説明

駆動回路、駆動装置及び画像形成装置

【課題】サイリスタを確実にオフ状態に維持できるのに十分な電位を印加することができ、かつ、そのような電位の印加が長時間続かないようにすることで、サイリスタの劣化を防ぐ。
【解決手段】複数のゲート駆動部(401、402)の各々は、対応する組に属する複数のサイリスタのゲートを駆動する期間(S1N=Low)には第1の電位(2V)を出力し、対応する組に属する複数のサイリスタのゲートを駆動しない期間(S1N=High)のうち、アノード駆動の立ち上がり部分には、第1の電位よりも高い第2の電位(5V)を出力し、対応する組に属する複数のサイリスタのゲートを駆動しない期間(S1N=High)のうち、アノード駆動の立ち上がり部分以外の期間には、第2の電位よりも低い第3の電位(3V)を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動回路、駆動装置及び画像形成装置に関し、特に、被駆動素子の群、例えば光源に発光素子アレイを用いた電子写真プリンタにおける発光素子の列、表示装置における表示装置の列を、選択的に且つサイクリックに駆動する駆動回路及び装置に関する。本発明はさらに、そのような駆動装置を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真プリンタなどの画像形成装置には、発光素子を多数配列させて露光部を形成したものがある。発光素子としては、発光ダイオード(LED)のほか、有機EL、発光サイリスタなどが用いられる。
【0003】
発光ダイオードを用いたものでは、駆動回路と発光素子とが1対1、もしくは1対N(N>1)で対応するように設けられ、前記したLEDのアノード・カソード間に電流を流すか否かにより、発光/非発光の状態を切り替えている。
【0004】
発光状態におけるLEDの光出力は前記駆動電流値により決まるものであり、前記電流を調整することで露光部への露光エネルギー量を調整するようにしている。
【0005】
また、前記駆動回路として、MOSトランジスタを飽和領域で動作させることで定電流特性をもたせ、LEDの定電流駆動を行う構成が公知である。
【0006】
発光サイリスタを用いたヘッドにおいては前記駆動回路の内部にアノード駆動回路とゲート駆動回路とを備えている。
【0007】
発光サイリスタはP型、N型半導体をPNPN状に積層し、最上層からみて第1層のP型層をアノード端子、第2層のN型層をゲート端子、第4層のN型層をカソード端子とするNゲート発光サイリスタの構成であり、発光サイリスタを用いる光プリントヘッド用ドライバICにおいては、発光サイリスタの駆動のためアノード駆動回路とゲート駆動回路とを備えていた、発光サイリスタはNゲート構成であり、隣接する複数の発光サイリスタで群を形成し、そのアノード端子同士が接続され、異なる群に属し、互いに対応するゲート端子同士が接続されて、発光サイリスタを時分割に駆動するようにしていた(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−109459号公報
【特許文献2】特開2007−81081号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】A.S.Grove著、垂井監訳、「半導体デバイスの基礎」、オーム社、pp.256〜260.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記の時分割駆動において、発光を行うべき発光サイリスタのゲート端子はLowレベル(「低」レベル)とされ、非発光とされる発光サイリスタのゲート端子はHighレベル(「高」レベル)とされる。
発光サイリスタを駆動するドライバICはCMOSプロセスを用いて製造されており、その電源電圧は5Vである。従来構成のゲート駆動回路においては、前記Highレベルは電源電位に略等しい5Vであるが、発光サイリスタにおいては耐電圧が7V程度しか確保することができず、前記電源電圧に対して耐電圧が十分でない。このため素子によっては前記Highレベル印加電圧により発光サイリスタが破壊されてしまったり、Highレベルが電圧が長時間印加されることで発光サイリスタが劣化してしまうことがあった。
【0011】
以下、この現象をさらに詳しく説明する。例えば、前記発光サイリスタの第2層のN型層と第3層であるP型層との間には非点灯時において逆方向に電圧印加されることになるが、前記PN接合の逆方向ブレークダウン電圧は約15Vであることが知られている。
【0012】
上記ブレークダウン電圧をもとに発光サイリスタのゲート・カソード間の耐圧を求めてみよう。PNPN構造の発光サイリスタにおいて、第2層であるN型層、第3層であるP型層、第4層であるN型層とで等価的に形成されるNPNバイポーラトランジスタを考えると、発光サイリスタのゲート・カソード間の耐圧はベース端子を開放としたNPNバイポーラトランジスタのコレクタ・エミッタ間の耐圧Vceo(max)に等しく、上記の非特許文献1によれば次式で与えられることが知られている。
Vceo(max)=BV/(β)1/n
上記の式で、BVは前記したPN接合の逆方向ブレークダウン電圧、
βはNPNバイポーラトランジスタの電流増幅率、
nは実験的に求まる定数であって、n=3〜6である。
【0013】
ここで数値例として、GaAs材料での実験値n=6を想定し、電流増幅率β=50、PN接合の逆方向ブレークダウン電圧BV=15Vとして計算すると、
Vceo(max)=15/(50)1/6=7.8V
となる。
【0014】
この値は、駆動回路の一般的な電源電圧である5Vでの動作を考えると耐圧として余裕があるとは言えず、ものによっては素子のブレークダウン破壊や、前記5V電圧が長時間印加され続けることによる発光サイリスタの劣化(発光光量の変動や、前記電流増幅率が低下することによるスイッチング速度の低下)など不具合症状を呈することになって好ましくない。
【0015】
上記計算例を参照して明らかなように、発光サイリスタのスイッチング速度を向上させようとするとき、前記バイポーラトランジスタの電流増幅率を高くする必要があるが、そのためには、前記NPNトランジスタのベース幅を小さくすることを要し、前記したPNPN構造の発光サイリスタにおいて第3層のP層の厚さを薄く設定することになる。
【0016】
ところが、この場合にはNPNトランジスタの電流増幅率βは大きくできるものの、前式のように発光サイリスタのゲート・カソード間の耐圧Vceo(max)が低下してしまう。
また逆に、発光サイリスタのゲート・カソード間の耐圧を高めようとして、前記したPNPN構造の発光サイリスタにおいて第3層のP層の厚さを厚く設定すると、前記NPNトランジスタのベース幅を大きくすることになって、その電流増幅率βは小さくなり、スイッチング速度も低下してしまい好ましくない。
【0017】
このようにスイッチング速度と前記した耐電圧とは背反した条件にあって、単純に耐電圧を増加させることができないため、その解決が切望されていた。
発光サイリスタ以外の三端子スイッチ素子を用いる場合にも同様の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は
アレイを構成する被駆動素子とそれを駆動する駆動素子列とを備える駆動回路において、
前記被駆動素子は、第1、第2、及び第3の端子を有し、前記第3の端子に印加する電圧又は前記制御端子に流す電流により、前記第1及び第2端子間の導通を制御可能な三端子スイッチ素子であり、
前記三端子スイッチ素子がアレイ状に配列されて、互いに隣接配置される複数の三端子スイッチ素子毎に群を形成し、
同じ群に属する複数の前記三端子スイッチ素子の前記第1の端子が互いに接続され、
異なる群の互いに対応する複数の前記三端子スイッチ素子によりそれぞれ三端子スイッチ素子の組が構成され、同じ組に属する複数の前記三端子スイッチ素子の前記第3の端子がそれぞれ電気的接続手段を介して、それぞれの組に対応して設けられた複数の共通母線に接続され、
前記三端子スイッチ素子の前記第3の端子がグランドに接続されており、
それぞれ前記複数の群に対応して設けられ、各々対応する群の複数の前記三端子スイッチ素子の前記第1の端子を駆動するための複数の第1の駆動部と、
それぞれ前記複数の組に対応して設けられ、各々対応する組の複数の前記三端子スイッチ素子の前記第3の端子を、前記対応する共通母線及び対応する電気的接続手段を介して駆動するための複数の第2の駆動部とを有し、
前記複数の第1の駆動部が互いに異なるタイミングで、対応する群に属する複数の前記三端子スイッチ素子の前記第1の端子を駆動し、
前記複数の第2の駆動部が互いに異なる期間に、対応する組に属する複数の前記三端子スイッチ素子の前記第3の端子を駆動し、
前記複数の第2の駆動部の各々は、
対応する組に属する複数の前記三端子スイッチ素子の前記第3の端子を駆動する期間には第1の電位を出力し、
対応する組に属する複数の前記三端子スイッチ素子の前記第3の端子を駆動しない期間のうち、前記第1の駆動部により前記第1の端子が駆動されるタイミングの最初の部分には、前記第1の電位とは異なる第2の電位を出力し、
対応する組に属する複数の前記三端子スイッチ素子の前記第3の端子を駆動しない期間のうち、前記第1の駆動部により前記第1の端子が駆動されるタイミングの最初の部分以外の期間には、前記第1の電位及び前記第2の電位と異なる第3の電位を出力する
ことを特徴とする駆動回路を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、前記複数の第2の駆動部の各々が、対応する組に属する三端子スイッチ素子の第3の端子を駆動しない(ターンオンさせない)期間のうち、第1の駆動部により第1の端子が駆動されるタイミングの最初の部分と、該タイミング以外とでは異なる電位を出力するので、三端子スイッチ素子を確実にオフ状態に維持できるのに十分な電位を印加することができ、かつ、そのような電位の印加が長時間続かないようにすることで、三端子スイッチ素子の劣化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を電子写真プリンタに適用した場合におけるプリンタ制御回路のブロック図である。
【図2】本発明を適用する光プリントヘッドの構成を示すブロック図である。
【図3】(a)〜(d)は図2で示した発光サイリスタ(101〜108)の構成を模式的に示す図であり、図3(a)は回路シンボルを示し、発光サイリスタ101はアノード端子A、カソード端子K、ゲート端子Gの三つの端子を備えている。
【図4】前記の発光素子や駆動素子を複合してなる複合チップをプリント配線板上に配列して構成した光プリントヘッド基板ユニットの斜視図である。
【図5】光プリントヘッド19の構成を概略的に示す断面図である。
【図6】図2のドライバICの構成例を示す回路図である。
【図7】図6の補正メモリ回路(MEM2)117の構成例を示す回路図である。
【図8】図6のマルチプレクサ回路(MUX2ブロック)118の構成例を示す回路図である。
【図9】図6のアノード駆動回路(DRVブロック)119を示す回路図である。
【図10】図6のメモリ制御回路(CTRL1)115の構成を示す回路図である。
【図11】図6のマルチプレクサ制御回路(CTRL2)116の構成を示す回路図である。
【図12】図6の制御電圧発生回路(ADJ)122の構成例を示す回路図である。
【図13】(a)及び(b)は図6に示した駆動用バッファ回路401、402の構成を示す図であり、図13(a)はバッファ回路401の回路図シンボルであり、図13(b)はその回路構成を示す回路図である。
【図14】プリンタの電源投入後に、実施の形態の構成の光プリントヘッドに対して行われる補正データ転送処理と、その後に行われる印刷データ転送のようすを示すタイムチャートである。
【図15】図14のA部とB部を、ドライバICを1チップのみに簡略化した場合における補正データ転送の詳細波形を示すタイムチャートである。
【図16】図14のC部とD部を、ドライバICを1チップのみに簡略化した場合における補正データ転送の詳細波形を示すタイムチャートである。
【図17】図14のE部とF部を、ドライバICを1チップのみに簡略化した場合における補正データ転送の詳細波形を示すタイムチャートである。
【図18】図14のG部とH部を、ドライバICを1チップのみに簡略化した場合における補正データ転送の詳細波形を示すタイムチャートである。
【図19】(a)〜(e)は、図6において示した発光サイリスタのゲート駆動バッファ回路401、402の動作を説明するための図であり、図19(a)は発光サイリスタ102のシンボルと各端子の電圧、電流の記号を示し、図19(b)はバッファ回路401とそれに接続される発光サイリスタ102の要部を抜き出して示し、図19(c)〜(e)は、各部の波形図である。
【図20】図13(b)に示したバッファ回路401の動作を説明するタイムチャートである。
【図21】(a)は、図2の構成のうち、隣接する発光サイリスタ2素子(101、102)のみに簡略化して描いたモデル図、(b)は図2に示した発光サイリスタの実施の形態1における駆動状況を示すタイムチャートである。
【図22】(a)及び(b)は本発明の実施の形態2で用いられる駆動用バッファ501の構成を示す図であり、図22(a)はバッファ回路501の回路図シンボルであり、図22(b)はその回路構成を示す回路図である。
【図23】図22(b)に示したバッファ回路501の動作を説明するタイムチャートである。
【図24】(a)は、図2の構成のうち、隣接する発光サイリスタ2素子(101、102)のみに簡略化して描いたモデル図、(b)は図2に示した発光サイリスタの、実施の形態2における駆動状況を示すタイムチャートである。
【図25】実施の形態1又は2の駆動回路を含む光プリントヘッドを用いた画像形成装置を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の説明において、個々の発光素子の発光により感光ドラム上に形成される静電潜像、もしくは現像後、あるいは印刷媒体上に転写されたトナー像の各々(各画素)をドットと称することがある。同様に、前記ドットと対応する個々の発光素子それぞれもドットと呼ぶことがある。また、信号の正論理、負論理の別を明確にする必要のある場合には、信号名末尾に一Pを付して正論理信号であることを、信号名末尾に一Nを付して負論理信号であることを示す。さらに、信号と該信号の入出力のための端子とに同一の符号を付して説明する場合がある。
【0022】
実施の形態1.
