説明

静電吐出ヘッド

【課題】反りの発生を抑えることが可能な多層構成基板を用いた静電吐出ヘッドを提供すること。
【解決手段】静電力を作用させるための制御電極と、インクガイドに対向する位置に配置された対向電極とを備え、基板の表裏でほぼ等しい曲げ応力がかかるように構成した多層構成の制御基板を用いる。基板の表裏でほぼ等しい曲げ応力がかかるように構成する方法としては、熱膨張率がほぼ等しい層同士を概ね上下(表裏)対称になるように配置する構成,補強層を配置する構成あるいは前記層の材質として高剛性を有する材料を用いる構成等が好適に用い得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電粒子が分散された溶液に静電気力を作用させることで液滴を吐出させる静電式の液体吐出ヘッド(以下、静電吐出ヘッドという)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、液体を吐出する液体吐出ヘッドとしては、インクを加熱してインクに発生した気泡の膨張力でインク液滴を吐出させるサーマルタイプのインクジェットヘッドや、圧電素子によりインクに圧力を与えてインク液滴を吐出させるピエゾタイプのインクジェットヘッドが提案されている。しかしながら、サーマルタイプのインクジェットヘッドでは、インクを部分的に300℃以上に加熱するため、インクの材質が限定されるという問題があり、ピエゾタイプのインクジェットヘッドでは、構造が複雑でコストが高いといった問題がある。
【0003】
これらの問題を解決する液体吐出ヘッドとして、帯電した微粒子成分を含むインクを用い、画像データに応じて、インクジェットヘッドの制御電極に所定の電圧を印加することにより、静電気力を利用してインクの吐出を制御し、画像データに対応した画像を記録媒体上に記録する方式が提案されている。
この静電式インクジェット記録方式を採用する記録装置としては、種々のインクジェット記録装置が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1に開示のインクジェット記録装置のインクジェットヘッドは、制御基板に穿設された吐出孔と、この吐出孔の外周を囲むように上記制御基板の上面に貼り付けられた制御電極と、前記吐出孔より先端が突出して記録媒体方向へのインク滴の飛翔を案内するインクガイドを備えているライン走査型のものである。
【0005】
上述の特許文献1に開示のインクジェット記録装置のインクジェットヘッドの問題点としては、多チャンネル化,高集積化を進めて、より高精細な画像を記録するために、各インクガイドに対応する個別電極を高密度に配置した場合に、隣接する個別電極による電界の影響を受け、インク滴の飛翔角度が変わり、記録媒体での着滴位置がずれることや、電界の大きさが変化してインク滴の大きさが変わることがある。
【0006】
このような問題を解消するためになされたとされる、特許文献2に開示のインクジェット記録装置では、上述のヘッド構造における隣接する個別電極の影響を避けるために、個別電極間のスペースを広げることを特徴としている。但し、個別電極間のスペースを広げる際に、平面内でこれを行うとヘッドの間隔を広げることになるため、解像度が低下することになる。
【0007】
これを避けるために、上述の特許文献2に開示のインクジェット記録装置では、前記個別電極への配線が前記基板(すなわち、制御基板)内に設けられている。具体的には、個別電極に電圧を印加するための引き出し線を、必要によりスルーホールを用いて多層構成を有する制御基板の内部に形成するものである。
【0008】
また、特許文献3,特許文献4には、マトリクス駆動される2つの駆動電極群(第1の駆動電極群,第2の駆動電極群)を、多層構成を有する制御基板の内部にそれぞれが互いに直交するように配置することにより、高速駆動を可能にするとともに、制御基板の層構成を簡略化する(層数を減少させる)インクジェットヘッドが示されている。
【0009】
【特許文献1】特開平10−230608号公報
【特許文献2】特開2000−25233号公報
【特許文献3】特開2004−122700号公報
【特許文献4】特開2004−58505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上述の特許文献2に開示のインクジェット記録装置、あるいは、特許文献3,特許文献4に開示のインクジェットヘッドでは、上記多層構成を有する制御基板の具体的な製造方法については示されていないが、一般的には、このような多層構成を有する基板を製造する際には、熱膨張率の異なる材料を重ね合わせるため、反り,歪み等の発生が避けられない。
