説明

電源装置

【課題】積層された角形電池セルを中間部分も含めて均一な状態でプレート上に固定可能とする。
【解決手段】複数の角形電池セル1を、セパレータ2を交互に介在させた状態で積層した電池積層体50の端面に配置されたエンドプレート4と、電池積層体50端面のエンドプレート4同士を締結するためのバインドバー11と、電池積層体50を上面に載置する載置プレート6と、電池積層体50を載置プレート6の上面に固定するための固定手段30とを備え、バインドバー11が、電池積層体50の側面において、電池積層体50の上面を係止するよう、上端を折曲された係止折曲片14を設けており、かつバインドバー11の下面において、固定手段30として、係止折曲片14の折曲方向と反対側に折曲され、電池積層体50の側面側から突出すると共に、その底面を載置プレート6上に固定するための固定片31を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の角形電池セルをセパレータを挟んで積層した電池積層体を備える電源装置に関し、特にハイブリッド車や電気自動車等の電動車両に搭載されて、車両を走行させるモータに電力を供給する電源に最適な電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の電源装置は、多数の電池セルを直列に接続して出力電圧を高く、出力電力を大きくしている。また、体積に対する充電容量を大きくすることから、多数の角形電池セルを積層状態に配置する電池積層体を備える電源装置が開発されている(特許文献1参照)。
【0003】
この電源装置は、角形電池セルを積層状態で締結するために、アングル材のバインドバーで固定している。バインドバーは、積層状態の角形電池セルの両端面に配置されたエンドプレートに両端を固定している。特に角形電池セルが充放電を繰り返すことで膨張することを避けるためにも、バインドバーで強固に締結する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−86887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながらバインドバーでの締結は、角形電池セルの左右又は水平方向のずれに対しては強いものの、上下又は垂直方向への位置ずれを確実に阻止するのが難しい。特に、車載用の電源装置においては、振動や衝撃に晒される頻度が多くなる。また多数の角形電池セルをセパレータで挟んで積層している電池積層体は、セル数が多いほど、すなわち電池積層体が長くなるほど、振動等によって中央に位置する角形電池セルが上下に振動されることの阻止が難しくなる。加えて、角形電池セルは外装缶をアルミニウム等の金属板の絞り出し加工によって製造される都合上、外形が完全な直方体とならず、一方向に口径が徐々に小さくなる形状であることも、締結のみでの完全な固定を困難としている。この状態で中央部の角形電池セルが振動されると、例えば振動する角形電池セルの表面を被覆するシュリンクチューブ等の絶縁層が、振動しないバインドバーに擦られて破損して、絶縁破壊や漏電の原因となる可能性がある。また、振動によって角形電池セルが物理的に損傷されて電気特性を悪化させ、あるいは寿命を短くする等の弊害となる可能性も考えられる。
【0006】
角形電池セルの振動は、バインドバーで強く加圧するように締結して少なくできるが、この構造では、振動を確実に阻止するのが難しいばかりでなく、角形電池セルを強く加圧することで他の弊害が発生する。たとえば、セパレータが変形して安定して冷却できなくなり、あるいは角形電池セルが変形する等の弊害が発生する。
【0007】
また角形電池セルは使用によって発熱する。特に急ブレーキや急発進等で大電流が放電、充電されると、発熱量も多くなる。角形電池セルが高温になると電池寿命を短くするため、効率的な放熱構造が求められる。従来は、角形電池セル同士の間に配置されたセパレータに、冷却空気を流す通風路を設けて空冷によって冷却する構造が一般的であった。これに対して、近年は内部で冷媒を循環させる冷却プレートに電池積層体を熱結合状態とし、冷却プレートを介して放熱させる冷却方式も提案されている。このような冷却方式では、電池積層体を冷却プレート上に載置し、電池積層体の底面を冷却プレートの上面と熱結合状態に固定している。このような構造においては、電池積層体の底面と冷却プレートとを接触させることが重要となる。
【0008】
しかしながら従来、電池積層体をプレート上に固定するには、電池積層体両端面のエンドプレートをプレートに固定する方式が一般的であり、電池積層体の中間部分を固定する構造が存在していなかった。このため、中間部分の固定が不安となる傾向にあり、特に角形電池セルの積層数が増え、電池積層体が長くなるほど、この問題が顕著となり、中間部分がプレートから浮き上がる等、接触状態が角形電池セル間で一定しなくなる。この結果、冷却能力が角形電池セル間で差が生じ、一部の角形電池セルの劣化が他の角形電池セルよりも進む事態も考えられる。また、このような冷却方式を採用しない組電池においても、上述の通り振動の問題があり、特に車載用途では常時振動に晒されるため、電池積層体の中間部分が波打つようになり、角形電池セルが破損することも考えられる。