(プリンタ制御部の構成)
電子写真プリンタにおいては、帯電した感光体ドラムをプリント情報に応じて選択的に光照射して静電潜像を形成し、該静電潜増にトナーを付着させる現像を行ってトナー像を形成し、該トナー像を用紙に転写し、定着させるようになっている。
【0023】
図1は本発明を電子写真プリンタに適用した場合におけるプリンタ制御回路のブロック図である。
【0024】
図1において、印刷制御部1は、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、入出力ポート、タイマ等によって構成され、プリンタの印刷部の内部に配設され、図示しない画像処理部からの制御信号SG1、ビデオ信号(ドットマップデータを一次元的に配列したもの)SG2等によってプリンタ全体をシーケンス制御し、印刷動作を行う。
【0025】
印刷制御部1は、上記制御信号SG1によって印刷指示を受信すると、先ず定着器温度センサ23によってヒータ22aを内蔵した定着器22が使用可能な温度範囲にあるか否かを検出し、該温度範囲になければヒータ22aに通電し、使用可能な温度まで定着器22を加熱する。次に、ドライバ2を介して現像・転写プロセス用モータ(PM)3を回転させ、同時にチャージ信号SGCによって帯電用電圧電源25をオンにし、現像器27の帯電を行う。
【0026】
そして、セットされている図示しない用紙の有無および種類が用紙残量センサ8、用紙サイズセンサ9によって検出され、該用紙に合った用紙送りが開始される。ここで、用紙送りモータ(PM)5には遊星ギア機構が接続されており、ドライバ4を介して双方向に回転させることが可能となっており、モータの回転方向を変えることにより、プリンタ内部の異なる紙送りローラを選択的に駆動することができる構成としている。
【0027】
1ページの印刷開始毎に、用紙送りモータ(PM)5を最初に逆転させて、セットされた用紙を用紙吸入口センサ6が検知するまで、予め設定された量だけ送る。続いて、正回転させて用紙をプリンタ内部の印刷機構内に搬送する。
【0028】
印刷制御部1は、用紙が印刷可能な位置まで到達した時点において、図示しない画像処理部に対してタイミング信号SG3(主走査同期信号、副走査同期信号を含む)を送信し、ビデオ信号SG2を受信する。上位コントローラにおいてページ毎に編集され、印刷制御部1に受信されたビデオ信号SG2は、印刷データ信号HD−DATA3〜0として光プリントヘッド19に転送される。光プリントヘッド19は印刷ドットに対応する発光サイリスタを多数設け、略直線状に配列したものである。
【0029】
そして、印刷制御部1は1ライン分のビデオ信号を受信すると、光プリントヘッド19にラッチ信号HD−LOADを送信し、印刷データ信号HD−DATA3〜0を光プリントヘッド19内に保持させる。また、印刷制御部1は上位コントローラから次のビデオ信号SG2を受信している最中においても、光プリントヘッド19に保持した印刷データ信号HD−DATA3〜0に応じた印刷を行なうことができる。
なお、HD一CLKは印刷データ信号HD−DATA3〜0を光プリントヘッド19に送信するためのクロック信号である。
【0030】
ビデオ信号SG2の送受信は、印刷ライン毎に行われる。光プリントヘッド19からの発光はマイナス電位に帯電させられた図示しない感光体ドラム上に照射される。これにより、印刷される情報は感光体ドラムにおいて電位の上昇したドットとして潜像化される。そして、現像部27において、マイナス電位に帯電させられた画像形成用のトナーが、電気的な吸引力によって各ドットに吸引され、トナー像が現像形成される。
【0031】
その後、該トナー像は転写部28に送られ、一方、転写信号SG4によってプラス電位の転写用高圧電源26がオンになり、転写器28は感光体ドラムと転写器28との間隔を通過する用紙上にトナー像を転写する。
【0032】
転写されたトナー像を有する用紙は、ヒータ22aを内蔵する定着器22に当接して搬送され、該定着器22の熱によって前記トナー像は用紙に定着される。この定着された画像を有する用紙は、更に搬送されてプリンタの印刷機構から用紙排出口センサ7を通過してプリンタ外部に排出される。
【0033】
印刷制御部1は用紙サイズセンサ9、用紙吸入口センサ6による用紙の検知に対応して、用紙が転写器28を通過している間だけ転写用高圧電源26からの電圧を転写器28に印加する。そして、印刷が終了し、用紙が用紙排出口センサ7を通過すると、帯電用高圧電源25による現像器27への電圧の印加を終了し、同時に現像・転写プロセス用モータ3の回転を停止させる。
以後、上記の動作を繰り返す。
【0034】
(光プリントヘッドの構成)
次に、光プリントヘッド19について説明する。図2は本発明を適用する光プリントヘッドの構成の一部を示すブロック図である。
【0035】
本実施の形態の説明においては、一例としてA4サイズの用紙に1インチ当たり600ドットの解像度で印刷可能な光プリントヘッドについてとりあげ、その具体的な構成を説明する。
【0036】
本例では、発光素子として発光サイリスタ(以下単に「サイリスタ」ということがある)を用い、その総数は4992個であり、これを構成するために、192個のサイリスタ素子を配列したサイリスタアレイチップを設け、該サイリスタアレイチップを上面に貼付したドライバICを図示しないプリント基板上に26個配列している。図2には、26個のドライバIC及び26個のサイリスタアレイチップのうち、それぞれ2個、即ちドライバIC IC1及びIC2,並びにサイリスタアレイチップCHP1及びCHP2(それぞれは線で囲んで示す)のみが示されている。
【0037】
サイリスタアレイチップには配列された各々192個のサイリスタ素子を含み、サイリスタは配列され、カソード端子はグランドに接続され、互いに隣接する複数のサイリスタ、例えば互いに隣接する2つのサイリスタ(例えばサイリスタ101と102、103と104など)で群を構成し、同じ群のサイリスタはアノード端子同士が接続されてドライバICの、それぞれ群に対応して設けられた駆動出力端子(DO96、DO01など)と、薄膜配線等の手法を用いて接続される。
【0038】
サイリスタアレイCHP1、CHP2などを駆動するドライバIC IC1、IC2などは、互いに同一回路により構成され、隣接するドライバICとカスケードに接続されている。
【0039】
サイリスタ素子101〜108は、サイリスタアレイ(CHP1、CHP2など)の各々に192個設けられ、互いに列を成すように配置されている。
【0040】
図2に示す構成においては、印刷データを2つの組に時分割して転送、駆動する。例えば、隣接するサイリスタのうちでアレイの一端(図2で下端)側から数えて奇数番目のもの(104、102など)で一つの組(第1の組)を構成し、偶数番目のサイリスタ(103、101など)でもう一つの組(第2の組)を構成し、第1の組のサイリスタに対して同時にデータを転送して印刷駆動し、ついで第2の組のサイリスタに対して同時にデータを転送して印刷駆動する動作を交互に行う、即ち第1の組と第2の組を時分割駆動する。
【0041】
図2において4本の信号線を介して供給される印刷データ信号(HD−DATA3〜0)がドライバIC IC1、IC2などをカスケード接続したものに供給され(カスケード接続の一端側から入力され)、隣接するサイリスタ8素子(8画素)のうち、奇数番目のサイリスタの4画素分のデータあるいは偶数番目のサイリスタの4画素分のデータをクロック信号毎に同時に送出することができる。このため、印刷制御部1から出力される印刷データ信号HD−DATA3〜0はクロック信号HD−CLKと共に光プリントヘッド19に入力され、前記した4992ドット分のビットデータのうち、奇数番目のデータと偶数番目のデータとがそれぞれ順に後述するフリップフロップ回路からなるシフトレジスタ中を順次転送される。
【0042】
次に、ラッチ信号HD−LOAD信号が光プリントヘッド19に入力され、上記ビットデータは前記フリップフロップ回路に対応して設けられたラッチ回路にラッチされる。
続いて、印刷駆動信号(ストローブ信号)HD−STB−Nが入力されると、サイリスタ素子のうち、印刷データがHighレベル(「高」レベル)であるドットデータに対応するものが点灯される。
なお、VDDは電源、GNDはグランドを示し、HD−HSYNC−Nは前記した時分割駆動において、奇数番目のサイリスタ駆動であるか偶数番目のサイリスタ駆動であるかの初期状態を設定するための同期信号、VREFはサイリスタ駆動のための駆動電流値を指令するための基準電圧であって、光プリントヘッド内に設けられた図示しない基準電圧発生回路により発生される。
【0043】
また、後に詳しく述べるように、ドライバIC(IC1〜IC26)の内部には、後述するアノード駆動回路(アノード駆動部)及びゲート駆動回路(ゲート駆動部)と、アノード駆動回路に駆動電流が一定となる様に指令電圧を発する制御電圧発生回路とを備えており、制御電圧発生回路へ入力する基準電圧をVREFもしくはVrefとしている。
【0044】
それに加えて、ドライバIC(IC1〜IC26)には前記サイリスタのゲート駆動のためのゲート駆動端子G1、G2を備えており、端子G1は奇数番目のサイリスタ(104、102など)のゲート端子にそれぞれ接続され、端子G2は偶数番目のサイリスタ(103、101など)のゲート端子にそれぞれ接続されている。
【0045】
奇数番目のサイリスタのゲート端子は一つの共通母線(第1の共通母線)431に接続され、偶数番目のサイリスタのゲート端子はもう一つの共通母線(第2の共通母線)432に接続されている。
すべてのサイリスタのカソード端子は、第3の共通母線433に接続されている。
【0046】
共通母線431、432は図2においてはサイリスタアレイCHP1、CHP2等の内部にあるかのように描かれているが、これは作図上の制約によるものであって、ドライバIC(IC1〜IC26)の内部に予め設けておくことが好ましい。
【0047】
後述するようにドライバIC上にサイリスタアレイ部(CHP1等)を貼付し、発光素子を形成したのち、薄膜配線にて両者を接続するのであるが、このようにすることで、ドライバICとサイリスタアレイ部との間の薄膜配線において、サイリスタのアノード配線とゲート配線相互の交差を未然に防止して、単層での配線を可能とすることができ、配線形成に要する工程を簡略化できる利点がある。
【0048】
同様に、図2におけるサイリスタのカソード共通配線433もまたドライバIC上に設けることが好ましいが、その場合には、共通配線433とドライバICのグランドパッド(GND)とをドライバICの製造工程において予め接続しておき、ドライバIC上のグランド端子パッド(GND)を中継して図示しないプリント配線板の配線パッドとボンディングワイヤーにて接続することが好ましい。
【0049】
図2において明らかなように、光プリントヘッド19には多数のサイリスタアレイが搭載されるため、これらの各素子に半導体製造工程に起因する特性バラツキが生じると、各サイリスタアレイ間および同一サイリスタアレイ内の各ドット間においてさえも、その発光パワーにムラを生じ、感光ドラムへの露光エネルギー量が異なる結果となる。
【0050】
この様な現象は、感光ドラムを現像するときのドット面積の変動となって現れ、印刷濃度にムラを生じる原因となるため望ましくない。そのため、サイリスタの各ドットの駆動電流を、発光パワーが一定になるように調整することが行われることが通例であり、図2のIC1〜IC26においても、後述するようにそのための回路手段を備えている。
【0051】
なお、図2においては複数のサイリスタのゲート端子同士を共通母線431、432に接続し、共通母線431、432をゲート駆動端子出力G1、G2に接続する構成としているが、共通母線431、432と各サイリスタのゲート端子との間に個別に電気的接続手段を介して接続する構成も可能であって、前記した電気的接続手段としての単なる導体による配線のほかにも、各サイリスタの間の電気的干渉を防止することを目的に、前記電気的接続手段として抵抗を介する接続手段や、バッファ回路を設ける構成や、互いに逆方向に並列接続したダイオード回路を設ける構成を採用することも可能である。
【0052】
(発光サイリスタの構造)
図3(a)〜(d)は図2で示した発光サイリスタ(101〜108)の構成を模式的に示す図である。図3(a)は回路シンボルを示し、発光サイリスタ101はアノード端子A、カソード端子K、ゲート端子Gの三つの端子を備えている。
【0053】
図3(b)は図3(a)にて示した発光サイリスタの断面構造を示す図である。本図にて示す発光サイリスタはGaAsウェハー基材(図示せず)を用い、公知のMO−CVD(Metal Organic−Chemical Vaper Dopesition)法により前記基材の上層に所定の結晶をエピタキシャル成長させることで作成される。
【0054】
まず、所定の犠牲層やバッファ層(図示しない)をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs材料にN型不純物を含ませたN型層133と、P型不純物を含ませ成層したP型層132と、N型不純物を含ませたN型層131とを順に積層させたNPNの3層構造からなるウェハーを構成する。
【0055】
次いで、最上層のN型層の所要部に公知のフォトリソグラフィー法を用いて選択的にP型不純物領域134を形成する。
【0056】
さらに、公知のドライエッチング法により溝部を形成することで素子分離を行う。
また、前記エッチングの過程でサイリスタの最下層となるN型領域の一部を露出させ、該領域に金属配線を形成してカソード電極(K)を形成する。
それと同時にP型領域134とN型領域131にもそれぞれアノード電極(A)とゲート電極(G)が形成される。
【0057】
図3(c)は発光サイリスタの別の形態を示す。本構成においては、GaAsウェハー基材を用い、公知のMO−CVD法により前記基材の上層に所定の結晶をエピタキシャル成長させることで作成される。
まず、所定の犠牲層やバッファ層(図示しない)をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs材料にN型不純物を含ませたN型層133と、P型不純物を含ませ成層したP型層132と、N型不純物を含ませたN型層131と、P型不純物を含ませ成層したP型層135を順に積層させたPNPNの4層構造のウェハーを構成する。
【0058】
さらに、公知のドライエッチチング法を用いて溝部を形成することで素子分離を行う。
また、前記エッチングの過程でサイリスタの最下層となるN型領域の一部を露出させ、該領域に金属配線を形成してカソード電極(K)を形成する。
同様に、最上層となるP型領域の一部を露出させ、該領域に金属配線を形成してアノード電極(A)を形成する。
それと同時にN型領域131にゲート電極(G)が形成される。
【0059】
図3(d)は図3(b)、(c)と対比させて描いた発光サイリスタの等価回路である。
発光サイリスタはPNPトランジスタ141とNPNトランジスタ142とからなり、PNPトランジスタ141のエミッタがサイリスタのアノード端子Aに相当し、PNPトランジスタ141のベースがサイリスタのゲート端子Gに対応しており、該端子はNPNトランジスタ142のコレクタとも接続される。
また、PNPトランジスタ141のコレクタはNPNトランジスタ142のベースと接続され、NPNトランジスタ142のエミッタはサイリスタのカソード端子Kに相当している。
【0060】
なお、図3(a)〜(d)に示したサイリスタではGaAsウェハー基材上にAlGaAs層を構成したものであるが、これに限定されるものではなく、GaP、GaAsP、AlGaInPといった材料を用いるものであってもよく、さらにはサファイヤ基板上にGaNやAlGaN、InGaNといった材料を成膜したものであっても良い。
【0061】
前述したサイリスタ素子は、たとえば特許文献2に開示されているエピタキシャルボンディング法を用いてドライバIC(図2でIC1〜IC26等として示したもの)を配列したウェハーと接着され、公知のエッチング法により不要箇所が除去されるとともに、サイリスタ素子の端子箇所が露出させられる。
【0062】
ついで、サイリスタの各端子形成の予定箇所と前記ドライバICの端子部とがフォトリソグラフィー法を用いて形成された薄膜配線を用いて接続される。さらに公知のダイシング法を用いて前記ドライバIC部を複数のチップに分離することで後述する発光素子・駆動素子からなる複合チップが形成される。
【0063】
(ヘッド基板ユニットの斜視図)
図4は前記の発光素子や駆動素子を複合してなる複合チップをプリント配線板上に配列して構成した光プリントヘッド基板ユニットの斜視図である。
図4において、451はプリント配線板、452は図3において示したICチップ(IC1〜IC26等)であり、453は該素子上に配置されたサイリスタアレイ(CHP1〜CHP26等)を示しており、ICチップ452とサイリスタアレイ453の間は前述した薄膜配線(図示せず)を用いて接続され、ICチップ452とサイリスタアレイ453とで前記した発光素子・駆動素子からなる複合チップを形成している。
【0064】
