電源制御装置
【課題】エネルギを効率よく回収して車両の燃費を向上させることができる電源制御装置を提供すること。
【解決手段】廃熱発電電力と減速回生電力が供給される電源バスにおいて、廃熱発電制御手段6では、減速回生によって減速回生電力が電源バスに供給されている場合には、廃熱発電電力(WTG)(若しくは、廃熱発電そのもの)を抑制(ゼロに設定)する。
【解決手段】廃熱発電電力と減速回生電力が供給される電源バスにおいて、廃熱発電制御手段6では、減速回生によって減速回生電力が電源バスに供給されている場合には、廃熱発電電力(WTG)(若しくは、廃熱発電そのもの)を抑制(ゼロに設定)する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン等を熱源とし、その熱源の熱エネルギを利用して発電する熱発電機を備えた電源制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車には、多くの電気・電子機器が搭載されるようになり、その電力需要は増加傾向にある。そのような中で、従来のようにエンジンの動力のみから発電機を回して発電する方法では、エンジン動力の多くを発電に費やすことによる燃費や加速性能の悪化、及び供給電力不足による電源電圧の低下やバッテリ上がりが懸念されている。
【0003】
そこで、エンジン動力以外のエネルギ、特に、従来車両において捨てられていたエネルギを回収し発電(回生)することで、上記の問題を解決しようとする技術(例えば、特許文献1参照)が提案されている。例えば、特許文献1には、減速時の運動エネルギによって発電する減速回生装置が記載されている。
【特許文献1】特開平10−309002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の減速回生装置以外にも、エンジンの冷却水の熱エネルギによって発電する廃熱発電機がある。これは、エンジンの冷却水の熱エネルギで冷媒を膨張させ、その膨張による運動エネルギを膨張機で回転エネルギに変えて発電機を駆動して発電する、という冷媒の凝縮、及び膨張のランキンサイクルを用いたものである。この廃熱発電機を車両の電源系に接続して、廃熱発電による廃熱発電電力を供給することを想定した場合、廃熱発電電力が車両の電気負荷の必要とする電力より少なければ、車両のオルタネータのレギュレータによる電圧制御によって、負荷電力と廃熱発電電力との差分をオルタネータによって発電することが可能となる。その結果、オルタネータによる発電電力(エンジンの動力を用いてオルタネータによって発電した動力発電電力)は廃熱発電電力の分だけ少なくなり、これに伴って、オルタネータの負荷が減るためエンジンの燃料が節約できる。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のような減速回生装置を搭載した車両の電源系に廃熱発電による廃熱発電電力を供給する場合、減速回生と廃熱発電の双方から供給される電力が電源系の上限電圧を越えるような電力であるとき、電源系は双方の電力を同時に受け入れらず、その結果、減速回生(あるいは、廃熱発電)による効果が減ることになる。
【0006】
このような場合、レギュレータによる電圧制御の調整電圧の上限を高くすることによって、電源系において双方の電力を同時に受け入れることのできる電力を増やすことができるが、その一方でバッテリが過充電気味となるためバッテリの寿命を縮めてしまう。また、鉛バッテリのような充電の受け入れ性能が劣る電池に替わり、リチウム電池やニッケル水素(NiMH)電池のような高性能なバッテリを採用することも考えられるが、このような高性能なバッテリを採用するとコスト高となってしまう。
【0007】
さらに、廃熱発電による発電電力が車両の電気負荷の必要とする電力よりも多い場合、オルタネータは全く発電しなくて済むことになるが、同時に減速回生による発電電力も全く受け入れないことになる。その一方、廃熱発電は、エンジンの冷却水から熱を奪うので、過度の発電により冷却水温を下げ過ぎると、発電量が減少するばかりでなく、燃費やエミッションに悪い影響を与えるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたもので、エネルギを効率よく回収して車両の燃費を向上させることができる電源制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた請求項1記載の電源装置装置は、
移動体の電源系の電圧値が所定の調整電圧値となるように、移動体の動力を用いて発電した動力発電電力を電源系に供給する動力発電手段を備えたものであって、
移動体における熱源の熱エネルギを用いて発電し、この発電した熱発電電力を電源系に供給する熱発電手段と、
電源系の電圧値が予め設定された上限値を上回らないように、熱発電手段の熱発電電力を制御する熱発電制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
これにより、熱発電電力の余剰によって電源系の電圧値が上限値を上回らないように抑えられるため、動力発電電力と熱発電電力を同時に受け入れることができるとともに、電源系にバッテリが接続される場合には、このバッテリの過充電を防ぐことができる。その結果、熱源の熱エネルギを効率よく回収して車両の燃費を向上させる効果が期待できる。
【0011】
請求項2に記載のように、熱発電制御手段は、動力発電手段に対する所定の調整電圧値よりも高い値に設定された上限値を上回らないように制御することが好ましい。これにより、熱発電電力が大きい場合であっても、上記所定の調整電圧値よりも高い値に設定された上限値を上回らない範囲で熱発電電力を利用することができるようになり、また、電源系の電圧値を安定させることができる。
【0012】
請求項3に記載の電源制御装置は、移動体の電源系の電圧値が所定の調整電圧値となるように、移動体の動力を用いて発電した動力発電電力を電源系に供給する動力発電手段を備えたものであって、
移動体における熱源の熱エネルギを用いて発電し、この発電した熱発電電力を電源系に供給する熱発電手段と、
移動体の減速時に、当該移動体の運動エネルギを用いて発電し、この発電した減速回生電力を電源系に供給する減速回生手段と、
減速回生手段による減速回生電力が供給されている場合、熱発電手段の熱発電電力を抑制するように制御する熱発電制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
減速回生電力は、その電力を蓄える手段を備えない限り蓄電することはできないため、減速回生電力が電気系に供給される場合には、その電力を最大限受け入れることが好ましい。一方、熱発電電力は、上記のように熱源の熱エネルギを用いて発電されたものであり、熱源から積極的に熱エネルギを奪わなければ、その熱エネルギは蓄熱される。
【0014】
本発明は、この点に着目してなされたものであり、熱発電電力と減速回生電力が供給される電気系において、減速回生手段によって減速回生電力が供給されている場合には、熱発電手段による熱発電電力(若しくは、熱発電そのもの)を抑制する。これにより、減速回生電力を最大限受け入れつつ熱エネルギを蓄熱することができるため、エネルギを効率よく回収して車両の燃費を向上させることができる。
【0015】
請求項4に記載のように、熱発電手段は、電源系の電圧値が、動力発電手段に対する所定の調整電圧値よりも高い値で、かつ、減速回生手段に対する調整電圧値よりも低い値に設定された当該熱発電手段に対する調整電圧値となるように、熱発電電力を供給することが好ましい。
【0016】
これにより、移動体が減速中でなく、熱発電電力が大きい場合には、熱発電電力によって電気系の電圧値を熱発電手段の調整電圧に保つことができる。なお、移動体が減速中でなく、熱発電電力が小さい場合には、動力発電電力によって電気系の電圧値を動力発電手段の調整電圧に保つようにする。また、移動体が減速中の場合には、減速回生電力によって電気系の電圧値を減速回生手段の調整電圧に保つようにする。この時、電気系の電圧値が減速回生手段の調整電圧に保たれていれば、熱発電手段の調整電圧を上回っているので、熱発電手段による発電をしないようにするとよい。
【0017】
請求項5に記載のように、熱発電制御手段は、電源系において通常使用される電圧範囲の下限値よりも低い値に熱発電手段に対する調整電圧値を変更する熱発電調整電圧値変更手段を備えることが好ましい。
【0018】
これにより、減速回生手段による減速回生電力が電源系に供給されている場合、熱発電調整電圧値変更手段によって変更された通常使用される電圧よりも低い調整電圧値に近づくように、熱発電手段による熱発電電力の供給を抑えることができる。
【0019】
請求項6に記載のように、移動体の減速又は減速指令を検知した場合に、減速回生を指示するための減速回生信号を出力する減速回生信号出力手段を備え、
減速回生手段は、減速回生信号の出力を受けた場合に発電するものであり、
熱発電制御手段は、
減速回生信号の出力を受けた場合に熱発電手段の熱発電電力を制御するものであり、当該熱発電制御手段における減速回生信号の出力に対する応答性を減速回生手段における減速回生信号の出力に対する応答性よりも遅くするための手段を備えることが好ましい。
【0020】
これにより、減速回生信号の出力に対する減速回生手段と熱発電制御手段の応答性に差をもたせることができるため、減速回生手段と熱発電制御手段による発電の干渉や、熱発電制御手段における制御のチャタリングを防止することができる。
【0021】
請求項7に記載の電源制御装置は、電源系の電圧値を検出する電圧検出手段を備え、電圧検出手段は、動力発電手段、及び熱発電手段からの電力線が電源系と接続する接続部よりも電源系に接続されたバッテリに近い部位にて検出することが好ましい。これにより、外乱による影響が少なく、正確で安定した検出が可能となる。
【0022】
請求項8に記載の電源制御装置によれば、熱発電手段からの電力線が電源系と接続する接続部は、動力発電手段からの電力線が電源系と接続する接続部よりもバッテリの近くに位置することが好ましい。
【0023】
一般に、熱発電電力は動力発電電力よりも小さい。そこで、大電流の流れる動力発電手段と電気系の負荷との間が可能な限り短くなるように、熱発電手段からの電力線が電源系と接続する接続部を動力発電手段からの電力線が電源系と接続する接続部よりもバッテリの近くに位置することにより、電力損失を小さくすることができる。
【0024】
請求項9に記載の電源制御装置によれば、熱発電手段は、熱源の熱エネルギによる熱伝達媒体の膨張又は/及び凝縮によって発生する運動エネルギを利用して発電する熱発電機を駆動させることで熱発電電力を発生する手段を備えることを特徴とする。これにより、熱伝達媒体の熱エネルギを利用した熱発電が可能になる。
【0025】
請求項10に記載の電源制御装置によれば、熱伝達媒体は移動体に搭載された空調装置の冷媒であって、この冷媒の膨張前の圧力、冷媒流量、及び温度から熱発電手段の発電可能な電力を算出する熱発電電力算出手段と、
冷媒を加圧し循環させる冷媒ポンプと、
熱発電電力算出手段の算出した発電可能電力が出力されるように、熱発電機の回転数、回転トルク、及び冷媒ポンプの回転数を制御する手段と、を備えることを特徴とする。
【0026】
このように、熱発電機や冷媒ポンプを制御することによって、上記発電可能電力を実際に発電し電気系に供給することが可能となる。
【0027】
請求項11に記載の電源制御装置は、
熱発電機における熱伝達媒体の流路をバイパスする流路バイパス手段と、
流路バイパス手段を流れる熱伝達媒体の流量を制御するバイパス流量制御手段と、を備え、
