説明

駆動系の制御方法

本発明は、内燃機関(1)と電気モータ(6)とを備えた車両の駆動系を制御する方法であって、それによって内燃機関の駆動軸(4)を電気モータ(6)を用いて加速させることが可能である。アップシフトの発生及び/又はアップシフト工程の開始において、駆動軸(4)のアイドリング回転数を電気モータ(6)によって増加させることが可能である。ターボ過給機が充填圧力を増加させるために設けられる場合、電気モータは、アイドリング回転数を増加させることで、低回転速度のターボ過給機の低効率を補うことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関と電動機とを備えた車両の駆動系を制御する方法に関し、該方法では、電動機を用いて内燃機関の駆動軸を加速することが可能である。
【背景技術】
【0002】
車両の内燃機関用のスタータジェネレータは、特許文献1に記載されており、始動装置及び発電機の機能を果たす三相電動機(electric three phase machine)を含む。これに加えて、電動機は、内燃機関又は少なくとも1つの被動輪を制動することで、特に車両を加速又は制動するために及び/又は滑り防止制御の点で被動輪の滑りを防ぐために、駆動軸の加速及び/又は制動を生み出し又は支援する。電動機は、補償のために迅速に交互に切り替わる逆相トルクを生成するので、駆動軸の回転の不均一性を軽減するのに使用されることも可能である。
【0003】
自動車分野における低容量の内燃機関の場合、削減された行程容積の結果起こるトルクの減少は、しばしば圧力充填を用いて、特にターボ過給機を用いて補われる。ターボ過給機の場合、タービンは排気流が増加するにつれより速く回転する。これにより、充填圧力、すなわち内燃機関の燃焼空間内へ強制的に空気を送り込む圧力、の増大をもたらす。しかし、エンジン回転数が低く部分負荷の状態では、排気の間隔が長く排気流が低速なので、ターボ過給機の効果は限られる。これは、特に低行程容積の内燃機関では、貧弱な発進性能を招く(所謂「ターボラグ」と呼ばれる)。可変タービン形状の使用は、高排気温度及び幾何級数的燃焼(geometric combustion)を伴う火花点火式エンジンの場合、実施が困難であり、発進トルクの僅かな増大をもたらすに過ぎない。電動アシスト圧力充填機構又は電動アシストターボ過給機を有する解決策は、技術的に大変複雑である。
【0004】
特に自動化されたクラッチ機構について、かなりの無駄時間が発生しており、これは車両が発進する際及びクラッチが係合可能になるまでのシフト期間中の低回転速度におけるターボ過給機の低効率が原因である。このような状況において、一般的習慣として、エンジン回転数を監視しかつ回転数が一定の限界値を超えた時にのみクラッチの係合完了を許可する、制御装置、特にエンジン及び/又は変速機制御装置が設けられ、このような方法で、クラッチ係合後の内燃機関の所謂「エンスト」は発生不可能となる、と想定される。内燃機関のエンストを防止するため、クラッチは通常、内燃機関回転数が十分高くなるまでは半クラッチで運転される。
【0005】
【特許文献1】欧州特許第0 876 554B1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、特に低回転速度域で、短時間でクラッチの係合をもたらす車両の駆動系の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
目的は請求項1の特徴を有する方法を用いて達成される。
【0008】
本発明による方法は、アップシフトが開始された時又はアップシフトの最中に、駆動軸のアイドリング回転数が電動機によって増加されることを特徴とする。
【0009】
既に車両に設けられており、特に停止/発進操作用に使用されることが可能なスタータジェネレータ又はモータジェネレータは、好ましくは電動機として使用される。電動機は、このために設けられたベルトを用いて駆動軸を駆動することができる。しかし、電動機は、駆動軸の上に直接配置されるようにすることも可能である(所謂、一体型配置)。三相電動機、特に同期電動機、非同期電動機、又はリラクタンス電動機が好適に使用される。
【0010】
電動機による駆動軸の加速支援により、内燃機関が「エンスト」することなく、クラッチはより早く係合可能であり、これは、追加加速のおかげで、駆動軸回転速度がより早い時点で、冒頭で述べたクラッチを係合するための、限界駆動軸回転速度を超えるからである。従って、制御装置がクラッチの半クラッチでの操作を保持する必要時間は、電動機によるアイドリング回転数の増加のない運転の場合よりも短時間である。クラッチの係合は、これに応じてより早い時点で許可されることが可能となる。
【0011】
従って、発進時及びシフト中のクラッチ係合時間は、手動操作及び自動化の両方のクラッチ機構及びシフト機構で、有利に短縮化されることが可能である。その結果として、より速くより快適な発進及びシフト動作が得られることが可能である。
【0012】
本発明による方法は、冒頭で述べたように、低回転速度におけるターボ過給機構の低効率が原因の、所謂「ターボラグ」を補償するのに有利に使用されることが可能である。しかし、本発明による方法は、比較的高回転速度において使用されることも可能である。
【0013】
