説明

静圧軸受弁

【課題】摺動抵抗が小さく且つ耐久性の高い開閉弁を提供すること。
【解決手段】高圧の作動流体が流れる高圧作動流体流路2と当該作動流体が導入される作動流体動作室3とを連通又は遮断させる筒状の弁体5と、この弁体5の周壁部5bとの間に微小隙間gを形成し且つ当該弁体5を軸線方向に案内する筒状のガイド部6aとを備え、弁体5の内方に高圧作動流体流路2よりも相対的に低圧となる蓄圧室10を設け且つ弁体5に蓄圧室10と作動流体動作室3との連通路13を設け、周壁部5bをガイド部6aの外周面側に配置した場合、前記高圧の作動流体を微小隙間gへと供給する高圧作動流体供給通路9を周壁部5bに設け且つ微小隙間gの高圧の作動流体を蓄圧室10へと流入させる圧抜き通路11をガイド部6aに設け、周壁部5bをガイド部6aの内周面側に配置した場合、高圧作動流体供給通路9をガイド部6aに設け且つ圧抜き通路11を周壁部5bに設けること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体を静圧軸受で保持する静圧軸受弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮された高圧の作動流体(空気)をシリンダ内の作動流体動作室に導入して密封し、その高圧の作動流体の膨張動作を利用してクランクシャフトから動力を得る膨張機や、密閉された作動流体動作室の作動流体をピストンで圧縮して高圧の作動流体を生成する圧縮機等のピストン機関がある。例えば、そのような膨張機や圧縮機は、熱エネルギを機械エネルギに変換する為の機関に適用される。この種の機関の一例としては、下記の特許文献1,2に開示されたものがあり、これに類するものとしてブレイトンサイクル機関がある。
【0003】
このブレイトンサイクル機関とは、吸入した作動流体(作動ガス)を断熱圧縮する圧縮機と、この圧縮機で断熱圧縮された高圧の作動流体に高温流体の熱を等圧力で吸熱させる熱交換器と、この熱交換器で等圧受熱された高圧の作動流体を断熱膨張させる膨張機とを備えた機関であり、高圧の作動流体を膨張機に効率良く供給して、熱エネルギから機械エネルギへの変換効率を向上させるものである。
【0004】
ここで、その膨張機の断熱膨張に伴って発生するクランクシャフトの回転力は、そのクランクシャフトに結合されたフライホイールを介して内燃機関の駆動力補助用として利用することができ、また、発電機(図示略)を駆動させて蓄電池へ蓄電させることもできる。このことから、このブレイトンサイクル機関を例えば内燃機関の排気ガスの排気熱回収装置(熱エネルギ回収装置)として構築することができる。
【0005】
ところで、そのような膨張機や圧縮機等のピストン機関においては、作動流体動作室に作動流体を導入する一方で当該作動流体動作室を密閉する吸入側の開閉弁や、その作動流体動作室から作動流体を排出する一方で当該作動流体動作室を密閉する排出側の開閉弁が設けられている。
【0006】
例えば、その開閉弁としては、下記の特許文献2に開示されているものがある。この特許文献2の開閉弁は、弁体と、クランクシャフトに設けたカムと、このカムにより動作して弁体を押下するロッカーアームと、その押下された弁体を押し戻す弦巻バネとで構成されている。同様の開閉弁としては、弁体と、チェーンや歯車等を介してクランクシャフトの回転に連動するカムシャフトと、このカムシャフトに設けたカムと、このカムにより動作して弁体を押下するロッカーアームと、その押下された弁体を押し戻す弦巻バネとで構成されたものがある。
【0007】
尚、下記の特許文献3にはピストンの背面の圧力を変更して当該ピストンを往復運動させる内燃機関が開示されており、また、下記の特許文献4には作動流体動作室の高圧の作動流体(空気)をピストン内に取り込み、その高圧の作動流体をピストンの外周面から噴出させてシリンダとの間に空気軸受を形成したスターリングエンジンが開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2000−265853号公報
【特許文献2】特開平6−173702号公報
【特許文献3】特開2002−266609号公報
【特許文献4】特開2000−46431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、従来のピストン機関に適用される開閉弁には、その弁体を摺動軸(所謂ステム)において保持すると共に当該摺動軸にて軸線方向へと弁体を摺動させる一般的な機械構造の軸受が設けられている。
【0010】
これが為、その摺動軸と軸受との間においては摺動抵抗が大きく、かかる部位にて大きな摩擦損失を生じさせるので、例えば、上述したが如き膨張機や圧縮機に用いられた場合にはエネルギ効率が悪化する、という不都合があった。また、この種の開閉弁は、その摺動部分において摩耗が発生するので、耐久性の観点からも好ましくない。
【0011】
ここで、そのような摩擦損失や摩耗については、一般に、摺動部分に潤滑性能の高い材料や耐摩耗性の高い材料等を使用したり、潤滑油を塗布したりすることによって、ある程度は回避することができるが、原価の高騰を招来する等、完全なる方策とは言い難い。一方、この種の開閉弁を食品関係の機器や外燃機関(スターリングエンジン等)等の潤滑油の使用が好ましくない部位に用いることは、衛生上や安全上の点から不可能であった。
【0012】
そこで、本発明は、かかる従来例の有する不都合を改善し、潤滑油を用いずとも摺動抵抗が小さく且つ耐久性の高い開閉弁,所謂静圧軸受弁を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成する為、請求項1記載の発明では、高圧の作動流体が流れる高圧作動流体流路と当該高圧の作動流体が導入される作動流体動作室とを連通又は遮断させる筒状の弁体と、この弁体の周壁部との間に微小隙間を形成すると共に当該弁体を軸線方向へと案内する筒状のガイド部とを備え、その弁体の内方に高圧作動流体流路の内圧よりも相対的に低圧となる作動流体を溜める蓄圧室を設けると共に、その弁体に蓄圧室と作動流体動作室とを連通させる連通路を設けている。そして、その弁体の周壁部をガイド部の外周面側に配置した場合には、高圧作動流体流路における高圧の作動流体を微小隙間へと供給する高圧作動流体供給通路を周壁部に設けると共に、その微小隙間に供給された高圧の作動流体を蓄圧室へと流入させる圧抜き通路をガイド部に設ける一方、その弁体の周壁部をガイド部の内周面側に配置した場合には、上記の高圧作動流体供給通路をガイド部に設けると共に、上記の圧抜き通路を周壁部に設けている。
【0014】
この請求項1記載の発明によれば、高圧作動流体流路と蓄圧室との間の差圧によって微小隙間に静圧が発生し、その微小隙間に静圧軸受が形成される。これが為、弁体は、ガイド部に非接触状態で保持される。また、その静圧軸受を形成する為に、例えば高圧ポンプ等の装置に代表される機械的な高圧供給手段を必要としない。
【0015】
ここで、請求項2記載の発明の如く、上記請求項1記載の静圧軸受弁において、弁体の周壁部をガイド部の外周面側に配置した場合には、その周壁部の開口端側で且つ微小隙間側の壁面にラビリンスを設ける一方、弁体の周壁部をガイド部の内周面側に配置した場合には、そのガイド部の開口端側で且つ微小隙間側の壁面にラビリンスを設ける。そして、圧抜き通路は、弁体の往復運動方向にて高圧作動流体供給通路とラビリンスとの間に配置することが好ましい。
【0016】
これにより、微小隙間に発生した静圧を保持することができる。
【0017】
また、請求項3記載の発明の如く、上記請求項1又は2に記載の静圧軸受弁において、連通路は、蓄圧室から作動流体動作室への流路抵抗が小さく且つ当該作動流体動作室から当該蓄圧室への流路抵抗が大きくなるよう構成することが好ましい。
【0018】
これにより、作動流体動作室から蓄圧室への作動流体の逆流を抑制することができるので、高圧作動流体流路と蓄圧室との間の差圧を保ち、有効に静圧を発生させることができる。
【0019】
また、請求項4記載の発明の如く、上記請求項1,2又は3に記載の静圧軸受弁において、弁体の往復運動方向における当該弁体とガイド部との間に空間を設けると共に、その弁体に前記空間と蓄圧室とを連通させる連通孔を設けることが好ましい。
【0020】
これにより、弁体の往復運動に伴う空間(弁体作動室)の容積変化によって発生し得る当該空間内の作動流体の圧縮又は膨張を抑制することができるので、摩擦損失の増加を回避することができる。
【0021】
更に、上記目的を達成する為、請求項5記載の発明では、高圧の作動流体を生成する作動流体動作室と当該高圧の作動流体が排出される高圧作動流体流路とを連通又は遮断させる筒状の弁体と、この弁体の周壁部との間に微小隙間を形成すると共に当該弁体を軸線方向へと案内する筒状のガイド部とを備え、その弁体の内方に蓄圧室を設けると共に、その弁体に作動流体動作室で生成された高圧の作動流体を蓄圧室へと供給する連通路を設けている。そして、その弁体の周壁部をガイド部の外周面側に配置した場合には、蓄圧室における高圧の作動流体を微小隙間へと供給する高圧作動流体供給通路をガイド部に設けると共に、その微小隙間に供給された高圧の作動流体を高圧作動流体流路へと流入させる圧抜き通路を周壁部に設ける一方、その弁体の周壁部をガイド部の内周面側に配置した場合には、上記の高圧作動流体供給通路を周壁部に設けると共に、上記の圧抜き通路をガイド部に設けている。
【0022】
この請求項5記載の発明によれば、前述した請求項1記載の発明と同様に、蓄圧室と高圧作動流体流路との間の差圧によって微小隙間に静圧が発生し、その微小隙間に静圧軸受が形成される。これが為、弁体は、ガイド部に非接触状態で保持される。また、その静圧軸受を形成する為に、例えば高圧ポンプ等の装置に代表される機械的な高圧供給手段を必要としない。
【0023】
ここで、請求項6記載の発明の如く、上記請求項5記載の静圧軸受弁において、弁体の周壁部をガイド部の外周面側に配置した場合には、そのガイド部の開口端側で且つ微小隙間側の壁面にラビリンスを設ける一方、弁体の周壁部をガイド部の内周面側に配置した場合には、その周壁部の開口端側で且つ微小隙間側の壁面にラビリンスを設ける。そして、圧抜き通路は、弁体の往復運動方向にて高圧作動流体供給通路とラビリンスとの間に配置することが好ましい。
【0024】
これにより、微小隙間に発生した静圧を保持することができる。
【0025】
また、請求項7記載の発明の如く、上記請求項5又は6に記載の静圧軸受弁において、連通路は、作動流体動作室から蓄圧室への流路抵抗が小さく且つ当該蓄圧室から当該作動流体動作室への流路抵抗が大きくなるよう構成することが好ましい。
【0026】
これにより、蓄圧室から作動流体動作室への作動流体の逆流を抑制することができるので、蓄圧室と高圧作動流体流路との間の差圧を保ち、有効に静圧を発生させることができる。
【0027】
また、請求項8記載の発明の如く、上記請求項5,6又は7に記載の静圧軸受弁において、弁体の往復運動方向における当該弁体とガイド部との間に空間を設けると共に、ガイド部に前記空間と高圧作動流体流路とを連通させる連通孔を設けることが好ましい。
【0028】
これにより、弁体の往復運動に伴う空間(弁体作動室)の容積変化によって発生し得る当該空間内の作動流体の圧縮又は膨張を抑制することができるので、摩擦損失の増加を回避することができる。
【0029】
更に、請求項9記載の発明の如く、上記請求項1,2,3,5,6又は7に記載の静圧軸受弁において、弁体の往復運動方向における当該弁体とガイド部との間に空間を設けると共に、この空間内の圧力を制御する圧力制御手段を設けることが好ましい。
【0030】
これにより、その空間内(弁体作動室内)の圧力を調節して弁体を開弁させることができるので、例えば高圧ポンプ等の装置に代表される機械的な開弁手段を必要としない。これが為、更なる摩擦損失の低減を図ることが可能になる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る静圧軸受弁は、弁体とガイド部との間の微小隙間に形成された静圧軸受によって当該弁体をガイド部に非接触状態で保持することができるので、潤滑油を用いずとも弁体が開閉動作する際の摺動抵抗を小さくすることができる。これが為、その開閉動作時の摩擦損失を低減することができ、耐久性の向上をも図ることができる。また、高圧ポンプ等の装置に代表される機械的な高圧供給手段等を用いずとも静圧軸受を形成することができるので、その高圧供給手段等の故障等を考慮せずともよく、信頼性が向上し、このことによっても耐久性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に、本発明に係る静圧軸受弁の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0033】
