説明

高温及び過酷な環境に曝される基材を保護するためのコーティングシステム及びコーティング製品

基材のCMAS浸透を低減するためのコーティングシステムは、少なくとも内側セラミック層と、外側アルミナ含有層とを含む。外側層は、最大で約50重量%までのチタニアを含む。追加のセラミック層及びアルミナ含有層を設けることができる。コーティングは、ガスタービンエンジン構成要素に用いることができる。コーティング層の堆積法は、構成要素の最終用途に応じて決めることができる。コーティングされた製品は、基材と、基材上の任意選択のボンドコートと、記ボンドコートの上又は該ボンドコートがない場合には前記基材上にあるコーティングと、を含む。内側セラミック層が、溶射法、物理蒸着法、及びサスペンションプラズマ溶射法から選択された堆積法の徴候である微細構造を示し、外側アルミナ含有層が、サスペンションプラズマ溶射法、溶液プラズマ溶射法、及び高速酸素燃料溶射法から選択された堆積法の徴候である微細構造を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的に、ガスタービンエンジンの過酷な熱環境のような高温に曝される構成要素のためのコーティングシステム、並びにこのようなコーティングシステムでコーティングされた製品に関する。より詳細には、本発明は、セラミック熱障壁コーティング層の上に施工されたアルミナ含有層を備えたコーティングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン効率は、燃焼ガスの温度に直接関連性がある。過酷な環境に曝されるこのような構成要素において、高い温度性能の超合金金属を利用することができる。例えば、燃焼器ライナは、ニッケル基超合金から構成することができる。従来、燃焼器ライナは、その内側面を燃焼障壁コーティング(TBC)で覆うことによって高温燃焼から保護することができる。従来の熱障壁コーティングは、高温燃焼ガスに直面する燃焼器ライナの内側面に断熱材をもたらすセラミック材料を含む。燃焼器ライナは、熱的保護の改善が求められている過酷な熱条件に曝される幾つかのタイプの構成要素の例証に過ぎない。
【0003】
セラミック材料及び特にイットリア安定化ジルコニア(YSZ)は、温度性能が高く、熱伝導率が低く、及びプラズマ溶射、フレーム溶射、及び物理蒸着(PVD)法による堆積が比較的容易であることに起因して、TBC材料として広く使用されている。空気プラズマ溶射(APS)は、設備コストが比較的少なく、施工及びマスキングが容易であるといった利点があるが、ガスタービンエンジンの最も高い温度領域で利用されるTBCは、歪み耐性の柱状粒子構造をもたらすPVD、特に電子ビームPVD(EBPVD)によって堆積されることが多い。
【0004】
TBCシステムの耐用年数は、通常、熱疲労によって引き起こされる剥離事象により制限される。剥離は、セラミックTBCと金属基材との間のCTEの不一致に加え、ガスタービンエンジン運転中にTBC上に形成される堆積物によりTBC構造体が高密度になる結果として生じる可能性がある。これらの堆積物は、カルシア、マグネシア、アルミナ、及びシリカのような酸化物を含み、これらが高温で存在するときには、本明細書でCMASと呼ばれる化合物を形成する点に留意されたい。CMASは、比較的低い共晶融点(約1190℃)を有し、溶融時にはTBCの高温領域に浸透する可能性があり、該高温領域で冷却中に再固化する。温度サイクル中、CMASとTBCとのCTEの不一致は剥離を促進させる。TBCが失われると、下にある基材に対する温度曝露がより高温になり、酸化が加速され、クリープ及び低サイクル疲労性能が不十分になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CMAS浸透によって引き起こされる損傷の予防を更に改善することが継続的に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の要求は、高温で過酷な気候において利用される構成要素に対してコーティングシステムを提供する例示的な実施形態によって対処することができる。保護される構成要素は、ガスタービンエンジンの高温セクションのような高温環境で使用するのに好適とすることができる。例示的な実施形態は、CMAS浸透の作用を阻止又は緩和するのに特に有効とすることができる。
