説明

高熱伝導性積層板

【課題】強度を維持したまま高い熱伝導率を実現し、かつ絶縁信頼性を確保できる積層板並びにプリント配線板を提供すること。
【解決手段】プリプレグを樹脂シートで挟んだ構成、又は前記構成を複数層重ねた構成で、最表層に金属箔を貼り合わせ、加熱成型して得られる積層板であって、前記プリプレグが、ガラス基材に熱硬化樹脂を含浸してなるプリプレグであって、ガラス基材の経糸と緯糸の空隙に樹脂が充填されていない部分があるプリプレグであること、並びに、前記樹脂シートが、熱硬化樹脂に無機フィラーを60〜95質量%含有させたフィラー高充填樹脂を、金属箔又は有機フィルム上に塗布し乾燥して形成される高熱伝導性樹脂シートであることを特徴とする、積層板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高熱伝導性積層板およびそれを用いたプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器においては高性能化、小型化、軽量化等に伴い半導体パッケージの高密度実装化、LSIの高集積化及び高速化等が進み、電子部品において単位面積あたりの発熱量が増大している。そのため、電子部品から熱を外部へ効果的に放散させるべく熱伝導性を向上させることが重要な課題になっている。
【0003】
このような課題に対しては、一般的に、熱伝導性の高いアルミナなどの無機フィラーを高充填させた樹脂を基材として用いることによって、熱伝導性の向上が図られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−274929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ガラス基材にフィラー高充填した樹脂を含浸させるとガラス基材の中まで含浸させるのが難しく、積層板としての絶縁信頼性に問題がある。その為、フィラーの高充填には限界がある。
【0006】
一方、ガラス基材を使用しない樹脂シートや銅箔付き樹脂シートでは、積層板とした時に剛性に欠け、プリント板の強度が不足してしまうという課題がある。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、強度を維持したまま高い熱伝導率を実現し、かつ絶縁信頼性を確保できる積層板並びにプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の手段により前記課題を解決できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明の積層板は、プリプレグを樹脂シートで挟んだ構成、又は前記構成を複数層重ねた構成で、最表層に金属箔を貼り合わせ、加熱成型して得られる積層板であって、前記プリプレグが、ガラス基材に熱硬化樹脂を含浸してなるプリプレグであって、ガラス基材の経糸と緯糸の空隙に樹脂が充填されていない部分があるプリプレグであること、並びに、前記樹脂シートが、熱硬化樹脂に無機フィラーを60〜95質量%含有させたフィラー高充填樹脂を、金属箔又は有機フィルム上に塗布し乾燥して形成される高熱伝導性樹脂シートであることを特徴とする。さらに、本発明は、前記積層板を加工して得られるプリント配線板を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、成型性が良好で、高い熱伝導率を示しながらも絶縁信頼性を確保できる積層板およびプリント配線板、並びにその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は孔空きプリプレグの空隙部を説明するための図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態である、プリプレグ1枚に対して樹脂シート2枚を挟んだ構成の積層板の断面概略図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態である、プリプレグ1枚に対して樹脂シート2枚を挟んだ構成を複数重ねた積層板の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[積層板]