本発明に係る静圧軸受弁の実施例1を図1から図4に基づいて説明する。
【0034】
図1の符号1は、本実施例1の静圧軸受弁を示す。本実施例1の静圧軸受弁1は、例えば、膨張機の吸入弁,即ち圧縮された高圧の作動流体を作動流体動作室へと導入する一方、その作動流体動作室を密閉する為の吸入弁として用いる場合を例示したものである。
【0035】
最初に、ここで例示する膨張機の概要について説明する。
【0036】
本実施例1の膨張機は、図1に示す如く、例えば圧縮機等から圧縮された高圧の作動流体(例えば空気等の気体)が送り込まれる作動流体流路(以下、「高圧作動流体流路」という。)2と、この高圧作動流体流路2の高圧の作動流体が導入されて膨張を行う作動流体動作室3と、その高圧作動流体流路2における高圧の作動流体を作動流体動作室3に導入する作動流体導入孔4とを備えている。ここで、その作動流体動作室3は、シリンダ3aの内壁面と当該シリンダ3a内を往復運動するピストン3bの頂面とで囲まれた空間によって構成される。
【0037】
この膨張機においては、ピストン3bが上死点近傍に位置しているときに、高圧作動流体流路2における高圧の作動流体が作動流体導入孔4を介して作動流体動作室3へと導入されて密封される。これにより、その作動流体動作室3内で高圧の作動流体が膨張し始めてピストン3bを押下する(下降させる)ので、この膨張機は、そのピストン3bに連結されたコネクティングロッド3cを介してクランクシャフト3dから動力を発生させる。
【0038】
ここで、そのシリンダ3aの周壁にはピストン3bが下死点近傍に位置しているときの作動流体動作室3と連通する作動流体流路(以下、「作動流体排出流路」という。)3eが設けられている。これが為、その作動流体排出流路3eから作動流体動作室3内における膨張後の作動流体が排出され、その後、クランクシャフト3dの回転に伴ってピストン3bが再び上死点に向けて上昇する。
【0039】
この種の膨張機においては、高圧の作動流体の吸入行程で高圧作動流体流路2と作動流体動作室3との間の作動流体導入孔4を開口させる一方、それ以外の膨張行程や排出行程では作動流体導入孔4を閉塞させる必要がある。これが為、この膨張機には作動流体導入孔4を開閉可能な開閉弁,即ち高圧の作動流体の吸入弁が設けられている。本実施例1にあっては、その吸入弁として以下に示す静圧軸受弁1を適用する。
【0040】
以下、本実施例1の静圧軸受弁1について詳述する。
【0041】
本実施例1の静圧軸受弁1は、図2に示す如く、略円形の作動流体導入孔4を開閉し得る一端が開口された筒状の弁体5と、この弁体5をその軸線方向に案内する弁体ガイド部材6とを備えており、高圧作動流体流路2に形成された静圧軸受弁保持孔2aから高圧作動流体流路2内へと挿入して配置される。
【0042】
具体的に、先ず、本実施例1の弁体5には、略円形の作動流体導入孔4を高圧作動流体流路2側から閉塞可能な略円形の導入孔閉塞部5aと、この導入孔閉塞部5aの周縁から高圧作動流体流路2の内方に立設された筒状の周壁部5bとが設けられている。この周壁部5bは、その内周面においては後述するガイド部6aにより弁体5が案内される役目を果たす一方、その外周面においては作動流体の気流ガイドの役目を果たす。即ち、導入孔閉塞部5aからの連続形状として形成された周壁部5bの外周面によって、作動流体の流線が整えられ、縮流損失が軽減される。
【0043】
また、この静圧軸受弁1を構成する弁体ガイド部材6には、弁体5の周壁部5bとの間に微小隙間gを形成すると共に当該弁体5を軸線方向へと案内する筒状のガイド部6aと、このガイド部6aを高圧作動流体流路2内に係止すると共に静圧軸受弁保持孔2aを閉塞する係止部6bとが設けられている。
【0044】
本実施例1にあっては、弁体5の内方にガイド部6aを配置することによって、周壁部5bの内周面とガイド部6aの外周面との間に上述した微小隙間gを形成する一方、そのガイド部6aの外周面に沿って弁体5を軸線方向へと案内させる。
【0045】
ここで、本実施例1の静圧軸受弁1においては、上記弁体5に対して閉弁方向の押圧力を常時掛けている閉弁手段7が設けられている。この閉弁手段7とは、弁体5に対する開弁状態の解除動作(ここでは、後述するピストン3bの下降)に伴って当該弁体5を閉弁動作させると共に、この弁体5よる作動流体導入孔4の閉塞状態(即ち閉弁状態)を保持させるものである。
【0046】
例えば、この閉弁手段7としては図2に示す弦巻バネ等の弾性部材を用いることができる。本実施例1にあっては、弁体5の導入孔閉塞部5aと弁体ガイド部材6の係止部6bとの間に弾性部材を配置して閉弁手段7を構成し、作動流体導入孔4を閉塞し得る押圧力を発生させる。ところで、本実施例1では、その弾性部材を弁体5及び弁体ガイド部材6の内方に配置しているので、作動流体の流線が乱れることなく、また、弾性部材が伸縮する際の作動音の外部への漏れを回避することができる。
【0047】
一方、本実施例1にあっては、上記の閉弁状態を解除して高圧作動流体流路2と作動流体動作室3とを連通させる開弁手段も設けられている。例えば、本実施例1の開弁手段としては、ピストン3bの頂面の略中央に突設した図1に示す突出部(以下「弁体押圧用突出部」という。)3fを用いる。即ち、一般に、膨張機においては、ピストン3bが上死点近傍に位置しているときに高圧の作動流体を作動流体動作室3へと吸入させる。これが為、ピストン3bの頂面に上記の如き弁体押圧用突出部3fを設けることによって、ピストン3bが上死点近傍まで上昇した際に弁体押圧用突出部3fで弁体5を閉弁手段(弾性部材)7の押圧力に抗して押動することができるので、吸入行程において高圧作動流体流路2と作動流体動作室3とを連通させることができる。
【0048】
更に、本実施例1の静圧軸受弁1には、その弁体5を弁体ガイド部材6に非接触状態で軸支させる静圧軸受8が設けられている。本実施例1の静圧軸受8とは、高圧作動流体流路2における高圧の作動流体を前述した微小隙間gに噴出させ、発生した静圧で弁体5をガイド部6aに対して浮上させるものである。即ち、この静圧軸受8は、その微小隙間gに供給された高圧の作動流体で流体潤滑膜を形成することによって弁体5をガイド部6aに非接触状態で軸支し、これにより、その弁体5が動作する際の摺動抵抗を低減させるものである。
【0049】
そこで、先ず、本実施例1における弁体5の周壁部5bには、微小隙間gと高圧作動流体流路2とを連通させ、その微小隙間gへと高圧作動流体流路2における高圧の作動流体を供給する高圧作動流体供給通路9が設けられている。
【0050】
本実施例1の高圧作動流体供給通路9は、図2及び図3−1に示す如く、高圧作動流体流路2側のオリフィス9aと、このオリフィス9aよりも大径の微小隙間g側の拡大部9bとで構成される。尚、そのオリフィス9aの直径と拡大部9bの直径は、夫々弁体5の仕様等に応じて適宜最適な値を設定する。また、微小隙間gのクリアランスについても同様に適宜最適な値(例えば、15μm〜30μm程度)を設定する。
【0051】
また、本実施例1の静圧軸受弁1においては、弁体5の内方と弁体ガイド部材6の内方とにより囲まれた空間(以下、「蓄圧室」という。)10が形成されている。この蓄圧室10は、高圧作動流体流路2よりも相対的に低圧である。これが為、高圧作動流体流路2における高圧の作動流体は、オリフィス9aを通って拡大部9bで拡がり、弁体5の周壁部5bの内周面とガイド部6aの外周面との間の微小隙間gに噴出されて、弁体5をガイド部6aに対して浮上させる。即ち、高圧作動流体流路2と蓄圧室10との間の差圧によって微小隙間gに流体潤滑膜としての高圧の作動流体が供給されて静圧が発生し、弁体5がガイド部6aに対して浮上する。
【0052】
その拡大部9bは、微小隙間gにおける高圧の作動流体を溜めて蓄圧する機能を有している。これが為、弁体5の動作開始時には受圧面積が大きくなり、より大きな力で安定して弁体5を浮上させることができる。
【0053】
また、弁体5が動作し始めた後に微小隙間gのクリアランスが変化した場合には、オリフィス9aによって作動流体の流量が調整されるので、その微小隙間gのクリアランスを略一定に保つことができる。
【0054】
一方、そのオリフィス9aは、弁体5の移動速度が遅い場合には微小隙間gのクリアランスを保持させ易いが、その移動速度が速い場合には、これのみをもって流量を調整し切れずにクリアランスを略一定に保てない虞もある。
【0055】
そこで、本実施例1における弁体ガイド部材6のガイド部6aには、その微小隙間gと蓄圧室10とを連通させ、その微小隙間gの高圧の作動流体を蓄圧室10へと流出可能な圧抜き通路11が設けられている。
【0056】
本実施例1の圧抜き通路11は、ガイド部6aの軸線方向に対して、弁体5の開口端と高圧作動流体供給通路9との間に配置される。その圧抜き通路11は、図2及び図3−2に示す如く、蓄圧室10側のオリフィス11aと、このオリフィス11aの径よりも幅の広い周方向に穿設された微小隙間g側の拡大グルーブ11bとで構成される。尚、そのオリフィス11aの直径と拡大グルーブ11bの直径は、夫々ガイド部6aの仕様等に応じて適宜最適な値を設定する。
【0057】
これにより、例えば、微小隙間gのクリアランスに変化が生じる場合には、微小隙間gにおける高圧の作動流体が拡大グルーブ11bを介してオリフィス11aから蓄圧室10に噴出される。これが為、そのクリアランスを略一定に保つことができる。
【0058】
ここで、本実施例1の高圧作動流体供給通路9及び圧抜き通路11のオリフィス11aは、弁体5及びガイド部6aの中心軸に対して対称に2つ配置されており、均等な静圧の発生を図っている。
【0059】
また、本実施例1にあっては、圧抜き通路11よりも弁体5の周壁部5bの開口端側で且つ微小隙間g側の壁面にラビリンスシール12を設けている。即ち、弁体5の往復運動方向において、高圧作動流体供給通路9とラビリンスシール12との間に圧抜き通路11を配置している。これが為、その微小隙間gに発生した静圧を保持することができる。
【0060】
また、本実施例1にあっては、上述した高圧作動流体流路2と蓄圧室10との間の差圧を保つ,即ち蓄圧室10を高圧作動流体流路2よりも低圧に保持しておく為に、その蓄圧室10と作動流体動作室3とを連通させる連通路13が弁体5の導入孔閉塞部5aの略中央に設けられている。
【0061】
この連通路13は、蓄圧室10の作動流体を作動流体動作室3へと供給して上記の差圧を保持するものである。例えば、微小隙間gからの作動流体の供給や弁体押圧用突出部3fによる弁体5の押圧に伴い蓄圧室10の圧力が上昇し、微小隙間gの静圧を維持し得るだけの高圧作動流体流路2と蓄圧室10との間の差圧が確保されなくなった場合に、連通路13から蓄圧室10の作動流体が作動流体動作室3へと供給されるので、上記の差圧を保持することができる。
【0062】
しかしながら、弁体5が往復運動し始める前(即ちピストン3bの弁体押圧用突出部3fが弁体5を押し上げる吸入行程の前)又は膨張工程の初期においては、作動流体動作室3の方が蓄圧室10よりも高圧になり、その連通路13の形状如何で作動流体動作室3の残留作動流体や膨張中の作動流体が蓄圧室10へと流入し、高圧作動流体流路2と蓄圧室10との間の差圧を保持することができなくなってしまう虞がある。
【0063】
そこで、本実施例1の連通路13は、蓄圧室10から作動流体動作室3への作動流体の流入(順流)が可能で且つ作動流体動作室3から蓄圧室10への逆流を抑止し得るように構成する。即ち、図2に示す如く、作動流体動作室3側に絞りを設けて順流と逆流の流量係数に差をつけ、蓄圧室10から作動流体動作室3への流路抵抗が小さく且つ当該作動流体動作室3から当該蓄圧室10への流路抵抗が大きくなるよう構成する。
【0064】
例えば、本実施例1にあっては、その連通路13を図4に示す如き流体素子で構成する。
【0065】
この流体素子は、蓄圧室10側の開口部13aの曲率R1が作動流体動作室3側の開口部13bの曲率R2よりも相対的に大きく形成されている。その作動流体動作室3側の開口部13bの曲率R2は、極めて小さく設定し、限りなく0に近くすることが好ましい。ここで、蓄圧室10側の開口部13aは、突起のない滑らかな表面に形成する一方、作動流体動作室3側の開口部13bは、作動流体動作室3に向けて高さhの突起を突出させる。また、作動流体動作室3側の開口13b1の端面13b2は、通路13cの軸線方向となす角度θを鋭角に形成する。これにより、作動流体は、蓄圧室10側の開口13a1からは作動流体動作室3へと滑らかに流れ込むが、作動流体動作室3の開口13b1からは蓄圧室10へと流入し難くなる。
