説明

高周波センサ装置

【課題】サイドローブが抑圧されたアンテナを備えた高周波センサ装置を提供すること。
【解決手段】確定後修正
送信波を発生する送信部と、前記送信波を放射し、前記送信波の物体による反射波及び透過波の少なくともいずれかを受信波として受信するアンテナと、前記受信波を検知する受信部と、を備え、前記アンテナは、パッチ電極を有する給電素子と、パッチ電極を有する4つの無給電素子と、を含み、前記4つの無給電素子は、前記給電素子を中心としてX字状に配置され、前記4つの無給電素子のそれぞれは、前記パッチ電極の辺のうちで励振方向に対して平行で前記給電素子に近接する辺が、前記給電素子との間においてゼロより大きく4分の1波長よりも短い対向部分を有することを特徴とする高周波センサ装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波を用いた高周波センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波などの送信波が人体にあたると反射波あるいは透過波を生じる。この反射波あるいは透過波を受信することにより人体の有無を検出するのが高周波センサであり、自動ドア、機器のリモートコントロール、便器洗浄装置などに使用できる。 さらに、移動物体を検出可能な高周波センサもあり、例えば水洗便器などの洗浄を自動化する場合に有用である。この場合、一定時間以上使用者が便器の前に留まっていることを検知し、その後に使用者が便器を離れたことを検知して、一定量の洗浄水を流すようにする。
【0003】
便器を実際に使用していることを検知して洗浄水を流すには、ドップラー効果を利用することが考えられる。すなわち、電波や音波が移動物体に当り反射すると、反射波の周波数がドップラーシフトする。この反射波と送信波の周波数の差分周波数スペクトラムを求めることにより移動物体が検知される。さらに、この差分に相当するドップラー周波数は物体の移動速度に比例する。従って、尿や洗浄水といったボール面を流れる液流などに向けて送信波を放射することにより、使用状態に応じて適切に洗浄水を供給できる。
【0004】
送信波として電波を用いる場合、センサを構成するアンテナの放射方向を目的物に向けて精度よく制御することが重要である。すなわち、目的物以外の物体を誤検知しないことが好ましい。
【0005】
給電素子を中心とし2軸上の位置に複数の無給電素子を配置し、無給電素子に接続されたスイッチをオン−オフし導波器/反射器に作用させて電波を曲げる技術開示例がある(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−258533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、サイドローブが抑圧されたアンテナを備えた高周波センサ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、
送信波を発生する送信部と、
前記送信波を放射し、前記送信波の物体による反射波及び透過波の少なくともいずれかを受信波として受信するアンテナと、
前記受信波を検知する受信部と、
を備え、
前記アンテナは、パッチ電極を有する給電素子と、パッチ電極を有する4つの無給電素子と、を含み、
前記4つの無給電素子は、前記給電素子の中心で交差する2軸上にそれぞれ前記給電素子と隣接して配置され、
前記4つの無給電素子のそれぞれは、アンテナゲインがプラスで且つ位相がプラスの状態と、アンテナゲインがゼロまたはマイナスの状態と、を切り替え可能とされたことを特徴とする高周波センサ装置が提供される。
また、本発明の他の一態様によれば、
送信波を発生する送信部と、
前記送信波を放射するアンテナと、
前記送信波の物体による反射波及び透過波の少なくともいずれかを受信波として受信するアンテナと、
前記受信波を検知する受信部と、
を備え、
前記アンテナは、パッチ電極を有する給電素子と、パッチ電極を有する4つの無給電素子と、を含み、
前記4つの無給電素子は、前記給電素子の中心で交差する2軸上にそれぞれ前記給電素子と隣接して配置され、
前記4つの無給電素子のそれぞれは、アンテナゲインがプラスで且つ位相がプラスの状態と、アンテナゲインがゼロまたはマイナスの状態と、を切り替え可能とされたことを特徴とする高周波センサ装置が提供される。
【0008】
また、本発明の他の一態様によれば、
送信波を発生する送信部と、
前記送信波を放射し、前記送信波の物体による反射波及び透過波の少なくともいずれかを受信波として受信するアンテナと、
前記受信波を検知する受信部と、
を備え、
前記アンテナは、パッチ電極を有する給電素子と、パッチ電極を有する4つの無給電素子と、を含み、
前記4つの無給電素子は、前記給電素子の中心で交差する2軸上にそれぞれ前記給電素子と隣接して配置され、
前記4つの無給電素子のそれぞれは、アンテナゲインがプラスで且つ位相がプラスの状態と、アンテナゲインがプラスで且つ位相がマイナスの状態と、アンテナゲインがゼロまたはマイナスの状態と、を切り替え可能とされたことを特徴とする高周波センサ装置が提供される。
【0009】
また、本発明の他の一態様によれば、
送信波を発生する送信部と、
前記送信波を放射するアンテナと、
前記送信波の物体による反射波及び透過波の少なくともいずれかを受信波として受信するアンテナと、
前記受信波を検知する受信部と、
を備え、
前記アンテナは、パッチ電極を有する給電素子と、パッチ電極を有する4つの無給電素子と、を含み、
前記4つの無給電素子は、前記給電素子の中心で交差する2軸上にそれぞれ前記給電素子と隣接して配置され、
前記4つの無給電素子のそれぞれは、アンテナゲインがプラスで且つ位相がプラスの状態と、アンテナゲインがプラスで且つ位相がマイナスの状態と、アンテナゲインがゼロまたはマイナスの状態と、を切り替え可能とされたことを特徴とする高周波センサ装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、サイドローブを抑圧しつつ複数の方向に電波ビームを放射可能なアンテナを備えた高周波センサ装置が提供される。この結果、近距離において、検知したい方向すなわち電波ビームを傾けた(走査した)方向とは異なる方向にある物体を誤検知しないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる高周波センサ20を説明するための模式図であり、同図(a)、(b)、(c)、(d)はそのブロック図、同図(e)は水平放射パターンにおける等ゲイン図、同図(f)は放射パターンを表す模式図である。
【0012】
図1(a)に表した具体例の場合、送信部12に接続されたアンテナ10からは、例えば、10.525GHzの周波数を有する送信波T1が放射される。人体からの反射波または透過波T2は、アンテナ10を経由して受信部14に入力される。アンテナ10は、図1(a)に表したように送信側と受信側とを共通としてもよく、または、同図(b)に表したように、送信部12にはアンテナ10aを接続し、受信部14にはアンテナ10bを接続しても良い。受信波の振幅を検出して得られた出力信号により人体の有無などが推定できる。すなわち、人体などの被検知体が送信波T1を反射することにより、受信される受信波の振幅が増加する。これを検出することにより、人体などの被検知体の存在を検出できる。
【0013】
また一方、ドップラー効果を利用して被検知体を検知することも可能である。
図1(c)は、本発明の実施の形態にかかる移動物体を検出する高周波センサ20を説明するためのブロック図である。
図1(c)の場合、送信部12に接続されたアンテナ10からは、例えば、10.525GHzの周波数を有する送信波T1が放射される。移動物体からの反射波T2は、アンテナ10を経由して受信部14に入力される。アンテナ10は、図1(c)に表したように送信側と受信側とを共通としてもよく、または、図1(d)に表したように、送信部12にはアンテナ10aを接続し、受信部14にはアンテナ10bを接続してもよい。
送信波の一部と受信波とは、差分検出部16にそれぞれ入力されその差分のドップラー周波数近傍の出力信号が出力される。すなわち、ドップラー周波数ΔF(Hz)は、下記の式(1)により表すことができる。

ΔF=Fs−Fb=2×Fs×v/c 式(1)

但し、Fs:送信周波数(Hz)
Fb:反射周波数(Hz)
v:物体の移動速度(m/s)
c:光速(=300×10m/s)

