説明

高周波複合部品

【課題】携帯電話等の無線通信装置の送信回路、受信回路及びアンテナ間の信号経路を制御する高周波複合部品であって、回路構成が簡単で送信信号の挿入損失に優れ、小型軽量で低消費電力な高周波複合部品を提供する。
【解決手段】送信回路TX、受信回路RX及びアンテナANTとの間に接続され、送信回路TXとアンテナANTとの接続、及び受信回路RXとアンテナANTとの接続を制御する高周波複合部品であって、高周波増幅器4と、高周波増幅器4で増幅された送信信号の一部を分波する方向性結合器5とを具備し、方向性結合器5の主線路6及び副線路7は、電極パターンを有する複数の誘電体層を積層してなる積層体モジュール内に電極パターンにより形成され、高周波増幅器4を構成する電界効果トランジスタは積層体モジュール上に搭載されていることを特徴とする高周波複合部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波帯等の高周波帯域で用いられる高周波複合部品に関し、特にディジタル携帯電話等の高周波回路において、送信回路、受信回路及びアンテナ間の信号経路を制御するための高周波複合部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の無線通信装置、例えば携帯電話の普及には目を見張るものがあり、携帯電話の機能及びサービスの向上が益々図られている。携帯電話を例にとると、携帯電話のシステムとしては、例えば主に欧州で盛んなEGSM(Extended Global System for Mobile Communications)方式及びDCS1800 (Digital Cellular System 1800)方式、米国で盛んなPCS(Personal Communications Services)方式、日本で採用されているPDC(Personal Digital Cellular)方式等の様々なシステムがある。このようなディジタル方式の通信システムの携帯電話では、送信回路とアンテナとの接続及び受信回路とアンテナとの接続を切換えるのに高周波スイッチを用いる。
【0003】
高周波スイッチの一例は特開平2-108301号に開示されている。この高周波スイッチは、送信回路とアンテナとの間に配置されたダイオードと、アンテナ回路と受信回路との間に配置されたλ/4移相線路とを有し、λ/4移相線路の受信回路側はダイオードを介して接地されており、もって各ダイオードに流れるバイアス電流により信号経路を切換えるλ/4型スイッチ回路を構成している。
【0004】
昨今の携帯電話の急激な普及にともない、特に先進国の主要な大都市部においては各システムに割り当てられた周波数帯では利用者を賄い切れず、接続が困難であったり、通話途中で接続が切断する等の問題が生じている。そこで利用者が複数のシステムを利用できるようにして、実質的に利用可能な周波数の増加を計り、さらにサービス区域の拡充や各システムの通信インフラの有効活用することが提唱されている。
【0005】
このような事情下で新たなシステムを有する携帯電話として、デュアルバンド携帯電話、トリプルバンド携帯電話等の提案がなされている。通常の携帯電話が一つの送受信系のみを取り扱うのに対し、デュアルバンド携帯電話は2つの送受信系を取り扱い、トリプルバンド携帯電話は3つの送受信系を取り扱う。これにより、利用者は複数のシステムの中から都合の良い送受信系を選択して利用することができる。デュアルバンド携帯電話及びトリプルバンド携帯電話においては、一つのアンテナを送受信共用として双方向の通信が可能なように、アンテナと送信回路又は受信回路の接続を時分割で切換える高周波スイッチを用いる。
【0006】
本発明者等は既に特開平11-225089号及び特開平11-313003号において、複数の周波数領域の高周波信号を分波する分波器と高周波スイッチとを組み合わせることにより、複数の通信システムの送信回路と受信回路を切り換える機能を具備した複数の通信方式を利用できる高周波スイッチとして、積層体モジュールに分波器、高周波スイッチ回路等を一体化した高周波スイッチモジュールを提案した。
【0007】
図21は、特開平2-108301号に開示された高周波スイッチの等価回路を示す。アンテナ端子ANTと送信回路TXを接続するには、電源供給手段(コントロール回路)から端子VC1に正の電圧が与えられる。コントロール回路から与えられた正の電圧は、コンデンサ70,71,73,74,79によって直流分がカットされ、ダイオード77,78を含む回路に印加され、ダイオード77,78がON状態となる。ダイオード77がON状態となると、送信回路TXと接続点IP1の間のインピーダンスが低くなる。またON状態となったダイオード78により分布定数線路75が高周波的に接地されることにより共振し、接続点IP1側から見た受信回路RXのインピーダンスは非常に大きくなる。その結果、送信回路TXからの送信信号は受信回路RXに漏洩することなくアンテナ端子ANTに伝送される。
【0008】
しかしながら、アンテナ端子ANTと送信回路TXとの間に直列に配置されたダイオード77はON状態で抵抗として作用するため、送信信号の損失が大きくなってしまうという問題がある。また送信時にはダイオードにバイアス電流を流すことが必要であり、その分バッテリーが消費されるため、携帯電話の通話可能時間が短くなり、低消費電力化が困難となる。さらにダイオードやDC成分カット用にコンデンサ等の構成部品が必要であるので、高周波スイッチモジュールを構成した積層体モジュールは大きくなり、それを含むデュアルバンド以上の無線通信装置の小型・軽量化も困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って本発明は、携帯電話等の無線通信装置の送信回路、受信回路及びアンテナ間の信号経路を制御する高周波複合部品であって、回路構成が簡単で送信信号の挿入損失に優れ、小型軽量で低消費電力な高周波複合部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、鋭意研究の結果、本発明者らは、送信回路、受信回路及びアンテナとの間に接続され、前記送信回路と前記アンテナとの接続、及び前記受信回路と前記アンテナとの接続を制御する高周波複合部品において、高周波増幅器と、前記高周波増幅器で増幅された送信信号の一部を分波する方向性結合器とを設け、前記方向性結合器の主線路及び副線路を、電極パターンを有する複数の誘電体層を積層してなる積層体モジュール内に電極パターンにより形成し、前記高周波増幅器を構成する電界効果トランジスタを前記積層体モジュール上に搭載することにより、回路構成が簡単で送信信号の挿入損失に優れ、小型軽量で低消費電力な高周波複合部品が得られることを発見し、本発明に想到した。
