができ、これにより、各ホイールシリンダ6に発生した液圧を調整することができる。
【0037】
個別管路H1,H2,I3,I4のポンプ7〜10よりも下流側(ポンプ7〜10とホイールシリンダ6との間)には、それぞれホイールシリンダ圧センサ13,14,15,16が設けられている。各ホイールシリンダ圧センサ13〜16によって、各ホイールシリンダ6FR、6RL、6FL、6RRにおけるブレーキ液の液圧、すなわちホイールシリンダ圧を検出することができる。また、管路F,Gのマスタカット弁SMC1,SMC2よりも上流側(マスタカット弁SMC1,SMC2とマスタシリンダ3との間)には、マスタシリンダ圧センサ17,18が設けられている。マスタシリンダ圧センサ17,18によって、マスタシリンダ3のセカンダリ室3bとプライマリ室3aにおけるブレーキ液の液圧、すなわちマスタシリンダ圧を検出することができる。
【0038】
さらに、ポンプ7の吐出ポートには逆止弁20が設けられ、ポンプ9の吐出ポートには逆止弁21が設けられている。逆止弁20,21は、それぞれホイールシリンダ6FR,6FL側からポンプ7,9側へのブレーキ液の流動を禁止する機能を果たす。
【0039】
ブレーキECU200は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、エンジン停止時にも記憶内容を保持できるバックアップRAM等の不揮発性メモリ、入出力インターフェース、各種センサ等から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して取り込むためのA/Dコンバータ等を備える。ブレーキECU200には、マスタカット弁SMC1,SMC2、シミュレータカット弁SCSS、連通弁SRC1,SRC2、液圧調整弁SLFR〜SLRR、第1モータ11、第2モータ12等が電気的に接続されている。また、ブレーキECU200は、上位のハイブリッドECU(図示せず)などと通信可能である。
【0040】
また、ブレーキECU200には、制御に用いるための信号を出力する各種センサ・スイッチ類が電気的に接続されている。すなわち、ブレーキECU200には、ホイールシリンダ圧センサ13〜16から、ホイールシリンダ6におけるホイールシリンダ圧を示す信号が入力され、踏力センサ2からブレーキペダル1の踏力を示す信号が入力され、マスタシリンダ圧センサ17,18からマスタシリンダ圧を示す信号が入力される。さらに、図示しないが、ブレーキECU200には、車輪ごとに設置された車輪速センサから各車輪の車輪速度を示す信号が入力され、ヨーレートセンサからヨーレートを示す信号が入力され、Gセンサから車両の加速度を示す信号が入力され、舵角センサからステアリングホイールの操舵角を示す信号が入力されたりしている。
【0041】
上述のように構成されたブレーキ制御装置100は、液圧回路を介したブレーキ液の供給によりホイールシリンダ6に液圧を発生させる複数の配管系統を備える。具体的には、ブレーキ制御装置100は、管路C,H、個別管路H1,H2、および管路J1,J2を含む液圧回路を介してホイールシリンダ6FR,6RLにリザーバタンク3fのブレーキ液を供給する第1配管系統と、管路D,I、個別管路I3,I4、および管路J3,J4を含む液圧回路を介してホイールシリンダ6FL,6RRにリザーバタンク3fのブレーキ液を供給する第2配管系統とを備える。また、ブレーキ制御装置100は、マニュアル液圧源であるマスタシリンダ3のブレーキ液を、管路A,Fを介してホイールシリンダ6FRに供給するブレーキ液供給経路と、管路B,Gを介してホイールシリンダ6FLに供給するブレーキ液供給経路とを備える。
【0042】
ブレーキ制御装置100は、ブレーキ回生協調制御を実行することができる。ブレーキ制御装置100は制動要求を受けて制動を開始する。制動要求は、例えば運転者がブレーキペダル1を操作した場合など、車両に制動力を付与すべきときに生起される。制動要求を受けてブレーキECU200は要求制動力を演算し、要求制動力から回生による制動力を減じることによりブレーキ制御装置100により発生させるべき制動力である要求液圧制動力を算出する。ここで、回生による制動力の実効値は、ハイブリッドECUからブレーキ制御装置100に供給される。そして、ブレーキECU200は、算出した要求液圧制動力に基づいて各ホイールシリンダ6の目標液圧を算出する。ブレーキECU200は、ホイールシリンダ圧が目標液圧となるように、各弁の開閉や、第1モータ11および第2モータ12の駆動を制御することで、第1配管系統および第2配管系統によるホイールシリンダ6へのブレーキ液の供給を制御する。
【0043】