【0007】
例示的な実施形態は、基材の少なくとも一部上にある任意選択のボンドコートと、ボンドコートの上又は該ボンドコートがない場合には基材上にあるコーティングとを含む。本コーティングは、内側セラミック層と、該内側セラミック層の外側にある外側アルミナ含有層とを含み、外側アルミナ含有層が、0%よりも多く且つ最大で約50重量%までの量のチタニアを含む。内側セラミック層は、溶射法、物理蒸着法、及びサスペンションプラズマ溶射法から選択された堆積法の徴候である微細構造を示す。外側アルミナ含有層は、サスペンションプラズマ溶射法、溶液プラズマ溶射法、及び高速酸素燃料溶射法から選択された堆積法の徴候である微細構造を示す。
【0008】
別の例示的な実施形態は、基材と、基材の少なくとも一部上にある任意選択のボンドコートと、ボンドコートの少なくとも一部の上又は該ボンドコートがない場合に基材の少なくとも一部の上にあるコーティングと、を含む。例示的なコーティングは、内側セラミック層と該内側セラミック層の外側にある外側アルミナ含有層とを含み、前記外側アルミナ含有層が、0%よりも多く且つ最大で約50重量%までの量のチタニアを含む。例示的な実施形態において、内側セラミック層が、溶射法、物理蒸着法、及びサスペンションプラズマ溶射法から選択された堆積法の徴候である微細構造を示し、外側アルミナ含有層が、サスペンションプラズマ溶射法、溶液プラズマ溶射法、及び高速酸素燃料溶射法から選択された堆積法の徴候である微細構造を示す。
【0009】
本発明と見なされる主題は、本明細書と共に提出した特許請求の範囲に具体的に指摘し且つ明確に特許請求している。しかしながら、本発明は、添付図面と共に以下の説明を参照することによって最もよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ガスタービンエンジンにおける例示的な環状燃焼器の一部の軸方向断面図。
【図2】本明細書で開示される例示的なコーティングシステムでコーティングされた製品の図。
【図3】本明細書で開示される代替の例示的なコーティングシステムでコーティングされた製品の図。
【図4】本明細書で開示される例示的プロセスを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
種々の図全体を通して同一の参照符号が同じ要素を表す図面を参照すると、図1は、長手方向又は軸方向中心軸線12の周りで軸対称である環状燃焼器10を示す。燃焼器は、運転中に空気14を加圧するよう構成された多段軸流圧縮機(図示せず)を有するガスタービンエンジンに好適に装着される。気化器16の列が、燃焼器内に燃料を導入し、該燃焼器が点火されて高温の燃焼ガス20を発生し、該燃焼ガスが下流側に流れる。
【0012】
高圧タービンのタービンノズル22は、燃焼器の外側端部に配置されて燃焼ガスを受け取り、該燃焼ガスは、高圧タービンロータブレード(図示せず)の列を通って再配向され、高圧タービンロータブレードの列がディスク及びシャフトを回転させて上流側の圧縮機に動力を供給する。低圧タービン(図示せず)は通常、典型的なターボファン航空機ガスタービンエンジン応用における上流側ファン、又は典型的な海洋及び産業用途において出力シャフトに動力を供給するための追加のエネルギーを抽出するのに使用される。
【0013】
例示的な燃焼器10は、環状の半径方向外側ライナ24と、そこから半径方向内向きに離間した環状の半径方向内側ライナ26とを含み、これらの間を燃焼ガス20が流れる環状燃焼室を定めるようになる。2つのライナ24、26の上流側端部は、環状ドームによって共に接合され、該ドームには気化器16が好適に装着される。
【0014】
2つのライナ24、26は、それぞれ凹面状及び凸面状の内側面を有し、これら内側面は、燃焼ガス20に直面し且つ同様に構成されている。従って、外側ライナ24の以下の説明は、形成される燃焼室に対して半径方向の外側位置と内側位置が対向していると認識して、内側ライナ26にも同様に当てはまる。
【0015】
ライナ24、26の特定領域は、例示的なコーティングシステム40を備えることができる。コーティングシステムの代替の実施形態が、図2〜3のコーティングシステム40a及び40bとしてそれぞれより詳細に例示される。
【0016】