【0011】
すなわち、本発明は具体的に以下の手段により達成することができる。
(1) 送信回路、受信回路及びアンテナとの間に接続され、前記送信回路と前記アンテナとの接続、及び前記受信回路と前記アンテナとの接続を制御する高周波複合部品であって、
高周波増幅器と、前記高周波増幅器で増幅された送信信号の一部を分波する方向性結合器とを具備し、前記方向性結合器の主線路及び副線路は、電極パターンを有する複数の誘電体層を積層してなる積層体モジュール内に電極パターンにより形成され、前記高周波増幅器を構成する電界効果トランジスタは前記積層体モジュール上に搭載されていることを特徴とする高周波複合部品。
(2) 上記(1) に記載の高周波複合部品であって、前記方向性結合器の副線路に検波ダイオード及び平滑コンデンサを有する検波器が接続されており、前記検波ダイオードは前記積層体モジュール上に搭載されていることを特徴とする高周波複合部品。
(3) 上記(2) に記載の高周波複合部品であって、前記平滑コンデンサは前記積層体モジュール内で前記誘電体層を挟んで対向する電極パターンにより形成されていることを特徴とする高周波複合部品。
(4) 上記(2) 又は(3) に記載の高周波複合部品であって、前記検波器にアッテネータが接続されており、前記アッテネータは前記積層体モジュール上に搭載したチップ抵抗により構成されていることを特徴とする高周波複合部品。
(5) 上記(1)〜(4) のいずれかに記載の高周波複合部品であって、前記高周波増幅器は電界効果トランジスタを有する増幅回路と、前記増幅回路の入力側に接続された入力整合回路と、前記増幅回路の出力側に接続された出力整合回路とを具備し、前記入力整合回路及び前記出力整合回路はそれぞれコンデンサ及びインダクタを有し、前記インダクタ及び前記コンデンサは前記電極パターンにより積層体に構成されていることを特徴とする高周波複合部品。
(6) 上記(1)〜(5) のいずれかに記載の高周波複合部品であって、前記電界効果トランジスタのバンプを前記積層体上の電極に接合することを特徴とする高周波複合部品。
(7) 上記(1)〜(6) のいずれかに記載の高周波複合部品であって、前記高周波増幅器から発生する熱を逃がすために前記高周波増幅器直下の前記積層体モジュールにビアホールを設けることを特徴とする高周波複合部品。
(8) 上記(1)〜(7) のいずれかに記載の高周波複合部品であって、前記方向性結合器は移相回路として機能し、前記方向性結合器及び前記高周波増幅器を有する送信信号制御手段の前記アンテナ側から見たインピーダンスZをZ=R+jXで表すと、前記高周波増幅器の停止時に受信信号の周波数帯で、Rが150Ω以上であり、Xの絶対値が100Ω以上であることを特徴とする高周波複合部品。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の好ましい実施例を、添付図面を参照して以下詳細に説明する。説明の簡略化のために、第1の信号周波数帯f1としてEGSM(送信周波数:880〜915MHz、受信周波数:925〜960MHz)を例にとるが、DCS1800システム(送信TX:1710〜1785MHz、受信RX:1805〜1880MHz)、PCSシステム(送信TX:1850〜1910MHz、受信RX:1930〜1990MHz)等の他の通信システムに適用することも当然可能である。
【0013】
[1] 高周波複合部品の構成
図1は本発明の高周波複合部品(高周波スイッチモジュールと言うこともできる)の一例を示すブロック図である。この高周波複合部品は、シングルバンド対応の高周波複合部品であり、接続点IP1と送信回路TXとの間に送信信号制御手段2を有するとともに、接続点IP1と受信回路RXとの間に受信信号制御手段3を有する。
【0014】
(A) 送信信号制御手段
送信信号制御手段2は、図2に示すように、接続点IP1と送信回路TXとの間に接続された第1の移相回路5と、高周波増幅器4とを具備する。高周波増幅器4は、動作時に送信信号の周波数帯でほぼ50Ωであるが、停止時に受信信号の周波数帯でほぼ短絡状態となるインピーダンス特性を有する。高周波増幅器4と接続する第1の移相回路5は接続点IP1側から見た送信信号制御手段2のインピーダンスをほぼ開放とするために、位相の移動角度を調整する。
【0015】
「ほぼ短絡状態」とは、インピーダンスZをZ=R+jXで表すときの実数部Rを15Ω以下に調整した場合、及び虚数部Xの絶対値を15Ω以下に調整した場合として定義する。これをスミスチャート上で表すと、図6の左端の斜線部分が「ほぼ短絡状態」に該当する。また「ほぼ開放状態」とは、インピーダンスZをZ=R+jXで表すときの実数部Rを150Ω以上に調整した場合、及び虚数部Xの絶対値を100Ω以上に調整した場合として定義する。これをスミスチャート上で表すと、図6の右端の斜線部分が「ほぼ開放状態」に該当する。
【0016】
高周波増幅器4は、停止時に受信信号の周波数帯でほぼ短絡状態となる(図6のスミスチャート上で左側の斜線領域に入る)ように調整される。第1の移相回路5は、接続点IP1側から見た送信信号制御手段2のインピーダンスが図6のスミスチャート上で右側の斜線領域に入るように調整される。このような構成により、送信信号制御手段に漏れる受信信号を極めて小さくすることができる。
