説明

高周波電力分配装置およびそれを用いた基板処理装置

【課題】基板を処理する複数の放電空間毎の処理のばらつきが小さく、パワーロスが小さく、かつ高周波電力を任意の数に均等に分配することができる高周波電力分配装置を提供すること。
【解決手段】高周波電源からの高周波電力を均等に分配して供給する高周波電力分配装置4aは、入力された高周波電力を複数に分岐する分電部材30と、分電部材30で分岐された高周波電力を複数の平行平板電極に伝送する、中心の給電線およびその周囲の接地線からなる同軸伝送線35と、入力側のインピーダンスを調整して電流値を低下させるためのインピーダンス調整機構36とを有し、分電部材30は、板状の導体からなる本体31と、本体31の一方の主面の入力点31aに高周波電力を入力する高周波電力入力部32と、本体31の他方の主面の入力点31aに対応する点を中心とした円周上に等間隔で複数配置された高周波電力出力部33とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つのチャンバ内で複数の基板をプラズマ処理する際に用いることができる高周波電力分配装置およびそれを用いた基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一つのチャンバ内で複数の基板をプラズマ処理する装置としては、チャンバ内に複数対のアノード・カソード電極を設け、チャンバ外に設けられた電源からマッチングボックスを経た後カソード電極の数に分岐された電力導入線を互いに対称状に延びるように設け、それら電力導入線を各カソード電極に接続して高周波電力を供給するものが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
この特許文献1では、具体的には、整合器(マッチングボックス)とカソード電極との間で、2本に分岐された後、それぞれがさらに2本に分岐されるといった多段分岐によりカソード電極の数だけ高周波電力が分配されるようになっている。これにより、特別な調整機構によることなく、チャンバ内における複数の放電空間へ均等に電力供給を行うことができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−196681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、整合器出力部はインピーダンスが低いため、わずかな組み付けなどの差によって大きな電流差につながってしまう。また、多段分岐方式で高周波電力を分配する場合、給電線として同軸ケーブルを用いることができないため、電極毎に投入できる高周波パワーにばらつきが生じる。このため、特許文献1の技術では、実際にはチャンバ内における複数の放電空間の処理にばらつきが生じ、製品の特性差につながってしまう。さらに、低インピーダンス回路に大電流を流すため、発熱によるパワーロスが大きい。さらにまた、2本ずつに分岐していく多段分岐方式の場合には、分岐できる段数が2(nは正の整数)に限定されてしまい、任意の数に分配することができない。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、基板を処理する複数の放電空間毎の処理のばらつきが小さく、パワーロスが小さく、かつ高周波電力を任意の数に均等に分配することができる高周波電力分配装置およびそれを用いた基板処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点では、複数の平行平板電極に高周波電力を供給してプラズマを生成させることにより複数の基板をバッチ式で処理する基板処理装置において、高周波電源からの高周波電力を前記複数の平行平板電極に均等に分配して供給する高周波電力分配装置であって、入力された高周波電力を複数に均等に分岐する分電部材と、前記分電部材で分岐された高周波電力を前記複数の平行平板電極に伝送する、中心の給電線およびその周囲の接地線からなる同軸伝送線と、入力側のインピーダンスを調整して電流値を低下させるためのインピーダンス調整機構とを有し、前記分電部材は、板状の導体からなる本体と、前記本体の一方の主面の入力点に高周波電力を入力する高周波電力入力部と、前記本体の他方の主面の前記入力点に対応する点を中心とした円周上に等間隔で複数配置された高周波電力出力部とを有し、前記同軸伝送線は、前記複数配置された高周波電力出力部にそれぞれ接続され、前記インピーダンス調整機構は、前記高周波電力入力部に設けられていることを特徴とする高周波電力分配装置を提供する。
【0008】