図2は、燃焼器ライナ24、26又は高温環境での使用に適合された他の構成要素を表す基材42に適用される例示的なコーティングシステム40aを示す。基材42は、任意選択的にボンドコート44でコーティングすることができる。ボンドコート44は、例えば、MCrAlX(ここで、Mは鉄、コバルト、及び/又はニッケル、Xはイットリア又は別の希土類もしくは反応性元素などの活性元素)などのオーバレイコーティングを含むことができる。MCrAlX材料は、一般に所定の組成に適用され、堆積プロセス中に基材と有意に反応しないので、オーバレイコーティングと呼ばれる。基材42は、ニッケル基超合金のような超合金材料から構成することができる。
【0017】
他の例示的な実施形態において、ボンドコート44は、Al、PtAl、及び同様のものなどの拡散被覆として当該技術分野で公知であるものを含むことができる。ボンドコートを形成する材料は、所望の組成の稠密で均一な接着コーティングを生成することができるあらゆる好適な技法により施工することができる。このような技法は、限定ではないが、拡散プロセス、低圧プラズマ溶射、空気プラズマ溶射、スパッタリング、陰極アーク、電子ビーム物理蒸着、高速プラズマ溶射法(例えば、HVOF、HVAF)、燃焼プロセス、ワイヤ溶射法、レーザビームクラッディング、電子ビームクラッディング、その他を含むことができる。特定の実施形態において、ボンドコート44に対してセラミック障壁コーティングの接着を促進するために、所望の表面粗さを示すことが望ましい場合がある。
【0018】
例示的な実施形態において、基材は、存在する場合にはボンドコートを全体的に覆うセラミックコーティング層48を備える。セラミック層48は、当業者には公知であるようなセラミックベースの化合物から形成される。代表的な化合物は、限定ではないが、何れかの安定化ジルコン酸塩、何れかの安定化ハフニウム酸塩、前述の化合物のうちの少なくとも1つを含む組み合わせ、及び同様のものを含む。実施例としては、イットリア安定化ジルコニア、カルシア安定化ジルコニア、マグネシア安定化ジルコニア、カルシア安定化ハフニウム酸塩、及びマグネシア安定化ハフニウム酸塩が挙げられる。特定の例示的な実施形態は、当該技術分野において「低伝導率TBC」と呼ばれるものを含み、これは、ジルコニアに加えて、7YSZとして商業的に知られた7重量パーセントのイットリアで部分的に安定化され且つジルコニアよりも低い熱伝導率を示す、イットリウム、ガドリウム、イッテルビウム、及び/又はタンタルを含む。
【0019】
セラミックベースの化合物は、当業者に公知の多くのプロセスを用いて基材に施工することができる。好適な施工プロセスは、限定ではないが、物理蒸着、溶射、スパッタリング、ゾル−ゲル、スラリー、前述の施工プロセスのうちの少なくとも1つを含む組み合わせ、及び同様のものを含む。
【0020】
電子ビーム物理蒸着(EB−PVD)を用いた熱障壁コーティングは、柱間に隙間が形成された自立柱状体を示す柱間微細構造を形成することは、当業者には明らかであろう。また、当業者には理解されるように、溶射プロセスを介して施工される熱障壁コーティングは、溶射プロセス中に形成されるスプラット及び微小亀裂に起因して、蛇行した相互連結の多孔性を示す。従って、場合によっては、コーティング層の微細構造に基づいて施工モードを決定することが可能である。
【0021】
例示的な実施形態において、セラミック層48は、特にタービンブレードなどの翼形部を有する部品に対してEB−PVDを用いて施行され、従って、関連する柱間微細構造を示す。別の例示的な実施形態において、セラミック層48は、特に燃焼器ライナに対して溶射法(例えば、空気プラズマ溶射)を用いて施行され、従って、関連する非柱状の不規則な平坦粒状微細構造を示す。
【0022】
例示的な実施形態において、コーティングシステム40aは、最も外側にあるアルミナ含有層50を含む。例示的な実施形態において、アルミナ含有層50は、HVOF法を用いて施行される。他の特定の例示的な実施形態において、最外層50は、サスペンションプラズマ溶射法又は溶液プラズマ溶射法により設けることができる。例示的な実施形態において、アルミナ含有層50は、実質的に全てアルミナを含む(重量で約100%)組成により堆積することができる。例示的な実施形態において、最外層50は、重量で0よりも多く最大で約50%までの量のチタニア(TiO2)を含み、残部が実質的にアルミナ(Al2O3)である。特定の例示的な実施形態は、約30〜50重量%のチタニアを含み、残部はアルミナである。本明細書で使用される場合、範囲として表される値は、端点を含めて部分範囲を全て含む。例えば、範囲30〜50重量パーセントは、30%、50%、及び30%から50%の間の値の全ての部分範囲を含む。他の実施形態は、約40〜50重量%のチタニアを含み、残部はアルミナである。
