高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法
【課題】開口部が数μm、アスペクト比が5以上のトレンチ壁面に高濃度の不純物がドーピングされた縦型pn接合を形成する技術を確立する。
【解決手段】開口部の最小寸法が10μm以下、アスペクト比5以上、かつ壁面の凹凸が0.2μm以下のSiトレンチ壁面に対し不純物をドープし、さらに、不純物がドープされたトレンチ壁面を、900℃以上の熱処理でリフローが生じるSiO2膜により被覆し、このSiO2膜を固体拡散源としたトレンチ壁面にpn接合膜を形成する高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。前記ドープに先立ち、トレンチ壁面の熱酸化処理を行い、この熱酸化処理によって形成された熱酸化膜を除去する処理によりトレンチ壁面の凹凸を0.1μm以下に抑える。
【解決手段】開口部の最小寸法が10μm以下、アスペクト比5以上、かつ壁面の凹凸が0.2μm以下のSiトレンチ壁面に対し不純物をドープし、さらに、不純物がドープされたトレンチ壁面を、900℃以上の熱処理でリフローが生じるSiO2膜により被覆し、このSiO2膜を固体拡散源としたトレンチ壁面にpn接合膜を形成する高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。前記ドープに先立ち、トレンチ壁面の熱酸化処理を行い、この熱酸化処理によって形成された熱酸化膜を除去する処理によりトレンチ壁面の凹凸を0.1μm以下に抑える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板に対し垂直方向にpn接合を形成するための高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法に関するものであり、特にシリコン半導体素子で直接検知することができる波長1100nm以下の近赤外光に対して、高効率な受光を実現する技術に関するものである。従って、この発明技術は、高感度近赤外線撮像素子やシリコン太陽電池に利用できる。
【背景技術】
【0002】
CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージャーなどに代表される半導体撮像素子は、ビデオカメラやデジタルカメラなどに用いられており、撮像画像の光信号を電気信号に変換するための廉価で消費電力の少ないイメージセンサーとして広く普及している。それらの多くは、人の目と同様の画像検知特性の実現を目的としており、可視光のセンシングを効率良く高感度にするために主にシリコン半導体で作られている。
【0003】
一方、シリコン系太陽電池は光エネルギーを電気エネルギーへ高効率で変換することができるためグリーンエネルギー源として期待され、各所への設置が進んでいる。光信号(エネルギー)を高効率で電気信号(エネルギー)に変換できる内部光電効果は、半導体のバンドギャップにより変換可能な光の波長が決まり、シリコン半導体の場合、可視光から近赤外線の波長範囲(400nm〜1100nm)を検知(変換)することができる。
【0004】
しかしながら、近赤外線は、可視光より波長が長いためシリコン半導体内での吸収係数が小さく、その侵入長は数十μm〜数百μmに及ぶ。その結果、近赤外線の受光感度やエネルギー変換効率が低下する問題が生じる。内部光電効果で発生する電荷を効率良く収集できるのは、pn接合部の空乏層領域であるが、図1に示すように一般的な半導体素子ではpn接合部は数μm程度より浅い所にあり、入射される近赤外線の殆どがそれより深い領域で電子を励起するので、それらは収集される前に再結合して消滅してしまう。図1に示した構造の固体撮像装置としては、特許文献1に記載されたものがある。
【0005】
近赤外光をシリコン半導体で効率よく受光し、受光感度およびエネルギー変換効率を高めるためには、図2に示す光の入射方向に平行に(通常基板に垂直に)高アスペクト比のpn接合を形成するための技術が必須となる。さらにイメージセンサー応用を考えた場合、高密度に配置された高アスペクト比のpn接合を形成しなければならない。図2に示した構造の光発電素子としては、本願発明者により提案された特許文献2に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−258684号公報
【特許文献2】特開2010−219089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シリコン半導体のpn接合形成技術は、イオン注入法やプラズマドーピング法に代表されるイオン化した不純物を加速し基板へ打ち込む方法、不純物を気化させ高温の熱処理により拡散させる気相拡散方法、不純物をドーピングしたポリシリコン膜や酸化膜を堆積し、その後熱処理により拡散させる固相拡散法がLSI(Large Scale Integration circuit)製造を目的として利用されている。これらの方法によって形成できるpn接合の深さは高々数μmである。さらに深い位置にpn接合を形成する場合は熱拡散によって行うため、図3に示すように不純物は横方向へも広がり図2で示した高アスペクト比のpn接合を形成することは不可能である。
【0008】
高密度に配置され、且つ、高アスペクト比の縦型pn接合を形成するための一つの解は、トレンチ壁面周囲にpn接合を形成することである。しかし、数μmの開口部を持つトレンチにおいてその壁面へpn接合を形成した事例はない。また、最終的な電荷の収集効率を上げるためにはトレンチ壁面を低抵抗層とする必要がある。これを実現するためには、トレンチ壁面において高濃度の不純物をドーピングする必要がある。
【0009】
