説明

音声案内装置、音声案内方法及び音声案内プログラム

【課題】 装置に対するユーザの信頼性を向上させることができる音声案内装置を提供する。
【解決手段】 音声作成部13、韻律変更部14及び音声出力部15は、最初の指示情報を通常の韻律条件で出力し、その後、行動検出部21がハンドル検出部16及びウィンカー検出部17の検出結果からユーザが指示情報に従った行動を行わなかったことを検出した場合、音声作成部13、韻律変更部14及び音声出力部15は、韻律条件を変更して指示情報を再度出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声を用いてユーザに情報を提示する音声案内装置、音声案内方法及び音声案内プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、音声合成技術の実用化が進み、カーナビゲーション装置や会話型ロボット等の音声出力機能を備えた各種インターフェースが、ユーザに対して音声により情報を提示することが行われている。例えば、特許文献1には、道路地図上に自車位置のディスプレイを行うナビゲーションシステムに設けられる音声合成装置において、道路地図データと共に、表音文字でディスプレイされる単語と、単語の表音文字に付加される韻律データとを格納し、且つはめ込み属性のデータにより単語の意味が識別されるCD−ROMと、はめ込み属性データがはめ込まれて1つの文章を形成する文例を複数格納し且つディスプレイされる単語のはめ込み属性のデータと一致する文例を選択し、選択された文例にディスプレイされる単語をはめ込むためのはめ込み合成部と、はめ込み合成部により得られた文例を構成する単語の表音文字と、これに付加されている韻律データとに基づいて音声波形を処理する波形処理部とを具備するナビゲーションシステムの音声合成装置が開示されている。
【0003】
この音声合成装置では、処理規模が大きな言語処理を行わずとも、CD−ROMに、道路地図と共に表示される単語の表音文字に韻律データ、はめ込み属性を付加して格納することにより、ディスプレイされる単語を1つの文章にして音声に且つ自然な韻律を付加することができる。
【特許文献1】特開平11−327580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような音声合成装置では、一定の韻律モデルに基づいて音声を生成しているため、必ずしも提示した情報に対してユーザの注意が向けられ、ユーザが情報を取得できるとは限らず、装置に対するユーザの信頼性を低下させる恐れがある。
【0005】
本発明の目的は、装置に対するユーザの信頼性を向上させることができる音声案内装置、音声案内方法及び音声案内プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る音声案内装置は、音声を用いてユーザに情報を提示する音声案内装置であって、所定の韻律条件でユーザに情報を提示する提示手段と、ユーザの行動を検出する検出手段と、検出手段により検出されたユーザの行動に応じて韻律条件を変更する変更手段とを備え、提示手段は、検出手段により検出されたユーザの行動に応じて、変更手段により変更された韻律条件を用いて上記情報をユーザに提示するものである。
【0007】
本発明に係る音声案内装置においては、ユーザの行動に応じて韻律条件が変更され、変更された韻律条件を用いて、ユーザに情報が提示されるので、韻律条件の変化により当該情報にユーザの注意を向けることができる。したがって、ユーザは、提示情報を確実に取得することができるので、情報を提示した装置に対するユーザの信頼性を向上させることができる。
【0008】
提示手段は、ユーザが行うべき行動を指示するための指示情報を第1の韻律条件でユーザに提示し、検出手段は、提示手段により提示された指示情報に従った行動をユーザが行ったか否かを検出し、変更手段は、提示手段により提示された指示情報に従った行動をユーザが行わなかったことが検出手段により検出された場合、第1の韻律条件を第1の韻律条件と異なる第2の韻律条件に変更し、提示手段は、提示手段により提示された指示情報に従った行動をユーザが行わなかったことが検出手段により検出された場合、変更手段により変更された第2の韻律条件を用いて指示情報をユーザに提示することが好ましい。
【0009】
この場合、ユーザが行うべき行動を指示するための指示情報が第1の韻律条件で提示され、提示された指示情報に従った行動をユーザが行わなかったとき、すなわち、指示情報の重要度が上がったときに、第1の韻律条件と異なる第2の韻律条件で指示情報を再度提示することができるので、情報の重要度に応じて出力音声の韻律を制御することができ、ユーザは指示情報をより確実に取得することができる。