本発明の本発明の積層板は、プリプレグを樹脂シートで挟んだ構成、又は前記構成を複数層重ねた構成で、最表層に金属箔を貼り合わせ、加熱成型して得られる積層板であって、前記プリプレグが、ガラス基材に熱硬化樹脂を含浸してなるプリプレグであって、ガラス基材の経糸と緯糸の空隙に樹脂が充填されていない部分があるプリプレグであること、並びに、前記樹脂シートが、熱硬化樹脂に無機フィラーを60〜95質量%含有させたフィラー高充填樹脂を、金属箔又は有機フィルム上に塗布し乾燥して形成される高熱伝導性樹脂シートであることを特徴とする。
【0013】
このように、無機フィラーを高充填した高熱伝導性樹脂シートで、ガラス繊維の経糸と緯糸の網目の空隙に樹脂が充填されていない孔空きプリプレグを挟んだ構成、もしくはこの構成を重ねた多層構成で加熱成型してなる積層板を作製することにより、孔空きプリプレグの空隙部に高熱伝導樹脂シートの樹脂が充填されることで厚み方向に高い熱伝導を持ち、絶縁信頼性の優れたフィラー高充填した高熱伝導性積層板を得ることができる。
【0014】
以下、本発明の積層板を構成するプリプレグ及び樹脂シートについてそれぞれ詳述する。
【0015】
〔プリプレグ〕
本発明において用いられるプリプレグは孔空きプリプレグである。孔空きプリプレグとは、ガラス基材に熱硬化樹脂を含浸してなるプリプレグにおいて、ガラス繊維の経糸と緯糸の網目の空隙部に樹脂が完全に充填されていない(充填されていない部分がある)プリプレグであり、孔の形状や大きさなどは特に制限はないが、孔が大きいほど本発明効果が著しい。
【0016】
本発明において、ガラス繊維の経糸と緯糸の網目の空隙部に樹脂が完全に充填されていないとは、下記式1に示す空隙率XがX>0を満たすことをいう。
【0017】
式1:X=1−Y/(s×t)
(式中、X:空隙率(樹脂未充填部)、Y:経糸と緯糸に囲まれた部分の樹脂充填面積、s及びt:図1に示す辺長さ)。
【0018】
前記空隙率Xは0より大きければ特に限定はされないが、好ましくは、0.3以上、より好ましくは0.5以上である。上限は特に限定されず、大きければ大きいほど好ましく、理論的には100%でも可能である。
【0019】
上記のプリプレグに使用されるガラス基材としては、特に制限はないが、図1(a)に示すような空隙部2が大きいガラス基材が好ましく、一般的な開繊処理がされていないガラス基材が好ましい。
【0020】
具体的なガラス基材としては、ガラスクロス、有機繊維クロス等が挙げられるが、なかでも、ガラス繊維径が6〜9μm程度のガラスクロスが好ましい。
【0021】
上記プリプレグに使用される熱硬化樹脂については、特に制限はないが、好ましくはエポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等であり、中でもエポキシ樹脂を用いることが特に好ましい。これらを単独又は複数組合せて用いることもできる。
【0022】
上記エポキシ樹脂は、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル樹脂、グリシジルアミン樹脂、複素環式エポキシ樹脂(トリグリシジルイソシアヌレート、ジグリシジルヒダントイン等)及びこれらを種々の材料で変性した変性エポキシ樹脂等が使用できる。また、これらの臭素化物、塩素化物等のハロゲン化物も使用できる。
【0023】
さらに、これらのエポキシ樹脂を2種類以上適宜組合せて使用することもできる。特に、電気電子材料用途に適用できる高い耐熱性や信頼性を絶縁層に付与できることから、フェノールノボラック型エポキシ樹脂また箔レゾールノボラック型エポキシ樹脂又はビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂もしくはこれらのハロゲン化物を用いることが望ましい。
【0024】
また、加工性改良、添加した樹脂の硬化促進等の目的で、上記樹脂に硬化剤を添加してもよい。硬化剤としては、フェノール系、アミン系、シアネート系化合物等の公知の硬化剤を単独又は複数組合せて用いることができる。
【0025】
