説明

電話発信方法、移動電話機および接続装置

【課題】 従来とは全く異なる新しい電話発信方法を提供する。
【解決手段】
本発明の電話発信方法は、公衆無線網100を介して接続された移動電話機10と構内電話交換機30とを用いた電話発信方法であって、移動電話機10にて通信相手電話機80の電話番号の入力を受け付け、移動電話機10が公衆無線網100を通じて接続装置50に電話をかけることにより構内電話交換機30に接続し、構内電話交換機30に通信相手電話機80の電話番号を通知し、電話番号を用いて構内電話交換機30から通信相手電話機80に電話をかけ、構内電話交換機30が移動電話機10と通信相手電話機80との通信を接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動電話機の電話発信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、構内電話交換機(以下、PBXという)に接続される端末として、公衆網にアクセス可能な移動電話機を用いたシステムが知られていた。このようなシステムでは、構内網における移動電話機間の通信は、内線番号により接続可能である。
【0003】
移動電話機を用いたPBXの例は、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1には、PHSが構内網から公衆網に移動した場合にも、そのPHSへの着信を可能とする発明が記載されている。特許文献1に記載された発明では、PBXに転送制御装置を接続し、PHSが構内網から公衆網に移動したときには、転送制御装置のデータベースにPHSの位置登録を行う。そして、公衆網または構内網内の端末から着信があった場合には、データベースに登録された位置情報を用いてPHSに転送する。
【特許文献1】特開平8−172673号公報(3−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように、移動電話機が公衆網内にあるときに、移動電話機に対する着信を構内電話交換機から移動電話機に転送する方式が特許文献1等によって知られていた一方で、公衆網内にある移動電話機から発信する場合には、構内電話交換機とは独立に発信し、通信相手の端末に直接に電話をかけていた。移動電話機は、構内電話交換機を介さずとも公衆網にアクセス可能であることから、構内電話交換機からの転送を受け得る移動電話機であっても、発信するときには公衆網経由で通信相手の端末に直接電話をかけるのが常識であり、これと異なる方式は提案されていなかった。
このような背景の下、本発明は、従来とは全く異なる新しい電話発信方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電話発信方法は、公衆無線網を介して接続された移動電話機と構内電話交換機とを用いた電話発信方法であって、前記移動電話機にて通信相手端末の電話番号の入力を受け付けるステップと、前記移動電話機が公衆無線網を通じて前記構内電話交換機に接続し、前記構内電話交換機に前記通信相手端末の電話番号を通知するステップと、前記電話番号を用いて前記構内電話交換機から前記通信相手端末に電話をかけるステップと、前記構内電話交換機が前記移動電話機と前記通信相手端末との通信を接続するステップとを備える。
【0006】
前記構内電話交換機に電話番号を通知するステップにおいて、前記構内電話交換機に接続するために発信した電話番号の回線がビジーのときには、前記構内電話交換機に接続するための別の電話番号に発信してもよい。
【0007】
前記構内電話交換機に電話番号を通知するステップは、前記構内電話交換機に接続するための電話番号を着アドレスに設定し、前記通信相手端末の電話番号を着サブアドレスに設定して発信してもよいし、前記構内電話交換機との接続が確立した後に、通信相手端末の電話番号を通知してもよい。
【0008】
また、本発明の電話発信方法は、前記移動電話機が前記移動電話機を識別する識別情報を送信するステップと、前記識別情報に基づいて、前記移動電話機が前記構内電話交換機を利用できる端末か否かを判定するステップとを備えてもよい。
【0009】
また、本発明の電話発信方法は、上記した電話発信方法と構内電話交換機を介しない発信方法とを選択できるように、前記構内電話交換機経由で電話をかけるか否かを前記移動電話機にあらかじめ設定するステップを備えてもよい。
【0010】
本発明の移動電話機は、公衆無線網を介して構内電話交換機と接続される移動電話機であって、通信相手端末の電話番号の入力を受け付ける電話番号入力手段と、前記構内電話交換機に接続するための電話番号を着アドレスに設定し、前記電話番号入力手段にて入力された通信相手端末の電話番号を発サブアドレスに設定して発信する発信手段とを備える。
【0011】