【0066】
ここで、本実施例1の弁体5はピストン3bの弁体押圧用突出部3fにより押圧されるので、その際に弁体押圧用突出部3fと流体素子とが当接しないよう弁体押圧用突出部3fに凹部等の逃げ形状を設ける。
【0067】
尚、連通路13は、流体素子に替えて逆止弁を用いて構成してもよい。
【0068】
このように、本実施例1の静圧軸受弁1においては、微小隙間g,高圧作動流体供給通路9,蓄圧室10,圧抜き通路11,ラビリンスシール12及び連通路13により構成され、高圧作動流体流路2と蓄圧室10との間の差圧により静圧を発生させる静圧軸受8を弁体5の保持機構として設けている。
【0069】
これが為、その静圧軸受8が弁体5を動作させる際の摺動抵抗を軽減するので、摩擦損失の少ない静圧軸受弁1を構築することができ、エネルギ効率の悪化を抑制することができる。また、その静圧軸受8によって、潤滑油を要せずとも弁体5の開閉動作を行うことができる。
【0070】
更に、この静圧軸受弁1は、高圧の作動流体が流れる高圧作動流体流路2とこれよりも相対的に低圧の蓄圧室10との間における差圧を利用して静圧軸受8を構成するので、静圧軸受8を構成する為に別途高圧源等を設けなくてもよく、簡易かつ安価に構築することができる。
【実施例2】
【0071】
次に、本発明に係る静圧軸受弁の実施例2を図5に基づいて説明する。本実施例2の静圧軸受弁21は、前述した実施例1と同様に膨張機の吸入弁として好適なものであって、その実施例1で例示した膨張機に適用されるものとして例示する。
【0072】
前述した実施例1にあっては弁体5の内方にガイド部6aを配置した静圧軸受弁1を例示したが、本実施例2にあっては、その逆、即ち、ガイド部6aの内方に弁体5を配置したものを例示する。以下に、かかる場合の構成について図5を用いて説明する。
【0073】
本実施例2の静圧軸受弁21は、実施例1の静圧軸受弁1と同様に、略円形の作動流体導入孔4を開閉し得る一端が開口された筒状の弁体25と、この弁体25を軸線方向に案内する弁体ガイド部材26と、弁体25を閉弁動作させると共に当該弁体25による作動流体導入孔4の閉塞状態を保持し得る閉弁手段(弦巻バネ等の弾性部材)27と、その弁体25を弁体ガイド部材26に非接触状態で軸支する静圧軸受28とを備えており、高圧作動流体流路2の静圧軸受弁保持孔2aから高圧作動流体流路2内へと挿入して配置される。
【0074】
ここで、その弁体25には、実施例1の弁体5と同様の導入孔閉塞部25aと周壁部25bとが設けられており、その導入孔閉塞部25aの略中央に実施例1と同様の連通路33が形成されている。一方、弁体ガイド部材26には、実施例1の弁体ガイド部材6と同様のガイド部26aと係止部26bとが設けられており、そのガイド部26aの内周面と周壁部25bの外周面との間に微小隙間gが形成されている。
【0075】
この静圧軸受弁21は、ガイド部26aの内方に弁体25が配置されていても、その弁体25が実施例1の静圧軸受弁1と同様に動作するが、その一方で、弁体25の周壁部25bとガイド部26aとの位置関係が実施例1に対して入れ替えられているので、静圧軸受28を構成する為には高圧作動流体供給通路29と圧抜き通路31とラビリンスシール32の配置を変更しなければならない。
【0076】
具体的に、先ず、本実施例2にあっては、高圧作動流体供給通路29をガイド部26aに設けて微小隙間gと高圧作動流体流路2とを連通させる。この高圧作動流体供給通路29は、高圧作動流体流路2側のオリフィス29aと、このオリフィス29aよりも大径の微小隙間g側の拡大部29bとで構成される。
【0077】
また、圧抜き通路31は、弁体25の周壁部25bに設けて微小隙間gと蓄圧室30とを連通させる。この圧抜き通路31は、蓄圧室30側のオリフィス31aと、このオリフィス31aの径よりも幅の広い周方向に穿設された微小隙間g側の拡大グルーブ31bとで構成され、弁体25の軸線方向にてガイド部26aの開口端と高圧作動流体供給通路29との間に配置される。
【0078】
これにより、高圧作動流体流路2における高圧の作動流体は、オリフィス29aを通って拡大部29bで拡がり、微小隙間gへと噴出される。一方、微小隙間gに供給された高圧の作動流体は、拡大グルーブ31bを介してオリフィス31aから蓄圧室30に噴出される。
【0079】
ここで、その蓄圧室30の圧力が上昇した際には、蓄圧室30の作動流体が連通路33を介して作動流体動作室3へと流入するので、高圧作動流体流路2と蓄圧室30との間の適正な差圧を確保することができる。尚、その連通路33は、実施例1の連通路13と同様に、作動流体動作室3から蓄圧室30への作動流体の逆流を抑制する。
【0080】
このようにして、本実施例2の静圧軸受弁21は、実施例1の静圧軸受8と同様に、高圧作動流体流路2と蓄圧室30との間の差圧で微小隙間gに静圧を発生させて静圧軸受28を構成し、弁体25をガイド部26aに対して浮上させる。
【0081】
かかる構成においても、上述した拡大部29bは、微小隙間gにおける高圧の作動流体を溜めて蓄圧する機能を有しているので、弁体25の動作時には受圧面積が大きくなり、より大きな力で安定した弁体25の浮上を図ることができる。
【0082】
また、弁体25が往復運動し始めた後に微小隙間gのクリアランスが変化した場合には、オリフィス29aによって作動流体の流量が調整されるので、その微小隙間gのクリアランスを略一定に保つことができる。
【0083】
ここで、本実施例2にあっても、圧抜き通路31よりもガイド部26aの開口端側で且つ微小隙間g側の壁面にラビリンスシール32が設けられている。即ち、弁体25の往復運動方向において、高圧作動流体供給通路29とラビリンスシール32との間に圧抜き通路31が配置されている。これが為、その微小隙間gに発生した静圧を保持することができる。
【0084】
このように、本実施例2においても、前述した実施例1と同様に、微小隙間g,高圧作動流体供給通路29,蓄圧室30,圧抜き通路31,ラビリンスシール32及び連通路33により構成され、高圧作動流体流路2と蓄圧室30との間の差圧により静圧を発生させる静圧軸受28を弁体25の保持機構として設けている。
【0085】
これが為、本実施例2の静圧軸受弁21は、実施例1と同様に、弁体25が開閉動作する際の摺動抵抗を軽減して摩擦損失の低減を図ることができるので、エネルギ効率の悪化を抑制することができる。また、潤滑油を要せずとも弁体25の開閉動作を行うことができる。
【0086】
更に、この静圧軸受弁21は、高圧の作動流体が流れる高圧作動流体流路2とこれよりも相対的に低圧の蓄圧室30との間における差圧を利用して静圧軸受28を構成するので、静圧軸受28を構成する為に別途高圧源等を設けなくてもよく、簡易かつ安価に構築することができる。
【実施例3】
【0087】
次に、本発明に係る静圧軸受弁の実施例3を図6及び図7に基づいて説明する。
【0088】
図6の符号41は、本実施例3の静圧軸受弁を示す。本実施例3の静圧軸受弁41は、例えば、圧縮機の排出弁,即ち作動流体動作室で圧縮された作動流体を排出する為の排出弁として用いる場合を例示したものである。
【0089】
最初に、ここで例示する圧縮機の概要について説明する。
【0090】
本実施例3の圧縮機は、図6に示す如く、供給された作動流体を圧縮する作動流体動作室42と、この作動流体動作室42で生成された高圧の作動流体が排出される高圧作動流体流路43と、その作動流体動作室42における高圧の作動流体を高圧作動流体流路43へと排出する作動流体排出孔44とを備えている。ここで、その作動流体動作室42は、シリンダ42aの内壁面と当該シリンダ42a内を往復運動するピストン42bの頂面とで囲まれた空間によって構成される。
【0091】
この圧縮機においては、ピストン42bが下死点近傍に位置しているときに、シリンダ42aの周壁に設けた作動流体供給通路42cから作動流体が作動流体動作室42へと供給され、その後、コネクティングロッド42d及びクランクシャフト42eを介してピストン42bが上昇して作動流体動作室42の作動流体を圧縮する。
【0092】
ここで、この圧縮機のピストン42bにおいても、前述した実施例1,2の膨張機と同様に、その頂面に弁体押圧用突出部(開弁手段)42fが設けられており、ピストン42bが上死点近傍まで上昇した際に後述する静圧軸受弁41の弁体45を押し上げる。これにより、高圧の作動流体は、作動流体排出孔44を介して高圧作動流体流路43へと排出される。
【0093】
この種の圧縮機においては、高圧の作動流体の排出行程で作動流体動作室42と高圧作動流体流路43との間の作動流体排出孔44を開口させる一方、それ以外の圧縮行程や吸入行程では作動流体排出孔44を閉塞させる必要がある。これが為、この圧縮機には作動流体排出孔44を開閉可能な高圧の作動流体の排出弁が設けられている。本実施例3にあっては、その排出弁として以下に示す静圧軸受弁41を適用する。
【0094】
以下、本実施例3の静圧軸受弁41について詳述する。
【0095】
本実施例3の静圧軸受弁41は、図7に示す如く、実施例1の静圧軸受弁1と同様の外観形状及び位置関係からなる排出孔閉塞部45a及び周壁部45bを有する弁体45,ガイド部46a及び係止部46bを有する弁体ガイド部材46,閉弁手段(弦巻バネ等の弾性部材)47並びに微小隙間gの静圧軸受48を備えており、高圧作動流体流路43に形成された静圧軸受弁保持孔43aから高圧作動流体流路43内へと挿入して配置される。その弁体45の内方と弁体ガイド部材46の内方とにより囲まれた空間は、実施例1と同様に蓄圧室50として構成される。
【0096】
尚、本実施例3にあっても、その閉弁手段47の押圧力に抗して弁体45を押し上げる開弁手段としての弁体押圧用突出部42fが上述したが如くピストン42bに設けられている。
【0097】
ここで、本実施例3の圧縮機において静圧軸受48を成すに十分な作動流体動作室42と高圧作動流体流路43との間の差圧は、圧縮行程において発生する。即ち、圧縮行程においては、高圧作動流体流路43よりも作動流体動作室42の方が十分に高圧になる。一方、排出行程や吸入行程においては、その間に適正な差圧が発生し得ない。また、静圧軸受48を成す為には、実施例1と同様に微小隙間gへと高圧の作動流体を供給する必要がある。これが為、本実施例3にあっては、作動流体動作室42で生成された高圧の作動流体を蓄圧室50へと供給し、この蓄圧室50を介して高圧の作動流体を微小隙間gに供給する。
【0098】
そこで、本実施例3における弁体45の導入孔閉塞部45aの略中央に作動流体動作室42と蓄圧室50とを連通させる連通路53を設け、弁体ガイド部材46のガイド部46aに高圧作動流体供給通路49を形成し、弁体45の周壁部45bに圧抜き通路51を形成している。
【0099】
ここで、排出行程を終えた後にピストン42bが下降していくと作動流体動作室42には負圧が発生するので、その連通路53は、実施例1の連通路13とは逆に構成する。即ち、蓄圧室50側に絞りを設けて順流と逆流の流量係数に差をつけ、作動流体動作室42から蓄圧室50への流路抵抗が小さく且つ当該蓄圧室50から当該作動流体動作室42への流路抵抗が大きくなるよう構成する。この連通路53についても、実施例1,2と同様の流体素子で構成することができる。これにより、弁体45によって作動流体排出孔44が閉塞されている圧縮行程において作動流体動作室42の高圧の作動流体が蓄圧室50へと供給され、この蓄圧室50は、作動流体動作室42よりも低く、高圧作動流体流路43よりも高い中間の圧力になる。
【0100】
尚、本実施例3にあっても、その連通路53は、流体素子に替えて逆止弁を用いて構成してもよい。
【0101】
また、本実施例3の高圧作動流体供給通路49は、蓄圧室50側のオリフィス49aと、このオリフィス49aよりも大径の微小隙間g側の拡大部49bとで構成される。また、圧抜き通路51は、高圧作動流体流路43側のオリフィス51aと、このオリフィス51aの径よりも幅の広い周方向に穿設された微小隙間g側の拡大グルーブ51bとで構成される。
【0102】
ここで、本実施例3のガイド部46aの開口端側で且つ微小隙間g側の壁面にはラビリンスシール52が設けられており、上述した圧抜き通路51は、弁体45の往復運動方向において、そのラビリンスシール52と高圧作動流体供給通路49との間に配置されるので、その微小隙間gに発生した静圧を保持することができる。また、本実施例3にあっても、高圧作動流体供給通路49及び圧抜き通路51のオリフィス51aを弁体45及びガイド部46aの中心軸に対して対称に2つ配置して、均等な静圧の発生を図っている。