その結果、ブレーキ制御装置100においては、ブレーキ液がリザーバタンク3fから各ホイールシリンダ6に供給されて、車輪に制動力が付与される。また、必要に応じてブレーキ液が各ホイールシリンダ6から液圧調整弁SLFR,SLRL,SLFL,SLRRを介して排出され、車輪に付与される制動力が調整される。本実施形態においては、第1配管系統および第2配管系統により、所謂ブレーキバイワイヤ方式の制動力制御が行われる。第1配管系統および第2配管系統は、マスタシリンダ3からホイールシリンダ6へのブレーキ液の供給経路に並列に設けられている。すなわち、ポンプ7〜10は、マニュアル液圧源であるマスタシリンダ3と並列に設けられている。
【0044】
ブレーキ制御装置100のリザーバタンク3f内には隔壁が設けられており、第1配管系統に流れるブレーキ液と第2配管系統に流れるブレーキ液とが別々に貯留されている。また、第1配管系統の液圧回路と第2配管系統の液圧回路とは互いに独立している。そのため、第1配管系統と第2配管系統とはそれぞれを流れるブレーキ液に関して互いに独立している。したがって、一方の配管系統が故障しても、他方の配管系統によって当該他方の配管系統に連結されたホイールシリンダ6にブレーキ液を供給することができる。
【0045】
図2は、シミュレータカット弁SCSSにバッテリ300から電流を供給する電流供給回路110の構成を説明するための図である。本実施形態に係るブレーキ制御装置100において、この電流供給回路110は、ブレーキECU200内に設けられている。電流供給回路110は、シミュレータカット弁SCSSの開閉を制御可能な複数の系統を備える。具体的には、ブレーキECU200は、第1系統210と第2系統220とを備える。
【0046】
第1系統210は、第1レギュレータ214と、第1電流モニタ215と、第1制御部216と、第1スイッチ217とを備える。第2系統220は、第2レギュレータ224と、第2電流モニタ225と、第2制御部226と、第2スイッチ227とを備える。
【0047】
第1レギュレータ214および第2レギュレータ224は、バッテリ300とシミュレータカット弁SCSSの間に並列に配置されている。第1レギュレータ214および第2レギュレータ224は、スイッチのオン/オフ時間の比率(デューティ比)を調整することで、シミュレータカット弁SCSSへの供給電流を制御することができる。
【0048】
第1電流モニタ215および第2電流モニタ225は、シミュレータカット弁SCSSの下流に並列に配置されている。言い換えると、第1電流モニタ215と第2電流モニタ225は、シミュレータカット弁SCSSと接地GNDとの間に並列に配置されている。第1電流モニタ215および第2電流モニタ225は、それぞれシミュレータカット弁SCSSを流れた電流を検出する。
【0049】
第1スイッチ217は、シミュレータカット弁SCSSと第1電流モニタ215の間に配置されており、シミュレータカット弁SCSSと第1電流モニタ215の電気的接続をオン/オフ可能である。また第2スイッチ227は、シミュレータカット弁SCSSと第2電流モニタ225の間に配置されており、シミュレータカット弁SCSSと第2電流モニタ225の電気的接続をオン/オフ可能である。
【0050】
第1制御部216は、第1電流モニタ215により検出された電流値に基づいて、第1レギュレータ214の出力電流を制御する。また第2制御部226は、第2電流モニタ225により検出された電流値に基づいて、第2レギュレータ224の出力電流を制御する。
【0051】
また、ブレーキECU200は、第1系統210と第2系統220との間で情報を通信するための系統間通信部230を備える。系統間通信部230は、例えば、第1系統210に設けられた情報の送受信部と、第2系統220に設けられた情報の送受信部と、これらの送受信部を接続するケーブル(全て図示せず)を含む。
【0052】
このように構成された第1系統210および第2系統220は、互いに独立してシミュレータカット弁SCSSへの供給電流を制御することができる。例えば、シミュレータカット弁SCSSを開弁するために1Aが必要な場合には、第1制御部216、第2制御部226は、0.5Aずつシミュレータカット弁SCSSに電流を供給するよう第1レギュレータ214、第2レギュレータ224を制御することができる。
【0053】
なお、第1系統210は、第1配管系統によるブレーキ液の供給についても制御し、第2系統220は、第2配管系統によるブレーキ液の供給についても制御する。このように2つの系統を用いて電磁制御弁を駆動することにより、一方の系統に異常が生じた場合であっても他方の系統により油圧制御を行うことができ、制動力の低下を最小限にするよう構成されている。
