説明

電源システムおよびそれを搭載する車両、ならびに電源システムの制御方法

【課題】蓄電装置からの電力を用いて走行することが可能な車両の電源システムにおいて、不適切な蓄電装置が接続されているか否かを検出することによって、機器の劣化や故障を抑制する。
【解決手段】負荷装置180に電力を供給するための電源システム105は、蓄電装置と、電圧センサ111と、電流センサ112と、ECU300とを備える、ECU300は、検出された電圧および電流に基づいて蓄電装置の内部抵抗値を演算するとともに、演算された内部抵抗値を予め定められた基準値と比較することによって、蓄電装置が、正規の蓄電装置110とは異なる蓄電装置110Aを含んでいるか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システムおよびそれを搭載する車両、ならびに電源システムの制御方法に関し、より特定的には、電源システムに含まれる蓄電装置を保護するための制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に配慮した車両として、蓄電装置(たとえば二次電池やキャパシタなど)を搭載し、蓄電装置に蓄えられた電力から生じる駆動力を用いて走行する車両が注目されている。この車両には、たとえば電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池車などが含まれる。
【0003】
このような車両においては、搭載された蓄電装置が過充電となったり過放電となったりすることによる蓄電装置の故障や劣化を防止するために、蓄電装置の充電電力および放電電力を適切に制御することが必要とされる。
【0004】
特開2010−088167号公報(特許文献1)は、バッテリからの電力を用いた駆動力により走行が可能な車両において、バッテリ温度に基づいてバッテリの内部抵抗を推定するとともに、推定された内部抵抗、バッテリ電圧、およびバッテリ電流に基づいて、バッテリ電圧およびバッテリ電流の各々が所定の使用範囲内となるように、バッテリの充放電電力の制限値を設定する技術を開示する。
【0005】
特開2010−088167号公報(特許文献1)によれば、発熱によるバッテリの劣化を考慮しつつ、バッテリの充放電性能を十分に発揮しながら、過大な充放電電力によって発生するバッテリの異常発熱を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−088167号公報
【特許文献2】特開2007−218917号公報
【特許文献3】特開2008−256673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
蓄電装置からの電力を用いて走行することが可能なこのような車両においては、1回の充電によってできるだけ航続距離を拡大することが望まれる。この対策として、本来備えられている蓄電装置に対して並列に他の蓄電装置を接続することによって、全体の充電容量を拡大することが行なわれる場合がある。
【0008】
このような場合には、制御装置に備えられている蓄電装置の保護機能を、追加された蓄電装置にあわせて適合することが必要となる。しかしながら、たとえば、ユーザが、保護機能については変更することなく、独自に不適切な蓄電装置を追加したような場合には、保護機能が適切に動作せず、蓄電装置や他の機器の劣化や故障をもたらす可能性がある。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、蓄電装置からの電力を用いて走行することが可能な車両の電源システムにおいて、不適切な蓄電装置が含まれているか否かを検出することによって、機器の劣化や故障を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による電源システムは、蓄電装置と、電圧検出部と、電流検出部と、制御装置とを備え、負荷装置に電力を供給する。電圧検出部は、蓄電装置の電圧を検出する。電流検出部は、負荷装置に供給される電流を検出する。制御装置は、検出された電圧および電流に基づいて蓄電装置の内部抵抗値を演算するとともに、演算された内部抵抗値を予め定められた基準値と比較することによって、蓄電装置が正規の第1の蓄電装置とは異なる第2の蓄電装置を含んでいるか否かを判定する。
【0011】
好ましくは、制御装置は、蓄電装置が第2の蓄電装置を含んでいると判定した場合は、蓄電装置の充電電力制限値および放電電力制限値の少なくとも一方が、第1の蓄電装置である場合に比べてその大きさが小さくなるように設定する。