【0009】
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、積層された角形電池セルを中間部分も含めて均一な状態でプレート上に固定可能な組電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面に係る電源装置によれば、外形を、幅よりも厚さを薄くした角形とする複数の角形電池セル1と、前記複数の角形電池セル1同士を積層する面に介在させて、該角形電池セル1間を絶縁するためのセパレータ2と、前記複数の角形電池セル1を、前記セパレータ2を交互に介在させた状態で積層した電池積層体50の端面に配置されたエンドプレート4と、前記電池積層体50端面のエンドプレート4同士を締結するためのバインドバー11と、前記電池積層体50を上面に載置する載置プレート6と、前記電池積層体50を前記載置プレート6の上面に固定するための固定手段30と、を備える電源装置であって、前記バインドバー11が、電池積層体50の側面において、電池積層体50の上面を係止するよう、上端を折曲された係止折曲片14を設けており、かつ前記バインドバー11の下面において、前記固定手段30として、前記係止折曲片14の折曲方向と反対側に折曲され、前記電池積層体50の側面側から突出すると共に、その底面を前記載置プレート6上に固定するための固定片31を設けることができる。これにより、電池積層体全体を載置プレートに固定することができる。また、電池積層体の中間部分において、セパレータを係止折曲片で係止することで、このセパレータが載置プレートから振動や外力によって浮き上がることを阻止でき、安定的に保持できる。
【0011】
また第2の側面に係る電源装置によれば、前記固定片31は、前記バインドバー11の長さ方向に沿って離散的に複数設けることができる。これにより、複数の固定片をバインドバーの長さ方向に沿って多数配置することで、中間部位での電池積層体の固定が強固となって、電池積層体の全長が長くなっても載置プレートとの連結を確実なものとできる。
【0012】
さらに第3の側面に係る電源装置によれば、前記複数の固定片31は、前記載置プレート6に固定するためのねじ穴32をそれぞれ開口することができる。これにより、各固定片を螺合によって載置プレートと確実且つ容易に固定できる。
【0013】
さらにまた第4の側面に係る電源装置によれば、外形を、幅よりも厚さを薄くした角形とする複数の角形電池セル1と、前記複数の角形電池セル1同士を積層する面に介在させて、該角形電池セル1間を絶縁するためのセパレータ2と、前記複数の角形電池セル1を、前記セパレータ2を交互に介在させた状態で積層した電池積層体50の端面に配置されたエンドプレート4と、前記電池積層体50端面のエンドプレート4同士を締結するためのバインドバー11と、前記電池積層体50を上面に載置する載置プレート6と、前記電池積層体50を前記載置プレート6の上面に固定するための固定手段30と、を備える電源装置であって、前記バインドバー11が、電池積層体50の側面において、電池積層体50の上面を係止するよう、上端を折曲された係止折曲片14を設けており、前記固定手段30として、前記電池積層体50の底面側において、前記載置プレート6と係合するための係合手段33を、前記載置プレート6が、前記係合手段33と対応する位置に、該係合手段33と係合する係合受け手段34を、それぞれ設けることができる。これにより、電池積層体全体を載置プレートに固定することができる。また、電池積層体の中間部分において、係合手段と係合受け手段によってバインドバーとセパレータとが互いに上下方向の移動を規制し、電池積層体を載置プレート上に固定できるので、電池積層体が載置プレートから振動や外力によって浮き上がることを阻止でき、安定的に保持できる。特にこの構成によれば、電池積層体の側面から突出する部材が不要となるため、電池積層体の外形をスリム化しつつ信頼性高く固定でき、装置の小型化に寄与できる利点も得られる。
【0014】
さらにまた第5の側面に係る電源装置によれば、前記係合手段33を、前記バインドバー11の下端に設けることができる。これによって、強固なバインドバーを載置プレートの固定に兼用できる。
【0015】
さらにまた第6の側面に係る電源装置によれば、前記セパレータ2は、一対のセパレータ2で角形電池セル1を両面から狭持すると共に、該角形電池セル1の天面を覆う嵌着突出部15を設けることができる。これにより、セパレータが角形電池セルの浮き上がりを阻止し、セパレータは上述の通りバインドバーの係止折曲片によって載置プレート側に押圧されるため、結果として角形電池セルを載置プレート上に安定的に固定できる。
