説明

電界吸収変調型の緑色レーザシステムを使用したカラー画像投影装置および方法

軽量、コンパクトな画像投影モジュールは、ラスターパターンにおける選択された画素を照明させ、高いVGA品質のカラー画像を生成する。エネルギー効率のために、そしてモジュールのサイズおよび重量を低減させるために、電界吸収変調型の緑色レーザシステムが使用される。本発明によって提供される、2次元のカラー画像を投影するための画像投影装置は、支持部と、支持部上のレーザアセンブリであって、様々な波長の複数のレーザビームから構成される合成ビームを放出するための、レーザアセンブリと、支持部から作動距離にある空間内のスキャンラインのパターンとして合成ビームを掃引するための、支持部上のスキャナであって、各スキャンラインは、多数の画素を有している、スキャナと、レーザアセンブリおよびスキャナに動作可能なように接続されたコントローラと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、低電力消費、高解像度、および小型でコンパクトなサイズおよび重量を達成するために、カラーの2次元画像を、そのような画像の投影の間に、電界吸収(electro−absorption)緑色レーザシステムを使用することによって、投影することに関する。
【背景技術】
【0002】
互いに直交する方向に振動する一対のスキャンミラーに基づいて、スクリーン上に2次元カラー画像を投影し、赤色、青色、および緑色のレーザシステムから導かれたレーザビームを、ラスターパターン上でスキャンすることが公知である。赤色および青色のレーザシステムは、固体レーザ、半導体レーザを含んでおり、これらは、容易に直接的に変調され、約100MHzの周波数でパルス発振される。しかしながら、現在利用可能な緑色の固体レーザは、そのような高い周波数ではパルス発振され得ない。結果として、緑色レーザシステムは、赤外線ダイオード励起型のYAG結晶レーザ(その出力ビームは、約1060nmの波長を有している)および非線形周波数倍増結晶(好適にはレーザキャビティ内に含まれ、約530nmの波長を有する緑色レーザビームを放出させる)を含んでいる。外部の音響光学変調器が、放出された緑色ビームをパルス発振するために使用される。
【0003】
意図された目的に対しては、ほぼ満足のいくものであるが、公知の周波数倍増、ダイオード励起、固体、外部変調型の緑色レーザシステムは、カラー画像を投影する装置のサイズ、重量、コスト、および電力消費の約半分を占めるので、小型、ハンドヘルド、バッテリー動作のアプリケーション(物理的なサイズ、重量、コスト、および電力消費が最小限に保たれなければならない)において、そのような公知の画像投影装置を使用することを非現実的なものとしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の一般的な目的は、カラー画像投影装置の電力消費、物理的なサイズ、重量、およびコストを最小化することである。
【0005】
本発明の別の目的は、カラー画像投影装置において使用するための代替的な緑色レーザシステムを提供することである。
【0006】
追加的な目的は、様々なフォームファクターの多くの機器、特にハンドヘルド機器において有用な、小型、コンパクト、軽量、高エネルギー効率の、ポータブルのカラーレーザ投影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの目的および以後明確化されるその他の目的を踏まえると、本発明の1つの特徴は、簡単に言うと、2次元のカラー画像を投影するための画像投影装置にある。この装置は、支持部;赤色、青色、および緑色のレーザビームをそれぞれ放出するための、複数の赤色、青色、および緑色のレーザ;支持部から作動距離にある空間内においてスキャンラインのパターンを掃引するためのスキャナであって、各スキャンラインは、多数の画素を有している、スキャナ;コントローラであって、レーザビームによって、選択された画素を照明させ、可視状態にし、カラー画像を生成するための、コントローラを含んでいる。
【0008】
好適な実施形態において、レーザビームを光学的に焦点合わせし、レーザビームを整列させ、スキャナに配向されるレーザビームを生成するために、光学的アセンブリが、レーザとスキャナとの間の支持部上に提供される。スキャナは、異なるスキャンレートおよび異なるスキャン角度において、ほぼ互いに直行する方向に沿って、合成レーザビームを掃引するために、一対の振動可能なスキャンミラーを含んでいる。ノイズを低減させるために、スキャンレートのうちの少なくとも1つは、可聴周波数よりも高い(例えば、18kHzよりも高い)。電力消費を最小化するために、スキャンミラーのうちの少なくとも1つは、慣性駆動部によって駆動される。画像解像度は、好適には、VGA品質の1/4よりも高いが、典型的には、VGA品質と等しいか、それよりも高い。支持部、レーザ、スキャナ、コントローラ、および光学的アセンブリは、好適には、30cm未満の体積を占める。
