説明

高減衰積層体

【課題】ゴム支承体としての性能を保持しつつ、加振後の外観にも優れる高減衰積層体を提供する。
【解決手段】高減衰積層体用ゴム組成物3と硬質板2とが交互が積層し、外周側面に被覆ゴム4を有する高減衰積層体1であって、前記被覆ゴム4が内層ゴム層4aおよび外層ゴム層の4bの2層構造からなり、前記内層ゴム層4aが、破断伸びが700%以上で硬度が65以下のゴム組成物から形成され、前記外層ゴム層4bが破断伸びが600%以上で硬度が75以上のゴム組成物から形成され、前記内層ゴム層4aを形成する前記ゴム組成物と、前記外層ゴム層4bを形成する前記ゴム組成物との硬度の差が15以上である高減衰積層体1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高減衰積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、震動エネルギーの吸収装置として、防震装置、除震装置、免震装置等が急速に普及しつつある。そして、このような装置としては、例えば、ゴムシートと鉄板とを交互に積層した積層体の上下面にフランジを固定した積層ゴム支承体が知られている。
【0003】
積層ゴム支承体としては、一般的に、高い剪断弾性率を持ったゴム材料により構成され、積層体の外周側面には、本体ゴムと同じ、或いは耐候性を付加させた外層(一般にEPDM等のポリマー)が設けられているが、本出願人は、特許文献1において「ゴムシートと鉄板とを交互に積層して積層体を構成し、該積層体の外周側面に外層ゴム積層して成る積層ゴム支承体において、前記外層ゴムのゴム材料を、前記積層体のゴムシートの破断伸びよりも大きい材料を使用して成る積層ゴム支承体。」を提案している。
【0004】
【特許文献1】特開平11−77889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の積層ゴム支承体は、加振後において、積層体のゴムシートが鉄板の間からはみ出すことにより、外層ゴム(以下、本発明においては「被覆ゴム」という。)層にしわが形成され、後述する比較例1で作製した積層体の写真(図3参照)に示すように、性能上は問題がなくても外観に劣るという問題があることが分かった。
【0006】
そこで、本発明は、ゴム支承体としての性能を保持しつつ、加振後の外観にも優れる高減衰積層体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、外周側面に形成する被覆ゴムを内層ゴム層および外層ゴム層の2層構造とし、これらの層を形成するゴム組成物(加硫物)の破断伸び、硬度および硬度差を特定の値にすることにより、ゴム支承体としての性能を保持しつつ、加振後の外観にも優れる高減衰積層体が得られることを知見し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(4)を提供する。
【0008】
(1)高減衰積層体用ゴム組成物と硬質板とが交互が積層し、外周側面に被覆ゴムを有する高減衰積層体であって、
上記被覆ゴムが、内層ゴム層および外層ゴム層の2層構造からなり、
上記内層ゴム層が、破断伸びが700%以上で硬度が65以下のゴム組成物から形成され、
上記外層ゴム層が、破断伸びが600%以上で硬度が75以上のゴム組成物から形成され、
上記内層ゴム層を形成する上記ゴム組成物と、上記外層ゴム層を形成する上記ゴム組成物との硬度の差が15以上である高減衰積層体。
【0009】
(2)上記内層ゴム層の厚みと上記外層ゴム層の厚みとの比が、2:8〜8:2である上記(1)に記載の高減衰積層体。
【0010】
(3)上記外層ゴム層を形成する上記ゴム組成物が、ジエン系ゴム100質量部と、カーボンブラック60〜90質量部と、石油樹脂15〜50質量部とを含有する上記(1)または(2)に記載の高減衰積層体。
【0011】
(4)上記内層ゴム層を形成する上記ゴム組成物が、ジエン系ゴム100質量部と、カーボンブラック10〜55質量部と、石油樹脂20質量部以下とを含有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の高減衰積層体。