【0016】
さらにまた第7の側面に係る電源装置によれば、前記セパレータ2が上端と下端とに、角形電池セル1を内側に嵌着する嵌着突出部15を有し、上下の嵌着突出部15の間に角形電池セル1を配置することができる。これにより、電池積層体上下両面をセパレータで保持できるので、角形電池セルを確実に保持して振動等に対応できる。
【0017】
さらにまた第8の側面に係る電源装置によれば、前記セパレータ2は、その上面隅部において前記バインドバー11の係止折曲片14を受ける部分を、凹状に形成した該係止折曲片14を挿入可能な凹状受け部16を形成することができる。これにより、電池積層体とセパレータとバインドバーとの連結構造を一層強固な構成とできる。
【0018】
さらにまた第9の側面に係る電源装置によれば、前記載置プレート6が、前記角形電池セル1の底面23と熱結合状態に配置される、冷媒配管26を配設した冷却プレート7とすることができる。これにより、電池積層体を底面側から冷却でき、特に電池積層体の中間部分において冷却プレートとの熱結合状態を安定的に維持できるので、電池積層体を端面のみならず全体において均一に効率よく冷却できる利点が得られる。
【0019】
さらにまた第10の側面に係る電源装置を備える車両によれば、上記いずれかの電源装置を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1に係る電源装置の斜視図である。
【図2】図1から上ケースを外した状態を示す斜視図である。
【図3】図2の電池積層体を載置プレート上に載置する状態を示す斜視図である。
【図4】図3の電池積層体の分解斜視図である。
【図5】図4の角形電池セル同士の積層状態を示す分解斜視図である。
【図6】図3の電池積層体の断面図である。
【図7】変形例1に係るバインドバーを示す斜視図である。
【図8】変形例2に係る電池積層体を示す断面図である。
【図9】変形例3に係る電池積層体を示す断面図である。
【図10】図9の電池積層体を載置プレート上に載置する状態を示す斜視図である。
【図11】変形例4に係る電池積層体を載置プレート上に載置する状態を示す斜視図である。
【図12】変形例5に係る電池積層体を示す断面図である。
【図13】図12に示す電池積層体を載置プレート上に載置する状態を示す斜視図である。
【図14】実施例2に係る電池積層体の冷却構造を示す模式図である。
【図15】図14に示す電池積層体の一部拡大垂直縦断面図である。
【図16】図14に示す電池積層体の垂直横断面図である。
【図17】エンジンとモータで走行するハイブリッド自動車にバッテリシステムを搭載する例を示すブロック図である。
【図18】モータのみで走行する電気自動車にバッテリシステムを搭載する例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための電源装置及びこれを用いた車両を例示するものであって、本発明は電源装置及びこれを用いた車両を以下のものに特定しない。なお、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
(実施例1)
【0022】
図1〜図11に、本発明の実施例1に係る電源装置を示す。これらの図において、図1は実施例1に係るバッテリシステム91の斜視図、図2は図1から上ケース72を外した状態を示す斜視図、図3は図2の電池積層体50を載置プレート6上に載置する状態を示す斜視図、図4は、図3の電池積層体50の分解斜視図、図5は、図4の角形電池セル1同士の積層状態を示す分解斜視図、図6は、図3の電池積層体50の断面図、図7は、変形例1に係るバインドバー11を示す斜視図、図8は、変形例2に係る電池積層体50を示す断面図、図9は、変形例3に係る電池積層体50を示す断面図、図10は、図9の電池積層体50を載置プレート6上に載置する状態を示す斜視図、図11は変形例4に係る電池積層体を載置プレート上に載置する状態を示す斜視図を、それぞれ示している。
【0023】
バッテリシステム91の外観は、図1、図2に示すように、箱形の外装ケース70を二分割して、内部に複数の電池積層体50を収納している。外装ケース70は、下ケース71と、上ケース72と、これらの下ケース71、上ケース72の両端に連結している端面プレート73とを備えている。上ケース72と下ケース71は、外側に突出する鍔部74を有し、この鍔部74をボルトとナットで固定している。図1、図2の外装ケース70は、鍔部74を外装ケース70の側面に配置している。また図2の例では、下ケース71に電池積層体50を長手方向に2つ、横方向に2列、計4個収納している。各電池積層体50は、下ケース71に止ネジ等で固定して、外装ケース70内部の定位置に固定している。端面プレート73は、下ケース71と上ケース72の両端に連結されて、外装ケース70の両端を閉塞している。