【0017】
図3は移相回路5の等価回路の一例を示す。移相回路5は、受信信号の周波数帯域(受信周波数:925〜960MHz)で線路長がほぼλ/4となる分布定数線路6により構成されている。この移相回路は構造が簡単であるという利点を有する。図7(a) は図3の送信信号制御手段2において接続点P0から見た高周波増幅器4のインピーダンス特性Zp0を示し、図7(b) は接続点IP1から見た送信信号制御手段2のインピーダンス特性Zip1 TXを示す。このとき高周波増幅器4は停止状態にある。図7(a) 、(b)から分かるように、高周波増幅器4のインピーダンス特性は受信信号の周波数帯域でほぼ短絡状態にあるが、第1の移相回路5により接続点IP1から見た送信信号制御手段2のインピーダンス特性はほぼ開放状態になる。
【0018】
図4は送信信号制御手段の一例のブロック図を示す。この移相回路5では、分布定数線路6の前後にコンデンサ7、8が接続されている。移相回路5は、分布定数線路6のみからなる場合よりも線路長を短くできるとともに、ローパスフィルタとして機能し、高周波増幅器4からの高調波信号を減衰させることができるという利点を有する。
【0019】
図5は高周波複合部品の本発明の移相回路5の別の例を示す。移相回路5は、分布定数線路6を主線路とし、分布定数線路7を副線路とした方向性結合器である。この移相回路5により、高周波増幅器4からの送信信号の一部は移相回路5(方向性結合器)を構成する分布定数線路7の一端から取り出され、抵抗9,10,11を有するアッテネータ16で減衰され、検波器15に入力される。アッテネータ16は、取り出された送信信号の一部(高周波信号)を後段の回路で取り扱える程度の電力まで減衰させる。検波器15において、上記送信信号の一部は検波ダイオード12により整流された後、平滑コンデンサ13及び負荷抵抗14により電圧変換された検波信号となり、制御回路16に入力される。検波信号は所定の送信出力レベルを表す制御信号と比較され、この差を小さくするようにドライバアンプ81にフィードバックされ、目標の送信出力レベルに制御される。
【0020】
本発明において、図18に示すように、第1の移相回路を構成する分布定数線路及びコンデンサを、誘電体からなる複数のグリーンシート上に電極パターンにより形成し、グリーンシートを積層・焼結して一体的な積層体モジュール170を構成し、ワンチップ化した高周波スイッチモジュールとするのが好ましい。
【0021】
アッテネータを積層体モジュールに搭載したチップ抵抗により構成すれば、移相回路とアッテネータを接続する配線を積層体モジュールに設けることができる。この場合、高周波スイッチモジュールが搭載される回路基板にアッテネータを接続する場合と比べて、高周波複合部品全体の寸法を小さくできる。また積層体モジュールにチップ抵抗を搭載して負荷抵抗14とし、積層体モジュール内で誘電体層を挟んで対向するコンデンサ電極により平滑コンデンサ13を形成し、かつ積層体モジュールに検波ダイオード12を搭載することにより検波器15を構成すれば、回路基板に積層体モジュールと別個に検波器15を接続する場合と比べて、高周波複合部品全体の寸法を小さくできる。
【0022】
高周波増幅器4を構成するトランジスタやMMIC(Microwave Monolithic Integrated Circuit)は消費電力が大きく、発熱量が大きいので、検波器15に温度変動を保証するための感温素子(サーミスタ)を設けて、検波器15の温度特性を管理しても良い。
【0023】
図8は高周波増幅器4の等価回路の一例を示す。高周波増幅器4は、インダクタ19と、コンデンサ18を有する入力整合回路23と、インダクタ20と、コンデンサ21を有する出力整合回路26と、抵抗、コンデンサ及びインダクタからなる発振防止用安定化回路24,25と、電界効果トランジスタ27とを有する。
【0024】
高周波増幅器4を構成する電界効果トランジスタ27を積層体モジュール170に搭載し、入力整合回路23及び出力整合回路26を構成するインダクタを分布定数線路により形成し、かつコンデンサを積層体モジュールの内部で誘電体層を挟んで互いに対向するコンデンサ電極により形成すれば、装置全体の寸法を小さくできる。
【0025】
また図20に示すように、積層体モジュール170にキャビティ202を設けて、高周波増幅器を構成するトランジスタ27やガリウム砒素GaAsからなる半導体チップ201をキャビティ202内に搭載してもよい。キャビティ202の開口部を適宜エポキシ樹脂等のプラスチックにより封止したり、キャップ203で覆えば、積層体モジュール170の上面を平坦にでき、積層体モジュール170の取り扱いが容易となるとともに、高周波増幅器の特性が安定化する。
【0026】
高周波増幅器4を構成するトランジスタやMMICは消費電力が大きいために発熱量が大きく、また高周波になるほど接地インダクタンスが素子特性に大きな影響を与える。このため放熱を良くすることが重要であるとともに、十分に低い接地インダクタンスを実現することが重要となる。そこで高周波増幅器4直下の積層体モジュールにビアホールを設け、それを介して高周波増幅器4から発生する熱を回路基板に逃がすようにしても良い。また高い放熱性と低い接地インダクタンスを実現する方法として、半導体チップに形成されたトランジスタ電極上にバンプとよばれる金属柱を形成し、半導体チップのバンプと回路基板上の電極とを接合するフリップチップボンディンングを用いても良い。
【0027】
(B) 受信信号制御手段
図9に示すように、受信信号制御手段3は、接続点IP1と受信回路RXとの間に接続された第2の移相回路50と、帯域通過フィルタ51とを具備する。帯域通過フィルタ51と接続する第2の移相回路50は、接続点IP1側から見た受信信号制御手段3のインピーダンス特性をほぼ開放状態にするために、高周波信号の位相の移動角度を調整する。
【0028】
