説明

高周波増幅装置およびプラズマ処理装置

【課題】出力電力を所望の値に精度よく制御し得る高周波増幅装置を提供する。
【解決手段】準マイクロ波帯およびマイクロ波帯などの高周波帯の高周波信号S1を増幅して出力ライン21に出力する増幅器13と、出力ライン21に介装されて増幅器13によって出力ライン21に出力された高周波信号S2の進行波成分Stを検出する方向性結合器15と、方向性結合器15によって検出された進行波成分Stに基づいて増幅器13の利得を制御する第1制御部16とを備えた高周波増幅器1であって、出力ライン21における増幅器13と方向性結合器15との間の部位にアイソレータ14が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VHF帯、UHF帯、準マイクロ波帯、マイクロ波帯、およびミリ波帯のうちのいずれかの高周波帯の高周波信号を増幅する高周波増幅装置、およびこの高周波増幅装置を備えたプラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の高周波増幅装置として、下記特許文献1に開示された送信機で使用されている高周波増幅装置(送信電力制御回路)が知られている。この高周波増幅装置では、RF回路から負荷としてのアンテナに出力される電力を所望の値に制御するため、RF回路の前段にゲイン(利得)の制御が可能なAGCアンプを配設すると共に、RF回路から出力される信号を増幅するパワーアンプの後段にカップラ(方向性結合器)を配設し、出力電力の一部をカップラで取り出して検波し、この検波信号に基づいてAGCアンプへの制御電圧を調整している。
【特許文献1】特開2001−332985号公報(第4−6頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、この種の高周波増幅装置には、以下の問題点がある。すなわち、この種の高周波増幅装置では、アンテナとの間のインピーダンス整合が取れていないときに、アンテナからの反射波がパワーアンプに戻り、さらにこの反射波がパワーアンプの出力端で再反射して、進行波と共にカップラを通過する。したがって、この高周波増幅装置には、カップラにおいて取り出される信号が反射波の影響を受けるため、AGCアンプに対して適切な制御電圧を出力できない結果、アンテナに出力される電力を所望の値に制御できないおそれがあるという問題点がある。
【0004】
本発明は、かかる問題点を解決すべくなされたものであり、出力電力を所望の値に精度よく制御し得る高周波増幅装置、およびこの高周波増幅装置を備えたプラズマ処理装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成すべく請求項1記載の高周波増幅装置は、VHF帯、UHF帯、準マイクロ波帯、マイクロ波帯、およびミリ波帯のうちのいずれかの高周波帯の高周波信号を増幅して出力ラインに出力する増幅部と、前記出力ラインに介装されて前記増幅部によって当該出力ラインに出力された前記高周波信号の進行波成分を検出する進行波検出部と、当該進行波検出部によって検出された前記進行波成分に基づいて前記増幅部の利得を制御する第1制御部とを備えた高周波増幅装置であって、前記出力ラインにおける前記増幅部と前記進行波検出部との間の部位にアイソレータが配設されている。
【0006】
また、請求項2記載の高周波増幅装置は、請求項1記載の高周波増幅装置において、前記高周波信号の反射波成分を検出する第1反射波検出部と、前記第1反射波検出部によって検出された前記反射波成分が所定電力以上のときに前記高周波信号の前記増幅部への入力を停止または当該高周波信号の当該増幅部への入力電力を低下させる第2制御部とを備えている。
【0007】
また、請求項3記載の高周波増幅装置は、請求項1または2記載の高周波増幅装置において、前記出力ラインにおける前記増幅部と前記アイソレータとの間に配設されて前記高周波信号の反射波成分を検出する第2反射波検出部と、前記第2反射波検出部によって検出された前記反射波成分が所定電力以上のときに前記高周波信号の前記増幅部への入力を停止または当該高周波信号の当該増幅部への入力電力を低下させる第3制御部とを備えている。
【0008】
また、請求項4記載の高周波増幅装置は、請求項2記載の高周波増幅装置において、前記アイソレータは、第1端子が前記出力ラインを介して前記増幅部に接続されると共に第2端子が前記出力ラインを介して前記進行波検出部に接続され、かつ第3端子がアッテネータを介して前記第2制御部に接続されたサーキュレータで構成されると共に、前記第1反射波検出部として機能して、前記反射波成分を当該第3端子および当該アッテネータを介して当該第2制御部に出力する。
【0009】
