説明

骨セメント材料硬化監視装置

【課題】コンテナー内に提供された骨セメント材料の硬化を監視する装置を提供する。
【解決手段】コンテナー内に提供された骨セメント材料の硬化を監視する装置は、骨セメント材料の温度に基づくコンテナー内のある種類のセメント材料が硬化するのに要する時間に関連するデータが記憶されたメモリ装置を含む。データプロセッサは、セメント材料の温度に関連するデータ、および、硬化の程度に関連するメモリ装置内のデータ、に基づいて、セメント材料が硬化するのに要する時間を計算するのに用いられる。出力装置は、コンテナー内のセメント材料の硬化の程度に関連する、データプロセッサからのデータ用に、設けられている。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、骨セメント材料の硬化を監視する装置および方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
骨組織と植え込まれた人工器官コンポーネント(prosthesis component)との間を固定するために用いられる骨セメントは、一般的に、第1の材料および第2の材料によって提供され、第1の材料および第2の材料は互いに反応すると、硬質のセメント材料が形成される結果へと導く。骨セメント材料の例には、アクリレート材料に基づく骨セメント材料が含まれ、アクリレート材料は、重合によって反応して、アクリレートポリマーを形成することができる。骨セメント組成物は、アクリレートポリマーの粒子を含んでいてよく、その粒子は、重合反応でモノマーと反応する。骨セメント組成物は、例えば、硫酸バリウム、二酸化ジルコニウム、ガラス粒子、などの充填剤のような、その他の材料をも含んでいてよい。骨セメントは、液体のアクリレートモノマーをアクリレートポリマー粒子のような粉末と、そして、おそらく、硫酸バリウム、二酸化ジルコニウム、および/または、ガラス粒子、と、混合することによって、形成することができる。結果として得られた混合物は、ペーストまたはドーに類似した粘稠度(dough-like consistency)を有している。既知のように、混合物の成分は反応し、反応には、アクリレートモノマーの重合、および、アクリレートポリマー粒子との共重合、が含まれる。骨セメント組成物の粘度は、反応の間に増加し、結果として硬質のセメントが得られる。
【0003】
手術の結果は、骨セメントが部分的に硬化した時に、骨セメントが混合容器から、人工器官コンポーネントが植え込まれるべき準備された骨表面へ(例えば、股関節人工器官または肩関節人工器官の場合は大腿骨または上腕骨の骨髄内腔のような準備された骨の腔内に、あるいは、膝関節人工器官の大腿骨または脛骨の場合のように骨表面上に)、移されることを確実にすることによって、最適化できることが、知られている。硬化の程度は、骨セメントが流動性であり過ぎないように、最小の閾値を超えなければならず、骨セメントの取り扱いを容易にし、骨の準備された表面に接触して置かれた後に骨セメントが望ましくなく流動するリスクを最小にしている。以下に記載されるように、硬化反応のこのステージに到達するために要する時間は、「待ち終了時間(End of Waiting Time)」と呼ばれることがある。しかし、硬化の程度は、その後の人工器官コンポーネントの導入に障害を生じさせないように、および、骨セメントが骨組織の多孔質の表面構造に浸透することができるようにするために、最大の閾値を超えてはならない。
【0004】
手術の結果は、骨セメントが部分的に(骨セメントが準備された骨表面に置かれたときの硬化の程度より硬い硬化の程度で)硬化したときに、人工器官コンポーネントが、(例えば、股関節人工器官または肩関節人工器官の場合には大腿骨または上腕骨の骨髄内腔のような準備された骨の腔内の、あるいは、膝関節人工器官の大腿骨または脛骨の場合のように骨表面上の)骨セメントに接触して置かれることを、確実にすることによって、最適化されることも、知られている。硬化の程度は、骨セメントが流動性であり過ぎないように、最小の閾値を超えなければならず、骨セメントが流動性でありすぎるということは、骨セメントが、人工器官コンポーネントが配備されたときに、望ましくない程度に流れることを意味する。しかし、硬化の程度は、人工器官コンポーネントの導入に障害を生じさせないように、最大の閾値を超えてはならない。
【0005】
外科医にとって、硬化の程度を触感で判定することが、一般的であり、触感での判定には、骨セメントが硬化する間に骨セメントをこねて、骨セメントの硬化の程度が、骨セメントを準備された骨表面に移すのに適切なレベルに到達しているか、および、次に人工器官コンポーネントを骨セメントに導入するのに適切なレベルに到達しているか、を評価するための判定に頼ることを含む。骨セメントの硬化の程度を特徴付ける骨セメントの特徴には、粘度(または、堅さ)、粘着性、平滑性(「砂っぽさ(grittiness)」)、などが含まれる。これらの特徴の評価は、環境条件の影響を受けうる。硬化の速度は、骨セメントの成分が混合されて周囲温度に置かれたときの骨セメントの成分の温度の影響を受ける。知覚された粘着性のような要因は、温度および湿度の影響を受ける可能性がある。
【0006】
硬化の程度を判定するのに主観的な方法に頼ることは、その判定が常に信頼できるものとは限らない、および、その方法を新たに用いる利用者を訓練することが困難なことがある、という不利益を有する。さらに、硬化反応の性質は、硬化反応が条件、特に温度の変動による影響を受ける可能性がある、というものである。特に、周囲温度と、外科医が骨セメントのサンプルをこねるときの外科医の指の温度との差が、そのサンプルと、手術で用いられることになる骨セメントの残りの部分と間での異なる硬化の速度を、結果として導く可能性がある。さらに、温度および湿度の変動が、セメントの粘着性が指でセメントに触れることで操作者によって評価される場合に、セメントの粘着性の知覚に影響を及ぼすはずである。
【0007】
セメントがある特定の程度の硬化に到達したことの判定に影響を及ぼす複数の要因が、その判定を信頼できるものとして行うための物理的な測定を用いることを困難にしていることが、明らかである。これらの要因には、周囲温度および周囲湿度、選択された混合方法、操作者の手の温度(手作業での混合が用いられる場合)、などが含まれる。物理的な測定方法に依存することの困難さは、硬化の初期のステージでの組成物の性質の変化がある種の組成物では急速に生じうるという事実によって、倍加される。