図10は、第2の移相回路が分布定数線路により構成された移相回路50の等価回路の一例を示す。帯域通過フィルタ51として、弾性表面波フィルタ、積層型誘電体フィルタ、同軸共振器フィルタ又はバルク波フィルタを使用できる。図11(a) は弾性表面波フィルタ(SAW)のインピーダンス特性Zp2を示す。弾性表面波フィルタは、受信信号の受信周波数通過帯でほぼ50Ωのインピーダンス特性を示しており、送信信号の送信周波数では低インピーダンスの状態になっている。移相回路50は送信信号の周波数帯域(送信周波数:880〜915MHz)で線路長がほぼ5λ/16となる分布定数線路52により構成されており、図11(b) に示すように、受信信号制御手段3のインピーダンス特性Zip1 RXは送信信号の周波数帯域においてほぼ開放状態となる。
【0029】
図13は受信信号制御手段3と送信信号制御手段2とを組み合わせた高周波複合部品の等価回路を示す。このような構成により、送信信号が受信信号制御手段に漏れるのを極めて少なくできるとともに、その構成を極めて簡略化できる。またダイオードを用いないので、送信回路TXとアンテナANTとの間の挿入損失が低減し、電力消費も少なくて済む。
【0030】
図12は受信信号制御手段3の等価回路の他の例を示す。受信信号制御手段3では、接続点IP1とRXとの間に分布定数線路55が接続し、受信回路RX側の分布定数線路55の一端にダイオード57のカソードが接続し、ダイオード57のアノードとグランドとの間にコンデンサ58が接続している。またダイオード57のアノードとコントロール回路VC1との間にインダクタ59及び抵抗60からなる直列回路が接続している。抵抗60はダイオード57をON状態とする時に流れる電流を調節する。インダクタ59はダイオード57のアノード側から見たコントロール回路VC1のインピーダンスを大きくするが、インダクタ59を省略しても良い。本実施例では、分布定数線路55はその共振周波数がEGSMの送信信号の周波数帯域内となる線路長を有する。
【0031】
図14は受信信号制御手段3と送信信号制御手段2とを組み合わせた高周波複合部品の等価回路図の一例を示す。なお高周波複合部品は電流を地絡する電流経路(図示せず)を備えている。この高周波スイッチモジュールにおいて、ダイオード57はコントロール回路VC1からの順バイアス電圧によりONし、分布定数線路55がダイオード57により接地されることにより共振し、接続点IP1側から見た受信回路RXのインピーダンスは非常に大きくなるため、送信回路TXの送信信号は受信回路RXに伝達されない。
【0032】
(C) 動作
本発明の高周波スイッチモジュールは、高周波増幅器4の動作を利用して送受信系の送信又は受信を選択する。図13及び図14に示す等価回路を有する高周波複合部品について、動作を以下詳細に説明する。
【0033】
(1) 図13の高周波複合部品
(a) EGSM TXモード
送信回路TXとアンテナANTとを接続する場合、高周波増幅器4を動作させる。高周波増幅器4のインピーダンス特性は動作時がほぼ50Ωであり、送信信号は分布定数線路を通過して接続点IP1に至る。送信信号の周波数帯域での接続点IP1から見た受信信号制御手段3のインピーダンスは分布定数線路52と弾性表面波フィルタ51とによりほぼ開放状態(高インピーダンス)となっており、送信信号は受信回路へ漏洩することなくアンテナANTへ導かれる。
【0034】
(b) EGSM RXモード
アンテナANTと受信回路RXを接続する場合、高周波増幅器4を停止させる。高周波増幅器4のインピーダンス特性は、停止時に受信信号の周波数においてほぼ短絡状態であるが、高周波増幅器4に接続された分布定数線路5により、受信信号の周波数帯域での接続点IP1から見た送信信号制御手段2のインピーダンスはほぼ開放状態(高インピーダンス)である。そのため受信信号が送信回路TXへ漏洩することはない。受信信号制御手段を構成する弾性表面波フィルタ51のインピーダンス特性は、受信信号の周波数でほぼ50Ωである。そのため受信信号は分布定数線路52及び弾性表面波フィルタ51を通過し、受信回路RXに至る。
【0035】
このように本発明の高周波複合部品では、極めて簡単な構成で高いアイソレーション特性を実現できるとともに、送信系及び受信系ともにダイオードを削減することができるので、送信信号の挿入損失を向上することができる。また図21に示すような従来の高周波複合部品に必要であったダイオード77、78や、コンデンサ70、71、74、79、インダクタ76等を省略できるので、高周波複合部品を小型化できる。その上従来の回路基板上に個別に設けられていた高周波増幅器4や帯域通過フィルタ51を一体化できるので、高周波複合部品全体の寸法をさらに小さくできる。その結果、高周波複合部品を具備する無線通信装置を小型・軽量化することもできる。
【0036】
(2) 図14の高周波複合部品
(a) EGSM TXモード
送信回路TXとアンテナANTとを接続する場合、高周波増幅器4を動作させるとともに、コントロール回路VC1から正の電圧を与えてダイオード57をONさせる。高周波増幅器4のインピーダンス特性は動作時がほぼ50Ωであり、送信信号は分布定数線路を通過して接続点IP1に至る。コントロール回路VC1から与えられた正の電圧は、コンデンサ56,58,61と高周波増幅器4のコンデンサ22によって直流分がカットされてダイオード57に印加され、ダイオード57がON状態となる。するとダイオード57とコンデンサ58は分布定数線路55が高周波的に接地されることにより共振し、接続点IP1側から見た受信回路RXのインピーダンスは非常に大きくなり、送信信号は受信回路へ漏洩することなくアンテナANTへ導かれる。
【0037】
(b) EGSM RXモード
