説明

鞍乗型車両の制御装置、変速装置および鞍乗型車両

【課題】ATモードにおいて、意図的なシフトダウンを容易に行うことができるようにする。
【解決手段】制御装置5は、前記変速モード選択部52により前記ATモードが選択されているときにおいて、前記モード変更信号101が入力された際に、前記変速モード選択部52に前記MTモードを一時的に選択させると共に、前記変速比制御部55に、前記変速装置20の変速比を前記予め定められた複数の変速比のうちの現在の前記変速装置20の変速比よりもLOW側に位置する変速比のいずれかに変更させる一時的MTモード選択部51と、前記一時的MTモード選択部51によって前記MTモードが一時的に選択された後において、前記解除信号107が出力された際に、前記変速モード選択部52により選択される変速モードを前記ATモードに復帰させるATモード復帰部54とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両の制御装置、変速装置および鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変速比が連続的に変更可能な電子制御式の変速装置(以下、「ECVT(Electronically-controlled Continuously Variable Transmission」とする。)が知られている。ECVTでは、車速とエンジン回転速度(アクセル開度)と変速比との関係を表す変速比マップに基づいて変速比が自動的に変更される。したがって、ECVTを搭載した車両(以下、「ECVT搭載車」とする。)では、ライダーの変速操作やクラッチ操作を要さない。このため、現在、ECVTは種々の車両に搭載されている。
【0003】
しかしながら、ECVT搭載車では、ライダーは、変速比マップの設定以外には変速比を任意に変更することができない。このため、ECVT搭載車では、ライダーの意思でエンジンブレーキを有効に活用することが困難である。具体的には、ライダーの意思で変速比マップよりも強いエンジンブレーキを効かせることが困難である。
【0004】
また、例えば、ECVT搭載車では、他の車両を追い抜くような場合に、意図的に通常よりも大きくシフトダウンして車両の加速度を増大させる所謂キックダウン操作も困難である。
【0005】
このような事情に鑑み、変速比が連続的に自動変更される所謂ATモードと、ライダーが任意に変速比を変更することができる所謂MTモードとの両方が選択可能なECVT搭載車が提案されている。具体的には、例えば特許文献1には、減速レバーの位置に応じて無段変速機の変速比をマニュアル設定できるようにしたECVTが提案されている。また、例えば特許文献2には、変速比を強制的に変えたり、手動でシフトダウンさせたりするスイッチが設けられたECVTが提案されている。
【特許文献1】特許第2950957号公報
【特許文献2】特開昭62−175228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ATモードとMTモードとの切替が可能な従来のECVT搭載車では、ATモードにおいて、意図的にシフトダウンして車両を加速または減速させようとする場合に、煩雑で手間のかかる操作が必要となる。具体的に、ATモードにおいて、意図的にシフトダウンして車両を加速または減速させるためには、
1.ATモードをMTモードに切り替える操作
2.MTモードにおいてシフトダウンする操作
3.MTモードをATモードに切り替える操作
の少なくとも3回の操作が必要となる。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ATモードにおいて、意図的なシフトダウンを容易に行うことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る制御装置は、鞍乗型車両の駆動源と駆動輪との間に配置され、連続的に変速比を変更することができる電子制御式変速装置の制御装置である。鞍乗型車両は、モード一時変更スイッチを有する。モード一時変更スイッチは、制御装置に対してモード変更信号を出力する。本発明に係る制御装置は、変速比制御部と、変速モード選択部と、解除信号出力部と、一時的MTモード選択部と、ATモード復帰部と、を備えている。変速比制御部は、変速装置の変速比を制御する。変速モード選択部は、複数の変速モードのうちのいずれかを選択する。複数の変速モードには、ATモードと、MTモードとが含まれる。ATモードでは、鞍乗型車両の走行状態に応じて、変速比制御部が変速装置の変速比を連続的に変更する。MTモードでは、変速比制御部が、予め定められた複数の変速比間で変速装置の変速比を変更する。解除信号出力部は、鞍乗型車両に対して所定の操作が行われたとき、および鞍乗型車両に所定の条件が成立したときに解除信号を出力する。一時的MTモード選択部は、変速モード選択部によりATモードが選択されているときにおいて、モード変更信号が入力された際に、変速モード選択部にMTモードを一時的に選択させる。かつ、一時的MTモード選択部は、変速比制御部に、変速装置の変速比を予め定められた複数の変速比のうちの現在の変速装置の変速比よりもLOW側に位置する変速比のいずれかに変更させる。ATモード復帰部は、一時的MTモード選択部によってMTモードが一時的に選択された後において、解除信号が出力された際に、変速モード選択部により選択される変速モードをATモードに復帰させる。
【0009】
本発明に係る変速装置は、電子制御式変速機構と、制御装置とを備えている。変速機構は、鞍乗型車両の駆動源と駆動輪との間に配置され、連続的に変速比を変更することができるものである。制御装置は、変速機構を制御する。鞍乗型車両は、モード一時変更スイッチを有する。モード一時変更スイッチは、制御装置に対してモード変更信号を出力する。制御装置は、変速比制御部と、変速モード選択部と、解除信号出力部と、一時的MTモード選択部と、ATモード復帰部と、を有する。変速比制御部は、変速機構の変速比を制御する。変速モード選択部は、複数の変速モードのうちのいずれかを選択する。複数の変速モードには、ATモードとMTモードとが含まれる。ATモードでは、鞍乗型車両の走行状態に応じて、変速比制御部が変速機構の変速比を連続的に変更する。MTモードでは、変速比制御部が、予め定められた複数の変速比間で変速機構の変速比を変更する。解除信号出力部は、鞍乗型車両に対して所定の操作が行われたとき、および鞍乗型車両に所定の条件が成立したときに解除信号を出力する。一時的MTモード選択部は、変速モード選択部によりATモードが選択されているときにおいて、モード変更信号が入力された際に、変速モード選択部にMTモードを一時的に選択させる。かつ、一時的MTモード選択部は、変速比制御部に、変速機構の変速比を予め定められた複数の変速比のうちの現在の変速機構の変速比よりもLOW側に位置する変速比のいずれかに変更させる。ATモード復帰部は、一時的MTモード選択部によってMTモードが一時的に選択された後において、解除信号が出力された際に、変速モード選択部により選択される変速モードをATモードに復帰させる。
【0010】
本発明に係る鞍乗型車両は、駆動源と、駆動輪と、変速装置と、を備えている。駆動輪は、駆動源により駆動される。変速装置は、電子制御式変速機構と、制御装置とを有する。変速機構は、駆動源と駆動輪との間に配置され、連続的に変速比を変更することができるものである。制御装置は、変速機構を制御する。本発明に係る鞍乗型車両は、モード一時変更スイッチを備えている。モード一時変更スイッチは、制御装置に対してモード変更信号を出力する。制御装置は、変速比制御部と、変速モード選択部と、解除信号出力部と、一時的MTモード選択部と、ATモード復帰部と、を有する。変速比制御部は、変速機構の変速比を制御する。変速モード選択部は、複数の変速モードのうちのいずれかを選択する。複数の変速モードには、ATモードとMTモードとが含まれる。ATモードでは、鞍乗型車両の走行状態に応じて、変速比制御部が変速機構の変速比を連続的に変更する。MTモードでは、変速比制御部が、予め定められた複数の変速比間で変速機構の変速比を変更する。解除信号出力部は、鞍乗型車両に対して所定の操作が行われたとき、および鞍乗型車両に所定の条件が成立したときに解除信号を出力する。一時的MTモード選択部は、変速モード選択部によりATモードが選択されているときにおいて、モード変更信号が入力された際に、変速モード選択部にMTモードを一時的に選択させる。かつ、一時的MTモード選択部は、変速比制御部に、変速機構の変速比を予め定められた複数の変速比のうちの現在の変速機構の変速比よりもLOW側に位置する変速比のいずれかに変更させる。ATモード復帰部は、一時的MTモード選択部によってMTモードが一時的に選択された後において、解除信号が出力された際に、変速モード選択部により選択される変速モードをATモードに復帰させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ATモードにおいて、意図的なシフトダウンを容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
