説明

電源システムおよび電源システムが搭載される移動装置

【課題】二次電池とキャパシタとを備える電源システムにおいて、簡易かつ確実に二次電池の温度上昇を抑制することができる電源システムを提供する。
【解決手段】複数の二次電池を相互に接続してなる二次電池ユニット6と、複数のキャパシタセルを相互に接続してなるキャパシタ2とを備える電源システムは、二次電池ユニット6が二次電池ケース6aを有し、キャパシタ2がキャパシタケース2a,2bを有する。そして、二次電池ユニット6は、当該電源システムが搭載される車両11のセンタトンネル14に連通する部位に配置されると共に、二次電池ケース6aが該車両11の左方および右方からキャパシタケース2a,2bで挟まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池とキャパシタとを備える電源システムに関し、特に、燃料電池、キャパシタ及び二次電池を備えて車両に搭載される燃料電池電源システム、および電源システムが搭載される車両等の移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動機を駆動源とする燃料電池車両、シリーズ型ハイブリッド車両や、電動機と内燃機関とを駆動源として組み合わせたパラレル型ハイブリット車両等が実用化されている。例えば、燃料電池車両においては、特許文献1に見られるように、蓄電手段としてのキャパシタ(電気二重層キャパシタ)と二次電池とを搭載し、キャパシタの自己放電による電力低下を二次電池で補うようにしたものが知られている。
【0003】
ここで、二次電池としては、ニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等であって、かかる二次電池は、一般的に電池ケースの内部で複数の電池を相互に接続してなる組電池(電池ユニット)の形で用いられる。そして、前記車両に搭載される二次電池ユニットは、該車両の駆動源に電力を安定的に供給するために多数の電池により構成される。
【0004】
このように、車両に搭載される二次電池ユニットが大型化すると、その内部の熱が外部に放熱され難くなり、充放電に伴う発熱により二次電池ユニット全体の温度が上昇すると共に、これを構成する各電池間に温度差を生じ得る。二次電池は、その使用温度範囲を超える高温状態で使用した場合には性能劣化が大きくなる。そのため、温度上昇を抑制して性能劣化を防止するための対策が必要となる。
【0005】
例えば、特許文献2の図1に見られるように、冷却ファンにより室内の空気を冷却ダクトを介して二次電池ユニットに供給し、二次電池ユニットを冷却して温度上昇を抑制するようにしたもののほか、二次電池ユニットを構成する各電池の間に間隙(間引き空間)を設けて、二次電池ユニットの内部の放熱を促すものなどが提案されている。
【特許文献1】特開2006−325399号公報
【特許文献2】特開平10−306722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、冷却ダクトは、その径を小さくするほど、冷却ファンと吸入口との距離が大きくなるほど、曲部の数が多くなるほど、管路抵抗が大きくなる。車両に大型の二次電池ユニットを搭載する場合には、室内空間の確保等の観点から二次電池ユニットの配置や冷却ダクトの配管が制限されため、ある程度管路抵抗の大きな冷却ダクトを採用しなければならない場合が多い。その結果、管路抵抗の大きなダクトで大型の二次電池ユニットを冷却するために、冷却ファンを大型化するか、冷却ファンの出力を高めなければならず、冷却ファン作動時の作動音が増大し、冷却ファンでの消費電力が上昇するという不都合が生じる。
【0007】
一方で、二次電池ユニットを構成する各電池の間に間隙(間引き空間)を設けた場合には、かかる間隙の体積だけ二次電池が大型化し、その搭載のためにより広いスペースが必要となる。