イオン注入法やプラズマドーピング法ではイオン化した不純物をそれぞれ外部電界およびプラズマシース部の電界によって加速させ、基板に対しほぼ垂直に打ち込むため、高々アスペクト比1程度のトレンチ壁面にしかドーピングできない。
【0010】
不純物を気化させ、気化させた不純物の雰囲気中で約1000℃の高温熱処理を行う気相拡散法は高アスペクト比のトレンチ壁面へのドーピングが可能な手法である。しかし、気相であるため不純物濃度が約1018cm-3オーダーと低く(1気圧、1000℃の状態を仮定)、形成されるドーピング層の表面濃度は最大でもこの値となり、抵抗率は10-2〜10-1Ωcmとなる。100気圧程度まで高くすることができれば、不純物濃度は1020cm-3オーダーとなり、形成されるドーピング層の抵抗率は10-3Ωcmオーダーと1桁以上低くできるが、危険なガスを高温高圧で維持しなければならないこと、さらにはその装置を汚染の少ない材料で形成しなければならないことのため現実的な解ではない。
【0011】
不純物ドープされたSiO2やSiの薄膜を拡散源とする固相拡散法では、SiO2およびSi薄膜中のリンやホウ素といった不純物の濃度を1021cm-3オーダーまで上げることができる。このため、形成されるドーピング層の抵抗率は10-4〜10-3Ωcmとシリコンの抵抗率の限界まで低くすることができる。高アスペクト比トレンチ壁面へのこれら薄膜の堆積であるが、近年、常圧CVD(Chemical Vapor Deposition)法、大気圧プラズマCVD法、カソードカップリングプラズマCVD法などアスペクト比の高い構造壁面へ堆積可能な手法が開発されているため、何れかの方法により高濃度に不純物がドープされた薄膜の形成は可能である。
【0012】
シリコン半導体を用いた近赤外線イメージセンサーの高感度化および太陽電池の高変換効率化のために必要な近赤外光を効率的に受光するためには、高アスペクト比縦方向pn接合構造の開発が必須である。
本発明は、開口部が数μm、アスペクト比が10以上のトレンチ壁面に高濃度の不純物がドーピングされた縦型pn接合を形成する技術を確立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明においては、高アスペクト比縦型pn接合構造を実現するために、シリコン基板に高アスペクト比のトレンチを形成し、その壁面周囲にpn接合を形成することで本構造を実現する。
具体的には、本発明は次の構成からなる。
<1>
開口部の最小寸法が10μm以下、アスペクト比5以上、かつ壁面の凹凸が0.2μm以下のSiトレンチ壁面に対し不純物をドープし、さらに、不純物がドープされたトレンチ壁面を、900℃以上の熱処理でリフローが生じるSiO2膜により被覆し、このSiO2膜を固体拡散源としたトレンチ壁面にpn接合膜を形成することを特徴とする高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。
<2>
前記ドープに先立ち、トレンチ壁面の熱酸化処理を行い、この熱酸化処理によって形成された熱酸化膜を除去する処理によりトレンチ壁面の凹凸を0.1μm以下に抑えることを特徴とする<1>記載の高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。
<3>
カソードカップリングプラズマCVD法によりリンまたはホウ素を不純物として含む酸化膜を高アスペクト比トレンチ壁面へ堆積することを特徴とする<1>記載の高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。
<4>
TEOS流量7sccm(Standard Cubic Centimeter per Minutes)に対し、TMP流量0.5sccm以上の成膜条件において1000℃においてリフロー可能な酸化膜を高アスペクト比トレンチ壁面に堆積する<3>記載の高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。
<5>
トレンチ壁面に形成された熱酸化膜を40℃〜100℃に温めたフッ化水素酸を含む溶液により除去することを特徴とする<2>記載の高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。
<6>
トレンチ壁面に形成された熱酸化膜をフッ化水素酸を含む溶液に浸し、かつ、超音波を印加し除去することを特徴とする<2>記載の高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。
<7>
トレンチ壁面に形成された熱酸化膜を20℃〜100℃に温めたフッ化水素酸を含む溶液に浸し、かつ、超音波を印加し除去することを特徴とする<2>記載の高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、開口部の最小寸法が10μm以下、アスペクト比が5以上のトレンチ壁面に高濃度の不純物がドーピングされた縦型pn接合を形成する技術が得られ、シリコン集積回路形成と親和性の高い形成方法であるため信号処理回路と受光部を同一基板上に形成することが可能となる。したがって、例えば、高速性が要求される車載用近赤外線センサーや高感度の暗所監視センサー等を比較的安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来のpn接合構造の断面図である。
【図2】効率的な受光のためのpn接合構造の断面図である。
【図3】拡散によるpn接合構造形成の模式図である。
【図4】高アスペクト比縦型pn接合構造の最良形態の模式図である。
【図5】高アスペクト比縦型pn接合構造の他の形態の模式図である。
【図6】高アスペクト比縦型pn接合構造形成の最良実施工程の模式図である。