《実施形態1》
《自動二輪車1の構成》
本実施形態では、所謂スクータータイプの自動二輪車1を例に挙げて本発明の実施形態の一例について説明する。図1に示すように、自動二輪車1は、ハンドル4と、パワーユニット2と、駆動輪としての後輪3とを備えている。パワーユニット2と後輪3とは、動力伝達機構6により接続されている。
【0013】
(ハンドル4)
図2は、ハンドル4の概略構成図である。ハンドル4は、図示しないステアリングヘッドパイプに接続されたハンドルバー4dを備えている。ハンドル4は、ハンドルバー4dの左端部に位置する左グリップ部4aと、ハンドルバー4dの右端部に位置する右グリップ部4bとを備えている。右グリップ部4bは、ハンドルバー4dに対して回転可能である。ライダーが、この右グリップ部4bを回転させることで、図示しないスロットルが操作され、スロットル開度が調整される。
【0014】
各グリップ部4a、4b近傍には、ブレーキレバー4cが配置されている。ライダーがこのブレーキレバー4cを操作することで自動二輪車1のブレーキ(図示せず)が駆動されると共に、後述するように、ECU5に対してブレーキ信号104が出力される。
【0015】
左グリップ部4aの右側部分には、スイッチボックス40aが配置されている。スイッチボックス40aには、シフトアップスイッチ41、シフトダウンスイッチ42、モード一時変更スイッチ43およびモード選択スイッチ44等の各種操作スイッチが配置されている。
【0016】
シフトアップスイッチ41、シフトダウンスイッチ42、モード一時変更スイッチ43およびモード選択スイッチ44等の各種操作スイッチは、図3に示すように、ライダーの左手60の親指60aで操作可能な位置に配置されている。具体的に、各種操作スイッチは、スイッチボックス40aの後方に向かってやや下方に傾く上面に配置されている。すなわち、各種操作スイッチは、スイッチボックス40aのライダー側を向いた面に配置されている。
【0017】
ただし、本発明は、この構成に限定されない。例えば、シフトアップスイッチ41等のいくつかの操作スイッチを人差し指で操作可能なようにスイッチボックス40aのライダーから視て背面側に配置するようにしてもよい。例えば、シフトダウンスイッチ42をライダー側の面に配置する一方、シフトアップスイッチ41を、ライダーから視て背面側の面に配置するようにしてもよい。言い換えれば、シフトダウンスイッチ42を親指60aで操作できるようにする一方、シフトアップスイッチ41は、人差し指で操作できるようにしてもよい。また、すべての操作スイッチを人差し指で操作可能なようにスイッチボックス40aのライダーから視て背面側に配置するようにしてもよい。
【0018】
本実施形態では、シフトアップスイッチ41、シフトダウンスイッチ42、モード一時変更スイッチ43およびモード選択スイッチ44等の各種操作スイッチは、プッシュ式の所謂ボタン式スイッチにより構成されている。ただし、各種操作スイッチは、プッシュ式のレバーであってもよい。また、各種操作スイッチは、つまみを複数のポジション間で移動させる回転式のスイッチであってもよい。
【0019】
図3に示すように、各種操作スイッチのうち、シフトアップスイッチ41、シフトダウンスイッチ42およびモード一時変更スイッチ43が最もライダーの左手60寄りに配置されている。言い換えれば、シフトアップスイッチ41、シフトダウンスイッチ42およびモード一時変更スイッチ43が最も車幅方向外側に配置されている。モード一時変更スイッチ43は、シフトアップスイッチ41とシフトダウンスイッチ42との間に配置されている。モード選択スイッチ44は、シフトアップスイッチ41、シフトダウンスイッチ42およびモード一時変更スイッチ43よりも左手60から離れた位置に配置されている。これは、モード選択スイッチ44は、シフトアップスイッチ41、シフトダウンスイッチ42およびモード一時変更スイッチ43よりも使用頻度が比較的低いためである。このように、使用頻度が比較的高いシフトアップスイッチ41、シフトダウンスイッチ42およびモード一時変更スイッチ43を、操作の比較的しやすい左手60寄りに配置することが好ましい。
【0020】
なお、モード選択スイッチ44の配置場所は、左グリップ部4aに限られない。例えば、モード選択スイッチ44を右グリップ部4bの左側部分に配置してもよい。具体的には、右グリップ部4bの左側部分にさらなるスイッチボックスを設け、そのさらなるスイッチボックスにモード選択スイッチ44を配置してもよい。その場合、モード選択スイッチ44は、ライダーの右手人差し指で操作できる位置に配置することが好ましい。
【0021】
(パワーユニット2)
図4に示すように、駆動源としてのエンジン10と、電子制御式の変速装置20と、遠心クラッチ30と、減速機構31とを備えている。変速装置20は、変速機構21と、アクチュエータとしてのモータ22とを備えている。モータ22は、変速機構21の変速比を変更させるものである。
【0022】
変速機構21は、プライマリシーブ23と、セカンダリシーブ24とを備えている。プライマリシーブ23は、エンジン10の出力軸12に設けられており、出力軸12の回転に伴って回転する。プライマリシーブ23とセカンダリシーブ24とには、断面略V字状のベルト25が巻き掛けられている。プライマリシーブ23には、モータ22が取り付けられている。ベルト25が巻き掛けられるプライマリシーブ23のベルト溝の幅は、このモータ22によって変更される。これにより、変速機構21の変速比が連続的に変更できるようになっている。具体的には、変速機構21の変速比が無段に変更できるようになっている。
【0023】
セカンダリシーブ24は、遠心クラッチ30を介して減速機構31に接続されている。そして、減速機構31は、ベルトやチェーン、ドライブシャフト等の動力伝達機構6を介して後輪3に接続されている。
【0024】
遠心クラッチ30は、セカンダリシーブ24の回転速度に応じて断続される。具体的には、セカンダリシーブ24の回転速度が所定の回転速度未満である場合は、遠心クラッチ30は切断された状態にある。このため、セカンダリシーブ24の回転は、後輪3に伝達されない。一方、セカンダリシーブ24の回転速度が所定の回転速度以上である場合は、遠心クラッチ30が接続状態となる。このため、セカンダリシーブ24の回転は、遠心クラッチ30、減速機構31および動力伝達機構6を介して後輪3に伝達される。これにより、後輪3が回転するようになっている。
【0025】
《自動二輪車1の制御ブロック》
次に、図4を参照しながら自動二輪車1の制御ブロックについて説明する。図4に示すように、自動二輪車1の制御は、主として、制御装置としてのECU(electronic control unit)5によって行われる。ECU5は、各種設定等を記憶するメモリ57と、演算部としてのCPU(central processing unit)50と、駆動回路56とを備えている。CPU50には、一時的MTモード選択部51、変速モード選択部52、解除信号出力部53、ATモード復帰部54および変速比制御部55が設けられている。
【0026】
ECU5には、各種センサおよびスイッチ等が接続されている。具体的に、ECU5には、モード一時変更スイッチ43、モード選択スイッチ44、シフトアップスイッチ41、シフトダウンスイッチ42、スロットル開度センサ33、ブレーキレバー4c、エンジン回転速度センサ11、シーブ位置検出センサ26、セカンダリシーブ回転速度センサ27および車速センサ32が接続されている。
【0027】
モード一時変更スイッチ43は、ライダーによって操作された際に、モード変更信号101をECU5に対して出力する。モード選択スイッチ44は、ライダーによって操作された際に、モード選択信号102をECU5に対して出力する。スロットル開度センサ33は、自動二輪車1のスロットル開度を検出する。スロットル開度センサ33は、検出したスロットル開度を、スロットル開度信号103としてECU5に対して出力する。ブレーキレバー4cは、ライダーによって操作された際に、ブレーキ信号104をECU5に対して出力する。シフトアップスイッチ41は、ライダーによって操作された際に、シフトアップ信号105をECU5に対して出力する。シフトダウンスイッチ42は、ライダーによって操作された際に、シフトダウン信号106をECU5に対して出力する。
【0028】
エンジン回転速度センサ11は、エンジン10の回転速度を検出する。エンジン回転速度センサ11は、検出したエンジン10の回転速度をエンジン回転速度信号109としてECU5に対して出力する。
【0029】
シーブ位置検出センサ26は、変速機構21の変速比を検出するためのセンサである。具体的には、シーブ位置検出センサ26は、プライマリシーブ23のベルト溝の幅を検出する。例えば、本実施形態のように、プライマリシーブ23が、固定シーブ体と、固定シーブ体に対して相対的に変位可能な可動シーブ体とにより構成されている場合は、シーブ位置検出センサ26は、固定シーブ体に対する可動シーブ体の位置を検出する。そして、シーブ位置検出センサ26は、可動シーブ体の位置をシーブ位置信号110としてECU5に対して出力する。