高周波センサ20を液流に向けると、式(1)で表されるように、その流速vに比例した周波数ΔFを含む出力信号を得ることができる。出力信号は周波数スペクトラムを有し、スペクトラムのピークに対応するピーク周波数と液流の流速vとの間には相関関係がある。従って、ドップラー周波数ΔFを測定することにより流速vを求めることができる。なお、日本においては、人体を検知する目的には10.525GHzまたは24.15GHzの周波数が使用できる。
【0014】
本発明の具体例にかかる高周波センサ20を構成するアンテナ10からの水平放射パターンは、例えば、図1(e)のようになる。アンテナの給電点を通るZ軸と直交するXY面内において、アンテナ10のゲイン(利得)の最大点をQとする。図1(e)においては、ゲインが最大値から3dB低下する領域を実線で表し、10dB低下する領域を破線で表している。Y軸はアンテナ10の給電点を通り励振方向と平行であるが、3dBゲイン低下領域をY軸に関して走査すべき一方の側(図では左側)に局在するように位置制御すると、目的物を正確に検知することができる。図1(f)は、アンテナの水平放射パターンである。アンテナに関しては、後に詳細に説明する。
【0015】
図2は、図1(c)及び(d)に例示された移動物体を検出する高周波センサ20を備えた小便器の構成を例示する模式図である。
小便器22の内部には、高周波センサ20と、機能部24が収められている。小便器22の上方には、小便器22のボール部内空間を洗浄するための水を供給する給水部30及び洗浄水吐出口32が設けられている。ボール部内空間の下方には排水口34が設けられている。
【0016】
図3は、機能部24の構成を例示するブロック図である。
差分検出部16の出力信号はアンプ40により増幅され、FFT(Fast Fourier Transform)演算部42に入力される。FFT演算部42により、差分検出部16の出力信号の周波数スペクトラムをリアルタイムで得ることができる。FFT演算部42の出力は、流量演算部44に入力され、周波数スペクトラムから流量に換算されることもできる。
【0017】
コントローラ46は、流量演算部44で演算された流量などをもとに、他の装置を作動させる。洗浄水供給バルブ36はコントローラ46の指示により開閉する。電解水生成部60は、コントローラ46により、例えば、1日に1回電解水を流すことにより排水管における尿石形成を防止する。外部インタフェース52は、尿量などの情報を外部に伝送する。
【0018】
図1に例示された高周波センサ20は、人体の検知、移動物体の検知、移動速度の検出などが可能である。この結果、自動ドアの開閉などを制御するセンサ、人感センサ、防犯センサ、機器のリモートコントロール、便器洗浄装置などに用いることができる。
【0019】
以下、高周波センサ20の構成要素であるアンテナ10について詳細に説明する。
図58は、本実施形態に係る高周波センサ20のアンテナ10の具体例を表し、同図(a)はその模式平面図、同図(b)はその模式底面図である。
【0020】
基板の上にパッチ電極を有する給電素子60が形成され、励振方向に対して縦方向及び横方向に給電素子60を取り囲むように4つの無給電素子62、63、162、163が設けられている。これら無給電素子にはそれぞれ伝送線路64が接続されている。伝送線路64の終端は導通孔66a、66b、66c、66dを介して接地68に短絡されている。また、伝送線路64の途中には分岐点が設けられ、導通孔67a、67b、67c、67dを介して高周波スイッチ100に接続されている。高周波スイッチ100を切り替えることにより、4つの無給電素子62、63、162、163のそれぞれのゲインを切り替えることができる。
【0021】
そして、本実施形態においては、4つの無給電素子62、63、162、163のいずれかひとつの無給電素子のゲインをプラスで且つ位相がプラスとした時に、残りの3つの無給電素子のゲインをゼロまたはマイナスとする。ゲインをプラスで且つ位相がプラスとした無給電素子は導波器として作用し、給電素子60から放出される電波ビームを曲げることができる。そしてこの時に、残りの3つの無給電素子のゲインをゼロまたはマイナスとすることにより、電波ビームにサイドローブが発生せず、目的の方向のみに電波ビームを放射させることができる。その結果として、例えば目的の空間のみを正確にモニタできる高周波センサを実現できる。
以下、本実施形態に係る高周波センサ20に用いることができるアンテナについて、その基本的な構造及び作用の背景から説明する。
【0022】
図4は、本発明の高周波センサ20を構成するアンテナ10の基本構造の具体例を説明するための模式図であり、同図(a)は模式平面図、同図(b)は模式斜視図である。
本具体例において、パッチ電極を有する給電素子60の励振方向に対して横方向に、パッチ電極を有する無給電素子62が配置されている。このアンテナ10は、給電素子60及び無給電素子62がそれぞれ平面パターンを有するパッチアンテナに属する。アンテナ10の主面はXY座標で表され、水平面内においてX軸からの角度をφで表す。また、この主面と垂直な方向をZ軸とし、垂直面において、Z軸からの角度をθで表す。Y軸は、励振方向に対して平行であり、X軸、Y軸、Z軸、φ及びθに関するこれらの定義は、本願明細書においてすべて同一とする。
【0023】
給電素子60の中心を通り、Y軸の負方向における位置Pが送信波の励振部と接続される給電点とされる。給電素子60は矩形であり励振方向の一辺の長さDは約λg/2(但しλgは波長)とする。また、無給電素子62の中心線上で、励振方向に平行かつY軸正方向には伝送線路64が設けられており、その終端は導通孔66を介して接地68へ接続されている。すなわち、伝送線路64は終端短絡とされている。ここで、「伝送線路」は、基板の主面に設けられたストライプ状導体と、これに対向してその基板の裏面側に設けられた接地と、の組み合わせにより構成されている。
【0024】
図5は、無給電素子62をより詳細に表し、同図(a)はその模式平面図、同図(b)は同図(a)のAA’に沿った模式断面図である。
無給電素子62と給電素子60との形状は伝送線路64以外の領域においてほぼ等しい。この具体例の場合、給電点Pの横方向、かつY軸負方向の位置が整合点P’となる。伝送線路64の終端から0.3mmの位置にφ0.3mmの導通孔66が設けられており、また伝送線路64の長さをLとする。
【0025】
このアンテナは、例えば、誘電体の両面を銅板で挟んだガラスエポキシ基板などを用いて形成できる。図5(b)においては、比誘電率(εr)が3.5、tanδが0.004、誘電体厚みが0.75mmの場合を表した。このような基板により構成される伝送線路、すなわちマイクロストリップラインの波長及び特性インピーダンスはεr、誘電体厚み、マイクロストリップラインのストライプ状導体幅及び厚みの関数となる。
【0026】
図6は、伝送線路64の長さLを変化させた場合、無給電素子62の整合点P’における振幅(Magnitude:dB), 位相(度)及び無給電素子62のアンテナゲイン(アンテナ利得:dB)のシミュレーション結果を表すグラフ図である。
Lが伝送線路の4分の1波長である4.8mm近傍において、整合点P’における振幅 が最小となり、位相がプラスからマイナスに急激に変化する。これよりLが短い3.7mm近傍においてアンテナゲインは約5.5dBと最大となっている。また、位相はLが約8.1mmにおいてマイナスからプラスへと転じる。これよりLが大きい8.3mm近傍においてアンテナゲインはマイナス10dBとなり最低となる。なお、位相がプラスである場合は無給電素子62は導波器として作用し、ゼロ及びマイナスである場合は反射器として作用する。
【0027】
図7は、アンテナ整合点P’において高周波回路パラメータであるSパラメータのうち、反射係数であるS11をシミュレーションで求めた結果を表し、同図(a)はS11の振幅(Mag.;dB)、同図(b)はS11の位相(deg)の周波数特性をそれぞれ表す。
周波数11.05GHzにおいて、伝送線路長が4.7mmの場合に位相は0度となり、3.77mmの場合に位相は110度、5.32mmの場合に位相はマイナス110度となる。
【0028】
伝送線路が4.7mmの場合に共振周波数は11.05GHz、位相は0度である。伝送線路長を3.77mmと短くすると共振周波数は11.29GHzに上昇し、11.05GHzにおける位相はプラス110度となる。反対に伝送線路長を5.32mmと長くすると共振周波数は10.88GHzに下降し、11.05GHzにおける位相はマイナス110度となる。このように、無給電素子62に接続する伝送線路64の長さを変えることで無給電素子を導波器または反射器として作用させることができる。
【0029】
図8は、整合点P’の位相が0乃至140度である無給電素子66を、全体のアンテナゲインが最大となる素子間スペースS(mm)に配置したゲイン(dB)と、最大放射強度が得られる放射角度θ(度)との関係を表すグラフ図である。
例えば、整合点P’の位相が110度の場合、素子間スペースSが2.2mmにおいて全体アンテナゲインが最大である7.15dBとなることを示している。このとき、最大放射強度が得られる角度θはほぼ27度となる。また、整合点P’の位相が120度より大きくなると全体のアンテナゲインが急激に低下し、角度θも小さくなる。
【0030】
図9は、H面(φが0−180°である垂直断面)におけるアンテナゲインのθ依存性を、それぞれの整合点P’の位相に対して求めたシミュレーション結果を表すグラフ図である。
放射パターンは、メインビームと、これよりゲインの小さいサイドローブ(不要電波)とを含む。ここで、メインビームのゲインのピークより3dB低下した角度領域を半値角と呼ぶことにする。液流を精度よく検知するためには、メインビームのゲインが高く、メインビームとサイドローブとのゲイン差が大きく、かつ3dB利得低下する半値角範囲が0度よりも走査方向側に局在することが好ましい。
【0031】
すなわち、アンテナのゲインが最大ゲインから3dB以内となる半値角範囲が、パッチ電極を含む平面に対して垂直であり給電素子と交差する垂直面により区切られる2つの空間のいずれか一方のみに局在するように無給電素子が配置されていることが特徴とされる。
【0032】
整合点P’の位相が大きくなるに従い、ゲインは増加するが、半値角が0度を越えるようになる。従って、整合点P’の位相は120度以下、90度以上が好ましい。例えば、整合点位相が110度の場合、アンテナゲインは約マイナス19dB,半値角範囲はマイナス65乃至マイナス5度、メインビームとサイドローブとのゲイン差が11dBとなり、高周波センサとしての機能を備えることが可能となる。
【0033】
図10は、整合点の位相を0乃至140度と変化させ、素子間スペースSを1乃至5mmと変化させた場合の水平放射パターン(XY面)を表している。整合点P’のそれぞれの位相に対してアンテナゲインが最大となる素子間スペースS、最大放射強度となる放射角度θが図10の右端の1列の例示するように得られる。3dB利得低下領域が、給電点Pを含む水平面(XY面)内の軸に関して、走査したい一方の側(図10においては左側とする)に局在するように位置制御される様に、素子間スペースS,整合点P’位相を選択決定することができる。この結果、検知したい液流など目的物の領域に応じて高周波センサを動作させることが可能となる。
【0034】
また、無給電素子の位相が0度に近づくほどアンテナゲインが低下する。例えば、小便器を洗浄する水を利用して蓄えられた電気エネルギーを利用し人体検知および洗浄バルブの開閉を行うシステムを備えた自動洗浄小便器には発電量に限りがあり効率が求められる。このような場合に、整合点P’の位相が120度以下、90度以上の無給電素子をアンテナゲインが最大となる位置に配置すれば、検知したい方向に集中的に電波を放射し、少ないエネルギーにて必要な情報が得られ、好適である。
【0035】
図11は、本具体例において、整合点P’の位相が90乃至130度である無給電素子62を、全体のアンテナゲインが最大となる素子間スペースS(mm)で配置したゲイン(dB)と、最大放射強度が得られる放射角度θ(度)との関係を表すグラフ図である。
【0036】
図11のアンテナ10は、例えば、アルミナのようなセラミック材料を用いることにより形成できる。この場合、比誘電率を9.5、tanδを0.001、厚みを1mmとしてシミュレーションを行っている。Lが4.4mmの場合、アンテナゲインは5.5dBと最大となり、このとき最大放射強度が得られる角度は30度である。
【0037】
図12は、本具体例において、H面におけるアンテナゲイン(dB)のθ(度)依存性を、それぞれの整合点P’の位相に対して求めたシミュレーション結果を表すグラフ図である。
整合点位相P’が大きくなるに従い、ゲインは増加するが、半値角が0度を越えるようになる。従って、整合点位相は120度以下、90度以上が好ましい。例えば、整合点位相が120度の場合、アンテナゲインは約マイナス21dB,半値角範囲はマイナス62乃至マイナス2度、メインビームとサイドローブとのゲイン差が11dBとなり、高周波センサとしての機能を満たす。
【0038】
通常、トイレや浴室、洗面所などで使用するセンサは防水ケース等の筐体内に収納し使用することが一般的であるが、センサ前方を遮蔽する障害物が存在すると電波の放射量減衰、放射形態の変化が生じる。アルミナのような比較的高誘電率、低tanδのセラミック材料は高周波特性に優れ、高温高湿環境での使用に適している。従って、セラミック基材に形成されたパッチ電極の表面を金やセラミックの薄膜で被覆しておけば、浴室などの壁面や換気孔にアンテナ面を曝して配置することが可能であり、電波の放射形態の変化を抑止できる。
【0039】
図13は、アンテナ10の基本構造の具体例の模式平面図である。なお、以下のアンテナの具体例において図4と同様の構成要素には同一番号、同一記号を伏して詳細な説明を省略する。
本具体例においては、無給電素子162は励振方向に沿って給電素子60と隣り合って配置されている。このアンテナ10は、図5(b)と同様の材料を用いて形成することができる。終端短絡の伝送線路は、励振方向と平行な部分を有している。
図14は、整合点P’の位相が60乃至110度である無給電素子66を、全体のアンテナゲインが最大となる素子間スペースS(mm)に配置したゲイン(dB)と、最大放射強度が得られる放射角度θ(度)との関係を表すグラフ図である。
素子間スペースSが1.0mmの場合、アンテナゲインが6.92dBと最大となり、最大放射強度が得られる角度が約42度となる。
【0040】
図15は、E面(φが90−270°である断面)におけるアンテナゲインのθ依存性を、それぞれの整合点P’の位相に対して求めたシミュレーション結果を表すグラフ図である。
整合点P’の位相が大きくなるに従い、ゲインは増加するが、半値角が0度を越えるようになる。従って、整合点P’の位相は110度以下、90度以上が好ましい。例えば、整合点位相が110度の場合、アンテナゲインはほぼマイナス19dB,半値角範囲はプラス2乃至プラス80度、メインビームとサイドローブとのゲイン差が10dBとなり、高周波センサとしての機能を備えることが可能となる。
【0041】
図16は、整合点の位相を0乃至150度と変化させ、素子間スペースSを変化させた場合の水平放射パターンを表す。
それぞれの位相においてアンテナゲインが最大となる素子間スペースSと、最大放射強度が得られる放射角度θが本図の右端のように得られる。3dB利得低下領域が、給電点Pを含む水平面のX軸に関して、走査したい一方の側(図16においては上側とする)に位置制御される様に、素子間スペースS,整合点P’位相を選択決定することができる。この結果、検知したい液流の領域に応じて高周波センサを動作させることが可能となる。
【0042】
図4及び図13の具体例では無給電素子の配置が異なり、図4の具体例で示した整合点P’の位相が120度以下、90度以上のときの角度θは約24度〜約33度であるのに対し、図13の具体例で示した整合点P’の位相が110度以下、90度以上のときの角度θは約42度〜約51度である。センサが小便器のスプレッダーより上方の背面に設置されているとき、大人しか使用しない小便器であれば放射角度が比較的狭いアンテナでも対応でき図4の具体例に示したアンテナ構成を採用すれば良い。一方、子供も使用する小便器の場合は、放射角度が比較的広いアンテナが好ましく、図13の具体例に示したアンテナ構成を採用すれば良い。このように小便器に排泄される尿の高さに応じて使い分けることも可能である。
【0043】
図17は、アンテナ10の基本構造の具体例を表し、同図(a)は模式平面図、同図(b)は模式斜視図である。
本具体例においては、給電素子60と隣り合い励振方向に対して横方向の位置に無給電素子62及び63が配置されている。かつ、無給電素子62の終端短絡伝送線路64aの電気長はλg/4より短いので整合点の位相はプラス、無給電素子63の終端短絡伝送線路64bの電気長はλg/4より長いので整合点の位相はマイナスである。
【0044】
