説明

電線格納装置およびそれを搭載する車両

【課題】コードリールから受電用コードを引き出す際の引き出し力を一定にする。
【解決手段】電力を伝達するための受電用コード250を収納するためのコードリール600は、ドラム610と、バネ装置660と、抵抗付加装置630とを備える。ドラム610は、収納時に受電用コード250が周囲に巻回される。バネ装置660は、ドラム610に取付けられ、ドラム610に受電用コード250を巻き取るための巻取トルクを与える。抵抗付加装置630は、ドラム610の回転に対する抵抗力を可変に調整できるように構成される。そして、抵抗付加装置630は、受電用コード250をドラム610から引き出すときに必要となるトルクが略一定となるように抵抗力を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線格納装置およびそれを搭載する車両に関し、より特定的には、電線格納装置に格納されたコード引出トルクの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に配慮した車両として、蓄電装置(たとえば二次電池やキャパシタなど)を搭載し、蓄電装置に蓄えられた電力から生じる駆動力を用いて走行する車両が注目されている。このような車両には、たとえば電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池車などが含まれる。そして、これらの車両に搭載される蓄電装置を発電効率の高い商用電源により充電する技術が提案されている。
【0003】
ハイブリッド車においても、電気自動車と同様に、車両外部の電源(以下、単に「外部電源」とも称する。)から車載の蓄電装置の充電(以下、「外部充電」とも称する。)が可能な車両が知られている。たとえば、家屋に設けられた電源コンセントと車両に設けられた充電口とを受電用コードで接続することにより、一般家庭の電源から蓄電装置の充電が可能ないわゆる「プラグイン・ハイブリッド車」が知られている。これにより、ハイブリッド自動車の燃料消費効率を高めることが期待できる。
【0004】
このような受電用コードを用いた外部充電において、外部充電を行なわない場合にこの受電用コードを巻き取って収納しておくための電線格納装置(たとえば、コードリール)が用いられる場合がある。
【0005】
特開2010−075611号公報(特許文献1)には、受電用コードを巻き取るためのコードリールの回転軸が駆動用電動機と電磁クラッチを介して直結された構成を有する電気掃除機が開示される。この掃除機においては、受電用コードのプラグがコンセントに接続されている場合にはクラッチをオンとする一方で、受電用コードのプラグがコンセントに接続されていないときにはクラッチをオフとすることで、受電用コードを引き出す際に駆動用電動機のために引出力が増大して使い勝手が悪くなることを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−075611号公報
【特許文献2】特開2002−226143号公報
【特許文献3】特開平9−327422号公報
【特許文献4】特公昭61−33779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなコードリールにおいては、受電用コードを巻き取るため、ならびに受電用コードの引き出しおよび巻き取りの際に受電用コードの巻緩みが生じないようにするために、受電用コードが巻き取られるドラムに対して、バネ等によって受電用コードが巻き取られる方向に力が付勢される場合がある。
【0008】
この場合、ケーブルが引き出されるとともにこの巻取方向の力が変動してしまう。このように、受電用ケーブル引き出しの際に引出力が一定でないと、使用者に不快感を与えるおそれがある。
【0009】
特開2010−075611号公報(特許文献1)の構成においては、駆動用電動機との結合にともなう受電用コードの引出力の増大は抑制されるが、受電用コードの引き出しの際に引出力を一定にすることについては考慮されていなかった。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、受電用コードの引出力を一定にすることができるコードリールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による電線格納装置は、ドラムと、弾性機構と、抵抗付加装置とを備え、電力を伝達するためのコードを収納する。ドラムは、収納時にコードが周囲に巻回される。弾性機構は、ドラムに取り付けられ、ドラムにコードを巻き取るための巻取トルクを与える。抵抗付加装置は、ドラムの回転に対する抵抗力を可変に調整できるように構成される。そして、抵抗付加装置は、コードをドラムから引き出すときに必要となるトルクが略一定となるように抵抗力を調整する。