【0008】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、二次電池ユニットとキャパシタとを備える電源システムにおいて、システムの省スペース化を実現しながら確実に二次電池ユニットの温度上昇を抑制することができる電源システム、および電源システムが搭載された移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の二次電池を相互に接続してなる二次電池ユニットと、複数のキャパシタセルを相互に接続してなるキャパシタとを備える電源システムであって、前記二次電池ユニットは、前記複数の二次電池を収容する二次電池ケースを有し、前記キャパシタは、前記複数のキャパシタセルを収容するキャパシタケースを有し、前記二次電池ユニットとキャパシタとは、前記二次電池ケースとキャパシタケースとを接触させて設けられることを特徴とするものである(第1発明)。
【0010】
かかる第1発明は、二次電池ユニットに加えてキャパシタを備える電源システムにおいて、二次電池ユニットの熱を伝達させる対象としてキャパシタが選択されている。キャパシタは、二次電池に比して比熱が大きいことに加えて、キャパシタセルのサイズも大きい。これに対して、二次電池ユニットは、サイズの小さな二次電池を並列化して構成される。そのため、キャパシタは、二次電池ユニットに比して熱容量が大きく、過度に体積を増やさなくても、二次電池ユニットの熱を吸収しつつキャパシタ自体の温度上昇を抑制することができる。これにより、大きな熱容量を得るためにキャパシタを大型化させる必要がなく、電源システム全体の省スペース化を図ることができる。
【0011】
また、第1発明では、二次電池ユニットとキャパシタとを接触させて設けることにより、二次電池ユニットとキャパシタとを各々設けて場合に比して、デッドスペースを少なくして電源システム全体の省スペース化を図ることができる。
【0012】
さらに、第1発明では、一般的に充放電による発熱量が大きな二次電池ユニットを、該二次電池ユニットよりも発熱量が小さなキャパシタと接触させることにより、二次電池ユニットの熱をその二次電池ケースからキャパシタケースへと伝達させる。このとき、二次電池ケースとキャパシタケースとの間の熱伝達率を大きくすることにより、二次電池ユニットの熱をキャパシタ側に確実に伝達させることができる。そして、上述のように、キャパシタ側に熱を伝達させても、キャパシタの比熱や熱容量からその温度上昇が抑制されるため、キャパシタの性能を維持することができる。
【0013】
このように、第1発明の電源システムによれば、熱交換することによりシステムの省スペース化を実現しながら確実に二次電池ユニットの温度上昇を抑制することができる。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の移動装置は、第1発明の電源システムが搭載され、前記二次電池ユニットおよびキャパシタは、前記移動装置の内部空間に搭載され、該内部空間は、該移動装置が移動したときに、該移動装置外の空気を該内部空間に流入させる流入部と、流入した流入空気を該内部空間から流出させる流出部とを備える(第2発明)。
【0015】
かかる第2発明によれば、二次電池ユニットは、移動装置の移動時に流入空気が流れる内部空間に配置されるため、流入空気を冷却媒体として、二次電池ユニットおよびキャパシタを冷却することができる。これにより、冷却ダクトや冷却ファン等の構成を簡素として、簡易に二次電池ユニットの温度上昇を抑制することができる。
【0016】
なお、移動装置は、自動車や二輪車等の車両のほか、飛行機、船舶、ロボット等の種々の移動体を包含するものである。
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の車両は、第2発明の移動装置が車両である場合に、前記流入部と前記内部空間とが前記車両のセンタトンネルによって連通され、前記二次電池ユニットは、その上方と下方のいずれか一方または両方に前記センタトンネルと連通する通気空間を空けて配置される共に、前記車両の左方および右方から前記キャパシタで挟まれている(第3発明)。
【0018】
かかる第3発明によれば、センタトンネルは、当該車両の中央に前後方向に伸びるトンネルであるため、前方や後方各部からの外部空気の取り込みが容易である。そして、当該車両の走行時には、例えば、その車速に応じた流入空気がセンタトンネル内を流れ、該流入空気を通気空間を介して二次電池ユニットの上下いずれか一方または両側に流すことで、二次電池を効率よく冷却することができる。
【0019】
また、かかる第3発明によれば、二次電池ユニットを車幅中央に配置し、当該車両の左右方向からキャパシタで挟むことで、車両を上下方向や前後方向に拡張することなく、車両の左右対称性を生かして、例えば、当該車両のリアシート下方域の限られたスペースに二次電池およびキャパシタをレイアウトすることができる。