ドライバIC(IC1等)の各端子やサイリスタのカソード端子とプリント配線板451上の図示しない配線パッドとはボンディングワイヤー454で接続されている。
【0065】
(ヘッドの断面図)
図5は光プリントヘッド19の構成を概略的に示す断面図である。
図5に示されるように、光プリントヘッド19はベース部材461と、ベース部材461にて固定されたプリント配線板451と、柱状の光学素子を多数配列してなるロッドレンズアレイ462と、ロッドレンズアレイ462を保持するホルダ463と、プリント配線板451とベース部材461、ホルダ463とを固定するクランプ部材464、465とで構成される。
なお、452は前述した駆動回路等が集積されたICチップであり、453は前記ICチップ上に配置されたサイリスタ列を示す。
【0066】
(ドライバICのブロック図)
図6は図2のドライバICの構成例を示す。
プルアップ抵抗111は、ストローブ端子(STB)と電源VDDとの間に接続されている。
112、113はインバータ回路、114はNAND回路である。
【0067】
FFA1〜FFA25、FFB1〜FFB25、FFC1〜FFC25、FFD1〜FFD25はフリップフロップ回路であって、これらでシフトレジスタを構成している。
LTA1〜LTD1、・・・、LTA24〜LTD24はラッチ素子であって、これら全体でラッチ回路を構成している。
図6、補正メモリ回路(MEM2ブロック)117及び補正メモリ回路(MEMブロック)121には、サイリスタの光量ばらつき補正の補正データ(ドット補正データ)やサイリスタアレイ毎の光量補正データ(チップ補正データ)もしくはドライバIC毎の固有データが格納される。
【0068】
マルチプレクサ回路(MUX2ブロック)118は、補正メモリ回路(MEM2)117から出力されるドット補正データにおいて、隣接した発光素子ドットのうち、奇数番目ドットの補正データと偶数番目ドットの補正データとを切り替えるために設けられている。119はアノード駆動回路(DRVブロック)、120はセレクタ回路(SELブロック)である。メモリ制御回路(CTRL1ブロック)115は、前記補正データを補正メモリ回路(MEM2)117に対してデータ書き込みするときの書き込み指令信号(E1、E2、W3〜W0)を発生する。マルチプレクサ制御回路(CTRL2ブロック)116は、マルチプレクサ回路(MUX2)118に対する奇数ドットの補正データと偶数ドットの補正データのデータ選択信号S1N、S2Nを発生する。データ選択信号S1N、S2Nは、上記の組(ゲート端子がそれぞれ共通母線431、432に接続されたサイリスタで構成される)を選択するものであるので、組選択信号とも呼ばれる。
【0069】
データ選択信号S1N、S2Nはまたバッファ回路401、402の入力端子Aとも接続され、バッファ回路401、402の入力端子SはNAND回路114の出力と接続され、出力Yは前述したドライバICの端子G1、G2に接続されて、図2に示したサイリスタ102や101等々のゲート端子と接続される。
【0070】
制御電圧発生回路(ADJブロック)122は、VREF端子より入力された基準電圧値Vrefを受けて、アノード駆動のための制御電圧Vを発生させる。前記基準電圧値Vrefは図示しないレギュレータ回路等により発生させられるものであり、サイリスタの全点灯駆動時のように電源電圧が一瞬降下するような状況においても、基準電圧Vrefを所定値のままに維持することができ、アノード電流の低下は発生しない。
【0071】
フリップフロップ回路FFA1〜FFA25はカスケード接続されており、ドライバICのデータ入力端子DATAI0はFFA1のデータ入力端子Dに接続され、FFA24とFFA25のデータ出力はセレクタ回路(SEL)120へ入力され、その出力端子Y0はドライバICのデータ出力端子DATAO0に接続されている。
同様に、フリップフロップ回路FFB1〜FFB25、FFC1〜FFC25、FFD1〜FFD25もそれぞれカスケード接続されており、ドライバICのデータ入力端子DATAI1、DATAI2、DATAI3はFFB1、FFC1、FFD1のデータ入力端子Dにそれぞれ接続される。
【0072】
FFB24とFFB25、FFC24とFFC25、FFD24とFFD25の出力もセレクタ回路(SEL)120に接続され、各々の出力はドライバICのデータ出力端子DATAO1、DATAO2、DATAO3にそれぞれ接続されている。
従って、フリップフロップ回路FFA1〜FFA25、FFB1〜FFB25、FFC1〜FFC25、FFD1〜FFD25は、それぞれ25段のシフトレジスタ回路を構成しており、セレクタ回路SELによりシフトレジスタのシフト段数を24段と25段とに切り替えることができる。
【0073】
これによりドライバICのデータ出力端子DATAO0〜DATAO3は、次段のドライバICのデータ入力端子DATAl0〜DATAl3にそれぞれ接続されることになる。従って、ドライバIC IC1〜IC26の全てで構成されるシフトレジスタは、印刷制御部1から初段のドライバIC IC1に入力されるデータ信号HD−DATA3〜0をクロック信号に同期してシフトさせる24×26段あるいは25×26段のシフトレジスタ回路を構成している。
【0074】
ストローブ端子STBに入力される負論理のストローブ信号HD−STB−Nはインバータ回路112を介して正論理化されてSTB−P信号が生成され、NAND回路114の一方の入力端子に接続される。
また、ロード端子LOADより入力されるラッチ信号LOAD−Pもまたインバータ回路113を介してNAND回路114の他方の入力端子に接続され、アノード駆動回路(DRV)119に対する駆動のオン、オフを制御する信号DRVON−Pが生成される。
【0075】
(補正メモリ回路(MEM2)117の構成)
図7は図6の補正メモリ回路(MEM2)117の構成例を示す。
なお、本実施の形態の構成においては、発光素子の光量補正のためのドット補正データは4ビットであり、その駆動電流をドット毎に16段階に調整することで光量補正を行うことができる。
【0076】
図7には隣接する2個(2ドット)のメモリセル回路を示してあり、それぞれを破線にて囲まれる領域151、152として区分けして示している。
左側の回路151は奇数番目のドット(例えばドットNo.1)の補正データを格納するものであり、右側の回路152は偶数番目のドット(例えばドットNo.2)の補正データを格納するためのものである。
補正メモリ回路(MEM2)117は、バッファ回路181を備え、それと相補なデータ信号を発生するために設けられたインバータ182と、補正メモリセルを構成するインバータ153〜160と、NMOSトランジスタ161〜176とを備えている。
【0077】
また、補正メモリ回路(MEM2)117は、補正データ入力端子Dと、奇数番目ドットの側のデータ書き込みを許可するイネーブル信号E1と、偶数番目ドットの側のデータ書き込みを許可するイネーブル信号E2と、メモリセル選択端子W0〜W3と、奇数番目ドットに関する補正データ出力端子ODD0〜ODD3と、偶数番目ドットに関する補正データ出力端子EVN0〜EVN3とを備えている。
【0078】
図7に示す補正メモリ回路(MEM2)117のデータ入力端子Dは、図6に示すフリップフロップ回路FFA1、FFB1、FFC1、FFD1、・・・FFA24、FFB24、FFC24、FFD24等のデータ出力端子Qにそれぞれ接続されている。
また、メモリセル選択端子W0〜W3にはメモリ制御回路(CTRL1)115からの書き込み制御信号W0〜W3がそれぞれ供給され、補正メモリ回路(MEM2)117の書き込みイネーブル端子にはメモリ制御回路(CTRL1)115からの書き込みイネーブル信号E1、E2が供給される。
【0079】
バッファ回路181の入力端子は、補正データ入力端子Dとなっており、バッファ回路181の出力端子は、NMOSトランジスタ161、165、169、173の第1端子に接続されている。
インバータ182の入力端子はバッファ181の出力と接続され、インバータ182の出力はNMOSトランジスタ164、168、172、176の第1端子に接続される。
【0080】
インバータ153と154、インバータ155と156、インバータ157と158、インバータ159と160とはそれぞれ、たすき掛け接続され(一方の入力が他方の出力に接続され)、それぞれがメモリセルを形成している。
NMOSトランジスタ161と162、NMOSトランジスタ163と164、NMOSトランジスタ165と166、NMOSトランジスタ167と168、NMOSトランジスタ169と170、NMOSトランジスタ171と172、NMOSトランジスタ173と174、NMOSトランジスタ175と176とはそれぞれ直列に接続され、これらの直列接続の一端はインバータ181、182の出力とそれぞれ接続される。
【0081】
NMOSトランジスタ162、163のゲート端子は、端子W0に接続されている。NMOSトランジスタ166、167のゲート端子は、端子WIに接続されている。NMOSトランジスタ170、171のゲート端子は、端子W2に接続されている。NMOSトランジスタ174、175のゲート端子は、端子W3に接続されている。また、前記イネーブル信号E1はNMOSトランジスタ161、164、165、168、169、172、173、176のゲート端子に接続される。
【0082】
インバータ153の出力は端子ODD0に接続される。インバータ155の出力は端子ODD1に接続される。インバータ157の出力は端子ODD2に接続される。インバータ159の出力は端子ODD3に接続される。
【0083】
以上メモリセル151について説明したが、メモリセル152についても接続されるイネーブル信号がE2、出力される信号名がEVN0〜EVN3となる他は全く同様の構成となっている。
【0084】
また、図6の補正メモリ回路(MEM)121も、図7のメモリセル151と同様の構成となっている。
【0085】
(マルチプレクサ回路(MUX2)118)
図8は、図6のママルチプレクサ回路(MUX2)118の構成例を示す。
図8はそれぞれ独立な4個のマルチプレクサMX0〜MX3からなっており、マルチプレクサMX0は、PMOSトランジスタ191及び192で構成され、マルチプレクサMX1は、PMOSトランジスタ193及び914で構成され、マルチプレクサMX2は、PMOSトランジスタ195及び196で構成され、マルチプレクサMX3は、PMOSトランジスタ197及び198で構成されている。
PMOSトランジスタ191、193、195、197のゲートはデータ選択端子S1Nと接続され、PMOSトランジスタ192、194、196、198のゲートはデータ選択端子S2Nと接続され、マルチプクサMX0のPMOSトランジスタ191の第1端子はODD0端子と接続され、PMOSトランジスタ192の第2端子はEVN0端子と接続され、PMOSトランジスタ191と192の第2端子同士は端子Q0と接続されている。
【0086】
他のマルチプレクサMX1〜MX3も同様な構成であり、PMOSトランジスタ193の第1端子はODD1端子と接続され、PMOSトランジスタ194の第2端子はEVN1端子と接続され、PMOSトランジスタ193と194の第2端子同士は端子Q1と接続されている。
また、PMOSトランジスタ195の第1端子はODD2端子と接続され、PMOSトランジスタ196の第2端子はEVN2端子と接続され、PMOSトランジスタ195と196の第2端子同士は端子Q2と接続されている。さらに、PMOSトランジスタ197の第1端子はODD3端子と接続され、PMOSトランジスタ198の第2端子はEVN3端子と接続され、PMOSトランジスタ197と198の第2端子同士は端子Q3と接続されている。
【0087】
前述したマルチプレクサ回路の構成において、スイッチ素子としてPMOSトランジスタを用いているのは次の理由によるものであって、動作上の支障を防止しつつ使用される素子数を削減することが可能な新規な構成となっている。
【0088】
すなわち、PMOSトランジスタ191をオンさせるためにデータ選択信号S1NをLowレベル(「低」レベル)とするとき、ODD0信号がHighレベルであれば、その信号レベルと略等しい電圧がQ0端子から出力される。このようにHighレベルの伝達であればPMOSトランジスタをスイッチ素子として使用した場合でも何ら支障がない。
一方、ODD0信号がLowレベル(略0V)であったとすると、PMOSトランジスタ191の第2端子はPMOSトランジスタ191の閾値電圧に近い電位にまで降下するものの、Lowレベル(略0V)にまで下がることはない。
【0089】
このようにLowレベルの伝達機能が完全ではない欠点を内在している。このような欠点を克服するため、従来技術による構成においては、PMOSトランジスタと並列にNMOSトランジスタを接続したアナログスイッチを構成してデータ選択のためのスイッチ手段としていた。この構成においては伝達しようとする入力信号電位と略等しい出力電位を得ることができ、スイッチ手段が介在していることによる入力電位と出力電位の差は生じない。
【0090】
その一方で、データ信号1本あたりにPMOSとNMOSのトランジスタ対を設ける必要があり、図8の構成に比べて2倍の素子数を要し、それを配置するためのICのチップ面積を多く占有するという欠点があった。
【0091】
それに対して、図8の構成では前記したアナログスイッチを用いて構成した回路と比べて、半分の素子数ですむ利点を有しているものの、Lowレベルの伝達機能が完全ではない欠点を有する。
ところが後述するように、マルチプレクサ回路(MUX2)118の出力が接続される後段回路であるアノード駆動回路(DRV)119においては、Highレベルとして略VDD電位と等しい入力電圧を要するのに対し、Lowレベルとしては後述するVcontrol電位にまで下降していれば十分であり、略0Vにまで電位降下するようなLowレベル電位を必要としていない。
このため、図8に示すマルチプレクサ回路を用いることで、回路動作上の制約を回避しつつ所要素子数を削減することができる。
【0092】
(アノード駆動回路(DRV)119の構成)
図9は図6のアノード駆動回路(DRVブロック)119を示す。アノード駆動回路はアノード駆動部或いは第1の駆動部と呼ばれることもある。アノード駆動回路(DRV)119は、PMOSトランジスタ200〜205と、NMOSトランジスタ206と、NAND回路210〜213とNOR回路207とを備えている。
また、アノード駆動回路119は、印刷データ入力端子E(負論理)と、サイリスタ駆動(アノード駆動)のオン、オフを指令する入力端子S(負論理)と、入力端子Vと、補正データ入力端子Q0〜Q3と、駆動電流出力端子DOとを備えている。
【0093】
アノード駆動回路119の印刷データ入力端子Eは、図6におけるLTA1〜LTD1、LTA24〜LTD24等のラッチ回路のQN出力端子と接続される。
また、入力端子Q3〜Q0は、図7に示したマルチプレクサ回路(MUX2)118の補正データ出力端子Q3〜Q0に接続されている。
端子Sには、図6のNAND回路114から出力されるサイリスタ駆動(アノード駆動)のオン、オフ指令信号DRVON−Nが入力される。
端子Vには、図6の制御電圧発生回路(ADJ)122からの制御電圧Vcontrolが入力される。
【0094】
駆動電流出力端子DOは、図示しない薄膜配線によりサイリスタのアノードと接続される。
NOR回路207の2個の入力端子は、それぞれ端子Sおよび端子Eに接続されている。NAND回路210〜213の第1入力端子は、NOR回路207の出力端子に接続されている。また、NAND回路213〜210の第2入力端子は、それぞれマルチプレクサ回路(MUX2)118の補正データ出力端子Q3〜Q0に接続されている。
【0095】
PMOSトランジスタ200〜203のゲート端子は、それぞれNAND回路210〜213の出力端子に接続されている。
また、PMOSトランジスタ200〜204のソース端子は電源VDDに接続され、PMOSトランジスタ200〜204のドレーン端子は、駆動電流出力端子DOに接続されている。
一方、NAND回路210〜213およびNOR回路207の電源端子は電源VDDと接続され、これら回路のグランド端子は端子Vと接続され、Vcontrolなる電位に保たれる。
【0096】
後述するように電源VDDの電位と制御電圧Vcontrolとの電位差はPMOSトランジスタ200〜204がオンするときのゲート・ソース間電圧に略等しく、この電圧を変化させることでPMOSトランジスタ200〜204のドレーン電流を調整することが可能となる。
【0097】
図6の制御電圧発生回路(ADJ)122は図示しない基準電圧回路から基準電圧Vrefを受けて、PMOSトランジスタ200〜204等のドレーン電流が所定値となるように制御電圧Vcontrolを制御するために設けられている。
【0098】
さて図9の説明に戻ると、印刷データがオンであり(このとき端子Eの入力レベルはLow)、サイリスタの駆動オン、オフの指令信号SがLowとなって駆動オンを指令しているとき、NOR回路207の出力はHighとなる。このとき端子Q3〜Q0のデータに従いNAND回路210〜213の出力信号レベル、およびPMOSトランジスタ205とNMOSトランジスタ206とで構成されるインバータの出力はVDD電位あるいはVcontrol電位となる。