【0012】
好ましくは、弾性機構は、コードが引き出されるにつれて巻取トルクが増加するように構成される。そして、抵抗付加装置は、コードの引出量に応じて抵抗力を調整する。
【0013】
好ましくは、抵抗付加装置は、予め定められた基準トルクと巻取トルクとの差に相当するトルクが発生されるように抵抗力を調整する。
【0014】
好ましくは、抵抗付加装置は、ドラムの回転にともなって回転させられるギヤ機構と、ギヤ機構と係合し、ドラムの回転にともなってドラムとの接触圧を変化させることによって抵抗力を調整するように構成された接触部とを含む。
【0015】
好ましくは、抵抗付加装置は、ドラムに押付力を付与することが可能に構成されたロッドを有するシリンダを含む。シリンダは、ドラムの回転にともなってロッドとドラムとの間の押付力を変化させることによって抵抗力を調整する。
【0016】
好ましくは、抵抗付加装置は、クラッチおよびブレーキの少なくともいずれかを有する摩擦係合装置を含む。摩擦係合装置は、ドラムの回転にともなって係合力を変化させることによって抵抗力を調整する。
【0017】
好ましくは、抵抗付加装置は、ドラムに回転トルクを供給するための電動機を含む。電動機は、ドラムの回転にともなって回転トルクを変化させることによって抵抗力を調整する。
【0018】
好ましくは、電線格納装置は、コードが引き出されてドラムが回転することによって発電する発電機をさらに備える。
【0019】
好ましくは、電線格納装置は、発電機により発電された電力を充電するためのバッテリをさらに備える。
【0020】
好ましくは、電線格納装置は、発電機により発電された電力を用いて、操作者に対してコードの引き出しに関する状態を通知するための通知装置をさらに備える。
【0021】
本発明による車両は、外部電源からの電力を用いて充電が可能な蓄電装置を搭載した車両であって、外部電源からの電力を蓄電装置へ伝達するためのコードと、コードを収納するための電線格納装置とを備える。電線格納装置は、収納時にコードが周囲に巻回されるドラムと、弾性機構と、抵抗付加装置とを含む。弾性機構は、ドラムに取り付けられ、ドラムにコードを巻き取るための巻取トルクを与える。抵抗付加装置は、ドラムの回転に対する抵抗力を可変に調整できるように構成される。そして、抵抗付加装置は、コードをドラムから引き出すときに必要となるトルクが略一定となるように抵抗力を調整する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、コードリールから受電用コードを引き出す際の引出力を一定にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施の形態に従うコードリールが搭載された車両の全体ブロック図である。
【図2】本実施の形態に従うコードリールの概略図である。
【図3】受電用ケーブルを引き出した場合の、弾性装置による引出トルクの変化を説明するための図である。
【図4】本実施の形態における引出力一定制御の概要を説明するための図である。
【図5】図2におけるA−A断面の一部を示す図である。
【図6】図2におけるB−B断面の一部を示す図である。
【図7】抵抗付加装置の他の例における構成を示す図である。
【図8】抵抗付加装置のさらに他の例の構成を示す図である。
【図9】図2における制御装置の回路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0025】
図1は、本実施の形態に従う電線格納装置であるコードリール600が搭載された車両100の全体ブロック図である。
【0026】
図1を参照して、車両100は、蓄電装置110と、システムメインリレー(System Main Relay:SMR)と、駆動装置であるPCU(Power Control Unit)120と、モータジェネレータ130と、動力伝達ギヤ140と、駆動輪150と、車両ECU(Electronic Control Unit)300とを備える。
【0027】
蓄電装置110は、充放電可能に構成された電力貯蔵要素である。蓄電装置110は、たとえば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池または鉛蓄電池などの二次電池、あるいは電気二重層キャパシタなどの蓄電素子を含んで構成される。
【0028】
蓄電装置110は、電力線PL1および接地線NL1を介してPCU120に接続される。そして、蓄電装置110は、車両100の駆動力を発生させるための電力をPCU120に供給する。また、蓄電装置110は、モータジェネレータ130で発電された電力を蓄電する。蓄電装置110の出力はたとえば200V程度である。
【0029】
SMRに含まれるリレーは、蓄電装置110とPCU120とを結ぶ電力線PL1および接地線NL1にそれぞれ介挿される。そして、SMRは、車両ECU300からの制御信号SE1に基づいて、蓄電装置110とPCU120との間での電力の供給と遮断とを切替える。