【0023】
例証として、HVOFを用いてセラミック層48上にアルミナ含有層50を堆積することができる。熱源として、入力ガス、燃料、及びノズル設計により制御される火炎及び熱プルームが挙げられる。酸素及び燃料は高圧で供給され、火炎は音速でノズルから放出されるようにする。アルミナ含有層50は周囲条件下で堆積することができる。
【0024】
例示的な実施形態において、ボンドコート44は、コーティングシステム40a及び詳細にはセラミック層48を基材42に接着するのに十分な厚みで設けることができる。例示的な実施形態において、ボンドコート44は、約127ミクロン(5ミル)の公称厚みで設けられる。所望の結果を得るために他のボンドコートの厚みを利用してもよい。本明細書で提供される例示的なコーティングシステムの全てのコーティング層の厚みは、限定としてではなく例証として与えられる。使用する用語「公称厚み」は、堆積される厚みの目標を記載している。実際に堆積される厚みは、受け入れ可能な許容範囲内で変わる可能性がある。
【0025】
セラミック層48は、下にある基材42に対する所望の熱保護をもたらすのに十分な厚みで設けることができる。例示的な実施形態において、セラミック層48は、公称で約508ミクロン(20ミル)の厚みとすることができる。他の例示的な実施形態において、セラミック層は、本開示の範囲内で保証される状況の場合、508ミクロンよりも小さいか又は大きい公称厚みを備えることもできる。
【0026】
例示的な実施形態において、アルミナ含有層50は、所望のCMAS浸透緩和をもたらすのに十分な厚みで設けることができる。例示的な実施形態において、層50は、約25ミクロン(約1ミル)の公称厚みを有することができる。従って、コーティングシステム40aは、約533ミクロン(21ミル)の公称全厚みを有することができる。ボンドコート44は、約127ミクロン(5ミル)の厚みを有することができる。
【0027】
代替の実施形態は、基材に施工される多層コーティングシステムを含む。一般的に言えば、多層コーティングシステムは、最外のアルミナ含有層に加えて、セラミック層の間に交互に配置された1つ又はそれ以上のアルミナ含有層を含む。多層コーティングシステム40bの1つの特定の実施形態が図3に例証として示される。
【0028】
図示のように、基材42は、上記で検討したように、ボンドコート44を備えることができる。基材42は、存在する場合にはボンドコート44の上にあり且つボンドコート44と接触し、或いはボンドコートが存在しない場合には、基材の上にあり且つ基材と接触する内側セラミック層60を備える。内側セラミック層60の組成は、前述のセラミック層48と同様とすることができる。内側セラミック層60は、セラミック層48よりも小さい公称厚みを備えることができる。例示的な実施形態において、内側セラミック層60は、約305ミクロン(12ミル)の公称厚みを有する。他の例示的な実施形態において、内側セラミック層60の厚みは、約203〜355ミクロン(約8〜14ミル)の間とすることができる。他の例示的な実施形態において、内側セラミック層60の厚みは、少なくとも約254ミクロン(10ミル)である。内側セラミック層60は、所望の微細構造及び/又は厚みに応じて、空気プラズマ溶射、EB−PVD、或いは前述の他の堆積法によって堆積することができる。
【0029】
例示的な実施形態において、多層コーティングシステム40bは、内側セラミック層60の上にあり且つこれと接触する第1の中間アルミナ含有層62を含む。例示的な実施形態において、第1の中間アルミナ含有層62は、上記で説明したアルミナ含有層50を設ける際に使用した組成と同様の組成で堆積することができる。アルミナ含有層62は、最大約50重量%までの何れかの量のチタニアを含むことができ、残部はアルミナである(すなわち、チタニアとアルミナの重量比が最大で1:1である)。例示的な実施形態において、第1の中間アルミナ含有層62は、約25ミクロン(1ミル)の公称厚みで設けられる。25ミクロンよりも大きい又は小さい厚みは、本発明の範囲内で企図される。例示的な実施形態において、アルミナ含有層62は、HVOF法を用いて設けられる。本明細書で使用されるパーセントは全て、別途指定のない限り「重量」で与えられる。