【0008】
ある種の硬化可能な骨セメント材料の誘電特性が、硬化反応の間に変化することが、知られている。この特徴が、ドイツ国特許出願第A−10009481号に開示された測定装置に用いられていて、その装置は、一対の蓄電器電極を含んでいる。骨セメントが、電極の間に置かれてよい。骨セメントの誘電特性が、電極間に電位差を加えることによって、測定されうる。キャパシタンスの測定が、骨セメントの硬化の程度の表示を提供することができる。
【0009】
〔発明の開示〕
本発明に基づけば、セメント材料が硬化するのに要する時間の信頼性の高い推定値が、硬化反応の少なくとも開始時に測定されたセメントの温度に関連するデータと組み合わせて、さまざまな温度でのセメントが硬化するのに要する時間に関連する記憶されたデータを用いて、得られることが、見出されている。
【0010】
したがって、ある態様では、本発明は、骨セメント材料の硬化を監視する装置を提供し、その装置は、
a)セメント材料用のコンテナーと、
b)コンテナー内の特定の種類のセメント材料がセメント材料の温度に従って硬化するのに要する時間に関連するデータが記憶された、メモリ装置と、
c)セメント材料の温度に関連するデータ、および、硬化の程度に関連するメモリ装置内のデータ、に基づいて、セメント材料が硬化するのに要する時間を計算するための、データプロセッサと、
d)コンテナー内のセメント材料の硬化の程度に関連するデータプロセッサからのデータ用の出力装置と、
を具備する。
【0011】
別の態様では、本発明は、骨セメント材料の硬化を監視する方法を提供し、その方法は、a)セメント材料の温度に関連するデータ、および、b)セメント材料の温度に基づくセメント材料の硬化の速度に関連するメモリ装置からのデータ、に基づいて、セメント材料が硬化するのに要する時間を計算する過程、を具備する。
【0012】
本発明の技術は、本発明の技術が、骨セメント材料が硬化するのに要する時間の、信頼性の高い推定値を提供できると言う利点を有する。例えば、本発明の技術は、骨セメント材料の、「作用終了時間」、または、それに続く「硬化時間」、あるいは、それらの両方、を推定するための基礎を提供することができる。セメントの硬化時間に関する情報は、温度の測定値から、特に、硬化反応の開始時の温度の測定値から、導くことができる。
【0013】
好ましくは、本発明の装置は、セメント材料の温度に関連するデータを提供するための温度センサーを含んでいる。好ましくは、温度センサーは、コンテナー内のセメント材料の温度を測定するように配列されている。この配列には、センサーがコンテナー内のセメントと接触していることが含まれることが多い。例えば、センサーは、セメント用のコンテナーの壁の中に設けられていてよい。センサーが、例えば、硬化の程度に関する追加の情報を提供するように、硬化反応の全体に亘ってセメントの温度を監視することが好ましい場合がある。このような場合には、適切な温度センサーが、例えば、約20℃〜約90℃の間の、硬化反応の間に遭遇する範囲内の温度の変化に対して敏感でなければならない。適切な温度センサーは、0℃〜100℃の動作範囲と、±0.25℃の精度と、を有している場合がある。センサーは、硬化反応の開始時のセメント材料の温度に関連するデータをデータプロセッサに提供してよい。好ましくは、センサーは、硬化反応のその後のステージでの、特に、硬化反応の全体に亘る、セメント材料の温度に関連するデータをデータプロセッサに提供する。
【0014】
硬化の程度の測定値が、硬化可能な骨セメント組成物の成分を最初に混合した後に即座に得られることが、本発明のさらなる利点である。したがって、本発明は、硬化の程度の測定値が骨セメント組成物の粘度の測定値から導かれるときに生ずる困難さを回避する。さらに、硬化の程度の測定値は、その中で骨セメント組成物の成分が混合される容器内に測定コンポーネントを位置させる必要なしに、本発明の技術によって、得ることができる。容器内に測定コンポーネントを位置させる必要がないことは、粘度などの特徴の測定とは、対照的でありうる。
【0015】
本発明の技術で用いられる硬化の程度のデータが、具体的な手技で用いられるべき骨セメント材料と関連していることは、一般的に、好ましい。骨セメント材料の硬化特性は、広範囲に亘って変化する可能性がある。本発明の装置が、一つより多くの骨セメント材料の硬化特性に関連するデータを含む場合には、その装置の利用者は、適切なデータの集合が用いられるように、使用されている材料を特定しなければならない。
【0016】
硬化の程度のデータは、骨セメント材料に対して実施された検査手順から導かれてよい。硬化の程度のデータは、適切な経験を積んだ操作者によって、制御された条件の下で収集されてよい。例えば、経験的なまたは主観的な技術を用いて(セメント材料が硬化するときにセメント材料に触って感じることによる監視などによって)硬化反応中のステージを特定することが必要な場合、この特定は、硬化反応の複数のステージでのセメントの特性を、経験を通して認識することができる訓練された専門技術者によって、制御された条件の下で、行われてよい。
【0017】
前述のとおり、初期の温度、および、記憶された硬化の程度のデータ、から導かれる骨セメント材料の硬化時間の推定値は、例えば、粘度、温度、および、キャパシタンス、の変化の測定値を含む、セメントから導かれたその他のデータをさらに利用してよい。
【0018】
上述されたように、初期の温度、および、記憶された硬化速度のデータ、から導かれた骨セメント材料の硬化時間の推定値は、放射線に対するセメントの不透明度の変化の測定値から導かれたその他のデータをさらに利用してよい。
【0019】
したがって、ある態様では、本発明の装置は、
a)放射源であって、この放射源から放射線がコンテナー内のセメントに向けられる、放射源と、
b)コンテナー内のセメントを通過した放射源からの放射線を検出するため、および、検出された放射線の強度に基づく信号を生み出すための、センサーと、
c)セメントが硬化する間の放射源からの放射線に対するコンテナー内のセメントの不透明度の変化に起因する、センサーによって検出された放射線の強度の変化、を監視するための、データプロセッサと、
