説明

電源回路の設計支援装置と設計支援方法

【課題】プリント配線基板上の電源回路をノイズに対し安定になるように自動的に設計する電源回路の設計支援装置を提供する。
【解決手段】プリント配線基板の情報を入力することにより、電源回路の電源ノイズ特性を導出させ、この電源ノイズ特性が予め決められた判定基準を満たすかどうかを判定し、判定基準を満たさない場合、半導体集積回路内部に容量を追加するという変更を行なうことで、プリント配線基板の電源回路が、ノイズに対し安定に設計されているかが判定できるように構成している。電源ノイズ特性を求める際に、等価回路モデルを用いて回路解析する手法を選択することにより、電源ノイズ特性を精度良く定量的に導出することが可能である。また、追加する容量についても、実際に追加する容量セルの等価回路モデルを使用することにより、容量が内部に追加される半導体集積回路の等価回路モデルを容易に作成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CADシステムに関し、特に、プリント配線基板(以下、「PCB」とも記述する)に実装される半導体集積回路(以下、「LSI」とも記述する)及びコンデンサ等の受動部品において、PCBの電源回路における電圧降下などのノイズ特性を考慮し、LSIが搭載されたPCBの電源回路がノイズに対し不安定であるかどうかを判定する装置、及び最適な値の内部容量が追加されたLSIとそれが実装されたPCBを短時間で設計することを可能にした電源回路の設計支援装置と設計支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボード上に搭載されたLSIを正常動作させる為に、LSI内部の電源−GND間にオンチップキャパシタを搭載し、電源−GND間に生じる電源ノイズを減じるような試みが行われている。
【0003】
例えば、従来のシステムとして、特許文献1のようなオンチップキャパシタの搭載手法を有する半導体集積回路の設計システムが提案されている。この文献によると、必要な容量のバイパスコンデンサを、より効果的な回路ブロック内部のノイズ源近くに追加することにより、ノイズ発生量を所定の範囲内に抑えることができる半導体集積回路設計装置、それを用いた半導体集積回路設計方法、この方法手順を回路設計に用いた半導体集積回路の製造システムを提供出来る、と記載されている。
【0004】
この半導体集積回路のパターンを自動生成する半導体集積回路設計装置は、半導体集積回路を構成する回路ブロックのゲートレベル論理回路情報、スタンダードセルライブラリ情報、及びパッケージ情報を入力処理する入力手段と、前記入力手段により入力された情報を用いて、前記回路ブロックに発生するノイズ発生量を見積もるノイズ見積手段と、前記ノイズ見積手段による見積結果に基づいて、前記ノイズ発生量を所定の範囲内に抑えるために前記回路ブロックに搭載することが必要な、電源ノイズ及び基板ノイズ低減用のバイパスコンデンサの容量である容量制約を指定する容量制約指定手段と、前記回路ブロックに搭載されているバイパスコンデンサの容量である搭載容量と、前記容量制約とを比較する比較手段と、前記比較手段による比較において、前記搭載容量が前記容量制約より大きい場合に、当該半導体集積回路のパターンを自動生成する処理を終了する処理終了手段と、前記比較手段による比較において、前記搭載容量が前記容量制約以下の場合に、前記回路ブロック中の所定ノイズ発生量以上の論理ゲートを選択する論理ゲート選択手段と、前記論理ゲート選択手段により選択された論理ゲートにバイパスコンデンサを追加するバイパスコンデンサ追加手段とを有する。
【0005】
この半導体集積回路設計装置によれば、予めノイズを見積もることで、追加するバイパスコンデンサの容量に制約を与えるので、ノイズ解析処理を繰り返し行う必要が無くなり、短い時間で前記バイパスコンデンサを前記回路ブロック内に追加することができ、この結果、半導体集積回路のノイズ発生量を、短い時間で所定の範囲内に確実に抑えることができる。
【0006】
さらに、上記した半導体集積回路設計装置の論理ゲート選択手段は、前記入力された情報と、前記半導体集積回路のフロアプランの情報とを用いて、前記回路ブロック中の各論理ゲートのノイズ発生によって影響される度合いであるノイズ影響度を計算し、該ノイズ影響度が最大である論理ゲートを選択し、前記回路ブロック中の大きなノイズを生じているノイズ源の近くに、前記バイパスコンデンサを追加することができ、これにより、より効率的にノイズを低減することができる、と記載されている。
【0007】
図30は、特許文献1に示されている低ノイズ設計方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0008】
なお、特許文献2には、半導体装置の電源ノイズの振る舞いを解析する場合に用いる半導体装置モデルの作成方法を開示し、図31は、半導体装置モデルの作成装置の構成図である。
【0009】
又、特許文献3には、半導体集積回路の電源モデルとその設計方法が記載され、図32は、特許文献3に記載された電源モデルの回路図である。
【特許文献1】特開2006−228252号公報(請求項1、2、段落0024、00255)
【特許文献2】特開2004−234618号公報
【特許文献3】特開2001−222573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の技術においては、容量の制約を満たさなかった場合、回路ブロックを変更するという手法を用いている。回路ブロックの変更を伴う場合、他の条件によりLSIが正常動作をしない可能性もある。また、LSIの設計ルールにより使用される回路ブロックはある程度決定している為、ライブラリの変更を行なわなくてはならない。さらに、そうした手法を用いても、フロアプラン上、追加出来る容量の絶対量は決まっている為、ノイズの大きさによっては、この手法では対応が困難になる場合が生じる。
【0011】
また、ノイズ発生量を見積もるノイズ見積手段として、入力したデータより、LSIの等価回路モデルを作成し、そのモデルを解析することによってノイズ発生量を求めているが、モデルの構成はLSIのパッケージまでであり、LSIが搭載されるPCBに関するモデルは含まれていない。LSI内部に生じるノイズには、PCBの基板共振などの影響で大きく変動することがあり、PCBの影響が無い場合にはノイズ発生量を正しく見積もれないことになる。LSIは、実際にはどのようなPCBに搭載されるか限定されているわけではないが、一般的にPCBの影響があることを想定し、その影響を加味した上でノイズ対策が行われたLSIを初期段階から提供することが、LSIベンダーとしては必要である。
【0012】
本発明は、上記の課題を解決する為になされたものであり、その目的とするところは、PCBの設計段階において、PCB上に実装されるLSI及びそのPCBの電源回路において、PCBの電源ノイズを定量的に評価し、LSIが搭載されるPCBの電源回路がノイズに対し安定かどうかを判定すると共に、判定結果に基づいて、容量が追加されたLSIの構造及びLSIが実装されるPCBの電源回路を短時間でかつ精度良く求める電源回路の設計支援装置と設計支援方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記した目的を達成するために、基本的には、以下に記載されたような技術構成を採用するものである。
【0014】
即ち、本発明に係わる電源回路の設計支援装置の第1の態様は、
少なくとも半導体集積回路及び受動部品を含むプリント配線基板上の電源回路をノイズに対し安定に動作するように、該電源回路の設計を支援する電源回路の設計支援装置であって、
該電源回路を構成するプリント配線基板、半導体集積回路及び受動部品の所定の入力情報を入力する入力手段と、
該入力手段より入力される該入力情報に基づき、該電源回路のノイズの特性である電源ノイズ特性を導出する電源ノイズ特性導出手段と、
該電源回路における電源ノイズ特性の許容される条件を格納すると共に、該半導体集積回路に追加出来る内部容量値の許容される条件を格納する判定基準データベースと、
該電源ノイズ特性導出手段により導出された電源ノイズ特性と該判定基準データベースから得られた電源ノイズ特性の許容される条件とを比較し、該電源回路の電源ノイズ特性が所定の条件を満たしているかどうか判定する電源ノイズ判定手段と、
該電源ノイズ判定手段において、該条件を満たさない場合、該半導体集積回路内部に容量を追加する変更を行い、変更された情報を該電源ノイズ特性導出手段へ入力する内部容量追加手段と、
該内部容量追加手段により追加された内部容量の値と該判定基準データベースより得られた該半導体集積回路に追加出来る内部容量値の許容される条件とを比較し、該半導体集積回路に必要な該内部容量値を追加出来るかどうかを判定する搭載容量条件判定手段と、
で構成したことを特徴とするものであり、
又、第2の態様は、
該電源ノイズ特性導出手段は、
該入力情報から該電源回路の等価回路モデルを生成する等価回路モデル生成手段と、
該等価回路モデルを解析して、電源ノイズ特性を導出する演算手段とからなることを特徴とするものであり、
又、第3の態様は、
該等価回路モデル生成手段は、
少なくとも該プリント配線基板に関する所定の入力情報に基づき、該プリント配線基板に関する等価回路モデルを生成する基板等価回路モデル生成手段と、
該半導体集積回路に関する所定の入力情報に基づき、該半導体集積回路の等価回路モデルを生成するLSI等価回路モデル生成手段と、
からなることを特徴とするものであり、
又、第4の態様は、
該内部容量追加手段では、該半導体集積回路内部に実際に追加される容量セルの等価回路モデルを、該半導体集積回路の該等価回路モデルに追加するように構成したことを特徴とするものであり、
又、第5の態様は、
該基板等価回路モデル生成手段は、該プリント配線基板の等価回路モデルに該受動部品の等価回路モデルを結合するように構成されていることを特徴とするものであり、
又、第6の態様は、
該基板等価回路モデル生成手段は、電源配線の物理構造と電気的特性情報とに基づいて等価回路モデルを作成するフィールドソルバを具備することを特徴とするものであり、
又、第7の態様は、
該搭載容量条件判定手段において、条件が満たされないと判断された場合、該半導体集積回路のチップサイズの変更を行い、変更された情報を該電源ノイズ特性導出手段へ入力するチップサイズ変更手段を更に備えることを特徴とするものである。
【0015】
本発明では、入力情報として、LSIに関してはLSIの全回路接続情報や内部レイアウト情報が含まれるLSIの設計情報、及び、LSIの正常動作が可能な電源ノイズ特性の許容値、チップサイズの情報、追加される容量セルのデータ等を含めたLSIデータベースを用意する。また、PCB及び実装される部品に関しては、レイアウト情報であるCADデータ及び部品の等価回路の情報である部品データベースを用意する。これらの入力情報から、LSIの電源系から生じるノイズの特性である電源ノイズ特性を導出する。
【0016】
次に、データベースに含まれる、そのPCBにおける電源回路のLSIの電源ノイズの許容値の特性である電源ノイズ条件を読み出し、導出された電源ノイズ特性と電源ノイズ条件とを比較し、その電源回路が安定かどうかの判定を行う。この処理によって、LSIが実装されたPCBの電源回路が、ノイズに対し安定に設計されているかを自動的に判定することが出来る。
【0017】
また、定量的に電源の電源ノイズ特性を導出するには、LSIが実装されたPCBの電源系の特性を精度良く見積もった等価回路のモデルを解析するという手段を用いることで実現可能である。この場合、LSIの等価回路モデルの生成手法としては、LSIの電源端子に流れる電流を精度良く再現出来るモデルがLSIの設計情報から生成される手法を用いれば、LSIの設計情報から自動的にモデルが生成出来る。
【0018】
また、PCBの電源回路がノイズに対し安定でないと判定された場合、ノイズに対し安定な構造になるようにLSIに内部容量を追加して、回路構造を変更するという方法を用いる。具体的には、LSI内部に用意されている容量セルのモデルを追加してLSIの構造を変更させる。追加する内部容量の値は、等価式によって決定することも出来るし、実際に容量セルを追加したLSIの等価回路モデルを作成し、そのモデルを使用したPCBの電源ノイズの解析を行って決定しても良い。容量セルを追加したことによるLSIの回路構造の処理は、LSIのレイアウトデータがあればそれほど複雑ではなく、変更された構造における回路モデルから再度電源ノイズ特性を導出し、電源ノイズ条件を満たすかどうかを判定することで、追加される内部容量の値が決定される。変更を行う指針についても、ライブラリの中に用意しておけば、自動的に容量値が必要な値になるまで容量セルが追加されるという変更を行うことが可能になる。電源ノイズ条件を満たす構造が作成されるまで、この操作を繰り返すことにより、自動的にノイズに対し安定であるLSI及びPCBの電源回路の構造を設計することが可能になる。
【0019】
次に、データベースに含まれる、そのLSIのチップにおける追加出来る容量の限界値である搭載容量条件を読み出し、そのLSIチップが先述した手法で求められた追加する内部容量を搭載可能かどうかの判定作業を行う。この搭載容量条件は、LSIのチップによって異なり、チップ内の空きスペースと容量セルのサイズによって決まる値である。この処理によって、LSIの内部容量の追加により、PCBの電源回路が、ノイズに対し安定であるかどうかを自動的に判定することが出来る。
【0020】
また、上記操作において、当該LSIのチップの搭載容量条件が満たされない場合には、LSIのチップサイズを変更し、搭載容量条件を変更することによって、PCBの電源回路がノイズに対し安定になるように設計するという方法も選択出来る。基本的には、LSIとして同じ機能を有しており、チップサイズが大きめのものを用意しておき、搭載容量条件を大きめになるように変更することにより、PCBの電源回路をノイズに対し安定に設計することが出来る。
【0021】
これは、LSIデータベース内に、異なるチップサイズを複数用意しておき、最初に用意していたサイズでは搭載容量条件を満たさない場合、より大きめのサイズのものが選択され、最初に用意していたものと置き換えるといった処理の指針をライブラリの中に用意しておけば、自動的にPCB上で、ノイズに対し安定であるように容量セルが追加されたLSIが自動的に作成されることになる。
【0022】