【0030】
例示的な実施形態において、第1の中間セラミック層64は、第1の中間アルミナ含有層62の上にあり且つこれと接触している。第1の中間セラミック層64の組成は、内側セラミック層60と実質的に同様とすることができる。例示的な実施形態において、第1の中間セラミック層64は、約51ミクロン(2ミル)の公称厚みで施工される。層64は、所望の微細構造及び/又は厚みに応じて、空気プラズマ溶射、EB−PVD、又は他の堆積法により堆積させることができる。
【0031】
例示的な実施形態は、第1の中間セラミック層64の上にあり且つこれと接触している第2の中間アルミナ含有層68を含む。層68は、層62と同様の組成から形成することができるが、特定の例示的な実施形態において、チタニア/アルミナ比は、層62のチタニア/アルミナ比よりも高く又は低くすることができる。例示的な実施形態において、第2の中間アルミナ含有層68は、約50%のチタニア及び50%のアルミナを有する組成から形成される。例示的な実施形態において、アルミナ含有層68は、約25ミクロン(約1ミル)の公称厚みで設けられる。例示的な実施形態において、層68はHVOF法により提供される。
【0032】
図3に示す例示的な実施形態は、全体的にアルミナ含有層68の上にあり且つこれと接触する第2の中間セラミック層70を含む。例示的な実施形態において、層70の組成は、層60及び/又は層64と実質的に同様とすることができる。別の例示的な実施形態において、層70は、組成勾配を含む「遷移層」とすることができる。層70は、溶射プロセスを用いて堆積することができる。他の例示的な実施形態において、層70は、EB−PVDのような物理蒸着プロセスで堆積することができる。特定の例示的な実施形態において、層70は、層68及び/又は層64よりも多孔性であることが有利とすることができる。例示的な実施形態において、層70は、約51ミクロン(2ミル)の公称厚みで設けることができる。
【0033】
例示的な実施形態において、コーティングシステム40bは、外側アルミナ含有層72を含む。層72は、アルミナ含有層62及び/又は層68を設ける際に使用された組成と同様のコーティング組成により設けることができる。例示的な実施形態において、層72は、実質的にアルミナ(すなわち、100重量%)とすることができる。他の例示的な実施形態は、0%よりも多く、最大で約50重量%までの量のチタニアを含む。例示的な実施形態において、層72は、約25ミクロン(約1ミル)の公称厚みで設けられる。本明細書で開示されるコーティング層の何れ厚みも所望の結果を得るために他の公称値で設けることもできる。例示的な実施形態において、最外アルミナ含有層72は、HVOF法を用いて提供される。
【0034】
一般に、チタニアは、アルミナ単独と比べて可撓性を向上させるためにコーティング層の弾性を変化させるのに十分な量をアルミナ含有層に添加することができる。チタニアの添加は、アルミナ層によって実現されるCMAS浸透緩和を損なうものではない。
【0035】
更に別の代替の実施形態において、本明細書で開示されるアルミナ含有層(例えば、アルミナ又はアルミナ/チタニア)は、サスペンションプラズマ溶射法、溶液プラズマ溶射法、又は高速空気プラズマ溶射法を用いて堆積することができる。堆積直後の微細構造のようなコーティング層の特定の性質は、堆積法の徴候となることができる。
【0036】
本明細書で開示される熱障壁コーティング層の何れかは、ジルコニアに加えて、イットリウム、ガドリウム、イッテルビウム、及び/又はタンタルの酸化物を含む、いわゆる低伝導性の熱障壁組成を含むことができる。
【0037】