を具備する。不透明度の測定値を用いることは、骨セメント組成物が硬化するときの骨セメント組成物の不透明度の変化が著しい場合があり、それが正確な測定を容易にすることができる、という利点を有する。したがって、不透明度の変化を監視することによる、骨セメント組成物の硬化の程度の正確な監視は、誘電特性の変化を監視することによる、硬化の程度の監視よりも、より容易でありうる。誘電特性の変化に比較した、不透明度の比較的大きな変化は、硬化の程度が監視される正確さが、正確なおよび頻繁に繰り返される較正により依存していないことをも意味しうる。これらの利点は、骨セメント材料が硬化するときの骨セメント材料のその他の物理的特性の測定から得られることは明らかではない。
【0020】
硬化の程度の測定値が、硬化可能な骨セメント組成物の成分を最初に混合した後に即座に得られうることが、骨セメント材料の硬化の程度の推定に、不透明度の測定を用いることの利点である。したがって、本発明は、硬化の程度の測定値が骨セメント組成物の粘度の測定値から導かれるときに生ずる困難さを回避する。さらに、硬化の程度の測定値は、その中で骨セメント組成物の成分が混合される容器内に測定コンポーネントを位置させる必要なしに、本発明の技術によって、得ることができる。容器内に測定コンポーネントを位置させる必要がないことは、粘度の測定を含む場合のある技術とは、対照的でありうる。
【0021】
骨セメント組成物の硬化の程度を監視するために不透明度の測定値を用いることは、骨セメント組成物が硬化するときの骨セメント組成物の不透明度の変化が著しいことがあり、それが、正確な測定を促進することができると言う利点を有する。したがって、不透明度の変化を監視することによる、骨セメント組成物の硬化の程度の正確な監視は、誘電特性の変化を監視することによるものに比べて、より容易でありうる。誘電特性の変化に比較して、比較的大きな不透明度の変化は、硬化の程度が監視される精度が、正確で頻繁に繰り返される較正に、より依存していないことをも意味していてよい。これらの利点が、骨セメント材料が硬化するときの骨セメント材料のその他の物理的特性の測定から得られることは、明らかではない。
【0022】
不透明度の変化を測定する技術を用いることは、装置が比較的廉価なコンポーネントを用いて比較的容易に構成できるという、さらなる利点を有する。
【0023】
不透明度の変化を測定する技術を用いることは、硬化の程度が骨セメント用のコンテナーの外側に位置するコンポーネントを用いて測定できるという、さらなる利点を有する。したがって、既知の技術が、硬化の程度を測定するために用いられるコンポーネントから妨害されることなく、骨セメントを混合するため、および、使用のために骨セメントを送達するために、用いられることができる(混合パドル、注射器、およびボウル混合容器などの使用を含む)。
【0024】
適切な放射源は、ダイオード装置(LED)を含んでいてよい。放射源用の電源は、放射源に供給される電力の変動に起因する、放射線出力の変動を最小にするための制御コンポーネントを含んでいてよい。例えば、電源は、蓄電器のような、平滑化コンポーネントを含んでいてよい。放射源、または、センサー、あるいは、それらの両方、は、他の供給源(周囲の放射線を含む)からの放射線の進入を最小にするために、不透明なハウジング内に取り付けられていてよい。例えば、放射源、または、センサー、あるいは、それらの両方、は、放射線の進入に起因する不正確さを最小にするために、コンテナーの関連する部分を覆って嵌め合わされていてよい一つ以上の不透明なスリーブ内に取り付けられていてよい。スリーブは、布製スリーブとして、特に、柔軟な布として、提供されてよい。スリーブを提供することは、コンテナーの周囲に緊密に嵌め合わされるという利点を有することができる。スリーブは、ブロックの形態の、固体スリーブとして提供されてよく、この固体スリーブは、コンテナーを取り囲むように、コンテナーの少なくとも一部の周りに嵌め合わされていてよい。
【0025】
本発明の装置で用いられうる放射源は、赤外線供給源、および、紫外線供給源、ならびに、中間のエネルギーを有する供給源、を含む。放射線の波長は、少なくともほぼ1nmである。放射線の波長は、適切には、ほぼ105nm以下であってよい。好ましくは、放射線は、可視範囲内(好ましくは、少なくともほぼ400nmの波長、好ましくは、ほぼ700nm以下の波長)にある。紫外線が用いられてよい(少なくともほぼ1nmの波長、ほぼ400nm以下の波長)。赤外線が用いられてよい(少なくともほぼ700nmの波長、ほぼ105nm以下の波長)。各放射線源からの放射線の波長は、セメントが硬化するときのセメントの吸収作用、および、セメント用のコンテナーの吸収作用、のような、要因に基づいて選択される。
【0026】
放射線用のセンサーは、一つ以上の光依存抵抗器(LDR)を含んでいてよい。放射線用のセンサーは、一つ以上のフォトダイオードを含んでいてよい。センサーに好ましい特徴には、高い速度、感度、および、放射線に対する耐久性、が含まれる。
【0027】
骨セメントの不透明度の変化を測定することによって、骨セメントの硬化の程度を監視する技術のさらなる詳細は、本出願と共に出願された国際特許出願「骨セメント材料の硬化を監視する装置(Apparatus for monitoring the cure of a bone cement material)」(代理人整理番号:SJB/P211327WO)に開示されている。上記国際特許出願の明細書に記載された主題は、ここで参照することによって、本出願の明細書に組み込まれる。
【0028】
本発明の装置は、使用のために、準備された骨表面に骨セメントを送達するために用いられてよい。例えば、その装置は、送達チューブ(例えば、ノズルとして用いるための)を含んでいてよく、送達チューブを通して、セメントは、患者の骨の準備された表面に送達するために排出されてよい。放射源および関連するセンサー(設けられている場合)は、放射源からの放射線が放射源とセンサーとの間で送達チューブを通過するように、コンテナーに対して位置していてよい。放射源もしくはセンサー、または、それらの両方、は、送達チューブの壁に位置していてよく、あるいは、放射線が送達チューブの壁を通過するように、送達チューブの外側に位置していてよい。
【0029】
