説明

風力発電システム

【課題】電力変換器によって発電機の発電電力を制御する風力発電システムにおいて、前記電力変換器を冷却する冷却能力の低下により、電力変換器の送電可能電力が制限されたとき、ブレードのピッチ角を可変制御することで、前記送電可能電力に応じた前記ブレードからの入力エネルギーをコントロールし、前記ブレードの過回転および前記電力変換器の故障を防止する風力発電システムを提供する。
【解決手段】前記冷却システムの冷却能力、または前記コンバータおよび前記インバータを含む電力変換器の冷却状態を検出する冷却能力検出手段と、前記ピッチ角指令値算出手段により算出された前記ピッチ角指令値を補正するピッチ角指令値補正手段とを備え、前記冷却能力検出手段の検出結果に基づいて、前記ピッチ角指令値補正手段が前記ピッチ角指令値を補正し、前記補正されたピッチ角指令値に応じて、前記ブレードのピッチ角を可変制御する指令を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統と連系し、風力による入力エネルギーから発電機を用いて発電し、前記発電電力を、電力変換器を用いて所望の電力に変換して前記電力系統に送電する風力発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、風力発電システムの発電効率向上のため、インバータやコンバータといった電力変換器を用いて発電機を可変速で運転する可変速風力発電システムが主流になっている。
【0003】
該可変速風車システムのエネルギー伝達部は、風のエネルギーを回転エネルギーに変換するブレード、該ブレードにより得られた回転エネルギーを増速器であるギアに伝えるシャフト、該シャフトに機械的に接続されるギア、該ギアに機械的に接続され回転エネルギーを電力に変換する発電機、該発電機の出力周波数を連系する電力系統の周波数に変換する電力変換器、該電力変換器により商用周波数に変換された交流電力を昇圧して電力系統に送電する変圧器、により構成される。
【0004】
該風力発電システムが風から該風力発電システムの定格に相当する入力エネルギーを受け取っており、なおかつ何らかの要因により該電力変換器より連系する電力系統へ送電する電力が制限される場合、入力エネルギーである風のエネルギーと、電力系統に出力する電気エネルギーに差異が生じ、このエネルギー差によりブレードの回転数が増して過回転になる恐れがある。
【0005】
電力変換器が系統に送電する電力は、連系点における系統電圧と系統に流す電流の積である。地絡等の系統事故が発生した場合、該系統電圧が定格値より低くなる。電力変換器は通常、定格電流以上の電流を継続して流すことはできないため、系統事故継続期間において、電力変換器の送電可能電力は定格値以下に制限されてしまう。ゆえに、風力発電システムがその定格近傍の発電をしている状態で系統事故が発生すると、ブレードが過回転になる恐れがある。
【0006】
特許文献1では、電力系統の事故を検出した場合、風車のピッチ角をフェザー状態にして風の入力エネルギーを低減させるとともに、クローバー回路を投入することで電力変換器への過電流流入を防止する方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献2では、電力系統事故継続中に適切にピッチ角を制御することで系統事故継続中のブレード回転速度を該風力発電システムの運転可能範囲に保ち、系統事故が解除されたことを検出したら速やかに発電を再開させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2004/067958
【特許文献2】特許第4501958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記公知技術は、系統側の要因により風力発電システムの定格電力を受け取ることができなくなる事象に対する解決策である。一方、系統側の要因ではなく、電力変換器自体の要因により風力発電システムの定格電力を系統に送れなくなる事象も存在する。
【0010】
具体的には、電力変換器周囲温度上昇によるトリップが考えられる。該電力変換器の動作温度範囲以上に該電力変換器の周囲温度が高くなってしまった場合、電力変換器の十分な冷却能力が得られなくなり、電力変換器内部の部品(半導体スイッチング素子やリアクトル等)の温度が設計値以上に高温になり、故障してしまう可能性がある。
【0011】
電力変換器の故障を回避するため、電力変換器内部の部品温度を検出し、該部品温度の異常上昇を検出したときには該電力変換器を停止する電力変換器保護方法が考えられるが、該電力変換器が発電を停止することに変わりはない。
【0012】
電力変換器の温度異常により該電力変換器がトリップもしくは発電を停止すると、風力発電システムの入力エネルギーがブレード等の回転体回転エネルギーとして蓄えられ、回転数が上昇し、最終的にはブレードが過回転になる恐れがある。
【0013】
電力変換器周囲温度上昇は、系統側要因とは異なるものであり、ブレード過回転を回避するためには新たな対策機構が必要となる。
【0014】
本発明の課題は、前記電力変換器を冷却する冷却能力の低下により、電力変換器の送電可能電力が制限されたとき、前記送電可能電力に応じたブレードからの入力エネルギーをコントロールし、前記ブレードの過回転および前記電力変換器の故障を防止する風力発電システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の課題を解決するための手段として、ピッチ角可変のブレードと機械的に接続された同期発電機から出力される可変周波数の発電電力を直流電力に変換するコンバータと、前記コンバータの出力する直流電力を平滑化する平滑コンデンサと、電力系統に電気的に接続され、前記コンバータから前記平滑コンデンサを介して前記直流電力を固定周波数の交流電力に変換し、前記電力系統に出力するインバータと、前記ブレードのピッチ角の可変制御を行うためのピッチ角指令値を算出し、前記ピッチ角指令値から前記ピッチ角を機械的に調整する指令を行うピッチ角指令値算出手段と、前記コンバータおよび前記インバータを冷却する冷却システムと、を有する風力発電システムであって、前記冷却システムの冷却能力、または前記コンバータおよび前記インバータを含む電力変換器の冷却状態を検出する冷却能力検出手段と、前記ピッチ角指令値算出手段により算出された前記ピッチ角指令値を補正するピッチ角指令値補正手段とを備え、前記冷却能力検出手段の検出結果に基づいて、前記ピッチ角指令値補正手段が前記ピッチ角指令値を補正し、前記補正されたピッチ角指令値に応じて、前記ブレードのピッチ角を可変制御する指令を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