熱発電制御手段は、バイパス手段に熱伝達媒体を流すことによって熱発電電力を抑制することを特徴とする。
【0028】
これにより、減速回生手段による減速回生電力の供給開始に伴って、応答よく、熱発電手段の熱発電電力を抑制することが可能となる。
【0029】
請求項12に記載の電源制御装置によれば、移動体はハイブリッド電気自動車であって、当該ハイブリッド電気自動車の電源系に供給された熱発電手段からの熱発電電力をハイブリッド電気自動車の駆動用の電力に変換する手段を備えることを特徴とする。
【0030】
これにより、ハイブリッド電気自動車の電源系に熱発電手段からの熱発電電力を供給して、駆動用の電力として利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の電源制御装置の実施態様について、図面を参照して説明する。なお、本実施形態では、自動車に搭載された電源制御装置の適用例について説明するものであるが、自動車に限らず、鉄道車両等の熱源を備える移動体に適用可能である。
【0032】
図1は、本実施形態における車両の電気系を示すブロック図である。同図に示す車両の電気系は、エンジン1、エンジン制御手段2、オルタネータ&レギュレータ3、減速回生制御手段4、廃熱発電手段5、廃熱発電制御手段6、水温検出手段7、バッテリ8、ローパスフィルタ9、ブレーキセンサ10、アクセルセンサ13、及びk個(k=1,2,・・・,n)の電気負荷が接続されている。
【0033】
エンジン1は、ガソリンや軽油等を燃料とする内燃機関であり、ベルトによりオルタネータ&レギュレータ3に連結されている。オルタネータ&レギュレータ3、及び廃熱発電手段5は、電源バスを通じてバッテリ8、及びk個の電気負荷に接続される。エンジン制御手段2は、エンジン1の制御を行うための制御装置であり、エンジン1の種々の状態を検出するセンサ(図示せず)によって検出されたエンジン回転数等種々の情報に基づいてエンジン1の出力を制御する。
【0034】
オルタネータ&レギュレータ3は、周知のオルタネータと電圧制御を行うレギュレータとによって構成される。オルタネータは、エンジン1の動力を用いて発電する発電機である。また、レギュレータは、電源バスのバス電圧が所定の調整電圧値となるように電圧制御を行って、オルタネータによって発電された動力発電電力を電源バスに供給する。
【0035】
また、このオルタネータ&レギュレータ3は、車両の減速時の運動エネルギを用いて発電(減速回生)するように構成されており、減速回生制御手段4から減速回生信号を受けた場合、電源バスのバス電圧の調整電圧値を通常よりも少し高めに設定して、減速回生による減速回生電力を可能な限り電源バスに供給するようにする。この減速回生制御手段4からの減速回生信号は、ローパスフィルタ9を介して廃熱発電制御手段6にも同時に送信される。廃熱発電制御手段6では、減速回生信号を受信すると、廃熱発電手段5による廃熱発電電力をゼロ(0)又は最小に制御する。
【0036】
減速回生制御手段4は、ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキセンサ10からのブレーキ信号、スロットルバルブの開度量(若しくは、アクセルペダルの踏み込み量)を検出するアクセルセンサ11からのアクセル開度信号、及び図示しない車速を検出する車速センサからの車速信号等に基づいて、車両が減速中(又は降坂中)であるかどうかを判断する。そして、減速中である場合に、減速回生を実行すべくアクティブレベル(H:High)の減速回生信号を送信するとともに、図示しないインジェクタへの燃料カットを指示するためのフューエルカット指示信号をエンジン制御手段2へ送信する。
【0037】
なお、車両の減速を検知する手段としては、ブレーキ信号、アクセル開度信号、及び車速信号等の他に、例えば、車速やアクセル開度の変化、フューエルカット信号を検知するものであってもよいし、ナビゲーション装置で用いられる地図データとGPS(Global Positioning System)による車両の現在位置、あるいは、車両の水平軸回りの傾斜を検出する傾斜センサ等を用いて下り坂を予測したり検知したりしてもよい。
【0038】
ローパスフィルタ9は、熱発電制御手段6における減速回生信号の出力に対する応答性をオルタネータ&レギュレータ3における減速回生信号の出力に対する応答性よりも遅くするために設けられる。これにより、減速回生信号の出力に対するオルタネータ&レギュレータ3と熱発電制御手段6の応答性に差をもたせることができるため、オルタネータ&レギュレータ3と熱発電制御手段6による発電の干渉や、熱発電制御手段6における制御のチャタリングを防止することができる。
【0039】
図2に、廃熱発電手段5の構成を示す。本実施形態の廃熱発電手段5は、冷媒の凝縮及び膨張サイクルを用いた廃熱発電を行うものである。すなわち、エンジン冷却水の熱エネルギを熱交換器5aによって冷媒に吸収させ、この冷媒は、膨張機5b内でエンジン冷却水の熱エネルギで膨張し、その運動エネルギで廃熱発電機5cを駆動して発電する。
【0040】
冷媒ポンプ5eは、膨張機5b及びコンデンサ内の冷媒を循環させるためのポンプであり、冷媒ポンプモータ制御手段5gへ冷媒ポンプ回転数(Np)を送信し、この冷媒ポンプモータ制御手段5gによって制御される。冷媒ポンプモータ制御手段5gは、この冷媒ポンプ回転数(Np)を廃熱発電制御手段6に対して送信する。
【0041】
圧力センサ5fは、冷媒ポンプ5e入口の冷媒圧力(Pp−in)を検出し、廃熱発電制御手段6へ送信する。水温検出手段7は、エンジン冷却水温(Tw)を検出し、廃熱発電制御手段6へ送信する。
【0042】
廃熱発電制御手段6は、インバータ5dへ回転数指令を送信し、インバータ5dは、廃熱発電機5cの回転数が回転数指令の回転数となるように制御する。また、インバータ5dは、電圧調整機能を備えており、所定の調整電圧値となるように廃熱発電電力を制御する。また、廃熱発電制御手段6は、ウォータポンプモータ制御手段5hへ電動ウォータポンプ回転指令を送信し、ウォータポンプモータ制御手段5hは、このウォータポンプ回転指令を受けて電動ウォータポンプを制御する。
【0043】
次に、廃熱発電制御手段6における発電電力制御処理について、図3に示すフローチャートを用いて説明する。先ず、図3に示すステップS10では、現在の車両状態に基づいて、廃熱発電手段5によって廃熱発電可能な最大電力(供給可能電力:WTG_MAX)を算出する。
【0044】
ここで、ステップS10における廃熱発電手段5の最大供給可能電力(WTG_MAX)の算出処理について、図5に示すフローチャートを用いて説明する。ステップS110では、車速(Vv)、外気温(Ta)、廃熱発電機5cの発電機回転数(Ng)、エンジン冷却水温(Tw)、エンジン回転数(Ne)、電動ウォータポンプ回転数(Nwp)、冷媒ポンプ回転数(Np)、冷媒ポンプ入口冷媒圧力(Pp−in)を取得する。
【0045】
ステップS120では、エンジン回転数(Ne)と電動ウォータポンプ回転数(Nwp)から冷却水流量(Fw)を算出するとともに、外気温(Ta)、冷媒ポンプ入口冷媒圧力(Pp−in)から冷媒密度(ρ)を算出し、それに冷媒ポンプ回転数(Np)、吐出容積(vp)、ポンプ効率(ηp)を乗じて冷媒の質量流量(Gr)を算出する。
【0046】
ステップS130では、ステップS110及びステップS120において算出した諸量から、現在の車両状態における廃熱発電電力の動力源となる膨張機5bの機械的な出力の最大値(Wex_MAX)を算出する。このステップS130では、冷媒のランキンサイクルのつりあい計算によって算出してもよいし、冷媒ポンプ5e入口の冷媒圧力(Pp−in)、冷媒の質量流量(Gr)、及びエンジン冷却水温(Tw)の各変数とのマップを予め用意しておき、このマップを参照して求めてもよい。ステップS140では、膨張機5bの機械的な出力の最大値(Wex_MAX)に発電機効率(ηG)を乗じて、廃熱発電手段5の最大供給可能電力(WTG_MAX)を得る。
【0047】
図3のステップS20では、減速回生信号と電源バスの現在のバス電圧(VB)を取得する。ステップS30では、車両が減速中(又は降坂中)であるか否かを判定する。ここで、減速回生信号がアクティブレベル(H)である場合には、車両が減速中であると判定してステップS53へ処理を進め、ステップS53では、廃熱発電電力(WTG)を0(ゼロ)に設定して、ステップS60に処理を進める。
【0048】
一方、ステップS30にて、減速回生信号がパッシブレベル(L)である場合には、車両が減速中でない(加速中、若しくは定速走行中)と判定してステップS40へ処理を進める。ステップS40では、バス電圧(VB)が減速回生における調整電圧の上限電圧(Vu_reg)を上回っているか否かを判定する。
【0049】
ここで、否定判定された場合には、ステップS50にて、廃熱発電電力(WTG)を廃熱発電手段5の最大供給可能電力(WTG_MAX)に設定して、ステップS60に処理を進める。一方、肯定判定された場合には、ステップS51において、バス電圧(VB)≦減速回生上限電圧(Vu_reg)を満たす廃熱発電減少電力(ΔWTG)を求める。ステップS52では、廃熱発電手段5の最大供給可能電力(WTG_MAX)から廃熱発電減少電力(ΔWTG)を減じた廃熱発電電力(WTG)を算出してステップS60へ処理を進める。
【0050】
ステップS60では、ステップS10〜ステップS53までの処理によって求められた廃熱発電電力(WTG)が実際に得られるよう、冷媒ポンプ回転数(Np)、廃熱発電機5cの回転数、及び回転トルクを制御する。例えば、廃熱発電電力を多くしたい場合には、冷媒ポンプ回転数(Np)、及び廃熱発電機5cの回転数の目標値を大きな値にする。このように廃熱発電機5cや冷媒ポンプ5eを制御することによって、廃熱発電電力(WTG)を電源バスへ供給することが可能となる。
【0051】
このステップS60にて、廃熱発電電力(WTG)がゼロ(0)の場合には、廃熱発電機5cの駆動を停止させるのではなく、廃熱発電電力(WTG)が略ゼロとなる低い回転数で廃熱発電機5cをアイドリングするとよい。それにより、車両の減速が終わった後に、廃熱発電手段5の最大供給可能電力(WTG_MAX)>0となった場合でも速やかに発電できるようになる。
【0052】
なお、減速回生上限電圧(Vu_reg)は、オルタネータ&レギュレータ3の通常の調整電圧(Va_reg)よりもやや高め(例えば、12[V]の電源バスにおいて、常温の場合は調整電圧(Va_regを約13.5[V])、減速回生上限電圧(Vu_reg)を約14.5[V])に設定する。なお、24[V]や42[V]の電源バス、或いは、ハイブリッド自動車のような200〜300[V]の高電圧電源系の車両の場合には、そのバス電圧に応じて設定する。
【0053】
図4に、車両の走行パターンに対する本実施形態における車両の電気系の動作をタイムチャートで示す。この図示の例では、消費電力一定で、廃熱発電とオルタネータ&レギュレータ3による発電(オルタ発電)の和が一定であるとする。図4において、時刻(t0〜t1)の間、時刻(t4〜t5)の間、及び時刻(t10)以降は停車中(アイドリング)を示し、時刻(t1〜t2)の間、時刻(t5〜t6)の間、時刻(t8〜t9)の間は加速中を示している。また、時刻(t2〜t3)の間、時刻(t6〜t7)の間は定速走行中を示し、時刻(t3〜t4)の間、時刻(t7〜t8)の間、及び時刻(t9〜t10)の間は減速中を示している。
【0054】
廃熱発電は、エンジン1が駆動していれば停車中でも少量の発電は可能であるが、車速が高いほどエンジン1の廃熱量およびコンデンサの冷却熱量が多くとれるため、ランキンサイクルから多くのエネルギを得て発電することが可能である。従って、廃熱発電電力(WTG)は、基本的に車速の高低に応じて増減し、オルタ発電電力は廃熱発電電力(WTG)の増加・減少に応じて減少・増加する。