【0012】
好ましくは、電源システムと負荷装置との間の電力の供給と遮断とを切換えるための切換装置が、電源システムと負荷装置とを電気的に結ぶ経路に設けられる。そして、制御装置は、蓄電装置が第2の蓄電装置を含んでいると判定した場合は、電源システムと負荷装置との間の電力を遮断するように切換装置を制御する。
【0013】
好ましくは、基準値は、第1の蓄電装置の特性から定まる、最小内部抵抗値に基づいて設定される。
【0014】
好ましくは、制御装置は、演算された内部抵抗値が基準値よりも小さい場合に、蓄電装置が第2の蓄電装置を含んでいると判定する。
【0015】
本発明による車両は、電源システムと、電源システムからの電力を用いて車両を走行させるための駆動力を発生するための駆動装置とを備える。電源システムは、蓄電装置と、蓄電装置の電圧を検出するための電圧検出部と、駆動装置に供給される電流を検出するための電流検出部と、制御装置とを含む。そして、制御装置は、検出された電圧および電流に基づいて蓄電装置の内部抵抗値を演算するとともに、演算された内部抵抗値を予め定められた基準値と比較することによって、蓄電装置が正規の第1の蓄電装置とは異なる第2の蓄電装置を含んでいるか否かを判定する。
【0016】
本発明による電源システムの制御方法は、負荷装置に電力を供給するための電源システムについての制御方法である。電源システムは、蓄電装置と、蓄電装置の電圧を検出するための電圧検出部と、負荷装置に供給される電流を検出するための電流検出部とを含む。そして、制御方法は、検出された電圧および電流に基づいて、蓄電装置の内部抵抗値を演算するステップと、演算された内部抵抗値を予め定められた基準値と比較するステップと、比較するステップによる比較結果に基づいて蓄電装置が正規の第1の蓄電装置とは異なる第2の蓄電装置を含んでいるか否かを判定するステップとを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、蓄電装置からの電力を用いて走行することが可能な車両の電源システムにおいて、不適切な蓄電装置が含まれているか否かを検出することによって、機器の劣化や故障を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施の形態に従う電源システムを備えた車両の全体ブロック図である。
【図2】本実施の形態において、不適切な蓄電装置が接続されたことの検出手法を説明するための図である。
【図3】不適切な蓄電装置の接続の有無による、演算された内部抵抗値の変化を説明するための図である。
【図4】本実施の形態において、ECUで実行されるバッテリ保護制御を説明するための機能ブロック図である。
【図5】本実施の形態において、ECUで実行されるバッテリ保護制御処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0020】
図1は、本実施の形態に従う電源システム105を備えた車両100の全体ブロック図である。
【0021】
図1を参照して、車両100は、電源システム105と、システムメインリレー(System Main Relay:SMR)115と、表示装置170と、負荷装置180とを備える。
【0022】
電源システム105は、蓄電装置110と、電圧センサ111と、電流センサ112と、制御装置であるECU(Electronic Control Unit)300とを含む。
【0023】
負荷装置180は、駆動装置であるPCU(Power Control Unit)120と、モータジェネレータ130,135と、動力伝達ギヤ140と、駆動輪150と、内燃機関であるエンジン160とを含む。PCU120は、コンバータ121と、インバータ122,123と、コンデンサC1,C2とを含む。
【0024】
蓄電装置110は、充放電可能に構成された電力貯蔵要素である。蓄電装置110は、たとえば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池または鉛蓄電池などの二次電池、あるいは電気二重層キャパシタなどの蓄電素子を含んで構成される。
【0025】
蓄電装置110は、電力線PL1および接地線NL1を介してPCU120に接続される。そして、蓄電装置110は、車両100の駆動力を発生させるための電力をPCU120に供給する。また、蓄電装置110は、モータジェネレータ130、135で発電された電力を蓄電する。蓄電装置110の出力はたとえば200V程度である。