本発明の第2の観点では、複数の基板をプラズマによりバッチ式で処理する基板処理装置であって、基板毎に前記プラズマを発生させるための複数の平行平板電極と、前記複数の平行平板電極の高周波電力印加電極に高周波電力を供給する高周波電源と、前記高周波電源と前記複数の高周波電力印加電極との間に設けられたインピーダンスを整合させる整合器と、前記整合器と前記複数の高周波電力印加電極との間に設けられ、前記高周波電源から前記整合器を介して供給された高周波電力を前記複数の高周波電力印加電極に均等に分配して供給する高周波電力分配装置とを備え、前記高周波電力分配装置は、入力された高周波電力を複数に均等に分岐する分電部材と、前記分電部材で分岐された高周波電力を前記複数の高周波電力印加電極に伝送する、中心の給電線およびその周囲の接地線からなる同軸伝送線と、入力側のインピーダンスを調整して電流値を低下させるためのインピーダンス調整機構とを有し、前記分電部材は、板状の導体からなる本体と、前記本体の一方の主面の入力点に高周波電力を入力する高周波電力入力部と、前記本体の他方の主面の前記入力点に対応する点を中心とした円周上に等間隔で複数配置された高周波電力出力部とを有し、前記同軸伝送線は、前記複数配置された高周波電力出力部にそれぞれ接続され、前記インピーダンス調整機構は、前記高周波電力入力部に設けられていることを特徴とする基板処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、分電部材を有するので、高周波電力を均等に分配することができ、また、分配数は2(nは正の整数)に限定されず、任意の数に分配することができる。また、複数の高周波出力部が本体に一括して配置されているため、高周波出力部から高周波電力を出力するラインとして同軸伝送線を用いることができ、各平行平板電極への給電ラインのインピーダンスを均等にして各平行平板電極に投入される高周波パワーのばらつきを小さくすることができる。また、分電部材の高周波電力入力部にインピーダンス調整機構を設けたので、高周波電力入力部のインピーダンスを大きくして電流値を小さくすることができ、組み付け差による電流値の変化を小さくすることができる。このため、平行平板電極に形成される複数の処理空間におけるプラズマ処理のばらつきを小さくすることができ、製品の特性差を少なくすることができる。また、インピーダンスを高くして電流値が低くなるため、発熱によるパワーロスを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る基板処理装置を示す断面図である。
【図3】高周波電力分配装置を示す図である。
【図4】高周波電力分配装置の他の例を示す図である。
【図5】電極接続箱の構成を示す図である。
【図6】4箇所給電の例を示す図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る基板処理装置を示す模式図である。
【図8】本発明のさらに他の実施形態に係る基板処理装置を示す模式図である。
【図9】本発明のさらにまた他の実施形態に係る基板処理装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る基板処理装置を示す斜視図、図2はその基板処理装置を示す断面図である。
【0012】
基板処理装置100は、複数の基板に対してプラズマ処理を施す平行平板型のプラズマ処理装置として構成されており、複数(図2では4枚)の基板Sを収容し、プラズマ処理を行うチャンバ1と、チャンバ1内でプラズマを生成するための高周波電力を供給する2つの高周波電源2a,2bと、これら高周波電源2a,2bにそれぞれ接続され、電源とプラズマのインピーダンスを整合する整合器3a,3bと、整合器3a,3bとチャンバ1との間にそれぞれ設けられた高周波電力分配装置4a,4bとを有している。高周波電源2a,2bと整合器3a,3bとの間、整合器3a,3bと高周波電力分配装置4a,4bとの間は、中心の給電線の周囲に接地線を同軸状に設けた同軸ケーブル5で接続されている。同軸ケーブル5による接続は、同軸コネクタによる接続であってもよい。
【0013】
チャンバ1の側壁には複数の基板を一括して搬送可能な搬送口(図示せず)が設けられており、搬送口はゲートバルブ(図示せず)により開閉可能となっている。
【0014】
チャンバ1内には、基板Sを載置する載置台として機能する下部電極(アノード電極)11が上下方向に複数(4個)設けられている。また、各下部電極11に対向するように上部電極(カソード電極)12が複数(4個)設けられている。つまり、下部電極11と上部電極12とが対をなす平行平板電極が4対設けられている。
【0015】
各上部電極12の両端部には、それぞれ高周波電力分配装置4aで分配された高周波電力および高周波電力分配装置4bで分配された高周波電力を導入するための高周波電力導入棒15が接続されている。そして、高周波電力導入棒15を経て各上部電極12へ高周波電力を導入するための導入端子18がチャンバ1の外部に設けられている。一方、各下部電極11の両端部は接地されている。
【0016】