【0030】
セカンダリシーブ回転速度センサ27は、セカンダリシーブ24の回転速度を検出する。セカンダリシーブ回転速度センサ27は、検出したセカンダリシーブ24の回転速度をECU5に対してセカンダリシーブ回転速度信号111として出力する。
【0031】
車速センサ32は、自動二輪車1の車速を検出する。車速センサ32は、検出した車速をECU5に対して出力する。なお、車速センサ32は、後輪3の回転速度を検出するものであってもよいが、例えば、車速センサ32は、減速機構31の出力軸の回転速度を検出することで車速を得るものであってもよい。また、車速センサ32は、前輪の回転速度を検出することで車速を得るものであってもよい。
【0032】
(ECU5の制御概要)
ECU5は、エンジン10の制御を行っている。具体的に、ECU5は、スロットル開度信号103や車速信号112等に基づいて、目標となるエンジン回転速度を算出する。ECU5は、エンジン回転速度信号109をモニタしながら、エンジン10の点火装置(図示せず)の点火時期およびエンジン10への燃料供給量などを調節することにより、エンジン10の回転速度等を算出された目標エンジン回転速度に制御している。
【0033】
また、ECU5は、変速装置20の制御も行っている。具体的に、ECU5は、エンジン回転速度信号109、車速信号112等から目標となる変速比を算出する。また、ECU5は、シーブ位置信号110等により変速装置20の現在の変速比を検出する。そして、ECU5は、算出された目標変速比と、検出された現在の変速比とに基づいて、PWM(pulse-width modulation)信号108を駆動回路56に出力する。駆動回路56は、入力されたPWM信号108に応じたパルス電圧をモータ22に対して印加する。これにより、変速装置20の変速比が目標変速比に制御される。
【0034】
なお、本実施形態では、変速機構21の変速比を変更するアクチュエータとして、PWM制御されるモータ22を用いる例について説明する。ただし、本発明において、変速装置20の変速比を変更するアクチュエータの種類は特に限定されない。例えば、変速装置20の変速比を変更するアクチュエータは、PAM(pulse amplitude modulation)制御されるモータであってもよい。また、変速装置20の変速比を変更するアクチュエータは、ステップモータであってもよい。また、変速装置20の変速比を変更するアクチュエータは、油圧アクチュエータ等であってもよい。
【0035】
以下、変速装置20の変速比の制御についてさらに詳細に説明する。まず、図5等を参照しながら、変速モードの選択について説明する。
【0036】
(変速モードの選択)
自動二輪車1では、ATモードと、手動MTモードと、自動MTモードとが選択可能である。図5に示すように、ATモードと、手動MTモードと、自動MTモードとは、ライダーがモード選択スイッチ44を操作することにより選択可能となっている。
【0037】
図4に示すように、ライダーがモード選択スイッチ44を操作すると、モード選択スイッチ44からモード選択信号102がECU5に対して出力される。具体的に、モード選択信号102は、ECU5内の変速モード選択部52に対して出力される。モード選択信号102が変速モード選択部52に入力されると、図5に示すように、変速モードが現在の変速モードから切り替わる。例えば、現在の変速モードがATモードである場合、ライダーがモード選択スイッチ44を一度操作すると、自動MTモードに切り替わる。ライダーがモード選択スイッチ44をもう一度操作すると、今度は、自動MTモードから手動MTモードに切り替わる。ライダーがモード選択スイッチ44をさらにもう一度操作すると、手動MTモードから元のATモードに切り替わる。つまり、モード選択スイッチ44が操作されてモード選択信号102が出力されるたびに、変速モードが順に切り替わる。このように変速モードが変更されると、変速比制御部55は、変更された変速モードに応じて変速装置20の変速比を制御する。
【0038】
なお、本実施形態では、モード選択スイッチ44を操作するたびに変速モードが順に変化する例について説明するが、例えば、ATモードを選択するためのモード選択スイッチ、自動MTモードを選択するためのモード選択スイッチ、手動MTモードを選択するためのモード選択スイッチをそれぞれ別個に設けてもよい。
【0039】
「ATモード」
「ATモード」とは、自動二輪車1の走行状態に応じて、変速比制御部55によって、変速装置20の変速比が連続的かつ自動的に変更されるモードである。言い換えれば、「ATモード」とは、自動二輪車1の走行状態に応じて、変速装置20の変速比が無段に、自動的に変更されるモードである。例えば、「ATモード」は、変速装置20の変速比が、予め定められた変速比マップに基づいて、連続的かつ自動的に変更されるモードであってもよい。
【0040】
ECU5内のメモリ57には、自動二輪車1の車速、エンジン回転速度およびスロットル開度等の自動二輪車1の走行状態と、変速比との関係を規定した変速比マップが記憶されている。図4に示す変速比制御部55は、この変速比マップと、車速信号112およびエンジン回転速度信号109等とに基づいて目標変速比を算出する。変速比制御部55は、算出した目標変速比と、シーブ位置信号110と、セカンダリシーブ回転速度信号111とに基づいたPWM信号108を駆動回路56に出力する。駆動回路56は、PWM信号108に応じたパルス電圧をモータ22に印加する。これによりモータ22が駆動され、プライマリシーブ23のベルト溝の幅が調整される。その結果、変速装置20の変速比が目標の変速比にまで変更される。
【0041】
「MTモード」
一方、「MTモード」とは、予め定められた複数の変速比間で変速装置20の変速比が自動的に、または手動で変更されるモードである。MTモードのうち、ライダーがシフトアップスイッチ41やシフトダウンスイッチ42等の操作スイッチを操作することで、変速装置20の変速比が変更されるモードが「手動MTモード」である。すなわち、「手動MTモード」では、シフトチェンジがライダーにより行われる。なお、「MTモード」は、複数のギア間で物理的に変速比が変更される通常のマニュアルトランスミッションと区別する意味で、疑似MTモードと称呼されることもある。
【0042】
「手動MTモード」
具体的に、本実施形態では、図6に示すように、LOW側から1速、2速、3速、4速、5速という5つのほぼ固定された変速比が設定されている。なお、1速〜5速の各変速比は、完全に固定されていてもよいが、例えば、エンジン回転速度によって変化するものであってもよい。具体的に、1速〜5速の各変速比は、例えば、エンジン回転速度が大きくなるにつれて、トップ寄りになるように設定されていてもよい。手動MTモードでは、ライダーのシフトアップスイッチ41またはシフトダウンスイッチ42等の操作スイッチを操作しない限り、原則的に変速比は変化しない。言い換えれば、手動MTモードでは、ライダーのシフトアップスイッチ41またはシフトダウンスイッチ42等の操作スイッチを操作しない限り、変速装置20の変速比が各変速比間で自動的に変更されることは原則的にはない。ただし、例えば、自動二輪車1の減速時等におけるエンスト抑制などのために、例外的に強制的にシフトダウンされる場合はある。
【0043】
例えば、図6に例示するケースについて説明すると、1速で自動二輪車1の走行を開始した場合、シフトアップスイッチ41が操作されるまでは、変速装置20の変速比は1速のままである。ポイントAにおいて、ライダーがシフトアップスイッチ41を操作すると、図4に示すように、シフトアップスイッチ41からシフトアップ信号105がECU5に対して出力される。シフトアップ信号105がECU5に入力されると、ECU5内の変速比制御部55は、変速装置20の変速比を1速から2速に変更するためのPWM信号108を駆動回路56に対して出力する。駆動回路56は、そのPWM信号108に応じたパルス電圧をモータ22に対して印加する。これにより、図6に示すように、変速装置20の変速比が2速に切り替わる。同様に、ポイントBにおいて、さらにシフトアップスイッチ41が操作されると変速装置20の変速比が3速に切り替わる。
【0044】
一方、例えば、図6のポイントCにおいて、シフトダウンスイッチ42が操作されると、図4に示すように、シフトダウンスイッチ42からシフトダウン信号106がECU5に対して出力される。シフトダウン信号106がECU5に入力されると、ECU5内の変速比制御部55は、変速装置20の変速比を5速から4速に変更するためのPWM信号108を駆動回路56に対して出力する。駆動回路56は、そのPWM信号108に応じたパルス電圧をモータ22に対して印加する。これにより、図6に示すように、変速装置20の変速比が5速から4速に切り替わる。
