説明

高力率を有するアーク溶接用発電機

【解決手段】 整流器段(100)とそれに続くPFC段(200)及びインバータ段(300)からなり、これらはPFC段及びインバータ段は共に高周波型であって、後者は溶接アーク(404)のための最終整流段に電力を供給するようにしたアーク溶接機用発電機において、PFC段は、互いに磁気的に結合された2つの誘導素子(203,204)と、逆の導電方向を有する2つのダイオード(212,213)と、2つの平滑コンデンサ(216,217)と、2つの第1スイッチ素子(209,210)の連続的なオン・オフ切り換えを制御する手段とによって構成され、整流器段に取り込まれる電流を線間電圧の波形に対応して成形する。インバータ段は、第2制御スイッチ素子、ダイオード及びコンデンサからなる4対の三つ組を備えると共に、4つの制御スイッチ素子のためであり、かつ溶接アークに電力を供給する最終段への電流のための制御装置を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気アーク溶接に用いられる発電機に関し、特に単相または3相本線交流を、溶接アーク用に制御されて適合された直流に変換する発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
アーク溶接用の発電機に生じる問題点は、主に電源本線から取り込まれる電流の低力率に関連するものである。
更に、公知の構成及び方法に従って提供されるアーク溶接機の効率に悪影響を及ぼすもう1つの要因は、電源電圧の予測できない変動にある。
背景技術に関する例として、広く使用されている典型的な電気溶接機の構成が図1に示されている。
【0003】
この構成は、本線側に、ダイオードのみにより構成される第1整流器段1と、それに続く一群の平滑コンデンサ2とを有している。
これにより整流され平滑された電流は、変圧器4の1次巻線に電力供給を行う高周波電子スイッチを備えたインバータブロック3に供給される。
変圧器4の2次巻線は第2整流器段5に接続されている。
【0004】
第2整流器段5から出力された電流は誘導素子6により平滑化され、溶接アーク7に供給される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の発電機は、作動中に、図2に示すような特性の電流を電源本線から取り込む。
この種の波形が高調波成分を有することは直ちに明らかであり、これは必然的に低力率となる。
このような状況において、溶接アークに極めて有用な電力レベルを得るためには、電源本線から高いRMS値を得る必要がある。
【0006】
取り込まれる電流の高調波及び高RMS値は、電力供給導電体の発熱量増大と電力供給ラインの電圧波形の相当な歪みを生じるため、このことは電力供給網に極めて有害な影響を生じ、更には電力供給ラインに接続された変圧器の強磁性体コアにおける損失を増大させることになる。
また、波形の歪みは電力ラインにかなりのノイズを導くことになる。
【0007】
更に、家庭用の実用装置で供給されようとするものに対して起こりうるように、溶接用発電機が電力を制限されたものである場合、溶接アークに供給される電力が同等の抵抗負荷のそれよりも低いにもかかわらず、取り込まれるRMS電流の高い値が実用装置の熱的保護の干渉を受けることになる。
更にまた、既に述べたように、図1に示すような構成の発電機は、必然的に入力電圧の変動の影響を受け、これがこの発電機の性能を著しく低下させることになる。
【0008】
これらの問題点を鑑み、溶接用発電機は、可能な限り正弦波曲線となるような本線電流の取り込みを可能にする付加的手段、即ち使用者が利用可能な有効電力を全て使用できるように発電機を抵抗負荷と均等なものとするような付加的手段を設ける工夫がなされてきた。
また、本線電圧変動に発電機を自動的に適応させて、発電機の良好で安定した性能を確保するという働きを有した付加的手段も採用されてきた。
【0009】
この種の構成を有する発電機は、図3に概略的に示すようなタイプのものである。
この構成では、図1の系統図に対して、整流器ブロック1と平滑ブロック2との間に付加的手段8が挿入されていることが明確に示されている。
PFCと称するこの手段は、様々な種類のものが設けられる。
この種の発電機はいずれの場合も高価で複雑なものとなり、時として高電圧に耐える必要のある部品の選択が難しくなる。
【0010】
本発明が目指すところは、高力率で電源本線から電流を取り込むようにしたアーク溶接発電機を提供することにある。
このような意図の中で、本発明の目的は、電源本線から取り出される電源電圧の変動に対して不安定とならないアーク溶接用発電機を提供することにある。