【0026】
電圧センサ111は、蓄電装置110の電圧VBを検出し、その検出結果をECU300へ出力する。電流センサ112は、蓄電装置に入出力される電流IBを検出し、その検出値をECU300へ出力する。なお、図1においては、電流センサ112は、接地線NL1に設けられているが、電力線PL1に設けられてもよい。
【0027】
SMR115に含まれるリレーは、蓄電装置110とPCU120とを結ぶ電力線PL1および接地線NL1にそれぞれ介挿される。そして、SMR115は、ECU300からの制御信号SE1に基づいて、蓄電装置110とPCU120との間における電力の供給と遮断とを切換える。
【0028】
コンバータ121は、ECU300からの制御信号PWCに基づいて、電力線PL1および接地線NL1と電力線PL2および接地線NL1との間で電圧変換を行なう。
【0029】
インバータ122,123は、電力線PL2および接地線NL1に並列に接続される。インバータ122,123は、ECU300からの制御信号PWI1,PWI2にそれぞれ基づいて、コンバータ121から供給される直流電力を交流電力に変換し、モータジェネレータ130,135をそれぞれ駆動する。
【0030】
コンデンサC1は、電力線PL1および接地線NL1の間に設けられ、電力線PL1および接地線NL1間の電圧変動を減少させる。また、コンデンサC2は、電力線PL2および接地線NL1の間に設けられ、電力線PL2および接地線NL1間の電圧変動を減少させる。
【0031】
モータジェネレータ130,135は交流回転電機であり、たとえば、永久磁石が埋設されたロータを備える永久磁石型同期電動機である。
【0032】
モータジェネレータ130,135の出力トルクは、減速機や動力分割機構を含んで構成される動力伝達ギヤ140を介して駆動輪150に伝達されて、車両100を走行させる。モータジェネレータ130,135は、車両100の回生制動動作時には、駆動輪150の回転力によって発電することができる。そして、その発電電力は、PCU120によって蓄電装置110の充電電力に変換される。
【0033】
また、モータジェネレータ130,135は動力伝達ギヤ140を介してエンジン160とも結合される。そして、ECU300により、モータジェネレータ130,135およびエンジン160が協調的に動作されて必要な車両駆動力が発生される。さらに、モータジェネレータ130,135は、エンジン160の回転により発電が可能であり、この発電電力を用いて蓄電装置110を充電することができる。なお、本実施の形態においては、モータジェネレータ135を専ら駆動輪150を駆動するための電動機として用い、モータジェネレータ130を専らエンジン160により駆動される発電機として用いるものとする。
【0034】
なお、図1においては、モータジェネレータが2つ設けられる構成が例として示されるが、モータジェネレータの数はこれに限定されず、モータジェネレータが1つの場合、あるいは2つより多くのモータジェネレータを設ける構成としてもよい。また、エンジン160は必須の構成ではなく、エンジン160を含まない、電気自動車や燃料電池車であってもよい。さらに、蓄電装置110に接続される負荷は上記のような車両には限られず、蓄電装置110から出力される電力で駆動される電気機器であれば、本実施の形態が適用可能である。
【0035】
ECU300は、いずれも図1には図示しないがCPU(Central Processing Unit)、記憶装置および入出力バッファを含み、各センサ等からの信号の入力や各機器への制御信号の出力を行なうとともに、蓄電装置110および車両100の各機器の制御を行なう。なお、これらの制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
【0036】
ECU300は、蓄電装置110に備えられる電圧センサ111および電流センサ112からの電圧VBおよび電流IBのそれぞれの検出値に基づいて、蓄電装置110の充電状態SOC(State of Charge)を演算する。
【0037】
また、ECU300は、蓄電装置110の温度やSOCなどに基づいて、蓄電装置110への充放電電力の制限値を設定するとともに、その制限値の範囲内となるように充放電電力を制御する。
【0038】
ECU300は、PCU120、SMR115などを制御するための制御信号を生成して出力する。なお、図1においては、ECU300として1つの制御装置を設ける構成としているが、たとえば、PCU120用の制御装置や蓄電装置110用の制御装置などのように、機能ごとまたは制御対象機器ごとに個別の制御装置を設ける構成としてもよい。