図18は、無給電素子62における整合点位相を110度に固定し、無給電素子63の位相をマイナス180度から0度と変化した場合、全体のアンテナゲインが最大となる素子間スペースSとゲイン、最大放射強度が得られる放射角度θとの関係を表すグラフ図である。例えば、整合点P’の位相がマイナス90度、素子間スペースが3.4mmの場合、アンテナゲインは7.5dBの最大値となる。また、このとき最大放射強度となる角度は39度である。
【0045】
図19は、本具体例において無給電素子62を110度、無給電素子63の位相を0度、マイナス90度、マイナス180度とした場合のH面におけるゲインのθ依存性を表すグラフ図である。
0度とマイナス90度において、メインビームの放射パターンに大きな変化を生じていない。マイナス90度からマイナス180に変化すると、メインビームのピーク位置がサイドローブに少し接近し、サイドローブゲインを約3dB抑圧できる。
【0046】
図20は、無給電素子62の位相を110度と固定し、無給電素子の位相をマイナス180乃至0度と変化させ、かつ素子間スペースSを変化させた場合の水平放射パターンを表す。アンテナゲインが最大となる素子間スペースS、最大放射強度となる角度θが本図右端のように得られる。本図において、3dB利得低下領域が一方の側(左側)に制御され、液流が走査したい側で検知できる。
無給電素子63の位相が0度〜マイナス90度の範囲では最大放射強度が得られる角度θが異なっていても半値角のビーム幅でみればほぼ同一レベルであり、位相がマイナス180度に近づくほどサイドローブも小さくなるため、無給電素子63の位相はマイナス90度〜マイナス180度の範囲で選択することが好ましい。
【0047】
図21は、無給電素子62の位相を80乃至130度と変化させ、無給電素子63の位相を0度またはマイナス180度とした場合の、H面におけるゲインのθ依存性である。無給電素子63の位相は、マイナス180度のほうがサイドローブを4乃至6dB抑圧できるので好ましい。また無給電素子62の位相を90度以上120度以下とすると無給電素子63の位相にかかわらず半値角を0度よりも走査方向側とでき、メインビームとサイドローブとのゲイン差を3dB以上確保できる。
【0048】
図22は、図21のように位相を変化させた場合の水平放射パターンである。アンテナゲインが最大となる素子間スペースSと、最大放射強度となる放射角度θが本図右端の様に得られ、3dB利得低下領域を一方の側(左側)に制御し液流を検知したい側で走査できることを表している、
図23は、無給電素子62の位相を0度とし、無給電素子63の位相をマイナス180度とした場合のH面における電波ビームのゲインのθ依存性を表す。メインビームとサイドローブとのゲイン差が約4dBと小さいが、半値角を0度より離して走査方向側とするのが容易である。また、無給電素子63の位相をマイナス180度とした場合、図9に示した無給電素子62の位相を0度にしたときの放射パターンとほぼ同じである。これは無給電素子63から放射される電波の放射量が非常に小さく、電波の放射形態に殆ど影響を与えないためである。すなわち、無給電素子63は無いに等しい状態である。
【0049】
図24は、無給電素子62の位相を140、150、160度とし、無給電素子63の位相を0度とした場合のH面におけるゲインのθ依存性を表す。無給電素子62の位相を140及び150度とすることにより、3dB利得低下領域を一方の側(左側)に制御し液流を走査したい側で検知できる。この場合、サイドローブとメインビームが連続し広がった放射パターンとなる。
【0050】
図25は、図17の具体例の第1変形例であり、同図(a)は伝送線路64の特性インピーダンスが80オームであり、かつ無給電素子62の位相は110度(伝送線路の長さLは3.8mm)、無給電素子63の位相はマイナス110度(伝送線路の長さLは5.3mm)であるアンテナ10の模式平面図、同図(b)はゲインのθ依存性を表す。
また、図26は、図17の具体例の第2変形例であり、同図(a)は伝送線路64の特性インピーダンスが50オームであり、かつ無給電素子62の位相は110度、63の位相はマイナス110度であるアンテナ10の模式平面図、同図(b)はゲインのθ依存性を表す。メインビームのゲインは共にマイナス19dB,ゲインが最大となる角度θは共にマイナス35度である。第1変形例の方が走査方向側に局在するメインビームの放射量が多い。一方、第2変形例の方がサイドローブを約1dB抑圧できている。
【0051】
図27は、図17の具体例の第3変形例である。特性インピーダンスを80オームとし、無給電素子の励振方向と直交する一方の辺と整合点P’との距離2.3mmと等しい切り込みを他方の辺に設け、伝送線路64を長くする。図27(b)に例示されるゲインのθ依存性は図20に例示された第1変形例とほぼ同様となる。
【0052】
また、以上説明した具体例においては、給電素子と無給電素子の形状とサイズを同一としているが、無給電素子の形状は給電素子とは異なっていても良い。形状やサイズを極端に変えなければ、無給電素子の形状を小さくし周波数が高め、逆に形状を大きくし周波数が低めであろうとも伝送線路の長さを調節することにより所望の導波器または反射器として作用させることができる。
【0053】
図28は、アンテナ10の基本構造の具体例を表し、同図(a)は模式平面図、同図(b)はゲインのφ依存性である。第3具体例において無給電素子62及び63における伝送線路64a及び64bは、X軸に関して給電素子60の給電点Pとは反対側に設けられている。これに対して本第4具体例において、伝送線路64a及び64bはX軸に関して給電点Pと同一側に配置される。図28(b)において、太線で著す本第4具体例と細線で表す第3具体例とのゲインのφ依存性における相違は小さい。従って、センサ形態に応じて伝送線路64の接続位置はどちらか一方に選択すれば良い。
【0054】
次に、終端開放伝送線路を用いた場合について説明する。
図29は、アンテナ10の終端開放伝送線路を有する基本構造の具体例であり、伝送線路74a及び74bの終端を開放としたアンテナ10の模式平面図である。終端開放の伝送線路は電気長がλg/2で位相が0度である。本図において、無給電素子72における伝送線路74aの電気長をλg/2より短く、無給電素子73における伝送線路74bの電気長をλg/2より長く設定する。無給電素子72,73及び給電素子60の励振方向に沿う長さDをλg/2とする。
【0055】
図30は、無給電素子72,73を表し、同図(a)は模式平面図、同図(b)はBB’に沿った模式断面図である。厚みが0.75mmの基板に対して深さが0.74mmである導通孔77の先端は接地68とは接続されずに開放(オープン)とする。なお、アンテナ10を構成する基板は図4の具体例と同様とできるので説明を省略する。
【0056】
図31は、終端開放の伝送線路の長さLOを変化させた場合、無給電素子72及び73の整合点P’における振幅(dB)、位相(度)、無給電素子のアンテナゲイン(dB)をシミュレーションにより求めたグラフ図である。LOが伝送線路の2分の1波長である7.6mm近傍において整合点P’における振幅が最小となり、位相がプラスからマイナスに急激に変化する。これよりLOが短い7.3mm近傍においてアンテナゲインは約4.4dBと最大になっている。破線で表すアンテナゲインはLOが2.4乃至4.3mmの範囲でマイナスとなり、3.4mm近傍において最小値となる。
【0057】
図32は、整合点P’における反射係数S11のシミュレーション結果を表し、同図(a)はS11振幅、同図(b)は位相の周波数特性を表す。 終端開放の伝送線路長が7.55mmの場合に共振周波数は11.05GHz、位相は0度である。伝送線路長を6.64mmと短くすると共振周波数は上昇し、11.05GHzにおける位相はプラス110度となる。反対に伝送線路長を8.14mmと長くすると共振周波数は下降し、11.05GHzにおける位相はマイナス110度となる。終端短絡した伝送線路と同様に、無給電素子72及び73に接続する伝送線路74a及び74bの長さを変えることで、アンテナゲインは少し低下するものの無給電素子を72及び73導波器または反射器として作用させることができる。
【0058】
図33は、最大放射強度が得られる放射角度θにおけるゲインの角度φ依存性を表すグラフである。無給電素子に接続される伝送線路が終端短絡(ショート)である場合を細線で、終端開放(オープン)である場合を太線でそれぞれ表す。細線で表す終端短絡した伝送線路を各無給電素子に接続して一方の無給電素子を導波器、他方の無給電素子を反射器として作用させたほうが角度φに対して対称とできる。
【0059】
図34は、終端短絡または終端開放の伝送線路を有する無給電素子を、給電素子と隣り合うように励振方向に対して横方向に配置したアンテナ10の水平放射パターンを表す図である。終端短絡した伝送線路を無給電素子に接続し導波器として作用させる(ショート:110度)方が、終端開放した伝送線路を無給電素子に接続し導波器として作用させる(オープン:110度)よりもアンテナゲインを高くすることができる。また、反射器として作用させる無給電素子も終端短絡した伝送線路を接続することで、アンテナを配置するのに必要な面積が減少し、角度φに対して対称に電波を放射できる。
【0060】
図35は、位相が110度及びマイナス110度となる終端短絡及び終端開放伝送線路の構成を表す模式平面図である。
また、図36は、図35に表したそれぞれの伝送線路を備えた無給電素子のE面におけるゲインのθ依存性を表す。実際のアンテナ構造では無給電素子自体に給電されることはないが、ここでは接続される伝送線路形態による無給電素子の放射形態の違いを把握するため無給電素子の整合点に給電した場合の違いを示す。終端短絡した伝送線路64を接続した無給電素子62、63の方が、終端開放した伝送線路74を接続した無給電素子72、73よりもゲインが高い。特に、終端短絡且つ位相マイナス110度の伝送線路を有する無給電素子が一番高いゲインを有する。逆に、終端開放かつ位相110度の伝送線路を有する無給電素子のゲインが最も低い。また、終端短絡した伝送線路64を接続した無給電素子62、63から放射される電波はほぼ正面方向に放射されるのに対し、終端開放した伝送線路74を接続した無給電素子72、73から放射される電波はマイナス側(伝送線路74が接続された方向とは反対側)に傾いている。無給電素子に終端開放の伝送線路を接続し、導波器または反射器として作用させると角度φに対して対称に放射されなくなるのはこれが原因である。
【0061】
また図33に例示されるように終端開放伝送線路を用いるとφが240乃至330度の間の範囲でゲインが充分には低下しない。また、図34に例示されるように、終端開放伝送線路を用いると放射パターンがこの角度(φ)近傍で曲がり(すなわち膨らみ)を生じている。この曲がりが生じると、3dB利得低下領域の制御が十分にできない場合がある。しかし、この曲がりは給電素子と無給電素子との励振方向に沿う相対位置をずらすことにより改善できる。
【0062】
図37は、アンテナ10の基本構造の具体例の模式平面図である。終端開放伝送線路74a及び74bをそれぞれに有する無給電素子72及び73は、給電素子60に対して励振方向かつ給電点とは反対方向に距離Gだけずらして配置されている。この場合は、無給電素子72と73とを同一にGだけずらしているが、同一でなくとも良い。図38に例示されるゲインの角度φ依存性は、図33の終端短絡伝送線路と同様にゲインを減衰させることができる。
【0063】
図39は、水平放射パターンの回転を説明するための模式図である。図39(a)に表した具体例の場合、終端開放伝送線路を有する無給電素子74は、給電素子60に対してずらして配置されておらず、両者の中心をむすぶ直線は、励振方向に対して垂直とされている。その場合の水平放射パターンを見ると、最大ゲインはθ=30度、φ=210度である。つまり、φ=180度の方向からみて30度も回転している。
【0064】
これに対して、図39(b)に表した具体例の場合、終端開放伝送線路を有する無給電素子74は、給電素子60に対してずらして配置されている。すなわち、無給電素子74は、その伝送線路が接続されている方向に向かってずらされている。このようにすると、放射パターンのφ方向の回転を抑制できる。具体的には、図39(b)に表した具体例の場合、最大ゲインはθ=27度、φ=180度であり、図39(a)において見られた水平放射パターンの回転が抑制されている。この場合、無給電素子74をずらし量は、λg/4以内に抑えることが望ましい。
【0065】
一方、水平放射パターンの回転を抑制するもうひとつの方法として、伝送線路を短絡する方法を挙げることができる。
図39(c)は、無給電素子74を給電素子60に対してずらすことなく、その伝送線路の終端を接地した具体例を表す。その結果、放射パターンの最大ゲインはθ=36度、φ=186度となり、図39(a)に表した具体例(φ=210度)と比べて、φ=180度の方向に24度も戻ったことが分かる。
【0066】
図40は、アンテナ10の基本構造の具体例の模式平面図であり、同図(a)は給電点Pと同方向に2個の終端開放伝送線路74a及び74bが延在する場合、同図(b)は互いに反対方向に延在する場合を表す模式平面図である。また、図40(c)は、ゲインの角度φ依存性を表すグラフ図であり、実線は図40(a)、破線は同図(b)であり、共にφ依存性を変化させることができている。これは、終端開放伝送線路74を接続した無給電素子の放射特性を利用し放射パターンの回転を制御できることを表している。
【0067】
図41は、アンテナの基本構造の具体例を表す模式平面図である。励振方向に沿って、給電素子60をはさんで対称位置に無給電素子162及び163が配置されている。本具体例においては、無給電素子162及び163に、終端短絡伝送線路64c及び64dがそれぞれに設けられている。
【0068】
図42は、一方の無給電素子162の位相を110度に固定し、他方の無給電素子163の位相を0乃至マイナス180度と変化させた場合におけるアンテナゲインが最大となる素子間スペースS、及び最大放射強度となる角度θを表すグラフ図である。
無給電素子163の位相がマイナス90度、素子間スペースSが1.3mmの時アンテナゲインが最大となり、最大放射強度が得られる角度θは63度となることが分かる。
【0069】
図43は、一方の無給電素子162の位相を110度とし、他方の無給電素子163の位相を0、マイナス90、マイナス180度とした場合のE面におけるゲインのθ依存性である。無給電素子163の位相が0度〜マイナス90度の範囲では最大放射強度が得られる角度θおよび半値角のビーム幅はほぼ同一レベルであり、位相がマイナス180度に近づくほどサイドローブも小さくなるため、無給電素子163の位相はマイナス90度〜マイナス180度の範囲で選択することが好ましい。
図44は、無給電素子163の位相を0からマイナス180度、素子間スペースSを変化させた場合の水平放射パターンを表す。
無給電素子163の位相を0からマイナス180度まで変化させるにしたがって、サイドローブが低下することが分かる。ただし、メインローブの半値幅はやや拡がる傾向にあり、無給電素子163の位相がマイナス90度付近においてもっとも良好な特性が得られているといえる。
【0070】
次に、伝送線路に高周波スイッチを接続することにより、放射パターンを切り替える具体例について説明する。
図45は、アンテナの基本構造の具体例を表し、同図(a)は模式平面図、同図(b)は模式底面図である。
本具体例においては、終端短絡伝送線路64と接地68との間に高周波スイッチ100を設けることにより電波ビームの放射パターンを切り替えることができる。伝送線路64は、導通孔66を介して高周波スイッチ100に接続される。高周波スイッチ100は、例えば、GaAsからなるダイオードまたはFETとする。本図はFETを用いた具体例を表し、ゲート電極を伝送線路64から分離できるのでFET電源回路が容易になる。すなわち、高周波回路と低周波回路を分離するスタブやコンデンサが不要となり、製造のバラツキによる不具合を抑制、使用部品の削減によるコストダウンが図れ生産性が向上する。ゲート電極は基板裏面の引き出し電極102に接続され、供給電圧によりオン−オフの制御を行う。本具体例では引き出し電極102を直線で形成しているがアンテナ面積に応じ屈曲させても良い。
【0071】
図46及び図47は、無給電素子から伝送線路への接続構造の2つの具体例を表す。
すなわち、図46に表した具体例においては、無給電素子62に終端短絡伝送線路64の一方の端部が接続されており、他方の端部が導通孔66を介して高周波スイッチ100へと接続される。この場合には、伝送線路64はマイクロストリップラインとなる。マイクロストリップラインはストライプ状導体とこれに対向する接地とにより構成される。一方、図47に表した具体例においては、無給電素子62のパッチ電極内部に導通孔66が設けられ、基板の裏面である接地68において伝送線路164に接続され、さらに高周波スイッチ100へ接続される。この伝送線路164としては、例えば、コプレーナ線路を用いることができる。コプレーナ線路は、ストライプ状導体とこれと略同一平面で対向する接地面から構成され、その形状パラメータによってはマイクロストリップラインに近似して取り扱うことができる。伝送線路64、164もアンテナとして作用するため、無給電素子と同一面に伝送線路64を配置した方がアンテナ前方に効率良く電波を放射できる。