【0055】
すなわち、車両消費電力に対して廃熱発電電力(WTG)によって賄いきれない不足分について、オルタネータ&レギュレータ3の調整電圧(Va_reg)に達するまでオルタ発電で賄うことで、収支のバランスを保つようにする。また、廃熱発電電力(WTG)が車両消費電力を上回った場合にはオルタ発電電力がゼロ(0)になってもバス電圧が上昇するため、廃熱発電電力(WTG)をインバータ5dの調整電圧(Vt_reg)で電圧制御して収支のバランスを保つようにする。なお、オルタネータ&レギュレータ3の調整電圧(Va_reg)<インバータ5dの調整電圧(Vt_reg)とすることで、廃熱発電を優先させるとともに、オルタ発電を補助的な役割とする。
【0056】
一方、減速中は、オルタネータ&レギュレータ3による減速回生による発電を廃熱発電よりも優先して最大限行うため、減速回生信号がアクティブレベル(H)(言い換えれば、減速回生発電が実行されている)場合、オルタネータ&レギュレータ3に対する調整電圧をVu_reg(=Va_reg+α)とするとともに、廃熱発電電力(WTG)をゼロ(0)に設定する。
【0057】
これにより、オルタネータ&レギュレータ3は、調整電圧(Vu_reg)に達するまで車両の減速中の運動エネルギを用いて最大限に発電可能となるため、エンジン1の燃料を節約することが可能となる。また、減速中に廃熱発電電力(WTG)をゼロ(0)にすることで、廃熱発電に費やす廃熱を保持して冷却水温を上昇させることができ、減速終了時は冷却水温が高い状態で廃熱発電を再開することができるので、その分廃熱発電による発電量を多くすることができる、いわゆる蓄熱の効果も得ることができる。
【0058】
次に、図4に示すタイムチャートを時間経過に合せて説明する。時刻(t0〜t1)の間はアイドリング中であり、廃熱発電電力(WTG)が少なく大半をオルタネータ&レギュレータ3によってエンジン動力から発電している状態である。電源バスのバス電圧は、オルタネータ&レギュレータ3の通常の調整電圧(Va_reg)に保たれている。
【0059】
時刻(t1〜t2)の間は加速中であり、廃熱発電電力(WTG)が増加し、その分、オルタ発電の発電電力が減少している状態である。時刻(t2〜t3)の間は低速走行中であり、廃熱発電電力(WTG)が多いが車両消費電力の全てを賄う程でない状態である。
【0060】
時刻(t3〜t4)の間は減速中であり、減速回生信号のアクティブレベルが(H)であるので、廃熱発電電力(WTG)をゼロ(0)とし、オルタネータ&レギュレータ3に対する調整電圧をVu_reg(=Va_reg+α)に変更し、オルタネータ&レギュレータ3で減速回生発電している状態である。なお、点線は、制御無しの状態を示しており、車速の減少に応じて廃熱発電電力(WTG)が減少し、オルタネータ&レギュレータ3での減速回生発電は、車両消費電力から廃熱発電電力(WTG)を減じた発電電力に制限されている。
【0061】
時刻(t4〜t5)の間は、時刻(t0〜t1)の間と同様にアイドリング中であるが、時刻(t4〜t41)の間は、直前の時刻(t3〜t4)の間に廃熱発電電力(WTG)をゼロ(0)にしたことによって冷却水温が上昇し、制御無しの場合よりも廃熱発電電力(WTG)が少しだけ上昇している状態である。
【0062】
時刻(t5〜t6)の間は、時刻(t1〜t2)の間と同様に加速中であり、廃熱発電電力(WTG)が増加している状態である。但し、時刻(t51)で廃熱発電電力(WTG)が車両消費電力を上回るので、オルタ発電電力はゼロ(0)となり、オルタネータ&レギュレータ3に対する調整電圧(Va_reg)の電圧制御は実行できなくなる。そこで、インバータ5dが調整電圧(Vt_reg=Vu_reg)で電圧制御することで発電電力の増加を抑制する。これにより、電源バスのバス電圧は調整電圧(Vu_reg)に増加する。
【0063】
時刻(t6〜t7)の間は高速走行中であり、廃熱発電電力(WTG)が車両消費電力の全てを賄っている状態である。電源バスのバス電圧は、通常より高めの調整電圧(Vu_reg)に制御されている。時刻(t7〜t8)の間は減速中であり、減速回生信号のアクティブレベルが(H)であるので、廃熱発電電力(WTG)をゼロ(0)とし、オルタネータ&レギュレータ3に対する調整電圧をVu_reg(=Va_reg+α)に変更し、オルタネータ&レギュレータ3で減速回生発電している状態である。
【0064】
時刻(t8〜t9)は、時刻(t5〜t6)の間と同様に加速中であり、廃熱発電電力(WTG)が増加している状態である。時刻(t51)と同様に、時刻(t81)で廃熱発電電力(WTG)が車両消費電力を上回るので、オルタ発電電力はゼロ(0)となり、インバータ5dが調整電圧(Vu_reg)で電圧制御する。
【0065】
時刻(t9〜t10)は、時刻(t7〜t8)と同様に減速中であり、減速回生信号のアクティブレベルが(H)であるので、廃熱発電電力(WTG)をゼロ(0)とし、オルタネータ&レギュレータ3に対する調整電圧をVu_reg(=Va_reg+α)に変更し、オルタネータ&レギュレータ3で減速回生発電している状態である。
【0066】
時刻(t10)以降は、時刻(t4〜t5)と同様にアイドリング中であり、時刻(t10〜t101)の間は、直前の時刻(t9〜t10)において廃熱発電電力(WTG)をゼロ(0)にしたことによって冷却水温が上昇し、制御無しの場合よりも廃熱発電電力(WTG)が少しだけ上昇している状態である。
【0067】
このように廃熱発電制御手段6では、減速回生によって減速回生電力が電源バスに供給されている場合には、廃熱発電電力(WTG)(若しくは、廃熱発電そのもの)を抑制(ゼロに設定)している。
【0068】
すなわち、減速回生電力は、その電力を蓄える手段を備えない限り蓄電することはできないため、減速回生電力が電源バスに供給される場合には、その電力を最大限受け入れることが好ましいが、廃熱発電電力は、廃熱エネルギを用いて発電されたものであり、熱源から積極的に廃熱エネルギを奪わなければ、その廃熱エネルギは蓄熱される。
【0069】
従って、減速回生電力が電源バスに供給されている場合には、廃熱発電電力を抑制することで、減速回生電力を電源バスに最大限受け入れつつ廃熱エネルギを蓄熱することができる。その結果、エネルギを効率よく回収して車両の燃費を向上させることができる。
【0070】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することができる。
【0071】
(変形例1)
図6に、本変形例における廃熱発電手段5の構成を示す。本廃熱発電手段5は、インバータ5dの替わりに整流回路/レギュレータ5iを備え、廃熱発電機5cとして、オルタネータのような界磁電流の制御によって出力の制御が可能な発電機を採用した。本廃熱発電手段5の構成では、直接的に廃熱発電機5cを回転数制御することはできないので、廃熱発電電力の調整は冷媒ポンプ5eの回転数を制御することで行う。
【0072】
しかしながら、冷媒ポンプ5eの回転数の制御では冷媒を介するため応答性が悪い。そこで、本変形例では、車両の減速中に廃熱発電電力をゼロ(0)にするため、整流回路/レギュレータ5iの調整電圧(Vt_reg)を電源バスにおいて通常使用されるバス電圧(VB)範囲の下限よりも低い値(VL=約10[V]程度)に変更する。これにより、減速回生電力が電源バスに供給されている場合、この変更された調整電圧値(VL)に近づくように、廃熱発電電力の供給を抑えることができる。
【0073】
更に、本廃熱発電手段5では、膨張機5bの冷媒の出入り口をバイパスするバイパス流路およびその流路を開閉する膨張機バイパスバルブ5jを設けている。
【0074】
図7に、本変形例における廃熱発電制御手段6による制御処理を示す。本制御処理では、廃熱発電手段5の最大供給可能電力(WTG_MAX)、及び廃熱発電電力(WTG)を制御するのではなく、整流回路/レギュレータ5iの調整電圧の変更、膨張機バイパスバルブ5jの制御、及び冷媒ポンプ5eの回転数制御を行う。
【0075】
先ず、ステップS210では減速回生信号を取得し、ステップS220では、車両が減速中(又は降坂中)であるか否かを判定する。ここで、減速回生信号がアクティブレベル(H)である場合には、車両が減速中であると判定してステップS260へ処理を進め、減速回生信号がパッシブレベル(L)である場合には、車両が減速中でない(加速中、若しくは定速走行中)と判定してステップS230へ処理を進める。
【0076】
ステップS230では、整流回路/レギュレータ5iの調整電圧(Vt_reg)をオルタネータ&レギュレータ3に対する調整電圧(Va_reg)よりも少し高い値(Vt_reg(=Va_reg+α))に設定する。
【0077】
ステップS240では膨張機バイパスバルブ5jのバルブを閉じ、ステップS250では、廃熱発電機5cが調整電圧(Vt_reg)を超えない範囲の最大供給可能電力(WTG_MAX)を算出し、この最大供給可能電力(WTG_MAX)で発電するように、冷媒ポンプ回転数(Np)を制御する。これにより、廃熱発電機5cは、減速中においては廃熱発電電力をゼロ(0)とし、それ以外の場合は、調整電圧(Vt_reg)が(Vu_reg)となるように発電する。
【0078】
また、廃熱発電電力が車両消費電力よりも少なく、バス電圧(VB)を(Va_reg)まで上昇させることができない場合は、その不足分をオルタネータ&レギュレータ3がエンジン動力を用いて発電することにより、バス電圧(VB)を(Va_reg)に保つ。一方、廃熱発電電力が車両消費電力以上の場合は、バス電圧(VB)は、(Vu_reg)に保たれ(Va_reg)を上回るため、オルタネータ&レギュレータ3による発電は行わない。
【0079】
ステップS260では、整流回路/レギュレータ5iの調整電圧(Vt_reg)を電源バスにおいて通常使用されるバス電圧(VB)範囲の下限よりも低い値(VL)に設定する。ステップS270では膨張機バイパスバルブ5jのバルブを開放し、ステップS280では冷媒ポンプ5eの回転数(Np)をゼロ(0)にして、膨張機5bへの冷媒の流れを止めて、廃熱発電機5cの回転を止めるようにする。これにより、減速回生電力の供給開始に伴って、応答よく、廃熱発電電力を抑制することが可能となる。
【0080】
図8は、車両の走行パターンに対する本変形例における車両の電気系の動作をタイムチャートで示したものである。減速回生中に整流回路/レギュレータ5iの調整電圧(Vt_reg)を変えること以外は、上記実施形態において説明した図4に示すタイムチャートと同様であるため、その説明を省略する。
【0081】
(変形例2)
図9は、本変形例における車両の電気系を示すブロック図である。本変形例では、図1に示したローパスフィルタ9と、このローパスフィルタ9を介して廃熱発電制御手段6に入力する減速回生信号線を省略した構成となっており、それ以外は図1と同様である。
【0082】
本変形例では、廃熱発電手段5に対する調整電圧(Vt_reg)は、車両の速度に係わらず一定とし、代わりに、オルタネータ&レギュレータ3に対する調整電圧をエンジンの動力を用いた動力発電の場合には(Va_reg)、減速回生発電の場合には(Vu_reg)に変更して、以下の関係を満たすようにした。
【0083】
(数1)
(Va_reg)<(Vt_reg)<(Vu_reg)
このように、廃熱発電手段5に対する調整電圧(Vt_reg)は、動力発電に対する調整電圧よりも高い値で、かつ、減速回生発電に対する調整電圧よりも低い値となるようにする。これにより、車両が減速中でなく、廃熱発電電力が大きい場合には、廃熱発電電力によって電源バスのバス電圧を調整電圧(Vt_reg)に保つことができる。