さらに、上記手法を適用したプログラム及びシステムを実現することによって、入力情報及びデータベースから自動的に、PCBの電源回路が安定に設計されているかどうかの判定、及びPCB上で安定動作するように内部容量が追加されたLSIの構造を作成することが出来る。また、基板レイアウトの入力情報としてCADデータを使用することにより、PCBの電源回路のデータとリンクさせて、容易にLSIの設計を行うことが出来る。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、上記したように構成したので、以下のような効果を奏する。
【0024】
電源ノイズ条件、及び搭載容量条件を判定することにより、PCBの電源回路がノイズに対し安定に設計されているかの判断、及びノイズに対し安定であるLSIが実装されたPCBの電源回路の設計が容易にできるようになる。
【0025】
入力データにLSIの設計情報と動作状態、追加される容量セルのデータ、レイアウト、サイズ等を含むLSIデータベース、PCBの配線のレイアウト情報等の構造情報と部品の等価回路等を含む部品のデータベース、及び電源ノイズ条件と搭載容量条件を含む判定基準のデータベースを用意することにより、LSIやPCBの電源回路の設計に対して深い知識を有していない者でも、PCBの電源回路が安定であるかどうかの判定を行うことが可能になる。
【0026】
また、判定基準を満たさないPCBの電源回路が存在した場合、構造をどのように変更するかの変更指針を用意しておくことにより、判定基準を満たすように、LSIに内部容量を追加する操作を行い、自動的にノイズに対し安定であるように設計されたLSI及びPCBの電源回路の構造を得ることも可能になる。
【0027】
さらに、LSI及びPCBの特性を再現した等価回路モデルを用いて解析を行うことにより、電源回路がノイズに対し安定に設計されているかどうかを、現実的な時間で容易に判定することが可能となる。また、電源ノイズ特性を絶対値で導出することが可能であり、定量的な評価及び対策を行うことが可能になる。
【0028】
また、LSIベンダーが、ノイズに対しより安定なLSIを提供するために、本発明のシステムを利用することも可能である。ベンダー側としては、ユーザーが使用すると考えられるようなPCB、もしくは標準的なPCBのデータを用いて、本発明のシステムにより、ノイズに対し安定に動作するような容量セルを追加したLSIを設計しておくことにより、ユーザーに対して安定した動作を行なうLSIを提供することが可能になる。
【0029】
さらに、LSIベンダーとしては、提供するLSIを実装するPCBのデータを複数種類用意し、それぞれのPCBのデータにおいて、本発明のシステムにより、提供するLSIを実装するにふさわしいPCB構造を提案することも可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
はじめに、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0031】
図1に、本発明の第1の実施の形態のシステム構成を示す。入力装置(1)からLSIを実装したPCBを構成する回路の設計情報とデータベースを備えた入力情報を電源ノイズ導出手段(2)に入力する。次に、電源ノイズ導出手段(2)において、PCB上の電源から生じるノイズの特性を導出する。次に、電源ノイズ条件判定手段(3)において、このLSIの実装されたPCBの電源回路が安定に設計されているかを自動的に判定する。具体的には、電源ノイズ特性導出手段(2)において導出された電源ノイズ特性と、本発明の特徴である判定基準データベース(4)に備えられている電源ノイズ条件とを比較し、電源ノイズ特性が電源ノイズ条件を満たしているかどうかを判定する。
【0032】
電源ノイズ特性として挙げられるものは、電源−GND間の電圧変動、電源を流れる電流、電源から発生する電磁界放射等があり、電源ノイズ導出手段(2)ではそれらのうちどれか一つの特性を求めるだけで良い。また、判定基準データベース(4)に備えられている電源ノイズ条件とは、求められた特性における限界値を示すような条件であれば良い。
【0033】
あらかじめ複数の電源ノイズ条件の特性が判定基準データベース(4)に備えられていれば、電源ノイズ導出手段(2)で求めた特性と、ふさわしい電源ノイズ条件とを比較するようにしてもよい。ここで、電源ノイズ判定手段(3)にてこのPCBの電源回路が、電源ノイズ条件を満たさないと判定された場合、内部容量追加手段(5)において、電源ノイズ条件を満たす為に必要な内部容量がLSIに追加される。ここで追加される内部容量は、等価式等により電源ノイズ条件を満たす値をそのまま追加しても良いし、指針に従いある一定値が選択されて追加されるようにしておいても良い。そして、電源ノイズ導出手段(2)において、内部容量が追加されたLSIが実装されたPCBの電源回路において、電源ノイズ特性を導出する。そして再度、電源ノイズ条件判定手段(3)において、このLSIの実装されたPCBの電源回路が、安定に設計されているかを自動的に判定する、という操作を繰り返す。
【0034】
そして、電源ノイズ判定手段(3)にてこのPCBの電源回路が、電源ノイズ条件を満たすと判定された場合、搭載容量条件判定手段(6)において、追加される内部容量が、実際にLSIに搭載可能かどうかを自動的に判定する。
【0035】
具体的には、電源ノイズ条件判定手段(3)において電源ノイズ条件を満たすと判定された場合の追加内部容量値と、本発明の特徴である判定基準データベース(4)に備えられているLSIチップ内に搭載出来る容量値の限界値である搭載容量条件とを比較し、追加内部容量値が搭載容量条件を満たしているかどうかを判定する。なお、最初に入力された条件において、電源ノイズ条件を満たした場合、追加内部容量値は0になる。次に、搭載容量条件判定手段(6)における結果が出力装置(7)に出力され、システムでの処理が完了する。
【0036】
図6は本発明の第1の実施の形態の処理を示したフローチャートである。この処理は、回路設計情報の入力処理(S1)から始まる。ここで入力される情報は、図18に示されるようなLSI及びその他の部品が実装されて電源回路を構成しているPCBを例に取ると、そのレイアウトや実装されるLSIその他の部品の情報等、電源回路における電圧変動特性を導出するのに必要な情報である。これらの情報は、図1の入力装置(1)より入力される。次に、入力された回路設計情報から、電源ノイズ特性導出処理(S2)が行われる。この処理は、図1の電源ノイズ特性導出手段(2)において行われる。この処理により、このPCBにおける電源ノイズ特性が導出される。
【0037】
次に、導出された電源ノイズ特性と判定基準との比較処理である電源ノイズ特性判定処理(S3)及び判定処理(S4)が行われる。この処理は、図1の電源ノイズ条件判定手段(3)において行われる。ここで、判定基準データベース(4)内に備えられた電源ノイズ条件と求められた電源ノイズ特性との比較処理が行われ、PCBの電源回路が安定に設計されているかどうかが判定される。判定基準を満たすかどうかの判定処理(S4)の結果、判定基準を満たさないと判定された場合、内部容量追加処理(S5)が行われる。この処理は、図1の内部容量追加手段(5)において行われる。
【0038】
この処理により、LSIに内部容量が追加される。この内部容量追加処理(S5)において、内部容量が追加されたLSIのデータは、自動的に入力され、電源ノイズ特性導出処理(S2)において、再度内部容量が追加されたLSIの情報を用い、改めて電源ノイズ特性を導出するという操作を繰り返す。一方、判定基準を満たすかどうかの判定処理(S4)の結果、判定基準を満たすと判定された場合、追加内部容量と判定基準との比較の処理である搭載容量比較処理(S6)が行われる。この処理は、図1の搭載容量条件判定手段(6)において行われる。ここで、判定基準データベース(4)内に備えられた搭載容量条件と、求められた追加内部容量値との比較処理が行われ、実際に追加内部容量値をLSIチップ内に搭載可能かどうかが判定される。
【0039】
次に、結果出力処理(S7)において、判定された結果を出力する処理を行う。この処理により結果が、図1の出力装置(7)に出力される。この時、出力される結果としては、PCBの電源回路がノイズに対し安定に設計されているかどうかの判定結果、安定に設計されていない場合に必要なLSIへの追加内部容量値、及びその追加内部容量値がそのLSIチップに搭載可能かどうかの判定結果のみでなく、内部容量が追加される前後でのそれぞれの電源ノイズ特性、及び電源ノイズ条件、搭載容量条件との比較が図示された結果等が含まれていても良い。これらの結果により、どれだけのマージンを持った設計となっているか、どの周波数範囲で問題があるか等を絶対量で評価することが可能となる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0040】
図2に、本発明の第2の実施の形態のシステム構成を示す。
【0041】
第2の実施の形態は、図1における電源ノイズ特性導出手段(2)として、電源ノイズ等価回路解析手段(8)が設けられる構成である。この電源ノイズ等価回路解析手段(8)は、入力装置(1)から入力される回路の設計情報からPCBの電源回路の等価回路モデルを生成する等価回路モデル生成手段(9)、及び生成された等価回路モデルを用いて電源ノイズ特性を導出する演算手段(10)を備える。また、図1における内部容量追加手段(5)として、容量モデル追加手段(11)を備える。この容量モデル追加手段(11)は、入力装置(1)から入力される回路の設計情報から実際にLSIチップ内部に追加される容量セルの等価回路のモデル(以下、「容量モデル」とも記述する)を、等価回路モデル生成手段(9)で作成されたLSIの等価回路モデル(以下、「LSI等価回路モデル」とも記述する)に追加する手段である。
【0042】
等価回路モデル生成手段(9)は、大きく分けて2種類の手段を備える。そのうち一方の手段は、PCBのレイアウト及び断面構造、及び実装される部品の情報等である基板の設計情報及び部品データベースからプリント基板の等価回路モデル(以下、「基板等価回路モデル」とも記述)を作成する基板等価回路モデル作成手段である。この基板等価回路モデル作成手段には、基板の断面構造や材質、レイアウト等の情報を入力することによって、基板のベタ層や配線等の等価回路モデルを作成することが可能である、フィールドソルバを備えていても良い。
【0043】
もう一方の手段は、LSIの全回路接続情報やレイアウト情報、LSIの動作情報等の設計情報、及びLSIの内部を構成している部品のデータベースから図15(a)または図15(b)に記述されるようなLSIの等価回路モデルを作成するLSI等価回路モデル作成手段である。このLSI等価回路モデル作成手段には、特許文献2や特許文献3に記述されるような、LSIの全回路接続情報からLSIの等価回路モデルを自動的に作成する手段を備えていても良い。また、演算手段(10)には、SPICEに代表されるような回路解析エンジンや、電磁界解析エンジン等が備えられていてもよく、必要な電源ノイズ特性の解析が実行される。
【0044】
図7は、本発明の第二の実施の形態の処理を示したフローチャートである。このフローチャートは、図6に記述された電源ノイズ特性導出処理(S2)として、等価回路モデル生成処理(S8)と回路解析処理(S9)とが行われる構成である。このうち、等価回路モデル生成処理(S8)は、図2における等価回路モデル生成手段(9)において行われる。一方、回路解析処理(S9)は、図2における演算手段(10)において行われる。等価回路モデル生成処理(S8)とは、図2における入力装置(1)から入力された回路設計情報から、LSIが実装されたPCBの電源系全体を示す等価回路モデル(以下、「電源系等価回路モデル」)を作成する処理である。
【0045】
また、回路解析処理(S9)とは、作成された電源系等価回路モデルを用いて電源ノイズ特性を解析する処理であり、この処理により、PCBにおける電源ノイズ特性が導出される。また、図6に記述された内部容量処理(S5)として、容量モデル追加処理(S10)が行われる構成である。この容量モデル追加処理(S10)は、図2における容量モデル追加手段(11)において行われる。
【0046】
ここで、図9は、等価回路モデル生成処理(S8)を説明したフローチャートである。まず、基板情報入力処理(S13)により、PCBのレイアウト及び断面構造、及び実装される部品の情報等である基板の設計情報及び部品データベースが図2における入力装置(1)から入力される。次に、基板等価回路モデル生成処理(S14)が行われ、LSIを除く、実装される受動部品を含めた基板等価回路モデルが、図2における等価回路モデル生成手段(9)において生成される。次に、LSI情報入力処理(S15)により、LSIの全回路接続情報やレイアウト情報、LSIの動作情報等の設計情報、及びLSIの内部を構成している部品のデータベース、追加される容量セルの情報等が図2における入力装置(1)から入力される。
【0047】
次に、LSI等価回路モデル生成処理(S16)により、入力された情報からLSIの電源に流れる電流や等価アドミタンス、LSI電源配線のインピーダンス等、LSIの電源系の特性を見積もったLSI等価回路モデルが、図2における等価回路モデル生成手段(9)において生成される。このとき、LSI等価回路モデルとしては、図16(a)に示したような簡易構成のモデルと、図16(b)に示すような、位置情報や解析する周波数範囲を考慮し、LSI内を分割したモデル等が考えられるが、その構造の選択もデータベース内に記されているとする。次に、電源系等価回路モデル生成処理(S17)により、生成された基板等価回路モデルとLSI等価回路モデルが結合されて、電源系等価回路モデルが図2における等価回路モデル生成手段(9)において生成され、この処理は終了する。
【0048】
ここで、基板等価回路モデルの生成(S13、S14)と、LSI等価回路モデルの生成(S15、S16)の処理の順序は逆になっても良い。また、先に基板情報入力処理(S13)とLSI情報入力処理(S15)が行われてから、基板等価回路モデル生成処理(S14)とLSI等価回路モデル生成処理(S15)が行われるような順序を選択しても良い。
【0049】
図10は、図2の等価回路モデル生成手段(9)内の、基板等価回路モデルを作成する手段内部に、フィールドソルバが備えられている場合の、図9における基板等価回路モデル生成処理(S13、S14)の具体的処理を示したフローチャートである。まず、基板電源系の構造入力処理(S18)が行われ、求めるプリント基板における基板の電源系の構造情報が図2における入力装置(1)から入力される。ここで入力される具体的な情報は、図18に示すようなLSIその他部品が実装された電源供給系回路を構成しているPCBを例に取ると、この場合は、電源がベタプレーン構造をしている為、その基板の電源構造のレイアウト情報に加え、図13(a)に例示するような、基板の電源層、グランド層、絶縁層の層構成と寸法及びそれぞれの導電率(σ)や比誘電率(εr)、誘電正接(tanδ)などの構造、材料特性に関する数値情報である。