【0010】
検出手段は、ユーザが通常の行動と異なる行動を行ったか否かを検出し、提示手段は、検出手段によりユーザが通常の行動と異なる行動を行ったことが検出された場合、当該行動をユーザに警告するための警告情報を第1の韻律条件でユーザに提示し、変更手段は、検出手段によりユーザが通常の行動と異なる行動を行ったことが再度検出された場合、第1の韻律条件を第1の韻律条件と異なる第2の韻律条件に変更し、提示手段は、検出手段によりユーザが通常の行動と異なる行動を行ったことが再度検出された場合、変更手段により変更された第2の韻律条件を用いて警告情報を提示することが好ましい。
【0011】
この場合、ユーザが通常の行動と異なる行動を行ったときに、当該行動をユーザに警告するための警告情報を第1の韻律条件で提示し、その後、ユーザが通常の行動と異なる行動を再度行ったときに、第1の韻律条件と異なる第2の韻律条件で警告情報を再度提示しているので、ユーザの行動履歴に応じて出力音声の韻律を制御することができ、ユーザは警告情報をより確実に取得することができる。
【0012】
変更手段は、検出手段により検出されたユーザの行動に応じて、音量、音高及び音域のうち少なくとも一つを変更することが好ましい。
【0013】
この場合、韻律条件の変更として、ユーザの行動に応じて音量、音高及び音域のうち少なくとも一つが変更されるので、提示情報に対してユーザの注意がより確実に向けられ、ユーザは提示情報をより確実に取得することができる。
【0014】
変更手段は、検出手段により検出されたユーザの行動の変化の回数に応じて、音量を大きくすること、音高を高くすること及び音域を広くすることのうち少なくとも一つを行うことが好ましい。
【0015】
この場合、韻律条件の変更として、ユーザの行動の変化の回数に応じて、音量を大きくすること、音高を高くすること及び音域を広くすることのうち少なくとも一つが行われるので、情報の重要度及びユーザの行動履歴に応じて提示情報の韻律条件を順次変更することができる。
【0016】
音声案内装置は、車両に搭載されるカーナビゲーション装置であり、提示手段は、ナビゲーション情報をユーザに提示することが好ましい。
【0017】
この場合、ユーザは、ナビゲーション情報を確実に取得することができるので、カーナビゲーション装置に対するユーザの信頼性を向上させることができる。
【0018】
本発明に係る音声案内方法は、音声を用いてユーザに情報を提示する音声案内方法であって、所定の韻律条件でユーザに情報を提示するステップと、ユーザの行動を検出するステップと、検出されたユーザの行動に応じて韻律条件を変更するステップと、検出されたユーザの行動に応じて、変更された韻律条件を用いて上記情報をユーザに提示するステップとを含むものである。
【0019】
本発明に係る音声案内プログラムは、音声を用いてユーザに情報を提示するための音声案内プログラムであって、所定の韻律条件でユーザに情報を提示する提示手段と、ユーザの行動を検出する検出手段と、検出手段により検出されたユーザの行動に応じて韻律条件を変更する変更手段としてコンピュータを機能させ、提示手段は、検出手段により検出されたユーザの行動に応じて、変更手段により変更された韻律条件を用いて上記情報をユーザに提示するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ユーザの行動に応じて韻律条件が変更され、変更された韻律条件を用いて、ユーザに情報が提示されるので、韻律条件の変化により当該情報にユーザの注意を向けることができる。したがって、ユーザは、提示情報を確実に取得することができるので、情報を提示した装置に対するユーザの信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態による音声案内装置についてカーナビゲーション装置を例に図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施の形態によるカーナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【0022】
図1に示すカーナビゲーション装置は、車両の所定位置に取り付けられ、位置検出部11、ナビゲーション部12、音声作成部13、韻律変更部14、音声出力部15、ハンドル検出部16、ウィンカー検出部17、ブレーキ検出部18、アクセル検出部19、車速検出部20及び行動検出部21を備える。なお、ナビゲーション部12、音声作成部13、韻律変更部14、音声出力部15及び行動検出部21の構成例は、本例に特に限定されず、入力装置、ROM(リードオンリメモリ)、CPU(中央演算処理装置)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、外部記憶装置、入力装置、表示装置及びスピーカ等を備えるコンピュータを用いて後述する各処理を行うための音声案内プログラムをCPU等で実行するようにしたり、一部のブロック又はブロック内の一部の処理のみをソフトウエアで実行したりする等の種々の変更が可能である。