【0009】
装置は、様々なフォームファクターのハウジング内に交換可能なように搭載可能である。それらのハウジングは、ペン型、銃型、または懐中電灯型の機器、パーソナルデジタルアシスタント、ペンダント、時計、コンピュータ、そして、簡単に言うと、コンパクトかつ小型サイズから来る任意の形状を含むが、これらには限定されない。投影される画像は、広告目的または信号目的のために、あるいはテレビまたはコンピュータのモニタスクリーンのために、そして、簡単に言うと、何らかのものを表示する目的で使用され得る。
【0010】
本発明にしたがうと、緑色レーザは、約1060nmの波長を有する赤外線ビームを放出するためのエッジ放出赤外線レーザダイオード、この赤外線ビームを変調するための電界吸収変調器、この変調された赤外線ビームを約530nmの波長を有する緑色レーザビームに変換するための第2次高調波生成器を含んでいる。赤外線ダイオードは、好適には、変調器と共通の半導体チップ上に製造される分布帰還型レーザダイオードである。赤外線ダイオードはまた、3つのセクションの、分布Bragg反射器である。第2次高調波生成器は、好適には、周期分極反転(periodically poled)された導波体である。
【0011】
この緑色レーザは、エネルギー効率が良く、その他の緑色レーザシステムよりも遥かに低い電力を消費する。また、この緑色レーザは、その他の緑色レーザシステムよりも、軽量かつ小型サイズである。この緑色レーザは、画像投影器が、よりコンパクトなものとなり、より多くのアプリケーション(特に、ハンドヘルド機器)において使用されることを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1における参照番号10は、概略的に、ハンドヘルド機器(例えば、パーソナルデジタルアシスタント)を示しており、このハンドヘルド機器には、例えば、図2に示されているような、軽量かつコンパクトな画像投影装置20が搭載される。また、このハンドヘルド機器は、この機器からの可変距離において、2次元カラー画像を投影するように動作可能である。例えば、画像18は、機器10に対する作動距離の範囲内に配置される。
【0013】
図1に示されているように、画像18は、画像の水平方向に沿って延びている光学的水平スキャン角度Aにわたって、および画像の垂直方向に沿って延びている光学的垂直スキャン角度Bにわたって、延在している。以下に記載されているように、画像は、装置20におけるスキャナによって掃引されるスキャンラインのラスターパターン上にある、照明されている画素と照明されていない画素とから構成されている。
【0014】
機器10の平行6面体の形状は、装置20が実装され得るハウジングのフォームファクターのうちの1つを表しているに過ぎない。この機器は、例えば、米国特許第6,832,724号(この米国特許は、本出願の譲受人に譲渡されており、参照により本明細書に援用される)に示されているように、ペン、セル電話、クラムシェル、または腕時計の形状であり得る。
【0015】
好適な実施形態において、装置20は、30cm未満の体積である。このコンパクトかつ小さなサイズは、装置20が多種多様な形状、すなわち、大小の、ポータブルまたは固定式のハウジングに搭載されることを可能にする。このハウジングは、オンボードディスプレイ12、キーパッド14、および画像を投影する窓16を有しているハウジングを含む。
【0016】
図2および図3を参照すると、装置20は、固体レーザ、好適には半導体レーザ22を含んでおり、これは、活性化されたときに、約635〜655ナノメートルの明るい赤色レーザビームを放出する。レンズ24は、正の焦点距離を有する両非球面(biaspheric)の凸レンズであり、赤色ビームにおけるほぼ全てのエネルギーを収集し、回折が制限されたビームを生成するように動作可能である。レンズ26は、負の焦点距離を有する凹レンズである。レンズ24、26はそれぞれ、図示されていないレンズホルダのそれぞれによって保持されており、これらのレンズホルダは、機器10の内部の支持部(図2においては、明確化のために図示されていない)上に離れて配置されている。レンズ24、26は、作動距離にわたって赤色ビームの輪郭を整形する。
【0017】