より具体的には、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、メラミン変性ノボラック型フェ−ノール樹脂等のフェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤又は、これらのハロゲン化された硬化剤、ジシアンジアミド等アミン系硬化剤等が挙げられる。
【0026】
なお、樹脂に硬化剤を加える場合、前記硬化剤の配合量は、樹脂組成物全体に対して0.1〜5質量%の範囲とすることが好ましい。
【0027】
さらに、本発明の樹脂には、硬化反応を促進するために硬化促進剤を加えてもよい。硬化促進剤としては上述した樹脂成分と前記硬化剤との硬化反応を促進することができるものであれば、特に限定なく使用することができる。具体的には、例えば、2−エチル−4−メチルイミダゾール、シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本発明において硬化促進剤を含有する場合には、樹脂組成物全量中に、0.001〜0.01質量%程度であることが好ましい。
【0029】
本発明の樹脂組成物は、さらに、本発明の効果を損なわない範囲でその他の添加剤、例えば、難燃剤、難燃助剤、レベリング剤、着色剤等を必要に応じて含有してもよい。
【0030】
本発明において、前記樹脂は、通常、その他の添加剤(前記硬化剤など)を含む樹脂組成物としてワニス状に調製されて用いられる。このようなワニスは、例えば、以下のようにして調製される。
【0031】
つまり、上述した樹脂に必要に応じてその他の添加剤及び有機溶剤などを添加して、ボールミル、ビーズミル、ミキサー、ブレンダー等を用いて均一に分散・混合し、ワニス状に調製することができる。
【0032】
そして、前記ワニス状の樹脂組成物を上述したようなガラス基材に含浸して加熱乾燥させることによりプリプレグを得ることができる。
【0033】
本発明のプリプレグの具体的な製造方法については、上述したように、ガラス繊維の経糸と緯糸の網目の空隙に樹脂が充填されていない部分が残るような方法であれば、特に限定されず、従来と同様のものとして、あるいはその改良としての各種の手段であってよい。
【0034】
より具体的には、例えば、まず、前記ワニス状樹脂中に、前記基材を浸漬するなどして、ワニス状樹脂を基材に含浸させる。含浸は浸漬(ディッピング)、塗布等によって行われる。含浸は必要に応じて複数回繰り返すことも可能である。またこの際に組成や濃度の異なる複数の溶液を用いて含浸を繰り返し、最終的に希望とする組成および樹脂量に調整することも可能である。さらにこの際に、例えば、ガラス基材への樹脂の塗布量を極端に少なくすることによって、本発明の孔空きプリプレグを得ることができる。
【0035】
次に、ワニス状樹脂組成物が含浸された基材を、その後、所望の加熱条件(例えば、120〜170℃で2〜15分間)で加熱乾燥し、樹脂成分を半硬化(Bステージ化)させて、プリプレグを得る。このときプリプレグ中の樹脂量は、プリプレグ全量に対して30〜99.9質量%であることが好ましい。
【0036】
なお、得られるプリプレグの厚みは特に制限されるものではないが、通常、0.04〜0.3mmの範囲のものが好ましい。
【0037】
〔樹脂シート〕
本発明の樹脂シートは、高熱伝導性樹脂シートであり、熱伝導性の高い無機フィラーを高充填させた樹脂を用いて得られる。
【0038】
本発明の樹脂シートに用いられる熱硬化樹脂としては、特に制限はなく、上述したようなプリプレグに用いられる熱硬化樹脂と同様の樹脂を用いることができる。
【0039】
さらに、上述したようなプリプレグに用いられ得る硬化剤、硬化促進剤などの添加剤を樹脂シート用熱硬化樹脂にも配合することもできる。
【0040】
上記樹脂シートに使用される無機フィラーとしては、特にその種類は限定されるものではないが、例えば酸化アルミニウム(Al23)粉末や、窒化アルミニウム(AlN)粉末、酸化珪素(SiO2)粉末、窒化珪素(SiN)粉末、窒化ホウ素(BN)粉末など、高熱伝導率を有し、電気絶縁性の高いものを用いるのが好ましい。これらのなかでも特に、酸化アルミニウム粉末がこのましい。窒化アルミニウム粉末の場合には表面を酸化処理して酸化アルミニウムの酸化層を形成することによって、耐湿性を向上させたものが有用である。また無機粉末には樹脂との相溶性をよくするために、カップリング処理などの表面処理を行うようにしてもよい。また、上記の化合物を複数組合せて用いてもよい。