また、請求項5記載の高周波増幅装置は、請求項2記載の高周波増幅装置において、前記進行波検出部および前記第1反射波検出部は、1つの双方向性結合器で構成されている。
【0010】
上記目的を達成すべく請求項6記載のプラズマ処理装置は、請求項1から5のいずれかに記載の高周波増幅装置と、当該高周波増幅装置に供給する前記高周波信号を生成する高周波信号生成部と、当該高周波増幅装置によって増幅された前記高周波信号を用いてプラズマを発生させるプラズマ発生部とを備えている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の高周波増幅装置およびこの高周波増幅装置を備えたプラズマ処理装置によれば、出力ラインにおける増幅部と進行波検出部との間の部位にアイソレータを配設したことにより、高周波増幅装置の負荷(例えばプラズマ発生部)のインピーダンス変動に起因して出力ラインにおける高周波信号の反射波成分の大きさが変動したとしても、この反射波成分の殆どをアイソレータに吸収させることができる。したがって、反射波成分の影響を殆ど受けていない高周波信号についての進行波成分の電力そのものを進行波検出部で検出できるため、負荷のインピーダンスがある程度の範囲で変動したとしても、第1制御部は進行波検出部で検出された進行波成分に基づいて、負荷に出力される高周波信号の電力をほぼ一定に維持する(つまり、所望の値に精度よく制御する)ことができる。
【0012】
請求項2記載の高周波増幅装置およびこの高周波増幅装置を備えたプラズマ処理装置によれば、負荷に出力される高周波信号の電力を所望の値に精度よく制御しつつ、第1反射波検出部によって検出された反射波成分が所定電力以上のときに第2制御部が高周波信号の増幅部への入力を停止または入力電力を低下させることにより、過大な電力の反射波成分が高周波増幅装置に入力されて高周波増幅装置が破損するといった事態を確実に回避することができる。
【0013】
請求項3記載の高周波増幅装置およびこの高周波増幅装置を備えたプラズマ処理装置によれば、負荷に出力される高周波信号の電力を所望の値に精度よく制御しつつ、アイソレータの入力端で発生する反射波成分が所定電力以上となったときには、第3制御部が高周波信号の増幅部への入力を停止または入力電力を低下させることにより、過大な電力の反射波成分が増幅部に入力されて、高周波増幅装置が破損するといった事態を確実に回避することができる。
【0014】
請求項4記載の高周波増幅装置およびこの高周波増幅装置を備えたプラズマ処理装置によれば、アイソレータをサーキュレータとアッテネータとで構成して、第1反射波検出部としても機能させるようにしたことにより、負荷に出力される高周波信号の電力を所望の値に精度よく制御しつつ、装置構成の簡略化を実現することができる。
【0015】
請求項5記載の高周波増幅装置およびこの高周波増幅装置を備えたプラズマ処理装置によれば、出力ラインにおける高周波信号の進行波成分および反射波成分についての検出を1つの双方向性結合器で行うように構成したことにより、進行波成分および反射波成分の検出を個別の方向性結合器でそれぞれ行う構成と比較して、部品点数を削減できるため、その分の製造コストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る高周波増幅装置およびプラズマ処理装置の最良の形態について説明する。
【0017】
図1に示すプラズマ処理装置1は、高周波電源2、高周波増幅装置3およびプラズマ発生部4を備えている。このプラズマ処理装置1では、高周波電源2が高周波信号S1を生成し、高周波増幅装置3がこの高周波信号S1を増幅して高周波信号S2としてプラズマ発生部4に出力する。プラズマ発生部4は、入力した高周波信号S2を利用してプラズマを発生させる。したがって、このプラズマ処理装置1は、発生させたプラズマを利用して、一例として処理対象体(図示せず)の表面をプラズマ処理可能となっている。この場合、プラズマ処理装置1は、プラズマ処理の一例として、樹脂などの有機材料で形成された部材(例えば、シート状や板状の部材)の表面の殺菌処理、洗浄処理、および親水性の向上処理などを実行可能となっている。
【0018】
高周波電源2は、本発明における高周波信号生成部であって、一例として準マイクロ波帯またはマイクロ波帯の高周波信号(本例では、2.45GHz程度の準マイクロ波)S1を生成して、高周波増幅装置3に出力する。
【0019】