別の固体レーザ、半導体レーザ28が、支持部上に搭載され、活性化されたときに、約475〜505ナノメートルの回折が制限された青色レーザビームを放出する。別の両非球面の凸レンズ30および凹レンズ32が、レンズ24、26と同様の方法で、青色ビームの輪郭を整形するために、使用される。
【0018】
約530ナノメートルの波長を有する緑色レーザビームは、半導体レーザによって生成されないが、代わりに、赤外線ダイオード励起型のYAG結晶レーザ(その出力ビームは、1060ナノメートルである)を有する緑色モジュール34によって、生成される。非線形周波数倍増結晶が、赤外線レーザキャビティにおいて、2つのレーザミラーの間に含まれている。キャビティの内部における赤外線レーザの出力は、キャビティの外部において結合される出力よりもはるかに大きいので、周波数倍増器は、キャビティの内部において、倍増周波数の緑色光をより効率的に生成する。レーザの出力ミラーは、1060nmの赤外線放射を反射可能であり、倍増された530nmの緑色レーザビームを伝送可能である。固体レーザおよび周波数倍増器の正確な動作は、正確な温度制御を必要とするので、Peltier効果に頼る半導体デバイスが、緑色レーザモジュールの温度を制御するために使用される。熱電気式のクーラーが、印加された電流の極性に依存して、デバイスを加熱または冷却し得る。サーミスタは、緑色レーザモジュールの温度をモニタするための、緑色レーザモジュールの一部分である。サーミスタからの読取り結果は、コントローラに供給され、このコントローラは、熱電気式クーラーへの制御電流をしかるべく調整する。
【0019】
以下に記載されるように、レーザは、約100MHzの周波数でパルス発振される。赤色および青色の半導体レーザ22、28は、そのような高い周波数で直接的にパルス発振され得るが、現在利用可能な緑色固体レーザは、そのように発振され得ない。結果として、緑色モジュール34を出て行く緑色レーザビームは、緑色ビームを回折させるために、結晶の内部に音響定常波を形成する音響光学変調器(AOM)36を用いて、パルス発振される。しかしながら、変調器36は、0次の回折されていないビーム38、および1次のパルス発振された回折されたビーム40を生成する。ビーム38、40は、それらを分離して、望ましくない0次のビーム38を除去するために、互いに分岐(diverge)する。また、ビーム38、40は、フォルディングミラー42を有する、長い折れ曲がった経路に沿って、ルーティングされる。代替的に、緑色レーザビームをパルス発振するために、電気光学変調器が、緑色レーザモジュールの内部で使用され得る。緑色レーザビームを変調するためのその他の可能な方法は、以下に記載されている電界吸収変調、またはMach−Zender干渉計を含む。
【0020】
ビーム38、40は、正のレンズ44および負のレンズ46を介してルーティングされる。しかしながら、回折された緑色ビーム40のみが、フォルディングミラー48に衝突し、フォルディングミラー48から反射されることが可能である。回折されていないビーム38は、好適には、ミラー48上に搭載されている吸収体50によって吸収される。
【0021】
装置は、一対の光2色性フィルタ52、54を含んでおり、これら一対の光2色性フィルタは、緑色、青色、および赤色のビームを、スキャニングアセンブリ60に到達する前に、できるだけ同一直線上に形成するように配置されている。フィルタ52は、緑色ビーム40が、そこを通過することを許容するが、青色レーザ28からの青色ビーム56は、干渉効果によって反射される。フィルタ54は、緑色ビーム40および青色ビーム56が、そこを通過することを許容するが、赤色レーザ22からの赤色ビーム58は、干渉効果によって反射される。
【0022】
ほぼ同一直線上にあるビーム40、56、58は、固定式のバウンスミラー62に配向され、このバウンスミラー62から反射される。スキャニングアセンブリ60は、第1のスキャンミラー64であって、慣性駆動部66(図4〜図5において分離して示されている)によって、第1のスキャンレートで振動させられ、第1の水平スキャン角度Aにわたって、バウンスミラー62から反射されたレーザビームを掃引する、第1のスキャンミラー64と、第2のスキャンミラー68であって、電磁駆動部70によって、第2のスキャンレートで振動させられ、第2の垂直スキャン角度Bにわたって、第1のスキャンミラー64から反射されたレーザビームを掃引する、第2のスキャンミラー68と、を含んでいる。バリアントの構成において、スキャンミラー64、68は、単一の2軸ミラーによって置換され得る。
【0023】
慣性駆動部66は、高速であって低電力消費型のコンポーネントである。慣性駆動部の詳細は、米国特許出願公開第10/387,878号(2003年3月13日出願)(この米国特許出願は、本出願の譲受人に譲渡されており、参照により本明細書に援用されている)において見出すことができる。以下に記載されているように、慣性駆動部の使用は、スキャニングアセンブリ60の電力消費を1ワット未満に低減させ、カラー画像を投影する場合には、10ワット未満に低減させる。