もう1つの目的は、低コストで高効率の部品を使用することが可能な回路一式を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの目的、及び以下において明らかになる別の目的は、電源本線により電力供給される整流器段と、それに続くPFC段及びインバータ段からなり、PFC段及びインバータ段とが共に高周波型であって、後者は溶接アークに電力を供給する出力段への電力供給を行うようにしたアーク溶接用発電機であって、前記PFC段は、互いに磁気的に結合され前記整流器段の出力と直列に配設された2つの誘導素子と、共通の点(common node)と前記2つの誘導素子の出力の2つの点(node)のそれぞれとの間に接続された2つの第1高周波制御スイッチと、前記スイッチと前記相互誘導素子との間の点(node)にそれぞれ接続され導電方向が逆となる2つのダイオードと、前記ダイオードの出力点(output node)と前記第1スイッチの共通の点(common node)とに接続された2つの平滑コンデンサと、前記2つの第1スイッチの連続的なオン・オフ切り換えを制御するために更に設けられて前記整流器段に取り込まれる電流を線間電圧の波形に対応して成形する手段とによって構成され、前記インバータ段は、前記第1高周波スイッチの共通の点(common node)と前記コンデンサ間の共通の点(common node)との間で電力供給を受けるものであって、第2制御スイッチ、ダイオード及びコンデンサでそれぞれ構成され、中央点(central node)、2つの中間点(intermediate node)及び2つの外部点(external node)の5つの点(node)を形成するように接続される4対の三つ組(triad)からなり、前記外部点(external node)は前記第1スイッチと前記ダイオードのそれぞれとの間の点(node)に接続され、前記中間点(intermediate node)はそれぞれダイオードを介して前記2つの第1電子スイッチの共通の点(node)に接続され、コンデンサが前記中間点(intermediate node)の間に接続されており、更に制御装置が4つの前記第2スイッチ用に設けられ、溶接アークに電力を供給する前記出力段への電流は、2つの前記第1スイッチの共通の点(common node)と、前記第2制御スイッチ、前記ダイオード及び前記コンデンサからなる前記4対の三つ組(triad)の中央点(central node)との間から取り出されることを特徴とするアーク溶接用発電機により達成される。
【0012】
本発明の更なる特徴及び利点は、添付図面中の限定されない例を用いて示された、その好ましい実施形態についての以下の詳細な説明からより明確になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図に示すように、本発明による発電機は、理論的には4つの段(stage)に分割され、これらは参照番号100で示された本線(mains)電力供給段、参照番号200で示されたPFC段、参照番号300で示されたインバータ段、並びに参照番号400で示された出力及びアーク供給段である。
本線電力供給段100は、本線102から電力供給される単相または3相のダイオード101を有した標準的な整流器ブロックからなる。
【0014】
参照番号103及び104でそれぞれ示される2つの出力導電体は、段101から導出され、PFC段200における2つの入力導電体201及び202へと続く。
2つの誘導素子203及び204は、それぞれ入力201及び202に接続されると共に互いに磁気的に結合されている。
2つの誘導素子203及び204の出力は、参照番号205及び206で示され、それぞれ第1点(first node)207と第2点(second node)とに接続されている。
【0015】
第1制御スイッチ209の第1端子は点(node)207に接続されており、第2制御スイッチ210の第1端子は点(node)208に接続されている。
第1制御スイッチ209の第2端子及び第2制御スイッチ210の第2端子は、共通の点(common node)211に接続されている。
第1ダイオード212の第1端子は点(node)207に接続され、第2ダイオード213の第1端子は点(node)208に接続されており、2つのダイオードは導電方向が逆になっている。
【0016】
第1ダイオード212の第2端子は点(node)214に接続され、第2ダイオード213の第2端子は点(node)215に接続されている。
第1平滑コンデンサ216の第1端子は点(node)214に接続され、第2平滑コンデンサ217の第1端子は点(node)215に接続されている。
2つの平滑コンデンサ216及び217は、互いに逆極性となるように配置され、これらの第2端子は点(node)211に接続された点(node)218と接続されている。
【0017】
PFC段200は、点(node)214に接続された導電体219、点(node)215に接続された導電体220、及び点(node)218に接続された導電体221の3つの出力導電体を有している。
PFC段200は、高周波制御型(IGBTまたはMOSFET)のスイッチ209及び210のオン・オフ切り換えを制御する制御装置222を有している。
【0018】
装置222は、接続223により入力201から電圧信号Vinを取り込み、接続224により導電体205から電流信号Iinを取り込み、接続225により点(node)214またはコンデンサ216から電圧信号Vcを取り込み、接続226により点(node)215またはコンデンサ217から電圧信号Vcを取り込む。
図中、接続227及び228は、スイッチ209及び210の制御を示す。
【0019】
2つのスイッチ209及び210の連続的なオン・オフ切り換えの適切な制御により、制御装置222は整流電力供給段100により取り込まれる電流を制御し、信号Vinから得られた電圧線の波形に追従するように電流を成形することにより、極めて低い歪みと極めて高い力率を得る。
スイッチ209及び210を閉じることにより、誘導素子203及び204における電流は下式に等しい傾斜で増大する。
【0020】
Vin/(L+L+M12