図48は、高周波スイッチ100の位置精度を改善する構造を例示する模式図であり、同図(a)は基板の裏面側を表し、同図(b)は高周波スイッチのインダクタンス成分を説明するための概念図である。
アンテナ10の励振周波数は高いので、高周波スイッチ100の位置決めには高精度が必要であり、このためにはマーカ104などを設けると良い。また、高周波スイッチ100は、寄生インダクタンスL2,L3を有し、その切替状態により寄生インダクタンスが変化する。
【0072】
図49は、高周波スイッチ100のオン−オフに伴うインダクタンスの変化を説明する模式図である。
ここで、L1は伝送線路のインダクタンスを表す。また、図49において、CASE1とCASE1'は、それぞれ高周波スイッチ100がオフ状態とオン状態の寄生インダクタンスを表す。またここでは、高周波スイッチ100がオン状態においても接地されない。このように、高周波スイッチ100のオン−オフにより寄生容量が変化する。このような場合、例えば、CASE1(L1+L2)の状態においてアンテナ特性が最適となるように設計することができる。また、これとは逆に、CASE2(L1+L2+L3)の状態においてアンテナ特性が最適となるように設計してもよい。
【0073】
また、高周波スイッチ100がオン状態において接地される場合(CASE3’とCASE4)にも同様に、高周波スイッチ100がオフ状態(CASE3)においてアンテナ特性が最適となるように設計してもよく、または、高周波スイッチ100がオン状態(CASE4)においてアンテナ特性が最適となるように設計してもよい。
【0074】
これらいずれの場合も、高周波スイッチ100のオン−オフの切替に伴って寄生インダクタンスが変化するので、アンテナ特性を切り替えることができる。
図50は、図45に例示したアンテナ10のH面における電波ビームのゲインのθ依存性を表すグラフ図である。
高周波スイッチ100がオン状態においては、無給電素子62が導波器として作用しマイナス30度付近をピークとしたメインローブと、プラス50度付近をピークとしたサイドローブが表れるが、高周波スイッチ100がオフ状態に遷移すると、無給電素子62のアンテナゲインが極端に小さくなり0度付近をピークとした単峰性のアンテナ特性が得られる。このように、高周波スイッチ100を切り替えることにより、アンテナ特性を変化させることができる。すなわち、アンテナから放射される電波の放射方向を2段階に切り替えることができる。
【0075】
図51は、アンテナの基本構造の具体例を表し、同図(a)は模式平面図、同図(b)はCC’に沿う模式断面図である。
本具体例においては、伝送線路64a及び64bを分岐点Rにおいて分岐し、一方は導通孔67a及び67bを介して高周波スイッチ100)へ接続され、オン状態で接地68と接続され、オフ状態で接地と非接続とされる。また、他方は導通孔66a及び66bを介して接地68へ直接接続される。
【0076】
図52は、図51のアンテナの回路構成を表す図であり、無給電素子62及び63の整合点P’の位相を110度とする時は高周波スイッチ100a(または100b)をオンとし、マイナス90度とする時は高周波スイッチをオフとすればよいことを表す。従って、高周波スイッチ100a(または100b)のオン−オフを切り替えることにより接地への接続経路を切り替えて、アンテナ特性を変化させることができる。
図53は、図51のアンテナのH面におけるゲインのθ依存性を表すグラフ図である。 同図において、例えば(110、−90)とは、無給電素子62の整合点P’における位相が110度で、無給電素子63の整合点P’における位相がマイナス90度であることを表す。すなわち、この時、高周波スイッチ100aはオン状態で、高周波スイッチ100bはオフ状態である。
【0077】
図53から、高周波スイッチ100a、100bがいずれもオン状態(110、110)またはオフ状態(−90、−90)においては、放射パターンは0度を中心として左右対称であるが、高周波スイッチ100a、100bの一方をオン状態、他方をオフ状態として切り替えると、放射パターンは0度を中心として反転することが分かる。すなわち、(110、−90)と(−90、110)とは、放射パターンの角度分布が反転している。従って、高周波スイッチ100a、100bを切り替えることにより、例えば、(110、110)あるいは(−90、−90)のように幅広い放射パターンを得たり、あるいは(110、−90)や(−90、110)のように局在的な放射パターンを選択することが可能となる。
図54は、図51の具体例の第1変形例を表し、同図(a)は模式平面図、同図(b)は模式底面図、同図(c)はH面におけるゲインのθ依存性である。
導通孔66a及び66bは、無給電素子62及び63のパッチ電極領域内に設けられ、基板の裏面において伝送線路165と接続される。伝送線路165と高周波スイッチ100との接続点近傍には終端短絡の伝送線路が分岐されており、高周波スイッチ100のオン−オフ切り替えにより伝送線路長を変化させ、図54(c)のようにゲインのθ依存性を制御できる。なお、図54(c)は、無給電素子62、63の位相がそれぞれ110度、マイナス90度の状態を表す。図53に表した(110、−90)の具体例と同様に、角度θのマイナス側にメインローブ、プラス側にサイドローブが表れていることが分かる。
【0078】
図55は、図51の具体例の第2変形例を表し、同図(a)はその模式平面図、同図(b)はその底面拡大図である。無給電素子62及び63の裏面において、伝送線路64は導通孔66を介して高周波スイッチ100へ接続される。この裏面の接続点からは終端短絡の伝送線路が分岐されており、高周波スイッチ100のオン−オフにより伝送線路長を変化させる。
図56は、図51の具体例の第1及び第2変形例の回路構成を表す模式図である。すなわち、同図(a)に表した具体例の場合には、高周波スイッチ100がオンであると無給電素子は導波器となり、オフであると反射器となるようにインダクタンスが変化する。一方、同図(b)に表した具体例の場合には、高周波スイッチ100がオフの時に無給電素子は導波器となり、オンの時は反射器となるようにインダクタンスが変化する。
【0079】
図57は、アンテナ10の基本構造の具体例を表し、同図(a)は模式平面図、同図(b)はゲインのθ依存性である。伝送線路64a及び64bは分岐されており、導通孔67a及び67bは図示しない高周波スイッチを介して接地され、導通孔66a及び66bは直接接地される。図示しない高周波スイッチを適宜切り替えると、無給電素子62、63における位相の組み合わせは、(110度、−180度)、(−180度、110度)、(−180度、-180度)、及び(110度、110度)の4通りとなる。
図57(b)はこれらの組み合わせに対応する放射パターンをそれぞれに表すグラフ図である。例えば、(110度、110度)及び(−180度、-180度)においてはθ=0°においてゲインが最大となる左右対称の放射パターンが得られる。また、(110度、−180度)と(−180度、110度)とは、それぞれ左右非対称で0度を中心に反転した放射パターンとなる。
図51で示したアンテナと比較すると、左右対称の放射パターンはメインビームの角度θは小さくなるものの、サイドローブが3dB低下している。また、θ=0°におけるゲインが約1dB増加している。このように、無給電素子を反射器として作用させるときの位相を変えることで電波の放射形態を制御することができる。
【0080】
図58は、本発明の実施の形態に係る高周波センサ装置に設けることができるアンテナの具体例を表し、同図(a)はその模式平面図、同図(b)はその模式底面図である。
伝送線路64の終端が導通孔66を介して接地68に短絡され、伝送線路64の途中に分岐点が設けられ導通孔67を介して高周波スイッチ100と接続されている。無給電素子62と63は、給電素子60をはさんで励振方向に対して横方向に配置されている。また、無給電素子162及び163は、給電素子60をはさんで励振方向に平行な方向に配置されている。すなわち、無給電素子は十字形の2軸上に給電素子60と隣接して配置されている。
【0081】
このように伝送線路64を無給電素子62、63、162、163と同一面に配置すると、導通孔67の片端で分岐し導通孔66に接続される分岐したあとの線路もすべて励振方向に対して平行に配置することができる。通常、給電素子60を中心として無給電素子62と63、162と163は対称に配置することが望ましく、アンテナとして作用する伝送線路64も例外ではない。しかしながら、伝送線路64についてはスイッチ100の接続端子の形状に制限があるため、分岐したあとの伝送線路64を励振方向に対して垂直に分岐点と接続する際、対称に配置することが難しい場合が多い。これに対して、本具体例においては、分岐したあとの伝送線路64を無給電素子62、63、162、163と同一面に配置することで、全ての無給電素子の伝送線路を励振方向に対して平行に形成することができるので、対称性に優れたアンテナを実現できる。
【0082】
図59は、第1の高周波スイッチ(SW1)100a,第2の高周波スイッチ(SW2)100b、第3の高周波スイッチ(SW3)100c、第4の高周波スイッチ(SW4)100dをそれぞれにオン−オフした場合におけるゲインのθ依存性を表し、それぞれ左側はH面、右側はE面である。また、図60は、図59に対応したH面及びE面における垂直放射パターンを表している。
これらいずれも、高周波スイッチをオンにした時の無給電素子の位相は110度であり、図6から分かるようにゲインがプラスで且つ位相がプラスとなって導波器として作用する。一方、高周波スイッチをオフにした時の無給電素子の位相がマイナス180度の場合は、本発明の具体例を表し、図59(a)及び図60(a)が対応する。図6から分かるように、無給電素子の位相が180度の時に、ゲインはマイナスとなる。一方、高周波スイッチがオフ時の無給電素子の位相がマイナス90度(図59(b)及び図60(b))、または0度(図59(c)及び図60(c))の場合はいずれも比較例を表す。図6から分かるように、これらの位相においては、無給電素子のゲインはプラスになる。
【0083】
4つの高周波スイッチのうちいずれか1つをオンとし、あとの3つをオフとして電波の放射方向を切り替えるとき、接続された高周波スイッチがオフしている無給電素子の位相がマイナス90度(図59(b)及び図60(b))、または0度(図)59(c)及び図60(c))である比較例の場合、θ=0°付近にもサイドローブが生じる。 この結果、センサとして用いる場合、精度が不十分となることがある。
【0084】
これに対して、高周波スイッチがオフの時の位相がマイナス180度となる場合は、図59(a)及び図60(a)から分かるように、サイドローブは抑制されている。すなわち、高周波スイッチをオフにした時の無給電素子のゲインがゼロまたはマイナスとなるようにすると、サイドローブを抑制して電波ビームを所定の方向に放射させることができる。
【0085】
一方、図61は、本具体例において無給電素子の一方を110度、他方を170度とした場合のゲインのシータ依存性を表す。図59(a)、図60(a)に表したように、無給電素子の他方の位相をマイナス180度にした場合と近似した特性が得られることが分かる。これは、図6から分かるように、無給電素子の位相が170度の時、そのゲインはゼロまたはマイナスの領域にあるからである。つまり、無給電素子63及び163の位相をマイナス180度にした場合と170度にした場合とにおいて、無給電素子63及び163のゲインは殆どゼロから放射される電波の放射量が非常に小さく、電波の放射形態に殆ど影響を与えないためである。すなわち、無給電素子63及び163は無いに等しい状態である。
【0086】
ここで、比較例においてサイドローブが大きくなる理由を以下に説明する。
図60(b)では、無給電素子の位相をマイナス90度としており、終端短絡とすると、無給電素子のアンテナゲインは約5.5dBである。また、図60(c)では、無給電素子の位相を0度としており、終端短絡線路とすると、無給電素子のアンテナゲインは約5.7dBである。このように無給電素子が高いアンテナゲインを有するために比較例においてサイドローブが大きくなると考えられる。
【0087】
従って、サイドローブを図60(a)及び図61のように抑圧するには、導波器として作用させ、アンテナゲインがプラスで且つ位相がプラスある無給電素子以外の無給電素子のうちにアンテナゲインを0またはマイナスであるものを含ませる。図62は、その具体的構成を表す図である。図62(a)及び(b)では、無給電素子62のみSW100をオンとし、アンテナゲインがプラスでかつ位相をプラスとした導波器とし、無給電素子63,162,163のアンテナゲインはゼロまたはマイナスとした場合を表す。また、図62(c)及び(d)では、無給電素子62のアンテナゲインがプラスで且つ位相がプラスとした導波器とし、給電素子60に関して無給電素子62の反対側に位置する無給電素子63がアンテナゲインがプラスで且つ位相がマイナスの反射器とする。さらに無給電素子162及び163のアンテナゲインがゼロまたはマイナスとする。この場合、図62(d)のように、1つの無給電素子の伝送線路に高周波スイッチを2つ設けることにより、導波器、反射器、ゲインが0以下の3状態が実現できる。
【0088】
また、終端短絡線路で構成する場合、図6のグラフから、アンテナゲインを0以下とできるように、位相をマイナス175乃至マイナス180度、及びプラス168乃至180度の範囲とする。同様に終端開放線路で構成する場合、図31のグラフから、アンテナゲインを0以下とできるように、位相をマイナス175乃至マイナス180度、及びプラス165乃至180の範囲とする。この結果、本具体例においてはサイドローブを十分に抑圧でき、高精度のセンサ機能を備えるだけでなく、広範囲かつ近距離にて人の移動や位置を検知できる。
【0089】
図63は、本実施形態に係る高周波において用いることができるアンテナ10のもう一つの具体例を表す模式図である。
導通孔66を介して高周波スイッチ100が基板裏面の終端短絡伝送線路164に接続される。本図に例示されるように、基板裏面には励振方向に対して横方向に延在する終端短絡伝送線路164が設けられている。基板裏面に設けられたこの伝送線路164は、図47における基板裏面の伝送線路164と同様に、例えば、コプレーナ線路とする。このようにするとアンテナ10を全体として小型化できる。
【0090】
そして、本具体例においても、4つの無給電素子のそれぞれは、高周波スイッチ100a、100b、100c、100dを切り替えることにより、ゲインがプラスで且つ位相がプラスの状態と、ゲインがゼロまたはマイナスの状態と、を遷移する。そして、4つの無給電素子のいずれか1つのゲインをプラスで且つ位相がプラスとした時に、他の3つの無給電素子のゲインをゼロまたはマイナスとすることにより、サイドローブを抑制して電波ビームを所定の方向に放射させることができる。
【0091】
次に、位相が同一の複数の無給電素子を設けた場合の具体例について説明する。
図64(a)は、本具体例におけるアンテナ10の模式平面図であり、同図(b)はその放射パターンである。本具体例においては、励振方向に対して直交方向に配置された無給電素子62及び63は同一位相とする。無給電素子62及び63の位相が同一であり、160乃至マイナス160度まで変化させた場合、各給電素子−無給電素子間スペースSに対するゲイン変化率を(表1)に、最大放射強度方向(θ、φ)を(表2)に表す。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
図64(b)に例示されるように、無給電素子の整合点P‘における位相が170度から180度、マイナス180度からマイナス173度までの範囲では、素子間スペースに関係なく、給電素子を1つだけ基板上に配置したアンテナとほぼ同様の方向に電波が放射されることがわかる。さらに、無給電素子のアンテナゲインが最小となる176度の位相を有した無給電素子を給電素子の周囲に配置したとき、給電素子が1つだけ基板上に配置したアンテナとほぼ同様のゲインとなることがわかる。無給電素子の位相が170度から180度までの範囲は、図6に例示されるようにアンテナゲインがマイナスとなる領域である。本具体例におけるように、導波器−導波器として作用する無給電素子62及び63によっても放射パターンが制御可能である。
【0095】
図65は、励振方向に配置した具体例の模式平面図である。
本具体例においては、無給電素子162及び163の位相を同一とし、給電素子60をはさんで励振方向に沿って平行に配置されている。無給電素子162及び163の位相を変化させた場合、給電素子−無給電素子間スペースにおけるゲイン変化率を(表3)に、最大放射強度方向(θ、φ)を(表4)に表す。
【0096】
【表3】

