説明

3成分ドープのシリカ・チタニアの重要部分を有している、2成分系シリカ・チタニアガラス製品

【課題】従来の火炎加水分解法や、新たなスート押圧法、ゾル・ゲル法などの方法で作製することが困難な、ドープされたシリカ・チタニアガラスを使用した、EUVLの投影光学系の大型部品を提供する。
【解決手段】5℃から35℃の温度範囲に亘ってCTEが0±30ppb/℃以下である材料から成る素子ブランク10が、ドープされたシリカ・チタニアガラスから成る、インサート14を備える。シリカ・チタニアガラスに加えられたドーパントは、酸化アルミニウムと選択された遷移金属酸化物とから成る群から選択されたものであり、また素子ブランク10の材料は、ガラスとガラスセラミックとから成る群から選択される。このインサート14は、フリットを用いて、またはフリットを用いることなく、ブランク10に融合接合される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
極端紫外線リソグラフィ(EUVL)は、22nm以下のノードの、例えば、13〜15nm波長の極端紫外線放射をマイクロプロセッサ(MPU)、フラッシュメモリ、およびダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)製品のような集積回路(IC)に対して使用しているシステムにとって、先導的なリソグラフィ技術である。シリカ・チタニアガラス、例えば、ULE(登録商標)ガラス(コーニング社(Corning Incorporated)ニューヨーク州コーニング)を、EUVLシステムの構成要素、例えば、ミラーまたは部分反射投影光学系のために利用する利点は、要求される仕上がりまたは表面粗さに合わせた、ガラスの研磨可能性や、ガラスのCTE(熱膨張係数)制御、およびガラスの寸法安定性および放射安定性である。これらの性質はEUVLシステムの機能にとって極めて重要なものである。現在もEUVLステッパはULEガラスを使用しているが、このガラスに対する仕様は、放射源の出力が現在の5Wから要求される100Wへと増加するにつれて絶えず厳しくなっている。このガラスに要求される性質を改善させるという点では前進がなされたが、Tzc(ゼロクロスオーバー温度)に対する許容値、CTE対温度の傾き、およびTzcの空間的均一性など、特定のパラメータに対してさらなる改善が必要である。ULEガラスの熱的特性における上記改善を達成し得ることが判明した手段の1つは、ガラスに適切なドーパントをドープするというものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
さらに、ドープされたシリカ・チタニアガラスを従来の火炎加水分解やOVD法で作製することは困難であろうことも判明した。また、こういった大型のEUVLの投影光学系の部品を、ドープガラスを用いて、スート押圧法やゾル・ゲル法などの新たな方法で作製することも同様に困難であろう。EUVLの投影光学系の大型ミラーブランクの重要部分は、より小さくかつより薄い(3cm未満)ものであり、放射の大部分はこの重要部分に当たることになる。ドープされたシリカ・チタニアガラス製品が上で参照した重要部分のサイズである場合には、ゾル・ゲル法やスート押圧法のような新たな処理技術を用いて、むしろ容易に作製することができる。本開示は、ドープされたシリカ・チタニアガラスを新たな技術で作製し、次いでこれを、従来の火炎加水分解方法を用いて作製されたミラーブランクの重要部分内に、フリットを用いてあるいはいかなるフリットをも用いることなく、融合接合させて設置することにより、EUVLの投影光学系の改善されたミラー部品を作製する方法に関する。重要部分のためのこのULE部品は、他の要求される特性の中でも特に、より優れた研磨可能性を提供しかつ脈理を減少させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、EUVLの投影光学系の素子の「重要エリア」すなわち「重要部分」において、1以上のドーパントを含んでいるシリカ・チタニアガラスを使用することと、この1以上のドーパントを含んでいるシリカ・チタニアガラスを、通常のULE基板に融合接合することに関する。特に、0.05〜8重量%の1以上のドーパントを、現在EUVLの素子として使用されている2成分系のシリカ・チタニアガラスに加えると、25nm未満のノードのリソグラフィに必要な改善された熱的特性をもたらすことが見出された。