(電池積層体50)
【0024】
各電池積層体50は図3に示すように、外観を略箱形とし、角形電池セル1を多数積層し、両端面からエンドプレート4で、バインドバー11を介して狭持している。電池積層体50は、図4の分解斜視図に示すように、角形の電池セル1を複数、セパレータ2を介して積層して構成される。図4の電池積層体50の例では、10個の角形電池セル1を積層している。バインドバー11は角形電池セル1を締結する締結手段として機能し、この例では枠状の金属板の両端を上面視コ字状に折曲して折曲片18とし、エンドプレート4と螺合するためのねじ穴を折曲片に開口している。またエンドプレート4には、バインドバー11の折曲片を受ける位置に窪み19を設けている。折曲片18及びエンドプレート4にねじ穴を設けることで、バインドバー11をエンドプレート4に螺合して固定される。加えてこの電池積層体50は、図3に示すように載置プレート6上に固定される。このため、電池積層体50を載置プレート6上に固定するための固定手段30が設けられる(詳細は後述)。
(角形電池セル1)
【0025】
角形電池セル1は、図5に示すように、外形を、幅よりも厚さを薄くした角形とする外装缶12で構成され、外装缶12の天面24、すなわち外装缶12を閉塞する封口板に正負の電極端子13を設けている。電極端子13同士は、図4で示すバスバー17を介して電気的に接続している。なお角形電池セルの外装缶は、プラスチック等の絶縁材で製作することもできる。この場合は角形電池セル同士を積層する際に、外装缶を絶縁する必要がないので、セパレータを金属製とすることもできる。また角形電池セル1の天面24を除く面は、絶縁処理される。具体的には、角形電池セル1の天面24及び底面23を除く面を、被覆フィルムで表面を被覆する。
【0026】
このような角形電池セル1は、リチウムイオン二次電池の角形電池である。ただ、角形電池セルは、ニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池等の二次電池とすることもできる。角形電池セル1は、所定の厚さを有する四角形で、天面24の両端部には正負の電極端子13を突出して設けており、天面24の中央部には安全弁の開口部を設けている。積層される角形電池セル1は、隣接する正負の電極端子13をバスバー17で連結して互いに直列に接続している。隣接する角形電池セル1を互いに直列に接続するバッテリシステムは、出力電圧を高くして出力を大きくできる。ただ、バッテリシステムは、隣接する角形電池セルを並列に接続することもできる。
(セパレータ2)
【0027】
電池積層体50は、積層している角形電池セル1の間にセパレータ2を挟着している。この電池積層体50は、角形電池セル1の外装缶12を金属製として、プラスチック製のセパレータ2で絶縁して積層できる。セパレータ2は、両面を角形電池セル1に嵌着できる形状として、隣接する角形電池セル1の位置ずれを阻止して積層できる。
【0028】
またセパレータ2は、図5に示すように、角形電池セル1を冷却するために、角形電池セル1との間に、空気等の冷却気体を通過させる冷却隙間53を設けている。これにより電池積層体50は、複数の角形電池セル1を冷却隙間53ができる状態で積層している。そしてこの電池積層体50の角形電池セル1に冷却気体を強制送風して冷却する冷却機構として、図1に示すように強制送風機構9Bを備えている。電池積層体50は、図4に示すように、積層している角形電池セル1の間にセパレータ2を挟着している。このセパレータ2は、図5に示すように、角形電池セル1との間に冷却隙間53ができる形状としている。さらに、図のセパレータ2は、両面に角形電池セル1を嵌着構造で連結している。角形電池セル1に嵌着構造で連結されるセパレータ2を介して、隣接する角形電池セル1の位置ずれを阻止して積層している。
【0029】
さらにセパレータ2は、両面に角形電池セル1を嵌着構造で連結するために、図5に示すように、上端と下端とに、角形電池セル1を内側に嵌着する嵌着突出部15を両面に突出するように設けて、上下の嵌着突出部15の間に角形電池セル1を配置している。上下の嵌着突出部15は、角形電池セル1の上面と下面に沿う位置に配置されて、角形電池セル1を上下で挟んで定位置に嵌着する。
【0030】
嵌着突出部15は、セパレータ2の幅方向に延長されて、セパレータ2の全面を被覆する。ただ、角形電池セル1の上面に配置される嵌着突出部15は、セパレータ2を積層する状態で、角形電池セル1の電極端子14を外部に露出させるよう、電極端子の位置に開口窓を開口させている。
(バインドバー11)
【0031】
