説明

高周波半導体装置

【課題】 インピーダンス不整合を生じることなしに、動作周波数が高くなったときのワイヤボンド接続部分における高周波特性の劣化が低減された高周波半導体装置を提供する。
【解決手段】 高周波半導体装置は、半導体基板8の上に形成された高周波半導体素子1と、一端が高周波半導体素子1に接続する高周波信号伝送線路7と、高周波信号伝送線路7の延伸方向に対し垂直になるようにして高周波信号伝送線路7の他端に接続する高周波信号入出力用パッド2と、高周波信号入出力用パッド2の長手方向の両側にそれぞれ形成される接地電位用パッド4,5とを有する。高周波信号伝送線路7の幅方向の寸法Wと、高周波信号入出力用パッド2の幅方向の寸法Wとが実質的に一致し、高周波信号入出力用パッド2の長手方向に沿って複数の金線3,3´が接続していることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の高周波半導体装置には、半導体基板の上に高周波信号を入出力するための高周波信号入出力用パッドが形成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
高周波半導体素子をパッケージに実装する場合には、一般に、直径25μm程度の金線を介して、この高周波信号入出力用パッドをパッケージの端子に電気的に接続する。この際、金線の接続部の特性劣化を低減するために、接続部の両側に接地電位のワイヤボンディングが行われる。
【0004】
また、高周波半導体素子の高周波特性の評価は、高周波特性評価装置に接続されたプローブ針を高周波信号入出力用パッドに押圧し、高周波信号を入出力することによって行われる。プローブ針の先端部分には、高周波信号を入出力する高周波信号伝送用プローブ針と、この両側に設けられた接地電位用プローブ針とがある。そして、高周波半導体素子には、高周波信号入出力用パッドの両側の接地電位用プローブ針に対応する位置に接地電位用パッドが設けられる。
【0005】
ところで、高周波半導体装置では、一般に、厚さが100μm程度のGaAs基板が使用される。このため、高周波半導体素子の上に、マイクロストリップ型の伝送線路を形成する場合、高周波信号伝送線路の特性インピーダンスが50Ω程度となるように、高周波信号伝送線路の線路幅は70μm程度に設定される。したがって、高周波信号伝送線路の延長線上に接続される高周波信号入出力用パッドの線幅も、高周波信号伝送線路の線路幅と同じ値に設定される。
【0006】
【特許文献1】特開昭60−249374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような構造を有する従来の高周波半導体装置では、直径25μm程度の金線を用いてワイヤボンディングしようとすると、金線の先端の金ボール部分が70μm程度の直径を有するために、1本の金線でしか接続できないことになる。したがって、高周波半導体素子の動作周波数が高くなると、ワイヤボンド接続部分における金線のインダクタンス成分の影響が大きくなり、高周波信号の損失が増加して高周波特性の劣化を招くという問題があった。
【0008】
一例として、1本の金線を用いて高周波半導体素子をパッケージに実装する場合、ワイヤボンド接続部分における高周波信号の損失は、10GHzでは約0.5dB、30GHzでは約2dB、そして、50GHzでは約6dBになる。
【0009】
ワイヤボンド接続部分における金線のインダクタンス成分を低減するには、金線の直径を大きくしたり、金線の本数を増やしたりすることが有効である。しかし、何れの場合も高周波信号入出力用パッドの線幅を大きくしなければならず、高周波信号伝送線路の線幅との間に差が生じる。
【0010】
ここで、高周波信号入出力用パッドの線幅と、高周波信号伝送線路の線幅との間に差があると、インピーダンス不整合が生じて反射損失が増加する。例えば、両者の線幅が70μmである場合には、30GHzで−30dB以下の反射損失である。しかし、高周波信号入出力用パッドの線幅を150μmとして両者の線幅の差を70μmとした場合、反射損失は30GHzで−20dBとなり、線幅が等しい場合に比較すると反射損失は10dBも低下する。
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、インピーダンス不整合を生じることなしに、動作周波数が高くなったときのワイヤボンド接続部分における高周波特性の劣化が低減された高周波半導体装置を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的および利点は以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、半導体基板の上に形成された高周波半導体素子と、半導体基板の上に形成されて、一端が高周波半導体素子に接続する高周波信号伝送線路と、半導体基板の上に形成されて、高周波信号伝送線路の延伸方向に対し垂直になるようにして高周波信号伝送線路の他端に接続する高周波信号入出力用パッドと、半導体基板の上で、高周波信号入出力用パッドの長手方向の両側にそれぞれ形成される接地電位用パッドとを有することを特徴とする高周波半導体装置に関する。