下部電極11内にはヒーター16が埋設されている。そして、図示しない電源からヒーター16に給電されることによりヒーター16が発熱し、下部電極11上の基板Sが所定温度に加熱されるようになっている。
【0017】
各上部電極12の上面には、ガス供給配管21が接続されており(最上部の上部電極12に接続されたもののみ図示)、処理ガス供給機構20から処理ガスが供給されるようになっている。各上部電極12の下面には多数のガス吐出孔(図示せず)が形成されており、下部電極11に載置された基板Sにシャワー状に処理ガスが供給されるようになっている。すなわち、上部電極12は処理ガスを供給するシャワーヘッドとしても機能する。
【0018】
これら下部電極11および上部電極12は、支持部材17によりチャンバ1に支持されている。また、図示しない昇降機構により、下部電極11または上部電極12が昇降可能になっており、これにより下部電極11と上部電極12との間の距離を調節可能となっている。
【0019】
チャンバ1の上部および下部にはチャンバ1内を排気するための排気口22が設けられており、この排気口22には排気配管23が接続されている。排気配管23には自動圧力制御バルブ(APC)24と排気装置25が設けられており、自動圧力制御バルブ(APC)24によりチャンバ1内の圧力を制御しつつ排気装置25によりチャンバ1内が所定の真空雰囲気に制御される。
【0020】
高周波電力分配装置4a(4b)は、図3に示すように、高周波電源2a(2b)から供給された高周波電力を2以上に分岐する分電部材30と、分電部材30で分岐された高周波電力を伝送する同軸ケーブル(同軸伝送線)35と、インピーダンス調整機構36とを有する。
【0021】
分電部材30は、円板状の導体からなる本体31と、本体31の一方の主面の入力点31aに高周波電力を入力する高周波電力入力部32と、本体31の他方の主面の入力点31aに対応する点31bを中心とした円周上に等間隔で複数配置された高周波電力出力部33とを有している。すなわち、複数の高周波出力部33はいずれも入力点31aに対応する点31bからrの距離にあり、点31bと一の高周波電力出力部33に至る直線と、点31bと上記一の高周波電力出力部33に隣接する他の高周波電力出力部33に至る直線とのなす角度θがいずれも90°である。なお、入力点31aは本体31の中心に配置して電力の分配がより対称となるように考慮する。また、高周波電力出力部33の数は、入力点31aに対応する点31bを中心とした円周上に等間隔で配置されていれば任意の数とすることができる。図4に高周波電力出力部33が6つの例を示す。この場合にはθは60°である。さらに、本体31は必ずしも円板である必要はなく、正方形板等の他の形状であってもよいが、各分配経路においてインピーダンスを等しくする必要から、高周波電力を分配する分配数Nに対応してN回対称の回転対称形の図形である必要がある。このように、各高周波電力出力部33は均等に配置されているため、各高周波電力出力部33を通じて均等に高周波電力を分配することができる。
【0022】
同軸ケーブル(同軸伝送線)35は、各高周波電力出力部33から出力される高周波電力を伝送するものであり、高周波電力出力部33に接続された給電線35aとその周囲に同軸状に設けられた接地線35bとを有している。この同軸ケーブル35としては、50Ωの特性インピーダンスを有するものを好適に用いることができ、両端のコネクタは高周波電力の周波数および定格パワーに応じて選定することができる。
【0023】
インピーダンス調整機構36は、高周波電力入力部32に設けられており、高周波電力入力部32のインピーダンスをその値が大きくなるように調整して電流値を低下させるためのものである。このインピーダンス調整機構36は、例えば、図3(c)に示すように、入力部32に複数(図では3つ)のキャパシタ37を並列接続して構成され、これによりインピーダンスを大きくして電流値を小さくすることができる。キャパシタ37としては固定キャパシタを用いることが好ましく、その定数は、高周波電力の周波数などで可変とする。
【0024】
同軸ケーブル35の端部には、同軸ケーブル35を導入端子18に接続する電極接続箱38が設けられている。電極接続箱38は、図5に示すように、筐体41と、筐体41において同軸ケーブル35が接続される入力部42と、筐体41において高周波電力が出力される出力部43と、入力部42と出力部43とを繋ぐ高周波電力ライン44とを有しており、高周波電力ライン44には、高周波電力ライン44のインピーダンスを調整するインピーダンス調整機構45が接続されている。インピーダンス調整機構45は、例えば並列接続されたキャパシタ46を有している。これにより、インピーダンスを大きくして電流値を小さくすることができる。なお、Lは高周波電力ライン44の寄生インダクタンスである。
【0025】