角形電池セル1とセパレータ2を交互に積層した電池積層体50は、締結手段であるバインドバー11によって締結される。バインドバー11は、図4、図5及び図6に示すように、電池積層体50の側面において、電池積層体50の中間に位置するセパレータ2の上面を係止するよう、上端を折曲された係止折曲片14を設けている。この係止折曲片14は、セパレータ2の上面隅部に階段状に形成された凹状受け部16に係止されて、セパレータ2を上面から押圧する。なお、係止折曲片14を係止する構造としては、この他、例えば嵌着突出部の側面に開口するよう形成された嵌着溝に、係止折曲片を挿入するような構成としてもよい。
(固定手段30)
【0032】
またバインドバー11の下面においては、固定手段30として、載置プレート6上に固定するための固定片31を設けている。固定片31は、電池積層体50の側面側から突出する側に折曲される。すなわち、バインドバー11は図6の断面図に示すように、上端の係止折曲片14と下端の固定片31とを相互に逆向きに折曲される。これにより、上端の係止折曲片14でセパレータ2の凹状受け部16を係止した状態で、下端の固定片31を載置プレート6に固定することによって、セパレータ2を載置プレート6の上面に押しつけるように固定できる。
【0033】
また固定片31は、バインドバー11の両端のみならず、中間にも複数設けられている。これにより、電池積層体50の中間においても載置プレート6側と固定することができ、従来のように電池積層体両端面のエンドプレートのみ、すなわち両端でのみ固定する構成に比べ、より安定的に電池積層体50を載置プレート6上に固定できる利点が得られる。特に、電池積層体の積層数が多くなり全長が長くなると、振動等によって中間の角形電池セルが浮き上がりやすくなるところ、中間部分にも固定構造を複数設けることによって、このような弊害を回避できる。加えて、後述する冷却プレート7を用いた冷却方式においては、角形電池セル1と冷却プレート7との熱結合を確実に維持できることから、冷却能力を確実に発揮させて角形電池セルの放熱性能を維持し、信頼性を高められる利点も得られる。
【0034】
係止折曲片14は、バインドバー11の長さ方向に沿って連続的に設けられている。一方の固定片31は、図4の例ではバインドバー11の長さ方向に沿って離散的に複数設けられている。折曲係止片は、セパレータ2の凹状受け部16を押圧する一方、固定片31は、載置プレート6と固定する必要がある。ここでは、各固定片31に開口されたねじ穴32を用いた螺合により、載置プレート6と確実に固定される。このように、固定片31は載置プレート6との固定位置にのみ設ければ足りるため、係止折曲片のようにバインドバーの長さ全体に設ける必要がなく、離散的に必要な部位にのみ設ける構成としている。これら係止折曲片14や固定片31は、金属製のバインドバー11と一体的に成形することが好ましい。これによって安価に固定手段を設けつつ、十分な強度を発揮できる。
(変形例1)
【0035】
ただ、この例に限られず、例えば図7に示すように、固定片もバインドバーの長さ方向に沿って連続的に設けてもよいことはいうまでもない。特に図7のバインドバー11は、固定片31を連続的に形成することによって、バインドバー11自体の機械的な強度向上にも寄与している。
(変形例2)
【0036】
またバインドバーの固定片の形状は、図6の構成に限られず、例えば図8に示すように、バインドバー11Bの上下端を垂直断面視コ字状に折曲させつつ、これに加えて上記と同様に電池積層体50の側面から突出させる固定片31Bを追加する構成としてもよい。この構成によれば、断面視コ字状のバインドバー11Bによって電池積層体50を上下面からも狭持して安定的に保持しつつ、さらにこの電池積層体50を載置プレート6上に固定する構造を、電池積層体50の長さ方向の中間においても付加することができ、機械的な安定性を一層向上できる利点が得られる。
(変形例3)
【0037】
さらに上記の例では、いずれも固定手段として、バインドバーの側面から突出させた固定片を用いる構成を説明した。ただ、固定手段はこの構成に限られるものでなく、電池積層体50の下面と、載置プレート6の上面との間に設けることもできる。このように構成すれば、電池積層体50の側面から突出する部材を排除できるので、電池積層体50をスリム化でき、小型化に資する。
【0038】
このような構成の一例として、変形例2に係る電池積層体50を、図9、図10に示す。これらの図に示すバインドバー11Cは、上端を折曲された係止折曲片14に加えて、下端に載置プレート6と係合するための係合手段33を複数設けている。一方載置プレート6は、この係合手段33と対応する位置に、係合受け手段34を設けている。係合手段33は鉤状に先端をほぼL字状に折曲してなり、一方の係合受け手段34は、この係合手段33の鉤状を挿入して係合できる溝状に形成されている。この電池積層体50は、図10に示すように、係合手段33を係合受け手段34に挿入した状態で水平方向にスライドさせることによって、係合状態とでき、電池積層体50の上下方向への移動が規制される。一方、水平方向の移動については、エンドプレート4に設けたねじ等の他の固定手段によって規制される。