【0030】
PCU120は、いずれも図示しないが、蓄電装置110からの電源電圧を昇圧するためのコンバータや、コンバータにより昇圧された直流電力を、モータジェネレータ130を駆動するための交流電力に変換するためのインバータなどを含んで構成される。
【0031】
これらのコンバータおよびインバータは、車両ECU300からの制御信号PWC,PWIによってそれぞれ制御される。
【0032】
モータジェネレータ130は交流回転電機であり、たとえば、永久磁石が埋設されたロータを備える永久磁石型同期電動機である。
【0033】
モータジェネレータ130の出力トルクは、減速機や動力分割機構を含んで構成される動力伝達ギヤ140を介して駆動輪150に伝達されて、車両100を走行させる。モータジェネレータ130は、車両100の回生制動動作時には、駆動輪150の回転力によって発電することができる。そして、その発電電力は、PCU120によって蓄電装置110の充電電力に変換される。
【0034】
なお、図1においては、モータジェネレータが1つ設けられる構成が示されるが、モータジェネレータの数はこれに限定されず、モータジェネレータを複数設ける構成としてもよい。
【0035】
また、モータジェネレータ130の他にエンジン(図示せず)が搭載されたハイブリッド自動車では、このエンジンおよびモータジェネレータ130を協調的に動作させることによって、必要な車両駆動力が発生される。この場合、エンジンの回転による発電電力を用いて、蓄電装置110を充電することも可能である。
【0036】
すなわち、本実施の形態における車両100は、車両駆動力発生用の電動機を搭載する車両を示すものであり、エンジンおよび電動機により車両駆動力を発生するハイブリッド自動車、またはエンジンを搭載しない電気自動車および燃料電池自動車などを含む。
【0037】
車両ECU300は、いずれも図1には図示しないがCPU(Central Processing Unit)、記憶装置および入出力バッファを含み、各センサ等からの信号の入力や各機器への制御信号の出力を行なうとともに、車両100および各機器の制御を行なう。なお、これらの制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
【0038】
車両ECU300は、PCU120、SMRなどを制御するための制御信号を生成して出力する。なお、図1においては、車両ECU300を1つの制御装置を設ける構成としているが、たとえば、PCU120用の制御装置や蓄電装置110用の制御装置などのように、機能ごとまたは制御対象機器ごとに個別の制御装置を設ける構成としてもよい。
【0039】
車両100は、外部電源500Aからの電力によって蓄電装置110を充電するための構成として、インレット270と、充電装置200と、リレーRY2とを含む。
【0040】
インレット270は、車両100の外表面に設けられた受電ポート280に設けられる。また、受電ポート280には、外部充電を行なわないときにインレット270を覆うための、開閉可能な蓋部(以下、「リッド」とも称する。)285が結合される。
【0041】
インレット270には、充電ケーブル400の充電コネクタ410が接続される。そして、外部電源500Aからの電力が、充電ケーブル400を介して車両100に伝達される。
【0042】
充電ケーブル400は、充電コネクタ410に加えて、外部電源500Aのコンセント510Aに接続するためのプラグ420と、充電コネクタ410およびプラグ420とを接続する電線部430とを含む。なお、電線部430には、外部電源500Aからの電力の供給および遮断を切替えるための充電回路遮断装置(図示せず)が含まれるようにしてもよい。
【0043】
インレット270は、電力線ACL1,ACL2を介して、充電装置200に接続される。
【0044】
また、車両100は、外部電源500Bからの電力によって蓄電装置110を充電するための他の経路として、受電用コード250と、電線格納装置であるコードリール600とをさらに備える。
【0045】
受電用コード250の一方端には、外部電源500Bのコンセント510Bに接続するためのプラグ260が接続される。また、受電用コード250の他方端は、充電装置200に接続された電力線ACL3,ACL4に接続される。
【0046】
また、電力線ACL3,ACL4は、リレーRY3を介して、電力線ACL1,ACL2に接続される。リレーRY3は、車両ECU300からの制御信号SE3により制御される。リレーRY3は、受電用コード250を用いた外部充電が行なわれる場合に電気的に接続され、受電用コード250を用いた外部充電が行なわれない場合には非接続とされる。
【0047】