本発明の装置は、セメントが硬化するときのセメントの不透明度の変化に関連するデータプロセッサからのデータに基づく情報を表示するための出力装置を含んでいてよい。その出力装置は、データをグラフィック表示できる。出力装置は、データの絶対値を表示できる。モニターおよびプリンターを含む、多くの種類の通常のデータ出力装置が、本発明の装置で用いるために適切であるはずである。
【0030】
本発明の技術は、較正過程を含まなければならず、その較正過程では、骨セメント材料の特性の変化(より詳しく言うと、不透明度の変化、および、温度の変化)が、硬化の程度に関連付けられる。硬化の程度に関連する重要な特性は、セメントの粘度であり、セメントの粘度は、骨セメントによって提供される、骨組織へ植え込まれた人工器官コンポーネントの固定の有効性に影響を及ぼす可能性のある特性であることが多い。較正過程は、センサーによって検出された放射線の強度を測定する過程と、強度の変化を、既知の制御された条件の下で粘度測定装置を用いて監視された骨セメントの粘度と比較する過程と、を含む。粘度の測定は、(a)混合容器から準備された骨表面へ移すためのセメントの条件と、(b)人工器官コンポーネントを骨セメントと接触した状態で置くためのセメントの条件と、(c)セメントが本質的に十分硬化したときのセメントの条件と、を特定できるようにする。セメント材料の粘度は、較正過程の間に監視されてよく、較正過程では、セメントの硬化特性は、外観および取扱特性を用いて、評価される。セメントの硬化の関連するステージは、「待ち終了時間」、「作用終了時間(End of Working Time)」、および、「硬化時間」、である。
【0031】
「待ち終了時間」は、硬化中のセメントが、ばらつきがないドーのような肌理と、清潔なゴム手袋を装着した専門技術者の指への低い粘着性と、によって特徴付けられる均質性を獲得し終えた時点である。この「待ち終了時間」は、意味のあるものであり、その理由は、「待ち終了時間」が、外科医が体の腔に供給するためにセメントを処理できる時点を示しているからであり、セメントの処理は、手作業で行われることが多く、セメントが適度に混合されているが粘着性ではないことを必要とする。
【0032】
「作用終了時間」は、硬化中のセメントがもはや作用可能ではない時点であり、2つの表面が接触させられて次に一体に押されるように骨セメントのサンプルが折り曲げられたときに、ほとんどまたはまったく付着力を示さないことによって特徴付けられる。セメントは、2つの表面が、表面の間にストランドが延びることなく、引き離された場合に、「作用終了時間」に到達し終えている。「作用終了時間」は、意味のあるものであり、その理由は、セメントが依然として作用可能でセメントがコンポーネントの周囲を流動してしっかりとした固定を達成できることを確実にできるうちに、人工器官コンポーネントが骨の腔内に植え込まれなければならないからである。
【0033】
「硬化時間」は、セメントが人工器官コンポーネントを骨の腔内に安定して支持できるだけ十分に硬化して、外科医がもはや人工器官コンポーネントの位置および向きを維持するために人工器官コンポーネントを支持する必要がない時点である。
【0034】
以下の検査手順は、「待ち終了時間」、「作業終了時間」、および、「硬化時間」、がどのようにして求められるかを記載している。
【0035】
「待ち終了時間」の決定
1.セメント組成物の成分(大まかに言って、粉末、および、液体)が、製造業者の使用説明書に基づいて、混合される。
【0036】
2.指圧が、清潔なゴム手袋を用いて、混合された組成物の表面に加えられる。
【0037】
3.手袋を装着された指が、セメントの表面から持ち上げられ、同時に、セメントの「繊維」によって示されるような、セメントの表面と手袋を装着された指との間の粘着性が監視される。
【0038】
4.手袋を装着された指が、セメントの表面と手袋が装着された指との間に延びる繊維が存在せずにセメントの表面から持ち上げられるようになるまで、セメント表面のさまざまな領域で清潔な指を用いて、ステップ2およびステップ3が繰り返される。
【0039】
5.「待ち終了時間」は、セメント組成物の混合を開始した時点と、セメントの表面と手袋を装着された指との間に繊維が存在しないことが検出された時点と、の間の時間の長さである。
【0040】
6.ドー時間(dough time)の測定が、セメントの第2のサンプルについて繰り返され、5秒未満の差があるドー時間測定値が得られるまで再び繰り返され、次に、「待ち終了時間」が、それらの測定されたドー時間の平均値として、報告される。
【0041】
「作用終了時間」の決定
1.セメント組成物の成分(大まかに言って、粉末、および、液体)が、製造業者の使用説明書に基づいて(および、待ち終了時間の決定に関して上述されたように)、混合される。
【0042】
2.混合物がドーのような粘稠度を呈したほぼ1分後に、混合物のサンプルが、混合容器から除去されて、手袋を装着した使用者の指と親指との間で平らにされる。
【0043】
3.サンプルが折り曲げられ、向かい合う表面が一体に押され、次に、引き離される。
【0044】
4.ステップ3が、引き離された表面の間に延びる繊維が見られなくなるまで、繰り返される。成分を最初に混合した時点から向かい合う表面の間に延びる繊維が存在しない状態で向かい合う表面が引き離され得た時点までの時間が、「作用終了時間」として記録される。
【0045】
5.ステップ1〜ステップ4に記載された手順が、セメントの第2のサンプルについて繰り返され、5秒未満だけ異なる「作用終了時間」の測定値が得られるまで再び繰り返され、次に、「作用終了時間」が、これらの測定された「作用終了時間」の平均値として報告される。
【0046】
硬化時間の決定
1.セメント組成物の成分(大まかに言って、粉末、および、液体)が、製造業者の使用説明書に基づいて(および、「待ち終了時間」の決定に関連して上述されたように)混合される。
【0047】
2.混合物がドーのような粘稠度を呈した後に、混合物のサンプルがへらを用いて混合容器から除去される。
【0048】
3.サンプルが、ガラスブロックの表面にあるPTFEリング内にサンプルを置くことによって、円盤の形に形成される。サンプルの表面が、PTFEリング内にスライドして嵌め合わされる第2のガラスブロックを用いて、平坦にされる。次に、第2のガラスブロックが除去される。
【0049】
4.硬化の程度が、金属製のプローブロッド(直径がほぼ7mm)をセメントの円盤の表面に適用することによって、監視され、プローブは、鈍な丸い端部を有している。
【0050】