【0020】
さらに、第3発明によれば、二次電池ケースとキャパシタケースで挟むことで、これらの接触面積を大きくすることができると共に、二次電池ユニットの熱を該二次電池ユニットを挟む両側のキャパシタへと効率よく逃すことができ、該二次電池ユニット全体的の温度上昇を平均化でき、さらに確実に温度上昇を抑制することができる。
【0021】
前記第3発明において、前記二次電池ユニットは、該二次電池ユニットを冷却する冷却ファンを備えることが好ましい(第4発明)。
【0022】
かかる第4発明における冷却ファンは、主に当該車両の停車時等のように流入空気による冷却が期待できない場合に、強制的に空気の流れを作るためのものであり、これにより、流入空気による冷却を車両の停車時に補完することができると共に、車両の走行時には補助することもできる。
【0023】
前記第3または第4発明において、前記キャパシタと並列に接続された燃料電池ユニットと、入力部が前記燃料電池ユニット及び前記キャパシタに並列に接続されると共に、出力部が負荷に接続され、前記燃料電池ユニット及び前記キャパシタの出力電圧を昇圧して、該昇圧した電圧による電力を該負荷に供給する昇圧手段と、前記昇圧手段の出力部と前記二次電池ユニットとの間に設けられた電圧変換手段と、前記電圧変換手段の作動を制御して、前記電圧変換手段を介した前記二次電池ユニットから前記負荷への電力供給と、前記電圧変換手段を介した前記昇圧手段から前記二次電池ユニットへの電力供給による前記二次電池の充電とを実行する電子制御ユニットとを備える(第5発明)。
【0024】
かかる第5発明によれば、前述のように、電源システムの省スペース化を実現しながら確実に二次電池ユニットの温度上昇を抑制することができるとの作用効果に加えて、次のような作用効果を奏する。
【0025】
すなわち、前記二次電池ユニットとキャパシタとに加えて燃料電池ユニットを備える車両において、昇圧手段によって燃料電池ユニットおよびキャパシタの出力が昇圧されるため、その分だけ燃料電池ユニットおよびキャパシタの合計出力電圧の低減を図ることができる。
【0026】
加えて、電圧変換手段を介して二次電池ユニットから負荷に電力を供給することにより、二次電池の出力電力によって、燃料電池ユニットおよびキャパシタから負荷への電力供給をアシストすることができる。そのため、燃料電池ユニットとキャパシタと二次電池ユニットとを相互に補助ないし補完させ、これらから負荷へ安定的に電力を供給することができると共に、燃料電池ユニットにおいて積層されるセルの個数および燃料電池ユニットの体積、ならびにキャパシタや二次電池ユニットの体積の低減を図ることができる。
【0027】
このように、第5発明によれば、電源システム全体を小型化させることができ、当該車両の内部を電源システム以外のスペースに広く用いることができ、例えば、室内空間を広げること等、車両設計の自由度をも向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の実施の形態について、図1〜図5を参照して説明する。
【0029】
図1は、本実施形態における燃料電池電源システムの全体構成図である。図1に示すように、本発明の電源システムである燃料電池電源システムは、燃料電池車両11(本発明の車両に相当する)に搭載されるものであって、燃料電池ユニット1、燃料電池ユニット1と並列に接続された電気二重層キャパシタ2(以下、単にキャパシタ2という)、入力部が燃料電池ユニット1及びキャパシタ2に接続されると共に、出力部がPDU4(Power Drive Unit)を介して電動機5(本発明の負荷に相当する)に接続された昇圧手段3(Voltage Boost Unit)、及び入力部が昇圧手段3に接続されると共に出力部が二次電池ユニット6(本実施の形態では、リチウムイオンバッテリを使用)に接続された双方向電圧変換手段7(以下、電圧変換手段7という)を備えている。
【0030】
燃料電池ユニット1は、例えば燃料電池スタックを250個直列に接続して構成され、出力電圧が約225V(出力電流0A)〜180V(出力電流210A)の範囲で変動するものである。また、キャパシタ2は図示しない複数のキャパシタセルから構成され、出力電圧が200Vを中心とした範囲(約下限154V〜上限243Vの範囲)で変動するものである。また、二次電池ユニット6は、図示しない複数の二次電池(リチウムイオン電池)を相互に接続してなる電池ユニットであって、出力電圧は約290V〜350Vの範囲で変動する。
