説明

頭部保護エアバッグ装置を搭載した車両の内装品取付構造

【課題】ルーフヘッドライニングの端末部に設置される内装品の飛散をより確実に防止する。
【解決手段】コートフック付きルーフサイドレジスタ42のベゼル44は、コートフック本体部50側にて取付ボルト72でボディー側の取付ブラケット76に締結固定されており、ルーバ84側にて係合部材106でボディー側の取付ブラケット108に弾性的に係合されている。さらに、ベゼル44にはストラップ110の一端部110Aがビス114で固定されており、ストラップ110の他端部110Bは取付ボルト72でコートフック本体部50と一緒に取付ブラケット76に共締めされている。従って、ベゼル44がルーフヘッドライニング34の端末部34Aの開口部40から外れても、ストラップ110によってボディー側に連結されているのでベゼル44が飛散することはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部保護エアバッグ装置を搭載した車両においてルーフヘッドライニングの端末部に内装品が配設される場合に適用される頭部保護エアバッグ装置を搭載した車両の内装品取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乗員保護補助装置として、側面衝突時又はロールオーバー時に、ルーフサイドレール部の下方へカーテン状にエアバッグを展開させる頭部保護エアバッグ装置が搭載されるようになってきた。
【0003】
ここで、下記特許文献1には、この種の頭部保護エアバッグ装置が開示されている。簡単に説明すると、この頭部保護エアバッグ装置では、ルーフヘッドライニングの周縁部にルームランプ等の内装品が配設されることに配慮し、内装品をルーフヘッドライニングの端末部の室内側からルーフサイドレールインナパネルの取付孔に挿入して固定するクリップに脱落防止用の爪を一体に形成し、エアバッグがルーフヘッドライニングの端末部を押し広げながら膨出展開する際に、クリップの爪がルーフヘッドライニングの端末部の取付孔に係合するようになっている。
【特許文献1】特許第3485038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記先行技術のような内装品の脱落防止構造も有益ではあるが、前後席に亘ってエアバッグを展開させる頭部保護エアバッグ装置では、インフレータが中央配置(センタピラーの上端部近傍)される場合が多いことやインフレータが高出力化される傾向があることを考慮すると、より確実な内装品の飛散防止対策が望まれる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、ルーフヘッドライニングの端末部に設置される内装品の飛散をより確実に防止することができる頭部保護エアバッグ装置を搭載した車両の内装品取付構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、車両の所定位置に配置されたインフレータと、少なくとも一部がルーフサイドレールとルーフヘッドライニングの端末部との間に折り畳み状態で格納され、インフレータからガスが供給されることにより膨張してルーフヘッドライニングの端末部を車室内側へ押し開きながらルーフサイドレールの下方へ展開されるエアバッグと、を含んで構成された頭部保護エアバッグ装置を搭載した車両の内装品取付構造であって、前記ルーフヘッドライニングの端末部には、ルーフサイドレールに接合により固定される本体部と、当該本体部及びルーフサイドレールの少なくとも一方に弾性変形可能な爪を用いた係合により固定されるベゼルと、を含んで構成された内装品を取付けるための開口部が形成されており、かつ当該内装品がルーフヘッドライニングの端末部に設置された状態では、ベゼルの周縁部が開口部の周縁部に所定量係止されており、さらに、前記内装品のベゼルと前記内装品の本体部又はルーフサイドレールとを、途中に余長部分を有する長尺状の連結部材によって連結した、ことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1記載の頭部保護エアバッグ装置を搭載した車両の内装品取付構造において、前記内装品の本体部は前記ルーフサイドレールに締結により固定されており、前記連結部材における反ベゼル側の端部を、内装品の本体部をルーフサイドレールへ締結固定する際に共締めした、ことを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2記載の頭部保護エアバッグ装置を搭載した車両の内装品取付構造において、前記連結部材の余長部分は、エアバッグが膨張展開する際の荷重が所定値以上入力されることにより破断する結束手段によって結束されている、ことを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の頭部保護エアバッグ装置を搭載した車両の内装品取付構造において、前記連結部材の両端部は、内装品の本体部がルーフサイドレールへ固定される前に、予め内装品の本体部とベゼルとに固定されている、ことを特徴とする。