【0084】
図10は、車両の走行パターンに対する本変形例における車両の電気系の動作をタイムチャートで示したものである。時刻(t0〜t3)、時刻(t4〜t51)、時刻(t8〜t81)、時刻(t10)以降では、車両が減速中でなく、廃熱発電電力が車両消費電力よりも少ないので、オルタネータ&レギュレータ3は、その不足分をエンジン動力によって発電し、電源バスのバス電圧を調整電圧(Va_reg)に保つ。
【0085】
時刻(t3〜t4)、時刻(t7〜t8)、時刻(t9〜t10)の間は、車両が減速中であるので、オルタネータ&レギュレータ3は、車両の減速による運動エネルギで発電し、電源バスのバス電圧を調整電圧(Vu_reg)に保つ。この場合、電源バスのバス電圧が減速回生発電の調整電圧(Vu_reg)に保たれていれば、廃熱発電手段5に対する調整電圧(Vt_reg)を上回っているので、廃熱発電を自動的に停止して、発電しないようにするとよい。
【0086】
時刻(t51〜t7)、及び時刻(t81〜t9)の間は、車両が減速中でなくかつ廃熱発電電力が車両消費電力に対して十分であるので、廃熱発電手段5は調整電圧(Vt_reg)を保つように発電する。
【0087】
(変形例3)
図11に示す車両の電気系において、電源バスのバス電圧を検出するバス電圧検出手段を備える場合、このバス電圧検出手段は、オルタネータ&レギュレータ3及び廃熱発電手段5からの電力線が電源バスと接続する接続部よりもバッテリ8に近い部位Bにて検出することが好ましい。言い換えれば、少なくともバッテリ8からの電力線と廃熱発電手段5からの電力線との接続部Aよりもバッテリ8側であることが望ましい。
【0088】
これにより、外乱による影響が少なく、正確で安定したバス電圧の検出が可能となり、発電制御を安定させることができる。なお、これは、オルタネータ&レギュレータ3の電圧検出についても同様である(図11のD)。
【0089】
(変形例4)
図11に示す車両の電気系のように、廃熱発電手段5からの電力線が電源バスと接続する接続部Aは、オルタネータ&レギュレータ3からの電力線が電源バスと接続する接続部Cよりもバッテリ8の近くに位置することが好ましい。言い換えれば、接続部Cは、接続部Aよりも負荷側であることが望ましい。
【0090】
一般に、廃熱発電手段5による廃熱発電電力はオルタネータ&レギュレータ3による動力発電電力よりも小さい。そこで、大電流の流れるオルタネータ&レギュレータ3と電源バスの電気負荷との間が可能な限り短くなるように、接続部Aを接続部Cよりもバッテリ8の近くに位置することにより、電力損失を小さくすることができる。また、廃熱発電手段5のインバータ5dから発生するノイズによる電気負荷への影響を抑制することができる。
【0091】
(変形例5)
例えば、オルタネータ&レギュレータ3の調整電圧(Va_reg)を一定値とし、廃熱発電手段5に対する調整電圧(Vt_reg)を変更するようにしてもよい。すなわち、電源系の電圧値が予め設定された上限値を上回らないように、廃熱発電手段5に対する調整電圧(Vt_reg)を制御するようにしてもよい。
【0092】
これにより、既存の車両の電源系に廃熱発電に関する手段を後付けして構成することができる。また、廃熱発電電力の余剰によって電源系の電圧値が上限値を上回らないように抑えられるため、オルタネータ&レギュレータ3による動力発電電力と熱発電電力を同時に受け入れることができるとともに、電源系にバッテリ8が接続される場合には、このバッテリの過充電を防ぐことができる。その結果、廃熱エネルギを効率よく回収して車両の燃費を向上させる効果が期待できる。
【0093】
なお、廃熱発電制御手段6は、廃熱発電手段5に対する所定の調整電圧値よりも高い値に設定された上限値を上回らないように制御することが好ましい。これにより、廃熱発電電力が大きい場合であっても、上記所定の調整電圧値よりも高い値に設定された上限値を上回らない範囲で廃熱発電電力を利用することができるようになり、また、電源系の電圧値を安定させることができる。
【0094】
(変形例6)
バッテリ8については、鉛バッテリのような充電の受け入れ性能が劣る電池に限らず、リチウム電池やニッケル水素(NiMH)電池のような充電の受け入れ性能が良い高性能バッテリであってもよい。このような高性能バッテリを採用した場合において、残存容量が満充電に近く回生電力を受け入れる余裕がない場合や、コストダウンのため小容量のバッテリを使用した場合等に対しても、本発明の適用が有効である。
【0095】
(変形例7)
例えば、本実施形態の車両がハイブリッド電気自動車である場合、このハイブリッド電気自動車の電源系に供給された廃熱発電電力をハイブリッド電気自動車の駆動用の電力に変換する手段を備えるようにしてもよい。これにより、ハイブリッド電気自動車の電源系に廃熱発電電力を供給して、駆動用の電力として利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の実施形態における車両の電気系を示すブロック図である。
【図2】廃熱発電手段5の構成を示す図である。
【図3】廃熱発電制御手段6における発電電力制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】車両の走行パターンに対する本発明の実施形態における車両の電気系の動作を示すタイムチャートである。
【図5】廃熱発電手段5の最大供給可能電力(WTG_MAX)の算出処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態の変形例1に係わる、廃熱発電手段5の構成を示す図である。
【図7】本発明の実施形態の変形例1に係わる、廃熱発電制御手段6における発電制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態の変形例1に係わる、オルタ発電と廃熱発電による発電電力の時間遷移を示すタイムチャートである。
【図9】本発明の実施形態の変形例2に係わる、車両の電気系を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施形態の変形例2に係わる、オルタ発電と廃熱発電による発電電力の時間遷移を示すタイムチャートである。
【図11】本発明の実施形態の変形例3及び変形例4に係わる、車両の電気系を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0097】
1 エンジン
2 エンジン制御手段
3 オルタネータ&レギュレータ
4 減速回生制御手段
5 廃熱発電手段
5a 熱交換器
5b 膨張機
5c 廃熱発電機
5d インバータ
5e 冷媒ポンプ
5f 圧力センサ
5g 冷媒ポンプモータ制御手段
5h ウォータポンプモータ制御手段
6 廃熱発電制御手段
7 水温検出手段
8 バッテリ
9 ローパスフィルタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン等を熱源とし、その熱源の熱エネルギを利用して発電する熱発電機を備えた電源制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車には、多くの電気・電子機器が搭載されるようになり、その電力需要は増加傾向にある。そのような中で、従来のようにエンジンの動力のみから発電機を回して発電する方法では、エンジン動力の多くを発電に費やすことによる燃費や加速性能の悪化、及び供給電力不足による電源電圧の低下やバッテリ上がりが懸念されている。
【0003】
そこで、エンジン動力以外のエネルギ、特に、従来車両において捨てられていたエネルギを回収し発電(回生)することで、上記の問題を解決しようとする技術(例えば、特許文献1参照)が提案されている。例えば、特許文献1には、減速時の運動エネルギによって発電する減速回生装置が記載されている。
【特許文献1】特開平10−309002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の減速回生装置以外にも、エンジンの冷却水の熱エネルギによって発電する廃熱発電機がある。これは、エンジンの冷却水の熱エネルギで冷媒を膨張させ、その膨張による運動エネルギを膨張機で回転エネルギに変えて発電機を駆動して発電する、という冷媒の凝縮、及び膨張のランキンサイクルを用いたものである。この廃熱発電機を車両の電源系に接続して、廃熱発電による廃熱発電電力を供給することを想定した場合、廃熱発電電力が車両の電気負荷の必要とする電力より少なければ、車両のオルタネータのレギュレータによる電圧制御によって、負荷電力と廃熱発電電力との差分をオルタネータによって発電することが可能となる。その結果、オルタネータによる発電電力(エンジンの動力を用いてオルタネータによって発電した動力発電電力)は廃熱発電電力の分だけ少なくなり、これに伴って、オルタネータの負荷が減るためエンジンの燃料が節約できる。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のような減速回生装置を搭載した車両の電源系に廃熱発電による廃熱発電電力を供給する場合、減速回生と廃熱発電の双方から供給される電力が電源系の上限電圧を越えるような電力であるとき、電源系は双方の電力を同時に受け入れらず、その結果、減速回生(あるいは、廃熱発電)による効果が減ることになる。
【0006】
このような場合、レギュレータによる電圧制御の調整電圧の上限を高くすることによって、電源系において双方の電力を同時に受け入れることのできる電力を増やすことができるが、その一方でバッテリが過充電気味となるためバッテリの寿命を縮めてしまう。また、鉛バッテリのような充電の受け入れ性能が劣る電池に替わり、リチウム電池やニッケル水素(NiMH)電池のような高性能なバッテリを採用することも考えられるが、このような高性能なバッテリを採用するとコスト高となってしまう。
【0007】
さらに、廃熱発電による発電電力が車両の電気負荷の必要とする電力よりも多い場合、オルタネータは全く発電しなくて済むことになるが、同時に減速回生による発電電力も全く受け入れないことになる。その一方、廃熱発電は、エンジンの冷却水から熱を奪うので、過度の発電により冷却水温を下げ過ぎると、発電量が減少するばかりでなく、燃費やエミッションに悪い影響を与えるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたもので、エネルギを効率よく回収して車両の燃費を向上させることができる電源制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた請求項1記載の電源装置装置は、
移動体の電源系の電圧値が所定の調整電圧値となるように、移動体の動力を用いて発電した動力発電電力を電源系に供給する動力発電手段を備えたものであって、
移動体における熱源の熱エネルギを用いて発電し、この発電した熱発電電力を電源系に供給する熱発電手段と、
電源系の電圧値が予め設定された上限値を上回らないように、熱発電手段の熱発電電力を制御する熱発電制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
これにより、熱発電電力の余剰によって電源系の電圧値が上限値を上回らないように抑えられるため、動力発電電力と熱発電電力を同時に受け入れることができるとともに、電源系にバッテリが接続される場合には、このバッテリの過充電を防ぐことができる。その結果、熱源の熱エネルギを効率よく回収して車両の燃費を向上させる効果が期待できる。
【0011】