PMOSトランジスタ204は、サイリスタに主たる駆動電流を供給する主駆動トランジスタであり、PMOSトランジスタ200〜203は、サイリスタの駆動電流をドット毎に調整して光量補正するための補助駆動トランジスタである。
【0099】
主駆動トランジスタ204は印刷データに従って駆動される。補助駆動トランジスタ200〜203は、NOR回路207の出力がHighレベルであるときに、補正メモリ回路(MEM2)117の出力端子Q3〜Q0の出力に応じて選択的に駆動される。
【0100】
つまり、主駆動トランジスタ204と共に、前記補正データに従って補助駆動トランジスタ200〜203が選択的に駆動され、主駆動トランジスタ204のドレーン電流に、選択された補助駆動トランジスタの各ドレーン電流が加算された駆動電流が、端子DOからサイリスタに供給される。
PMOSトランジスタ200〜203が駆動されているとき、NAND回路210〜213の出力はLowレベル(すなわち、ほぼ制御電圧Vcontrolに等しいレベル)にあるので、PMOSトランジスタ200〜203のゲート電位は、ほぼ制御電圧Vcontrolに等しくなる。
【0101】
このとき、PMOSトランジスタ205はオフ状態にあり、NMOSトランジスタ206はオン状態にあって、PMOSトランジスタ204のゲート電位もまたほぼ制御電圧Vcontrolに等しくなる。従って、PMOSトランジスタ200〜204のドレーン電流値を、制御電圧Vcontrolにより一括して調整することができる。
【0102】
NAND回路210〜213は電源電位VDDとグランド電位Vcontrolとを、それぞれ電源、グランド電位として動作しているので、その入力信号の電位も電源電位VDDとグランド電位Vcontrolに即したものであって良く、Lowレベルは必ずしも0Vであることを必要としない。このため図8に示した構成によるマルチプレクサを用いても支障なく動作させることができる。
【0103】
(メモリ制御回路(CTRL1)115の構成:図10)
図10は図6のメモリ制御回路(CTRL1)115の構成を示す。
図示のメモリ制御回路115は、フリップフロップ回路221〜225と、NOR回路226と、AND回路227、228、230〜233とを有する。
【0104】
フリップフロップ回路の221〜225の負論理のリセット端子RはLOAD端子と接続され、ラッチ信号LOAD−Pが入力される。
フリップフロップ回路221、222のクロック端子はSTB端子と接続され、STB−P信号が入力される。
フリップフロップ回路221及び222のQ出力はNOR回路226の入力と接続され、NOR回路226の出力はフリップフロップ回路221のD入力と接続されている。
フリップフロップ回路223のクロック端子はフリップフロップ回路221のQ出力端子と接続され、フリップフロップ回路223のQN出力は自身(フリップフロップ回路223)のD入力端子と接続されている。
【0105】
フリップフロップ回路223のQ出力はAND回路227の一方の入力端子と接続され、フリップフロップ回路223のQN出力端子はAND回路228の一方の入力端子と接続され、AND回路227及び228の他方の入力端子にはLOAD−P信号が入力されている。
また、AND回路227及び228の出力は端子E1、E2と接続され、図7の補正メモリ回路(MEM2)117の書き込みイネーブル信号となる。
【0106】
フリップフロップ回路224及び225のクロック端子はAND回路227の出力に接続され、フリップフロップ回路224のD端子はフリップフロップ回路225のQ出力端子と接続され、フリップフロップ回路225のD入力端子はフリップフロップ回路224のQN出力端子と接続される。
AND回路233の第1入力はフリップフロップ回路225のQ端子と、第2入力はフリップフロップ回路224のQN端子と、AND回路232の第1入力はフリップフロップ回路225のQ端子と、第2入力はフリップフロップ回路224のQ端子と、AND回路231の第1入力はフリップフロップ回路225のQN端子と、第2入力はフリップフロップ回路224のQ端子と、AND回路230の第1入力はフリップフロップ回路225のQN端子と、第2入力はフリップフロップ回路224のQN端子とそれぞれ接続され、AND回路230〜233の第3入力はフリップフロップ回路222のQ出力と接続される。
AND回路230〜233の出力端子はW0〜W3端子と接続され、図7の補正メモリ回路(MEM2)117並びに補正メモリ回路(MEM)121の書き込み指令信号となっている。
【0107】
(マルチプレクサ制御回路(CTRL2)116の構成:図11)
図11は図6のマルチプレクサ制御回路(CTRL2)116の構成例を示す回路図である。
図示のマルチプレクサ制御回路(CTRL2)116は、フリップフロップ回路241と、バッファ回路242及び243とを有する。
フリップフロップ回路241のクロック端子はLOAD端子と接続されて、LOAD−P信号が入力され、負論理のリセット端子RはHSYNC端子と接続されてHSYNC−N信号が入力される。
またフリップフロップ回路241のD端子は自身(フリップフロップ回路241)のQN端子と接続されている。
バッファ回路242の入力端子はフリップフロップ回路241のQ端子と接続され、バッファ回路243の入力端子はフリップフロップ回路241のQN端子と接続される。
バッファ回路243及び242の出力はデータ選択端子S1N、S2Nと接続され、図6のマルチプレクサ回路(MUX2)118に対するデータ選択指令信号として出力されている。
【0108】
(制御電圧発生回路(ADJ)122)
図12は図6の制御電圧発生回路(ADJ)122の構成例を示す。制御電圧発生回路(ADJ)122は、ドライバICチップ毎に1回路ずつ設けられている。
【0109】
図12に示す制御電圧発生回路(ADJ)122は、演算増幅器261と、PMOSトランジスタ252と、アナログマルチプレクサ253と、抵抗列RCHとを有する。
PMOSトランジスタ252のソースは電源VDDに接続され、ゲート端子は演算増幅器251の出力端子に接続されると共に端子Vに接続され、制御電圧Vcontrolを出力する。
PMOSトランジスタ252は図9のPMOSトランジスタ200〜204とはゲート長があい等しく構成されている。
PMOSトランジスタ252のドレーン電流が図中にIrefとして記入されている。
【0110】
一方、演算増幅器251の反転入力端子はVREF端子に接続され、基準電圧Vrefが印加され、非反転入力端子はマルチプレク253の出力端子Yと接続され、演算増幅器251の出力端子はPMOSトランジスタ252のゲート端子と接続されるとともに、端子Vに接続され図9のアノード駆動回路(DRV)119に接続される。
抵抗列RCHは、図示のように直列接続された抵抗R00〜R15から成る。
【0111】
マルチプレクサ253は、アナログ電圧が入力される16個の入力端子P0〜P15と、アナログ電圧を出力する出力端子Yと、論理信号が入力される4個の入力端子S3〜S0を備え、該4本の論理信号S3〜S0により設定される16通りの信号論理の組み合わせによって、前記P0〜P15端子のうち、何れかの端子が選択され、当該端子に印加される電位が出力端子Yから出力される。
換言すれば、入力端子S3〜S0の論理信号レベルによって入力端子P0〜P15のうち何れかの端子が選択され、出力端子Yとの間に電流経路が形成される。
【0112】
演算増幅器251と抵抗列RCH、PMOSトランジスタ252とで構成される回路でフィードバック制御回路を構成しており、演算増幅器251の非反転入力端子の電位は基準電圧Vrefと略等しくなるように制御される。
このため、図12のPMOSトランジスタ252のドレーン電流(Iref)は、抵抗R00〜R15のうち、マルチプレクサ251により選択される部位の合成抵抗値(マルチプレクサ251により選択された入力端子とグランドとの間の合成抵抗値)と、演算増幅器251に入力される基準電圧Vrefとから決定されることになる。
【0113】
例えば、入力端子S3〜S0の論理値が“1111”となっていて、補正状態が最大と指令されているとき、マルチプレクサ253の入力端子P15と出力端子Yとが導通状態とされ、入力端子P15の電位が基準電圧Vrefと略等しくなるように制御される。この結果、PMOSトランジスタ252のドレーン電流Irefは、
Iref=Vref/R00
となる。
【0114】
また、入力端子S3〜S0の論理値が“0111”となっていて、補正状態の中心が指令されているとき、マルチプレクサ253の入力端子P7と出力端子Yとが導通状態とされ、入力端子P7の電位が基準電圧Vrefと略等しくなるように制御される。この結果、PMOSトランジスタ252のドレーン電流Irefは、
Iref=Vref/(R00十R01十・・・十R07十R08)
となる。
【0115】
さらに、入力端子S3〜S0の論理値が“0000”となっていて、補正状態の最小が指令されているとき、マルチプレクサ253の入力端子P0と出力端子Yとが導通状態とされ、入力端子P0の電位が基準電圧Vrefと略等しくなるように制御される。この結果、PMOSトランジスタ252のドレーン電流Irefは、
Iref=Vref/(R00十R01十・・・十R14十R15)
となる。
【0116】
前述したように、図9のPMOSトランジスタ200〜204とPMOSトランジスタ252とはゲート長があい等しく構成され、これらトランジスタは飽和領域で動作するように制御されているので、各トランジスタはカレントミラーの関係となり、PMOSトランジスタ200〜204がオンとなるとき電流Irefに比例するドレーン電流を生じる。
この結果、マルチプレクサ253の入力端子S3〜S0に与える論理値状態により電流Irefを16段階に調整することができ、図9のPMOSトランジスタ200〜204のドレーン電流もまた16段階に調整可能となる。
【0117】
(ゲート駆動バッファ回路401、402の構成)
図13(a)及び(b)は図6に示したサイリスタのゲート端子の駆動用バッファ回路401、402の構成を示す回路図である。なお、バッファ回路401、402は同じ構成であるため、以下代表としてバッファ回路401について構成および動作を説明する。なお、バッファ回路はゲート駆動回路、ゲート駆動部或いは第2の駆動部と呼ばれることもある。
【0118】
図13(a)はバッファ回路401の回路図シンボルであり、図13(b)はその回路構成を示している。
図示のバッファ回路401は、前縁検出回路411と、NAND回路417と、PMOSトランジスタ418及び304と、NMOSトランジスタ419とを有する。
前縁検出回路411は、入力信号の立ち上がりから所定の期間だけHighのパルスを発生する回路であり、遅延回路412と、インバータ回路415と、AND回路416とを有する。遅延回路412は、抵抗413とコンデンサ414とを有する。
【0119】
バッファ回路401の入力端子Sは遅延回路412の入力に接続され、遅延回路412の入力は抵抗413を介してコンデンサ414の一端とインバータ回路415の入力端子と接続される。コンデンサ414の他端はグランドと接続されている。また、遅延回路412の出力はインバータ回路415の入力端子と接続される。
AND回路416の一方の入力端子はバッファ回路401の入力端子Sと接続され、他方の入力端子はインバータ回路415の出力端子と接続される。
AND回路416の出力端子はNAND回路417の一方の入力端子と接続され、NAND回路417の他方の入力端子はバッファ回路401の入力端子Aと接続される。
【0120】
NAND回路417の出力端子はPMOSトランジスタ418のゲート端子と接続され、PMOSトランジスタ418のソースは電源VDDと、PMOSトランジスタ418のドレーン端子はバッファ回路401の出力端子Yと接続される。
また、NMOSトランジスタ419のドレーン端子は電源VDDと接続され、そのソース端子はバッファ回路401の出力端子Yと接続され、NMOSトランジスタ419のゲート端子はバッファ回路401の入力端子Aと接続される。
【0121】
PMOSトランジスタ304のソース端子はバッファ回路401の出力端子Yと接続され、PMOSトランジスタ304のドレーン端子はグランドと接続され、PMOSトランジスタ304のゲート端子はバッファ回路401の入力端子Aと接続されている。
【0122】
なお、本図では遅延回路412の一例として抵抗413とコンデンサ414とで構成されるCR遅延回路としているが、これに限定する必要は無く、偶数個のインバータ回路を縦続に接続した構成等、さまざまな構成のものを用いることができる。
【0123】
(比較:従来のゲート駆動バッファの構成)
【0124】
上記のバッファ回路401、402に相当する従来のバッファ回路においては、図13のトランジスタ418、419の代りにトランジスタ304と同じ単一のPMOSトランジスタが用いられており、サイリスタが非点灯状態にあるとき、ゲート端子は電源VDDに略等しい電位となる。典型的な設計例では電源VDDが5Vであるのに対し、サイリスタの耐電圧はたかだか7Vであって電源電圧VDDに対して余裕があるとはいえず、VDDが長時間印加され続けることにより、サイリスタの劣化など不具合症状を呈することがあるという問題があった。
本実施の形態は、上記の構成によりこの問題を解決したものである。
【0125】
(実施の形態1の動作)
(全体タイムチャートの説明)
図14はプリンタの電源投入後に、実施の形態の構成の光プリントヘッドに対して行われる補正データ転送処理と、その後に行われる印刷データ転送のようすを示すタイムチャートである。なお、サイリスタのドット補正データは1ドットあたり4ビット(bit3〜bit0)からなるものとしている。
【0126】
補正データの転送開始に先立ち、引き続くデータ転送が補正データであることを示すためHD−LOAD信号をHighとする(I部)。
ついで、奇数番目(Odd)及び偶数番目(Even)に属するドットについて1ドットあたり4ビットからなる補正データbit3〜bit0がHD−DATA3〜0からクロックHD−CLKに同期して順次入力される。最初に奇数番目のドットについてのbit3の補正データが入力され、図6のフリップフロップ回路(FFA1〜FFD25)で構成されるシフトレジスタ中へシフト入力される。
シフト入力が完了すると、A部に示すようにHD−STB−N信号が3パルス入力され、図10に示した回路の動作が行われる。
【0127】
図14のQ1、Q2は図10のフリップフロップ回路221、222のQ出力であり、以下同様に、Q3はフリップフロップ回路223の出力を示し、Q4はフリップフロップ回路225の、Q5はフリップフロップ回路224のQ出力を示す。また、E1、E2はAND回路227、228の出力、W3〜W0はAND回路233〜230の出力を示す。さらに、S1N、S2Nは、図11のAND回路243、242から出力されるデータ選択信号を示す。
【0128】
図14のA部において、HD−STB−Nの1パルス目が入力されるとJ部に示すようにQ1信号が発生し(立ち上がり)、ついでHD−STB−Nの2パルス目で、K部に示すようにQ2信号が発生する。
【0129】
また、Q1信号が立ち上がるごとにQ3信号は状態反転し、例えばL部においてはQ3信号はHighレベルに遷移している。
Q3信号の遷移に引き続き、E1、E2信号が発生する。
E1信号の立ち上がりエッジに引き続き、M部のようにQ4信号が立ち上がり、E1信号の次の立ち上がりでQ5信号が立ち上がり、さらにE1信号の次の立ち上がりでQ4信号が立ち下がり、E1信号の次の立ち上がりでQ5信号が立ち下がる。
【0130】
W3〜W0信号はQ2信号に引き続いて発生するものであるが、O部、P部のようにW3信号が2回にわたって出力され(Highとなり)、ついでW2、W1、W0の各信号においてもそれぞれ2パルスずつ発生する。
前述したW3〜W0の各パルス信号が発生するごとに、図7の補正メモリ回路(MEM2)117にデータの書き込みが行われ、W3〜W0の1パルス目で奇数ドット用のメモリセル(151)へのデータ書き込みが、2パルス目で偶数ドット用のメモリセル(152)へのデータ書き込みが行われる。
【0131】
前述した1パルス目のデータ書き込み指令信号は、A部、C部、E部、G部にて入力されたHD−STB−N信号をもとに発生されるものであり、前述した2パルス目のデータ書き込み指令信号は、B部、D部、F部、H部にて入力されたHD−STB−N信号をもとに発生されるものである。
【0132】
上述した過程をへて、補正データのbit3〜bit0の全てのデータ書き込みが完了すると、Q部のようにHD−LOAD信号をLowとして、印刷データの転送が可能な状態に遷移する。
1ラインの印刷開始に際し、引き続くデータ転送が奇数ドットのものであることを示すためHD−HSYNC−N信号が入力される(R部)。