(変形例4)
【0039】
さらにバインドバーは、強度を向上させるために補強部を形成することもできる。このような例を変形例4として図11に示す。この図に示すバインドバー11Dは、電積層体の側面を開口する開口部分に、補強部11aを形成している。補強部11aは開口部分において、上下に橋渡しするように複数条がほぼ平行に設けられる。また角形電池セル1間に設けられた冷却気体を流すための冷却隙間53が、補強部11aで閉塞されないように、冷却隙間53と重ならない位置となるように設計される。このため補強部11aの幅は、角形電池セル1の幅と同じか、これよりも狭くする。このように補強部11aを設けることで、開口部を設けたバインドバー11Dの機械的強度の低下を低減し、電池積層体のより強固に保持できる。
(変形例5)
【0040】
図9〜図11の例では、バインドバー11C、11Dの下部において突出する複数の係合手段33を、バインドバー11C、11Dの表面に沿ってほぼ同一平面上に並んだ平板状とし、載置プレート6に対して、電池積層体50の左右でそれぞれ波線状に形成された係合受け手段34に挿入される構成としている。ただ、このような構成に限られず、係合手段をバインドバーの平面に対して交差する姿勢に固定することもできる。このような例を変形例5として、図12、図13に示す。これらの図に示すバインドバー11Eは、その下面から、係合手段33Eを、バインドバー11Eの平面に対して交差する姿勢で突出させ、さらにその先端を断面視コ字状似折曲している。また載置プレート6にはこれに対応して、係合受け手段34Eを矩形状に開口させている。この構成であれば、各係合手段33Eがより広い面積で、線状でなく面状に載置プレート6と接合されるため、機械的な強度及び安定度を増して、より信頼性高く電池積層体50を載置プレート6に固定できる。
(実施例2)
【0041】
以上の実施例1では、冷却風をファン等の強制送風機構で強制的に送風して角形電池セルを冷却する空冷方式を採用しているが、本発明は冷却方式を空冷式に限定せず、冷媒を用いた冷却にも適用できる。以下、実施例2として、冷媒を用いて角形電池セル1を冷却する冷却方式について、図14〜図16に基づいて説明する。これらの図において、図14は、実施例2に係る電池積層体50の冷却構造を示す模式図、図15は、図14に示す電池積層体50の一部拡大垂直縦断面図、図16は、図14に示す電池積層体50の垂直横断面図を、それぞれ示している。この例においては、電池積層体50を載置する載置プレート6が、電池積層体50の冷却を行う冷却プレート7として機能する。このため冷却プレート7の内部には、冷媒配管26を配設している。
【0042】
図14に示すバッテリシステム92を構成する電源装置は、複数の角形電池からなる角形電池セル1を積層している電池積層体50と、電池積層体50を構成する角形電池セル1に熱結合状態に配置している冷却プレート7と、この冷却プレート7を冷却する冷却機構9とを備える。この冷却機構9は、電池積層体50を冷却プレート7に接触させて直接、効果的に冷却できる。また、電池積層体のみならず、例えば電池積層体50の端面に配置した各部材等も併せて冷却することもでき、信頼性の面でも優れる。
(冷却プレート7)
【0043】
冷却プレート7は、角形電池セル1の熱を熱伝導して外部に放熱するための放熱体であり、図の例では冷媒配管を配設している。図15の断面図に示すように、冷却プレート7は、内部を閉鎖室とし、この閉鎖室に熱交換器として、冷却液である液化された冷媒を循環させる銅やアルミ等の冷媒配管26の冷却パイプを内蔵している。冷却パイプは、冷却プレート7の上面板に密着するように固定されて上面板を冷却し、底板との間には断熱材を配設して、底板との間を断熱している。また冷却プレート7にはこのような冷媒による冷却機能を付加する他、金属板のみで構成することもできる。例えば放熱フィンを設けた金属体等、放熱、伝熱性に優れた形状とする。または金属製に限らず、絶縁性を有する伝熱シートを利用しても良い。
【0044】
冷却プレート7は、この上面に載置される電池積層体50を冷却する電池冷却手段を構成している。この例では、図15の断面図に示すように冷却プレート7の内部に、冷媒を循環させるための冷媒配管26を設けている。この冷媒配管26に、図14に示す冷却機構9から冷却液が供給されて冷却プレート7は冷却される。冷却プレート7は、冷却機構9から供給される冷却液を、冷媒配管26の内部で気化する気化熱で冷却プレート7を冷却する冷媒として、冷却プレート7をより効率よく冷却できる。
【0045】