【0103】
以上示したが如く構成された静圧軸受弁41において、蓄圧室50における高圧の作動流体は、オリフィス49aを通って拡大部49bで拡がり、微小隙間gへと噴出される。一方、微小隙間gに供給された高圧の作動流体は、拡大グルーブ51bを介してオリフィス51aから高圧作動流体流路43に噴出される。即ち、高圧作動流体流路43と蓄圧室50との間の差圧によって微小隙間gに静圧が発生し、弁体45がガイド部46aに対して浮上する。
【0104】
また、本実施例3の静圧軸受48においても、上述した拡大部49bは、微小隙間gにおける高圧の作動流体を溜めて蓄圧する機能を有している。これが為、弁体45の動作時には受圧面積が大きくなり、より大きな力で安定した弁体45の浮上を図ることができる。
【0105】
更に、弁体45が往復運動し始めた後に微小隙間gのクリアランスが変化した場合には、オリフィス49aによって作動流体の流量が調整されるので、その微小隙間gのクリアランスを略一定に保つことができる。
【0106】
このように、圧縮機に好適な本実施例3の静圧軸受弁41においても、微小隙間g,高圧作動流体供給通路49,蓄圧室50,圧抜き通路51,ラビリンスシール52及び連通路53により構成され、高圧作動流体流路43と蓄圧室50との間の差圧により静圧を発生させる静圧軸受48を弁体45の保持機構として設けている。
【0107】
これが為、その静圧軸受48は弁体45が開閉動作する際の摺動抵抗を軽減するので、摩擦損失の少ない静圧軸受弁41を構築することができ、エネルギ効率の悪化を抑制することができる。また、その静圧軸受48によれば、潤滑油を要せずとも弁体45の開閉動作を行うことができる。
【0108】
更に、この静圧軸受弁41は、高圧の作動流体が供給される蓄圧室50とこれよりも相対的に低圧の高圧作動流体流路43との間における差圧を利用して静圧軸受48を構成するので、静圧軸受48を構成する為に別途高圧源等を設けなくてもよく、簡易かつ安価に構築することができる。
【実施例4】
【0109】
次に、本発明に係る静圧軸受弁の実施例4を図8に基づいて説明する。本実施例4の静圧軸受弁61は、前述した実施例3と同様に圧縮機の排出弁として好適なものであって、その実施例3で例示した圧縮機に適用されるものとして例示する。
【0110】
前述した実施例3にあっては弁体45の内方にガイド部46aを配置した静圧軸受弁41を例示したが、本実施例4にあっては、その逆、即ち、ガイド部46aの内方に弁体45を配置したものを例示する。以下に、かかる場合の構成について図8を用いて説明する。
【0111】
本実施例4の静圧軸受弁61は、図8に示す如く、実施例2の静圧軸受弁21と同様の外観形状及び位置関係からなる排出孔閉塞部65a及び周壁部65bを有する弁体65,ガイド部66a及び係止部66bを有する弁体ガイド部材66,閉弁手段(弦巻バネ等の弾性部材)67並びに微小隙間gの静圧軸受68を備えており、高圧作動流体流路43に形成された静圧軸受弁保持孔43aから高圧作動流体流路43内へと挿入して配置される。その弁体65の内方と弁体ガイド部材66の内方とにより囲まれた空間は、蓄圧室70として構成される。
【0112】
ここで、本実施例4にあっては、弁体65の導入孔閉塞部65aの略中央に作動流体動作室42と蓄圧室70とを連通させる実施例3と同様の連通路73を設けている。
【0113】
また、実施例3とは逆に、弁体65の周壁部65bに微小隙間gと蓄圧室70とを連通させる高圧作動流体供給通路69を形成し、弁体ガイド部材66のガイド部66aに微小隙間gと高圧作動流体流路43とを連通させる圧抜き通路71を形成している。
【0114】
その高圧作動流体供給通路69は、蓄圧室70側のオリフィス69aと、このオリフィス69aよりも大径の微小隙間g側の拡大部69bとで構成される。また、その圧抜き通路71は、高圧作動流体流路43側のオリフィス71aと、このオリフィス71aの径よりも幅の広い周方向に穿設された微小隙間g側の拡大グルーブ71bとで構成され、ガイド部66aの軸線方向にて弁体65の開口端と高圧作動流体供給通路69との間に配置される。
【0115】
また、本実施例3のラビリンスシール72については、圧抜き通路71よりも弁体65の周壁部65bの開口端側で且つ微小隙間g側の壁面に設ける。即ち、その弁体65の往復運動方向において、高圧作動流体供給通路69とラビリンスシール72との間に圧抜き通路71を配置し、その微小隙間gに発生した静圧を保持している。
【0116】
このように構成された本実施例4の静圧軸受弁61においては、蓄圧室70に供給された高圧の作動流体がオリフィス69aを通って拡大部69bで拡がり、微小隙間gへと噴出される。一方、微小隙間gに供給された高圧の作動流体は、拡大グルーブ71bを介してオリフィス71aから高圧作動流体流路43に噴出される。即ち、高圧作動流体流路43と蓄圧室70との間の差圧によって微小隙間gに静圧が発生し、弁体65がガイド部66aに対して浮上する。
【0117】
また、本実施例4の静圧軸受68においても、上述した拡大部69bは、微小隙間gにおける高圧の作動流体を溜めて蓄圧する機能を有している。これが為、弁体65の動作時には受圧面積が大きくなり、より大きな力で安定した弁体65の浮上を図ることができる。
【0118】
更に、弁体65が往復運動し始めた後に微小隙間gのクリアランスが変化した場合には、オリフィス69aによって作動流体の流量が調整されるので、その微小隙間gのクリアランスを略一定に保つことができる。
【0119】
このように、本実施例4にあっても、前述した実施例3と同様に、微小隙間g,高圧作動流体供給通路69,蓄圧室70,圧抜き通路71,ラビリンスシール72及び連通路73により構成され、高圧作動流体流路43と蓄圧室70との間の差圧により静圧を発生させる静圧軸受68を弁体65の保持機構として設けている。
【0120】
これが為、その静圧軸受68は弁体65が開閉動作する際の摺動抵抗を軽減するので、摩擦損失の少ない静圧軸受弁61を構築することができ、エネルギ効率の悪化を抑制することができる。また、その静圧軸受68によれば、潤滑油を要せずとも弁体65の開閉動作を行うことができる。
【0121】
更に、この静圧軸受弁61は、高圧の作動流体が供給される蓄圧室70とこれよりも相対的に低圧の高圧作動流体流路43との間における差圧を利用して静圧軸受68を構成するので、静圧軸受68を構成する為に別途高圧源等を設けなくてもよく、簡易かつ安価に構築することができる。
【実施例5】
【0122】
次に、本発明に係る静圧軸受弁の実施例5を図9及び図10に基づいて説明する。本実施例5の静圧軸受弁81は、前述した実施例1,2と同様に膨張機の吸入弁として好適なものであって、その実施例1,2で例示した膨張機に適用されるものとして例示する。尚、本実施例5の静圧軸受弁81は、実施例1,2とは逆に作動流体動作室3側へと弁体85が押下されて作動流体導入孔4を開く構成のものであり、これが為、ピストン3bには弁体押圧用突出部3fを設けていない。
【0123】
本実施例5の静圧軸受弁81は、図9に示す如く、略円形の作動流体導入孔4を開閉する両端が閉塞された筒状の弁体85と、この弁体85を軸線方向に案内する弁体ガイド部材86と、その弁体85を閉弁動作させると共に当該弁体85による作動流体導入孔4の閉塞状態を保持し得る閉弁手段87と、その弁体85を弁体ガイド部材86に非接触状態で軸支する静圧軸受88とを備えている。
【0124】
具体的に、先ず、本実施例5の弁体85は、略円形の作動流体導入孔4を作動流体動作室3側から閉塞可能な円錐台形状の導入孔閉塞部85aと、この導入孔閉塞部85aの小径側から高圧作動流体流路2の内方に立設された筒状の周壁部85bと、この周壁部85bにおける立設方向の開口端を閉塞する頂面85cとを備えており、内部が蓄圧室90として機能するよう中空になっている。
【0125】
ここで、その周壁部85bにおける導入孔閉塞部85a側には周壁部85bよりも小径となるように絞り85b1が設けられており、この絞り85b1によって開弁時の作動流体の流路を確保している。
【0126】
また、本実施例5の弁体ガイド部材86には、弁体85の周壁部85bの外周面との間に微小隙間gを形成すると共に当該弁体85を軸線方向へと案内する筒状のガイド部86aと、このガイド部86aを高圧作動流体流路2内に係止すると共に静圧軸受弁保持孔2aを閉塞する係止部86bとが設けられている。
【0127】
このように、本実施例5の弁体85は、ガイド部86aの内方に配置され、そのガイド部86aの内周面に沿って開閉動作を行うように構成されている。本実施例5にあっては、その開閉動作を以下の如き構成によって行う。
【0128】
ここで、本実施例5の弁体85と弁体ガイド部材86との間(具体的には弁体85の頂面85cと弁体ガイド部材86の係止部86bとの間)には図9に示す空間94が形成されており、その空間94内に開閉動作を行わせる機構を配備する。以下、その「空間」を「弁体作動室」という。
【0129】
先ず、その弁体作動室94には、弁体85による作動流体導入孔4の閉塞状態を保持し得る手段として上述した閉弁手段87が設けられている。例えば、この閉弁手段87としては、図9及び図10に示す如き、一端が弁体85の頂面85cに保持される一方、他端がガイド部86aに保持されるトーションバーを備えた所謂トーショナルスプリングが考えられる。
【0130】
ここで、この閉弁手段87は、弁体85が如何様な位置にあっても閉弁方向の力を発生させるように設定(即ち、トーショナルスプリングの捻れの反力が常時掛かっている)されており、これにより、作動流体導入孔4の閉塞状態を保持し得ると共に、下記の開弁手段95による開弁動作の後に弁体85を閉弁させることができる。本実施例5にあっては、その閉弁方向の力が弁体85の軸線方向へと均等に発生するように閉弁手段87を2つ設けている。これが為、作動流体導入孔4の閉塞状態の均等化が図れると共に、閉弁時の弁体85の傾倒を抑制することができる。
【0131】
続いて、上述した弁体作動室94には、弁体85を押下して開弁させる一方、上記の閉弁手段87による閉弁動作を付勢する開弁手段95が設けられている。例えば、この開弁手段95としては、図9及び図10に示す如き、両端がガイド部86aに保持された主軸95aと、この主軸95aに対して偏心して回転するカム部材95bとを備えた所謂偏心カムが考えられる。本実施例5にあっては、そのカム部材95bを弁体85の頂面85cの略中央に設け、主軸95aの回転に連動して弁体85を押下させる。
【0132】
ここで、本実施例5の弁体85は、吸入行程にて開弁動作を行う必要があり、これが為、クランクシャフト3dの回転に連動して主軸95aを回転させることが好ましい。そこで、例えば、タイミングチェーンやスプロケット又はタイミングベルトやプーリ等を介してクランクシャフト3dの駆動力を主軸95aに伝達させる一方、吸入行程で開弁動作が行われるようにタイミングチェーン等の設定を行う。尚、その主軸95aは、電動モータ等で駆動してもよい。
【0133】
次に、本実施例5の静圧軸受88について説明する。本実施例5の静圧軸受88は、前述した実施例2の静圧軸受28と同様に構成されている。
【0134】
即ち、ガイド部86aには、高圧作動流体流路2側のオリフィス89a及び微小隙間g側の拡大部89bからなる高圧作動流体供給通路89と、開口端側で且つ微小隙間g側の壁面のラビリンスシール92とが実施例2と同等の位置関係で設けられている。また、弁体85には、蓄圧室90側のオリフィス91a及び微小隙間g側の拡大グルーブ91bからなる圧抜き通路91と、蓄圧室90と作動流体動作室3とを連通させる実施例2と同一形状の連通路93とが実施例2と同等の位置関係で設けられている。
【0135】
これにより、高圧作動流体流路2における高圧の作動流体は、オリフィス89aを通って拡大部89bで拡がり、微小隙間gへと噴出される。一方、微小隙間gに供給された高圧の作動流体は、拡大グルーブ91bを介してオリフィス91aから蓄圧室90に噴出される。
【0136】
ここで、本実施例5における弁体85の頂面85cには、蓄圧室90と上述した弁体作動室94とを連通させる連通孔85c1が形成されている。これが為、その蓄圧室90に供給された作動流体は、その連通孔85c1を介して弁体作動室94へと流入することができる。これにより、弁体作動室94の内圧が上昇して弁体85による作動流体導入孔4の閉塞力を高めることができるので、上述した閉弁手段(トーショナルスプリング)87のバネ力を軽減させることができ、その閉弁手段87の構造の簡素化、閉弁時における弁体85と作動流体導入孔4との間の打音の抑制が可能になる。