【0050】
一方、図13(b)に示されるように電源がマイクロストリップ配線の構造をしていた場合でも同様に、層構成及び線幅、線長を含めた各部の寸法と、それぞれの材料特性に関する数値情報である。層構成及び各部の寸法は、プリント配線基板の設計CADシステムで持っている情報から抽出することが可能である。また、図13で例示されているのは、ある配線パターンの基板の構成(断面図)であるが、ここで材料定数の代わりに、例えば銅などの材料名を入力し、内部のデータベースから導電率に置き換えるなどの処理を行うことも可能である。こうして、基板の電源回路の電気的等価回路を求めるのに必要な、各部のパラメータ及び部品のデータベースが入力される。
【0051】
次に、ソルバ処理(S19)が実行され、基板電源系の等価回路モデルの作成が行われる。この処理は、図2の等価回路モデル生成手段(9)内に備えられたフィールドソルバによって行われる。ここで行われる処理とは、プリント配線基板における配線パターンの物理的な寸法、材料定数及び層構成等のパラメータをもとに、SPICEなどの回路シミュレータで使用するための、抵抗、インダクタンス、キャパシタンス、コンダクタンスで表した単位長さあたりの集中定数もしくは分布定数で表現された等価回路モデルを作成する処理である。このフィールドソルバとして、PEEC(Partial Element Equivalent Circuit)法やFEM(Finite Element Method)法等を適用した電磁界解析エンジンが備えられているとしてよい。この処理が行われ得られた単位長さ辺りの等価回路モデルの一例を図14(a)に示す。このモデルは集中定数で定義されており、配線の単位長さ当たりの抵抗、インダクタンス、容量、コンダクタンスの値はそれぞれ、R、L、C、Gとなっている。また、R及びLは、モデルの単位長さ当たりのインピーダンスZを表し、C及び1/Gはモデルの単位長さ当たりのアドミタンスYを表している。
【0052】
もし、図13(a)のように、電源がベタプレーン構造をしていた場合には、この単位長さ当たりのモデルを図14(b)のように組み合わせ、ベタプレーン構造を表現する。一方、図13(b)のような配線構造をしていた場合、この単位長さ当たりのモデルを図14(c)のようにラダー状に組み合わせ、配線構造を表現する。このように記述された単位長さ当たりのモデルが、寸法分接続されることにより、基板の電源の等価回路モデルが生成されるが、勿論集中定数記述では無く分布定数記述で表現されていても構わない。
【0053】
次に、部品データ入力処理(S20)が行われ、実装されているLSI以外の部品のデータベースが、図2における入力装置(1)から入力される。ここで入力される具体的な情報は、図18に示されるPCBを例にとると、直流電源(レギュレータ)及び対策部品(チップコンデンサ)のデータベースであり、ここではデータベース内に各部品の等価回路モデルが入力されるとする。次に、モデル結合処理(S21)により、ソルバ処理(S19)により生成された基板電源における基板単体の等価回路モデルと、各部品の等価回路モデルが、実際のPCBのレイアウトに合わせ、図2の等価回路モデル生成手段(9)内で結合され、この処理は終了する。
【0054】
こうして、PCBにおける基板等価回路モデルが生成される。なお、処理の順番としては、部品データ入力処理(S20)が最初に行われた後、基板電源系の構造情報の入力処理(S18)とソルバ処理(S19)が行われても良く、先に基板電源系の構造情報の入力処理(S18)と部品データ入力処理(S20)が同時に行われた後にソルバ処理(S19)が行われても良い。
【0055】
図11は、図9におけるLSI等価回路モデルの生成(S15、S16)の具体的処理を示したフローチャートである。このとき、図2の等価回路モデル生成手段(9)内のLSI等価回路モデルの作成手段として、特許文献2や特許文献3に記述されている、LSI等価回路モデル作成システムが備えてあるものとする。
【0056】
先ず、図10の処理と同様に、LSI情報入力処理(S22)により、LSIの全回路接続情報やレイアウト情報、LSIの動作情報等の設計情報、及びLSIの内部を構成している部品のデータベース、追加される容量セルの情報等が図2における入力装置(1)から入力される。次に、動作部分モデル生成処理(S23)により、LSIの設計情報からLSIの電源端子に流れる電流を等価的に流せるように記述されたLSIの動作部分が、図2における等価回路モデル生成手段(9)において生成される。ここで生成されるLSIの動作部分のモデル31は、図15に記述されているように電流源で記述することも出来るが、同等の電流を流すトランジスタで記述されていても良く、それらのモデルは、特許文献2や特許文献3に示される方法によって設計情報から自動的に生成が可能である。
【0057】
ここで、LSIの動作部分のモデルに記述される、もしくはトランジスタ記述されたモデルで等価的に流れる電源電流の波形の一例を図17(a)に示す。この波形は、時間変動する電流波形を表したものであるが、必要に応じて、図17(b)に記述されたような周波数特性を示す波形に変換しても良い。これらの波形の変換は、フーリエ変換、もしくは逆フーリエ変換によって容易に変換が可能である。また、電源回路の電圧の周波数特性を求める場合には、必要に応じて、簡単の為周波数が変動しても一定の振幅を示す交流電源波形に置き換えても良い。
【0058】
次に、アドミタンスモデル生成処理(S24)により、LSI内の等価的なアドミタンスを表現したアドミタンスモデルが、図2における等価回路モデル生成手段(9)において生成される。ここで生成される図15に例示したLSIのアドミタンスモデル32は、容量や抵抗で構成されたモデルで表現出来るが、透過的なトランジスタ記述されたモデルで記述されていても良く、それらのモデルも特許文献2や特許文献3に示される方法によって設計情報から自動的に生成が可能である。次に、電源分配回路モデル生成処理(S25)により、LSIの電源分配回路モデルが、図2における等価回路モデル生成手段(9)において生成される。ここで生成される電源分配回路モデルは、LSIの動作部分モデルとアドミタンスモデルとを合わせたLSI等価回路モデルと、LSIの2種類の電源端子(電源端子、GND端子)間に接続されるモデルであり、図18に例示したPCBにおいては、LSI内の電源配線のモデルだけではなく、パッケージのモデルを含むものとしても良い。
【0059】
この電源分配回路モデルの構造としては、図15(a)に例示したように簡単なインダクタンスのモデル33で表現しても良いが、状況に応じて図15(b)に例示したように複数の回路ブロックが結合して構成される等価回路によって表現された構造になっていても良い。この電源分配回路のモデルは、データベース内に等価回路モデルを用意しておいてそれを読み込んでも良いが、特許文献2に記述された方法で作成する、もしくは構造や材料定数と言ったパラメータである入力情報から、図2の等価回路モデル生成手段(9)内に備えられたフィールドソルバによるソルバ処理によって作成するような方法を選択しても良い。
【0060】
次に、モデル結合処理(S26)により、作成されたLSIの動作部分モデルとアドミタンスモデルと電源分配回路モデルを結合させ、図15に例示されるようなLSIの等価回路モデルが生成され、この処理が終了する。こうして、PCBに実装されるLSIの等価回路モデルが生成される。なお、各モデルの作成処理(S23、S24、S25)の順番は、適宜前後させることも可能である。
【0061】
こうした過程を経て、図7における等価回路モデル生成処理(S8)により、図18のPCBの電源回路モデルの一例は、図19のようになる。図9における基板等価回路モデルの生成(S13、S14)の処理により、基板の電源系のモデル、直流電源モデル、チップコンデンサモデルが作成される。
【0062】
また、図9におけるLSI等価回路モデルの生成(S15、S16)により、LSI等価回路モデル、電源分配回路モデル及びパッケージモデルが作成され、図9の電源系等価回路モデル生成処理(S17)により、これらのモデルが結合され、PCBの電源系等価回路モデルが生成される。なお、基板の電源モデルにおいて、端の部分ではインピーダンスが2倍(2Z)、アドミタンスが1/2もしくは1/4(Y/2もしくはY/4)となっているが、これはPEEC法では端の部分がこのような値となる。また、メッシュの数及びサイズはあくまでも1例であり、メッシュサイズによりYの値は変動する。
【0063】
図21は、図20で例示されたようなPCBの電源系等価回路モデルを用いて、図7の回路解析処理(S9)として、回路の過渡解析を行い、電源ノイズ特性として電源電圧変動特性を求めた場合の一例である。この電圧変動特性が、図2の判定基準データベース(4)内より読み込まれる電源ノイズ条件を満たしているか、図2の電源ノイズ条件判定手段(3)内で自動判定が行われることになる。ここで、電源ノイズ条件が、直流電圧VCCより降下する値がΔVDL以内であり、かつLSIのスイッチング動作が生じる時間(ex.t=0)から電圧変動が収まるまでの戻り時間(例えばスイッチング動作が生じてから電圧変動の幅が1%以内になるまでの時間)がtRL以内という条件を満たさないといけないとする。
【0064】
例えば、LSIへの観測点における電源電圧波形Aの特性においては、電圧降下値ΔVDAは、ΔVDA<ΔVDLという条件は満たしているが、戻り時間tRAは、tRA<ΔtRLという条件を満たさないので、この電源電圧波形Aが生じる回路では、PCBの電源回路はノイズに対し安定でないと判定される。
【0065】
一方、LSIへの観測点における電源電圧波形Bの特性においては、戻り時間tRBは、tRB<ΔtRLという条件は満たしているが、電圧降下値ΔVDBは、ΔVDB<ΔVDLという条件を満たさないので、この電源電圧波形Bが生じる回路でも、PCBの電源回路はノイズに対し安定でないと判定される。なお、ここでの電源ノイズ条件として電圧降下値と戻り時間の両者で検討することにしたが、電圧降下値だけが条件になっている場合も考えられる。その場合、電源電圧波形Aが生じる回路においてはPCBの電源回路はノイズに対し安定であると判断され、電源電圧波形Bが生じる回路においてPCBの電源回路はノイズに対し安定でないと判定されることになる。
【0066】
また、図18で例示されたようなPCBの電源系等価回路モデルである図19の回路モデルにおいて、電源電圧の時間変動特性として図示された点(この場合はLSIの直下である55で示した点)での電圧値をモニターしているが、別のモニター点(例えば電源プレーンの端における電源−グランド間の電圧)での電圧値の特性において、電源ノイズ条件が設定されていても良い。こうして、図18で例示されたようなPCBの電源系等価回路モデルを図7の回路解析処理(S9)を行った結果より、電源ノイズ特性比較処理(S3)が、図2における電源ノイズ判定手段内(3)で実行される。そしてその結果、判定基準を満たすかどうかの判定処理(S4)が、同様に図2における電源ノイズ判定手段(3)内で実行される。
【0067】
ここで、図2における判定基準データベース(4)内には複数の電源ノイズ条件が用意されており、電源ノイズ特性比較処理(S3)及び判定処理(S4)では、電源ノイズ特性導出処理(S2)において得られる電源ノイズ特性に対応した電源ノイズ条件を自動的に選択して読み込み、比較処理(S3)及び判定処理(S4)を行なう、というようなシステム構成とすることも可能である。
【0068】
例えば、判定基準データベース(4)内に、電源電圧の時間変動特性に対するノイズ条件と電源電圧の周波数特性に対するノイズ条件が用意されているとする。ここで、LSI等価回路のモデルとして、図17(a)に示したような電源電流の時間波形を出力するモデルを用い、電源ノイズ特性導出処理(S2)において、電源ノイズ特性として電源電圧の時間変動特性を求めた場合、それに対応する電源ノイズ条件としては、電源電圧の時間変動に対するものとなるので、判定基準データベース(4)内から電源電圧の時間変動に対するノイズ条件が自動的に選択されて読み込まれることになる。また、図17(b)に示したような電源電流の周波数特性を出力するモデルを用い、電源ノイズ特性導出処理(S2)において、電源ノイズ特性として電源電圧の周波数変動特性を求めた場合、それに対応する電源ノイズ条件としては、電源電圧の周波数変動に対するものとなるので、判定基準データベース(4)内から電源電圧の周波数変動に対するノイズ条件が自動的に選択されて読み込まれることになる。
【0069】
ここで、用意される電源ノイズ条件としては、電源電圧の時間変動特性または周波数特性だけではなく、例えば、LSIの電源端子電流の時間変動特性または周波数特性等が用意されていても良い。この場合でも、電源ノイズ特性として、LSIの電源端子電流の時間変動特性が得られた場合には、判定基準データベース(4)内から電源端子電流の時間変動特性が、又、電源端子電流の周波数変動特性が得られた場合には、電源端子電流の周波数変動特性がそれぞれ自動的に選択されることになる。
【0070】
ここで、判定処理(S4)において、電源ノイズ特性において判定基準を満たさない、と判定されたとき、容量モデル追加処理(S10)が、図2における容量モデル追加手段(11)内で実行される。ここでは、判定基準データベース内に、“電源ノイズ条件を満たさない場合、一定量の容量セルをLSIチップ内に追加する”というルールが決められており、予めLSIの設計情報及びデータベースの入力処理(S22)により図2の入力装置(1)により入力されていた容量セルの等価回路モデルが、ある一定量分、LSI等価回路モデル内に追加される。この処理により、LSIは容量セルがある一定値分追加された新たな構造のLSIとなり、この新たな構造情報が入力され、再度等価回路モデル生成処理(S8)が実行される。
【0071】
そして、図7における判定処理(S4)において判定基準を満たすまで、同じ処理が繰り返される。ここで、容量セルモデル41は、図20(a)に示したように、動作部分モデル31及びアドミタンスモデル32に対して並列に追加されても良いが、実際の接続情報を反映して図20(b)のように、電源分配回路33内に接続されるような構造で追加されても良い。
【0072】
また、この処理は、図11に示すLSI等価回路モデルの生成のフローチャートにおいては内部容量モデル追加処理(S27)であり、作成されたLSIの動作部分モデルとアドミタンスモデルと電源分配回路モデルに、容量セルモデルが追加され、モデル結合処理(S26)において、これらのモデルが結合され、容量セルが追加されたLSIの等価回路モデルが生成されることになる。