5.硬化時間器具(setting time instrument)が、いつセメントが硬化したかを特定するために用いられる。その器具は、針を含み、その針は、セメントの表面まで降下させられて、49N(5kgf)の負荷を支えることができる。
【0051】
6.針が、もはや表面を突き刺さなくなるまで、セメントの表面のさまざまな部分に降下させられる。
【0052】
7.ステップ1〜ステップ5に記載された手順が、セメントの第2のサンプルについて繰り返され、15秒未満だけ異なる硬化時間の測定値が得られるまで、再び繰り返されて、次に、硬化時間が、これらの測定された硬化時間の平均値として、報告される。
【0053】
本発明の装置は、温度センサーを含んでいてよく、その温度センサーは、硬化反応の開始時および硬化反応中のセメント材料の温度を監視する。セメント材料の温度は、硬化速度に有意に影響を及ぼす可能性がある。硬化反応の初期のステージの間の材料の温度に関する情報は、測定された不透明度の変化から、「作用終了時間」および「硬化時間」の正確な推定を行うのを援助することができる。
【0054】
骨セメント組成物、および、骨セメント組成物の硬化速度に関連するデータ、の例が、以下に記載される。例で言及される骨セメント材料は、デピュイ・インターナショナル・リミテッド(DePuy International Limited)の一部門であるデピュイ・シー・エム・ダブリュー(DePuy CMW)から市販されている。
【0055】
製造業者のガイドラインにしたがって、記載されたセメントを取り扱う技術の特徴は、以下を含む。
【0056】
1.セメント組成物の成分は、使用前は、光に露出することなく、25℃を超えない温度で保管される。
【0057】
2.セメント組成物の成分は、混合の前に、周囲の温度条件と平衡させられる。
【0058】
3.セメント組成物の成分の相対的な量は、製造業者によって、明記される。
【0059】
4.混合は、好ましくは、混合時間を短縮するために、排気されたコンテナー内で実行される。
【0060】
5.混合条件は、既知の技術を用いて、空気が閉じ込められるのを最小にするように選択されなければならない。
【0061】
6.セメントは、手作業で、または、注射器を用いて、患者の骨に適用されてよい。
【表1】

【0062】
過酸化ベンゾイルが、重合開始剤として含まれている。ヒドロキノンが、例えば、熱または光への露出に起因する、時期尚早な重合を防止するために、安定剤として含まれている。N,N−ジメチル−p−トルイジンは、液体成分および粉末成分の混合後の重合を促進するために含まれている。
【0063】
上記の組成は、上述された検査手順を用いて求められた、以下のような、混合時間、待ち時間、作用時間、および、硬化時間、を有することが見出されている。これらの時間はすべて、混合ステップの開始時点から秒を単位として測定されている。
【表2】

【表3】

【0064】
セメントの硬化の程度は、待ち終了時間と最大押し出し時間との間の期間に注射器から押し出すのに適している。
【0065】
同じ期間が、硫酸ゲンタマイシンのような抗生剤を含めることによって組成が変更された、骨セメントに、適用される。硫酸ゲンタマイシンは、骨セメントの粉末成分中に、4.22容量%の量で含まれていてよく、以下に示すように、粉末成分中その他の成分の量が、比例して調節される。
【表4】

【表5】

【0066】
上記の組成物は、上述された検査手順を用いて求められた以下のような、混合時間、待ち時間、作用時間、および、硬化時間、を有することが見出された。これらの時間は、すべて、混合ステップの開始時点から測定された。
【表6】

【0067】
ある範囲の温度に亘る、さまざまな骨セメント組成物の混合時間、待ち時間、作用時間、最大押し出し時間、および、硬化時間、に関連するデータは、デピュイ・インターナショナル・リミテッド(DePuy International Limited)によって現在販売されている具体的な骨セメント組成物に対して上述された種類のデータから集めることができる。見て分かるように、これらの時間は、セメントの温度に応じて変わる。混合時間、待ち時間、作用時間、および、硬化時間、に関連するデータが、それらの時間の温度依存性を反映していることが好ましい。適切なデータ処理装置を用いて、内挿および外挿を行って、特定の測定が行われた温度より低い温度か、特定の測定が行われた温度間の温度か、または、特定の測定が行われた温度より高い温度での骨セメント組成物の混合時間、待ち時間、作用時間、最大押し出し時間、および、硬化時間の表示を提供することが可能である。
【0068】
本発明に基づけば、骨セメント材料の硬化を監視する装置は、データプロセッサと、出力装置と、を含む。使用時には、その装置には、(a)セメント材料の特性、および、好ましくは、(b)セメント材料の温度、に関するデータが提供される。装置が、一つのセメント材料に用いることを意図されている場合には、セメント材料の特性に関するデータは、例えば、装置の製造時など、使用前に提供されていてよい。これらの情報を用いて、特に、セメント材料の温度に関する情報を用いて、装置は、出力装置を介して、考慮されているセメントの、待ち終了時間、最大押し出し時間、作用終了時間、および、硬化終了時間、に関する情報を提供することができる。
【0069】
本発明の装置は、骨セメント材料の硬化の程度に関する表示を提供するために、独立型で、用いられてよい。本発明の装置は、例えば、本出願と共に出願された英国特許出願「骨セメント材料の硬化を監視する装置(Apparatus for monitoring the cure of a bone cement material)」(代理人整理番号:SJB/P211038)に開示されているような、セメントが硬化するときのセメントの不透明度の変化を監視する装置の特徴を組み込んでいてよい。例えば、本発明の装置は、時間および温度のデータと、不透明度の測定値と、の両方に基づいて硬化の程度の推定値を提供してよい。ほとんどの場合、2つの推定値が、硬化の程度のきわめて類似した表示を生み出すはずであることが、予想される。異なる推定値は、推定技術のうち少なくとも一方の異常を利用者に表示する。
【0070】
本発明の実施の形態が、こんどは、添付の図面を参照して、例として、記載される。
【0071】