【0039】
表示装置170は、ECU300からの制御信号DSPに基づいて、車両100の状態や異常をユーザに視覚的に通知するための装置である。表示装置170としては、たとえば、ランプやLED、または液晶表示パネルなどが含まれる。
【0040】
蓄電装置からの電力を用いて走行することが可能なこのような車両においては、1回の充電によってできるだけ航続距離を拡大することが望まれる。これを実現するための1つの手段としては、蓄電装置の充電容量をより大きくすることが挙げられる。
【0041】
この場合、本来備えられている正規の蓄電装置を、より容量の大きな別の蓄電装置に置き換える方法が考えられるが、これはコスト的に高くなるので、簡便な方法として追加の蓄電装置をもとの正規の蓄電装置に並列に接続して全体の容量を増加することが実際的であると考えられる。
【0042】
ところが、ECUにおいては、もともと備えられている正規の蓄電装置の仕様にあわせて、保護機能のための各種パラメータが設定されるのが一般的である。そのため、たとえば、ユーザが、これらの保護機能のためのパラメータを変更することなく、蓄電装置の容量を増加させたるために追加の蓄電装置を接続した場合には、仕様が不明な追加の蓄電装置を適切に保護できない場合がある。さらに、もともと備えられている正規の蓄電装置についても、たとえば、SOCの推定演算において推定精度が悪化するなどの影響によって、過充電や過放電が生じる可能性がある。
【0043】
また、蓄電装置の容量を変更しない場合であっても、たとえば、ユーザが独自に、正規の蓄電装置とは特性の異なる別の蓄電装置に置き換えたような場合には、保護機能のためのパラメータが置き換えられた蓄電装置に合致していないと、保護機能が適切に動作しない可能性が生じ得る。
【0044】
そこで、本実施の形態においては、演算により求められる蓄電装置の内部抵抗値に基づいて、使用されている蓄電装置が正規のものであるか否かを判定するとともに、蓄電装置が非正規である場合には充放電電力を正規の蓄電装置の場合よりも制限する、バッテリ保護制御を実行する。これによって、不適切な蓄電装置(特に正規の蓄電装置よりも特性が劣る蓄電装置)が接続された場合に、制御装置に設定された蓄電装置の仕様と実際に使用される蓄電装置の仕様とが異なることに起因して生じ得る不具合を防止することが可能となる。
【0045】
次に図2を用いて、不適切な蓄電装置が接続されたことを検出する手法について説明する。
【0046】
図2を参照して、電源システム105にもともと備えられている正規の蓄電装置110とは別の追加の蓄電装置110Aが、ユーザによって蓄電装置110に並列に接続された場合を考える。
【0047】
このとき、電流センサ112によって検出される電流IB,すなわち負荷装置180に供給される電流IBは、蓄電装置110を流れる電流IB1と蓄電装置110Aを流れる電流IB2との和となる(IB=IB1+IB2)。
【0048】
ここで、蓄電装置が単独である場合には、蓄電装置の開回路電圧(起電圧)をV0とし内部抵抗値をRBとすると、一般的に以下の式が成立することが知られている。
【0049】
VB=V0−RB・IB … (1)
ところが、図2のように蓄電装置110,110Aが並列に接続されていると、蓄電装置110に流れる電流はIB1となるので、蓄電装置110の内部抵抗値をRB1とすると、検出される電圧VBは上記の式(1)を用いると以下のようになる。
【0050】
VB=V0−RB1・IB1 … (2)
ここで、IB>IB1であるので、したがって、内部抵抗値RB1が同じであれば、蓄電装置110のみが接続されている場合よりも、検出される電圧VBの大きさは大きくなる。
【0051】
しかしながら、ECU300で検出される電流はIB1ではなく電流IBであり、IB>IB1であるので、結果として演算される内部抵抗値RBは、本来の蓄電装置110の内部抵抗値RB1よりも見かけ上小さくなる。言い換えれば、ECU300の演算によって得られる内部抵抗値RBは、蓄電装置110の内部抵抗値RB1と蓄電装置110Aの内部抵抗値RB2との合成抵抗(RB1・RB2/(RB1+RB2))に相当し得る。
【0052】
VB=V0−IB・{RB1・RB2/(RB1+RB2)} … (3)
そのため、たとえば、RB1=RB2であるような場合には、電圧VBおよび電流IBから算出される内部抵抗値RBは、式(3)から、実際の蓄電装置110Aの内部抵抗値RB1の1/2となる。