【図7】高アスペクト比トレンチ構造形成の実験結果である。
【図8】スキャロップを低減させるための方法の模式図である。
【図9】高アスペクト比トレンチ壁面への熱酸化膜形成結果である。
【図10】酸化/エッチング繰り返しによりスキャロップ低減した実験結果である。
【図11】スキャロップ低減前後におけるPSG膜の被覆実験の結果である。
【図12】PSG膜中のP濃度をSIMSにより測定した実験結果である。
【図13】熱処理前後におけるPSG膜リフロー実験の結果である。
【図14】トレンチ内部pn接合形成をSCMにより観察した結果である。
【図15】拡散後におけるSi中のPの濃度プロファイルの実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。
本発明の実施の形態においては、pn接合形成のために重要な不純物のドーピングは、高濃度にドーピングされたSiO2薄膜を拡散源とする固相拡散法で行う。拡散源材料としては、Siも考えられるが、pn接合形成後の除去を考慮した場合、Siは選択的に除去できない。拡散源である不純物ドープSiO2膜の堆積は、常圧CVD法、大気圧プラズマCVD法、カソードカップリングプラズマCVD法などで可能であるが、最も安全性の高い(このため設置コストやランニングコストが低い)カソードカップリングプラズマCVD法で行う。図4に最良の形態を示し、図5にその他の形態を示す。図4はトレンチ構造の形状が円柱状の場合を示し、図5はトレンチ構造の形状が角柱状もしくはスリット状の場合を示している。
【0017】
本構造を実現するための要件は、
(1)高アスペクト比トレンチ壁面を不純物ドープ酸化膜で被覆し、
(2)ドーピング層のドーピング濃度を高くする
ことである。
(1)を実現するためには、高アスペクト比トレンチを形成する際に発生するスキャロップ低減手法、リフロー可能な不純物ドープSiO2膜の堆積手法の確立が課題である。
一方、(2)を実現するためには、不純物ドープSiO2膜の初期不純物濃度コントロール技術、不純物ドープSiO2膜中における不純物拡散速度の向上が課題である。原理的に、リフロー可能な不純物ドープSiO2膜の堆積および不純物ドープSiO2膜中における不純物拡散速度の向上は不純物ドープSiO2膜中の不純物濃度を高くすることで可能である。
【0018】
上記のことを前提に、本構造を実現するための最良の実施方法概略を図6に示し、個々のプロセスの概略説明を下記に示す。
図6(a)に示すように、ボッシュプロセスを用いシリコン基板に高アスペクト比のトレンチを形成する。
次に、図6(b)に示すように、ボッシュプロセスでトレンチ壁面に形成された凹凸(スキャロップ)を熱酸化膜の形成・エッチングにより低減させる。
次に、図6(c)に示すように、リンドープ酸化膜をカソードカップリングCVD法により堆積する。
次に、図6(d)に示すように、窒素雰囲気中で熱処理(リンの拡散)を行い、pn接合(n+層)を形成する。
最後に、図6(e)に示すように、リンドープ酸化膜のエッチングを行う。
なお、近赤外線センサーおよび太陽電池応用としては、図5に示す角柱状もしくはスリット状のトレンチ構造でも可能である。
【0019】
具体的には、まず、シリコン基板上にトレンチ構造形成のためのエッチングマスクとなるアルミニウム薄膜を約100nm堆積した後、通常のフォトリソグラフィーで直径3〜7μmの円形のくり抜きパターンを形成する。なお、トレンチ構造形成のためのエッチングマスクとしては、100nm程度のSiO2、100nm程度のSiNおよび2μm以上のフォトレジスト膜も利用可能である。くり抜かれた円形パターン内のアルミニウム薄膜をドライエッチング法により除去し、ボッシュプロセスを利用し、アスペクト比10以上のトレンチ構造を形成する。(実施例1:図7)
【0020】
トレンチ構造を形成する際、トレンチ壁面に0.2〜0.5μm程度の凹凸(スキャロップ)が形成される。これは、トレンチ構造を形成するボッシュプロセスにおいてフッ素ラジカルを利用した等方性エッチングが主たるシリコンエッチング機構であることに由来する。通常は発生するスキャロップを抑制するために、フッ素ラジカルによるエッチング時間を短くすることで対応するが、それでも0.2μm程度の凹凸は形成されてしまう。トレンチ壁面に凹凸がある場合、図6(c)の工程におけるリンドープ酸化膜の堆積においてトレンチ壁面を覆うことができなくなる。そこで、熱酸化膜形成と形成された酸化膜の除去を行いトレンチ壁面のスキャロップを低減する。本手法を図8に示す。
【0021】
トレンチ壁面の熱酸化膜形成には、酸素ガスを用いた水蒸気酸化を用いて行う。なお他の酸化膜形成方法としては、N2、Ar、Heなどの不活性ガスを用いた水蒸気酸化やH2およびO2ガスを混合したパイロ酸化の方法も利用可能である。酸化膜形成温度は1050℃で行ったが、現実的な時間(数時間以内)で酸化可能かつ石英製の実験装置で成膜可能な温度900℃〜1100℃でも可能である。図9に本手法で形成したトレンチ壁面への酸化膜形成結果を示す。
【0022】
続いて、トレンチ内部に形成された酸化膜の除去を30℃に温めたBHF(Bufferred Hydrogen Fluoride)溶液(25wt%)を用いて行う。この時、トレンチの底部まで溶液を到達させるため若干温度を上げた状態にし、毛細管現象を促進させる必要がある。さらに、トレンチ内部において溶液の循環を促進するために超音波を印加することも有効である。なお、溶液はフッ化水素酸を含む溶液であれば濃度に制限はない。
【0023】
図10に1050℃、1hの熱酸化、30℃ BHF溶液の繰り返しによる実験結果を示す。トレンチ形成後、最大300nmのスキャロップが上記工程2回の繰り返しにより100nm以下に低減されていることがわかる。
【0024】