高周波増幅装置3は、入力端子11、スイッチ12、増幅器13、アイソレータ14、方向性結合器15、第1制御部16、第2制御部17および出力端子18を備え、入力端子11から入力した高周波信号S1を所定の電力(一定電力)に増幅して出力端子18から出力可能に構成されている。スイッチ12は、入力端子11と増幅器13の入力端との間に配設されている。また、スイッチ12は、第2制御部17によって制御されて、入力端子11から増幅器13への高周波信号S1の伝達を許容するオン状態、または高周波信号S1の伝達を遮断するオフ状態に移行する。
【0020】
増幅器13は、本発明における増幅部であってスイッチ12を介して入力した高周波信号S1を増幅し、増幅した高周波信号S1を高周波信号S2として出力ライン21に出力する。また、増幅器13は、第1制御部16によって制御されて、増幅動作の利得を変更可能に構成されている。アイソレータ14は、出力ライン21における増幅器13と方向性結合器15との間の部位に配設されている。一例として、アイソレータ14は、サーキュレータ14aと終端抵抗14bとで構成されている。このアイソレータ14では、サーキュレータ14aの第1端子aが出力ライン21を介して増幅器13の出力に接続され、第2端子bが方向性結合器15に接続されている。また、サーキュレータ14aの第3端子cとグランドとの間に、終端抵抗14bが配設されている。この構成により、アイソレータ14は、第1端子aから入力した高周波信号S2を低損失で第2端子bから出力すると共に、第2端子bから入力した高周波信号S2についての反射波成分Srを第3端子cから低損失で終端抵抗14bに出力する。したがって、終端抵抗14bが整合の取れた理想状態のときには、出力端子18側からの反射波成分Srは、第2端子bにおいて殆ど反射することなくサーキュレータ14a内に取り込まれて、第3端子cから終端抵抗14bに出力され、この終端抵抗14bでその殆どが吸収される。このため、反射波成分Srは、増幅器13へは殆ど伝達されない。
【0021】
方向性結合器15は、一例として双方向性結合器で構成されて、本発明における進行波検出部および第1反射波検出部として機能する。具体的には、方向性結合器15は、入力端子d、出力端子e、進行波検出端子fおよび反射波検出端子gを備え、入力端子dが出力ライン21を介してアイソレータ14に接続され、出力端子eが出力ライン21を介して出力端子18に接続されている。また、進行波検出端子fは第1制御部16に接続され、反射波検出端子gは第2制御部17に接続されている。この構成により、方向性結合器15は、高周波信号S2の進行波成分Stの電力に比例した電力の検出信号Sdtを進行波検出端子fから第1制御部16に出力し、高周波信号S2の反射波成分Srの電力に比例した電力の検出信号Sdrを反射波検出端子gから第2制御部17に出力する。
【0022】
第1制御部16は、入力した検出信号Sdtの電力が予め設定された基準電力になるように増幅器13の利得を制御することにより、出力端子18から出力される高周波信号S2の電力(出力電力)を一定に制御する。第2制御部17は、入力した検出信号Sdrの電力と予め設定された許容電力とを比較して、検出信号Sdrの電力が許容電力以下のときにスイッチ12をオン状態に移行させ、検出信号Sdrの電力が許容電力を超えたときにスイッチ12をオフ状態に移行させる。
【0023】
プラズマ発生部4は、筐体および筐体内に配設された放射器(いずれも図示せず)を少なくとも備えている。プラズマ発生部4は、高周波増幅装置3の出力端子18に接続されて、この出力端子18から出力された高周波信号S2の電力によって放射器からプラズマを発生させる。この構成により、プラズマ発生部4は、筐体の内部に配設した処理対象体に対するプラズマ処理が可能となっている。
【0024】
次に、高周波増幅装置3およびプラズマ処理装置1の動作について説明する。なお、処理対象体が、プラズマ発生部4における筐体の内部に予め配置されているものとする。
【0025】
プラズマ処理装置1の作動状態において、高周波電源2は、高周波信号S1を生成して高周波増幅装置3に出力する。この場合、高周波増幅装置3では、スイッチ12が第2制御部17によってオン状態に移行されて、増幅器13が高周波信号S1を高周波信号S2に増幅してプラズマ発生部4に出力する。また、プラズマ発生部4は、入力した高周波信号S2の電力によって筐体内においてプラズマを発生させて、処理対象体に対するプラズマ処理を実行する。
【0026】
この場合、高周波増幅装置3に対する負荷となるプラズマ発生部4は、その内部インピーダンスがプラズマ発生中に大きく変動するという特性を有している。このため、その内部インピーダンスが大きく変動している状態では、高周波増幅装置3の出力端子18からプラズマ発生部4に出力されている高周波信号S2についてのプラズマ発生部4の入力端での反射量も変動する結果、反射波成分Srの電力も変動する。
【0027】