前記ブレードのピッチ角を可変制御することで、電力変換システムの運転を継続したまま、前記電力変換器の送電可能電力に応じて、前記ブレードからの入力エネルギーをコントロールでき、前記ブレードの過回転を防止するとともに、前記電力変換器の故障を防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明第一実施例の風力発電システムの全体構成説明図。
【図2】本発明第一実施例の風力発電システムの制御システム説明図。
【図3】本発明第一実施例の電力変換器コントローラ説明図。
【図4】本発明第一実施例の冷却能力検出器3000の冷却能力検出テーブル。
【図5】本発明第一実施例の上位コントローラ1000およびピッチ角補正器6000演算ブロック説明図。
【図6】本発明第一実施例のその他の実施形態説明図。
【図7】本発明第一実施例のその他の実施形態説明図。
【図8】本発明第一実施例のその他の実施形態説明図。
【図9】本発明第一実施例のその他の実施形態説明図。
【図10】本発明第一実施例の動作波形説明図。
【図11】本発明第二実施例の風力発電システムの電力変換器および冷却システム説明図。
【図12】本発明第二実施例の風力発電システムの制御システム説明図。
【図13】本発明第三実施例の風力発電システムの制御システム説明図。
【図14】本発明第四実施例の風力発電システムの制御システム説明図。
【図15】本発明第五実施例の風力発電システムの制御システム説明図。
【図16】本発明におけるブレード10のピッチ角を可変制御した前後の状態についての説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。なお、実施例を説明する各図面では、同一の機能を有する要素には同一の符号をつけてある。また、図13等に示される、同一冷却フィンに設置され、IGBTと該IGBTと逆並列に接続されるダイオードからなる並列体21m〜21r、および22m〜22rを、半導体スイッチング素子21m〜21r、22m〜22rと呼ぶことにする。
【実施例1】
【0019】
本実施例では、電力変換器が冷却水により冷却される場合の風力発電システム1の例を説明する。
【0020】
本実施例の風力発電システム1は、風のエネルギーをブレードと永久磁石を備えた発電機により電力に変換し、該電力を電力変換器によって商用周波数に変換して電力系統に送電する風力発電システムである。
【0021】
図1には、本実施例の風力発電システム1の構成例を示す。
【0022】
風力発電システム1は、風のエネルギーを回転エネルギーに変換するブレード10、該ブレードを支え、ブレードの回転力をシャフトに伝えるハブ11、回転力をギア14に伝達するシャフト13、ギアと機械的に接続されて回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機15、発電機15から出力された交流電力を連系する電力系統の周波数を持つ電力に変換する電力変換器20、電力変換器20の交流出力電力を昇圧して系統に送る変圧器30により構成される。
【0023】
発電機15と電力変換器20は電力ケーブル25を介して接続され、また電力変換器20と変圧器30は、電力ケーブル26により接続される。シャフト13、ギア14、発電機15はナセル60内に設置され、電力変換器20はタワー70内に設置される。
【0024】
ナセル60の上部には風速計201が設置され、該風速計201の出力は後述の上位コントローラ1000に入力される。電力変換器20は冷却水により冷却される水冷式電力変換器であり、冷却水配管を介して冷却水を冷やす冷却システム3と接続される。
【0025】
風力発電システム1の動作について、説明する。
【0026】
風力発電システム1は、ブレード10が風を受けることにより回転エネルギーを得、該回転エネルギーによりシャフト13、ギア14を介して、発電機15の回転子を回転させる。
【0027】
発電機15の回転子には永久磁石が備えられており、該回転子が回転することで固定子巻線に鎖交する磁束が変化し、固定子巻線には交流の誘起電力が発生する。
【0028】
電力変換器20は発電機15の固定子巻線に、該誘起電圧の周波数と等しい周波数を有し、該誘起電圧に対して位相の遅れた交流電圧を出力することにより発電機15から有効電力を受け取る。電力変換器20は発電機15から得た有効電力を電力系統2と等しい周波数に変換し、電力系統2へ送電する。
【0029】
風からの入力トルクの調整はブレード10のピッチ角調整により実施し、ブレードの回転速度を風速に対応した回転速度指令値となるよう、後述の上位コントローラ1000によりピッチ角が調整される。
【0030】
風力発電システム1の制御システムおよび電力変換器20の詳細を、図2を用いて説明する。
【0031】
風力発電システム1は、大きく分けて2つのコントローラを備える。一つは風速計201により検出した風速に応じてブレード10の回転速度を制御すべくピッチ角指令値φrefと電力変換器20の系統送電電力指令値Prefを算出する上位コントローラ1000、そして第二のコントローラは、上位コントローラ1000により出力された発電電力指令Prefに従い、電力系統2への送電電力を制御する電力変換器コントローラ2000である。
【0032】
上位コントローラ1000は、風速計201の出力vと、電力変換器コントローラ2000が算出する発電電力値Pとブレード回転角速度ωと、を入力とし、ピッチ角φrefと、電力変換器20の発電電力指令値Prefを出力する。
【0033】
上位コントローラ1000により算出されたピッチ角指令φrefは、本発明の新規な点であるピッチ角補正器6000を介してピッチ角調整機12に入力され、ピッチ角調整機12は調整されたピッチ角指令に従ってブレード10のピッチ角を調整する。
【0034】
上位コントローラ1000により算出された発電電力指令Prefは、電力変換器コントローラ2000に入力される。電力変換器コントローラ2000は、電力変換器20が発電機15より受け取る有効電力が上記発電電力指令と一致するようにコンバータ21を制御する。
【0035】
電力変換器20を詳細に説明する。
【0036】