【0014】
また、本発明は、半導体基板の上に形成された高周波半導体素子と、半導体基板の上に形成されて、一端が高周波半導体素子に接続する高周波信号伝送線路と、半導体基板の上に形成されて、高周波信号伝送線路の延伸方向に対し垂直になるようにして高周波信号伝送線路の他端に接続する高周波信号入出力用パッドと、半導体基板の上で、高周波信号入出力用パッドが高周波信号伝送線路に接続する側とは反対側の高周波信号入出力用パッドの近傍に、高周波信号入出力用パッドの三方を囲むようにして設けられた1の接地電位用パッドと、半導体基板の上で、高周波信号入出力用パッドが高周波信号伝送線路に接続する側の高周波信号入出力用パッドの近傍に設けられた他の接地電位用パッドとを有することを特徴とする高周波半導体装置に関する。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように、本発明によれば、インピーダンス不整合を生じることなしに、動作周波数が高くなったときのワイヤボンド接続部分における高周波特性の劣化が低減された高周波半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態の高周波半導体装置において、高周波特性評価用パッド付近の拡大平面図である。
【0017】
図1に示すように、半導体基板8の上には、高周波半導体素子1と、一端が高周波半導体素子1に電気的に接続する高周波信号伝送線路7と、高周波信号伝送線路7の他端に接続する高周波信号入出力用パッド2とが形成されている。また、高周波信号入出力用パッド2には、ボンディングワイヤとしての金線3,3´が接続している。金線3,3´を、パッケージ(図示せず)の端子に接続することによって、高周波半導体素子1をパッケージに実装することができる。
【0018】
また、高周波信号入出力用パッド2の両側には接地電位用パッド4,5が設けられており、これらの3つのパッドで高周波特性評価用パッド6を構成している。
【0019】
本実施の形態においては、高周波信号入出力用パッド2の長手方向が高周波信号伝送線路7の延伸方向に対し垂直になるようにして、高周波信号入出力用パッド2を高周波信号伝送線路7の端部に接続することを第1の特徴としている。このような構成とすることによって、高周波信号入出力用パッド2のパッド幅Wと、高周波信号伝送線路7の線路幅Wとを実質的に同じ値とした状態で、高周波信号入出力用パッド2の長手方向に沿って複数の金線3,3´を接続できる。したがって、インピーダンス不整合を生じることなしに、動作周波数が高くなったときのワイヤボンド接続部分における高周波特性の劣化を低減することが可能となる。
【0020】
例えば、厚さが100μm程度のGaAs基板を半導体基板8として使用する場合、高周波信号伝送線路7の特性インピーダンスが50Ω程度となるように、高周波信号伝送線路7の線路幅Wは70μm程度に設定される。そして、本実施の形態においては、高周波信号入出力用パッド2のパッド長Lと、パッド幅Wと、接地電位用パッド4,5の間隔Dとが、それぞれ次の関係を満たすことが好ましい。
【0021】
L≧150μm
≒70μm
D≒300μm
【0022】
また、本実施の形態においては、上記の構成を有する高周波特性評価用パッドが、1つの高周波半導体素子に複数ある場合には、高周波特性評価装置に接続された高周波特性評価用プローブ針を個々の高周波特性評価用パッドに押圧して特性評価を行う際に、隣接するプローブ針が対向するようにして高周波特性評価用パッドを配置することを第2の特徴としている。換言すると、本実施の形態における第2の特徴は、1の高周波信号入出力用パッドが高周波信号伝送線路に接続する方向と、この高周波信号入出力用パッドに隣接する他の高周波信号入出力用パッドが、前記高周波信号伝送線路に平行な他の高周波信号伝送線路に接続する方向とが、これらの高周波信号伝送線路の延伸方向に対して互いに逆向きになっている点にある。
【0023】
図2は、本実施の形態の高周波半導体素子において、複数の高周波特性評価用パッドが設けられた場合の平面図である。
【0024】
図2の例では、高周波半導体素子11には、2つの高周波特性評価用パッド12,13が設けられている。ここで、高周波特性評価用パッド12は、高周波信号入出力用パッド14と、接地電位用パッド15,16とからなる。また、、高周波特性評価用パッド13は、高周波信号入出力用パッド17と、接地電位用パッド18,19とからなる。