【0024】
駆動部66は、ヒンジによってスキャンミラー64を支持するための可動フレーム74を含んでいる。このヒンジは、一対の同一直線上のヒンジ部分76、78を含んでおり、これらヒンジ部分は、ヒンジ軸に沿って延びており、スキャンミラー64の対向領域とフレームの対向領域との間に接続される。図示されているように、フレーム74は、必ずしもスキャンミラー64を囲んでいるとは限らない。
【0025】
フレーム、ヒンジ部分、およびスキャンミラーは、ワンピースの、ほぼ平面状の、厚さが約150μであるシリコン基板から製造される。このシリコンは、オメガ形状のスロット(上部の平行なスロット部分、下部の平行なスロット部分、および中央のU字形状のスロット部分を有している)を形成するためにエッチングされる。スキャンミラー64は、好適には楕円形状を有しており、スロット部分において自由に動くことができる。好適な実施形態において、楕円形状のスキャンミラーの軸に沿った寸法は、749μ×1600μである。各ヒンジ部分は、幅27μおよび長さ1130μである。フレームは、長方形の形状を有しており、幅3100μおよび長さ4600μである。
【0026】
慣性駆動部は、ほぼ平面状の印刷回路基板80上に搭載され、フレームを直接的に動かしたり、慣性によって、ヒンジ軸のまわりでスキャンミラー64を間接的に振動させたりするように動作可能である。慣性駆動部の一実施形態は、一対の圧電トランスデューサ82、84を含み、この一対の圧電トランスデューサは、基板80に対して垂直に延びており、ヒンジ部分76のいずれかの側において、フレーム74の間隔を空けられた部分(spaced apart portion)と接触する。各トランスデューサの1つの端部と各フレーム部分との間の永久的な接触を保証するために、接着剤が使用され得る。各トランスデューサの対向する端部は、基板80の後方から突出しており、ワイヤ86、88によって、周期交流電源(図示されず)に電気的に接続されている。
【0027】
使用中、周期的な信号は、各トランスデューサに周期的な駆動電圧を印加し、トランスデューサの長さを交互に伸縮させる。トランスデューサ82が伸びているとき、トランスデューサ84は収縮し、その逆に、トランスデューサ84が伸びているとき、トランスデューサ82は収縮する。このようにして、間隔を空けられたフレーム部分を同時に押し引きして、フレームをヒンジ軸のまわりで捩れさせる。駆動電圧は、スキャンミラーの共振周波数に対応する周波数を有している。スキャンミラーは、初期の休止位置から、共振周波数でヒンジ軸のまわりを振動するまで、動かされる。好適な実施形態において、フレームおよびスキャンミラーは、約150μの厚さであり、スキャンミラーは高いQ係数を有している。各トランスデューサによる約1μの運動は、20kHzより高いスキャンレートにおけるスキャンミラーの振動を引き起こし得る。
【0028】
別の一対の圧電トランスデューサ90、92は、基板80に対して垂直に延びており、ヒンジ部分78のいずれかの側において、フレーム74の間隔を空けられた部分と永久的に接触する。トランスデューサ90、92は、フィードバックデバイスとしての機能を担っており、フレームの振動運動をモニタし、電気的フィードバック信号を生成し、この電気的フォードバック信号を、ワイヤ94、96に沿って、フィードバック制御回路に伝導する。
【0029】
代替的に、フィードバックのために、圧電トランスデューサ90、92を使用する代わりに、磁気的なフィードバックが使用され得る。磁気的なフィードバックにおいては、高速ミラーの背後に磁石が搭載され、振動する磁石によって生成された可変磁場をピックアップするために、外部コイルが使用される。
【0030】
光はスキャンミラーの外表面から反射され得るが、ミラー64の表面を、金、銀、アルミニウムから構成された鏡面反射コーティング、または特別に設計された高い反射性の誘電性のコーティングを用いて、コーティングすることが望ましい。
【0031】
電磁駆動部70は、第2のスキャンミラー68と一緒にその背後に搭載されている永久磁石と、周期的な駆動信号の受信に応答して、周期的な磁場を生成するように動作可能な電磁コイル72とを含んでいる。周期的な場が、磁石の永久磁場と磁気的に相互作用し、磁石、ひいては第2のスキャンミラー68を振動させることができるように、駆動コイル72は、磁石に隣接している。
【0032】