【0137】
一方、弁体85の往復運動時においては、弁体作動室94の容積が変化し、これに伴って、その内圧も変化する。即ち、弁体85の往復運動時には、弁体作動室94内の作動流体が圧縮又は膨張されて摩擦損失が発生してしまう。しかしながら、上述した連通孔85c1によって、適宜、弁体作動室94の作動流体を蓄圧室90へと流入させる又は当該蓄圧室90の作動流体を弁体作動室94へと流入させることができるので、弁体作動室94内の作動流体の圧縮又は膨張を抑制することができ、摩擦損失の増加を回避することができる。
【0138】
更に、その蓄圧室90の圧力が上昇した際には、連通路93や連通孔85c1を介して蓄圧室90の作動流体を作動流体動作室3へと流入させることができるので、高圧作動流体流路2と蓄圧室90との間の適正な差圧を確保することができる。
【0139】
このようにして、本実施例5の静圧軸受弁81は、実施例2の静圧軸受28と同様に、高圧作動流体流路2と蓄圧室90との間の差圧で微小隙間gに静圧を発生させて静圧軸受88を構成し、弁体85をガイド部86aに対して浮上させる。ここで、本実施例5にあっても、弁体85の往復運動方向において、高圧作動流体供給通路89とラビリンスシール92との間に圧抜き通路91が配置されているので、その微小隙間gに発生した静圧が保持される。
【0140】
かかる構成においても、上述した拡大部89bは、微小隙間gにおける高圧の作動流体を溜めて蓄圧する機能を有しているので、弁体85の動作時には受圧面積が大きくなり、より大きな力で安定した弁体85の浮上を図ることができる。
【0141】
また、弁体85が往復運動し始めた後に微小隙間gのクリアランスが変化した場合には、オリフィス89aによって作動流体の流量が調整されるので、その微小隙間gのクリアランスを略一定に保つことができる。
【0142】
このように、本実施例5にあっても、前述した実施例2と同様に、微小隙間g,高圧作動流体供給通路89,蓄圧室90,圧抜き通路91,ラビリンスシール92及び連通路93により構成され、高圧作動流体流路2と蓄圧室90との間の差圧により静圧を発生させる静圧軸受88を弁体85の保持機構として設けている。
【0143】
これが為、本実施例5の静圧軸受弁81は、実施例2と同様に、弁体85が開閉動作する際の摺動抵抗を軽減して摩擦損失の低減を図ることができるので、エネルギ効率の悪化を抑制することができる。また、潤滑油を要せずとも弁体85の開閉動作を行うことができる。
【0144】
更に、この静圧軸受弁81は、高圧の作動流体が流れる高圧作動流体流路2とこれよりも相対的に低圧の蓄圧室90との間における差圧を利用して静圧軸受88を構成するので、静圧軸受88を構成する為に別途高圧源等を設けなくてもよく、簡易かつ安価に構築することができる。
【実施例6】
【0145】
次に、本発明に係る静圧軸受弁の実施例6を図11に基づいて説明する。本実施例6の静圧軸受弁101は、前述した実施例3,4と同様に圧縮機の排出弁として好適なものであって、その実施例3,4で例示した圧縮機に適用されるものとして例示する。尚、本実施例6の静圧軸受弁101は、実施例3,4とは逆に作動流体動作室42側へと弁体105が押下されて作動流体排出孔44を開く構成のものであり、これが為、ピストン42bには弁体押圧用突出部42fを設けていない。
【0146】
本実施例6の静圧軸受弁101は、図11に示す如く、実施例5の静圧軸受弁81と同様の外観形状及び位置関係からなる弁体105,弁体ガイド部材106,閉弁手段107,静圧軸受108及び開弁手段115を備えたものであって、高圧作動流体流路43の静圧軸受弁保持孔43aにて保持される。
【0147】
即ち、本実施例6の弁体105は、略円形の作動流体排出孔44を作動流体動作室42側から閉塞可能な排出孔閉塞部105aと、この排出孔閉塞部105a側に絞り105b1が形成された筒状の周壁部105bと、この周壁部105bの開口端を閉塞する頂面105cとを備えており、内部が蓄圧室110として機能するよう中空になっている。
【0148】
また、本実施例6の弁体ガイド部材106は、弁体105の周壁部105bの外周面との間に微小隙間gを形成すると共に当該弁体105を軸線方向へと案内する筒状のガイド部106aと、このガイド部106aを高圧作動流体流路43内に係止すると共に静圧軸受弁保持孔43aを閉塞する係止部106bとを備えている。
【0149】
ここで、本実施例6にあっても、その弁体105の頂面105cと弁体ガイド部材106の係止部106bとの間には弁体作動室114が形成されており、その弁体作動室114内に実施例5と同様の閉弁手段(トーショナルスプリング)107と開弁手段115(主軸115a、カム部材115b)とが配設されている。尚、本実施例6の開弁手段115は、圧縮行程の後期に作動流体排出孔44が開かれるよう設定されている。
【0150】
次に、本実施例6の静圧軸受108について説明する。本実施例6の静圧軸受108は、前述した実施例3,4と同様に、作動流体動作室42で生成された高圧の作動流体を蓄圧室110へと供給し、この蓄圧室110から微小隙間gへと高圧(作動流体動作室42よりは低圧)の作動流体を供給することで機能するものである。
【0151】
そこで、本実施例6にあっては、先ず、作動流体動作室42と蓄圧室110とを連通させる実施例3,4と同様の連通路113が弁体105の排出孔閉塞部105aの略中央に形成されている。
【0152】
また、本実施例6にあっては、蓄圧室110と微小隙間gとを連通させる高圧作動流体供給通路109が弁体105の周壁部105bに形成されている。この高圧作動流体供給通路109は、蓄圧室110側のオリフィス109aと、このオリフィス109aよりも大径の微小隙間g側の拡大部109bとで構成される。ここで、この高圧作動流体供給通路109は、微小隙間gで発生する静圧の均等化を図る為に、その微小隙間gの略中間位置に配置することが好ましい。
【0153】
これにより、本実施例6の静圧軸受弁101においては、蓄圧室110に供給された高圧の作動流体がオリフィス109aを通って拡大部109bで拡がり、微小隙間gへと噴出される。
【0154】
ここで、本実施例6のガイド部106aには高圧作動流体流路43と上述した弁体作動室114とを連通させる連通孔106a1が形成されている。また、実施例3,4の如きラビリンスシールは設けていない。これが為、微小隙間gの一端(図11の紙面上方)からは、高圧の作動流体が相対的に低圧の弁体作動室114に流入し、連通孔106a1を介して高圧作動流体流路43へと流れる。一方、その微小隙間gの他端(図11の紙面下方)からは、高圧の作動流体が相対的に低圧の高圧作動流体流路43へと流入する。このことから、本実施例6にあっては、実施例3,4の如き圧抜き通路が不要になり、更に、弁体105による作動流体排出孔44の閉塞力が高まるので、上述した閉弁手段(トーショナルスプリング)107のバネ力を軽減させることができ、その閉弁手段107の構造の簡素化、閉弁時における弁体105と作動流体排出孔44との間の打音の抑制が可能になる。
【0155】
また、その連通孔106a1によって、弁体105の往復運動に伴い、適宜、弁体作動室114の作動流体を高圧作動流体流路43へと流入させる又は当該高圧作動流体流路43の作動流体を弁体作動室114へと流入させることができるので、弁体作動室114内の作動流体の圧縮又は膨張を抑制することができ、摩擦損失の増加を回避することができる。
【0156】
このように、本実施例6にあっては、高圧作動流体流路43と蓄圧室110との間の差圧によって微小隙間gに静圧が発生し、弁体105がガイド部106aに対して浮上する。
【0157】
ここで、上述した拡大部109bは、微小隙間gにおける高圧の作動流体を溜めて蓄圧する機能を有しているので、弁体105の動作時には受圧面積が大きくなり、より大きな力で安定した弁体105の浮上を図ることができる。
【0158】
また、弁体105が往復運動し始めた後に微小隙間gのクリアランスが変化した場合には、オリフィス109aによって作動流体の流量が調整されるので、その微小隙間gのクリアランスを略一定に保つことができる。
【0159】
このように、本実施例6にあっては、微小隙間g,高圧作動流体供給通路109,蓄圧室110及び連通路113により構成され、高圧作動流体流路43と蓄圧室110との間の差圧により静圧を発生させる静圧軸受108を弁体105の保持機構として設けている。
【0160】
これが為、その静圧軸受108は弁体105が開閉動作する際の摺動抵抗を軽減するので、摩擦損失の少ない静圧軸受弁101を構築することができ、エネルギ効率の悪化を抑制することができる。また、その静圧軸受108によれば、潤滑油を要せずとも弁体105の開閉動作を行うことができる。
【0161】
更に、この静圧軸受弁101は、高圧の作動流体が供給される蓄圧室110とこれよりも相対的に低圧の高圧作動流体流路43との間における差圧を利用して静圧軸受108を構成するので、静圧軸受108を構成する為に別途高圧源等を設けなくてもよく、簡易かつ安価に構築することができる。
【実施例7】
【0162】
次に、本発明に係る静圧軸受弁の実施例7を図12に基づいて説明する。本実施例7の静圧軸受弁121は、前述した実施例5と同様に膨張機の吸入弁として好適なものであって、その実施例5で例示した膨張機に適用されるものとして例示する。
【0163】
本実施例7の静圧軸受弁121は、図12に示す如く、実施例5の静圧軸受弁81と同様の外観形状及び位置関係からなる弁体125,弁体ガイド部材126,閉弁手段127及び静圧軸受128を備えたものであり、その弁体125の開弁手段135を以下の如く変更したものである。
【0164】
即ち、本実施例7の弁体125は、略円形の作動流体導入孔4を作動流体動作室3側から閉塞可能な導入孔閉塞部125aと、この導入孔閉塞部125a側に絞り125b1が形成された筒状の周壁部125bと、この周壁部125bの開口端を閉塞する頂面125cとを備えており、内部が蓄圧室130として機能するよう中空になっている。
【0165】
また、本実施例7の弁体ガイド部材126は、弁体125の周壁部125bの外周面との間に微小隙間gを形成すると共に当該弁体125を軸線方向へと案内する筒状のガイド部126aと、このガイド部126aを高圧作動流体流路2内に係止すると共に静圧軸受弁保持孔2aを閉塞する係止部126bとを備えている。
【0166】
ここで、本実施例7にあっても、その弁体125の頂面125cと弁体ガイド部材126の係止部126bとの間には弁体作動室134が形成されており、その弁体作動室134内に実施例5と同様の閉弁手段(トーショナルスプリング)127が配設されている。
【0167】
一方、本実施例7にあっては、実施例5の如き偏心カムの開弁手段115に替えて下記のような開弁手段135が設けられている。
【0168】
本実施例7の開弁手段135は、弁体作動室134における圧力を制御することによって、弁体125を押下して開弁させる一方、閉弁手段127による閉弁動作を付勢する圧力制御手段である。
【0169】
具体的に、本実施例7の開弁手段135には、図12に示す如く、高圧を発生させる高圧源HPと、その高圧よりも相対的に低い低圧を発生させる低圧源LPと、その高圧と低圧を切り替えて弁体作動室134に作動流体を供給する3方向切替弁135aとが設けられている。その3方向切替弁135aは、例えば、クランクシャフト3dの回転に連動して適宜切り替えを行うものであってもよく、電子制御装置等で制御されるものであってもよい。
【0170】
ここで、その高圧源HPとしては高圧を発生させる高圧ポンプを用い、低圧源LPとしては低圧を発生させる低圧ポンプを用いる。尚、そのような高圧ポンプや低圧ポンプに替えて、高圧作動流体流路2における高圧の作動流体を3方向切替弁135aに導く一方、その高圧の作動流体よりも相対的に低い低圧の作動流体を機関の流路から3方向切替弁135aに導いて利用してもよい。
【0171】
以上の如く構成された開弁手段135は、弁体125の開弁時(ここでは吸入行程)に高圧源HP側へと3方向切替弁135aを切り替える。これにより、高圧源HPの高圧の作動流体が係止部126bの連通孔126b1を介して弁体作動室134に供給されるので、その弁体作動室134の内圧が高くなって弁体125が押下され、高圧作動流体流路2と作動流体導入孔4とが連通する。一方、この開弁手段135は、弁体125の閉弁時(ここでは吸入行程終了後)に低圧源LP側へと3方向切替弁135aを切り替える。これにより、弁体作動室134の内圧が低下していくので、閉弁手段127(トーショナルスプリングの捻れの反力)による閉弁動作が始まる。