また、本発明の別の態様の移動電話機は、公衆無線網を介して構内電話交換機と接続される移動電話機であって、通信相手端末の電話番号の入力を受け付ける電話番号入力手段と、前記構内電話交換機に接続するための電話番号を着アドレスに設定して発信する発信手段と、前記電話番号入力手段にて入力された通信相手端末の電話番号を前記構内電話交換機に通知する電話番号通知手段とを備える。
【0012】
上記の移動電話機において、着アドレスに設定する前記構内電話交換機に接続するための電話番号を記憶手段に記憶しておき、前記発信手段は、前記記憶手段から電話番号を読み出して着アドレスに設定して発信してもよい。
【0013】
また、前記発信手段は、前記構内電話交換機に接続するために発信した電話番号の回線がビジーのときには、前記構内電話交換機に接続するための別の電話番号を着アドレスに設定して発信してもよい。さらに、自端末を識別する識別情報を通知する識別番号通知手段を備えてもよい。前記構内電話交換機経由で電話をかけるか否かをあらかじめ設定する設定手段を備えてもよい。
【0014】
本発明の接続装置は、構内電話交換機に接続されると共に、公衆無線網を通じて移動電話機との通信が可能な装置であって、移動電話機からの着信を受けて移動電話機との間の通信接続を行う接続手段と、移動電話機から通知される電話番号を受信する電話番号受信手段と、前記電話番号受信手段にて受信した電話番号に対して前記構内電話交換機を通じて電話をかけて通信相手端末との通信を接続し、前記移動電話機と前記通信相手端末との通信を中継する通信中継手段とを備える。
【0015】
前記電話番号受信手段は、前記移動電話機からの着信に含まれる着サブアドレスとして設定された電話番号を受信してもよいし、ファシリティ情報として通知された電話番号を受信してもよい。
【0016】
また、上記接続装置は、前記移動電話機から送信された前記移動電話機の識別情報を受信する識別情報受信手段と、前記識別情報を用いて、前記移動電話機の認証を行う認証手段とを備え、前記通信中継手段は、前記認証手段にて前記移動電話機が認証された場合に、前記通信相手端末に電話をかけてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、移動電話機から電話をかける場合に、通信相手端末の電話番号を構内電話交換機に通知して、構内電話交換機から通信相手の端末に電話をかけることにより、移動電話機の回線使用状況を構内電話交換機で一元管理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る電話発信方法と、電話発信方法に用いられる移動電話機および接続装置について説明する。
【0019】
実施の形態の電話発信方法は、公衆無線網を介して接続された移動電話機と構内電話交換機とを用いた電話発信方法であって、移動電話機にて通信相手端末の電話番号の入力を受け付けるステップと、移動電話機が公衆無線網を通じて構内電話交換機に接続し、構内電話交換機に通信相手端末の電話番号を通知するステップと、通知された電話番号を用いて構内電話交換機から通信相手端末に電話をかけるステップと、構内電話交換機が移動電話機と通信相手端末との通信を接続するステップとを備える。
【0020】
このように移動電話機から電話をかける場合に、通信相手端末の電話番号を構内電話交換機に通知して、構内電話交換機から通信相手の端末に電話をかけることにより、移動電話機の回線使用状況を構内電話交換機で一元管理することができる。これにより、例えば、会社等が貸与した移動電話機の私用目的での利用を防止することができる。また、構内電話交換機から電話をかけるので、通信相手に対しては構内電話交換機の電話番号が発信元として表示され、通信相手は構内電話交換機に接続された個々の移動電話機の電話番号を把握していなくても構内電話交換機の電話番号を知っていれば、発信元のユーザを容易に予測できる。例えば、構内電話交換機の電話番号により、どの会社からかかってきたかを把握できる。
【0021】
また、構内電話交換機に電話番号を通知するステップにおいて、構内電話交換機に接続するために発信した電話番号の回線がビジーのときには、構内電話交換機に接続するための別の電話番号に発信してもよい。
【0022】
構内電話交換機に接続するための複数の回線を準備しておき、一の電話番号の回線がビジーのときには別の電話回線に発信することにより、構内電話交換機への接続の成功率を高めることができる。
【0023】
また、上記の電話発信方法において、構内電話交換機に電話番号を通知するステップは、構内電話交換機に接続するための電話番号を着アドレスに設定し、通信相手端末の電話番号を着サブアドレスに設定して発信する方式、または、構内電話交換機との接続が確立した後に、通信相手端末の電話番号を通知する方式を採用してもよい。
【0024】