請求項2に記載のように、熱発電制御手段は、動力発電手段に対する所定の調整電圧値よりも高い値に設定された上限値を上回らないように制御することが好ましい。これにより、熱発電電力が大きい場合であっても、上記所定の調整電圧値よりも高い値に設定された上限値を上回らない範囲で熱発電電力を利用することができるようになり、また、電源系の電圧値を安定させることができる。
【0012】
請求項3に記載の電源制御装置は、移動体の電源系の電圧値が所定の調整電圧値となるように、移動体の動力を用いて発電した動力発電電力を電源系に供給する動力発電手段を備えたものであって、
移動体における熱源の熱エネルギを用いて発電し、この発電した熱発電電力を電源系に供給する熱発電手段と、
移動体の減速時に、当該移動体の運動エネルギを用いて発電し、この発電した減速回生電力を電源系に供給する減速回生手段と、
減速回生手段による減速回生電力が供給されている場合、熱発電手段の熱発電電力を抑制するように制御する熱発電制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
減速回生電力は、その電力を蓄える手段を備えない限り蓄電することはできないため、減速回生電力が電気系に供給される場合には、その電力を最大限受け入れることが好ましい。一方、熱発電電力は、上記のように熱源の熱エネルギを用いて発電されたものであり、熱源から積極的に熱エネルギを奪わなければ、その熱エネルギは蓄熱される。
【0014】
本発明は、この点に着目してなされたものであり、熱発電電力と減速回生電力が供給される電気系において、減速回生手段によって減速回生電力が供給されている場合には、熱発電手段による熱発電電力(若しくは、熱発電そのもの)を抑制する。これにより、減速回生電力を最大限受け入れつつ熱エネルギを蓄熱することができるため、エネルギを効率よく回収して車両の燃費を向上させることができる。
【0015】
請求項4に記載のように、熱発電手段は、電源系の電圧値が、動力発電手段に対する所定の調整電圧値よりも高い値で、かつ、減速回生手段に対する調整電圧値よりも低い値に設定された当該熱発電手段に対する調整電圧値となるように、熱発電電力を供給することが好ましい。
【0016】
これにより、移動体が減速中でなく、熱発電電力が大きい場合には、熱発電電力によって電気系の電圧値を熱発電手段の調整電圧に保つことができる。なお、移動体が減速中でなく、熱発電電力が小さい場合には、動力発電電力によって電気系の電圧値を動力発電手段の調整電圧に保つようにする。また、移動体が減速中の場合には、減速回生電力によって電気系の電圧値を減速回生手段の調整電圧に保つようにする。この時、電気系の電圧値が減速回生手段の調整電圧に保たれていれば、熱発電手段の調整電圧を上回っているので、熱発電手段による発電をしないようにするとよい。
【0017】
請求項5に記載のように、熱発電制御手段は、電源系において通常使用される電圧範囲の下限値よりも低い値に熱発電手段に対する調整電圧値を変更する熱発電調整電圧値変更手段を備えることが好ましい。
【0018】
これにより、減速回生手段による減速回生電力が電源系に供給されている場合、熱発電調整電圧値変更手段によって変更された通常使用される電圧よりも低い調整電圧値に近づくように、熱発電手段による熱発電電力の供給を抑えることができる。
【0019】
請求項6に記載のように、移動体の減速又は減速指令を検知した場合に、減速回生を指示するための減速回生信号を出力する減速回生信号出力手段を備え、
減速回生手段は、減速回生信号の出力を受けた場合に発電するものであり、
熱発電制御手段は、
減速回生信号の出力を受けた場合に熱発電手段の熱発電電力を制御するものであり、当該熱発電制御手段における減速回生信号の出力に対する応答性を減速回生手段における減速回生信号の出力に対する応答性よりも遅くするための手段を備えることが好ましい。
【0020】
これにより、減速回生信号の出力に対する減速回生手段と熱発電制御手段の応答性に差をもたせることができるため、減速回生手段と熱発電制御手段による発電の干渉や、熱発電制御手段における制御のチャタリングを防止することができる。
【0021】
請求項7に記載の電源制御装置は、電源系の電圧値を検出する電圧検出手段を備え、電圧検出手段は、動力発電手段、及び熱発電手段からの電力線が電源系と接続する接続部よりも電源系に接続されたバッテリに近い部位にて検出することが好ましい。これにより、外乱による影響が少なく、正確で安定した検出が可能となる。
【0022】
請求項8に記載の電源制御装置によれば、熱発電手段からの電力線が電源系と接続する接続部は、動力発電手段からの電力線が電源系と接続する接続部よりもバッテリの近くに位置することが好ましい。
【0023】
一般に、熱発電電力は動力発電電力よりも小さい。そこで、大電流の流れる動力発電手段と電気系の負荷との間が可能な限り短くなるように、熱発電手段からの電力線が電源系と接続する接続部を動力発電手段からの電力線が電源系と接続する接続部よりもバッテリの近くに位置することにより、電力損失を小さくすることができる。
【0024】
請求項9に記載の電源制御装置によれば、熱発電手段は、熱源の熱エネルギによる熱伝達媒体の膨張又は/及び凝縮によって発生する運動エネルギを利用して発電する熱発電機を駆動させることで熱発電電力を発生する手段を備えることを特徴とする。これにより、熱伝達媒体の熱エネルギを利用した熱発電が可能になる。
【0025】
請求項10に記載の電源制御装置によれば、熱伝達媒体は移動体に搭載された空調装置の冷媒であって、この冷媒の膨張前の圧力、冷媒流量、及び温度から熱発電手段の発電可能な電力を算出する熱発電電力算出手段と、
冷媒を加圧し循環させる冷媒ポンプと、
熱発電電力算出手段の算出した発電可能電力が出力されるように、熱発電機の回転数、回転トルク、及び冷媒ポンプの回転数を制御する手段と、を備えることを特徴とする。
【0026】
このように、熱発電機や冷媒ポンプを制御することによって、上記発電可能電力を実際に発電し電気系に供給することが可能となる。
【0027】
請求項11に記載の電源制御装置は、
熱発電機における熱伝達媒体の流路をバイパスする流路バイパス手段と、
流路バイパス手段を流れる熱伝達媒体の流量を制御するバイパス流量制御手段と、を備え、
熱発電制御手段は、バイパス手段に熱伝達媒体を流すことによって熱発電電力を抑制することを特徴とする。
【0028】
これにより、減速回生手段による減速回生電力の供給開始に伴って、応答よく、熱発電手段の熱発電電力を抑制することが可能となる。
【0029】
請求項12に記載の電源制御装置によれば、移動体はハイブリッド電気自動車であって、当該ハイブリッド電気自動車の電源系に供給された熱発電手段からの熱発電電力をハイブリッド電気自動車の駆動用の電力に変換する手段を備えることを特徴とする。
【0030】
これにより、ハイブリッド電気自動車の電源系に熱発電手段からの熱発電電力を供給して、駆動用の電力として利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の電源制御装置の実施態様について、図面を参照して説明する。なお、本実施形態では、自動車に搭載された電源制御装置の適用例について説明するものであるが、自動車に限らず、鉄道車両等の熱源を備える移動体に適用可能である。
【0032】
図1は、本実施形態における車両の電気系を示すブロック図である。同図に示す車両の電気系は、エンジン1、エンジン制御手段2、オルタネータ&レギュレータ3、減速回生制御手段4、廃熱発電手段5、廃熱発電制御手段6、水温検出手段7、バッテリ8、ローパスフィルタ9、ブレーキセンサ10、アクセルセンサ13、及びk個(k=1,2,・・・,n)の電気負荷が接続されている。
【0033】
エンジン1は、ガソリンや軽油等を燃料とする内燃機関であり、ベルトによりオルタネータ&レギュレータ3に連結されている。オルタネータ&レギュレータ3、及び廃熱発電手段5は、電源バスを通じてバッテリ8、及びk個の電気負荷に接続される。エンジン制御手段2は、エンジン1の制御を行うための制御装置であり、エンジン1の種々の状態を検出するセンサ(図示せず)によって検出されたエンジン回転数等種々の情報に基づいてエンジン1の出力を制御する。
【0034】
オルタネータ&レギュレータ3は、周知のオルタネータと電圧制御を行うレギュレータとによって構成される。オルタネータは、エンジン1の動力を用いて発電する発電機である。また、レギュレータは、電源バスのバス電圧が所定の調整電圧値となるように電圧制御を行って、オルタネータによって発電された動力発電電力を電源バスに供給する。
【0035】
また、このオルタネータ&レギュレータ3は、車両の減速時の運動エネルギを用いて発電(減速回生)するように構成されており、減速回生制御手段4から減速回生信号を受けた場合、電源バスのバス電圧の調整電圧値を通常よりも少し高めに設定して、減速回生による減速回生電力を可能な限り電源バスに供給するようにする。この減速回生制御手段4からの減速回生信号は、ローパスフィルタ9を介して廃熱発電制御手段6にも同時に送信される。廃熱発電制御手段6では、減速回生信号を受信すると、廃熱発電手段5による廃熱発電電力をゼロ(0)又は最小に制御する。
【0036】
減速回生制御手段4は、ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキセンサ10からのブレーキ信号、スロットルバルブの開度量(若しくは、アクセルペダルの踏み込み量)を検出するアクセルセンサ11からのアクセル開度信号、及び図示しない車速を検出する車速センサからの車速信号等に基づいて、車両が減速中(又は降坂中)であるかどうかを判断する。そして、減速中である場合に、減速回生を実行すべくアクティブレベル(H:High)の減速回生信号を送信するとともに、図示しないインジェクタへの燃料カットを指示するためのフューエルカット指示信号をエンジン制御手段2へ送信する。
【0037】
なお、車両の減速を検知する手段としては、ブレーキ信号、アクセル開度信号、及び車速信号等の他に、例えば、車速やアクセル開度の変化、フューエルカット信号を検知するものであってもよいし、ナビゲーション装置で用いられる地図データとGPS(Global Positioning System)による車両の現在位置、あるいは、車両の水平軸回りの傾斜を検出する傾斜センサ等を用いて下り坂を予測したり検知したりしてもよい。
【0038】
ローパスフィルタ9は、熱発電制御手段6における減速回生信号の出力に対する応答性をオルタネータ&レギュレータ3における減速回生信号の出力に対する応答性よりも遅くするために設けられる。これにより、減速回生信号の出力に対するオルタネータ&レギュレータ3と熱発電制御手段6の応答性に差をもたせることができるため、オルタネータ&レギュレータ3と熱発電制御手段6による発電の干渉や、熱発電制御手段6における制御のチャタリングを防止することができる。
【0039】
図2に、廃熱発電手段5の構成を示す。本実施形態の廃熱発電手段5は、冷媒の凝縮及び膨張サイクルを用いた廃熱発電を行うものである。すなわち、エンジン冷却水の熱エネルギを熱交換器5aによって冷媒に吸収させ、この冷媒は、膨張機5b内でエンジン冷却水の熱エネルギで膨張し、その運動エネルギで廃熱発電機5cを駆動して発電する。
【0040】
冷媒ポンプ5eは、膨張機5b及びコンデンサ内の冷媒を循環させるためのポンプであり、冷媒ポンプモータ制御手段5gへ冷媒ポンプ回転数(Np)を送信し、この冷媒ポンプモータ制御手段5gによって制御される。冷媒ポンプモータ制御手段5gは、この冷媒ポンプ回転数(Np)を廃熱発電制御手段6に対して送信する。
【0041】