【0097】
【表4】

【0098】
図66は、本具体例の放射パターンを表す模式図である。
無給電素子の整合点P’における位相が160度から180度、マイナス180度からマイナス160度までの範囲では、素子間スペースに関係なく、給電素子を1つだけ基板上に配置したアンテナとほぼ同様の方向に電波が放射されることがわかる。本具体例におけるように、導波器−導波器として作用する無給電素子162及び163によっても放射パターンが制御可能である。
【0099】
次に、励振方向に対して平行に配置され、スイッチにより伝送線路の位相を切り替え可能な無給電素子162、163を配置することにより、より均一なビームが得られることを説明する。
図67(a)、(b)、(c)、(d)は、無給電素子162及び163と給電素子60との励振方向距離をそれぞれに変化させた場合の水平放射パターン、同図(e)はゲインのθ依存性をそれぞれ表す。
伝送線路は終端開放とし、長さを7.1mmとすることにより無給電素子162の位相は90度とする。CASE1は、無給電素子162が、0.8mmのスペース(間隔)S1だけ給電素子60から離れ、給電素子60の中心に関して給電点の反対側に配置される。CASE2〜4は、無給電素子163が、給電素子60の中心に関して給電点側に配置され、スペースS2がそれぞれ0.8、0.6、0.4mmの場合である。
【0100】
この場合、図67(e)に表すゲインにおいて、破線で表すCASE2のほうが太い実線で表すCASE1よりもゲインが約1dB高い。CASE1においてS1=0.8mm、CASE2においてS2=0.8mmとスペースは同一であっても、均一にビームが放射されないことを意味している。S2=0.6mmであるCASE3において、ゲインをほぼCASE1と等しくできておりCASE1に対してY軸逆方向にほぼ均一な放射パターンが得られている。S2=0.4mmであるCASE4においては、ゲインがますます低下して、図67(d)の様にCASE1とは異なった水平放射パターンとなる。すなわち、給電素子60をはさんでペア状に配置された無給電素子において、伝送線路の長さをスイッチにより変化させ、放射パターンを切り替える場合、スペースを変えることによりより均一な放射パターンにできる。例えば、給電素子60の中心より給電点側に配置する無給電素子163とのスペースS2を反対側の無給電素子162とのスペースS1より小さくすることにより、均一なビームにできる。
【0101】
図68は、終端短絡の場合のアンテナ10の模式平面図である。
給電素子60の給電点Pがパッチ電極の中心からみて無給電素子163の側に設けられている。そして、この場合、給電素子60と無給電素子162とのスペース(間隔)S1よりも、給電素子60と無給電素子163とのスペースS2を小さくすることにより、放射パターンを対称な形態に近づけることができる。
【0102】
またこの具体例において、S1>S2とし、スイッチを切り替えることにより、一方の無給電素子を導波器とし、他方を反射器とし均一なビームにできる。図67(e)に例示されるように、ゲインが最大となるθはE面においてプラス、マイナス両側において約60度であり、図4に例示される第1具体例よりも大きくできる。このアンテナ10からの大きな放射角度θを有するビームにより、より広範囲な場所にいる人間の存在を精度良く検知できる。この結果、自動ドアなどにおけるセンサとしても有用である。
【0103】
次に、伝送線路が接続された無給電素子の小型化を実現できる構造について説明する。
【0104】
整合点の位相がマイナスである反射器として作用する無給電素子62における伝送線路は、導波器の場合より長くなることが多い。長い伝送線路が励振方向に延在するとアンテナが大型化する。そこで、導波器として作用させる伝送線路は励振方向に沿って直線状に配置し、反射器として作用させる伝送線路は伝送線路の終端側を屈曲させることによりアンテナの小型化を図ることができる。
【0105】
まず、図69は、比較例にかかるアンテナを説明する図であり、同図(a)は導波器として作用する幅が0.6mm、長さが3.8mmである伝送線路が直線状に延在したCASE1の模式図、同図(b)はこの伝送線路を屈曲したCASE2の模式図、同図(c)はゲインのφ依存性を表す。
無給電素子162と給電素子60とのスペースはいずれも2.2mmとし、終端短絡伝送線路により無給電素子62の位相は110度となる。アンテナゲインが最大となるのは、図69(a)においてθ=27度、φ=183度であるのに対し、同図(b)においてθ=30度、φ=174度とビームが回転し、サイドローブもより大きくなる。
【0106】
図70(a)は、無給電素子62に幅0.6mm、長さ3.8mmである終端短絡伝送線路が、無給電素子63に幅0.6mm、長さ8.1mmである終端短絡伝送線路がそれぞれ直線状に延在するCASE3の場合の模式図である。また、図70(b)は屈曲したCASE4の場合の模式図、同図(c)はゲインのφ依存性である。
導波器としての無給電素子62の位相は110度、反射器としての無給電素子63の位相はマイナス180度とし、スペースは2.4mmとする。また、反射器として作用する無給電素子63の伝送線路は、導波器として作用する無給電素子62の伝送線路の長さである3.8mmにおいて約90度に屈曲させる。
【0107】
ゲインが最大となるのは、図70(a)において、θ=30度、φ=180度であるのに対し、同図(b)において、θ=30度、φ=186度である。図70(c)に例示されるように、ゲインのφ依存性は殆ど一致し、ビームの回転を抑制できることを表している。
【0108】
図71は、無給電素子63の伝送線路の長さを5.1mmとし位相をマイナス90度とした場合を表す。図71(a)は伝送線路が直線状に延在するCASE5、同図(b)は屈曲したCASE6を表す。アンテナゲインが最大となるのは、図71(a)においてθ=39度、φ=180度、同図(b)においてθ=39度、φ=180度である。また。図70(c)に例示されるようにゲインのφ依存性は殆ど一致し、ビームの回転を抑制できることを表している。
【0109】
図72は、本発明の実施の形態に係る高周波に設けることができるアンテナの他の具体例を表し、同図(a)は模式平面図、同図(b)、(c)、(d)、(e)は水平放射パターン、同図(f)はゲインのφ依存性である。無給電素子62及び63が給電素子60を挟んで励振方向と直交する方向に配置され、給電素子60と無給電素子62、63とのスペースはいずれも2.4mmとした。また、無給電素子162及び163が給電素子60を挟んで励振方向に沿って平行方向に配置されている。給電素子60と無給電素子162とのスペースは0.8mm、給電素子60と無給電素子163とのスペースは0.7mmとした。このように、4つの無給電素子は、十字形をなす2軸上に配置されている。
【0110】
伝送線路の終端は導通孔66により接地されており、分岐点の導通孔67により高周波スイッチ100へ接続される。高周波スイッチ100がオンの場合は分岐点で接地となり、オフの場合は伝送線路の終端66で接地となる。無給電素子62の導通孔67aに裏面で接続される高周波スイッチ100a(SW1)、及び無給電素子63の導通孔67bに裏面で接続される高周波スイッチ100b(SW2)はオン状態で位相が110度、オフ状態でマイナス180度となるよう伝送線路の長さを決める。また、導通孔67cに裏面で接続される高周波スイッチ100c(SW3)、及び導通孔67dに裏面で接続される高周波スイッチ100d(SW4)はオン状態で90度、オフ状態でマイナス180度となるように伝送線路の長さを決める。
【0111】
図72(b)は高周波スイッチ100aのみがオンであるCASE1、同図(c)は100bのみがオンであるCASE2,同図(d)は100cのみがオンであるCASE3、同図(e)は100dのみがオンであるCASE4の場合の水平放射パターンを表す。また、図72(f)はH面におけるゲインのφ依存性をCASE1及びCASE2について表し、同図(g)はE面におけるゲインのφ依存性をCASE3及びCASE4について表す。
高周波スイッチ100を切り替えることにより、水平面内の放射パターンを制御できることが分かる。そして、4つの無給電素子のそれぞれが、ゲインがプラスで位相がプラスの状態と、ゲインがゼロまたはマイナスの状態と、を切り替え可能とすることにより、サイドローブを抑制しつつ電波ビームを所定の方向に放射することができる。
【0112】
本具体例も、人感センサや自動ドアに用いる高周波センサとして適している。また、導通孔67が設けられる分岐点において、伝送線路はほぼ90度に屈曲されている。従って、図58に表した具体例と比較して、励振方向に沿う長さを縮小しアンテナの小型化を容易にする。この場合、屈曲によるビームの回転も抑制できる。
【0113】
図72に表した具体例においては、一本の伝送線路の途中に高周波スイッチが設けられ、位相を可変にしている。
一方、図73は、伝送線路を2本に分けた具体例を表し、同図(a)は表面側の模式図、同図(b)は裏面側の模式図である。すなわち、図73(a)はパッチ電極側を表し、パッチ電極から伝送線路が励振方向に延在し、途中で屈曲して、その終端が導通孔66により接地されている。一方、図73(b)は接地68である裏面を表し、パッチ電極領域内の一点から導通孔166を介して接続され励振方向に対して略平行に延在する伝送線路164と、この伝送線路164に接続された高周波スイッチ100と、が設けられている。この場合にも、裏面の伝送線路164のストライプ状導体の長さ以上の位置において、表側の伝送線路のストライプ状導体が屈曲される。この結果、高周波スイッチ100をオンとしたとき導波器として、オフとしたとき反射器として作用させ、無給電素子62の位相を変化させることができる。
【0114】
以上説明した具体例においては、水平放射パターンにおける最大放射方向がXまたはY軸(励振方向に対して平行)となる様にパッチ電極はほぼ十字状に配置される。
次に、パッチ電極の配置を変えることにより最大放射方向を斜めに向ける具体例について説明する。
【0115】
図74は、比較例を表し、同図(a)は模式平面図、同図(b)は水平放射パターン、同図(c)はゲインのθ依存性である。図74(a)のように無給電素子62を励振方向に0.2mmずらし、励振方向に平行なその一辺が給電素子60の平行な一辺とは対向する部分を有さない場合を表す。このようにずらすと、図73(b)のようにビームを曲げることはできるが、幅0.6mmの伝送線路の長さLを変えて位相を調整しても、無給電素子62を導波器として作用させることが困難である。すなわち、L=4.7mmとし位相を0度とすると最大放射強度はθ=36度、φ=297度となる。また、L=4.2mmとし位相を90度とすると最大放射強度はθ=45度、φ=117度となる。しかし図73(c)に例示するようにサイドローブを十分に減衰させるのが困難であり、センサとして好適なビーム放射パターンが得られない。
【0116】
図75は、アンテナの基本構造の具体例を表し、同図(a)は模式平面図、同図(b)及び(c)は水平放射パターン、同図(d)はゲインのθ依存性を表す。給電素子60のひとつの角部を図75(a)に例示するような原点(0,0)となるようなXY座標を用い、無給電素子62のひとつの角部の座標を(x、y)と表す。無給電素子62には、図75(a)のように長さLである伝送線路が接続されている。図75(b)は無給電素子62の角部座標が(−0.2,−1)であり位相が90度の場合、同図(c)は角部座標が(−0.2,−0.5)の場合の水平放射パターンである。位相が110度であるとサイドローブをメインビームより約8dB低下でき、ゲインが最大となるφも120度とでき、斜め方向へのビーム制御が可能となる。
【0117】
図76は、図75に表した構成において無給電素子62の位相が90度の場合の水平放射パターンを表す。左側はx=−1、すなわちスペースがX軸方向に1mmの場合であり、下方に向かって対向する部分が多くなることを表している。また、中央はx=−0.5,その右側はx=−0.2の場合である。最も右側は、それぞれのy座標においてゲインが最大となるx座標と放射パターンを表す。X軸方向のスペースを小さくする方が、またY方向で対向部分を大きくする方がサイドローブを小さくできる。また、y座標を固定した場合、ゲインが最大となるx座標は変化する。
図77は、図75に表した構成において無給電素子62の位相が110度の場合の水平放射パターンを表す。図76と同様に、左側からx座標が−1、−0.5,−0.2の順であり、それぞれの列において下方に向って給電素子60との対向部分が多くなる。この場合にも、X軸方向スペースが小さく、Y軸に沿う対向部分が大きくなるに従いサイドローブを小さくできる。
【0118】
図78は、図75に表した構成において位相が110度であり、無給電素子62の角部座標が、(−0.2,−0.5)及び(−1.1、−2.5)の場合のゲインのφ依存性を表す。ビームの放射方向を、最大放射強度ではなく半値角のビーム幅の中心値にて設定することにより、人間などの被検知物を精度よく検知することができる。例えば、最大放射強度で放射強度を135度と設定すると、半値角の範囲は75乃至225度となる。一方、半値角のビーム幅の中心値を120度と設定すると半値角の範囲が65乃至205度となりより精度の高い検知ができる。
【0119】