【発明の効果】
【0012】
以下に説明するように、本発明によれば、ゴム支承体としての性能を保持しつつ、加振後の外観にも優れる高減衰積層体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の高減衰積層体(以下、「本発明の積層体」ともいう。)は、高減衰積層体用ゴム組成物と硬質板とが交互が積層し、外周側面に被覆ゴムを有する高減衰積層体であって、上記被覆ゴムが、内層ゴム層および外層ゴム層の2層構造からなり、
上記内層ゴム層が、破断伸びが700%以上で硬度が65以下のゴム組成物(以下、「内層ゴム組成物」ともいう。)から形成され、
上記外層ゴム層が、破断伸びが600%以上で硬度が75以上のゴム組成物(以下、「外層ゴム組成物」ともいう。)から形成され、
上記内層ゴム層を形成する上記ゴム組成物と、上記外層ゴム層を形成する上記ゴム組成物との硬度の差が15以上である高減衰積層体である。
次に、本発明の積層体を構成する高減衰積層体用ゴム組成物および硬質板ならびに内層ゴム組成物および外層ゴム組成物について説明する。
【0014】
[高減衰積層体用ゴム組成物]
本発明においては、上記高減衰積層体用ゴム組成物は特に限定されず、例えば、従来公知の積層ゴム支承体を構成するゴム層(ゴムシート)を形成するゴム組成物を用いることができる。
このようなゴム組成物としては、具体的には、例えば、ジエン系ゴム;カーボンブラック、シリカなどの無機充填剤;石油樹脂;加硫剤、加硫促進剤などの添加剤;等を含有する高減衰ゴム組成物が挙げられる。
【0015】
<ジエン系ゴム>
上記ジエン系ゴムは特に限定されず、その具体例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br−IIR、Cl−IIR)、クロロプレンゴム(CR)等が挙げれる。
これらの中でも、モジュラス、引張強さ、切断時伸び等の物性と加工性等のバランスが良好となる理由からNRであるのが好ましく、減衰性、せん断弾性率の温度依存性をより低減させる理由からBRであるのが好ましい。
【0016】
本発明においては、上記ジエン系ゴムをそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合の上記ジエン系ゴムの好適な組み合わせとしては、ゴム成分同士の相溶性、加工性、グリーン強度および加硫物性に優れ、また、高減衰積層体の温度依存性と減衰性を確保できる観点から、例えば、NRとBR、IRとBR、NRとIRとBRが挙げられる。中でも、この特性により優れる点で、NRとBRが好ましい。これらの混合比率は特に限定されない。
【0017】
<無機充填剤>
上記無機充填剤は特に限定されず、その具体例としては、カーボンブラック、シリカ、T−クレー、カオリンクレー、ろう石クレー、セリサイトクレー、焼成クレー、けいそう土、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、石英とカオリナイトとの凝集体等が挙げられる。
これらのうち、ゴムの補強効果が優れ、本発明の積層体のモジュラス、引張強さ、切断時伸び、せん断弾性率が優れる理由から、カーボンブラック、シリカであるのが好ましい。
【0018】
(カーボンブラック)
本発明においては、カーボンブラックは、従来公知のものを使用することができる。
【0019】
また、本発明においては、CTAB吸着比表面積が100m2/g以上のカーボンブラックを用いるのが好ましく、110〜370m2/gのカーボンブラックを用いるのがより好ましい。
CTAB吸着比表面積が100m2/g以上で範囲であると、得られる本発明の積層体の減衰性をより高く維持することができる。
ここで、CTAB吸着比表面積は、カーボンブラックがゴム分子との吸着に利用できる表面積を、CTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)の吸着により測定した値である。
このようなカーボンブラックとしては、例えば、SAF、ISAF、HAFを挙げることができる。なお、CATB吸着比表面積は、ASTM D3765−80に記載の方法により測定することができる。
