説明

高圧レギュレータ

高圧レギュレータが、圧力導入口と圧力排出口とを有する本体を備えている。ピストンが、本体内に配置され、圧力導入口および圧力排出口に流通可能に接続されている。ピストンが、圧力排出口を介してピストンの表面へと加えられる圧力に応答して圧力導入口から圧力排出口への流体の流れを制御する目的で、シートリングに押し付けられて接触するように動作する。ピストンシートが、低温において優れたシールをもたらすために、ピストンに周囲から係合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くには、高圧の用途のための圧力レギュレータに関し、さらに詳しくは、圧縮水素を送出するタンクのための高圧レギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
水素が、自動車などの多数の用途において、きわめて魅力的な代替燃料源となることが実証されている。なぜならば、水素の消費の副生成物は、熱および水だけであるからである。現行の水素燃料の供給は、貯蔵された水素から電気を生成するために水素燃料電池を頼りにしており、生成される電気を、車両を動かすべく電気モータを動作させるために使用することができる。自動車用の燃料電池の用途においては、水素が、典型的には、700barまたは10,000psiに達する比較的高い圧力で、タンク内に気体の状態で貯蔵される。高い圧力での貯蔵は、小さな貯蔵容積で大量の水素の供給を提供する。燃料電池は、通常は、エネルギーの変換を維持するための必要に応じて、チューブまたはパイプの系を通ってタンクから水素を引き出すが、システムのコスト削減および安全性のために、貯蔵されている水素よりも大幅に低い圧力(例えば、200psi)で運転されなければならない。典型的には、少なくとも1つの圧力レギュレータが、タンクからの圧縮水素の圧力を燃料電池システムに適した圧力まで下げるため、タンクと燃料電池との間に設けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
水素が圧力レギュレータを通ってタンクから取り出されるとき、水素の圧力の急激な低下に対応して、圧力レギュレータにおいて−50℃近くにもなりうる水素の温度の低下が生じることが、よく知られている。さらに、特定の環境においては、動作温度が、+85℃という温度にも達しうる。このような極端な温度範囲は、レギュレータのシールをきわめて困難にする。例えば、きわめて低い温度において、金属−対−金属のシールおよび弾性シールが収縮して、レギュレータに漏れが生じ、このことが、圧力制御の性能を低下させる可能性がある。シールの収縮の問題に対処するための従来からの設計技法は、低い温度で好ましくシールを果たすシール−対−シール面の公差および構成材料を用意することからなる。これらの同じ設計技法が、高い動作温度においては、シールが膨張して動かなくなり、レギュレータの動作を妨げるため、レギュレータ部品の「シージング(seizing)」を生じさせることが知られている。さらに、タンクからの水素の断続的または周期的な送出に起因して、問題が生じる可能性がある。
【0004】
タンクからの水素に対する需要に依存して、圧力レギュレータに、水素がタンクから送出されるときに反復の熱または冷却サイクルが加わる可能性がある。これらの反復サイクルが、圧力レギュレータにおいて望ましくない動作および保守の問題を引き起こす可能性がある。例えば、多くの従来からの圧力レギュレータは、多部品からなる内部のバルブアセンブリを使用しており、そのような内部のバルブアセンブリが、バルブアセンブリ内の高圧シールを頼りにしている。熱サイクルが、高圧シールの構成部品の膨張/収縮サイクルを生じさせ、結果としてシールの摩耗が増し、高圧の漏れが生じる可能性があり、レギュレータおよび/または燃料電池システムの致命的な故障が生じる可能性すらある。したがって、高圧ガスの送出の用途において漏れおよび動作不良の可能性がきわめて少ない圧力レギュレータを提供することが、有益であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここに開示される1つの例では、高圧レギュレータが、好ましくは実質的に円筒形の本体を備えており、本体が、好ましくは外腔と同心である内腔を、内腔によって圧力導入口が定められるように備えており、さらに内腔内に位置するシートリングを備えている。