また、実施の形態の電話発信方法は、移動電話機が移動電話機を識別する識別情報を送信するステップと、識別情報に基づいて、移動電話機が構内電話交換機を利用できる端末か否かを判定するステップとを備えてもよい。
【0025】
このように識別情報に基づいて構内電話交換機を利用できる端末か否かを判定することにより、構内電話交換機を利用する権限のない移動電話機からの着信を拒否することができる。
【0026】
また、実施の形態の電話発信方法は、構内電話交換機経由で電話をかけるか否かを移動電話機にあらかじめ設定するステップを備えてもよい。
【0027】
このように構内電話交換機経由で電話をかける方式と、公衆無線網を介して直接通信相手に電話をかける従来の方式とを選択できる構成とすることにより、利便性を向上できる。
【0028】
実施の形態の移動電話機は、公衆無線網を介して構内電話交換機と接続される移動電話機であって、通信相手端末の電話番号の入力を受け付ける電話番号入力部と、構内電話交換機に接続するための電話番号を着アドレスに設定し、電話番号入力部にて入力された通信相手端末の電話番号を着サブアドレスに設定して発信する発信部とを備える。
【0029】
また、実施の形態の移動電話機は、公衆無線網を介して構内電話交換機と接続される移動電話機であって、通信相手端末の電話番号の入力を受け付ける電話番号入力部と、構内電話交換機に接続するための電話番号を着アドレスに設定して発信する発信部と、電話番号入力部にて入力された通信相手端末の電話番号を構内電話交換機に通知する電話番号通知部とを備える。
【0030】
このように通信相手端末の電話番号を構内電話交換機に通知して、構内電話交換機から通信相手の端末に電話をかけさせることにより、移動電話機の回線使用状況を構内電話交換機で一元管理することができる。通信相手に対しては、構内電話交換機の電話番号が発信元として表示されるので、通信相手は電話発信元のユーザを容易に予測できる。
【0031】
また、実施の形態の移動電話機は、構内電話交換機に接続するための電話番号を記憶する記憶部を備え、発信部は記憶部から電話番号を読み出して着アドレスに設定して発信してもよい。
【0032】
このように構内電話交換機に接続するための電話番号を記憶部に記憶しておき、記憶部から読み出した電話番号を用いて構内電話交換機に接続することにより、移動電話機のユーザが構内電話交換機の電話番号を入力しなくてもよいので、ユーザに構内電話交換機との接続を意識させることなく、構内電話交換機経由の接続を実現できる。
【0033】
また、発信部は、構内電話交換機に接続するために発信した電話番号の回線がビジーのときには、構内電話交換機に接続するための別の電話番号を着アドレスに設定して発信してもよい。
【0034】
構内電話交換機に接続するための複数の回線を準備しておき、一の電話番号の回線がビジーのときには別の電話回線に発信することにより、構内電話交換機への接続の成功率を高めることができる。
【0035】
また、実施の形態の移動電話機は、自端末を識別する識別情報を通知する識別番号通知部を備えてもよい。
【0036】
このように自端末の識別情報を送信することにより、構内電話交換機において移動電話機の認証を行うことができる。
【0037】
また、実施の形態の移動電話機は、構内電話交換機経由で電話をかけるか否かをあらかじめ設定する設定部を備えてもよい。
【0038】
このように構内電話交換機経由で電話をかける方式と、公衆無線網を介して直接通信相手に電話をかける従来の方式とを選択できる構成とすることにより、利便性を向上できる。
【0039】
実施の形態の接続装置は、構内電話交換機に接続されると共に、公衆無線網を通じて移動電話機との通信が可能な装置であって、移動電話機からの着信を受けて移動電話機との間の通信接続を行う接続部と、移動電話機から通知される電話番号を受信する電話番号受信部と、電話番号受信部にて受信した電話番号に対して構内電話交換機を通じて電話をかけて通信相手端末との通信を接続し、移動電話機と通信相手端末との通信を中継する通信中継部とを備える。
【0040】
このように移動電話機から着信を受けて移動電話機とその通信相手端末との通信を接続することにより、移動電話機の回線使用状況を構内電話交換機で一元管理することができる。また、通信相手に対しては、構内電話交換機の電話番号が発信元として表示されるので、通信相手は電話発信元のユーザを容易に予測できる。
【0041】
電話番号受信部は、移動電話着からの着信に着サブアドレスとして設定された電話番号を受信してもよいし、移動電話機との接続確立後にファシリティ情報として通知された電話番号を受信してもよい。
【0042】
また、実施の形態の接続装置は、移動電話機から送信された移動電話機の識別情報を受信する識別情報受信部と、識別情報を用いて、移動電話機の認証を行う認証部とを備え、通信中継部は、認証部にて移動電話機が認証された場合に、通信相手端末に電話をかけてもよい。