【0053】
これを、グラフとして示したものが図3であり、図3の縦軸は電圧VBを示し、横軸は電流IBを示す。そして、図3において直線W11は式(2)を示したものであり、W12は式(3)を示したものである。したがって、各直線における傾きの絶対値が内部抵抗値RBを示す。
【0054】
蓄電装置のSOCは、電圧VBに依存することが知られており、一般的に電圧VBが大きくなるとSOCも大きくなる傾向がある。図3の破線の直線W12で示されるように、蓄電装置110,110Aが並列接続されている場合には、電流IBが正の場合、すなわち放電側においては、検出された電流IBに対して、蓄電装置110が単独の場合(実線の直線W11)よりも検出される電圧VBが大きくなる。すなわち、実際よりもSOCが大きいものと判断されてしまう可能性がある。そうすると、蓄電装置110,110Aの各々においては、放電可能な電力を上回る電力が出力されてしまう可能性があり、過放電となるおそれがある。
【0055】
一方、電流IBが負、すなわち充電側では、検出された電流IBに対して、蓄電装置110が単独の場合よりも検出される電圧VBが小さくなるので、仮に満充電状態であったとしても、まだ充電可能と判定されて過充電となってしまうおそれがある。
【0056】
上述のように、別の蓄電装置がもともと備えられている蓄電装置に並列に接続されている場合には、本来単独接続の場合に演算されるべき内部抵抗値よりも小さく内部抵抗が演算される。したがって、演算により算出された内部抵抗値を、蓄電装置の特性からとり得る内部抵抗値の範囲と比較することによって、不適切な蓄電装置が接続されているか否かを検出することができる。
【0057】
図4は、本実施の形態において、ECU300で実行されるバッテリ保護制御を説明するための機能ブロック図である。図4の機能ブロック図に記載された各機能ブロックは、ECU300によるハードウェア的あるいはソフトウェア的な処理によって実現される。
【0058】
図1および図4を参照して、ECU300は、内部抵抗演算部310と、判定部320と、制限値演算部330と、充放電制御部340と、表示制御部350と、リレー制御部360とを含む。
【0059】
内部抵抗演算部310は、電圧センサ111によって検出された蓄電装置110の電圧VB、および電流センサ112によって検出された蓄電装置110に入出力されるべき電流IB(すなわち、負荷装置180に供給される電流)を受ける。内部抵抗演算部310は、図3において説明したように、検出された電圧VBおよび電流IBに基づいて、式(1)を用いて蓄電装置110の内部抵抗値RBを演算する。そして、演算された内部抵抗値RBを判定部320へ出力する。
【0060】
なお、蓄電装置110の内部抵抗値RBの演算においては、内部抵抗演算部310が、図示しない温度センサによって検出された蓄電装置110の温度をさらに用いて、内部抵抗値RBを補正するようにしてもよい。
【0061】
判定部320は、内部抵抗演算部310で演算された蓄電装置110の内部抵抗値RBを受ける。判定部320は、内部抵抗値RBと、基準値である蓄電装置110の特性から予め定められる最小内部抵抗値Rminとを比較することによって、不適切な蓄電装置が接続されているかを判定する。そして、判定部320は、その判定結果である判定フラグFLGを生成し、制限値演算部330、表示制御部350、およびリレー制御部360へ出力する。
【0062】
制限値演算部330は、判定部320からの判定フラグFLGと、蓄電装置110の温度TBおよびSOCとを受ける。制限値演算部330は、これらの情報に基づいて、蓄電装置110への充電電力制限値Winおよび放電電力制限値Woutを設定する。このとき、判定フラグFLGによって不適切な蓄電装置が接続されていることが示されている場合には、制限値演算部330は、充放電電力制限値Win,Woutの大きさ(絶対値)を、正規の蓄電装置のみが接続されている場合と比較して小さくなるように設定する。これによって、不適切な蓄電装置の特性が正規の蓄電装置の特性より劣る場合に、過充電や過放電によって蓄電装置の劣化が促進されたり、蓄電装置や他の機器の故障の要因となったりすることを抑制することができる。
【0063】