加えて、この組成を供用する前にアルミナ含有層の相変態、従って体積変化を制御することが有利とすることができる。従って、コーティング製品は、実質的に全てのアルミナがαアルミナに確実に転化されるように、1つ又はそれ以上の適切な熱処理に曝される場合がある。例示的な熱処理は、どのような粉体を堆積させることもなく溶射設備を1又はそれ以上移動させることを含むことができる。或いは、構成部品を約2000〜2200°Fの範囲の温度で約1〜4時間の間炉内で真空熱処理することができる。例示的な実施形態は、(例えば、多層コーティングシステムにおいて)アルミナ含有層の各堆積の後に相安定化熱処理を含むことができ、或いは、単一の相安定化熱処理を利用してもよい。
【0038】
図4は、例示的なプロセスの概要を示している。例示的なプロセスにおいて、基材が提供される(ステップ100)。例示的な基材は、燃焼器ライナ、翼形部、又は高温環境で使用する他の構成要素を含むことができる。基材は、ニッケル基調合期などの超合金を含むことができる。基材の一部は、任意選択のボンドコートを備えることができる(ステップ110)。好適なボンドコートは、オーバレイボンドコート(例えば、MCrAlX)及び拡散ボンドコート(例えば、アルミナイドタイプのボンドコート)を含む。例示的なプロセスにおいて、第1のセラミック層が、ボンドコート上に、或いはボンドコートがない場合には基材上に堆積される(ステップ120)。第1のセラミック層を提供するのに使用されるプロセスは、上記でより完全に説明されたように、所望の微細構造及び/又は基材タイプによって決まることができる。
【0039】
例示的なプロセスにおいて、最外のアルミニウム含有層が提供される(ステップ130)。最外アルミニウム含有層は、実質的に全てアルミニウムとすることができ、或いは、最大で約50重量%までのチタニアを含むことができる。
【0040】
例示的なプロセスにおいて、任意選択的に、図4の破線のボックスで示されるように、追加の層を設けることができる(ステップ140)。追加の層を設けるステップは、ステップ130において最外アルミニウム含有層を設ける前に、追加のアルミナ含有層を堆積すること(ステップ150)、及び追加のセラミック層を堆積すること(ステップ160)を含むことができる。中間層はまた、アルミナ及び/又はアルミナ/チタニア及びセラミック材料で傾斜組成にすることができる。例示的な実施形態において、傾斜組成層は、セラミック層の境界付近でより高いセラミック含有量を含み、層の厚みに伴ってアルミナ又はアルミナ/チタニア含有量が漸次的に増大することができる。
【0041】
上記で検討したように、例示的なプロセスは更に、堆積直後のアルミナを安定α−アルミナ形態に転化するための1つ又はそれ以上の層安定化熱処理を含むことができる。
【実施例1】
【0042】
基材上(又はボンドコートされた基材上)の多層コーティングシステムは、約127〜約254ミクロン(約5〜約10ミル)の厚みを有するイットリア安定化ジルコニアから実質的になる内側セラミック層を含む。内側層の上にある第1の中間アルミナ含有層は、アルミナから、或いは、アルミナと、HVOF法により約25〜約51ミクロン(約1〜2ミル)の厚みに堆積された最大で約50重量%までのチタニアとから実質的になる。る第1の中間アルミナ含有層の上にある第1の中間セラミック層は、約127〜約254ミクロン(約5〜約10ミル)の厚みを有するイットリア安定化ジルコニアから実質的になる。第1の中間セラミック層の上にある最外アルミナ含有層は、アルミナから、或いは、アルミナと、HVOF法を利用して約25〜約51ミクロン(約1〜2ミル)の厚みに堆積された最大で約50重量%までのチタニアとから実質的になる。
【実施例2】
【0043】
基材上(又はボンドコートされた基材上)の多層コーティングシステムは、約127〜約254ミクロン(約5〜約10ミル)の厚みを有するイットリア安定化ジルコニアから実質的になる内側セラミック層を含む。内側セラミック層の上にある第1の中間アルミナ含有層は、約127〜約254ミクロン(約5〜約10ミル)の厚みを有し、50重量%のアルミナ(又は、アルミナ/チタニア)と、残部がイットリア安定化ジルコニアであり、中間アルミナ含有層においてアルミナ(又は、アルミナ/チタニア)の含有量が増大する、空気プラズマ溶射により漸変された層を含む。最外アルミナ又はアルミナ/チタニア層は、HVOF法を用いて約25〜約51ミクロン(約1〜1ミル)に施工される。
【0044】