【0045】
「自動MTモード」
MTモードのうち、ライダーの操作によらずに予め定められた複数の変速比間で変速装置20の変速比が、変速比制御部55によって自動的に変更されるモードが「自動MTモード」である。
【0046】
図7に例示するように、変速モード選択部52によって自動MTモードが選択されると、変速装置20の変速比は、ライダーの操作によらず、自動二輪車1の走行状態の変化に伴って自動的に変更されていく。ただし、自動MTモードの場合は、ATモードとは異なり、変速比は連続的には変更されない。言い換えれば、自動MTモードの場合は、ATモードのように変速比が無段に変更されない。すなわち、自動MTモードでは、予め設定された変速比の間で変速装置20の変速比が自動的に変更される。
【0047】
なお、自動MTモードにおいて、シフトチェンジのタイミングは、例えばスロットル開度等によって異なるように設定されている。具体的に、シフトアップ時において、ライダーが比較的急速に加速させるべく、スロットルを大きく開けた場合(すなわち、スロットル開度:大の場合)は、比較的高いエンジン回転速度でシフトチェンジが行われる。一方、ライダーが比較的ゆっくりと加速すべく、スロットルを小さく開けた場合(すなわち、スロットル開度:小の場合)は、比較的低いエンジン回転速度でシフトチェンジが行われる。シフトダウンの際もシフトアップの際と同様で、シフトチェンジのタイミングは、スロットル開度等によって異なるように設定されている。
【0048】
(MTシフトダウンモード)
「MTシフトダウンモードの概要」
本実施形態では、図5に示すように、ATモードにおいて、モード変更信号101がモード一時変更スイッチ43から出力されるとMTシフトダウンモードが一時的に選択される。それと共に、変速比制御部55によって、変速装置20の変速比が、予め定められた複数の変速比(1速〜5速)のうち、現在の変速装置20の変速比よりもLOW側に位置する変速比のいずれかにまで変更される。MTシフトダウンモードにおいて、ライダーによりモード一時変更スイッチ43が操作されると、現在の変速装置20の変速比よりもさらにLOW側の変速比に変更される。MTシフトダウンモードにおいて、解除信号107が図4に示す解除信号出力部53から出力されると、MTシフトダウンモードからATモードに復帰する。
【0049】
例えば、MTモードでは、ライダーが変速装置20の変速比を任意に変更することができる。それに対して、ATモードでは、変速装置20の変速比は自動的に変更されるため、ライダーが変速装置20の変速比を任意に変更することができない。MTシフトダウンモードは、このような事情に鑑み、ATモード選択時においても、ライダーの簡単な操作でキックダウン操作やエンジンブレーキの活用を可能にすべく設定された変速モードである。
【0050】
なお、本実施形態では、変速比制御部55によって、変速装置20の変速比が、予め定められた複数の変速比(1速〜5速)のうち、現在の変速装置20の変速比よりもLOW側の現在の変速装置20の変速比と最も近い変速比に変更される例について説明する。ただし、本発明はこれに限定されない。例えば、変速比制御部55によって、変速装置20の変速比が、予め定められた複数の変速比(1速〜5速)のうち、現在の変速装置20の変速比よりもLOW側の現在の変速装置20の変速比と最も近い変速比よりもさらにLOW側の変速比に変更されるようにしてもよい。
【0051】
具体的に、変速比制御部55によって、変速装置20の変速比が、予め定められた複数の変速比(1速〜5速)のうち、現在の変速装置20の変速比よりもLOW側の現在の変速装置20の変速比と最も近い変速比よりもさらに1段だけLOW側の変速比に変更されるようにしてもよい。さらには、変速比制御部55によって、変速装置20の変速比が、予め定められた複数の変速比(1速〜5速)のうち、現在の変速装置20の変速比よりもLOW側の現在の変速装置20の変速比と最も近い変速比よりもさらに2段以上LOW側の変速比に変更されるようにしてもよい。
【0052】
また、ライダーがシフトダウン量を設定することができるようにしてもよい。例えば、比較的機敏な運転をしようとする際には、シフトダウン量が大きいモードを選択することができる一方、比較的なだらかに運転しようとする場合は、シフトダウン量が小さいモードを選択することができるようにしてもよい。さらに、モード一時変更スイッチ43を複数設けてもよい。例えば、シフトダウン量が比較的小さいモード一時変更スイッチ43と、シフトダウン量が比較的大きいモード一時変更スイッチ43とを設けてもよい。
【0053】
「MTシフトダウンモードの詳細」
以下、MTシフトダウンモードについて、主として図8〜図13を参照しながら、さらに詳細に説明する。ここでは、MTシフトダウンモードが、ライダーの操作スイッチの操作に応じて、変速比制御部55によって、予め定められた複数の変速(1速〜5速)間で変速装置20の変速比が変更される手動変速モードである例について説明する。ただし、MTシフトダウンモードは、自動二輪車1の走行状態に応じて、変速比制御部55によって、予め定められた複数の変速(1速〜5速)間で変速装置20の変速比が自動的に変更される変速モードであってもよい。
【0054】
図8に示すように、変速モード選択部52によりATモードが選択されているときに、ステップS1において、モード一時変更スイッチ43が操作されるとMTシフトダウンモードが一時的に選択される。具体的には、モード変更信号101は、ECU5の一時的MTモード選択部51に対して出力される。モード変更信号101が一時的MTモード選択部51に入力されると、一時的MTモード選択部51は、変速モード選択部52に対してMTシフトダウンモードを選択するように命令する。これにより、変速モード選択部52によってMTシフトダウンモードが選択される。それと共に、変速比制御部55によって、変速装置20の変速比が、予め定められた複数の変速比(1速〜5速)のうち、現在の変速装置20の変速比よりもLOW側の現在の変速装置20の変速比と最も近い変速比に変更される。例えば、図13に示すように、5速と4速との間に位置するポイントAにおいてモード変更信号101が出力されると、変速比が4速のポイントBに変更される。
【0055】
なお、本実施形態では、モード一時変更スイッチ43が操作された際の変速装置20の変速比が、予め定められた複数の変速比(1速〜5速)のいずれかと一致している場合は、予め定められた複数の変速比(1速〜5速)のうちの、現在の変速装置20の変速比と一致した変速比で保持される。この場合、モード一時変更スイッチ43の操作時においては実質的にシフトダウンされないが、その後、変速装置20の変速比が現在の変速比に保持されるため、その後、変速比がシフトアップ側に変化していくATモードのときと比較してシフトダウンが行われることとなる。
【0056】
図8に示すように、MTシフトダウンモードにおいて、モード一時変更スイッチ43が操作されたと判断されると、シフトダウンが行われる(ステップS2)。例えば、図13のポイントCにおいて、モード一時変更スイッチ43が操作されると、モード変更信号101がECU5に対して出力される。モード変更信号101がECU5に出力されると、変速比制御部55によって、現在の変速装置20の変速比(4速)から、それよりもLOW側の変速比(3速、ポイントD)にシフトダウンされる。
【0057】
シフトダウン後、シフトダウンされた変速比が保持される。次に、ステップS3において、ECU5で、自動二輪車1に対して所定の操作が行われたか、自動二輪車1に対して所定の条件が成立したか、が判断される。ECU5において、自動二輪車1に対して所定の操作が行われたと判断された場合、および自動二輪車1に対して所定の条件が成立したと判断された場合には、図4に示すように、解除信号出力部53よりATモード復帰部54に対して、解除信号107が出力される。解除信号107がATモード復帰部54に入力されると、ATモード復帰部54は、変速モード選択部52により選択される変速モードをATモードに復帰させる。
【0058】
一方、ステップS3において、ECU5で、自動二輪車1に対して所定の操作が行われておらず、かつ自動二輪車1に対して所定の条件が成立しなかったと判断された場合は、ステップS2に戻り、モード一時変更スイッチ43が操作されたか否かが判断される。このため、MTシフトダウンモードにおいて、モード一時変更スイッチ43が操作されると、さらにシフトダウンが行われる。つまり、MTシフトダウンモードにおいて、モード一時変更スイッチ43が操作されるたびに、シフトダウンが行われる。
【0059】
具体的に、上述のように、3速にシフトダウンされた後に、さらに図13に示すポイントEにおいて、モード一時変更スイッチ43が操作されると、現在の変速比(3速)から、それよりもLOW側の変速比(2速、ポイントF)にシフトダウンされる。さらに、図13に示すポイントGにおいて、モード一時変更スイッチ43が操作されると、現在の変速比(2速)から、それよりもLOW側の変速比(1速、ポイントH)にシフトダウンされる。ポイントIにおいて、ECU5において、例えば、自動二輪車1に対して所定の操作が行われると、MTシフトダウンモードからATモードに復帰し、例えば、ポイントJにまで変速比がシフトアップする。