ドーパントは、酸化アルミニウムと選択された遷移金属酸化物とから成る群から選択され、これらが2成分のシリカ・チタニアに追加される。低CTEガラスの研磨可能性の改善を追求している過程において、我々は、選択された量の選択されたドーパントを、例えばULEガラス(コーニング社)などの2成分系のシリカ・チタニアガラスに加えると、25nm未満のリソグラフィに要求されるCTEの傾きの仕様を達成させることができるであろうことをさらに見出した。これは、Tzcの空間的均一性要件を達成する助けにもなる。しかしながら、2成分系のシリカ・チタニアガラスを作製するために使用されている既存の製造方法に添加剤またはドーパントを導入すると、この使用されている方法を複雑化し得、さらに事態を悪化させることさえあり得る。
【0004】
一態様において、本開示は、25nm未満のノードのEUVLリソグラフィ用ミラーを作製するための基板に関し、この基板は、低熱膨張係数を有する、ガラス、ガラスセラミック、またはセラミックから成り、かつこの基板は、ドープされたシリカ・チタニアガラスで作製されたインサートを基板の重要部分内に備えたものであり、さらにこの基板およびインサートは、フリットを用いてまたはフリットを用いることなく、共に融合接合されている。一実施の形態において、インサートがその中に置かれる基板は、5℃から35℃の温度範囲に亘ってCTEが0±30ppb/℃である2成分系のシリカ・チタニアガラスであり、インサートは、ドープされたシリカ・チタニアガラスから成り、このドーパントは、酸化アルミニウムと選択された遷移金属酸化物とから成る群から選択されたものであり、かつドーパントの量は0.05重量%から8重量%の範囲内であることを特徴とする。種々の実施形態において、ドーパントは、0.25重量%から8重量%のAl23と、0.05重量%から3重量%のNb25と、および0.25重量%から6重量%のTa25とから成る群から選択される。
【発明の効果】
【0005】
インサートのCTEは、20℃から100℃の温度範囲に亘って2成分系のシリカ・チタニアガラスのCTEと厳密に一致するであろうが、インサートのCTE対Tの傾きは、改善されたものとなる(必要であれば、「が、」以降の言葉は削除してもよい)。(我々は、ドープ材料のCTEについては分からないが、基板のCTEとあまり大きく異ならないことを望んでおり、さもなければこれらのCTEが不釣合いとなって運転時の不具合に繋がるであろう。インサートに関して我々が求めているものは、より優れたCTE対Tの傾きである。)
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】典型的なEUVL素子またはブランク10と、この素子またはブランクの重要部分12を示した斜視上面図
【図2】2成分系のシリカ・チタニアガラスから作製されたEUVL素子またはブランク10の断面の斜視側面図であって、2成分系のシリカ・チタニアガラス素子の重要部分12を示している図
【図3】ドープされたシリカ・チタニアガラス14を素子/ブランク10に挿入して備えている、EUVL素子またはブランク10の断面の斜視側面図であって、素子/ブランク10に接合されたインサート14の重要部分12をさらに示し、インサート14の接合エリアを黒い太線16で示している図
【発明を実施するための形態】
【0007】
本書において、「25nm未満のノードのリソグラフィ」および「25nm未満の要素」という用語、または同様の用語は、25nm未満のノードで動作するリソグラフィシステムを意味する。本書において、「2成分系のシリカ・チタニアガラス」および「シリカ・チタニアガラス」という用語は、本質的にシリカとチタニアとから成るガラス、例えばULEガラスを意味する。さらに本書において、「ドープされたシリカ・チタニアガラス」、「シリカ・チタニア・ドーパントガラス」、「ドープガラス」という用語、および同様の用語は、シリカとチタニアと、本書に記載される1以上の、追加の添加剤または選択されたドーパントとから成るガラスを意味する。さらに、本書に記載されているシリカ・チタニア・ドーパントインサートの用途は2成分系のシリカ・チタニアガラスに対するものであるが、このドープされたシリカ・チタニアガラスを、例えば5℃から35℃の温度範囲に亘って0±30ppb/℃の低いCTEを有している、例えばガラスセラミックなどの他の材料に対してインサートとして使用してもよい。別の実施形態においては、ドープされたシリカ・チタニアガラスを素子全体に対して単独で使用してもよい。さらに本書において、「素子ブランクの材料」および「基板」という用語は、同じ意味で使用され、ドープされたシリカ・チタニアガラスが挿入される材料を称する。