【0054】
図1を見て分かるように、ブレーキ制御装置100においてストロークシミュレータ4は1つだけ設けられており、一方の系統に異常が発生した場合でもシミュレータカット弁SCSSは開弁する必要がある。そのため、シミュレータカット弁SCSSの電流供給回路は、第1系統210と第2系統220とでそれぞれ独立してシミュレータカット弁SCSSに電流を供給可能な回路構成となっている。
【0055】
ここで、図2に示す電流供給回路110において、第1レギュレータ214に故障などの異常が発生し、電流を供給できなくなった場合について考察する。正常時には、上記の例のように、第1制御部216、第2制御部226は、0.5Aずつシミュレータカット弁SCSSに電流を供給するよう第1レギュレータ214、第2レギュレータ224に指示を出しているものとする。この場合、第2レギュレータ224から出力された0.5Aの電流は、シミュレータカット弁SCSSを通過した後、並列に接続された第1電流モニタ215と第2電流モニタ225に流れ込む。第1電流モニタ215と第2電流モニタ225のシャント抵抗値が同じであるとすれば、第1電流モニタ215と第2電流モニタ225は、ともに0.5Aの半分の0.25Aを検出する。このとき、第2制御部226は、第2電流モニタ225の電流値が適正(0.5A)となるように第2レギュレータ224に指示を出すが、第2電流モニタ225の電流値が0.5Aになったとき、第1電流モニタ215のモニタ値も0.5Aとなる。このように、電流供給回路110においては、一方のレギュレータに異常が生じた場合に第1電流モニタ215と第2電流モニタ225のどちらにも通電されるため、単に電流値を監視しているだけではどちらのレギュレータに異常が発生したのか判定することができない。異常が生じたレギュレータが判定できない場合、異常が生じたレギュレータに対して制御部は電流制御を続行することになるが、このような異常な動作はさらなる異常を誘発する虞もあるため好ましくない。そこで、本実施形態に係る電流供給回路110においては、以下に説明するような異常レギュレータ検出処理を行う。
【0056】
図3は、本実施形態に係る異常レギュレータ検出処理を説明するためのフローチャートである。まず、第1制御部216および第2制御部226は、第1レギュレータ214、第2レギュレータ224に指示した電流値と第1電流モニタ215、第2電流モニタ225により検出された電流値との間に乖離が発生したか否か判定する(S10)。上述したように、一方のレギュレータに異常が発生すると、第1電流モニタ215および第2電流モニタ225の検出した電流値が瞬間的に低下するので、第1制御部216および第2制御部226は、第1レギュレータ214と第2レギュレータ224のいずれかに何らかの異常が発生したことを推定することができる。この時点では、第1レギュレータ214と第2レギュレータ224のどちらに異常が発生したか判定することはできない。指示電流と検出電流との間に乖離が無い場合、第1制御部216および第2制御部226は乖離が発生するまで待つ(S10のN)。
【0057】
指示電流と検出電流との間に乖離がある場合(S10のY)、第1制御部216は、第1レギュレータ214に所定の第1電流パターンを出力するよう指示する。また、第2制御部226は、第2レギュレータ224に第1電流パターンと異なる所定の第2電流パターンを出力するよう指示する(S12)。
【0058】
図4(a)(b)は、第1電流パターンおよび第2電流パターンの一例を説明するための図である。図4(a)(b)において、縦軸は制御部からレギュレータへの指示電流を表し、横軸は時間を表す。図4(a)は、第1制御部216が第1レギュレータ214に指示する第1電流パターンP1を示し、図4(b)は、第2制御部226が第2レギュレータ224に指示する第2電流パターンP2を示している。図4(a)(b)に示すように、第1電流パターンP1および第2電流パターンP2は、ともに矩形波であるが、周期が異なっている。また、第1電流パターンP1および第2電流パターンP2は、最も低い電流値がシミュレータカット弁SCSSの所定の開弁電流(破線で示す)以上となるように設定されている。
【0059】
図3に戻り、S12において第1電流パターンと第2電流パターンを出力するよう指示した後、第1制御部216および第2制御部226は、第1電流モニタ215および第2電流モニタ225で第1電流パターンP1が検出されたか否か判定する(S14)。
【0060】