【0172】
このように、本実施例7の如き開弁手段135を用いることによって、弁体125が開閉動作する際の摩擦損失を更に軽減することができる。即ち、実施例5の如き偏心カムの開弁手段115においては、カム部材115bが弁体105の頂面105cに接しながら開閉動作を行わせるので、その接点において摩擦損失が生じる。しかしながら、本実施例7の開弁手段135においては、かかる接点が不要なので摩擦損失が無くなる。また、実施例5では摩擦損失を軽減させる為に潤滑油等で接点を潤滑させなければならないが、本実施例7においては、その潤滑も不要になるので、下記の静圧軸受128と相俟って完全な弁体125の無潤滑作動が可能になる。
【0173】
次に、本実施例7の静圧軸受128について説明する。本実施例7の静圧軸受128は、前述した実施例5の静圧軸受88と同様に構成されている。
【0174】
即ち、ガイド部126aには、高圧作動流体流路2側のオリフィス129a及び微小隙間g側の拡大部129bからなる高圧作動流体供給通路129と、開口端側で且つ微小隙間g側の壁面のラビリンスシール132とが実施例5と同等の位置関係で設けられている。また、弁体125には、蓄圧室130側のオリフィス131a及び微小隙間g側の拡大グルーブ131bからなる圧抜き通路131と、蓄圧室130と作動流体動作室3とを連通させる実施例5と同一形状の連通路133とが実施例5と同等の位置関係で設けられている。
【0175】
これにより、高圧作動流体流路2における高圧の作動流体は、オリフィス129aを通って拡大部129bで拡がり、微小隙間gへと噴出される。一方、微小隙間gに供給された高圧の作動流体は、拡大グルーブ131bを介してオリフィス131aから蓄圧室130に噴出される。
【0176】
ここで、その蓄圧室130の圧力が上昇した際には、蓄圧室130の作動流体が連通路133を介して作動流体動作室3へと流入するので、高圧作動流体流路2と蓄圧室130との間の適正な差圧を確保することができる。
【0177】
このようにして、本実施例7の静圧軸受弁121は、実施例5の静圧軸受88と同様に、高圧作動流体流路2と蓄圧室130との間の差圧で微小隙間gに静圧を発生させて静圧軸受128を構成し、弁体125をガイド部126aに対して浮上させる。ここで、本実施例7にあっても、弁体125の往復運動方向において、高圧作動流体供給通路129とラビリンスシール132との間に圧抜き通路131が配置されているので、その微小隙間gに発生した静圧が保持される。
【0178】
かかる構成においても、上述した拡大部129bは、微小隙間gにおける高圧の作動流体を溜めて蓄圧する機能を有しているので、弁体125の動作時には受圧面積が大きくなり、より大きな力で安定した弁体125の浮上を図ることができる。
【0179】
また、弁体125が往復運動し始めた後に微小隙間gのクリアランスが変化した場合には、オリフィス129aによって作動流体の流量が調整されるので、その微小隙間gのクリアランスを略一定に保つことができる。
【0180】
このように、本実施例7にあっても、前述した実施例5と同様に、微小隙間g,高圧作動流体供給通路129,蓄圧室130,圧抜き通路131,ラビリンスシール132及び連通路133により構成され、高圧作動流体流路2と蓄圧室130との間の差圧により静圧を発生させる静圧軸受128を弁体125の保持機構として設けている。
【0181】
これが為、本実施例7の静圧軸受弁121は、実施例5と同様に、弁体125が開閉動作する際の摺動抵抗を軽減して摩擦損失の低減を図ることができるので、エネルギ効率の悪化を抑制することができる。また、潤滑油を要せずとも弁体125の開閉動作を行うことができる。
【0182】
更に、この静圧軸受弁121は、高圧の作動流体が流れる高圧作動流体流路2とこれよりも相対的に低圧の蓄圧室130との間における差圧を利用して静圧軸受128を構成するので、静圧軸受128を構成する為に別途高圧源等を設けなくてもよく、簡易かつ安価に構築することができる。
【実施例8】
【0183】
次に、本発明に係る静圧軸受弁の実施例8を図13に基づいて説明する。本実施例8の静圧軸受弁141は、前述した実施例5,7と同様に膨張機の吸入弁として好適なものであって、その実施例5,7で例示した膨張機に適用されるものとして例示する。
【0184】
本実施例8の静圧軸受弁141は、前述した実施例7の静圧軸受弁121における閉弁手段127,即ち弁体作動室134に配備されたトーショナルスプリングに替えて、蓄圧室150に弾性部材を配備することで弁体145による作動流体導入孔4の閉塞状態の維持及び弁体145の閉弁動作を行う閉弁手段147を構成する。
【0185】
具体的に、本実施例8の静圧軸受弁141には、実施例7の弁体125と略等々の外観形状からなる弁体145が設けられている。即ち、本実施例8の弁体145は、略円形の作動流体導入孔4を作動流体動作室3側から閉塞可能な導入孔閉塞部145aと、この導入孔閉塞部145a側に絞り145b1が形成された筒状の周壁部145bと、この周壁部145bの開口端を閉塞する頂面145cとを備えており、内部が蓄圧室150として機能するよう中空になっている。
【0186】
また、この静圧軸受弁141には、弁体145の周壁部145bの外周面との間に微小隙間gを形成すると共に当該弁体145を軸線方向へと案内する筒状のガイド部146aと、このガイド部146aを高圧作動流体流路2内に係止すると共に静圧軸受弁保持孔2aを閉塞する係止部146bとを備えた弁体ガイド部材146が設けられている。
【0187】
更に、この静圧軸受弁141には、実施例7と同様の静圧軸受148が構成されている。即ち、ガイド部146aには、高圧作動流体流路2側のオリフィス149a及び微小隙間g側の拡大部149bからなる高圧作動流体供給通路149と、開口端側で且つ微小隙間g側の壁面のラビリンスシール152とが実施例7と同等の位置関係で設けられている。また、弁体145には、蓄圧室150側のオリフィス151a及び微小隙間g側の拡大グルーブ151bからなる圧抜き通路151と、蓄圧室150と作動流体動作室3とを連通させる実施例7と同一形状の連通路153とが実施例7と同等の位置関係で設けられている。
【0188】
これにより、高圧作動流体流路2における高圧の作動流体は、オリフィス149aを通って拡大部149bで拡がり、微小隙間gへと噴出される。一方、微小隙間gに供給された高圧の作動流体は、拡大グルーブ151bを介してオリフィス151aから蓄圧室150に噴出される。
【0189】
ここで、その蓄圧室150の圧力が上昇した際には、蓄圧室150の作動流体が連通路153を介して作動流体動作室3へと流入するので、高圧作動流体流路2と蓄圧室150との間の適正な差圧を確保することができる。
【0190】
このようにして、本実施例8の静圧軸受弁141は、実施例7の静圧軸受128と同様に、高圧作動流体流路2と蓄圧室150との間の差圧で微小隙間gに静圧を発生させて静圧軸受148を構成し、弁体145をガイド部146aに対して浮上させる。ここで、本実施例8にあっても、弁体145の往復運動方向において、高圧作動流体供給通路149とラビリンスシール152との間に圧抜き通路151が配置されているので、その微小隙間gに発生した静圧が保持される。
【0191】
かかる構成においても、上述した拡大部149bは、微小隙間gにおける高圧の作動流体を溜めて蓄圧する機能を有しているので、弁体145の動作時には受圧面積が大きくなり、より大きな力で安定した弁体145の浮上を図ることができる。
【0192】
また、弁体145が往復運動し始めた後に微小隙間gのクリアランスが変化した場合には、オリフィス149aによって作動流体の流量が調整されるので、その微小隙間gのクリアランスを略一定に保つことができる。
【0193】
ところで、本実施例8にあっても、弁体145の開弁動作は実施例7と同様の開弁手段155によって行われるので、その弁体145が開閉動作する際の摩擦損失の更なる軽減や、弁体145の完全なる無潤滑作動が可能になる。尚、本実施例8では、後述する弾性部材保持部146cが弁体ガイド部材146における係止部146bの略中央に設けられているので、弁体作動室154と3方向切替弁155aとを連通させる連通孔146b1は、その弾性部材保持部146cを回避した係止部146bの中央近傍に形成する。
【0194】
一方、前述したが如く、本実施例8にあっては、実施例7に対して、その弁体145による作動流体導入孔4の閉塞状態の維持及び弁体145の閉弁動作を行わせる閉弁手段147に変更を加えている。
【0195】
具体的に、本実施例8の閉弁手段147は、蓄圧室150に弾性部材を配置し、この弾性部材によって閉弁方向の力を弁体145に与える。ここでは、その弾性部材として弦巻バネを例示する。
【0196】
そこで、先ず、弁体ガイド部材146における係止部146bの略中央からは、作動流体導入孔4に向けて弾性部材保持部146cを立設する。この弾性部材保持部146cは、弁体145の内方,即ち蓄圧室150まで延設される。これが為、その弁体145の頂面145cの略中央には、上記の弾性部材保持部146cの外周面との間に微小隙間を設け得る大きさの孔145c1が形成されている。
【0197】
ここで、その孔145c1と弾性部材保持部146cとの間の微小隙間は、蓄圧室150と弁体作動室154との間で夫々の作動流体が流通して当該蓄圧室150等で所望の内圧を得られないとの観点からすれば無い方がよい。しかしながら、その微小隙間が無ければ、弁体145が往復運動する際の摺動抵抗が大きくなり、摩擦損失が発生する。これが為、本実施例8にあっては、孔145c1の周壁面にラビリンスシール156を形成することによって、蓄圧室150と弁体作動室154の夫々の内圧を確保する一方、摩擦損失の軽減を図る。
【0198】
続いて、本実施例8の閉弁手段(弾性部材)147は、一端を弁体145の頂面145cに係止する一方、他端を弾性部材保持部146cに係止し、閉弁状態において伸長方向の力が掛かり且つ更に圧縮し得るように設定する。ここで、本実施例8の弾性部材保持部146cは、その延設端が円盤状に形成されており、かかる円盤部分に弾性部材の他端が係止される。
【0199】
このように、本実施例8にあっても、前述した実施例5,7と同様に、微小隙間g,高圧作動流体供給通路149,蓄圧室150,圧抜き通路151,ラビリンスシール152及び連通路153により構成され、高圧作動流体流路2と蓄圧室150との間の差圧により静圧を発生させる静圧軸受148を弁体145の保持機構として設けている。
【0200】
これが為、本実施例8の静圧軸受弁141は、実施例5,7と同様に、弁体145が開閉動作する際の摺動抵抗を軽減して摩擦損失の低減を図ることができるので、エネルギ効率の悪化を抑制することができる。また、潤滑油を要せずとも弁体145の開閉動作を行うことができる。
【0201】
更に、この静圧軸受弁21は、高圧の作動流体が流れる高圧作動流体流路2とこれよりも相対的に低圧の蓄圧室30との間における差圧を利用して静圧軸受28を構成するので、静圧軸受28を構成する為に別途高圧源等を設けなくてもよく、簡易かつ安価に構築することができる。
【実施例9】
【0202】
次に、本発明に係る静圧軸受弁の実施例9を図14に基づいて説明する。本実施例9の静圧軸受弁161は、前述した実施例6と同様に圧縮機の排出弁として好適なものであって、その実施例6で例示した圧縮機に適用されるものとして例示する。
【0203】
本実施例9の静圧軸受弁161は、図14に示す如く、実施例6の静圧軸受弁101と同様の外観形状及び位置関係からなる弁体165,弁体ガイド部材166,閉弁手段(トーショナルスプリング)167及び静圧軸受168、更には前述した実施例7と同様の開弁手段175を備えたものであって、高圧作動流体流路43の静圧軸受弁保持孔43aにて保持される。
【0204】
即ち、本実施例9の弁体165は、略円形の作動流体排出孔44を作動流体動作室42側から閉塞可能な排出孔閉塞部165aと、この排出孔閉塞部165a側に絞り165b1が形成された筒状の周壁部165bと、この周壁部165bの開口端を閉塞する頂面165cとを備えており、内部が蓄圧室170として機能するよう中空になっている。
【0205】