【0025】
図2において、高周波信号伝送線路20,21は平行に配置されている。そして、高周波信号入出力用パッド14が高周波信号伝送線路20に接続する方向(図の上方向)と、高周波信号入出力用パッド17が高周波信号伝送線路21に接続する方向(図の下方向)とは、高周波信号伝送線路20,21の延伸方向(図の横方向)に対して互いに逆向きになっている。
【0026】
このようにすることによって、高周波特性評価用パッド12に押圧する高周波特性評価用プローブ針22と、高周波特性評価用パッド13に押圧する高周波特性評価用プローブ針23とは、図2に示すように対向して配置されるので、互いの測定に支障を来たさずに特性評価を行うことができる。
【0027】
尚、図2において、特性評価の際には、高周波信号伝送用プローブ針24を高周波信号入出力用パッド14に、接地電位用プローブ針25,26を接地電位用パッド15,16にそれぞれ押圧する。同様に、高周波信号伝送用プローブ針27を高周波信号入出力用パッド17に、接地電位用プローブ針28,29を接地電位用パッド18,19にそれぞれ押圧する。
【0028】
実施の形態2.
図3は、本実施の形態の高周波半導体素子において、高周波特性評価用パッド付近の拡大平面図である。
【0029】
図3において、高周波半導体素子31の高周波特性評価用パッド32は、高周波信号入出力用パッド33と、2つの接地電位用パッド34,35とからなっている。同様に、高周波半導体素子36の高周波特性評価用パッド37も、高周波信号入出力用パッド38と、2つの接地電位用パッド39,40とからなっている。
【0030】
本実施の形態も、実施の形態1と同様に、高周波信号入出力用パッド33の長手方向が高周波信号伝送線路41の延伸方向に対し垂直になるようにして、高周波信号入出力用パッド33を高周波信号伝送線路41の端部に接続する。また、高周波信号入出力用パッド38の長手方向が高周波信号伝送線路42の延伸方向に対し垂直になるようにして、高周波信号入出力用パッド38を高周波信号伝送線路42の端部に接続する。
【0031】
そして、高周波特性評価用パッド32,37は、特性評価を行う際に、隣接する高周波特性評価用プローブ針(図示せず)が対向するようにして配置される。すなわち、高周波信号入出力用パッド33が高周波信号伝送線路41に接続する方向と、高周波信号入出力用パッド38が高周波信号伝送線路42に接続する方向とが、互いに平行な高周波信号伝送線路41,42の延伸方向に対して逆向きになっている点にある。
【0032】
このような構成とすることによって、高周波信号入出力用パッド33の幅と、高周波信号伝送線路41の幅とを同じ値に設定した状態で、高周波信号入出力用パッド33の長手方向に沿って複数の金線(ボンディングワイヤ)を接続できる。同様に、高周波信号入出力用パッド38の幅と、高周波信号伝送線路42の幅とを同じ値に設定した状態で、高周波信号入出力用パッド38の長手方向に沿って複数の金線(ボンディングワイヤ)を接続できる。したがって、インピーダンス不整合を生じることなしに、動作周波数が高くなったときのワイヤボンド接続部分における高周波特性の劣化を低減することが可能となる。
【0033】
また、高周波特性評価用パッド32に押圧する高周波特性評価用プローブ針と、高周波特性評価用パッド37に押圧する高周波特性評価用プローブ針とが対向するようにして配置されるので、互いの測定に支障を来たさずに特性評価を行うことができる。
【0034】
本実施の形態が実施の形態1と異なる点は、接地電位用パッドの一方(図3では、接地電位用パッド34,39)がダイシングライン43の上に設けられていることにある。このため、特性評価を終えた後は、ダイシングライン43に沿って基板を切断してから、高周波信号入出力用パッド33,38に金線を接続する。その後、金線をパッケージの端子に接続することによって、高周波半導体素子31,36をパッケージに実装することができる。
【0035】
図4は、切断後の高周波半導体素子36について、高周波信号入出力用パッド38に、ボンディングワイヤとしての金線44,44´を接続した様子を示す平面図である。
【0036】
本実施の形態によれば、接地電位用パッドの一方をダイシングラインの上に設けることによって、特性評価後にはこの接地電位用パッドを切断除去することができる。したがって、従来の高周波半導体素子に比較して、切断除去した接地電位用パッドの分だけチップサイズを小さくすることができる。また、ワイヤボンドの際に使用する金線の長さも短くすることができるので、ワイヤボンド接続部での特性の劣化を低減することが可能となる。
【0037】
実施の形態3.