圧力センサ5fは、冷媒ポンプ5e入口の冷媒圧力(Pp−in)を検出し、廃熱発電制御手段6へ送信する。水温検出手段7は、エンジン冷却水温(Tw)を検出し、廃熱発電制御手段6へ送信する。
【0042】
廃熱発電制御手段6は、インバータ5dへ回転数指令を送信し、インバータ5dは、廃熱発電機5cの回転数が回転数指令の回転数となるように制御する。また、インバータ5dは、電圧調整機能を備えており、所定の調整電圧値となるように廃熱発電電力を制御する。また、廃熱発電制御手段6は、ウォータポンプモータ制御手段5hへ電動ウォータポンプ回転指令を送信し、ウォータポンプモータ制御手段5hは、このウォータポンプ回転指令を受けて電動ウォータポンプを制御する。
【0043】
次に、廃熱発電制御手段6における発電電力制御処理について、図3に示すフローチャートを用いて説明する。先ず、図3に示すステップS10では、現在の車両状態に基づいて、廃熱発電手段5によって廃熱発電可能な最大電力(供給可能電力:WTG_MAX)を算出する。
【0044】
ここで、ステップS10における廃熱発電手段5の最大供給可能電力(WTG_MAX)の算出処理について、図5に示すフローチャートを用いて説明する。ステップS110では、車速(Vv)、外気温(Ta)、廃熱発電機5cの発電機回転数(Ng)、エンジン冷却水温(Tw)、エンジン回転数(Ne)、電動ウォータポンプ回転数(Nwp)、冷媒ポンプ回転数(Np)、冷媒ポンプ入口冷媒圧力(Pp−in)を取得する。
【0045】
ステップS120では、エンジン回転数(Ne)と電動ウォータポンプ回転数(Nwp)から冷却水流量(Fw)を算出するとともに、外気温(Ta)、冷媒ポンプ入口冷媒圧力(Pp−in)から冷媒密度(ρ)を算出し、それに冷媒ポンプ回転数(Np)、吐出容積(vp)、ポンプ効率(ηp)を乗じて冷媒の質量流量(Gr)を算出する。
【0046】
ステップS130では、ステップS110及びステップS120において算出した諸量から、現在の車両状態における廃熱発電電力の動力源となる膨張機5bの機械的な出力の最大値(Wex_MAX)を算出する。このステップS130では、冷媒のランキンサイクルのつりあい計算によって算出してもよいし、冷媒ポンプ5e入口の冷媒圧力(Pp−in)、冷媒の質量流量(Gr)、及びエンジン冷却水温(Tw)の各変数とのマップを予め用意しておき、このマップを参照して求めてもよい。ステップS140では、膨張機5bの機械的な出力の最大値(Wex_MAX)に発電機効率(ηG)を乗じて、廃熱発電手段5の最大供給可能電力(WTG_MAX)を得る。
【0047】
図3のステップS20では、減速回生信号と電源バスの現在のバス電圧(VB)を取得する。ステップS30では、車両が減速中(又は降坂中)であるか否かを判定する。ここで、減速回生信号がアクティブレベル(H)である場合には、車両が減速中であると判定してステップS53へ処理を進め、ステップS53では、廃熱発電電力(WTG)を0(ゼロ)に設定して、ステップS60に処理を進める。
【0048】
一方、ステップS30にて、減速回生信号がパッシブレベル(L)である場合には、車両が減速中でない(加速中、若しくは定速走行中)と判定してステップS40へ処理を進める。ステップS40では、バス電圧(VB)が減速回生における調整電圧の上限電圧(Vu_reg)を上回っているか否かを判定する。
【0049】
ここで、否定判定された場合には、ステップS50にて、廃熱発電電力(WTG)を廃熱発電手段5の最大供給可能電力(WTG_MAX)に設定して、ステップS60に処理を進める。一方、肯定判定された場合には、ステップS51において、バス電圧(VB)≦減速回生上限電圧(Vu_reg)を満たす廃熱発電減少電力(ΔWTG)を求める。ステップS52では、廃熱発電手段5の最大供給可能電力(WTG_MAX)から廃熱発電減少電力(ΔWTG)を減じた廃熱発電電力(WTG)を算出してステップS60へ処理を進める。
【0050】
ステップS60では、ステップS10〜ステップS53までの処理によって求められた廃熱発電電力(WTG)が実際に得られるよう、冷媒ポンプ回転数(Np)、廃熱発電機5cの回転数、及び回転トルクを制御する。例えば、廃熱発電電力を多くしたい場合には、冷媒ポンプ回転数(Np)、及び廃熱発電機5cの回転数の目標値を大きな値にする。このように廃熱発電機5cや冷媒ポンプ5eを制御することによって、廃熱発電電力(WTG)を電源バスへ供給することが可能となる。
【0051】
このステップS60にて、廃熱発電電力(WTG)がゼロ(0)の場合には、廃熱発電機5cの駆動を停止させるのではなく、廃熱発電電力(WTG)が略ゼロとなる低い回転数で廃熱発電機5cをアイドリングするとよい。それにより、車両の減速が終わった後に、廃熱発電手段5の最大供給可能電力(WTG_MAX)>0となった場合でも速やかに発電できるようになる。
【0052】
なお、減速回生上限電圧(Vu_reg)は、オルタネータ&レギュレータ3の通常の調整電圧(Va_reg)よりもやや高め(例えば、12[V]の電源バスにおいて、常温の場合は調整電圧(Va_regを約13.5[V])、減速回生上限電圧(Vu_reg)を約14.5[V])に設定する。なお、24[V]や42[V]の電源バス、或いは、ハイブリッド自動車のような200〜300[V]の高電圧電源系の車両の場合には、そのバス電圧に応じて設定する。
【0053】
図4に、車両の走行パターンに対する本実施形態における車両の電気系の動作をタイムチャートで示す。この図示の例では、消費電力一定で、廃熱発電とオルタネータ&レギュレータ3による発電(オルタ発電)の和が一定であるとする。図4において、時刻(t0〜t1)の間、時刻(t4〜t5)の間、及び時刻(t10)以降は停車中(アイドリング)を示し、時刻(t1〜t2)の間、時刻(t5〜t6)の間、時刻(t8〜t9)の間は加速中を示している。また、時刻(t2〜t3)の間、時刻(t6〜t7)の間は定速走行中を示し、時刻(t3〜t4)の間、時刻(t7〜t8)の間、及び時刻(t9〜t10)の間は減速中を示している。
【0054】
廃熱発電は、エンジン1が駆動していれば停車中でも少量の発電は可能であるが、車速が高いほどエンジン1の廃熱量およびコンデンサの冷却熱量が多くとれるため、ランキンサイクルから多くのエネルギを得て発電することが可能である。従って、廃熱発電電力(WTG)は、基本的に車速の高低に応じて増減し、オルタ発電電力は廃熱発電電力(WTG)の増加・減少に応じて減少・増加する。
【0055】
すなわち、車両消費電力に対して廃熱発電電力(WTG)によって賄いきれない不足分について、オルタネータ&レギュレータ3の調整電圧(Va_reg)に達するまでオルタ発電で賄うことで、収支のバランスを保つようにする。また、廃熱発電電力(WTG)が車両消費電力を上回った場合にはオルタ発電電力がゼロ(0)になってもバス電圧が上昇するため、廃熱発電電力(WTG)をインバータ5dの調整電圧(Vt_reg)で電圧制御して収支のバランスを保つようにする。なお、オルタネータ&レギュレータ3の調整電圧(Va_reg)<インバータ5dの調整電圧(Vt_reg)とすることで、廃熱発電を優先させるとともに、オルタ発電を補助的な役割とする。
【0056】
一方、減速中は、オルタネータ&レギュレータ3による減速回生による発電を廃熱発電よりも優先して最大限行うため、減速回生信号がアクティブレベル(H)(言い換えれば、減速回生発電が実行されている)場合、オルタネータ&レギュレータ3に対する調整電圧をVu_reg(=Va_reg+α)とするとともに、廃熱発電電力(WTG)をゼロ(0)に設定する。
【0057】
これにより、オルタネータ&レギュレータ3は、調整電圧(Vu_reg)に達するまで車両の減速中の運動エネルギを用いて最大限に発電可能となるため、エンジン1の燃料を節約することが可能となる。また、減速中に廃熱発電電力(WTG)をゼロ(0)にすることで、廃熱発電に費やす廃熱を保持して冷却水温を上昇させることができ、減速終了時は冷却水温が高い状態で廃熱発電を再開することができるので、その分廃熱発電による発電量を多くすることができる、いわゆる蓄熱の効果も得ることができる。
【0058】
次に、図4に示すタイムチャートを時間経過に合せて説明する。時刻(t0〜t1)の間はアイドリング中であり、廃熱発電電力(WTG)が少なく大半をオルタネータ&レギュレータ3によってエンジン動力から発電している状態である。電源バスのバス電圧は、オルタネータ&レギュレータ3の通常の調整電圧(Va_reg)に保たれている。
【0059】
時刻(t1〜t2)の間は加速中であり、廃熱発電電力(WTG)が増加し、その分、オルタ発電の発電電力が減少している状態である。時刻(t2〜t3)の間は低速走行中であり、廃熱発電電力(WTG)が多いが車両消費電力の全てを賄う程でない状態である。
【0060】
時刻(t3〜t4)の間は減速中であり、減速回生信号のアクティブレベルが(H)であるので、廃熱発電電力(WTG)をゼロ(0)とし、オルタネータ&レギュレータ3に対する調整電圧をVu_reg(=Va_reg+α)に変更し、オルタネータ&レギュレータ3で減速回生発電している状態である。なお、点線は、制御無しの状態を示しており、車速の減少に応じて廃熱発電電力(WTG)が減少し、オルタネータ&レギュレータ3での減速回生発電は、車両消費電力から廃熱発電電力(WTG)を減じた発電電力に制限されている。
【0061】
時刻(t4〜t5)の間は、時刻(t0〜t1)の間と同様にアイドリング中であるが、時刻(t4〜t41)の間は、直前の時刻(t3〜t4)の間に廃熱発電電力(WTG)をゼロ(0)にしたことによって冷却水温が上昇し、制御無しの場合よりも廃熱発電電力(WTG)が少しだけ上昇している状態である。
【0062】
時刻(t5〜t6)の間は、時刻(t1〜t2)の間と同様に加速中であり、廃熱発電電力(WTG)が増加している状態である。但し、時刻(t51)で廃熱発電電力(WTG)が車両消費電力を上回るので、オルタ発電電力はゼロ(0)となり、オルタネータ&レギュレータ3に対する調整電圧(Va_reg)の電圧制御は実行できなくなる。そこで、インバータ5dが調整電圧(Vt_reg=Vu_reg)で電圧制御することで発電電力の増加を抑制する。これにより、電源バスのバス電圧は調整電圧(Vu_reg)に増加する。
【0063】
時刻(t6〜t7)の間は高速走行中であり、廃熱発電電力(WTG)が車両消費電力の全てを賄っている状態である。電源バスのバス電圧は、通常より高めの調整電圧(Vu_reg)に制御されている。時刻(t7〜t8)の間は減速中であり、減速回生信号のアクティブレベルが(H)であるので、廃熱発電電力(WTG)をゼロ(0)とし、オルタネータ&レギュレータ3に対する調整電圧をVu_reg(=Va_reg+α)に変更し、オルタネータ&レギュレータ3で減速回生発電している状態である。
【0064】
時刻(t8〜t9)は、時刻(t5〜t6)の間と同様に加速中であり、廃熱発電電力(WTG)が増加している状態である。時刻(t51)と同様に、時刻(t81)で廃熱発電電力(WTG)が車両消費電力を上回るので、オルタ発電電力はゼロ(0)となり、インバータ5dが調整電圧(Vu_reg)で電圧制御する。
【0065】
時刻(t9〜t10)は、時刻(t7〜t8)と同様に減速中であり、減速回生信号のアクティブレベルが(H)であるので、廃熱発電電力(WTG)をゼロ(0)とし、オルタネータ&レギュレータ3に対する調整電圧をVu_reg(=Va_reg+α)に変更し、オルタネータ&レギュレータ3で減速回生発電している状態である。
【0066】