【0060】
「ステップS3の詳細」
ステップS3における「所定の条件」「所定の操作」は、ライダーの加速意志、またはエンジンブレーキを活用する意志がなくなった、または薄くなったと判断されるようなものであれば、特に限定されない。
【0061】
例えば、図9に例示するように、スロットル開度、エンジン回転速度、車速の少なくともいずれかひとつが所定の条件を満たしたときにATモードに復帰するようにしてもよい。具体的には、スロットル開度が一定の開度以下、または一定の開度未満となったとき、スロットル開度がMTシフトダウンモードが選択されたときの開度にまで戻ったときにATモードに復帰するようにしてもよい。スロットル開度が所定の期間にわたって一定であったときにATモードに復帰するようにしてもよい。
【0062】
また、エンジン回転速度が一定の回転速度以上となったときに、または一定の回転速度よりも大きくなったときATモードに復帰するようにしてもよい。具体的には、レブリミットに達したときにATモードに復帰するようにしてもよい。
【0063】
車速が所定の速度以上または所定の速度よりも大きくなったときにATモードに復帰するようにしてもよい。車速を時間で微分することで得られる自動二輪車1の車両加速度が一定の加速度以下または一定の加速度よりも小さくなったときにATモードに復帰するようにしてもよい。
【0064】
また、例えば、図10に示すように、一時的MTモード選択部51によってMTシフトダウンモードが選択されてから所定の時間経過したときにATモードに復帰するようにしてもよい。具体的には、一時的MTモード選択部51によってMTシフトダウンモードが選択されてから3秒〜120秒の期間を経過したときにATモードに復帰するようにしてもよい。
【0065】
また、例えば、図11に示すように、MTシフトダウンモードにおいて、ライダーによってブレーキレバー4cが操作され、ブレーキ信号104がECU5に対して出力されたとき、或いは、ブレーキ信号104がECU5に対して出力された後にブレーキ信号104が解除されたときにATモードに復帰するようにしてもよい。
【0066】
また、例えば、図12に示すように、MTシフトダウンモードにおいて、ライダーによってシフトアップスイッチ41が操作され、シフトアップ信号105がECU5に対して出力されたときにATモードに復帰するようにしてもよい。
【0067】
《作用および効果》
本実施形態では、ATモードにおいて、ライダーがモード一時変更スイッチ43を操作することで、容易にMTシフトダウンモードが選択される。このため、ライダーは、モード一時変更スイッチ43を操作するという簡単な一度のスイッチ操作のみによって、容易かつ迅速にシフトダウンすることができる。このため、ライダーは、容易かつ迅速にキックダウン操作やエンジンブレーキの活用を行うことができる。
【0068】
例えば、ATモードおよびMTモードの両方が選択可能な従来の自動二輪車においても、シフトダウン操作は可能である。しかしながら、従来の自動二輪車の場合、変速装置の変速比をシフトダウンするためには、
1.モード選択スイッチを操作して、ATモードからMTモードに変更する。
2.2.シフトダウンスイッチを操作してシフトダウンを行う。
という少なくとも2つの操作が必要となる。このため、変速装置の変速比の操作が煩雑であるばかりか、迅速にシフトダウン操作を行うことが困難である。それに対して、本実施形態では、上述のように、モード一時変更スイッチ43の操作というひとつの操作により、容易且つ迅速にATモードにおいてシフトダウンを行うことができる。
【0069】
なお、ライダーの簡単な操作でキックダウン操作やエンジンブレーキの活用を可能する方法として、ATモードにおいて変速マップから算出される変速比に所定量だけLOW側にシフトした目標変速比を使用して変速装置20を制御するキックダウンモードを設定する方法も考えられる。この方法では、キックダウンモードにシフトするスイッチの操作のみによってキックダウンを行うことができる。しかしながら、キックダウンモードは、あくまでATモードである。このため、キックダウンモードでは、きびきびとしたダイレクト感のあるキックダウンやエンジンブレーキ効果の大きな減速が要求される場合には、その要求を十分に実現することは困難である。
【0070】
それに対して、本実施形態では、モード一時変更スイッチ43を操作することで、MTシフトダウンモードに移行する。そして、MTモードにおいてシフトダウンが行われる。このため、本実施形態によれば、固定変速感を伴った、きびきびとしたダイレクト感のあるキックダウン、若しくはエンジンブレーキによる減速が可能である。
【0071】
また、本実施形態では、自動二輪車1に対して所定の操作が行われた際、および自動二輪車1に所定の条件が成立した際に、MTシフトダウンモードからATモードに自動的に復帰する。つまり、本実施形態では、ATモードにおいて、簡単で迅速に行える操作でMTモードにおける一時的なシフトダウンを行うことが可能である。このため、ATモードで走行中に、他の車両を追い抜くため等に加速すること、およびエンジンブレーキを活用するために減速することが非常に容易である。これにより、通常はシフトチェンジが不要で、煩雑なシフトチェンジ操作が要求されず、容易に運転することができる一方、ライダーが比較的強く加速または減速させたいと望むときには、容易な操作でMTシフトダウンモードを選択して、きびきびと加速または減速することができるという、非常に高いドライバビリティが実現される。
【0072】
特に、図9に示すように、スロットル開度、エンジン回転速度、車速の少なくともいずれかひとつが所定の条件を満たしたときにATモードに復帰するように設定した場合や、図10に示すように、一時的MTモード選択部51によってMTシフトダウンモードが選択されてから所定の時間経過したときにATモードに復帰するように設定した場合は、ライダーが特別な操作をすることなく、ATモードへ復帰することが可能となる。このため、ATモードへの復帰が特に容易となる。また、この場合は、ATモードへ復帰するために特別な操作が必要ではないため、確実にATモードに復帰する。つまり、ライダーの不注意等によるATモードへの復帰忘れが抑制される。
【0073】
また、図11に示すように、MTシフトダウンモードにおいて、ライダーによってブレーキレバー4cが操作されたときや、図12に示すように、MTシフトダウンモードにおいて、ライダーによってシフトアップスイッチ41が操作されたときにATモードに復帰するように設定した場合は、ライダーのシフトダウンしたいという意志がなくなるまでは、MTシフトダウンモードが継続され、ライダーがATモードに復帰したいと欲したときには、確実にATモードに復帰する。つまり、ライダーの意志をより的確に反映することが可能となる。
【0074】
本実施形態では、MTシフトダウンモードにおいて、ライダーのモード一時変更スイッチ43のさらなる操作によって、さらにシフトダウンされる。このため、例えば、単にMTシフトダウンモードにしたのみでは、シフトダウン量が十分ではないと判断されるときには、さらにシフトダウンすることが可能となる。つまり、ライダーがより自由に自動二輪車1を操作することが可能となる。
【0075】
なお、本実施形態では、MTシフトダウンモードにおいて、ライダーがシフトダウンスイッチ42を操作することで、さらなるシフトダウンが行われるようにしてもよい。
【0076】
なお、MTシフトダウンモードにおいて、シフトアップスイッチ41を操作した際に変速装置20の変速比がシフトアップするようにしてもよい。
【0077】
本実施形態では、モード一時変更スイッチ43等の各種スイッチは、プッシュ式のスイッチである。このため、ライダーが操作スイッチを容易に操作することができる。本実施形態では、ボタン式のスイッチにより操作スイッチを構成するようにしたが、操作スイッチをレバー式のスイッチにしてもよい。
【0078】
また、本実施形態では、モード一時変更スイッチ43等の各種スイッチは、ライダーの親指60aにより操作可能となっている。ライダーの親指60aは、自動二輪車1の操舵中において、他の指よりも比較的自由に動かすことができる。このため、モード一時変更スイッチ43等の各種スイッチの操作性が向上されている。ブレーキレバー4cを握っているときには、他の指よりも特に自由に動かし易く、ブレーキ操作と各種スイッチ操作との同時操作が比較的容易である。
【0079】
また、本実施形態では、モード一時変更スイッチ43等の各種スイッチは、スロットルを操作する右グリップ部4bとは反対側の左グリップ部4aに配置されている。このため、スロットル操作と同時に操作スイッチを操作することが比較的容易である。
【0080】