充放電制御部340は、蓄電装置110のSOC、制限値演算部330からの充放電電力制限値Win,Wout、およびユーザのアクセル操作などに基づいて定まるモータジェネレータ130,135のトルク指令値TRを受ける。充放電制御部340は、これらの情報に基づいて、蓄電装置110の充放電電力が、制限値演算部330で定められた充放電電力制限値Win,Woutの範囲内となるように、制御信号PWC,PWI1、PWI2を生成し、PCU120内のコンバータ121およびインバータ122,123を制御する。
【0064】
表示制御部350は、判定部320からの判定フラグFLGを受ける。そして、表示制御部350は、判定フラグFLGによって不適切な蓄電装置が接続されていることが示されている場合には、制御信号DSPを表示装置170に出力して、異常であることをユーザに通知する。
【0065】
リレー制御部360は、判定部320からの判定フラグFLGを受ける。そして、リレー制御部360は、蓄電装置110の充放電電力制限値Win,Woutの低減によっても蓄電装置の保護が困難であるような場合には、SMR115を遮断する制御信号SE1を出力して、蓄電装置からの充放電が行なわれないようにする。
【0066】
図5は、本実施の形態において、ECU300で実行されるバッテリ保護制御処理の詳細を説明するためのフローチャートである。図5に示されるフローチャートは、ECU300に予め格納されたプログラムがメインルーチンから呼び出されて、所定周期で実行されることによって処理が実現される。あるいは、一部のステップについては、専用のハードウェア(電子回路)で処理を実現することも可能である。
【0067】
図1および図5を参照して、ECU300は、ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、電圧センサ111からの電圧VBおよび電流センサからの電流IBの検出値を取得する。
【0068】
ECU300は、S110にて、上述の式(1)を用いて、蓄電装置110の内部抵抗値BRを演算する。
【0069】
そして、ECU300は、S120にて、演算された内部抵抗値BRが、蓄電装置110の特性から定まる最小内部抵抗値Rminより小さいか否かを判定する。
【0070】
内部抵抗値BRが最小内部抵抗値Rmin以上の場合(S120にてNO)は、接続されている蓄電装置110は正規の蓄電装置である可能性が高いので、処理がメインルーチンに戻され、正規の蓄電装置の仕様に基づいて設定された充放電電力制限値Win,Woutを用いて充放電制御が実行される。
【0071】
一方、内部抵抗値BRが最小内部抵抗値Rminより小さい場合(S120にてYES)は、処理がS130に進められ、ECU300は、不適切な蓄電装置が接続されている可能性が高いとして、異常である旨の情報を記憶するとともに、表示装置170にその情報を表示する。
【0072】
さらに、ECU300は、S140にて、蓄電装置の充放電電力制限値Win,Woutの大きさを、正規の蓄電装置の仕様に基づいて設定される充放電電力制限値の大きさよりも小さくなるように設定する。これによって、蓄電装置に入出力される電力が制限される。なお、充放電電力制限値の低減に加えて、または、それに代えて、SMR115を遮断するようにしてもよい。
【0073】
以上のような処理に従って制御を行なうことによって、電源システム内に正規な蓄電装置とは仕様の異なる不適切な蓄電装置が接続されている場合に、過大な充放電電力によって蓄電装置やその他の機器の劣化や故障がもたらされることを抑制することが可能となる。
【0074】
なお、上述の内部抵抗値の演算において、式(1)等における開回路電圧V0は一定であるように説明したが、実際には蓄電装置のSOC等によって開回路電圧V0は変化し得る。そのため、内部抵抗値の演算に使用する開回路電圧V0は、SOC等に応じて変化されるようにしてもよい。あるいは、内部抵抗値の演算に使用する開回路電圧V0を固定値とし、開回路電圧V0の変動を考慮して基準値である最小内部抵抗値Rminを設定するようにしてもよい。
【0075】
また、上述の説明においては、正規の蓄電装置に並列に他の蓄電装置が接続されることによって演算された内部抵抗値が本来の内部抵抗値よりも小さくなる場合を例として説明した。一方で、演算された内部抵抗値が本来の内部抵抗値よりもはるかに大きいような場合にも、接続されている蓄電装置が非正規であったり、正規の蓄電装置ではあるが劣化が著しく進行していたりする可能性が高く、故障等の要因となる可能性がある。そのため、演算された内部抵抗値が適切な内部抵抗値の範囲を上回るような場合にも、上述のような充放電電力制限値の修正やSMRの遮断などの処置を行なうようにしてもよい。