【0031】
昇圧手段3は、例えば、定格100kwで昇圧比1.0〜2.5のDC/DCコンバータであって、少なくとも昇圧機能を有し、降圧機能は必要に応じて付加される。また、電圧変換手段7は、例えば、定格10kwで昇圧比1.0〜2.5の昇降圧可能なDC/DCコンバータである。
【0032】
さらに、燃料電池電源システムは、二次電池ユニット6と電圧変換手段7との間で、二次電池ユニット6と電圧変換手段7とに並列に接続された補機8とを備える。補機8は、燃料電池ユニット1に水素ガス等の反応ガスを供給するためのポンプ等であって、補機8は、PDU9(Power Drive Unit)を介して、二次電池ユニット6及び電圧変換手段7に直結する第2電力供給ラインL2に接続されている。尚、本実施形態の燃料電池電源システムにおいて、説明の都合上、燃料電池ユニット1及びキャパシタ2に直結する電力供給ラインを第1電力供給ラインL1とし、二次電池ユニット6及び電圧変換手段7に直結する電力供給ラインを第2電力供給ラインL2、第1電力供給ラインL1を昇圧手段3により昇圧した電力供給ラインを第3電力供給ラインL3としている。
【0033】
燃料電池電源システムは、電子制御ユニット10を備え、電子制御ユニット10は、燃料電池ユニット1及び二次電池ユニット6の各々に設けられた図示しない電圧センサ及び電流センサの検出信号を取得し、燃料電池ユニット1及び二次電池ユニット6から出力される電圧、電流及び電力を検知する。
【0034】
また、電子制御ユニット10は、キャパシタ2を構成する各キャパシタセルに接続されて各キャパシタセルの出力電圧を検知する電圧センサと、キャパシタ2の端部に設けられてキャパシタ2の出力電流を検知する電流センサとに接続されて、各キャパシタセルの出力電圧と、これらの出力電圧からキャパシタ2全体の出力電圧と、キャパシタ2全体の出力電流と、キャパシタ2全体の出力電力を検知する。さらに、電子制御ユニット10は、各キャパシタセルの出力電圧を監視する。
【0035】
さらに、電子制御ユニット10は、キャパシタ2の出力電圧と出力電流とからキャパシタ2の開路電圧を推定し、推定した開路電圧と該キャパシタ2の残量量(以下、SOCという)との関係を規定したマップやデータテーブル(以下、マップ等という)を参照して、キャパシタ2のSOCを推定する。また、電子制御ユニット10は、二次電池ユニット6の出力電圧と出力電流とから該二次電池の開路電圧を推定し、推定した二次電池の開路電圧とSOCとの関係を規定したマップ等を参照して、二次電池ユニット6のSOCを推定する。
【0036】
また、電子制御ユニット10は、燃料電池ユニット1の出力、キャパシタ2及び二次電池ユニット6の各SOCに基づいて、燃料電池ユニット1の作動制御と、昇圧手段3または電圧変換手段7の作動制御とを実行し、燃料電池ユニット1、キャパシタ2及び二次電池ユニット6から電動機5への電力供給と、燃料電池ユニット1からキャパシタ2及び二次電池ユニット6の充電とを行う。
【0037】
電子制御ユニット10は、電動機5は当該車両11が減速する際には発電機として機能するため、車両11の減速時に電動機5で生じる回生電力を回収して、該回生電力によりキャパシタ2及び二次電池2の充電を実行する。尚、このとき、電子制御ユニット10は、PDU4に備えられた電圧センサ及び電流センサ(図示しない)により、電動機5の回生電力を検知して昇圧手段3または電圧変換手段7の作動制御を実行し、電動機5からキャパシタ2及び二次電池ユニット6への充電とを行う。
【0038】
なお、本実施形態の燃料電池電源システムにおいて、燃料電池ユニット1と昇圧手段3及びキャパシタ2との間には、ダイオードDが設けられており、ダイオードDにより燃料電池ユニット1への電流の流入が禁止されている。また、ダイオードDに替えてトランジスタ等の他の整流素子を用いることにより、または、キャパシタ2を降圧手段(ダウンコンバータ)を介して燃料電池ユニット1に接続することにより、燃料電池ユニット1への電流の流入を禁止してもよい。
【0039】