【0008】
本書に記載されるドープされたシリカ・チタニアガラスを作製する方法は、発明者名Sezhian Annamalaiで に出願された、同時係属の米国特許出願第 号明細書に記載されており、その出願は、2011年8月31日に出願された米国仮特許出願第61/529542号の優先権を主張するものである。
【0009】
現在最も大きいミラーブランクは、およそ122cm(〜48インチ)の直径とおよそ23cm(〜9インチ)の厚さを有するものである。シリカとチタニアと本書に記載される選択されたドーパントとを含有した大型のEUVL用ミラー素子を、スートブランク法やゾル・ゲル法、あるいはスート押圧法などの方法を用いて作製することは可能であるが、これらのやり方は困難であることが判明しており、またこれらのやり方では、大型のシリカ・チタニア・ドーパントガラスの至る所に確実に成分を均一に分布させるために、恐らくかなりの開発時間を要するであろう。同様に、ドープされたシリカ・チタニアガラスを従来の火炎加水分解法で作製することも、ドーパントの非均一性や他のプロセス関連の複雑さなど問題が多い。しかしながら、こういった大型の素子の重要部分は、ミラーブランクや完成したミラーと比べて直径が小さく、かつ重要部分の厚さはおよそ3cmよりも薄いため、我々は、「ドープされたシリカ・チタニアガラスのインサート」を使用することで、重要部分に要求される熱的特性を実現することが可能となり、かつ多数のこういったミラーブランクを作る事は工業的にも有利となるであろうことを見出した。その結果、我々は、25nm未満のノードのリソグラフィに要求されるより厳しい仕様を満足するドープされたシリカ・チタニアガラスのインサートを、スートブランク法とゾル・ゲル法とスート押圧法とから成る群から選択される手法によって作製できることを発見した。一実施の形態において、ドープされたシリカ・チタニアガラスインサートはゾル・ゲル法により作製される。別の実施形態において、ドープされたシリカ・チタニアガラスインサートはスート押圧法により作製される。インサートがシリカ・チタニア・ドーパントガラスから作製されると、このインサートは火炎加水分解などの任意の従来の手法によって作製された2成分系のシリカ・チタニアガラス製品の表面上に設けられた凹状部分内に置かれ、このときフリットを用いて、あるいはフリット材料を用いることなく、これに融合接合される。2成分系のガラス製品の凹状部分およびインサートは、その両方が重要部分より大きく、またインサートの厚さは、2成分系のガラス製品の厚さより薄い。インサートの正確な寸法は、EUVL素子の重要部分のサイズに依存する。ドープガラスのインサートは、他の要求される特性の中でも特に、より優れた熱的特性を提供しかつ脈理の減少を可能にする。
【0010】
素子の重要部分は、放射が当たるエリアである。13.5nmの放射を利用しているEUVLでは、全ての材料が様々な程度まで放射を吸収し、従って加熱される。そのため、EUV放射が当たることによって重要部分が加熱されることがある。さらに、重要部分は均一に照射されるのではなく、IC上に描かれるパターンに従って照射される。これは、ミラー素子の不均一な加熱に繋がる。重要部分からの熱は、重要部分から素子の隣接エリアへと伝導によって移動し得る。しかし、伝導による熱の移動は、素子の様々なエリアを異なった温度にさせてしまう。その結果、素子の異なった地点での実際のCTEは、CTE曲線上の異なった値となり得る。このことの重要性は、もし素子が単一材料から作製されかつ選択されたTzc値までアニールされる場合、ミラーが加熱されることによって、放射が当たる重要部分内でゼロCTEから逸脱する可能性があるということである。これが、ミラーや、続いて形成されるリソグラフィ像に、歪みを生じさせることもあり得る。そのため、ミラー基板の異なる部分が異なった温度になったとしても、そのCTE値が互いにそれほど異なることなく、その結果ミラーの歪みや、続いてチップ上に描かれる回路の歪みを最小にするよう、CTE対Tの曲線の傾きを改善する必要がある。