本発明のさらなる有利な実施形態は、従属項及び、図面に基づいて下記に述べる例示的な実施形態に開示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、内燃機関1及び電動機6を備えた車両の駆動系を示している。駆動軸又はクランクシャフト4は内燃機関1に割り当てられ、クラッチ3によって変速機2の伝動軸5へ接続されることが可能である。電動機6は好ましくは、これ以上詳細には示さないが、エンジンハウジング上に配置され、ベルト7を用いて内燃機関1の駆動軸4を駆動可能である。このように、電動機6は、内燃機関1に加えて、駆動軸4も回転させることが可能であり、駆動軸4の加速及び/又は制動を行う。電動機6には、好ましくは電気エネルギーが供給され、パワーエレクトロニクスユニット(図示せず)によって制御され、さらに電力変換器又は電力逆変換器と、図示されない制御装置とを備えている。制御装置は独立した制御装置であることも可能である。しかし、制御装置は、既に存在する駆動系制御装置内、例えばエンジン制御装置及び/又は変速機制御装置内に、内蔵されるようにすることも可能である。
【0015】
クラッチ3がシフトのために解放される場合、駆動軸4の(アイドリング)回転数が十分な値に到達するまでは再び係合されないことが好ましいので、クラッチ3が係合した後、駆動軸4は、内燃機関が「エンスト」する可能性のある値まで制動をかけられることはない。別の制御装置(図示せず)は通常、クラッチ3の係合後に内燃機関の「エンスト」が不可能なほど駆動軸4の回転速度が十分に高い値に到達するまで、クラッチ3の半クラッチでの操作を確保する。この別の制御装置は、独立した制御装置とすることも可能である。しかし、別の制御装置は、既に存在する駆動系制御装置、例えばエンジン制御装置、及び/又は変速機制御装置、及び/又は電動機を制御する制御装置、に内蔵されるようにすることも可能である。
【0016】
本発明による方法では、駆動軸4のアイドリング回転速度は、アップシフトが開始された時又はアップシフトの最中に、クラッチ3の係合時に内燃機関1の「エンスト」を防ぐ値まで電動機6を用いて増加される。
【0017】
本発明による方法を用いて、アイドリング回転速度は増加されることが可能であり、従って、特に低回転速度では低効率で、よってこの回転速度範囲における回転速度/トルクの増加にはわずかしか貢献できないターボ過給機(図示せず)が充填圧力を増加させるのに使用される場合、低回転速度のターボ過給機の低効率を補償することが可能である。
【0018】
例として、図2は、電動機による加速支援の有無により発生する、駆動軸回転速度及び車両速度の時間に対する特性曲線を示している。時間は横軸に表示されている。回転速度は左縦軸に表示され、車両速度は右縦軸に表示されている。特性曲線f及びfは、回転速度の特性曲線であり、回転速度特性fは電動機による加速支援を伴って生成され、回転速度特性fは電動機による加速支援無しに生成されている。
【0019】
特性曲線f及びfは車両速度の特性曲線であり、車両速度特性fは電動機による加速支援を伴って生成され、車両速度特性fは電動機による加速支援無しに生成されている。ブレーキペダルは0秒で解放される。スロットル全開は時点tに当たる。電動機が駆動支援のために使用される場合、この電気的支援は時点tから先に対して有効になる。
【0020】
時点tまで、回転速度特性f及びfは同様のほぼ一定の動向をしている。しかし、電動機による駆動支援の使用の影響を受ける回転速度特性fは時点tで既に上昇する一方で、回転速度特性fの上昇はこれから約0.08秒後まで発生しない。
【0021】
電動機による駆動支援を備えた車両は、相応して時点t(車両速度特性f参照)で発進し、一方で電動機による駆動支援の無い車両は時点t(車両速度特性f参照)まで発進せず、ここでtはtより小さい値である。車両速度特性f及びfによると、電動機による駆動支援を備えた車両は、電動機による駆動支援の無い車両より早い時点で高速に到達する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】駆動系の概略図(一定の縮尺ではない)を示す。
【図2】電動機による加速支援の有無による、車両関連変数の時間についての特性の例示的グラフを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(1)と電動機(6)とを備え、前記電動機(6)を用いて前記内燃機関の駆動軸(4)を加速させることが可能である、車両の駆動系を制御する方法であって、
アップシフトの最中及び/又はアップシフトが開始された時に、前記駆動軸(4)のアイドリング回転数が前記電動機(6)によって増加されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記電動機(6)は、前記内燃機関(1)をベルト(7)を用いて駆動することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ターボ過給機が充填圧力を増加させるのに使用され、前記アイドリング回転数の増加が低回転速度の前記ターボ過給機の低効率を補償することを特徴とする請求項1あるいは2に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−533517(P2007−533517A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521486(P2006−521486)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008239
【国際公開番号】WO2005/012027
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(598051819)ダイムラークライスラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【Fターム(参考)】