【0076】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0077】
100 車両、105 電源システム、110,110A 蓄電装置、111 電圧センサ、112 電流センサ、115 SMR、120 PCU、121 コンバータ、122,123 インバータ、130,135 モータジェネレータ、140 動力伝達ギヤ、150 駆動輪、160 エンジン、170 表示装置、180 負荷装置、300 ECU、310 内部抵抗演算部、320 判定部、330 制限値演算部、340 充放電制御部、350 表示制御部、360 リレー制御部、C1,C2 コンデンサ、NL1 接地線、PL1,PL2 電力線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷装置に電力を供給するための電源システムであって、
蓄電装置と、
前記蓄電装置の電圧を検出するための電圧検出部と、
前記負荷装置に供給される電流を検出するための電流検出部と、
検出された前記電圧および前記電流に基づいて前記蓄電装置の内部抵抗値を演算するとともに、演算された前記内部抵抗値を予め定められた基準値と比較することによって、前記蓄電装置が正規の第1の蓄電装置とは異なる第2の蓄電装置を含んでいるか否かを判定するための制御装置とを備える、電源システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記蓄電装置が前記第2の蓄電装置を含んでいると判定した場合は、前記蓄電装置の充電電力制限値および放電電力制限値の少なくとも一方が、前記第1の蓄電装置である場合に比べてその大きさが小さくなるように設定する、請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記電源システムと前記負荷装置との間の電力の供給と遮断とを切換えるための切換装置が、前記電源システムと前記負荷装置とを電気的に結ぶ経路に設けられ、
前記制御装置は、前記蓄電装置が前記第2の蓄電装置を含んでいると判定した場合は、前記電源システムと前記負荷装置との間の電力を遮断するように前記切換装置を制御する、請求項1に記載の電源システム。
【請求項4】
前記基準値は、前記第1の蓄電装置の特性から定まる、最小内部抵抗値に基づいて設定される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電源システム。
【請求項5】
前記制御装置は、演算された前記内部抵抗値が前記基準値よりも小さい場合に、前記蓄電装置が前記第2の蓄電装置を含んでいると判定する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電源システム。
【請求項6】
車両であって、
電源システムと、
前記電源システムからの電力を用いて前記車両を走行させるための駆動力を発生するための駆動装置とを備え、
前記電源システムは、
蓄電装置と、
前記蓄電装置の電圧を検出するための電圧検出部と、
前記駆動装置に供給される電流を検出するための電流検出部と、
検出された前記電圧および前記電流に基づいて前記蓄電装置の内部抵抗値を演算するとともに、演算された前記内部抵抗値を予め定められた基準値と比較することによって、前記蓄電装置が正規の第1の蓄電装置とは異なる第2の蓄電装置を含んでいるか否かを判定するための制御装置とを含む、車両。
【請求項7】
負荷装置に電力を供給するための電源システムの制御方法であって、
前記電源システムは、
蓄電装置と、
前記蓄電装置の電圧を検出するための電圧検出部と、
前記負荷装置に供給される電流を検出するための電流検出部とを含み、
前記制御方法は、
検出された前記電圧および前記電流に基づいて、前記蓄電装置の内部抵抗値を演算するステップと、
演算された前記内部抵抗値を予め定められた基準値と比較するステップと、
前記比較するステップによる比較結果に基づいて、前記蓄電装置が正規の第1の蓄電装置とは異なる第2の蓄電装置を含んでいるか否かを判定するステップとを備える、電源システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−157123(P2012−157123A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12844(P2011−12844)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】