【0023】
位置検出部11は、衛星航法(GPS)、慣性航法により車両の現在位置を検出してナビゲーション部12へ出力する。なお、位置検出部11は、道路交通情報通信システム(VICS)のサービスを利用して渋滞状況等の交通情報を受信するようにしてもよい。ナビゲーション部12は、位置検出部11により検出された車両の現在位置と、DVD−ROM等に記憶されている地図情報とを基に、ナビゲーション情報として、ユーザ(運転者)に進路を指示するための進路情報等、例えば、右折すべきことを示す右折情報、左折すべきことを示す左折情報、直進すべきことを示す直進情報を作成して音声作成部13及び行動検出部21へ出力する。
【0024】
音声作成部13は、ナビゲーション部12から出力される進路情報を基にユーザが行うべき行動を指示するための指示情報を音声合成により作成し、作成した指示情報を韻律変更部14へ出力する。なお、音声作成部13の音声合成処理としては、公知の音声合成処理を用いることができ、例えば、予め記録している音声片を合成することにより、「右へ曲がってください。」、「直進してください。」等の指示情報を作成することができる。
【0025】
韻律変更部14は、通常の場合、韻律条件を変更することなく、通常の韻律条件で指示情報を音声出力部15へ出力する。音声出力部15は、スピーカ等から構成され、通常の韻律条件で指示情報を再生して出力する。
【0026】
ハンドル検出部16は、ユーザによるハンドル操作の有無(回転方向の検出を含む)を検出して検出結果を行動検出部21へ出力する。ウィンカー検出部17は、ユーザによるウィンカー操作の有無(左右の区別の検出を含む)を検出して検出結果を行動検出部21へ出力する。ブレーキ検出部18は、ユーザによるブレーキペダルの踏み込みタイミング、踏み込み速度及び踏み込み量等のブレーキの踏み方を検出して検出結果を行動検出部21へ出力する。アクセル検出部19は、ユーザによるアクセルペダルの踏み込みタイミング、踏み込み速度及び踏み込み量等のアクセルの踏み方を検出して検出結果を行動検出部21へ出力する。車速検出部20は、車両の現在の速度を検出して検出結果を行動検出部21へ出力する。
【0027】
行動検出部21は、上記の各検出結果及び指示情報を基にユーザの行動の変化を検出すし、検出結果を音声作成部13及び韻律変更部14へ出力する。例えば、行動検出部21は、指示情報が示す行動と異なる行動(無作為を含む)をユーザが取ったことが検出結果から判明した場合に、指示情報に従った行動をユーザが行わなかったと判断する。また、行動検出部21は、上記の各検出結果を蓄積しており、各検出結果の平均値を取ることにより、ブレーキペダルの踏み方、アクセルペダルの踏み方等の基準行動値を決定し、この基準行動値より検出結果が所定値以上変化した場合に、ユーザが通常の行動と異なる行動を行ったと判断する。なお、ユーザの行動変化の検出方法は、上記の例に限定されず、他のセンサを用いる等の種々の変更が可能である。
【0028】
韻律変更部14は、指示情報に従った行動をユーザが行わなかったことが行動検出部21により検出された場合、当該行動の回数に応じて韻律条件を変更し、変更した韻律条件で指示情報を音声出力部15へ再度出力する。音声出力部15は、変更された韻律条件で指示情報を再度再生して出力する。
【0029】
また、音声作成部13は、行動検出部21によりユーザが通常の行動と異なる行動を行ったことが検出された場合、ナビゲーション情報として、当該行動をユーザに警告するための警告情報を作成し、作成した警告情報を韻律変更部14へ出力する。例えば、ユーザが注意散漫行動を行っている場合は「注意が散漫となっていますので、運転に集中してください。」、ユーザが速度超過運転を行っている場合は「速度が速すぎますので、速度を落としてください。」等の警告情報が作成される。
【0030】
韻律変更部14は、行動検出部21によりユーザが通常の行動と異なる行動を行ったことが検出された場合、当該行動の回数に応じて韻律条件を変更し、変更した韻律条件で警告情報を音声出力部15へ出力する。音声出力部15は、変更された韻律条件で警告情報を再生して出力する。
【0031】