本明細書は、最良の形態を含む実施例を用いて本発明を開示し、更に、本発明を当業者が実施及び利用することを可能にする。本発明の特許保護される範囲は、請求項によって定義され、当業者であれば想起される他の実施例を含むことができる。このような他の実施例は、請求項の文言と差違のない構造要素を有する場合、或いは、請求項の文言と僅かな差違を有する均等な構造要素を含む場合には、本発明の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0045】
40a コーティングシステム
42 基材
44 ボンドコート
48 セラミックコーティング層
50 アルミナ含有層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一部上にある任意選択のボンドコートと、
前記ボンドコートの上又は該ボンドコートがない場合には前記基材の上にあるコーティングと、
を備え、前記コーティングが、内側セラミック層と該内側セラミック層の外側にある外側アルミナ含有層とを含み、前記外側アルミナ含有層が、0%よりも多く且つ最大で約50重量%までの量のチタニアを含み、前記内側セラミック層が、溶射法、物理蒸着法、及びサスペンションプラズマ溶射法から選択された堆積法の徴候である微細構造を示し、前記外側アルミナ含有層が、サスペンションプラズマ溶射法、溶液プラズマ溶射法、及び高速酸素燃料溶射法から選択された堆積法の徴候である微細構造を示す、コーティングシステム。
【請求項2】
前記外側アルミナ含有層においてアルミナの実質的に全てが、αアルミナ形態で存在する、請求項1に記載のコーティングシステム。
【請求項3】
前記内側セラミック層と前記外側アルミナ含有層との間に配置され、実質的に全てアルミナから又はチタニアが最大で約50重量%までのアルミナ/チタニアから構成される第1の中間アルミナ含有層と、
前記第1の中間アルミナ含有層と前記外側アルミナ含有層との間に配置される第1の中間セラミック層と、
を更に備える、請求項1に記載のコーティングシステム。
【請求項4】
前記内側セラミック層と前記外側アルミナ含有層との間に配置され、セラミック組成及びアルミナ含有組成の組成勾配から構成される第1の中間アルミナ含有層を更に備え、該セラミック組成が前記第1の中間アルミナ含有層と前記内側セラミック層との境界付近でより高くなり、
前記コーティングシステムが更に、
前記第1の中間アルミナ含有層と前記外側アルミナ含有層との間に配置される第1の中間セラミック層を備える、請求項1に記載のコーティングシステム。
【請求項5】
前記内側セラミック層が、イットリア安定化ジルコニア、カルシア安定化ジルコニア、マグネシア安定化ジルコニア、イットリア安定化ハフニア、カルシア安定化ハフニア、マグネシア安定化ハフニア、及びこれらの組み合わせからなる群の少なくとも1つの一種を含む、請求項1に記載のコーティングシステム。
【請求項6】
前記内側セラミック層が、7YSZよりも低い熱伝導性を有する低伝導率の熱障壁コーティング組成を含む、請求項1に記載のコーティングシステム。
【請求項7】
前記内側セラミック層が最大で約508ミクロン(約20ミル)までの公称厚みを有し、前記外側アルミナ含有層が、約25ミクロン(約1ミル)の公称厚みを有する、請求項1に記載のコーティングシステム。
【請求項8】
前記ボンドコートが、最大で約127ミクロン(約5ミル)までの公称厚みを有する、請求項1に記載のコーティングシステム。
【請求項9】
前記ボンドコートが、MCrAlXオーバーコーティングを含み、ここで、Mは鉄、コバルト、及び/又はニッケル、Xは活性元素である、請求項1に記載のコーティングシステム。
【請求項10】
前記内側セラミック層が、約305〜約508ミクロン(約12〜約20ミル)の公称厚みを有し、前記外側アルミナ含有層が約25ミクロン(約1ミル)の公称厚みを有する、請求項1に記載のコーティングシステム。
【請求項11】
前記内側セラミック層が、約305〜約508ミクロン(約12〜約20ミル)の公称厚みを有し、前記外側アルミナ含有層が約25ミクロン(約1ミル)の公称厚みを有し、前記第1の中間アルミナ含有層が最大で約25ミクロン(約1ミル)の公称厚みを有する、請求項3に記載のコーティングシステム。
【請求項12】
コーティングシステムであって、
金属基材の少なくとも一部の上のボンドコートと、
前記ボンドコートの上にあるコーティングと、
を備え、前記コーティングが、