受電用コード250は、外部充電が行なわれないときには、コードリール600に巻き取られて収納される。そして、受電用コード250を用いて外部充電が行なわれる際には、車両100の外表面に設けられた受電ポート240の引出口(図示せず)から引き出される。そして、プラグ260がコンセント510Bに接続されることによって、外部電源500Bからの電力が車両100に伝達される。
【0048】
なお、図1においては、充電ケーブル400を用いる場合、および受電用コード250を用いる場合で、それぞれ外部電源500Aのコンセント510Aおよび外部電源500Bのコンセント510Bに接続される構成を示すが、外部電源500Aおよび500Bの電源電圧は同じ電圧としてもよいし、異なる電圧としてもよい。異なる電圧とする場合には、たとえば、外部電源の電圧が200Vの場合は充電ケーブル400を用いるようにし、外部電源の電圧が100Vの場合は受電用コード250を用いるようにしてもよい。
【0049】
また、受電ポート240には、外部充電を行なわないときに引出口を覆うための、開閉可能なリッド245が結合される。
【0050】
コードリール600は、たとえば、受電用コード250が周囲に巻回されるように構成されたドラム形状の巻取装置である。
【0051】
充電装置200は、電力線ACL1,ACL2を介して、インレット270に接続される。また、充電装置200は、リレーRY2を介して、電力線PL2および接地線NL2によって蓄電装置110に接続される。
【0052】
充電装置200は、インレット270または受電用コード250から供給される交流電力を、蓄電装置110の充電電力に変換する。
【0053】
図2は、本実施の形態に従うコードリール600の概略図である。
図2を参照して、コードリール600は、ドラム610と、モータ620と、抵抗付加装置630と、制御装置650とを備える。
【0054】
ドラム610には、円筒状の胴部が設けられ、その胴部に受電用コード250が巻回される。そして、受電用コード250を用いて外部充電が行なわれるときには、ドラム610に巻回された受電用コード250が引き出される。また、外部充電が行なわれないときには、ドラム610は、受電用コード250を巻き取って収納する。
【0055】
ドラム610の回転軸612には弾性装置660が取り付けられる。この弾性装置660は、たとえば図2のような渦巻状のバネにより構成され、ドラム610に対して受電用コード250が巻き取られる方向へ巻取トルクが加えられるように構成される。なお、図2に示した弾性装置660の形状は一例であり、上述のような巻取トルクを生じさせることができれば、たとえばらせん状のバネや、つるまきバネを用いる構成であってもよい。あるいは、弾性装置660は、所望の弾性力を生じるものであれば、バネ以外の構成であってもよく、たとえば弾性ゴムなどを用いることも可能である。
【0056】
この弾性装置660によって生じる巻取トルクは、受電用コード250をドラム610に巻き取るため、および受電用コード250の引出時に受電用コード250が巻緩むことを防止するために与えられる。そして、この巻取トルクは、弾性装置660の特性上、一般的に受電用コード250の引出量によって変化する。
【0057】
図3は、受電用コード250の引出量と引出トルクとの関係を説明するためのグラフである。図3に示されるように、受電用コード250の引き出しに必要とされる引出トルクは、受電用コード250の引出量が多くなるにつれて、すなわち収納状態からのドラム610の回転量が大きくなるにつれて大きくなり、受電用コード250の最大引出量Lmaxにおいて最大引出トルクTmaxとなる(図3の曲線W1)。なお、引出時および巻取時では、図3に示すように一般的にヒステリシスを有する。
【0058】
しかしながら、使用者にとっては、受電用コード250の引出トルクはできるだけ均一であることが好ましく、そのため、このような引出トルクの変動は使用者に対して不快感を与えてしまうおそれがある。
【0059】
そこで、本実施の形態においては、図4に示すように、上述の最大引出トルクTmaxと、弾性装置660により与えられる巻取トルクとの差に相当するトルクを追加することによって、受電用コード250の引出量の全域にわたって引出トルクをほぼ一定に維持する引出力一定制御を行なう。
【0060】
再び図2を参照するとともに図5および図6を参照して、本実施の形態において、上記の引出力一定制御を実現するための構成について説明する。図5は図2におけるA−A断面の一部を示す図であり、図6は図2におけるB−B断面の一部を示す図である。
【0061】
モータ620の回転軸には、ギヤ機構であるギヤ621,622が設けられる。ギヤ621はドラム610の側面に設けられたギヤ611と係合可能に配置される。ギヤ621は、受電用コード250がドラム610から引き出される際に、ギヤ611からの回転力を受けて回転する。これによって、ギヤ621は、モータ620の回転軸を回転させる。