図面を参照すると、図1aは、骨セメントの硬化を監視する装置の一部である管状容器2を示している。容器は、注射器のような混合容器から延びる送達チューブであってよい。管状容器は、ポリプロピレンのような高分子材料で作られている。
【0072】
管状容器2は、容器の周囲に嵌め合わされた不透明スリーブ4を有する。2つの発光ダイオード(LED)6,8が、ダイオードから放射された放射線が管状容器の壁の中に向けられるように、スリーブに取り付けられている。管状チューブを通過した、放射源からの放射線を検出するため、および、検出された放射線の強度に基づいて信号を生み出すための、センサー10が、スリーブ内に取り付けられている。スリーブ4は、ダイオードから放射された波長を有する放射線に対して不透明であり、LEDから受け取られた放射線に応答してセンサーが生み出すいずれの信号も、外部の供給源から供給された放射線によって不正確にされないようになっている。
【0073】
LED6,8は、異なる波長の放射線を放射してよい。例えば、一方のLED6は、400nmの波長の放射線を放射してよく、もう一方のLED8は、810nmの波長の放射線を放射してよい。LED6,8は、同じ波長の、例えば、400nm、または、810nm、あるいは、その他の波長、の放射線を放射してよい。
【0074】
LED6,8、および、センサー10、は、センサーがいずれのLEDにも直接向かい合わないように、配列されている。その代わりに、センサーは、LEDと直接向かい合う位置の間に位置している。より詳しく言うと、装置が2つ以上のセンサーを含む場合、各センサーが2つの放射源の間の中間点に対してオフセットしていることが好ましい場合がある。このようなオフセットは、内反射に起因する不正確さが最小にされうるという利点を有する。このようなオフセットが、図1bに示されていて、図1bでは、監視装置は、3つの放射源20と、3つのセンサー22と、を含んでいる。監視装置は、不透明のスリーブを含んでいることがあるが、不透明のスリーブは図示されていない。隣接する放射源の間の間隔「d」は、隣接するセンサー間の間隔と等しい。センサーは、ほぼ0.6dの間隔だけ、放射源に対して管状容器24に沿って変位している。
【0075】
図2aは、混合されたセメントを注射器から送達するために用いられるチューブのような、セメント送達チューブの横断面図である。チューブは、中心通路26を画定する壁25を有し、中心通路26を通して、セメントが混合容器から準備された骨表面へ送達されてよい。
【0076】
放射源27およびセンサー28は、チューブの壁の外面に、例えば、上述したような(図示されていない)緊密に嵌め合わされる不透明スリーブを用いて、取り付けられている。放射源およびセンサーの各々は、チューブの中心に向けてられていて、放射源から放射された放射線が半径方向に向けられるようになっている。放射源は、ある範囲の方向からの放射線を受け取ることができるが、同様にチューブの中心に向けられている。
【0077】
図2aでは、放射源27およびセンサー28は、放射源の軸とセンサーの軸とがなす角度がほぼ90℃であるように、互いに隣接して配列されている。センサーによって直接受け取られる放射源からの放射線は、壁25の材料を通って伝達される。加えて、いくつかの放射線は、壁の材料を通って伝達された後に、ある程度の散乱を伴って、間接的に受け取られうる。セメントを通過した後にセンサーによって受け取られる放射源からの放射線は、セメントによる散乱の結果として、受け取られる。
【0078】
図2bでは、放射源27の軸と、センサー28の軸とは、一致していて、セメントを通過した後にセンサーによって受け取られる放射線が、チューブを直線的に通って、チューブの一方の側面の放射源から、反対側の側面のセンサーへ、伝達される。
【0079】
図2aおよび図2bに示された構成の相対的な利点は、セメントと、チューブの壁25の材料との、選択された放射線に対する伝達特性に、依存している。
【0080】
図3は、図1に関連して上述された一般的な種類の放射源/センサー配列30を含む本発明に基づく装置を示している。その装置は、不透明のスリーブ32を含み、不透明のスリーブ32は、スリーブ内に取り付けられた、3個のLED34と、3個のセンサー36と、を有している。スリーブは、スリーブ内に取り付けられた温度センサー38をも有している。
【0081】
装置は、注射器を含み、注射器は、その中をスライドすることができるピストン42を有する注射器の筒40を含んでいる。注射器の筒40は、骨セメント材料の成分を患者の骨に送達するために混合するのに用いられてよい。骨セメント材料用の、注射器に基づく混合容器は、よく知られている。注射器は、送達チューブ44を含んでいる。ピストンが注射器の筒40を通って動くことによって、混合された骨セメントが送達チューブ44を通って排出される。
【0082】
図4は、本発明の装置用の制御コンポーネントの詳細を示している。本発明の装置は、定電圧電力ドライバー54を介してデータプロセッサ52によって制御される3つのLED50を含んでいる。装置は、3つのフォトダイオードセンサー56を含んでいる。フォトダイオードセンサーからのデータは、信号調整ユニット58およびアナログ・デジタル変換器ユニット60を介してプロセッサ52へ送られる。装置は、温度センサー62を含んでいる。温度センサーからのデータは、プロセッサ52へ送られる。装置は、電源64を含んでいて、電源64は、充電可能なバッテリー66を含んでいてよい。
【0083】
プロセッサは、例えば、さらに操作、もしくは記憶するために、または、その両方のために、データを外部ディスプレイ、あるいはコンピュータへ供給するように、データ出力ケーブル用のコネクターを含んでいてよい。プロセッサは、例えば、複数のディスプレイ用発光ダイオードの形態の、ディスプレイを含んでいてよい。
【0084】
図5は、送達チューブに嵌め合わされうるセンサーヘッド70を示している。センサーヘッドは、2つの部品に形成されていてよく、2つの部品は、互いに嵌め合わされたときに、センサーヘッドを通って延びる管状ボアを画定し、管状ボアは送達チューブに緊密に嵌め合わされる。センサーヘッドの2つの部品は、ヒンジによって互いに結合されていてよく、そのような結合によって、センサーヘッドが送達チューブに嵌め合わせるために開かれるか、または、送達チューブから取り外される、ことが可能になる。センサーヘッドは、送達チューブに嵌め合わされた後にヘッドの2つの部品を閉じるためのラッチを含んでいてよい。