本実施形態では、手動MTモードと自動MTモードとの2種のMTモードが選択可能である。このため、手動MTモードを選択することで、ライダーが自分の意志でシフトチェンジすることも可能である。一方、ダイレクト感の高い、よりMT的なシフトチェンジを望むものの、シフトチェンジ操作を欲しないような場合には、自動MTモードを選択し、自動的に疑似MTシフトチェンジさせることも可能である。
【0081】
<変形例1>
上記実施形態では、MTシフトダウンモードにおいてモード一時変更スイッチ43が操作されることで、さらなるシフトダウンが行われる例について説明した。しかし、図14に示すように、さらなるシフトダウンはライダーによるシフトダウンスイッチ42の操作により行われ、MTシフトダウンモードにおいてモード一時変更スイッチ43が操作されるとATモードに復帰するようにしてもよい。
【0082】
<変形例2>
上記実施形態では、モード一時変更スイッチ43を別途設け、モード一時変更スイッチ43の操作によってMTシフトダウンモードに移行する例について説明した。ただし、本発明はこの構成に限定されない。本変形例2では、モード一時変更スイッチ43を別途設けず、シフトダウンスイッチ42の操作によりMTシフトダウンモードに移行する例について説明する。
【0083】
なお、本変形例の説明において、図1は上記実施形態と共通に参照する。また、共通の構成要件に関しては、同一の符号を使用し、説明を省略する。
【0084】
図15は、本変形例2におけるハンドル4部分の概略構成図である。本変形例2では、スイッチボックス40aに、モード一時変更スイッチ43は設けられていない。スイッチボックス40aの左側には、シフトアップスイッチ41とシフトダウンスイッチ42とのみが配置されている。このように、スイッチボックス40aの左側に配置するスイッチの数量が比較的少ないため、シフトアップスイッチ41とシフトダウンスイッチ42とは、それぞれ上記実施形態よりも大きく形成されている。
【0085】
なお、モード選択スイッチ44の配置場所は、左グリップ部4aに限られない。例えば、モード選択スイッチ44を右グリップ部4bの左側部分に配置してもよい。具体的には、右グリップ部4bの左側部分にさらなるスイッチボックスを設け、そのさらなるスイッチボックスにモード選択スイッチ44を配置してもよい。その場合、モード選択スイッチ44は、ライダーの右手人差し指で操作できる位置に配置することが好ましい。
【0086】
図16に示すように、本変形例2では、ATモードにおいてシフトダウンスイッチ42を操作することにより出力されるシフトダウン信号106がモード変更信号101となる。すなわち、図17に示すように、ATモードにおいて、ステップS1(b)で、ライダーによってシフトダウンスイッチ42が操作されると、モード変更信号101としてのシフトダウン信号106がECU5に対して出力される。ECU5にシフトダウン信号106が入力されると、一時的MTモード選択部51により、MTシフトダウンモードが選択される。それと共に、変速比制御部55によって、変速装置20の変速比が、予め定められた複数の変速比(1速〜5速)のうち、現在の変速装置20の変速比よりもLOW側に位置する変速比のいずれかにまで変更される。
【0087】
本変形例2では、MTシフトダウンモードにおいて、シフトダウンスイッチ42が操作されると、シフトダウンされる(ステップS2(b))。
【0088】
《作用および効果》
本変形例2では、シフトダウンスイッチ42の操作によりMTシフトダウンモードへの移行および、MTシフトダウンモードにおけるさらなるシフトダウンが行われる。このため、モード一時変更スイッチ43を設ける必要がなく、その分シフトアップスイッチ41とシフトダウンスイッチ42とをそれぞれ大きくすることができる。これにより、ライダーの操作性が向上する。また、操作スイッチの数量が減るため、ライダーの操作が簡単となる。
【0089】
<変形例3>
上記実施形態では、モード選択スイッチ44が左グリップ部4aに設けられたスイッチボックス40aに配置される例について説明した。しかし、モード選択スイッチ44の配置場所は、左グリップ部4aに限られない。例えば、図18に示すように、モード選択スイッチ44を右グリップ部4bの左側部分に配置してもよい。具体的には、右グリップ部4bの左側部分にさらなるスイッチボックス40bを設け、そのスイッチボックス40bにモード選択スイッチ44を配置してもよい。図18に示すように、モード選択スイッチ44は、ライダーの右手人差し指で操作できる位置に配置することが好ましい。
【0090】
<その他の変形例>
上記実施形態では、電子制御式変速装置として、ベルト式のECVTを用いる場合について説明した。ただし、電子制御式変速装置は、ベルト式以外のECVTであってもよい。例えば、電子制御式変速装置は、トロイダル式のECVTであってもよい。
【0091】
上記実施形態では、スクータータイプの自動二輪車1を例に挙げて本発明の実施形態の一例について説明した。ただし、本発明は上記自動二輪車1に限定されるものではない。本発明に係る鞍乗型車両は、所謂モーターサイクル、モペット、オフロード車等の自動二輪車であってもよい。また、本発明に係る鞍乗型車両は、ATV(All Terrain Vehicle)等であってもよい。
【0092】
上記実施形態では、シフトアップスイッチ41、シフトダウンスイッチ42、モード一時変更スイッチ43およびモード選択スイッチ44等の各種操作スイッチが、プッシュ式の所謂ボタン式スイッチにより構成されている例について説明した。ただし、各種操作スイッチは、プッシュ式のレバーであってもよい。また、各種操作スイッチは、つまみを複数のポジション間で移動させる回転式のスイッチであってもよい。
【0093】
上記実施形態では、変速比制御部55によって、変速装置20の変速比が、予め定められた複数の変速比(1速〜5速)のうち、現在の変速装置20の変速比よりもLOW側の現在の変速装置20の変速比と最も近い変速比に変更される例について説明した。ただし、本発明はこれに限定されない。例えば、変速比制御部55によって、変速装置20の変速比が、予め定められた複数の変速比(1速〜5速)のうち、現在の変速装置20の変速比よりもLOW側の現在の変速装置20の変速比と最も近い変速比よりもさらにLOW側の変速比に変更されるようにしてもよい。具体的に、変速比制御部55によって、変速装置20の変速比が、予め定められた複数の変速比(1速〜5速)のうち、現在の変速装置20の変速比よりもLOW側の現在の変速装置20の変速比と最も近い変速比よりもさらに1段だけLOW側の変速比に変更されるようにしてもよい。さらには、変速比制御部55によって、変速装置20の変速比が、予め定められた複数の変速比(1速〜5速)のうち、現在の変速装置20の変速比よりもLOW側の現在の変速装置20の変速比と最も近い変速比よりもさらに2段以上LOW側の変速比に変更されるようにしてもよい。
【0094】
また、ライダーがシフトダウン量を設定することができるようにしてもよい。例えば、比較的機敏な運転をしようとする際には、シフトダウン量が大きいモードを選択することができる一方、比較的なだらかに運転しようとする場合は、シフトダウン量が小さいモードを選択することができるようにしてもよい。さらに、モード一時変更スイッチ43を複数設けてもよい。例えば、シフトダウン量が比較的小さいモード一時変更スイッチ43と、シフトダウン量が比較的大きいモード一時変更スイッチ43とを設けてもよい。
【0095】
上記実施形態では、変速装置20の変速比を変更するアクチュエータとして、PWM制御されるモータ22を用いる例について説明した。ただし、本発明において、変速装置20の変速比を変更するアクチュエータの種類は特に限定されない。例えば、変速装置20の変速比を変更するアクチュエータは、PAM(pulse amplitude modulation)制御されるモータであってもよい。また、変速装置20の変速比を変更するアクチュエータは、ステップモータであってもよい。また、変速装置20の変速比を変更するアクチュエータは、油圧アクチュエータ等であってもよい。
【0096】
上記実施形態では、自動MTモードと手動MTモードとの両方が選択可能な例について説明した。しかし、例えば、自動MTモードおよび手動MTモードの一方のみ選択可能であってもよい。また、自動MTモードおよび手動MTモードのどちらも選択できなくてもよい。すなわち、モード選択スイッチ44を設けず、ATモードおよびMTシフトダウンモードのみが選択可能なようにしてもよい。また、ATモード、自動MTモード、手動MTモードおよびMTシフトダウンモード以外の変速モードがさらに選択可能であってもよい。
【0097】
上記実施形態では、MTシフトダウンモードにおいて手動MTモードとなる例について説明した。しかし、MTシフトダウンモードにおいて自動MTモードとなるようにしてもよい。すなわち、MTシフトダウンモードに移行した後は、ライダーの操作スイッチの操作によらず、変速装置20の変速比が自動二輪車1の走行状態に応じて自動的に変更されるように設定してもよい。