【0062】
モータ620は、ギヤ621によって与えられる回転力によって発電を行なう。そして、モータ620は発電した電力を制御装置650へ伝達する。制御装置650においては、図9で後述するように、発電した電力をバッテリに蓄えたり、発電した電力を利用して表示等を行なったりする。なお、モータ620は、制御装置650から供給される電力を用いて駆動されてもよく、ドラム610に回転力を与えることができるように構成されてもよい。
【0063】
ギヤ622は、ギヤ621とのギヤ比が所定の値となるように歯数が設定される。ギヤ622は、抵抗付加装置630のラック631と係合可能に構成されており、ギヤ622が回転することによって、抵抗付加装置630を、ドラム610の回転軸と平行な方向へ動作させる。なお、図2においては、ギヤ622は、ギヤ621と同様にモータ620の回転軸に取り付けられるような構成となっているが、ギヤ622は1つ以上の他のギヤを介してギヤ621から回転力が伝達される構成としてもよい。また、抵抗付加装置630を動作させる構成についても、ベベルギヤやウォームギヤなどを用いる構成としてもよい。
【0064】
抵抗付加装置630は、ドラム610の回転に対抗する抵抗力を与えるための装置である。抵抗付加装置630には、ギヤ622と係合するように構成されたラック631と、ドラム610と接触して摩擦力を発生させるための接触部であるパッド632とが設けられる。
【0065】
抵抗付加装置630は、上述のように、受電用コード250の引き出しおよび巻き取りによってドラム610の回転軸方向へ動作する。これによって、パッド632のドラム610への押付力が変化する。図2,5,6で示されるように、受電用コード250が引き出されると、パッド632の押付力が弱まる向きに抵抗付加装置630が動作する。
【0066】
このような構成とし、受電用コード250がすべて巻き取られた状態において、図3に示したような最大引出トルクTmaxが生じるように予め定められた押付力が付勢されるように設定することによって、受電用コード250の引出量が増加するにつれて抵抗付加装置による押付力が弱められる。このとき、ギヤ621とギヤ622との減速比、および/またはラック631のピッチを適切に設計することによって、所定の割合で押付力を弱めることができ、それによって受電用コード250の引出量が変化しても、必要となる引出トルクをほぼ一定に維持することが可能となる。
【0067】
なお、抵抗付加装置630において、たとえばパッド632の接続部分に圧電素子(図示せず)を設けて押付圧に応じた電圧を発生させ、この発生した電力を制御装置650に伝達するようにしてもよい。また、パッド632の部分をローラとし、このローラの回転によって抵抗付加装置630内に設けられた発電機(図示せず)を回転させることによって発電させるようにしてもよい。
【0068】
図2においては、抵抗付加装置は、ギヤ621の回転力を利用してパッド632の押付力を変化させる構成としたが、ドラム610の回転力を増減させることができれば抵抗付加装置の構成はこれに限定されない。
【0069】
図7および図8に、抵抗付加装置の他の構成例を示す。図7においては、押付力を発生する構成としてシリンダを用いた例を示す。また、図8においては、クラッチあるいはブレーキに代表される摩擦係合装置により抵抗力を生じさせる構成例を示す。
【0070】
図7を参照して、コードリール600Aには、抵抗付加装置630Aとしてシリンダ640が設けられる。シリンダ640は、そのロッド641がドラム610の回転軸と平行な方向に動作するように設置される。ロッド641の先端には、抵抗付加装置630と同様のパッド642が設けられる。
【0071】
シリンダ640は、油圧シリンダまたは空圧シリンダのような、流体によってロッドを動作させるシリンダであってもよいし、内部に設けられた電動モータによってロッドを動作させる電動シリンダであってもよい。シリンダ640は、いずれも図示しないが、受電用コード250の引出量(引出長さ)を検出するための距離センサ、あるいはドラム610の回転角度を検出するための回転角センサなどからの信号に基づいて、制御装置650からの制御信号によって駆動される。シリンダ640は、受電用コード250の引出量が多くなるほど、シリンダ640からの押付力が減少するように制御される。
【0072】
次に図8を参照して、コードリール600Bには、抵抗付加装置として、ブレーキ630Bが設けられる。ブレーキ630Bは、ドラム610の回転軸612に取り付けられたブレーキディスク613と、ブレーキディスク613を挟み込むように構成されたブレーキパッド614とを含んで構成される。
【0073】
ブレーキパッド614は、たとえば油圧、空圧などの流体を用いて駆動され、受電用コード250の引出量に応じてブレーキディスク613の挟圧力を変化させることによって、ドラム610に与える抵抗力の大きさを変化させる。