第1電流パターンP1が検出された場合(S14のY)、第1制御部216および第2制御部226は、第2レギュレータ224が異常であると判定する(S18)。第1電流パターンP1が検出されたということは、第1レギュレータ214は正常だからである。そして、第2制御部226は、第2レギュレータ224の制御を停止する(S24)。また、第2制御部226は、第2スイッチ227をオフにして、第2電流モニタ225に電流が流れないようにする。
【0061】
一方、第1電流パターンP1が検出されなかった場合(S14のN)、第1制御部216および第2制御部226は、第1電流モニタ215および第2電流モニタ225で第2電流パターンP2が検出されたか否か判定する(S16)。
【0062】
第2電流パターンP2が検出された場合(S16のY)、第1制御部216および第2制御部226は、第1レギュレータ214が異常であると判定する(S20)。第2電流パターンP2が検出されたということは、第2レギュレータ224は正常だからである。そして、第1制御部216は、第1レギュレータ214の制御を停止する(S26)。また、第1制御部216は、第1スイッチ217をオフにして、第1電流モニタ215に電流が流れないようにする。
【0063】
S16において第2電流パターンP2が検出されなかった場合(S16のN)、第1レギュレータ214と第2レギュレータ224のいずれのレギュレータが異常であるか不定であると判定する(S22)。この場合、第1レギュレータ214および第2レギュレータ224の制御を継続して行う(S28)。
【0064】
以上説明したように、本実施形態に係る電流供給回路110は、シミュレータカット弁SCSSに電流を供給する第1レギュレータ214と第2レギュレータ224のどちらに異常が発生したか判定することができる。そして、異常が生じたレギュレータの制御を停止することにより、正常なレギュレータを用いてシミュレータカット弁SCSSに適切に電流を供給することができる。また、さらなる異常の発生を防止することができる。
【0065】
また、電流供給回路110において、異常なレギュレータを判定するために用いる第1電流パターンP1および第2電流パターンP2は、最も低い電流値がシミュレータカット弁SCSSの所定の開弁電流以上となるように設定されている。これにより、シミュレータカット弁SCSSの駆動を継続しつつ、異常の発生したレギュレータを検出できる。従って、運転者に違和感を感じさせること無く、異常の生じたレギュレータを検出できる。
【0066】
図5は、本発明の別の実施形態に係るブレーキ制御装置における液圧回路の概略構成図である。ブレーキ制御装置100は、図5に示すような液圧回路を備えていてもよい。なお、実施形態1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明および図示は適宜省略する。
【0067】
図5に示すように、ブレーキ制御装置100は、ブレーキペダル1、踏力センサ2、マスタシリンダ3、シミュレータカット弁SCSS、ストロークシミュレータ4、液圧アクチュエータ400を備える。また、ブレーキ制御装置100は、ブレーキディスクFR,RL,RR,FLと、ブレーキキャリパに内蔵されたホイールシリンダ6FR,6RL,6RR,6FLとを含むディスクブレーキユニットを備える。また、ブレーキ制御装置100は、ブレーキECU200を備えている。
【0068】
マスタシリンダ3のセカンダリ室3bには、右前輪用のブレーキ液圧制御管402の一端が接続されている。ブレーキ液圧制御管402の他端は、ホイールシリンダ6FRに接続されている。また、マスタシリンダ3のプライマリ室3aには、左前輪用のブレーキ液圧制御管404の一端が接続されている。ブレーキ液圧制御管404の他端は、ホイールシリンダ6FLに接続されている。ブレーキ液圧制御管402の中途には、マスタカット弁SMC1とマスタシリンダ圧センサ17が設けられており、ブレーキ液圧制御管404の中途には、マスタカット弁SMC2とマスタシリンダ圧センサ18が設けられている。
【0069】
一方、リザーバタンク3fには、液圧給排管406の一端が接続されており、この液圧給排管406の他端には、モータ408により駆動されるオイルポンプ410の吸込口が接続されている。オイルポンプ410の吐出口は、高圧管412に接続されており、この高圧管412には、液圧源の蓄圧部としてのアキュムレータ414とリリーフバルブ416とが接続されている。本変形例では、オイルポンプ410として、モータ408によってそれぞれ往復移動させられる2体以上のピストン(図示せず)を備えた往復動ポンプが採用される。また、アキュムレータ414としては、ブレーキ液の圧力エネルギを窒素等の封入ガスの圧力エネルギに変換して蓄えるものが採用される。
【0070】