図5は、本実施の形態の高周波半導体素子において、高周波特性評価用パッド付近の拡大平面図である。
【0038】
図5の高周波半導体素子51は、2つの高周波特性評価用パッド52,53を有している。そして、高周波特性評価用パッド52は、高周波信号入出力用パッド54と、4つの接地電位用パッド55,56,57,58とからなる。同様に、高周波特性評価用パッド53も、高周波信号入出力用パッド59と、4つの接地電位用パッド60,61,62,63とからなっている。
【0039】
すなわち、本実施の形態は、高周波信号入出力用パッド54の両側に設けられた接地電位用パッド55,56の他に、高周波信号入出力用パッド54の長手方向両端付近にも接地電位用パッド57,58が設けられていることを特徴としている。同様に、高周波信号入出力用パッド59の両側に設けられた接地電位用パッド60,61の他に、高周波信号入出力用パッド59の両端付近にも接地電位用パッド62,63が設けられていることを特徴としている。
【0040】
このような構成とすることによって、高周波信号入出力用パッド54に接続する、ボンディングワイヤとしての金線64,64´に並行して、接地電位用ワイヤ65,65´を設けることができる。また、高周波信号入出力用パッド59に接続する、ボンディングワイヤとしての金線66,66´にも並行して、接地電位用ワイヤ67,67´を設けることができる。これにより、ワイヤボンド接続部における特性劣化を低減することが可能となる。
【0041】
また、本実施の形態も、実施の形態1と同様に、高周波信号入出力用パッド54の長手方向が高周波信号伝送線路68の延伸方向に対し垂直になるようにして、高周波信号入出力用パッド54を高周波信号伝送線路68の端部に接続する。また、高周波信号入出力用パッド59の長手方向が高周波信号伝送線路69の延伸方向に対し垂直になるようにして、高周波信号入出力用パッド59を高周波信号伝送線路69の端部に接続する。
【0042】
そして、高周波特性評価用パッド52,53は、特性評価を行う際に、隣接する高周波特性評価用プローブ針(図示せず)が対向するようにして配置される。すなわち、高周波信号入出力用パッド54が高周波信号伝送線路68に接続する方向と、高周波信号入出力用パッド59が高周波信号伝送線路69に接続する方向とが、互いに平行な高周波信号伝送線路68,69の延伸方向に対して逆向きになるようにする。
【0043】
このような構成とすることによって、高周波信号入出力用パッド54の幅と、高周波信号伝送線路68の幅とを同じ値に設定した状態で、高周波信号入出力用パッド54の長手方向に沿って複数の金線(ボンディングワイヤ)を接続できる。同様に、高周波信号入出力用パッド59の幅と、高周波信号伝送線路69の幅とを同じ値に設定した状態で、高周波信号入出力用パッド59の長手方向に沿って複数の金線(ボンディングワイヤ)を接続できる。したがって、インピーダンス不整合を生じることなしに、動作周波数が高くなったときのワイヤボンド接続部分における高周波特性の劣化を低減することが可能となる。
【0044】
また、高周波特性評価用パッド52に押圧する高周波特性評価用プローブ針と、高周波特性評価用パッド53に押圧する高周波特性評価用プローブ針とが対向するようにして配置されるので、互いの測定に支障を来たさずに特性評価を行うことができる。
【0045】
尚、本実施の形態においては、図5の接地電位用パッド55,56,57を繋いで1の接地電位用パッド70としてもよい(図6)。同様に、図5の接地電位用パッド60,61,62を繋いで1の接地電位用パッド71としてもよい(図6)。
【0046】
すなわち、接地電位用パッド70は、半導体基板72の上で、高周波信号入出力用パッド54が高周波信号伝送線路68に接続する側とは反対側の高周波信号入出力用パッド54の近傍に、高周波信号入出力用パッド54の三方を囲むようにして設けられる。一方、接地電位用パッド58は、半導体基板72の上で、高周波信号入出力用パッド54が高周波信号伝送線路68に接続する側の高周波信号入出力用パッド54の近傍に設けられる。
【0047】