【0020】
本発明においては、高減衰積層体用ゴム組成物におけるカーボンブラックの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、40〜75質量部でるのが好ましく、50〜75質量部であるのがより好ましい。
カーボンブラックの含有量がこの範囲であると、得られる本発明の積層体の減衰性が高く、せん断弾性率が良好となる。
【0021】
(シリカ)
本発明においては、シリカは、従来公知のものを使用することができる。
シリカとしては、具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ等を挙げることができる。
また、シリカは、平均凝集粒径が、5〜50μmのものが好ましく、5〜30μmのものがより好ましい。
【0022】
本発明においては、高減衰積層体用ゴム組成物におけるシリカの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、5〜35質量部であるのが好ましく、10〜30質量部であるのがより好ましい。
シリカの含有量がこの範囲であると、得られる本発明の積層体の減衰性が高く、せん断弾性率が良好となる。
【0023】
<石油樹脂>
上記石油樹脂は特に限定されず、その具体例としては、C5系の脂肪族不飽和炭化水素の重合体、C9系の芳香族不飽和炭化水素の重合体、C5系の脂肪族不飽和炭化水素とC9系の芳香族不飽和炭化水素との共重合体等が挙げられる。
【0024】
C5系の脂肪族不飽和炭化水素としては、具体的には、例えば、ナフサの熱分解により得られるC5留分中に含まれる、1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテンのようなオレフィン系炭化水素;2−メチル−1,3−ブタジエン、1,2−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,2−ブタジエンのようなジオレフィン系炭化水素;等が挙げられる。
これらは、適当な触媒の存在下で、重合または共重合されることが可能である。ここで、C5系の脂肪族不飽和炭化水素の重合体とは、一種のC5系の脂肪族不飽和炭化水素の単独重合体と、二種以上のC5系の脂肪族不飽和炭化水素の共重合体のいずれをもいう。
【0025】
C9系の芳香族不飽和炭化水素としては、具体的には、例えば、ナフサの熱分解により得られるC9留分中に含まれる、α−メチルスチレン、o−ビニルトルエン、m−ビニルトルエン、p−ビニルトルエンのようなビニル置換芳香族炭化水素等が挙げられる。
これらは、適当な触媒の存在下で、重合または共重合されることが可能である。ここで、C9系の芳香族不飽和炭化水素の重合体とは、一種のC9系の芳香族不飽和炭化水素の単独重合体と、二種以上のC9系の芳香族不飽和炭化水素の共重合体のいずれをもいう。
【0026】
また、C5系の脂肪族不飽和炭化水素とC9系の芳香族不飽和炭化水素との共重合体は、該共重合体の軟化点が高くなる点で、C9系の芳香族不飽和炭化水素ユニットが60モル%以上であるものが好ましく、90モル%以上であるものがより好ましい。
C5系の脂肪族不飽和炭化水素とC9系の芳香族不飽和炭化水素との共重合体は、適当な触媒の存在下で、共重合可能である。
【0027】
上記石油樹脂は、ジエン系ゴムの物性に対し、その分子量および二重結合の反応性が影響を与えるので、軟化点(JIS K2207)が100℃以上のものが好ましく、120℃以上のものがより好ましい。
【0028】
本発明においては、高減衰積層体用ゴム組成物における石油樹脂の含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、5〜50質量部であるのが好ましく、10〜45質量部であるのがより好ましい。
石油樹脂の含有量がこの範囲であると、得られる本発明の積層体は、高い減衰性を維持しつつ、温度依存性が小さく、長期の繰り返しせん断変形に対する減衰性およびせん断弾性率が安定なものとなる。
【0029】
<添加剤>