【0073】
ここで、容量セルの追加により、LSIの電源分配回路や、動作部分、アドミタンスの形状に変更を伴わない場合には、LSI等価回路モデルを構成する各モデルの生成処理(S23からS25)の処理は行われず、前回生成されたLSI等価回路モデルがそのまま使用されても良い。同様に、容量セルの追加により基板の電源系の構造情報に影響が無い場合、図10に示す基板等価回路モデル生成処理は行われず、前回生成された基板等価回路モデルがそのまま使用されても良い。
【0074】
前述した処理を行い、判定処理(S4)により電源ノイズ特性において判定基準を満たす、と判定されたとき、搭載容量比較処理(S6)が、図2における搭載容量条件判定手段(6)において行われる。ここで、判定基準データベース(4)に格納された搭載容量条件の判定基準の一例として、LSIのデータベース内にある追加可能な容量セルのサイズ(以下、「搭載容量サイズ」とも記述する)と、判定処理(S4)で電源ノイズ特性において判定基準を満たすと判定されたときに追加されている容量値を持つ容量セルのサイズ(以下、「必須追加容量サイズ」)とを比較し、前者が後者以上の値の場合、LSIチップ内に追加内部容量値が搭載可能である、というものが用意されていたとする。
【0075】
この搭載容量比較処理(S6)による判定結果が、図2の出力装置(7)に、出力されることになる。この時出力される結果としては、PCBの電源回路がノイズに対し安定に設計されているかどうかの判定結果、安定に設計されていない場合に必要なLSIへの追加内部容量値、及びその追加内部容量値がそのLSIチップに搭載可能かどうかの判定結果のみでなく、内部容量が追加される前後でのそれぞれの電源ノイズ特性、及びそれぞれの電源系等価回路モデル、電源ノイズ条件、搭載容量条件との比較が図示された結果等が含まれていても良い。これらの結果により、どれだけのマージンを持った設計となっているか、どの周波数範囲で問題があるか等を絶対量で評価することが可能となる。
【0076】
本実施の形態において、PCBの電源回路の等価回路モデルの生成処理、電源ノイズ特性の解析処理、及びLSIが安定に動作するように設計されているかどうかの判定処理は、入力したデータに対し一定の処理を行わせるだけであるので、自動化が可能であり、LSIやプリント基板配線について深い知識を有さない人間でも、容易に電源回路が安定かつ低ノイズに設計されているかどうかの判定を行うことが出来る。また、LSIの等価回路モデルの作成手法及び装置は、既存の技術を流用することが可能であり、基板の等価回路モデル作成用のフィールドソルバや回路解析ツールも市販のものを流用することが可能であるので、本発明のシステムは容易に構築すること可能である。
【0077】
また、このようにPCB上の一種類の電源系においてその電源回路が安定に設計されているかどうか、LSIチップ内に追加容量をどれだけ追加すれば安定に動作するか、実際にLSI内に安定動作するだけの容量を追加することが可能かどうかを自動的に判定することが出来るので、順次、他の電源系にも同じ処理を繰り返すことで、PCB上の電源系全てが構成する電源回路が安定に設計されているかどうか、LSIチップ内に追加容量をどれだけ追加すれば安定に動作するか、実際にLSI内に安定動作するだけの容量を追加することが可能かどうかを自動的に判定することも可能になる。
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0078】
図3に、本発明の第3の実施の形態のシステム構成を示す。
【0079】
第3の実施の形態は、図2に示す第2の実施の形態のシステム構成に、チップサイズ変更手段(12)を備えた構成になっている。このチップサイズ変更手段(12)は、搭載容量条件判定手段(6)で、LSIチップが追加容量に対し電圧変動条件を満たさないと判定されたときには、入力装置から入力されるLSIのチップサイズ、またそれに伴うパッケージや基板の情報の変更を行い、変更された回路記述の情報を電源ノイズ等価回路解析手段(8)内に入力する手段である。このチップサイズ変更手段(12)を備えることにより、常にPCBの電源回路を安定な構造に設計し直すことが可能になる。
【0080】
図8は、本発明の第3の実施の形態の処理を示したフローチャートである。このフローチャートは、図7に記述された第2の実施の形態の処理を示したフローチャートにおいて、搭載容量比較処理(S6)及び判定処理(S11)を行い、判定基準を満たさなかった場合、LSIのチップサイズを変更し、回路の構造を変更して再度入力する処理(S12)が備えられたフローチャートである。
【0081】
図7のフローチャートと同様、図3の入力装置(1)から回路情報の入力処理(S1)が行われ、図3の等価回路モデル生成手段(9)内で、入力された情報からPCBの電源系等価回路モデルの生成処理(S8)が行われ、図3の演算手段(10)内で電源系等価回路モデルを用いた回路解析処理(S9)が行われ、図3の電源ノイズ判定手段(3)において、解析された電源ノイズ特性と図3の判定基準データベース(4)から読み込まれる電源ノイズ条件との比較処理(S3)が行われた後、電源ノイズ条件を満たすかどうかの判定処理(S4)が行われる。
【0082】
この処理で判定基準を満たさない場合、容量モデル追加処理(S10)が、図3の容量モデル追加手段(11)内で行われ、容量モデルが追加される新たな入力情報により再度、電源系等価回路モデルの生成処理(S8)が行われる。一方、判定処理(S4)で判定基準を満たした場合、搭載容量比較処理(S6)及び判定処理(S11)が、図3の搭載容量条件判定手段(6)内で行われる。
【0083】
ここで、判定基準を満たさなかった場合、チップサイズ変更処理(S12)が、図3のチップサイズ変更手段(12)において行われる。具体的な手段の一例として、搭載容量サイズが必須追加容量サイズより小さい場合、そのLSIチップを構成する全トランジスタ数と動作するトランジスタ数等の能力は等しいが、チップサイズがより大きく、搭載容量サイズがより大きいLSIチップに変更する、という変更が行われるとする。このとき、より大きいLSIチップの情報は、予めLSIのデータベース内に格納されていて、回路情報の入力処理(S1)により入力されているとし、具体的な変更の方法は、判定基準データベース内に記されているものとする。
【0084】
そして、再度新たなチップサイズのLSIの情報を入力して、再度等価回路モデル生成処理(S8)が実行される、という作業を繰り返す。ここで、等価回路モデル生成処理(S8)において、前のステップで作成された電源系等価回路モデルを構成する各要素モデルは既に存在しているので、図9における電源系等価回路モデルの構造を変更して再度モデルを生成する処理(S13〜S17)を行う際に、入力される情報が変更される部分だけを変更するだけにする、としても良く、その方が現実的である。そして、搭載容量判定処理(S11)において判定基準を満たした場合、結果出力処理(S7)が実施され、結果が図3の出力装置(7)に出力されることになる。
【0085】
図12は、図8におけるチップサイズ変更処理(S12)の具体的処理を示したフローチャートである。まず、図3の判定基準データベース(4)に従い、従来のものと全トランジスタ数と動作するトランジスタ数等の能力は等しいがチップサイズがより大きいLSIのチップへの変更を行なうチップ変更処理(S28)を行なう。次に、チップが変更になることにより電源分配回路やパッケージの情報などを、自動的に選択し、既に求められている必要な追加する内部容量の情報と組み合わせ、LSIの入力情報を変更するチップ構成情報処理(S29)が行われ、チップサイズ変更処理(S12)が終了する。
【0086】
また、図22にLSIチップサイズと容量セルのイメージ図を示すが、図22(a)の状態では、LSIチップ73における搭載容量サイズは、追加しなければならない容量セル74の必須追加容量サイズより小さい為、このままではPCB上でLSIが安定動作しないことになる。そこで、図22(b)のようにより大きいチップサイズのLSIチップ75に変更させることで、搭載容量サイズが、容量セル74の必須追加容量サイズより大きくなり、PCB上でLSIが安定動作する構造を生成することになる。
【0087】
また、図3の出力装置(7)に出力される情報としては、PCBの電源回路がノイズに対し安定に設計されているかどうかの判定結果、安定に設計されていない場合に必要なLSIへの追加内部容量値、及びその追加内部容量値が搭載可能なLSIチップの情報のみでなく、内部容量が追加される前後、及びLSIのチップサイズが変更される前後でのそれぞれの電源ノイズ特性、及びそれぞれの電源系等価回路モデル、電源ノイズ条件、搭載容量条件との比較が図示された結果等が含まれていても良い。これらの結果により、どれだけのマージンを持った設計となっているか、どの周波数範囲で問題があるか等を絶対量で評価することが可能となる。
【0088】
本実施の形態により、安定に設計された電源回路を有するPCBの構造が得られ、その電源ノイズ特性も求めることが出来る。また、図3の判定基準データベース(4)内に、電源ノイズ条件を満たさない場合における、LSIの構造変更の為の変更指針が予め用意されていれば、自動的にPCBの電源回路が電源ノイズ条件を満たすように構造が変更される。また、電源系等価回路モデルの生成処理、電源ノイズ特性の解析処理、及びPCBのLSIが安定に動作するかどうかの判定処理は入力したデータに対し一定の処理を行わせるだけであるので、自動化が可能であり、LSIやプリント基板配線について深い知識を有さない人間でも、容易に安定に設計された電源回路を有するPCBを設計することが出来る。
【0089】
また、LSIの等価回路モデルの作成手法及び装置は、既存の技術を流用することが可能であり、基板の等価回路モデル作成用のフィールドソルバや回路解析ツールも市販のものを流用することが可能であるので、本発明のシステムは容易に構築すること可能である。
【0090】
また、このようにPCB上の一種類の電源系において、その電源回路が安定に設計されているかどうかの判定、もしくはLSIチップ内に追加容量を追加して安定に動作する構成への変更を、自動的に実行することが可能になるので、順次、他の電源系にも同じ処理を繰り返すことで、PCB上の電源系全てにおいて、電源回路が安定に設計されているかどうかの判定、もしくはLSIチップ内に内部容量を追加して安定に動作する構成への変更を、自動的に実行することも可能になる。
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0091】
図4に、本発明の第4の実施の形態のシステム構成を示す。
【0092】
第4の実施の形態は、図2に記述された第2の実施の形態のシステムに、各入力情報及びデータベースが記憶された記憶装置(13)が備えられたシステムである。記憶装置(13)内には、LSIの全回路接続情報やレイアウト情報、LSIの動作情報等の設計情報、及びLSIを構成している部品のデータベース、追加される容量セルの情報等であるLSIデータベース(14)と、PCBのレイアウト及び断面構造、及び実装される部品の情報等である基板の設計情報であるCADデータ及び部品データベース(15)と、判定基準データベース(4)が記憶されている。
【0093】
このシステムにおいて、図7のフローチャートにおける基板等価回路モデルを生成する為の回路の設計情報を図2の入力装置(1)によって入力する代わりに、必要に応じて記憶装置(13)内にあるCADデータと部品データベース(15)から必要なデータを自動的に抽出させることが可能である。ここで述べているCADデータにおける電源等の配線情報には、一般的に、配線幅や、配線ルートのXY2軸座標によるルート指定や、配線全長等の情報が含まれ、さらには、接続先の部品名称や型番などの情報を含んでいる。
【0094】
従って、接続先の部品名称から、部品データベースの中でその部品の等価回路モデルを探索し、モデルを選択するという方法を行うことも可能であり、またより実際的である。またこのとき、入力されたCADデータ(15)と連動し、記憶装置(13)内にある複数のLSIの設計情報及びLSIデータベース(14)、及び複数の判定基準データベース(4)から、必要なデータを抽出することも可能であり、またより実際的である。
【0095】
具体的には、CADデータから電源回路に接続されるLSIの名称及びパッケージのデータ等を自動的に抽出し、必要なLSIの全回設計情報とパッケージや電源分配回路の情報、追加される容量セルの情報等が含まれたLSIデータベース、及びその電源回路における電源ノイズ条件の情報が自動的に選択され入力されるような方法である。このとき、入力装置(1)は使用しなくても良いし、入力を開始する為のアクションを入力する為だけに使用しても良い。この処理は、図10におけるS103とS104、及び図11におけるS105に相当する。
【0096】
さらに、図4の電源ノイズ条件判定手段(3)によって得られた結果を、記憶装置(13)内にあるCADデータ(15)の中に出力することも可能である。この処理は図7におけるS101である。具体的にはCAD上に表示されたPCBの電源回路における基板の電源配線や、接続されている対策部品の情報にエラーが書き込まれる。
【0097】
例えば、CADデータを図として表示した場合、その電源回路を構成する部分の色が変わっている等のアラームが出力されるような構造にすれば、ユーザーがその電源回路がノイズの面で安定になっておらず、対策を行う必要が一目で判るようになる。また、図4の搭載容量条件判定手段(6)によって得られた結果を、記憶装置(13)内にあるLSI設計情報+LSIデータベース(14)の中に出力することも可能である。
【0098】
この処理は、図7におけるS102である。具体的には、搭載容量条件を満たした場合には、LSIの構造情報が、求められた容量が既に追加されている構造の情報に書き変わる、もしくは、搭載容量条件を満たさない場合、LSIの情報の中に、追加内部容量はどれだけ必要だが、このLSIチップにはそれだけの容量が入らない、という情報が追加される、といった例が挙げられる。このように、情報が書き変えられることにより、設計者側がどのような対策を行えば良いかの指針も得られることになる。
(第5の実施の形態)
次に、本発明の第5の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0099】
図5に、本発明の第5の実施の形態のシステム構成を示す。
【0100】