慣性駆動部66は、好適には5kHzよりも高い、より好適には約18kHz以上の高速のスキャンレートで、スキャンミラー64を振動させる。この高速スキャンレートは、不可聴周波数であり、それゆえにノイズおよび振動を最小化させる。電磁駆動部70は、約40Hzの低速のスキャンレートで、スキャンミラー68を振動させる。この低速のスキャンレートは、過剰なフリッカを伴わずに画像が人間の目の網膜に残存することを可能にするためには、十分速いスキャンレートである。
【0033】
高速ミラー64が水平スキャンラインを掃引し、低速ミラー68が水平スキャンラインを垂直に掃引し、これにより、ラスターパターンを形成する。このラスターパターンは、画像を構成するほぼ平行なスキャンラインの格子または列である。各スキャンラインは、多数の画素を有している。画像の解像度は、好適には、1024×768画素のXGA品質である。制限された作動範囲にわたって、高精細度のテレビ標準規格、すなわち720p、1270×720画素が表示され得る。一部のアプリケーションにおいては、この1/2の320×480画素のVGA品質、またはこの1/4の320×240画素のVGA品質で十分である。最小でも、160×160画素の解像度が望ましい。
【0034】
ミラー64、68の役割は、ミラー68が高速、ミラー64が低速というように、逆転可能であり得る。ミラー64はまた、垂直スキャンラインを掃引するように設計され得、この場合、ミラー68は、水平スキャンラインを掃引し得る。また、慣性駆動部は、ミラー68を駆動させるように使用され得る。特にミラーは、電気機械的、電気的、機械的、静電気的、磁気的、または電磁気的な駆動部のうちのいずれかによって駆動され得る。
【0035】
低速ミラーは、画像が表示される間に、一定速度の掃引モードで動作される。ミラーの戻りの間に、このミラーは、かなり高い固有周波数で、最初の位置を掃引する。ミラーの戻り行程の間に、レーザは、デバイスの電力消費を低減させるために、オフにされ得る。
【0036】
図6は、図2と同じ視点における、装置20の実際の実装である。上述のコンポーネントは、トップカバー100および支持平面102を含む支持部に搭載されている。ホルダ104、106、108、110、112のそれぞれは、フォルディングミラー42、48、フィルタ52、54、およびバウンスミラー62を、相互配列(mutual alignment)において保持している。各ホルダは、支持部に固定するように搭載された配置ポストを受容するための、複数の配置スロットを有している。このようにして、ミラーおよびフィルタが、正確に配置される。示されているように、3つのポストが存在しており、これらによって、2つの角度調整と、1つの横方向の調整とが可能である。各ホルダは、その最終的な位置に接着され得る。
【0037】
画像は、1つ以上のスキャンラインにおける画素の選択的な照明によって構成される。図7を参照して以下に詳細に記載されるように、コントローラ114は、3つのレーザビームによって、ラスターパターンにおける選択された画素を照明させ、可視状態にする。例えば、赤色、青色、および緑色の電力コントローラ116、118、120のそれぞれは、赤色、青色、および緑色のレーザ22、28、34に電流を伝導し、これらのレーザを活性化し、選択された各画素においてそれぞれの光ビームを放出すること、ならびに赤色、青色、および緑色のレーザに電流を伝導せずに、これらのレーザを不活性化し、その他の選択されていない画素を照明させない。照明された画素および照明されなかった画素の結果として得られたパターンは、人間または機械によって読取り可能な情報またはグラフィックに関する任意の表示であり得る画像を含んでいる。
【0038】
図1を参照すると、ラスターパターンが、拡大図で示されている。レーザビームは、ある端点から開始して、慣性駆動部によって、水平方向に沿って、所定の水平スキャンレートで、反対の端点まで掃引され、スキャンラインを形成する。その後、レーザビームは、電磁駆動部70によって、垂直方向に沿って、所定の垂直スキャンレートで、別の端点まで掃引され、第2のスキャンラインを形成する。その後のスキャンラインの形成は、同じ方法で行われる。
【0039】
マイクロプロセッサ114または制御回路の制御のもとで、電力コントローラ116、118、120の動作によって、レーザを変調するか、またはレーザを選択された回数だけオンおよびオフにパルス発振することにより、ラスターパターンにおいて画像が形成される。所望の画像における画素が可視であることが所望されるときにのみ、レーザは、可視光を生成し、オンにされる。各画素の色は、ビームの1つ以上の色によって決定される。可視光のスペクトルにおける任意の色は、赤色、青色、および緑色のレーザのうちの1つ以上を選択的に重ね合わせることにより、形成され得る。ラスターパターンは、各ライン上の複数の画素および複数のラインから構成された格子である。画像は、選択された画素のビットマップである。全ての文字または数字、任意のグラフィカルデザインまたはロゴ、および機械読取り可能なバーコード記号さえも、ビットマップ画像として形成され得る。