上記添加剤としては、例えば、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、可塑剤、軟化剤、加硫助剤、難燃剤、耐候剤、耐熱剤等が挙げられる。
加硫剤としては、具体的には、例えば、硫黄、酸化亜鉛;TMTDなどの有機含硫黄化合物;ジクミルペルオキシドなどの有機過酸化物;等が挙げられる。
加硫促進剤としては、具体的には、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)などのスルフェンアミド類;メルカプトベンゾチアゾールなどのチアゾール類;テトラメチルチウラムモノスルフィドなどのチウラム類;ステアリン酸;等が挙げられる。
老化防止剤としては、具体的には、例えば、TMDQなどのケトン・アミン縮合物;DNPDなどのアミン類;スチレン化フェノールなどのモノフェノール類;等が挙げられる。
可塑剤としては、具体的には、例えば、フタル酸誘導体(例えば、DBP、DOP等)、セバシン酸誘導体(例えば、DBS等)のモノエステル類等が挙げられる。
軟化剤としては、具体的には、例えば、パラフィン系オイル(プロセスオイル)等が挙げられる。
【0030】
高減衰積層体用ゴム組成物の製造(調製)方法は、特に限定されないが、例えば、上述した各成分を配合した未加硫ゴム組成物を、公知の方法、装置を用いて、混練等により調製できる。
【0031】
[硬質板]
本発明においては、上記硬質板は特に限定されず、例えば、従来公知の積層ゴム支承体を構成する鉄板(一般構造用鋼板、冷間圧延鋼板等)を用いることができる。
【0032】
[内層ゴム組成物]
上記内層ゴム層は、本発明の積層体の外周側面を被覆する2層構造の被覆ゴムの内層を構成するゴム層であって、破断伸びが700%以上で硬度が65以下のゴム組成物から形成される。
【0033】
本発明においては、上記内層ゴム層を形成する上記ゴム組成物は、加硫後の破断伸びが700%以上で硬度が65以下となるゴム組成物であれば特に限定されないが、硬度は40以上であるのが好ましく、具体的には、ジエン系ゴム100質量部と、カーボンブラック10〜55質量部と、石油樹脂20質量部以下とを含有するゴム組成物が好適に例示される。
また、後述する外層ゴム組成物の加硫速度に近づける観点から、加硫剤および加硫促進剤の含有量を後述する外層ゴム組成物における含有量よりも減らし、スコーチ防止剤を含有するのが好ましい。
ここで、ジエン系ゴム、カーボンブラック等の組成成分については、上述した高減衰積層体用ゴム組成物に含有するものと同様である。
【0034】
内層ゴム組成物の製造(調製)方法は、特に限定されないが、例えば、上述した各成分を配合した未加硫ゴム組成物を、公知の方法、装置を用いて、混練等により調製できる。
【0035】
[外層ゴム組成物]
上記外層ゴム層は、本発明の積層体の外周側面を被覆する2層構造の被覆ゴムの外層を構成するゴム層であって、破断伸びが600%以上で硬度が75以上のゴム組成物から形成される。
【0036】
本発明においては、上記外層ゴム層を形成するゴム組成物は、加硫後の破断伸びが600%以上で硬度が75以上となるゴム組成物であれば特に限定されないが、硬度は90以下であるのが好ましく、具体的には、上述した高減衰積層体用ゴム組成物と同様の組成物、具体的には、ジエン系ゴム100質量部と、カーボンブラック60〜90質量部と、石油樹脂15〜50質量部とを含有するゴム組成物が好適に例示される。
【0037】
外層ゴム組成物の製造(調製)方法は、特に限定されないが、例えば、上述した各成分を配合した未加硫ゴム組成物を、公知の方法、装置を用いて、混練等により調製できる。
【0038】
ここで、上述した内層ゴム組成物および外層ゴム組成物における破断伸びおよび硬度の値は、加硫後のゴム組成物の測定値をいい、本発明においては、以下に示す方法で測定した値である。
【0039】
<破断伸び>
未加硫ゴム組成物を148℃のプレス成型機を用い、面圧3.0MPaの圧力下で45分間加硫して、2mm厚の加硫シートを作製した。このシートからJIS3号ダンベル状の試験片を打ち抜き、引張速度500mm/分での引張試験をJIS K6251−2004に準拠して行い、切断時の伸び(EB)[%]を室温にて測定した。