図79は、本発明の実施の形態に係る高周波センサ装置に設けることができるアンテナの他の具体例を表し、同図(a)は模式平面図、同図(b)、(c)、(d)、(e)は水平放射パターン、同図(f)はゲインのφ依存性を表す。図79(a)に例示されるように、給電素子を中心として千鳥格子状あるいはX字状の2軸上に4個の無給電素子が配置される。すなわち、励振方向に対して平行でも垂直でもない2軸上に4つの無給電素子が配置されている。無給電素子には伝送線路が設けられ、その途中には導通孔が設けられる。伝送線路のストライプ状導体は線路の途中に導通孔を介して基板の裏面の高周波スイッチと接続される。高周波スイッチのオン−オフにより無給電素子の位相を変えることができる。そして、これら無給電素子のそれぞれは、ゲインがプラスで且つ位相がプラスの状態と、ゲインがゼロまたはマイナスの状態と、を切り替え可能とされている。
また、無給電素子と給電素子とはY軸に対して平行な一辺において対向する部分を有し、X軸に平行な他の一辺において対向する部分を有さない。Y軸に対して平行であり対向する部分は、図76及び図77に例示される水平放射パターンのシミュレーション結果よりゼロより大きく4分の1波長より短いことが好ましい。給電素子は励振方向に平行な辺において2分の1波長の長さとされるので、4分の1波長より短い対向部分であれば無給電素子は重なり合わない。破線で表す高周波スイッチSW1,SW2,SW3、SW4は、基板の裏面にそれぞれ配置される。
【0120】
図79(b)は、SW1のみをオンとし他をオフとするCASE1,同図(c)はスイッチ2のみオンとするCASE2,同図(d)はSW3のみをオンとするCASE3,同図(e)はSW4のみをオンとするCASE4の水平放射パターンをそれぞれに表し、同図(f)はそれぞれCASEのゲインのφ依存性を表す。
放射パターンにおけるゲインの最大値となるφ方向は、CASE1で60度、CASE2で120度、CASE3で240度、CASE4で300度であり、Y軸に関してほぼ左右対称にできる。また、ゲインが3dB低下するφ方向半値角は、図79(f)に表すようにほぼ均一とできる。
スイッチを順次切り替えて、CASE1〜4を順次繰り返すことにより、これら4方向を順次スキャンできる。そして、いずれかの無給電素子のゲインがプラスの時に他の3つの無給電素子のゲインがゼロまたはマイナスとすることにより、サイドローブを抑制して電波ビームを所定の方向に放射できる。
図79に表した具体例においては、無給電素子と給電素子とはY軸に対して平行な一辺において対向部分を有した。しかし、X軸に対して平行な一辺において対向部分を有していても良い。
【0121】
図80は、アンテナの基本構造の具体例を表し、同図(a)は1つの無給電素子の場合の模式平面図、同図(b)は水平放射パターン、同図(c)はφが105度のゲインのθ依存性である。図80(a)に表すように、給電素子60と無給電素子62とは励振方向、すなわちY軸方向に0.2mm離間している。また、励振方向に対して直交する無給電素子の一辺と給電素子の一辺とは対向部分を2.5mm有している。無給電素子62には整合点における位相が110度となるよう長さが3.7mmの終端を短絡した伝送線路が接続されている。また、図80(b)のように、水平放射パターンはφが約105方向に向かって広がっている。さらに、図80(c)のように、φ=105°の面内において最大放射強度が得られる角度θは39度、メインビームの半値角幅は10乃至80度、サイドローブはメインビームより約9dB低下させることができ、走査方向に局在するメインビームの放射量を多くし、メインビームとサイドローブの差を3dB以上確保できる。
【0122】
図81は、本発明の実施の形態に係る高周波センサに設けることができるアンテナの具体例を表す模式平面図である。給電素子を中心として千鳥格子状あるいはX字状に4個の無給電素子が配置される。この無給電素子は図79に例示される具体例と同様の形状をそれぞれに有している。無給電素子と給電素子とはX軸に対して平行な一辺において対向する部分を有し、Y軸に平行な他の一辺において対向する部分を有さない。X軸に平行な対向部分は、図79の具体例と同様に、ゼロより大きく4分の1波長より短いことが好ましい。本具体例においても、破線で表す基板裏面に設けられた高周波スイッチSW1、SW2、SW3、SW4を順次切り替えて、4方向を順次スキャンすることができる。
【0123】
そして、4つの無給電素子のそれぞれをゲインがプラスで且つ位相がプラスの状態と、ゲインがゼロまたはマイナスの状態と、に切り替え可能とすることにより、サイドローブを抑制しつつ電波ビームを所定の方向に放射させることができる。
【0124】
本具体例においては、φ方向における半値角の幅を揃えることができる。この結果、誤り無く人体などの被検知物を検知できるのでセンサとして適している。この応用として、例えば、人感センサ、自動ドアなどの開閉を制御するセンサ、手の動きを検知するセンサなどに用いると非接触スイッチとでき、機器のリモートコントロールなどに有用である。
【0125】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これら具体例には限定されない。高周波センサを構成するアンテナ、送信部、受信部、差分検出器、給電素子、無給電素子、伝送線路、高周波スイッチなどの材質、形状、サイズに関して各種設計変更を行ったものであっても、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明の範囲に包含される。
【0126】
また、本実施形態の高周波センサは、図2に例示したような小用便器のみならず、腰掛便器や、その他、トイレ、洗面所、浴室、キッチンをはじめとして、各種の用途において設けることができる。さらに、人感センサ、自動ドアセンサ、非接触スイッチなどにも有用である。
【0127】
またさらに、本発明の高周波センサ装置は、非接触型の入力インタフェースなどにも応用が可能である。例えば、図68や図79などに関して前述したように、複数の無給電素子をスイッチで順次切り替えて複数の方向をスキャンできるアンテナを用いると、人間の手の動きなどを検知できる。つまり、アンテナで空間をスキャンし、手などの動きを検知し、その方向や速度に応じて、情報を入力したり機器をリモート操作できる。例えば、ドアの前に立った人間が、手を下から上に振った場合に高周波センサがこの動作を検知し、ドアを自動的に開かせることが可能である。
【0128】
次に、本発明の実施形態にかかる高周波センサ装置を非接触スイッチとして使用する場合の具体例について説明する。
【0129】
図82は、高周波センサ装置の動作を表すタイミングチャートである。
高周波センサ装置に電源電圧を印加してから所定時間、例えば1〜5秒間はドップラー信号に何らかの変化があったとしても検知データとして処理しないスキャン待機時間を設ける。電源スイッチが高周波センサ装置の近傍にあった場合、電源スイッチに手が近づき操作した後、離れるまでに多少時間を要する。電源電圧が印加された直後に電波スキャンを開始すると、スイッチ動作として検知する範囲に、この手が進入していることが考えられ、そのとき得られたドップラー信号を検知データとして取り込んでしまうと、使用者がスイッチ操作したつもりは無くともスイッチ操作したことになり誤動作となる。従って、電源電圧を印加してから所定時間の間は、ドップラー信号に何らかの変化があったとしても検知データとして処理しないスキャン待機時間を設け、スキャン待機時間中にスイッチ操作のモードに入ったことを使用者が認識できるようLED表示や音声などで報知するなどするとよい。そして、所定のスキャン待機時間が経過した後、電波スキャンを開始し、それで得られたドップラー信号を検知データとして処理すればよい。
【0130】
また、電波スキャンをしたときに得られるドップラー信号の周波数成分だけから、手がどこの位置に(電波を走査しているどの位置に)進入したのかを検出するのは難しい。これは、電波のメインビームとは反対側に放射するサイドローブ(不要電波)の影響を多少ならずとも受けるためである。従って、ドップラー信号の周波数成分と電圧振幅値から、手がどこの位置に進入したのか判断する判断手段を設けることが好ましい。判断する方法として、例えば、図83に示すように1スキャンしたデータをもとに判定すればより精度が向上する。詳細に説明すると、ここではSW1とSW2を交互に切り替え、電波の放射方向を2方向に切り替え、切り替えて放射している電波のどちら側に手が侵入したかを判断する制御フローの例を示している。SW1をオンしたときドップラー信号の振幅値が予め設定された閾値を超え、且つSW2をオンしたときのドップラー信号の振幅値が閾値以下またはSW1をオンしたときのドップラー信号の振幅値よりも小さければ判定信号1にH信号を一定期間出力する。このように、SW1とSW2を切り替えた1サイクルを1スキャンとし、1スキャンしたデータをもとに判断すれば検知精度が向上する。
【0131】
また、ここでは図示しないが、スキャンスピード(電波方向を切り替える速度)、手の接近する方向、閾値の設定により、ドップラー信号の最初の変化がサイドローブ側で発生する場合がある。その場合でも1スキャンごとのドップラー信号の電圧振幅値を数回、比較することでメインビーム側にある手の進入を精度良く検知できる。
例えば、図83に示している連続的にスキャンしている1スキャンの内、最初に検出した1スキャンの結果と次に検出した1スキャンの結果が同じであれば、正しい検知結果と判断し、最初の1スキャンの結果と次に検出した1スキャンの結果が異なれば、誤検知と判断すれば、ドップラー信号の最初の変化がサイドローブ側で発生しても電波を走査しているどの位置に手が進入したのかをより正しく判断ができる。
【0132】
また、人の手がセンサ前方から接近し離遠していく周波数は50〜100Hz程度であり、センサ前方をスライドし横切るように手が通過する周波数は100〜200Hz程度である。よって、手の進入位置を精度良く検知するためにはスキャンスピードを10〜50mSにすることが好ましい。
【0133】
また、手の接近またはスライドという動作を1カウントとしてスイッチ操作したい場合、例えば、手の接近を検知した時点で所定時間、例えば1〜3秒間はドップラー信号に何らかの変化があったとしても検知データとして処理しない判定信号未更新期間を設ければ、接近・離遠の状態を細かく検知データとして取り込まなくても簡単な回路構成にて高周波センサをカウンターとして使用できる。図83では、1スキャン後、SW1またはSW2がON状態でドップラー信号が閾値を越えた場合、所定時間検知データを処理しない判定信号未更新期間を設けている。すなわち、その間はドップラー信号の状態に関係なく判定信号1からH信号を出力している。またさらに好ましくは、1スキャンした検知データが閾値以下になり次第、判定信号未更新期間を解除するようにすれば応答性に優れたカウンタ機能を有したスイッチとすることもできる。
【0134】
図84は、図54のマイクロスストリップアンテナを備えた高周波センサを操作パネル内部に収納し、水量調節スイッチに適用した具体例を示している。SW1は無給電素子66aに、SW2は無給電素子66bに各々接続され、SW1をオンにすると図中「水量 多↑」方向に電波ビームが放射され、SW2をオンにすると図中「水量 少↓」方向に電波ビームが放射される。吐水開始のトリガー信号を受けると所定時間後にSW1とSW2が交互に切り替わる。すなわち電波ビームが図中上下方向に連続的にスキャンされる。このとき、操作パネルの「水量 多↑」方向に手が進入すると吐水口から流出する水の流量が初期設定より増え(図85)、「水量 少↓」方向に手が進入すると水の流量が初期設定より減るシステムとなっている。そして、吐水終了のトリガー信号を受けると、流量設定が初期設定に戻る。
【0135】
図86は、水量調節と同様の構成で、水温調節スイッチに適用した場合の制御フローを示すタイミングチャートである。
水量調節の時は吐水終了のトリガー信号を受けると流量設定を初期設定に戻していたが、水温調節の場合、水を一旦止めてから再度使用する状況が考えられるため、吐水終了から一定期間はスイッチにより変化した温度設定を保持するシステムとしている。
【0136】
本実施例では水量調節と温度調節を別々に記載したが、図79に示すマイクロストリップアンテナを備えた高周波センサを操作パネルの内部に収納してスイッチとして使用すれば、手の進入位置の検知範囲を細分化し制御パラメータを増やすことができる。図79に示すマイクロストリップアンテナは、SW1をオンにすると図中右斜め上方向に、SW4をオンにすると図中右斜め下方向に、SW2をオンにすると図中左斜め上方向に、SW3をオンにすると図中左斜め下方向に、それぞれ電波が放射される。サイドローブの影響による誤検知防止を考慮するとスキャンする順番(SWをオンにするタイミング)はSW1→SW4→SW3→SW2の順が好ましい。すなわち、電波のメインビームの放射方向を切り替える際、SWを切り替えて次にメインビームを放射しようとする方向が、切り替える前にサイドローブが出ていない方向に切り替えていることが好ましい。このように複数方向に電波スキャンをすると、右斜め上方向に手が進入した場合は水量増、右斜め下方向に手が進入した場合は水量減、左斜め上方向に手が進入した場合は水温高、左斜め下方向に手が進入した場合は水温低と、複数の制御を1つのマイクロストリップアンテナで調節することができる。
【0137】
また、図87に示すように、図79に示すマイクロストリップアンテナを備えた高周波センサをテレビやパソコンなどのディスプレイを搭載した機器の中に収納し、チャンネルや音量の切替え、画面のスクロールなどにも使用できる。従来、テレビは赤外線リモコンを使用し離れた位置からチャンネルや音量の切替えができる。しかしながら、リモコンを携帯していなければならず、電池切れや紛失などの問題により不便な場合もあった。本発明の高周波センサをテレビ本体に収納することで、離れた位置から何も持たずに小さい動作でチャンネルや音量の切替えができるため、特に浴室などの湿気が多い場所に設置されるテレビには効果的である。