アンテナANTと受信回路RXを接続する場合、高周波増幅器4を停止させるとともに、コントロール回路VC1に0の電圧を与える。高周波増幅器4のインピーダンス特性は、停止時に受信信号の周波数においてほぼ短絡状態であるが、高周波増幅器4に接続された分布定数線路5により、受信信号の周波数帯域での接続点IP1側から見た送信信号制御手段2のインピーダンスはほぼ開放状態(高インピーダンス)であり、受信信号は送信回路TXへ漏洩することがない。コントロール回路VC1に0の電圧が与えられることにより、ダイオード57がOFF状態となる。OFF状態となったダイオード57によって、分布定数線路55を介して接続点IP1と受信回路RXが接続され、受信信号は送信回路TXに漏洩することなく受信回路RXに伝送される。
【0038】
このように本発明の高周波複合部品では、極めて簡単な構成で高いアイソレーション特性を実現できるとともに、送信系においてダイオードを削減することができるので、送信信号の挿入損失を向上することができる。また従来の高周波スイッチモジュールで必要であったダイオード77等を使用することがないので、高周波スイッチモジュールを小型化できる。また従来回路基板上に個別に設けてきた高周波増幅器4を一体化できるので、装置全体の寸法を小さくでき、もって高周波複合部品を具備する無線通信装置を小型・軽量化することもできる。
【0039】
[2] 高周波複合部品の具体例
図15は本発明の好ましい実施例による高周波複合部品の一例を示すブロック図であり、図17は本発明の好ましい実施例による高周波複合部品の一例の等価回路を示す図である。この例は、複数の異なる送受信系の送信回路と受信回路を切換えるデュアルバンド用の高周波複合部品に関する。説明の簡略化のために、第1の信号周波数帯f1としてEGSM(送信周波数:880〜915MHz、受信周波数:925〜960MHz)、第2の信号周波数帯f2としてDCS1800システム(送信TX:1710〜1785MHz、受信RX:1805〜1880MHz)を例にとる。
【0040】
(A) 第1及び第2のフィルタ回路
アンテナANTと接続する第1及び第2のフィルタ回路101、102は分布定数線路とコンデンサで構成されている。EGSMの送受信信号を通過させるがDCS1800の送受信信号を減衰させる第1のフィルタ回路101として、ローパスフィルタを使用し、DCS1800の送受信信号を通過させるがEGSMの送受信信号を減衰させる第2のフィルタ回路102として、ハイパスフィルタを使用する。
【0041】
ローパスフィルタ101は、分布定数線路401とコンデンサ403を並列接続し、グランドとの間にコンデンサ404を接続し、分布定数線路402とコンデンサ405を並列接続し、さらにグランドとの間にコンデンサ406を接続して構成される。ハイパスフィルタ102は、分布定数線路407とコンデンサ408を並列接続し、さらにグランドとの間に分布定数線路409を配置し、分布定数線路407とコンデンサ408にコンデンサ410を直列に接続して構成される。このような構成により、第1の送受信系と第2の送受信系の受信信号を分波することができる。第1及び第2のフィルタ回路101,102としては、前記構成の他に、下記(a) 〜(h) の構成も採用できる。
(a) 第1のフィルタ回路101がローパスフィルタからなり、第2のフィルタ回路102がノッチフィルタからなる構成。
(b) 第1のフィルタ回路101がノッチフィルタからなり、第2のフィルタ回路102がバンドパスフィルタからなる構成。
(c) 第1のフィルタ回路101がローパスフィルタからなり、第2のフィルタ回路102がバンドパスフィルタからなる構成。
(d) 第1のフィルタ回路101がノッチフィルタからなり、第2のフィルタ回路102がノッチフィルタからなる構成。
(e) 第1のフィルタ回路101がノッチフィルタからなり、第2のフィルタ回路102がハイパスフィルタからなる構成。
(f) 第1のフィルタ回路101がバンドパスフィルタからなり、第2フィルタ回路102がバンドパスフィルタからなる構成。
(g) 第1のフィルタ回路101がバンドパスフィルタからなり、第2のフィルタ回路102がノッチフィルタからなる構成。
(h) 第1のフィルタ回路101がバンドパスフィルタからなり、第2のフィルタ回路102がハイパスフィルタからなる構成。
(B) 信号経路制御回路
【0042】
(1) EGSM側の信号経路制御回路
第1及び第2のフィルタ回路101、102の後段には、それぞれ第1の信号経路制御回路SW1及び第2の信号経路制御回路SW2が配置されており、EGSMの送信回路TX1と受信回路RX1とを切換える第1の信号経路制御回路SW1は、高周波増幅器、ダイオード及び分布定数線路を主構成とし、DCS1800の送信回路TX2と受信回路RX2とを切換える第2の信号経路制御回路SW2は、ダイオードと分布定数線路を主構成としている。
【0043】
EGSMの送信回路TX1と受信回路RX1とを切り換える第1の信号経路制御回路SW1は、ダイオード57と、2つの分布定数線路5,55と、高周波増幅器4とを主構成とする。分布定数線路5はEGSMの送受信信号の信号経路において第1の接続点IP1と送信回路TX1との間に配置され、分布定数線路5の後段に高周波増幅器4が直列に接続されている。分布定数線路5はEGSMの受信信号の周波数帯域でほぼλ/4となる線路長を有する。高周波増幅器4は動作時がほぼ50Ωで停止時がほぼ短絡となるインピーダンス特性を有する。第1の接続点IP1とRX1と間には分布定数線路55が接続し、受信回路RX1側の分布定数線路55の一端にダイオード57のカソードが接続し、ダイオード57のアノードとグランドとの間にコンデンサ58が接続し、ダイオード57のアノードとコントロール回路VC1との間に、インダクタ59及び抵抗60からなる直列回路が接続している。分布定数線路55は、その共振周波数がEGSMの送信信号の周波数帯域内となる線路長を有する。
【0044】
EGSMの受信信号を受信回路RX1に送る場合、分布定数線路5がなければ、高周波増幅器4の停止時のインピーダンス特性がほぼ短絡となっているため、高周波増幅器4に受信信号が吸収されてしまうが、分布定数線路5があるために第1の接続点IP1から見たインピーダンスはほぼ開放状態となる。このため受信信号は受信回路RX1に出力される。
【0045】