ボンネットが、貫通穴を備える圧力室を形成し、貫通穴が、好ましくは内腔に同心に整列した圧力排出口を定めている。本体とボンネットとの間の内部に配置されたピストンアセンブリが、圧力導入口から圧力排出口へと流れる流体を制御するために、内腔のシートリングに選択的に係合する。ピストンアセンブリは、ピストン、ピストンシート、および荷重要素を備えており、ピストンシートが、ピストンへと外側から圧入されて、ピストンベースに周囲から係合し、きわめて低い温度における優れたピストンシートの保持がもたらされている。ピストンは、第一の動作モードのための第一の有効検出領域と、第二の動作モードのための第二の有効検出領域とを有している。
【0006】
他に開示される例では、高圧レギュレータが、実質的に円筒形を有する本体を備えており、本体が、実質的に外腔と同心である内腔を、内腔によって圧力導入口が定められるように備えており、さらに内腔が、内腔内に位置するシートリングを備えている。実質的に円筒形のボンネットが、貫通穴を備える圧力室を形成し、貫通穴が、実質的に内腔に同心に整列した圧力排出口を定めている。本体とボンネットとの間の内部に配置されたピストンアセンブリが、圧力導入口から圧力排出口へと流れる流体を制御するために、内腔のシートリングに選択的に係合する。ピストンアセンブリは、第一のシール部材および第二のシール部材を有するピストン、ピストンシート、ならびに荷重要素力をもたらすようにピストンへと作用可能に接続された荷重要素を備えている。第一のシール部材および第二のシール部材の配置が、第一および第二のシール部材が比較的高い入口圧力にさらされることがなく、したがって本体における入口圧力の漏れが大幅に減らされるように、ボンネットおよび本体におけるピストンアセンブリのシールを提供している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】所定の調整後圧力を有する典型的な高圧レギュレータの断面図である。
【図2】調節可能な調整後圧力を有する典型的な高圧レギュレータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一般に、本明細書に記載される典型的な高圧レギュレータは、レギュレータを通過する流体の流れを制御するための内部ピストンアセンブリを収容するただ1つのレギュレータ本体を提供する。典型的な高圧レギュレータの出口圧力を、出口圧力の直接的なフィードバックに依存して流体の圧力を制御することによって、入口圧力の変動に実質的に影響されないように保つことができる。さらに詳しく後述される好ましい典型的な高圧レギュレータは、レギュレータの出口圧力を所定の圧力または設定点に保つために、ピストンアセンブリをまたぐ圧縮力の平衡を使用して動作する。好ましくは、ピストンアセンブリ内の単独または単一のピストンが、必要とされる部品の数を削減することで、製造および組み立てのコストを下げつつ、優れた信頼性および性能を備えるよりコンパクトな設計を可能にできる。
【0009】
典型的な圧力レギュレータが、レギュレータにおける入口圧力の水素の漏れを実質的になくすために、レギュレータの出口側(すなわち、低圧側)にのみシールを備えた構成であることを、当業者であれば理解できるであろう。さらに、優れた低温性能をもたらすために、ピストンシートが補助的な保持装置を必要とせずにピストンへと接続されることを、当業者であれば理解できるであろう。また、典型的なレギュレータは、ピストンアセンブリが閉じられているときにピストンシートをまたいで流体の漏れが生じた場合に、出口圧力によって補助された遮断を好都合に提供する。
【0010】
ここで図1を参照すると、水素燃料電池向けの高圧ガス送出システムのための典型的な非調節式の高圧レギュレータ100の断面図が示されている。典型的な高圧レギュレータ100は、比較的小さい全体サイズ(例えば、およそD2.40”xH3.00”)を有しており、部品の総数が大幅に減らされている。したがって、ここに開示される例は、より信頼性が高くかつ安価な直列形の高圧レギュレータを提供する。一般に、典型的な高圧レギュレータ100は、実質的に単独または単一の本体110内に配置された内部ピストンアセンブリまたはモジュール130で構成されている。螺合によって本体110へと取り付けられるボンネット150が、圧力制御のための出口圧力室160を形成する。以下の説明のために、典型的な高圧レギュレータ100が、レギュレータが全開位置と全閉位置との間を推移している場合など、開位置に示されている。