図11はスキャロップ低減前後の試料に対し、成膜条件RF POWER(Radio Frequency Power:高周波電源)85W、基板温度300℃、圧力35Pa、ガス流量 O2/TEOS(Tetraethyl orthosilicate)/TMP(トリメチルリン)=223/7/0.8sccmでリンドープ酸化膜を堆積させた結果である。スキャロップ低減させた試料のトレンチ壁面へより厚い膜の堆積が確認できる。
【0025】
次に高アスペクト比トレンチ壁面へリンドープ酸化膜をカソードカップリングCVD法により堆積する。堆積条件は、RF POWER 85W、基板温度300℃、圧力35Pa、ガス流量 O2/TEOS=223/7sccmに対し、TMPを0.2〜1.5sccmまで変化させて行った。本手法はp型シリコン基板にn型のドーピング層を形成するための物であるが、n型シリコン基板にp型のドーピング層を形成する場合は、添加するガスをTMPよりTMB(トリメチルホウ素)に変更すればよい。
【0026】
図12はTMP流量に対するリンドープSiO2膜中のリン濃度の実験結果である。リン濃度の測定はSIMS(Secondary Ion-microprobe Mass Spectrometer)により行った。本条件で成膜したリンドープSiO2中に5×1020cm-3以上のリンが含まれることがわかり、気相拡散で予測される1018cm-3よりも2桁以上多いことを実証した。
【0027】
図13は、1050℃、3h、窒素雰囲気中の熱処理前後の断面SEM(canning electron microscope)写真である。この温度において、TMP流量0.8sccm以上の成膜条件で形成される膜でリフローが生じることを実証した。
【0028】
堆積条件RF POWER 85W、基板温度300℃、圧力35Pa、ガス流量 O2/TEOS/TMP=223/7/0.8sccmの条件でトレンチ壁面へ成膜したリンドープSiO2を1050℃、3h、窒素雰囲気中で熱処理(リンの拡散)を行い、pn接合(n+層)を形成する。
【0029】
図14はSCM測定によるpn接合観察結果である。トレンチ壁面にpn接合が形成されていることがわかる。また、図15は熱処理後におけるシリコン中のリン濃度プロファイルである。10-20cm3以上の表面濃度をもつドーピング層が形成されていることがわかる。
【0030】
最後に、トレンチ壁面に形成されたリンドープSiO2膜の除去を30℃に温めたBHF溶液(25wt%)を用いて行う。この方法により、形成されたシリコンの高濃度ドーピング層をエッチングすることなくリンドープSiO2膜の除去が可能となる。この時、トレンチの底部まで溶液を到達させるため若干温度を上げた状態にし、毛細管現象を促進させる必要がある。さらに、トレンチ内部において溶液の循環を促進するために超音波を印加することも有効である。なお、溶液はフッ化水素酸を含む溶液であれば濃度に制限はない。
【0031】
イメージセンサーまたは太陽電池への応用を考えた場合、形状的には円柱状(図4)、角柱状のトレンチ構造もしくはスリット状の構造(図5)が適用可能である。いずれの形状においても高アスペクト比縦型pn接合構造を実現するための最良の実施方法は図6に示す手法である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、シリコン基板に対し垂直方向にpn接合を形成するための高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法として、特にシリコン半導体素子で直接検知することができる波長1100nm以下の近赤外光に対して、高効率な受光を実現する光発電素子、具体的には、高感度近赤外線撮像素子やシリコン太陽電池の製造に好適に利用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板に対し垂直方向にpn接合を形成するための高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法に関するものであり、特にシリコン半導体素子で直接検知することができる波長1100nm以下の近赤外光に対して、高効率な受光を実現する技術に関するものである。従って、この発明技術は、高感度近赤外線撮像素子やシリコン太陽電池に利用できる。
【背景技術】
【0002】
CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージャーなどに代表される半導体撮像素子は、ビデオカメラやデジタルカメラなどに用いられており、撮像画像の光信号を電気信号に変換するための廉価で消費電力の少ないイメージセンサーとして広く普及している。それらの多くは、人の目と同様の画像検知特性の実現を目的としており、可視光のセンシングを効率良く高感度にするために主にシリコン半導体で作られている。
【0003】
一方、シリコン系太陽電池は光エネルギーを電気エネルギーへ高効率で変換することができるためグリーンエネルギー源として期待され、各所への設置が進んでいる。光信号(エネルギー)を高効率で電気信号(エネルギー)に変換できる内部光電効果は、半導体のバンドギャップにより変換可能な光の波長が決まり、シリコン半導体の場合、可視光から近赤外線の波長範囲(400nm〜1100nm)を検知(変換)することができる。
【0004】
しかしながら、近赤外線は、可視光より波長が長いためシリコン半導体内での吸収係数が小さく、その侵入長は数十μm〜数百μmに及ぶ。その結果、近赤外線の受光感度やエネルギー変換効率が低下する問題が生じる。内部光電効果で発生する電荷を効率良く収集できるのは、pn接合部の空乏層領域であるが、図1に示すように一般的な半導体素子ではpn接合部は数μm程度より浅い所にあり、入射される近赤外線の殆どがそれより深い領域で電子を励起するので、それらは収集される前に再結合して消滅してしまう。図1に示した構造の固体撮像装置としては、特許文献1に記載されたものがある。