以上が、本実施の形態における燃料電池電源システムの全体構成である。このように、本実施形態の燃料電池電源システムによれば、二次電池ユニット6とキャパシタ2とに加えて燃料電池ユニット1を備え、昇圧手段3によって燃料電池ユニット1およびキャパシタ2の出力が昇圧されるため、その分だけ燃料電池ユニット1およびキャパシタ2の合計出力電圧の低減を図ることができる。加えて、電圧変換手段7を介して二次電池ユニット6から電動機5に電力を供給することにより、二次電池ユニット6の出力電力によって、燃料電池ユニット1およびキャパシタ2から電動機5への電力供給をアシストすることができる。そのため、各電源1,2,6を相互に補助ないし補完させ、これらから電動機5へ安定的に電力を供給することができる共に、燃料電池ユニット1において積層されるセルの個数および燃料電池ユニット1の体積、ならびにキャパシタ2や二次電池ユニット6の体積の低減を図ることができる。
【0040】

[第1実施形態]
次に、図2および図3を参照して、第1実施形態の燃料電池電源システムにおけるキャパシタ2と二次電池ユニット6の具体的構成について説明する。
【0041】
図2は、燃料電池車両11を側方から見た部分断面図であり、図3は、キャパシタ3および二次電池ユニット6のレイアウトを示す斜視図である。図2および図3に示すように、キャパシタ3は、物理的に分離した2つの箱型のキャパシタケース2a,2bを備え、キャパシタケース2a,2bにはそれぞれ図示しない所定個数のキャパシタセルが相互に接続された状態で収容されている。一方、二次電池ユニット6は、箱型の二次電池ケース6aと二次電池ケース6aに連設して設けられた冷却ファン6bを備え、二次電池ケース6a内には図示しない所定個数の二次電池が相互に接続された状態で収容されている。
【0042】
キャパシタ2と二次電池ユニット6とは、二次電池ケース6aを2つのキャパシタケース2a,2bで挟んで接触させた状態で、当該車両11のリアシートの下側で、車両下部フレーム13との間の内部空間15に配置される。
【0043】
なお、キャパシタケース2a,2b内は、各キャパシタセル間がスペーサを介して接触しており、内部へ外気を通気させずに外表面から放熱する。また、二次電池ケース6a内は、二次電池ユニット6を構成する各二次電池の間に外気を通気して各二次電池の表面から放熱する。
【0044】
キャパシタケース2a,2bと二次電池ケース6aとは、それぞれ所定の熱伝導率を有する合成樹脂製の部材によって構成され、キャパシタケース2a,2bと二次電池ケース6aとを接触させた状態での両ケースの間の熱伝達率(例えば、0.2[W/m・K]程度の熱伝達率)となっている。そのため、一般的に充放電による発熱量が大きな二次電池ユニット6内の熱を二次電池ケース6aからキャパシタケース2a,2bへの伝達させることができる。
【0045】
さらに、二次電池ユニット6を構成する各二次電池の比熱χ1(例えば、0.4[J/kg・K])と、キャパシタ2を構成する各キャパシタセルの比熱χ2(例えば、1.0[J/kg・K])とは、その材質からχ1<<χ2の関係にある。そのため、二次電池ユニット6の発熱量をキャパシタ2に伝達させても、キャパシタ2の温度上昇は小さく、キャパシタ2への影響は小さい。
【0046】
このように第1実施形態の燃料電池電源システムによれば、二次電池ユニット6をキャパシタ2で挟んで接触させることにより、システム全体の省スペース化を図りながら二次電池ユニット6の温度上昇を確実に抑制することができる。
【0047】
さらに、二次電池ユニット6は、燃料電池車両11のセンタトンネル14に連通する部位、すなわち、車両幅の中央位置に配置され、両側からキャパシタ2によって挟まれた状態となっている。また、二次電池ユニット6の設置部位には、二次電池ケース6aの上方に上方通気空間15aと、下方に下方通気空間15bとが形成さており、上方通気空間15aと下方通気空間15bとはそれぞれセンタトンネル14に連通している。
【0048】
センタトンネル14は、アンダーカバーとの間に形成された空間であって、燃料電池車両11のフロントグリル17を通して外部に開放されると共に、センタトンネル14を構成するアンダーカバーには通気孔が設けられており、該通気孔を介してセンタトンネル14は外部開放されている。また、センタトンネル14は、二次電池ケース6aの前面に面すると共に各通気空間15a,15bに連通されており、各通気空間15a,15bは、車両後方の下部フレームにおける間隙等のような流出部(図示省略)を介して外部に開放されている。さらに、通気空間15a,15bと流出部との間には、冷却ファン6bが設けられており、冷却ファン6bは、二次電池ケース6aの背面側から通気空間15a,15bの空気を誘引して車両後方側に強制的に対流させる。