同様に、接地電位用パッド71は、半導体基板72の上で、高周波信号入出力用パッド59が高周波信号伝送線路69に接続する側とは反対側の高周波信号入出力用パッド59の近傍に、高周波信号入出力用パッド59の三方を囲むようにして設けられる。一方、接地電位用パッド63は、半導体基板72の上で、高周波信号入出力用パッド59が高周波信号伝送線路69に接続する側の高周波信号入出力用パッド59の近傍に設けられる。
【0048】
このような構造であっても、高周波信号入出力用パッド54に接続する、ボンディングワイヤとしての金線64,64´に並行して、接地電位用ワイヤ65,65´を設けることができる。また、高周波信号入出力用パッド59に接続する、ボンディングワイヤとしての金線66,66´に並行して、接地電位用ワイヤ67,67´を設けることができる。したがって、図5と同様に、ワイヤボンド接続部における特性劣化を低減することが可能となる。
【0049】
実施の形態4.
図7は、本実施の形態の高周波半導体素子において、高周波特性評価用パッド付近の拡大平面図である。
【0050】
本実施の形態も、実施の形態1と同様に、高周波信号入出力用パッド83の長手方向が高周波信号伝送線路91の延伸方向に対し垂直になるようにして、高周波信号入出力用パッド83を高周波信号伝送線路91の端部に接続する。また、高周波信号入出力用パッド88の長手方向が高周波信号伝送線路92の延伸方向に対し垂直になるようにして、高周波信号入出力用パッド88を高周波信号伝送線路92の端部に接続する。
【0051】
そして、高周波特性評価用パッド82,87は、特性評価を行う際に、隣接する高周波特性評価用プローブ針(図示せず)が対向するようにして配置される。すなわち、高周波信号入出力用パッド83が高周波信号伝送線路91に接続する方向と、高周波信号入出力用パッド88が高周波信号伝送線路92に接続する方向とが、互いに平行な高周波信号伝送線路91,92の延伸方向に対して逆向きになるようにする。
【0052】
このような構成とすることによって、高周波信号入出力用パッド83の幅と、高周波信号伝送線路91の幅とを同じ値に設定した状態で、高周波信号入出力用パッド83の長手方向に沿って複数の金線(ボンディングワイヤ)を接続できる。同様に、高周波信号入出力用パッド88の幅と、高周波信号伝送線路92の幅とを同じ値に設定した状態で、高周波信号入出力用パッド88の長手方向に沿って複数の金線(ボンディングワイヤ)を接続できる。したがって、インピーダンス不整合を生じることなしに、動作周波数が高くなったときのワイヤボンド接続部分における高周波特性の劣化を低減することが可能となる。
【0053】
また、高周波特性評価用パッド82に押圧する高周波特性評価用プローブ針と、高周波特性評価用パッド87に押圧する高周波特性評価用プローブ針とが対向するようにして配置されるので、互いの測定に支障を来たさずに特性評価を行うことができる。
【0054】
また、本実施の形態では、図7に示すように、高周波半導体素子81の高周波特性評価用パッド82は、高周波信号入出力用パッド83と、2つの接地電位用パッド84,85とからなっている。ここで、接地電位用パッド84は、半導体基板96の上で、高周波信号入出力用パッド83が高周波信号伝送線路91と接続する側とは反対側の高周波信号入出力用パッド83の近傍に、高周波信号入出力用パッド83の三方を囲むようにして設けられる。一方、接地電位用パッド85は、半導体基板96の上で、高周波信号入出力用パッド83が高周波信号伝送線路91と接続する側の高周波信号入出力用パッド83の近傍に設けられる。
【0055】
一方、高周波半導体素子86の高周波特性評価用パッド87も、高周波信号入出力用パッド88と、2つの接地電位用パッド89,90とからなっている。そして、接地電位用パッド89は、半導体基板96の上で、高周波信号入出力用パッド88が高周波信号伝送線路92と接続する側とは反対側の高周波信号入出力用パッド88の近傍に、高周波信号入出力用パッド88の三方を囲むようにして設けられる。一方、接地電位用パッド90は、半導体基板96の上で、高周波信号入出力用パッド88が高周波信号伝送線路92と接続する側の高周波信号入出力用パッド88の近傍に設けられる。