上記の構成により、本実施の形態では、ユーザの運転行動の変化が検出された場合、ユーザの運転行動の変化に応じて韻律条件が変更され、変更された韻律条件を用いて、ユーザに指示情報及び警告情報が提示されるので、韻律条件の変化により当該情報にユーザの注意を向けることができる。したがって、ユーザは、指示情報及び警告情報を確実に取得することができるので、指示情報及び警告情報を提示した本装置に対するユーザの信頼性を向上させることができる。
【0032】
なお、本実施の形態では、音声作成部13、韻律変更部14及び音声出力部15が提示手段の一例に相当し、ハンドル検出部16、ウィンカー検出部17、ブレーキ検出部18、アクセル検出部19、車速検出部20及び行動検出部21が検出手段の一例に相当し、韻律変更部14が変更手段の一例に相当する。
【0033】
次に、上記のように構成されたカーナビゲーション装置による音声案内処理の各例について説明する。図2は、図1に示すカーナビゲーション装置による進路変更指示処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【0034】
図2に示すように、まず、ナビゲーション部12が進路を変更することを指示する変更進路情報(例えば、右折情報)を音声作成部13へ出力すると、ステップS1において、音声作成部13は、変更進路情報に応じて「右へ曲がってください。」という進路変更指示情報を作成して韻律変更部14へ出力し、韻律変更部14は、最初の進路変更指示情報を受けると、内部のカウンタの値kを1に設定する。
【0035】
次に、ステップS2において、韻律変更部14は、k=1を用いて、音量V=V×a×k、音高P=P×b×k、音域(ピッチレンジ)PR=PR×c×kを計算し、計算後の音量V、音高P及び音域PRとなるように進路変更指示情報の韻律を変更する。ここで、a、b、cは所定の変数、a、b、c>0であり、k=1の場合の音量V、音高P及び音域PRが通常の会話と同等の韻律条件となるように設定されている。したがって、韻律変更部14は、韻律条件を変更することなく、進路変更指示情報を音声出力部15へ出力し、音声出力部15は、通常の韻律条件で進路変更指示音声を再生して出力する。
【0036】
次に、ステップS3において、行動検出部21は、ハンドル検出部16の検出結果からハンドルが右方向に操作されたか否か、及びウィンカー検出部17の検出結果からウィンカーが右方向に操作されたか否かを検出する。
【0037】
次に、ステップS4において、行動検出部21は、検出結果からハンドルが右方向に操作されたか否か、及びウィンカーが右方向に操作されたか否かを判断し、ハンドルが右方向に操作された場合又はウィンカーが右方向に操作された場合は、進路変更指示情報に合致した操作変更があったと判断してステップS9へ処理を移行し、ハンドルが右方向に操作されず且つウィンカーが右方向に操作されなかった場合は、進路変更指示情報が無視されて操作変更がされなかったと判断してステップS5へ処理を移行する。
【0038】
進路変更指示情報に合致した操作変更があった場合、ステップS9において、行動検出部21は、進路変更指示情報に合致した操作変更があったことを音声作成部13に通知し、音声作成部13は、進路変更指示情報に合致した操作変更があったことに応じて「ありがとう。」という感謝の音声情報を作成して韻律変更部14へ出力する。このとき、韻律変更部14は、内部のカウンタの値kを1に設定して通常の韻律条件で感謝の音声情報を音声出力部15へ出力し、音声出力部15は、通常の韻律条件で感謝の音声を再生して処理を終了する。
【0039】
一方、進路変更指示情報が無視されて操作変更がなかった場合、ステップS5において、行動検出部21は、進路変更指示情報が無視されて操作変更がなかったことを韻律変更部14に通知し、韻律変更部14は、内部のカウンタの値kを1だけインクリメントする。
【0040】
次に、ステップS6において、韻律変更部14は、インクリメントされたkを用いて、音量V=V×a×k、音高P=P×b×k、音域PR=PR×c×kを計算し、計算後の音量V、音高P及び音域PRとなるように進路変更指示情報の韻律を変更して音声出力部15へ出力し、音声出力部15は、変更後の韻律条件で進路変更指示音声を再生して出力する。
【0041】
例えば、k=2の場合、音量Vが2倍、音高Pが2倍、音域PRが2倍に変更されて進路変更指示音声が出力され、k=3の場合、音量Vが3倍、音高Pが3倍、音域PRが3倍に変更されて進路変更指示音声が出力される。このように、ユーザの運転行動変化の回数に応じて、音量、音高及び音域が順次大きく、高く及び広くなるように指示情報の韻律が変更されるので、指示情報の重要度及びユーザの運転行動履歴に応じて指示情報の韻律条件を順次変更することができる。
【0042】
なお、韻律条件の変更方法は、上記の例に特に限定されず、音量、音高及び音域のうち1又は2を変更したり、発話速度等の他の音響学的パラメータを変更したりするようにしてもよく、また、韻律条件の変更式も、上記の例に特に限定されず、指数関数的に変化させる等の種々の変更が可能である。