【0040】
<硬度>
上記破断伸びと同様の試験片について、JIS K6253−1997の「タイプAデュロメータ硬さ試験」に準じて、ショアA硬度を測定した。
【0041】
また、本発明においては、上記内層ゴム組成物と、上記外層ゴム組成物との硬度の差が15以上であり、20以上であるのが好ましい。
【0042】
このような内層ゴム組成物および外層ゴム組成物から構成される2層構造の被覆ゴムを有することにより、本発明の積層体は、ゴム支承体としての性能を保持しつつ、加振後の外観にも優れる。
これは、外層ゴム組成物により、上述した高減衰積層体用ゴム組成物が上述した硬質板の間からはみ出す力を抑制し、内層ゴム組成物により、このゴム層が硬質板により拘束(接着)されている部分の動きを緩和することができるためであると考えられる。
【0043】
更に、本発明においては、上記内層ゴム層の厚みと上記外層ゴム層の厚みとの比が、2:8〜8:2であるのが好ましく、2:8〜6:4であるのがより好ましい。
上記内層ゴム層の厚みと上記外層ゴム層の厚みとの比がこの範囲にあると、得られる本発明の積層体の加振後の外観がより向上する。
【0044】
本発明の積層体は、上述した高減衰積層体用ゴム組成物と硬質板とを交互に積層し、外周側面に上述した内層ゴム組成物および外層ゴム組成物から構成される2層構造の被覆ゴムを有する高減衰積層体であり、橋梁の支承やビルの基礎免震等に用いられる構造体である。
【0045】
図1に、本発明の積層体の実施態様の一例を表す高減衰積層体の断面概略図を示す。
図1において、符号1は高減衰積層体(免震積層体)を表し、符号2は硬質板を表し、符号3は高減衰積層体用ゴム組成物を表す。また、符号4は被覆ゴムを表し、そのうち、符号4aは内層ゴム層、符号4bは外層ゴム層を表す。
【0046】
図1に一例として示すように、本発明の高減衰積層体1は、上述した高減衰積層体用ゴム組成物3と硬質板2とを交互に積層し、外周側面に上述した内層ゴム組成物から形成される内層ゴム層4aおよび上述した外層ゴム組成物から構成される外層ゴム層4bからなる被覆ゴム4を有する。
また、この高減衰積層体1は、高減衰積層体用ゴム組成物3と硬質板2との間に接着層を設けて構成してもよく、また、接着層を設けずに直接加硫して構成してもよい。
同様に、この高減衰積層体1は、硬質板2および高減衰積層体用ゴム組成物3と内層ゴム層4aとの間、ならびに、内層ゴム層4aと外層ゴム層4bとの間に接着層を設けて構成してもよく、また、接着層を設けずに直接加硫して構成してもよい。
【0047】
図1においては、本発明の高減衰積層体1は、高減衰積層体用ゴム組成物3と、硬質板2とを交互に積層させた状態が図示されているが、高減衰積層体用ゴム組成物3は2層以上を積層させた構造としてもよい。
また、図1においては、高減衰積層体用ゴム組成物3について7層、硬質板2について6層の合計13層の例を示してあるが、本発明の高減衰積層体1の高減衰積層体用ゴム組成物3と硬質板2との積層数はこれに限定されず、用いられる用途、要求される特性等に応じて、任意に設定できる。
更に、本発明の高減衰構造体1の大きさ、全体の厚さ、本発明の高減衰積層体用ゴム組成物3の層の厚さ、硬質板の厚さ等についても、用いられる用途、要求される特性等に応じて、任意に設定できる。
【0048】
本発明の積層体を製造するには、上述した高減衰積層体用ゴム組成物をシート状に成形した後に加硫して、シート状のゴム組成物を得た後、接着剤を含む層を設けて硬質板と交互に積層させてもよいし、また、あらかじめ未加硫の本発明の高減衰積層体用ゴム組成物をシート状に成形し、硬質板と交互に積層した後、加熱して加硫・接着を同時に行ってもよい。
また、被覆ゴムについても同様、高減衰積層体用ゴム組成物と硬質板とを積層した後に、上下面をフランジ等により固定し、その外周側面に上述した内層ゴム組成物および外層ゴム組成物をシート状に成形したものをこの順に巻き付けて、加硫する等の方法で設けることができる。
【0049】