【0049】
このように第1実施形態の燃料電池電源システムによれば、二次電池ユニット6をセンタトンネル14に連通する部位に配置することにより、燃料電池車両11の走行時に吸気されてセンタトンネル14を流れる流入空気を利用して、二次電池ユニット6を冷却することができる。これにより、冷却ダクトや冷却ファン等の構成を不要として、簡易に二次電池ユニット6の温度上昇を抑制することができる。さらに、二次電池ユニット6に冷却ファン6bを設けることにより、当該車両11の走行に応じてセンタトンネル内を流れる流入空気による冷却を補助することや、当該車両11の停車時に二次電池ユニット6の冷却を行うことができる。
【0050】
さらに第1実施形態の燃料電池電源システムによれば、二次電池ユニット6を車幅中央に配置し、当該車両11の左右方向からキャパシタ2(2a,2b)で挟むことで、車両11を上下方向や前後方向に拡張することなく、車両の左右対称性を生かして二次電池ユニット6およびキャパシタ2を効率よくレイアウトすることができる。
【0051】

[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態を図4を参照して説明する。尚、本実施形態は、キャパシタ2および二次電池ユニット6のケース形状と、冷却ファン16の設置位置とが相違するものであるので、第1実施形態と同一の構成要素については第1実施形態と同一の参照符号を用いて説明を省略する。
【0052】
図4は、本実施形態におけるキャパシタ3および二次電池ユニット6のレイアウトを示す斜視図である。図4に示すように、キャパシタ3は、物理的に分離した2つの箱型のキャパシタケース2a´,2b´を備え、キャパシタケース2a´,2b´にはそれぞれ図示しない所定個数のキャパシタセルが相互に接続された状態で収容されている。一方、二次電池ユニット6は、平面視T字形状の二次電池ケース6a´と二次電池ケース6a´に連設して設けられた冷却ファン6bを備え、二次電池ケース6a´内には図示しない所定個数の二次電池が相互に接続された状態で収容されている。
【0053】
キャパシタ2と二次電池ユニット6とは、二次電池ケース6a´の非対称な突出部6c´を2つのキャパシタケース2a´,2b´で挟んで接触させた状態で配置される。このとき、二次電池ケース6a´とキャパシタケース2a´,2b´とは、キャパシタケース2a´,2b´より挟持される挟持面のほか、二次電池ケース6a´の対称な2つの突出部分6d´,6d´にも接触面を有する。これにより、キャパシタケース2a´,2b´と二次電池ケース6a´との接触面積を大きくすることができ、上述の第1実施形態の作用効果に加えて、より効率よく二次電池ユニット6内の熱を二次電池ケース6a´からキャパシタケース2a´,2b´への伝達させることができる。
【0054】
尚、この場合、冷却ファン6bは、二次電池ケース6a´の前面側に設けられて、センタトンネル14内の空気を誘引して通気空間15a,15b側へ排気することにより、センタトンネルおよび通気空間15a,15bの空気を車両後方側に強制的に対流させる。
これにより、キャパシタケース2a´,2b´と二次電池ケース6a´との接触面積を大きくすることができ、上述の第1実施形態の作用効果に加えて、より効率よく二次電池ユニット6内の熱を二次電池ケース6a´からキャパシタケース2a´,2b´への伝達させることができる。
【0055】
尚、この場合、冷却ファン6bは、二次電池ケース6a´の前面側に設けられて、センタトンネル14内の空気を誘引して通気空間15a,15b側へ排気することにより、センタトンネルおよび通気空間15a,15bの空気を車両後方側に強制的に対流させる。
【0056】

[第3実施形態]
次に本発明の第3実施形態を図5を参照して説明する。尚、本実施形態は、キャパシタ2および二次電池ユニット6のケース形状と、冷却ファン16の設置位置とが相違するものであるので、第1実施形態と同一の構成要素については第1実施形態と同一の参照符号を用いて説明を省略する。