式中、M12はダイオード212及び213がオフである際の2つの誘導素子の結合を考慮した係数であり、L及びLはそれぞれ誘導素子203及び204に対応するものである。
スイッチ209及び210を開くことにより、電流は平滑コンデンサ216及び217を充電するように203、212、216、217、213及び204を循環し、下式に等しい傾斜で減少する。
【0021】
−[Vin−(Vc+Vc)]/(L+L+M12
点(node)211と点(node)218の間、或いは2つのスイッチ209及び210間の接続を介し、同容量の2つのコンデンサ216及び217により、それぞれ一方のスイッチに印加される電圧はVc/2に等しくなり、この電圧は標準的な公知のPFC段の構成で生じる電圧の半分となる。
【0022】
このことは、より低い降伏電圧のスイッチの使用が可能となり、電子スイッチの製造技術に関連する理由から、より高いスイッチング周波数での作動を許容し、その結果として誘導素子203及び204の価格を低下させると共に、電源本線から取り込まれる電流の制御を改善することが可能となる。
既に知られているように、電子スイッチの降伏電圧が上昇するほど、当該スイッチの適正なスイッチング時間も増大するため、当該スイッチにより浪費される電力を制限するには、スイッチング周波数を低下させることがますます必要となる。
【0023】
インバータ段300は、高いスイッチング周波数を有しており、PFC段の出力導電体219に接続された第1外部点(first external node)301、出力導電体220に接続された第2外部点(second external node)302、ダイオード304を介して出力導電体221に接続された第1中間点(first intermediate node)303、及びダイオード306を介し出力導電体221に接続された第2中間点(second intermediate node)305を有している。
【0024】
ダイオード304及び306は、逆の導電方向となるように配置されている。
制御スイッチ307、ダイオード308及びコンデンサ309で構成される並列構成部品からなる第1三つ組(first triad)は、第1外部点(first external node)301と第1中間点(first intermediate node)303との間に設けられる。
制御スイッチ311、ダイオード312及びコンデンサ313で構成される並列構成部品からなる第2三つ組(second triad)は、第1中間点(first intermediate node)303と中央点(central node)310との間に設けられる。
【0025】
同様に、第3制御スイッチ314、ダイオード315及びコンデンサ316で構成される並列構成部品からなる三つ組(triad)が第2外部点(second external node)302と第2中間点(second intermediate node)305との間に設けられる。
第4制御スイッチ317、ダイオード318及びコンデンサ319で構成される並列構成部品からなる三つ組(triad)が第2中間点(second intermediate node)305と中央点(central node)310との間に設けられる。
【0026】
また、2つの中間点(intermediate node)303及び305の間にはコンデンサ320が接続されている。
更に、インバータ段300は4つの制御スイッチ307、311、317及び314をオン・オフ切り換えする制御装置321を有している。
ダイオード304及び306に共通である点(node)322と点(node)218との間の接続により、各制御スイッチに作用する最大電圧は半分になる。
【0027】
このような状態は、公知の構成の回路よりも更に高いスイッチング周波数とスイッチング速度を有する部品の使用を可能とし、磁性部品の寸法を減少することが可能となる。
PFC段200とインバータ段300との間の、導電体219、221及び220による接続により、スイッチの適正なオン・オフ切り換え制御を行うことによってコンデンサ216及び217の電圧が平衡するように制御することが可能となり、溶接電流の制御に対する障害の発生を回避することができる。
【0028】
段(stage)400は、点(node)322と、変圧器401の1次巻線が接続される点(node)310とにより電力供給を受け、次にこの変圧器は、その出力が誘導素子403を介して溶接アーク404に電力を供給する整流器402に電力を供給する。
本出願が優先権を主張するイタリア国特許出願PD2003A000027の開示内容は、参照によりここに編入されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】公知の装置を示す図である。
【図2】図1の公知の装置の作動状態を示す図である。
【図3】公知の装置を示す図である。
【図4】図3の公知の装置の作動状態を示す図である。
【図5】本発明による4段構成の発電機の、特に接続状態を示す概要図である。
【図6】図5の発電機のPFC段の詳細図である。
【図7】図5の発電機のインバータ段の詳細図である。
【符号の説明】
【0030】
100 整流器段
200 PFC段
203、204 誘導素子
209、210 第1スイッチ
212、213 ダイオード
216、217 平滑コンデンサ
222 制御装置
300 インバータ段
304、306 ダイオード
307、311、314、317 第2制御スイッチ