【0040】
図7に示されているように、入ってくるビデオ信号は、垂直および水平の同期化データならびに画素およびクロックのデータを有しており、マイクロプロセッサ114の制御のもとで、赤色、青色、および緑色のバッファ122、124、126に送信される。1つのフルVGAフレームの格納は、多くのキロバイトを必要とし、1つのフレームが書き込まれている間に、別のフレームが処理および投影されることを可能にするために、バッファにおいて、2つのフルフレームのための十分なメモリを有していることが望ましい。バッファされたデータは、スピードプロファイラ130の制御のもとで、フォーマッタ128、ならびに赤色、青色、および緑色のルックアップテーブル(LUT)132、134、136に送信され、スキャニングによって引き起こされた固有の内部歪み、ならびに投影された画像の表示角度によって引き起こされた幾何学的歪みを補正する。結果として得られた赤色、青色、および緑色のデジタル信号は、デジタルアナログ変換器(DAC)138、140、142によって、赤色、青色、および緑色のアナログ信号に変換される。赤色および青色のアナログ信号は、赤色および青色のレーザドライバ(LD)144、146に供給され、これらはまた、赤色および青色の電力コントローラ116、118にも接続されている。緑色アナログ信号は、音響光学変調器(AOM)無線周波数(RF)ドライバ150に、そして緑色レーザ34に供給され、これはまた、緑色LD148に、そして緑色電力コントローラ120にも接続されている。
【0041】
フィードバック制御もまた、図7に示されており、赤色、青色、および緑色のアナログデジタル(A/D)変換器158、160、162、そしてマイクロコントローラ114に接続された、赤色、青色、および緑色のフォトダイオード増幅器152、154、156を含んでいる。A/D変換器166、そしてマイクロプロセッサに接続されたサーミスタ増幅器164によって、熱がモニタされる。
【0042】
スキャンミラー64、68は、ドライバ168、170によって駆動され、これらには、DAC172、174からのアナログ駆動信号が供給される。これらのDAC172、174は、マイクロコントローラに接続されている。フィードバック増幅器176、178は、スキャンミラー64、68の位置を検出し、フィードバックA/D180、182、そしてマイクロプロセッサに接続されている。
【0043】
電力管理回路184は、電力を最小化する一方で、好適には、緑色レーザを常にオンに維持し、赤色および青色のレーザの電流をレージング閾値未満に維持することによって、高速オンタイム(fast on−times)を可能にするように、動作可能である。
【0044】
レーザ安全停止回路186は、スキャンミラー64、68のいずれか一方が、適切な位置から外れていることが検出された場合に、レーザをオフにするように動作可能である。
【0045】
上述のように、赤外線ダイオード励起YAG結晶レーザおよび非線形周波数倍増結晶を有する緑色モジュール34、ならびに電気光学変調器36は、画像投影装置20のサイズ、重量、コスト、および電力消費の約半分を占めている。図9は、代替的な緑色レーザシステムを概略的に示しており、この緑色レーザシステムは、サイズ、重量、および電力消費を低減させ、装置20を、例えば機器10のようなハンドヘルドアプリケーションに対してより適したものとする。図8は、図9のシステムの詳細を示している。
【0046】
代替的な緑色レーザシステムは、約1060nmの波長を有する赤外線ビームを放出するための、赤外線レーザ200を含んでいる。レーザ200は、好適には、波長安定型(wavelength stabilized)のエッジ放出レーザダイオードであり、これは、図8に示されているように、半導体チップまたは基板202上の導波体を用いて製造された分布帰還型(DFB)レーザである。レーザ200はまた、分布Bragg反射器(DBR)レーザでもあり得る。
【0047】
電界吸収変調器(EAM)204は、レーザダイオード200によって放出される赤外線ビームの強度が、Frantz−Keldysh効果に基づいて、電圧を介して制御されることを可能にする半導体である。EAM204は、電極を有する変調器の導波体を含んでおり、この電極は、そこからの光学的な伝送を制御するために、変調された赤外線ビームに垂直な方向に、電場を印加する。AOM36と比較すると、EAM204は、遥かに低い電圧で動作し、遥かに低い電力を必要とし、非常に高い変調スピードで動作する。数十ギガヘルツの変調帯域幅が達成され得る。