【0043】
また、ピッチレンジを拡大することにより韻律条件を変更する場合、ピッチレンジが広いほどユーザは韻律変化を強く感じるので、例えば、ピッチレンジを125%〜175%の範囲で変更したり、ピッチレンジを150%又はその付近に設定したりすることにより、提示情報にユーザの注意をより確実に向けることができる。
【0044】
次に、ステップS7において、ナビゲーション部12は、車両の現在位置がナビゲーションしている進路を逸脱したか否かを判断し、進路を逸脱していない場合、ステップS4に戻って以降の処理を継続し、進路を逸脱した場合は、ステップS8へ処理を移行する。
【0045】
進路を逸脱した場合、ステップS8において、ナビゲーション部12は、進路を逸脱したことを音声作成部13に通知し、音声作成部13は、進路変更指示情報が無視されて操作変更がされなかったことに応じて「なぜ、指示に従わないのですか?」という失意の音声情報を作成して韻律変更部14へ出力する。このとき、韻律変更部14は、内部のカウンタの値kを1に設定して通常の韻律条件で失意の音声情報を音声出力部15へ出力し、音声出力部15は、通常の韻律条件で失意の音声を再生して処理を終了する。
【0046】
図3は、図1に示すカーナビゲーション装置による進路保持指示処理の一例を説明するためのフローチャートである。図3に示すように、まず、ナビゲーション部12が進路を保持することを指示する保持進路情報(例えば、直進情報)を音声作成部13へ出力すると、ステップS11において、音声作成部13は、保持進路情報に応じて「直進してください。」という進路保持指示情報を作成して韻律変更部14へ出力し、韻律変更部14は、最初の進路保持指示情報を受けると、内部のカウンタの値kを1に設定する。
【0047】
次に、ステップS12において、韻律変更部14は、k=1を用いて韻律条件を変更することなく、進路保持指示情報を音声出力部15へ出力し、音声出力部15は、通常の韻律条件で進路保持指示音声を再生して出力する。
【0048】
次に、ステップS13において、行動検出部21は、ハンドル検出部16の検出結果からハンドルが右方向又は左方向に操作されたか否か、及びウィンカー検出部17の検出結果からウィンカーが右方向又は左方向に操作されたか否かを検出する。
【0049】
次に、ステップS14において、行動検出部21は、検出結果からハンドルが右方向に操作されたか否か、及びウィンカーが右方向に操作されたか否かを判断し、ハンドルが操作されていない場合は、操作変更がなく、進路保持指示情報に合致した操作が行われていると判断してステップS19へ処理を移行し、ハンドルが右方向又は左方向に操作された場合又はウィンカーが右方向又は左方向に操作された場合は、進路保持指示情報が無視されて操作変更があったと判断してステップS15へ処理を移行する。
【0050】
進路保持指示情報に合致した操作が行われて操作変更がない場合、ステップS19において、行動検出部21は、進路保持指示情報に合致した操作が行われていることを音声作成部13に通知し、音声作成部13は、進路保持指示情報に合致した操作が行われていることに応じて「ありがとう。」という感謝の音声情報を作成して韻律変更部14へ出力する。このとき、韻律変更部14は、内部のカウンタの値kを1に設定して通常の韻律条件で感謝の音声情報を音声出力部15へ出力し、音声出力部15は、通常の韻律条件で感謝の音声を再生して処理を終了する。
【0051】
一方、進路保持指示情報が無視されて操作変更があった場合、ステップS15において、行動検出部21は、進路保持指示情報が無視されて操作変更があったことを韻律変更部14に通知し、韻律変更部14は、内部のカウンタの値kを1だけインクリメントする。
【0052】
次に、ステップS16において、韻律変更部14は、インクリメントされたkを用いて、音量V=V×a×k、音高P=P×b×k、音域PR=PR×c×kを計算し、計算後の音量V、音高P及び音域PRとなるように進路保持指示情報の韻律を変更して音声出力部15へ出力し、音声出力部15は、変更後の韻律条件で進路保持指示音声を再生して出力する。
【0053】
次に、ステップS17において、ナビゲーション部12は、車両の現在位置がナビゲーションしている進路を逸脱したか否かを判断し、進路を逸脱していない場合、ステップS14に戻って以降の処理を継続し、進路を逸脱した場合は、ステップS18へ処理を移行する。
【0054】