【0005】
近赤外光をシリコン半導体で効率よく受光し、受光感度およびエネルギー変換効率を高めるためには、図2に示す光の入射方向に平行に(通常基板に垂直に)高アスペクト比のpn接合を形成するための技術が必須となる。さらにイメージセンサー応用を考えた場合、高密度に配置された高アスペクト比のpn接合を形成しなければならない。図2に示した構造の光発電素子としては、本願発明者により提案された特許文献2に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−258684号公報
【特許文献2】特開2010−219089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シリコン半導体のpn接合形成技術は、イオン注入法やプラズマドーピング法に代表されるイオン化した不純物を加速し基板へ打ち込む方法、不純物を気化させ高温の熱処理により拡散させる気相拡散方法、不純物をドーピングしたポリシリコン膜や酸化膜を堆積し、その後熱処理により拡散させる固相拡散法がLSI(Large Scale Integration circuit)製造を目的として利用されている。これらの方法によって形成できるpn接合の深さは高々数μmである。さらに深い位置にpn接合を形成する場合は熱拡散によって行うため、図3に示すように不純物は横方向へも広がり図2で示した高アスペクト比のpn接合を形成することは不可能である。
【0008】
高密度に配置され、且つ、高アスペクト比の縦型pn接合を形成するための一つの解は、トレンチ壁面周囲にpn接合を形成することである。しかし、数μmの開口部を持つトレンチにおいてその壁面へpn接合を形成した事例はない。また、最終的な電荷の収集効率を上げるためにはトレンチ壁面を低抵抗層とする必要がある。これを実現するためには、トレンチ壁面において高濃度の不純物をドーピングする必要がある。
【0009】
イオン注入法やプラズマドーピング法ではイオン化した不純物をそれぞれ外部電界およびプラズマシース部の電界によって加速させ、基板に対しほぼ垂直に打ち込むため、高々アスペクト比1程度のトレンチ壁面にしかドーピングできない。
【0010】
不純物を気化させ、気化させた不純物の雰囲気中で約1000℃の高温熱処理を行う気相拡散法は高アスペクト比のトレンチ壁面へのドーピングが可能な手法である。しかし、気相であるため不純物濃度が約1018cm-3オーダーと低く(1気圧、1000℃の状態を仮定)、形成されるドーピング層の表面濃度は最大でもこの値となり、抵抗率は10-2〜10-1Ωcmとなる。100気圧程度まで高くすることができれば、不純物濃度は1020cm-3オーダーとなり、形成されるドーピング層の抵抗率は10-3Ωcmオーダーと1桁以上低くできるが、危険なガスを高温高圧で維持しなければならないこと、さらにはその装置を汚染の少ない材料で形成しなければならないことのため現実的な解ではない。
【0011】
不純物ドープされたSiO2やSiの薄膜を拡散源とする固相拡散法では、SiO2およびSi薄膜中のリンやホウ素といった不純物の濃度を1021cm-3オーダーまで上げることができる。このため、形成されるドーピング層の抵抗率は10-4〜10-3Ωcmとシリコンの抵抗率の限界まで低くすることができる。高アスペクト比トレンチ壁面へのこれら薄膜の堆積であるが、近年、常圧CVD(Chemical Vapor Deposition)法、大気圧プラズマCVD法、カソードカップリングプラズマCVD法などアスペクト比の高い構造壁面へ堆積可能な手法が開発されているため、何れかの方法により高濃度に不純物がドープされた薄膜の形成は可能である。
【0012】
シリコン半導体を用いた近赤外線イメージセンサーの高感度化および太陽電池の高変換効率化のために必要な近赤外光を効率的に受光するためには、高アスペクト比縦方向pn接合構造の開発が必須である。
本発明は、開口部が数μm、アスペクト比が10以上のトレンチ壁面に高濃度の不純物がドーピングされた縦型pn接合を形成する技術を確立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明においては、高アスペクト比縦型pn接合構造を実現するために、シリコン基板に高アスペクト比のトレンチを形成し、その壁面周囲にpn接合を形成することで本構造を実現する。
具体的には、本発明は次の構成からなる。
<1>
開口部の最小寸法が10μm以下、アスペクト比5以上、かつ壁面の凹凸が0.2μm以下のSiトレンチ壁面に対し不純物をドープし、さらに、不純物がドープされたトレンチ壁面を、900℃以上の熱処理でリフローが生じるSiO2膜により被覆し、このSiO2膜を固体拡散源としたトレンチ壁面にpn接合膜を形成することを特徴とする高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。
<2>
前記ドープに先立ち、トレンチ壁面の熱酸化処理を行い、この熱酸化処理によって形成された熱酸化膜を除去する処理によりトレンチ壁面の凹凸を0.1μm以下に抑えることを特徴とする<1>記載の高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。
<3>
カソードカップリングプラズマCVD法によりリンまたはホウ素を不純物として含む酸化膜を高アスペクト比トレンチ壁面へ堆積することを特徴とする<1>記載の高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。