【0011】
本開示は、ガラス素子の「重要部分」と呼ばれるエリア内での、ドープされたシリカ・チタニアガラスの使用に関する。特に、シリカ・チタニアガラスに0.05〜8重量%の1以上の選択されたドーパントを加えると、25nm未満のノードのリソグラフィに必要な改善されたCTEの傾きを有する、改善されたシリカ・チタニアガラスが得られることが分かっている。このドーパントは酸化アルミニウムと選択された遷移金属酸化物とから成る群から選択され、これがシリカ・チタニアガラスに加えられる。
【0012】
シリカ・チタニア基板は、平均ゼロCTEクロスオーバー温度(Tzc)の値に関して、非常に狭い範囲内に特定される。Tzcは、ガラス成形時に画成されるガラスの組成で制御することができるが、ガラスの熱履歴にも影響され得る。ガラス成形段階での組成の制御は常に十分に正確なものであるわけではないため、Tzcに関する仕様が非常に狭い場合には、ガラスの特定のサンプルまたはブールが、特定の部品に対する要件を満足することになる。例えば、シリカ含有原料およびチタン含有原料をバーナ内に(混合して、あるいは混合せずに)供給し、燃焼させてシリカおよびチタニアとし、容器内に堆積させ、そしてガラスに成形するような燃焼プロセスにおいては、バーナの閉塞(1以上のバーナにおける部分的または完全なもの)またはポンプ速度の変動(例えば、電圧変動またはポンプの問題に起因するもの)が、成形されるガラスの組成にいくらかの変動を生じさせる可能性がある。さらに、2成分系のガラスの部品を成形した後にアニールすることにより、CTEの傾きはおよそ20%改善され得るが、これでは十分ではない可能性があり、さらなるCTEの傾きの調整が必要となる。ドーパントを使用すると、CTEの傾きをさらに改善させることができることが既に分かっている。
【0013】
一態様において、本開示は、フィーチャサイズが22nmノード以下の回路を作製するEUVLステッパ内で使用し得る、ミラーを作製するための基板に関し、このノードは回路内の隣接しているフィーチャ間の距離の半分である。現在EUVL(極端紫外線リソグラフィ)では、この目的のために13.5nm放射を使用している。(このように、同じ単位、ナノメータ(nm)を使用するよう注意されたい)。EUVLに適したミラーとして使用することができる本開示の基板は、低熱膨張係数を有しかつ基板の重要部分内にインサートを備えた、ガラス、ガラスセラミック、またはセラミックから成るものである。一実施の形態において、インサートがその中に置かれる基板は、CTEが0±30ppm/℃である2成分系のシリカ・チタニアガラスであり、インサートは、ドープされたシリカ・チタニアガラスから成り、このドーパントは、酸化アルミニウムと選択された遷移金属酸化物とから成る群から選択されたものであり、かつドーパントの量は0.05重量%から8重量%の範囲内であることを特徴とする。種々の実施形態において、ドーパントは、0.25重量%から8重量%のAl23と、0.05重量%から3重量%のNb25と、および0.25重量%から6重量%のTa25と、およびその混合物とから成る群から選択される。
【0014】
本書に記載されるドープされたシリカ・チタニアガラスは、任意のリソグラフィプロセス、例えば248nmおよび193nmおよび157nmのリソグラフィやEUVリソグラフィ(13.5nm)において使用されるフォトマスクブランクを作製するためにも使用することができ、さらにこの優れた性質を必要とする多くの他の用途に使用することもできる。
【0015】
一実施の形態において、本開示は、25nm未満のノードのリソグラフィに使用するのに適した、EUVLの投影光学系の素子ブランクに関し、このブランクは、5℃から35℃の温度範囲に亘ってCTEが0±30ppb/℃でありかつブランク内に重要部分のインサートのための切欠きを有している、材料から成り、また重要部分のインサートは、ドープされたシリカ・チタニアガラスから成り、このドーパントは、酸化アルミニウムと選択された遷移金属酸化物とから成る群から選択されたものであり、さらにこのブランク材料は、ガラスおよびガラスセラミックから成る群から選択されたものである。