前記ボンドコートの上にあり且つ接触している内側セラミック層と、
前記内側セラミック層の上にあり且つ接触している第1の中間アルミナ含有層と、
前記第1の中間アルミナ含有層の上にあり且つ接触している第1の中間セラミック層と、
前記第1の中間セラミック層の上にあり且つ接触している外側アルミナ含有層と、
を含み、前記外側アルミナ含有層が、0%よりも多く且つ最大で約50重量%までの量のチタニアを含み、前記内側セラミック層が、溶射法、物理蒸着法、及びサスペンションプラズマ溶射法から選択された堆積法の徴候である微細構造を示し、前記外側アルミナ含有層が、サスペンションプラズマ溶射法、溶液プラズマ溶射法、及び高速酸素燃料溶射法から選択された堆積法の徴候である微細構造を示す、コーティングシステム。
【請求項13】
前記外側アルミナ含有層においてアルミナの実質的に全てが、αアルミナ形態で存在する、請求項12に記載のコーティングシステム。
【請求項14】
コーティングされた製品であって、
基材と、
前記基材の少なくとも一部上にある任意選択のボンドコートと、
前記ボンドコートの上又は該ボンドコートがない場合には前記基材の少なくとも一部の上にあるコーティングと、
を備え、前記コーティングが、内側セラミック層と該内側セラミック層の外側にある外側アルミナ含有層とを含み、前記外側アルミナ含有層が、0%よりも多く且つ最大で約50重量%までの量のチタニアを含み、前記内側セラミック層が、溶射法、物理蒸着法、及びサスペンションプラズマ溶射法から選択された堆積法の徴候である微細構造を示し、前記外側アルミナ含有層が、サスペンションプラズマ溶射法、溶液プラズマ溶射法、及び高速酸素燃料溶射法から選択された堆積法の徴候である微細構造を示す、コーティングされた製品。
【請求項15】
前記外側アルミナ含有層においてアルミナの実質的に全てが、αアルミナ形態で存在する、請求項14に記載のコーティングされた製品。
【請求項16】
前記内側セラミック層と前記外側アルミナ含有層との間に配置され、実質的に全てアルミナから、又はチタニアが最大で約50重量%までのアルミナ/チタニアから構成される第1の中間アルミナ含有層と、
前記第1の中間アルミナ含有層と前記外側アルミナ含有層との間に配置される第1の中間セラミック層と、
を更に備える、請求項14に記載のコーティングされた製品。
【請求項17】
前記内側セラミック層と前記外側アルミナ含有層との間に配置され、セラミック組成及びアルミナ含有組成の組成勾配から構成される第1の中間アルミナ含有層を更に備え、該セラミック組成が前記第1の中間アルミナ含有層と前記内側セラミック層との境界付近でより高くなり、
前記コーティングシステムが更に、
前記第1の中間アルミナ含有層と前記外側アルミナ含有層との間に配置される第1の中間セラミック層を備える、請求項14に記載のコーティングされた製品。
【請求項18】
前記内側セラミック層が最大で約508ミクロン(約20ミル)までの公称厚みを有し、前記外側アルミナ含有層が、約25ミクロン(約1ミル)の公称厚みを有する、請求項1に記載のコーティングされた製品。
【請求項19】
前記内側セラミック層が、約305〜約508ミクロン(約12〜約20ミル)の公称厚みを有し、前記外側アルミナ含有層が約25ミクロン(約1ミル)の公称厚みを有する、請求項1に記載のコーティングされた製品。
【請求項20】
前記内側セラミック層が、約305〜約508ミクロン(約12〜約20ミル)の公称厚みを有し、前記外側アルミナ含有層が約25ミクロン(約1ミル)の公称厚みを有し、前記第1の中間アルミナ含有層が最大で約25ミクロン(約1ミル)の公称厚みを有する、請求項2に記載のコーティングされた製品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2013−515171(P2013−515171A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546003(P2012−546003)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/059420
【国際公開番号】WO2011/100019
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】