図17には示していないが、高周波増幅器4は直流成分を遮断するためのコンデンサを有する。この構成により、高周波増幅器4からの直流成分が受信回路RX1に流れ込むことがなく、またコントロール回路VC1からダイオード57をONさせるために印可される電圧の直流成分が送信回路TX1に流れ込むこともない。
【0046】
(C) DCS1800側信号経路制御回路
DCS1800の受信回路RX2と送信回路TX2とを切り換える信号経路制御回路SW2は、2つのダイオード306,309と、2つの分布定数線路301,307を主構成とする。ダイオード306はDCS1800の送受信信号が入出力する第2の接続点IP2と送信回路TX2との間に配置され、接続点IP2にアノードが接続し、ダイオード306のカソードとグランドとの間に分布定数線路301が接続している。接続点IP2と受信回路RX2との間には分布定数線路307が接続し、受信回路RX2側の分布定数線路307の一端にダイオード309のカソードが接続し、ダイオード309のアノードとグランドとの間にコンデンサ310が接続し、ダイオード309のアノードとコントロール回路VC2との間に、インダクタ311及び抵抗312からなる直列回路が接続している。分布定数線路301はコンデンサ302との共振周波数がDCS1800の送信信号の周波数帯域内となる線路長を有する。
【0047】
送信回路TX2と接続点IP2との間にはローパスフィルタ回路が配置されている。このローパスフィルタ回路は、分布定数線路305と、コンデンサ302,303,304により構成されたπ型のローパスフィルタであるのが好ましい。ローパスフィルタ回路は信号経路制御回路を構成する素子間に複合的に構成したものであるが、信号経路制御回路の後段又は前段にローパスフィルタ回路を配置しても良い。
【0048】
第2の送信回路TX2と第2のフィルタ回路102とを接続する場合、コントロール回路VC2から正の電圧が与えられる。コントロール回路VC2から与えられた正の電圧は、コンデンサ300,308,310,304,303,302,410により直流分がカットされ、ダイオード306,309を含む回路に印加され、ダイオード306、309がON状態となる。ダイオード306がON状態となると、第2の送信回路TX2と接続点IP2との間のインピーダンスが低くなる。またON状態となったダイオード309及びコンデンサ310により、分布定数線路307が高周波的に接地されて共振し、接続点IP2側から見た第2の受信回路RX2のインピーダンスは非常に大きくなる。そのため第2の送信回路TX2からの送信信号は第2の受信回路RX2に漏洩することなく、第2のフィルタ回路102に伝送される。
【0049】
第2の受信回路RX2と第2のフィルタ回路102とを接続する場合、コントロール回路VC2に0の電圧が与えられ、ダイオード306、309がOFF状態となる。OFF状態となったダイオード309により、分布定数線路307を介して接続点IP2と第2の受信回路RX2が接続される。またダイオード306がOFF状態となることにより、接続点IP2側から見た第2の送信回路TX2のインピーダンスは大きくなる。そのため第2のフィルタ回路102からの受信信号は第2の送信回路TX2に漏洩することなく、第2の受信回路RX2に伝送される。
【0050】
上記構成の高周波信号経路制御は、表1に示すようにコントロール回路VC1,VC2と高周波増幅器の動作状態を制御し、EGSMとDCS1800の送受信モードを変更する。
【0051】
【表1】

【0052】
(D) 高周波複合部品の積層構造
図18は本実施例の高周波複合部品の平面図であり、図19は図18の積層体モジュールを構成する各層の構成を示す展開図である。本実施例では、第1及び第2のフィルタ回路、ローパスフィルタ回路、信号経路制御回路の分布定数線路と、高周波増幅器の整合回路のインダクタ、コンデンサを積層体モジュール内に構成し、ダイオード、高周波増幅器の半導体チップや積層体モジュール内に内蔵することができない高容量値のコンデンサや、抵抗、インダクタをチップ部品として積層体モジュール上に搭載することにより、ワンチップ化したデュアルバンド用の高周波複合部品を構成する。
【0053】
この積層体モジュールは、低温焼成が可能なセラミック誘電体材料からなり、厚さが10μm〜500μmのグリーンシートを作製し、各グリーンシート上にAgを主体とする導電ペーストを印刷することにより所望の電極パターンを形成し、電極パターンを有する複数のグリーンシートを積層して一体化し、一体焼成することにより製造することができる。ライン電極の幅は主として100μm〜400μmとするのが好ましい。積層体モジュールの内部構造を積層順に説明する。
【0054】
下層のグリーンシート13上には、グランド電極120がほぼ全面に形成されており、また側面に形成される端子電極に接続するための接続部が設けられている。
【0055】
高周波増幅器の入力整合回路及び出力整合回路を構成するコンデンサ用の電極122,123とライン電極121が形成されたグリーンシート12、5つのライン電極126,127,128,129,130とコンデンサ用の電極124,125が形成されたグリーンシート11、及び4つのライン電極47,48,133,134が形成されたグリーンシート10をグリーンシート13上に順次積層する。その上に、5つのスルーホール電極(図中黒丸で示す)が形成されたグリーンシート9を積層し、その上に5つのスルーホール電極とグランド電極32が形成されたグリーンシート8を積層する。
【0056】