【0011】
上述され、さらに図1にも示されるとおり、典型的な高圧レギュレータ100の好ましい実施の形態は、ただ1つの圧力導入口112を有している本体110を備えており、圧力導入口112は、本体110から延び、異なる直径の複数の同心な通路を長手軸Cに沿って配置して備えている中空円筒から形成されている。レギュレータ100を高圧水素タンク(図示されていない)などの圧縮ガスの供給源へと接続するために、圧力導入口112に雄ねじ115が設けられている。このような高圧用途のための当業者にとって公知の他の適切な接続手段も、使用可能である。好ましくは、レギュレータ100をタンクへと気密に取り付けるために、平たい薄板状のガスケット(図示されていない)などの高圧シールを組み込むための凹所117が、圧力導入口112に形成されている。圧力導入口112の他端において、さらに詳しく後述される入口圧力室114を介してピストンアセンブリ130を圧力導入口112へと流通可能に接続するために、本体110に通路113が形成されている。
【0012】
さらに本体110は、当該本体110の内壁126によって境界付けられた円柱形の内部空洞149を備えている。円柱形の空洞149は、好ましくは、圧力導入口112の長手軸Cに実質的に整列している。円柱形の空洞149は、荷重要素135(好ましくは、ばねであり、あるいは他の適切な荷重要素または付勢装置である)を保持するために設けられている。荷重要素135は、さらに詳しく後述されるとおり、ピストンアセンブリ130を、図面を見たときのおおむね上方に付勢する。さらに本体110は、外壁127の上部に、典型的な高圧レギュレータ100のボンネット150を螺合させて、流体の流れの制御に必要な圧力保持アセンブリを形成するための雄ねじ111を備えることができる。典型的な高圧レギュレータが、外壁の雌ねじおよびボンネットの雄ねじを取り入れても、あるいは本体110をボンネット150に螺合させるための他の公知の取り付け手段を取り入れてもよいことを、当業者であれば理解できるであろう。
【0013】
圧力排出口170が、長手軸Cに沿ってボンネット150に形成され、好ましくは圧力導入口112に実質的に整列している。図示のとおり、燃料電池システムへのねじによる接続をもたらすために、ボンネット150に雄ねじ159などが設けられている。さらに、Oリングシール(図示されていない)などのシールをボンネット150に収容するために、環状の溝171を設けることができる。圧力排出口170は、出口圧力のフィードバック制御を提供するために、出口圧力室160に直接に連通している。
【0014】
出口圧力の制御は、レギュレータ100の出口圧力がピストンの検出領域158に作用することによって実現される。検出領域158は、詳しくは後述されるとおり、ピストンアセンブリ130の出口圧力側155によって定められている。さらに、ボンネット150およびピストンアセンブリ130が、当該ピストンアセンブリ130を収容するための別の周囲圧力室162を定めている。ボンネット150が、ピストンアセンブリ130の動作に必要な力の平衡に悪影響を及ぼしかねない「空気ばね」効果を排除するために、周囲圧力室162に通気口174を備えていることを、理解すべきである。
【0015】
典型的な高圧レギュレータ100のピストンアセンブリ130は、流体の圧力、したがって流体の流れを調整するために、圧力導入口112と圧力排出口170との間で常時開の位置(すなわち、所定の圧力または設定点を下回る圧力において、導入口から排出口への流体の流れがおおむね妨げられない)で動作する。ここに開示されている例では、ピストンアセンブリ130が、ただ1つのピストン132、ばね135、ピストンシート129、ならびに2つの環状シール136および138を備えている。
【0016】
図示のとおり、ピストン132は、ピストン頭部137に実質的に同心に整列したおおむね円柱形のベース139から形成されている。ピストン頭部132は、好ましくは円形、または実質的に円形であるが、他の形状が充分であることもあり得る。図に示されているとおり、ピストン132は、おおむねT字形の断面を有している。さらにピストン132は、ピストン頭部137の周囲に形成された第一の環状溝144と、ピストンベース139に隣接し、あるいはピストンベース139の上方に位置する中央部147の周囲に形成された第二の環状溝146とを、2つの環状シール136(前記溝144内)および138(前記溝146内)を収容するために取り入れている。シール136および138は、Oリングであってよい。シール136が、周囲圧力室と出口圧力室160との間のシールをもたらす一方で、シール138が、周囲圧力室162と入口圧力室114との間のシールをもたらす。シール136および138を、デラウェア州ウィルミントンのE.I.デュポン・ド・ヌムールから入手できるエチレンプロピレンゴム(EPDM)など、適切な低温性能および耐摩耗性を有するポリマーから製作することができる。