アキュムレータ414は、通常、オイルポンプ410によって所定液圧範囲(例えば14〜21MPa程度)にまで昇圧されたブレーキ液を蓄える。また、リリーフバルブ416の弁出口は、液圧給排管406に接続されており、アキュムレータ414におけるブレーキ液の圧力が異常に高まって例えば25MPa程度になると、リリーフバルブ416が開弁し、高圧のブレーキ液は液圧給排管406へと戻される。さらに、高圧管412には、アキュムレータ414の出口圧力、すなわち、アキュムレータ414におけるブレーキ液の圧力を検出するアキュムレータ圧センサ415が設けられている。
【0071】
そして、高圧管412は、増圧弁418FR,418FL,418RR,418RL(以下、適宜総称して「増圧弁418」という)を介してホイールシリンダ6FR,6FL,6RR,6RLに接続されている。増圧弁418はいずれも、リニアソレノイドおよびスプリングを有しており、リニアソレノイドが非通電状態にある場合に閉弁状態とされ、リニアソレノイドに供給される電流に比例して弁の開度が調整される常閉型電磁制御弁である。増圧弁418は、その開度に応じてホイールシリンダ6の増圧が可能である。
【0072】
また、ホイールシリンダ6FR,6FLは、それぞれ減圧弁420FRまたは420FLを介して液圧給排管406に接続されている。減圧弁420FRおよび420FLは、リニアソレノイドおよびスプリングを有しており、その開度に応じてホイールシリンダ6FR,6FLの減圧が可能な常閉型電磁制御弁である。一方、ホイールシリンダ6RR,6RLとは、常開型の電磁制御弁である減圧弁420RRまたは420RLを介して液圧給排管406に接続されている。以下、適宜、減圧弁420FR〜420RLを総称して「減圧弁420」という。ホイールシリンダ6FR〜6RL付近には、ホイールシリンダ圧センサ13,14,15,16が設けられている。
【0073】
ブレーキECU200には、マスタカット弁SMC1,SMC2、シミュレータカット弁SCSS、増圧弁418、減圧弁420、モータ408等が電気的に接続されている。また、ブレーキECU200には、ホイールシリンダ圧センサ13〜16、踏力センサ2、マスタシリンダ圧センサ17,18、アキュムレータ圧センサ415から信号が入力される。
【0074】
このように構成されるブレーキ制御装置100では、ブレーキ回生協調制御を実行することができる。ブレーキ制御装置100は制動要求を受けて要求制動力と要求液圧制動力を算出する。ブレーキECU200は、算出した要求液圧制動力に基づいて各ホイールシリンダ6の目標液圧を算出し、ホイールシリンダ圧が目標液圧となるように、フィードバック制御則により増圧弁418や減圧弁420に供給する制御電流の値を決定する。その結果、ブレーキ制御装置100においては、ブレーキ液がアキュムレータ414から各増圧弁418を介して各ホイールシリンダ6に供給され、車輪に制動力が付与される。また、各ホイールシリンダ6からブレーキ液が減圧弁420を介して必要に応じて排出され、車輪に付与される制動力が調整される。
【0075】
一方、このときマスタカット弁SMC1,SMC2は閉弁状態とされ、シミュレータカット弁SCSSは開状態とされる。よって、運転者によるブレーキペダル1の踏み込みによりマスタシリンダ3から送出されたブレーキ液は、シミュレータカット弁SCSSを通ってストロークシミュレータ4に流入する。また、アキュムレータ圧が予め設定された設定範囲の下限値以下であるときには、ブレーキECU200によりモータ408に電流が供給され、オイルポンプ410が駆動されてアキュムレータ圧が昇圧される。この昇圧によってアキュムレータ圧がその設定範囲に入りその上限値に達すると、モータ408への給電が停止される。
【0076】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。これらの実施形態は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0077】
図4では第1電流パターンP1と第2電流パターンP2の例として矩形波を例示したが、正弦波や三角波であってもよい。また、図4では第1電流パターンP1と第2電流パターンP2の周期を異ならせたが、振幅が異なるようにしてもよい。要は識別可能なように第1電流パターンP1と第2電流パターンP2が異なる電流パターンであればよい。
【0078】
上述の実施形態では、シミュレータカット弁SCSSを電流供給回路110の電流供給対象物とした場合について説明したが、電流供給回路110はシミュレータカット弁SCSS以外にも用いることが可能である。例えば、電流供給回路110は、電流の供給により閉弁状態となる常開型電磁制御弁にも適用可能である。
【符号の説明】
【0079】