2つのグランド電極120,32に挟まれる領域内でライン電極は接続される。具体的には、ライン電極126と134はスルーホール電極で接続されて分布定数線路5の一部を構成し、ライン電極129と133はスルーホール電極で接続されて分布定数線路55を構成し、ライン電極128と48はスルーホール電極で接続されて分布定数線路307を構成し、ライン電極127と47はスルーホール電極で接続されて分布定数線路301を構成する。ライン電極121は高周波増幅器4の出力整合回路26の分布定数線路20を構成し、コンデンサ用電極122とグランド電極120とは出力整合回路26のコンデンサ21を構成し、コンデンサ用電極123とグランド電極120とは高周波増幅器4の入力整合回路23のコンデンサ18を構成し、コンデンサ用電極122とコンデンサ用電極124とは高周波増幅器4のDCカットコンデンサ22を構成し、コンデンサ用電極123とコンデンサ用電極125とは高周波増幅器4のDCカットコンデンサ17を構成する。ライン電極130は入力整合回路23の分布定数線路19を構成する。
【0057】
本実施例では、高周波増幅器4の入力整合回路23及び出力整合回路26のコンデンサを積層体モジュールに内蔵しているが、微調整が必要な場合には前記コンデンサをチップコンデンサとして積層体モジュール上に搭載し、適宜所望の容量値を選択できるようにしても良い。
【0058】
グリーンシート8上に積層するグリーンシート7には、コンデンサ用の電極136,137,138,139,140,141,142,143が形成されている。その上に積層するグリーンシート6にもコンデンサ用の電極144,145,147とグランド電極146が形成されている。その上に積層するグリーンシート5には、コンデンサ電極148,149,150が形成されている。
【0059】
その上に、ライン電極151,152,153,154,155が形成されたグリーンシート4、ライン電極156,157,158と接続ラインが形成されたグリーンシート3、及びスルーホール電極が形成されたグリーンシート2を順次積層する。最上部のグリーンシート1には、搭載素子接続用のランドが形成されている。
【0060】
上側のグランド電極32が形成されたグリーンシート8の上に積層されたグリーンシート7のコンデンサ用電極136,137,138,139,140,141,143は、グランド電極32との間でコンデンサを形成する。具体的には、コンデンサ用電極143はコンデンサ404を、コンデンサ用電極136はコンデンサ406を、コンデンサ用電極140はコンデンサ58を、コンデンサ用電極138はコンデンサ302を、コンデンサ用電極139はコンデンサ303を、コンデンサ用電極141はコンデンサ310をそれぞれ構成する。
【0061】
グリーンシート5,6,7に形成されたコンデンサ電極は互の間で容量を形成する。具体的には、コンデンサ電極142と147の間でコンデンサ410を構成し、コンデンサ電極147と150の間でコンデンサ408を構成し、コンデンサ電極137,136と144の間でコンデンサ405を構成し、コンデンサ電極138,139と145の間でコンデンサ304をそれぞれ構成する。さらにライン電極155と158との間の寄生容量で等価回路のコンデンサ403を構成する。
【0062】
グリーンシート3,4では、ライン電極155,158が分布定数線路401を構成し、ライン電極154,157が分布定数線路407を構成し、ライン電極153が分布定数線路409を構成し、ライン電極152,156が分布定数線路305を構成し、ライン電極151が分布定数線路402を構成する。グリーンシート3のライン電極156,157,158以外は配線用のラインである。
【0063】
これらのグリーンシートを圧着し、一体焼成して外形寸法が9.6 mm×5.0 mm×1.0 mmの積層体モジュール100を得る。この積層体モジュール100の側面に端子電極を形成する。この積層体モジュールの上に、図18に示すように、ダイオード57,306,309、トランジスタ27、チップコンデンサ56,308,411、チップインダクタ59,311と、高周波増幅器の安定化回路を構成するコンデンサ、抵抗及びインダクタを搭載する。なおGNDはグランド接続用端子である。
【0064】
この実施例によれば、第1及び第2の信号経路制御回路の分布定数線路を積層体モジュール内に形成する際に、グラント電極で挟まれた領域内に配置している。これにより、信号経路制御回路と分波回路、ローパスフィルタ回路との干渉を防いでいる。グラント電極で挟まれた領域は積層体モジュールの下部に配置されているので、グラント電位が取り易い。またこの実施例では、積層体モジュールの側面に各端子が形成され、面実装可能な構造となっている。側面端子はそれぞれANT端子、DCS 1800のTX2端子、EGSMのTX1端子、EGSMのRX1端子、DCS1800のRX2端子、グラント端子GND及びコントロール端子VC1,VC2である。側面端子の代わりに、スルーホールにより内部配線を積層体モジュールの底面に引き出して、BGA(Ball Grid Array)/LGA(Land Grid Array)等の端子としても良い。
【0065】
本発明の高周波複合部品をデュアルバンド用携帯電話に用いたところ、バッテリーの消費が少なく、また低消費電流の携帯電話が得られることが分かった。送信信号制御手段として高周波増幅器と移相回路を組み合わせたものを有する高周波複合部品であれば、本発明の範囲内である。
【0066】
本発明の高周波複合部品の構造及び動作をEGSM及びDCS1800からなるデュアルバンドシステムについて説明したが、第2の信号経路制御回路の代わりに図16に示すように2つのフィルタを組み合わせたデュプレクサを用いれば、EGSMのようなTDMA方式とW-CDMA(Wideband CDMA)のようなCDMA方式とをデュアル化した高周波複合部品とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の高周波複合部品の一例を示すブロック図である。
【図2】高周波複合部品に用いる送信信号制御手段の一例を示すブロック図である。
【図3】高周波複合部品に用いる送信信号制御手段の他の例の等価回路を示す図である。
【図4】高周波複合部品に用いる送信信号制御手段の他の例の等価回路を示す図である。
【図5】本発明の高周波複合部品の送信信号制御手段の一例の等価回路を示す図である。