【0074】
また、図2において、受電用コード250の引出量に応じて、モータ620への駆動力を変化させて、ドラム610に与える抵抗力を変化させるようにしてもよい。
【0075】
図9は、図2における制御装置650の回路の一例を示す図である。
図9を参照して、制御装置650は、制御部651と、リレーRY10,RY11と、ダイオードD10,D11とを含む。
【0076】
リレーRY10,RY11は、コードリール600に含まれるバッテリ653の正極端子とモータ620の正極端子との間に並列に接続される。リレーRY10,RY11は、制御部651からの制御信号SE10,SE11に従ってそれぞれ駆動される。
【0077】
ダイオードD10は、バッテリ653とリレーRY10とを結ぶ経路に、バッテリ653からリレーRY10に向かう方向を順方向として介挿される。リレーRY10は、バッテリ653からの電力を用いてモータ620を駆動する場合に閉成される。
【0078】
ダイオードD11は、バッテリ653とリレーRY11とを結ぶ経路に、リレーRY11からバッテリ653に向かう方向を順方向として介挿される。リレーRY11は、モータ620によって発電された電力によってバッテリ653を充電する場合に閉成される。
【0079】
また、上述のように、抵抗付加装置630に圧電素子のような発電装置652が設けられる場合には、発電装置652はダイオードD11のアノードに接続される。これによって、発電装置652で発電された電力によって、ダイオードD11を介してバッテリ653が充電される。
【0080】
ダイオードD11のアノードには、通知装置としての表示灯LGT1が接続される。表示灯としては、ランプやLEDなどが使用され得る。表示灯LGT1は、モータ620および発電装置652で発電された電力によって点灯する。そのため、表示灯LGT1は、受電用コード250の引出トルクが大きい場合には発光輝度が大きくなり、引出トルクが小さい場合には発光輝度が小さくなる。これによって、受電用コード250の引出量または巻取残量等を、使用者に対して視覚的に通知することができる。表示灯LGT1に代えてまたはこれに加えて、使用者に聴覚的に通知するためのブザーBZ1を設けるようにしてもよい。
【0081】
あるいは、通知装置の別の例としては、バッテリ653に接続されたドライバ654と、ドライバ654に接続された表示灯LGT2および/またはブザーBZ2が設けられてもよい。ドライバ654は、制御部651からの制御信号SIGに基づいて、バッテリ653からの電力を用いてこれら表示灯LGT2,ブザーBZ2を動作させる。上述の表示灯LGT1の場合には受電用コード250の引出操作が停止されると発電が停止されるので通知が行なわれないが、このような回路とすることによって、制御部651が認識した受電用コード250の引出状態に基づいて表示灯LGT2の点灯状態を制御できるので、受電用コード250の引出操作を停止しても表示灯LGT2の点灯を維持することができる。
【0082】
制御部651は、回転角センサ625からの、モータ620の回転角の検出値ROTを受ける。制御部651は、この回転角ROTによって、受電用コード250が引き出されていることを認識すると、制御信号SE11によってリレーRY11の接点を閉成する。これによって、モータ620で発電された電力によってバッテリ653を充電することができる。さらに、上述のように、受信した回転角ROTに基づいて、制御信号SIGを設定してドライバ654に出力することによって、受電用コード250の引出状態に基づいて表示灯LGT2の点灯状態を制御することができる。なお、受電用コード250の引出状態については、モータ620の回転角ROTを用いなくとも、たとえば、実際に受電用コード250が引き出された長さに関する信号を用いてもよいし、ドラム610の回転角に関する信号を用いてもよい。
【0083】
また、制御部651は、モータ620を駆動することによって受電用コード250の巻取動作を行なう場合には、制御信号SE10によってリレーRY10の接点を閉成する。これによって、バッテリ653からの電力によってモータ620が駆動される。
【0084】
なお、上記の説明においては、バッテリ653、ドライバ654、表示灯LGT1,LGT2およびブザーBZ1,BZ2が、コードリール600に備えられる場合について述べたが、これらの装置が車両側に設けられる構成であってもよい。また、制御装置650の機能は、車両ECU300に含まれる構成であってもよい。
【0085】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0086】