【0010】
請求項1記載の本発明によれば、車両の所定位置に配置されたインフレータが作動すると、少なくとも一部がルーフサイドレールとルーフヘッドライニングの端末部との間に折り畳み状態で格納されたエアバッグ内へガスが供給される。このため、エアバッグが膨張し、ルーフヘッドライニングの端末部を車室内側へ押し開きながらルーフサイドレールの下方へ展開される。これにより、乗員の頭部が保護される。
【0011】
ここで、本発明では、ルーフヘッドライニングの端末部に本体部及びベゼルを含んで構成された内装品が設定される車両を前提としている。より具体的には、内装品の本体部はルーフサイドレールに接合により固定され、ベゼルは弾性変形可能な爪を用いた係合により本体部及びルーフサイドレールの少なくとも一方に固定されるようになっている。そして、内装品の組付が完了した状態では、ベゼルの周縁部がルーフヘッドライニングの端末部に形成された内装品取付用の開口部の周縁部に係止された状態となっている。
【0012】
従って、例えば、インフレータの中央配置やインフレータの高出力化等がなされると、エアバッグがルーフヘッドライニングの端末部を車室内側へ押し広げて膨張展開する際に、当該端末部から受ける力によってベゼルを本体部へ固定している爪が外れる方向へ弾性変形してベゼルが車室内側へ脱落して飛散する可能性がある。
【0013】
しかし、本発明では、途中に余長部分を有する長尺状の連結部材によって、ベゼルと本体部又はルーフサイドレールとを連結したので、ベゼルが本体部又はルーフサイドレールから外れたとしても、ベゼルは開口部から延びる連結部材によってぶら下がるだけでベゼルが飛散することはない。
【0014】
特に本発明では、ベゼルと本体部又はルーフサイドレールとを連結している連結部材の途中に余長部分を設けているので、エアバッグの展開初期に作用する高荷重によって爪が外れ又は破損しても、当該高荷重が内装品の本体部のルーフサイドレールへの固定点に作用することはない。つまり、本発明では、連結部材の余長部分がほどけている間にエアバッグの展開初期の高荷重を逃がすことで、内装品の本体部のルーフサイドレールへの固定点には展開初期の高荷重が作用しないようにした。このため、内装品の本体部のルーフサイドレールへの固定部位が破損することはなく、この点からも内装品の本体部やベゼルが飛散することはない。
【0015】
請求項2記載の本発明によれば、本体部はるルーフサイドレールに締結により固定されており、連結部材における反ベゼル側の端部を内装品の本体部をルーフサイドレールへ締結固定する際に共締めしたので、連結部材における反ベゼル側の端部を内装品の本体部の締結固定とは別個独立に設定する場合に比し、部品点数の削減及び組付工数の削減を図ることができる。
【0016】
請求項3記載の本発明によれば、連結部材の余長部分を結束手段によって結束したので、内装品の組付時に余長部分が絡まるのを防止することができると共にエアバッグが膨張展開して連結部材が伸長される際に余長部分が絡まるのを防止することができる。
【0017】
請求項4記載の本発明によれば、内装品の本体部がルーフサイドレールへ固定される前に、予め連結部材の両端部が内装品の本体部とベゼルとに固定されるため、本体部、ベゼル、連結部材を含んで構成される内装品をルーフサイドレールへの組付前の段階でサブアッセンブリ化することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、請求項1記載の頭部保護エアバッグ装置を搭載した車両の内装品取付構造は、ルーフヘッドライニングの端末部に設置される内装品の飛散をより確実に防止することができるという優れた効果を有する。
【0019】
請求項2記載の本発明に係る頭部保護エアバッグ装置を搭載した車両の内装品取付構造は、低コストでルーフヘッドライニングの端末部に設置される内装品の飛散をより確実に防止することができるという優れた効果を有する。
【0020】
請求項3記載の本発明に係る頭部保護エアバッグ装置を搭載した車両の内装品取付構造は、内装品の組付作業が阻害されるのを防止することができると共に、エアバッグの膨張展開時に連結部材が絡まって展開初期の高荷重が内装品の本体部とルーフサイドレールとの接合部位に作用するのを回避することができるという優れた効果を有する。
【0021】
請求項4記載の本発明に係る頭部保護エアバッグ装置を搭載した車両の内装品取付構造は、内装品のルーフサイドレールへの組付作業性を向上させることができると共に、内装品の組付前の段階で本体部又はベゼルといった部品を紛失することを未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