冷却プレート7は、角形電池セル1を冷却するために、電池積層体50を構成する各々の角形電池セル1の外周面である底面23に熱結合状態に固定している。隣接する角形電池セルを直列に接続しているバッテリシステムは、隣接する角形電池セルに電位差がある。したがって、金属製の外装缶で構成された角形電池セルをそのまま冷却プレートに電気接続すると、短絡して大きなショート電流が流れてしまう。これに対して上述の通り外装缶12の底面23をシュリンクチューブ等の絶縁層で被覆した角形電池セル1は、このような短絡を回避し、絶縁状態で冷却プレート7と熱結合できる。
【0046】
さらに冷却プレート7は、複数の角形電池セル1の温度を均等化する均熱化手段としても機能する。すなわち、冷却プレート7が角形電池セル1から吸収する熱エネルギーを調整して、温度が高くなる角形電池セル、例えば中央部の角形電池セルを効率よく冷却して、温度が低くなる領域、例えば両端部の角形電池セルの冷却を少なくして、角形電池セルの温度差を少なくする。これによって、角形電池セルの温度むらを低減して、一部の角形電池セルの劣化が進み過充電、過放電となる事態を回避できる。
【0047】
なお、図14の例では電池積層体50の底面23に冷却プレート7を配置した例を示したが、この構成に限られるものでない。例えば冷却プレートを角形電池セルの側面に配置することもできる。
(電源装置を用いた車両)
【0048】
次に、以上の角形電池セルを用いた電源装置を搭載した車両を、図17及び図18に基づいて説明する。図17は、車両用のバッテリシステムを搭載する車両であって、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車HVの一例を示している。この図のハイブリッド自動車は、車両を走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、モータ93に電力を供給するバッテリシステム91、92と、バッテリシステム91、92の電池を充電する発電機94とを備えている。バッテリシステム91、92は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。ハイブリッド自動車は、バッテリシステム91、92の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、たとえば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、バッテリシステム91、92から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、バッテリシステム91、92の電池を充電する。
【0049】
さらに図18は、車両用のバッテリシステムを搭載する車両であって、モータのみで走行する電気自動車EVの一例を示している。この図に示す電気自動車は、車両を走行させる走行用のモータ93と、このモータ93に電力を供給するバッテリシステム91、92と、このバッテリシステム91、92の電池を充電する発電機94とを備えている。バッテリシステム91、92は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。モータ93は、バッテリシステム91、92から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両を回生制動する時のエネルギーで駆動されて、バッテリシステム91、92の電池を充電する。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る電源装置及びこれを用いた車両は、EV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車等の電源装置として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0051】
1…角形電池セル
2…セパレータ
4…エンドプレート
6…載置プレート
7…冷却プレート
9…冷却機構
9B…強制送風機構
11、11B、11C、11D、11E…バインドバー
11a…補強部
12…外装缶
13…電極端子
14…係止折曲片
15…嵌着突出部
16…凹状受け部
17…バスバー
18…折曲片
19…窪み
23…底面
24…天面
26…冷媒配管
30…固定手段
31、31B…固定片
32…ねじ穴
33、33E…係合手段
34…係合受け手段
50…電池積層体
53…冷却隙間
70…外装ケース
71…下ケース
72…上ケース
73…端面プレート
74…鍔部
91、92…バッテリシステム
93…モータ
94…発電機
95…インバータ
96…エンジン
HV、EV…車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外形を、幅よりも厚さを薄くした角形とする複数の角形電池セル(1)と、
前記複数の角形電池セル(1)同士を積層する面に介在させて、該角形電池セル(1)間を絶縁するためのセパレータ(2)と、