【0011】
このような問題は、単に基板の製造時だけの問題であるわけではなく、このように多層構成を有する基板について、これを全体としてより薄層化していくという傾向があることから、出来上がった基板を用いたインクジェットヘッドの駆動時に、インクに圧力(正圧または負圧)が加わる際に、それにより基板が変形するという現象が生ずるという問題の原因ともなる。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、前記従来技術に基づく問題点を解消して、液体吐出ヘッドに用いる多層構成基板における、反り,歪み等の発生を抑えることにある。
より具体的には、本発明の目的は、反り,歪み等の発生を抑えることが可能な多層構成基板を用いた静電吐出ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係る静電吐出ヘッドは、粒子が分散された溶液に静電力を作用させて粒子濃度の高い液滴を吐出させる静電吐出ヘッドであって、前記液滴を吐出する貫通孔が開孔された貫通孔基板と、前記貫通孔基板と所定の間隔離間して配置され、前記貫通孔基板との間に前記溶液の流路を形成するヘッド基板と、前記貫通孔に対応する位置に設置された、前記静電力を作用させるための制御電極と、液滴吐出方向に配置された対向電極とを備え、前記制御電極とそれに接続される引き出し線を収容する多層構成の制御基板として、反りを低減させた多層構成基板を用いることを特徴とする(請求項1)。
【0014】
ここで、前記反りを低減させた多層構成基板として、基板の表裏でほぼ等しい曲げ応力がかかるように構成した多層構成の制御基板を用いることが好ましい(請求項2)。
また、前記基板の表裏にかかる曲げ応力を等しくするために、熱膨張率がほぼ等しい層同士を概ね上下(表裏)対称になるように配置した構成を有する多層構成の制御基板を用いること(請求項3)、もしくは、補強層を配置した構成を有する多層構成の制御基板を用いることが好ましい(請求項4)。
なお、前記層の材質としては、高剛性を有する材料を用いて構成した多層構成の制御基板を用いることが好ましい(請求項5)。
【0015】
ここで、前記高剛性を有する材料としては、例えば、金属(銅(Cu),銀(Ag),金(Au),アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni),タングステン(W)等)あるいは複合材料(繊維強化プラスチックス(FRP),金属基複合材料(MMC),繊維強化金属(FRM)もしくはポリイミド等の絶縁性樹脂にカーボンブラックや金属等の導電性材料を組み込み、強度と導電性を持たせた材料),ガラス,酸化珪素(SiO),セラミックス等が好適に用い得る。
【0016】
前記基板の表裏にかかる曲げ応力を等しくするために、補強材を概ね上下(表裏)対称になるように配置した構成を有する多層構成の制御基板を用いることが好ましい(請求項6)。ここで、前記補強材は、多層構成の制御基板上に線状もしくは格子状に形成されていることが好ましい(請求項7)。
【0017】
また、前記反りを低減させるために、基板の表裏にかかる曲げ応力が小さくなるように構成した多層構成の制御基板を用いることが好ましい(請求項8)。
ここで、多層化した多層構成の制御基板としては、反りを相殺する層を組み合わせて用いること(請求項9)、もしくは、熱膨張率に差のある材料層を組み合わせて用いることが好ましく(請求項10)、さらに、熱膨張率に差のある材料層を組み合わせた単位構成を規則的に配置した多層構成の制御基板を用いることが好ましい(請求項11)。
【0018】
また、前記反りを低減させるために、多層構成の制御基板全体で曲げ応力に対する剛性を上げた多層構成の制御基板を用いることが好ましい(請求項12)。
ここで、高剛性材料からなる基板上に本来の多層構成の制御基板を配置して、複合的に構成した制御基板を用いることも好ましく(請求項13)、前記高剛性材料からなる基板に加えて、さらに、補強材を配置した構成を有する多層構成の制御基板を用いることも好ましい(請求項14)。
【0019】
また、前記反りを低減させるために、組み立て過程において発生した反りを後処理により矯正した多層構成の制御基板を用いることが好ましい(請求項15)。