第5の実施の形態は、図3に記述された第3の実施の形態のシステムに、各入力情報及びデータベースが記憶された記憶装置(13)が備えられたシステムである。記憶装置(13)内には、第4の実施の形態と同様に、LSIの全回路接続情報やレイアウト情報、LSIの動作情報等の設計情報、及びLSIを構成している部品のデータベース、追加される容量セルの情報等であるLSIデータベース(14)と、PCBのレイアウト及び断面構造、及び実装される部品の情報等である基板の設計情報であるCADデータ及び部品データベース(15)と、判定基準データベース(4)が記憶されている。
【0101】
このシステムにおいて、図8のフローチャートにおける基板等価回路モデルを生成する為の回路の設計情報を図3の入力装置(1)によって入力する代わりに、必要に応じて記憶装置(13)内にあるCADデータと部品データベース(15)から必要なデータを自動的に抽出させることが可能である。CADデータにおける基板の電源系において、接続先の部品名称から、部品データベースの中でその部品の等価回路モデルを探索し、モデルを選択するという方法を行うことも可能であり、またより実際的である。また、このとき、入力されたCADデータ(15)と連動させ、記憶装置(13)内にある複数のLSIの設計情報及びLSIデータベース(14)、及び複数の判定基準データベース(4)から、必要なデータを抽出することも可能であり、またより実際的である。
【0102】
具体的には、CADデータから電源回路に接続されるLSIの名称及びパッケージのデータ等を自動的に抽出し、必要なLSIの全回設計情報とパッケージや電源分配回路の情報が含まれたLSIデータベース、及びその電源回路における電圧変動条件及び電圧周波数条件の情報が自動的に選択され入力されるような方法である。このとき、第4の実施の形態と同様に、入力装置(1)は使用しなくても良いし、入力を開始する為のアクションを入力する為だけに使用しても良い。そして、図8のフローチャートにおいてチップサイズ変更処理(S12)を行う際には、図5の記憶装置(13)内にあるCADデータ及び部品データベース(15)、及びLSIの設計情報とLSIデータベース(14)に直接アクセスし、LSIチップ変更とそれに基づく構造の変更等の処理が行われ、CADデータがその処理によって記述が変更される。
【0103】
この処理は、図8におけるS106、S107、及び図12におけるS108に相当する。従って、処理が終了した際には、PCBの電源回路には、LSIが安定動作する構成になっており、自動的に安定なPCBの電源回路が得られ、より実際的なシステム構成になっている。なお、このときCADデータにおける電源回路は、LSIに容量を追加したときには電源系の色を変える、もしくはLSIのチップサイズを変更する、といった処理を行なうことで、設計者にとって、どのような処理が行われたかが一目で判るようにすることも可能である。
【実施例】
【0104】
次に、具体的な実施例を用いて、本発明の動作を説明する。
(第1実施例)
図23は、解析すべきPCBの一例であり、パッケージを持つLSIが基板寸法200[mm]×300[mm]の一面を覆うベタの電源層に実装され、直流電源からベタ電源に直流電圧3.3Vが供給され、電源回路が構成されているという構造である。この電源回路がノイズに対し安定に設計されているかどうか、設計されていなければ、LSI内部に容量を追加することが可能かどうかを、本発明のシステムを用いて検証を行う。
【0105】
先ず、システムとしては、図4に示される第四の実施の形態に記述されたものを用いる。
【0106】
先ず、図7の回路設計情報入力処理(S1)が行われる。ここでは、入力装置(1)から入力情報を取り込むという信号を発生させ、記憶装置(13)内に記憶されたCADデータと部品データベース(15)から、図23に示されるPCBのCADデータ及び実装されている部品の等価回路を含んだデータベースが入力される。そのCADデータと連動し、同時に記憶装置(13)内に記憶されたLSI設計情報とLSIデータベース(14)から、実装されているLSIの全回路設計情報を含んだ設計情報、LSIのレイアウト情報、LSIを構成している部品やパッケージの等価回路、及び追加される容量セルのレイアウトデータと等価回路モデル等を含んだデータベースが入力される。
【0107】
また、同時に、記憶装置(13)内に記憶された判定基準データベース(4)から、図23に示されるPCBにおける電源ノイズ条件が入力される。この電源ノイズ条件には、観測点の情報とその箇所での電圧の時間変動特性の判定条件が含まれているとし、観測点は図23に示したように、LSIの直下の点であるとする。この処理が、図7の回路設計情報入力処理(S1)に相当する。また、この処理は、図9におけるS13及びS15に相当し、厳密に説明すると、CADデータの入力は、図10のS103、部品データベースの入力は、図10のS104、LSI設計情報とデータベースの入力は、図11のS105の各処理に相当する。
【0108】
次に、図7における等価回路モデル生成処理(S8)が行われる。先ず、図9に示すS13、S14の一連の処理である、基板等価回路モデルの作成処理が、図4に示す等価回路モデル生成手段(9)内で行われる。既に基板情報入力処理(S13)、または図10における基板構造情報の入力処理(S18)は、CADデータの入力処理(S103)としてなされている。その次のステップとして、基板等価回路モデル生成処理(S14)が行われる。
【0109】
この処理において、図10におけるソルバ処理(S19)が、図4に示す等価回路モデル生成手段(9)内に備えられたフィールドソルバを用いて実行される。ここでフィールドソルバに入力される、PCBの基板構造の入力情報は、図13(a)または図13(b)に示されるような電源配線の形状、及び材料定数であり、CADデータからの入力処理(S103)により得られている。
【0110】
この例では、電源パターンは、図13(a)に示すように層構造になっており、電源基板における電源の水平面寸法、電源層の厚みt−vcc、グランド層の厚みt−gnd、各絶縁層の厚みt−in、及び各同導電層の導電率σ、各絶縁層の比誘電率ε及び誘電正接tanδの値より、図14(b)に示したようなメッシュ構造の等価回路モデルを作成する。また、Z及びYのパラメータは、基板モデルのメッシュサイズに左右されるが、ここでは基板情報の入力の際に、”モデルのメッシュサイズは1[mm]×1[mm]とする”という情報が同時に入力され、それに従いモデルが作成されるとする。
【0111】
こうして具体的に、R=7.379[mΩ]、L=1.257[nH]、C=3.807[pF]、G=8.612e−5[S]である基板の電源のメッシュモデルが生成されたとする。また、基板に実装された部品に関しての、部品データ入力処理(S20)も、部品データベースの入力処理(S104)としてなされている。
【0112】
次に、図10におけるモデル結合処理(S21)が実行され、生成されている基板モデルと実装されているLSI以外の部品のモデルが結合される。この例では、部品データベースからの入力処理(S104)にて入力された直流電源及びチップコンデンサのモデルが、CADデータ上で直流電源及びチップコンデンサが実装されている位置の基板のモデルに結合されるという処理が行われる。こうして、基板等価回路モデルが、図4に示す等価回路モデル生成手段(9)内で作成される。
【0113】
次に、図9に示すLSI等価回路モデル生成処理(S16)が、図4に示す等価回路モデル生成手段(9)内で行われる。既にLSI情報入力処理(S16)または図11におけるLSI設計情報及びLSIデータベース入力処理(S22)は、CADデータの入力に対応して、図4の記憶装置(13)内からのLSI設計情報とLSIデータベースの自動入力処理(S105)としてなされている。
【0114】
次に、図11における動作部分モデル生成処理(S23)が行われ、入力されたLSI設計情報とLSIデータベースより、LSIの動作部分のモデルが生成される。ここでは、特許文献3に記述された方法より得られたトランジスタ記述のゲート回路のモデルを、電流源に変換するという手法で生成されたとする。ここで、24[MHz]でスイッチング動作を起こすLSIの電源端子を流れる電流を模示した動作部分モデルが生成されたとする。
【0115】
次に、図11におけるLSIのアドミタンスモデル生成処理(S24)が行われ、LSIの等価アドミタンスのモデルが生成される。ここでは、特許文献3に記述された方法を適用し、得られた回路の等価内部容量をまとめるという手法で生成されたとする。次に、図11におけるLSIの電源分配回路モデル生成処理(S25)が行われ、LSIのパッケージを含めた電源分配回路の等価回路モデルが生成される。ここでは、部品データベース内に電源分配回路及びパッケージモデルが用意されていたとし、既にこの情報が入力されているので、特に何も処理は行われないとする。もし、LSI内の電源配線等が、図13(b)における基板配線のような情報で記述されていたとしたら、等価回路モデル生成手段(9)内に備えられたフィールドソルバによるソルバ処理により、等価回路モデルが生成される必要がある。
【0116】
次に、図11におけるモデル結合処理(S26)が実行され、LSIの動作部分モデル、等価アドミタンスモデル、及び電源分配回路モデルが結合され、LSI等価回路モデルが、図4に示す等価回路モデル生成手段(9)内で作成される。
【0117】
次に、図9に示す電源系等価回路モデル生成処理(S17)が、図4に示す等価回路モデル生成手段(9)内で行われる。生成された基板等価回路モデルとLSI等価回路モデルが、図23に示すPCB上のLSIの位置を反映して結合され、求めるべきPCBの等価回路モデルが、図4に示す等価回路モデル生成手段(9)内で作成される。
【0118】
図24が、図23の等価回路モデルの一例である。直流電源の等価回路モデル(R=600[mΩ]、L=2.45[nH]が直列に接続されるV=3.3[V]の直流電源)(93)、チップコンデンサ(4個)の等価回路モデル(R=400[mΩ]、L=2.60[nH]が直列に接続されるC=0.1[μF]の素子モデル)(94)、及びLSI等価回路モデル(92)が、1[mm]×1[mm]で分割された基板等価回路モデル(91)上に接続された構成になっている。
【0119】
また、LSIのパッケージモデル(99)は、図24に示したようにLCRのラダー回路で表現された形になっており、LPKG=0.479[nH]、RPKG=0.366[mΩ]、CPKG=12.96[pF]である。また、電源分配回路のモデル(98)は、10[Ω]の直列抵抗が電源側とグランド側にそれぞれ存在する構造であり、等価アドミタンスモデル(97)は、3000[pF]の容量に2.0[mΩ]の抵抗が直列に接続されたモデルになっている。また動作部分モデル(96)は、図に示したような電流波形が24[MHz]周期で繰り返し流れるというモデルとなっている。
【0120】
次に、図7に示す回路解析処理(S9)が、図4に示す演算手段(10)内で実行される。ここで、先の回路設計情報入力処理(S1)で、電源ノイズ条件は観測点における電圧の時間変動特性の判定条件とされている為、自動的に求められる特性は、図23のPCBの観測点(85)における電圧の時間変動特性となる。そこで、先の処理で生成されている図24に示される等価回路モデルを用いて、図4の演算手段(10)内に備えられた回路解析エンジンにより過渡解析され、観測点における電圧の時間変動特性が導出される。得られた電圧変動特性は図26に示される時間波形になる。
【0121】
次に、図7に示す電源ノイズ特性と判定基準との比較処理(S3)、及び判定処理(S4)が、図4に示す電源ノイズ条件判定手段(3)内で実行される。ここで、図4に示す判定基準データベース(4)より入力された電源ノイズ条件と解析された電源ノイズ特性を比較し、電源ノイズ特性が判定基準を満たすかどうかを判定する。ここで電源ノイズ条件は、下限電圧閾値 Vth=3.069[V](7%の電圧降下)であったとし、電圧の時間変動特性が一瞬でもこの閾値より下回ったら判定基準を満たさないとする。図26にはVthの特性も併記してあるが、この図より、等価回路モデルを用いた過渡解析により導出された電圧の時間変動特性は、常にVthより大きくなっている為、判定基準が満たされていると判定される。
【0122】
次に、図7における追加内部容量と判定基準との比較処理(S6)が行われる。ここでの判定基準である搭載容量条件であるが、これはLSIデータベース内のLSIの容量搭載可能面積と、容量セルの面積の情報から自動的に決定される量であるとする。しかし今回においては、先の処理において、LSI内に容量を追加しなくても電源ノイズ条件を満たしているため、追加内部容量は0である。従って、自動的に搭載容量条件を満たしていることになる。
【0123】
次に、図7における結果出力処理(S7)が行われ、電源ノイズ特性と判定基準との比較処理(S3)及び判定処理(S4)における判定結果(電源ノイズ条件を満たす)及び追加内部容量と判定基準との比較処理(S6)における判定結果(搭載容量条件を満たす)が、図4の出力装置(7)に出力され、一連の処理が終了する。ここでは同時に、図24に記述されたPCBの等価回路モデル、及びそのモデルを使用した解析比較結果である図26に示された特性が出力されても良い。
【0124】
また、同時に、図7におけるCADデータへの結果出力処理(S101)が行われ、図4の記憶装置(13)内のCADデータ(15)の記述が変更されるとする。ここでは、CADデータ内の基板電源配線に、電源ノイズ条件を満たすというメッセージが書き込まれ、図23のCADデータが図示された際、基板電源配線の色が例えば水色に変化して、電源ノイズ条件を満たすということがすぐ判るようになる。以上の処理により、図23に示されたPCBの電源回路がノイズに対し安定に設計されているかどうかが自動的に判定される。
(第2実施例)
次に、先程の例と良く似た別の実施例を用いて本発明の動作を説明する。
【0125】
今回の例では、先の実施例と同様に図23のPCBを、図4に示される第4の実施の形態に記述されたシステムを用いて、電源回路がノイズに対し安定に設計されているかどうかを自動的に判定する。このとき電源ノイズ条件は先の例とは異なり、下限電圧閾値 Vth=3.135[V](5%の電圧降下)であったとし、電圧の時間変動特性が一瞬でもこの閾値より下回ったら判定基準を満たさない、という条件であったとする。その場合には、判定結果が変更される為、本システムを使用した場合、一部別の処理が行われ、別の結果が出力されることになる。
【0126】
先ず、図7における回路設計情報入力処理(S1)、等価回路モデル生成処理(S8)、回路解析処理(S9)の各処理が続けて行われる。これらの処理の内容は、先述の実施例のものと全く同じものである。
【0127】