〔第1実施形態〕
以下、図1〜図6を用いて、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置を搭載した車両の内装品取付構造の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
【0023】
(頭部保護エアバッグ装置10の全体構成)
図3には、本実施形態に係る頭部保護エアバッグ装置を搭載した車両を車室内側から見た側面図が示されている。また、図1には本実施形態に係る頭部保護エアバッグ装置を搭載した車両の内装品取付構造を示す図3の1−1線に沿う要部拡大断面図が示されており、更に図2には同2−2線に沿う要部拡大断面図が示されている。
【0024】
これらの図に示されるように、頭部保護エアバッグ装置10は、フロントピラー(Aピラー)12、センタピラー(Bピラー)14及びクォータピラー(Cピラー)16間に亘りルーフサイドレール18に沿って折り畳み状態で配設されたエアバッグ20と、エアバッグ20の長手方向の中間部付近に配置及び接続されて側面衝突時に(又は側面衝突時及びロールオーバー時に)作動してガスを噴出する略円柱形状のインフレータ22と、を含んで構成されている。
【0025】
エアバッグ20の上縁部には適宜間隔で取付片24が形成されており、これらの取付片24がルーフサイドレール18のルーフサイドレールインナ26にボルト及びウエルドナットで締結固定されることにより、エアバッグ20がボディー側に固定されている。また、エアバッグ20は、前席に着座した乗員の頭部の側方にて膨張する前側膨張部20Aと、後席に着座した乗員の頭部の側方にて膨張する後側膨張部20Bと、を備えている。さらに、上記エアバッグ20を膨張展開させるインフレータ22は、図示しないブラケットによってルーフサイドレール18のルーフサイドレールインナ26にボルト及びウエルドナットで締結固定されている。また、エアバッグ20の長手方向の中間部付近の上縁側にはヒレ状の接続部20Cが一体に形成されており、この接続部20Cにインフレータ22のガス噴出部22Aが接続されている。
【0026】
なお、インフレータ22は、コンソールボックス下方等に配設された図示しないエアバッグECU(制御手段)に接続されており、センタピラー14の下部等に配設された図示しない側面衝突検知センサ(手段)又はエアバッグECU内等に配設された図示しないロールオーバー検知センサ(手段)によって側面衝突状態又はロールオーバー状態が検知された場合に通電されて作動してガスを発生するようになっている。
【0027】
図2に示されるように、上述したルーフサイドレール18には、車室内側に配置されたたルーフサイドレールインナ26と、車室外側に配置されかつ略断面ハット形状に形成されたルーフサイドレールアウタ30とが閉断面を形成するように配置されている。ルーフサイドレールインナ26の上下のフランジ部はルーフサイドレールアウタ30の上下のフランジ部にスポット溶接により接合されている。さらに、ルーフサイドレールインナ26の下側フランジ部とルーフサイドレールアウタ30の下側フランジ部との接合部には、ドアオープニングトリム32が弾性的に嵌着されている。
【0028】
また、上述した頭部保護エアバッグ装置10は、ルーフヘッドライニング34の端末部34Aによって覆われている。すなわち、ルーフヘッドライニング34の車両幅方向の端末部34Aは一般部34Bから車両下方側へ屈曲垂下されており、その先端部(下端部)はドアオープニングトリム32のヒレ部32Aに係止されている。さらに、後述するコートフック配設位置(図3の2−2線断面位置)では、ルーフヘッドライニング34の端末部34Aの近傍に樹脂クリップ36が取付けられており、当該樹脂クリップ36はルーフサイドレールアウタ30の下側フランジ部側から車室内側へ張出された略ハット形状のばね材であるフック38に弾性的に係止されている。
【0029】
(内装品及び内装品の取付構造)
上述したルーフヘッドライニング34の端末部34Aの所定位置(本実施形態では、図3に示される如く、センタピラー14とクォータピラー16との略中間位置で後席側に対応する位置)には、車両前後方向に長い内装品取付用の矩形状の開口部40(図1及び図2参照)が形成されており、当該開口部40には内装品としてのコートフック付きルーフサイドレジスタ42が配設されている。
【0030】
また、図1、図2、図4、及び図5に示されるように、コートフック付きルーフサイドレジスタ42は、ルーフヘッドライニング34の端末部34Aに形成された内装品取付用の開口部40に被嵌される略矩形枠状のベゼル44を備えている。ベゼル44の周縁部44Aの外形寸法はルーフヘッドライニング34の端末部34Aの開口部40の周縁部40Aの開口寸法よりも一回り大きく設定されており、組付後の状態では、ベゼル44の周縁部44Aがルーフヘッドライニング34の端末部34Aの開口部40の周縁部40Aに所定量係止されるようになっている(図1及び図2参照)。