また、組み立て過程において反りが発生することを考慮に入れ、積層過程において反りを矯正しながら形成した多層構成の制御基板を用いることが好ましい(請求項16)。
【0020】
またさらに、組み立て過程において発生した反りに対応する形状矯正部材を付属させた構成を有する多層構成の制御基板を用いることも好ましい(請求項17)。
ここで、前記形状矯正部材として、前記静電吐出ヘッド内部において対向する位置関係にある基板との間で互いに支持し合うように配置されるものを用いることが好ましい(請求項18)。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、静電式の液体吐出ヘッド(静電吐出ヘッド)に用いる多層構成基板における、反り,歪み等の発生を抑えることが可能となり、より具体的には、上述の反り,歪み等の発生を抑えることが可能な多層構成基板を用いた静電吐出ヘッドを実現できるという顕著な効果を奏する。
【0022】
また、このように構成することにより、多チャンネル化,高集積化を進めて、より高精細な画像を記録することが可能な静電吐出ヘッドを、高い生産性で製造することが可能になるという効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、まず、多層構成基板における、反り,歪みといった変形特性(以下、反りで代表させる)について説明し、その後に、図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明を詳細に説明する。
【0024】
図5は、例えば製造工程等において、多層構成基板における反りを評価する際の、測定方法の一例を説明する。
ここでは、測定対象とする多層構成基板(以下、ワークという)Wとして、例えば、340mm×340mmの大きさを有するものを例に挙げる。
通常は、定盤D上に載置した1枚のワークWについて、例えばその表裏両面の4角(a〜d)、計8点を少数点以下1桁程度の精度で測定する。
【0025】
実際の製造工程においては、ワークの加工工程の各段階で、順次、上述の方法で測定を行って、反りの発生状況を記録しておき、工程の管理・製品の品質チェックを行う。
図6は、ある製品についての、加工工程毎の反り(累積値)の発生状況を例示しているものである。なお、図6に示す例では、ワーク上に、電極の形成,絶縁層の形成,外層パターン形成等の種々の加工工程が施される。
【0026】
ここでは、比較のために、板厚0.15mmの場合と0.10mmの場合とを併記しているが、図から明らかなように、全体としては、下リング電極形成工程から上電極形成後における絶縁層形成工程までは、実質的に反りが生じていないが、板厚の大きい上コアを接着する段階で反り(累積値)が急増している。
【0027】
また、材料の板厚については、板厚0.15mmの場合(○印で示している)の方が、板厚0.10mmの場合(□印で示している)より反り(累積値)が20〜25%程度低くなっており、板厚を増加させた場合の影響が顕著に現われている。
【0028】
図6に示した例では、ワークの大きさでの反り量は約20mm程度になっているが、このワークに面付されている基板を1枚ずつ切り離してインクジェットヘッドを構成する段階で、基板の反り量は、以下に説明するように、約10μm(±約5μm)程度に抑えることが好ましい。
【0029】
次に、前述したような、出来上がった基板を用いて構成したインクジェットヘッドの駆動時に、インクジェットヘッド内のインクに圧力(正圧または負圧)が加わった際に、それにより基板が変形するという現象について説明する。
【0030】
図7に、インクジェットヘッド内におけるインク圧力の変動に対する基板の反り量の変化の一例を示す。この例では、インクジェットヘッド内におけるインク圧力の変動100Pa当たり、正圧・負圧の場合とも、約15μm程度の基板の反り量の変化が観測されている。
【0031】
インクジェットヘッド内におけるインク圧力の変動は、インクジェットヘッドの移動に伴う慣性力の影響,インク流路やヘッドない各部へのインク粒子の付着による流露抵抗の変化(これらは、経時的な変化)、あるいは、インクジェットヘッド内における流路構造の不均一(こちらは、空間的な変化)等、種々の原因によって発生する。
【0032】