高減衰積層体は、振動エネルギーの吸収装置として用いられればその用途、適用条件等は、特に限定されない。中でも、上述の優れた特性を有するため、建築用の振動エネルギーの吸収装置として用いられるのが好ましく、例えば、各種の免震、除振、防振等の振動エネルギーの吸収装置(より具体的には、例えば、道路橋の支承や、橋梁、ビルの基礎免震、戸建免震用途)に好適に用いられる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例に従ってより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0051】
(高減衰積層体用ゴム組成物の調製)
下記第1表に示す組成(単位は質量部)になるように、各化合物を配合してB型バンバリーミキサーにて5分間混練し、未加硫の高減衰積層体用ゴム組成物を調製した。
次に、調製した未加硫の高減衰積層体用ゴム組成物を圧延し、幅900mm×長さ900mm×厚さ5mmのシート状物を作製した。
【0052】
【表1】

【0053】
第1表中の各成分は、以下のものを使用した。
・天然ゴム:STR20、TECK BEE HANG社製
・ブタジエンゴム:NipolBR1220、日本ゼオン社製
・カーボンブラック:ダイヤブラックI、三菱化学社製
・石油樹脂:ハイレジン#120(軟化点120℃、東邦化学社製)
・ソフトクレー:ユニオンクレーRC−1、竹原化学工業社製
・シリカ:ニップシールVN3、東ソー・シリカ社製
・アロマオイル:共石プロセスX−140、共同石油社製
・硫黄:粉末イオウ、細井化学工業社製
・加硫促進剤:ノクセラーCZ、大内新興化学工業社製
【0054】
(未加硫の外層ゴム組成物および内層ゴム組成物の調製)
下記第2表に示す組成(単位は質量部)になるように、各化合物を配合してB型バンバリーミキサーにて5分間混練し、未加硫の外層ゴム組成物および内層ゴム組成物をそれぞれ調製した。
次に、調製した未加硫の外層ゴム組成物および内層ゴム組成物を圧延し、実施例および比較例に応じて以下に示すサイズのシート状物を作製した。
なお、加硫後の外層ゴム組成物および内層ゴム組成物の破断伸びおよび硬度は、第2表に示す通りである。
【0055】
(実施例1)
圧延後の各ゴム組成物を用いて高減衰積層体を作製した。
具体的には、圧延後の高減衰積層体用ゴム組成物の上記シート状物を7枚積層してなるゴム層(幅900mm×長さ900mm×厚さ35mm)の3層と鉄板(幅900mm×長さ900mm×厚さ4.5mm)の2層とをそれぞれ交互に積層し、更に、これらの積層物の上下にそれぞれ鉄板(幅900mm×長さ900mm×厚さ32mm)を1枚積層させた積層体(幅900mm×長さ900mm×厚さ178mm)を作製した。
次いで、作製した積層体の外周側面に、圧延後の内層ゴム組成物(幅178mm×厚さ5mm)および外層ゴム組成物(幅178mm×厚さ5mm)をこの順にそれぞれ1周分巻きつけた。
その後、135℃で600分間プレス加硫し、高減衰積層体を作製した。なお、作製した高減衰積層体の内層ゴム層の厚みと外層ゴム層の厚みとの比は、1:1であった。
【0056】
(実施例2)
圧延後の内層ゴム組成物(幅178mm×厚さ3mm)および外層ゴム組成物(幅178mm×厚さ7mm)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で高減衰積層体を作製した。なお、作製した高減衰積層体の内層ゴム層の厚みと外層ゴム層の厚みとの比は、3:7であった。
【0057】
(実施例3)
圧延後の内層ゴム組成物(幅178mm×厚さ7mm)および外層ゴム組成物(幅178mm×厚さ3mm)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で高減衰積層体を作製した。なお、作製した高減衰積層体の内層ゴム層の厚みと外層ゴム層の厚みとの比は、7:3であった。
【0058】
(比較例1)
内層ゴム組成物を用いず、外周側面に、外層ゴム組成物(幅178mm×厚さ5mm)を2周分巻きつけた以外は、実施例1と同様にして高減衰積層体を作製した。
【0059】
(比較例2)