【0031】
上記ベゼル44の前端部には第1開口部46が形成されており、又ベゼル44の中央部には第2開口部48が形成されている。第1開口部46には内装品の本体部としてのコートフック本体部50が装着されており、又第2開口部48にはルーフサイドレジスタ本体部52が装着されている。
【0032】
図4及び図5に示されるように、コートフック本体部50は、略箱体形状のケース54と、このケース54の内部に収容可能な大きさに形成されたフック56と、を備えている。フック56の基部56Aは、ケース54の両側部54Aに架け渡された回転軸58に回動自在に軸支されている。なお、図2の実線図示状態がフック56の格納状態であり、図2の二点鎖線図示状態がフック56の使用状態である。フック56を格納状態から使用状態にするには、フック56のフック部56Bを押せばよい(プッシュ・オープンタイプ)。フック部56Bを押すと、図示しない付勢手段の付勢力及びダンパ作用によってフック56が回転軸58回りにゆっくりと車室内側へ回動し、二点鎖線で示される使用状態になった時点で図示しないストッパに当接して停止される。
【0033】
また、ケース54の周壁部は段差構造になっており、上面部及び下面部に形成された矩形状の段差部60の中央には係合突起62が一体に形成されている。これに対応して、ベゼル44の第1開口部46の周縁上部及び下部からは、ケース54側へ向けて上下一対の係合脚部64が一体に延出されている。各係合脚部64には係合突起62が係合可能な矩形状の係合孔66が形成されている。従って、ベゼル44の第1開口部46側へコートフック本体部50を挿入させると、一対の係合脚部64がケース54の上下の段差部60に嵌り、その過程で係合突起62に係合孔66が係合されるようになっている。
【0034】
さらに、ケース54の底壁部54Bの上部にはボルト挿通孔68(図1及び図2参照)が形成されており、更に底壁部54Bの外側面にはボルト挿通孔68と同軸上にグロメット70が固着されている。グロメット70の軸芯部には雌ねじが形成されており、フック56を使用状態にすることにより第1開口部46を通して車室内側から取付ボルト72をグロメット70内へ螺合させることができるようになっている。
【0035】
これに対応して、ルーフサイドレールインナ26には、中央部にグロメット70が挿通可能なグロメット挿通孔74が形成された断面ハット形状の取付ブラケット76が溶接されている。組付に際しては、コートフック本体部50から突出するグロメット70を取付ブラケット76のグロメット挿通孔74内へ挿通させ、取付ボルト72をグロメット70内へ螺合させることにより、グロメット70が半径方向へ膨らみ、取付ブラケット76のグロメット挿通孔74からグロメット70が抜けなくなり、その結果、内装品の本体部であるコートフック本体部50がボディーであるルーフサイドレールインナ26に取付ブラケット76を介して接合の一種である締結により固定される構成である。
【0036】
一方、ベゼル44の第2開口部48には、ルーフサイドレジスタ本体部52が装着されている。具体的には、図1に示されるように、ベゼル44の第2開口部48の周縁部には支持壁78が一体に突出形成されている。前後に位置する支持壁78には同軸上の軸支孔80が形成されている。前側に位置する軸支孔80には鍔付きのブッシュ82が装着されている。そして、ルーフサイドレジスタ本体部52が備えるルーバ84の両サイドから突出する樹脂ピン84が、前側のブッシュ82と後側の軸支孔80とに回動可能に軸支されている。
【0037】
図4及び図5に戻り、上記ルーバ84は、ベゼル44の第2開口部48に臨む矩形枠状の保持枠86Aを備えている。保持枠86Aの室内側部位には、車両前後方向を長手方向として配置された上下複数段の横桟86Bが一体に形成されている。横桟86Bの車室外側には、車両前後方向に所定の間隔で配置されかつ平面視で「く」の字状に形成された複数のフィン88が配置されている。各フィン88は車両上下方向を軸方向とする支軸90(図1参照)回りに揺動可能に支持されており、更に車室外側の端部がバー状の連結部92によって車両前後方向に連結されている。また、中央に位置するフィン88の高さ方向中間部には、開度調節用の摘み94が取り付けられている。
【0038】
上述したベゼル44の第2開口部48の周縁部に立設された矩形枠状の支持壁78の外側の端部には支持壁78の開口面を覆うようにネット96が張られており、更にその外周部には所定幅のウレタンフォーム98が貼り付けられている。このウレタンフォーム98を間に介して図1に二点鎖線で示されるダクト100が支持壁78に接続されるようになっている。
【0039】