しかしながら、このプラズマ処理装置1の高周波増幅装置3では、この反射波成分Srは、方向性結合器15を経由してアイソレータ14に伝達され、このアイソレータ14の終端抵抗14bにより、その殆どが吸収される。このため、アイソレータ14や増幅器13において反射波成分Srが再反射して方向性結合器15に再度入力されるという事態が回避されている。これにより、方向性結合器15の進行波検出端子fからは、反射波成分Srの影響を殆ど受けていない高周波信号S2についての進行波成分Stの電力のみを示す検出信号Sdtが出力される。第1制御部16は、この検出信号Sdtの電力が予め設定された基準電力になるように増幅器13の利得を制御する。したがって、高周波増幅装置3からプラズマ発生部4に出力される高周波信号S2の電力(進行波成分Stの電力)は、プラズマ発生部4のインピーダンスがある程度の範囲で変動したとしても一定に維持される。
【0028】
また、第2制御部17は、方向性結合器15から出力される検出信号Sdrの電力と予め設定された許容電力とを比較して、検出信号Sdrの電力が許容電力以下のときにはスイッチ12をオン状態に維持して、増幅器13に高周波信号S1を入力させる。これにより、高周波増幅装置3のプラズマ発生部4への高周波信号S2の出力が続行される。一方、プラズマ発生部4のインピーダンスがさらに大きく変動したときには、プラズマ発生部4の入力端での高周波信号S2の反射量も一層大きくなり、それに伴い、反射波成分Srの電力も増大するため、方向性結合器15から第2制御部17に入力される検出信号Sdrの電力も増加する。この場合、第2制御部17は、検出信号Sdrの電力が許容電力を超えたときにはスイッチ12をオン状態からオフ状態に移行させる。これにより、高周波増幅装置3からプラズマ発生部4への高周波信号S2の出力が遮断(停止)されて、過大な電力の反射波成分Srの高周波増幅装置3への入力が防止される。
【0029】
このように、この高周波増幅装置3およびプラズマ処理装置1によれば、出力ライン21における増幅器13と方向性結合器15との間の部位にアイソレータ14を配設したことにより、高周波増幅装置3の負荷となるプラズマ発生部4のインピーダンス変動に起因して高周波信号S2の反射波成分Srの大きさが変動したとしても、この反射波成分Srの殆どをアイソレータ14に吸収させることができる。したがって、反射波成分Srの影響を殆ど受けていない高周波信号S2についての進行波成分Stの電力そのものを示す検出信号Sdtを方向性結合器15が第1制御部16に出力することができる結果、プラズマ発生部4のインピーダンスがある程度の範囲で変動したとしても、高周波増幅装置3からプラズマ発生部4に出力される高周波信号S2の電力をほぼ一定に維持する(つまり、所望の値に精度よく制御する)ことができる。
【0030】
また、この高周波増幅装置3およびプラズマ処理装置1によれば、プラズマ発生部4に出力される高周波信号S2の電力を所望の値に精度よく制御しつつ、方向性結合器15によって検出された反射波成分Srが許容電力(所定電力)以上のときに第2制御部17がスイッチ12をオフ状態に移行させて、高周波信号S1の増幅器13への入力を停止させることにより、過大な電力の反射波成分Srが高周波増幅装置3に入力されて高周波増幅装置3が破損するといった事態を確実に回避することができる。
【0031】
また、この高周波増幅装置3およびプラズマ処理装置1によれば、高周波信号S2の進行波成分Stおよび反射波成分Srについての検出を1つの方向性結合器15で行うように構成したことにより、進行波成分Stおよび反射波成分Srの検出を個別の方向性結合器でそれぞれ行う構成と比較して、部品点数を削減できるため、その分の製造コストの低減を図ることができる。
【0032】
なお、本発明は、上記した実施の形態に示した構成に限定されない。例えば、上記のプラズマ処理装置1の高周波増幅装置3では、プラズマ発生部4のインピーダンス変動に伴い、アイソレータ14の増幅器13側から見た入力インピーダンスも変動するため、アイソレータ14の入力端(第1端子a)において高周波信号S2が反射する場合もある。また、この高周波信号S2の反射波成分が大きい場合には、増幅器13に対して悪影響を与えるおそれもある。このため、図2に示すプラズマ処理装置1Aにおける高周波増幅装置3Aのように、アイソレータ14での反射波成分Sr1を検出して、反射波成分Sr1が許容電力以上のときには、スイッチ12Aをオフ状態に移行させて、増幅器13への高周波信号S1の入力を停止させる構成を採用することもできる。以下、この高周波増幅装置3Aおよびプラズマ処理装置1Aについて説明する。なお、高周波増幅装置3およびプラズマ処理装置1と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0033】