また、本実施例9の弁体ガイド部材166は、弁体165の周壁部165bの外周面との間に微小隙間gを形成すると共に当該弁体165を軸線方向へと案内する筒状のガイド部166aと、このガイド部166aを高圧作動流体流路43内に係止すると共に静圧軸受弁保持孔43aを閉塞する係止部166bとを備えている。
【0206】
ここで、本実施例9の閉弁手段167及び開弁手段175は、排出行程にて3方向切替弁175aを高圧源HP側へと切り替え、高圧の作動流体を連通孔166b1から弁体作動室174に供給して弁体165を開弁させる。一方、その排出行程終了後には、3方向切替弁175aを低圧源LP側へと切り替え、弁体作動室174の内圧を低下させて閉弁手段167の動作(トーショナルスプリングの捻れの反力)により弁体165を閉弁させる。これが為、前述した実施例7と同様の効果を奏することができる。即ち、本実施例9の如き開弁手段175によって、実施例6よりも更なる摩擦損失の軽減が図れると共に、完全なる弁体165の無潤滑作動が可能になる。
【0207】
次に、本実施例9の静圧軸受168について説明する。本実施例9の静圧軸受168は、前述した実施例6の静圧軸受108とは異なり、前述した実施例4の静圧軸受68と同様の構成によって形成されている。
【0208】
即ち、先ず、弁体165の排出孔閉塞部165aの略中央には実施例4と同等形状の連通路173が形成されており、作動流体動作室42で生成された高圧の作動流体が蓄圧室170に供給される。
【0209】
また、この弁体165の周壁部165bには蓄圧室170側のオリフィス169a及び微小隙間g側の拡大部169bからなる高圧作動流体供給通路169が形成されており、蓄圧室170から高圧の作動流体が微小隙間gへと供給される。更に、その弁体165の周壁部165bにおける頂面165c側で且つ微小隙間g側の壁面にはラビリンスシール172が形成されており、その微小隙間gに発生する静圧を保持している。
【0210】
一方、弁体ガイド部材166のガイド部166aには、高圧作動流体流路43側のオリフィス171aと微小隙間g側の拡大グルーブ171bとからなる圧抜き通路171が形成されている。この圧抜き通路171は、ガイド部166aの軸線方向(弁体165の往復運動方向)において、上記高圧作動流体供給通路169とラビリンスシール172との間に配置される。その微小隙間gには発生した静圧が保持される。
【0211】
これにより、本実施例9の静圧軸受弁161においては、蓄圧室170に供給された高圧の作動流体がオリフィス169aを通って拡大部169bで拡がり、微小隙間gへと噴出される。一方、微小隙間gに供給された高圧の作動流体は、拡大グルーブ171bを介してオリフィス171aから高圧作動流体流路43に噴出される。即ち、高圧作動流体流路43と蓄圧室170との間の差圧によって微小隙間gに静圧が発生し、弁体165がガイド部166aに対して浮上する。
【0212】
また、本実施例9の静圧軸受168においても、上述した拡大部169bは、微小隙間gにおける高圧の作動流体を溜めて蓄圧する機能を有している。これが為、弁体165の動作時には受圧面積が大きくなり、より大きな力で安定した弁体165の浮上を図ることができる。
【0213】
更に、弁体165が往復運動し始めた後に微小隙間gのクリアランスが変化した場合には、オリフィス169aによって作動流体の流量が調整されるので、その微小隙間gのクリアランスを略一定に保つことができる。
【0214】
また更に、高圧作動流体供給通路169とラビリンスシール172との間に圧抜き通路171が配置されているので、微小隙間gに発生した静圧を保持することができる。
【0215】
このように、本実施例9にあっても、前述した実施例6と同様に、微小隙間g,高圧作動流体供給通路169,蓄圧室170,圧抜き通路171,ラビリンスシール172及び連通路173により構成され、高圧作動流体流路43と蓄圧室170との間の差圧により静圧を発生させる静圧軸受168を弁体165の保持機構として設けている。
【0216】
これが為、その静圧軸受168は弁体165が開閉動作する際の摺動抵抗を軽減するので、摩擦損失の少ない静圧軸受弁161を構築することができ、エネルギ効率の悪化を抑制することができる。また、その静圧軸受168によれば、潤滑油を要せずとも弁体165の開閉動作を行うことができる。
【0217】
更に、この静圧軸受弁161は、高圧の作動流体が供給される蓄圧室170とこれよりも相対的に低圧の高圧作動流体流路43との間における差圧を利用して静圧軸受168を構成するので、静圧軸受168を構成する為に別途高圧源等を設けなくてもよく、簡易かつ安価に構築することができる。
【実施例10】
【0218】
次に、本発明に係る静圧軸受弁の実施例10を図15に基づいて説明する。本実施例10の静圧軸受弁181は、前述した実施例6,9と同様に圧縮機の排出弁として好適なものであって、その実施例6,9で例示した圧縮機に適用されるものとして例示する。
【0219】
本実施例10の静圧軸受弁181は、図15に示す如く、前述した実施例9の静圧軸受弁161における閉弁手段167,即ち弁体作動室174に配備されたトーショナルスプリングに替えて、蓄圧室190に前述した実施例8と同様の弾性部材を配備することで弁体185による作動流体排出孔44の閉塞状態の維持及び弁体185の閉弁動作を行う閉弁手段187を構成する。
【0220】
即ち、本実施例10の弁体185は、略円形の作動流体排出孔44を作動流体動作室42側から閉塞可能な排出孔閉塞部185aと、この排出孔閉塞部185a側に絞り185b1が形成された筒状の周壁部185bと、この周壁部185bの開口端を閉塞する頂面185cとを備えており、内部が蓄圧室190として機能するよう中空になっている。その頂面185cの略中央には、弾性部材保持部186cの外周面との間に微小隙間を設け得る大きさの孔185c1が形成されている。
【0221】
また、本実施例10の弁体ガイド部材186は、弁体185の周壁部185bの外周面との間に微小隙間gを形成すると共に当該弁体185を軸線方向へと案内する筒状のガイド部186aと、このガイド部186aを高圧作動流体流路43内に係止すると共に静圧軸受弁保持孔43aを閉塞する係止部186bとを備えている。この係止部186bには、弁体作動室194と3方向切替弁195aとを連通させる連通孔186b1が形成されている。
【0222】
ここで、本実施例10の閉弁手段187及び開弁手段195は、実施例9と同様に、排出行程にて3方向切替弁195aを高圧源HP側へと切り替える一方、排出行程終了後に3方向切替弁195aを低圧源LP側へと切り替え、弁体作動室194の圧力を調整して弁体185の開閉を行う。これが為、本実施例10にあっても、下記の静圧軸受188と相俟って、実施例9と同様に、更なる摩擦損失の軽減が図れると共に完全なる弁体185の無潤滑作動が可能になる。
【0223】
次に、本実施例10の静圧軸受188については、実施例9の静圧軸受168と同様の構成によって形成されている。
【0224】
即ち、先ず、弁体185の排出孔閉塞部185aの略中央には実施例9と同等形状の連通路193が形成されており、作動流体動作室42で生成された高圧の作動流体が蓄圧室190に供給される。
【0225】
また、この弁体185の周壁部185bには蓄圧室190側のオリフィス189a及び微小隙間g側の拡大部189bからなる高圧作動流体供給通路189が形成されており、蓄圧室190から高圧の作動流体が微小隙間gへと供給される。更に、その弁体185の周壁部185bにおける頂面185c側で且つ微小隙間g側の壁面にはラビリンスシール192が形成されている。
【0226】
一方、弁体ガイド部材186のガイド部186aには、高圧作動流体流路43側のオリフィス191aと微小隙間g側の拡大グルーブ191bとからなる圧抜き通路191が形成されている。この圧抜き通路191は、ガイド部186aの軸線方向にて上記高圧作動流体供給通路189とラビリンスシール192との間に配置される。
【0227】
これにより、本実施例10の静圧軸受弁181においては、蓄圧室190に供給された高圧の作動流体がオリフィス189aを通って拡大部189bで拡がり、微小隙間gへと噴出される。一方、微小隙間gに供給された高圧の作動流体は、拡大グルーブ191bを介してオリフィス191aから高圧作動流体流路43に噴出される。即ち、高圧作動流体流路43と蓄圧室190との間の差圧によって微小隙間gに静圧が発生し、弁体185がガイド部186aに対して浮上する。
【0228】
また、本実施例10の静圧軸受188においても、上述した拡大部189bは、微小隙間gにおける高圧の作動流体を溜めて蓄圧する機能を有している。これが為、弁体185の動作時には受圧面積が大きくなり、より大きな力で安定した弁体185の浮上を図ることができる。
【0229】
更に、弁体185が往復運動し始めた後に微小隙間gのクリアランスが変化した場合には、オリフィス189aによって作動流体の流量が調整されるので、その微小隙間gのクリアランスを略一定に保つことができる。
【0230】
また更に、高圧作動流体供給通路189とラビリンスシール192との間に圧抜き通路191が配置されているので、微小隙間gに発生した静圧を保持することができる。
【0231】
このように、本実施例10にあっても、前述した実施例9と同様に、微小隙間g,高圧作動流体供給通路189,蓄圧室190,圧抜き通路191,ラビリンスシール192及び連通路193により構成され、高圧作動流体流路43と蓄圧室190との間の差圧により静圧を発生させる静圧軸受188を弁体185の保持機構として設けている。
【0232】
これが為、その静圧軸受188は弁体185が開閉動作する際の摺動抵抗を軽減するので、摩擦損失の少ない静圧軸受弁181を構築することができ、エネルギ効率の悪化を抑制することができる。また、その静圧軸受188によれば、潤滑油を要せずとも弁体185の開閉動作を行うことができる。
【0233】
更に、この静圧軸受弁181は、高圧の作動流体が供給される蓄圧室190とこれよりも相対的に低圧の高圧作動流体流路43との間における差圧を利用して静圧軸受188を構成するので、静圧軸受188を構成する為に別途高圧源等を設けなくてもよく、簡易かつ安価に構築することができる。
【実施例11】
【0234】
次に、本発明に係る静圧軸受弁の実施例11を図16に基づいて説明する。
【0235】
本実施例11にあっては、その静圧軸受弁を以下の如きピストン機関の吸入弁及び排出弁として用いた場合を例示する。
【0236】
ここで例示するピストン機関においては、シリンダ202aの内壁とピストン202bの頂面とにより囲まれた作動流体動作室202と、その作動流体動作室202に連通するシリンダ202aの頂面の作動流体導入孔203及び作動流体排出孔201とが備えられている。このピストン機関は、その作動流体導入孔203を介して低圧側の作動流体流路204の作動流体を作動流体動作室202に導入し、ピストン202bで圧縮する。しかる後、その圧縮された高圧の作動流体を作動流体排出孔201を介して高圧側の作動流体流路200へと排出する。
【0237】
ここでは、その作動流体導入孔203の開閉を行う吸入弁として、前述した実施例9の静圧軸受弁161を低圧側の作動流体流路204の静圧軸受弁保持孔204aから挿入して配設する。一方、その作動流体排出孔201の開閉を行う排出弁としては、前述した実施例7の静圧軸受弁121を高圧側の作動流体流路200の静圧軸受弁保持孔200aから挿入して配設する。
【0238】
これにより、先ず、作動流体導入孔203に係る静圧軸受弁161においては、作動流体動作室202で生成された高圧の作動流体が連通路173を介して蓄圧室170に供給される。この蓄圧室170に供給された高圧の作動流体は、オリフィス169aを通って拡大部169bで拡がり、微小隙間gへと噴出されて弁体165をガイド部166aに対して浮上させる。
【0239】
一方、作動流体排出孔201に係る静圧軸受弁121においては、高圧側の作動流体流路200における高圧の作動流体がオリフィス129aを通って拡大部129bで拡がり、微小隙間gへと噴出されて弁体125をガイド部126aに対して浮上させる。
【0240】
ここで、実施例9及び実施例7においては、静圧軸受弁161,121の弁体165,125を開閉させる為の駆動源として低圧ポンプからなる低圧源LPと高圧ポンプからなる高圧源HPとを具備しているが、本実施例11にあっては、その低圧源LP及び高圧源HPとして機関内で流動している高圧の作動流体と低圧の作動流体を利用する。
【0241】