時刻(t10)以降は、時刻(t4〜t5)と同様にアイドリング中であり、時刻(t10〜t101)の間は、直前の時刻(t9〜t10)において廃熱発電電力(WTG)をゼロ(0)にしたことによって冷却水温が上昇し、制御無しの場合よりも廃熱発電電力(WTG)が少しだけ上昇している状態である。
【0067】
このように廃熱発電制御手段6では、減速回生によって減速回生電力が電源バスに供給されている場合には、廃熱発電電力(WTG)(若しくは、廃熱発電そのもの)を抑制(ゼロに設定)している。
【0068】
すなわち、減速回生電力は、その電力を蓄える手段を備えない限り蓄電することはできないため、減速回生電力が電源バスに供給される場合には、その電力を最大限受け入れることが好ましいが、廃熱発電電力は、廃熱エネルギを用いて発電されたものであり、熱源から積極的に廃熱エネルギを奪わなければ、その廃熱エネルギは蓄熱される。
【0069】
従って、減速回生電力が電源バスに供給されている場合には、廃熱発電電力を抑制することで、減速回生電力を電源バスに最大限受け入れつつ廃熱エネルギを蓄熱することができる。その結果、エネルギを効率よく回収して車両の燃費を向上させることができる。
【0070】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することができる。
【0071】
(変形例1)
図6に、本変形例における廃熱発電手段5の構成を示す。本廃熱発電手段5は、インバータ5dの替わりに整流回路/レギュレータ5iを備え、廃熱発電機5cとして、オルタネータのような界磁電流の制御によって出力の制御が可能な発電機を採用した。本廃熱発電手段5の構成では、直接的に廃熱発電機5cを回転数制御することはできないので、廃熱発電電力の調整は冷媒ポンプ5eの回転数を制御することで行う。
【0072】
しかしながら、冷媒ポンプ5eの回転数の制御では冷媒を介するため応答性が悪い。そこで、本変形例では、車両の減速中に廃熱発電電力をゼロ(0)にするため、整流回路/レギュレータ5iの調整電圧(Vt_reg)を電源バスにおいて通常使用されるバス電圧(VB)範囲の下限よりも低い値(VL=約10[V]程度)に変更する。これにより、減速回生電力が電源バスに供給されている場合、この変更された調整電圧値(VL)に近づくように、廃熱発電電力の供給を抑えることができる。
【0073】
更に、本廃熱発電手段5では、膨張機5bの冷媒の出入り口をバイパスするバイパス流路およびその流路を開閉する膨張機バイパスバルブ5jを設けている。
【0074】
図7に、本変形例における廃熱発電制御手段6による制御処理を示す。本制御処理では、廃熱発電手段5の最大供給可能電力(WTG_MAX)、及び廃熱発電電力(WTG)を制御するのではなく、整流回路/レギュレータ5iの調整電圧の変更、膨張機バイパスバルブ5jの制御、及び冷媒ポンプ5eの回転数制御を行う。
【0075】
先ず、ステップS210では減速回生信号を取得し、ステップS220では、車両が減速中(又は降坂中)であるか否かを判定する。ここで、減速回生信号がアクティブレベル(H)である場合には、車両が減速中であると判定してステップS260へ処理を進め、減速回生信号がパッシブレベル(L)である場合には、車両が減速中でない(加速中、若しくは定速走行中)と判定してステップS230へ処理を進める。
【0076】
ステップS230では、整流回路/レギュレータ5iの調整電圧(Vt_reg)をオルタネータ&レギュレータ3に対する調整電圧(Va_reg)よりも少し高い値(Vt_reg(=Va_reg+α))に設定する。
【0077】
ステップS240では膨張機バイパスバルブ5jのバルブを閉じ、ステップS250では、廃熱発電機5cが調整電圧(Vt_reg)を超えない範囲の最大供給可能電力(WTG_MAX)を算出し、この最大供給可能電力(WTG_MAX)で発電するように、冷媒ポンプ回転数(Np)を制御する。これにより、廃熱発電機5cは、減速中においては廃熱発電電力をゼロ(0)とし、それ以外の場合は、調整電圧(Vt_reg)が(Vu_reg)となるように発電する。
【0078】
また、廃熱発電電力が車両消費電力よりも少なく、バス電圧(VB)を(Va_reg)まで上昇させることができない場合は、その不足分をオルタネータ&レギュレータ3がエンジン動力を用いて発電することにより、バス電圧(VB)を(Va_reg)に保つ。一方、廃熱発電電力が車両消費電力以上の場合は、バス電圧(VB)は、(Vu_reg)に保たれ(Va_reg)を上回るため、オルタネータ&レギュレータ3による発電は行わない。
【0079】
ステップS260では、整流回路/レギュレータ5iの調整電圧(Vt_reg)を電源バスにおいて通常使用されるバス電圧(VB)範囲の下限よりも低い値(VL)に設定する。ステップS270では膨張機バイパスバルブ5jのバルブを開放し、ステップS280では冷媒ポンプ5eの回転数(Np)をゼロ(0)にして、膨張機5bへの冷媒の流れを止めて、廃熱発電機5cの回転を止めるようにする。これにより、減速回生電力の供給開始に伴って、応答よく、廃熱発電電力を抑制することが可能となる。
【0080】
図8は、車両の走行パターンに対する本変形例における車両の電気系の動作をタイムチャートで示したものである。減速回生中に整流回路/レギュレータ5iの調整電圧(Vt_reg)を変えること以外は、上記実施形態において説明した図4に示すタイムチャートと同様であるため、その説明を省略する。
【0081】
(変形例2)
図9は、本変形例における車両の電気系を示すブロック図である。本変形例では、図1に示したローパスフィルタ9と、このローパスフィルタ9を介して廃熱発電制御手段6に入力する減速回生信号線を省略した構成となっており、それ以外は図1と同様である。
【0082】
本変形例では、廃熱発電手段5に対する調整電圧(Vt_reg)は、車両の速度に係わらず一定とし、代わりに、オルタネータ&レギュレータ3に対する調整電圧をエンジンの動力を用いた動力発電の場合には(Va_reg)、減速回生発電の場合には(Vu_reg)に変更して、以下の関係を満たすようにした。
【0083】
(数1)
(Va_reg)<(Vt_reg)<(Vu_reg)
このように、廃熱発電手段5に対する調整電圧(Vt_reg)は、動力発電に対する調整電圧よりも高い値で、かつ、減速回生発電に対する調整電圧よりも低い値となるようにする。これにより、車両が減速中でなく、廃熱発電電力が大きい場合には、廃熱発電電力によって電源バスのバス電圧を調整電圧(Vt_reg)に保つことができる。
【0084】
図10は、車両の走行パターンに対する本変形例における車両の電気系の動作をタイムチャートで示したものである。時刻(t0〜t3)、時刻(t4〜t51)、時刻(t8〜t81)、時刻(t10)以降では、車両が減速中でなく、廃熱発電電力が車両消費電力よりも少ないので、オルタネータ&レギュレータ3は、その不足分をエンジン動力によって発電し、電源バスのバス電圧を調整電圧(Va_reg)に保つ。
【0085】
時刻(t3〜t4)、時刻(t7〜t8)、時刻(t9〜t10)の間は、車両が減速中であるので、オルタネータ&レギュレータ3は、車両の減速による運動エネルギで発電し、電源バスのバス電圧を調整電圧(Vu_reg)に保つ。この場合、電源バスのバス電圧が減速回生発電の調整電圧(Vu_reg)に保たれていれば、廃熱発電手段5に対する調整電圧(Vt_reg)を上回っているので、廃熱発電を自動的に停止して、発電しないようにするとよい。
【0086】
時刻(t51〜t7)、及び時刻(t81〜t9)の間は、車両が減速中でなくかつ廃熱発電電力が車両消費電力に対して十分であるので、廃熱発電手段5は調整電圧(Vt_reg)を保つように発電する。
【0087】
(変形例3)
図11に示す車両の電気系において、電源バスのバス電圧を検出するバス電圧検出手段を備える場合、このバス電圧検出手段は、オルタネータ&レギュレータ3及び廃熱発電手段5からの電力線が電源バスと接続する接続部よりもバッテリ8に近い部位Bにて検出することが好ましい。言い換えれば、少なくともバッテリ8からの電力線と廃熱発電手段5からの電力線との接続部Aよりもバッテリ8側であることが望ましい。
【0088】
これにより、外乱による影響が少なく、正確で安定したバス電圧の検出が可能となり、発電制御を安定させることができる。なお、これは、オルタネータ&レギュレータ3の電圧検出についても同様である(図11のD)。
【0089】
(変形例4)
図11に示す車両の電気系のように、廃熱発電手段5からの電力線が電源バスと接続する接続部Aは、オルタネータ&レギュレータ3からの電力線が電源バスと接続する接続部Cよりもバッテリ8の近くに位置することが好ましい。言い換えれば、接続部Cは、接続部Aよりも負荷側であることが望ましい。
【0090】
一般に、廃熱発電手段5による廃熱発電電力はオルタネータ&レギュレータ3による動力発電電力よりも小さい。そこで、大電流の流れるオルタネータ&レギュレータ3と電源バスの電気負荷との間が可能な限り短くなるように、接続部Aを接続部Cよりもバッテリ8の近くに位置することにより、電力損失を小さくすることができる。また、廃熱発電手段5のインバータ5dから発生するノイズによる電気負荷への影響を抑制することができる。
【0091】
(変形例5)
例えば、オルタネータ&レギュレータ3の調整電圧(Va_reg)を一定値とし、廃熱発電手段5に対する調整電圧(Vt_reg)を変更するようにしてもよい。すなわち、電源系の電圧値が予め設定された上限値を上回らないように、廃熱発電手段5に対する調整電圧(Vt_reg)を制御するようにしてもよい。
【0092】
これにより、既存の車両の電源系に廃熱発電に関する手段を後付けして構成することができる。また、廃熱発電電力の余剰によって電源系の電圧値が上限値を上回らないように抑えられるため、オルタネータ&レギュレータ3による動力発電電力と熱発電電力を同時に受け入れることができるとともに、電源系にバッテリ8が接続される場合には、このバッテリの過充電を防ぐことができる。その結果、廃熱エネルギを効率よく回収して車両の燃費を向上させる効果が期待できる。
【0093】
なお、廃熱発電制御手段6は、廃熱発電手段5に対する所定の調整電圧値よりも高い値に設定された上限値を上回らないように制御することが好ましい。これにより、廃熱発電電力が大きい場合であっても、上記所定の調整電圧値よりも高い値に設定された上限値を上回らない範囲で廃熱発電電力を利用することができるようになり、また、電源系の電圧値を安定させることができる。
【0094】
(変形例6)
バッテリ8については、鉛バッテリのような充電の受け入れ性能が劣る電池に限らず、リチウム電池やニッケル水素(NiMH)電池のような充電の受け入れ性能が良い高性能バッテリであってもよい。このような高性能バッテリを採用した場合において、残存容量が満充電に近く回生電力を受け入れる余裕がない場合や、コストダウンのため小容量のバッテリを使用した場合等に対しても、本発明の適用が有効である。
【0095】
(変形例7)
例えば、本実施形態の車両がハイブリッド電気自動車である場合、このハイブリッド電気自動車の電源系に供給された廃熱発電電力をハイブリッド電気自動車の駆動用の電力に変換する手段を備えるようにしてもよい。これにより、ハイブリッド電気自動車の電源系に廃熱発電電力を供給して、駆動用の電力として利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の実施形態における車両の電気系を示すブロック図である。
【図2】廃熱発電手段5の構成を示す図である。
【図3】廃熱発電制御手段6における発電電力制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】車両の走行パターンに対する本発明の実施形態における車両の電気系の動作を示すタイムチャートである。