電力変換器20の主回路は、コンバータ21、インバータ22、平滑コンデンサ22cdc、高調波フィルタ21fil、22filにより構成される。コンバータ21は、上位コントローラ1000から出力される発電電力指令Prefに従い発電機15から受け取る電力を制御する機能と、発電機から受け取る無効電流を制御する機能を有する。インバータ22は、固定値である直流電圧指令値に従い、平滑コンデンサ22cdc端子間電圧を制御することにより、コンバータ21が受け取った発電機15の発電電力を電力系統2に送電する機能、および電力系統2に出力する無効電流を制御する機能を有する。
【0037】
コンバータ21、インバータ22の主要部の構成を説明する。
【0038】
本実施例では、コンバータ21、インバータ22の構成を6アーム構成のIGBT変換器の場合で説明する。IGBT素子21m〜21r、22m〜22rがそれぞれコンバータ21とインバータ22のアームを構成している。各IGBT素子21m〜21r、22m〜22rの制御電極であるゲートには、電力変換器コントローラ2000からゲート駆動信号を入力する。PWM変調したゲート駆動信号を入力して各IGBT素子をスイッチングさせることにより、発電機15の交流出力電力は直流電力に、該直流電力は電力系統2に出力される交流電力に変換される。
【0039】
発電機15の出力電流は、発電機誘起電圧とコンバータ21出力電圧の差と、その間にある発電機15の漏れインダクタンスと高調波フィルタ21filのインダクタンスと、により決まる。該出力電流はコンバータ21により直流電流に変換され、該直流電流により平滑コンデンサ22cdcが充電される。
【0040】
電力系統2への出力電流は、電力系統2の連系点系統電圧とインバータ22の出力電圧の差と、高調波フィルタ22filのインピーダンスと、により決まる。該出力電流はインバータ22のスイッチングにより直流電流から交流電流に変換されたものであり、インバータ22が系統に有効電力を出力することにより平滑コンデンサ22cdcが放電される。
【0041】
IGBT素子21m〜21r、および22m〜22rは、スイッチングの度にスイッチング損失を発生する。また、IGBT素子に電流が流れるときには、該素子に導通損失が発生する。それら損失はIGBT素子内部温度を上昇させる。IGBT素子のジャンクション温度が所定の値以上になると、IGBTのワイヤ切断等が発生し、IGBT素子が破損する可能性がある。また、IGBT素子以外の回路要素、例えば高調波フィルタ21fil、22filのリアクトルなどでも、電流が流れることにより銅損と鉄損が発生し、温度が上昇する。該リアクトルの温度が異常上昇すると、絶縁破壊が起き、電力変換器20の破損につながる可能性がある。
【0042】
本実施例の風力発電システム1は、上記温度上昇による破損を回避するため、冷却システム3を備え、上記IGBT素子や高調波フィルタの損失により発生した熱を、冷却システム3により供給される冷却水で冷やすことにより、上記IGBT素子や高調波フィルタの温度上昇を抑制する。
【0043】
冷却システム3は、熱交換器40と、冷却水を熱交換器40とコンバータ21、インバータ22との間に循環させるポンプ41により構成される。冷却システム3より送りだされた冷却水は、コンバータ21、インバータ22の冷却水配管51から上記IGBT素子および高調波フィルタの冷却フィン内水路を介して冷却水配管52に流れ、再び冷却システム3に戻る。該冷却水はポンプ41により強制的に循環される。
【0044】
上記冷却水は上記IGBT素子および高調波フィルタの冷却フィン内水路を流れる過程において、上記IGBT素子や高調波フィルタの温度と該冷却水温度との差に応じた熱量を受け取る。ポンプ41により冷却水はコンバータ21もしくはインバータ22から熱交換器40に運ばれる。このとき、該冷却水の温度は、上記IGBT素子や高調波フィルタから受け取った熱により上昇し、その温度は外気温度より高くなる。熱交換器40は該熱交換器40の周辺空気を該冷却水の流れる配管に吹き付けることにより該冷却水を冷却する。熱交換器40により冷却された冷却水は、再びコンバータ21およびインバータ22のIGBT素子や高調波フィルタを流れることにより該IGBT素子や高調波フィルタを冷却し、該IGBT素子や高調波フィルタを過度な温度上昇による破壊から保護する。
【0045】
電力変換器コントローラ2000には、交流電圧センサ100、101により検出した交流電圧値Vgu、Vgv、Vgw、Vsu、Vsv、Vsw、電流センサ103、104により検出した交流電流値Igu、Igv、Igw、Isu、Isv、Isw、直流電圧センサ102により検出した直流電圧値Vdcが入力される。
【0046】
電力変換器コントローラ2000は、発電機15から受け取る電力を上記交流電圧値、交流電流値から算出し、この交流電力検出値を上位コントローラ1000から受け取った電力指令値に一致するよう、コンバータ21の交流電圧を調整する。
【0047】
電力変換器コントローラ2000の詳細構成を、図3を用いて説明する。
【0048】
まず、電力算出器20006により発電機15から受け取る有効電力Pgを算出する。
有効電力制御器20001では、上記電力指令値と前記有効電力算出値との偏差を求め、その偏差を零にするようにPI演算を行い、コンバータ21が発電機15に流す有効電流指令値Idrefを算出する。発電機15の誘起電力位相を検出する位相検出器20009は、発電機端子電圧検出値Vgu、Vgv、Vgwを入力とし、誘起電圧の位相推定値θg、およびブレード10の回転角速度推定値ωを算出し、該位相推定値θgは発電機電流制御器20003へ出力する。発電機15から受け取る有効電力算出値Pgおよびブレード10の回転角速度推定値ωは、上位コントローラ1000に出力される。
【0049】
発電機電流制御器20003は、有効電流指令値Idref、無効電流指令値Iqref、発電機電流検出値Igu、Igv、Igw、そして位相推定値θgを入力し、有効電流指令値Idref、および所定の無効電流指令値Iqref(ここでは零)と、発電機15より受け取る交流電流検出値が一致するよう、発電機電流制御器20003では上記電流検出値と発電機電流指令値との偏差を算出し、その偏差を零にするようにPI演算を行い、発電機側交流電圧指令値を決定し、この電圧指令値を変調波としてPWM制御ブロック20007に入力する。PWM制御ブロック20007は該変調波と搬送波とを比較して、ゲート駆動信号を作成し、IGBT素子21m〜21rの各ゲートへ出力する。
【0050】
IGBT素子21m〜21rが与えられたゲート信号によりオン・オフすることにより、コンバータ21は、発電機電流制御器20003により出力された交流電圧指令値に対応した電圧を発電機15側に出力することができる。以上により、コンバータ21は、上位コントローラ1000から出力された発電指令値にしたがって発電機15の発電電力を制御できる。