ついで、U部で奇数ドットの印刷データが転送され(Odd)、S部のHD−LOAD信号パルスにより、シフトレジスタ(FFA1〜FFD1、・・・、FFA24〜FFD24)にシフト入力されたデータをラッチ素子(LTA1〜LTD1、・・・、LTA24〜LTD24)へラッチする。
【0133】
さらに、W部のようにHD−STB−N信号がLowへと遷移して、サイリスタ素子の発光駆動が行われる。印刷データがオンであると、W部やX部のHD−STB−N信号がLowとなる期間、サイリスタ素子は発光駆動されることになる。
【0134】
同様にV部では偶数ドットのデータ転送(Even)が行われ、そのデータはT部のパルスによりラッチされる。
なお、図6において示したように、マルチプレクサ制御回路(CTRL2)116から出力されるデータ選択信号S1Nはバッファ回路401を介してゲート駆動信号G1となり、奇数番目のサイリスタのゲート端子を駆動する。
また、マルチプレクサ制御回路(CTRL2)116から出力されるデータ選択信号S2Nはバッファ回路402を介してゲート駆動信号G2となり、偶数番目のサイリスタのゲート端子を駆動する。そのため図13(b)に示した回路によりサイリスタのゲート駆動信号G1、G2を発生させることができる。
【0135】
(補正データ転送タームチャート)
図15〜図18は図14にて示したタイムチャートにおいて、ドライバICを1チップのみに簡略化した場合における補正データ転送の詳細波形を示す。
図15は図14におけるA部とB部の詳細であり、図16は図14におけるC部とD部の詳細であり、図17は図14におけるE部とF部の詳細であり、図18は図14におけるG部とH部の詳細である。
【0136】
図14に戻ると、ドライバICごとに設定されるチップ補正データは奇数ドット転送(例えばA部)と偶数ドット転送(例えばB部)のうち、どちらか1回について行えば十分である。
このため、図15〜図18においてはA部、C部、E部、G部の奇数ドットの補正データ転送時にシフトレジスタの段数を1段多くなるように切り替えて、データ入力端子DATAI3を介して入力される送出データ列の先頭にチップ補正データ(Chip−b3、Chip−b2、Chip−b1、Chip−b0等と記載)を割り当てて送出するように工夫されている。一方、データ入力端子DATAI2、DATAI1、DATAI0を介して入力される送出データ列の先頭では、ダミーデータDUMMYを送出することとしている。
【0137】
(ゲート駆動バッファの説明)
図19(a)〜(e)は図6において示したサイリスタのゲート駆動バッファ回路401、402の動作を説明するものである。
図19(a)はサイリスタ102のシンボルと各端子の電圧、電流の記号を示す。
図19(b)はバッファ回路401とそれに接続されるサイリスタ102の要部を抜き出して示す図であり、破線で囲んで示すサイリスタ102の等価回路を含めて示しており、141はPNPトランジスタ、142はNPNトランジスタである。
【0138】
いま、図19(b)において、サイリスタ102のターンオン過程を説明するためにバッファ回路401の入力端子S、AがLowレベルになっているとする。
【0139】
図13(b)において、端子AがLowであるので、NAND回路417の出力はHighとなって、PMOSトランジスタ418はオフ、NMOSトランジスタ419はオフ、PN0Sトランジスタ304はオンとなって、バッファ回路401の出力端子Yの電位を引き下げ、該電位はPMOSトランジスタ304のゲート・ソース間電圧Vgsに等しく、最終的にPMOSトランジスタ304の閾値電圧Vtにまで降下することになる。
【0140】
図19(b)に戻ると、サイリスタ102を駆動するために図示しないドライバICの端子DOに出力を生じ、Iaとして図示したアノード電流が発生する。
このとき、該電流はサイリスタ102のアノード・ゲート間のPN接合、すなわちPNPトランジスタ141のエミッタ・ベース間を順方向電流となって流れ、Igとして図示したゲート電流を生じる。
前述した電流が流れる結果、サイリスタ102にはアノード電位を生じる。
図19(a)において、アノード端子の電位をVa、ゲート端子の電位をVgkとして図中に記載している。図19(b)において、ゲート電流Igはサイリスタ102の内部にあるPNPトランジスタ141のベース電流Ibに相当するものであり、該電流が流れることでPNPトランジスタ141はオン状態への移行を開始して、該素子のコレクタにはコレクタ電流を生じる。該コレクタ電流はNPNトランジスタ142のベース電流となり、NPNトランジスタ142をオン状態へと移行させる。
【0141】
これにより生じたコレクタ電流はPNPトランジスタのベース電流Ibを増強し、PNPトランジスタ141のオン状態への移行を加速させることになる。
一方、NPNトランジスタ142が完全にオン状態に移行した後には、そのコレクタ・エミッタ間電圧は低下して、PMOSトランジスタ304の閾値電圧Vtよりも小さい電位となる。
この結果、サイリスタ102のゲート端子からバッファ回路401の出力端子の側に流れる電流Igは略ゼロとなって、サイリスタのカソード端子にはアノード電流Iaと略等しいカソード電流Ikが流れることになり、サイリスタ102は完全にオン状態となる。
【0142】
図19(c)は前述したサイリスタ102のターンオン過程を説明する図であって、横軸にアノード電流Ia、縦軸にアノード端子電位Vaを示している。
サイリスタの消灯状態においてはアノード電流は略ゼロであり、図19(c)に示すグラフの原点(0、0)の状態にある。
サイリスタのターンオン開始に伴い、アノード電流が流れ始めると図中矢印で示したようにアノード電位が上昇してVp電位に到達する。
サイリスタ102のアノード・ゲート間電圧VagはPNPトランジスタ141のエミッタ・ベース間電圧Vbeと等しく、バッファ回路401のLowレベル出力電圧(VoL)はPMOSトランジスタ304のゲート・ソース間電圧Vgsに相当するので、前記Vp電圧との間には、
Vp=Vag十VoL
=Vag十Vgs
の関係がある。
前記Vp電圧が順方向に印加されることでゲート電流Ig(これはトランジスタ141のベース電流Ibに等しい)を生じる。
図19(c)において丸印を付して示す(Ip、Vp)ポイントは、サイリスタ102のオフ領域RAとオン遷移領域RBとの境目に相当している。
【0143】
なお、図19(a)においてはサイリスタ102のみを記載しているが、図2を用いて説明したように、サイリスタ102のアノード端子、カソード端子に並列にサイリスタ101が接続されている。
このため、サイリスタ102のターンオン過程を考えるとき、サイリスタ101がオフ状態のままとする条件を考慮する必要がある。
【0144】
前述したように、サイリスタ102のターンオン過程において、アノード電位Vaは前述したピーク値Vpを持つ。
非点灯側サイリスタ101のゲート電位をVoH、サイリスタのアノード・ゲート間電圧をVagとし、前記ゲート電流を生じる始めるアノード・ゲート間電圧Vagを改めてVfと記号すると、前記したVp電圧(サイリスタのターンオン過程におけるアノード・カソード間電圧のピーク値)により非点灯側のサイリスタ101にゲート電流を生じないようにするためには次式を満たす必要のあることが判る。
Vp<VoH+Vf
逆に言えば、VoH>Vp−Vf
を満たす必要がある。また、図13の回路では、VoH<VDDである。
【0145】
図19(c)において、前記したピーク点Ipから更にアノード電流Iaが増加するに伴い、アノード電位Vaは低下していき、丸印を付して示す(Iv、Vv)ポイントに到達する。該ポイントはサイリスタのオン遷移領域RBとオン領域RCとの境目に相当しており、このときのゲート電流Igは略ゼロにまで低下していて、実質的にバッファ回路401はサイリスタ102のゲート端子から切り離されたのと等価な状態にある。
【0146】
さらにアノード電流Iaが増加するに伴い、アノード電位Vaは増加していき、丸印を付して示す(I1、V1)ポイントに到達する。該ポイントはサイリスタの発光駆動の最終動作ポイントであり、ドライバIC側から供給されるアノード電流Iaに応じた電流値(I1)により、所定の発光パワーで発光駆動がなされる。
【0147】
図19(d)は図19(c)に対応するものであって、横軸にアノード電流Ia、縦軸にゲート電流Igを示しており、前記したサイリスタのターンオン過程において生じるサイリスタのゲート電流とそのピーク値Ig1と前記アノード電圧Vpとアノード電流Ipとの関係を示している。
【0148】
また、図19(e)は図19(c)に対応するものであって、横軸にアノード電流Ia、縦軸にサイリスタのゲート・カソード間電圧Vgkを示している。
前記したサイリスタのターンオン過程においてゲート電流Igを生じ、それに伴いゲート駆動バッファ回路401の出力電位VoL(これはまたサイリスタのゲート・カソード間電圧Vgkに等しい)が決定されるが、サイリスタ102が完全にオン、すなわちNPNトランジスタ142がオンして飽和状態となると、前記電圧は図19(e)に示すV2電位にまで降下する。この電位は前記NPNトランジスタ142のコレクタ・エミッタ間の飽和電圧Vce(sat)に対応するものである。
これにより、図13(b)に示したバッファ回路401のLowレベル出力電圧(VoL)、すなわちPMOSトランジスタ304のゲート・ソース間電圧Vgsは閾値電圧以下となっていて、
V2<Vt
となる。
この結果、最終的にPMOSトランジスタ304はオフ(正確にはサブスレッショルド動作状態であるが)となって、図19(b)に示すゲート電流は略ゼロとなる。
【0149】
図19(b)〜(e)を用いてサイリスタのターンオン過程を説明したが、ゲート駆動バッファ回路401を用いることで、オン状態に移行した後のサイリスタからのゲート電流の流れ込みを防止して、アノード電流Iaとカソード電流Ikを略等しくしたオン状態駆動とすることができて、アノード電流Iaの調整することでそれに応じた発光パワーを得ることができる。
【0150】
このような動作はバッファ回路401のLow側出力部をPMOSトランジスタを用いて構成したことによる効果であり、通常のCMOS出力回路のようにPMOSトランジスタ304に替えてNMOSトランジスタを用いた場合にはそのLowレベル出力は略0V電位にまで降下してしまうので、PNPトランジスタ141のベース電流はバッファ回路の側にIgとして流れ続け、その分NPNトランジスタ142のコレクタ電流が減少して、サイリスタのカソード電流Ikも減少してしまう。この結果、サイリスタの発光出力が変動してしまう可能性があったのである。それに対して、図13(b)に示したゲート駆動バッファ回路を用いる構成においては前述した不具合を未然に防止することができる。
【0151】
次に図13(b)におけるゲート駆動バッファ回路401のHighレベル出力時の動作を説明する。
これは図19(b)〜(e)におけるサイリスタ102がオフ状態にある場合に相当している。
図13(b)でバッファ回路401の入力端子SがLowレベル、入力端子AがHighレベルにあるとするこのとき、図13(b)に示すAND回路416の出力(D点)電位はLowであって、NAND回路417の出力(E点)はHighレベルとなりPMOSトランジスタ418はオフである。
【0152】
バッファ回路401の入力端子AがHighレベルとなると、PMOSトランジスタ304はオフとなり、NMOSトランジスタ419はオンとなって、出力端子Yの電位は上昇していく。
ところが、NMOSトランジスタ419のソース端子は出力端子Yと接続されているので、出力端子Yの電位が上昇しVDD−Vtに等しい電位にまで上昇するとNMOSトランジスタ419のゲート・ソース間電圧Vgsは閾値電圧Vtに略等しい値にまで低下して、NMOSトランジスタ419はオフ(サプスレッショルド状態)となる。
【0153】
このようにして、出力端子YはHighレベルとなるもののその電位VoHはVDD−Vtに等しい電位にまでしか上昇せず、従来構成のバッファ回路のように、定常的に電源VDDの電位にとどまることはない。
前記VoH電圧は非点灯サイリスタのゲート・カソード間に印加されるので、前記電圧が電源電圧VDDよりも低くできたことで、サイリスタに定常的に印加される過電圧ストレスは低減され、素子劣化を防止することができる。
【0154】
(バッファ回路の動作)
図20は図13(b)に示したバッファ回路401の動作を説明するタイムチャートである。
図20は図14で示したタイムチャートのうち印刷データ部の動作(W部、X部の周辺)に対応するものであり、バッファ回路401の入力端子Sは図6におけるNAND回路114の出力と接続されてサイリスタの駆動を指令するDRVON−P信号が入力され、バッファ回路401の入力端子Aはデータ選択信号S1Nと接続されている。
また、図20に示す各部波形、すなわち波形A〜波形E、波形S、波形Yは、図13(b)のA点〜E点、S点、Y点における波形をそれぞれ示している。
【0155】
図20において、入力端子信号Aは時刻T1では立下り、時刻T4で立ち上がり、時刻T7で再び立ち下がる。また、入力端子信号Sは時刻T2で立ち上がり、時刻T3で立ち下がり、時刻T5で立ち上がり、時刻T6で立ち下がるものとしている。
入力端子信号Sが立ち上がり、また立ち下がることで、遅延回路412の働きによりB点電位には図20に示す鈍った波形を生じる。
【0156】
インバータ回路415のスレッショルド電位をF部、G部、H部、I部として示すと、これによってインバータ回路415の出力Cには、J部、K部、L部、M部で示す波形を生じる。波形Sと波形Cとの間には論理反転のほか、Tdで示す遅延時間が設定されており、前記遅延時間Tdは遅延回路412の内部の抵抗413の抵抗値、コンデンサ414の容量により設定されるものである。
前記した波形S、波形CはAND回路416に入力され、波形Dとして示す出力を生じ、N部、O部に示すように、信号Sの立ち上がりエッジ部に相当する箇所にパルス幅Tdの正極性パルスを生じる。前記信号はNAND回路417に入力され、信号EのP部に示すように、O部に対応する箇所にパルス幅Tdの負極性パルスを生じる。
【0157】
図13(b)のE点がLowレベルとなると、PMOSトランジスタ418はオンし、出力端子YはHighレベルとなって電源電位VDDに略等しい電位となる。
【0158】
図20において出力端子Yの波形を詳述すると、タイムチャートの初期状態である、入力端子AがHigh、入力端子SがLowの場合、前述したようにPMOSトランジスタ418はオフ、NMOSトランジスタ419がオンとなって、出力端子YはHighレベルとなるものの、その電位は電源電圧VDDを5Vとした典型的な設計例では略3Vとなる。
【0159】
次いで時刻T1で入力端子AがLowレベルとされる。これにより前述したように、図13(b)のPMOSトランジスタ304はオンとなって、前述したように出力端子YはLowレベルに遷移して、典型的な設計例では略2Vにまで電位低下する(Q部)。
【0160】
時刻T4で入力端子AがHighレベルとなると、出力端子Yは再びHigレベルとなり、略3Vに上昇する(R部)。
【0161】
時刻T5で入力端子SがHighレベルとなると、図13(b)のE点に負極性パルスを生じる結果、PMOSトランジスタ418は一瞬の間オンして、出力端子Yの電位はS部にように略5Vにまで立ち上がり、Tdの経過時間の後、T部に示すように、再び略3VのHighレベル状態となる。
【0162】
次いで時刻T7で入力端子AがLowレベルとされる。これにより図13(b)のPMOSトランジスタ。304はオンとなって、前述したように出力端子YはLowレベルに遷移して、略2Vにまで電位低下する(U部)。
【0163】
このように出力端子Yの電位は、該出力端子Yの電位でゲートを駆動する期間(ターンオンさせるために電位にする期間)においては、低い電位(2V)となり、該出力端Yの電位でゲート駆動しない期間(ターオンさせるための電位にしない期間)においては、高い電位(3V又は5V)となるが、ゲートを駆動しない期間のうち、サイリスタのアノード電流の立ち上がり部で比較的高い電圧(5V)となりその他箇所では、比較的低い電圧(3V)となる。これにより、ゲートを駆動しないサイリスタが誤ってターンオンするのを防ぐとともに、ターンオン後のサイリスタのゲート間に高い電圧が長時間印加されないようにしており、これにより、サイリスタの劣化を防止している。
【0164】
(駆動波形の説明)
図21(b)は図2に示したサイリスタの駆動状況を示すタイムチャートである。
図21(a)は図2の構成のうち、隣接するサイリスタ2素子(101、102)のみに簡略化して描いたモデル図である。
図21(a)で破線で囲んで示すIC1はドライバICであって、図2に示したIC1を簡略化しており、サイリスタのアノード駆動回路119をDRV、その出力端子をDOとして図示している。
また、バッファ回路401、402はサイリスタのゲート駆動バッファ回路(図13)であり、その入力端子Aにはデータ選択信号S1N、S2Nが入力され、そのバッファ回路401、402の出力は端子G1、G2に接続される。
【0165】
端子G1、G2は共通母線431、432にそれぞれ接続される。