【図5】廃熱発電手段5の最大供給可能電力(WTG_MAX)の算出処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態の変形例1に係わる、廃熱発電手段5の構成を示す図である。
【図7】本発明の実施形態の変形例1に係わる、廃熱発電制御手段6における発電制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態の変形例1に係わる、オルタ発電と廃熱発電による発電電力の時間遷移を示すタイムチャートである。
【図9】本発明の実施形態の変形例2に係わる、車両の電気系を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施形態の変形例2に係わる、オルタ発電と廃熱発電による発電電力の時間遷移を示すタイムチャートである。
【図11】本発明の実施形態の変形例3及び変形例4に係わる、車両の電気系を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0097】
1 エンジン
2 エンジン制御手段
3 オルタネータ&レギュレータ
4 減速回生制御手段
5 廃熱発電手段
5a 熱交換器
5b 膨張機
5c 廃熱発電機
5d インバータ
5e 冷媒ポンプ
5f 圧力センサ
5g 冷媒ポンプモータ制御手段
5h ウォータポンプモータ制御手段
6 廃熱発電制御手段
7 水温検出手段
8 バッテリ
9 ローパスフィルタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の電源系の電圧値が所定の調整電圧値となるように、前記移動体の動力を用いて発電した動力発電電力を前記電源系に供給する動力発電手段を備えた電源制御装置であって、
前記移動体における熱源の熱エネルギを用いて発電し、この発電した熱発電電力を前記電源系に供給する熱発電手段と、
前記電源系の電圧値が予め設定された上限値を上回らないように、前記熱発電手段の熱発電電力を制御する熱発電制御手段と、を備えることを特徴とする電源制御装置。
【請求項2】
前記熱発電制御手段は、前記動力発電手段に対する前記所定の調整電圧値よりも高い値に設定された前記上限値を上回らないように制御することを特徴とする請求項1記載の電源制御装置。
【請求項3】
移動体の電源系の電圧値が所定の調整電圧値となるように、前記移動体の動力を用いて発電した動力発電電力を前記電源系に供給する動力発電手段を備えた電源制御装置であって、
前記移動体における熱源の熱エネルギを用いて発電し、この発電した熱発電電力を前記電源系に供給する熱発電手段と、
前記移動体の減速時に、当該移動体の運動エネルギを用いて発電し、この発電した減速回生電力を前記電源系に供給する減速回生手段と、
前記減速回生手段による減速回生電力が供給されている場合、前記熱発電手段の熱発電電力を抑制するように制御する熱発電制御手段と、を備えることを特徴とする電源制御装置。
【請求項4】
前記熱発電手段は、前記電源系の電圧値が、前記動力発電手段に対する前記所定の調整電圧値よりも高い値で、かつ、前記減速回生手段に対する調整電圧値よりも低い値に設定された当該熱発電手段に対する調整電圧値となるように、前記熱発電電力を供給することを特徴とする請求項3記載の電源制御装置。
【請求項5】
前記熱発電制御手段は、前記電源系において通常使用される電圧範囲の下限値よりも低い値に前記熱発電手段に対する調整電圧値を変更する熱発電調整電圧値変更手段を備えることを特徴とする請求項3記載の電源制御装置。
【請求項6】
前記移動体の減速又は減速指令を検知した場合に、減速回生を指示するための減速回生信号を出力する減速回生信号出力手段を備え、
前記減速回生手段は、前記減速回生信号の出力を受けた場合に発電するものであり、
前記熱発電制御手段は、
前記減速回生信号の出力を受けた場合に前記熱発電手段の熱発電電力を制御するものであり、当該熱発電制御手段における前記減速回生信号の出力に対する応答性を前記減速回生手段における前記減速回生信号の出力に対する応答性よりも遅くするための手段を備えることを特徴とする請求項3〜5の何れか1項に記載の電源制御装置。
【請求項7】
前記電源系の電圧値を検出する電圧検出手段を備え、
前記電圧検出手段は、前記動力発電手段、及び前記熱発電手段からの電力線が前記電源系と接続する接続部よりも前記電源系に接続されたバッテリに近い部位にて検出することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の電源制御装置。
【請求項8】
前記熱発電手段からの電力線が前記電源系と接続する接続部は、前記動力発電手段からの電力線が前記電源系と接続する接続部よりも前記バッテリの近くに位置することを特徴とする請求項7記載の電源制御装置。
【請求項9】
前記熱発電手段は、前記熱源の熱エネルギによる熱伝達媒体の膨張又は/及び凝縮によって発生する運動エネルギを利用して発電する熱発電機を駆動させることで前記熱発電電力を発生する手段を備えることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の電源制御装置。
【請求項10】
前記熱伝達媒体は前記移動体に搭載された空調装置の冷媒であって、この冷媒の膨張前の圧力、冷媒流量、及び温度から前記熱発電手段の発電可能な発電可能電力を算出する熱発電電力算出手段と、
前記冷媒を加圧し循環させる冷媒ポンプと、
前記熱発電電力算出手段の算出した発電可能電力が出力されるように、前記熱発電機の回転数、回転トルク、及び前記冷媒ポンプの回転数を制御する手段と、を備えることを特徴とする請求項9記載の電源制御装置。
【請求項11】
前記熱発電機における熱伝達媒体の流路をバイパスする流路バイパス手段と、
前記流路バイパス手段を流れる熱伝達媒体の流量を制御するバイパス流量制御手段と、を備え、
前記熱発電制御手段は、前記バイパス手段に熱伝達媒体を流すことによって前記熱発電電力を抑制することを特徴とする請求項9又は10記載の電源制御装置。
【請求項12】
前記移動体はハイブリッド電気自動車であって、当該ハイブリッド電気自動車の電源系に供給された前記熱発電手段からの熱発電電力を前記ハイブリッド電気自動車の駆動用の電力に変換する手段を備えることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の電源制御装置。
【請求項1】
移動体の電源系の電圧値が所定の調整電圧値となるように、前記移動体の動力を用いて発電した動力発電電力を前記電源系に供給する動力発電手段を備えた電源制御装置であって、
前記移動体における熱源の熱エネルギを用いて発電し、この発電した熱発電電力を前記電源系に供給する熱発電手段と、
前記電源系の電圧値が予め設定された上限値を上回らないように、前記熱発電手段の熱発電電力を制御する熱発電制御手段と、を備えることを特徴とする電源制御装置。
【請求項2】
前記熱発電制御手段は、前記動力発電手段に対する前記所定の調整電圧値よりも高い値に設定された前記上限値を上回らないように制御することを特徴とする請求項1記載の電源制御装置。
【請求項3】
移動体の電源系の電圧値が所定の調整電圧値となるように、前記移動体の動力を用いて発電した動力発電電力を前記電源系に供給する動力発電手段を備えた電源制御装置であって、
前記移動体における熱源の熱エネルギを用いて発電し、この発電した熱発電電力を前記電源系に供給する熱発電手段と、
前記移動体の減速時に、当該移動体の運動エネルギを用いて発電し、この発電した減速回生電力を前記電源系に供給する減速回生手段と、
前記減速回生手段による減速回生電力が供給されている場合、前記熱発電手段の熱発電電力を抑制するように制御する熱発電制御手段と、を備えることを特徴とする電源制御装置。
【請求項4】
前記熱発電手段は、前記電源系の電圧値が、前記動力発電手段に対する前記所定の調整電圧値よりも高い値で、かつ、前記減速回生手段に対する調整電圧値よりも低い値に設定された当該熱発電手段に対する調整電圧値となるように、前記熱発電電力を供給することを特徴とする請求項3記載の電源制御装置。
【請求項5】
前記熱発電制御手段は、前記電源系において通常使用される電圧範囲の下限値よりも低い値に前記熱発電手段に対する調整電圧値を変更する熱発電調整電圧値変更手段を備えることを特徴とする請求項3記載の電源制御装置。
【請求項6】
前記移動体の減速又は減速指令を検知した場合に、減速回生を指示するための減速回生信号を出力する減速回生信号出力手段を備え、
前記減速回生手段は、前記減速回生信号の出力を受けた場合に発電するものであり、
前記熱発電制御手段は、
前記減速回生信号の出力を受けた場合に前記熱発電手段の熱発電電力を制御するものであり、当該熱発電制御手段における前記減速回生信号の出力に対する応答性を前記減速回生手段における前記減速回生信号の出力に対する応答性よりも遅くするための手段を備えることを特徴とする請求項3〜5の何れか1項に記載の電源制御装置。
【請求項7】
前記電源系の電圧値を検出する電圧検出手段を備え、
前記電圧検出手段は、前記動力発電手段、及び前記熱発電手段からの電力線が前記電源系と接続する接続部よりも前記電源系に接続されたバッテリに近い部位にて検出することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の電源制御装置。
【請求項8】
前記熱発電手段からの電力線が前記電源系と接続する接続部は、前記動力発電手段からの電力線が前記電源系と接続する接続部よりも前記バッテリの近くに位置することを特徴とする請求項7記載の電源制御装置。
【請求項9】
前記熱発電手段は、前記熱源の熱エネルギによる熱伝達媒体の膨張又は/及び凝縮によって発生する運動エネルギを利用して発電する熱発電機を駆動させることで前記熱発電電力を発生する手段を備えることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の電源制御装置。
【請求項10】
前記熱伝達媒体は前記移動体に搭載された空調装置の冷媒であって、この冷媒の膨張前の圧力、冷媒流量、及び温度から前記熱発電手段の発電可能な発電可能電力を算出する熱発電電力算出手段と、
前記冷媒を加圧し循環させる冷媒ポンプと、
前記熱発電電力算出手段の算出した発電可能電力が出力されるように、前記熱発電機の回転数、回転トルク、及び前記冷媒ポンプの回転数を制御する手段と、を備えることを特徴とする請求項9記載の電源制御装置。
【請求項11】
前記熱発電機における熱伝達媒体の流路をバイパスする流路バイパス手段と、
前記流路バイパス手段を流れる熱伝達媒体の流量を制御するバイパス流量制御手段と、を備え、
前記熱発電制御手段は、前記バイパス手段に熱伝達媒体を流すことによって前記熱発電電力を抑制することを特徴とする請求項9又は10記載の電源制御装置。
【請求項12】
前記移動体はハイブリッド電気自動車であって、当該ハイブリッド電気自動車の電源系に供給された前記熱発電手段からの熱発電電力を前記ハイブリッド電気自動車の駆動用の電力に変換する手段を備えることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の電源制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−154800(P2007−154800A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−352668(P2005−352668)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]