【0098】
上記実施形態では、ひとつもモード選択スイッチ44を操作するたびに変速モードが順に変化する例について説明したが、例えば、ATモードを選択するためのモード選択スイッチ、自動MTモードを選択するためのモード選択スイッチ、手動MTモードを選択するためのモード選択スイッチをそれぞれ別個に設けてもよい。
【0099】
《実施形態2》
実施形態1における変速装置20の代わりに、例えば、図19に示すように、Vベルトが金属製のベルトで構成された変速装置260を採用することができる。なお、図19において、図4に記載された実施形態の変速装置と、同じ作用を奏する部材又は部位には、同じ符号を付している。ただし、図19では、ECU5の内部構成は、実施形態1と一致しているため、図示を省略している。
【0100】
この実施形態では、Vベルトが金属製のベルトで構成された変速装置260(以下、適宜「金属ベルトCVT」という。)は、図19に示すように、Vベルトを金属製のベルト264で構成した以外にも、種々の変更を行っている。
【0101】
この金属ベルトCVT260は、クラッチ35と、プライマリ回転センサ261と、油圧シリンダ267A、267Bと、油圧制御弁267Cとを備えている。
【0102】
クラッチ35は、エンジン10の出力軸12と金属ベルトCVT260の入力軸13との間に配設されている。クラッチ35は、エンジン10の出力軸12と金属ベルトCVT260の入力軸13との間で、動力の伝達を断続する。本実施形態におけるクラッチ35は、電子制御式の多板クラッチである。そのため、クラッチ35の断続は、電子制御にて、自動的に行われる。クラッチ35の接続時においては、プライマリシーブ23には、クラッチ35を介して、エンジン10の駆動力が伝達される。プライマリシーブ23に伝達される駆動力は、ベルト264を介してセカンダリシーブ24に伝達される。
【0103】
プライマリ回転速度センサ261は、プライマリシーブ23の回転速度を検出する。プライマリ回転速度センサ261は、検出したプライマリシーブ23の回転速度をECU5に対してシーブ回転速度信号114として出力する。
【0104】
プライマリシーブ23およびセカンダリシーブ24は、それぞれ可動シーブ体23a、24aと固定シーブ体23b、24bとを備えている。可動シーブ体23bは、金属ベルト260の入力軸13の軸方向に対して移動可能なように構成されている。また、可動シーブ体24bは、金属ベルトCVT260の出力軸14の軸方向に対して移動可能なように構成されている。
【0105】
プライマリ回転センサ261は、プライマリシーブ23の回転速度を検出している。この実施形態では、ECU5は、金属ベルトCVT260の変速比を、プライマリ回転センサ261で検出されたプライマリシーブ23の回転速度と、車速センサ32によって検出される鞍乗型車両の車速との比で算出している。具体的にいうと、金属ベルトCVT260の変速比は、ECU5にて、シーブ回転速度信号114と車速信号112との比で算出される。なお、金属ベルトCVT260の変速比は、プライマリ回転センサ261で検出されたプライマリシーブ23の回転速度と、セカンダリシーブ回転速度センサ27によって検出されるセカンダリシーブ24の回転速度との比で算出してもよい。つまり、金属ベルトCVT260の変速比は、ECU5にて、シーブ回転速度信号114とセカンダリシーブ回転速度信号111との比で算出されるものであってもよい。
【0106】
油圧シリンダ267Aは、プライマリシーブ23の溝幅を調整する。この実施形態では、油圧シリンダ267Aは、プライマリシーブ23を構成する可動シーブ体23bに押圧力を付与して、プライマリシーブ23の溝幅を調整する。また、油圧シリンダ267Bは、セカンダリシーブ24の溝幅を調整する。この実施形態では、油圧シリンダ267Bは、セカンダリシーブ24を構成する可動シーブ体24bに押圧力を付与して、セカンダリシーブ24の溝幅を調整する。油圧制御弁267Cは、油圧シリンダ267Aと267Bとに付与する油圧を調整する弁である。油圧制御弁267Cは、油圧シリンダ267Aと267Bとのうち、一方の油圧シリンダ267A(267B)の油圧を高くするときには、他方の油圧シリンダ267B(267A)の油圧が低くなるように、油圧を制御する。油圧制御弁267Cは、ECU5によって制御される。
【0107】
この金属ベルトCVT260では、ECU5で油圧制御弁267Cを操作することによって、金属ベルトCVT260の変速比が変更される。ECU5の制御については、実施形態1と同様である。なお、この実施形態にかかる金属ベルトCVT260では、ECU5は、エンジンの回転数を制御目標値とすることに代えて、プライマリシーブ23の回転数を制御目標値にしても良い。
【0108】
<本明細書における用語等の定義>
「駆動源」とは、動力を発生させるものである。「駆動源」は、例えば、内燃機関や電動モータ等であってもよい。
【0109】
「電子制御式変速装置」は、電力を使用して変速比が変速される変速装置一般をいう。「電子制御式変速装置」には、電動モータにより変速比が変更される変速装置、電子制御式の油圧アクチュエータにより変速比が変更される変速装置が含まれる。すなわち、電子制御式である限りにおいて、変速比を変更するアクチュエータの種類は特に限定されない。
【0110】
「プッシュ式のスイッチ」には、例えば、レバータイプのプッシュ式スイッチ、ボタンタイプのスイッチが含まれる。
【0111】
「自動二輪車」は、狭義の自動二輪車(モーターサイクル)のみならず、例えば、スクーター、所謂モペットを含むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明はECVT搭載車に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明を実施した自動二輪車の側面図である。
【図2】ハンドル部分の概略構成図である。
【図3】ハンドルの左グリップ部を拡大した概略構成図である。
【図4】制御装置のブロック図である。
【図5】変速モードを表す概念図である。
【図6】手動MTモードにおけるシフトチェンジを説明するために例示したV−N線図である。
【図7】自動MTモードにおけるシフトチェンジを説明するために例示したV−N線図である。
【図8】MTシフトダウンモードの一般的なフローチャートである。
【図9】MTシフトダウンモードの具体例1を表すフローチャートである。
【図10】MTシフトダウンモードの具体例2を表すフローチャートである。
【図11】MTシフトダウンモードの具体例3を表すフローチャートである。
【図12】MTシフトダウンモードの具体例4を表すフローチャートである。
【図13】MTシフトダウンモードにおけるV−N線図である。
【図14】変形例1におけるMTシフトダウンモードのフローチャートである。
【図15】変形例2におけるハンドル部分の概略構成図である。
【図16】変形例2における制御装置のブロック図である。
【図17】変形例2におけるMTシフトダウンモードのフローチャートである。
【図18】変形例3におけるハンドル部分の概略構成図である。
【図19】実施形態2における制御装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0114】
1 自動二輪車
2 パワーユニット
3 後輪(駆動輪)
4 ハンドル
4a 左グリップ部
4b 右グリップ部
4c ブレーキレバー
5 ECU(制御部)
10 エンジン(駆動源)
11 エンジン回転速度センサ
20 変速装置
21 変速機構
22 モータ
32 車速センサ
33 スロットル開度センサ
40 スイッチボックス
41 シフトアップスイッチ
42 シフトダウンスイッチ
43 モード一時変更スイッチ
44 モード選択スイッチ
50 CPU
51 一時的MTモード選択部
52 変速モード選択部
53 解除信号出力部
54 ATモード復帰部
55 変速比制御部
56 駆動回路
57 メモリ
60 左手
60a 親指
101 モード変更信号
102 モード選択信号
103 スロットル開度信号
104 ブレーキ信号
105 シフトアップ信号
106 シフトダウン信号
107 解除信号
109 エンジン回転速度信号
110 シーブ位置信号
112 車速信号
113 スロットル操作信号
114 シーブ回転速度信号
260 金属ベルトCVT
261 プライマリ回転センサ
267C 油圧制御弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両の駆動源と駆動輪との間に配置され、連続的に変速比を変更することができる電子制御式変速装置の制御装置であって、
前記鞍乗型車両は、前記制御装置に対してモード変更信号を出力するモード一時変更スイッチを有し、
前記変速装置の変速比を制御する変速比制御部と、
前記鞍乗型車両の走行状態に応じて、前記変速比制御部が前記変速装置の変速比を連続的に変更するATモードと、前記変速比制御部が、予め定められた複数の変速比間で前記変速装置の変速比を変更するMTモードとを含む複数の変速モードのうちのいずれかを選択する変速モード選択部と、