【0041】
上記樹脂シートに充填される無機フィラーの配合量は、樹脂組成物全体に対して60〜95質量%であり、より好ましくは、75〜95%である。無機フィラーの平均粒径と配合割合を適度に組み合せることによって、樹脂に無機フィラーを60〜95質量%の含有量で配合することができる。無機フィラーの含有量が60質量%未満では、無機フィラーを配合することによる効果を期待することができない。また無機フィラーの含有量が95質量%を超えると、成型時の樹脂の粘度が過度に高くなるおそれがある。
【0042】
また前記無機フィラーには、樹脂との相溶性をよくするために、カップリング処理などの表面処理を行ったり、分散剤などを添加して樹脂組成物中への分散性を向上させたりしてもよい。また、複数の無機フィラーを組合せて用いてもよい。
【0043】
このように樹脂に無機フィラーを高充填させた高熱伝導性樹脂を用いることにより、きわめて高い熱伝導性を有する樹脂シートを得ることができる。
【0044】
さらに、本発明の樹脂シート用の熱伝導性樹脂にも、本発明の効果を損なわない範囲でその他の添加剤、例えば、難燃剤、難燃助剤、レベリング剤、着色剤等を必要に応じて含有させてもよい。
【0045】
本発明において、前記熱伝導性樹脂は、通常、上述したような無機フィラー及び必要に応じてその他の添加剤(前記硬化剤など)を含む樹脂組成物としてワニス状に調製されて用いられる。このようなワニスは、例えば、以下のようにして調製される。
【0046】
つまり、上述した樹脂に無機フィラー並びに必要に応じてその他の添加剤及び有機溶剤などを添加して、ボールミル、ビーズミル、ミキサー、ブレンダー等を用いて均一に分散・混合し、ワニス状に調製することができる。
【0047】
そして、本発明の樹脂シートは、上述のワニス状の高熱伝導性樹脂組成物を金属箔又は有機フィルム等の上に形成して加熱乾燥することで、Bステージ状態の樹脂シートとして得ることができる。
【0048】
上記樹脂シートの製造方法についても特に制限はなく、例えば、上述のプリプレグの製造方法と同様の方法で製造することができる。ただし、金属箔又は有機フィルム上に塗布する樹脂組成物の量を、上述の孔空きプリプレグの場合のように少なくする必要はない。
【0049】
なお、得られる樹脂シートの厚みは特に制限されるものではないが、通常、0.04〜0.3mmの範囲のものが好ましい。
【0050】
[積層板]
上述のようにして得られた樹脂シート及び孔空きプリプレグを用いて金属張積層板を作成する方法としては、上記プリプレグと樹脂シートを積層成型する構成として、図2のようにプリプレグ1枚に対して樹脂シートを2枚で挟んだ構成、あるいは、これらの材料を多数構成する例えば図3のような構成で積層成型できる。
【0051】
積層成形、積層接着のための方法、装置、それらの条件については従来と同様のものとして、あるいはその改良としての各種の手段であってよい。
【0052】
具体的には、例えば、前記のようなプリプレグ1枚に対して樹脂シートを2枚で挟んだ構成を1枚、又は複数枚重ね、さらにその最表面に金属箔を重ね、これを加熱加圧成形して積層一体化することによって、金属箔張りの積層体を作製する方法が挙げられる。なお、前記金属箔は前記構成の上下の両面または片面に重ねることができ、それに応じて、両面金属箔張りまたは片面金属箔張りの積層体を作製することができる。加熱加圧条件は、製造する積層板の厚みやプリプレグの樹脂組成物の種類等により適宜設定することができるが、例えば、温度を160〜180℃、圧力を2〜4MPa、時間を60〜120分間とすることができる。
【0053】
金属箔としては、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄などを材料とする箔の他、これらの合金の箔、複合箔を用いることができる。金属箔は厚みが5〜400μmの範囲のものを用いることが好ましい。