高周波増幅装置3Aは、高周波増幅装置3の構成に加えて、本発明における第2反射波検出部としての方向性結合器22および第3制御部23を備え、かつスイッチ12に代えてスイッチ12Aを備えている点でのみ高周波増幅装置3と相違している。この場合、方向性結合器22は、一例として一方向結合器で構成されて、出力ライン21における増幅器13とアイソレータ14との間の部位に配設されている。具体的には、方向性結合器22は、入力端子h、出力端子iおよび反射波検出端子jを備え、入力端子hが出力ライン21を介して増幅器13に接続され、出力端子iが出力ライン21を介してアイソレータ14の入力端(第1端子a)に接続されている。また、方向性結合器22は、その反射波検出端子jが第3制御部23に接続されている。この構成により、方向性結合器22は、出力ライン21における高周波信号S2についてのアイソレータ14からの反射波成分Sr1の電力に比例した電力の検出信号Sdt1を検出して反射波検出端子jから出力する。
【0034】
第3制御部23は、方向性結合器22から出力される検出信号Sdr1を入力すると共に、この検出信号Sdr1の電力と予め設定された許容電力とを比較して、検出信号Sdr1の電力が許容電力未満のときにはスイッチ12をオン状態に移行させ、一方、検出信号Sdr1の電力が許容電力以上のときにスイッチ12をオフ状態に移行させる。スイッチ12Aは、上記のように第3制御部23および第2制御部17によってそのオン・オフ状態が制御される。具体的には、スイッチ12Aは、第3制御部23および第2制御部17の少なくとも一方からオフ状態に移行させる旨の制御が行われたことを条件としてオフ状態に移行し、この条件以外のときにはオン状態に移行する。
【0035】
以上の構成により、このプラズマ処理装置1Aおよび高周波増幅装置3Aによれば、上記したプラズマ処理装置1および高周波増幅装置3の作用効果を維持しつつ、つまりプラズマ発生部4に出力される高周波信号S2の電力を所望の値に精度よく制御しつつ、アイソレータ14の入力端で発生する反射波成分Sr1が許容電力以上となったときには、第3制御部23がスイッチ12Aをオフ状態に移行させることができるため、過大な電力の反射波成分Sr1が増幅器13に入力されて、高周波増幅装置3が破損するといった事態を確実に回避することができる。
【0036】
また、上記の高周波増幅装置3,3Aでは、高周波信号S2の進行波成分Stおよび反射波成分Srについての検出を行う方向性結合器15を1つの双方向性結合器で行う好ましい構成を採用したが、図3に示すように、進行波成分Stを検出する1つの一方向性結合器15a(本発明における進行波検出部)と、反射波成分Srを検出する他の1つの一方向性結合器15b(本発明における第1反射波検出部)とで方向性結合器15を構成してもよいのは勿論である。なお、1つの双方向性結合器で構成した上記の方向性結合器15と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0037】
また、上記の高周波増幅装置3,3Aでは、双方向性結合器や一方向性結合器を用いて高周波信号S2の反射波成分Srを検出しているが、図1,2に示すように、サーキュレータ14aと共にアイソレータ14を構成する終端抵抗14bには、高周波信号S2の反射波成分Srのみが伝達される。したがって、このことに着目して、図4に示すように、終端抵抗14bに代えて例えば20dB程度の減衰量を有するアッテネータ14cを用いて、このアッテネータ14cの出力部を第2制御部17に接続することにより、アイソレータ14を本発明における第1反射波検出部としても機能させて、反射波成分Srを検出する構成を採用することもできる。この場合、方向性結合器15は、一方向性結合器15aで構成する。なお、高周波増幅装置3,3Aと同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。この高周波増幅装置3Bでは、アイソレータ14は、入力した反射波成分Srをアッテネータ14cにより、その多くを吸収しつつ、残りを検出信号Sdrとして第2制御部17に出力する。したがって、この高周波増幅装置3B、およびこの高周波増幅装置3Bをプラズマ処理装置1,1Aに適用したプラズマ処理装置においても、上記した高周波増幅装置3,3Aを備えたプラズマ処理装置1,1Aと同様の作用効果を維持しつつ、つまりプラズマ発生部4に出力される高周波信号S2の電力を所望の値に精度よく制御しつつ、装置構成の簡略化を実現することができる。
【0038】