【0057】
図5は、本実施形態におけるキャパシタ3および二次電池ユニット6のレイアウトを示す斜視図である。図5に示すように、キャパシタ3は、物理的に分離した2つの箱型のキャパシタケース2a´´,2b´´を備え、キャパシタケース2a´´,2b´´にはそれぞれ図示しない所定個数のキャパシタセルが相互に接続された状態で収容されている。一方、二次電池ユニット6は、平面視L字形状の二次電池ケース6a´´と二次電池ケース6a´´に連設して設けられた冷却ファン6bを備え、二次電池ケース6a´´内には図示しない所定個数の二次電池が相互に接続された状態で収容されている。
【0058】
キャパシタ2と二次電池ユニット6とは、二次電池ケース6a´´の第1突出部6c´´を2つのキャパシタケース2a´´,2b´´で挟んで接触させた状態で配置される。このとき、二次電池ケース6a´´とキャパシタケース2a´´,2b´´とは、キャパシタケース2a´´,2b´´より挟持される挟持面のほか、第2突出部6d´´でも一方のキャパシタケース2a´´と接触面を有する。
【0059】
そして、本実施形態では、冷却ファン6bは、他方のキャパシタケース2b´´(二次電池ケース6a´´と1つの接触面しか有さないキャパシタケース2b´´)の背面側に設けられて、二次電池ケース6a´´内の空気を誘引し、さらには通気空間15a,15bの空気を誘引し、キャパシタケース2a´´,2b´´の外表面を冷却して車両後方側に強制的に対流させる。
【0060】
これにより、上述の第1実施形態の作用効果に加えて、キャパシタケース2a´´と二次電池ケース6a´´との接触面積を大きくして、2次電池ユニット6内の熱を二次電池ケース6a´´からキャパシタケース2a´´へ効率よく伝達させることができると共に、通気空間15a,15bと連通する図示しない流出部の位置に合わせて、冷却ファンの位置を当該車両後方の左右位置に適宜変更することができる。
【0061】
なお、上記第1〜第3実施形態では、センタトンネルを外部空気が流れる通風孔として利用しているが、これに限らず、当該車両11の下部フレームに別途設けられた通風孔等を利用して二次電池ユニット6の冷却を行うようにしてもよい。また、この場合、連通孔の配置に対応させて、該連通孔の他端側が二次電池ユニット6に連通するようにその位置が適宜変更され、外部空気の流入部もフロントグリル17以外の空気取り入れ口を利用することができる。
【0062】
また、上記第1〜第3実施形態では、キャパシタ2と二次電池ユニット6とは、二次電池ユニット6を当該車両11の左右方向からキャパシタ2挟むように配置されたが、これに限定されず、キャパシタ2を車両11の上下方向からキャパシタ2で挟むように配置してもよい。この場合、通気空間15a,15bは、二次電池ユニット6の左右位置に設けるようにすればよい。また、キャパシタ2を1つとして、キャパシタ2と二次電池ユニット6との接触面積が2つのキャパシタで挟んだ場合と同等となるように、キャパシタ2と二次電池ユニット6とを対向する1面で接触させるようにしてもよい。さらに、これらキャパシタ2および二次電池ユニット6の形状および配置の変更に合わせて、冷却ファン6bの配置も適宜変更することができる。
【0063】
さらに、上記第1〜第3実施形態では、冷却ファン6bは、センタトンネル14および通気空間15a,15bを強制的に当該車両11の後方側へと対流させるように設けられているが、これに限らず、冷却ファンによる空気の対流の向きが、当該車両11の後方から前方へ向かう向き、もしくは上部から下部へ向かう向きとなるようにしてもよい。この場合、冷却ファン6bは、主に、当該車両11の停車時に作動させることにより(当該車両11の車速に応じたセンタトンネル内の流入空気の流れが期待できない場合に)、車両後方から(車両11の走行時には流出部となる部分から)外部空気を取り入れて、二次電池を冷却することができる。
【0064】
さらに、吸気位置に関して、車両11の室内や荷物室内(トランクルーム内)の空気を取り入れて、該空気を冷却媒体として利用し、外部に排出するようにしてもよい。
【0065】