【0051】
電力変換器コントローラ2000は、平滑コンデンサ22cdcの端子間電圧を所定の値に制御するよう、インバータ22の交流電圧を調整する。
【0052】
具体的には、まず直流電圧センサ102により平滑コンデンサ22cdcの端子間電圧を検出する。直流電圧制御器20004では、上記所定値と平滑コンデンサ22cdc端子間電圧検出値との偏差を求め、その偏差を零にするようにPI演算を行い、インバータ22が電力系統2に出力する有効電流指令値Idrefを算出する。
【0053】
インバータ電流制御器20005は、直流電圧制御器20004により算出された有効電流指令値Idref、所定の無効電流指令値Iqref(ここでは零)と、電力系統2に出力する交流電流検出値、位相検出器20010より出力した系統電圧位相θsを入力とする。インバータ電流制御器20005は、該電流指令値と電力系統2に出力する交流系統検出値が一致するよう、上記電流検出値と系統電流指令値との偏差を算出し、その偏差を零にするようにPI演算を行い、系統側交流電圧指令値を決定し、この電圧指令値を変調波としてPWM制御ブロック20008に入力する。PWM制御ブロック20008は該変調波と搬送波とを比較して、ゲート駆動信号を作成し、IGBT素子22m〜22rの各ゲートへ出力する。
【0054】
IGBT素子22m〜22rが与えられたゲート信号によりオン・オフすることにより、インバータ22は、インバータ電流制御器20005により出力された交流電圧指令値に対応した電圧を電力系統2側に出力することができる。以上により、インバータ22は、電力変換器20の直流電圧を一定に制御するよう、インバータ22の交流出力電圧を調整する。
【0055】
以降、本発明の新規な点である、温度センサ200の出力である温度検出値Tambに応じたピッチ角補正によるブレード過回転防止機構を説明する。
【0056】
熱交換器40における冷却水の冷却能力は、冷却水の熱交換器40入口の冷却水温度と外気温の差に依存し、外気温が高くなると冷却水を十分冷やすことができなくなる。十分冷却水を冷やすことができないと、熱交換器40出口における冷却水温度が高くなり、結果として冷却システム3による上記IGBT素子や高調波フィルタの冷却能力が低下する。
【0057】
本発明の過回転防止機構は、冷却システム3の冷却能力の低下を間接的に検出する温度センサ200、該温度測定手段の出力に応じて冷却能力を検出する冷却能力検出器3000、およびピッチ角補正器6000により構成される。該過回転防止機構は、冷却システム3の冷却能力が低下したとき、ピッチ角をフェザー側に調整し、風による入力エネルギーを制限する。これにより、電力変換器20が電力系統2に送電できる電力が制限された場合でも、風による入力エネルギーを電力変換器20が送電できるエネルギー以下に低減することができるため、ブレードの過回転を防止することができる。
【0058】
以降、本実施例のブレード過回転防止機構について、詳細に説明する。
【0059】
風力発電システム1は、外気温度を検出する温度センサ200を備える。温度センサ200は、外気温度に正比例した値Tambを出力し、該出力は冷却能力検出器3000に入力される。外気温検出場所は、冷却システム3近傍であることが望ましく、好ましくは冷却システム入気口100m以内である。
【0060】
冷却能力検出器3000は、図4に示すようなTambに対する冷却能力検出テーブルを備える。すなわち、温度センサ200からの入力Tambが所定の値t1より高い場合、冷却能力検出器3000は、該検出手段の出力を入力Tambに対して単調減少させる特性を有する。
【0061】
ここで、冷却能力検出器3000の出力ΔSは、電力変換器20が電力系統2に送電可能な電力の低減幅に相当する。該冷却能力検出器3000の出力信号は、ピッチ角補正器6000に入力される。
【0062】
ピッチ角補正器6000は、上位コントローラ1000からのピッチ角指令φref、冷却能力検出器3000の出力ΔSを入力し、補正されたピッチ角指令φref2をピッチ角調整機12に出力する。
【0063】
具体的なピッチ角補正方法について、図5を用いて説明する。
【0064】
上位コントローラ1000は、風速計201の出力vを入力とし、該風速計出力vと、風速とブレードの回転速度を対応づける回転速度指令演算器10001を用いてブレード回転速度指令値ωrefを算出する。さらに、上位コントローラ1000の回転速度制御器10002は、電力変換器コントローラ2000より入力したブレード角速度ωと上記回転速度指令ωrefを入力としてピッチ角指令値φrefと電力変換器20の発電電力指令値Prefを算出し、ピッチ角指令値φrefをピッチ角補正器6000に、発電電力指令値Prefを電力変換器コントローラ2000に出力する。
【0065】
ピッチ角補正器6000は、冷却能力検出器3000の出力ΔSを乗算器6001によりゲインKで乗算し、その積を加算器6002に入力する。ここで、ゲインKは、電力変換器20の送電可能電力低減幅ΔSをピッチ角に補正するゲインであり、ΔSが負の場合にはピッチ角がフェザー側に変更され、ブレード10の回転方向のトルクが減少する。ゲインKは、ピッチ角の補正により、風による入力エネルギーが電力変換器20の発電可能電力より小さくなるように設計する。
【0066】
加算器6002は上位コントローラ1000から入力されたピッチ角指令φrefに乗算器6001出力を加算し、その和を補正されたピッチ角φref2としてピッチ角調整器12に出力する。
【0067】
以上より、温度センサ200の出力が所定の値t1より高い場合、ブレード10のピッチ角指令値φref2はフェザー側に補正され、風によりブレード10に入力されるトルクが減少し、風力発電システムの入力エネルギーが低減する。
【0068】
本実施例の風力発電システムの動作波形例を図10に示す。
【0069】
図10のグラフは、上から順に温度センサ200検出値Tamb、送電可能電力低減幅ΔS、ピッチ角指令φref2、ブレード回転角速度ω、そして発電機発電電力Pの時間変化を示すものである。
【0070】
時刻time1において、温度センサ200が所定の判定温度t1を超える。本発明の風力発電システム1は、冷却能力検出器3000により温度センサ200出力値が所定温度t1を超えたことを検出し、送電可能電力低減幅ΔSをピッチ角補正器6000に出力する。ピッチ角補正器6000は、ΔSに応じて上位コントローラ1000から出力されたピッチ角指令値φrefを、ピッチ角指令値φref2をフェザー側であるマイナス方向に変更し、ピッチ角調整器12に出力する。ピッチ角調整器12は指令値φref2に従いピッチを調整するため、ブレード10に印加される回転方向のトルクが減少する。