通常、上記圧力の変動幅は最大でも±約150Pa程度であるが、これに起因して発生する基板の反り量は、インク流路の高さとの関係で約10μm(±約5μm)程度に抑えることが好ましい。これは、描画を行う際の、インクガイド先端と対向電極との間の距離(通常、500μm程度)に対しても必要とされる寸法でもある。
【0033】
そこで、ヘッド基板の反り量をこの程度の範囲内に抑えるためにも、ヘッド基板の製造過程における反りの発生を極力抑えることが重要である。
以下では、上述のような架台に対応するための、反りを低減させた多層構成基板の実施形態を説明する。
【0034】
まず、前記反りを低減させた多層構成基板として、基板の表裏でほぼ等しい曲げ応力がかかるように構成した多層構成の制御基板を作製する例を説明する。ここでは、具体的には、熱膨張率がほぼ等しい層同士を概ね上下(表裏)対称になるように配置する例を説明する。
【0035】
本実施形態においては、例えば、前述の下リング電極形成後に絶縁層を形成する際に、絶縁層を基板の上下両面に同じ材料からなる絶縁層を、実質的に同じ厚さに形成することにより、反りの発生を抑えるようにする。なお、ここでは、上記絶縁層を同じ材料で構成することにより熱膨張率を同じにすることが可能であり、これにより反りの発生にも有効である。
【0036】
なお、上述の絶縁層として、これ自体を補強材としての機能を有するものとしてもよく、この場合には、構成材料の点数が少なく抑えられる効果がある。また、上記絶縁層とは別に、絶縁層に補強材(補強層)を添えるように構成してもよい。この場合、補強材としては、前述のように、高剛性を有する材料を用いるのがよい。
【0037】
高剛性を有する材料としては、金属(銅(Cu),銀(Ag),金(Au),アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni),タングステン(W)等)あるいは複合材料(繊維強化プラスチックス(FRP),金属基複合材料(MMC),繊維強化金属(FRM)もしくはポリイミド等の絶縁性樹脂にカーボンブラックや金属等の導電性材料を組み込み、強度と導電性を持たせた材料),ガラス,酸化珪素(SiO),セラミックス等が好適に用い得る。
【0038】
なお、多層構成基板の各層中に配置される配線パターンの数等をなるべく各層で同じ数になるように配慮することは、多層構成基板の各層間で熱膨張率がほぼ等しいという状態を維持するのに有効であり、これにより、反りを抑える効果が得られるものである。このような配慮は、発熱や電界の均一化等の点でも利点がある。
【0039】
ところで、基板の反り量は、簡便には、
δ∝(αf−α)/E
で与えられる。ここで記号の意味は、δ:基板の反り量,αf:薄膜の線膨張率,α:基板の線膨張率,E:基板のヤング率である。
基板の全反り量は、基板の単位長さあたり10−3m以下であることが好ましい。
【0040】
次に、前記反りを低減させた多層構成基板として、基板の表面および裏面の一方または両方に、絶縁層とは無関係に、補強部材を配置することで、曲げ応力がかからないように構成した多層構成の制御基板を作製する例を説明する。
【0041】
例えば、図1に示すように、基板の表面および裏面の一方または両方に補強梁構造を設けるものである。ここで用いる材料としては、前述の高剛性を有する材料を用いるのがよく、形状・寸法等は、材料に応じて決定すればよい。また、基板に対する配置方法も、基板縁部(または中央部等)に線状に配置するいわゆる梁状の配置(図1(a)参照)や、基板全面に網目状もしくは格子状に組み立てた配置(図1(b)参照)状態とすることも可能である。
【0042】
図1(a),(b)において、10A,10Bは基板を示しており、それぞれ、基板基材10の一面に、高剛性を有する材料からなる梁状の部材12もしくは14aと14bとを組み合わせた格子状の補強構造を付加した状況を示している。
【0043】
次に、前記反りを低減させた多層構成基板の他の例として、基板を構成する各層のレベルで、反りを相殺するような「組み合わせ層」を用いて構成する例を説明する。
【0044】
例えば、図2に示すように、熱膨張率が相対的に大きい材料からなる層16aと、熱膨張率が相対的に小さい材料からなる層16bとを2層以上組み合わせてこれを1単位(16で示されている)とし、この1単位を多層基板内に規則的に配列するように構成することにより、反りの発生を抑えることができる。
【0045】