電極接続箱38の出力部43は上部電極12から延びる高周波電力導入棒15に合わせて設計する。また、筐体41は高周波的に接地としてチャンバ1に直付けされる。
【0026】
基板処理装置100の各構成部は、制御部(コンピュータ)70により制御される。制御部70はマイクロプロセッサを備えたコントローラと、オペレータが基板処理装置100を管理するためのコマンドの入力操作等を行うキーボードや、基板処理装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェースと、基板処理装置100で実行される各種処理をコントローラの制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて基板処理装置100に所定の処理を実行させるための処理レシピが格納された記憶部とを有している。処理レシピ等は記憶媒体に記憶されており、記憶部において記憶媒体から読み出して実行される。記憶媒体は、ハードディスクや半導体メモリであってもよいし、CD−ROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。レシピ等は、必要に応じてユーザーインターフェースからの指示等にて記憶部から読み出し、コントローラに実行させることで、コントローラの制御下で、基板処理装置100での所望の処理が行われる。
【0027】
このように構成される基板処理装置100においては、まず、ゲートバルブを開けて、搬送口から搬送装置(図示せず)により複数の基板Sをチャンバ1内に搬入し、各下部電極11の上に載置する。搬送装置をチャンバ1から退避させ、ゲートバルブを閉じた後、排気装置25によりチャンバ1内を排気してその中を所定の真空雰囲気とする。このとき、下部電極11上の基板Sは、ヒーター16により所定温度に加熱される。そして、処理ガス供給機構20からガス供給配管21を経て各上部電極12に処理ガスを供給し、各上部電極12の下面に形成された多数のガス吐出孔から処理ガスをシャワー状に吐出させるとともに、高周波電源2a,2bから整合器3a,3b、高周波電力分配装置4a,4bを経て各上部電極12の両端部に高周波電力を供給する。
【0028】
これにより、対向する上部電極12と下部電極11との間に高周波電界が生じ、この高周波電界により生成された処理ガスのプラズマにより、ヒーターで加熱された基板S上で所定のプラズマ処理、例えばプラズマCVDが行われる。
【0029】
このとき、高周波電力分配装置4a,4bは、円板状の導体からなる本体31と、本体31の一方の主面の入力点31aに高周波電力を入力する高周波電力入力部32と、本体31の他方の主面の入力点31aに対応する点31bを中心とした円周上に等間隔で複数配置された高周波電力出力部33とを有する分電部材30を有するので、高周波電力を均等に分配することができる。また、このように出力部を円板状に均等に形成すればよいので、高周波電力の分配数は2(nは正の整数)に限定されず、任意の数に分配することができる。
【0030】
また、複数の高周波電力出力部33が本体31に一括して配置されているため、高周波電力出力部33から高周波電力を出力するラインとして同軸ケーブル35を用いることができる。このため、各上部電極12への給電ラインのインピーダンスを均等にすることができ、各上部電極12に投入される高周波パワーのばらつきを小さくすることができる。また、分電部材30の高周波電力入力部32にインピーダンス調整機構36を設けたので、高周波電力入力部32のインピーダンスを大きくして電流値を小さくすることができ、組み付け差による電流値の変化を小さくすることができる。このため、上部電極12と下部電極11との間に形成される複数の処理空間におけるプラズマ処理のばらつきを小さくすることができ、製品の特性差を少なくすることができる。また、インピーダンスを大きくして電流値を小さくするため、発熱によるパワーロスを小さくすることができる。また、同軸ケーブル35を用いることにより、取り回しや装置組み立てなどの利便性が向上するという利点もあるが、同軸ケーブルを使用するためには流れる電流値に制約があり、上記のように高周波電力入力部32においてインピーダンスを調整することによって同軸ケーブル35を使用することが可能となった。
【0031】
さらにまた、電極接続箱38の内部のインピーダンス調整機構45により、上部電極12が元々有している個体差がある場合でも、各上部電極12に流す電流値を調整して個体差を吸収することができ、プラズマ処理のばらつきを一層小さくすることができる。また、このインピーダンス調整機構45によってインピーダンスを大きくして同軸ケーブル35に流れる電流を小さくすることができる。
【0032】
さらにまた、分電部材30および/または電極接続箱38のキャパシタ容量や同軸ケーブル35の長さ等により回路定数を変えることにより、種々の周波数に適用可能である。