【0017】
図1から、シール136および138が、流体を圧力排出口170に向かって案内し、ボンネット150の通気口174を通って逃げることがないようにするために、周囲圧力室162を出口圧力室160から隔離していることを理解すべきである。シール136および138ならびにピストンシート129が、さらに詳しく後述されるように、レギュレータの特定の領域を流体の流れから隔離することによって、レギュレータにおける高圧の漏れの恐れを大幅に減らすように構成されている。さらに、ピストン132の下面161を、好ましくは、ピストン132の検出領域158に作用する出口圧力の力に対抗する(さらには/あるいは、そのような力と平衡する)所定の力をもたらすための荷重要素135(ばねであってよい)を受けるように構成することができる。ピストンシート129は、ピストンベースの環状のリング129bと係合するように寸法付けられた内側の溝129aを備えている。
【0018】
圧力制御のために圧力導入口112から圧力排出口170へと水素を案内するために、ピストン132は、タンクからの水素をピストン132の軸穴169を通って出口170へと接続する少なくとも1つの交差穴168を、ピストンベース139に備えている。高圧の導入口112からの流体の流れを選択的に制御するために、ピストンシート129および本体110内のシートリング128が、レギュレータ100内の流体の圧力を制御するために、入口圧力室114に可変の絞りを形成する。具体的には、圧力の制御においてバルブをシールまたは閉鎖するために、ピストンシート129が、レギュレータ本体110のシートリング128の面取りされた縁に気密に係合するように形作られている。当該バルブによってもたらされた制限がレギュレータ内の圧力減少を引き起こすことは当業者には理解されるであろう。すなわち、典型的な高圧レギュレータの調整済みの出口圧力は、ピストン132に作用する力の平衡によって制御される。公知の工学の原理を使用して知られるとおり、ピストン132は、ピストンの座の領域に作用する導入口112からの流体の圧力に起因する上向きの力、および荷重要素135の上向きの力を受ける。ピストン132は、当該ピストン132の検出領域に作用する出口からの流体の圧力に起因する下向きの力を受ける。検出領域は、凹所157によって形成される第一の有効検出領域(ピストン132が最も上方の位置にあるときなど)であってよく、あるいはピストン132の全直径によって形成される第二の有効検出領域(ピストン132がわずかに下方へと動いたときなど)であってよい。
【0019】
ピストン132の検出領域158は、ピストン132の上面133によって定められる。最初の起動時に、出口圧力が所望の設定点を大幅に下回るとき、ピストン132の出口側の凹所157が、軸穴169を介して制御圧力を受け取り、出口側の凹所157に関係する第一の有効検出面積に比例する第一の出口力が、入口圧力およびばね135によって生成される力に対抗してもたらされる。ここに開示されている例では、ピストンの出口側の凹所157が、この例の用途などの高圧用途において、バルブが初期の全開位置にあるときに追加の面積(すなわち、出口の面積よりも大きい)をもたらすことによって、初期の出口圧力の力が高い入口圧力の力に対抗して圧力の制御を開始させるために充分であることを保証する。ひとたびピストン132が動いてボンネット150から離れると、ピストン132の上面133の全体が露出し、出口側の凹所157および環状の領域156の面積にほぼ等しい第二の有効検出面積が形成され、これに比例する増加が、圧力制御の際の出口圧力のフィードバックにもたらされる。ここに開示されている例によれば、凹所157の面積が、ピストン全体の面積よりも小さい。より具体的には、凹所157の直径が、約1.694インチであり、ピストン全体の直径が、約1.976インチである。
【0020】