SCSS シミュレータカット弁、4 ストロークシミュレータ、 100 ブレーキ制御装置、 110 電流供給回路、 200 ブレーキECU、 210 第1系統、 214 第1レギュレータ、 215 第1電流モニタ、 216 第1制御部、 217 第1スイッチ、 220 第2系統、 224 第2レギュレータ、 225 第2電流モニタ、 226 第2制御部、 227 第2スイッチ、 300 バッテリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から供給対象物に電流を供給する電流供給回路であって、
前記電源と前記供給対象物の間に並列に配置された第1レギュレータおよび第2レギュレータと、
前記供給対象物を流れた電流を検出する、前記供給対象物と接地の間に並列に配置された第1電流モニタおよび第2電流モニタと、
前記第1電流モニタにより検出された電流値に基づいて、前記第1レギュレータの出力電流を制御する第1制御手段と、
前記第2電流モニタにより検出された電流値に基づいて、前記第2レギュレータの出力電流を制御する第2制御手段と、
前記第1レギュレータおよび前記第2レギュレータの異常を推定する異常推定手段と、
前記異常推定手段により異常が推定された場合、前記第1レギュレータが所定の第1電流パターンを出力するよう前記第1制御手段に指示し、前記第2レギュレータが前記第1電流パターンと異なる所定の第2電流パターンを出力するよう前記第2制御手段に指示する電流パターン指示手段と、
前記第1電流モニタおよび前記第2電流モニタにおいて検出された電流パターンに基づいて、異常が発生したレギュレータを判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする電流供給回路。
【請求項2】
当該電流供給回路は、所定の弁駆動電流以上の電流供給により開弁または閉弁する電磁制御弁に電流を供給するものであり、
前記第1電流パターンおよび前記第2電流パターンは、最も低い電流値が前記弁駆動電流以上に設定された電流パターンであることを特徴とする請求項1に記載の電流供給回路。
【請求項3】
液圧回路を介したブレーキ液の供給によりホイールシリンダに液圧を発生させ、当該液圧により車輪に制動力を付与するブレーキ制御装置であって、
収容されているブレーキ液をブレーキ操作部材の操作に応じて加圧するマスタシリンダと、
前記マスタシリンダからのブレーキ液の供給によりブレーキ操作部材の操作に対する反力を発生させるストロークシミュレータと、
前記マスタシリンダと前記ストロークシミュレータとを連通する流路の中途に設けられたシミュレータカット弁と、
前記シミュレータカット弁に電源から電流を供給する電流供給回路と、
を備え、
前記電流供給回路は、
前記電源と前記シミュレータカット弁の間に並列に配置された第1レギュレータおよび第2レギュレータと、
前記シミュレータカット弁を流れた電流を検出する、前記シミュレータカット弁と接地の間に並列に配置された第1電流モニタおよび第2電流モニタと、
前記第1電流モニタにより検出された電流値に基づいて、前記第1レギュレータの出力電流を制御する第1制御手段と、
前記第2電流モニタにより検出された電流値に基づいて、前記第2レギュレータの出力電流を制御する第2制御手段と、
前記第1レギュレータおよび前記第2レギュレータの異常を推定する異常推定手段と、
前記異常推定手段により異常が推定された場合、前記第1レギュレータが所定の第1電流パターンを出力するよう前記第1制御手段に指示し、前記第2レギュレータが前記第1電流パターンと異なる所定の第2電流パターンを出力するよう前記第2制御手段に指示する電流パターン指示手段と、
前記第1電流モニタおよび前記第2電流モニタにおいて検出された電流パターンに基づいて、異常が発生したレギュレータを判定する判定手段と、
を備えることを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項4】
前記シミュレータカット弁は、所定の弁駆動電流以上の電流供給により開弁または閉弁する電磁制御弁であり、
前記第1電流パターンおよび前記第2電流パターンは、最も低い電流値が前記弁駆動電流以上に設定された電流パターンであることを特徴とする請求項3に記載のブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−100199(P2011−100199A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252930(P2009−252930)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】