【0071】
ブレード10の回転方向トルクが減少し、時刻time1においては電力変換器20が発電機15より受け取る電力は変化しないので、ブレード10の回転角速度ωが過渡的に低下する。
【0072】
上位コントローラ1000は、回転角速度ωの低下を検出して、該回転角速度が指令値ωrefに一致するよう、電力変換器20の発電電力指令値Prefを下げる。
【0073】
電力変換器コントローラ2000は、Prefに従い、発電電力Pを下げる。発電電力量Pが下がるため、電力変換器20内部の損失による発熱が低下し、電力変換器20は運転を継続することができる。
【0074】
電力変換器20が運転を継続することができるため、ブレード10には発電機15の発電による負荷トルクがかかるため、ブレード10の回転角速度ωが急上昇することなく過回転を回避することができる。
【0075】
本実施例では、外気温度を温度センサ200により検出することで冷却システム3の冷却能力低下を推定しているが、図6に示すように温度センサ200は冷却システム3の出口における冷却水温度を検出し、該検出値を用いて冷却システム3の冷却能力低下を推定しても良い。
【0076】
また、温度センサ200は、図7に示すように冷却システム3の入口における冷却水温度を検出し、該検出値を用いて冷却システム3の冷却能力を推定しても良い。
【0077】
また、本実施例の電力変換器は冷却水を用いて発熱の大きい要素であるIGBT素子や高調波フィルタリアクトルを冷却する水冷式電力変換器であったが、図8に示すような冷却ファン50を用いた強制風冷式電力変換器であっても良い。本構成においては、IGBT素子が冷却風との接触面積を増やすための冷却フィンを備えることが望ましい。この場合、温度センサは冷却風入口温度を検出しても良いし、冷却風吐き出し口の空気温度を検出しても良い。
【0078】
また、本実施例では、冷却能力検出器3000は電力変換器コントローラ2000には含まれないが、図9に記載のように電力変換器コントローラ2000内で送電可能電力低減幅を演算しても良い。
【0079】
以上のように、本実施例の風力発電システムは、外気温上昇によって電力変換器冷却能力が減少しても、風による入力エネルギーを制限することと、電力変換器の運転継続を実現することにより、ブレードの過回転を防止することができる。
【実施例2】
【0080】
本実施例では、冷却能力を電力変換器内部温度により検出する風力発電システム1の例を説明する。
【0081】
図11は、実施例1における風力発電システム1を示す構成図の例である。
【0082】
図1の風力発電システム1のうち、既に説明した図1に示された同一の符号を付された構成と、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。
【0083】
本実施例と、実施例1記載の風力発電システムとの差は、温度センサ200が電力変換器20のコンバータ21とインバータ22を収納する筐体内に設置される点である。
【0084】
実施例1では、冷却水の温度を直接、もしくは周囲温度検出により間接的に検出することにより、電力変換器20を冷却する冷却システム3の冷却能力の低下を検出することに対し、本実施例は電力変換器20の筐体内温度を検出することで冷却システム3の冷却能力低下を推定し、ブレード10のピッチ角指令値を補正するものである。
【0085】
本構成により、電力変換器20の内部損失による発熱と、冷却による熱放出のアンバランスを直接検出することができるため、電力変換器20のトリップを回避でき、結果としてブレード10の過回転を防止することができる。
【0086】
以下、図11、図12を用いて本実施例の風力発電システムを説明する。
【0087】
図11には、本実施例の風力発電システムの電力変換器20および冷却システム3を示す。電力変換器20は、電力ケーブル25を介して発電機15へ、電力ケーブル26を介して変圧器30へ接続する。図示しないブレード、ハブ、シャフト、発電機、ナセル、タワー、変圧器、電力系統は実施例1で示した風力発電システム1と同様である。
【0088】
図12に本実施例の風力発電システムの詳細を示す。
【0089】
本実施例の風力発電システムは、電力変換器20が筺体10000を備え、該筺体内にコンバータ21、インバータ22を備える。また、本実施例の風力発電システムでは、温度センサ200を冷却システム3の近傍ではなく、筐体10000内に備える。
【0090】
外気温度上昇により、電力変換器20を冷却する冷却システム3の冷却能力が低下した場合、電力変換器20内の損失による発熱が冷却システム3により筺体10000の外部に引き抜かれる熱量を上回り、電力変換器20の盤内温度が上昇する。温度センサ200は、該盤内温度を検出し、冷却能力検出器3000に検出した温度Tambを出力する。
【0091】
温度センサ200は、筐体内の発熱と冷却による放熱のバランスを検出することが目的であるため、筐体上部に備えられることが望ましい。具体的には、筺体の高さ方向1/2以上高い場所に供えられることが望ましい。
【0092】
温度センサ200と風力発電システムのコントローラとの関係を図12に示す。
【0093】
温度センサ200で検出した筐体内温度Tambは、電力変換器コントローラ2000に入力され、電力変換器コントローラ2000は実施例1で説明した冷却能力検出器3000と同じ演算を実施し、送電電力低減幅ΔSをピッチ角補正器6000に出力する。
【0094】
本構成とすることにより、本実施例の風力発電システムでは電力変換器20筐体内の温度上昇を検出し、ブレード10のピッチ角を補正することができるため、電力変換器20への発電電力指令が減少し、電力変換器20の発熱が低減される。発熱が低減されることにより、電力変換器20の過熱を回避しながら電力変換器20の運転を継続できるため、ブレード10の過回転を回避することができる。
【0095】
以上のように、本実施例の風力発電システムは、外気温上昇によって電力変換器冷却能力が減少しても、風による入力エネルギーを制限することと、電力変換器の運転継続を実現することにより、ブレードの過回転を防止することができる。
【0096】