図2において、(a)に示す18は上述の1単位を多層基板内において単純に繰り返す(つまり、同じ向きに重ねる:16a,16bからなる16の繰り返し)場合を、また、(b)に示す18’は上述の1単位を交互に反転させて繰り返す(つまり、16a,16bからなる16と、16b,16aからなる16’との交互繰り返し)例を示している。なお、これらの2つの構成パターンのいずれを用いるかは、材料の組み合わせ,サイズ,使用条件等によって決めればよい。
【0046】
また、図3に示す構成例では、24a,24b,・・・からなる多層基板20内に多少の反りが発生した場合においても、それが実害を及ぼすことがないようにするために、多層基板の一つの面(貼り付け等による支障が発生しない面)に、高剛性(高ヤング率)材料からなる支持基板(強度保持基板)22を付加している。なお、この支持基板(強度保持基板)の配置に関しては、多層基板の表裏対称性がなくても構わない。
【0047】
これまでに説明した構成とは全く異なる反り発生を抑えることが可能な多層基板を実現できる構成として、以下のような構成(多層基板の形成方法)が挙げられる。
すなわち、上述のような熱膨張率を調整する等の方法を講じても、多少反りが残存するような場合、残存する内部応力(熱応力による場合もある)を消去するために、基板を加熱処理して、反りを低減するように形状補正を行うことが有効である。
【0048】
なお、この基板の加熱処理は、上述のような補足的な処理としての利用に限られるものではなく、加熱履歴の与え方を適正化することにより、これを、反り発生を抑えるための多層基板の主たる構成方法として利用することも可能である。
【0049】
また、上記構成方法と同様に、反りを考慮に入れて多層基板を設計または製作(特に、組立工程)する他の礼を説明する。要点は、常にほぼ等しい反り方向・量となる積層プロセスにして、反りの矯正を施しながら組立を行うようにする点にある。
具体的には、組立工程を簡略化する意味も含めて、基板は接合する部材に対して常に一定量、下に凸となる積層プロセスを施す。この場合、反りの矯正を行い易くするために、ヤング率の小さな材料を使用するようにすることが好ましい。
【0050】
また、図4は、さらに他の実施形態に係る反り発生を抑えることが可能な多層基板の要部構成を示す側断面図である。図4に示す構成例は、多層基板と接合する部材(ここでは、一例としてヘッド基板30)上に、一定高さを有する、貫通孔基板32と接触する支持部材(支柱,隔壁等の形状であることが好ましい)を設けて、インクジェットヘッド要部の構成の補強を行っている。
【0051】
なお、図4中、34は上記支持部材としてのポール(支柱)、30aはインクガイド、32aは制御電極、32bはガード電極、また、36はインク流路を示している。これらの構成要素については、従来の構成要素と相違する点は特にない。
【0052】
ここで、上記ポール34(支柱)は、インク流路36中に配置されるため、インクの流通抵抗とならないような流路内における断面形状を有するように構成することが好ましいことはいうまでもない。また、その接液面の表面状態についても、インクの流通抵抗とならないような表面状態、例えば接液面の表面粗さを小さく仕上げる構成,接液面を撥液加工もしくは親液加工等の被膜加工を行う構成等が挙げられる。
【0053】
以上、本発明に付き、種々の実施形態を示して説明したが、上記各実施形態は、いずれも本発明の一例を示したものであり、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更や改良を行ってもよいことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係る反り防止構造の構成概略図である。
【図2】他の実施形態に係る反り防止構造の構成概略図(その1)である。
【図3】他の実施形態に係る反り防止構造の構成概略図(その2)である。
【図4】他の実施形態に係る反り防止構造の構成概略図(その3)である。
【図5】多層構成基板における反りを評価する際の、測定方法の一例を説明する図である。
【図6】加工工程毎の反り(累積値)の発生状況を例示している図である。
【図7】インクジェットヘッド内におけるインク圧力の変動に対する基板の反り量の変化の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0055】
10 基板材料
10A,10B 基板
12,14a,14b 梁状の部材
16 構成単位