進路を逸脱した場合、ステップS18において、ナビゲーション部12は、進路を逸脱したことを音声作成部13に通知し、音声作成部13は、進路保持指示情報が無視されて操作変更があったことに応じて「なぜ、指示に従わないのですか?」という失意の音声情報を作成して韻律変更部14へ出力する。このとき、韻律変更部14は、内部のカウンタの値kを1に設定して通常の韻律条件で失意の音声情報を音声出力部15へ出力し、音声出力部15は、通常の韻律条件で失意の音声を再生して処理を終了する。
【0055】
上記の各処理により、本実施の形態では、進路変更指示情報又は進路保持指示情報が通常の韻律条件(k=1の韻律条件)で提示され、提示された進路変更指示情報又は進路保持指示情報に従った行動をユーザが行わなかったとき、すなわち、進路変更指示情報又は進路保持指示情報の重要度が上がったときに、通常の韻律条件と異なる韻律条件(k=2,3,4,…)で進路変更指示情報又は進路保持指示情報を再度提示することができるので、情報の重要度に応じて出力音声の韻律を制御することができ、ユーザは進路変更指示情報又は進路保持指示情報をより確実に取得することができる。
【0056】
図4は、図1に示すカーナビゲーション装置による注意散漫行動警告処理の一例を説明するためのフローチャートである。図4に示すように、まず、ステップS21において、韻律変更部14は、内部のカウンタの値kを0に設定する。次に、ステップS22において、ユーザがブレーキペダルを踏み込んだ場合、行動検出部21は、ブレーキ検出部18の検出結果からブレーキの踏み方を検出する。
【0057】
次に、ステップS23において、行動検出部21は、現在のブレーキの踏み方が通常のブレーキの踏み方と異なるか否か、例えば、通常時よりブレーキタイミングが遅いか否か、又はブレーキの踏み方が弱いか否かを判断する。行動検出部21は、ブレーキの踏み方が通常と変わらない場合は、ユーザは注意散漫行動を行っていないと判断してステップS28へ処理を移行し、一方、ブレーキの踏み方が通常と異なる場合は、ユーザが注意散漫行動を行っていると判断してステップS24へ処理を移行する。
【0058】
ブレーキの踏み方が通常と変わらない場合、ステップS28において、行動検出部21は、ユーザは注意散漫行動を行っていないことを韻律変更部14に通知し、韻律変更部14は、内部のカウンタの値kを0にリセットし、その後、ステップS22に戻って以降の処理を継続する。
【0059】
一方、ブレーキの踏み方が通常と異なる場合、ステップS24において、行動検出部21は、ユーザが注意散漫行動を行っていることを音声作成部13及び韻律変更部14に通知し、音声作成部13は、「注意が散漫となっていますので、運転に集中してください。」という注意散漫警告情報を作成して韻律変更部14へ出力し、韻律変更部14は、内部のカウンタの値kを1だけインクリメントする。
【0060】
次に、ステップS25において、韻律変更部14は、インクリメントされたkを用いて、音量V=V×a×k、音高P=P×b×k、音域PR=PR×c×kを計算し、計算後の音量V、音高P及び音域PRとなるように注意散漫警告情報の韻律を変更して音声出力部15へ出力し、音声出力部15は、変更後の韻律条件で注意散漫警告音声を再生して出力する。例えば、k=1の場合、韻律条件が変更されることなく、注意散漫警告音声が出力され、k=2の場合、音量Vが2倍、音高Pが2倍、音域PRが2倍に変更されて注意散漫警告音声が出力される。
【0061】
次に、ステップS26において、位置検出部11は、交通情報から信号の表示状態を検出し、ナビゲーション部12は、信号が赤の状態で車両が移動して信号無視を行ったか否かを判断し、信号無視が行われていない場合、ステップS22に戻って以降の処理を継続し、信号無視が行われた場合は、ステップS27へ処理を移行する。
【0062】
信号無視が行われた場合、ステップS27において、ナビゲーション部12は、信号無視が行われたことを音声作成部13に通知し、音声作成部13は、信号無視が行われたことに応じて「信号無視は危険です。」という失意の音声情報を作成して韻律変更部14へ出力する。このとき、韻律変更部14は、内部のカウンタの値kを1に設定して通常の韻律条件で失意の音声情報を音声出力部15へ出力し、音声出力部15は、通常の韻律条件で失意の音声を再生して処理を終了する。
【0063】
図5は、図1に示すカーナビゲーション装置による速度超過運転警告処理の一例を説明するためのフローチャートである。図5に示すように、まず、ステップS31において、韻律変更部14は、内部のカウンタの値kを0に設定する。次に、ステップS32において、ユーザがアクセルペダル又はブレーキペダルを踏み込んだ場合、行動検出部21は、ブレーキ検出部18の検出結果からブレーキの踏み方又はアクセル検出部19の検出結果からアクセルの踏み方、及び速度検出部20の検出結果から車両の現在速度を検出する。
【0064】