さらに、本実施例によれば電力変換器20の筺体内の温度を検出することにより、電力変換器20内部の損失による発熱と、電力変換器20の冷却システム3による冷却のアンバランスを検出することができるため、より確実に冷却システム3の冷却能力低下を検出でき、電力変換器20の運転継続を実現でき、結果としてブレード10の過回転を回避することができる。
【実施例3】
【0097】
本実施例では、冷却能力を電力変換器内部温度により検出する風力発電システム1の例を説明する。
【0098】
図13は、実施例1における風力発電システム1を示す構成図の例である。
【0099】
図1の風力発電システム1のうち、既に説明した図1に示された同一の符号を付された構成と、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。
【0100】
本実施例と、実施例2記載の風力発電システムとの差は、温度センサ200が電力変換器20の半導体素子の冷却フィンに設置される点である。
【0101】
水冷の電力変換器では、冷却フィンの熱時定数が短く、冷却システム3の冷却能力が低減したときに筐体内温度が検出可能なほど上昇するまえに半導体素子のジャンクション温度が許容値を超え、素子破壊を起こす可能性がある。冷却フィン温度を温度センサ200により検出し、該検出温度が所定温度t1より高くなったときにブレード10のピッチ角をフェザー側に調整することにより、半導体素子が過熱する前に電力変換器20の発電電力を低減することができるため、より確実に半導体素子を保護しながら電力変換器20の運転を継続させることができる。電力変換器20が運転を継続できるため、ブレード10には電力変換器20の発電電力によりブレード10の回転を減速させるトルクを発生でき、結果としてブレード10の過回転を防止することができる。
【0102】
以降、図13を用いて本実施例の風力発電システムの説明をする。
【0103】
図13には、風力発電システム1のエネルギー伝達部を示す。ここで、図示しないナセル60、タワー70は実施例1および2に記載のものと同一である。
【0104】
本実施例の電力変換器20は、半導体素子22qの冷却フィンに接する温度センサ200を備える。温度センサ200の出力Tambは、電力変換器コントローラ2000に入力される。該コントローラ内部では、実施例1記載の冷却能力検出器3000の演算と同じ演算を実施し、送電可能電力低減幅ΔS算出値をピッチ角補正器6000に出力する。
【0105】
ピッチ角補正器6000は、電力変換器コントローラ2000から出力された送電可能電力低減幅ΔSを入力とし、実施例1および実施例2のピッチ角補正器6000の演算と同様にピッチ角指令値を補正し、その出力であるピッチ角指令値φref2をピッチ角調整機12に送信する。
【0106】
上記構成により、本実施例の風力発電システム1は、温度センサ200により該半導体素子の冷却フィンの温度を検出し、冷却フィンの温度が所定値以上であればブレード10のピッチ角をフェザー側に補正して電力変換器20の発電電力を減少させ、電力変換器20の半導体素子の過熱を回避しながら電力変換器20の運転継続を可能とする。
【0107】
電力変換器20が運転を継続するので、ブレード10の回転を減速させる方向のトルクがかかるため、ブレード10の過回転を防止することができる。
【0108】
以上のように、本実施例の風力発電システムは、外気温上昇によって電力変換器冷却能力が減少しても、風による入力エネルギーを制限することと、電力変換器の運転継続を実現することにより、ブレードの過回転を防止することができる。
【0109】
さらに、本実施例によれば、半導体素子の冷却フィン検出温度を用いてピッチ角を補正できるため、半導体素子をより確実に過熱から保護しながら電力変換器20の運転を継続でき、結果としてブレード10の過回転を回避することができる。
【実施例4】
【0110】
本実施例では、冷却能力を高調波フィルタ内部温度により検出する風力発電システム1の例を説明する。
【0111】
図14は、実施例1における風力発電システム1を示す構成図の例である。
【0112】
図1の風力発電システム1のうち、既に説明した図1に示された同一の符号を付された構成と、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。
【0113】
本実施例と、実施例2または3記載の風力発電システムとの差は、温度センサ200が高調波フィルタ22filの冷却フィンに設置される点である。
【0114】
前記実施例3と同様に水冷の高調波フィルタでは、冷却フィンの熱時定数が短く、冷却システム3の冷却能力が低減したときに筐体内温度が検出可能なほど上昇するまえに高調波フィルタの温度が許容値を超え、絶縁破壊が起き、電力変換器20の破損につながる可能性がある。よって、高調波フィルタの冷却フィン温度を温度センサ200により検出し、該検出温度が所定温度t1より高くなったときにブレード10のピッチ角をフェザー側に調整することにより、フィルタ素子が過熱する前に電力変換器20の発電電力を低減することができるため、より確実にフィルタ素子を保護しながら電力変換器20の運転を継続させることができる。電力変換器20が運転を継続できるため、ブレード10には電力変換器20の発電電力によりブレード10の回転を減速させるトルクを発生でき、結果としてブレード10の過回転を防止することができる。
【0115】
以降、図14を用いて本実施例の風力発電システムの説明をする。
【0116】
図14には、風力発電システム1のエネルギー伝達部を示す。ここで、図示しないナセル60、タワー70は実施例1乃至3に記載のものと同一である。
【0117】
本実施例の電力変換器20は、高調波フィルタ22filの冷却フィンに接する温度センサ200を備える。なお、高調波フィルタ21filの冷却フィンに温度センサ200を備える構成としても良い。温度センサ200の出力Tambは、電力変換器コントローラ2000に入力される。該コントローラ内部では、実施例1記載の冷却能力検出器3000の演算と同じ演算を実施し、送電可能電力低減幅ΔS算出値をピッチ角補正器6000に出力する。
【0118】
ピッチ角補正器6000は、電力変換器コントローラ2000から出力された送電可能電力低減幅ΔSを入力とし、実施例1乃至3のピッチ角補正器6000の演算と同様にピッチ角指令値を補正し、その出力であるピッチ角指令値φref2をピッチ角調整機12に送信する。
【0119】
上記構成により、本実施例の風力発電システム1は、温度センサ200により高調波フィルタ22filの冷却フィンの温度を検出し、冷却フィンの温度が所定値以上であればブレード10のピッチ角をフェザー側に補正して電力変換器20の発電電力を減少させ、電力変換器20のフィルタ素子の過熱を回避しながら電力変換器20の運転継続を可能とする。