【0085】
センサーヘッドは、センサーヘッドに嵌め合わされた、放射源72と、センサー74と、を有していてよい。これは、放射源とセンサーとの相対的な位置が一定であるという利点を有し、相対的な位置が一定であることは、不透明度の測定が行われうる精度を最適にすることを援助することができる。
【0086】
センサーヘッドは、全体が、または、一部が、少なくとも、センサーから放射される放射線に対して、不透明な材料で作られていてよく、センサーヘッドが、その他の供給源からの放射線(周囲の放射線を含む)の進入を防止するための不透明スリーブを提供できるようにしている。センサーヘッドの全体の材料が、不透明でない場合には、センサーヘッドは、内側または外側が不透明な材料でコーティングされていてよい。センサーヘッドの全体に適した材料には、好ましくは、成型によって処理されうる、ある種のポリマーが含まれる。そのようなポリマーの例としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、などを含む。
【0087】
図6および図7は、不透明度が時間と共に変化する様子を示している。データは、デピュイ・インターナショナル・リミテッドの一部門であるデピュイ・シー・エム・ダブリュー(DePuy CMW)から、それぞれ、スマートセットHV(SmartSet HV)、および、エンデュランス(Endurance)、という商標名で市販されている骨セメント材料に関連している。図6では、右側の軸に関する灰色の線は、上述した種類の装置を用いて、別々の波長(400nmおよび810nmなどの)で測定された信号の時間に対する強度の差分の合計の、時間の経過に伴う変化を表している。このデータは、以下のようにして生み出された。
1.2つの波長の各々で検出された放射線の強度が、毎秒サンプリングされる。
2.波長の各々で得られた強度の測定値が、以前の強度の測定値から減算されて、差分値が求められる。
3.差分値が、15個の測定値をならす平均(rolling average)を用いて、15秒間で平均される。
4.2つの波長で得られた平均差分値が、一体に合計されて、差分データの合計が求められる。
【0088】
右側の軸は、これらのデータ点に関連している。白い線は、差分データの合計の変化率(灰色の線で表されたデータの一次導関数)を表していて、左側のスケールは、これらのデータの点に関連している。
【0089】
図6のグラフは、灰色の線と白い線に重ねられた3つのスパイク波形を有していて、これらのスパイク波形は、セメントの、待ち終了時間(セメントが混合容器から準備された骨表面へ移される準備が整った時)、作用終了時間(セメントが、人工器官の植え込みが完了していなければならない程度に硬化した時)、および、硬化時間、に対応している。これらの時間は、熟練した人の検査員を基準にして、上述したように、セメント材料の手作業による操作と、セメントが硬化するときのセメントの特性を監視することとによって、決定される。グラフに見られるように、黒い線のスパイク波形は、灰色の線および白い線の不連続性に対応し、セメントの待ち終了時間、作用終了時間、および、硬化時間、に対応する。
【0090】
図7では、青灰色の線は、上述した種類の装置を用いた、別々の波長(400nmおよび810nm)で測定された信号の時間に関する強度の差分の合計の、時間の経過に伴う変化を表している。右側のスケールは、これらのデータ点に関連している。グラフは、灰色の線に重ねられた3つのスパイク波形を有していて、3つのスパイク波形は、セメントの、待ち終了時間(セメントが混合容器から準備された骨表面へ移される準備が整った時)、作用終了時間(セメントが、人工器官の植え込みが完了していなければならない程度に硬化した時)、および、硬化時間、に対応している。これらの時間は、熟練した人の検査員を基準にして、上述したように、セメント材料の手作業による操作と、セメントが硬化するときのセメントの特性を監視することとによって、決定される。グラフに見られるように、黒い線のスパイク波形は、灰色の線および白い線の不連続性に対応し、セメントの待ち終了時間、作用終了時間、および、硬化時間、に対応する。
【0091】
〔実施の態様〕
この発明の具体的な実施態様は以下の通りである。
(1)骨セメント材料の硬化を監視する装置において、
a)前記骨セメント材料用のコンテナーと、
b)前記コンテナー内の前記種類の前記骨セメント材料が、前記骨セメント材料の温度に従って硬化するのに要する時間に関連するデータが記憶された、メモリ装置と、
c)前記骨セメント材料の温度に関連するデータ、および、硬化の程度に関連する前記メモリ装置内のデータ、に基づいて、前記骨セメント材料が硬化するのに要する時間を計算するためのデータプロセッサと、
d)前記コンテナー内の前記骨セメント材料の前記硬化の程度に関連する前記データプロセッサからのデータ用の出力装置と、
を具備する、装置。
(2)実施態様(1)に記載の装置において、
前記骨セメント材料の前記温度に関連するデータを提供するための温度センサー、
を含む、装置。
(3)実施態様(2)に記載の装置において、
前記温度センサーは、前記コンテナー内の前記骨セメント材料の前記温度を測定する、装置。
(4)実施態様(1)に記載の装置において、
放射源であって、この放射源から放射線が前記コンテナー内の前記骨セメント材料に向けられる、「放射源と、
前記コンテナー内の前記骨セメント材料を通過した前記放射源からの前記放射線を検出するため、および、検出された前記放射線の強度に基づく信号を生み出すための、センサーと、
を含む、装置。
(5)実施態様(4)に記載の装置において、
前記データプロセッサは、前記骨セメント材料が硬化するときの前記放射源からの前記放射線に対する前記コンテナー内の前記骨セメント材料の不透明度の変化に起因する、前記センサーによって検出された前記放射線の前記強度の変化、を監視することができる、装置。
(6)実施態様(4)に記載の装置において、
前記コンテナーは、送達チューブを含み、
前記放射源および前記センサーは、前記放射源からの前記放射線が前記放射源と前記センサーとの間で前記送達チューブを通るように、前記コンテナーに対して位置している、装置。
(7)実施態様(1)に記載の装置において、