16a 熱膨張率が相対的に大きい材料からなる層
16b 熱膨張率が相対的に小さい材料からなる層
18,18’,20 基板
22 高ヤング率材料からなる支持基板
30 ヘッド基板
30a インクガイド
32 貫通孔基板
32a 制御電極
32b ガード電極
34 ポール(支柱)
36 インク流路
D 定盤
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子が分散された溶液に静電力を作用させて粒子濃度の高い液滴を吐出させる静電吐出ヘッドであって、
前記液滴を吐出する貫通孔が開孔された貫通孔基板と、
前記貫通孔基板と所定の間隔離間して配置され、前記貫通孔基板との間に前記溶液の流路を形成するヘッド基板と、
前記貫通孔に対応する位置に設置された、前記静電力を作用させるための制御電極と、
液滴吐出方向に配置された対向電極とを備え、
前記制御電極とそれに接続される引き出し線を収容する多層構成の制御基板として、反りを低減させた多層構成基板を用いることを特徴とする静電吐出ヘッド。
【請求項2】
前記反りを低減させるために、基板の表裏でほぼ等しい曲げ応力がかかるように構成した多層構成の制御基板を用いる請求項1に記載の静電吐出ヘッド。
【請求項3】
前記基板の表裏にかかる曲げ応力を等しくするために、熱膨張率がほぼ等しい層同士を概ね上下(表裏)対称になるように配置した構成を有する多層構成の制御基板を用いる請求項2に記載の静電吐出ヘッド。
【請求項4】
前記基板の表裏にかかる曲げ応力を等しくするために、補強層を配置した構成を有する多層構成の制御基板を用いる請求項2に記載の静電吐出ヘッド。
【請求項5】
前記層の材質として高剛性を有する材料を用いて構成した多層構成の制御基板を用いる請求項3または4に記載の静電吐出ヘッド。
【請求項6】
前記基板の表裏にかかる曲げ応力を等しくするために、補強材を概ね上下(表裏)対称になるように配置した構成を有する多層構成の制御基板を用いる請求項2に記載の静電吐出ヘッド。
【請求項7】
前記補強材は、多層構成の制御基板上に線状もしくは格子状に形成されている請求項6に記載の静電吐出ヘッド。
【請求項8】
前記反りを低減させるために、基板の表裏にかかる曲げ応力が小さくなるように構成した多層構成の制御基板を用いる請求項1に記載の静電吐出ヘッド。
【請求項9】
反りを相殺する層を組み合わせて多層化した多層構成の制御基板を用いる請求項8に記載の静電吐出ヘッド。
【請求項10】
熱膨張率に差のある材料層を組み合わせて多層化した多層構成の制御基板を用いる請求項9に記載の静電吐出ヘッド。
【請求項11】
熱膨張率に差のある材料層を組み合わせた単位構成を規則的に配置した多層構成の制御基板を用いる請求項9にまたは10に記載の静電吐出ヘッド。
【請求項12】
多層構成の制御基板全体で曲げ応力に対する剛性を上げた多層構成の制御基板を用いる請求項1に記載の静電吐出ヘッド。
【請求項13】
高剛性材料からなる基板上に本来の多層構成の制御基板を配置して、複合的に構成した制御基板を用いる請求項12に記載の静電吐出ヘッド。
【請求項14】
前記高剛性材料からなる基板に加えて、さらに、補強材を配置した構成を有する多層構成の制御基板を用いる請求項13に記載の静電吐出ヘッド。
【請求項15】
組み立て過程において発生した反りを後処理により矯正した多層構成の制御基板を用いる請求項1に記載の静電吐出ヘッド。
【請求項16】
組み立て過程において反りが発生することを考慮に入れ、積層過程において反りを矯正しながら形成した多層構成の制御基板を用いる請求項1に記載の静電吐出ヘッド。
【請求項17】
組み立て過程において発生した反りに対応する形状矯正部材を付属させた構成を有する多層構成の制御基板を用いる請求項1に記載の静電吐出ヘッド。
【請求項18】
前記形状矯正部材として、前記静電吐出ヘッド内部において対向する位置関係にある基板との間で互いに支持し合うように配置されるものを用いる請求項17に記載の静電吐出ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−30283(P2007−30283A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215377(P2005−215377)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】