次に、図7に示す電源ノイズ特性と判定基準との比較処理(S3)、及び判定処理(S4)が、図4に示す電源ノイズ条件判定手段(3)内で実行され、図4に示す判定基準データベース(4)より入力された電源ノイズ条件と解析された電源ノイズ特性を比較し、電源ノイズ特性が判定基準を満たすかどうかを判定する。ここで電源ノイズ条件は先程の例と異なり、Vth=3.135[V]となっている。図27に、等価回路モデルを用いた過渡解析により導出された電圧の時間変動特性と、Vthの特性とを併記しているが、電圧の時間変動特性において、電圧がVthを下回る時間が存在している為、判定基準が満たされていないと判定される。
【0128】
次に、判定処理(S4)により、判定基準が満たされていないと判定された為、図7の容量モデル追加処理(S10)が、図4に示す容量追加手段(11)内で実行される。ここでは、判定基準データベース(4)内に、“電源ノイズ条件を満たさない場合、LSI内部に容量セルを500[pF]分ずつ追加する”という変更指針が用意されているとし、その指針に従い、容量セルを500[pF]分追加することにする。ここでは、具体的には、入力されたLSIデータベースの中に、容量セル500[pF]分の等価回路モデルが用意されており、そのモデルを先述した処理にて作成されたLSI等価回路モデル内に追加することで、内部容量の追加されたLSI等価回路モデルを作成する。この処理は、図11における内部容量モデル追加処理(S27)である。
【0129】
そして再度、図7における等価回路モデル生成処理(S8)に戻り、容量モデルを追加したLSI等価回路モデルを用いて電源系等価回路モデルを生成する。そして、再び図7の回路解析処理(S9)、電源ノイズ特性と判定基準との比較処理(S3)及び判定処理(S4)を行なう。この判定処理(S4)により再び判定基準を満たさないと判定された場合、変更指針に従い、図7の容量モデル追加処理(S10)で再度500[pF]分の容量セルを追加するという処理が行われ、再度図7の等価回路モデル生成処理(S8)に戻るという繰り返し処理が行われる。
【0130】
一方、判定処理(S4)により判定基準を満たすと判定された場合、追加した容量の情報を得て、次の処理に進む。この回路では実際、容量セルを2500[pF]分追加した場合(判定処理(S4)で4回判定基準を満たさなかった場合)に、図28に示したような電圧の時間変動特性が得られ、併記したVthの特性を常に満たしているため、判定基準が満たされていると判断され、次の処理に進む。また、このときの電源系等価回路モデルは、図25に示したような構造になっている。参考の為、容量セルが2000[pF]分追加された場合の電圧の時間変動特性を図29に示すが、このときの電圧の時間変動特性において、電圧がVthを下回る時間が存在している為、やはりVth=3.135[V]の場合においては、判定基準を満たしておらず、再度容量セルを500[pF]分追加して、図28のような電圧の時間変動特性が得られるまで操作は繰り返されることになる。
【0131】
判定処理(S4)により、判定基準が満たされた場合、追加内部容量と判定基準との比較処理(S6)が、図4における搭載容量条件判定手段(6)内で行われる。ここで、図4に示す判定基準データベース(4)より入力された搭載容量条件と、電源ノイズ条件を満たす為に必要な追加内部容量とを比較する。ここで搭載容量条件は、LSIデータベース内にあるレイアウト情報の中の、LSIチップ内部に容量セルを搭載可能な領域の面積と、容量セルの面積から導出され、ここでは2000[pF]分であったとする。ここで、追加する容量セルが決まっていれば、レイアウト情報から算出するのではなく、最初から与えられたLSIのチップ毎に、搭載容量条件が具体的な容量値で与えられていても良い。先の処理で、容量セルは2500[pF]分追加しなくては図28に示すような電源ノイズ条件を満たす電圧の時間変動特性を得られないので、搭載容量条件を満たしていない、と判定される。
【0132】
次に、図7における結果出力処理(S7)が行われ、電源ノイズ特性と判定基準との比較処理(S3)及び判定処理(S4)における判定結果(容量セルを追加しない場合電源ノイズ条件を満たさず、2500[pF]分容量セルを追加すれば電源ノイズ条件を満たす)、内部容量と判定基準との比較処理(S6)における判定結果(搭載容量条件を満たさない)が、図4の出力装置(7)に出力され、一連の処理が終了する。ここでは同時に、図24及び図25に記述されたPCBの等価回路モデル、及びそのモデルを使用した解析比較結果である図28に示されたような特性が出力されても良い。また同時に、図7におけるCADデータへの結果出力処理(S101)が行われ、図4の記憶装置(13)内のCADデータ(15)の記述が変更される。ここでは、CADデータ内の基板電源配線に、電源ノイズ条件は現状のままでは満たされないというメッセージが書き込まれ、図23のCADデータが図示された際、基板電源配線の色が例えば赤色に変化して、対策を行わなければ電源ノイズ条件を満たされないということがすぐ判るようになる。
【0133】
また、同時に、図7におけるLSI設計情報への結果出力処理(S102)が行われ、図4の記憶装置(13)内のLSIの設計情報(14)の記述が変更される。ここでは、“電源回路をノイズに対し安定にするには2500[pF]分の容量セルを追加する必要があるが、搭載容量条件を満たさない為、容量セルをLSI内部に追加する処理では、電源回路をノイズに対し安定にすることは出来ない”といったメッセージが書き込まれる。また、その結果を反映し、図23のCADデータが図示された際、LSIが表示される部分の色を、例えば紫色にすることによって、このLSIチップは搭載容量条件を満たしていない、ということがすぐ判るようになる。以上の処理により、図23に示されたPCBの電源回路がノイズに対し安定に設計されているかどうか、及びLSIチップ内に容量セルを追加することで、ノイズに対し安定に設計し直すことが可能かどうか自動的に判定される。
【0134】
このように変更指針に従い、LSIに内部容量を追加する変更を行っても電源ノイズ条件において判定基準を満たさなかった場合にも、次の変更指針が用意されており、判定基準を満たすまで回路構造の変更を行わせることで、自動的にノイズに対し安定に設計されたPCBの電源回路の構造を得ることが可能になり、同時に搭載されているLSIチップにおいて、その構造が実現が出来るかどうかも自動的に判定することが可能になる。なお、変更指針は1種類でなくても良く、「電源ノイズ条件を満たさなかった場合、容量セルをLSI内部に250[pF]分追加する。
【0135】
それでも電源ノイズ条件を満たさなかった場合、容量セルをLSI内部に更に500[pF]分追加する。それでも・・・」といった様に、段階毎に別の変更指針を与えることも可能である。
【0136】
また、LSI内に容量セルを追加するという対策では電源ノイズ条件を満たすことが出来ない、という結果を受けることは、PCBにおいて別の対策を行なう必要があるという結果を得ることにもつながるので、LSIのパッケージを変更する、またはPCBの電源−GND間にさらにチップコンデンサを設置する等の、LSI内に容量セルを追加する方法以外でPCBの構造を変更する必要がある、という指針を導出する、という用途にも使用可能である。
【0137】
さらにLSIベンダーが、提供するLSIに予め対策しておく為に、本発明のシステムを使用するような場合、ユーザーがどのようなPCBにLSIを実装するかどうかが定かでない場合が存在する。そのような場合には、過去のPCBのデータや標準的なPCBのデータを代用品として使用することで対応すれば良い。ここで標準的なPCBとしては、そのLSIの動作用途である機器内に実装される基板の代表的なものなどが考えられ、例えばPCにおけるマザーボード等があげられる。
【0138】
これらは、寸法がほぼ確定しており、メモリ等の他のICの数や実装されているチップコンデンサの数等も推測が容易であるので、このようなPCBのデータを用いれば、電源ノイズ条件はそれほど変化しないと推測される。また本システムを利用して、様々なPCBにLSIを実装して判定を行なうことにより、LSIベンダーからユーザーに対し、逆にどのようなPCBの構造で使用することにより、LSIはノイズに対し安定に動作する、といったルールを提案することにも使用可能である。例えば、「LSIの一辺から10mm以内に0.1μFのチップコンデンサを10個配置する」等のルールの提供を行なうことが可能になる。
【0139】
さらに、対策の指針を導出する為、搭載容量条件、電源ノイズ条件をそれぞれ変更していき、それぞれの結果で判断するといった用途にも使用出来る。例えば、搭載容量条件が容量セル500[pF]分しかないとき、電源ノイズ条件としてVthの値をいくらにすれば判定条件を満たすのか、といった条件は、本システムにおいて搭載容量条件を一定にし、Vthの値を細かく振っていき、それぞれの値のときに本システムを実行させ、それぞれのVthのときの結果を得て、それぞれの結果を比較することによって導出可能である。
(第3実施例)
次に、他の実施例について説明する。この場合のシステムとしては、図5に示される第5の実施の形態に記述されたものを用いる。
【0140】
先ず用意するPCBのデータとしては、先の例と同様に、図23に示したものを用いる。このPCBの電源回路がノイズに対し安定に設計されているかどうか判定し、安定でなかった場合は安定になるよう、本発明のシステムを用いてPCBの電源回路構造の変更を行う。
【0141】
先ず、図8における回路設計情報入力処理(S1)が行われる。ここでは、入力装置(1)から入力情報を取り込むという信号を発生させ、記憶装置(13)内に記憶されたCADデータと部品データベース(15)から、図23に示されるPCBのCADデータ及び実装されている部品の等価回路を含んだデータが入力される。このCADデータと連動し、同時に記憶装置(13)内に記憶されたLSI設計情報とLSIデータベース(14)から、実装されているLSIの全回路設計情報を含んだ設計情報、LSIのレイアウト情報、LSIを構成している部品やパッケージの等価回路、及び追加される容量セルのレイアウトデータと等価回路モデル等を含んだデータが入力される。
【0142】
また、同時に、記憶装置(13)内に記憶された判定基準データベース(4)から、図23に示されるPCBにおける電源ノイズ条件が入力される。この電源ノイズ条件には、観測点の情報とその箇所での電圧の時間変動特性の判定条件が含まれているとし、観測点は図23に示したように、LSIの直下の点であるとする。この処理が図7の回路設計情報入力処理(S1)に相当する。また、この処理は、図9におけるS13及びS15に相当し、厳密に説明すると、CADデータの入力は図10のS103、部品データベースの入力は図10のS104、LSI設計情報とデータの入力は図11のS105の各処理に相当する。
【0143】
次に、図8における等価回路モデル生成処理(S8)が行われる。先ず、図9に示すS13、S14の一連の処理である、基板等価回路モデルの作成処理が図5に示す等価回路モデル生成手段(9)内で行われる。既に基板情報入力処理(S13)、または図10における基板構造情報の入力処理(S18)は、CADデータの入力処理(S103)としてなされている。その次のステップとして、基板等価回路モデル生成処理(S14)が行われる。この処理において、図10におけるソルバ処理(S19)が、図5に示す等価回路モデル生成手段(9)内に備えられたフィールドソルバを用いて実行される。
【0144】
ここで、フィールドソルバに入力される、PCBの基板構造の入力情報は、先の実施例でも述べたように、図13(a)または図13(b)に示されるような電源配線の形状、及び材料定数であり、CADデータからの入力処理(S103)により得られている。この例では、電源パターンは図13(a)に示すような層構造になっていて、図14(b)に示したようなメッシュ構造の等価回路モデルを作成する。また、”基板モデルのメッシュサイズは1[mm]×1[mm]とする”という情報が同時に入力され、それに従い基板の電源のメッシュモデルが生成される。また基板に実装された部品に関しての、部品データ入力処理(S20)もまた、部品データベースの入力処理(S104)としてなされている。
【0145】
次に、図10におけるモデル結合処理(S21)が実行され、生成されている基板モデルと実装されているLSI以外の部品のモデルが結合される。この例では、部品データベースからの入力処理(S104)にて入力された直流電源及びチップコンデンサのモデルが、CADデータ上で直流電源及びチップコンデンサが実装されている位置の基板のモデルに結合されるという処理が行われる。こうして、基板等価回路モデルが、図5に示す等価回路モデル生成手段(9)内で作成される。
【0146】
次に、図9に示すLSI等価回路モデル生成処理(S16)が、図5に示す等価回路モデル生成手段(9)内で行われる。既にLSI情報入力処理(S15)または図11におけるLSI設計情報及びLSIデータベース入力処理(S22)は、CADデータの入力に対応して図5の記憶装置(13)内からのLSI設計情報とLSIデータベースの自動入力処理(S105)としてなされている。
【0147】
次に、図11における動作部分モデル生成処理(S23)が行われ、入力されたLSI設計情報とLSIデータベースより、LSIの動作部分のモデルが生成される。ここでは、先の実施例と同様に、特許文献3に記述された手法で生成されたとする。ここで、24[MHz]でスイッチング動作を起こすLSIの電源端子を流れる電流を模示した動作部分モデルが生成されたとする。次に、図11におけるLSIのアドミタンスモデル生成処理(S24)が行われ、LSIの等価アドミタンスのモデルが生成される。
【0148】
次に、図11におけるLSIの電源分配回路モデル生成処理(S25)が行われ、LSIのパッケージを含めた電源分配回路の等価回路モデルが生成される。ここでは、先の実施例と同様に、部品データベース内に電源分配回路及びパッケージモデルが用意されていたとし、既にこの情報が入力されているので、特に何も処理は行われない。もし、LSI内の電源配線等が、図13(b)における基板配線のような情報で記述されていたとした場合には、先の実施例と同様に、等価回路モデル生成手段(9)内に備えられたフィールドソルバによるソルバ処理により、等価回路モデルが生成される必要がある。
【0149】
次に、図11におけるモデル結合処理(S26)が実行され、LSIの動作部分モデル、等価アドミタンスモデル、及び電源分配回路モデルが結合され、LSI等価回路モデルが、図5に示す等価回路モデル生成手段(9)内で作成される。
【0150】