<4>
TEOS流量7sccm(Standard Cubic Centimeter per Minutes)に対し、TMP流量0.5sccm以上の成膜条件において1000℃においてリフロー可能な酸化膜を高アスペクト比トレンチ壁面に堆積する<3>記載の高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。
<5>
トレンチ壁面に形成された熱酸化膜を40℃〜100℃に温めたフッ化水素酸を含む溶液により除去することを特徴とする<2>記載の高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。
<6>
トレンチ壁面に形成された熱酸化膜をフッ化水素酸を含む溶液に浸し、かつ、超音波を印加し除去することを特徴とする<2>記載の高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。
<7>
トレンチ壁面に形成された熱酸化膜を20℃〜100℃に温めたフッ化水素酸を含む溶液に浸し、かつ、超音波を印加し除去することを特徴とする<2>記載の高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、開口部の最小寸法が10μm以下、アスペクト比が5以上のトレンチ壁面に高濃度の不純物がドーピングされた縦型pn接合を形成する技術が得られ、シリコン集積回路形成と親和性の高い形成方法であるため信号処理回路と受光部を同一基板上に形成することが可能となる。したがって、例えば、高速性が要求される車載用近赤外線センサーや高感度の暗所監視センサー等を比較的安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来のpn接合構造の断面図である。
【図2】効率的な受光のためのpn接合構造の断面図である。
【図3】拡散によるpn接合構造形成の模式図である。
【図4】高アスペクト比縦型pn接合構造の最良形態の模式図である。
【図5】高アスペクト比縦型pn接合構造の他の形態の模式図である。
【図6】高アスペクト比縦型pn接合構造形成の最良実施工程の模式図である。
【図7】高アスペクト比トレンチ構造形成の実験結果である。
【図8】スキャロップを低減させるための方法の模式図である。
【図9】高アスペクト比トレンチ壁面への熱酸化膜形成結果である。
【図10】酸化/エッチング繰り返しによりスキャロップ低減した実験結果である。
【図11】スキャロップ低減前後におけるPSG膜の被覆実験の結果である。
【図12】PSG膜中のP濃度をSIMSにより測定した実験結果である。
【図13】熱処理前後におけるPSG膜リフロー実験の結果である。
【図14】トレンチ内部pn接合形成をSCMにより観察した結果である。
【図15】拡散後におけるSi中のPの濃度プロファイルの実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。
本発明の実施の形態においては、pn接合形成のために重要な不純物のドーピングは、高濃度にドーピングされたSiO2薄膜を拡散源とする固相拡散法で行う。拡散源材料としては、Siも考えられるが、pn接合形成後の除去を考慮した場合、Siは選択的に除去できない。拡散源である不純物ドープSiO2膜の堆積は、常圧CVD法、大気圧プラズマCVD法、カソードカップリングプラズマCVD法などで可能であるが、最も安全性の高い(このため設置コストやランニングコストが低い)カソードカップリングプラズマCVD法で行う。図4に最良の形態を示し、図5にその他の形態を示す。図4はトレンチ構造の形状が円柱状の場合を示し、図5はトレンチ構造の形状が角柱状もしくはスリット状の場合を示している。
【0017】
本構造を実現するための要件は、
(1)高アスペクト比トレンチ壁面を不純物ドープ酸化膜で被覆し、
(2)ドーピング層のドーピング濃度を高くする
ことである。
(1)を実現するためには、高アスペクト比トレンチを形成する際に発生するスキャロップ低減手法、リフロー可能な不純物ドープSiO2膜の堆積手法の確立が課題である。
一方、(2)を実現するためには、不純物ドープSiO2膜の初期不純物濃度コントロール技術、不純物ドープSiO2膜中における不純物拡散速度の向上が課題である。原理的に、リフロー可能な不純物ドープSiO2膜の堆積および不純物ドープSiO2膜中における不純物拡散速度の向上は不純物ドープSiO2膜中の不純物濃度を高くすることで可能である。
【0018】
上記のことを前提に、本構造を実現するための最良の実施方法概略を図6に示し、個々のプロセスの概略説明を下記に示す。
図6(a)に示すように、ボッシュプロセスを用いシリコン基板に高アスペクト比のトレンチを形成する。
次に、図6(b)に示すように、ボッシュプロセスでトレンチ壁面に形成された凹凸(スキャロップ)を熱酸化膜の形成・エッチングにより低減させる。
次に、図6(c)に示すように、リンドープ酸化膜をカソードカップリングCVD法により堆積する。
次に、図6(d)に示すように、窒素雰囲気中で熱処理(リンの拡散)を行い、pn接合(n+層)を形成する。
最後に、図6(e)に示すように、リンドープ酸化膜のエッチングを行う。
なお、近赤外線センサーおよび太陽電池応用としては、図5に示す角柱状もしくはスリット状のトレンチ構造でも可能である。
【0019】
具体的には、まず、シリコン基板上にトレンチ構造形成のためのエッチングマスクとなるアルミニウム薄膜を約100nm堆積した後、通常のフォトリソグラフィーで直径3〜7μmの円形のくり抜きパターンを形成する。なお、トレンチ構造形成のためのエッチングマスクとしては、100nm程度のSiO2、100nm程度のSiNおよび2μm以上のフォトレジスト膜も利用可能である。くり抜かれた円形パターン内のアルミニウム薄膜をドライエッチング法により除去し、ボッシュプロセスを利用し、アスペクト比10以上のトレンチ構造を形成する。(実施例1:図7)