これにより、車両後方側に設置された二次電池ユニット6により近い位置から外部空気を取り入れてこれに供給することができ、二次電池ユニット6を効率よく冷却することができる。特に、当該車両11の前方に発熱量の大きな電動機5やPDU4が配置され、当該車両11の後方に発熱量の小さい部材(例えば、水素ボンベ等)が配置されている場合には、車両後方から外部空気を取り入れることにより、外部空気が他の部材によって温度上昇することを抑制して、該外部空気により二次電池ユニット6を効率よく冷却することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、車両として四輪自動車を例として説明したが、車両はこれに限定されるものではなく二輪車や鉄道車両等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本実施形態の燃料電池電源システムの全体構成図。
【図2】第1実施形態における燃料電池車両を側方から見た部分断面図。
【図3】第1実施形態におけるキャパシタおよび二次電池ユニットのレイアウトを示す斜視図。
【図4】第2実施形態におけるキャパシタおよび二次電池ユニットのレイアウトを示す斜視図。
【図5】第3実施形態におけるキャパシタおよび二次電池ユニットのレイアウトを示す斜視図。
【符号の説明】
【0068】
1…燃料電池ユニット、2…キャパシタ、2a,2b,2a´,2b´,2a´´2b´´…キャパシタケース、3…昇圧手段、5…電動機(負荷)、6…二次電池ユニット、6a,6a´,6a´´…二次電池ケース、6b…冷却ファン、7…(双方向)電圧変換手段、10…電子制御ユニット、11…燃料電池車両(移動装置)、12…リアシート、13…車両下部フレーム、14…センタトンネル、15…内部空間、15a…上方通気空間、15b…下方通気空間、16…冷却ファン、17…フロントグリル(流入部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の二次電池を相互に接続してなる二次電池ユニットと、複数のキャパシタセルを相互に接続してなるキャパシタとを備える電源システムであって、
前記二次電池ユニットは、前記複数の二次電池を収容する二次電池ケースを有し、
前記キャパシタは、前記複数のキャパシタセルを収容するキャパシタケースを有し、
前記二次電池ユニットとキャパシタとは、前記二次電池ケースとキャパシタケースとを接触させて設けられることを特徴とする電源システム。
【請求項2】
請求項1記載の電源システムが搭載された移動装置であって、
前記二次電池ユニットおよびキャパシタは、前記移動装置の内部空間に搭載され、該内部空間は、該移動装置が移動したときに、該移動装置外の空気を該内部空間に流入させる流入部と、流入した流入空気を該内部空間から流出させる流出部とを備えることを特徴とする移動装置。
【請求項3】
請求項2記載の移動装置が車両である場合において、
前記流入部と前記内部空間とが前記車両のセンタトンネルによって連通され、
前記二次電池ユニットは、その上方と下方のいずれか一方または両方に前記センタトンネルと連通する通気空間を空けて配置される共に、前記車両の左方および右方から前記キャパシタで挟まれていることを特徴とする車両。
【請求項4】
請求項3記載の車両において、
前記二次電池ユニットは、該二次電池ユニットを冷却する冷却ファンを備えることを特徴とする車両。
【請求項5】
請求項3または4記載の車両において、
前記キャパシタと並列に接続された燃料電池ユニットと、
入力部が前記燃料電池ユニット及び前記キャパシタに並列に接続されると共に、出力部が負荷に接続され、前記燃料電池ユニット及び前記キャパシタの出力電圧を昇圧して、該昇圧した電圧による電力を該負荷に供給する昇圧手段と、
前記昇圧手段の出力部と前記二次電池ユニットとの間に設けられた電圧変換手段と、
前記電圧変換手段の作動を制御して、前記電圧変換手段を介した前記二次電池ユニットから前記負荷への電力供給と、前記電圧変換手段を介した前記昇圧手段から前記二次電池ユニットへの電力供給による前記二次電池の充電とを実行する電子制御ユニットと
を備えることを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−129773(P2009−129773A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304703(P2007−304703)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】