次に、ステップS33において、行動検出部21は、現在のアクセルの踏み方が通常のアクセルの踏み方より強いか否か、現在のブレーキの踏み方が通常のブレーキの踏み方より弱いか否か、及び車両の現在速度が通常の速度より速いか否かを判断する。行動検出部21は、アクセルの踏み方、ブレーキの踏み方及び車両の速度が通常と変わらない場合は、ユーザは速度超過運転を行っていないと判断してステップS38へ処理を移行し、一方、アクセルの踏み方が通常より強い、ブレーキの踏み方が通常より弱い、又は車両の現在速度が通常より速い場合は、ユーザが速度超過運転を行っていると判断してステップS34へ処理を移行する。
【0065】
アクセルの踏み方、ブレーキの踏み方及び車両の速度が通常と変わらない場合、ステップS38において、行動検出部21は、ユーザは速度超過運転を行っていないことを韻律変更部14に通知し、韻律変更部14は、内部のカウンタの値kを0にリセットし、その後、ステップS32に戻って以降の処理を継続する。
【0066】
一方、アクセルの踏み方が通常より強い、ブレーキの踏み方が通常より弱い、又は車両の現在速度が通常より速い場合、ステップS34において、行動検出部21は、ユーザが速度超過運転を行っていることを音声作成部13及び韻律変更部14に通知し、音声作成部13は、「速度が速すぎますので、速度を落としてください。」という速度超過警告情報を作成して韻律変更部14へ出力し、韻律変更部14は、内部のカウンタの値kを1だけインクリメントする。
【0067】
次に、ステップS35において、韻律変更部14は、インクリメントされたkを用いて、音量V=V×a×k、音高P=P×b×k、音域PR=PR×c×kを計算し、計算後の音量V、音高P及び音域PRとなるように速度超過警告情報の韻律を変更して音声出力部15へ出力し、音声出力部15は、変更後の韻律条件で速度超過警告音声を再生して出力する。
【0068】
次に、ステップS36において、行動検出部21は、速度検出部20の検出結果から車両の現在速度が法定速度を超過しているか否かを判断し、法定速度を超過していない場合、ステップS32に戻って以降の処理を継続し、法定速度を超過した場合は、ステップS37へ処理を移行する。
【0069】
法定速度を超過した場合、ステップS37において、行動検出部21は、法定速度を超過したことを音声作成部13に通知し、音声作成部13は、速度違反行為が行われたことに応じて「速度違反は止めてください。」という失意の音声情報を作成して韻律変更部14へ出力する。このとき、韻律変更部14は、内部のカウンタの値kを1に設定して通常の韻律条件で失意の音声情報を音声出力部15へ出力し、音声出力部15は、通常の韻律条件で失意の音声を再生して処理を終了する。
【0070】
上記の各処理により、本実施の形態では、ユーザが通常の運転行動と異なる運転行動を行ったときに、当該運転行動をユーザに警告するための警告情報を初めに通常の韻律条件(k=1の韻律条件)で提示し、その後、ユーザが通常の運転行動と異なる運転行動を再度行ったときに、通常の韻律条件と異なる韻律条件(k=2,3,4,…)で警告情報を再度提示しているので、ユーザの運転行動履歴に応じて出力音声の韻律を制御することができ、ユーザは警告情報をより確実に取得することができる。
【0071】
なお、上記の説明では、本発明をカーナビゲーション装置に適用する例を説明したが、この例に特に限定されず、博物館や美術館の展示案内システム、デパートや商店街の店舗位置案内システム等の固定設置型情報提示デバイスに適用したり、情報推薦システムや地理案内システムとして機能するPDAやナビゲーションシステムの移動型デバイスに適用したり、電話自動応答システム、機器操作説明システム等に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施の形態によるカーナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すカーナビゲーション装置による進路変更指示処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【図3】図1に示すカーナビゲーション装置による進路保持指示処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【図4】図1に示すカーナビゲーション装置による注意散漫行動警告処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【図5】図1に示すカーナビゲーション装置による速度超過運転警告処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
11 位置検出部