前記鞍乗型車両に対して所定の操作が行われたとき、および前記鞍乗型車両に所定の条件が成立したときに解除信号を出力する解除信号出力部と、
前記変速モード選択部により前記ATモードが選択されているときにおいて、前記モード変更信号が入力された際に、前記変速モード選択部に前記MTモードを一時的に選択させると共に、前記変速比制御部に、前記変速装置の変速比を前記予め定められた複数の変速比のうちの現在の前記変速装置の変速比よりもLOW側に位置する変速比のいずれかに変更させる一時的MTモード選択部と、
前記一時的MTモード選択部によって前記MTモードが一時的に選択された後において、前記解除信号が出力された際に、前記変速モード選択部により選択される変速モードを前記ATモードに復帰させるATモード復帰部と、
を備えた制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された制御装置において、
前記MTモードには、
前記鞍乗型車両の走行状態に応じて、前記変速比制御部が、前記予め定められた複数の変速比間で前記変速装置の変速比を自動的に変更する自動MTモードと、
前記鞍乗型車両のライダーの操作に応じて、前記変速比制御部が、前記予め定められた複数の変速比間で前記変速装置の変速比を変更する手動MTモードと、
が含まれる制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載された制御装置において、
前記鞍乗型車両は、
スロットル開度を検出するスロットル開度センサと、
前記駆動源の回転速度を検出する回転速度センサと、
車速を検出する車速センサと、
をさらに有し、
前記解除信号出力部は、前記鞍乗型車両のスロットル開度、前記駆動源の回転速度および前記鞍乗型車両の車速のうちの少なくともひとつが所定の条件を満たしたときに前記解除信号を出力する制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載された制御装置において、
前記解除信号出力部は、前記一時的MTモード選択部によって前記MTモードが一時的に選択された後に所定の期間が経過したときに前記解除信号を出力する制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載された制御装置において、
前記鞍乗型車両は、ブレーキをさらに有し、
前記解除信号出力部は、前記ブレーキが操作されたときに前記解除信号を出力する制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載された制御装置において、
前記鞍乗型車両は、前記変速モード選択部が前記MTモードを選択しているときに、前記変速装置をシフトアップさせるシフトアップスイッチをさらに有し、
前記解除信号出力部は、前記一時的MTモード選択部によって前記MTモードが一時的に選択されている期間中に、前記シフトアップスイッチが操作されたときに前記解除信号を出力する制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載された制御装置において、
前記解除信号出力部は、前記一時的MTモード選択部によって前記MTモードが一時的に選択された後において、前記モード変更信号が出力されたときに前記解除信号を出力する制御装置。
【請求項8】
請求項1に記載された制御装置において、
前記鞍乗型車両は、シフトダウン信号を出力するシフトダウンスイッチをさらに有し、
前記変速比制御部は、前記一時的MTモード選択部によって前記MTモードが一時的に選択されている期間中に、前記シフトダウン信号が出力された際に、前記変速装置の変速比を、前記予め定められた複数の変速比のうちの現在の前記変速装置の変速比よりもLOW側の変速比に変更する制御装置。
【請求項9】
請求項1に記載された制御装置において、
前記変速比制御部は、前記一時的MTモード選択部によって前記MTモードが一時的に選択されている期間中に、前記モード変更信号が出力された際に、前記変速装置の変速比を、前記予め定められた複数の変速比のうちの現在の前記変速装置の変速比よりもLOW側の変速比に変更する制御装置。
【請求項10】
請求項1に記載された制御装置において、
前記モード一時変更スイッチは、プッシュされることにより前記モード変更信号を出力するプッシュ式のスイッチである制御装置。
【請求項11】
請求項1に記載された制御装置において、
前記鞍乗型車両は、前記変速モード選択部が前記MTモードを選択しているときに、前記変速装置をシフトダウンさせるシフトダウンスイッチをさらに有し、
前記シフトダウンスイッチと前記モード一時変更スイッチとは共通である制御装置。
【請求項12】
請求項1に記載された制御装置において、
前記鞍乗型車両は、前記変速モード選択部に前記複数の変速モードのうちいずれかを選択させるモード選択信号を出力するモード選択スイッチをさらに有する制御装置。
【請求項13】
鞍乗型車両の駆動源と駆動輪との間に配置され、連続的に変速比を変更することができる電子制御式変速機構と、
前記変速機構を制御する制御装置と、
を備えた変速装置であって、
前記鞍乗型車両は、前記制御装置に対してモード変更信号を出力するモード一時変更スイッチを有し、
前記制御装置は、
前記変速機構の変速比を制御する変速比制御部と、
前記鞍乗型車両の走行状態に応じて、前記変速比制御部が前記変速機構の変速比を連続的に変更するATモードと、前記変速比制御部が、予め定められた複数の変速比間で前記変速機構の変速比を変更するMTモードとを含む複数の変速モードのうちのいずれかを選択する変速モード選択部と、
前記鞍乗型車両に対して所定の操作が行われたとき、および前記鞍乗型車両に所定の条件が成立したときに解除信号を出力する解除信号出力部と、
前記変速モード選択部により前記ATモードが選択されているときにおいて、前記モード変更信号が入力された際に、前記変速モード選択部に前記MTモードを一時的に選択させると共に、前記変速比制御部に、前記変速機構の変速比を前記予め定められた複数の変速比のうちの現在の前記変速機構の変速比よりもLOW側に位置する変速比のいずれかに変更させる一時的MTモード選択部と、
前記一時的MTモード選択部によって前記MTモードが一時的に選択された後において、前記解除信号が出力された際に、前記変速モード選択部により選択される変速モードを前記ATモードに復帰させるATモード復帰部と、
を有する変速装置。
【請求項14】
駆動源と、
前記駆動輪により駆動される駆動輪と、
前記駆動源と前記駆動輪との間に配置され、連続的に変速比を変更することができる電子制御式変速機構と、前記変速機構を制御する制御装置と、を有する変速装置と、
を備えた鞍乗型車両であって、
前記制御装置に対してモード変更信号を出力するモード一時変更スイッチを備え、
前記制御装置は、
前記変速機構の変速比を制御する変速比制御部と、
前記鞍乗型車両の走行状態に応じて、前記変速比制御部が前記変速機構の変速比を連続的に変更するATモードと、前記変速比制御部が、予め定められた複数の変速比間で前記変速機構の変速比を変更するMTモードとを含む複数の変速モードのうちのいずれかを選択する変速モード選択部と、
前記鞍乗型車両に対して所定の操作が行われたとき、および前記鞍乗型車両に所定の条件が成立したときに解除信号を出力する解除信号出力部と、
前記変速モード選択部により前記ATモードが選択されているときにおいて、前記モード変更信号が入力された際に、前記変速モード選択部に前記MTモードを一時的に選択させると共に、前記変速比制御部に、前記変速機構の変速比を前記予め定められた複数の変速比のうちの現在の前記変速機構の変速比よりもLOW側に位置する変速比のいずれかに変更させる一時的MTモード選択部と、
前記一時的MTモード選択部によって前記MTモードが一時的に選択された後において、前記解除信号が出力された際に、前記変速モード選択部により選択される変速モードを前記ATモードに復帰させるATモード復帰部と、
を有する鞍乗型車両。
【請求項15】
請求項14に記載された鞍乗型車両において、
前記モード一時変更スイッチは、ライダーの親指で操作可能な位置に配置されている鞍乗型車両。
【請求項16】
請求項14に記載された鞍乗型車両において、
ライダーが握る右側グリップ部および左側グリップ部を備えたハンドルをさらに備え、
前記モード一時変更スイッチは、前記左側グリップ部の右側部分に配置されている鞍乗型車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2008−239139(P2008−239139A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303411(P2007−303411)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】