なお、バッファ回路401、402の入力端子Sには駆動指令信号DRVON−Pが入力されるのであるが、該信号はストローブ信号STB−Nから生成されるものであり、図21(b)においては前記DRVON−Pとは論理反転したSTB−N信号を用いて説明する。
【0166】
サイリスタ101、102のアノード端子同士は接続されて前記したIC1の端子DOに接続され、ゲート端子は前記した端子G1、G2にそれぞれ接続されている。
【0167】
端子G1、G2は共通母線431、432に接続され複数のサイリスタのゲート端子に接続されるものであるが、図21(a)においては各々1素子のみが図示されている。
なお、図21(a)においては、端子DOを介した駆動電流をIa、サイリスタ102、101のゲート電流をIg1、Ig2として図中に記載している。
また、Vgk1、Vgk2はサイリスタ102、101のゲート・カソード間電圧であって、前記した端子G1、G2の波形(図20のY)に対応している。
【0168】
図21(b)は図20(a)の動作を説明するタイムチャートであって、サイリスタ102、101を時分割に駆動する状況を示している。
【0169】
LOAD信号は図2におけるHD−LOAD信号に相当するラッチ信号、STB−NはHD−STB−N信号に相当する負論理のストローブ信号であって、図6のSTB端子に入力されるものである。
データ選択信号S1N、S2Nは図6のマルチプレクサ制御回路(CTRL2)116により発生されるメモリ選択信号であって、これをバッファ回路401、402に入力することでサイリスタのゲート駆動信号G1、G2を作成している。
【0170】
図21(b)において、図示しないHSYNC−N信号が入力されることで初期状態に設定され、データ選択信号S1NがHigh、データ選択信号S2NがLowとなっており、該信号がバッファ回路401、402に入力されることでその出力信号G1、G2はHigh、Lowにそれぞれ設定される。
【0171】
このときのゲート駆動信号G1、G2の電位であるが、前述したように図13(b)の構成においてはHighレベル(VoH)は電源電位VDDからNMOSトフンジスタ419のゲート・ソース電圧Vgsを減じたVDD−Vgs電位であり、Lowレベル(VoL)はPMOSトランジスタ304のゲート・ソース間電圧Vgsに相当するものであって、このゲート・ソース間電圧Vgsは閾値電圧Vtより僅かに大きな値をとる。
ゲート・ソース間電圧VgsはPMOSトランジスタのゲート長やゲート幅、ソース端子とサブストレート端子の間の基板バイアス電圧を調整することでも変化させることが可能であるが、概略設計例として電源電圧VDD=5V、Vgs=2Vとするとき、VoH=3V、VoL=2Vであり、前記数値例を図21(b)中に記載している。
【0172】
図21(b)において、時刻T1のA部で示すようにLOAD信号が入力されると、B部に示すようにデータ選択信号S1NがLowに、データ選択信号S2NがHighに遷移する。
これによりC部に示すように、Vgk1波形は略3Vから略2Vに降下し、D部のようにVgk2電位は略2Vから略3Vに上昇している。
なお、Vgk1、Vgk2波形の近傍には「0V」としてグランド電位を注記している。
【0173】
次いで、時刻T2でサイリスタ102の点灯指令のためSTB−N信号が発生してE部に示すようにSTB−N信号がLowレベルに遷移し、F部に示すようにアノード電流Iaは立ち上がり遷移する。
【0174】
図19(a)〜(e)を用いて説明したように、サイリスタ102のターンオン過程においてアノード端子から注入された電流Iaがゲート端子から流出することでゲート電流Igとなり、これによりサイリスタがオン遷移させられる。
図21(b)において、アノード電流Iaの立ち上がり波形でハッチングされたH部に相当するものがG部で示すゲート電流波形Ig1となる。
このとき、図19(a)〜(e)を用いて説明したように、サイリスタのターンオン遷移やターンオフ遷移、すなわちゲート電流Ig1、またはIg2が流れる過程で、サイリスタ102、101のアノード電位はVaに示すように、その電位にピークを生じる。
【0175】
このとき、非発光とされる側のサイリスタのゲート電位が十分に高い電位状態にないと、アノード電位Vaのピーク値によって、非点灯側のサイリスタにゲート電流を生じてしまい、誤動作するおそれがあるのであるが、後述するように、図13(b)の構成を備えたバッファ回路においては前記タイミングでサイリスタのゲート電位を一瞬高くなるようにしているので、前記誤動作は未然に防止することが可能となっている。
【0176】
図21(b)に戻ると、G部において、ゲート電流Ig1が流入することでバッファ回路401の出力端子電位(Vgk1)は、I部に示すように僅かに上昇するものの、サイリスタ102がターンオンするのに従い、そのゲート電位はサイリスタ自身による駆動能力によって低下してK部に示すように略0.2Vにまで低下させられる。なお、前記0.2Vは図19(b)で説明したNPNトランジスタ142のコレクタ・エミッタ間の飽和電圧Vce(sat)に相当するものである。
【0177】
このとき、ゲート電流Ig1はサイリスタ102をターンオンさせて該素子は発光することになる一方で、サイリスタ101のゲート端子電位Vgk2は初め略3VであるHighレベルとなっていて、ストローブ信号(STB−N)の前縁タイミングで、前述したパルス幅Tdの間だけゲート端子電位Vgk2は略5Vの電位とされる。
【0178】
これにより、アノード端子電位Vaにa部に示すように一瞬ピーク状態を生じることがあったとしても、アノード端子からゲート端子に至るIg2で示すゲート電流を生じることはない。この結果、サイリスタ101は非点灯のままとすることができる。
【0179】
次いで、時刻T3でSTB−N信号がHighレベルとされる(L部)。これにより、アノード電流Iaは立ち下げられてM部のように減少していく。アノード電流Iaがサイリスタの特性により決まる保持電流以下となるとサイリスタ102はターンオフして、そのアノード電位の上昇に伴ってゲート電流Ig1を生じる(N部)。
【0180】
N部のゲート電流Ig1は前記O部のアノード電流により生じたものであり、ハッチングして示すO部の電流に相当するものである。
前記N部のゲート電流が消滅するに従い、サイリスタ102はオフしてそのゲート・カソード間電圧Vgk1が上昇してP部で示すように、バッファ回路401自身のLowレベル出力電圧VoLである略2Vの電位となる。
【0181】
次に時刻T4において、Q部に示すようにLOAD信号が入力され、データ選択信号S1NがHigh、データ選択信号S2NがLowレベルへと遷移する(R部)。
これに伴い、ゲート駆動信号G1、G2もHigh、Lowとなるが、前述したようにバッファ回路401のHighレベル出力(VoH)はS部に示すように略3Vであって、電源電圧VDDまでは上昇しない。
また、T部に示すように、Vgk2電位は略2Vにまで低下していく。
【0182】
このあと、時刻T5でU部に示すようにSTB−N信号がLowレベル遷移し、再びアノード電流Iaを生じてV部に示すように電流波形が立ち上がる。
【0183】
図19(a)〜(e)を用いて説明したように、サイリスタのターンオン過程においてアノード端子から注入された電流がゲート端子から流出することでゲート電流となり、これによりサイリスタ101がオン遷移させられる。
【0184】
図21(b)において、アノード電流の立ち上がり波形でハッチングされたX部に相当するものがサイリスタ101のゲート電流Ig2となりW部で示す電流波形を生じる。
【0185】
ゲート電流Ig2が流入することでバッファ回路402の出力端子電位(Vgk2)は、Y部に示すように僅かに上昇するものの、サイリスタ101がターンオンするのに従い、そのゲート電位が低下してZ部に示すように略0.2Vにまで低下させられる。なお、前記0.2Vは図19(b)で説明したNPNトランジスタ142のコレクタ・エミッタ間の飽和電圧Vce(sat)に相当するものである。
【0186】
このとき、前記ゲート電流Ig2はサイリスタ101をターンオンさせて該素子は発光することになる一方で、サイリスタ102のゲート端子電位Vgk1は初め略3VとHighレベルであり、アノード端子電位Vaがe部に示すようにピーク値を生じるに先立ち、ゲート端子電位Vgk1は略5Vとされ、アノード端子電位Vaにピークを生じたとしても、アノード端子からゲート端子に至る、Ig1で示すゲート電流を生じない。この結果、サイリスタ102は非点灯のままとすることができる。
【0187】
このように、図21(a)で示すサイリスタ102、101はゲート駆動信号G1、G2をHigh、Lowレベルに切り替えることによって点灯されるべきサイリスタ素子が選択され、他方の素子は非点灯とすることができ、図21(b)のE部のストローブ信号においてはサイリスタ102が点灯され、サイリスタ101は非点灯、U部ストローブ信号においてはサイリスタ101が点灯され、サイリスタ102を非点灯とすることができる。
【0188】
上記説明で明らかなように、サイリスタを点灯する場合にはアノード電流Iaにより駆動され、発光出力は前記電流値により定まるので、点灯する必要の無い場合にはアノード電流Iaをゼロとすればよく、そのためには印刷データ(図14のU部、V部)をオフ設定することになる。
【0189】
なお、前記説明で明らかなように、図13(b)における遅延回路412による遅延時間Td(図20参照)は、図21(b)におけるゲート電流Ig1、Ig2のパルス幅、すなわち、a部やe部のアノード電位Vaにピークを生じる期間を包含するように設定されており、遅延回路はタイミング制御回路としての役割を果たす。
【0190】
(実施の形態1の効果)
前記の時分割駆動において、発光を行うべきサイリスタのゲート端子はLowレベルとされ、非発光とされるサイリスタのゲート端子はHighレベルとされる。ドライバICはCMOSプロセスを用いて製造されており、その電源電圧は5Vである。従来構成のゲート駆動回路においては、前記Highレベルは電源電位に略等しい5Vであるが、サイリスタにおいては耐電圧が7V程度しか確保することができず耐電圧が十分でないため、前記Highレベル印加電圧によりサイリスタが破壊されてしまうことがあった。
【0191】
それに対して実施の形態1の構成を備えるゲート駆動回路(図13(b))においては、前記Highレベルを電源電圧5Vよりも低い値とすることができ、非点灯状態のサイリスタのゲート・カソード間電圧をサイリスタ自身の耐電圧値以内とすることができて、前記破壊を未然に防止することができるようになった。
【0192】
それに加えて、サイリスタのターンオン過程でアノード電位にピークを生じるのであるが、前記ピークタイミングを包含するように、非点灯側のサイリスタのゲート端子をVDD電位とすることで、アノード端子電位にピークを生じたとしても、非点灯側サイリスタのアノード端子からゲート端子に至るゲート電流を生じさせない。
この結果、非点灯側サイリスタの誤点灯を未然に防止することができるようになった。
【0193】
実施の形態2.
(ゲート駆動バッファ回路の構成)
実施の形態2の構成は概して実施の形態1と同じであるが、図6のバッファ回路401及び402において、バッファ回路501及び502を用いる点で異なる。バッファ回路501及び502は構成は同じであるので、以下ではバッファ回路501について説明する。
【0194】
図22(a)及び(b)は実施の形態2によるバッファ回路501の構成を示す。図22(a)はバッファ回路501の回路図シンボルである。図22(b)はバッファ回路501の回路構成を示している。図22(b)に示すバッファ回路501は、前縁検出回路411と、NAND回路417、422と、PMOSトランジスタ418、423及び304と、インバータ回路421とを有する。
前縁検出回路411は、図22のバッファ回路401と同様に、入力信号の立ち上がりから所定の期間だけHighのパルスを発生する回路であり、遅延回路412と、インバータ回路415と、AND回路416とを有する。遅延回路412は、抵抗413とコンデンサ414とを有する。
【0195】
バッファ回路501の入力端子Sは遅延回路412の入力に接続され、遅延回路412の入力は抵抗413を介してコンデンサ414の一端とインバータ回路415の入力端子と接続される。コンデンサ414の他端はグランドと接続されている。また、遅延回路412の出力はインバータ回路415の入力端子と接続される。
AND回路416の一方の入力端子はバッファ回路401の入力端子Sと接続され、他方の入力端子はインバータ回路415の出力端子と接続される。
AND回路416の出力端子はNAND回路417の一方の入力端子と接続され、NAND回路417の他方の入力端子はバッファ回路501の入力端子Aと接続される。
【0196】
NAND回路417の出力端子はPMOSトランジスタ418のゲート端子と接続され、PMOSトランジスタ418のソースは電源VDDに接続され、PMOSトランジスタ418のドレーン端子はバッファ回路501の出力端子Yと接続される。
また、AND回路416の出力はインバータ回路421を介してNAND回路422の一方の入力と接続され、NAND回路422の他方の入力はバッファ回路501の入力端子Aと接続される。
【0197】
PMOSトランジスタ423のソース端子は電源VDD3と接続され、PMOSトランジスタ423のゲート端子はNAND回路422の出力と接続され、PMOSトランジスタ423のドレーン端子はバッファ回路501の出力端子Yと接続される。
【0198】
PMOSトランジスタ304のソース端子はバッファ回路501の出力端子Yと接続され、PMOSトランジスタ304のドレーン端子はグランドと接続され、PMOSトランジスタ304のゲート端子はバッファ回路501の入力端子Aと接続されている。
【0199】
図22(b)の構成を用いた典型的な設計例では電源VDDは5Vであり、電源VDD3として前記電源VDDよりも低い2.5Vが選ばれ、実施の形態においても例示しているが、前記VDD3電圧として3.3Vやその他の電圧を用いることも勿論可能である。
【0200】
なお、本図では遅延回路412の一例として抵抗413とコンデンサ414とで構成されるCR遅延回路としているが、これに限定する必要は無く、偶数個のインバータ回路を縦続に接続した構成等、さまざまな構成のものを用いることができる。
【0201】
このようにして、出力端子YはHighレベルとなるもののその電位VoHは電源VDD3の電位であって、従来構成のバッファ回路(図14)のように、定常的に電源VDDの電位にとどまることはない。
【0202】
前記VoH電圧は非点灯サイリスタのゲート・カソード間に印加されるので、前記電圧が電源電圧VDDよりも低くできたことで、サイリスタに定常的に印加される過電圧ストレスは低減され、素子劣化を防止することができる。
【0203】
(バッファ回路の動作)
図23は図22(b)に示したバッファ回路501の動作を説明するタイムチャートである。
図23は図14で示したタイムチャートのうち印刷データ部の動作(W部、X部の周辺)に対応するものであり、バッファ回路501の入力端子Sは図6におけるNAND回路114の出力と接続されてサイリスタの発光駆動を指令するDRVON−P信号が入力され、バッファ回路501の入力端子Aはデータ選択信号S1Nと接続されている。
また、図23に示す各部波形、すなわち波形A〜波形G、波形S、波形Yは、図22(b)のA点〜G点、S点、Y点における波形をそれぞれ示している。
【0204】
また、バッファ回路502についても同様に、入力端子Sは図6におけるNAND回路114の出力と接続されてサイリスタの駆動を指令するDRVON−P信号が入力され、バッファ回路502の入力端子Aはデータ選択信号S2Nと接続されている。
端子G1、G2は図2に示した共通母線431、432にそれぞれ接続される。
【0205】
図23において、入力端子信号Aは時刻T1では立下り、時刻T4で立ち上がり、時刻T7で再び立ち下がる。また、入力端子信号Sは時刻T2で立ち上がり、時刻T3で立ち下がり、時刻T5で再び立ち上がり、時刻T6で立ち下がるものとしている。
入力端子信号Sが立ち上がり、また立ち下がることで、遅延回路412の働きによりB点電位には図23に示す鈍った波形を生じる。
【0206】
インバータ回路415のスレッショルド電位をF部、G部、H部、I部として示すと、これによってインバータ回路415の出力(C)にはJ部、K部、L部、M部で示す波形を生じる。
波形Sと波形Cとの間には論理反転のほか、遅延時間Tdが設定されている。この遅延時間Tdは遅延回路412の内部の抵抗413の抵抗値、コンデンサ414の容量により設定されている。
【0207】
波形S、波形CはAND回路416に入力され、波形Dとして示す出力を生じ、N部、O部に示すように、信号Sの立ち上がりエッジ部に相当する箇所にパルス幅Tdの正極性パルスを生じる。
信号DはNAND回路417に入力され、信号EのP部に示すように、O部に対応する箇所にパルス幅Tdの負極性パルスを生じる。
【0208】