前記複数の角形電池セル(1)を、前記セパレータ(2)を交互に介在させた状態で積層した電池積層体(50)の端面に配置されたエンドプレート(4)と、
前記電池積層体(50)端面のエンドプレート(4)同士を締結するためのバインドバー(11)と、
前記電池積層体(50)を上面に載置する載置プレート(6)と、
前記電池積層体(50)を前記載置プレート(6)の上面に固定するための固定手段(30)と、
を備える電源装置であって、
前記バインドバー(11)が、電池積層体(50)の側面において、電池積層体(50)の上面を係止するよう、上端を折曲された係止折曲片(14)を設けており、
かつ前記バインドバー(11)の下面において、前記固定手段(30)として、前記係止折曲片(14)の折曲方向と反対側に折曲され、前記電池積層体(50)の側面側から突出すると共に、その底面を前記載置プレート(6)上に固定するための固定片(31)を設けてなることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置であって、
前記固定片(31)は、前記バインドバー(11)の長さ方向に沿って離散的に複数設けられてなることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電源装置であって、
前記複数の固定片(31)は、前記載置プレート(6)に固定するためのねじ穴(32)をそれぞれ開口してなることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
外形を、幅よりも厚さを薄くした角形とする複数の角形電池セル(1)と、
前記複数の角形電池セル(1)同士を積層する面に介在させて、該角形電池セル(1)間を絶縁するためのセパレータ(2)と、
前記複数の角形電池セル(1)を、前記セパレータ(2)を交互に介在させた状態で積層した電池積層体(50)の端面に配置されたエンドプレート(4)と、
前記電池積層体(50)端面のエンドプレート(4)同士を締結するためのバインドバー(11)と、
前記電池積層体(50)を上面に載置する載置プレート(6)と、
前記電池積層体(50)を前記載置プレート(6)の上面に固定するための固定手段(30)と、
を備える電源装置であって、
前記バインドバー(11)が、電池積層体(50)の側面において、電池積層体(50)の上面を係止するよう、上端を折曲された係止折曲片(14)を設けており、
前記固定手段(30)として、
前記電池積層体(50)の底面側において、前記載置プレート(6)と係合するための係合手段(33)を、
前記載置プレート(6)が、前記係合手段(33)と対応する位置に、該係合手段(33)と係合する係合受け手段(34)を、
それぞれ設けてなることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電源装置であって、
前記係合手段(33)が、前記バインドバー(11)の下端に設けられてなることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一に記載の電源装置であって、
前記セパレータ(2)は、一対のセパレータ(2)で角形電池セルを両面から狭持すると共に、該角形電池セルの天面を覆う嵌着突出部(15)を設けてなることを特徴とする電源装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電源装置であって、
前記セパレータ(2)が上端と下端とに、角形電池セル(1)を内側に嵌着する前記嵌着突出部(15)を有し、上下の嵌着突出部(15)の間に角形電池セル(1)を配置してなることを特徴とする電源装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一に記載の電源装置であって、
前記セパレータ(2)は、その上面隅部において前記バインドバー(11)の係止折曲片(14)を受ける部分を、凹状に形成した該係止折曲片(14)を挿入可能な凹状受け部(16)を形成してなることを特徴とする電源装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一に記載の電源装置であって、
前記載置プレート(6)が、前記角形電池セル(1)の底面(23)と熱結合状態に配置される、冷媒配管(26)を配設した冷却プレート(7)であることを特徴とする電源装置。
【請求項10】
請求項1から9に記載の電源装置を備える車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−94456(P2012−94456A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242837(P2010−242837)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】