【0120】
電力変換器20が運転を継続するので、ブレード10の回転を減速させる方向のトルクがかかるため、ブレード10の過回転を防止することができる。
【0121】
以上のように、本実施例の風力発電システムは、外気温上昇によって電力変換器冷却能力が減少しても、風による入力エネルギーを制限することと、電力変換器の運転継続を実現することにより、ブレードの過回転を防止することができる。
【0122】
さらに、本実施例によれば、フィルタ素子の冷却フィン検出温度を用いてピッチ角を補正できるため、フィルタ素子をより確実に過熱から保護しながら電力変換器20の運転を継続でき、結果としてブレード10の過回転を回避することができる。
【実施例5】
【0123】
本実施例では、冷却能力を半導体素子および高調波フィルタの冷却フィン以外の冷却フィン内部温度により検出する風力発電システム1の例を説明する。
【0124】
図15は、実施例1における風力発電システム1を示す構成図の例である。
【0125】
図1の風力発電システム1のうち、既に説明した図1に示された同一の符号を付された構成と、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。
【0126】
本実施例と、実施例2乃至4記載の風力発電システムとの差は、温度センサ200が半導体素子および高調波フィルタの冷却フィン以外の冷却フィンに設置される点である。
【0127】
前記実施例3乃至4と比較して水冷の半導体素子および高調波フィルタより、冷却フィンの熱時定数は長いが、冷却システム3の冷却能力が低減したときに筐体内温度が検出可能なほど上昇するより早く、冷却能力の低減を検出することができ、さらに実施例3および4と比較して、温度センサ200を個々の半導体素子および高調波フィルタに取り付ける必要もないため、コストを削減できる。さらに、個々の半導体素子や高調波フィルタに温度センサ200を取り付ける実施例よりも、一元化して管理が可能である。そのことにより、半導体素子やフィルタ素子の温度が許容値を超える前に、前記冷却フィン内温度を温度センサ200により検出し、該検出温度が所定温度t1より高くなったときにブレード10のピッチ角をフェザー側に調整することにより、半導体素子やフィルタ素子が過熱する前に電力変換器20の発電電力を低減することができる。
【0128】
そして、より確実に半導体素子やフィルタ素子を保護しながら電力変換器20の運転を継続させることができる。電力変換器20が運転を継続できるため、ブレード10には電力変換器20の発電電力によりブレード10の回転を減速させるトルクを発生でき、結果としてブレード10の過回転を防止することができる。
【0129】
以降、図15を用いて本実施例の風力発電システムの説明をする。
【0130】
図15には、風力発電システム1のエネルギー伝達部を示す。ここで、図示しないナセル60、タワー70は実施例1乃至4に記載のものと同一である。
【0131】
本実施例の電力変換器20は、半導体素子および高調波フィルタの冷却フィン以外の冷却フィンに接する温度センサ200を備える。温度センサ200の出力Tambは、電力変換器コントローラ2000に入力される。該コントローラ内部では、実施例1記載の冷却能力検出器3000の演算と同じ演算を実施し、送電可能電力低減幅ΔS算出値をピッチ角補正器6000に出力する。
【0132】
ピッチ角補正器6000は、電力変換器コントローラ2000から出力された送電可能電力低減幅ΔSを入力とし、実施例1乃至4のピッチ角補正器6000の演算と同様にピッチ角指令値を補正し、その出力であるピッチ角指令値φref2をピッチ角調整機12に送信する。
【0133】
上記構成により、本実施例の風力発電システム1は、温度センサ200により半導体素子および高調波フィルタの冷却フィン以外の冷却フィン温度を検出し、冷却フィンの温度が所定値以上であればブレード10のピッチ角をフェザー側に補正して電力変換器20の発電電力を減少させ、電力変換器20の半導体素子およびフィルタ素子の過熱を回避しながら電力変換器20の運転継続を可能とする。
【0134】
電力変換器20が運転を継続するので、ブレード10の回転を減速させる方向のトルクがかかるため、ブレード10の過回転を防止することができる。
【0135】
以上のように、本実施例の風力発電システムは、外気温上昇によって電力変換器冷却能力が減少しても、風による入力エネルギーを制限することと、電力変換器の運転継続を実現することにより、ブレードの過回転を防止することができる。
【0136】
さらに、本実施例によれば、フィルタ素子の冷却フィン検出温度を用いてピッチ角を補正できるため、フィルタ素子をより確実に過熱から保護しながら電力変換器20の運転を継続でき、結果としてブレード10の過回転を回避することができる。
【0137】
図16に、本発明におけるブレード10のピッチ角を可変制御した前後の状態について例示する。
【0138】
まず、ブレード10を含む風車からどのように風力を得るかについて説明すると、ブレード10に風80が当たると、ブレード10の周りに相対的な空気の流れができ、この空気の流れは、ブレードの風上81および風下82で速さが異なるため、その速さの違いから圧力差が生じる。その圧力差が揚力83となりブレードは回転面84を軸として回転する。
【0139】
この回転速度を可変するには、前記ブレードの取り付け角度であるピッチ角を可変させることで、ブレードの周囲の空気の流速が変化し、揚力も変化する。
【0140】
具体的には、冷却機能の低下により、電力変換器の出力電圧可能量が減少している場合、図16(a)のピッチ角制御前のブレードのピッチ角86を、同図(b)のブレードのピッチ角87のように大きくし、ブレードに当たる風80の向きと平行に近づけるようにブレードを調整する。このことにより、ブレードに係る揚力を減少させ、回転力を減少させる。
【0141】
結果、前記送電可能電力に応じた前記ブレードからの入力エネルギーをコントロールし、前記ブレードの過回転および前記電力変換器の故障を防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0142】
1 風力発電システム
2 電力系統
3 冷却システム
10 ブレード
11 ハブ
12 ピッチ角調整器
13 シャフト
14 ギア
15 発電機
20 電力変換器
21 コンバータ