【0056】
さらに、本実施の形態では、図7に示すように、接地電位用パッド84,89の一部がダイシングライン93の上に設けられている。このため、特性評価を終えた後は、ダイシングライン93に沿って基板を切断してから、高周波信号入出力用パッド83,88に金線を接続し、また、接地電位用パッド84,85,89,90に接地電位用ワイヤを接続する。
【0057】
図8は、切断後の高周波半導体素子86について、高周波信号入出力用パッド88に、ボンディングワイヤとしての金線94,94´を接続し、接地電位用パッド89,90に接地電位用ワイヤ95,95´を接続した様子を示す平面図である。このように、本実施の形態によれば、金線94,94´に並行して接地電位用ワイヤ95,95´を設けることができるので、ワイヤボンド接続部における特性劣化を低減することが可能となる。
【0058】
また、本実施の形態によれば、接地電位用パッドの一部をダイシングラインの上に設けることによって、特性評価後にはこの接地電位用パッドを切断除去することができる。したがって、従来の高周波半導体素子に比較して、切断除去した接地電位用パッドの分だけチップサイズを小さくすることができる。また、ワイヤボンドの際に使用する金線の長さも短くすることができるので、ワイヤボンド接続部での特性の劣化を低減することが可能となる。
【0059】
尚、本実施の形態においては、実施の形態3で述べた図5に示すように、接地電位用パッド84が3つのパッドに分かれていて、この内の1つのパッドがダイシングライン93の上に設けられていてもよい。より詳しくは、高周波信号入出力用パッド83の長手方向の両側に形成された接地電位用パッドの一方が、ダイシングライン93の上に設けられていてもよい。同様に、接地電位用パッド89が3つのパッドに分かれていて、この内の1つのパッドがダイシングライン93の上に設けられていてもよい。より詳しくは、高周波信号入出力用パッド88の長手方向の両側に形成された接地電位用パッドの一方が、ダイシングライン93の上に設けられていてもよい。このような構造であっても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0060】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施の形態1の高周波半導体素子において、高周波特性評価用パッド付近の拡大平面図である。
【図2】実施の形態1の高周波半導体素子において、複数の高周波特性評価用パッドが設けられた場合の平面図である。
【図3】実施の形態2の高周波半導体素子において、高周波特性評価用パッド付近の拡大平面図である。
【図4】実施の形態2において、高周波信号入出力用パッドに金線を接続した様子を示す平面図である。
【図5】実施の形態3の高周波半導体素子において、高周波特性評価用パッド付近の拡大平面図の一例である。
【図6】実施の形態3の高周波半導体素子において、高周波特性評価用パッド付近の拡大平面図の他の例である。
【図7】実施の形態4の高周波半導体素子において、高周波特性評価用パッド付近の拡大平面図である。
【図8】実施の形態4において、高周波信号入出力用パッドに金線を、接地電位用パッドに接地電位用ワイヤをそれぞれ接続した様子を示す平面図である。
【符号の説明】
【0062】
1,31,36,51,81,86 高周波半導体素子
2,14,17,33,38,54,59,83,88 高周波信号入出力用パッド
3,3´ 金線
4,5,15,16,18,19,34,35,39,40,55〜58,60〜63,70,71,84,85,89,90 接地電位用パッド
6,12,13,32,37,52,53,82,87 高周波特性評価用パッド
7,20,21,41,42,68,69,91,92 高周波信号伝送線路
8,72,96 半導体基板
11 高周波半導体素子
22,23 高周波特性評価用プローブ針
24,27 高周波信号伝送用プローブ針
25,26,28,29 接地電位用プローブ針