有効検出面積の増加は、増加した第二の有効検出面積からもたらされるより大きなフィードバック力を提供することによって、より一層の圧力制御を提供する。さらに、典型的なピストン132が、図示のとおり、きわめて高い入口圧力によって生成されてピストン132に作用する入口側からの力が出口圧力のフィードバックによって実質的に相殺されるよう、ピストンベース139に最小限の入口表面積しか有さないことを、当業者であれば理解すべきである。この構成によれば、検出面158に作用する力を、出口圧力の制御において支配的にすることができる。
【0021】
図1に示されるとおり、ピストンアセンブリ130、さらに詳しくはピストンアセンブリ130のシールの構成が、レギュレータ内に複数の圧力ゾーンまたは領域を定めている。圧力領域が、ピストン132がボンネットのシール面145および本体110の内腔118のシール面143にスライド可能に係合するときに、シール136および138をまたいで形成される。例えば、第一の領域または高圧領域が、圧力導入口112、シートリング128、およびピストンシート129の間に存在する。第二の領域または比較的低圧の領域あるいは制御された出口圧力の領域が、入口側の環状シール138と出口側の環状シール136との間の出口圧力室160において、軸穴169と圧力排出口170との間に存在し、第三の領域または周囲圧力の領域が、周囲圧力室162に存在する。レギュレータ内にこのような圧力領域を形成することで、高圧かつきわめて低い温度での動作において漏れを生じやすいことが通常である高圧シールの必要性が大幅に減らされる(すなわち、Oリングシールが、比較的低い出口圧力だけをシールすればよい)ことを、当業者であれば理解すべきである。
【0022】
圧力の制御に先立って、ばね135が、圧力導入口112から圧力排出口170への実質的に自由な流体の流れを可能にするため、ピストン132を、シートリング128から離れて、ボンネット150の内面131に密に接触するように付勢している。流体が、圧力導入口112から交差穴の通路168を通って流れ、出口圧力室160を所定の出口圧力を上回る圧力へと瞬間的に加圧する。出口圧力室160において出口圧力が上昇すると、出口側の凹所157の環状の領域に関係する力が、荷重要素135の荷重力に対抗してピストン132を荷重要素135を圧縮する方向にシートリング128に向かって動かし、環状のリング156の第二の有効検出面積を出口のフィードバック圧力へと露出させるような所定のやり方で、ピストン132の第一の有効検出面積157に作用する力が増加する。
【0023】
このように、レギュレータ100が圧力制御に近いとき、ピストン132が動かされて内面131から離れ、出口圧力が、荷重要素135の荷重の力に打ち勝つようにピストン132の検出領域158の全体に作用する。出口圧力が、力の平衡によって決定される所望の動作圧力または設定点に実質的に等しいとき、ピストンシート129が、シートリング128に完全に係合し、レギュレータを通過する流体の流れを実質的に禁じる。さらに、動作の最中に、出口圧力の変動に応答して制御を維持するために、ピストン132がピストンシート128へと向かうこと、およびピストンシート128から離れることを連続的に繰り返すことを、当業者であれば理解すべきである。
【0024】
この実施の形態において、ピストン132の表面積が、入口の流体の圧力の力に対抗するために、好ましくはシートリング128の表面積よりも16倍(16x)大きい。他の比も、典型的な高圧レギュレータの技術的思想および技術的範囲から離れることなく可能であるが、一般的に、比較的大きなピストンの出口側の表面積が、より大きなレギュレータの利得を保証し、レギュレータの「たれ(droop)」を少なくし、幅広い温度および圧力の範囲にわたって安定した制御をもたらすと考えられることを、当業者であれば理解すべきである。
【0025】