【0033】
また、一つの上部電極12に対して分配された高周波電力を2箇所から給電しているので、上部電極12に発生する定在波のピーク電圧を緩和し、プラズマ処理の面内分布をより均一にすることができる。給電箇所をさらに増やして、例えば図6のように4箇所から給電することにより、定在波のピーク電圧をより抑制して平滑化することができ、プラズマ処理の面内分布をさらに改善することができる。
【0034】
次に、他の実施形態に係る基板処理装置について説明する。
図7は、他の実施形態に係る基板処理装置を示す模式図である。本実施形態に係る基板処理装置100aは、高周波電源2aおよび2bに位相制御器61を接続している。これにより、2台の高周波電源2aおよび2bの位相差を制御可能であるので、プラズマの安定性およびプラズマによる処理結果を調整することができる。この場合に位相制御器61により0〜360°の範囲で任意に位相差を設定することができる。
【0035】
次に、さらに他の実施形態に係る基板処理装置について説明する。
図8は、さらに他の実施形態に係る基板処理装置を示す模式図である。本実施形態に係る基板処理装置100bは、一台の高周波電源2からのパワーをパワー分配器(パワースプリッター)62で分配して整合器3a側および3b側に出力する。この場合に、パワー分配器62は、例えば50Ωにインピーダンス調整され、同一位相に制御された高周波電力が適宜のパワー比率で整合器3a側と整合器3b側へ分配される。なお、必要に応じてパワー分配器62を同一位相以外に調整することも可能である。この実施形態においても、同一位相でパワーの分配比率を制御することにより、プラズマの安定性およびプラズマによる処理結果を調整することができる。また、高周波電源が一個でよいので、より経済的である。
【0036】
次に、さらにまた他の実施形態に係る基板処理装置について説明する。
図9は、さらにまた他の実施形態に係る基板処理装置を示す模式図である。本実施形態に係る基板処理装置100cは、一台の高周波電源2からの高周波出力を位相制御/パワー分配器63を介して整合器3a側および3b側に出力する。位相制御/パワー分配器63は、整合器3a側と3b側とで高周波電力の位相を制御するとともに、パワーの分配比率を制御することができる。これにより、よりきめ細やかにプラズマの安定性およびプラズマによる処理結果を調整することができるとともに、図8の例と同様、高周波電源が一個でよいので、より経済的である。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、基板処理装置におけるプラズマ処理としてプラズマCVDについて示したが、本発明では原理上、これに限定されるものではないことはいうまでもなく、プラズマエッチング等、他のプラズマ処理に適用することができる。また、一度に処理する基板の数は4枚に限るものではなく、処理する基板の枚数に応じて高周波電力分配装置による分配数を決定することができる。さらに、上記実施形態では平行平板電極の上部電極に分岐した高周波電力を導入したが、下部電極に導入してもよいし、上部電極および下部電極の両方に導入してもよい。さらにまた、上記実施形態では、上部電極の2箇所に高周波電力を供給する例を示し、さらに4箇所に供給する例も示したが、1箇所に高周波電力を供給するようにしてもよい。さらにまた、本発明に適用される基板は特に限定されるものではなく、太陽電池用基板やフラットパネルディスプレイ(FPD)用ガラス基板等、種々の基板に適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1;チャンバ
2,2a,2b;高周波電源
3a,3b;整合器
4a,4b;高周波電力分配装置
5;同軸ケーブル
11;下部電極
12;上部電極
15;高周波電力導入棒
18;導入端子
20;処理ガス供給機構
22;排気口
25;排気装置
30;分電部材
31;本体
31a;入力点
32;高周波電力入力部
33;高周波電力出力部
35;同軸ケーブル
35a;給電線
35b;接地線
36;インピーダンス調整機構
37;キャパシタ
38;電極接続箱
45;インピーダンス調整機構
46;キャパシタ
61;位相制御器
62;パワー分配器
63;位相制御/パワー分配器
70;制御部
100;基板処理装置
S;基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の平行平板電極に高周波電力を供給してプラズマを生成させることにより複数の基板をバッチ式で処理する基板処理装置において、高周波電源からの高周波電力を前記複数の平行平板電極に均等に分配して供給する高周波電力分配装置であって、
入力された高周波電力を複数に均等に分岐する分電部材と、
前記分電部材で分岐された高周波電力を前記複数の平行平板電極に伝送する、中心の給電線およびその周囲の接地線からなる同軸伝送線と、