【0043】
このように識別情報に基づいて移動電話機の認証を行うことにより、構内電話交換機を利用する権限のない移動電話機からの着信を拒否することができる。
【0044】
次に、実施の形態に係る電話発信方法、移動電話機および接続装置について図面を用いて説明する。
【0045】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の電話発信方法が適用されるシステムの概要を示す図である。本実施の形態の電話発信方法が適用されるシステムは、移動電話機10と、主装置30とを有する。移動電話機10は、公衆無線網100を通じて無線通信を行える移動端末であり、例えば、PHS端末がこれにあたる。
【0046】
主装置30は、構内電話交換機の機能を有する。主装置30には、内線電話機70が接続され、構内網NWを構成する。図1では、内線電話機70を1台しか記載していないが、実際には、複数の内線電話機70が接続される。主装置30は、有線網110に接続されており、有線網110を介して受けた着信を内線電話機70に接続したり、内線電話機70からの発信を有線網110に送信する。
【0047】
主装置30には、接続装置50a、50b(総称して「接続装置50」という)が接続されている。図1では、2台の接続装置50を備えているが、接続装置50の台数は何台でもよく、構内網NWに接続される移動電話機10の台数によって適宜決定する。接続装置50は、公衆無線網100の基地局102と通信可能である。接続装置50によって主装置30と公衆無線網100内の移動電話機10との無線通信が可能となる。
【0048】
図2は、主装置30と接続装置50の構成を示す図である。主装置30は、有線網110とのインターフェース部である公衆網インターフェース32と、内線電話機70および接続装置50とのインターフェース部である内線端末インターフェース36と、公衆網インターフェース32および内線端末インターフェース36に接続され、通話路を切り替える通話路スイッチ34を備えている。また、主装置30は、公衆網インターフェース32、通話路スイッチ34、内線端末インターフェース36のそれぞれを制御する制御部38と、メモリ40とを備えている。メモリ40には、主装置30を制御するために必要な情報が記憶される。例えば、内線番号と公衆無線網での呼び出し番号とを関連付ける番号計画の情報、留守番電話の設定情報、内線電話機70の発着信履歴や接続装置50経由で移動電話機10が行う通信の履歴等を記憶する。
【0049】
接続装置50は、内線線路と接続される内線端末インターフェース52と、公衆無線網と電波の送受信を行うアンテナ66と、アンテナ66に接続される公衆無線網インターフェース56と、内線端末インターフェース52および公衆無線網インターフェース56に接続され、通話路を切り替える通話路スイッチ54とを備えている。公衆網インターフェース56は、移動電話機10との通信を接続する機能を有する。
【0050】
また、接続装置50は、内線端末インターフェース52、通話路スイッチ54、公衆無線網インターフェース56のそれぞれを制御する制御部58と、メモリ68とを備えている。制御部58は、移動電話機10から送信される相手電話機80の電話番号を受信する電話番号受信機能60と、相手電話機80と移動電話機10との通信を中継する通信中継機能62と、移動電話機10を認証する認証機能64を有する。メモリ68には、接続装置50を制御するために必要な情報が記憶される。本実施の形態においては、メモリ68は、主装置30を利用できる移動電話機10の電話番号の情報を記憶している。
【0051】
図3は、メモリ68に記憶されたデータの例を示す図である。このように利用を許可された移動電話機の電話番号を記憶しておくことにより、メモリ68のデータを用いて、権限のない端末からのアクセスを拒否することができる。なお、主装置30を利用できる移動電話機10は構内網NWの管理者等により設定され、その電話番号がメモリ68に記憶される。
【0052】
図4は、移動電話機10の構成を示す図である。移動電話機10は、電話番号の入力を受け付ける電話番号入力部12と、電話番号入力部12にて受け付けた電話番号を接続装置50に通知する電話番号通知部14と、発信を行う発信部16と、メモリ18と、自端末の電話番号を識別番号として通知する識別番号通知部20とを備えている。識別番号通知部20は、メモリ18に記憶された自端末の電話番号を読み出して発信部16に渡し、発信時に自端末の電話番号を接続装置50に通知する。また、メモリ18には、接続装置50の電話番号が記憶されている。発信部16は、メモリ18から接続装置50の電話番号を読み出し、着アドレスに設定して発信を行う。これにより、ユーザが接続装置50の電話番号を入力しなくても、接続装置50への接続を行うことができる。また、発信部16は、接続装置50に発信を行う際に、相手電話機80の電話番号を着サブアドレスに設定し、相手電話機80の電話番号を接続装置50に通知する。