21up、21un、21vp、21vn、21wp、21wn、22up、22un、22vp、22vn、22wp、22wn 半導体スイッチング素子
21fil、22fil 高調波フィルタ
22 インバータ
22cdc 平滑コンデンサ
23 電磁接触器
24 電力変換器入気口
25、26 電力ケーブル
30 変圧器
40 熱交換器
41 ポンプ
50 冷却ファン
60 ナセル
70 タワー
80 風
81 風上
82 風下
83 揚力
84 回転面
85 ブレード角
86、87 ピッチ角
100、101 交流電圧センサ
102 直流電圧センサ
103、104 電流センサ
200 温度センサ
201 風速計
300、6002 加算器
1000 上位コントローラ
2000 電力変換器コントローラ
3000 冷却能力検出器
6000 ピッチ角補正器
6001 乗算器
10000 筺体
10001 回転速度指令演算器
10002 回転速度制御器
20001 有効電力制御器
20002 端子電圧制御器
20003 発電機電流制御器
20004 直流電圧制御器
20005 インバータ電流制御器
20006 電力算出器
20007、20008 PWM制御ブロック
20009、20010 位相検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピッチ角可変のブレードと機械的に接続された同期発電機から出力される可変周波数の発電電力を直流電力に変換するコンバータと、
前記コンバータの出力する直流電力を平滑化する平滑コンデンサと、
電力系統に電気的に接続され、前記コンバータから前記平滑コンデンサを介して前記直流電力を固定周波数の交流電力に変換し、前記電力系統に出力するインバータと、
前記ブレードのピッチ角の可変制御を行うためのピッチ角指令値を算出し、前記ピッチ角指令値から前記ピッチ角を機械的に調整する指令を行うピッチ角指令値算出手段と、
前記コンバータおよび前記インバータを冷却する冷却システムと、
を有する風力発電システムであって、
前記冷却システムの冷却能力、または前記コンバータおよび前記インバータを含む電力変換器の冷却状態を検出する冷却能力検出手段と、
前記ピッチ角指令値算出手段により算出された前記ピッチ角指令値を補正するピッチ角指令値補正手段とを備え、
前記冷却能力検出手段の検出結果に基づいて、前記ピッチ角指令値補正手段が前記ピッチ角指令値を補正し、前記補正されたピッチ角指令値に応じて、前記ブレードのピッチ角を可変制御する指令を行うことを特徴とする風力発電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の風力発電システムであって、
前記冷却能力検出手段は、
前記風力発電システム内または前記風力発電システム外の温度を検出する温度センサを備え、前記温度センサの検出結果に基づいて、前記電力変換器から前記電力系統に送電することができる電力の低減幅を推定することを特徴とする風力発電システム。
【請求項3】
請求項2に記載の風力発電システムであって、
前記冷却能力検出手段は、所定の温度を予め設定したデータテーブルをさらに備え、前記温度センサの検出した温度が、前記データテーブルで設定されている温度よりも高くなるにつれて、前記電力の低減幅を単調減少させて推定することを特徴とする風力発電システム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の風力発電システムであって、
前記ピッチ角指令値補正手段は、前記冷却能力検出手段から出力された前記電力の低減幅に基づいて、前記ピッチ角指令値の補正値を求め、前記ピッチ角指令値と前記補正値を加算することで、補正後のピッチ角指令値を出力することを特徴とする風力発電システム。
【請求項5】
請求項4に記載の風力発電システムであって、
前記ピッチ角指令値から前記ピッチ角を機械的に調整するピッチ角調整手段を備え、前記ピッチ角調整手段は、前記補正後のピッチ角指令値に基づき、前記ブレードのピッチ角を可変制御することを特徴とする風力発電システム。
【請求項6】
請求項2乃至5の何れかに記載の風力発電システムであって、
前記温度センサは、前記冷却システム内または前記冷却システム外に備えられ、前記冷却システム内または前記冷却システム外の気温を検出することを特徴とする風力発電システム。
【請求項7】
請求項2乃至5の何れかに記載の風力発電システムであって、
前記温度センサは、
前記電力変換器を収納する筺体内または筺体外に備えられ、前記筺体内または筺体外の気温を検出することを特徴とする風力発電システム。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の風力発電システムであって、
前記冷却システムは、前記同期発電機と前記コンバータ間、および前記インバータと前記電力系統間に設けられた高調波フィルタリアクトルをさらに冷却し、前記冷却能力検出手段は、前記冷却システムの前記高調波フィルタリアクトルに対する冷却能力または前記高調波フィルタリアクトルの冷却状態を検出することを特徴とする風力発電システム。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載の風力発電システムであって、
前記冷却システムは、前記コンバータまたは前記インバータに対し冷却風を用いて熱量を放出させる熱交換器と、前記冷却風を循環させるファンとを備えることを特徴とする風力発電システム。
【請求項10】
請求項1乃至8の何れかに記載の風力発電システムであって、
前記冷却システムは、前記電力変換器から熱量を受け取った冷却水の熱量を放出させる熱交換器と、冷却水を前記熱交換器と前記電力変換器間に送出するためポンプと、前記ポンプから送出された冷却水を前記熱交換器と前記電力変換器間に配水させるため冷却水配管と、前記冷却水配管から配水された冷却水を前記電力変換器内に循環させる冷却フィン水路とを備えることを特徴とする風力発電システム。
【請求項11】
請求項10に記載の風力発電システムにおいて、
前記冷却水配管内または前記冷却フィン水路内の冷却水の温度を前記温度センサにより検出することを特徴とする風力発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−66319(P2013−66319A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204055(P2011−204055)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】