12 ナビゲーション部
13 音声作成部
14 韻律変更部
15 音声出力部
16 ハンドル検出部
17 ウィンカー検出部
18 ブレーキ検出部
19 アクセル検出部
20 車速検出部
21 行動検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声を用いてユーザに情報を提示する音声案内装置であって、
所定の韻律条件でユーザに情報を提示する提示手段と、
ユーザの行動を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出されたユーザの行動に応じて韻律条件を変更する変更手段とを備え、
前記提示手段は、前記検出手段により検出されたユーザの行動に応じて、前記変更手段により変更された韻律条件を用いて前記情報をユーザに提示することを特徴とする音声案内装置。
【請求項2】
前記提示手段は、ユーザが行うべき行動を指示するための指示情報を第1の韻律条件でユーザに提示し、
前記検出手段は、前記提示手段により提示された指示情報に従った行動をユーザが行ったか否かを検出し、
前記変更手段は、前記提示手段により提示された指示情報に従った行動をユーザが行わなかったことが前記検出手段により検出された場合、前記第1の韻律条件を前記第1の韻律条件と異なる第2の韻律条件に変更し、
前記提示手段は、前記提示手段により提示された指示情報に従った行動をユーザが行わなかったことが前記検出手段により検出された場合、前記変更手段により変更された第2の韻律条件を用いて前記指示情報をユーザに提示することを特徴とする請求項1記載の音声案内装置。
【請求項3】
前記検出手段は、ユーザが通常の行動と異なる行動を行ったか否かを検出し、
前記提示手段は、前記検出手段によりユーザが通常の行動と異なる行動を行ったことが検出された場合、当該行動をユーザに警告するための警告情報を第1の韻律条件でユーザに提示し、
前記変更手段は、前記検出手段によりユーザが通常の行動と異なる行動を行ったことが再度検出された場合、前記第1の韻律条件を前記第1の韻律条件と異なる第2の韻律条件に変更し、
前記提示手段は、前記検出手段によりユーザが通常の行動と異なる行動を行ったことが再度検出された場合、前記変更手段により変更された第2の韻律条件を用いて前記警告情報を提示することを特徴とする請求項1記載の音声案内装置。
【請求項4】
前記変更手段は、前記検出手段により検出されたユーザの行動に応じて、音量、音高及び音域のうち少なくとも一つを変更することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の音声案内装置。
【請求項5】
前記変更手段は、前記検出手段により検出されたユーザの行動の変化の回数に応じて、音量を大きくすること、音高を高くすること及び音域を広くすることのうち少なくとも一つを行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の音声案内装置。
【請求項6】
前記音声案内装置は、車両に搭載されるカーナビゲーション装置であり、
前記提示手段は、ナビゲーション情報をユーザに提示することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の音声案内装置。
【請求項7】
音声を用いてユーザに情報を提示する音声案内方法であって、
所定の韻律条件でユーザに情報を提示するステップと、
ユーザの行動を検出するステップと、
検出されたユーザの行動に応じて韻律条件を変更するステップと、
検出されたユーザの行動に応じて、変更された韻律条件を用いて前記情報をユーザに提示するステップとを含むことを特徴とする音声案内方法。
【請求項8】
音声を用いてユーザに情報を提示するための音声案内プログラムであって、
所定の韻律条件でユーザに情報を提示する提示手段と、
ユーザの行動を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出されたユーザの行動に応じて韻律条件を変更する変更手段としてコンピュータを機能させ、
前記提示手段は、前記検出手段により検出されたユーザの行動に応じて、前記変更手段により変更された韻律条件を用いて前記情報をユーザに提示することを特徴とする音声案内プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−227434(P2006−227434A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−43101(P2005−43101)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】