【0048】
都合の良いことに、EAM204は、同じチップ202上で、DFBレーザダイオードと統合される。EAMは、分離したチップであり得るが、そのような統合は、EAMバンドギャップに対するレーザ波長の良好なマッチングを可能にし、別個のチップの間の整列の必要性を排除する。図8に示されているようなテーパは、レーザダイオードによって放出された赤外線ビームを、下部のEAM導波体と結合させる。
【0049】
EAM204によって出力された変調されたビームは、第2次高調波生成器(SHG)結晶に結合され、このSHGは、バルクデバイス(例えば、KTP)、または図9に示されているような導波体206であり得る。導波体は、その高い変換効率のために好適であり、好適には、長い周期分極反転されたニオブ酸リチウム(PPLN)の導波体が、約1060nmの波長を有している、入って来る変調された赤外線ビームを、約530nmの波長を有している、出て行く変調された緑色ビームに変換するために使用される。
【0050】
赤外線ビームの波長の安定性を維持するために、熱電気式のクーラー208が使用され、レーザ200を一定の温度に維持する。同様に、SHG導波体206の温度を安定させることも必要であり得る。
【0051】
赤外線から緑色ビームへの変換は、赤外線レーザビームの出力電力の強度の2乗に比例し、EAMによって実行される変調は、緑色レーザ出力の線形のバリエーションが所望される場合に、較正され得る。
【0052】
新規であって、特許証によって保護されることが望まれるものとして請求されている内容は、添付の請求の範囲に述べられている。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、ハンドヘルド機器の斜視図であり、このハンドヘルド機器は、そこからの作動距離において画像を投影する。
【図2】図2は、図1の機器に取り付けるための画像投影装置の、拡大された、上から見た、斜視図である。
【図3】図3は、図2の装置の平面図である。
【図4】図4は、図2の装置において使用するための慣性駆動部の前方から見た斜視図である。
【図5】図5は、図4の慣性駆動部の後方から見た斜視図である。
【図6】図6は、図2の装置の実際の実装の斜視図である。
【図7−1】図7は、図2の装置の動作を示す電気回線図である。
【図7−2】図7は、図2の装置の動作を示す電気回線図である。
【図8】図8は、本発明にしたがう代替的な緑色レーザの詳細の斜視図である。
【図9】図9は、図2の装置において使用するための代替的な緑色レーザシステムのブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元のカラー画像を投影するための画像投影装置であって、
a)支持部と、
b)該支持部上のレーザアセンブリであって、様々な波長の複数のレーザビームから構成される合成ビームを放出するための、レーザアセンブリと、
c)該支持部から作動距離にある空間内においてスキャンラインのパターンとして該合成ビームを掃引するための、該支持部上のスキャナであって、各スキャンラインは、多数の画素を有している、スキャナと、
d)該レーザアセンブリおよび該スキャナに動作可能なように接続されたコントローラであって、レーザビームによって、選択された画素を照明させ、可視状態にし、該画像を生成するための、コントローラと
を備えており、
e)該レーザアセンブリは、ある波長を有する赤外線ビームを放出するためのエッジ放出レーザダイオード、該赤外線ビームを変調するための電界吸収変調器、および該赤外線の変調されたビームの波長を半分にし、該複数のレーザビームのうちの1つとして緑色レーザビームを生成するための、第2次高調波生成器を含んでいる、画像投影装置。
【請求項2】
前記レーザアセンブリは、赤色および青色の、固体レーザ、半導体レーザを含んでおり、該赤色および青色の、固体レーザ、半導体レーザのそれぞれは、赤色および青色のレーザビームを生成する、請求項1に記載の画像投影装置。
【請求項3】
前記スキャナは、第1のスキャン角度にわたって、第1のスキャンレートで、第1の方向に沿って前記合成ビームを掃引するための、第1の振動可能なスキャンミラーと、該第1のスキャン角度とは異なる第2のスキャン角度で、該第1のスキャンレートとは異なる第2のスキャンレートで、該第1の方向に対して実質的に垂直な第2の方向に沿って該合成ビームを掃引するための、第2の振動可能なスキャンミラーとを含んでいる、請求項1に記載の画像投影装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記レーザアセンブリを活性化し、前記選択された画素を照明させ、該レーザアセンブリを不活性化し、該選択された画素以外の画素を照明しない手段を含んでいる、請求項1に記載の画像投影装置。