【0138】
図88は、テレビのチャンネルおよび音量切替用スイッチとして適用した場合の制御フローを示すタイミングチャートである。
主電源がオンになっている状態では電波がスキャンされておらず(電波を走査していない状態)一定の方向へ放射されている。そのとき操作パネルへの手の接近を2回カウントすると所定時間後に電波スキャンを開始し手の進入位置でチャンネルや音量を切り替えることができる。但し、チャンネルや音量の切替操作ができる期間は10秒〜1分間である。浴室など狭い空間では人の動きを手の動きとして認識してしまう可能性があるが、一定期間の間に手の接近を2回カウントし、さらに所定の期間内だけチャンネルや音量の切替操作をできるようにするといったように、ある特定のドップラー信号の検知結果に基づき、所定期間のみ電波をスキャン(電波を走査)し、スキャンした電波に基づく検知信号により電気機器などの負荷を制御するようにすることで、不意な動作による誤検知を防止できる。
【0139】
また例えば、自動券売機や各種の入力端末において、「はい」と「いいえ」の二択に対して、高周波センサが利用者の首の動きをモニタし、利用者が首を縦に振ったら「はい」、首を横に振ったら「いいえ」のように非接触式に入力することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】本発明の具体例にかかる高周波センサ装置を説明する図である。
【図2】本具体例にかかる高周波センサ装置を備えた小便器の構成を表す図である。
【図3】図2の小便器の機能図である。
【図4】高周波センサ装置を構成するアンテナの基本構造の具体例である。
【図5】無給電素子の構造を表す図である。
【図6】無給電素子の特性を表すグラフ図である。
【図7】無給電素子の整合点におけるS11を表すグラフ図である。
【図8】素子間スペースと、最大ゲイン及びθとの関係を表すグラフ図である。
【図9】図4の具体例のゲインのθ依存性を表すグラフ図である。
【図10】図4の具体例の放射パターンである。
【図11】図4の具体例において素子間スペースと、最大ゲイン及びθとの関係を表すグラフ図である。
【図12】図11におけるゲインのθ依存性を表すグラフ図である。
【図13】アンテナの基本構造の具体例の模式平面図である。
【図14】図13の具体例における素子間スペースと、最大ゲイン及びθとの関係を表すグラフ図である。
【図15】図13の具体例におけるゲインのθ依存性である。
【図16】図13の具体例における水平放射パターンである。
【図17】アンテナの基本構造の具体例である。
【図18】図17の具体例における素子間スペースと、最大ゲイン及びθとの関係を表すグラフ図である。
【図19】図17の具体例におけるゲインのθ依存性である。
【図20】図17の具体例における水平放射パターンである。
【図21】ゲインのθ依存性である。
【図22】図21に対応する水平放射パターンである。
【図23】ゲインのθ依存性の他の例である。
【図24】ゲインのθ依存性の他の例である。
【図25】図17の具体例の第1変形例である。
【図26】図17の具体例の第2変形例である。
【図27】図17の具体例の第3変形例である。
【図28】アンテナの基本構造の具体例である。
【図29】アンテナの基本構造の具体例である。
【図30】終端開放伝送線路を有する無給電素子の構造を表す図である。
【図31】終端開放伝送線路を有する無給電素子の特性を表すグラフ図である。
【図32】終端開放伝送線路を有する無給電素子の整合点におけるS11を表すグラフ図である。
【図33】ゲインのφ依存性を表すグラフ図である。
【図34】水平放射パターンの比較を表す図である。
【図35】終端開放または短絡線路の構成の比較を表す図である。
【図36】図35の構成におけるゲインのθ依存性を比較するグラフ図である。
【図37】アンテナの基本構造の具体例の模式平面図である。
【図38】第6具体例のゲインのφ依存性である。
【図39】水平放射パターンである。
【図40】アンテナの基本構造の具体例である。
【図41】アンテナの基本構造の具体例である。
【図42】図41の具体例における素子間スペースと、最大ゲイン及びθとの関係を表すグラフ図である。
【図43】図41の具体例におけるゲインのθ依存性である。
【図44】図41の具体例における水平放射パターンである
【図45】アンテナの基本構造の具体例である。
【図46】伝送線路の接続構造である。
【図47】伝送線路の他の接続構造である。
【図48】高周波スイッチの固定方法を表す図である。
【図49】高周波スイッチのインダクタンスを説明する図である。
【図50】ゲインのθ依存性である。
【図51】アンテナの基本構造の具体例である。
【図52】分岐点を設けた回路の構成を表す図である。
【図53】図52におけるゲインのθ依存性を表すグラフ図である。
【図54】図51の具体例の第1変形例である。
【図55】図51の具体例の第2変形例である。
【図56】回路構成の例である。
【図57】アンテナの基本構造の具体例である。
【図58】本実施形態にかかる高周波センサ装置のアンテナの具体例である。
【図59】図58の具体例及び比較例におけるゲインのθ依存性である。
【図60】図59に対応する垂直放射パターンである。
【図61】ゲインのθ依存性の他の例である。
【図62】図58の具体例の構成を表す図である。
【図63】本実施形態にかかる高周波センサ装置のアンテナの具体例である。
【図64】アンテナの基本構造の具体例である。
【図65】アンテナの基本構造の具体例である。
【図66】図65の具体例の水平放射パターンである。
【図67】放射パターンの励振方向距離依存性を表す図である。
【図68】スペースの異なるアンテナの模式平面図である。
【図69】比較例のアンテナを説明する図である。
【図70】屈曲された伝送線路の特性を表す図である。
【図71】屈曲された伝送線路の特性を表す図である。
【図72】本実施形態にかかる高周波センサ装置のアンテナの他の具体例である。
【図73】伝送線路を2本別に設けた場合の模式図である。
【図74】比較例のアンテナを説明する図である。
【図75】アンテナの基本構成の具体例である。
【図76】図75において無給電素子位相が90度の場合の放射パターンである。
【図77】図75において無給電素子位相が110度の場合の放射パターンである。
【図78】図75の具体例のゲインのφ依存性である。
【図79】本実施形態にかかる高周波センサ装置のアンテナの他の具体例である。
【図80】アンテナの基本構成の具体例である。
【図81】本実施形態にかかる高周波センサ装置のアンテナの他の具体例である。
【図82】高周波センサ装置のタイミングチャートである。
【図83】高周波センサ装置のタイミングチャートである。
【図84】高周波センサ装置の水量調節スイッチへの応用例を表す図である。
【図85】図84の応用例におけるタイミングチャートである。
【図86】高周波センサ装置の水温調節スイッチへの応用例におけるタイミングチャートである。
【図87】高周波センサ装置の電子機器スイッチへの応用例を表す図である。
【図88】TVのチャンネル切り替え及び音量調節への応用におけるタイミングチャートを表す図である。
【符号の説明】
【0141】
10 アンテナ、12 送信部、14 受信部、16 差分検出器、20 高周波センサ装置、60 給電素子、62、63、72、73 無給電素子、64、74 伝送線路、66、67、77 導通孔、100 高周波スイッチ、102 引き出し電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信波を発生する送信部と、
前記送信波を放射し、前記送信波の物体による反射波及び透過波の少なくともいずれかを受信波として受信するアンテナと、
前記受信波を検知する受信部と、
を備え、
前記アンテナは、パッチ電極を有する給電素子と、パッチ電極を有する4つの無給電素子と、を含み、
前記4つの無給電素子は、前記給電素子の中心で交差する2軸上にそれぞれ前記給電素子と隣接して配置され、
前記4つの無給電素子のそれぞれは、アンテナゲインがプラスで且つ位相がプラスの状態と、アンテナゲインがゼロまたはマイナスの状態と、を切り替え可能とされたことを特徴とする高周波センサ装置。
【請求項2】
送信波を発生する送信部と、
前記送信波を放射するアンテナと、
前記送信波の物体による反射波及び透過波の少なくともいずれかを受信波として受信するアンテナと、
前記受信波を検知する受信部と、
を備え、
前記アンテナは、パッチ電極を有する給電素子と、パッチ電極を有する4つの無給電素子と、を含み、
前記4つの無給電素子は、前記給電素子の中心で交差する2軸上にそれぞれ前記給電素子と隣接して配置され、
前記4つの無給電素子のそれぞれは、アンテナゲインがプラスで且つ位相がプラスの状態と、アンテナゲインがゼロまたはマイナスの状態と、を切り替え可能とされたことを特徴とする高周波センサ装置。
【請求項3】
前記4つの無給電素子のそれぞれは、前記パッチ電極の辺のうちで前記励振方向に対して直交する辺の中央近傍から前記励振方向に対して略平行に延在する部分を含む伝送線路を有し、
前記伝送線路のそれぞれには高周波スイッチが接続され、前記伝送線路は前記高周波スイッチのオン状態では接地に接続され、オフ状態では接地へ非接続とされ、
前記高周波スイッチをオン状態とオフ状態との間で遷移させることにより、前記アンテナゲインがプラスで且つ位相がプラスの状態と、前記アンテナゲインがゼロまたはマイナスの状態と、を切り替え可能とされたことを特徴とする請求項1または2に記載の高周波センサ装置。
【請求項4】
前記4つの無給電素子のうちのいずれか1つを前記アンテナゲインがプラスで且つ位相がプラスの状態とし、前記4つの無給電素子のうちの残りの3つを前記アンテナゲインがゼロまたはマイナスの状態とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の高周波センサ装置。
【請求項5】
送信波を発生する送信部と、
前記送信波を放射し、前記送信波の物体による反射波及び透過波の少なくともいずれかを受信波として受信するアンテナと、
前記受信波を検知する受信部と、
を備え、
前記アンテナは、パッチ電極を有する給電素子と、パッチ電極を有する4つの無給電素子と、を含み、
前記4つの無給電素子は、前記給電素子の中心で交差する2軸上にそれぞれ前記給電素子と隣接して配置され、
前記4つの無給電素子のそれぞれは、アンテナゲインがプラスで且つ位相がプラスの状態と、アンテナゲインがプラスで且つ位相がマイナスの状態と、アンテナゲインがゼロまたはマイナスの状態と、を切り替え可能とされたことを特徴とする高周波センサ装置。
【請求項6】
送信波を発生する送信部と、
前記送信波を放射するアンテナと、
前記送信波の物体による反射波及び透過波の少なくともいずれかを受信波として受信するアンテナと、
前記受信波を検知する受信部と、
を備え、
前記アンテナは、パッチ電極を有する給電素子と、パッチ電極を有する4つの無給電素子と、を含み、
前記4つの無給電素子は、前記給電素子の中心で交差する2軸上にそれぞれ前記給電素子と隣接して配置され、
前記4つの無給電素子のそれぞれは、アンテナゲインがプラスで且つ位相がプラスの状態と、アンテナゲインがプラスで且つ位相がマイナスの状態と、アンテナゲインがゼロまたはマイナスの状態と、を切り替え可能とされたことを特徴とする高周波センサ装置。
【請求項7】
前記4つの無給電素子のそれぞれは、前記パッチ電極の辺のうちで前記励振方向に対して直交する辺の中央近傍から前記励振方向に対して略平行に延在する部分を含む伝送線路を有し、
前記伝送線路のそれぞれには高周波スイッチが2つ接続され、前記伝送線路は前記高周波スイッチのオン状態では接地に接続され、オフ状態では接地へ非接続とされ、
前記高周波スイッチをオン状態とオフ状態との間で遷移させることにより、前記アンテナゲインがプラスで且つ位相がプラスの状態と、前記アンテナゲインがプラスで且つ位相がマイナスの状態と、前記アンテナゲインがゼロまたはマイナスの状態と、を切り替え可能とされたことを特徴とする請求項5または6に記載の高周波センサ装置。
【請求項8】
第1の無給電素子の前記アンテナゲインがプラス且つ位相がプラスの状態とし、前記給電素子に関して前記第1の無給電素子と反対側に位置する第2の無給電素子の前記アンテナゲインがプラスでかつ位相がマイナスの状態とし、前記第1及び第2の無給電素子が配置された軸と交差する軸上に配置された第3及び第4の無給電素子の前記アンテナゲインがゼロまたはマイナスの状態とすることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1つに記載の高周波センサ装置。
【請求項9】
前記2軸は、励振方向に対して略平行な軸と略垂直な軸とであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の高周波センサ装置。
【請求項10】
前記2軸のそれぞれは、励振方向に対して平行でも垂直でもないことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の高周波センサ装置。
【請求項11】
前記4つの無給電素子のそれぞれは、前記パッチ電極の辺のうちで励振方向に対して平行または垂直であり前記給電素子に近接する辺が、前記給電素子との間においてゼロより大きく4分の1波長よりも短い対向部分を有することを特徴とする請求項10記載の高周波センサ装置。