次に、図10に示す電源系等価回路モデル生成処理(S17)が、図5に示す等価回路モデル生成手段(9)内で行われる。生成された基板等価回路モデルとLSI等価回路モデルが、図23に示すPCB上のLSIの位置を反映して結合され、図24に示した、求めるべきPCBの等価回路モデルが、図5に示す等価回路モデル生成手段(9)内で作成される。
【0151】
次に、図8に示す回路解析処理(S9)が、図5に示す演算手段(10)内で実行される。ここで先の回路設計情報入力処理(S1)で、電源ノイズ条件は観測点における電圧の時間変動特性の判定条件とされている為、自動的に求められる特性は、図23のPCBの観測点(85)における電圧の時間変動特性となる。そこで、先の処理で生成されている図24に示される等価回路モデルを用いて、図5の演算手段(10)内に備えられた回路解析エンジンにより過渡解析され、観測点における図26に示される電圧の時間変動特性が導出される。
【0152】
次に、図8に示す電源ノイズ特性と判定基準との比較処理(S3)、及び判定処理(S4)が、図5に示す電源ノイズ条件判定手段(3)内で実行される。ここで、図5に示す判定基準データベース(4)より入力された電源ノイズ条件と解析された電源ノイズ特性を比較し、電源ノイズ特性が判定基準を満たすかどうかを判定する。ここで、電源ノイズ条件は、下限電圧閾値 Vth=3.135[V](5%の電圧降下)であったとし、電圧の時間変動特性が一瞬でもこの閾値より下回ったら判定基準を満たさないとする。この場合、電圧の時間変動特性とVthの特性の関係は図27のようになり、この図より電圧の時間変動特性において、電圧がVthを下回る時間が存在している為、判定基準が満たされていないと判定される。
【0153】
次に、判定処理(S4)により判定基準が満たされていないと判定された為、図8の容量モデル追加処理(S10)が、図5に示す容量追加手段(11)内で実行される。ここでは、判定基準データベース(4)内に、“電源ノイズ条件を満たさない場合、LSI内部に容量セルを500[pF]分ずつ追加する”という変更指針が用意されているとし、その指針に従い、容量セルを500[pF]分追加することにする。ここでは、先の実施例と同様に、入力されたLSIデータベースの中に、容量セル500[pF]分の等価回路モデルが用意されており、そのモデルを先述した処理にて作成されたLSI等価回路モデル内に追加することで、内部容量の追加されたLSI等価回路モデルを作成する。この処理は、図11における内部容量モデル追加処理(S27)である。
【0154】
そして、再度、図8における等価回路モデル生成処理(S8)に戻り、容量モデルを追加したLSI等価回路モデルを用いて電源系等価回路モデルを生成する。そして、再び図8の回路解析処理(S9)、電源ノイズ特性と判定基準との比較処理(S3)及び判定処理(S4)を行なう。この判定処理(S4)により再び判定基準を満たさないと判定された場合、変更指針に従い、図8の容量モデル追加処理(S10)で再度500[pF]分の容量セルを追加するという処理が行われ、再度図8の等価回路モデル生成処理(S8)に戻るという繰り返し処理が行われる。
【0155】
一方、判定処理(S4)により判定基準を満たすと判定された場合、追加した容量の情報を得て、次の処理に進む。この回路では、容量セルを2500[pF]分追加した場合(判定処理(S4)で4回判定基準を満たさなかった場合)に、図28に示したような電圧の時間変動特性が得られ、併記したVthの特性を常に満たしているため、判定基準が満たされていると判断され、次の処理に進むことになり、そのときの電源系等価回路モデルは、図25に示したような構造になっている。
【0156】
次に、電源ノイズ条件との判定処理(S4)により判定基準が満たされていると判定された場合、追加内部容量と判定基準との比較処理(S6)、及び判定処理(S11)が、図5における搭載容量条件判定手段(6)内で行われる。ここで、図5に示す判定基準データベース(4)より入力された搭載容量条件と、電源ノイズ条件を満たす為に必要な追加内部容量とを比較する。ここで搭載容量条件は、先の実施例と同様に、容量セル2000[pF]分まで追加出来る、というものが与えられているとする。先の処理で、容量セルは2500[pF]分追加しなくては図28に示すような電源ノイズ条件を満たす電圧の時間変動特性を得られないので、搭載容量条件を満たしていない、と判定される。
【0157】
次に、搭載容量条件との判定処理(S11)により判定基準が満たされていない、と判定されているので、図8におけるチップサイズ変更処理(S12)が、図5におけるチップサイズ変更手段(12)内で実行される。具体的には、入力されているLSIのデータベース内のLSIチップを、搭載容量条件がより大きいものに変更する、という操作が行われる。ここでは、“搭載容量条件を満たさなかった場合、搭載容量条件が容量セル500[pF]分大きいものにLSIチップを変更する”という変更指針が図5の判定基準データベース(4)内に、その場合に変更するLSIチップの情報がLSIデータベース(14)内に、それぞれ用意してあるとする。
【0158】
そこで、先ず、図12におけるチップ変更処理(S28)が行われ、現在のLSIチップを、搭載容量条件が容量セル2500(2000+500)[pF]分であるLSIチップに変更するという処理が行われる。次に、図12におけるチップ構成情報変更処理(S29)が行われ、LSIチップの内部構成、レイアウト情報等のデータベースが、変更されたチップのものに変更される。このチップ変更処理(S28)及びチップ構成情報変更処理(S29)は、図5のLSI設計情報及びLSIデータベース(14)から自動的にデータのやり取りを行なうという処理がされても良く、この処理は、図12のS108に相当している。この一連の処理で、PCBの電源回路に実装されているLSIは、他の動作状態は変更されていないが、搭載容量条件が容量セル2500[pF]分であるものに変更されることになる。
【0159】
そして、前処理により変更された回路情報が、さらに図5の電源ノイズ等価回路解析手段(8)に入力され、再度図8における等価回路モデル生成処理(S8)、回路解析処理(S9)が実行される。ここでは、LSIチップが変更になったことによる、電源系等価回路モデルの構造の変更はなかったものとして、等価回路モデル生成処理(S8)により図24に示したような等価回路モデルが作成され、回路解析処理(S9)で図27に示したような電圧の時間変動特性を導出する。
【0160】
また、図24に示されたような電源系等価回路モデルにおいて、既に電源ノイズ特性と判定基準との比較処理(S3)及び判定処理(S4)が行われており、電源系がノイズに対し安定になるように必要な容量セルは2500[pF]分であると判っており、その情報が存在しているので、等価回路モデル生成処理(S8)で最初から図25に示したような容量セルを2500[pF]分追加された等価回路モデルを作成し、回路解析処理(S9)で図28に示したような電圧の時間変動特性を導出する。
【0161】
次に、再度図8における電源ノイズ特性と判定基準との比較処理(S3)及び判定処理(S4)が実行される。ここで、前述の等価回路モデル生成処理(S8)、回路解析処理(S9)において、図24の等価回路モデルを作成して、図27に示したような電圧の時間変動特性を導出した場合には、判定処理(S4)により判定基準を満たさないと判定されるので、再度容量モデル追加処理(S10)により、変更指針に従い容量セルを500[pF]分ずつ追加していく処理を行う必要がある。
【0162】
一方、前述の等価回路モデル生成処理(S8)、回路解析処理(S9)において、図25の等価回路モデルを作成して図28に示したような電圧の時間変動特性を導出した場合には、判定処理(S4)により判定基準を満たしていると判定されるので、次の追加内部容量と判定基準との比較処理(S6)及び判定処理(S11)が行われる。
【0163】
ここで、搭載容量条件との判定処理(S11)においては、搭載容量条件が容量セルを2500[pF]分まで追加出来る、と変更されているので、今度は判定基準を満たすと判定される。従って、次の結果出力処理(S7)に進むことになる。もし、この時点で判定基準を満たさないと判定された場合、再度チップサイズ変更処理(S12)を行い、LSIチップを搭載容量条件がより大きいもの(今回においては更に容量セル500[pF]分大きいもの、つまり2500+500=3000[pF]であるもの)に変更するという処理を行う必要がある。
【0164】
次に、図8の結果出力処理(S7)が行われ、電源ノイズ特性と判定基準との比較処理(S3)及び判定処理(S4)における判定結果(容量セルを追加しない場合電源ノイズ条件を満たさず、2500[pF]分容量セルを追加すれば電源ノイズ条件を満たす)、内部容量と判定基準との比較処理(S6)及び判定処理(S11)による判定結果(最初に搭載されていたLSIチップでは搭載容量条件を満たさず、2500[pF]分容量セルが追加可能なLSIチップに変更する必要がある)、及び変更されたPCBの電源回路の構造(最初に搭載されていたLSIチップの変わりに、2500[pF]分容量セルが追加可能なLSIチップが実装された構造)が、図5の出力装置(7)に出力され、一連の処理が終了する。
【0165】
ここでは、同時に、図24及び図25に記述されたPCBの等価回路モデル、及びそのモデルを使用した解析比較結果である図28に示されたような特性が出力されても良い。また同時に、図8におけるCADデータへの結果出力処理(S106)が行われ、図5の記憶装置(13)内のCADデータ(15)の記述が変更される。ここでは、CADデータ内の基板電源配線に、電源ノイズ条件は現状のままでは満たされないというメッセージが書き込まれ、図23のCADデータが図示された際、基板電源配線の色が例えば赤色に変化して、対策を行わなければ電源ノイズ条件を満たされないということがすぐ判るようになる。
【0166】
また、同時に、図8におけるLSI設計情報への結果出力処理(S107)が行われ、図5の記憶装置(13)内のLSIの設計情報(14)の記述が変更される。ここでは、“電源回路をノイズに対し安定にするには2500[pF]分の容量セルを追加する必要があるが、搭載容量条件を満たさない為、LSIチップを2500[pF]分容量セルが追加可能なものに変更した”といったメッセージが書き込まれる。
【0167】
また、その結果を反映し、図23のCADデータが図示された際、LSIが表示される部分の色を、例えば緑色にすることによって、このLSIチップは搭載容量条件を満たすように変更されたものである、ということがすぐ判るようになる。以上の処理により、図23に示されたPCBの電源回路がノイズに対し安定に設計されているかどうかが自動的に判定され、かつLSIチップ内に容量セルを追加することで、自動的にPCBの電源回路をノイズに対し安定に設計し直すことが可能になる。
【0168】
また、これらの一連の処理の結果から、判定基準データベースのデータや変更指針を更新させて、以降の判定に反映させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明によれば、LSI及びその他の部品が実装されたPCB上の電源回路における電圧変動特性を精度良く解析し、その電源回路がノイズに対し安定に設計されているかどうかを判定する用途に適用可能である。また、PCB上の複数の電源回路について、それぞれノイズに対し安定に設計されているかどうかを判定し、基板上のどの電源回路を対策するのかを抽出する用途に適用可能である。
【0170】
さらに、本発明によれば、LSI及びその他の部品が実装されたPCB上の電源回路において、自動的に電源におけるノイズの判定基準を満たすように、そのLSIに内部容量を追加して安定に設計し直す用途に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】本発明の第1の実施の形態のシステム構成を示した図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態のシステム構成を示した図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態のシステム構成を示した図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態のシステム構成を示した図である。
【図5】本発明の第5の実施の形態のシステム構成を示した図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態のフローチャートを示した図である。
【図7】本発明の第2及び第4の実施の形態のフローチャートを示した図である。
【図8】本発明の第3及び第5の実施の形態のフローチャートを示した図である。
【図9】等価回路モデル作成処理のフローチャートを示した図である。
【図10】等価回路モデル作成処理内の基板等価回路モデル作成処理のフローチャートを示した図である。
【図11】等価回路モデル作成処理内のLSI等価回路モデル作成処理のフローチャートを示した図である。
【図12】チップサイズ変更処理のフローチャートを示した図である。
【図13】基板の断面構造の一例である。
【図14】ソルバ処理によって生成される基板の等価回路モデルの一例である。
【図15】LSIの等価回路モデル構造の一例である。
【図16】LSI全体を等価回路モデルで表現した場合の構造の一例である。
【図17】LSIの動作部分モデルの電流源内部の記述の一例である。
【図18】部品が実装されたPCBの構造の一例である。
【図19】PCBの等価回路モデルの一例である。
【図20】容量モデルが追加されたLSIの等価回路モデルの構造の一例である。
【図21】電源ノイズ特性としての電圧変動特性の一例である。
【図22】LSIのチップサイズと追加する容量セルの関係を示したイメージ図である。
【図23】実施例に使用したPCBの構造である。
【図24】図23に示すPCBの等価回路モデルの構造の一例と各パラメータである。
【図25】図23に示す対策を施したPCBの等価回路モデルの構造の一例と各パラメータである。
【図26】PCBの等価回路モデルにおける観測点での電圧変動と電源ノイズ条件である閾値との比較波形である。
【図27】PCBの等価回路モデルにおける観測点での電圧変動と電源ノイズ条件である閾値との比較波形である。
【図28】PCBの等価回路モデルにおける観測点での電圧変動と電源ノイズ条件である閾値との比較波形である。
【図29】PCBの等価回路モデルにおける観測点での電圧変動と電源ノイズ条件である閾値との比較波形である。
【図30】特許文献1に示されている低ノイズ設計方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図31】特許文献2に示されている半導体装置モデルの作成装置の構成図である。