外層ゴム組成物を用いず、外周側面に、内層ゴム組成物(幅178mm×厚さ5mm)を2周分巻きつけた以外は、実施例1と同様にして高減衰積層体を作製した。
【0060】
(比較例3)
下記第2表に示す組成の内層ゴム組成物を用いた以外は、比較例2と同様にして高減衰積層体を作製した。
【0061】
作製した各高減衰積層体について、以下に示す方法により加振後の外観の評価をした。その結果を第2表に示す。
【0062】
<外観>
作製した各高減衰積層体に、死荷重に相当する鉛直荷重(4200kN)をかけた状態で、2軸せん断試験機を用いて変形周波数0.005Hz、測定温度23℃で、175%歪みを11回加えた。
その後、歪みおよび鉛直荷重を解除し、被覆ゴムの表面を目視により確認し、表面が滑らかなものを加振後の外観により優れるものとして「○」と評価し、表面に筋状のしわが僅かに確認できるものを加振後の外観に優れるものとして「△」と評価し、表面に筋状のしわを有するものを加振後の外観に劣るものとして「×」と評価した。
なお、実施例1、比較例1および比較例3の加振後の被覆ゴムの外観を示す写真を、それぞれ、図2〜4に示す。
【0063】
【表2】

【0064】
第2表中の各成分のうち、第1表中の各成分と異なるものは、以下のものを使用した。
・酸化亜鉛:亜鉛華3号、正同化学社製
・ステアリン酸:LUNAC YA、花王社製
・老化防止剤:6C、精工化学社製
・ワックス:Sunnoc、大内新興化学社製
・スコーチ防止剤:リターダーCTP、大内新興化学社製
【0065】
第2表から明らかなように、外周側面に形成する被覆ゴムを内層ゴム層および外層ゴム層の2層構造とし、これらの層を形成するゴム組成物(加硫物)の破断伸び、硬度および硬度差を特定の値にすることにより、加振後の外観にも優れる高減衰積層体が得られることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、本発明の積層体の実施態様の一例を表す高減衰積層体の断面概略図である。
【図2】図2は、実施例1で作製した高減衰積層体の加振後の被覆ゴムの外観を示す写真である。
【図3】図3は、比較例1で作製した高減衰積層体の加振後の被覆ゴムの外観を示す写真である。
【図4】図4は、比較例3で作製した高減衰積層体の加振後の被覆ゴムの外観を示す写真である。
【符号の説明】
【0067】
1 高減衰積層体(免震積層体)
2 硬質板
3 高減衰積層体用ゴム組成物
4 被覆ゴム
4a 内層ゴム層
4b 外層ゴム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高減衰積層体用ゴム組成物と硬質板とが交互が積層し、外周側面に被覆ゴムを有する高減衰積層体であって、
前記被覆ゴムが、内層ゴム層および外層ゴム層の2層構造からなり、
前記内層ゴム層が、破断伸びが700%以上で硬度が65以下のゴム組成物から形成され、
前記外層ゴム層が、破断伸びが600%以上で硬度が75以上のゴム組成物から形成され、
前記内層ゴム層を形成する前記ゴム組成物と、前記外層ゴム層を形成する前記ゴム組成物との硬度の差が15以上である高減衰積層体。
【請求項2】
前記内層ゴム層の厚みと前記外層ゴム層の厚みとの比が、2:8〜8:2である請求項1に記載の高減衰積層体。
【請求項3】
前記外層ゴム層を形成する前記ゴム組成物が、ジエン系ゴム100質量部と、カーボンブラック60〜90質量部と、石油樹脂15〜50質量部とを含有する請求項1または2に記載の高減衰積層体。
【請求項4】
前記内層ゴム層を形成する前記ゴム組成物が、ジエン系ゴム100質量部と、カーボンブラック10〜55質量部と、石油樹脂20質量部以下とを含有する請求項1〜3のいずれかに記載の高減衰積層体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−243652(P2009−243652A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93670(P2008−93670)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】