【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図11】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図21】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図40】
image rotate

【図41】
image rotate

【図42】
image rotate

【図43】
image rotate

【図49】
image rotate

【図50】
image rotate

【図51】
image rotate

【図52】
image rotate

【図53】
image rotate

【図56】
image rotate

【図57】
image rotate

【図59】
image rotate

【図61】
image rotate

【図62】
image rotate

【図65】
image rotate

【図68】
image rotate

【図81】
image rotate

【図1】
image rotate

【図10】
image rotate

【図12】
image rotate

【図16】
image rotate

【図20】
image rotate

【図22】
image rotate

【図34】
image rotate

【図39】
image rotate

【図44】
image rotate

【図45】
image rotate

【図46】
image rotate

【図47】
image rotate

【図48】
image rotate

【図54】
image rotate

【図55】
image rotate

【図58】
image rotate

【図60】
image rotate

【図63】
image rotate

【図64】
image rotate

【図66】
image rotate

【図67】
image rotate

【図69】
image rotate

【図70】
image rotate

【図71】
image rotate

【図72】
image rotate

【図73】
image rotate

【図74】
image rotate

【図75】
image rotate

【図76】
image rotate

【図77】
image rotate

【図78】
image rotate

【図79】
image rotate

【図80】
image rotate

【図82】
image rotate

【図83】
image rotate

【図84】
image rotate

【図85】
image rotate

【図86】
image rotate

【図87】
image rotate

【図88】
image rotate


【公開番号】特開2008−85908(P2008−85908A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265900(P2006−265900)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】