入力側のインピーダンスを調整して電流値を低下させるためのインピーダンス調整機構とを有し、
前記分電部材は、板状の導体からなる本体と、前記本体の一方の主面の入力点に高周波電力を入力する高周波電力入力部と、前記本体の他方の主面の前記入力点に対応する点を中心とした円周上に等間隔で複数配置された高周波電力出力部とを有し、
前記同軸伝送線は、前記複数配置された高周波電力出力部にそれぞれ接続され、
前記インピーダンス調整機構は、前記高周波電力入力部に設けられていることを特徴とする高周波電力分配装置。
【請求項2】
前記インピーダンス調整機構は、前記高周波電力入力部に並列接続されたキャパシタを有することを特徴とする請求項1に記載の高周波電力分配装置。
【請求項3】
前記同軸伝送線は、前記平行平板電極へ高周波電力を導入する導入端子に接続され、その接続部にインピーダンス調整機能を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高周波電力分配装置。
【請求項4】
複数の基板をプラズマによりバッチ式で処理する基板処理装置であって、
基板毎に前記プラズマを発生させるための複数の平行平板電極と、
前記複数の平行平板電極の高周波電力印加電極に高周波電力を供給する高周波電源と、
前記高周波電源と前記複数の高周波電力印加電極との間に設けられたインピーダンスを整合させる整合器と、
前記整合器と前記複数の高周波電力印加電極との間に設けられ、前記高周波電源から前記整合器を介して供給された高周波電力を前記複数の高周波電力印加電極に均等に分配して供給する高周波電力分配装置とを備え、
前記高周波電力分配装置は、
入力された高周波電力を複数に均等に分岐する分電部材と、
前記分電部材で分岐された高周波電力を前記複数の高周波電力印加電極に伝送する、中心の給電線およびその周囲の接地線からなる同軸伝送線と、
入力側のインピーダンスを調整して電流値を低下させるためのインピーダンス調整機構とを有し、
前記分電部材は、板状の導体からなる本体と、前記本体の一方の主面の入力点に高周波電力を入力する高周波電力入力部と、前記本体の他方の主面の前記入力点に対応する点を中心とした円周上に等間隔で複数配置された高周波電力出力部とを有し、
前記同軸伝送線は、前記複数配置された高周波電力出力部にそれぞれ接続され、
前記インピーダンス調整機構は、前記高周波電力入力部に設けられていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
前記高周波電力分配装置の前記インピーダンス調整機構は、前記高周波電力入力部に並列接続されたキャパシタを有することを特徴とする請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記高周波電力分配装置の前記同軸伝送線は、前記平行平板電極へ高周波電力を導入する導入端子に接続され、その接続部にインピーダンス調整機能を有することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記高周波電力印加電極は、その対向する第1の端部と第2の端部にそれぞれ配置された少なくとも一対の高周波電力供給点を有することを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記第1の端部の高周波電力供給点には第1の高周波電源から高周波電力を供給し、前記第2の端部の高周波電力供給点には第2の高周波電源から電力を供給することを特徴とする請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記第1の高周波電源と前記第2の高周波電源は位相制御器で接続されていることを特徴とする請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記第1の端部の高周波電力供給点と、前記第2の端部の高周波電力供給点にはパワー分配器を介して共通の高周波電源から高周波電力が供給されることを特徴とする請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記第1の端部の高周波電力供給点と、前記第2の端部の高周波電力供給点には位相制御/パワー分配器を介して共通の高周波電源から高周波電力が供給されることを特徴とする請求項7に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−4172(P2013−4172A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130508(P2011−130508)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】