43,93 ダイシングライン
44,44´,64,64´,66,66´,94,94´ 金線
65,65´,67,67´,95,95´ 接地電位用ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の上に形成された高周波半導体素子と、
前記半導体基板の上に形成されて、一端が前記高周波半導体素子に接続する高周波信号伝送線路と、
前記半導体基板の上に形成されて、前記高周波信号伝送線路の延伸方向に対し垂直になるようにして前記高周波信号伝送線路の他端に接続する高周波信号入出力用パッドと、
前記半導体基板の上で、前記高周波信号入出力用パッドの長手方向の両側にそれぞれ形成される接地電位用パッドとを有することを特徴とする高周波半導体装置。
【請求項2】
前記高周波信号伝送線路の幅方向の寸法と前記高周波信号入出力用パッドの幅方向の寸法とが実質的に一致し、
前記高周波信号入出力用パッドの前記長手方向に沿って複数のボンディングワイヤが接続している請求項1に記載の高周波半導体装置。
【請求項3】
前記半導体基板の上に、前記高周波信号伝送線路および前記高周波信号入出力用パッドが複数形成されていて、
1の高周波入出力用パッドが1の高周波信号伝送線路に接続する方向と、該高周波信号入出力用パッドに隣接する他の高周波信号入出力用パッドが、該高周波信号伝送線路に平行な他の高周波信号伝送線路に接続する方向とが、これらの高周波信号伝送線路の延伸方向に対して互いに逆向きになっている請求項1または2記載の高周波半導体装置。
【請求項4】
前記接地電位用パッドの一方が、前記半導体基板の表面のダイシングライン上に設けられている請求項1〜3に記載の高周波半導体装置。
【請求項5】
前記高周波信号伝送線路の前記長手方向の両端付近に接地電位用パッドがさらに形成されている請求項1〜4に記載の高周波半導体装置。
【請求項6】
半導体基板の上に形成された高周波半導体素子と、
前記半導体基板の上に形成されて、一端が前記高周波半導体素子に接続する高周波信号伝送線路と、
前記半導体基板の上に形成されて、前記高周波信号伝送線路の延伸方向に対し垂直になるようにして前記高周波信号伝送線路の他端に接続する高周波信号入出力用パッドと、
前記半導体基板の上で、前記高周波信号入出力用パッドが前記高周波信号伝送線路に接続する側とは反対側の前記高周波信号入出力用パッドの近傍に、前記高周波信号入出力用パッドの三方を囲むようにして設けられた1の接地電位用パッドと、
前記半導体基板の上で、前記高周波信号入出力用パッドが前記高周波信号伝送線路に接続する側の前記高周波信号入出力用パッドの近傍に設けられた他の接地電位用パッドとを有することを特徴とする高周波半導体装置。
【請求項7】
前記高周波信号伝送線路の幅方向の寸法と前記高周波信号入出力用パッドの幅方向の寸法とが実質的に一致し、
前記高周波信号入出力用パッドの前記長手方向に沿って複数のボンディングワイヤが接続している請求項1に記載の高周波半導体装置。
【請求項8】
前記半導体基板の上に、前記高周波信号伝送線路および前記高周波信号入出力用パッドが複数形成されていて、
1の高周波入出力用パッドが1の高周波信号伝送線路に接続する方向と、該高周波信号入出力用パッドに隣接する他の高周波信号入出力用パッドが、該高周波信号伝送線路に平行な他の高周波信号伝送線路に接続する方向とが、これらの高周波信号伝送線路の延伸方向に対して互いに逆向きになっている請求項6または7記載の高周波半導体装置。
【請求項9】
前記1の接地電位用パッドの一部が、前記半導体基板の表面のダイシングライン上に設けられている請求項6〜8に記載の高周波半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−237226(P2006−237226A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−49042(P2005−49042)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】