すでに述べたように、タンクからの高圧ガスの圧力を調整し、すなわち低下させることで、高圧レギュレータ100においてきわめて低い温度が生じる。具体的には、シートリング128におけるガスの急激な膨張により、内部の温度が−50℃近くにまで低下する。これらのきわめて低い温度が、シートリング128、ピストンベース139、およびレギュレータ本体110を含むレギュレータの部品の局所的な収縮を生じさせ、このことが、一般的に、レギュレータに漏れを生じさせ、制御性能を低下させる。この典型的な高圧レギュレータ100は、レギュレータの性能への熱収縮の影響を少なくするために、外側から圧入されるピストンシート129を使用する。すなわち、低温での動作において、ピストンシート129がピストンベース139の周囲で収縮し、両者の間により良好な接続をもたらす。好ましい実施の形態においては、ピストンシート129が、デラウェア州ウィルミントンのE.I.デュポン・ド・ヌムールのベスペル(Vespel,登録商標)など、温度に対して安定なポリイミドから作られる。ベスペルの熱膨張係数が、好ましくは316Lステンレスから製作されるピストンベース139の熱膨張係数以上になりうることを、当業者であれば理解すべきである。したがって、熱膨張特性の相違ゆえ、周囲の流体の温度を下回り、あるいは大幅に下回る圧力導入口の流体の温度において、ピストンシートがピストンベースの周囲にしっかりと収縮する。
【0026】
このように、動作の際に、ピストンシート129がピストンベース139よりも大きな割合で収縮し、大きな圧力のもとでのより堅固な接続を形成する。さらに、流体の圧力が、ピストンシート129へと、ピストンシート129をピストンベース139へと駆動する方向に作用し、結果としてより剛な接続が保証される。また、ピストンシート129とシートリング128との間に漏れが存在する場合、出口圧力が設定点を超えて上昇しうることを、当業者であれば理解すべきである。そのような状況において、追加の流体の流れがピストンアセンブリ130の出口側の圧力を上昇させ、追加の閉鎖力が検出領域158に対して生成される。漏れによって生じる追加の力は、シートリング128をまたぐ圧力の差に比例して増加し、出口圧力を設定点へと速やかに戻すべくピストンアセンブリ130を「積極的に遮断」する。最後に、環状のシール136および138が、荷重要素135を流体の流れから隔離するように機能する。水素の用途において、水素が、寿命の大幅な短縮につながりかねない金属の水素脆化を引き起こす可能性があることを、理解すべきである。典型的な高圧レギュレータは、水素への暴露を実質的になくすことによって、荷重要素135の寿命を改善している。さらに、荷重要素135を、上述の脆化の影響を大幅に受けにくいことが知られているイリノイ州エルジンのエルジロイ・スペシャルティ・メタルズ(Elgiloy Specialty Metals)のエルジロイ(Elgiloy,登録商標)から製造することができる。
【0027】
図2が、調節式の高圧レギュレータ200を含む別の実施の形態を示している。すでに述べたように、典型的なレギュレータは、流体の流れを制御するために、ピストンアセンブリをまたぐ力の平衡を使用して動作する。この別の実施の形態においては、出口圧力を、ボンネット250内に保持された調節ばね285の予圧を変更することによって調節することができる。の実施の形態におけるピストン232は、調節ばね285への予圧を制御するためにピストン232の軸穴269に組み込まれた少なくとも1つのロックナット(好ましくは、ロックナットアセンブリ286を形成する2つのロックナット280および281)を備えている。さらに、ボンネット250が、ピストン232が最初に本体210内に設置されるときに調節ばね285を保持するように構成された段差253を含んでいる。調節ばね285の予圧が、軸穴269におけるロックナット280および281の位置によって制御される調節ばね285の圧縮に比例することを、理解すべきである。すなわち、対をなす雌/雄のねじ山251および252における回転または反対方向の回転によって調節ばね285の予圧を増加または減少させることで、調節ばね285の付勢力を制御することができる。調節ばね285が、入口圧力による力および上述した荷重要素による力に対抗し、あるいはこれらの力を相殺する補足の力を、出口圧力による力へと供給するため、内部のロックナット280および281の位置を調節することによって、この補足の力を制御でき、したがって出口圧力を調節できることを、理解すべきである。
【0028】
特定の装置、方法、および製造物を本明細書において説明したが、本特許の保護の範囲は、それらに限られない。むしろ、本特許は、添付の特許請求の範囲の技術的範囲に文言上または均等論のもとで妥当に包含されるすべての実施の形態を保護する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力レギュレータであって、
圧力導入口を有している本体、
圧力排出口を有しており、前記本体へと作動可能に接続されるボンネット、