【0020】
トレンチ構造を形成する際、トレンチ壁面に0.2〜0.5μm程度の凹凸(スキャロップ)が形成される。これは、トレンチ構造を形成するボッシュプロセスにおいてフッ素ラジカルを利用した等方性エッチングが主たるシリコンエッチング機構であることに由来する。通常は発生するスキャロップを抑制するために、フッ素ラジカルによるエッチング時間を短くすることで対応するが、それでも0.2μm程度の凹凸は形成されてしまう。トレンチ壁面に凹凸がある場合、図6(c)の工程におけるリンドープ酸化膜の堆積においてトレンチ壁面を覆うことができなくなる。そこで、熱酸化膜形成と形成された酸化膜の除去を行いトレンチ壁面のスキャロップを低減する。本手法を図8に示す。
【0021】
トレンチ壁面の熱酸化膜形成には、酸素ガスを用いた水蒸気酸化を用いて行う。なお他の酸化膜形成方法としては、N2、Ar、Heなどの不活性ガスを用いた水蒸気酸化やH2およびO2ガスを混合したパイロ酸化の方法も利用可能である。酸化膜形成温度は1050℃で行ったが、現実的な時間(数時間以内)で酸化可能かつ石英製の実験装置で成膜可能な温度900℃〜1100℃でも可能である。図9に本手法で形成したトレンチ壁面への酸化膜形成結果を示す。
【0022】
続いて、トレンチ内部に形成された酸化膜の除去を30℃に温めたBHF(Bufferred Hydrogen Fluoride)溶液(25wt%)を用いて行う。この時、トレンチの底部まで溶液を到達させるため若干温度を上げた状態にし、毛細管現象を促進させる必要がある。さらに、トレンチ内部において溶液の循環を促進するために超音波を印加することも有効である。なお、溶液はフッ化水素酸を含む溶液であれば濃度に制限はない。
【0023】
図10に1050℃、1hの熱酸化、30℃ BHF溶液の繰り返しによる実験結果を示す。トレンチ形成後、最大300nmのスキャロップが上記工程2回の繰り返しにより100nm以下に低減されていることがわかる。
【0024】
図11はスキャロップ低減前後の試料に対し、成膜条件RF POWER(Radio Frequency Power:高周波電源)85W、基板温度300℃、圧力35Pa、ガス流量 O2/TEOS(Tetraethyl orthosilicate)/TMP(トリメチルリン)=223/7/0.8sccmでリンドープ酸化膜を堆積させた結果である。スキャロップ低減させた試料のトレンチ壁面へより厚い膜の堆積が確認できる。
【0025】
次に高アスペクト比トレンチ壁面へリンドープ酸化膜をカソードカップリングCVD法により堆積する。堆積条件は、RF POWER 85W、基板温度300℃、圧力35Pa、ガス流量 O2/TEOS=223/7sccmに対し、TMPを0.2〜1.5sccmまで変化させて行った。本手法はp型シリコン基板にn型のドーピング層を形成するための物であるが、n型シリコン基板にp型のドーピング層を形成する場合は、添加するガスをTMPよりTMB(トリメチルホウ素)に変更すればよい。
【0026】
図12はTMP流量に対するリンドープSiO2膜中のリン濃度の実験結果である。リン濃度の測定はSIMS(Secondary Ion-microprobe Mass Spectrometer)により行った。本条件で成膜したリンドープSiO2中に5×1020cm-3以上のリンが含まれることがわかり、気相拡散で予測される1018cm-3よりも2桁以上多いことを実証した。
【0027】
図13は、1050℃、3h、窒素雰囲気中の熱処理前後の断面SEM(canning electron microscope)写真である。この温度において、TMP流量0.8sccm以上の成膜条件で形成される膜でリフローが生じることを実証した。
【0028】
堆積条件RF POWER 85W、基板温度300℃、圧力35Pa、ガス流量 O2/TEOS/TMP=223/7/0.8sccmの条件でトレンチ壁面へ成膜したリンドープSiO2を1050℃、3h、窒素雰囲気中で熱処理(リンの拡散)を行い、pn接合(n+層)を形成する。
【0029】
図14はSCM測定によるpn接合観察結果である。トレンチ壁面にpn接合が形成されていることがわかる。また、図15は熱処理後におけるシリコン中のリン濃度プロファイルである。10-20cm3以上の表面濃度をもつドーピング層が形成されていることがわかる。
【0030】
最後に、トレンチ壁面に形成されたリンドープSiO2膜の除去を30℃に温めたBHF溶液(25wt%)を用いて行う。この方法により、形成されたシリコンの高濃度ドーピング層をエッチングすることなくリンドープSiO2膜の除去が可能となる。この時、トレンチの底部まで溶液を到達させるため若干温度を上げた状態にし、毛細管現象を促進させる必要がある。さらに、トレンチ内部において溶液の循環を促進するために超音波を印加することも有効である。なお、溶液はフッ化水素酸を含む溶液であれば濃度に制限はない。
【0031】