信号EがHighレベルにあるとPMOSトランジスタ418はオフ状態であるが、Lowレベルとされることでオン状態となって、そのドレーン電位は電源VDD電位(略5V)となる。
一方、信号Dはインバータ回路421に入力されて論理が反転し、その出力波形F(F点)にa部、b部で示す負極性のパルスを生じる。
【0209】
インバータ回路421の出力信号はNAND回路422の一方の入力端子に入力され、NAND回路422の出力であるG点においてはc部で立ち上がり、d部で立ち下がり、f部で立ち上がる他、e部にはパルス幅Tdの正極性パルスを生じる。
【0210】
図22のG点がHighレベルであるとPMOSトランジスタ423はオフ状態であるが、Lowレベルとなることでオン状態となってそのドレーン端子は電源VDD3に略等しい電位(略2.5V)となる。
【0211】
図23においてバッファ回路501の出力端子Yの波形を詳述すると、
タイムチャートの初期状態である、入力端子AがHigh、入力端子SがLowの場合、前述したようにPMOSトランジスタ418はオフ、PMOSトランジスタ423はオンとなって、出力端子YはHighレベルとなるものの、その電位は電源VDD3に略等しい2.5Vとなる。
【0212】
次いで時刻T1で入力端子AがLowレベルとされる。これにより前述したように、図22のPMOSトランジスタ304はオンとなって、前述したように出力端子YはLowレベルに遷移して、典型的な設計例では略2Vにまで電位低下する(Q部)。
【0213】
時刻T4で入力端子AがHighレベルとなると、PMOSトランジスタ304はオフされるとともに、PMOSトランジスタ423はオンとされて、出力端子Yは再びHigレベルとなり、略2.5Vに上昇する(R部)。
【0214】
時刻T5で入力端子SがHighレベルとなると、図22のE点に負極性パルス(図23のP部)を生じる結果、PMOSトランジスタ418は一瞬の間オンして、出力端子Yの電位はS部のように略5Vにまで立ち上がり、Tdの経過時間の後、T部に示すように、再び略2.5VのHighレベル状態となる。
【0215】
次いで時刻T7で入力端子AがLowレベルとされる。これにより図22のPMOSトランジスタ304はオン、PMOSトランジスタ423はオフとなって、前述したように出力端子YはLowレベルに遷移して、略2Vにまで電位低下する(U部)。
【0216】
(駆動波形の説明)
図24(b)は図2に示したサイリスタの、実施の形態2における駆動状況を示すタイムチャートである。図24(a)は図2の構成のうち、隣接するサイリスタ2素子(101、102)のみに簡略化して描いたモデル図である。
【0217】
図24(a)で破線で囲んで示すIC1はドライバICであって、図2に示したIC1を簡略化しており、サイリスタのアノード駆動回路119をDRV、その出力端子をDOとして図示している。
【0218】
また、バッファ回路501、502は実施の形態2で説明したサイリスタのゲート駆動用バッファ回路(図22)であり、その入力端子Aにはデータ選択信号S1N、S2Nが入力され、バッファ回路501、502の出力は端子G1、G2に接続される。
【0219】
なお、バッファ回路501、502の入力端子Sには駆動指令信号DRVON−Pが入力されるのであるが、該信号はストローブ信号(STB−N)から生成されるものであり、図24(b)においては前記DRVON−Pとは論理反転したSTB−N信号を用いて説明する。
【0220】
図24(a)に示すサイリスタ102、101のアノード端子同士は接続されて前記したIC1の端子DOに接続され、ゲート端子は前記した端子G1、G2にそれぞれ接続されている。
端子G1、G2は共通母線431、432に接続されて複数のサイリスタのゲート端子に接続されるものであるが、図24(a)においては各々1素子のみが図示されている。
なお、図24(a)においては、端子DOを介した駆動電流をIa、サイリスタ102、101のゲート電流をIg1、Ig2として図中に記載している。
また、Vgk1、Vgk2はサイリスタ102、101のゲート・カソード間電圧であって、前記した端子G1、G2の波形(図23のY)に対応している。
【0221】
図24(b)は図24(a)の動作を説明するタイムチャートであって、サイリスタ102、101を時分割に駆動する状況を示している。
【0222】
LOAD信号は図2におけるHD−LOAD信号に相当するラッチ信号、STB−NはHD−STB−N信号に相当する負論理のストローブ信号であって、図6のSTB端子に入力されるものである。
データ選択信号S1N、S2Nは図6のマルチプレクサ制御回路(CTRL2)116により発生されるメモリ選択信号であって、これをバッファ回路501、502に入力することでサイリスタのゲート駆動信号G1、G2を作成している。
【0223】
図24(b)において、図示しないHSYNC−N信号が入力されることで初期状態に設定され、データ選択信号S1NがHigh、データ選択信号S2NがLowとなっており、該信号がバッファ回路501、502に入力されることでその出力信号G1、G2はHigh、Lowレベルにそれぞれ設定される。
【0224】
このときのゲート駆動信号G1、G2の電位であるが、前述したように図22(b)の構成においてはHighレベル(VoH)は電源VDD3電位であり、図24(b)においてはVDD3電圧として2.5Vを設定する場合について例示している。
また、Lowレベル(VoL)はPMOSトランジスタ304のゲート・ソース間電圧Vgsに相当するものであって、このゲート・ソース間電圧Vgsは閾値電圧Vtより僅かに大きな値をとる。
ゲート・ソース間電圧VgsはPMOSトランジスタのゲート長やゲート幅、ソース端子とサブストレート端子の間の基板バイアス電圧を調整することでも変化させることが可能であるが、概略設計例として電源電圧VDD=5V、Vgs=2Vとするとき、VoL=2Vであり、前記数値例を図24(b)中に併せて記載している。
【0225】
図24(b)において、時刻T1のA部で示すようにLOAD信号が入力されると、B部に示すようにデータ選択信号S1NがLowに、データ選択信号S2NがHighに遷移する。
これによりC部に示すように、Vgk1波形は略2.5Vから略2Vに降下し、D部のようにVgk2電位は略2Vから略2.5Vに上昇している。
なお、Vgk1、Vgk2波形の近傍には(0V)としてグランド電位を注記している。
【0226】
次いで、時刻T2でサイリスタ102の点灯指令のためSTB−N信号が発生してE部に示すようにSTB−N信号がLowレベルに遷移し、F部に示すようにアノード電流Iaは立ち上がり遷移する。
【0227】
図19(a)〜(e)を用いて説明したように、サイリスタ102のターンオン過程においてアノード端子から注入された電流Iaがゲート端子から流出することでゲート電流Igとなり、これによりサイリスタがオン遷移させられる。
図24(b)において、アノード電流の立ち上がり波形でハッチングされたH部に相当するものが、G部で示すゲート電流波形Ig1となる。
このとき、図19(a)〜(e)を用いて説明したように、サイリスタのターンオン遷移やターンオフ遷移、すなわちゲート電流Ig1、またはIg2が流れる過程で、サイリスタ102、101のアノード電位はVaに示すように、その電位にピークを生じる。
【0228】
このとき、非発光とされる側のサイリスタのゲート電位が十分に高い電位状態にないと、アノード電位Vaのピーク値によって、非点灯側のサイリスタにゲート電流を生じてしまい、誤動作するおそれがあるのであるが、後述するように、図22(b)の構成を備えたバッファ回路においては前記タイミングでサイリスタのゲート電位を一瞬高くなるようにしているので、前記誤動作を未然に防止することが可能となっている。
【0229】
図24(b)の説明に戻ると、G部において、ゲート電流Ig1が流入することでバッファ回路501の出力端子電位(Vgk1)は、I部に示すように僅かに上昇するものの、サイリスタ102がターンオンするのに従い、そのゲート電位はサイリスタ自身による駆動能力によって低下してK部に示すように略0.2Vにまで低下させられる。なお、前記0.2Vは図19(b)で説明したNPNトランジスタ142のコレクタ・エミッタ間の飽和電圧Vce(sat)に相当するものである。
【0230】
このとき、ゲート電流Ig1はサイリスタ102をターンオンさせて該素子は発光することになる一方で、サイリスタ101のゲート端子電位Vgk2は初め略2.5VであるHighレベルとなっていて、ストローブ信号(STB−N)の前縁タイミングで、前述したパルス幅Tdの間だけゲート端子電位Vgk2は略5Vの電位とされる(b1部)。
【0231】
これにより、アノード端子電位Vaにa部に示すように一瞬ピーク状態を生じることがあったとしても、アノード端子からゲート端子に至るIg2で示すゲート電流を生じることはない。この結果、サイリスタ101は非点灯のままとすることができる。
【0232】
前記したサイリスタのターンオン過程が完了して、ディレイ時間Tdの後にゲート端子電位Vgk2は略5V電位から再び略2.5Vの電位に戻る(b2部)。
【0233】
次いで、時刻T3でSTB−N信号がHighレベルとされる(L部)。これにより、アノード電流Iaは立ち下げられてM部のように減少していく。アノード電流Iaがサイリスタの特性により決まる保持電流以下となるとサイリスタ102はターンオフして、そのアノード電位の上昇に伴ってゲート電流Ig1を生じる(N部)。
【0234】
N部のゲート電流Ig1は前記O部のアノード電流により生じたものであり、ハッチングして示すO部の電流に相当するものである。
前記N部のゲート電流が消減するに従い、サイリスタ102はオフしてそのゲート・カソード間電圧Vgk1は上昇して、P部で示すようにバッファ回路501自身のLowレベル出力電圧VoLである略2Vの電位となる。
【0235】
次に時刻T4において、Q部に示すようにLOAD信号が入力され、データ選択信号S1NがHigh、データ選択信号S2NがLowレベルへと遷移する(R部)。
これに伴い、ゲート駆動信号G1、G2もHigh、Lowとなるが、前述したようにバッファ回路501のHighレベル出力(VoH3)はS部に示すように略2.5Vであって、電源電圧VDDまでは上昇しない。
また、T部に示すように、Vgk2電位は略2Vにまで低下していく。
【0236】
このあと、時刻T5でU部に示すようにSTB−N信号がLowレベル遷移し、再びアノード電流Iaを生じてV部に示すように電流波形が立ち上がる。
【0237】
図19(a)〜(e)を用いて説明したように、サイリスタのターンオン過程においてアノード端子から注入された電流がゲート端子から流出することでゲート電流となり、これによりサイリスタ101がオン遷移させられる。
【0238】
図24(b)において、アノード電流の立ち上がり波形でハッチングされたX部に相当するものがサイリスタ101のゲート電流Ig2となりW部で示す電流波形を生じる。
【0239】
ゲート電流Ig2が流入することでバッファ回路502の出力端子電位(Vgk2)は、Y部に示すように僅かに上昇するものの、サイリスタ101がターンオンするのに従い、そのゲート電位が低下してZ部に示すように略0.2Vにまで低下させられる。なお、前記0.2Vは図19(b)で説明したNPNトランジスタ142のコレクタ・エミッタ間の飽和電圧Vce(sat)に相当するものである。
【0240】
このとき、前記ゲート電流Ig2はサイリスタ101をターンオンさせて該素子は発光することになる一方で、サイリスタ102のゲート端子電位Vgk1は初め略2.5VとHighレベルであり、アノード端子電位Vaがe部に示すようにピーク値を生じるに先立ち、ゲート端子電位Vgk1は略5Vとされ、アノード端子電位Vaにピークを生じたとしても、アノード端子からゲート端子に至るIg1で示すゲート電流を生じない。この結果、サイリスタ102は非点灯のままとすることができる。
【0241】
このように、図24(a)で示すサイリスタ102、101はゲート駆動信号G1、G2をHigh、Lowレベルに切り替えることによって点灯されるべきサイリスタ素子が選択され、他方の素子は非点灯とすることができ、図24(b)のE部のストローブ信号においてはサイリスタ102が点灯され、サイリスタ101は非点灯、U部ストローブ信号においてはサイリスタ101が点灯され、サイリスタ102を非点灯とすることができる。
【0242】
上記説明で明らかなように、サイリスタを点灯する場合にはアノード電流Iaにより駆動され、発光出力は前記電流値により定まるので、点灯する必要の無い場合にはアノード電流Iaをゼロとすればよく、そのためには印刷データ(図14のU部、V部)をオフ設定することになる。
【0243】
なお、前記説明で明らかなように、図22(b)における遅延回路412による遅延時間Td(図23参照)は、図24(b)におけるゲート電流Ig1、Ig2のパルス幅、すなわち、a部やe部のアノード電位Vaにピークを生じる期間を包含するように設定されており、遅延回路412はタイミング制御回路としての役割を果たす。
【0244】
(実施の形態2の効果)
前記の時分割駆動において、発光を行うべきサイリスタのゲート端子はLowレベルとされ、非発光とされるサイリスタのゲート端子はHighレベルとされる。ドライバICはCMOSプロセスを用いて製造されており、その電源電圧は5Vである。従来構成のゲート駆動回路においては、前記Highレベルは電源電位に略等しい5Vであるが、サイリスタにおいては耐電圧が7V程度しか確保することができず耐電圧が十分でないため、前記Highレベル印加電圧によりサイリスタが破壊されてしまうことがあった。
【0245】
それに対して実施の形態2の構成を備えるゲート駆動回路(図22(b))においては、前記Highレベルを電源電圧5Vよりも低い値とすることができ、非点灯状態のサイリスタのゲート・カソード間電圧をサイリスタ自身の耐電圧値以内をすることができて、前記破壊を未然に防止することができるようになった。
【0246】
それに加えて、サイリスタのターンオン過程でアノード電位にピークを生じるのであるが、前記ピークタイミングを包含するように、非点灯側のサイリスタのゲート端子をVDD電位とすることで、アノード端子電位にピークを生じたとしても、非点灯側サイリスタのアノード端子からゲート端子に至るゲート電流を防止することができる。
この結果、非点灯側サイリスタの誤点灯を未然に防止することができるようになった。
【0247】
(適用例:タンデムカラープリンタ)
実施の形態1及び2において説明した発光素子アレイは、電子写真プリンタの露光工程で光源として利用することができる。以下その一例としてタンデムカラープリンタを取り上げ、図25を用いて説明する。
【0248】
図25は本発明の駆動回路を含む光プリントヘッドを用いた画像形成装置を説明する概略断面図である。
図25において、画像形成装置600は、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)およびシアン(C)の各色の画像を各々に形成する4つのプロセスユニット601〜604を有し、これらが記録媒体605の搬送経路620の上流側から順に配置されている。これらプロセスユニット601〜604の内部構成は共通しているため、例えばマゼンタのプロセスユニット603を例に取り、その内部構成を説明する。
【0249】
プロセスユニット603には、像担持体としての感光体ドラム603aが矢印方向に回転可能に配置され、この感光体ドラム603aの周囲には、その回転方向上流側から順に、帯電装置603b、露光装置603c、現像装置603d及びクリーニング装置603eが配設されている。
【0250】
帯電装置603bは、感光体ドラム603aの表面に電荷を供給して帯電させる。
露光装置603cは、帯電された感光体ドラム603aの表面に選択的に光を照射して静電潜像を形成する。露光装置603cとしては、例えば光プリントヘッド(19)が用いられる。
【0251】
現像装置603dは、静電潜像が形成された感光体ドラム603aの表面に、マゼンタ(所定色)のトナーを付着させて顕像を発生させるものであり、後述のトナーカートリッジで構成されている。
クリーニング装置603eは、感光体ドラム603a上のトナーの顕像を転写した後に一部残留したトナーを除去する。
なお、これら各装置に用いられているドラム又はローラは、図示しない駆動源からギアなどを経由して動力が伝達され回転する。
【0252】
また、画像形成装置600は、その下部に、紙などの記録媒体605を堆積した状態で収納する用紙カセット606を装着し、その上方には記録媒体605を1枚ずつ分離させて搬送するためのホッピングローラ607が配設されている。さらに、記録媒体605の搬送方向における、ホッピングローラ607の下流側にはピンチローラ608、609と共に記録媒体605を挟持することによって、記録媒体を搬送する搬送ローラ610、及び記録媒体605の斜行を修正し、プロセスユニット601に搬送するレジストローラ611を配設している。これらのホッピングローラ607、搬送ローラ610及びレジストローラ611は図示されない駆動源からギア等を経由して動力が伝達され回転する。