一実施の形態において、素子ブランクの材料は、(a)シリカ94重量%およびチタニア6重量%でSiO2/TiO2の割合がおよそ15.7のものから(b)シリカ92重量%およびチタニア8重量%でSiO2/TiO2の割合がおよそ11.5のものまでの範囲の組成を有する2成分系のシリカ・チタニアガラスであり;またインサートは、酸化アルミニウムと選択された遷移金属酸化物とから成る群から選択されたドーパントを0.05重量%から8重量%まで含み、さらにシリカとチタニアの重量%値が、ガラスに加えられるドーパントの重量%のために、SiO2/TiO2の割合が実質上変化しないままとなるよう調節されたものである。例えば、2成分系のガラスがシリカ94重量%およびチタニア6重量%の組成を有しシリカとチタニアとを合わせて合計100重量%である場合には、ドーパントを3重量%加えると、シリカとチタニアとを合わせた合計の含有量が97重量%まで減少する。結果として、ドープガラスのシリカおよびチタニアの含有量は、97/100倍すなわち0.97倍に減少することになる。すなわち、ドープガラス内のシリカ含有量は94×0.97、すなわち91.2重量%となり、またドープガラス内のチタニア含有量は6×0.97、すなわちチタニア5.8重量%となる。ただし、SiO2/TiO2の割合は実質上変化しないままであり、すなわち、
(91.2重量%SiO2)÷(5.8重量%TiO2)=15.7SiO2/TiO2
および、(94重量%SiO2)÷(6重量%TiO2)=15.7SiO2/TiO2
となる。シリカ92重量%およびチタニア8重量%の組成を、3重量%のドーパントを追加するために調整した場合には、得られるドープガラスは、ドーパントを3重量%、SiO2を89.2重量%、およびTiO2を7.8重量%、含むことになり、そしてそのSiO2/TiO2の割合は11.4となる。前述の計算で重要なことは、加えられるドーパントの量に拘わらず、ドーパントが加えられたガラスとドーパントが加えられていないガラスのSiO2/TiO2の割合が相対的に一定のままであるように、シリカおよびチタニアの含有量を調整しなければならないということである。一実施の形態において、ブランク材料は、SiO2が91〜95重量%およびTiO2が5〜9重量%の範囲の組成を有する2成分系のシリカ・チタニアであり、そして重要部分は、シリカ・チタニア・ドーパントガラスから成り、このシリカ・チタニア・ドーパントガラスは、0.05重量%から8重量%のドーパントを含み、かつそのSiO2/TiO2の割合が2成分系のガラス組成に対して相対的に一定のままであるよう、シリカおよびチタニアの含有量を調整して含んでいる。
【0016】
図1は、典型的なEUVL素子またはブランクと、この素子またはブランクの、放射が当てられる重要部分12とを示した上面斜視図である。本開示において、インサートはブランク10内に置かれる。
【0017】
図2は、2成分系のシリカ・チタニアガラスで作製されたEUVL素子またはブランク10の断面を示した斜視側面図であって、2成分系のシリカ・チタニアガラス素子の重要部分12を示している図である。この図は、重要部分12の厚さがブランク/素子の厚さよりも大幅に小さいことを示しており、従ってインサートの深さはブランク/素子10の深さよりも小さいものとなる。上で示したように、重要部分の厚さすなわち深さは、概して3cm未満である。従って、素子/ブランクの厚さはこのサイズに合わせて作られ、また仮に重要部分の厚さが予想より大きいまたは小さいことが分かった場合には、必要に応じて素子/ブランクの厚さを調整してもよい。
【0018】
図3は、ドープされたシリカ・チタニアガラス14が素子/ブランク10内に挿入された状態の、EUVL素子またはブランク10の断面を示した斜視側面図である。重要部分12を円12(点線)で示し、この円はインサート14の境界部分内に位置している。図3はさらに、インサート14とブランク10との間の接合部を、この2つの部分の間の境界エリアに沿った黒い太線16で示している。
【0019】