イメージセンサーまたは太陽電池への応用を考えた場合、形状的には円柱状(図4)、角柱状のトレンチ構造もしくはスリット状の構造(図5)が適用可能である。いずれの形状においても高アスペクト比縦型pn接合構造を実現するための最良の実施方法は図6に示す手法である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、シリコン基板に対し垂直方向にpn接合を形成するための高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法として、特にシリコン半導体素子で直接検知することができる波長1100nm以下の近赤外光に対して、高効率な受光を実現する光発電素子、具体的には、高感度近赤外線撮像素子やシリコン太陽電池の製造に好適に利用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部の最小寸法が10μm以下、アスペクト比5以上、かつ壁面の凹凸が0.2μm以下のSiトレンチ壁面に対し不純物をドープし、さらに、不純物がドープされたトレンチ壁面を、900℃以上の熱処理でリフローが生じるSiO2膜により被覆し、このSiO2膜を固体拡散源としたトレンチ壁面にpn接合膜を形成することを特徴とする高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記ドープに先立ち、トレンチ壁面の熱酸化処理を行い、この熱酸化処理によって形成された熱酸化膜を除去する処理によりトレンチ壁面の凹凸を0.1μm以下に抑えることを特徴とする請求項1記載の高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。
【請求項3】
カソードカップリングプラズマCVD法によりリンまたはホウ素を不純物として含む酸化膜を高アスペクト比トレンチ壁面へ堆積することを特徴とする請求項1記載の高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。
【請求項4】
TEOS流量7sccmに対し、TMP流量0.5sccm以上の成膜条件において1000℃においてリフロー可能な酸化膜を高アスペクト比トレンチ壁面に堆積する請求項3記載の高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。
【請求項5】
トレンチ壁面に形成された熱酸化膜を40℃〜100℃に温めたフッ化水素酸を含む溶液により除去することを特徴とする請求項2記載の高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。
【請求項6】
トレンチ壁面に形成された熱酸化膜をフッ化水素酸を含む溶液に浸し、かつ、超音波を印加し除去することを特徴とする請求項2記載の高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。
【請求項7】
トレンチ壁面に形成された熱酸化膜を20℃〜100℃に温めたフッ化水素酸を含む溶液に浸し、かつ、超音波を印加し除去することを特徴とする請求項2記載の高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。
【請求項1】
開口部の最小寸法が10μm以下、アスペクト比5以上、かつ壁面の凹凸が0.2μm以下のSiトレンチ壁面に対し不純物をドープし、さらに、不純物がドープされたトレンチ壁面を、900℃以上の熱処理でリフローが生じるSiO2膜により被覆し、このSiO2膜を固体拡散源としたトレンチ壁面にpn接合膜を形成することを特徴とする高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記ドープに先立ち、トレンチ壁面の熱酸化処理を行い、この熱酸化処理によって形成された熱酸化膜を除去する処理によりトレンチ壁面の凹凸を0.1μm以下に抑えることを特徴とする請求項1記載の高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。
【請求項3】
カソードカップリングプラズマCVD法によりリンまたはホウ素を不純物として含む酸化膜を高アスペクト比トレンチ壁面へ堆積することを特徴とする請求項1記載の高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。
【請求項4】
TEOS流量7sccmに対し、TMP流量0.5sccm以上の成膜条件において1000℃においてリフロー可能な酸化膜を高アスペクト比トレンチ壁面に堆積する請求項3記載の高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。
【請求項5】
トレンチ壁面に形成された熱酸化膜を40℃〜100℃に温めたフッ化水素酸を含む溶液により除去することを特徴とする請求項2記載の高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。
【請求項6】
トレンチ壁面に形成された熱酸化膜をフッ化水素酸を含む溶液に浸し、かつ、超音波を印加し除去することを特徴とする請求項2記載の高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。
【請求項7】
トレンチ壁面に形成された熱酸化膜を20℃〜100℃に温めたフッ化水素酸を含む溶液に浸し、かつ、超音波を印加し除去することを特徴とする請求項2記載の高アスペクト比のトレンチ構造を有する半導体デバイスの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−199417(P2012−199417A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63030(P2011−63030)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(504174135)国立大学法人九州工業大学 (489)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(504174135)国立大学法人九州工業大学 (489)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]