【0253】
プロセスユニット601〜604の各感光体ドラムに対向する位置には、それぞれ半導電性のゴム等によって形成された転写ローラ612が配設されている。これら転写ローラ612には感光ドラム603a上に付着されたトナーによる顕像を記録媒体605に転写する転写時に、感光体ドラム601a〜604aの表面電位とこれら各転写ローラ612の表面電位に電位差を持たせるための電位が印加される。
【0254】
定着装置613は、加熱ローラとバックアップローラとを有し、記録媒体605上に転写されたトナーを加圧・加熱することによって定着する。この下流の排出ローラ614及び615は、定着装置613から排出された記録媒体605を、排出部のピンチローラ616及び617と共に挟持し、記録媒体スタッカ部618に搬送する。これら定着装置613、排出ローラ614等は図示しない駆動源からギアなどを経由して動力が伝達され回転される。
【0255】
次に上記構成の画像記録装置の動作を説明する。
まず、用紙カセット606に堆積した状態で収納されている記録媒体605がホッピングローラ607によって、上から1枚ずつ分離されて搬送される。続いて、この記録媒体605は、搬送ローラ610及びレジストローラ611並びにピンチローラ608及び609に挟持されて、プロセスユニット601の感光体ドラム601aと転写ローラ612の間に搬送される。その後、記録媒体605は、感光体ドラム601a及び転写ローラ612に挟持され、その記録面にトナー像が転写されると同時に感光体ドラム601aの回転によって搬送される。
【0256】
同様にして、記録媒体605は、順次プロセスユニット602〜604を通過し、その通過過程で、各露光装置601c〜604cにより形成された静電潜像を、現像装置601d〜604dによって現像した各色のトナー像がその記録面に順次転写され、重ね合わせられる。
【0257】
そして、その記録面上に各色のトナー像が重ね合わせられた後、定着装置613によってトナー像が定着された記録媒体605は、排出ローラ614及び615並びに及びピンチローラ616及び617に挟持されて、画像記録装置600の外部の記録媒体スタッカ部618に排出される。以上の過程を経て、カラー画像が記録媒体605上に形成される。
【0258】
以上被駆動素子がサイリスタである場合について説明したが、本発明は、サイリスタに限定されず、被駆動素子(101、102)が、第1、第2、及び第3の端子を有し、第3の端子に印加する電圧又は制御端子に流す電流により、第1及び第2端子間の導通を制御可能な三端子スイッチ素子である場合に適用可能である。サイリスタのアノード、カソード、ゲートが三端子スイッチ素子の第、第2、第3の端子に相当する。
【0259】
以上互いに隣接する2つのサイリスタで一つの群を構成し、奇数番目のサイリスタで第1の組を構成し、偶数番目のサイリスタで第2の組を構成する場合について説明したが、
群を構成する三端子スイッチ素子(例えばサイリスタ)の数は2に限らず3以上でも良い。群を構成する三端子スイッチ素子(例えばサイリスタ)の数に等しい数の組が形成され、各組は異なる群の互いに対応する(例えば、各群においてアレイの一端側からの順番が同じ位置の)三端子スイッチ素子(例えばサイリスタ)により一つの組が構成される。
この場合、同じ群に属する複数の三端子スイッチ素子の第1の端子(A)が互いに接続され、同じ組に属する複数の三端子スイッチ素子の第3の端子(G)がそれぞれ電気的接続手段を介して、それぞれの組に対応して設けられた複数の共通母線に接続され、三端子スイッチ素子の第3の端子(K)がグランドに接続されており、それぞれ複数の第1の駆動回路がそれぞれ複数の群に対応して設けられ、各々対応する群の複数の三端子スイッチ素子の第1の端子を駆動する複数の第1の駆動回路(例えばアノード駆動回路119がこれに相当する)が設けられ、それぞれ複数の組に対応して設けられ、各々対応する組の複数の三端子スイッチ素子の第3の端子を、対応する共通母線(431、432がこれに相当する)及び対応する電気的接続手段を介して駆動する複数の第2の駆動回路(例えばゲート駆動回路401、402、501、502がこれに相当する)が設けられる。
そして、複数の第1の駆動部(119など)が互いに異なるタイミングで、対応する群に属する複数の三端子スイッチ素子の第1の端子(A)を駆動し、複数の第2の駆動部(401)が互いに異なる期間に、対応する組に属する複数の三端子スイッチ素子の第3の端子(G)を駆動し、複数の第2の駆動部(401、402)の各々は、対応する組に属する複数の三端子スイッチ素子の第3の端子を駆動する期間(S1N=Low期間)には第1の電位(2V)を出力し、対応する組に属する複数の三端子スイッチ素子の第3の端子を駆動しない期間(S1N=High)のうち、第1の駆動部により第1の端子が駆動されるタイミングの最初の部分には、第1の電位とは異なる第2の電位(5V)を出力し、対応する組に属する複数の三端子スイッチ素子の第3の端子を駆動しない期間(S1N=High期間)のうち、第1の駆動部により第1の端子が駆動されるタイミングの最初の部分以外の期間には、第1の電位及び第2の電位と異なる第3の電位(3V)を出力するように構成される。
【符号の説明】
【0260】
101、102 発光サイリスタ、 119 駆動回路、 304 スイッチ素子、 401、402 ゲート駆動バッファ回路、 412 遅延回路、 417、418、423 スイッチ素子、 431、432 共通母線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイを構成する被駆動素子とそれを駆動する駆動素子列とを備える駆動回路において、
前記被駆動素子は、第1、第2、及び第3の端子を有し、前記第3の端子に印加する電圧又は前記制御端子に流す電流により、前記第1及び第2端子間の導通を制御可能な三端子スイッチ素子であり、
前記三端子スイッチ素子がアレイ状に配列されて、互いに隣接配置される複数の三端子スイッチ素子毎に群を形成し、
同じ群に属する複数の前記三端子スイッチ素子の前記第1の端子が互いに接続され、
異なる群の互いに対応する複数の前記三端子スイッチ素子によりそれぞれ三端子スイッチ素子の組が構成され、同じ組に属する複数の前記三端子スイッチ素子の前記第3の端子がそれぞれ電気的接続手段を介して、それぞれの組に対応して設けられた複数の共通母線に接続され、
前記三端子スイッチ素子の前記第3の端子がグランドに接続されており、
それぞれ前記複数の群に対応して設けられ、各々対応する群の複数の前記三端子スイッチ素子の前記第1の端子を駆動するための複数の第1の駆動部と、
それぞれ前記複数の組に対応して設けられ、各々対応する組の複数の前記三端子スイッチ素子の前記第3の端子を、前記対応する共通母線及び対応する電気的接続手段を介して駆動するための複数の第2の駆動部とを有し、
前記複数の第1の駆動部が互いに異なるタイミングで、対応する群に属する複数の前記三端子スイッチ素子の前記第1の端子を駆動し、
前記複数の第2の駆動部が互いに異なる期間に、対応する組に属する複数の前記三端子スイッチ素子の前記第3の端子を駆動し、
前記複数の第2の駆動部の各々は、
対応する組に属する複数の前記三端子スイッチ素子の前記第3の端子を駆動する期間には第1の電位を出力し、
対応する組に属する複数の前記三端子スイッチ素子の前記第3の端子を駆動しない期間のうち、前記第1の駆動部により前記第1の端子が駆動されるタイミングの最初の部分には、前記第1の電位とは異なる第2の電位を出力し、
対応する組に属する複数の前記三端子スイッチ素子の前記第3の端子を駆動しない期間のうち、前記第1の駆動部により前記第1の端子が駆動されるタイミングの最初の部分以外の期間には、前記第1の電位及び前記第2の電位と異なる第3の電位を出力する
ことを特徴とする駆動回路。
【請求項2】
前記三端子スイッチ素子がサイリスタであり、
前記第1の端子がアノードであり、前記第2の端子がカソードであり、前記第3の端子がゲートであることを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項3】
前記第1の電位と前記第2の電位との差が、前記第1の電位と前記第3の電位との差よりも大きい
ことを特徴とする請求項2に記載の駆動回路。
【請求項4】
前記第2の電位が、前記第3の電位よりも、前記第1の駆動回路が前記三端子スイッチ素子を駆動するタイミングの最初の部分に前記アノードに印加する電位により近い値であることを特徴とする請求項2に記載の駆動回路。
【請求項5】
前記第1の駆動部が、
第1のスイッチ素子と、第2のスイッチ素子と、第3のスイッチ素子と、出力端子とを有し、
前記第1のスイッチ素子は前記出力端子と前記グランドの間の導通、非導通を制御し、
前記第2のスイッチ素子及び前記第3のスイッチ素子は、前記出力端子と前記グランドに対して電位差を有する電源との間の導通、非導通を制御し、
対応する組の複数の前記三端子スイッチ素子を駆動する期間には前記第1のスイッチング素子を導通させるとともに、前記第2のスイッチング素子を非導通とし、
対応する組の複数の前記三端子スイッチ素子を駆動しない期間には前記第1のスイッチング素子を非導通にするともに、前記第2のスイッチング素子を導通させ、
対応する組の複数の前記三端子スイッチ素子を駆動しない期間のうち、前記第1の駆動部により前記三端子スイッチ素子が駆動されるタイミングの前記最初の部分には、前記第3のスイッチング素子を導通させ、上記タイミングの前記最初の部分以外の期間には前記第3のスイッチング素子を非導通とする
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の駆動回路。
【請求項6】
前記第2の駆動部が、前記第1の駆動部が前記三端子スイッチ素子を駆動するタイミングを表す信号を受け、
該タイミングの開始から所定の時間持続するパルスを発生する前縁検出回路を有し、
前記第2の駆動部が対応する組に属する前記三端子スイッチ素子を駆動しない期間中に前記前縁検出回路により前記パルスが発生されているときは、前記第3のスイッチング素子を導通させることを特徴とする請求項5に記載の駆動回路。
【請求項7】
前記第1及び第3のスイッチング素子がPMOSトランジスタであり、
前記第2のスイッチング素子がNMOSトランジスタであり、
前記第3のスイッチング素子を構成するPMOSトランジスタのゲートに、前記グランドの電位を印加することで前記第3のスイッチング素子を導通させる
ことを特徴とする請求項6に記載の駆動回路。
【請求項8】
前記第1の駆動部が、
第1のスイッチ素子と、第2のスイッチ素子と、第3のスイッチ素子と、出力端子とを有し、
前記第1のスイッチ素子は前記出力端子と前記グランドの間の導通、非導通を制御し、
前記第2のスイッチ素子は、前記出力端子と、前記グランドに対して第1の電位差を有する第1の電源との間の導通、非導通を制御し、
前記第3のスイッチ素子は、前記出力端子と、前記グランドに対して第2の電位差を有する第2の電源との間の導通、非導通を制御し、
対応する組の複数の前記三端子スイッチ素子を駆動する期間には前記第1のスイッチング素子を導通させるとともに、前記第2のスイッチング素子及び前記第3のスイッチング素子を非導通とし、
対応する組の複数の前記三端子スイッチ素子を駆動しない期間には前記第1のスイッチング素子を非導通にし、
対応する組の複数の前記三端子スイッチ素子を駆動しない期間のうち、前記第1の駆動部により前記三端子スイッチ素子が駆動されるタイミングの前記最初の部分には、前記第3のスイッチング素子を導通させるとともに、前記第2のスイッチング素子を非導通とし、
対応する組の複数の前記三端子スイッチ素子を駆動しない期間のうち、前記第1の駆動部により前記三端子スイッチ素子が駆動されるタイミングの前記最初の部分以外の部分では、前記第2のスイッチング素子を導通させるとともに、前記第3のスイッチング素子を非導通とする
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の駆動回路。
【請求項9】
前記第2の駆動部が、前記第1の駆動部が前記三端子スイッチ素子を駆動するタイミングを表す信号を受け、
該タイミングの開始から所定の時間持続するパルスを発生する前縁検出回路を有し、
前記第2の駆動部が対応する組に属する前記三端子スイッチ素子を駆動しない期間中に前記前縁検出回路により前記パルスが発生されているときは、前記第3のスイッチング素子を導通させ、前記第2のスイッチング素子を非導通とすることを特徴とする請求項8に記載の駆動回路。
【請求項10】
前記第1、第2及び第3のスイッチング素子がPMOSトランジスタであり、
前記第1、第2及び第3のスイッチング素子を構成するPMOSトランジスタのゲートに前記グランドの電位を印加することで前記第1、第2及び第3のスイッチング素子を導通させることを特徴とする請求項9に記載の駆動回路。
【請求項11】
前記三端子スイッチ素子がサイリスタであり、
前記タイミングの最初の部分が、前記サイリスタのターンオン時におけるアノード電流の立ち上がり初期期間に対応する期間であることを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項12】
前記前縁検出回路から出力されるパルスが正のパルスであり、
前記第3のスイッチング素子がPMOSトランジスタであり、
前記第1の駆動部により対応する組の複数の前記三端子スイッチ素子を駆動する期間に「低」レベルとなり、駆動しない期間に「高」レベルとなる信号と前記パルスとの否定論理和を取るNAND回路をさらに有し、
前記NAND回路の出力が前記第3のスイッチング素子を構成するPMOSトランジスタのゲートに印加されることを特徴とする請求項6に記載の駆動回路。
【請求項13】
前記前縁検出回路から出力されるパルスが正のパルスであり、
前記第2及び第3の三端子スイッチ素子がPMOSトランジスタであり、
前記第1の駆動部により対応する組の複数の前記三端子スイッチ素子を駆動する期間に「低」レベルとなり、駆動しない期間に「高」レベルとなる組選択信号と前記パルスとの否定論理和を取る第1のNAND回路と、
前記パルスを反転したものと前記組選択信号との否定論理和を取る第2のNAND回路とをさらに有し、
前記第1のNAND回路の出力が前記第3のスイッチング素子を構成するPMOSトランジスタのゲートに印加され、
前記第2のNAND回路の出力が前記第2のスイッチング素子を構成するPMOSトランジスタのゲートに印加される
ことを特徴とする請求項9に記載の駆動回路。
【請求項14】
前記三端子スイッチ素子がサイリスタであり、
前記第3の電位が、サイリスタのアノードに駆動電圧が印加されたときに、該サイリスタをターンオンさせるために十分に低い電位であり、
前記第2の電位が前記第1の、サイリスタのアノードに駆動電圧が印加されても、該サイリスタがターンオンしない程度に十分に高い電位である
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項15】
前記三端子スイッチ素子の駆動に際し、第1端子の駆動波形の立ち上がり部分の電流の一部もしくは全部を前記第3端子の駆動電流とする
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項16】
前記組の数が2であり、2つの組の一方の複数の前記三端子スイッチ素子の第3の端子を駆動する期間を表す信号と、該2つの組の他方の複数の前記三端子スイッチ素子の第3の端子を駆動する期間を表す信号とは相補的である
ことを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載の駆動回路。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれかに記載の駆動回路と、
前記複数の群の前記複数の三端子スイッチ素子の前記第1の端子を駆動するための第1の駆動信号を生成する回路と、
前記複数の組の前記複数の三端子スイッチ素子を順番に選択して駆動させるための第2の駆動信号を生成する回路とを備え、
前記第1の駆動信号に基づいて、前記三端子スイッチ素子の第1の端子に電位を印加し、
前記第2の駆動信号に基づいて、前記三端子スイッチ素子の第3の端子を駆動する
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項18】
請求項17に記載の駆動装置を備え、
前記被駆動素子が発光サイリスタであり、
該発光サイリスタを電子写真プロセスの光プリントヘッドの発光素子として用いたことを特徴とする
画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−204973(P2011−204973A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71900(P2010−71900)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【出願人】(500002571)株式会社沖デジタルイメージング (186)
【Fターム(参考)】