【0053】
次に、本実施の形態の電話発信方法の動作について説明する。なお、本実施の形態では、移動電話機10からの発信について説明するが、主装置30は相手電話機80からの着信を受けた場合には、接続装置50によって移動電話機10に接続することにより、相手電話機80からの着信を移動電話機10に転送することが可能である。この場合、移動電話機10が構内網NWの内部にいるか、構内網NWの外部にいるかにかかわらず、転送を行うことができる。接続装置50を備えることで、移動電話機10は公衆無線網100経由で転送を受けることができ、例えば、内線モード、外線モード等の設定の切替えを行う必要がないという利点もある。
【0054】
図5は、第1の実施の形態の電話発信方法の動作を示す図である。ここでは、移動電話機10から相手電話機80に電話をかける例について説明する。移動電話機10から相手電話機80に電話をかける際に、ユーザにより相手電話機80の電話番号が入力されると、移動電話機10は相手電話機80に直接電話をするのではなく、まず接続装置50に電話をかける(S10)。移動電話機10は、メモリ18から接続装置50の電話番号を読み出し、読み出した電話番号を着アドレスに設定し、着サブアドレスとして相手電話機80の電話番号を設定して発信する。なお、接続装置50は、移動電話機80からの接続を主装置30へと中継するので、接続装置50の電話番号は主装置30への接続するための電話番号である。ここでは、メモリ18に記憶された接続装置50の電話番号を利用する例について説明したが、接続装置50の電話番号は、電話をかけるときにユーザが入力してもよい。
【0055】
接続装置50は、移動電話機10からの着信を受けると、発信元電話番号とメモリ68(図3参照)に記憶された電話番号とを比較して、移動電話機10が主装置30を利用できる端末であるか否かの認証を行う(S12)。メモリ68に記憶された電話番号と、移動電話機10の電話番号とが一致する場合には主装置30を利用できる端末と判定し、一致しない場合には主装置30を利用できない端末と判定する。移動電話機10が主装置30を利用できない端末と判定された場合には、接続装置50は移動電話機10との通信接続を切断する。
【0056】
移動電話機10が主装置30を利用できる端末と判定された場合には、接続装置50は主装置30に接続要求を送信する(S14)。主装置30は、接続装置50からの接続要求を受けると、主装置30の外線に空きがあるかを確認して、接続通知を接続装置50に返す(S16)。
【0057】
接続装置50は、主装置30から接続通知を受信すると、移動電話機10から通知された電話番号、すなわち、着サブアドレスに設定された電話番号を主装置30に通知する(S18)。主装置30は、接続装置50から通知された電話番号を用いて相手電話機80を呼び出す(S20)。
【0058】
主装置30からの発呼に対して相手電話機80のユーザがオフフックすると、相手電話機80は主装置30に応答を返す(S22)。主装置30は、相手電話機80からの応答を受信すると、接続装置50に着信応答を送信し(S24)、これを受けた接続装置50は、移動電話機10に応答を送信する(S26)。以上の動作により、移動電話機10と相手電話機80との間の通信が確立する(S28)。
【0059】
通話を終えて移動電話機10のユーザがオンフックすると、移動電話機10は切断信号を接続装置50に送信する(S30)。接続装置50は、移動電話機10からの切断信号を受信すると、主装置30に切断完了を送信し(S32)、これを受けた主装置30は相手電話機80に切断信号を送信する(S34)。以上、第1の実施の形態の電話発信方法について説明した。
【0060】
第1の実施の形態の電話発信方法によれば、移動電話機10から電話をかける場合に、相手電話機80の電話番号を接続装置50を通じて主装置30に通知して、主装置30から相手電話機80に電話をかけることにより、移動電話機10の回線使用状況や電話料金を主装置30で一元管理することができる。すなわち、移動電話機10の発信履歴や、移動電話機10への着信履歴を主装置30のメモリ40に保存しておくことができる。これにより、例えば、会社が貸与した移動電話機の私用目的での利用を防止したり、発信先に応じて課金先を分類することができる。また、公衆無線網100の利用料金が使用量によらず定額である場合、あるいは公衆無線網100内での通信料金が無料である場合には、電話料金を低く抑えることができるという効果がある。
【0061】