【図32】特許文献3に記載された電源モデルの回路図である。
【符号の説明】
【0172】
1 入力装置
2 電源ノイズ特性導出手段
3 電源ノイズ条件判定手段
4 判定基準データベース
5 内部容量追加手段
6 搭載容量条件判定手段
7 出力装置
8 電源ノイズ等価回路解析手段
9 等価回路モデル生成手段
10 演算手段
11 容量モデル追加手段
12 チップサイズ手段
13 記憶装置
14 LSI設計情報及びLSIデータベース
15 CADデータ及び部品データベース
21 PCBの電源層及びその電気特性
22 PCBのグランド層及びその電気特性
23 PCBの絶縁層及びその電気特性
24 PCBの層構成と各層の厚み情報
25 PCBの電源メタル配線及びその電気特性
26 PCBの電源メタル配線の配線幅情報
31 LSI等価回路モデルにおける動作部分モデル
32 LSI等価回路モデルにおけるアドミタンスモデル
33 LSI等価回路モデルにおける電源分配回路のモデル
34 LSI等価回路モデルの第一の電源端子
35 LSI等価回路モデルの第二の電源端子
36 LSI等価回路モデルにおける回路ブロックを結合させた電源分配回路のモデル
37 LSI等価回路モデルの分割されたブロックにおける動作部分モデル
38 LSI等価回路モデルの分割されたブロックにおけるアドミタンスモデル
39 LSI等価回路モデルの分割されたブロックにおける電源分配回路のモデル
40 回路ブロックに分割されているLSI等価回路モデル
51 PCBの基板部分(電源ベタ構造)
52 PCBに実装されたLSI(パッケージ含む)
53 PCBの電源配線に接続された直流電源
54 PCBに実装された対策部品であるチップコンデンサ
55 PCB上の観測点
61 PCBの基板部分(電源ベタ構造)の等価回路モデル
62 PCBに実装されたLSI(パッケージ含む)の等価回路モデル
63 PCBの電源配線に接続された直流電源の等価回路モデル
64 PCBに実装された対策部品であるチップコンデンサの等価回路モデル
65 等価回路モデル上の観測点
71 電源電圧変動波形A
72 電源電圧変動波形B
73 LSIチップのサイズと搭載容量条件のイメージ図
74 容量セル
75 LSIチップのサイズと搭載容量条件のイメージ図
81 実施例のPCBの基板部分(電源ベタ構造)
82 実施例のPCBに実装されたLSI(パッケージ含む)
83 実施例のPCBの電源配線に接続された直流電源
84 実施例のPCBに実装された対策部品であるチップコンデンサ
85 実施例のPCB上の観測点
91 実施例のPCBの基板部分(電源ベタ構造)の等価回路モデル
92 実施例のPCBに実装されたLSI(パッケージ含む)の等価回路モデル
93 実施例のPCBの電源配線に接続された直流電源の等価回路モデル
94 実施例のPCBに実装された対策部品であるチップコンデンサの等価回路モデル
95 実施例の等価回路モデル上の観測点
96 実施例のPCBに実装されたLSI(パッケージ含む)の等価回路モデルにおける動作部分モデル
97 実施例のPCBに実装されたLSI(パッケージ含む)の等価回路モデルにおけるアドミタンスモデル
98 実施例のPCBに実装されたLSI(パッケージ含む)の等価回路モデルにおける電源分配回路のモデル
99 実施例のPCBに実装されたLSI(パッケージ含む)の等価回路モデルにおけるパッケージのモデル
100 実施例のPCBに実装されたLSI(パッケージ含む)の等価回路モデルに追加される容量セルのモデル
S1 回路設計情報入力処理
S2 電源ノイズ特性導出処理
S3 電源ノイズ特性比較処理
S4 電源ノイズ特性判定処理
S5 内部容量追加処理
S6 搭載容量比較処理
S7 結果出力処理
S8 等価回路モデル生成処理
S9 回路解析処理
S10 容量モデル追加処理
S11 搭載容量判定処理
S12 チップサイズ変更処理
S13 基板情報入力処理
S14 基板等価回路モデル生成処理
S15 LSI情報入力処理
S16 LSI等価回路モデル生成処理
S17 電源系等価回路モデル生成処理
S18 基板構造情報の入力処理
S19 ソルバ処理
S20 部品データ入力処理
S21 モデル結合による基板等回路モデルの生成処理
S22 LSI設計情報とLSIデータベースの入力処理
S23 動作部分モデル生成処理
S24 アドミタンスモデル生成処理
S25 電源分配回路モデル生成処理
S26 モデル結合によるLSI等価回路モデルの生成処理
S27 内部容量モデル追加処理
S28 チップ変更処理
S29 チップ構成情報変更処理
S101 結果出力(S7)の代替手段としての判定結果のCADデータへの出力処理
S102 結果出力(S7)の代替手段としての判定結果のLSI設計情報とLSIデータベースへの出力処理
S103 基板構造情報入力(S18)の代替手段としてのCADデータからの入力処理
S104 部品データ入力(S20)の代替手段としての部品データベースからの入力処理
S105 LSI設計情報とLSIデータベースの入力(S21)の代替手段としてのCADデータに連動したLSI設計情報とLSIデータベースの入力処理
S106 CADデータに連動した基板情報と部品データベースのデータ変更処理
S107 CADデータに連動したLSI設計情報とLSIデータベースのデータ変更処理
S108 チップ構成情報変更処理に従うLSI設計情報とLSIデータベースの入力及びデータ変更処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも半導体集積回路及び受動部品を含むプリント配線基板上の電源回路をノイズに対し安定に動作するように、該電源回路の設計を支援する電源回路の設計支援装置であって、
該電源回路を構成するプリント配線基板、半導体集積回路及び受動部品の所定の入力情報を入力する入力手段と、
該入力手段により入力される該入力情報に基づき、該電源回路のノイズの特性である電源ノイズ特性を導出する電源ノイズ特性導出手段と、
該電源回路における電源ノイズ特性の許容される条件を格納すると共に、該半導体集積回路に追加出来る内部容量値の許容される条件を格納する判定基準データベースと、
該電源ノイズ特性導出手段により導出された電源ノイズ特性と該判定基準データベースから得られた電源ノイズ特性の許容される条件とを比較し、該電源回路の電源ノイズ特性が所定の条件を満たしているかどうか判定する電源ノイズ判定手段と、
該電源ノイズ判定手段において、該条件を満たさない場合、該半導体集積回路内部に容量を追加する変更を行い、変更された情報を該電源ノイズ特性導出手段へ入力する内部容量追加手段と、
該内部容量追加手段により追加された内部容量の値と該判定基準データベースより得られた該半導体集積回路に追加出来る内部容量値の許容される条件とを比較し、該半導体集積回路に必要な該内部容量値を追加出来るかどうかを判定する搭載容量条件判定手段と、
で構成したことを特徴とする電源回路の設計支援装置。
【請求項2】
該電源ノイズ特性導出手段は、
該入力情報から該電源回路の等価回路モデルを生成する等価回路モデル生成手段と、
該等価回路モデルを解析して、電源ノイズ特性を導出する演算手段とからなることを特徴とする請求項1記載の電源回路の設計支援装置。
【請求項3】
該等価回路モデル生成手段は、
少なくとも該プリント配線基板に関する所定の入力情報に基づき、該プリント配線基板の等価回路モデルを生成する基板等価回路モデル生成手段と、
該半導体集積回路に関する所定の入力情報に基づき、該半導体集積回路の等価回路モデルを生成するLSI等価回路モデル生成手段と、
からなることを特徴とする請求項2記載の電源回路の設計支援装置。
【請求項4】
該内部容量追加手段では、該半導体集積回路内部に実際に追加される容量セルの等価回路モデルを、該半導体集積回路の該等価回路モデルに追加するように構成したことを特徴とする請求項3記載の電源回路の設計支援装置。
【請求項5】
該基板等価回路モデル生成手段は、該プリント配線基板の等価回路モデルに該受動部品の等価回路モデルを結合するように構成されていることを特徴とする請求項3記載の電源回路の設計支援装置。
【請求項6】
該基板等価回路モデル生成手段は、電源配線の物理構造と電気的特性情報とに基づいて等価回路モデルを作成するフィールドソルバを具備することを特徴とする請求項3又は5記載の電源回路の設計支援装置。
【請求項7】
該搭載容量条件判定手段において、条件が満たされないと判断された場合、該半導体集積回路のチップサイズの変更を行い、変更された情報を該電源ノイズ特性導出手段へ入力するチップサイズ変更手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の電源回路の設計支援装置。
【請求項8】
該入力情報が記憶装置に格納されていることを特徴とする請求項1〜7記載の電源回路の設計支援装置。
【請求項9】
少なくとも半導体集積回路及び受動部品を含むプリント配線基板上の電源回路をノイズに対し安定に動作するように、該電源回路の設計を支援する電源回路の設計支援方法であって、
該電源回路を構成するプリント配線基板、半導体集積回路及び受動部品の所定の入力情報を入力し、
該入力される該入力情報に基づき、該電源回路のノイズの特性である電源ノイズ特性を導出し、
該導出された電源ノイズ特性と該電源回路の電源ノイズ特性の許容される条件とを比較し、該電源回路の電源ノイズ特性が所定の条件を満たしているかどうか判定し、
該判定において、該条件を満たさない場合、該半導体集積回路内部に容量を追加し、
該容量の追加に伴って変更された情報に基づき、再度、少なくとも該電源ノイズ特性を導出すると共に、電源ノイズ特性が所定の条件を満たしているかどうか判定し、
更に、該追加された内部容量の値と該半導体集積回路に追加出来る内部容量値の許容される条件とを比較し、該半導体集積回路に必要な該内部容量値を追加出来るかどうかを判定することを特徴とする電源回路の設計支援方法。
【請求項10】
該電源ノイズ特性を導出するために、
該入力情報から該電源回路の等価回路モデルを生成し、
該等価回路モデルを解析して、電源ノイズ特性を導出することを特徴とする請求項9記載の電源回路の設計支援方法。
【請求項11】
該等価回路モデルを生成するために、
少なくとも該プリント配線基板に関する所定の入力情報に基づき、該プリント配線基板の等価回路モデルを生成し、更に
該半導体集積回路に関する所定の入力情報に基づき、該半導体集積回路の等価回路モデルを生成することを特徴とする請求項10記載の電源回路の設計支援方法。
【請求項12】
該内部容量を追加する際、
該半導体集積回路内部に実際に追加される容量セルの等価回路モデルを、該半導体集積回路の等価回路モデルに追加することを特徴とする請求項11記載の電源回路の設計支援方法。
【請求項13】
該基板等価回路モデルを生成する際、該プリント配線基板の等価回路モデルに該受動部品の等価回路モデルを結合することを特徴とする請求項11記載の電源回路の設計支援方法。
【請求項14】
該半導体集積回路内部に容量を追加し、該半導体集積回路に必要な該内部容量値を追加出来ない場合、
該半導体集積回路のチップサイズの変更を行い、
該チップサイズの変更に伴い変更された情報に基づき、再度、少なくとも該電源ノイズ特性を導出すると共に、該電源ノイズ特性が所定の条件を満たしているかどうか判定することを特徴とする請求項9〜13の何れかに記載の電源回路の設計支援方法。
【請求項15】
少なくとも半導体集積回路及び受動部品を含むプリント配線基板上の電源回路をノイズに対し安定に動作するように、該電源回路の設計を支援する電源回路の設計支援のためのコンピュータのプログラムであって、
該コンピュータの記憶装置には、該電源回路の電源ノイズ特性の許容される条件を格納すると共に、該半導体集積回路に追加出来る内部容量値の許容される条件を格納し、
該コンピュータを、
該電源回路を構成するプリント配線基板、半導体集積回路及び受動部品の所定の入力情報を入力する入力手段と、
該入力手段で入力される該入力情報に基づき、該電源回路のノイズの特性である電源ノイズ特性を導出する電源ノイズ特性導出手段と、
該電源ノイズ特性導出手段で導出された電源ノイズ特性と該記憶装置に格納される該電源回路の電源ノイズ特性の許容される条件とを比較し、該電源回路の電源ノイズ特性が所定の条件を満たしているかどうか判定する電源ノイズ判定手段と、
該電源ノイズ判定手段において、該条件を満たさない場合、該半導体集積回路内部に容量を追加する内部容量追加手段として機能させ、
該内部容量追加手段での容量の追加に伴って変更された情報に基づき、再度、少なくとも該電源ノイズ特性を導出すると共に、電源ノイズ特性が所定の条件を満たしているかどうか判定し、更に
該内部容量追加手段で追加された内部容量の値と該記憶装置に格納される該半導体集積回路に追加出来る内部容量値の許容される条件とを比較し、該半導体集積回路が必要な内部容量値を追加出来るかどうかを判定する搭載容量条件判定手段として機能させることを特徴とするコンピュータのプログラム。
【請求項16】
該電源ノイズ特性導出手段は、
該入力情報から該電源回路の等価回路モデルを生成し、
該等価回路モデルを解析して、電源ノイズ特性を導出することを特徴とする請求項15記載のコンピュータのプログラム。
【請求項17】
該等価回路モデルを生成するために、
少なくとも該プリント配線基板に関する所定の入力情報に基づき、該プリント配線基板の等価回路モデルを生成し、更に
該半導体集積回路に関する所定の入力情報に基づき、該半導体集積回路の等価回路モデルを生成することを特徴とする請求項16記載のコンピュータのプログラム。
【請求項18】
該内部容量追加手段は、
該半導体集積回路内部に実際に追加される容量セルの等価回路モデルを、該半導体集積回路の等価回路モデルに追加することを特徴とする請求項17記載のコンピュータのプログラム。
【請求項19】
該半導体集積回路内部に容量を追加し、該半導体集積回路に必要な該内部容量値を追加出来ない場合、
該半導体集積回路のチップサイズの変更を行い、
該チップサイズの変更に伴い変更された情報に基づき、再度、少なくとも該電源ノイズ特性を導出すると共に、該電源ノイズ特性が所定の条件を満たしているかどうか判定することを特徴とすることを特徴とする請求項15〜18の何れかに記載のコンピュータのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2009−199338(P2009−199338A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40314(P2008−40314)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】