また、図1に示されるように、ベゼル44の締結固定点と反対側の端部は、爪を使った係合によりルーフサイドレールインナ26側に固定されている。具体的には、ベゼル44の後端側の外側面には、所定幅の板状のリブ102が面直角方向に一体に形成されている。リブ102の両側部の断面形状はコ字状に形成されており、レール104を構成している。このレール104には、板ばねで構成された係合部材106が差し込まれている。係合部材106は、レール104に差し込まれる平板状の基部106Aと、この基部106Aから折り返されてその折り返し部分の両サイドに形成された一対の第1係合爪106Bと、折り返し部分の真中に形成されて一対の第1係合爪106Bとで係合機能を発揮する第2係合爪106Cと、によって構成されている。第1係合爪106Bは先端部が所定角度折り曲げられており、又第2係合爪106Cは山形の傾斜部を有しており更にその先端部は折り曲げられている。
【0040】
上記係合部材106の第1係合爪106B及び第2係合爪106Cとの係合を可能とするべく、ルーフサイドレールインナ26からは所定形状の取付ブラケット108が一体的に設けられている。取付ブラケット108は、ルーフサイドレールインナ26の配設位置よりも車室内側に張出されている。
【0041】
そして、ルーフヘッドライニング34の端末部34Aの開口部40にベゼル44を嵌め込むと、取付ブラケット108のエッジが第2係合爪106Cの傾斜部上を摺動しながら当該傾斜部を基部106A側へ弾性変形させ、傾斜部の山を越えて谷に至ると、第1係合爪106Bの折り曲げ部に引っ掛かり、第1係合爪106Bと第2係合爪106Cで取付ブラケット108のエッジが挟み込まれるようになり、係合状態となる。
【0042】
上述したベゼル44は、連結部材としてのストラップ110によって取付ブラケット76にコートフック本体部50と一緒に共締めされている。詳細に説明すると、ストラップ110は、所定幅の布材によって構成されている。ストラップ110の一端部110Aはベゼル44の前端部の外側面に突出形成された角柱形状の取付ボス112にビス114で固定されている。なお、ストラップ110の一端部110Aにはビス挿通孔116が形成されている。また、ストラップ110の他端部110Bにはグロメット70を挿通させるためのグロメット挿通孔117が形成されており、コートフック本体部50のケース54の底壁部54Bの裏面側に配置されている。そして、この状態で、前述した如くして、グロメット70に取付ボルト72が螺合されることにより、ストラップ110の他端部110Bがケース54の底壁部54Bと取付ブラケット76との間に挟持された状態で、コートフック本体部50と共にボディー側に共締めされるようになっている。
【0043】
さらに、上述したストラップ110の全長は、コートフック本体部50の締結固定点(ボルト72による締結位置)とコートフック本体部50へのストラップ110の一端部110Aの締結固定点(ビス114による締結位置)との距離よりも充分に長く設定されている。従って、ストラップ110には組付状態で弛みが生じ、この弛み部分を所定の幅で繰り返し折り返して余長部分110Cを形成し、かかる余長部分110Cを所定値以上の荷重入力により破断する結束手段としてのテープ118で広がらないように束ねて結束している。
【0044】
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0045】
車両の側面衝突時又はロールオーバー時になると、側面衝突検知センサ又はロールオーバー検知センサによってその状態が検知され、エアバッグECUに入力される。エアバッグECUによって側面衝突状態又はロールオーバー状態と判断されると、インフレータ22が作動して、車両のルーフサイドレール104に沿って折り畳み状態で格納されたエアバッグ20内へガスが供給される。これにより、エアバッグ20が膨張し、ルーフヘッドライニング34の端末部34Aを車室内側へ押し開きながらルーフサイドレール104の下方へカーテン状に展開される。これにより、膨張した前側膨張部20A及び後側膨張部20Bによって乗員の頭部が保護される。
【0046】
ここで、本実施形態では、ルーフヘッドライニング34の端末部34Aに内装品取付用の開口部40が形成されており、この開口部40を用いて内装品としてのコートフック付きルーフサイドレジスタ42が取付けられている。なお、組付手順を概説すると、先にルーフヘッドライニング34が組付けられてから、コートフック付きルーフサイドレジスタ42がルーフヘッドライニング34の端末部34Aに組付けられる。このとき、コートフック付きルーフサイドレジスタ42は、ベゼル44とコートフック本体部50とルーフサイドレジスタ本体部52とストラップ110の4つの要素が予め一体化され、サブアッセンブリ化されている。