【請求項5】
前記レーザアセンブリと前記スキャナとの間の、前記支持部上の光学的アセンブリをさらに含んでおり、該光学的アセンブリは、前記レーザビームを焦点合わせし、同一直線上に整列させ、前記合成ビームを形成する、請求項1に記載の画像投影装置。
【請求項6】
前記エッジ放出レーザダイオードは、約1060ナノメートルの波長を有する赤外線ビームを放出するための、分布帰還型レーザダイオードである、請求項1に記載の画像投影装置。
【請求項7】
前記エッジ放出レーザダイオードおよび前記電界吸収変調器は、共通の半導体チップ上に統合されている、請求項1に記載の画像投影装置。
【請求項8】
前記第2次高調波生成器は、前記赤外線ビームの波長を前記緑色レーザビームの波長に変換するための、分極された導波体を含んでいる、請求項1に記載の画像投影装置。
【請求項9】
前記エッジ放出レーザダイオードの温度を制御するための、熱電気式クーラーをさらに含んでいる、請求項1に記載の画像投影装置。
【請求項10】
可変距離において、2次元のカラー画像を投影するための方法であって、
a)様々な波長の複数のレーザビームから構成される合成ビームを放出するステップと、
b)空間内においてスキャンラインのパターンとして該合成ビームを掃引するステップであって、各スキャンラインは、多数の画素を有している、ステップと、
c)該レーザビームによって、選択された画素を照明させ、可視状態にし、該画像を生成するステップと
を包含し、
d)該放出するステップは、ある波長を有する赤外線ビームを電界吸収変調することによって、そして該赤外線ビームの波長を半分にし、該複数のレーザビームのうちの1つとして緑色レーザビームを生成することによって実行される、方法。
【請求項11】
前記赤外線ビームは、エッジ放出赤外線レーザダイオードによって放出され、前記変調するステップは、電界吸収変調器によって実行され、該赤外線ダイオードおよび該変調器を共通の半導体チップ上に製造するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記半分にするステップは、前記変調された赤外線ビームを、分極された導波体を通過させることによって、前記赤外線ビームの波長を前記緑色レーザビームの波長に変換することによって実行される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記赤外線ダイオードの温度を制御することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
a)エッジ放出レーザダイオードであって、約1060ナノメートルの波長を有している赤外線を放出するための、エッジ放出レーザダイオードと、
b)電界吸収変調器であって、該赤外線ビームを変調し、変調された赤外線ビームを形成するための、電界吸収変調器と、
c)第2次高調波生成器であって、該変調された赤外線ビームの波長を半分にし、約530ナノメートルの波長を有している緑色レーザビームを生成するための、第2次高調波生成器と
を備えている、電界吸収変調型の緑色レーザシステム。
【請求項15】
前記エッジ放出レーザダイオードおよび前記電界吸収変調器は、共通の半導体チップ上に統合されている、請求項14に記載の電界吸収型の緑色レーザシステム。
【請求項16】
前記第2次高調波生成器は、前記赤外線ビームの波長を前記緑色ビームの波長に変換するための、分極された導波体を含んでいる、請求項14に記載の電界吸収変調型の緑色レーザシステム。
【請求項17】
前記エッジ放出レーザダイオードの温度を制御するための、熱電気式クーラーをさらに含んでいる、請求項14に記載の電界吸収変調型の緑色レーザシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−510518(P2009−510518A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533367(P2008−533367)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/034014
【国際公開番号】WO2007/037908
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(506144101)シンボル テクノロジーズ, インコーポレイテッド (58)
【Fターム(参考)】