また、第1の実施の形態の電話発信方法によれば、主装置30の電話番号が発信元として相手電話機80に通知され、例えば、相手電話機80の画面に表示されるので、通信相手は主装置30に接続された個々の移動電話機10の電話番号を把握していなくても、主装置30の電話番号から発信元のユーザを容易に予測できる。従来のように、移動電話機10から直接に電話をかけると、例えば、移動電話機10を携帯する営業員や担当者が電話をかける場合には、それぞれに発信元電話番号が異なるので、通信相手が不審に思う場合がある。しかし、本実施の形態によれば、移動電話機10の電話番号ではなく、主装置30の電話番号が表示されるので、発信元の会社を把握することができる。
【0062】
次に、第1の実施の形態の変形例として、接続装置50への接続の成功率を高めることができる電話発信方法について説明する。変形例に係る電話発信方法において用いる移動電話機10には、図6に示すように、複数の接続装置50の電話番号を記憶しておく。
【0063】
図7は、変形例に係る電話発信方法の動作を示す図である。変形例に係る電話発信方法の基本的な動作は、第1の実施の形態と同じであるが、変形例に係る電話発信方法では、移動電話機10が接続装置50に対して発呼し(S10a)、それに対して接続装置50aがビジーを返したときには(S11)、移動電話機10は、メモリ68から接続装置50bの電話番号を読み出して、読み出した電話番号に再度発呼する(S10b)。移動電話機10は、接続装置50への接続が成功するまで、メモリ68から電話番号を順次読み出して、読み出した電話番号に発呼する処理を繰り返す。なお、メモリ68に記憶された電話番号をすべて読み出した場合には、最初に用いた電話番号から順に再度発呼を試みる。移動電話機10と接続装置50との接続が確立してからの動作(S12以降)については、第1の実施の形態と同様である。
【0064】
このように、移動電話機10のメモリ18に接続装置50の複数の電話番号を記憶しておき、接続装置50への発呼に失敗した場合には、メモリ68から別の電話番号を読み出して接続装置50への接続を試みることにより、接続装置50への接続の成功率を高めることができる。これにより、移動電話機10の台数が増えた場合にも、円滑に接続装置50を経由した電話発信を行うことができる。
【0065】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態の電話発信方法について説明する。第2の実施の形態の電話発信方法は、第1の実施の形態の電話発信方法と同じシステム(図1参照)によって実現される。
【0066】
図8は、第2の実施の形態の電話発信方法の動作を示す図である。移動電話機10から相手電話機80に電話をかけるときには、移動電話機10は相手電話機80に直接電話をするのではなく、まず接続装置50に電話をかける(S10)。移動電話機10は、着アドレスとして接続装置50の電話番号を設定して発信する。
【0067】
接続装置50は、移動電話機10からの着信を受けると、発信元電話番号とメモリ68に記憶された電話番号とを比較して、移動電話機10が主装置30を利用できる端末であるか否かの認証を行う(S12)。主装置30を利用できる端末と判定された場合には、接続装置50は主装置30に接続要求を送信する(S14)。主装置30は、接続装置50からの接続要求を受けると、主装置30の外線に空きがあるかを確認して、接続通知を接続装置50に返す(S16)。
【0068】
接続装置50は、接続通知を受信すると、移動電話機10に接続通知を送信する(S40)。移動電話機10は、接続装置50からの接続通知を受信すると、相手電話機80の電話番号を接続装置50に通知する(S42)。ここでは、移動電話機10は、相手電話機80の電話番号をファシリティ情報(PB信号)として通知する。接続装置50が移動電話機10から通知された電話番号を主装置30に通知して(S44)、主装置30から相手電話機80に電話をかけた後の動作(S46以降)は、第1の実施の形態と同様である。
【0069】
第2の実施の形態の電話発信方法も、移動電話機10の回線使用状況や電話料金を主装置30で一元管理することができ、例えば、会社等が貸与した移動電話機の私用目的での利用を防止することができる。
【0070】
また、第2の実施の形態の電話発信方法も、主装置30の電話番号が発信元として通知され、相手電話機80の画面に表示されるので、通信相手は主装置30に接続された個々の移動電話機10の電話番号を把握していなくても、主装置30の電話番号から発信元を容易に予測できる。
【0071】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態の電話発信方法および接続装置付き主装置42について説明する。図9は、第3の実施の形態の電話発信方法が適用されるシステムの構成を示す図である。第3の実施の形態の電話発信方法では、第1の実施の形態と比較すると、主装置30および接続装置50に代えて、接続装置付き主装置42が処理を行う点が異なる。