308、312、315、318 ダイオード
309、313、316、319 コンデンサ
320 コンデンサ
321 制御装置
400 出力段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源本線により電力供給される整流器段(100)とそれに続くPFC段(200)及びインバータ段(300)からなり、PFC段及びインバータ段とが共に高周波型であって、後者は溶接アーク(404)に電力を供給する出力段(400)への電力供給を行うようにしたアーク溶接機用発電機において、
前記PFC段(200)は、互いに磁気的に結合され前記整流器段(100)の出力と直列に配設された2つの誘導素子(203,204)と、共通の点(211)と前記2つの誘導素子(203,204)の出力の2つの点(207,208)のそれぞれとの間に接続された2つの第1高周波制御スイッチ(209,210)と、前記スイッチ(209,210)と前記相互誘導素子(203,204)との間の点(207,208)にそれぞれ接続され導電方向が逆となる2つのダイオード(212,213)と、前記ダイオード(212,213)の出力点(214,215)と前記第1スイッチ(209,210)の共通の点(211)とに接続された2つの平滑コンデンサ(216,217)と、前記2つの第1スイッチ(209,210)の連続的なオン・オフ切り換えを制御するために更に設けられて前記整流器段に取り込まれる電流を線間電圧の波形に対応して成形する手段(222)とによって構成され、
前記インバータ段(300)は、前記第1高周波スイッチ(209,210)の共通の点(211)と前記コンデンサ(216,217)間の共通の点(218)との間で電力供給を受けるものであって、第2制御スイッチ(307,311,317,314)、ダイオード(308,312,318,315)及びコンデンサ(309,313,319,316)でそれぞれ構成され、中央点(310)、2つの中間点(303,305)及び2つの外部点(301,302)の5つの点を形成するように接続される4対の三つ組からなり、前記外部点(301,302)は前記第1スイッチ(209,210)と前記ダイオード(212,213)のそれぞれとの間の点に接続され、前記中間点(303,305)はそれぞれダイオード(304,306)を介して前記2つの第1電子スイッチ(209,210)の共通の点(211)にそれぞれ接続され、コンデンサ(320)が前記中間点(303,305)の間に接続されており、更に制御装置(321)が4つの前記第2スイッチ(307,311,317,314)用に設けられ、溶接アークに電力を供給する前記出力段(400)への電流は、2つの前記第1スイッチ(209,210)の共通の点(211)と、前記第2制御スイッチ(307,311,317,314)、前記ダイオード(308,312,318,315)及び前記コンデンサ(309,313,319,316)からなる前記4対の三つ組の中央点(310)との間から取り出されることを特徴とするアーク溶接用発電機。
【請求項2】
前記電力供給本線は単相または3相であることを特徴とする請求項1に記載のアーク溶接用発電機。
【請求項3】
前記2つの第1スイッチ(209,210)はIGBTとして知られている形式のものであることを特徴とする請求項1に記載のアーク溶接用発電機。
【請求項4】
前記2つの第1スイッチ(209,210)はMOSFETとして知られている形式のものであることを特徴とする請求項1に記載のアーク溶接用発電機。
【請求項5】
前記第1スイッチ(209,210)のオン・オフ作動を制御する前記手段は、電圧及び電流信号(Vin,Vc,Vc,Iin)を引き込み、前記整流電力供給段(100)によって取り込まれる電流を、前記信号Vinから得られる波形に成形することにより制御して、歪みを低減すると共に極めて高い力率を得るようにする装置(222)によって構成されることを特徴とする請求項1に記載のアーク溶接用発電機。
【請求項6】
前記インバータ段(300)の前記2つのダイオード(304,306)は、その共通の点(322)が前記PFC段(200)の点(218)に接続されており、4つの前記制御スイッチ(307,311,317,314)に印加される最大電圧を半減し高いスイッチング周波数と速度を有する部品を使用可能とすることを特徴とする請求項1に記載のアーク溶接用発電機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2006−518178(P2006−518178A)
【公表日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501757(P2006−501757)
【出願日】平成16年2月6日(2004.2.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001102
【国際公開番号】WO2004/071703
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(505286981)セルコ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (1)
【氏名又は名称原語表記】SELCO S.R.L.
【住所又は居所原語表記】Via Palladio, 19, I−35019 TOMBOLO ITALY
【Fターム(参考)】