【0054】
このようにして得られた本発明の積層板は、熱伝導性にきわめて優れており、後述の実施例における式2によって求められる熱伝導率が、3W/m・K以上であることを特徴の一つとする。
【0055】
[多層プリント配線板]
上述のようにして作製された積層体の表面の金属箔をエッチング加工等して回路形成をすることによって、積層体の表面に回路として導体パターンを設けたプリント配線板を得ることができる。
【0056】
このようにして得られるプリント配線板は、強度を維持しながらも熱伝導性にきわめて優れている。
【0057】
以下に、本発明について、実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0058】
はじめに、本実施例で用いた原材料をまとめて示す。
【0059】
〈エポキシ樹脂〉
・「エピクロン840S」(DIC(株)製、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂)
・「VG3101」(三井石油化学社製、3官能エポキシ樹脂)
〈硬化剤成分〉
・ジシアンジアミド(試薬)
〈硬化促進剤〉
・「2E4MZ」(四国化成工業(株)製、イミダゾール)
〈無機フィラー〉
・「CB−A20S」(平均粒子径20μmアルミナ、昭和電工社製)
・「CB−A05S」(平均粒子径5μmアルミナ、昭和電工社製)。
【0060】
(実施例1)
エポキシワニスを下記表1の配合比で混合し、厚み60μmの1080タイプのEガラス繊維織布(ガラス繊維径5μm,織込み本数:縦60本/25mm,横46本/25mm)に含浸させ、120〜160℃で5〜10分間加熱乾燥させて空隙率Xが75%の孔空きプリプレグを作製した。
【0061】
一方、アルミナ粉末を下記表2の配合比で混合し、表2の配合比で混合したエポキシワニスにアルナミ粉末が90重量%であるエポキシ樹脂ワニスを調整する。このワニスを75μm厚みのPETフィルムに塗布し120〜140℃で5〜10分間加熱乾燥し、樹脂厚みが100μmのBステージ状態の樹脂シートを得た。
【0062】
上記プリプレグ1枚と樹脂シート2枚を前述の図2の構成に組み合わせて、その表層両側に35μmの銅箔を配し、温度180℃、圧力40kg/cmの条件で90分加熱加圧成型して積層板を得た。
【0063】
(実施例2)
エポキシワニスを表1の配合比で混合し、厚み200μmの7628タイプのEガラス繊維織布(ガラス繊維径9μm,織込み本数:縦60本/25mm,横47本/25mm)を用いた以外は実施例1と同様にして空隙率が75%の孔空きプリプレグを作製した。
【0064】
一方、アルミナ粉末を表2の粒径と配合比で混合し、表2の配合比で混合したエポキシワニスを用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂シートを得た。
【0065】
次に、上記プリプレグ1枚と樹脂シート2枚を用いて、実施例1と同様の方法で積層板を得た。
【0066】
(実施例3)
エポキシワニスを表1の配合比で混合し、厚み60μmの1080タイプのEガラス繊維織布(ガラス繊維径5μm,織込み本数:縦60本/25mm,横46本/25mm)を用いた以外は実施例1と同様にして空隙率が75%の孔空きプリプレグを作製した。
【0067】
一方、アルミナ粉末を表2の粒径と配合比で混合し、表2の配合比で混合したエポキシワニスにアルナミ粉末が94重量%であるエポキシ樹脂ワニスを調整した以外は、実施例1と同様にして樹脂シートを得た。
【0068】
次に、上記プリプレグ1枚と樹脂シート2枚を用いて、実施例1と同様の方法で積層板を得た。
【0069】
(実施例4)
エポキシワニスを表1の配合比で混合し、厚み60μmの1080タイプのEガラス繊維織布(ガラス繊維径5μm,織込み本数:縦60本/25mm,横46本/25mm)を用いた以外は実施例1と同様にして空隙率が75%の孔空きプリプレグを作製した。
【0070】
一方、アルミナ粉末を表2の粒径と配合比で混合し、表2の配合比で混合したエポキシワニスを用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂シートを得た。
【0071】
次に、上記プリプレグ1枚と樹脂シート2枚を用いて、実施例1と同様の方法で積層板を得た。
【0072】
(比較例1)
エポキシワニスを表1の配合比で混合し、厚み60μmの1080タイプのEガラス繊維織布(ガラス繊維径5μm,織込み本数:縦60本/25mm,横46本/25mm)を用いた以外は実施例1と同様にして空隙率が0%の孔空きプリプレグを作製した。
【0073】
一方、アルミナ粉末を配合せずに、表2の配合比で混合したエポキシワニスにアルナミ粉末が0重量%であるエポキシ樹脂ワニスを調整した以外は、実施例1と同様にして樹脂シートを得た。
【0074】
次に、上記プリプレグ1枚と樹脂シート2枚を用いて、実施例1と同様の方法で積層板を得た。
【0075】
(比較例2)
エポキシワニスを表1の配合比で混合し、比較例1と同様にして空隙率が0%の孔空きプリプレグを作製した。
【0076】
一方、アルミナ粉末を表2の粒径と配合比で混合し、表2の配合比で混合したエポキシワニスにアルナミ粉末が90重量%であるエポキシ樹脂ワニスを調整した以外は、実施例1と同様にして樹脂シートを得た。
【0077】
次に、上記プリプレグ1枚と樹脂シート2枚を用いて、実施例1と同様の方法で積層板を得た。
【0078】
(比較例3)
エポキシワニスを表1の配合比で混合し、厚み60μmの1080タイプのEガラス繊維織布(ガラス繊維径5μm,織込み本数:縦60本/25mm,横46本/25mm)を用いた以外は実施例1と同様にして空隙率が75%の孔空きプリプレグを作製した。
【0079】
一方、アルミナ粉末を表2の粒径と配合比で混合し、表2の配合比で混合したエポキシワニスにアルナミ粉末が90重量%であるエポキシ樹脂ワニスを調整した以外は、実施例1と同様にして樹脂シートを得た。
【0080】
次に、上記プリプレグ1枚と樹脂シート2枚を用いて、実施例1と同様の方法で積層板を得た。
【0081】
(比較例4)
エポキシワニスを表1の配合比で混合し、厚み60μmの1080タイプのEガラス繊維織布(ガラス繊維径5μm,織込み本数:縦60本/25mm,横46本/25mm)を用いた以外は実施例1と同様にして空隙率が75%の孔空きプリプレグを作製した。
【0082】
一方、アルミナ粉末を表2の粒径と配合比で混合し、表2の配合比で混合したエポキシワニスにアルナミ粉末が96重量%であるエポキシ樹脂ワニスを調整した以外は、実施例1と同様にして樹脂シートを得た。
【0083】
次に、上記プリプレグ1枚と樹脂シート2枚を用いて、実施例1と同様の方法で積層板を得た。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
<評価>
上記の実施例1〜4と比較例1〜4において得られた積層板について、硬化物中のボイド(空隙)の存在、熱伝導率、絶縁信頼性を評価した。
【0087】
(硬化物中の空隙)
基板の端と中央部分を任意にそれぞれ5点ずつ採取し、断面を観察し空隙の有無を確認した。断面の長さは20mmとした。
【0088】
(熱伝導率)
レーザーフラッシュ法による熱拡散率測定を実施し、以下の式2より熱伝導率を算出した。
(式2)熱伝導率(W/m・K)=密度(kg/m)×比熱(J/kg・K)×熱拡散率(m/s)
なお、式中の密度は水中置換法、比熱はDSC法によるものである。
【0089】
(絶縁信頼性)
上記で得られた各積層板の中央の銅箔を一部残し、残りの銅箔をエッチングによって除去して前記残した銅箔を電極接続部とし、85℃85%の加湿熱条件下にて50Vの電圧を印加し、厚み方向の抵抗値を測定し、絶縁信頼性の評価とした。尚、評価基準は、1000時間経過後の抵抗値が1×10(Ω)以上のものを合格とした。
【0090】
以上の評価の結果を表3に示した。
【0091】
【表3】

【0092】
これらの結果からも明らかなように、本発明の積層板は、成型性が良好で高い熱伝導率を示しながらも絶縁信頼性を確保できることが明らかとなった。さらに、本発明の積層板の製造方法は、高熱伝導性の積層板を得る手法として有用であることを示すことができた。
【0093】