そして、サブアッセンブリ化されたコートフック付きルーフサイドレジスタ42を開口部40からルーフサイドレール104側へ挿入し、係合部材106の第1係合爪106A及び第2係合爪106Bをボディー側の取付ブラケット108のエッジに係合させると共に、フック56を格納状態から使用状態にしてグロメット70をボディー側の取付ブラケット76のグロメット挿通孔74内へ挿通させ、更に取付ボルト72をグロメット70に螺合させる。これにより、コートフック付きルーフサイドレジスタ42は、前端側がボルト締めによりルーフサイドレールインナ26側に固定され、後端側が係合部材106の弾性変形による係合によりルーフサイドレールインナ26側に固定される。また、コートフック付きルーフサイドレジスタ42がルーフヘッドライニング34の端末部34Aの開口部40に取り付けられた状態では、ベゼル44の周縁部44Aが開口部40の周縁部40Aに所定量係止された状態となっている。
【0047】
従って、例えば、本実施形態のようにインフレータ22の中央配置やインフレータ22の高出力化等がなされると、エアバッグ20がルーフヘッドライニング34の端末部34Aを車室内側へ押し広げて膨張展開する際に(因みに、図5の二点鎖線図示状態の開口部40の位置が組付状態のルーフヘッドライニング34の端末部34Aの位置を示しており、図5の一点鎖線図示状態の開口部40の位置がエアバッグ20の膨張圧によって車室内側へ押し広げられた状態を示されている。)、当該端末部34Aから受ける力によってベゼル44をコートフック本体部50のケース54に固定している係合脚部64及びルーフサイドレールインナ26側へ固定している係合部材106が外れる方向へ弾性変形してベゼル44が車室内側へ脱落して飛散する可能性がある。
【0048】
しかし、本実施形態では、仮にベゼル44の爪による係合状態がルーフヘッドライニング34の端末部34Aの変形によって解除され、コートフック本体部50及びルーフサイドレールインナ26の取付ブラケット108から外れて開口部40から脱落したとしても、ベゼル44とルーフサイドレールインナ26の取付ブラケット76とはストラップ110によって連結されているため、ベゼル44は開口部40からぶら下がるだけで飛散しない。つまり、ベゼル44がルーフヘッドライニング34の端末部34Aによって車室内側へ変位される際に、ベゼル44と取付ブラケット76とを連結するストラップ110に入る荷重が所定値以上となった時点で、余長部分110Cを結束しているテープ118が破断し、余長部分110Cが伸長する。従って、ベゼル44が開口部40から脱落してもストラップ110によって開口部40からぶら下がるだけでベゼル44が飛散することはない。
【0049】
特に本実施形態では、ベゼル44と取付ブラケット76とを連結しているストラップ110の途中に余長部分110Cを設けているので、エアバッグ20の展開初期に作用する高荷重によって係合脚部64や係合部材106が外れ又は破損しても、当該高荷重がコートフック本体部50のボディーへ側の固定点(取付ボルト72の締結位置)に作用することはない。つまり、本実施形態では、ストラップ110の余長部分110Cがほどけている間にエアバッグ20の展開初期の高荷重を逃がすことで、コートフック本体部50のルーフサイドレールインナ26の取付ブラケット76への固定点には展開初期の高荷重が作用しないようにした。このため、コートフック本体部50のルーフサイドレールインナ26の取付ブラケット76への固定部位が破損することはなく、この点からもコートフック本体部50やベゼル44が飛散することはない。
【0050】
以上より、本実施形態によれば、ルーフヘッドライニング34の端末部34Aに設置されるコートフック付きルーフサイドレジスタ42のベゼル44の飛散をより確実に防止することができる。
【0051】
また、本実施形態では、ストラップ110の他端部110Bをコートフック本体部50と一緒にルーフサイドレールインナ26の取付ブラケット76に取付ボルト72で共締めすることとしたので、ストラップ110の他端部110Bをコートフック本体部50と共締めせずに、別個独立にボディー側に固定する場合に比し、部品点数の削減及び組付工数の削減を図ることができる。その結果、本実施形態によれば、低コストで前記効果を得ることができる。
【0052】
さらに、本実施形態では、ストラップ110の余長部分110Cをテープ118で結束したので、コートフック付きルーフサイドレジスタ42の組付時に余長部分110Cが絡まるのを防止することができると共にエアバッグ20が膨張展開してストラップ110が伸長される際に余長部分110Cが絡まるのを防止することができる。その結果、本実施形態によれば、コートフック付きルーフサイドレジスタ42の組付作業が阻害されるのを防止することができると共に、エアバッグ20の膨張展開時にストラップ110が絡まって展開初期の高荷重がコートフック本体部50とルーフサイドレールインナ26の取付ブラケット76との接合部位に作用するのを回避することができる。
【0053】