具体的には、低圧側の作動流体流路204は高圧側の作動流体流路200よりも相対的に低圧になっているので、その低圧側の作動流体流路204の作動流体を低圧源LPとして利用する一方、その高圧側の作動流体流路200の作動流体を高圧源HPとして利用する。
【0242】
これが為、作動流体導入孔203に係る静圧軸受弁161側においては、その3方向切替弁175aと低圧側の作動流体流路204の貫通孔(以下、「低圧源供給孔」という。)204bとを連通させる一方、その3方向切替弁175aと高圧側の作動流体流路200の貫通孔(以下、「高圧源供給孔」という。)200bとを連通させる。また、作動流体排出孔201に係る静圧軸受弁121側においても、その3方向切替弁135aと低圧側の作動流体流路204の低圧源供給孔204bとを連通させる一方、その3方向切替弁175aと高圧側の作動流体流路200の高圧源供給孔200bとを連通させる。
【0243】
このピストン機関は、作動流体の吸入行程(ピストン202bは下死点近傍に位置している)において静圧軸受弁161側の3方向切替弁175aを高圧源HP(高圧側の作動流体流路200)側へと切り替え、高圧の作動流体を連通孔166b1から弁体作動室174に供給して弁体165を開弁させる。これにより、低圧側の作動流体流路204から作動流体が作動流体動作室202に導入される。一方、その作動流体の導入後には、3方向切替弁175aを低圧源LP(低圧側の作動流体流路204)側へと切り替え、弁体作動室174の内圧を低下させて閉弁手段167の動作(トーショナルスプリングの捻れの反力)により弁体165を閉弁させる。その後、ピストン202bの上昇に伴って作動流体動作室202内の作動流体が圧縮される。
【0244】
続いて、その作動流体動作室202で生成された高圧の作動流体の排出行程において、静圧軸受弁121側の3方向切替弁135aを高圧源HP(高圧側の作動流体流路200)側へと切り替え、高圧の作動流体を連通孔126b1から弁体作動室134に供給して弁体125を開弁させる。これにより、作動流体動作室202における高圧の作動流体が高圧側の作動流体流路200へと排出される。一方、その高圧の作動流体の排出後には、3方向切替弁135aを低圧源LP(低圧側の作動流体流路204)側へと切り替え、弁体作動室134の内圧を低下させて閉弁手段127の動作(トーショナルスプリングの捻れの反力)により弁体125を閉弁させる。
【0245】
このように、本実施例11によれば、前述した実施例7,9と同様の効果を奏するだけでなく、低圧ポンプや高圧ポンプ等の機関外部に配設される低圧源LPや高圧源HPが不要になるので、搭載スペースの確保が容易になり、また、開弁手段の信頼性の向上を図ることができる。
【0246】
尚、本実施例11にあっては、前述した実施例7,9の静圧軸受弁121,161を適用しているが、これらに替えて、前述した実施例8,10の静圧軸受弁141,181を用いてもよい。
【0247】
また、本実施例11にあっては、夫々異なる構成の静圧軸受弁121,161を設けているが、例えば、作動流体排出孔201にも実施例9の静圧軸受弁161を設けてもよい。かかる場合、その作動流体排出孔201に係る静圧軸受弁161は、作動流体導入孔203側の静圧軸受弁161と同様に、作動流体動作室202で生成された高圧の作動流体を蓄圧室170へと供給して静圧軸受168を形成する。
【産業上の利用可能性】
【0248】
以上のように、本発明に係る静圧軸受弁は、弁体が開閉動作する際の摺動抵抗を低減させ、耐久性をも向上させることのできる技術として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0249】
【図1】本発明に係る静圧軸受弁の適用対象の一例たる膨張機について示す図である。
【図2】本発明に係る静圧軸受弁の実施例1の構成を示す図である。
【図3−1】図2のX−X線で切った静圧軸受弁の断面図である。
【図3−2】図2のY−Y線で切った静圧軸受弁の断面図である。
【図4】図2のA部の拡大図であって、静圧軸受弁に設けた連通路の具体的な構成について示す断面図である。
【図5】本発明に係る静圧軸受弁の実施例2の構成を示す図である。
【図6】本発明に係る静圧軸受弁の適用対象の一例たる圧縮機について示す図である。
【図7】本発明に係る静圧軸受弁の実施例3の構成を示す図である。
【図8】本発明に係る静圧軸受弁の実施例4の構成を示す図である。
【図9】本発明に係る静圧軸受弁の実施例5の構成を示す図である。
【図10】図9の矢印Bから見た弁体作動室内の上面図である。
【図11】本発明に係る静圧軸受弁の実施例6の構成を示す図である。
【図12】本発明に係る静圧軸受弁の実施例7の構成を示す図である。
【図13】本発明に係る静圧軸受弁の実施例8の構成を示す図である。
【図14】本発明に係る静圧軸受弁の実施例9の構成を示す図である。
【図15】本発明に係る静圧軸受弁の実施例10の構成を示す図である。
【図16】本発明に係る静圧軸受弁の実施例11の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0250】
1,21,81,121,141 静圧軸受弁
2 高圧作動流体流路
3 作動流体動作室
3a シリンダ
3b ピストン
3f 弁体押圧用突出部(開弁手段)
4 作動流体導入孔
5,25,85,125,145 弁体
5a,25a,85a,125a,145a 導入孔閉塞部
5b,25b,85b,125b,145b 周壁部
6,26,86,126,146 弁体ガイド部材
6a,26a,86a,126a,146a ガイド部
7,27,87,127,147 閉弁手段
8,28,88,128,148 静圧軸受
9,29,89,129,149 高圧作動流体供給通路
9a,29a,89a,129a,149a オリフィス
9b,29b,89b,129b,149b 拡大部
10,30,90,130,150 蓄圧室
11,31,91,131,151 圧抜き通路
11a,31a,91a,131a,151a オリフィス
11b,31b,91b,131b,151b 拡大グルーブ
12,32,92,132,152 ラビリンスシール
13,33,93,133,153 連通路
41,61,101,161,181 静圧軸受弁
42 作動流体動作室
42a シリンダ
42b ピストン
42f 弁体押圧用突出部(開弁手段)
43 高圧作動流体流路
44 作動流体排出孔
45,65,105,165,185 弁体
45a,65a,105a,165a,185a 排出孔閉塞部
45b,65b,105b,165b,185b 周壁部
46,66,106,166,186 弁体ガイド部材
46a,66a,106a,166a,186a ガイド部
47,67,107,167,187 閉弁手段
48,68,108,168,188 静圧軸受
49,69,109,169,189 高圧作動流体供給通路
49a,69a,109a,169a,189a オリフィス
49b,69b,109b,169b,189b 拡大部
50,70,110,170,190 蓄圧室
51,71,171,191 圧抜き通路
51a,71a,171a,191a オリフィス
51b,71b,171b,191b 拡大グルーブ
52,72,172,192 ラビリンスシール
53,73,113,173,193 連通路
85c1,106a1,166b1 連通孔
94,114,134,154,174,194 弁体作動室
95,115,135,155,175,195 開弁手段
95a,115a 主軸
95b,115b カム部材
126b1,146b1 連通孔
135a,155a,175a,195a 3方向切替弁
200 高圧側の作動流体流路
200b 高圧源供給孔
201 作動流体排出孔
202a シリンダ
202b ピストン
202 作動流体動作室
203 作動流体導入孔
204 低圧側の作動流体流路
204b 低圧源供給孔
g 微小隙間
HP 高圧源
LP 低圧源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧の作動流体が流れる高圧作動流体流路と当該高圧の作動流体が導入される作動流体動作室とを連通又は遮断させる筒状の弁体と、
この弁体の周壁部との間に微小隙間を形成すると共に当該弁体を軸線方向へと案内する筒状のガイド部と、
を備え、
前記弁体の内方に前記高圧作動流体流路の内圧よりも相対的に低圧となる作動流体を溜める蓄圧室を設けると共に、該弁体に前記蓄圧室と前記作動流体動作室とを連通させる連通路を設け、
前記弁体の周壁部を前記ガイド部の外周面側に配置した場合には、前記高圧作動流体流路における高圧の作動流体を前記微小隙間へと供給する高圧作動流体供給通路を前記周壁部に設けると共に、前記微小隙間に供給された高圧の作動流体を前記蓄圧室へと流入させる圧抜き通路を前記ガイド部に設ける一方、前記弁体の周壁部を前記ガイド部の内周面側に配置した場合には、前記高圧作動流体供給通路を前記ガイド部に設けると共に、前記圧抜き通路を前記周壁部に設けることを特徴とした静圧軸受弁。
【請求項2】
前記弁体の周壁部を前記ガイド部の外周面側に配置した場合には、該周壁部の開口端側で且つ前記微小隙間側の壁面にラビリンスを設ける一方、前記弁体の周壁部を前記ガイド部の内周面側に配置した場合には、該ガイド部の開口端側で且つ前記微小隙間側の壁面にラビリンスを設け、
前記圧抜き通路は、前記弁体の往復運動方向にて前記高圧作動流体供給通路と前記ラビリンスとの間に配置したことを特徴とする請求項1記載の静圧軸受弁。
【請求項3】
前記連通路は、前記蓄圧室から前記作動流体動作室への流路抵抗が小さく且つ当該作動流体動作室から当該蓄圧室への流路抵抗が大きくなるよう構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の静圧軸受弁。
【請求項4】
前記弁体の往復運動方向における当該弁体と前記ガイド部との間に空間を設けると共に、前記弁体に前記空間と前記蓄圧室とを連通させる連通孔を設けたことを特徴とする請求項1,2又は3に記載の静圧軸受弁。
【請求項5】
高圧の作動流体を生成する作動流体動作室と当該高圧の作動流体が排出される高圧作動流体流路とを連通又は遮断させる筒状の弁体と、
この弁体の周壁部との間に微小隙間を形成すると共に当該弁体を軸線方向へと案内する筒状のガイド部と、
を備え、
前記弁体の内方に蓄圧室を設けると共に、該弁体に前記作動流体動作室で生成された高圧の作動流体を前記蓄圧室へと供給する連通路を設け、
前記弁体の周壁部を前記ガイド部の外周面側に配置した場合には、前記蓄圧室における高圧の作動流体を前記微小隙間へと供給する高圧作動流体供給通路を前記ガイド部に設けると共に、前記微小隙間に供給された高圧の作動流体を前記高圧作動流体流路へと流入させる圧抜き通路を前記周壁部に設ける一方、前記弁体の周壁部を前記ガイド部の内周面側に配置した場合には、前記高圧作動流体供給通路を前記周壁部に設けると共に、前記圧抜き通路を前記ガイド部に設けることを特徴とした静圧軸受弁。
【請求項6】
前記弁体の周壁部を前記ガイド部の外周面側に配置した場合には、該ガイド部の開口端側で且つ前記微小隙間側の壁面にラビリンスを設ける一方、前記弁体の周壁部を前記ガイド部の内周面側に配置した場合には、該周壁部の開口端側で且つ前記微小隙間側の壁面にラビリンスを設け、
前記圧抜き通路は、前記弁体の往復運動方向にて前記高圧作動流体供給通路と前記ラビリンスとの間に配置したことを特徴とする請求項5記載の静圧軸受弁。
【請求項7】
前記連通路は、前記作動流体動作室から前記蓄圧室への流路抵抗が小さく且つ当該蓄圧室から当該作動流体動作室への流路抵抗が大きくなるよう構成したことを特徴とする請求項5又は6に記載の静圧軸受弁。
【請求項8】
前記弁体の往復運動方向における当該弁体と前記ガイド部との間に空間を設けると共に、前記ガイド部に前記空間と前記高圧作動流体流路とを連通させる連通孔を設けたことを特徴とする請求項5,6又は7に記載の静圧軸受弁。
【請求項9】
前記弁体の往復運動方向における当該弁体と前記ガイド部との間に空間を設けると共に、該空間内の圧力を制御する圧力制御手段を設けたことを特徴とする請求項1,2,3,5,6又は7に記載の静圧軸受弁。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−274938(P2006−274938A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−95877(P2005−95877)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】