すなわち、本開示は25nm未満のリソグラフィにおいて使用するのに適した素子ブランクに関し、このブランクはCTEが0±30ppb/℃以下の材料から成り、かつこのブランクは、フリットを用いてまたはフリットを用いないでこのブランクに融合接合されたインサートを備えている。インサートはドープされたシリカ・チタニアガラスから成り、このドーパントは、酸化アルミニウムと選択された遷移金属酸化物とから成る群から選択され、さらに素子ブランクの材料は、ガラスおよびガラスセラミックから成る群から選択される。一実施の形態において、素子ブランクの材料はチタニア6重量%およびシリカ94重量%からチタニア8重量%およびシリカ92重量%までの範囲の組成を有する2成分系のシリカ・チタニアガラスであり、かつインサートは、0.05重量%から8重量%までのドーパントを含みかつその残部はシリカおよびチタニアである、ドープされたシリカ・チタニアガラスであり、さらにドープガラスインサートのシリカおよびチタニアの含有量は、2成分系のシリカ・チタニアガラスとドープされたシリカ・チタニアガラスとのSiO2/TiO2の割合を実質上一定に保ちながら、ドーパントの追加を考慮して調整される。一実施の形態において、ドーパントは、0.25〜8重量%の範囲内の酸化アルミニウムである。別の実施形態において、ドーパントは、Ta25とNb25とから成る群から選択される、0.05〜6重量%のドーパントである。
【0020】
説明のために典型的な実施形態を明記したが、上述の説明は本開示または添付の請求項の範囲を限定するものと見なされるべきではない。したがって、本開示または添付の請求項の精神および範囲から逸脱することのない、種々の改変、改作、および代替案が当業者には思い浮かぶであろう。
【符号の説明】
【0021】
10 EUVL素子またはブランク
12 重要部分
14 インサート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
25nm未満のリソグラフィにおいて使用するのに適した、EUVL用のミラーブランクであって、該ブランクが、5℃から35℃の温度範囲に亘ってCTEが0±30ppb/℃以下である材料から成るものであり、さらに該ブランクが、ドープされたシリカ・チタニアガラスから成るインサートを備え、ここでドーパントが酸化アルミニウムと選択された遷移金属酸化物とから成る群から選択されたものであり、かつ、
前記ブランクの材料が、ガラスおよびガラスセラミックから成る群から選択され、さらに、
前記インサートが、フリットを用いて、またはフリットを用いることなく、前記ブランクに融合接合されていることを特徴とする素子ブランク。
【請求項2】
前記ブランクの材料が、チタニア6重量%およびシリカ94重量%からチタニア8重量%およびシリカ92重量%までの範囲の組成を有する、2成分系のシリカ・チタニアガラスであり、かつ、
前記インサートが、ドーパントを0.05重量%から8重量%まで含んでいるドープされたシリカ・チタニアガラスであり、さらに、
前記ドープガラスインサートのシリカおよびチタニアの含有量が、前記2成分系のシリカ・チタニアガラスと前記ドープされたシリカ・チタニアガラスとのSiO2/TiO2の割合を実質上一定に保ちながら、前記ドーパントの追加を考慮して調整されることを特徴とする請求項1記載のブランク。
【請求項3】
前記ブランクの材料が、5℃から35℃の温度範囲に亘ってCTEが0±30ppb/℃以下であるガラスセラミックであることを特徴とする請求項1記載のブランク。
【請求項4】
前記インサートが、ドープされたシリカ・チタニアガラスから作製されたものであり、かつドーパントが、0.25〜8重量%の範囲内の酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項1記載のブランク。
【請求項5】
前記インサートが、ドープされたシリカ・チタニアガラスから作製されたものであり、かつドーパントが、Ta25とNb25とから成る群から選択された、0.05〜6重量%のドーパントであることを特徴とする請求項1記載のブランク。
【請求項6】
前記インサートが、フリット材料を用いて前記ブランクに物質的に融合接合されていることを特徴とする請求項1記載の素子ブランク。
【請求項7】
前記インサートが、フリット材料を用いることなく、前記ブランクに物質的に融合接合されていることを特徴とする請求項1記載の素子ブランク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−101310(P2013−101310A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−189671(P2012−189671)
【出願日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】