加えて、本実施形態では、コートフック付きルーフサイドレジスタ42がルーフサイドレール104の端末部34Aの開口部40へ固定される前に、予めストラップ110の両端部がコートフック本体部50とベゼル44とに固定されるため、コートフック本体部50、ルーフサイドレジスタ本体部52、ベゼル44、ストラップ110を含んで構成されるコートフック付きルーフサイドレジスタ42をルーフサイドレールインナ26側への組付前の段階でサブアッセンブリ化することができる。その結果、本実施形態によれば、コートフック付きルーフサイドレジスタ42のルーフサイドレールインナ26側への組付作業性を向上させることができると共に、コートフック付きルーフサイドレジスタ42の組付前の段階でコートフック本体部50、ルーフサイドレジスタ本体部52、ベゼル44、テープ110といった部品を紛失することを未然に防止することができる。
【0054】
〔第2実施形態〕
次に、図7〜図9を用いて、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置を搭載した車両の内装品取付構造の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0055】
図7〜図9に示されるように、この第2実施形態では、内装品がコートフック120単体で構成されている点に特徴がある。すなわち、コートフック120は、前述した第1実施形態で説明したコートフック本体部50と小型のベゼル122とによって構成されている。ベゼル122の周縁部122Aは、ルーフヘッドライニング34の端末部34Aに形成された小型の開口部124の周縁部124Aに係止された状態で組付けられている。また、この第2実施形態の場合、ベゼル122は板ばねから成る係合爪でボディーに係合されるのではなく、ベゼル122の両側部から延出された係合脚部64のみによってケースの係合突起62に係合固定されている。
【0056】
(作用・効果)
上記構成によっても、作用並びに効果は前述した第1実施形態の場合と全く同様であり、ルーフヘッドライニング34の端末部34Aがエアバッグ20によって押し広げられてベゼル122が開口部124から脱落しても、ベゼル122はストラップ110によってルーフサイドレールインナ26の取付ブラケット76に繋ぎ止められているので、飛散することはない。
【0057】
〔上記実施形態の補足説明〕
以下、上述した第1実施形態及び第2実施形態の補足説明をする。
【0058】
(1)第1実施形態では、内装品としてコートフック付きルーフサイドレジスタ42を取り上げ、第2実施形態では、内装品としてコートフック120を取り上げたが、これに限らず、ルーフヘッドライニング34の端末部34Aに形成された開口部にベゼルが被嵌される内装品であれば、すべて適用可能である。例えば、コートフック付きルーフサイドレジスタ42に替えて照明灯付きルーフサイドレジスタに対して本発明を適用してもよい。
【0059】
(2)上述した実施形態では、ストラップ110の他端部110Bをコートフック本体部50と一緒に取付ボルト72で取付ブラケット76に共締めする構成を採ったが、必ずしもコートフック本体部50と一緒に共締めする必要はなく、コートフック本体部50のケース54の側壁部54Aに固定してもよいし、取付ブラケット76に巻き付ける等してもよい。ストラップ110の他端部110Bをコートフック本体部50のケース54の側壁部54Aに固定する方法として、回転軸58をリベットで構成すれば、簡単に固定することができる。また、取付ブラケット76に固定する方法としては、取付ブラケット76の傾斜面に切起こしによる爪を形成しておき、当該爪にストラップ110の他端部110Bを係止するようにしてもよい。
【0060】
(3)上述した実施形態では、連結部材としてストラップ110を用いたが、これに限らず、紐やワイヤでもよいし、他の連結部材であってもよい。
【0061】
(4)上述した実施形態では、結束手段としてテープ118を用いたが、これに限らず、紐や折り返して重なる部分に接着力の弱い糊を付けて結束させる等してもよい。
【0062】
(5)上述した本実施形態では、ルーフサイドレールインナ26に取付ブラケット76、108を設定したが、これに限らず、ルーフサイドレールインナの形状や配置によってはコートフック本体部50及び係合部材106をルーフサイドレールインナに直接固定及び係合させるようにしてもよい。つまり、請求項1に記載された「ルーフサイドレールに接合により固定され」、「本体部及びルーフサイドレールの少なくとも一方に……係合により固定される」、「……又はルーフサイドレールとを、……連結部材によって連結した」の「ルーフサイドレール」には、ルーフサイドレールインナ自体が含まれる他、ルーフサイドレールインナに設定されルーフサイドレールインナ側の部材として把握されるブラケット等も含まれる趣旨である。