100 車両、110 蓄電装置、120 PCU、130 モータジェネレータ、140 動力伝達ギヤ、150 駆動輪、200 充電装置、240,280 受電ポート、245,285 リッド、250 受電用コード、260,420 プラグ、270 インレット、300 車両ECU、400 充電ケーブル、410 充電コネクタ、430 電線部、500A,500B 外部電源、510A,510B コンセント、600,600A,600B コードリール、610 ドラム、611,621,622 ギヤ、612 回転軸、613 ブレーキディスク、614 ブレーキパッド、620 モータ、625 回転角センサ、630B ブレーキ、630,630A 抵抗付加装置、631 ラック、632,642 パッド、640 シリンダ、641 ロッド、650 制御装置、651 制御部、652 発電装置、653 バッテリ、654 ドライバ、660 弾性装置、ACL1,ACL2,ACL3,ACL4 電力線、BZ1,BZ2 ブザー、D10,D11 ダイオード、LGT1,LGT2 表示灯、NL1,NL2 接地線、PL1,Pl2 電力線、RY2,RY3,RY10,RY11 リレー、SMR システムメインリレー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を伝達するためのコードを収納するための電線格納装置であって、
収納時に前記コードが周囲に巻回されるドラムと、
前記ドラムに取付けられ、前記ドラムに前記コードを巻き取るための巻取トルクを与えるように構成された弾性装置と、
前記ドラムの回転に対する抵抗力を可変に調整できるように構成された抵抗付加装置とを備え、
前記抵抗付加装置は、前記コードを前記ドラムから引き出すときに必要となるトルクが略一定となるように前記抵抗力を調整する、電線格納装置。
【請求項2】
前記弾性装置は、前記コードが引き出されるにつれて前記巻取トルクが増加するように構成され、
前記抵抗付加装置は、前記コードの引出量に応じて前記抵抗力を調整する、請求項1に記載の電線格納装置。
【請求項3】
前記抵抗付加装置は、予め定められた基準トルクと前記巻取トルクとの差に相当するトルクが発生されるように前記抵抗力を調整する、請求項2に記載の電線格納装置。
【請求項4】
前記抵抗付加装置は、
前記ドラムの回転にともなって回転させられるギヤ機構と、
前記ギヤ機構と係合し、前記ドラムの回転にともなって前記ドラムとの接触圧を変化させることによって前記抵抗力を調整するように構成された接触機構とを含む、請求項3に記載の電線格納装置。
【請求項5】
前記抵抗付加装置は、
前記ドラムに押付力を付与することが可能に構成されたロッドを有するシリンダを含み、
前記シリンダは、前記ドラムの回転にともなって前記ロッドと前記ドラムとの間の前記押付力を変化させることによって前記抵抗力を調整する、請求項3に記載の電線格納装置。
【請求項6】
前記抵抗付加装置は、
クラッチおよびブレーキの少なくともいずれかを有する摩擦係合装置を含み、
前記摩擦係合装置は、前記ドラムの回転にともなって係合力を変化させることによって前記抵抗力を調整する、請求項3に記載の電線格納装置。
【請求項7】
前記抵抗付加装置は、
前記ドラムに回転トルクを供給するための電動機を含み、
前記電動機は、前記ドラムの回転にともなって前記回転トルクを変化させることによって前記抵抗力を調整する、請求項3に記載の電線格納装置。
【請求項8】
前記コードが引き出されて前記ドラムが回転することによって発電する発電機をさらに備える、請求項3に記載の電線格納装置。
【請求項9】
前記発電機により発電された電力を充電するためのバッテリをさらに備える、請求項8に記載の電線格納装置。
【請求項10】
前記発電機により発電された電力を用いて、操作者に対して前記コードの引き出しに関する状態を通知するための通知装置をさらに備える、請求項8に記載の電線格納装置。
【請求項11】
外部電源からの電力を用いて充電が可能な蓄電装置を搭載した車両であって、
前記外部電源からの電力を前記蓄電装置へ伝達するためのコードと、
前記コードを収納するための電線格納装置とを備え、
前記電線格納装置は、
収納時に前記コードが周囲に巻回されるドラムと、
前記ドラムに取付けられ、前記ドラムに前記コードを巻き取るための巻取トルクを与えるように構成された弾性装置と、
前記ドラムの回転に対する抵抗力を可変に調整できるように構成された抵抗付加装置とを含み、
前記抵抗付加装置は、前記コードを前記ドラムから引き出すときに必要となるトルクが略一定となるように前記抵抗力を調整する、車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−65480(P2012−65480A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208733(P2010−208733)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】