および、前記本体および前記ボンネットの間の内部に配置され、前記圧力導入口から前記圧力排出口へと流れる流体を制御するために前記本体内のシートリングに選択的に係合するピストンアセンブリを備え、
当該ピストンアセンブリは、
ピストン頭部と、前記圧力導入口を前記圧力排出口へと接続するための貫通穴を備えているピストンベースとを有しており、第一の動作モードのための第一の有効検出領域と、第二の動作モードのための第二の有効検出領域とを有しているピストン、
前記ピストンへと作用可能に接続され、出口圧力をあらかじめ定めるために前記ピストンへと荷重力をもたらす荷重要素、
および、前記ピストンベースに周囲から係合しており、流体を制御すべく前記シートリングに係合するピストンシート、
を備えている、圧力レギュレータ。
【請求項2】
前記第一の有効検出領域が、前記第二の有効検出領域よりも小さい、請求項1に記載の圧力レギュレータ。
【請求項3】
前記ピストンシートが、当該ピストンシートを前記ピストンベースへと保持するための補足の力が入口圧力によってもたらされるよう、前記ピストンベースの外側へと接続されている、請求項1に記載の圧力レギュレータ。
【請求項4】
前記ピストンシートの熱膨張係数が、前記ピストンベースの熱膨張係数よりも大きい、請求項1に記載の圧力レギュレータ。
【請求項5】
前記ピストンシートがベスペル(Vespel)である、請求項4に記載の圧力レギュレータ。
【請求項6】
前記荷重要素がエルジロイ(Elgiloy)である、請求項1に記載の圧力レギュレータ。
【請求項7】
前記本体が、シール面を有する内腔を備えており、
前記ピストンが、前記ピストン頭部に組み合わせられた第一のシールと、前記ピストンベースに組み合わせられ、前記内腔に対してシールを達成する第二のシールとを備えており、
前記ピストンシートならびに前記第一および第二のシールが、入口の流体の圧力の前記シールへの作用を最小化または軽減するように協働する、請求項1に記載の圧力レギュレータ。
【請求項8】
前記ピストンの前記貫通穴が、出口圧力を調節するための調節手段を備えている、請求項1に記載の圧力レギュレータ。
【請求項9】
前記調節手段が、前記荷重要素によって生成される荷重力に対抗するための調節ばねアセンブリを備えている、請求項8に記載の圧力レギュレータ。
【請求項10】
圧力レギュレータであって、
圧力導入口を有する本体であって、前記圧力導入口が、前記圧力導入口と当該本体に位置するシートリングとの間に形成される入口圧力室につながっている本体、
圧力排出口を有しており、前記本体に作動可能に接続されるボンネットであって、前記圧力排出口が、当該ボンネット内に形成される出口圧力室につながっているボンネット、
および、前記本体および前記ボンネットの間の内部に配置され、前記出口圧力室の比較的低い出口圧力へと流れる前記入口圧力室の比較的高い入口圧力を有する流体を制御するために、前記本体の前記シートリングに選択的に係合するピストンアセンブリを備え、
前記ピストンアセンブリが、
ピストン頭部と、前記入口圧力室を前記出口圧力室へと流通可能に接続するための貫通穴を備えているピストンベースとを有し、前記ピストン頭部が、当該ピストンアセンブリを前記ボンネットにおいてシールするための第一のシール部材を有し、前記ピストンベースが、当該ピストンアセンブリを前記本体においてシールするための第二のシール部材を、前記第一および第二のシール部材が前記入口圧力室の前記入口圧力にさらされることがないように有しているピストン、
前記ピストンへと作用可能に接続され、出口圧力をあらかじめ定めるために前記ピストンへと荷重力をもたらす荷重要素、
および、前記ピストンベースに周囲から係合しており、流体を制御すべく前記シートリングに係合するピストンシート、
を備えている、圧力レギュレータ。
【請求項11】
前記ピストンが、第一の動作モードのための第一の有効検出領域と、第二の動作モードのための第二の有効検出領域とを備えている、請求項10に記載の圧力レギュレータ。
【請求項12】
周囲の流体の温度を実質的に下回る圧力導入口の流体の温度において、前記ピストンシートが前記ピストンベースの周囲に堅固に収縮するよう、前記ピストンシートの熱膨張係数が、前記ピストンベースの熱膨張係数よりも大きい、請求項10に記載の圧力レギュレータ。
【請求項13】