【0063】
(6)上述した本実施形態では、コートフック本体部50を取付ボルト72でルーフサイドレールインナ26側に固定したが、これに限らず、リベット接合等の他の接合方法を採ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】第1実施形態に係る頭部保護エアバッグ装置を搭載した車両の内装品取付構造を示す図3の1−1線に沿う要部拡大断面図である。
【図2】第1実施形態に係る頭部保護エアバッグ装置を搭載した車両の内装品取付構造を示す図3の2−2線に沿う要部拡大断面図である。
【図3】第1実施形態に係る頭部保護エアバッグ装置を搭載した車両を車室内側から見た側面図である。
【図4】図1に示されるコートフック付きルーフサイドレジスタの分解斜視図である。
【図5】ベゼルがルーフヘッドライニングの端末部の開口部から外れてストラップによって繋ぎ止められた状態を示す斜視図である。
【図6】ストラップが結束された状態を示す斜視図である。
【図7】第2実施形態に係る頭部保護エアバッグ装置を搭載した車両を車室内側から見た側面図である。
【図8】第2実施形態に係る頭部保護エアバッグ装置を搭載した車両の内装品取付構造を示す図7の8−8線に沿う要部拡大断面図である。
【図9】図7に示されるコートフックの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0065】
10 頭部保護エアバッグ装置
18 ルーフサイドレール
20 エアバッグ
22 インフレータ
34 ルーフヘッドライニング
34A 端末部
40 開口部
40A 周縁部
42 コートフック付きルーフサイドレジスタ(内装品)
44 ベゼル
44A 周縁部
50 コートフック本体部
70 グロメット
72 取付ボルト
76 取付ブラケット(ルーフサイドレール)
106 係合部材
106B 第1係合爪
106C 第2係合爪
108 取付ブラケット(ルーフサイドレール)
110 ストラップ(連結部材)
110B 他端部(反ベゼル側の端部)
110C 余長部分
118 テープ(結束手段)
120 コートフック(内装品)
122 ベゼル
124 開口部
124A 周縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の所定位置に配置されたインフレータと、
少なくとも一部がルーフサイドレールとルーフヘッドライニングの端末部との間に折り畳み状態で格納され、インフレータからガスが供給されることにより膨張してルーフヘッドライニングの端末部を車室内側へ押し開きながらルーフサイドレールの下方へ展開されるエアバッグと、
を含んで構成された頭部保護エアバッグ装置を搭載した車両に適用される内装品取付構造であって、
前記ルーフヘッドライニングの端末部には、ルーフサイドレールに接合により固定される本体部と、当該本体部及びルーフサイドレールの少なくとも一方に弾性変形可能な爪を用いた係合により固定されるベゼルと、を含んで構成された内装品を取付けるための開口部が形成されており、
かつ当該内装品がルーフヘッドライニングの端末部に設置された状態では、ベゼルの周縁部が開口部の周縁部に所定量係止されており、
さらに、前記内装品のベゼルと前記内装品の本体部又はルーフサイドレールとを、途中に余長部分を有する長尺状の連結部材によって連結した、
ことを特徴とする頭部保護エアバッグ装置を搭載した車両の内装品取付構造。
【請求項2】
前記内装品の本体部は前記ルーフサイドレールに締結により固定されており、
前記連結部材における反ベゼル側の端部を、内装品の本体部をルーフサイドレールへ締結固定する際に共締めした、
ことを特徴とする請求項1記載の頭部保護エアバッグ装置を搭載した車両の内装品取付構造。
【請求項3】
前記連結部材の余長部分は、エアバッグが膨張展開する際の荷重が所定値以上入力されることにより破断する結束手段によって結束されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の頭部保護エアバッグ装置を搭載した車両の内装品取付構造。
【請求項4】
前記連結部材の両端部は、内装品の本体部がルーフサイドレールへ固定される前に、予め内装品の本体部とベゼルとに固定されている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の頭部保護エアバッグ装置を搭載した車両の内装品取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−62839(P2008−62839A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−244137(P2006−244137)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】