以上、説明したように、本発明の一局面である積層板は、プリプレグを樹脂シートで挟んだ構成、又は前記構成を複数層重ねた構成で、最表層に金属箔を貼り合わせ、加熱成型して得られる積層板であって、前記プリプレグが、ガラス基材に熱硬化樹脂を含浸してなるプリプレグであって、ガラス基材の経糸と緯糸の空隙に樹脂が充填されていない部分があるプリプレグであること、並びに、前記樹脂シートが、熱硬化樹脂に無機フィラーを60〜95質量%含有させたフィラー高充填樹脂を、金属箔又は有機フィルム上に塗布し乾燥して形成される高熱伝導性樹脂シートであることを特徴とするものである。
【0094】
このような構成により、強度を保ちながらも、高い熱伝導性および優れた絶縁信頼性を達成する積層板を得ることができる。
【0095】
また、前記ガラス基材が開繊処理を施していないガラス基材であることが好ましく、そのような構成により、強度を保ちながらも、高い熱伝導性および優れた絶縁信頼性を達成する積層板をより確実に得ることができる。
【0096】
さらに、前記無機フィラーが、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、又は窒化ホウ素から選択される少なくとも1種であることが好ましい。それにより、顕著な優れた熱伝導性および絶縁信頼性をより確実に達成し得る。
【0097】
また、前記積層板は、熱伝導率が3W/m・K以上であることが好ましい。
【0098】
さらに、本発明の他の局面であるプリント配線板は、前記積層板の表面の金属箔を部分的に除去することにより回路形成して得られたことを特徴とする。
【0099】
また、本発明には、さらなる局面として、ガラス基材に熱硬化樹脂を含浸し、ガラス基材の経糸と緯糸の空隙に樹脂が充填されていない部分が残るようにしてプリプレグを得る工程と、熱硬化樹脂に無機フィラーを60〜95質量%含有させたフィラー高充填樹脂を、金属箔又は有機フィルム上に塗布し乾燥して高熱伝導性樹脂シートを形成する工程と、前記プリプレグを前記高熱伝導性樹脂シートで挟んだ構成、又は前記構成を複数層重ねた構成で、最表層に金属箔を貼り合わせ、加熱成型して積層板を得る工程とを含む、積層板の製造方法が包含される。このような構成により、本発明の積層板の製造方法によれば、強度を保ちながらも、高い熱伝導性および優れた絶縁信頼性を有する積層板を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリプレグを樹脂シートで挟んだ構成、又は前記構成を複数層重ねた構成で、最表層に金属箔を貼り合わせ、加熱成型して得られる積層板であって、
前記プリプレグが、ガラス基材に熱硬化樹脂を含浸してなるプリプレグであって、ガラス基材の経糸と緯糸の空隙に樹脂が充填されていない部分があるプリプレグであること、並びに、
前記樹脂シートが、熱硬化樹脂に無機フィラーを60〜95質量%含有させたフィラー高充填樹脂を、金属箔又は有機フィルム上に塗布し乾燥して形成される高熱伝導性樹脂シートであることを特徴とする、積層板。
【請求項2】
前記ガラス基材が開繊処理を施していないガラス基材である、請求項1に記載の積層板。
【請求項3】
前記無機フィラーが、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、又は窒化ホウ素から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の積層板。
【請求項4】
熱伝導率が3W/m・K以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の積層板。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の積層板を加工してなるプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−91322(P2012−91322A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238167(P2010−238167)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】