【図6】ほぼ短絡状態及びほぼ開放状態のインピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【図7(a)】図3の送信信号制御手段において高周波増幅器が停止時に接続点P0から見た高周波増幅器のインピーダンス特性Zp1を示すスミスチャートである。
【図7(b)】図3の送信信号制御手段において高周波増幅器が停止時に接続点IP1から見た送信信号制御手段のインピーダンス特性Zip1を示すスミスチャートである。
【図8】高周波複合部品に用いる高周波増幅器の一例の等価回路を示す図である。
【図9】高周波複合部品に用いる受信信号制御手段の一例を示すブロック図である。
【図10】高周波複合部品に用いる受信信号制御手段の一例の等価回路を示す図である。
【図11(a)】高周波複合部品に用いる帯域通過フィルタのインピーダンス特性Zp2を示すスミスチャートである。
【図11(b)】高周波複合部品に受信信号制御手段のインピーダンス特性Zip1を示すスミスチャートである。
【図12】高周波複合部品に用いる受信信号制御手段の他の例を示す等価回路である。
【図13】高周波複合部品の一例の等価回路を示す図である。
【図14】高周波複合部品の他の例の等価回路を示す図である。
【図15】デュアルバンド用高周波複合部品の一例を示すブロック図である。
【図16】デュアルバンド用高周波複合部品に用いるデュプレクサの一例を示すブロック図である。
【図17】デュアルバンド用高周波複合部品の一例の等価回路を示す図である。
【図18】本発明のデュアルバンド用高周波複合部品を内蔵した一体型積層体モジュールの外観を示す平面図である。
【図19】本発明のデュアルバンド用高周波複合部品の積層体モジュールを構成する各層の回路構成を示す展開図である。
【図20】本発明の高周波複合部品を内蔵した一体型積層体モジュールの部分断面図である。
【図21】従来の高周波複合部品の等価回路を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信回路、受信回路及びアンテナとの間に接続され、前記送信回路と前記アンテナとの接続、及び前記受信回路と前記アンテナとの接続を制御する高周波複合部品であって、
高周波増幅器と、前記高周波増幅器で増幅された送信信号の一部を分波する方向性結合器とを具備し、前記方向性結合器の主線路及び副線路は、電極パターンを有する複数の誘電体層を積層してなる積層体モジュール内に電極パターンにより形成され、前記高周波増幅器を構成する電界効果トランジスタは前記積層体モジュール上に搭載されていることを特徴とする高周波複合部品。
【請求項2】
請求項1に記載の高周波複合部品であって、前記方向性結合器の副線路に検波ダイオード及び平滑コンデンサを有する検波器が接続されており、前記検波ダイオードは前記積層体モジュール上に搭載されていることを特徴とする高周波複合部品。
【請求項3】
請求項2に記載の高周波複合部品であって、前記平滑コンデンサは前記積層体モジュール内で前記誘電体層を挟んで対向する電極パターンにより形成されていることを特徴とする高周波複合部品。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の高周波複合部品であって、前記検波器にアッテネータが接続されており、前記アッテネータは前記積層体モジュール上に搭載したチップ抵抗により構成されていることを特徴とする高周波複合部品。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の高周波複合部品であって、前記高周波増幅器は電界効果トランジスタを有する増幅回路と、前記増幅回路の入力側に接続された入力整合回路と、前記増幅回路の出力側に接続された出力整合回路とを具備し、前記入力整合回路及び前記出力整合回路はそれぞれコンデンサ及びインダクタを有し、前記インダクタ及び前記コンデンサは前記電極パターンにより積層体に構成されていることを特徴とする高周波複合部品。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の高周波複合部品であって、前記電界効果トランジスタのバンプを前記積層体上の電極に接合することを特徴とする高周波複合部品。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の高周波複合部品であって、前記高周波増幅器から発生する熱を逃がすために前記高周波増幅器直下の前記積層体モジュールにビアホールを設けることを特徴とする高周波複合部品。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の高周波複合部品であって、前記方向性結合器は移相回路として機能し、前記方向性結合器及び前記高周波増幅器を有する送信信号制御手段の前記アンテナ側から見たインピーダンスZをZ=R+jXで表すと、前記高周波増幅器の停止時に受信信号の周波数帯で、Rが150Ω以上であり、Xの絶対値が100Ω以上であることを特徴とする高周波複合部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11(a)】
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【図11(b)】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−44752(P2009−44752A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245802(P2008−245802)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【分割の表示】特願2001−567149(P2001−567149)の分割
【原出願日】平成13年3月15日(2001.3.15)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】