前記出口圧力室に形成される出口圧力が、前記ピストン頭部に作用する出口圧力と、前記ピストンシートに作用する入口圧力と、前記荷重要素によって生成される荷重力によって生成される力とに比例する、請求項10に記載の圧力レギュレータ。
【請求項14】
前記ピストンの貫通穴が、前記第二の圧力室に形成される出口圧力を調節するための調節手段を備えるように構成されている、請求項10に記載の圧力レギュレータ。
【請求項15】
前記調節手段が、前記荷重要素によって生成される荷重力に対抗するための調節ばねアセンブリを備えている、請求項14に記載の圧力レギュレータ。
【請求項16】
圧力レギュレータであって、
シートリングを終端とする圧力導入口が前記内腔によって形成され、前記圧力レギュレータの第一の圧力室が前記外腔によって定められるように、内腔および外腔を有している本体、
前記圧力レギュレータの第二の圧力室を定めるために前記本体へと作動可能に接続され、前記圧力導入口に整列した圧力排出口を形成するための貫通穴を有しているボンネット、
および、前記本体の間の内部に配置され、前記圧力導入口から前記圧力排出口へと流れる流体を制御するために前記シートリングに選択的に係合するピストンアセンブリ、を備え、
前記ピストンアセンブリが、
ピストン頭部と、前記圧力導入口を前記圧力排出口へと接続するための貫通穴を備えているピストンベースとを有しているピストン、
前記本体の前記外腔内に配置され、出口圧力をあらかじめ定めるために前記ピストンに荷重力をもたらす荷重要素、
および、前記ピストンベースに周囲から係合しているピストンシート、
を備えている、圧力レギュレータ。
【請求項17】
前記ピストンシートが、前記ピストンベースに周囲から係合している、請求項16に記載の圧力レギュレータ。
【請求項18】
前記ピストンシートが、前記ピストンシートを前記ピストンベースへと保持するための補足の力が入口圧力によってもたらされるよう、前記ピストンベースの外側へと接続されている、請求項17に記載の圧力レギュレータ。
【請求項19】
周囲の流体の温度を実質的に下回る圧力導入口の流体の温度において、前記ピストンシートが前記ピストンベースの周囲に堅固に収縮するよう、前記ピストンシートの熱膨張係数が、前記ピストンベースの熱膨張係数よりも大きい、請求項17に記載の圧力レギュレータ。
【請求項20】
前記ピストンの貫通穴が、当該圧力レギュレータの出口圧力を調節するための調節手段を備えるように構成されている、請求項16に記載の圧力レギュレータ。
【請求項21】
圧力レギュレータであって、
圧力導入口と、圧力排出口と、外壁と、内壁とを有しており、周囲圧力室を囲んでいるバルブ本体、
開口を有しており、前記圧力導入口に隣接して前記バルブ本体内に位置しているシートリング、
前記バルブ本体内にスライド可能に配置され、前記外壁に対してシールされる上部と、前記内壁に対してシールされる中間部と、細くされたベースとを有しており、前記細くされたベースと前記圧力排出口との間に流路をもたらす貫通穴を備えているピストン、
前記ピストンを第一の位置に向かって付勢する荷重要素、
および、前記ピストンベースに組み合わせられ、前記ピストンの動きに応じて前記シートリングの前記開口を選択的に開閉するように配置されたピストンシートを備えており、
前記ピストンが、前記ピストンシートが前記シートリングから離れて、前記導入口と前記排出口との間に前記貫通穴を介した流通を提供する前記第一の位置と、前記ピストンシートが前記シートリングに対して着座する第二の位置との間を移動可能であるとともに、
前記ピストンの前記上部が、前記ピストンが前記第一の位置にあるときの第一の有効検出領域と、前記ピストンが前記第一の位置から離れるように移動したときの第二の有効検出領域とを有している、
圧力レギュレータ。



【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−533268(P2010−533268A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513306(P2010−513306)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/065086
【国際公開番号】WO2008/156986
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(503246934)テスコム・コーポレーション (14)
【Fターム(参考)】