また、増幅器13への高周波信号S1の入力をスイッチ12,12Aを使用して停止させる(遮断する)構成を採用した例について上記したが、スイッチ12,12Aに代えて、可変アッテネータなどを使用して、高周波信号S1の電力を低減させる構成を採用することもできる。また、スイッチ12,12Aや可変アッテネータを使用する構成に代えて、高周波電源2を制御して、高周波電源2からの高周波信号S1の出力を停止させたり、高周波信号S1の電力を低減させる構成を採用することもできる。
【0039】
また、一例として準マイクロ波帯またはマイクロ波帯の高周波信号S1を生成して高周波増幅装置3に出力することにより、プラズマ発生部4においてプラズマを発生させる例について説明したが、高周波増幅装置3,3A,3Bは、プラズマ処理以外の分野への適用も可能である。この場合、高周波増幅装置3,3A,3Bにおいて、準マイクロ波帯またはマイクロ波帯以外の高周波帯の高周波信号S1(例えば、VHF帯、UHF帯およびミリ波帯のうちのいずれかの高周波帯の高周波信号S1)を増幅させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】高周波増幅装置3を備えたプラズマ処理装置1の構成図である。
【図2】高周波増幅装置3Aを備えたプラズマ処理装置1Aの構成図である。
【図3】個別の一方向性結合器15a,15bで方向性結合器15を構成した高周波増幅装置3,3Aの構成図である。
【図4】アイソレータ14を用いて反射波成分Srを検出する構成の高周波増幅装置3Bの構成図である。
【符号の説明】
【0041】
1,1A プラズマ処理装置
2 高周波電源
3,3A,3B 高周波増幅装置
4 プラズマ発生部
13 増幅器
14 アイソレータ
14a サーキュレータ
14c アッテネータ
15,22 方向性結合器
16 第1制御部
17 第2制御部
21 出力ライン
23 第3制御部
S1,S2 高周波信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VHF帯、UHF帯、準マイクロ波帯、マイクロ波帯、およびミリ波帯のうちのいずれかの高周波帯の高周波信号を増幅して出力ラインに出力する増幅部と、前記出力ラインに介装されて前記増幅部によって当該出力ラインに出力された前記高周波信号の進行波成分を検出する進行波検出部と、当該進行波検出部によって検出された前記進行波成分に基づいて前記増幅部の利得を制御する第1制御部とを備えた高周波増幅装置であって、
前記出力ラインにおける前記増幅部と前記進行波検出部との間の部位にアイソレータが配設されている高周波増幅装置。
【請求項2】
前記高周波信号の反射波成分を検出する第1反射波検出部と、
前記第1反射波検出部によって検出された前記反射波成分が所定電力以上のときに前記高周波信号の前記増幅部への入力を停止または当該高周波信号の当該増幅部への入力電力を低下させる第2制御部とを備えている請求項1記載の高周波増幅装置。
【請求項3】
前記出力ラインにおける前記増幅部と前記アイソレータとの間に配設されて前記高周波信号の反射波成分を検出する第2反射波検出部と、
前記第2反射波検出部によって検出された前記反射波成分が所定電力以上のときに前記高周波信号の前記増幅部への入力を停止または当該高周波信号の当該増幅部への入力電力を低下させる第3制御部とを備えている請求項1または2記載の高周波増幅装置。
【請求項4】
前記アイソレータは、第1端子が前記出力ラインを介して前記増幅部に接続されると共に第2端子が前記出力ラインを介して前記進行波検出部に接続され、かつ第3端子がアッテネータを介して前記第2制御部に接続されたサーキュレータで構成されると共に、前記第1反射波検出部として機能して、前記反射波成分を当該第3端子および当該アッテネータを介して当該第2制御部に出力する請求項2記載の高周波増幅装置。
【請求項5】
前記進行波検出部および前記第1反射波検出部は、1つの双方向性結合器で構成されている請求項2記載の高周波増幅装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の高周波増幅装置と、当該高周波増幅装置に供給する前記高周波信号を生成する高周波信号生成部と、当該高周波増幅装置によって増幅された前記高周波信号を用いてプラズマを発生させるプラズマ発生部とを備えているプラズマ処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−159251(P2009−159251A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334487(P2007−334487)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000214836)長野日本無線株式会社 (140)
【Fターム(参考)】