【0072】
図10は、第3の実施の形態の電話発信方法の動作を示す図である。第3の実施の形態の電話発信方法は、基本的な動作は第1の実施の形態の電話発信方法の動作と同じであるが、接続装置付き主装置42が処理を行うので、主装置30と接続装置50との間の通信が不要である点が異なる。
【0073】
第3の実施の形態によれば、接続装置付き主装置42は接続装置30の機能を備えており、移動電話機10からの着信を受けると、移動電話機10から通知された電話番号を用いて、通信相手端末80に発信する。これにより、移動電話機10の回線使用状況や電話料金を主装置30で一元管理することができ、例えば、会社等が貸与した移動電話機の私用目的での利用を防止することができる。
【0074】
また、第3の実施の形態の電話発信方法も、主装置30の電話番号が発信元として通知され、相手電話機80の画面に表示されるので、通信相手は主装置30に接続された個々の移動電話機10の電話番号を把握していなくても、主装置30の電話番号から発信元のユーザを容易に予測できる。
【0075】
以上、本発明の電話発信方法について、実施の形態を挙げて詳細に説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではない。上記した実施の形態は、構内電話交換機30を通して、移動電話機10からの電話を転送する例について説明したが、本発明はハードウェアとしての構内電話交換機30を経由することが必要とされているわけではない。本発明は、機能的に構内電話交換機30と同等の機能を有する構成を経由して電話をかける場合も含む。例えば、図11に示すように、SIPサーバ112で構内電話交換機の機能を提供するIPセントレックス型のシステムにも適用することが可能である。この場合、主装置30の代わりにルータ44を経由して電話発信がなされる。
【0076】
また、上記実施の形態で説明したように主装置30を介して電話をかける方式と、主装置30を介しないで相手電話機80に直接に電話をかける方式とを選択できる構成としてもよい。例えば、移動電話機10に発信方式の設定部を備え、主装置30経由で電話をかける設定とされている場合にのみ、上記実施の形態の動作を実行してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上説明したように、本発明は移動電話機の回線使用状況を構内電話交換機で把握することができるという効果を有し、構内網の構内電話交換機に接続される移動電話機等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】第1の実施の形態の電話発信方法が適用されるシステムの構成を示す図である。
【図2】第1の実施の形態の電話発信方法が適用される主装置および接続装置の構成を示す図である。
【図3】接続装置のメモリに記憶されたデータの例を示す図である。
【図4】移動電話機の構成を示す図である。
【図5】第1の実施の形態の電話発信方法の動作を示す図である。
【図6】移動電話機のメモリに記憶されたデータの例を示す図である。
【図7】第1の実施の形態の変形例に係る電話発信方法の動作を示す図である。
【図8】第2の実施の形態の電話発信方法の動作を示す図である。
【図9】第3の実施の形態の電話発信方法が適用されるシステムの構成を示す図である。
【図10】第3の実施の形態の電話発信方法の動作を示す図である。
【図11】電話発信方法が適用されるIPセントレックスのシステムの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
10 移動電話機
12 電話番号入力部
14 電話番号通知部
16 発信部
18 メモリ
20 識別番号通知部
30 主装置
32 公衆網インターフェース
34 通話路スイッチ
36 内線端末インターフェース
38 制御部
40 メモリ
42 接続装置付き主装置
44 ルータ
50 接続装置
52 内線端末インターフェース
54 通話路スイッチ
56 公衆無線網インターフェース
58 制御部
60 電話番号受信機能
62 通信中継機能
64 認証機能
66 アンテナ
68 メモリ
70 内線電話機
80 相手電話機
100 公衆無線網
102 基地局
110 有線網
112 SIPサーバ
NW 構内網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
公衆無線網を介して接続された移動電話機と構内電話交換機とを用いた電話発信方法であって、
前記移動電話機にて通信相手端末の電話番号の入力を受け付けるステップと、