前記データプロセッサは、前記骨セメント材料が硬化するときに前記放射源からの前記放射線に対する前記コンテナー内の前記骨セメント材料の不透明度の変化に起因する、前記センサーによって検出された前記放射線の前記強度の変化率、を決定する、装置。
(8)骨セメント材料の硬化を監視する方法において、
a)前記骨セメント材料の温度に関連するデータ、および、b)前記骨セメント材料の前記温度に基づく前記骨セメント材料の硬化の程度に関連するメモリ装置からのデータ、に基づいて、前記骨セメント材料が硬化するのに要する時間を計算する過程、
を具備する、方法。
(9)実施態様(8)に記載の方法において、
a)前記骨セメント材料を放射源からの放射線に露出させる過程と、
b)前記骨セメント材料を通過した前記放射線の強度を測定する過程と、
c)前記骨セメント材料が硬化するときに前記放射源からの前記放射線に対する前記コンテナー内の前記骨セメント材料の不透明度の変化に起因する、前記センサーによって検出された前記放射線の前記強度の変化、を監視する過程と、
を含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1a】本発明の技術で用いられうる放射源/センサー配列の模式図である。
【図1b】本発明の技術で用いられうる放射源/センサー配列の模式図である。
【図2a】放射源およびセンサーの相対的な位置を示す、セメント送達チューブの横断面図である。
【図2b】放射源およびセンサーの相対的な位置を示す、セメント送達チューブの横断面図である。
【図3】本発明に基づく装置の模式図である。
【図4】本発明の装置の制御コンポーネントのコンポーネントを示すブロック図である。
【図5】セメント送達チューブに嵌め合わされうるセンサーヘッドの、隠れた部分が破線で示された、側面図である。
【図6】2つの異なるセメント組成物を放射線に露出している間の時間に対する光学的な応答の変化の様子を示すグラフの図である。
【図7】2つの異なるセメント組成物を放射線に露出している間の時間に対する光学的な応答の変化の様子を示すグラフの図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨セメント材料の硬化を監視する装置において、
a)前記骨セメント材料用のコンテナーと、
b)前記コンテナー内の前記種類の前記骨セメント材料が、前記骨セメント材料の温度に従って硬化するのに要する時間に関連するデータが記憶された、メモリ装置と、
c)前記骨セメント材料の温度に関連するデータ、および、硬化の程度に関連する前記メモリ装置内のデータ、に基づいて、前記骨セメント材料が硬化するのに要する時間を計算するためのデータプロセッサと、
d)前記コンテナー内の前記骨セメント材料の前記硬化の程度に関連する前記データプロセッサからのデータ用の出力装置と、
を具備する、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
前記骨セメント材料の前記温度に関連するデータを提供するための温度センサー、
を含む、装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置において、
前記温度センサーは、前記コンテナー内の前記骨セメント材料の前記温度を測定する、装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置において、
放射源であって、この放射源から放射線が前記コンテナー内の前記骨セメント材料に向けられる、放射源と、
前記コンテナー内の前記骨セメント材料を通過した前記放射源からの前記放射線を検出するため、および、検出された前記放射線の強度に基づく信号を生み出すための、センサーと、
を含む、装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置において、
前記データプロセッサは、前記骨セメント材料が硬化するときの前記放射源からの前記放射線に対する前記コンテナー内の前記骨セメント材料の不透明度の変化に起因する、前記センサーによって検出された前記放射線の前記強度の変化、を監視することができる、装置。
【請求項6】
請求項4に記載の装置において、
前記コンテナーは、送達チューブを含み、
前記放射源および前記センサーは、前記放射源からの前記放射線が前記放射源と前記センサーとの間で前記送達チューブを通るように、前記コンテナーに対して位置している、装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置において、
前記データプロセッサは、前記骨セメント材料が硬化するときに前記放射源からの前記放射線に対する前記コンテナー内の前記骨セメント材料の不透明度の変化に起因する、前記センサーによって検出された前記放射線の前記強度の変化率、を決定する、装置。
【請求項8】
骨セメント材料の硬化を監視する方法において、
a)前記骨セメント材料の温度に関連するデータ、および、b)前記骨セメント材料の前記温度に基づく前記骨セメント材料の硬化の程度に関連するメモリ装置からのデータ、に基づいて、前記骨セメント材料が硬化するのに要する時間を計算する過程、
を具備する、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、
a)前記骨セメント材料を放射源からの放射線に露出させる過程と、
b)前記骨セメント材料を通過した前記放射線の強度を測定する過程と、
c)前記骨セメント材料が硬化するときに前記放射源からの前記放射線に対する前記コンテナー内の前記骨セメント材料の不透明度の変化に起因する、前記センサーによって検出された前記放射線の前記強度の変化、を監視する過程と、
を含む、方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−545961(P2008−545961A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512927(P2008−512927)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【国際出願番号】PCT/GB2006/001947
【国際公開番号】WO2006/129070
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(500353989)デピュー インターナショナル リミテッド (40)
【Fターム(参考)】