前記移動電話機が公衆無線網を通じて前記構内電話交換機に接続し、前記構内電話交換機に前記通信相手端末の電話番号を通知するステップと、
前記電話番号を用いて前記構内電話交換機から前記通信相手端末に電話をかけるステップと、
前記構内電話交換機が前記移動電話機と前記通信相手端末との通信を接続するステップと、
を備える電話発信方法。
【請求項2】
前記構内電話交換機に電話番号を通知するステップにおいて、前記構内電話交換機に接続するために発信した電話番号の回線がビジーのときには、前記構内電話交換機に接続するための別の電話番号に発信する請求項1に記載の電話発信方法。
【請求項3】
前記構内電話交換機に電話番号を通知するステップは、前記構内電話交換機に接続するための電話番号を着アドレスに設定し、前記通信相手端末の電話番号を着サブアドレスに設定して発信する請求項1に記載の電話発信方法。
【請求項4】
前記構内電話交換機に電話番号を通知するステップは、前記構内電話交換機との接続が確立した後に、前記通信相手端末の電話番号を通知する請求項1に記載の電話発信方法。
【請求項5】
前記移動電話機が前記移動電話機を識別する識別情報を送信するステップと、
前記識別情報に基づいて、前記移動電話機が前記構内電話交換機を利用できる端末か否かを判定するステップと、
を備える請求項1に記載の電話発信方法。
【請求項6】
前記構内電話交換機経由で電話をかけるか否かを前記移動電話機にあらかじめ設定するステップを備える請求項1に記載の電話発信方法。
【請求項7】
公衆無線網を介して構内電話交換機と接続される移動電話機であって、
通信相手端末の電話番号の入力を受け付ける電話番号入力手段と、
前記構内電話交換機に接続するための電話番号を着アドレスに設定し、前記電話番号入力手段にて入力された通信相手端末の電話番号を着サブアドレスに設定して発信する発信手段と、
を備える移動電話機。
【請求項8】
公衆無線網を介して構内電話交換機と接続される移動電話機であって、
通信相手端末の電話番号の入力を受け付ける電話番号入力手段と、
前記構内電話交換機に接続するための電話番号を着アドレスに設定して発信する発信手段と、
前記電話番号入力手段にて入力された通信相手端末の電話番号を前記構内電話交換機に通知する電話番号通知手段と、
を備える移動電話機。
【請求項9】
前記構内電話交換機に接続するための電話番号を記憶する記憶手段を備え、
前記発信手段は、前記記憶手段から電話番号を読み出して着アドレスに設定して発信する請求項7または8に記載の移動電話機。
【請求項10】
前記発信手段は、前記構内電話交換機に接続するために発信した電話番号の回線がビジーのときには、前記構内電話交換機に接続するための別の電話番号を着アドレスに設定して発信する請求項7または8に記載の移動電話機。
【請求項11】
自端末を識別する識別情報を通知する識別番号通知手段を備える請求項7または8に記載の移動電話機。
【請求項12】
前記構内電話交換機経由で電話をかけるか否かをあらかじめ設定する設定手段を備える請求項7または8に記載の移動電話機。
【請求項13】
構内電話交換機に接続されると共に、公衆無線網を通じて移動電話機との通信が可能な装置であって、
移動電話機からの着信を受けて移動電話機との間の通信接続を行う接続手段と、
移動電話機から通知される電話番号を受信する電話番号受信手段と、
前記電話番号受信手段にて受信した電話番号に対して前記構内電話交換機を通じて電話をかけて通信相手端末との通信を接続し、前記移動電話機と前記通信相手端末との通信を中継する通信中継手段と、
を備える接続装置。
【請求項14】
前記電話番号受信手段は、前記移動電話機からの着信に着サブアドレスとして設定された電話番号を受信する請求項13に記載の接続装置。
【請求項15】
前記電話番号受信手段は、ファシリティ情報として通知された電話番号を受信する請求項13に記載の接続装置。
【請求項16】
前記移動電話機から送信された前記移動電話機の識別情報を受信する識別情報受信手段と、
前記識別情報を用いて、前記移動電話機の認証を行う認証手段と、
を備え、
前記通信中継手段は、前記認証手段にて前記移動電話機が認証された場合に、前記通信相手端末に電話をかける請求項13に記載の接続装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−352739(P2006−352739A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178979(P2005−178979)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000192796)神田通信工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】